WO2019146277A1 - 経皮吸収シートの製造方法 - Google Patents

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    • A61M37/00Other apparatus for introducing media into the body; Percutany, i.e. introducing medicines into the body by diffusion through the skin

Definitions

  • the shape of the first layer of the percutaneous absorption sheet to be produced is stably formed, and then the second layer is formed. It can be carried out. Therefore, the percutaneous absorption sheet of a stable shape can be manufactured as the whole percutaneous absorption sheet.
  • the above-mentioned material as a medicine, it can be used as a percutaneous absorption sheet for medical use and cosmetic use.
  • Step S12 First, as shown in FIG. 9, the mold 13 manufactured by the above manufacturing method is prepared.
  • the mold 13 is prepared in the aseptic chamber 40 in order to be performed in an aseptic environment.
  • an isolator can be mentioned.
  • the container main body 24 and the lid 26 it is preferable to connect the container main body 24 and the lid 26 so that a foreign material, bacteria, etc. do not mix from a connection part.
  • the container body 24 and the lid 26 can be connected so as not to mix in foreign substances and bacteria, they may be connected by screws or bolts. In this case, the drying container 28 can be recycled.

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Abstract

製造設備のコストを抑え、かつ、経皮吸収シートの量産に対応した経皮吸収シートの製造方法を提供する。針状凹部(15)を有するモールド(13)に対して、針状凹部(15)に薬剤を含むポリマー溶解液(122)を充填する充填工程と、ポリマー溶解液(122)が充填されたモールドを、乾燥用容器(28)に収納する収納工程と、ポリマー溶解液(122)を乾燥する乾燥工程と、を有し、乾燥用容器(28)は、少なくとも一部が、微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成されており、他の部分が密閉された容器であり、微生物不透過性が、LRV≧3.0であり、充填工程及び収納工程は無菌環境下で行い、乾燥工程は乾燥用容器(28)を無菌環境外に置いて行う経皮吸収シートの製造方法である。

Description

経皮吸収シートの製造方法
 本発明は、経皮吸収シートの製造方法に係り、特に、針状凹部が形成されたモールドを用いて形状転写により経皮吸収シートを製造する方法に関する。
 生体表面、即ち皮膚や粘膜などから、薬品などを投与する方法として、薬剤を含有する高アスペクト比の針状凸部(以下、「微小針」、又は、「マイクロニードル」ともいう)が形成された経皮吸収シートを用い、針状凸部を皮膚内に挿入することにより、薬品を注入する方法が行われている。
 経皮吸収シートの製造方法として、針状凸部の反転型を有するモールドの針状凹部内に薬剤を含んだ溶液を充填し、溶媒を乾燥させた後、賦形剤の溶液をモールドの針状凹部内に充填し、溶媒を乾燥し、モールドから経皮吸収シートを剥離することで、製造する。
 下記の特許文献1、2には、第1の溶解液を充填、乾燥した後、第2の溶解液を充填、乾燥し、シートを剥離することで、マイクロニードルシートを製造する方法が記載されている。
特開2010-233674号公報 特開2011-206178号公報
 薬剤を含有する経皮吸収シートの製造においては、医薬品であるため、無菌室など設備を用いた無菌環境下での製造が求められている。特許文献1は、経皮吸収シートの製造時における環境については、記載されていない。また、特許文献2には、乾燥時の相対湿度は記載されているが、乾燥空気中の異物、菌については考慮されていない。
 経皮吸収シートの製造の全工程を無菌環境下で行うと、無菌環境下とする設備を広くする必要があるため、設備コストが高くなり、製造コストが高くなるという課題があった。
 本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、無菌環境下で行う工程を少なくすることで、製造設備のコストを抑え、かつ、経皮吸収シートの量産に対応した経皮吸収シートの製造方法を提供する。
 本発明は、上記目的を達成するために、針状凹部を有するモールドに対して、針状凹部に薬剤を含むポリマー溶解液を充填する充填工程と、ポリマー溶解液が充填されたモールドを、乾燥用容器に収納する収納工程と、ポリマー溶解液を乾燥する乾燥工程と、を有し、乾燥用容器は、少なくとも一部が、微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成されており、他の部分が密閉された容器であり、微生物不透過性が、LRV(Log Reduction Value:対数減少値)≧3.0であり、充填工程及び収納工程は無菌環境下で行い、乾燥工程は乾燥用容器を無菌環境外に置いて行う経皮吸収シートの製造方法を提供する。
