WO2022168713A1 - 針アプリケータおよび穿刺注入キット - Google Patents

Abstract

複数の微細針の内部あるいは近傍を通って、対象物の内部又は表面に液体を送り込む針アプリケータ１であって、側壁１２および該側壁の下端近傍の内側面から連接され、流通孔１６が形成された支持壁１５を有し、上方が開口している土台部１０と、対象物へ穿刺される下向きの複数の微細針２３が設けられ、厚さ方向に貫通する導通孔２２が形成され、支持壁１５の下端に取り付けられる針プレート２０と、液体が含浸され、支持壁１５の上側に内嵌可能な吸収部材３０と、吸収部材３０を押圧する押圧部材４０とを備える。

Description

針アプリケータおよび穿刺注入キット

　本発明は、針アプリケータ、および該針アプリケータを含む穿刺注入キットに関する。

　近年、溶解するマイクロニードルを肌（皮膚）に貼り付けて放置することで、有効成分を肌に浸透する、マイクロニードルマスクが知られている（例えば、特許文献１参照）。

　しかし、特許文献１のようなマスクタイプのマイクロニードルでは、マイクロニードルと有効成分とが一体形成されているため、マイクロニードルに溶け込んでいる、美容成分を肌内に注出するためには、長い時間の放置が必要であった。また、マイクロニードルと、一体化可能な美容成分は、限定されてしまった。

　一方、アプリケータ内に弾性部材であるバネを備え、マイクロニードルを肌に適用させる際に、バネの付勢力をマイクロニードルに伝達することで、マイクロニードルをアプリケータ内で降下させて肌に当接させる技術が提案されている。（例えば、特許文献２参照）。

　また、パッチから外側に延伸させた貼り付け用粘着部によってパッチを肌に貼り付けた状態にして、使用時に１本の指で押し込んで、パッチ内の薬液を注入する技術が存在する（特許文献３参照）。

　さらに、特許文献４では、接触面側に微細突起が設けられた下面側のシートと、上面側のシートの２枚のシートを張り合わせた微細突起具において、微細突起を肌に突き刺して中味の液体を付与する際に、指で上から押さえながら使用することが、提案されている。

日本国特開２０１７－０５１３５４号公報 ＷＯ２０１７／０３８４９９ 日本国特許第４８１５０９５号公報 日本国特開２０２０－９６７９０号公報

　しかし、特許文献２のように、バネを使用してマイクロニードルを昇降させる場合、昇降のための機構が必要になるため、アプリケータがその分大型化してしまう。また、アプリケータ内において、バネの部分に影響しないように、マイクロニードルの表面に薬剤を予め塗り込んだり、マイクロニードル自体に薬剤を含んで形成したりするため、有効成分の含有量は少なく、かつ有効成分には液体は使用できなかった。

　一方、特許文献３のように貼り付け部を設ける構成であると、特に、顔に対して適用する場合、貼り付け部の接着成分により肌がかぶれてしまったり、剥がす際に角質を剥がしてしまったりする等の悪影響を及ぼす可能性があった。

　また、特許文献４の技術では、２枚のシートを貼り合わせて構成しているため、使用の際に傾きやすく、状態が安定しなかった。また、シートの張り合わせ構成なので側面が薄く、側面を横から掴みながら、上から押すことはできなかった。

　そこで、本発明は上記事情に鑑み、小型で把持しやすく、指で押さえて対象物に安定した状態で当接させることで、液体の有効成分を対象物の内部に送ることができる、針アプリケータの提供を目的とする。

　上記課題を解決するため、本発明の一態様では、
　　複数の微細針の内部あるいは近傍を通って、対象物の内部又は表面に液体を送り込む針アプリケータであって、
　側壁、および該側壁の下端近傍の内側面から連接され、流通孔が形成された支持壁を有し、上方が開口している土台部と、
　対象物へ穿刺される下向きの複数の微細針が設けられ、厚さ方向に貫通する導通孔が形成され、前記支持壁の下端に取り付けられる針プレートと、
　液体が含浸され、前記支持壁の上側に内嵌可能な吸収部材と、
　前記吸収部材を押圧する押圧部材と、を備える。

　一態様によれば、針アプリケータにおいて、小型で把持しやすく、指で押さえて対象物に安定した状態で当接させることで、液体の有効成分を対象物の内部に送ることができる。

本発明の第１実施形態に係る針アプリケータを斜視した透視概略図。 第１実施形態に係る針アプリケータの断面図。 第１実施形態に係る針アプリケータにおける中空針による液体の注入の説明図。 第１実施形態に係る下面枠部の流通孔の変形例を示す図。 本発明の第２実施形態に係る針アプリケータの断面図。 本発明の第３実施形態に係る針アプリケータの断面図。 本発明の第４実施形態に係る針アプリケータの断面図。 第４実施形態に係る針アプリケータにおける注出孔、針状突起による内容物の入り込みの説明図。 第４実施形態に係る針プレートに設けられる針状突起の変形例を示す図（その１）。 第４実施形態に係る針プレートに設けられる針状突起の変形例を示す図（その２）。 第４実施形態に係る針プレートに設けられる針状突起の変形例を示す図（その３）。 本発明の第５実施形態に係る針アプリケータの断面図。 本発明の第６実施形態に係る針アプリケータの断面図。 本発明の応用例に係る針アプリケータの説明図。 図１２の針アプリケータを含む穿刺注入キットの概略図。 本発明の穿刺注入キットの使用手順を示すフローチャート。 本発明の穿刺注入キットの使用手順の説明図。

　以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。下記、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。

　本発明は、針アプリケータ及び針アプリケータを含む穿刺注入キットに関する。本発明の針アプリケータにおける肌等の対象物への穿刺部分は、中空針又は針状突起（中実針）である。本発明の針アプリケータは、この中空針又は針状突起を用いて、皮膚の内部に内容物を注入することができ、さらに皮膚の表面にも内容物を付与することができる。

　なお、本発明の針アプリケータによって液体が適用される対象物の例として、ヒトの肌（皮膚）が主に想定されているが、対象物は動物の肌、植物の茎や幹や葉の表面などにも適用できる。または、対象物は、被験者や被験対象動物から取り出した皮膚、臓器等の、組織、あるいはシリコン膜やウレタンシート等の無機物であってもよく、これらに限定されない。

　＜第１実施形態＞
　本発明の第１実施形態に係る針アプリケータについて、図１～図３を用いて説明する。まず、図１、図２を用いて第１実施形態の針アプリケータ１の構成について説明する。図１は、本発明の第１実施形態に係る針アプリケータ１の概略斜視図である。図２は、第１実施形態に係る針アプリケータ１の断面図である。

