WO2021161884A1

WO2021161884A1 - 血管吻合部の保護カバー

Info

Publication number: WO2021161884A1
Application number: PCT/JP2021/004062
Authority: WO
Inventors: 明郎萩原
Original assignee: 明郎萩原; 株式会社カネカ
Priority date: 2020-02-14
Filing date: 2021-02-04
Publication date: 2021-08-19
Also published as: CN115052644A; US20220378998A1; JPWO2021161884A1

Abstract

第１の血管が第２の血管に接合した吻合部の保護カバー（１）であって、保護カバー（１）は、第１の血管の外側を覆う筒状部（２）と第２の血管の外側を覆う面状部（４）を有し、筒状部（２）から面状部（４）にかけて連続した糸から形成された編地を含んで構成されている。

Description

血管吻合部の保護カバー

　本発明は、血管吻合部の保護カバーに関し、例えば動静脈シャントに設置することができる保護カバーに関するものである。

　透析患者では、患者の体内から血液を取り出し、透析器で老廃物や余分な水分、ミネラルなどを取り除いた後、再び患者の体内に戻す透析治療が定期的に行われる。血液透析を行う際には、血液を血管内から取り出して再び血管内に戻すための出入り口となるバスキュラーアクセスを形成する必要があり、そのために、動脈と静脈を繋いで大量の血液が通るようにした動静脈シャントを患者の前腕等に作製する場合がある。このような動静脈シャントでは、例えば静脈の端部を動脈の側部に接合させた端側吻合部が形成される。

　動静脈シャントでは、吻合部に無理な力がかかったり、吻合部を通過する血液の流れが乱れたり、また静脈側の血圧や血流の血液循環状況が急激に変化したりすることによって、吻合部やその下流側の静脈において、血管壁への過大な圧変化が生じ、その結果、血管壁内に無理な応力が発生し、病的な内膜肥厚へと繋がり、閉塞や狭窄等が引き起こされる場合がある。この対応策として、血管吻合部に保護カバーを設置することが提案されている。例えば特許文献１には、吻合によって接続された第１の血管と第２の血管を構成するための装置であって、連結器とスリーブを有し、前記連結器は、第１の血管上に設置して取り付けられサドル形状を有するマウントと、マウントから延び実質的に円筒形状を有するアダプタと、マウントの側面から延び、連結器が第１の血管から持ち上がるのを防ぐために閉じることができるブレースとを有し、前記スリーブは、アダプタに接続され、第１の血管と第２の血管が鋭角で接合されるように第２の血管の一部を包囲し保持するように構成された装置が開示されている。特許文献２には、動脈と該動脈に吻合された静脈との間の接合部を成形する外部血管支持体であって、当該支持体は、動脈に連結する動脈部分と、静脈に連結された静脈部分とを備え、動脈部分および静脈部分が接合部で鋭角に連結されており、且つ当該鋭角は丸みを有しており、前記血管支持体が静脈と動脈との間にフィレットされた接合部を形成するとともに、動脈に対して静脈を鋭角に維持するように成形された外部血管支持体が開示されている。

米国特許第１０，２９９，７９４号明細書特開２０１８－１２６５５６号公報

　上記のように、従来様々な血管吻合部の保護カバーが提案されているが、血管吻合部では、保護カバーによって血管の動きが過度に拘束されないようにしつつ、吻合部が安定して保持されることが望まれる。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吻合部での血管の動きを過度に拘束しないようにしつつ、吻合部を安定して保持することができる保護カバーを提供することにある。

　前記課題を解決することができた本発明の保護カバーとは、第１の血管が第２の血管に接合した吻合部の保護カバーであって、保護カバーは、第１の血管の外側を覆う筒状部と第２の血管の外側を覆う面状部を有し、筒状部から面状部にかけて連続した糸から形成された編地を含んで構成されているところに特徴を有する。

　編地は伸縮性や柔軟性に優れるため、保護カバーを編地から形成することにより、保護カバーによって第１の血管と第２の血管を過度に拘束せずに、吻合部を安定して保持することができる。そのため、保護カバーによって、第１の血管が第２の血管を起点として所望の方向に延在するように適度に保持して、吻合部での血液の圧と拍動を所望するように制御することができる。また、保護カバーによって血管やその周囲の組織が損傷することが抑えられる。保護カバーはまた、筒状部から面状部にかけて連続した編地を含んで構成されるため、保護カバーを吻合部に取り付けた際に、吻合部に局所的に無理な力がかかることが抑えられる。吻合部が動静脈シャントである場合は、編地から構成された筒状部によって第１の血管となる静脈を適度に圧迫することで、吻合部から静脈側への動脈血の圧と拍動を徐々に抑えることができ、吻合部形成初期における静脈の過大な血流変化を緩和することができる。

