WO2020230294A1

WO2020230294A1 - ロータリ圧縮機及び冷凍サイクル装置

Info

Publication number: WO2020230294A1
Application number: PCT/JP2019/019324
Authority: WO
Inventors: 叔美池田
Original assignee: 三菱電機株式会社
Priority date: 2019-05-15
Filing date: 2019-05-15
Publication date: 2020-11-19

Abstract

ロータリ圧縮機は、流体圧縮用の回転軸と、回転軸に作用する径方向の荷重を支持するすべり軸受と、回転軸及びすべり軸受が収容され、底部に潤滑油を溜める油溜りが形成されたシェルと、を備え、回転軸には、軸方向に貫通した給油孔が設けられ、回転軸には、給油孔に連通し、すべり軸受の支持箇所にて回転軸の外周面に開口した開口部が設けられ、すべり軸受には、すべり軸受の支持箇所にてすべり軸受の内周面から外周面に貫通した貫通孔が設けられ、貫通孔に連通し、潤滑油を溜める潤滑油タンクを有する。

Description

ロータリ圧縮機及び冷凍サイクル装置

　本発明は、回転軸とすべり軸受とを備えるロータリ圧縮機及び冷凍サイクル装置に関する。

　回転機械には、回転体に作用する荷重を支持する軸受が設けられている。軸受には、転がり軸受と、すべり軸受と、の２種類がある。

　すべり軸受は、回転軸とすべり軸受との間の隙間に潤滑油又は空気などの流体による膜を形成する。回転軸による膜の引込みによって得られるくさびの効果により、膜に圧力が発生し、すべり軸受に作用する荷重が油膜で支持される。

　理論的に油膜の圧力は、回転軸の回転速度の増加に伴って発生し易い。このため、回転軸の回転速度が速いほど、回転軸とすべり軸受との間が膜で分離され、回転軸とすべり軸受との接触が回避できる。そのため、回転軸の回転速度が速いときには、回転軸とすべり軸受との間には摩耗又は焼付きが発生しない。

　一方、転がり軸受では、外輪と内輪との間に配置された転動体が転がる。転がり軸受は、一般的にすべり軸受よりも低摩擦である。しかし、転がり軸受では、外輪、内輪又は転動体が摩耗するので寿命が存在する。寿命を超えた転がり軸受は、外輪、内輪又は転動体の表面に剥離が発生し、軸受としての機能が果たせなくなる。

　空気調和装置に搭載される冷媒を圧縮する圧縮機では、基本的に出荷後のメンテナンス又は部品の取替えが実施されない。そのため、圧縮機には、寿命が長いすべり軸受が多く使用されている。

　圧縮機では、圧縮機構部で低い圧力及び温度の冷媒ガスが圧縮され、圧縮後の高い圧力及び温度の冷媒ガスが空気調和装置内に送り出される。

　近年では、圧縮機の容量の拡大に伴い、圧縮機の高回転化が進められている。これにより、圧縮機について、高い荷重かつ高い回転速度から急激に減速する厳しい運転条件でも運転可能である必要がある。そのような運転条件であっても、回転軸とすべり軸受との間に摩耗又は焼付きのような故障が発生しない性能が求められる。そこで、急激に減速する運転条件においても、潤滑油が十分に供給されることと、油膜の圧力の低下を抑制することと、により、回転軸とすべり軸受とを接触させずに圧縮機が運転させられることが必要である。

　従前では、ターボ機器と冷凍サイクル装置とのすべり軸受に潤滑油を供給する方法として、特許文献１の技術が提案されている。

特開２０１７－０１５０１７号公報

　特許文献１の技術では、給油経路に潤滑油の貯留槽とポンプとが設けられ、潤滑油がポンプによって加圧されてすべり軸受に供給される。このため、運転条件にかかわらず安定して潤滑油が供給できる。

　しかし、小型のロータリ圧縮機の内部には、ポンプを設置する空間が無い。また、単価が低いロータリ圧縮機に新たに高価なポンプを設置して潤滑油の供給を担うことは、市場ニーズから考えて不適切である。

　以上により、高価なポンプといった外部動力が必要なく、かつ、ポンプを設置する空間が無い小型のロータリ圧縮機でも、潤滑油が回転軸とすべり軸受との間の隙間に十分に供給できる技術が望まれている。

　本発明は、上記課題を解決するためのものであり、減速運転時でも潤滑油が回転軸とすべり軸受との間の隙間に十分に供給でき、回転軸とすべり軸受との間が接触せずに故障が抑制できるロータリ圧縮機及び冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。

　本発明に係るロータリ圧縮機は、流体圧縮用の回転軸と、前記回転軸に作用する径方向の荷重を支持するすべり軸受と、前記回転軸及び前記すべり軸受が収容され、底部に潤滑油を溜める油溜りが形成されたシェルと、を備え、前記回転軸には、軸方向に貫通した給油孔が設けられ、前記回転軸には、前記給油孔に連通し、前記すべり軸受の支持箇所にて前記回転軸の外周面に開口した開口部が設けられ、前記すべり軸受には、前記すべり軸受の支持箇所にて前記すべり軸受の内周面から外周面に貫通した貫通孔が設けられ、前記貫通孔に連通し、潤滑油を溜める潤滑油タンクを有するものである。

　本発明に係る冷凍サイクル装置は、上記のロータリ圧縮機を備えるものである。

　本発明に係るロータリ圧縮機及び冷凍サイクル装置によれば、ロータリ圧縮機のすべり軸受けには、すべり軸受の支持箇所にてすべり軸受の内周面から外周面に貫通した貫通孔が設けられている。ロータリ圧縮機は、貫通孔に連通し、潤滑油を溜める潤滑油タンクを有する。これによれば、潤滑油が十分に供給されている定常運転時に、回転軸とすべり軸受との間の隙間に存在する高圧な潤滑油を潤滑油タンクに貯留する。また、回転不足により開口部からの潤滑油の供給が不足し、かつ、回転軸とすべり軸受との間の隙間に存在する潤滑油の圧力が低下する減速運転時に、潤滑油タンクから貯留した高圧な潤滑油を回転軸とすべり軸受との間の隙間に供給する。これにより、ロータリ圧縮機が急激に減速する運転条件においても、潤滑油が十分に供給されることと、油膜の圧力の低下を抑制することと、が実現できる。したがって、減速運転時でも潤滑油が回転軸とすべり軸受との間の隙間に十分に供給でき、回転軸とすべり軸受との間が接触せずに摩耗又は焼付きといった故障が抑制できる。