　本発明の針アプリケータは、複数の微細針の内部あるいは近傍を通って、対象物（例えば肌）の内部又は表面に液体を送り込むスタンプ型の穿刺注入具である。

　図１、図２に示すように、本発明の第１実施形態に係る針アプリケータ１は、土台部１０と、針プレート２０と、吸収部材３０と、押圧部材４０とを備えている。

　土台部１０は、上方が開口している支持体（ハウジング）であって、側壁１１および支持壁１５を備えている。側壁１１は筒状の周壁である。支持壁１５は、該側壁１１の下端近傍の内側面から連接して側壁１１と略直交の方向に広がって、土台部１０の下方を覆う下面である。

　側壁１１は、支持壁１５を境界として、支持壁１５の上側は収容壁１１１であり、支持壁１５の下側は脚部１１２となる。そして、側壁１１の脚部１１２の下端は、他の部分よりも内側が薄い薄肉部１２であることで段差が生じており、厚肉部と薄肉部１２との段差の下向きの面は下面枠部１３となる。さらに、下面枠部１３と、支持壁１５の下面１５Ｌとの間は脚部１１２の厚肉部により段差があり、脚部１１２の厚肉部の内側面は液止め壁部１４となっている。なお、薄肉部１２は、例えば脚部１１２の外径を大きくすることで、側壁１１と同じ厚さか、あるいは側壁１１よりも厚肉とすることができる。

　本実施形態では、支持壁１５の中央に、上下方向に貫通する１つの流通孔（上流側流通孔）１６が形成されている。

　土台部１０は、例えば、ポリプロピレン（ＰＰ）、ポリエチレン（ＰＥ）、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン（ＡＢＳ）、ポリブチレンテレフタレート（ＰＢＳ）、ポリアセタール（ＰＯＭ）、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、ポリカーボネイト（ＰＣ）、ポリエーテルエーテルケトン（ＰＥＥＣ）等の熱可塑性樹脂、ポリ乳酸（ＰＬＡ）、ポリグリコール酸（ＰＧＡ）、ポリ乳酸―グリコール酸共重合体（ＰＬＧＡ）等の生分解性樹脂、等の樹脂で構成される。

　本発明の針アプリケータ１は小型であって、例えば、土台部１０の側壁１１の外径は、８～５０ｍｍ程度、より好ましくは１０～４０ｍｍ程度である。なお、本例では、側壁１１の外形が略円形の例を示しているが、側壁１１の外形の上面視の形状は、楕円、長方形、矩形、多角形、角丸多角形、略半円形状など異なる形状であってもよい。

　また、土台部１０の側壁１１の高さは、６～３０ｍｍ程度、より好ましくは、８～２０ｍｍ程度である。側壁１１が６ｍｍ以上あることで、使用者は、側壁１１を外側から掴むことができる。また、側壁１１の厚みは、１～１０ｍｍ程度、より好ましくは、１～５ｍｍ程度である。

　針プレート２０は、対象物へ穿刺される下向きの複数の微細針が設けられたプレートである。本実施形態では、針プレート２０は、土台部１０の脚部１１２の下面枠部１３の下側であって、薄肉部１２の内周側に嵌め込まれる。これにより、図２に示すように、針プレート２０は、支持壁１５の下面１５Ｌの下側に、液止め壁部１４の分だけ離れて土台部１０に取り付けられる。

　本実施形態では、針プレート２０は、プレート本体２１および微細針としての中空針２３を有している。

　プレート本体２１には、導通孔としての複数の個別流路２２が形成されている。複数の中空針２３は、プレート本体２１の下面である当接面２１Ｌから突出し、中空部２４の上端が複数の個別流路２２の下端と連通している。本実施形態における微細針は、中空針（中空ニードル）２３であるため、針の内側である中空部２４内を液体内容物が通る。

　本実施形態では、支持壁１５の流通孔１６が上流側流路となり、プレート本体２１の個別流路２２が下流側流路となる、二段階の流路に沿って液体が流れる。そして、個別流路２２からプレート本体２１の当接面２１Ｌの外側（下側）に排出された液体は、連接した中空針２３の中空部２４を通って、中空針２３の先端の針孔から対象物の内側に注入される。なお、図２では、中空針２３の中空部２４は中央からずれた位置に形成されている例を示しているが、中空針２３の中空部２４は中央に位置していてもよい。

　複数の中空針２３を含む針プレート２０の材質として、ポリグリコール酸やポリ乳酸、ポリグリコール酸－ポリ乳酸コポリマーなどの生分解性樹脂をはじめとする生体適合性材質が好ましいが、ポリプロピレン（ＰＰ）、ポリエチレン（ＰＥ）、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン（ＡＢＳ）、ポリブチレンテレフタレート（ＰＢＳ）、ポリアセタール（ＰＯＭ）、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、ポリカーボネイト（ＰＣ）、ポリエーテルエーテルケトン（ＰＥＥＣ）等の熱可塑性樹脂であってもよい。

　針プレート２０における、複数の中空針２３の各中空針の長さは、０．００５～５ｍｍ程度、より好ましくは、０．０１～３ｍｍ程度であって、中空針２３の根元周辺の直径は、０．００２～５ｍｍ、より好ましくは０．００５～３ｍｍの範囲である。また、複数の中空針２３は互いに０．１ｍｍ～１０ｍｍ以上程度離間していると好適である。

　吸収部材３０は、液体が含浸されている。液体は予め含浸されていてもよいし、使用の直前に含浸されてもよい。吸収部材３０は、土台部１０の側壁１１の内側であって、支持壁１５の上側に内嵌可能である。吸収部材３０は、土台部１０へ嵌め込む際、吸収部材３０の下面３０Ｌが、支持壁１５の上面１５Ｕに当接するようにセットされると好適である。

　吸収部材３０は、例えば、スポンジ（パフ）、コットン、不織布等、液体を徐々に通す素材で構成された浸透材で構成される。

　押圧部材４０は、柱状の押圧本体４１と、押圧本体４１の下端に設けられる弾性部４２を備える。押圧部材４０は、土台部１０の側壁１１の内側に一部が内嵌可能である。押圧部材４０は、土台部１０において、吸収部材３０の上に嵌め込まれ、側壁１１の内周面１１Ｉに沿って押下される。

　押圧本体４１は、使用の際に液体を対象物へ注入するために押し込む際、上面４１Ｕが使用者によって押される。押圧本体４１は、例えば、ポリプロピレン（ＰＰ）、ポリエチレン（ＰＥ）、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン（ＡＢＳ）、ポリブチレンテレフタレート（ＰＢＳ）、ポリアセタール（ＰＯＭ）、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、ポリカーボネイト（ＰＣ）、ポリエーテルエーテルケトン（ＰＥＥＣ）等の熱可塑性樹脂、ポリ乳酸（ＰＬＡ）、ポリグリコール酸（ＰＧＡ）、ポリ乳酸―グリコール酸共重合体（ＰＬＧＡ）　等の生分解性樹脂等の樹脂で構成される。