 本発明によれば、充填工程を無菌環境下で行うため、製造される経皮吸収シート内に、異物及び菌などが混入することを防止することができる。また、ポリマー溶解液が充填されたモールドを、微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成された乾燥用容器に無菌環境下で収納することで、乾燥用容器内も無菌環境下にすることができ、乾燥用容器を無菌環境外においても、乾燥用容器内は無菌環境を維持することができる。また、乾燥用容器は、気体透過性も有する材料で形成されているため、乾燥により蒸発した気体を乾燥用容器外に出すことができる。したがって、ポリマー溶解液の乾燥を無菌環境外で行っても、異物及び菌などの混入を防止することができる。ポリマー溶解液の乾燥を無菌環境外で行うことで、製造工程において、無菌環境下で行う工程の時間を減らすことができ、大型の無菌環境設備を用いることなく、経皮吸収シートの製造を行うことができ、設備コストを下げることができる。また、無菌環境下、及び、無菌環境が維持された乾燥用容器内で作業することができるので、異物及び菌の混入の無い安全な経皮吸収シートを製造することができる。
 本発明の別の態様においては、乾燥用容器は、フィルターを備える通気口を有し、フィルターが、微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成されていることが好ましい。
 この態様は、乾燥用容器の一態様を示したものであり、乾燥用容器にフィルターを備える通気口を有し、このフィルターを微生物不透過性及び気体不透過性の材料とすることで、通気口からの異物及び菌の混入を防止し、乾燥により蒸発した気体を通気口から逃がすことで、乾燥を進めることができる。
 本発明の別の態様においては、乾燥用容器は、開口部が形成され、モールドを収納する容器本体と、開口部を覆う蓋体と、を有し、蓋体が、微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成されていることが好ましい。
 この態様は、乾燥用容器の一態様を示したものであり、蓋体を微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成することで、異物及び菌の混入を防止し、乾燥により蒸発した気体を乾燥用容器内から逃がすことができる。また、蓋体を気体透過性の材料で形成することで、乾燥速度を速くすることができる。
 本発明の別の態様においては、蓋体及び容器本体が、微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成されていることが好ましい。
 この態様は、乾燥用容器の一態様を示したものであり、蓋体及び容器本体の両方を、微生物不透過性及び気体透過性の材料とすることで、異物及び菌の混入を防止し、乾燥により蒸発した気体を乾燥用容器内から逃がすことができる。また、蓋体及び容器本体の乾燥用容器全体を気体透過性の材料で形成することで、乾燥速度を速くすることができる。
 本発明の別の態様においては、充填工程は、第1層目となる薬剤を含む第1のポリマー溶解液を針状凹部に充填する第1の充填工程と、第2層目となる第2のポリマー溶解液を針状凹部に充填する第2の充填工程と、からなり、第2の充填工程の後に、収納工程及び乾燥工程を行うことが好ましい。
 この態様によれば、薬剤を含む第1のポリマー溶解液を針状凹部に充填した後、第2のポリマー溶解液を充填することで、製造される経皮吸収シートの針状凸部の先端側に薬剤を集中させることができる。
 本発明の別の態様においては、充填工程は、第1層目となる薬剤を含む第1のポリマー溶解液を針状凹部に充填する第1の充填工程と、第2層目となる第2のポリマー溶解液を針状凹部に充填する第2の充填工程と、からなり、第1の充填工程及び第2の充填工程のそれぞれの工程後に、収納工程及び乾燥工程を行い、第1の充填工程後の乾燥工程と、第2の充填工程と、の間に乾燥用容器の表面を無菌処理する無菌処理工程を有することが好ましい。
 この態様によれば、第1の充填工程を行った後に、乾燥工程を行うことで、製造される経皮吸収シートの第1層の形状を安定して形成した後、第2層の形成を行うことができる。したがって、経皮吸収シート全体として、安定した形状の経皮吸収シートを製造することができる。
 また、第1の充填工程後の乾燥工程において、無菌環境外に出された乾燥用容器は、第2の充填工程を行うために無菌環境下に置かれる前に、乾燥用容器の表面を無菌処理している。したがって、第2の充填工程で乾燥用容器を再度、無菌環境下に置いても、無菌環境を維持し、異物及び菌の混入を防止して経皮吸収シートの製造を行うことができる。
 本発明の別の態様においては、無菌処理工程が、オートクレーブ、又は、電子線照射であることが好ましい。
 この態様によれば、オートクレーブ、又は、電子線照射により無菌処理を行うことで、乾燥用容器表面に付着した菌を滅菌することができる。
 本発明の別の態様においては、微生物不透過性及び気体透過性の材料が多孔質シートであることが好ましい。
 本発明の別の態様においては、多孔質シートが高密度ポリエチレン不織布シートであることが好ましい。
 この態様は、微生物不透過性及び気体透過性の材料を規定したものであり、上記の材料を用いることで、異物及び菌の混入を防止し、乾燥を行うことができる。
 本発明の別の態様においては、薬剤が、ペプチド、タンパク質、核酸、多糖類、ワクチン、水溶性低分子化合物に属する医薬化合物、又は、化粧品成分であることが好ましい。
 この態様によれば、薬剤として上記の材料を用いることで、医療用、化粧品用の経皮吸収シートとして用いることができる。
 本発明の経皮吸収シートの製造方法によれば、経皮吸収シートの製造工程において、時間のかかる乾燥工程を無菌環境外とすることで、無菌環境下で行う時間を減らすことができ、製造設備において無菌環境エリアを狭くすることができ、設備コストを抑えることができる。また、乾燥工程を無菌環境外で行うことで、無菌環境下で充填工程を行うことができ、作業の効率化を図ることができる。したがって、経皮吸収シートの量産に対応することができる。