従来技術の圧縮機構部が１つであるロータリ圧縮機を縦断面にて示す説明図である。従来技術の圧縮機構部が２つであるロータリ圧縮機を縦断面にて示す説明図である。従来技術のロータリ圧縮機における圧縮機構部の構成を横断面にて示す説明図である。従来技術のすべり軸受を縦断面にて示す説明図である。すべり軸受における周方向での回転軸の軌跡と油膜圧力の分布とを示す説明図である。実施の形態１に係るロータリ圧縮機を縦断面にて示す説明図である。実施の形態１に係るすべり軸受を縦断面にて示す説明図である。実施の形態２に係るすべり軸受を縦断面にて示す説明図である。実施の形態３に係るすべり軸受を縦断面にて示す説明図である。実施の形態３に係る定常運転時の流量変更機構を示す説明図である。実施の形態３に係る減速運転時の流量変更機構を示す説明図である。実施の形態３の変形例１に係る定常運転時の流量変更機構を示す説明図である。実施の形態３の変形例１に係る減速運転時の流量変更機構を示す説明図である。実施の形態３の変形例２に係るすべり軸受を縦断面にて示す説明図である。実施の形態４に係るすべり軸受を縦断面にて示す説明図である。実施の形態４の変形例３に係るすべり軸受を縦断面にて示す説明図である。実施の形態５に係るすべり軸受を縦断面にて示す説明図である。実施の形態５の変形例４に係るすべり軸受を縦断面にて示す説明図である。実施の形態６に係るすべり軸受を縦断面にて示す説明図である。実施の形態６の変形例５に係るすべり軸受を縦断面にて示す説明図である。実施の形態６の変形例６に係るすべり軸受を縦断面にて示す説明図である。実施の形態６の変形例７に係るすべり軸受を縦断面にて示す説明図である。実施の形態７に係るすべり軸受の内周面における貫通孔と静圧ポケットとの関係を示す展開図である。実施の形態７の変形例８に係るすべり軸受の内周面における貫通孔と静圧ポケットとの関係を示す展開図である。実施の形態７の変形例９に係るすべり軸受の内周面における貫通孔と静圧ポケットとの関係を示す展開図である。実施の形態７の変形例１０に係るすべり軸受の内周面における貫通孔と静圧ポケットとの関係を示す展開図である。実施の形態８に係るロータリ圧縮機を適用した冷凍サイクル装置を示す冷媒回路図である。

　以下には、図面に基づいて実施の形態が説明されている。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。また、断面図の図面においては、視認性に鑑みて適宜ハッチングが省略されている。さらに、明細書全文に示す構成要素の形態は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。

実施の形態１．
＜ロータリ圧縮機２００の一般的な構成＞
　図１は、従来技術の圧縮機構部１４が１つであるロータリ圧縮機２００を縦断面にて示す説明図である。図２は、従来技術の圧縮機構部１４が２つであるロータリ圧縮機２００を縦断面にて示す説明図である。図３は、従来技術のロータリ圧縮機２００における圧縮機構部１４の構成を横断面にて示す説明図である。

　図１及び図２に示すように、冷媒圧縮機の一つであるロータリ圧縮機２００は、シェル１内に駆動部であるモータ２に駆動させられる回転軸５を備える。回転軸５は、流体圧縮用である。回転軸５は、上軸受６と下軸受１０とに軸支されている。上軸受６と下軸受１０とは、すべり軸受２１である。上軸受６と下軸受１０とは、回転軸５に作用する径方向の荷重を支持する。シェル１は、回転軸５と上軸受６と下軸受１０とが収容され、底部に潤滑油を溜める油溜り１７が形成されている。

　圧縮機構部１４は、上軸受６と下軸受１０との間に配置されている。図１に示すロータリ圧縮機２００では、圧縮機構部１４が１つ設けられている。図２に示すロータリ圧縮機２００では、圧縮機構部１４が回転軸５の軸方向に２つ並んで設けられている。

　図１、図２及び図３に示すように、圧縮機構部１４は、ベーン８と、ベーン押さえばね９と、シリンダ１１と、回転軸５の一部である偏芯軸７の外周に配されたローリングピストン１３と、を有する。

　回転軸５が駆動部であるモータ２によって回転駆動される。モータ２は、固定子３と回転子４とを有する。回転軸５の回転により、偏芯軸７が偏芯運動する。偏芯軸７の偏心運動により、吸入口１９に接続されつつローリングピストン１３とシリンダ１１とベーン８とで構成される吸入用圧縮室１２ａには、吸入口１９から低温かつ低圧の冷媒が流入する。

　また、吐出口２０に接続されつつローリングピストン１３とシリンダ１１とベーン８とで構成される圧縮室１２のうちの吐出用圧縮室１２ｂでは、冷媒が偏芯軸７の偏芯運動により圧縮されて吐出口２０から高温かつ高圧の冷媒がシェル１内へ流出する。

　冷媒の圧縮室１２への流入又は流出を連続的に行うことにより、圧縮機構部１４で冷媒が圧縮される。吐出用圧縮室１２ｂからシェル１内に流出した冷媒は、シェル１内の上部に設けられた流出口１８から空調冷熱機器に吐出される。

　圧縮機構部１４で冷媒を圧縮する過程では、一周のうちに荷重の大きさと方向とが変わる変動荷重が回転軸５に作用する。変動荷重は、回転軸５を介してすべり軸受２１である上軸受６と下軸受１０とに作用する。上軸受６と回転軸５との間と、下軸受１０と回転軸５との間と、には、潤滑油による膜が存在する。

　図１及び図２に示すように、回転軸５内には、回転軸５の軸方向に貫通した給油孔１５が形成されている。回転軸５内には、給油孔１５に連通し、すべり軸受２１である上軸受６と下軸受１０との支持箇所にて回転軸５の外周面に開口した開口部１６が形成されている。

　すなわち、回転軸５は、中空である。回転軸５の軸心の孔は、給油孔１５である。潤滑油は、シェル１内の底部の油たまり１７に溜まっている。回転軸５の回転により、潤滑油は、油たまり１７から給油孔１５に引き上げられる。給油孔１５に引き上げられた潤滑油は、給油孔１５に接続した回転軸５の外表面に開口した開口部１６を介して、回転軸５と上軸受６及び下軸受１０の内周面との隙間にそれぞれ供給される。潤滑油は、回転軸５の回転に伴って上軸受６と下軸受１０とに常に供給されている。潤滑油の給油量は、回転軸５の回転速度に依存する。このため、低速運転又は減速運転時には、すべり軸受２１である上軸受６及び下軸受１０への給油量が減少する。

＜すべり軸受２１の一般的な動作＞
　図４は、従来技術のすべり軸受２１を縦断面にて示す説明図である。ここでは、ロータリ圧縮機２００の上軸受６及び下軸受１０は、総じてすべり軸受２１と称されている。

　図４に示すように、潤滑油は、回転軸５の軸方向に貫通した給油孔１５と、給油孔１５に接続し回転軸５の外表面に開口した開口部１６と、を介して、回転軸５とすべり軸受２１との間に供給される。回転軸５に作用する径方向の荷重は、供給された潤滑油によって回転軸５とすべり軸受２１との間に形成された油膜２２で支持されている。

＜すべり軸受２１における周方向での減速運転時の回転軸５の軌跡と油膜圧力の分布の関係＞
　図５は、すべり軸受２１における周方向での回転軸５の軌跡と油膜圧力の分布とを示す説明図である。図５には、定常運転時の軸心位置２３と、定常運転時の油膜圧力分布２４と、減速運転時の軸心軌跡２５と、低速運転時の軸心位置２６と、低速運転時の油膜圧力分布２７と、が示されている。

　低速運転又は減速運転時には、回転軸５の回転により得られるくさび効果が低下する。そのため、減速運転時の回転軸５の軸心軌跡２５は、減速に伴いすべり軸受２１へと近づく。これにより、低速運転時の油膜圧力分布２７に示すように、局所的な油膜圧力が高くなる。一方、それ以外の箇所では、油膜圧力が低下する。

　このように、減速運転時に回転軸５がすべり軸受２１に近づくことは、最小の油膜２２の厚さが薄くなることを意味する。これにより、低速運転又は減速運転時には、回転軸５とすべり軸受２１とが接触しながら摺動する。

　そこで、急激に減速する運転条件においても、潤滑油が十分に供給されることと、油膜２２の圧力の低下が抑制されることと、により、回転軸５とすべり軸受２１とが接触せずにロータリ圧縮機１００を運転させることが必要である。

＜実施の形態１に係るロータリ圧縮機１００におけるすべり軸受２１の特徴＞
　図６は、実施の形態１に係るロータリ圧縮機１００を縦断面にて示す説明図である。図７は、実施の形態１に係るすべり軸受２１を縦断面にて示す説明図である。ロータリ圧縮機１００におけるロータリ圧縮機２００と同事項は、説明を省略する。