　筒状部は、周方向よりも軸方向の方が伸長応力が大きいことが好ましい。このように筒状部が形成されていれば、保護カバーによって第１の血管の柔軟性が阻害されにくくなる。

　筒状部と面状部は縫合部を有しないことが好ましい。このように保護カバーが構成されることにより、筒状部と面状部の伸縮性と柔軟性を適度に保持することができる。

　面状部は略矩形または長円形に形成されていることが好ましい。また、面状部は短手方向を有し、短手方向が第２の血管の延在方向に対して略平行に延びていることが好ましい。

　筒状部は、面状部と接続する側とは反対側の端部を含む部分が、面状部から離れるにつれて口径が広がって形成されていることが好ましい。筒状部は、面状部と接続する側とは反対側の端部を含む部分が、面状部から離れるにつれて筒状部の軸方向に対する角度が大きくなるように口径が広がって形成されていてもよい。また、筒状部は、筒状部の軸方向に対して角度Ａで面状部から離れるにつれて口径が広がる第１拡径部と、第１拡径部よりも面状部から離れた位置に、角度Ａよりも大きい角度Ｂで面状部から離れるにつれて口径が広がる第２拡径部を有し、面状部と接続する側とは反対側の端部が最も口径が大きく形成されていてもよい。

　筒状部の面状部と接続する側とは反対側の端部には、非筒状の延出部が設けられていてもよい。この場合、延出部は、筒状部から延出部にかけて連続した糸から形成された編地を含んで構成されていることが好ましい。

　面状部は、互いに対向して設けられた第１端縁と第２端縁を有し、第１端縁が２つ以上に分離するとともに、第２端縁が２つ以上に分離していてもよい。

　面状部は編地が切断されることにより形成された切断端縁を有し、切断端縁に沿って補強部が設けられていてもよい。面状部は、互いに対向して設けられた第１端縁と第２端縁を有し、面状部には、第１端縁と第２端縁に沿ってそれぞれ補強部が設けられるとともに、第１端縁に沿った補強部と第２端縁に沿った補強部の間に別の補強部が設けられていてもよい。

　面状部は、編地が切断されることにより形成された切断端縁を、筒状部との接続部から筒状部の放射方向に延びるように４つ以上有するものであってもよい。

　本発明の保護カバーによれば、第１の血管と第２の血管を過度に拘束せずに、吻合部を安定して保持することができる。そのため、保護カバーによって、第１の血管が第２の血管を起点として所望の方向に延在するように適度に保持して、吻合部での血液の圧と拍動を所望するように制御することができる。また、保護カバーによって血管やその周囲の組織が損傷することが抑えられる。保護カバーはまた、筒状部から面状部にかけて連続した編地を含んで構成されるため、保護カバーを吻合部に取り付けた際に、吻合部に局所的に無理な力がかかることが抑えられる。吻合部が動静脈シャントである場合は、編地から構成された筒状部によって第１の血管となる静脈を適度に圧迫することで、吻合部から静脈側への動脈血の圧と拍動を徐々に抑えることができ、吻合部形成初期における静脈の過大な血流変化を緩和することができる。

本発明の保護カバーの一実施態様を表し、保護カバーの斜視図を表す。図１に示した保護カバーを血管吻合部に取り付けた状態の斜視図を表す。本発明の保護カバーの他の一実施態様を表し、保護カバーの斜視図を表す。本発明の保護カバーの他の一実施態様を表し、保護カバーの斜視図を表す。本発明の保護カバーの他の一実施態様を表し、保護カバーの斜視図を表す。本発明の保護カバーの他の一実施態様を表し、保護カバーの斜視図を表す。本発明の保護カバーの他の一実施態様を表し、保護カバーの斜視図を表す。本発明の保護カバーの他の一実施態様を表し、保護カバーの斜視図を表す。本発明の保護カバーの他の一実施態様を表し、保護カバーの斜視図を表す。