経皮吸収シートの角錐状の微小針(針状凸部)の斜視図である。 経皮吸収シートの角錐状の微小針(針状凸部)の断面図である。 経皮吸収シートの円錐状の微小針(針状凸部)の斜視図である。 経皮吸収シートの円錐状の微小針(針状凸部)の断面図である。 モールドの製造方法の工程図である。 モールドの製造方法の工程図である。 モールドの製造方法の工程図である。 第1実施形態の経皮吸収シートの製造方法のフローチャートである。 第1実施形態の経皮吸収シートの製造方法を説明する図である。 乾燥用容器内にモールドを収納した図である。 第1実施形態の経皮吸収シートの製造方法を説明する図である。 第1実施形態の経皮吸収シートの製造方法を説明する図である。 剥離工程を説明する図である。 別の剥離工程を説明する図である。 製造された経皮吸収シートを説明する図である。 乾燥用容器の他の例を示す図である。 第2実施形態の経皮吸収シートの製造方法のフローチャートである。 第2実施形態の経皮吸収シートの製造方法を説明する図である。 第2実施形態の経皮吸収シートの製造方法のフローチャートである。 第3実施形態の経皮吸収シートの製造方法を説明する図である。 第3実施形態の製造方法により製造された経皮吸収シートを説明する図である。
 以下、添付図面に従って、本発明に係る経皮吸収シートの製造方法について説明する。なお、本明細書において、「~」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
 (経皮吸収シート)
 本実施の形態で製造される経皮吸収シートの針状凸部(微小針、マイクロニードルとも称する)について説明する。図1は、経皮吸収シートの角錐状の微小針(針状凸部)の斜視図であり、図2は断面図である。本実施の形態では、四角錐状の針状凸部の例で説明するが、この形状に限定されない。
 図1、2に示すように、経皮吸収シートに形成される微小針(針状凸部)10の形状は、微小針10を皮膚表面に数100μmの深さで刺すために、(1)先端が充分に尖っていて、皮膚内に入る針の径も充分に細い(長さ/径のアスペクト比が高い)こと、(2)充分な強度がある(針が折れ曲がったりしない)こと、が好ましい。
 そのため、(1)の要件を満たすためには、細くて尖った形状が必要であるが、これは(2)に相反し、細すぎると先端や根本で折れ曲がってしまい、太すぎると刺さらないため、図1に示すように、微小針10の稜線10Aは、微小針内側に湾曲した形状とすることが好ましい。このような形状とすることにより、先端を充分に尖らせる一方で、根本を広げることにより、折れにくくすることができる。また、四角錐状の微小針の稜線10A、10Aが該稜線同士の間の四角錐面10Cよりも張り出していることが好ましい。
 微小針10の形状は底面の一辺Xが0.1μm以上1000μm以下の範囲であり、高さが0.3μm以上3000μm以下であることが好ましい。より好ましくは、一辺Xが10μm以上400μm以下の範囲であり、高さが30μm以上1200μm以下である。
 そして、稜線10Aの湾曲の最大深さZは、稜線の始点と終点を結ぶ線分の長さをLとしたとき、0.04×L以上0.2×L以下であることが好ましい。また、微小針10の鋭利性を示す微小針先端10Bの曲率半径Rが20μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以下である。
 なお、図1、2は、四角錐状の微小針10について示しているが、図3、4に示す円錐状や他の三角錐等の角錐状の微小針も同様の大きさであることが好ましい。なお、円錐状の場合においては、底面の直径Xが0.1μm以上1000μm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは50μm以上500μm以下の範囲である。また、円錐面の湾曲の最大深さZは、延水面の母線の始点と終点とを結ぶ線分の長さをLとしたとき、0.04×L以上0.2×L以下であることが好ましい。
 上記のように、経皮吸収シートは微小針が2次元配列で配列された凸部アレイであり、皮膚表面に刺さりやすくするため、微小針先端10Bをシャープにして充分に尖らせることが重要である。微小針先端10Bの曲率半径Rを20μm以下とすることが好ましい。曲率半径Rが20μm以下の先端を有する微小針10を形成するためには、モールド(型)に形成される凸アレイの反転型である針状凹部の先端(底)までポリマー樹脂の溶解液を注入して精密に転写できるかが重要なポイントになってくる。
 また、経皮吸収シートは、薬剤を混入させる必要があるが、薬剤は高価なものが多いことから、コスト面で微小針の部分に集中させて薬剤を含有させること、精度良く充填させることが重要になる。
 [経皮吸収シートの製造方法]
 次に、本発明の実施の形態の経皮吸収シートの製造方法について説明する。
 (モールドの作製)
 図5から7は、モールド(型)の作製の工程図である。
 図5に示すように、経皮吸収シートを製造するためのモールドを作製するための原版を先ず作製する。
 この原版11の作製方法は2種類あり、1番目の方法は、Si基板上にフォトレジストを塗布した後、露光、現像を行う。そして、RIE(Reactive Ion Etching:リアクティブイオンエッチング)等によるエッチングを行うことにより、原版11の表面に円錐の形状部(針状凸部)12のアレイを作製する。なお、原版11の表面に円錐の形状部を形成するようにRIE等のエッチングを行う際には、Si基板を回転させながら斜め方向からのエッチングを行うことにより、円錐の形状を形成することが可能である。
 2番目の方法は、Ni等の金属基板に、ダイヤモンドバイト等の切削工具を用いた加工により、原版11の表面に四角錘などの形状部12のアレイを形成する方法がある。
 次に、モールドの作製を行う。具体的には、図6に示すように、原版11よりモールド13を作製する。原版11は、先端が鋭角な円錐形又は角錐形(例えば四角錐)の形状を有しているため、モールド13に形状が正確に転写され剥離することができ、しかも安価に製造することが可能な以下の方法が考えられる。