　弾性部４２は、押圧部材４０が吸収部材３０の上に嵌め込まれたとき、吸収部材３０を上から密閉する。弾性部４２は、例えば、薄板状のゴム製又はエラストマー製のパッキン（密封素子）で構成されており、このような素材で構成されることで、液漏れや異物混入を防止することができる。

　押圧部材４０の径は、例えば、１０～３０ｍｍ程度、より好ましくは１５～２５ｍｍ程度であり、押圧部材４０の高さは、３０ｍｍ以下、より好ましくは２５ｍｍ以下であるが、押圧部材４０のサイズは、側壁１１のサイズに応じて適宜設定される。特に弾性部４２は、側壁１１の内周面１１Ｉに対して密着可能なサイズに設定される。また、押圧部材４０の上面形状も、側壁１１の外形の上面視の形状に合わせて適宜設定される。

　また、押圧部材４０を押し込むのではなく、回転させることで押し込んでいくような形状としても良い。押圧部材４０の一部(内ねじ)が土台部の外側側面(外ねじ)に嵌り、ねじ込んでいくことでスポンジが押されて注入される。例えば、このような構成の押圧部材において、注入前に嵌めこむときはねじ込んで嵌めて、注入時はボタンを押すことで注入できるような形状にしても良い。

　（第１実施形態における注入）
　図３は、第１実施形態に係る針アプリケータ１における中空針２３による内容物の注入の説明図である。図３において、（ａ）は、中空針２３によって対象物を穿刺した状態を示す透過図であり、（ｂ）は中空針２３を介して対象物に液体が注入されている状態を示す透過図である。図２、図３を参照して、本実施形態の針アプリケータ１における注入動作を説明する。

　図３（ａ）の状態の前に、使用者は、針アプリケータ１の土台部１０の側壁１１を把持して、針アプリケータ１を軽く対象物（例えば肌）Ｏに載せて位置決めをする。

　そして、図３（ａ）に示すように、針アプリケータ１は、側壁１１が押圧されることによって、複数の中空針２３が対象物Ｏに刺さる。この際、例えば使用者の指によって側壁１１の上端１１Ｕを対象物へ押し込むことで穿刺してもよいし、あるいは、側壁１１の外側面１１Ｏを２本の指で把持して対象物に対して押し込むことで穿刺してもよい。

　そして、図３（ｂ）に示すように針アプリケータ１は、押圧部材４０が押圧されることで、中空針２３から液体を、対象物Ｏの内部に送り込む（注入する）。

　詳しくは、押圧部材４０が吸収部材３０を面で押圧することで、吸収部材３０が収縮して液体が流れ、吸収部材３０に含有される液体が支持壁１５の中央の流通孔１６へ送り込まれる。そして、流通孔１６から下側に流れた液体は、支持壁１５の下面１５Ｌと、プレート本体２１の上面２１Ｕと、脚部１１２の液止め壁部１４とに囲まれた空間に広がって、複数の個別流路２２を送り込まれる。そして、個別流路２２から、複数の中空針２３それぞれに向けて流れ、複数の中空針２３の中空部２４それぞれを介して液体が対象物Ｏの内部に入り込む。

　本発明の針アプリケータ１では、対象物に対して貼り付ける機能を有していない場合は、使用者は、図３（ｂ）の期間中、押圧部材４０の上面４１Ｕを押しながら、かつ必要に応じて土台部１０の側壁１１を掴むことで、対象物に対して針アプリケータ１の押し当てを続ける必要がある。この押し当て期間は１秒～３０分程度（より好ましくは数秒から数分程度）である。

　図３（ｂ）の状態の後、使用者は、針アプリケータ１の土台部１０の側壁１１を掴んで対象物Ｏから離すことにより、中空針２３を対象物から引き抜く。

　このように、本実施形態の針プレート２０では、内容物である液体は、対象物Ｏの表面に広がらずに、直接、中空針２３の先端部の針孔から対象物の内側に注入される。このような中空針２３では、先端の針孔からダイレクトに効率よく肌の内部に注入し、浸透させることができるため、重力による影響は無視できる。そのため、例えば、頬の肌を対象物として針アプリケータ１を横向きの状態で使用したり、顎の下面を対象物として針アプリケータ１を、上下逆向きで使用しても、内容物である液体が垂れることなく、肌の中に液体を与えることができる。

　ここで、本発明の針アプリケータ１は、土台部１０の側壁１１を有しているため、使用者は側壁１１を把持しながら、液体を対象物の中に注入することができる。そのため、針を有するシートを指一本だけで支える構造よりも、使用中の注入待ち時間において、対象物に対するパッチの状態を安定した状態で維持できるため、中空針２３が均一に対象物に対して押し込まれるとともに、中空針２３がずれないため、対象物に空いた孔を大きくしないことができる。

　あるいは、使用者が使用中に指一本だけで吸収部材３０を押圧するように支持する場合であっても、本発明では、針アプリケータ１の土台部１０の側壁１１は適度な厚みを持たせることで、使用者は片手で側壁１１を横から掴みながら位置決めをしてその位置を変えずに、位置決めに用いた指とは異なる指で吸収部材３０を上から押すことができる。この使用態様では、例えば上からの押圧時に針アプリケータ１が傾いても、土台部１０の側壁１１は適度な厚みがあるため、傾きは最小限になり、中空針２３がほとんどずれないため、対象物に空いた孔を必要以上に大きくしないことができる。

　（流通孔の変形例）
　上記では、支持壁１５の中央に設けられた流通孔１６が１つである例を説明したが、流通孔は１つでなくてもよい。図４は、第１実施形態に係る支持壁の流通孔の変形例を示す図である。

　本変形例の流通孔１６１は、１つの流通孔を分割するような補強板１６３が設けられていることで、４つの部分流通孔１６２ａ～１６２ｄで構成される分割流通孔である。補強板１６３を設けることで、流通孔１６１の径を大きくしても、強度を確保できる。

　なお、４つの部分流通孔１６２ａ～１６２ｄを合わせた流通孔１６１の径が、流通孔１６の径と同じ大きさでも、補強板１６３を設けることで、流通孔１６１は、流通孔１６よりも時間あたりの対象物への流入量を少なくすることができる。なお、時間あたりの対象物への流入量の最適値は、含まれる液体の特性によって異なるため、適宜仕様に応じて、補強板１６３の有無、及び補強板１６３の数の増減によって、流通孔１６１の分割数を選択すると好適である。