　以下、下記実施の形態に基づき本発明の保護カバーを具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。

　図１および図２には、本発明の保護カバーの一実施態様を示した。図１は、保護カバーを血管吻合部に取り付ける前の保護カバーの斜視図を表し、図２は、保護カバーを血管吻合部に取り付けた状態の保護カバーの斜視図を表す。なお、図２おいて、第１の血管と第２の血管は一点鎖線で示されている。

　保護カバー１は、第１の血管１１が第２の血管１２に接合した吻合部に取り付けられるものであり、第１の血管１１の外側を覆う筒状部２と第２の血管１２の外側を覆う面状部４を有する。第１の血管１１と第２の血管１２は、動脈であってもよく静脈であってもよく、人工血管であってもよい。吻合部としては、第１の血管の端部が第２の血管の側部に接合した端側吻合部や、第１の血管の側部と第２の血管の側部どうしが接合した側側吻合部等が挙げられ、図面では、第１の血管１１の端部が第２の血管１２の側部に接合した端側吻合部への適用例が示されている。例えば、透析患者において、血液を血管内から取り出して透析し再び血管内に戻すための出入り口となるバスキュラーアクセスとして形成される動静脈シャントでは、静脈の端部を動脈の側部に接合させた端側吻合部が形成される。

　筒状部２は第１の血管１１を覆う部分であり、軸方向と周方向を有する。筒状部２の軸方向は、保護カバー１を吻合部に取り付けた際の第１の血管１１の延在方向に相当する。筒状部２の軸方向の長さと周方向の長さは、第１の血管１１の大きさに合わせて適宜設定され、例えば、軸方向の長さは３ｍｍ～１５０ｍｍの範囲、周方向の長さは４ｍｍ～６０ｍｍの範囲で設定することができる。吻合部を形成する際は、第１の血管１１を第２の血管１２に接合する前に、第１の血管１１が筒状部２に挿入される。

　面状部４は第２の血管１２を覆う部分であり、面状に形成されている。吻合部を形成する際、第１の血管１１を第２の血管１２に縫合等により接合した後に、面状部４を第２の血管１２に巻き付けることにより、面状部４によって第２の血管１２を覆うことができる。第２の血管１２の周囲に巻き付けた面状部４の一方側の部分と他方側の部分を縫合等により互いに接合することにより、面状部４を第２の血管１２の周囲に位置固定することができる。面状部４の大きさは、第２の血管１２の大きさに合わせて適宜設定され、例えば、第２の血管１２の延在方向に沿った長さは３ｍｍ～５０ｍｍの範囲、第２の血管１２の周方向に沿った長さは５ｍｍ～７０ｍｍの範囲で設定することができる。

　保護カバー１は、筒状部２から面状部４にかけて連続した糸から形成された編地を含んで構成されている。すなわち、保護カバー１は、筒状部２から面状部４にかけて連続した編地を含んで構成される。編地は伸縮性や柔軟性に優れるため、保護カバー１を編地から形成することにより、保護カバー１によって第１の血管１１と第２の血管１２を過度に拘束せずに、吻合部を安定して保持することができる。そのため、保護カバー１によって、第１の血管１１が第２の血管１２を起点として所望の方向に延在するように適度に保持して、吻合部での血液の圧と拍動を所望するように制御することができる。また、保護カバー１によって血管やその周囲の組織が損傷することが抑えられる。保護カバー１はまた、筒状部２から面状部４にかけて連続した編地を含んで構成されるため、保護カバー１を吻合部に取り付けた際に、吻合部に局所的に無理な力がかかることが抑えられる。吻合部が動静脈シャントである場合は、編地から構成された筒状部２によって第１の血管１１となる静脈を適度に圧迫することで、吻合部から静脈側への動脈血の圧と拍動を徐々に抑えることができ、吻合部形成初期における静脈の過大な血流変化を緩和することができる。

　保護カバー１は、筒状部２と面状部４との間に縫合部が存在せず、筒状部２と面状部４にも縫合部が存在しないことが好ましい。例えば筒状部２には軸方向に延びる縫合部が存在しないことが好ましく、編地を構成する糸が筒状部２の周方向に連続的に延びている、すなわち編地を構成する糸が編み目を形成しながら螺旋状に延びていることが好ましい。特に、保護カバー１は全体が１つの編地から構成されていることが好ましく、すなわち保護カバー１の全体が連続した糸から形成された編地から構成されていることが好ましい。このように保護カバー１が構成されることにより、保護カバー１の全体の伸縮性と柔軟性を適度に保持することができる。