 1番目の方法は、原版11にPDMS(polydimethylsiloxane:ポリジメチルシロキサン、例えば、ダウ・コーニング社製のシルガード184)に硬化剤を添加したシリコーン樹脂を流し込み、100℃で加熱処理し硬化した後に、原版11より剥離する方法である。2番目の方法は、紫外線を照射することにより硬化するUV(ultraviolet)硬化樹脂を原版11に流し込み、窒素雰囲気中で紫外線を照射した後に、原版11より剥離する方法である。3番目の方法は、ポリスチレンやPMMA(polymethyl methacrylate:ポリメチルメタクリレート)等のプラスチック樹脂を有機溶剤に溶解させたものを剥離剤の塗布された原版11に流し込み、乾燥させることにより有機溶剤を揮発させて硬化させた後に、原版11より剥離する方法である。
 これにより、原版11の円錐形又は角錐形の反転形状である針状凹部15が2次元配列で配列されたモールド13が作製される。このようにして作製されたモールド13を図7に示す。なお、上記のいずれの方法においてもモールド13は、何度でも容易に作製することが可能である。
 モールド13に用いる材料としては、弾性のある素材、金属製の素材を用いることができる。中でも弾性のある素材であることが好ましく、気体透過性の高い素材であることがさらに好ましい。気体透過性の代表である酸素透過性は、1×10-12(mL/s・m・Pa)より大きいことが好ましく、1×10-10(mL/s・m・Pa)より大きいことがさらに好ましい。気体透過性を上記範囲とすることにより、モールド13の針状凹部15に存在する空気をモールド13側から追い出すことができる。欠陥の少ない医療用経皮吸収シートを製造することができる。このような材料として、具体的には、シリコーン樹脂(例えば、シルガード184、1310ST)、UV硬化樹脂、プラスチック樹脂(例えば、ポリスチレン、PMMA(:ポリメチルメタクリレート))を溶融、又は溶剤に溶解させたものなどを挙げることができる。これらの中でもシリコーンゴム系の素材は繰り返し加圧による転写に耐久性があり、且つ、素材との剥離性がよいため、好適に用いることができる。また、金属製の素材としては、Ni、Cu、Cr、Mo、W、Ir、Tr、Fe、Co、MgO、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、α-酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム、ステンレス(スタバックス材)などやその合金を挙げることができる。
 (ポリマー溶解液)
 本実施形態に使用される経皮吸収シートの材料となるポリマー樹脂の溶解液であるポリマー溶解液について説明する。ポリマー溶解液は、液中に薬剤を含む液(第1のポリマー溶解液に相当する)と、主に、経皮吸収シートのシート部の材料となり、薬剤を含まない基材液(第2のポリマー溶解液)の2種類がある。
 ポリマー溶解液に用いられる樹脂ポリマーの素材としては、生体適合性のある樹脂を用いることが好ましい。このような樹脂としては、グルコース、マルトース、プルラン、デキストラン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルデンプンなどの糖類、ゼラチンなどのタンパク質、ポリ乳酸、乳酸-グリコール酸共重合体などの生分解性ポリマーを使用することが好ましい。これらの中でも、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、または、デキストランを好適に使用することができる。また、ゼラチン系の素材は多くの基材と密着性をもち、ゲル化する材料としても強固なゲル強度を持つため、後述する剥離工程において、基材と密着させることができ、モールドから基材を用いてポリマーシートを剥離することができる。濃度は材料によっても異なるが、溶解液中に樹脂ポリマーが10~50重量%含まれる濃度とすることが好ましい。また、溶解に用いる溶媒は、温水以外であっても揮発性を有するものであればよく、メチルエチルケトン(MEK)、アルコールなどを用いることができる。そして、ポリマー樹脂の溶解液中には、用途に応じて体内に供給するための薬剤を共に溶解させることが可能である。
 ポリマー溶解液の調製方法としては、水溶性の高分子(ゼラチンなど)を用いる場合は、水溶性紛体を水に溶解し、溶解液に薬品を添加することで製造することができる。水に溶解しにくい場合、加温して溶解してもよい。温度は高分子材料の種類により、適宜選択可能であるが、約60℃以下の温度で加温することが好ましい。また、熱で溶融する高分子(マルトースなど)を用いる場合は、原料と薬品を熱して溶解することで、製造することができる。加熱温度としては、原料が溶融する温度で行うことが好ましく、具体的には、約150℃である。
 ポリマー樹脂の溶解液の粘度は、2000Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1000Pa・s以下とすることが好ましい。ポリマー樹脂の溶解液の粘度を適切に調整することにより、モールドの凹部に容易に溶解液を注入することができる。また、薬剤を含む液は、100Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは10Pa・s以下とすることが好ましい。
 (薬剤)
 薬剤は、薬剤としての機能を有するものであれば限定されない。特に、ペプチド、タンパク質、核酸、多糖類、ワクチン、水溶性低分子化合物に属する医薬化合物、及び、化粧品成分から選択することが好ましい。薬剤を含むポリマー溶解液に含有させる水溶性の高分子物質は、含有させる薬剤と相互作用しないものを用いることが好ましい。例えば、タンパク質を薬剤として用いる場合、荷電性の高分子物質を混合すると、タンパク質と高分子物質が静電相互作用によって会合体を形成し凝集、沈殿してしまう。したがって、薬剤に荷電性の物質を用いる場合にはヒドロキシエチルデンプン、デキストランなどの電荷を持たない水溶性高分子物質を用いることが好ましい。
 <経皮吸収シートの製造>