　図６に示すように、ロータリ圧縮機１００は、圧縮機構部１４を２つ持つものである。なお、圧縮機構部１４は、１つ以上であれば良い。２つの開口部１６から潤滑油が供給されるすべり軸受２１は、上軸受６と下軸受１０とを備える。ロータリ圧縮機１００には、上軸受６と下軸受１０とに対して、貫通孔３０と潤滑油タンク２９とがそれぞれ設けられている。

　一方の貫通孔３０は、すべり軸受２１である上軸受６の支持箇所にて上軸受６の内周面から外周面に貫通している。他方の貫通孔３０は、すべり軸受２１である下軸受１０の支持箇所にて下軸受１０の内周面から外周面に貫通している。

　潤滑油タンク２９は、上軸受６の貫通孔３０に連通し、潤滑油を溜める。他方の潤滑油タンク２９は、下軸受１０の貫通孔３０に連通し、潤滑油を溜める。潤滑油タンク２９は、すべり軸受２１である上軸受６と下軸受１０との外周面にそれぞれ配置されている。

　図７に示すように、上軸受６及び下軸受１０であるすべり軸受２１では、すべり軸受２１と回転軸５との間に油膜２２が形成されている。油膜２２は、潤滑油を開口部１６から供給されるとともに、潤滑油を貫通孔３０に流入させる又は潤滑油を貫通孔３０から供給される。

　このように、貫通孔３０に連通する潤滑油タンク２９がすべり軸受２１の背面に設けられている。貫通孔３０がすべり軸受２１に設けられることにより、油膜２２と潤滑油タンク２９との間が最短距離で接続できる。

＜定常運転時の動作＞
　定常運転時には、上軸受６及び下軸受１０であるすべり軸受２１と回転軸５との間に形成される油膜２２には、図５に示す定常運転時の油膜圧力分布２４が発生する。定常運転時の油膜圧力分布２４は、シェル１内の圧力よりも高い。

　定常運転時には、回転軸５の回転により、潤滑油がすべり軸受２１に十分に供給されている。このため、回転軸５とすべり軸受２１との間の高圧の油膜２２を形成した潤滑油が潤滑油タンク２９に対して潤滑油タンク２９の容量だけ貯留できる。

＜減速運転時の動作＞
　回転不足により開口部１６からの潤滑油の供給が不足し、かつ、回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２の圧力が低下する回転速度の減速運転時には、潤滑油が潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して回転軸５とすべり軸受２１との間に供給される。具体的には、定常運転時に高圧の潤滑油が潤滑油タンク２９に貯留されている。減速運転時に回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２の圧力が低下すると、潤滑油タンク２９に貯留された高圧の潤滑油が双方の差圧によって油膜２２に十分に供給される。そして、油膜２２の圧力低下が抑制される。

　このように、ロータリ圧縮機１００が急激に減速する運転条件においても、潤滑油が十分に供給されることと、油膜２２の圧力低下が抑制されることと、が実現できる。これにより、回転軸５とすべり軸受２１とが接触せず、摩耗又は焼付きのような故障が抑制できる。

＜潤滑油タンク２９からの潤滑油供給の原理＞
　図５に示すように、減速運転時には、軸心軌跡２５がすべり軸受２１に近づき、それに伴いすべり軸受２１と回転軸５との間に形成される油膜２２には、低速運転時の油膜圧力分布２７が発生する。低速運転時の油膜圧力分布２７と、定常運転時の油膜圧力分布２４と、を比較すると、油膜圧力の最大値としては、低速運転時の油膜圧力分布２７の方が高い値を示す。一方、最大値近傍以外での油膜圧力は、定常運転時の油膜圧力分布２４の方が高い値を示す。

　すなわち、低速運転時の油膜圧力分布２７では、油膜圧力の最大値のピークだけが高く、最大値近傍以外の広範囲での油膜圧力が定常運転時の油膜圧力分布２４の油膜圧力よりも低くなる。総じていえば、低速運転時の油膜圧力分布２７における回転軸５の１回転のうち大部分の油膜圧力は、定常運転時の油膜圧力分布２４の油膜圧力よりも低い。

　この圧力差を利用し、定常運転時に貫通孔３０を介して潤滑油タンク２９に貯留した高圧の潤滑油は、減速運転時に油膜圧力が低下するすべり軸受２１と回転軸５との間に、貫通孔３０を介して潤滑油タンク２９から供給される。これにより、油膜圧力の低下と潤滑油の供給量の低下とが原因になって回転軸５とすべり軸受２１との接触が懸念される減速運転時においても、油膜圧力の増加と潤滑油の供給量の増加とが実現される。したがって、回転軸５とすべり軸受２１との接触による回転軸５又はすべり軸受２１の摩耗又は焼付きなどの故障が抑制できる。

＜実施の形態１の効果＞
　実施の形態１によれば、ロータリ圧縮機１００の上軸受６及び下軸受１０には、上軸受６及び下軸受１０の支持箇所にて上軸受６及び下軸受１０それぞれの内周面から外周面に貫通した貫通孔３０が設けられている。ロータリ圧縮機１００は、貫通孔３０に連通し、潤滑油を溜める潤滑油タンク２９を有する。

　この構成によれば、潤滑油が十分に供給されている定常運転時に、回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間に存在する高圧な潤滑油を潤滑油タンク２９に貯留する。また、回転不足により開口部１６からの潤滑油の供給が不足し、かつ、回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間に存在する潤滑油の圧力が低下する減速運転時に、潤滑油タンク２９から貯留した高圧な潤滑油を回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間に供給する。これにより、ロータリ圧縮機１００が急激に減速する運転条件においても、潤滑油が十分に供給されることと、油膜２２の圧力の低下を抑制することと、が実現できる。したがって、減速運転時でも潤滑油が回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に十分に供給でき、回転軸５とすべり軸受２１との間が接触せずに摩耗又は焼付きといった故障が抑制できる。このように、高価なポンプといった外部動力が必要ない。そして、ポンプを設置する空間が無い小型のロータリ圧縮機１００でも、潤滑油が回転軸５とすべり軸受２１との間に十分に供給できる。

　実施の形態１によれば、潤滑油タンク２９は、潤滑油が十分に供給されている定常運転時に、回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間に存在する高圧な潤滑油を貯留する。潤滑油タンク２９は、開口部１６からの潤滑油の供給が不足し、かつ、回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間に存在する潤滑油の圧力が低下する減速運転時に、貯留した高圧な潤滑油を回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間に供給する。

　この構成によれば、ロータリ圧縮機１００が急激に減速する運転条件においても、潤滑油が十分に供給されることと、油膜２２の圧力の低下を抑制することと、が実現できる。したがって、減速運転時でも潤滑油が回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に十分に供給でき、回転軸５とすべり軸受２１との間が接触せずに摩耗又は焼付きといった故障が抑制できる。

　実施の形態１によれば、潤滑油タンク２９は、すべり軸受２１の外周面に配置されている。

　この構成によれば、潤滑油タンク２９がすべり軸受２１に固定され、ロータリ圧縮機１００内に安定して配置できる。

　実施の形態１によれば、すべり軸受２１は、上軸受６と、下軸受１０と、を含んでいる。開口部１６と貫通孔３０と潤滑油タンク２９とは、上軸受６及び下軸受１０のそれぞれに設けられている。

　この構成によれば、潤滑油が回転軸５と上軸受６及び下軸受１０のそれぞれとの間に十分に供給でき、回転軸５と上軸受６及び下軸受１０のそれぞれとの間が接触せずに摩耗又は焼付きといった故障が抑制できる。