　＜第２実施形態＞
　図５は、本発明の第２実施形態に係る針アプリケータ２の断面図である。

　第１実施形態では、支持壁１５では中央に１つの流通孔１６が設けられている例を説明したが、本実施形態の支持壁１５Ａには、点在した複数の流通孔１７ａ～１７ｅが設けられている。

　なお、図５は、断面図のため一例として、同一断面上の５つの流通孔１７ａ～１７ｅを示しているが、実際の複数の流通孔１７ａ～１７ｅは、支持壁１５Ａの面状に点在しており、数は適宜選択できる。

　第１実施形態では、押圧部材４０が押圧した際に吸収部材３０が収縮して流れた液体が支持壁１５の中央の流通孔１６へ集まるように送り込まれた。そして、流通孔１６から下側に流れた液体は、支持壁１５の下面１５Ｌと、プレート本体２１の上面２１Ｕと、脚部１１２の液止め壁部１４とに囲まれた空間に径方向外側に広がって、複数の個別流路２２へ送り込まれた。

　これに対して本実施形態では、支持壁１５Ａの複数の流通孔１７ａ～１７ｅは分散しているため、吸収部材３０が収縮して流れる液体が、中央に集まらずに複数の流通孔１７ａ～１７ｅへ送り込まれ、さらに流通孔１７ａ～１７ｅから支持壁１５Ａの下側に流れた液体は、径方向外側に広がりながら、近い位置にある、複数の個別流路２２へ送り込まれる。

　即ち、本実施形態では、二段階の流路において、上流側流路である流通孔１７ａ～１７ｅが分散して複数あることにより、吸収部材３０の下面３０Ｌから上流側流路への液体の移動距離が短くなり、さらに流路孔１７が分散していることで、上流側流路から下流側流路（個別流路２２）までの距離が短くなるため、液の移動距離が全体で短くなる。そのため、本実施形態の構成では、時間あたりの対象物への流入量を多くすることができる。なお、時間あたりの対象物への流入量の最適値は、含まれる液体の特性によって異なるため、適宜仕様に応じて、流通孔１７ａ～１７ｅの数の増減、及び流通孔１７ａ～１７ｅの径サイズを選択すると好適である。

　＜第３実施形態＞
　図６は、本発明の第３実施形態に係る針アプリケータ３の断面図である。

　第１実施形態及び第２実施形態では、土台部１０（１０Ａ）と針プレート２０は別体で形成されていたが、土台部と針プレートの機能は一体化した部材であってもよい。下記、本実施形態の構成について、第１実施形態との相違点のみ説明する。

　本実施形態における土台部５０は、側壁５１と、底壁である針プレート５２とを有し、上方が開口している針付き土台部である。側壁５１は筒状の周壁である。

　針プレート５２は、側壁５１の最下端の内側面から連接して側壁５１と略直交の方向に広がって、土台部５０の下方を覆う下面である。

　針プレート５２には、対象物へ穿刺される下向きの複数の微細針である中空針５４が設けられている。針プレート５２には、導通孔としての厚さ方向に貫通する複数の個別流路５３が形成されている。複数の中空針５４は、針プレート５２の下面である先端面５２Ｌから突出し、中空部５５の上端が複数の個別流路５３の下端と連通している。

　本実施形態において、吸収部材３０を土台部５０へ嵌め込む際、吸収部材３０の下面３０Ｌが、針プレート５２の上面５２Ｕに当接するようにセットされると好適である。

　本実施形態では、押圧部材４０が押圧した際に吸収部材３０が収縮して流れる液体は、中央に集まることなく、近傍の針プレート５２の複数の個別流路５３へと送り込まれる。そして、個別流路５３から、複数の中空針５４それぞれに向けて流れ、複数の中空針５４の中空部５５それぞれを介して液体が対象物の内部に入り込む。

　第１、第２実施形態では、吸収部材３０が収縮して流れる液体は、流通孔１６（１７ａ～１７ｅ）を経て、広がりながら複数の個別流路２２に送り込まれたが、本実施形態では、流通孔１６（１７ａ～１７ｅ）を経ずに直接個別流路５３へ送り込まれるため、液体は一段階の流路に沿って流れる。

　そのため、液の移動距離が短くなるため、本実施形態の構成では、時間あたりの対象物への流入量を、第１、第２実施形態よりも多くすることができる。

　ここで、製造方法として、第１、第２実施形態のように、針プレート２０を土台部１０（１０Ａ）と別々に製造する方が、針プレート５２と側壁５１を同じ素材で一体形成するより、例えば一般的な金型を用いた土台部の樹脂成形を簡素化できるが、針プレート２０の土台部１０への取り付け工程が発生する。一方、第３実施形態のように、針プレートを土台部５０と一体的に成形する場合は、金型を用いた成形は複雑であるため、例えば３Ｄプリンタ等を用いて３次元一体造形され、針プレートの土台への取り付けは発生しない。そのため、対象物への流入量と、製造工程の差異を考慮して、適宜実施形態を選択すると好適である。

　＜第４実施形態＞（中実針）
　図７は、本発明の第４実施形態に係る針アプリケータ４の断面図である。

　上記第１、第２、第３実施形態では、針プレートに設けられる微細針は、針の内側を液体内容物が通る中空針２３（５４）であったが、本実施形態では、針プレート６０に設けられる微細針は、中実針である針状突起６３であり、針の内側に液体内容物が通らない構造である点が異なる。以下、本実施形態の、第１実施形態との相違点について、説明する。

　本実施形態における針プレート６０は、対象物へ穿刺される下向きの複数の微細針（針状突起）が設けられたプレートである。本実施形態では、針プレート６０は、土台部１０の脚部１１２の下面枠部１３の下側であって、薄肉部１２の内側に嵌め込まれる。これにより、図７に示すように、支持壁１５の下面１５Ｌの下側に、液止め壁部１４の分だけ離れて土台部１０に取り付けられる。

　本実施形態では、針プレート６０は、プレート本体６１および微細針としての複数の針状突起（中実針）６３を有している。

　プレート本体６１には、厚さ方向に貫通する導通孔としての注出孔６２が形成されている。複数の針状突起６３は、プレート本体６１の下面である当接面６１Ｌから、注出孔６２とは異なる位置から下方に突出している。

　本実施形態では、支持壁１５の流通孔１６が上流側流路となり、プレート本体６１の注出孔６２が下流側流路となる、二段階の流路に沿って液体が流れる。そして、注出孔６２は針状突起６３と流路が連接していないため、注出孔６２からプレート本体６１の当接面６１Ｌの外側（下側）に排出された液体は、対象物上に広がる。