 上記で製造したモールド13を用いた経皮吸収シートの製造方法について説明する。本実施形態の経皮吸収シートの製造方法は、針状凹部15を有するモールド13の針状凹部15に薬剤を含むポリマー溶解液を充填する充填工程と、ポリマー溶解液が充填されたモールド13を乾燥用容器に収納する収納工程と、ポリマー溶解液を乾燥する乾燥工程と、を有する。そして、充填工程及び収納工程は無菌環境下で行い、乾燥工程は乾燥用容器を無菌環境外において行う。また、充填工程は、第1層目となる薬剤を含む第1のポリマー溶解液を針状凹部15に充填する第1の充填工程と、第2層目となる第2のポリマー溶解を針状凹部15に充填する第2の充填工程と、により行うこともできる。また、収納工程、及び、乾燥工程は、第1の充填工程、及び、第2の充填工程のそれぞれの工程後に行うこともできる。なお、本発明において、無菌環境とは、「無菌医薬品製造区域の環境モニタリング法のグレードAに分類される製造区域のことをいい、具体的には、空気の清浄度が、非作業時及び作業時において、0.5μm以上の粒子が3520個/m以下、5.0μm以上の粒子が20個/m以下であり、作業時の環境微生物の許容基準が、空中微生物が浮遊菌1CFU(Colony forming unit)以下/m、落下菌1CFU以下/プレートであり、表面付着微生物がコンタクトプレート1CFU以下/24~30cm、手袋1CFU以下/5指である」ことをいう。
 以下、各実施形態について説明する。
 ≪第1実施形態≫
 図8は、第1実施形態の経皮吸収シートの製造方法のフローチャートである。図9は、第1実施形態の経皮吸収シートの製造方法を説明する図である。図10は、乾燥用容器内にモールドを収納した図である。図11及び図12は、第1実施形態の経皮吸収シートの製造方法を説明する図である。また、図13は、剥離工程を説明する図であり、図14は、別の剥離工程を説明する図である。図15は、製造された経皮吸収シートを説明する図である。
 第1実施形態は、無菌環境下で、薬剤を含む第1のポリマー溶解液22をモールド13の針状凹部15に充填する第1の充填工程(ステップS12)と、第1のポリマー溶解液22が充填されたモールド13を乾燥用容器28内に収納する収納工程(ステップS14)と、無菌環境外で第1のポリマー溶解液22を乾燥する乾燥工程(ステップS16)と、乾燥工程後の乾燥用容器28の表面を無菌処理する無菌処理工程(ステップS18)と、無菌処理工程後の乾燥用容器28を無菌環境下に置き、無菌環境下で、第2のポリマー溶解液32をモールド13の針状凹部15に充填する第2の充填工程(ステップS20)と、第2のポリマー溶解液32が充填されたモールド13を乾燥用容器28内に収納する収納工程(ステップS22)と、無菌環境外で第2のポリマー溶解液32を乾燥する乾燥工程(ステップS24)と、第2のポリマー溶解液32を乾燥することにより製造された経皮吸収シート36を剥離する剥離工程(ステップS26)と、からなる。
 (第1の充填工程:ステップS12)
 まず、図9に示すように、上記の製造方法で製造したモールド13を準備する。第1の充填工程は、無菌環境下で行うため、モールド13を無菌室40内に準備する。無菌室40としては、例えば、アイソレーターを挙げることができる。
 次に、薬剤を含む第1のポリマー溶解液22をモールド13の針状凹部15内に充填する。充填する方法としては、スリットノズルの先端部をモールド13に接触させることで、針状凹部15のみに充填してもよい。また、モールド上に第1のポリマー溶解液22をノズル、又は、ディスペンサー等で塗布して、ブレードをモールドに接触させることで、針状凹部15に第1のポリマー溶解液を充填してもよい。
 (収納工程:ステップS14)
 収納工程は、第1の充填工程により、薬剤を含む第1のポリマー溶解液22が充填されたモールド13を乾燥用容器28に収納する工程である。
 容器本体24の開口部23から第1の充填工程後のモールド13を収納する。図10は、乾燥用容器28内にモールド13を収納した図である。乾燥用容器28内に、複数のモールド13が並んで配置される。図10においては、モールド13は、乾燥用容器28内に2段で配置されているが、特に限定されない。また、乾燥容器28内の平面方向の配置も、特に限定されない。モールド13を乾燥用容器28内に収納した後、微生物不透過性及び気体透過性の材料で開口部23を覆うことで、容器本体24の内部を密閉する。収納工程は、無菌室40内で行っているため、乾燥用容器28内も無菌環境下とすることができる。
 ≪乾燥用容器≫
 乾燥用容器28は、少なくとも一部が、微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成されている。乾燥用容器の一部を微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成することで、ポリマー溶解液の乾燥を行うことができ、かつ、乾燥用容器28外からの異物及び菌の混入を防止し、乾燥用容器28を無菌環境外に置いたとしても、乾燥用容器28内は無菌環境を維持することができる。「微生物不透過性」は、市販の滅菌包材(滅菌用バッグ等)が有する微生物不透過性のレベルであれば足りる。したがって、市販の滅菌包材の中から、目的に応じて、微生物不透過性のレベルを適宜選択すればよい。より具体的には、微生物不透過性として、LRV≧3.0である材料が好ましい。LRVは、下記式により求めることができる。
 LRV=log10(A/B)
  A:材料を透過する前の1mlあたりの微生物の数
  B:材料を透過した後の1mlあたりの微生物の数
 LRVが高い程、微生物が透過する数が少ないため、LRVの上限は特に限定されないが、上限はLRV≦9とすることが好ましい。このような微生物不透過性を確保するためには、孔径が0.2μmの材料を用いることが一般的である。また、微生物不透過性の材料は、気体中の微生物に対して使用される材料、及び、液体中の微生物に対して使用される材料のいずれの材料も用いることができる。
 気体透過性のレベルも目的に応じ適宜選択することができる。気体透過性を有することで、乾燥用容器28内の乾燥により生じた気体を乾燥用容器28外に逃がすことができ、乾燥を進めることができる。気体透過性としては、例えば、TAPI T523に準拠して23℃、相対湿度85%の条件で測定した透湿度が1500~1640g/m/24時間である材料が好ましく、1615g/m/24時間である材料がさらに好ましい。
 このような、微生物不透過性及び気体透過性を有する材料として、多孔質シートを用いることができ、具体的には、高密度ポリエチレン不織布シートを用いることができる。高密度ポリエチレン不織布シートは、繊維径0.5~10μmのポリエチレン極細長繊維をランダムに積層し、熱及び圧力のみで結合させたシートであり、例えば、タイベックシート(登録商標)(デュポン社製)を挙げることができる。