実施の形態２．
＜すべり軸受２１の構成＞
　図８は、実施の形態２に係るすべり軸受２１を縦断面にて示す説明図である。実施の形態２では、上記実施の形態１と同事項の説明が省略され、その特徴部分のみが説明されている。

　図８に示すように、複数の貫通孔３０が油膜２２と１つの潤滑油タンク２９とを連通しても良い。図８では、貫通孔３０が２つの例を示している。その他、貫通孔３０の数は、３以上でも良い。

＜作用＞
　この構成によれば、実施の形態１と同様に、定常運転時の油膜圧力分布２４と低速運転の油膜圧力分布２７との差圧が利用できる。これにより、高圧の潤滑油は、油膜２２から貫通孔３０を介して潤滑油タンク２９に貯留できる。また、定常運転時に潤滑油タンク２９に貯留した高圧の潤滑油は、減速運転時に潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して回転軸５とすべり軸受２１との間に供給できる。このため、貫通孔３０は、利用可能な差圧が得られる位置に設けてあれば２以上設けても構わない。

＜その他＞
　また、図８では、２つ貫通孔３０に対し、潤滑油タンク２９が１つ設けられている。しかし、潤滑油タンク２９は、各貫通孔３０に対応して貫通孔３０と同数設けても良い。

　この構成によれば、定常運転時に高圧な潤滑油が油膜圧力の異なる位置から異なる潤滑油タンク２９に貯留できる。つまり、それぞれの貫通孔３０が油膜２２に接続した位置にて、異なる圧力の潤滑油が潤滑油タンク２９から油膜２２に供給でき、油膜２２への給油時に油膜２２が適切な油膜圧力を確保できる。また、潤滑油タンク２９が複数設けられていると、減速運転時の潤滑油の供給量をより増加できる。このため、回転軸５とすべり軸受２１との接触による回転軸５又はすべり軸受２１の摩耗又は焼付きなどの故障が抑制できる。

＜実施の形態２の効果＞
　実施の形態２によれば、貫通孔３０は、複数設けられている。

　この構成によれば、定常運転時に油膜圧力が違う位置の潤滑油が潤滑油タンク２９に貯留できる。また、それぞれの貫通孔３０が油膜２２に連通した位置にて、潤滑油が潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して供給できる。これにより、図５に示すように、定常運転時の油膜圧力分布２４より低速運転時の油膜圧力分布２７が高い値を示す箇所を避け、高圧の潤滑油が潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して供給できる。

実施の形態３．
＜すべり軸受２１の構成＞
　図９は、実施の形態３に係るすべり軸受２１を縦断面にて示す説明図である。実施の形態３では、上記実施の形態１及び実施の形態２と同事項の説明が省略され、その特徴部分のみが説明されている。

　図９に示すように、貫通孔３０には、流量変更機構３１が設けられている。流量変更機構３１は、回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２から潤滑油タンク２９への潤滑油の流量と、潤滑油タンク２９から回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２への潤滑油の流量と、を異ならせる。流量変更機構３１は、潤滑油タンク２９と油膜２２とを分離することが目的に設けられている。

＜流量変更機構３１の構成＞
　図１０は、実施の形態３に係る定常運転時の流量変更機構３１を示す説明図である。図１１は、実施の形態３に係る減速運転時の流量変更機構３１を示す説明図である。図１０の実線の矢印は、潤滑油を油膜２２から貫通孔３０を介して潤滑油タンク２９に貯留する場合の潤滑油の流れを示す。図１１の破線の矢印は、潤滑油を潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給する場合の潤滑油の流れを示す。

　図１０及び図１１に示すように、流量変更機構３１は、弁体３５と、押圧部３６と、微細流路３７と、を有する。なお、図１０及び図１１には、後述する静圧ポケット３２が図示されている。しかし、静圧ポケット３２は、必須の構成要素ではない。

　弁体３５は、貫通孔３０内に配置され、貫通孔３０を開閉する。このため、弁体３５は、貫通孔３０内の途中にて両側の貫通孔３０よりも広い空間に径方向内側の貫通孔３０を閉塞可能な大きさで配置されている。

　押圧部３６は、弁体３５の径方向外側に配置され、弁体３５を径方向内側に押圧する。これにより、通常時では、押圧部３６は、貫通孔３０を弁体３５によって閉塞する。押圧部３６は、ばねなどで構成されている。

　図１０に示す定常運転時のように、押圧部３６は、回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間から潤滑油タンク２９に潤滑油を貯留する場合に、高圧な潤滑油の流入を受けて収縮し、弁体３５を開弁させる。

　微細流路３７は、弁体３５に形成されている。微細流路３７は、押圧部３６が弁体３５を押圧して貫通孔３０を弁体３５によって閉塞した状態でも潤滑油タンク２９から回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間へ潤滑油を供給する。微細流路３７は、貫通孔３０に比して流路断面積が狭い。このため、微細流路３７を流通する潤滑油は、貫通孔３０を流通する潤滑油に比して単位時間当たりに流れる流量が小さい。

　図１１に示す減速運転時のように、貫通孔３０に高圧な潤滑油の流入が無い場合に、潤滑油タンク２９に貯留された高圧な潤滑油は、貫通孔３０を弁体３５によって閉塞した状態であっても、微細流路３７を介して回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給される。

＜流量変更機構３１の動作＞
　図１０に示す定常運転時では、油膜２２の油膜圧力は、潤滑油タンク２９内の潤滑油の圧力より高い。これにより、貫通孔３０に流入する高圧な潤滑油は、押圧部３６の押圧力に反して弁体３５を径方向外側に押しのけて開弁させ、潤滑油が油膜２２から潤滑油タンク２９に貯留される。潤滑油が潤滑油タンク２９に貯留されると、油膜２２の油膜圧力と潤滑油タンク２９内の潤滑油の圧力が一致する。このため、押圧部３６の押圧力によって弁体３５が貫通孔３０を閉弁する。

　図１１に示す減速運転時では、油膜２２の油膜圧力は、定常運転時に貯留した潤滑油タンク２９内の潤滑油の圧力より低くなる。これにより、弁体３５は貫通孔３０を閉塞した状態を維持する。しかし、弁体３５に形成された微細流路３７に潤滑油タンク２９内に貯留された高圧な潤滑油が流入する。そして、微細流路３７を介して潤滑油が潤滑油タンク２９から回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給される。

＜その他＞
　貫通孔３０を複数設ける場合でも、各貫通孔に対して流量変更機構３１が設けられると良い。これによれば、貫通孔３０及び流量変更機構３１を設けた複数の位置から潤滑油の貯留と供給とが行える。

＜変形例１＞
＜変形例１の流量変更機構３１の構成＞
　図１２は、実施の形態３の変形例１に係る定常運転時の流量変更機構３１を示す説明図である。図１３は、実施の形態３の変形例１に係る減速運転時の流量変更機構３１を示す説明図である。図１２の実線の矢印は、潤滑油を油膜２２から貫通孔３０を介して潤滑油タンク２９に貯留する場合の潤滑油の流れを示す。図１３の破線の矢印は、潤滑油を潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給する場合の潤滑油の流れを示す。

　図１２及び図１３に示すように、貫通孔３０は、第１孔３０ａと、第２孔３０ｂと、を含んでいる。第１孔３０ａは、潤滑油の潤滑油タンク２９への貯留の経路を構成している。第２孔３０ｂは、潤滑油の油膜２２への供給の経路を構成している。第１孔３０ａと第２孔３０ｂとの流路断面積などは、適宜変更できる。