　編地の種類は特に限定されず、経編みであっても緯編みであってもよい。経編みの編組織としては、ハーフ編み、バックハーフ編み、クインズコート編み、サテン編み等が挙げられる。緯編みには丸編みや横編みが含まれ、緯編みの編組織としては、平編み、ゴム編み、両面編み、ミラノリブ編み、ジャガード編み等が挙げられる。伸縮性に優れる点からは、編地は緯編みから構成されることが好ましい。

　編地が緯編みから構成される場合、編地は丸編み機や横編み機を用いて形成することができる。横編み機としては、ホールガーメント（登録商標）編み機を用いることが好ましい。このような編み機を用いれば、筒状部２や面状部４を縫合部なしに形成したり、筒状部２から面状部４にかけて縫合部なしに連続的に形成することが容易になる。

　編地を形成する糸は生体適合性を有する樹脂材料から構成されていることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ＰＥＥＫ等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ＰＴＦＥ、ＰＦＡ、ＥＴＦＥ等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂が挙げられる。編地を形成する糸は人工血管に使用されている樹脂材料（例えば、ポリエステル、ＰＴＦＥ、ポリウレタン）から構成することもできる。編地を形成する糸は生分解性を有するものであってもよい。

　面状部４の形状は特に限定されないが、面状部４は、互いに対向して設けられた第１端縁５と第２端縁６を有することが好ましい。このように面状部４が形成されていれば、第１端縁５と第２端縁６が第２の血管１２の延在方向に対して略平行に延びるように面状部４を第２の血管１２に巻き付けることにより、面状部４の第１端縁５側の部分と第２端縁６側の部分とを縫合等により接合しやすくなる。この場合、第１端縁５と第２端縁６は互いに略平行に延びる直線部を有することが好ましい。

　面状部４は略矩形または長円形に形成されていることが好ましい。略矩形には角が丸まった矩形も含まれる。長円形には、楕円形、トラックフィールドのような２つの半円形が直線によって繋がった形状、卵形等が含まれる。面状部４がこのような形状で形成されていれば、面状部４を第２の血管１２に巻き付ける操作を行いやすくなり、また面状部４の第１端縁５側の部分と第２端縁６側の部分とを縫合等により接合する際に、接合長さを長くとることが容易になる。

　面状部４は短手方向を有し、短手方向が第２の血管１２の延在方向に対して略平行に延びていることが好ましい。面状部４の短手方向とは、面状部４の最も長さが短くなる方向を意味する。このように面状部４が形成されていれば、面状部４を第２の血管１２に巻き付けた際に、第２の血管１２が面状部４によって覆われる面積が少なくなり、保護カバー１によって第２の血管１２の動きが拘束されにくくなる。また、術野を小さくできるため、低侵襲になる。面状部４の短手方向は、第１端縁５側から第２端縁６側に向かう方向に対して垂直方向となることが好ましい。また、面状部４が略長方形または長円形に形成され、略長方形の短辺の延在方向または長円形の短軸方向が短手方向となることが好ましい。

　面状部４は１つの編地から構成されることが好ましい。面状部４は編み方を調整することにより所望の形状に形成してもよく、編地を形成した後に当該編地の一部を切除することにより面状部４を所望の形状に形成してもよい。なお、面状部４は前者の態様で形成されることが好ましく、すなわち面状部４は編地の一部が切断された切断端縁を有しないことが好ましい。

　面状部４は、周縁に沿った部分の一部または全部に補強部が設けられてもよい。これにより、面状部４を構成する編地の糸がほつれにくくなり、保護カバー１の取り扱い性が向上する。補強部は、当該部分の編地の編み密度を高く形成したり、編地に樹脂（例えば、接着剤）を塗布したり、編地に樹脂フィルムを貼着したり、編地をヒートシールや超音波溶着等により溶着することにより形成することができる。なかでも補強部は、編地の編み密度を高くした高密度部により形成されることが好ましく、これにより補強部の柔軟性を確保しやすくなる。この場合、面状部４は、編み密度が高く形成された高密度部と、それよりも編み密度が低く形成された低密度部を有することとなる。

　面状部４が、編地が切断されることにより形成された切断端縁を有する場合は、切断端縁に沿って補強部が設けられていることも好ましい。これにより、面状部４を構成する編地の糸が切断端縁を起点としてほつれることが起こりにくくなる。