 図9から図11に示す乾燥用容器28は、開口部23が形成された容器本体24と、開口部23を覆う蓋体26と、から構成され、蓋体26を微生物不透過性及び気体透過性の材料としている。容器本体24としては、異物及び菌等が透過しない材料であれば、特に限定されず、金属、プラスチック等を用いることができる。
 また、容器本体24と蓋体26とは、接続部から異物及び菌などが混入しないように接続することが好ましい。確実に接続するためには、溶接などにより接続することが好ましいが、この場合、使用する度に廃棄する必要がある。容器本体24と蓋体26を異物及び菌などが混入しないように接続することができれば、ネジ又はボルト等により接続してもよい。この場合、乾燥用容器28のリサイクルが可能である。
 また、乾燥用容器28としては、容器本体24を微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成した容器とし、容器本体24と蓋体26の両方を微生物不透過性及び気体透過性の材料とすることができる。また、容器本体24のみを微生物不透過性及び気体透過性の材料とすることもできる。容器本体24を気体透過性の材料とすることで、乾燥用容器28の気体が透過する領域を広くすることができるので、乾燥速度を速くすることができる。
 図16は、乾燥用容器の他の例を示す図である。図16に示す乾燥用容器128は、蓋体126にフィルターを備える通気口130を有し、このフィルターを微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成することで、異物及び菌の混入を防止し、ポリマー溶解液の乾燥を行うことができる。通気口130は、蓋体126ではなく、容器本体124に形成してもよい。また、フィルターを備える通気口を2つ設けても良い。このような構成とすることで、一方から乾燥ガスを乾燥用容器128内に流し、他方から乾燥ガスを出すことで、乾燥速度を速くすることもできる。
 (乾燥工程:ステップS16)
 図9に戻り、乾燥工程は、収納工程後、モールド13の針状凹部15に充填された第1のポリマー溶解液22を乾燥する工程である。モールド13は、収納工程において乾燥用容器28に収納されているため、無菌室40外に出しても、乾燥用容器28内の第1のポリマー溶解液22が、菌及び異物により汚染されることなく、乾燥を行うことができる。
 ポリマー溶解液の乾燥は、乾燥速度が速くなると、乾燥による収縮が急に進むため、針状凹部15の形状に沿った針状凸部を形成することが難しくなるため、ゆっくり乾燥させる必要がある。第1のポリマー溶解液22の乾燥は、約3時間かかるが、本実施形態によれば、乾燥工程を無菌室40の外で行うことで、無菌室40内で次のモールド13を用いて第1の充填工程を行うことができる。したがって、乾燥工程の終了を待つことなく、次の経皮吸収シートの製造を行うことができ、生産性を向上させることができる。
 乾燥工程は、温度及び湿度の調整が可能な乾燥庫で行うことが好ましい。また、乾燥庫内を減圧にすることで、ポリマー溶解液の乾燥を速めることもできる。
 (無菌処理工程:ステップS18)
 乾燥工程により第1のポリマー溶解液22の乾燥が終了し薬剤を含む層(第1層)30を形成したら、第2の充填工程を行うため、乾燥用容器28を無菌室40内に戻す。この際、乾燥用容器28の表面を無菌処理する無菌処理工程を行う(図11)。これにより、乾燥用容器28を無菌室40内に戻しても、無菌室40内の無菌環境を維持することができる。
 無菌処理工程としては、オートクレーブ内に乾燥用容器28を入れ、乾燥用容器28の表面を滅菌する方法を挙げることができる。また、乾燥用容器28の表面に電子線照射を行い、乾燥用容器28の表面を滅菌する方法を挙げることができる。
 (第2の充填工程:ステップS20)
 無菌処理工程を行った後、図11に示すように、乾燥用容器28を再度無菌室40内に入れ、乾燥用容器28を開封し、薬剤を含む層30が形成されたモールド13を取り出す。乾燥用容器28は、廃棄してもよく、再利用できる場合は、再利用してもよい。
 第2の充填工程は、第2のポリマー溶解液32(基材液)を針状凹部15に充填する工程である。充填する方法としては、ディスペンサーによる塗布により行うことができる。また、ディスペンサーによる塗布に加えて、バー塗布やスピン塗布、スプレー等による塗布などを適用することができる。
 (収納工程:ステップS22)
 第2の充填工程が終わった後、第2のポリマー溶解液32が充填されたモールド13を乾燥用容器28に収納する。容器本体24の開口部23から第2の充填工程後のモールド13を収納し、微生物不透過性及び気体透過性の材料で開口部23を覆うことで、容器本体24の内部を密閉し、乾燥用容器28内を無菌環境下とする。
 (乾燥工程:ステップS24)
 収納工程で乾燥用容器28に収納された、第2のポリマー溶解液32が充填されたモールド13は、第1の充填工程後の乾燥工程と同様に、無菌室40の外に出され、無菌環境外で乾燥が行われる。第2の充填工程後の乾燥工程においても、収納工程において、無菌室40内で、モールド13を乾燥用容器28内に収納しているため、無菌室外に取出しても乾燥用容器28内の無菌環境を維持することができる。第2の充填工程後の乾燥工程も、第1の充填工程後の乾燥工程と同様の方法により行うことができる。
 第2のポリマー溶解液32の乾燥は、7~8時間かかるが、乾燥工程を無菌室40の外で行うことで、無菌室40内で第1の充填工程、又は、第2の充填工程を行うことができる。したがって、乾燥工程の終了を待つことなく、次の経皮吸収シートの製造を行うことができ、生産性を向上させることができる。
 第2の充填工程後の乾燥工程により、薬剤を含む層30と薬剤を含まない層34とから構成される経皮吸収シート36が形成される(図12)。
 このように、無菌室40は、充填工程(第1の充填工程及び第2の充填工程)及び収納工程を行うスペースがあればよく、乾燥工程を行うための、モールド13又は乾燥用容器28を置くためのスペースは不要である。したがって、製造設備において、無菌室40等の無菌環境エリアを狭くすることができるので、製造設備コストを下げることができる。
 (剥離工程:ステップS26)
 針状凸部が表面に形成された経皮吸収シート36を形成した後、経皮吸収シート36をモールド13から剥離する剥離工程へと進む。