　流量変更機構３１は、第１弁体３５ａと、第１押圧部３６ａと、第２弁体３５ｂと、第２押圧部３６ｂと、を有する。

　第１弁体３５ａは、第１孔３０ａ内に配置され、第１孔３０ａを開閉する。このため、第１弁体３５ａは、第１孔３０ａ内の途中にて両側の第１孔３０ａよりも広い空間に径方向内側の第１孔３０ａを閉塞可能な大きさで配置されている。

　第１押圧部３６ａは、第１弁体３５ａの径方向外側に配置され、第１弁体３５ａを径方向内側に押圧する。これにより、通常時では、第１押圧部３６ａは、第１孔３０ａを第１弁体３５ａによって閉塞する。第１押圧部３６ａは、ばねなどで構成されている。

　図１２に示す定常運転時のように、第１押圧部３６ａは、回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間から潤滑油タンク２９に潤滑油を貯留する場合に、高圧な潤滑油の流入を受けて収縮し、第１弁体３５ａを開弁させる。

　図１３に示す減速運転時のように、第１押圧部３６ａは、潤滑油タンク２９から回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間に潤滑油を供給する場合に、潤滑油タンク２９内の高圧な潤滑油の流入を受けて押圧力を更に増強し、第１弁体３５ａを閉弁させる。

　第２弁体３５ｂは、第２孔３０ｂ内に配置され、第２孔３０ｂを開閉する。このため、第２弁体３５ｂは、第２孔３０ｂ内の途中にて両側の第２孔３０ｂよりも広い空間に径方向外側の第２孔３０ｂを閉塞可能な大きさで配置されている。

　第２押圧部３６ｂは、第２弁体３５ｂの径方向内側に配置され、第２弁体３５ｂを径方向外側に押圧する。これにより、通常時では、第２押圧部３６ｂは、第２孔３０ｂを第２弁体３５ｂによって閉塞する。第２押圧部３６ｂは、ばねなどで構成されている。第２押圧部３６ｂの押圧力は、第１押圧部３６ａの押圧力に対して適宜変更されて良い。

　図１２に示す定常運転時のように、第２押圧部３６ｂは、回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間から潤滑油タンク２９に潤滑油を貯留する場合に、高圧な潤滑油の流入を受けて押圧力を更に増強し、第２弁体３５ｂを閉弁させる。

　図１３に示す減速運転時のように、第２押圧部３６ｂは、潤滑油タンク２９から回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間に潤滑油を供給する場合に、潤滑油タンク２９内の高圧な潤滑油の流入を受けて収縮し、第２弁体３５ｂを開弁させる。

＜変形例１の流量変更機構３１の動作＞
　図１２に示す定常運転時では、油膜２２の油膜圧力は、潤滑油タンク２９内の潤滑油の圧力より高い。これにより、貯留のための第１孔３０ａでは、第１孔３０ａに流入する高圧な潤滑油は、第１押圧部３６ａの押圧力に反して第１弁体３５ａを径方向外側に押しのけて開弁させ、潤滑油が油膜２２から潤滑油タンク２９に貯留される。同時に、供給のための第２孔３０ｂでは、第２孔３０ｂに流入する高圧な潤滑油は、第２押圧部３６ｂの押圧力を更に増強して第２弁体３５ｂを径方向外側に押圧して閉弁させる。そして、潤滑油が潤滑油タンク２９に貯留されると、油膜２２の油膜圧力と潤滑油タンク２９内の潤滑油の圧力が一致する。このため、貯留のための第１孔３０ａに設けた第１押圧部３６ａの押圧力によって第１弁体３５ａが第１孔３０ａを閉弁する。

　図１３に示す減速運転時では、油膜２２の油膜圧力は、定常運転時に貯留した潤滑油タンク２９内の潤滑油の圧力より低くなる。これにより、供給のための第２孔３０ｂでは、第２孔３０ｂに流入する高圧な潤滑油は、第２押圧部３６ｂの押圧力に反して第２弁体３５ｂを径方向内側に押しのけて開弁させ、潤滑油タンク２９から回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給される。同時に、貯留のための第１孔３０ａでは、第１孔３０ａに流入する高圧な潤滑油は、第１押圧部３６ａの押圧力を更に増強して第１弁体３５ａを径方向内側に押圧して閉弁させる。

＜変形例１の作用＞
　この構造により、貯留と供給とを行う潤滑油の経路が別々に構成でき、潤滑油の貯留と供給とを行う位置がそれぞれ任意に決定できる。また、貯留のための第１孔３０ａと供給のための第２孔３０ｂとの個数は、それぞれ１以上設けることで上記の効果が得られる。

＜作用＞
　実施の形態１及び実施の形態２では、減速運転が開始して油膜２２の油膜圧力が潤滑油タンク２９内に貯留している潤滑油の圧力より少しでも下回ったら、潤滑油が、潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して、回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給される。

　一方、実施の形態３の流量変更機構３１は、油膜２２の油膜圧力と潤滑油タンク２９内に貯留している潤滑油の圧力との差圧が任意の値の場合に作動する。このため、減速運転が始まってすぐに潤滑油の供給が始まるのではなく、減速によって流量変更機構３１が作動する圧力するまで、油膜２２の油膜圧力が低下する。その後に流量変更機構３１を介して潤滑油が、潤滑油タンク２９から貫通孔３０又は第２孔３０ｂを介して、回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給される。

　これにより、ゆっくりと減速する場合においても、給油の不足が懸念される低速運転まで、潤滑油タンク２９に貯留した高圧の潤滑油を保持しておき、低速運転時ほどに低い油膜２２の油膜圧力と潤滑油タンク２９内に貯留している潤滑油の圧力との差圧が任意の値になった時に、潤滑油が、潤滑油タンク２９から貫通孔３０又は第２孔３０ｂを介して、回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給できる。

＜変形例２＞
　図１４は、実施の形態３の変形例２に係るすべり軸受２１を縦断面にて示す説明図である。図１４に示すように、複数の貫通孔３０を設ける場合には、流量変更機構３１は各貫通孔３０に対して設けても良い。

＜変形例２の作用＞
　この構成によれば、潤滑油が油膜２２から貫通孔３０を介して潤滑油タンク２９に貯留される場合に必要な油膜２２の油膜圧力と潤滑油タンク２９の潤滑油の圧力との差圧と、潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給される場合に必要な油膜２２の油膜圧力と潤滑油タンク２９の潤滑油の圧力との差圧と、がそれぞれ異なる圧力に設定できる。

＜その他＞
　なお、流量変更機構３１と貫通孔３０と潤滑油タンク２９との組み合わせが１つあれば、その他の貫通孔３０と潤滑油タンク２９との組み合わせには流量変更機構３１を設けなくても良い。たとえば、図８の構成に対して図９の１つの流量変更機構３１を設ける構成が組み合わせられても良い。

＜その他の作用＞
　この構成によれば、定常運転時に油膜圧力が異なる位置から異なる潤滑油タンク２９に潤滑油が貯留できる。それぞれの貫通孔３０が油膜２２に接続した位置にて、異なる圧力の潤滑油が潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して油膜２２に供給でき、それぞれの位置で減速運転時に適切な油膜圧力が確保できる。

　また、潤滑油タンク２９が複数設けられることにより、減速運転時の潤滑油の供給量がより増加できる。このため、回転軸５とすべり軸受２１との接触による回転軸５又はすべり軸受２１の摩耗又は焼付きなどの故障が抑制できる。

　また、流量変更機構３１が設けられることにより、ゆっくりと減速する場合においても、給油の不足が懸念される低速運転まで、潤滑油タンク２９に貯留した高圧の潤滑油が保持できる。そして、低速運転時のように低い油膜２２の油膜圧力と、潤滑油タンク２９内に貯留している潤滑油の圧力と、の差圧が任意の値になった時に、潤滑油が潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して、回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給できる。