　複数の針状突起６３の各中空針の長さは、中空針２３と同様に、０．００５～５ｍｍ程度、より好ましくは、０．０１～３ｍｍ程度であって、針状突起６３の根元周辺の直径は、０．００２～５ｍｍ、より好ましくは０．００５～３ｍｍの範囲である。また、複数の針状突起６３は、互いに０．１ｍｍ～１０ｍｍ以上程度離間していると好適である。

　なお、第４実施形態および後述の第５実施形態では、土台部１０の支持壁１５に設けられる流通孔は、第１実施形態と同様に中央に形成された１つの流通孔１６である例を示すが、第４、第５実施形態における流通孔は、図４に示すように中央において分割された流通孔１６１の形状であってもよいし、あるいは、図５に示すようにプレート本体６１全体に複数の流通孔１７ａ～１７ｅが点在していてもよい。

　（第４実施形態における注入）
　図８は、第４実施形態に係る針アプリケータ４における針状突起６３による内容物の入り込みを示す透過説明図である。図３において、（ａ）は、針状突起６３によって対象物Ｏを穿刺した状態を示す図であり、（ｂ）は針状突起６３を介して対象物Ｏに液体が入り込んでいる状態を示す図である。なお、本実施形態の針アプリケータ４の使用者による持ち方や、押し当て方は第１実施形態と同様である。

　図８（ａ）の状態の前に、使用者は、針アプリケータ４の土台部１０の側壁１１を把持して、針アプリケータ４を軽く対象物（例えば肌）Ｏに載せて位置決めをする。

　そして、図８（ａ）に示すように、針アプリケータ４は、側壁１１が押圧されると、複数の針状突起６３が対象物Ｏに刺さる。

　その後、図８（ｂ）に示すように針アプリケータ４は、押圧部材４０が押圧されることで、注出孔６２から液体を広げて、針状突起６３が開けた孔から対象物Ｏの内部に、液体を送り込む（注入する）。

　詳しくは、押圧部材４０が吸収部材３０を面で押圧することで、吸収部材３０が収縮して液体が流れ、吸収部材３０に含有される液体が支持壁１５の中央の流通孔１６へ送り込まれる。そして、流通孔１６から下側に流れた液体は、支持壁１５の下面１５Ｌと、プレート本体６１の上面６１Ｕと、脚部１１２の液止め壁部１４とに囲まれた空間に広がって、複数の注出孔６２へ送り込まれる。

　そして、注出孔６２から排出された液体は、対象物Ｏの表面上に広がり、複数の針状突起６３によって開けられた孔を介して、針状突起６３の近傍を通って、対象物Ｏの内部に入り込む。より詳しくは、単に中実の針状突起６３を刺したままだと液体は入りにくいので、最初に針アプリケータ４を強い力で押圧した後、針アプリケータ４を押圧する力を弱めて少し引き抜いた状態にして、あるいは、押圧する力を弱めることで対象物からの反力で浮き上がらせて、針状突起６３と対象物Ｏに形成された孔との間に若干のすき間を形成することで液体は対象物内に侵入する。また、意図的に針アプリケータ４の位置を多少ずらして対象物に形成される孔径を大きくした状態にして、針状突起６３と対象物Ｏに形成された孔との間に若干のすき間を形成することで液体は対象物内に侵入する。

　図８（ｂ）の状態の後、使用者は、針アプリケータ４の土台部１０の側壁１１を掴んで対象物Ｏから離すことにより、針状突起６３を対象物Ｏから引き抜く。

　これにより、本実施形態では、小型の針アプリケータ４を、使用者が土台部１０の側壁１１を把持して位置をセットした状態を維持しながら、又は側壁１１を把持しながら、指で押さえて対象物Ｏに当接させることで、液体を、対象物Ｏの上に広げながら且つ、中実針である針状突起６３によって空いた穴から対象物Ｏの内側にも浸透させる。

　そのため、針アプリケータ４では、対象物の表面の外側と内側の両方から液体の有する有効成分を、安定した状態で浸透させることができる。例えば、小型で把持しやすい針アプリケータ４を、指で押さえて肌に当接させることで、液体の美容成分を、肌上及び肌内に与えることができる。

　＜針状突起の変形例＞
　上述では、針状突起６３は、外形が円錐形状である例を示したが、針状突起は、多角錐形状、あるいは他の針状形状（星型、十字型等）であってもよい。

　図９Ａ、図９Ｂ、図９Ｃは、針プレート６０に設けられる針状突起６３の変形例を示す図である。詳しくは、図９Ａは多角錐形状の針状突起６３Ａを示し、図９Ｂは土台（台部）と先端部の二段形状の針状突起６３Ｂを示し、図９Ｃは五芒星の錐状の針状突起６３Ｃを示している。

　図９Ａに示す多角錐形状の針状突起６３Ａや、図９Ｃに示すような、五芒星（五星形）の錐形状の針状突起６３Ｃは、辺の部分が角部となり鋭利なので、より対象物に穿刺しやすく、例えば、肥厚した皮膚に穿刺する際等に有利となる。なお、図９Ａでは多角錐の例として三角錐を示したが、四角錐や五角錐など他の形状でもよい。同様に、図９Ｃでは、星形多角形の錐形状の例として、五星形の錐形状の例を示したが、六星形や七星形など他の形状でもよい。

　図９Ｂに示すように、円錐形の先端部の下に土台部を設ける二段形状では、対象物に刺さらない針土台６３１を設けることで皮膚の変形による穿刺しにくさを解消することができる。なお、図９Ｂに示す二段形状の針状突起６３Ｂにおける、先端部や、針土台６３１の形状は一例であって、他の形状であってもよい。

　また、図９Ａに示すように１つの針プレート６０内において、円錐形状の針状突起６３と、多角錐形状の針状突起６３Ａとを混在させてもよい。さらに、図９Ｂ、図９Ｃに示すような針状突起６３Ｂ、６３Ｃも、他の形状の針状突起６３、６３Ａ、６３Ｂ、６３Ｃと混在させてもよい。

　また、針状突起６３の高さを不均一としてもよい。さらに、針状突起６３表面にスリットや微小な溝、凹凸などを設けてもよい。この場合、液体の使用量を減らしたり、部分的に使用量を多くすることが出来る、また穿刺で空いた対象物の孔からの液体の浸透が促進できる。

　＜第５実施形態＞
　図１０は、本発明の第５実施形態に係る針アプリケータ５の断面図である。本実施形態は針プレート６０Ｂにおいて、リップ部６４が設けられている点が、第４実施形態とは異なる。

　本実施形態では、針プレート６０Ｂは、上述のプレート本体６１および複数の針状突起６３に加えて、リップ部６４を備えている。

　リップ部６４は、プレート本体６１の下面である当接面６１Ｌの外縁部に、当接面６１Ｌに対して下向きに突出するように設けられている。本実施形態では、リップ部６４は液止めとして機能する。リップ部６４の高さは、例えば０．００５～３ｍｍ程度である。