 乾燥工程終了後、経皮吸収シート36が形成されたモールド13を乾燥用容器28内から取り出す。
 経皮吸収シート36をモールド13から剥離する方法は特に限定されない。剥離の際に、針状凸部が曲がったり折れたりしないことが望まれる。具体的には、図13に示すように、経皮吸収シート36の上に、粘着性の粘着層が形成されているシート状の基板38を付着させた後、端部から基板38をめくるように剥離を行うことができる。ただし、この方法では、針状凸部が曲がる可能性がある、そのため、図14に示すように、経皮吸収シート36に吸盤(不図示)で基板38を設置し、エアーで吸引しながら垂直に引き上げる方法を適用することができる。
 通常、本実施形態のように、アスペクト比の高い針状凸部の構造物をモールド13から剥離する場合では、接触面積が大きいことから、強い応力が加わる。針状凸部である微小針が破壊され、モールド13から剥離されることなく針状凹部15内に残存し、作製される経皮吸収シートは欠陥を有することが懸念される。本実施の形態においては、モールド13を構成する材料を、剥離が非常にしやすい材料により構成することが好ましい。また、モールド13を構成する材料を弾性が高く軟らかい材料とすることにより、剥離する際における針状凸部に加えられる応力を緩和することができる。
 図15は、モールド13から剥離された経皮吸収シート36を示している。経皮吸収シート36は、薬剤を含む層30と、実質的に薬剤を含まない層34とで構成される。
 ≪第2実施形態≫
 図17は、第2実施形態の経皮吸収シートの製造方法のフローチャートであり、図18は第2実施形態の経皮吸収シートの製造方法を説明する図である。
 第2実施形態は、無菌環境下で、薬剤を含む第1のポリマー溶解液22をモールド13の針状凹部15に充填する第1の充填工程(ステップS32)と、第2のポリマー溶解液32をモールド13の針状凹部15内に充填する第2の充填工程(ステップS34)と、第1のポリマー溶解液22及び第2のポリマー溶解液32が充填されたモールド13を乾燥用容器28内に収納する収納工程(ステップS36)と、無菌環境外で第1のポリマー溶解液22及び第2のポリマー溶解液32を乾燥する乾燥工程(ステップS38)と、乾燥工程により製造された経皮吸収シート36を剥離する剥離工程(ステップS40)と、からなる。すなわち、第2実施形態は、第1のポリマー溶解液22を充填した後、第1のポリマー溶解液22の乾燥を行わず、連続して第2のポリマー溶解液32の充填を行っている点で、第1実施形態と異なっている。
 図18に示すように、モールド13を無菌室40内に準備する。次に、薬剤を含む第1のポリマー溶解液22をモールド13の針状凹部15に充填する(第1の充填工程)。第1のポリマー溶解液22を充填する方法としては、第1実施形態と同様の方法により行うことができる。
 次に、第1のポリマー溶解液22が充填されたモールド13の針状凹部15に、第2のポリマー溶解液32を充填する(第2の充填工程)。第2のポリマー溶解液32の充填は、第1のポリマー溶解液22の上に、ディスペンサーにより第2のポリマー溶解液32を塗布することにより行うことができる。また、ディスペンサーによる塗布に加えて、バー塗布やスピン塗布、スプレー等による塗布などを適用することができる。これにより、針状凹部15内に第2のポリマー溶解液32を充填することができる。
 第2の充填工程の終了後、第1のポリマー溶解液22及び第2のポリマー溶解液32が充填されたモールド13を乾燥用容器28に収納し(収納工程)、乾燥工程及び剥離工程を行う。収納工程、乾燥工程及び剥離工程については、第1実施形態と同様の方法により行うことができるので、その説明を省略する。第2実施形態の製造方法により、第1実施形態と同様に、図15に示す薬剤を含む層30と実質的に薬剤を含まない層34の2層からなる経皮吸収シート36が製造される。
 第2実施形態によれば、薬剤を経皮吸収シートの針状凸部の先端に薬剤を集中させることができ、かつ、無菌環境下での作業を1度で終わらせることができ、製造工程を簡略化することができる。
 (第3実施形態)
 図19は、第3実施形態の経皮吸収シートの製造方法のフローチャートであり、図20は第3実施形態の経皮吸収シートの製造方法を説明する図であり、図21は第3実施形態の製造方法により製造された経皮吸収シートを説明する図である。
 第3実施形態は、無菌環境下で、薬剤を含むポリマー溶解液122をモールド13の針状凹部15に充填する充填工程(ステップS52)と、ポリマー溶解液122が充填されたモールド13を乾燥用容器28内に収納する収納工程(ステップS54)と、無菌環境外でポリマー溶解液122を乾燥する乾燥工程(ステップS56)と、乾燥工程により製造された経皮吸収シート136を剥離する剥離工程(ステップS58)と、からなる。すなわち、第3実施形態は1度の充填工程により、薬剤を含むポリマー溶解液122を、モールド13の針状凹部15に充填している点で、第2実施形態と異なっている。
 図20に示すように、モールド13を無菌室40内に準備する。次に、薬剤を含むポリマー溶解液122をモールド13の針状凹部15に充填する(充填工程)。ポリマー溶解液122を充填する方法としては、スリットノズルの先端部をモールド13に接触させることで、針状凹部15のみに充填してもよい。また、モールド上にポリマー溶解液122をノズル、又は、ディスペンサー等で塗布して、ブレードをモールドに接触させることで、針状凹部15にポリマー溶解液122を充填してもよい。
 ポリマー溶解液122としては、第1実施形態及び第2実施形態で用いられた第1のポリマー溶解液22と同様のポリマー溶解液を用いることができる。ただし、第1実施形態及び第2実施形態においては、製造される経皮吸収シートの針状凸部の先端側にのみ薬剤を集中させているため、第3実施形態においては、ポリマー溶解液122中の薬剤の濃度を第1のポリマー溶解液22の薬剤の濃度より低くすることが好ましい。
 充填工程の終了後、ポリマー溶解液122が充填されたモールド13を乾燥用容器28に収納し(収納工程)、乾燥工程及び剥離工程を行う。収納工程、乾燥工程及び剥離工程については、第1実施形態と同様の方法により行うことができるので、その説明を省略する。第3実施形態の製造方法により、図21に示す薬剤を含む層131の1層からなる経皮吸収シート136が製造される。