　また、複数の流量変更機構３１の作動する油膜２２の油膜圧力と潤滑油タンク２９内に貯留している潤滑油の圧力との差圧は、それぞれ任意に設計できる。これにより、それぞれの潤滑油タンク２９から給油するタイミングが任意に決定できる。そのため、複数の回転速度条件において潤滑油が潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して、回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給できる。このため、幅広い回転速度条件において、回転軸５とすべり軸受２１との接触による回転軸５又はすべり軸受２１の摩耗又は焼付きなどの故障が抑制できる。

＜実施の形態３の効果＞
　実施の形態３によれば、貫通孔３０には、回転軸５とすべり軸受２１との間から潤滑油タンク２９への潤滑油の流量と、潤滑油タンク２９から回転軸５とすべり軸受２１との間への潤滑油の流量と、を異ならせる流量変更機構３１が設けられている。

　この構成によれば、回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間から潤滑油タンク２９に潤滑油を貯留する場合には、潤滑油タンク２９に貯留した潤滑油の圧力と貯留量とが保持できる。また、減速運転時には、回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間に存在する潤滑油の圧力が潤滑油タンク２９に貯留された潤滑油の圧力より低下する。このような差圧により、潤滑油タンク２９から回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間に潤滑油が供給できる。

　実施の形態３によれば、流量変更機構３１は、貫通孔３０内に配置され、貫通孔３０を開閉する弁体３５を有する。流量変更機構３１は、弁体３５を径方向内側に押圧して貫通孔３０を弁体３５によって閉塞し、回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間から潤滑油タンク２９に潤滑油を貯留する場合に弁体３５を開弁させる押圧部３６を有する。流量変更機構３１は、弁体３５に形成され、押圧部３６が弁体３５を押圧して貫通孔３０を弁体３５によって閉塞した状態でも潤滑油タンク２９から回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間に潤滑油を供給する微細流路３７を有する。

　この構成によれば、回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２から潤滑油タンク２９への潤滑油の流量と、潤滑油タンク２９から回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２への潤滑油の流量と、が異ならせられる。

　実施の形態３によれば、貫通孔３０は、第１孔３０ａと、第２孔３０ｂと、を含んでいる。流量変更機構３１は、第１孔３０ａ内に配置され、第１孔３０ａを開閉する第１弁体３５ａを有する。流量変更機構３１は、第１弁体３５ａを径方向内側に押圧して第１孔３０ａを第１弁体３５ａによって閉塞し、回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間から潤滑油タンク２９に潤滑油を貯留する場合に第１弁体３５ａを開弁させる第１押圧部３６ａを有する。流量変更機構３１は、第２孔３０ｂ内に配置され、第２孔３０ｂを開閉する第２弁体３５ｂを有する。流量変更機構３１は、第２弁体３５ｂを径方向外側に押圧して第２孔３０ｂを第２弁体３５ｂによって閉塞し、潤滑油タンク２９から回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間に潤滑油を供給する場合に第２弁体３５ｂを開弁させる第２押圧部３６ｂを有する。

実施の形態４．
＜すべり軸受の構成＞
　図１５は、実施の形態４に係るすべり軸受２１を縦断面にて示す説明図である。実施の形態４では、上記実施の形態１、実施の形態２及び実施の形態３と同事項の説明が省略され、その特徴部分のみが説明されている。

　図１５に示すように、すべり軸受２１の内周面には、すべり軸受２１の内周面よりも径方向外側に凹んだ静圧ポケット３２が形成されている。静圧ポケット３２は、貫通孔３０の設置箇所を含む領域に形成されている。静圧ポケット３２は、すべり軸受２１の内周面に全領域を囲まれて形成されている。つまり、静圧ポケット３２は、すべり軸受２１の内周面の径方向外側に掘り下げて薄く広がり、すべり軸受２１の内周面に段差を付与している。

＜作用＞
　減速運転時に高圧の潤滑油が潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して供給される際に、静圧ポケット３２が静圧軸受の役割を担う。静圧軸受では、供給される潤滑油の圧力に静圧ポケット３２の面積を乗じた荷重が支えられる。そのため、静圧ポケット３２を設けることにより、高荷重でかつ高回転速度条件からの減速運転時のような高荷重を支持しなければならないが回転速度の低下により油膜２２の油膜圧力が低下して潤滑油の供給量が減少する条件においても、静圧ポケット３２に貫通孔３０を介して潤滑油タンク２９から供給した潤滑油によって、高荷重を支持しつつ給油量が保持できる。これにより、回転軸５とすべり軸受２１との接触による回転軸５又はすべり軸受２１の摩耗又は焼付きなどの故障が抑制できる。

　また、静圧ポケット３２がすべり軸受２１の上端又は下端に開口しないで閉塞されると、すべり軸受２１内の潤滑油がすべり軸受２１の上端又は下端から排出され難く、静圧が保持できる効果がある。

＜変形例３＞
　図１６は、実施の形態４の変形例３に係るすべり軸受２１を縦断面にて示す説明図である。図１６に示すように、静圧ポケット３２には、複数の貫通孔３０が連通されても良い。図１６では、２つの貫通孔３０が１つの静圧ポケット３２に連通している。その他、静圧ポケット３２が２つ設けられ、それぞれの貫通孔３０が別の静圧ポケット３２に連通しても良い。

＜変形例３の作用＞
　定常運転時には、油膜圧力が異なる位置から潤滑油タンク２９に潤滑油が貯留できる。それぞれの貫通孔３０が油膜２２に接続した位置にて、潤滑油を潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して供給できる。特に、図５に示すような定常運転時の油膜圧力分布２４より低速運転時の油膜圧力分布２７が高い値を示す箇所を避け、高圧の潤滑油が潤滑油タンク２９から貫通孔３０と静圧ポケット３２とを介して供給できる。

＜実施の形態４の効果＞
　実施の形態４によれば、ロータリ圧縮機１００は、すべり軸受２１の内周面に、すべり軸受２１の内周面よりも径方向外側に凹んだ静圧ポケット３２を有する。静圧ポケット３２は、貫通孔３０の設置箇所を含む領域に形成されている。

　この構成によれば、減速運転時に、潤滑油タンク２９に貯留した高圧の潤滑油が回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間に均一に供給される。これにより、すべり軸受２１が静圧軸受になり、回転軸５に作用する径方向の荷重が静圧軸受によって支持できる。

　実施の形態４によれば、静圧ポケット３２は、すべり軸受２１の内周面に全領域を囲まれて形成されている。

　この構成によれば、潤滑油が静圧ポケット３２からすべり軸受２１の外部に漏洩しない。これにより、すべり軸受２１が静圧軸受になる。

実施の形態５．
＜すべり軸受２１の構成＞
　図１７は、実施の形態５に係るすべり軸受２１を縦断面にて示す説明図である。実施の形態５では、上記実施の形態１、実施の形態２、実施の形態３及び実施の形態４と同事項の説明が省略され、その特徴部分のみが説明されている。

　図１７に示すように、静圧ポケット３２を有する貫通孔３０には、流量変更機構３１が設けられても良い。流量変更機構３１は、静圧ポケット３２の深さまでの貫通孔３０の範囲に設けられるため、設計の自由度が上がる。

　実施の形態４では、減速運転時が開始し、油膜２２の油膜圧力が潤滑油タンク２９内に貯留している潤滑油の圧力より少しでも下回ったら、潤滑油が、潤滑油タンク２９から貫通孔３０と静圧ポケット３２とを介して、回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給される。