　リップ部６４のプレート本体６１の当接面６１Ｌからの高さは、針状突起６３の高さよりも低く（短く）なるように構成されている。そのため、リップ部６４の高さは、針状突起６３の長さに合わせて適宜設定されると好適である。

　本実施形態では、押圧部材４０を押し込むことで吸収部材３０が収縮して液体が流れると、吸収部材３０に含有される液体が支持壁１５の中央の流通孔１６へ送り込まれる。そして、流通孔１６から下側に流れた液体は、支持壁１５の下面１５Ｌと、プレート本体６１の上面６１Ｕと、脚部１１２の液止め壁部１４とに囲まれた空間に広がって、複数の注出孔６２へ送り込まれる。

　そして、注出孔６２から排出された液体は、対象物とリップ部６４とプレート本体６１の当接面６１Ｌとの間に形成される空間内に液体が広がると共に、複数の針状突起６３によって開けられた孔を介して液体が対象物の内部へ入り込む。

　これにより、本実施形態に係る針アプリケータ５では、対象物に有効な効果のある液体を、リップ部６４の内側に対象物の上に広げながら且つ、中実針である針状突起６３によって空いた穴からも対象物の内側にも浸透させる。そのため、対象物表面の外側と内側の両方から液体の有する有効成分を、より安定した状態で浸透させることができる。

　この際、対象物と針プレート６０Ｂの当接面６１Ｌとの間隙は、リップ部６４で囲まれているため、限定された領域内で液体は領域全体にいきわたる。詳しくは、対象物とリップ部６４で囲まれた空間において、最初は下方に溜まる可能性はあっても、空間が液体で満たされるとやがては上方にも広がっていく。このように、リップ部６４によって液体が隙間から漏れないようにすることで、有効成分を、対象物の表面及び内部に留めることができる。

　これにより、例えば、対象物に対して横から穿刺したり、下から穿刺する場合であっても、小型で把持しやすい針アプリケータ５を、指で押さえて対象物に当接させることで、液体の有効成分を、対象物の表面上及び表面内に与えることができる。

　＜第６実施形態＞
　図１１は、本発明の第６実施形態に係る針アプリケータ６の断面図である。

　第４実施形態（図７）では、土台部１０と針プレート６０は別体で形成されていたが、土台部と針プレートの機能は一体化した部材であってよい。下記、本実施形態の構成について、上記第４実施形態との相違点のみ説明する。

　本実施形態における土台部７０は、側壁７１と、底壁である針プレート７２とを有し、上方が開口している針付き土台部である。側壁７１は、筒状の周壁である。

　針プレート７２は、側壁７１の最下端の内側面から連接して側壁７１と略直交の方向に広がって、土台部７０の下方を覆う下面である。

　針プレート７２には、対象物へ穿刺される下向きの複数の微細針である針状突起７４が下面である当接面７２Ｌから突出するように設けられている。また、針プレート７２には、厚さ方向に貫通する導通孔としての注出孔７３が、針状突起７４とは異なる位置に形成されている。

　本実施形態では、支持壁１５を有していないため、吸収部材３０を土台部１０へ嵌め込む際、吸収部材３０の下面３０Ｌが、針プレート７２の上面７２Ｕに当接するようにセットされると好適である。

　本実施形態では、押圧部材４０が押圧した際に吸収部材３０が収縮して流れる液体は、中央に集まることなく、近傍の針プレート７２の複数の注出孔７３へと送り込まれる。そして、注出孔７３から排出された液体は、対象物の表面上に広がり、複数の針状突起７４によって開けられた孔を介して液体が対象物の内部に入り込む。

　第４、第５実施形態では、吸収部材３０が収縮して流れる液体は、流通孔１６を経て、広がりながら注出孔６２に送り込まれたが、本実施形態では、流通孔を経ずに直接注出孔７３へ送り込まれるため、液体は一段階の流路に沿って流れる。

　そのため、液の移動距離が短くなるため、本実施形態の構成では、時間あたりの対象物への流入量を、第４、第５実施形態よりも多くすることができる。

　ここで、製造方法として、第４実施形態のように針プレート６０を土台部１０と別々に製造する方が、針プレート７２と側壁７１を同じ素材で一体形成するより例えば一般的な金型を用いた土台部の樹脂成形を簡素化できるが、針プレート６０の土台部１０への取り付け工程が発生する。一方、第６実施形態のように、針プレート７２を土台部７０と一体的に成形する場合は、金型を用いた成形は複雑であるため、例えば３Ｄプリンタ等を用いて３次元一体造形され、針プレートの土台への取り付けは発生しない。そのため、対象物への流入量と、製造工程の差異を考慮して、適宜実施形態を選択すると好適である。

　なお、図１１では、一体化した土台部７０において、針プレート７２には、第４実施形態同様にリップ部を設けない構成について示したが、本実施形態の一体型の針付き土台部において、第５実施形態のように土台部７０の下面である針プレート７２の当接面７２Ｌの外縁部に、リップ部を設けてもよい。

　＜応用例＞
　上記例では、吸収部材３０に１種類の内容物が含まれている例を説明したが、本発明の針アプリケータにおいて、２つ以上の内容物を含ませてもよい。

　図１２は、本発明の応用例に係る針アプリケータ７の説明図である。

　本応用例では、吸収部材３０Ｃに、予め液体又は粉体である第１の内容物Ｃ１が含浸されている。そして、針アプリケータ７とは別体の収容容器８から、液体である第２の内容物Ｃ２が使用直前に吸収部材３０Ｃへ注入される。

　本実施形態において、押圧部材４０を押圧して吸収部材３０Ｃが収縮すると、第１の内容物Ｃ１と第２の内容物Ｃ２とが混合した液体が流れて、複数の微細針である中空針２３の内部を通って、対象物の内部に液体状の混合物を送り込むことができる。

　このような針アプリケータ７と、第２の内容物を収容する収容容器８を合わせて、穿刺注入キットとしてもよい。

　＜穿刺注入キット＞
　図１３は、本発明の針アプリケータ７を含む穿刺注入キット１００の概略図である。

　穿刺注入キット１００における、針アプリケータ７は、土台部及び針プレートからなる針当接ユニットαと、吸収部材３０Ｃと、押圧部材４０とに分解可能である。針当接ユニットαと、吸収部材３０Ｃと、押圧部材４０とは、分解した状態でセットとして販売されてもよく、あるいは、針アプリケータ７として組み立て状態で販売後、使用者の手によって使用直前に分解されてもよい。