 第3実施形態によれば、充填工程が一度で済むので、より製造工程を簡略化することができる。
 以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容に、処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものでもない。
 <実施例>
 (モールドの作製)
 一辺40mmの平滑なアルミーゴ板の表面に、底面が500μmの直径で、650μmの高さの円錐が形成された針状構造の形状部を、1000μmのピッチLにて10列×10行の2次元配列に研削加工することで、原版を作製した。
 この原版の上に、シリコーンゴム(ダウ・コーニング社製MED-4210)を0.700mmの厚みで膜を形成し、熱硬化させ、剥離した。これにより、シリコーンゴムの反転品を作製した。このシリコーンゴム反転品の、中央部に10列×10行の2次元配列された針状凹部が形成された、1辺30mmの平面部外を切り落としたものをモールドとして用いた。針状凹部の開口部が露出する面をモールド表面とした。
 (ポリマー溶解液の調製)
 デキストラン70(名糖産業社製)を水で溶解し、重量百分率40wt%の水溶液に調液した。調液後、3kPaの減圧環境下に4分間晒し、脱気を行った。なお、実施例においては、乾燥による形状を評価するため、薬剤を含まない液を用いて経皮吸収シートの製造を行った。
 上記で製造されたモールドを、アイソレーター内の水平な吸引台上に表面が上になるように設置した。モールド裏面方向からゲージ圧90kPaの吸引圧で減圧して、モールドを吸引台に固定した。シートの材料となるポリマー溶解液約100mgを針状凹部が形成された領域の周囲に設けられた段差部内に滴下した。
 乾燥用容器の容器本体として、260×230×50mmのプラスチック容器を用い、この容器内にポリマー溶解液を滴下した48個のシリコーンゴムモールドを並べた。蓋体として、タイベックシート(デュポン社製1073B)で封をした。
 乾燥用容器に収納したモールドをアイソレーターから出し、23℃/45%RHの環境に設定された乾燥庫でポリマー溶解液を乾燥した。約8時間で、乾燥が終了し、均質な形状の針状凸部を有するポリマーシートを48個形成することができた。
 微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成された乾燥用容器を用いても、乾燥用容器内の48個のモールド上のポリマー溶解液の乾燥速度が同じであり、均質な形状のポリマーシートを形成することができた。
10 微小針(針状凸部)
10A 稜線
10B 微小針先端
10C 四角錐面
11 原版
12 形状部(針状凸部)
13 モールド
15 針状凹部
22 第1のポリマー溶解液
23 開口部
24、124 容器本体
26、126 蓋体
28、128 乾燥用容器
30 薬剤を含む層(第1層)
32 第2のポリマー溶解液
34 薬剤を含まない層
36、136 経皮吸収シート
38 基板
40 無菌室
122 ポリマー溶解液
130 通気口
131 薬剤を含む層

Claims (10)

  1.  針状凹部を有するモールドに対して、前記針状凹部に薬剤を含むポリマー溶解液を充填する充填工程と、
     前記ポリマー溶解液が充填された前記モールドを、乾燥用容器に収納する収納工程と、
     前記ポリマー溶解液を乾燥する乾燥工程と、を有し、
     前記乾燥用容器は、少なくとも一部が、微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成されており、他の部分が密閉された容器であり、
     前記微生物不透過性が、LRV≧3.0であり、
     前記充填工程及び前記収納工程は無菌環境下で行い、前記乾燥工程は前記乾燥用容器を無菌環境外に置いて行う経皮吸収シートの製造方法。
  2.  前記乾燥用容器は、フィルターを備える通気口を有し、
     前記フィルターが、前記微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成されている請求項1に記載の経皮吸収シートの製造方法。
  3.  前記乾燥用容器は、開口部が形成され、前記モールドを収納する容器本体と、前記開口部を覆う蓋体と、を有し、
     前記蓋体が、前記微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成されている請求項1に記載の経皮吸収シートの製造方法。
  4.  前記蓋体及び前記容器本体が、前記微生物不透過性及び気体透過性の材料で形成されている請求項3に記載の経皮吸収シートの製造方法。
  5.  前記充填工程は、第1層目となる前記薬剤を含む第1のポリマー溶解液を前記針状凹部に充填する第1の充填工程と、第2層目となる第2のポリマー溶解液を前記針状凹部に充填する第2の充填工程と、からなり、
     前記第2の充填工程の後に、前記収納工程及び前記乾燥工程を行う請求項1から4のいずれか1項に記載の経皮吸収シートの製造方法。
  6.  前記充填工程は、第1層目となる前記薬剤を含む第1のポリマー溶解液を前記針状凹部に充填する第1の充填工程と、第2層目となる第2のポリマー溶解液を前記針状凹部に充填する第2の充填工程と、からなり、
     前記第1の充填工程及び前記第2の充填工程のそれぞれの工程後に、前記収納工程及び前記乾燥工程を行い、
     前記第1の充填工程後の前記乾燥工程と、前記第2の充填工程と、の間に前記乾燥用容器の表面を無菌処理する無菌処理工程を有する請求項1から4のいずれか1項に記載の経皮吸収シートの製造方法。
  7.  前記無菌処理工程が、オートクレーブ、又は、電子線照射である請求項6に記載の経皮吸収シートの製造方法。
  8.  前記微生物不透過性及び気体透過性の材料が多孔質シートである請求項1から7のいずれか1項に記載の経皮吸収シートの製造方法。
  9.  前記多孔質シートが高密度ポリエチレン不織布シートである請求項8に記載の経皮吸収シートの製造方法。
  10.  前記薬剤が、ペプチド、タンパク質、核酸、多糖類、ワクチン、水溶性低分子化合物に属する医薬化合物、又は、化粧品成分である請求項1から9のいずれか1項に記載の経皮吸収シートの製造方法。
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