　一方、実施の形態５では、流量変更機構３１は、油膜２２の油膜圧力と潤滑油タンク２９内に貯留している潤滑油の圧力との差圧が任意の値の場合に作動する。このため、減速運転が始まってすぐに潤滑油の供給が始まるのではなく、減速により流量変更機構３１が作動する圧力まで油膜２２の油膜圧力が低下すると、潤滑油が、潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して、回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給される。

　また、ゆっくりと減速する場合においても、給油の不足が懸念される低速運転まで、潤滑油タンク２９に貯留した高圧の潤滑油を保持しておき、低速運転時のような低い油膜２２の油膜圧力と、潤滑油タンク２９内に貯留している潤滑油の圧力と、の差圧が任意の値になった時に、潤滑油が、潤滑油タンク２９から貫通孔３０と静圧ポケット３２とを介して、回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給できる。静圧ポケット３２を組み込むことにより、高荷重のままの減速運転時においても、供給した潤滑油の圧力に静圧ポケット３２の面積を乗じた荷重を支持しつつ給油量が保持できる。これにより、回転軸５とすべり軸受２１との接触による回転軸５又はすべり軸受２１の摩耗又は焼付きなどの故障が抑制できる。

＜変形例４＞
　図１８は、実施の形態５の変形例４に係るすべり軸受２１を縦断面にて示す説明図である。図１８に示すように、貫通孔３０を複数設ける場合でも、各貫通孔に対して流量変更機構３１が設けられると良い。

＜変形例４の作用＞
　潤滑油が油膜２２から貫通孔３０を介して潤滑油タンク２９に貯留される場合に必要な油膜２２の油膜圧力と潤滑油タンク２９の潤滑油の圧力との差圧と、潤滑油タンク２９から貫通孔３０と静圧ポケット３２とを介して、回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給される場合に必要な油膜２２の油膜圧力と潤滑油タンク２９の潤滑油の圧力との差圧と、がそれぞれ設定できる。

　また、定常運転時に油膜圧力が異なる位置から潤滑油タンク２９に潤滑油が貯留できる。それぞれの貫通孔３０が油膜２２に接続した位置にて、潤滑油が潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して供給できる。特に、図５に示すような定常運転時の油膜圧力分布２４より低速運転時の油膜圧力分布２７が高い値を示す箇所を避け、高圧の潤滑油が潤滑油タンク２９から貫通孔３０と静圧ポケット３２とを介して供給できる。

実施の形態６．
＜すべり軸受２１の構成＞
　図１９は、実施の形態６に係るすべり軸受２１を縦断面にて示す説明図である。実施の形態６では、上記実施の形態１、実施の形態２、実施の形態３、実施の形態４及び実施の形態５と同事項の説明が省略され、その特徴部分のみが説明されている。

　図１９に示すように、潤滑油タンク２９は、仕切板３３と、加圧部３４と、を有する。

　仕切板３３は、潤滑油タンク２９の内部のタンク内容積を変更自在に２室に分ける。仕切板３３によって潤滑油タンク２９の内部の径方向内側に仕切られた１室は、貫通孔３０に連通されている。

　加圧部３４は、仕切板３３よりも径方向外側の１室内に配置され、仕切板３３を径方向外側から加圧する。加圧部３４は、ばねなどで構成されている。

＜変形例５＞
　図２０は、実施の形態６の変形例５に係るすべり軸受２１を縦断面にて示す説明図である。図２０に示すように、貫通孔３０が複数設けられても良い。

＜変形例６＞
　図２１は、実施の形態６の変形例６に係るすべり軸受２１を縦断面にて示す説明図である。図２１に示すように、貫通孔３０内には、流量変更機構３１が設けられても良い。

＜変形例７＞
　図２２は、実施の形態６の変形例７に係るすべり軸受２１を縦断面にて示す説明図である。図２２に示すように、複数の貫通孔３０が設けられても良い。複数の貫通孔３０内のそれぞれには、流量変更機構３１が設けられても良い。

＜作用＞
　減速運転時に、潤滑油を潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して、回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給する場合には、実施の形態１と実施の形態２と実施の形態３と実施の形態４と実施の形態５とでは、潤滑油タンク２９内の潤滑油の貯留量の減少に伴い、潤滑油タンク２９内の潤滑油の圧力が低下する。

　一方、実施の形態６では、潤滑油タンク２９内の潤滑油の貯留量の減少に伴い、仕切板３３が加圧部３４で押される。このため、潤滑油タンク２９内の潤滑油の圧力低下を抑えながら、潤滑油が、潤滑油タンク２９から貫通孔３０を介して、回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給できる。

＜実施の形態６の効果＞
　実施の形態６によれば、潤滑油タンク２９は、内部のタンク内容積を変更自在に２室に分ける仕切板３３を有する。潤滑油タンク２９は、仕切板３３を径方向外側から加圧する加圧部３４を有する。

　この構成によれば、定常運転が短く潤滑油タンク２９への貯留量が少量の場合でも、潤滑油タンク２９内の圧力が保持できる。これにより、減速運転時に高圧の潤滑油が潤滑油タンク２９から供給できる。また、潤滑油タンク２９から潤滑油を供給する場合には、潤滑油タンク２９内の潤滑油の貯留量が少なくなると、残留している潤滑油の圧力が低下し、潤滑油タンク２９内の潤滑油の圧力と、回転軸５とすべり軸受２１との間の隙間に存在する潤滑油と、の差圧が低下する。そのため、潤滑油タンク２９からの供給量が低下する。しかし、この構成により、加圧部３４が仕切板３３を加圧して潤滑油タンク２９からの排斥力が維持でき、潤滑油が潤滑油タンク２９から供給できる。

実施の形態７．
＜すべり軸受２１の内周面における貫通孔３０と静圧ポケット３２との関係＞
　図２３は、実施の形態７に係るすべり軸受２１の内周面における貫通孔３０と静圧ポケット３２との関係を示す展開図である。図２４は、実施の形態７の変形例８に係るすべり軸受２１の内周面における貫通孔３０と静圧ポケット３２との関係を示す展開図である。図２５は、実施の形態７の変形例９に係るすべり軸受２１の内周面における貫通孔３０と静圧ポケット３２との関係を示す展開図である。図２６は、実施の形態７の変形例１０に係るすべり軸受２１の内周面における貫通孔３０と静圧ポケット３２との関係を示す展開図である。実施の形態７では、上記実施の形態１、実施の形態２、実施の形態３、実施の形態４、実施の形態５及び実施の形態６と同事項の説明が省略され、その特徴部分のみが説明されている。

　図２３、図２４、図２５及び図２６に示すように、貫通孔３０と静圧ポケット３２とは、すべり軸受２１の内周面のどの位置に形成しても、減速運転時に潤滑油を潤滑油タンク２９から回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給し、潤滑油の供給量が確保できる。ただし、貫通孔３０と静圧ポケット３２とは、連通している。

　なお、図示上の横幅は、すべり軸受２１の１回りの周長である。周方向位置θは、図５のθに対応している。図示上の縦幅は、すべり軸受２１の軸受長である。特に、実施の形態７では、貫通孔３０と静圧ポケット３２とは、周方向位置θがπ～０ｒａｄ.の間に設けられている。

＜作用＞
　定常運転時には、高圧の潤滑油が貫通孔３０を介して潤滑油タンク２９に貯留される。一方、減速運転時には、潤滑油タンク２９に貯留した高圧の潤滑油が貫通孔３０を介して、回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に供給される。そのため、減速運転時において、潤滑油の供給量が確保でき、かつ、油膜２２の油膜圧力が上昇できる。このため、回転軸５とすべり軸受２１との接触による回転軸５又はすべり軸受２１の摩耗又は焼付きなどの故障が抑制できる。