　補強部は、少なくとも第１端縁５に沿った部分と第２端縁６に沿った部分に設けられることが好ましい。これにより、面状部４の第１端縁５側の部分と第２端縁６側の部分とを縫合した際、両者をしっかりと接合することが容易になる。面状部４には、第１端縁５と第２端縁６に沿ってそれぞれ補強部が設けられるとともに、第１端縁５に沿った補強部と第２端縁６に沿った補強部の間に別の補強部が設けられてもよい。これにより、第２の血管１２が細い場合でも、面状部４の第１端縁５側の部分または第２端縁６側の部分と別の補強部とを縫合することにより、両者をしっかりと接合することが容易になる。

　図３には、本発明の保護カバーの他の一実施態様を示した。図３に示した保護カバー１では、面状部４の第１端縁５が２つに分離しているとともに、第２端縁６が２つに分離している。すなわち面状部４は、第１端縁５を基点に２つに分離するとともに、第２端縁６を基点に２つに分離している。なお、第１端縁５は３つ以上に分離していてもよく、第２端縁６も３つ以上に分離していてもよい。このように面状部４が形成されることにより、面状部４によって第２の血管１２の動きがさらに拘束されにくくなる。また、分離した複数の第１端縁５と分離した複数の第２端縁６が、それぞれ別々に縫合等で互いに接合されることで複数の接合個所ができるため、面状部４が第２の血管１２に対してずれにくくなり、面状部４を第２の血管１２に対してより安定して取り付けることができる。

　図３に示した保護カバー１は、面状部４に切り込みを入れることにより、第１端縁５を２つ以上に分離し、第２端縁６を２つ以上に分離してもよく、編み方を調整することにより、面状部４を、第１端縁５が２つ以上に分離し、第２端縁６が２つ以上に分離した形状としてもよい。なお、面状部４を構成する編地の糸のほつれを防いだり、面状部４の柔軟性を確保する観点からは、面状部４は編み方を調整することにより所望の形状に形成することが好ましい。

　保護カバー１を簡便に製作する観点からは、編地を筒状に形成し、当該筒状に形成した編地に対して一方側の端縁から２つ以上の切り込みを入れることにより、筒状部２と面状部４を形成することもできる。この場合、面状部４は２つ以上に分離して形成され、面状部４は、筒状部２との接続部から筒状部２の放射方向に延びる切断端縁を４つ以上有するものとなる。すなわち、１つの切り込みに対して、編地が切断されることにより形成された切断端縁が２つ形成されることとなる。図４には、そのように形成した保護カバーの例を示した。図４に示した保護カバー１は、筒状に形成した編地に対して一方側の端縁から４つの切り込みを入れることにより、筒状部２と面状部４が形成されており、面状部４は、筒状部２との接続部から筒状部２の放射方向に延びる切断端縁７を８つ有するものとなっている。なお、ここで説明した放射方向とは、面状部４と筒状部２との接続部を起点として、筒状部２から離れるように延びる方向であればよい。この場合の切断端縁７の数は、６以上が好ましく、８以上がより好ましく、また１６以下が好ましく、１２以下がより好ましい。

　筒状部２は、軸方向に沿って口径が同一に形成されていてもよく、軸方向に沿って口径が変化するように形成されていてもよい。図１～図４に示した保護カバー１では、筒状部２の口径が軸方向に沿って同一に形成されている。一方、筒状部２は、図５～図８に示すように、面状部４と接続する側とは反対側の端部３が最も口径が大きく形成されていてもよい。この場合、筒状部２は、面状部４から離れるにつれて口径が広がる拡径部を有することとなる。このように筒状部２が形成されていれば、第１の血管１１を筒状部２に挿入する操作を行いやすくなる。吻合部が動静脈シャントである場合は、第１の血管１１である静脈の変化をスムーズにサポートできるようになる。

　筒状部２は、図５～図８に示すように、面状部４と接続する側とは反対側の端部３を含む部分が、面状部４から離れるにつれて口径が広がって形成されていることが好ましい。このように筒状部２が形成されていれば、第１の血管１１を筒状部２に挿入しやすくなるとともに、保護カバー１を血管吻合部に取り付けた後、筒状部２の口径が広がった端部を第１の血管１１の近傍の他の組織に縫合等により固定する操作を行いやすくなる。これにより、保護カバー１を血管吻合部に取り付けた後、筒状部２が第１の血管１１からずれずに位置固定されやすくなる。