　針当接ユニットαは、土台部１０と、針プレート２０とを備える。針当接ユニットαに搭載される針プレートは、中空針２３を有する針プレート２０、又は中実針である針状突起６３を有する針プレート６０（６０Ｂ）のどちらであってもよい。針当接ユニットαでは、針プレート２０（又は６０、６０Ｂ）は、土台部１０（又は１０Ａ）に予め取り付けられている。

　あるいは、針当接ユニットαは、図６に示す針付き土台部５０又は図１１に示す針付き土台部７０であってもよい。

　吸収部材３０Ｃは、粉体又は液体の第１の内容物Ｃ１が含浸されている。例えば、分解した状態でセットとして販売されている場合、吸収部材３０Ｃは、使用直前に針当接ユニットαの、土台部１０の側壁１１の内側に、内嵌される。この場合、吸収部材３０Ｃが独立した状態であることで、第１の内容物Ｃ１が酸化しやすい等不安定な物質であっても、使用直前まで不安定な物質を密閉しておくことができる。

　第１の内容物Ｃ１とは異なる、液体状の第２の内容物Ｃ２を収容する収容容器８は、針当接ユニットαの側壁１１の内側に、吸収部材３０Ｃを嵌め込んだ状態で、第２の内容物Ｃ２を上方から注入する。

　押圧部材４０は、使用直前に、第２の内容物Ｃ２を注入後、吸収部材３０Ｃの上側に載せられて状態で、一部が針当接ユニットαの土台部１０の側壁１１の内側に内嵌される。

　この状態で、押圧部材４０を押圧することで、吸収部材３０Ｃから流れ出た第１の内容物Ｃ１と第２の内容物Ｃ２とを混合して、流通孔１６に送り、さらに複数の個別流路２２を介して、複数の中空針２３の内部、あるいは針状突起６３の近傍を通って、少なくとも対象物の内部に液体状の混合物を送り込む。

　なお、図１２、図１３では、第１実施形態の針アプリケータ１と同じ形状の分解可能な針アプリケータ７を、収容容器８と共に使用する穿刺注入キット１００内の針アプリケータの例としたが、収容容器とともに使用される針アプリケータは、第１実施形態～第６実施形態及び変形例で説明したいずれの針アプリケータ２（３、４、５、６）であってもよい。

　ただし、第１の内容物と第２の内容物をより均一に混合させたい場合は、吸収部材３０Ｃから出た第１の内容物Ｃ１と、第２の内容物Ｃ２とを対象物に到達するまでの流路移動中にも長い時間接触させるように、流路が長く、二段階の流路を有する、針アプリケータ１、４、５の構成（図２、図７、図８参照）であるとより好適である。

　（キット使用手順）
　次に、図１４、図１５を用いて、穿刺注入キット１００の使用時の手順について説明する。図１４は、本発明の穿刺注入キット１００の使用手順を示すフローチャートである。図１５は、本発明の穿刺注入キットの使用手順の説明図である。

　まず、図１４のステップＳ１で、第１の内容物Ｃ１が含有された吸収部材３０Ｃを、針当接ユニットαにセットする。詳しくは、吸収部材３０Ｃを、針プレート２０が下端に取り付けられた土台部１０の側壁１１の内側に嵌め込む（図１５（ａ））。

　そして、ステップＳ２で、収容容器８から吸収部材３０Ｃへ、第２の内容物である液体Ｃ２を注入する（図１５（ｂ））。

　その後、ステップＳ３で、押圧部材４０の一部を、吸収部材３０がセットされた針当接ユニットαに嵌め込む。これにより針アプリケータ７が完成する（図１５（ｃ））。

　そして、ステップＳ４で、針アプリケータ７を軽く対象物（例えば肌）Ｏに載せて位置決めをする。

　続いて、ステップＳ５で、土台部１０の、側壁１１を押圧することによって、複数の中空針２３が対象物Ｏに刺さる（図１５（ｄ））。

　ステップＳ６で、押圧部材４０を上から押圧することで、吸収部材３０Ｃから押し出された第１の内容物Ｃ１と第２の内容物Ｃ２が流通孔１６及び複数の個別流路２２に流れ込み、中空針２３の内部を通って、第１の内容物と第２の内容物とが混合された液体が、対象物Ｏの内部に送り込まれる（注入される）（図１５（ｅ））。

　なお、微細針が針状突起６３の場合は、吸収部材３０Ｃから押し出された第１の内容物Ｃ１と第２の内容物Ｃ２が流通孔１６に流れ込んだ後、第１の内容物と第２の内容物とが混合された液体が複数の注出孔６２から対象物の表面上に排出され、複数の針状突起６３の近傍を通って、液体状の混合物が、対象物の表面の外側及び内部に送り込まれる。

　そして、ステップＳ７で、土台部１０の側壁１１を掴んで対象物Ｏから離すことにより、中空針２３を対象物から引き抜く（図１５（ｆ））。

　このように、使用の直前に組み立てられ、内容物が追加で注入されてから対象物に２種類の内容物を含む液体を付与する穿刺注入キット１００は、単回使い切りである。

　本応用例では、吸収部材３０Ｃに含有される第１の内容物は、液体に溶解可能な粉体や粒体であってもよい。例えば、吸収部材３０Ｃに溶液状態では安定性の悪い薬剤等を第１の内容物として含浸し乾燥させておくことで、安定性を保ちながら、使用時に、第２の液体（液剤）によって溶解させ、新鮮な状態で対象物（例えば肌）に適用させることができる。

　あるいは、吸収部材３０Ｃに含有される第１の内容物が液体である場合、第１の内容物と第２の内容物との混合状態が不安定であるが、一緒に適用すると有効となる薬剤等でありうる。

　（内容物）
　上述の本発明の実施形態では、針アプリケータや穿刺注入キットで用いられる内容物（液体物質）は美容物質を例に説明したが、内容物は、他に、細胞懸濁液、ゲル状材料、治療的物質、及び診断的物質で構成される群から選択されてもよい。

　美容的物質として、化粧品組成物に含みうる一般的な美容物質と、美容医療で用いられる美容物質とを含む。一般的な美容物質とは、例えば美白用途としてアスコルビン酸やその誘導体、トラネキサム酸、アルブチン、４－ＭＳＫ（４－メトキシサリチル酸カリウム塩）などであり、抗シワ用途としてレチノールやナイアシンアミド、ヒアルロン酸やその誘導体など、を含み得るが、これらに限定されない。

　注入される美容的物質として、化粧品組成物に含みうる一般的な美容物質に加え、フィラー（ｆｉｌｌｅｒ）のような脂肪細胞、ヒアルロン酸、又は皺治療におけるボツリヌス毒素（Ｂｏｔｏｘ、Ｂｔｘ）等を含み得るが、これらに限定されない。