　なお、実施の形態１、実施の形態２、実施の形態３、実施の形態４、実施の形態５、実施の形態６及び実施の形態７は、組み合わせられても良いし、他の部分に適用されても良い。

実施の形態８．
＜冷凍サイクル装置１０１＞
　図２７は、実施の形態８に係るロータリ圧縮機１００を適用した冷凍サイクル装置１０１を示す冷媒回路図である。

　図２７に示すように、冷凍サイクル装置１０１は、ロータリ圧縮機１００、凝縮器１０２、膨張弁１０３及び蒸発器１０４を備える。これらロータリ圧縮機１００、凝縮器１０２、膨張弁１０３及び蒸発器１０４が冷媒配管で接続されて冷媒回路を形成している。そして、蒸発器１０４から流出した冷媒は、ロータリ圧縮機１００に吸入されて高温高圧となる。高温高圧となった冷媒は、凝縮器１０２において凝縮されて液体になる。液体となった冷媒は、膨張弁１０３で減圧膨張されて低温低圧の気液二相となり、気液二相の冷媒が蒸発器１０４において熱交換される。

　実施の形態１、実施の形態２、実施の形態３、実施の形態４、実施の形態５、実施の形態６及び実施の形態７のロータリ圧縮機１００は、このような冷凍サイクル装置１０１に適用できる。なお、冷凍サイクル装置１０１としては、たとえば空気調和装置、冷凍装置又は給湯器などが挙げられる。

＜実施の形態８の効果＞
　実施の形態８によれば、冷凍サイクル装置１０１は、上記のロータリ圧縮機１００を備える。

　この構成によれば、冷凍サイクル装置１０１が上記のロータリ圧縮機１００を備えるので、潤滑油が回転軸５とすべり軸受２１との間の油膜２２に十分に供給でき、回転軸５とすべり軸受２１との間が接触せずに摩耗又は焼付きといった故障が抑制できる。

　１　シェル、２　モータ、３　固定子、４　回転子、５　回転軸、６　上軸受、７　偏芯軸、８　ベーン、９　ベーン押さえばね、１０　下軸受、１１　シリンダ、１２　圧縮室、１２ａ　吸入用圧縮室、１２ｂ　吐出用圧縮室、１３　ローリングピストン、１４　圧縮機構部、１５　給油孔、１６　開口部、１７　油溜り、１８　流出口、１９　吸入口、２０　吐出口、２１　すべり軸受、２２　油膜、２３　軸心位置、２４　油膜圧力分布、２５　軸心軌跡、２６　軸心位置、２７　油膜圧力分布、２９　潤滑油タンク、３０　貫通孔、３０ａ　第１孔、３０ｂ　第２孔、３１　流量変更機構、３２　静圧ポケット、３３　仕切板、３４　加圧部、３５　弁体、３５ａ　第１弁体、３５ｂ　第２弁体、３６　押圧部、３６ａ　第１押圧部、３６ｂ　第２押圧部、３７　微細流路、１００　ロータリ圧縮機、１０１　冷凍サイクル装置、１０２　凝縮器、１０３　膨張弁、１０４　蒸発器、２００　ロータリ圧縮機。

Claims

　流体圧縮用の回転軸と、
　前記回転軸に作用する径方向の荷重を支持するすべり軸受と、
　前記回転軸及び前記すべり軸受が収容され、底部に潤滑油を溜める油溜りが形成されたシェルと、
を備え、
　前記回転軸には、軸方向に貫通した給油孔が設けられ、
　前記回転軸には、前記給油孔に連通し、前記すべり軸受の支持箇所にて前記回転軸の外周面に開口した開口部が設けられ、
　前記すべり軸受には、前記すべり軸受の支持箇所にて前記すべり軸受の内周面から外周面に貫通した貫通孔が設けられ、
　前記貫通孔に連通し、潤滑油を溜める潤滑油タンクを有するロータリ圧縮機。
　前記潤滑油タンクは、前記回転軸と前記すべり軸受との間の隙間に潤滑油が十分に供給されている定常運転時に、前記隙間に存在する高圧な潤滑油を貯留するとともに、前記回転軸と前記すべり軸受との間の隙間の潤滑油の供給が不足し、かつ、前記回転軸と前記すべり軸受との間の隙間に存在する潤滑油の圧力が低下する減速運転時に、貯留した高圧な潤滑油を前記回転軸と前記すべり軸受との間の隙間に供給する請求項１に記載のロータリ圧縮機。
　前記潤滑油タンクは、前記すべり軸受の外周面に配置されている請求項１又は請求項２に記載のロータリ圧縮機。
　前記貫通孔は、複数設けられている請求項１～請求項３のいずれか１項に記載のロータリ圧縮機。
　前記貫通孔には、前記回転軸と前記すべり軸受との間の隙間から前記潤滑油タンクへの潤滑油の流量と、前記潤滑油タンクから前記回転軸と前記すべり軸受との間の隙間への潤滑油の流量と、を異ならせる流量変更機構が設けられている請求項１～請求項４のいずれか１項に記載のロータリ圧縮機。
　前記流量変更機構は、
前記貫通孔内に配置され、前記貫通孔を開閉する弁体と、
前記弁体を径方向内側に押圧して前記貫通孔を前記弁体によって閉塞し、前記回転軸と前記すべり軸受との間の隙間から前記潤滑油タンクに潤滑油を貯留する場合に前記弁体を開弁させる押圧部と、
前記弁体に形成され、前記押圧部が前記弁体を押圧して前記貫通孔を前記弁体によって閉塞した状態でも前記潤滑油タンクから前記回転軸と前記すべり軸受との間の隙間に潤滑油を供給する微細流路と、
を有する請求項４又は請求項５に記載のロータリ圧縮機。
　前記貫通孔は、第１孔と、第２孔と、を含み、
　前記流量変更機構は、
前記第１孔内に配置され、前記第１孔を開閉する第１弁体と、
前記第１弁体を径方向内側に押圧して前記第１孔を前記第１弁体によって閉塞し、前記回転軸と前記すべり軸受との間の隙間から前記潤滑油タンクに潤滑油を貯留する場合に前記第１弁体を開弁させる第１押圧部と、
前記第２孔内に配置され、前記第２孔を開閉する第２弁体と、
前記第２弁体を径方向外側に押圧して前記第２孔を前記第２弁体によって閉塞し、前記潤滑油タンクから前記回転軸と前記すべり軸受との間の隙間に潤滑油を供給する場合に前記第２弁体を開弁させる第２押圧部と、
を有する請求項４又は請求項５に記載のロータリ圧縮機。
　前記すべり軸受の内周面に、前記すべり軸受の内周面よりも径方向外側に凹んだ静圧ポケットを有し、
　前記静圧ポケットは、前記貫通孔の設置箇所を含む領域に形成されている請求項１～請求項７のいずれか１項に記載のロータリ圧縮機。
　前記静圧ポケットは、前記すべり軸受の内周面に全領域を囲まれて形成されている請求項８に記載のロータリ圧縮機。
　前記潤滑油タンクは、
内部のタンク内容積を変更自在に２室に分ける仕切板と、
前記仕切板を径方向外側から加圧する加圧部と、
を有する請求項１～請求項９のいずれか１項に記載のロータリ圧縮機。
　前記すべり軸受は、上軸受と、下軸受と、を含み、
　前記開口部と前記貫通孔と前記潤滑油タンクとは、前記上軸受及び前記下軸受のそれぞれに設けられている請求項１～請求項１０のいずれか１項に記載のロータリ圧縮機。
　請求項１～請求項１１のいずれか１項に記載のロータリ圧縮機を備える冷凍サイクル装置。