　筒状部２の口径が広がって形成された部分は、筒状部２の軸方向に対して筒状部２の一部であってもよく全部であってもよい。図５および図７では、筒状部２は、面状部４と接続する側とは反対側の端部３のみが、面状部４から離れるにつれて口径が広がって形成されている。一方、図６および図８では、筒状部２の全体が、面状部４から離れるにつれて口径が広がって形成されている。いずれの場合も、面状部４と接続する側とは反対側の端部３が最も口径が大きく形成されていることが好ましい。筒状部２の最も口径が大きい箇所では、周方向の長さが例えば１５ｍｍ～６０ｍｍの範囲となることが好ましい。一方、筒状部２の最も口径が小さい箇所では、周方向の長さが例えば４ｍｍ～２６ｍｍの範囲となることが好ましい。

　筒状部２は、面状部４と接続する側とは反対側の端部３を含む部分が、面状部４から離れるにつれて、筒状部２の軸方向に対する角度が大きくなるように口径が広がって形成されていてもよい。このように筒状部２が形成されていても、第１の血管１１を筒状部２に挿入する操作を行いやすくなるとともに、保護カバー１を血管吻合部に取り付けた後、筒状部２の口径が広がった端部を第１の血管１１の近傍の他の組織に縫合等により固定する操作を行いやすくなる。

　図７および図８には、このように構成された保護カバーの例を示した。図７に示した保護カバー１では、筒状部２の面状部４と接続する側とは反対側の端部３を含む部分が、筒状部２の軸方向に沿った断面で見て、面状部４から離れるにつれて曲線状に広がるように形成されている。図８に示した保護カバー１では、筒状部２の面状部４と接続する側とは反対側の端部３を含む部分が、軸方向に沿った断面で見て、面状部４から離れるにつれて直線状に多段階で広がるように形成されている。具体的には、図８に示した保護カバー１は、筒状部２が、筒状部２の軸方向に対して角度Ａで面状部４から離れるにつれて口径が広がる第１拡径部と、第１拡径部よりも面状部から離れた位置に、角度Ａよりも大きい角度Ｂで面状部４から離れるにつれて口径が広がる第２拡径部を有するように形成されている。

　筒状部２は、面状部４に対して略垂直に延びるように形成されていてもよく、斜めに延びるように形成されていてもよい。面状部４に対して筒状部２が延在する方向の角度は、吻合部の所望する形状に応じて適宜設定することができる。筒状部２は例えば、面状部４に対して３０°以上９０°以下の角度をなすように、面状部４から延びていることが好ましい。

　筒状部２は、周方向よりも軸方向の方が伸長応力が大きいことが好ましい。このように筒状部２が形成されていれば、筒状部２は周方向に沿って伸長しやすくなるため、保護カバー１による第１の血管１１への圧迫を抑えることができ、第１の血管１１の柔軟性を阻害しにくくなる。筒状部２の伸長応力は、引張試験機を用いて筒状部２を軸方向または周方向に伸長させることにより計測する。

　筒状部２には、面状部４と接続する側とは反対側の端部３に、上記に説明した補強部が設けられていてもよい。例えば筒状部２には、補強部として、編地の編み密度が高く形成された高密度部が設けられていてもよい。筒状部２に補強部が設けられることにより、筒状部２を第１の血管１１の近傍の他の組織に縫合により固定する操作を行いやすくなる。

　図５～図８に示した保護カバー１の面状部４の形状は特に限定されない。図５～図８に示した保護カバー１は、例えば、図３や図４に示したような面状部４を有するものであってもよい。

　保護カバー１は、図９に示すように、筒状部２の面状部４と接続する側とは反対側の端部３に、非筒状の延出部８が設けられていてもよい。保護カバー１を血管吻合部に取り付けた後、延出部８を第１の血管１１の近傍の他の組織に縫合等により固定することにより、筒状部２が第１の血管１１に対して位置がずれるのを防ぐことができる。

　延出部８は編地から構成されることが好ましく、より好ましくは、筒状部２から延出部８にかけて連続した糸から形成された編地を含んで構成される。すなわち、保護カバー１は、筒状部２から延出部８にかけて連続した編地を含んで構成されることが好ましい。このように延出部８を形成することにより、筒状部２から延出部８にかけて保護カバー１の柔軟性を高めることができる。