　治療的物質は、抗生物質、麻酔薬、鎮痛薬、ワクチン、抗体を含み得るが、これらに限定されない。

　さらに、懸濁液内の細胞又は液体媒体内の細胞を被験者に注入するために、本発明の針アプリケータを用いてもよい。

　さらに、針アプリケータ内に収容される内容物として、細胞懸濁液が発育因子と混合されてもよい。または、細胞懸濁液がゲル状構造を含んでいてもよい。そのようなゲル状構造は、別個の組織の細胞外環境を真似る細胞外基質タンパク質の混合を表すのが好ましく、更に好ましくは、ヒアルロン酸のようなゲル状構造である。

　以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。

　本国際出願は２０２１年２月５日に出願された日本国特許出願第２０２１－０１７６６８号に基づく優先権を主張するものであり、２０２１－０１７６６８号の全内容を本国際出願に援用する。

１，２，３，４，５，６，７　針アプリケータ
８　収容容器
１０，１０Ａ　土台部
１１　側壁
１５　支持壁
１６，１６１，１７ａ～１７ｅ　流通孔
２０　針プレート
２１　プレート本体
２２　個別流路
２３　中空針（微細針）
３０，３０Ｃ　吸収部材
４０　押圧部材
４１　押圧本体
４２　弾性部
５０　土台部（針付き土台部）
５１　側壁
５２　針プレート（底壁）
５３　個別流路
５４　中空針（微細針）
６０，６０Ｂ　針プレート
６１　プレート本体
６２　注出孔
６３　針状突起（中実針、微細針）
６４　リップ部
７０　土台部（針付き土台部）
７１　側壁
７２　針プレート（底壁）
７３　注出孔
７４　針状突起（中実針、微細針）
１００　穿刺注入キット
Ｃ１　粉体又は液体の第１の内容物
Ｃ２　液体の第２の内容物
Ｏ　対象物
α　針当接ユニット

Claims (13)

1. 　複数の微細針の内部あるいは近傍を通って、対象物の内部又は表面に液体を送り込む針アプリケータであって、
   　側壁、および該側壁の下端近傍の内側面から連接され、流通孔が形成された支持壁を有し、上方が開口している土台部と、
   　対象物へ穿刺される下向きの複数の微細針が設けられ、厚さ方向に貫通する導通孔が形成され、前記支持壁の下端に取り付けられる針プレートと、
   　液体が含浸され、前記支持壁の上側に内嵌可能な吸収部材と、
   　前記吸収部材を押圧する押圧部材と、を備える
   　針アプリケータ。
2. 　複数の微細針の内部あるいは近傍を通って、対象物の内部又は表面に液体を送り込む針アプリケータであって、
   　対象物へ穿刺される下向きの複数の微細針が設けられ、厚さ方向に貫通する導通孔が形成された、針プレートである底壁と、側壁とを有し、上方が開口している、土台部と、
   　液体が含浸され、前記針プレート上側に内嵌可能な吸収部材と、
   　前記吸収部材を面で押圧する押圧部材と、を備える
   　針アプリケータ。
3. 　前記針プレートは、
   　厚さ方向に貫通する前記導通孔としての複数の個別流路が形成された、プレートと、
   　前記プレートの下面から突出し、上端が前記複数の個別流路の下端と連通する、前記複数の微細針としての複数の中空針と、を有しており、
   　前記押圧部材を押し込むことで前記吸収部材が収縮して液体が流れると、前記複数の個別流路を通って、前記複数の中空針それぞれに向けて流れ、前記複数の中空針それぞれを介して前記液体が対象物の内部に入り込む
   　請求項１又は２のいずれか一項に記載の針アプリケータ。
4. 　前記針プレートは、
   　厚さ方向に貫通する前記導通孔としての注出孔が形成された、プレートと、
   　前記プレートの下面の、前記注出孔とは異なる位置から突出する、前記複数の微細針としての複数の針状突起と、を有しており、
   　前記押圧部材を押し込むことで前記吸収部材が収縮して液体が流れると、前記プレートの前記注出孔から排出されて前記対象物の表面上に前記液体が広がると共に、前記複数の針状突起によって開けられた孔を介して前記液体が前記対象物の内部に入り込む
   　請求項１又は２のいずれか一項に記載の針アプリケータ。
5. 　前記針プレートは、
   　前記プレートの前記下面の外縁部に形成されたリップ部、をさらに有しており、
   　前記押圧部材を前記土台部に対して押し込むことで前記吸収部材が収縮して液体が流れると、前記プレートの前記注出孔から排出されて、前記対象物の表面上であって前記対象物と前記リップ部と前記プレートの前記下面との間に形成される空間内に前記液体が広がると共に、前記複数の針状突起によって開けられた孔を介して前記液体が前記対象物の内部に入り込む
   　請求項４に記載の針アプリケータ。
6. 　前記複数の微細針の各微細針の長さは、０．００５～５ｍｍである
   　請求項１乃至５のいずれか一項に記載の針アプリケータ。
7. 　前記土台部の側壁の高さは、６～３０ｍｍであり、
   　前記側壁の厚みは、１～１０ｍｍである
   　請求項１乃至６のいずれか一項に記載の針アプリケータ。
8. 　前記押圧部材の径は、１０～３０ｍｍであり、
   　前記押圧部材の高さは、３０ｍｍ以下である
   　請求項１乃至７のいずれか一項に記載の針アプリケータ。
9. 　当該針アプリケータは、単回使い切りである
   　請求項１乃至８のいずれか一項に針アプリケータ。 
10. 　前記押圧部材の下端には、前記吸収部材を密閉する弾性部が設けられている
    　請求項１乃至９のいずれか一項に記載の針アプリケータ。
11. 　使用の直前に、前記吸収部材は前記土台部の前記側壁の内側に嵌め込まれて、その後、前記押圧部材の一部が、前記吸収部材の上から前記土台部の側壁の内側に嵌め込まれる
    　請求項１乃至１０のいずれか一項に記載の針アプリケータ。
12. 　前記吸収部材には、粉体又は液体である第１の内容物が予め含浸されており、
    　前記押圧部材の一部が、前記吸収部材の上から前記土台部の側壁の内側に嵌め込まれる前に、液体の第２の内容物が注入れ、
    　前記針アプリケータの側壁の内側に、前記吸収部材を嵌め込み、前記第２の内容物を上方から注入し、前記押圧部材の一部を嵌め込んだ状態で、前記押圧部材を押圧することで、前記第１の内容物と前記第２の内容物とを混合して、前記導通孔に送り、複数の微細針の内部あるいは近傍を通って、少なくとも肌内に液体状の混合物を送り込む
    　請求項１１に記載の針アプリケータ。
13. 　請求項１２に記載の針アプリケータと、
    　前記液体の第２の内容物を収容する収容容器と、を備える
    　穿刺注入キット。

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