　延出部８の形状は特に限定されない。延出部８は編み方を調整することにより所望の形状に形成してもよく、編地を形成した後に当該編地の一部を切除することにより延出部８を所望の形状に形成してもよい。なお、延出部８は前者の態様で形成されることが好ましく、すなわち延出部８は編地の一部が切断された切断端縁を有しないことが好ましい。これにより、延出部８を構成する編地の糸がほつれにくくなる。なお保護カバー１に延出部８が設けられる場合、筒状部２と面状部４の形状も特に限定されず、上記に説明した筒状部２と面状部４を任意に組み合わせることができる。

　延出部８には上記に説明した補強部が設けられていてもよい。例えば延出部８には、補強部として、筒状部２よりも編地の編み密度が高く形成された高密度部が設けられていてもよい。延出部８に補強部を設けることにより、延出部８を第１の血管１１の近傍の他の組織に縫合により固定する操作を行いやすくなる。

　本願は、２０２０年２月１４日に出願された日本国特許出願第２０２０－０２３８３１号に基づく優先権の利益を主張するものである。２０２０年２月１４日に出願された日本国特許出願第２０２０－０２３８３１号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。

　１：保護カバー
　２：筒状部
　３：面状部と接続する側とは反対側の端部
　４：面状部
　５：第１端縁
　６：第２端縁
　７：切断端縁
　８：延出部
　１１：第１の血管
　１２：第２の血管

Claims

　第１の血管が第２の血管に接合した吻合部の保護カバーであって、
　前記保護カバーは、第１の血管の外側を覆う筒状部と第２の血管の外側を覆う面状部を有し、前記筒状部から前記面状部にかけて連続した糸から形成された編地を含んで構成されていることを特徴とする保護カバー。
　前記筒状部は、周方向よりも軸方向の方が伸長応力が大きい請求項１に記載の保護カバー。
　前記筒状部と前記面状部は縫合部を有しない請求項１または２に記載の保護カバー。
　前記面状部は略矩形または長円形に形成されている請求項１～３のいずれか一項に記載の保護カバー。
　前記面状部は短手方向を有し、前記短手方向が前記第２の血管の延在方向に対して略平行に延びている請求項１～４のいずれか一項に記載の保護カバー。
　前記筒状部は、前記面状部と接続する側とは反対側の端部を含む部分が、前記面状部から離れるにつれて口径が広がって形成されている請求項１～５のいずれか一項に記載の保護カバー。
　前記筒状部は、前記面状部と接続する側とは反対側の端部を含む部分が、前記面状部から離れるにつれて前記筒状部の軸方向に対する角度が大きくなるように口径が広がって形成されている請求項１～６のいずれか一項に記載の保護カバー。
　前記筒状部は、前記筒状部の軸方向に対して角度Ａで前記面状部から離れるにつれて口径が広がる第１拡径部と、前記第１拡径部よりも前記面状部から離れた位置に、前記角度Ａよりも大きい角度Ｂで前記面状部から離れるにつれて口径が広がる第２拡径部を有し、前記面状部と接続する側とは反対側の端部が最も口径が大きく形成されている請求項１～７のいずれか一項に記載の保護カバー。
　前記筒状部の前記面状部と接続する側とは反対側の端部に、非筒状の延出部が設けられている請求項１～８のいずれか一項に記載の保護カバー。
　前記延出部は、前記筒状部から前記延出部にかけて連続した糸から形成された編地を含んで構成されている請求項９に記載の保護カバー。
　前記面状部は、互いに対向して設けられた第１端縁と第２端縁を有し、前記第１端縁が２つ以上に分離するとともに、前記第２端縁が２つ以上に分離している請求項１～１０のいずれか一項に記載の保護カバー。
　前記面状部は前記編地が切断されることにより形成された切断端縁を有し、前記切断端縁に沿って補強部が設けられている請求項１～１１のいずれか一項に記載の保護カバー。
　前記面状部は、互いに対向して設けられた第１端縁と第２端縁を有し、
　前記面状部には、前記第１端縁と前記第２端縁に沿ってそれぞれ補強部が設けられるとともに、前記第１端縁に沿った補強部と前記第２端縁に沿った補強部の間に別の補強部が設けられている請求項１～１２のいずれか一項に記載の保護カバー。
　前記面状部は、前記編地が切断されることにより形成された切断端縁を、前記筒状部との接続部から前記筒状部の放射方向に延びるように４つ以上有する請求項１～１３のいずれか一項に記載の保護カバー。