WO2019026883A1 - 大環状化合物の製造方法 - Google Patents

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小林 憲史
浩 栗林
伸能 古志野
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住友化学株式会社
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07BGENERAL METHODS OF ORGANIC CHEMISTRY; APPARATUS THEREFOR
    • C07B61/00Other general methods

Abstract

本発明は、下記式(1)で表されるカチオンユニットを有する化合物と、下記式(2)で表されるアニオンユニット及びプロトン性カチオンユニットを有する化合物と、プロトン性化合物、及び下記式(2)で表されるアニオンユニットを有し、かつプロトン性カチオンユニットを有しない化合物、の組み合わせと、からなる群より選択される1種又は2種以上を触媒として用い、下記式(3)で表されるアルデヒドと、下記式(4)で表されるピロール環含有化合物と、を反応させて、大環状化合物(A)を得る工程を含む、大環状化合物の製造方法に関する。

Description

大環状化合物の製造方法
 本発明は、大環状化合物の製造方法に関する。
 本願は、2017年7月31日に、日本に出願された特願2017-148187号に基づき、優先権を主張し、その内容をここに援用する。
 大環状化合物の一例であるポルフィリン誘導体は、自然界でヘム、クロロフィル、ビタミンB12等として存在し、それぞれ酸素の運搬、光合成での光エネルギーの吸収、代謝促進等の役割を担っている。また、それにとどまらず、ポルフィリン誘導体は、人工的な色素や触媒等としても用いられており、その用途は多様である。
 ポルフィリン誘導体は、一般的に、アルデヒドとピロール環含有化合物を酸性条件下で縮合反応させることで製造されており、この反応はローゼムント型縮合反応と呼ばれる(非特許文献1参照)。
 また、ローゼムント型縮合反応は、ポルフィリン誘導体以外にも、ピロール環骨格を有する大環状化合物の製造に利用可能である。このような大環状化合物に金属を配位させたものには、触媒、発光材料、電子注入材料等の各種機能性材料として好適なものがある。
 ローゼムント型縮合反応は酸触媒を必要とし、これまでに、目的物の収率向上のために、種々の酸触媒の使用が検討されてきた。従来のローゼムント型縮合反応としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等を酸性の反応溶媒として用いる方法;触媒量のトリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸等を用いる方法等が知られている。
 ローゼムント型縮合反応においては、水素イオン(H)又はルイス酸が、アルデヒド中のホルミル基(-C(=O)-H)に配位することによって、アルデヒドとピロール環含有化合物との間に化学結合が生じ易くなり、縮合反応が進行すると推測される。しかし、分子レベルでの詳細な反応機構は不明である。
 一方、近年は、量子化学計算の手法を適用することによって、計算機を用いて、有機合成反応時の反応機構をシミュレーションできるようになってきている。この解析手法を利用することにより、分子レベルでの素反応を理解でき、有機合成反応のどの段階で最も大きな活性化エネルギーが必要になるかについても、理解できるようになってきている(非特許文献2参照)。
 活性化エネルギーが最も大きな素反応は、反応機構において律速段階となり、反応効率に大きな影響を与える。この律速段階の活性化エネルギーを低くすることによって、反応効率の向上が可能となる。
J.Am.Chem.Soc.1935,57,2010-2011 有機合成化学協会誌,2003,61,144
 しかし、ローゼムント型縮合反応を行うときには、アルデヒドとピロール環含有化合物との縮合による分子内環化反応が、アルデヒドとピロール環含有化合物との縮合による分子間反応等の目的外の反応との競争となる。そのため、副生成物が生じ易く、目的物である大環状化合物の収率の向上が難しいという問題点がある。
 そこで、本発明は、ピロール環骨格を有する大環状化合物を高収率で製造できる製造方法を提供することを目的とする。
 上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
 [1].下記式(1)で表されるカチオンユニットを有する化合物と、下記式(2)で表されるアニオンユニット及びプロトン性カチオンユニットを有する化合物と、プロトン性化合物、及び下記式(2)で表されるアニオンユニットを有し、かつプロトン性カチオンユニットを有しない化合物、の組み合わせと、からなる群より選択される1種又は2種以上を触媒として用い、下記式(3)で表されるアルデヒドと、下記式(4)で表されるピロール環含有化合物と、を反応させて、大環状化合物(A)を得る工程を含む、大環状化合物の製造方法。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
(式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基である。)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
(式(2)中、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素原子数6~30のアリール基である。)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
(式(3)中、Rは、水素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基である。)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
(式(4)中、Rは単結合又は置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在していてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビレン基であり;R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基である。)
 [2].前記Rが単結合又は置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在していない炭素原子数1~30のヒドロカルビレン基である[1]に記載の大環状化合物の製造方法。
 [3].前記Rが置換されていてもよい炭素原子数6~30のアリール基である、[1]又は[2]に記載の大環状化合物の製造方法。
 [4].前記R及びRが、炭素原子数1~18のアルキル基である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の大環状化合物の製造方法。
 [5].前記Rが置換されていてもよいフェニル基である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の大環状化合物の製造方法。
 [6].[1]~[5]のいずれか一項に記載の大環状化合物の製造方法により、前記大環状化合物(A)を得る工程を行った後に、さらに、前記大環状化合物(A)を酸化することにより、前記大環状化合物(A)の酸化体を得る工程を含む、大環状化合物の製造方法。
 [7].[6]に記載の大環状化合物の製造方法により、前記大環状化合物(A)の酸化体を得る工程を行った後に、さらに、前記大環状化合物(A)の酸化体を金属錯体化することにより、前記大環状化合物(A)の酸化体を含む金属錯体を得る工程を含む、大環状化合物の製造方法。
 本発明によれば、ピロール環骨格を有する大環状化合物を高収率で製造できる製造方法が提供される。
<<大環状化合物の製造方法>>
<第1実施形態>
 本発明の第1実施形態に係る大環状化合物の製造方法は、触媒を用いて、下記式(3)で表されるアルデヒド(本明細書においては「アルデヒド(3)」ということがある。)と、下記式(4)で表されるピロール環含有化合物(本明細書においては「化合物(4)」ということがある。)と、を反応させて、大環状化合物(A)を得る工程を含む。
 本実施形態で用いる前記触媒としては、
 下記式(1)で表されるカチオンユニットを有する化合物(本明細書においては「化合物(1)」ということがある。)と、
 下記式(2)で表されるアニオンユニット及びプロトン性カチオンユニットを有する化合物(本明細書においては「化合物(2-1)」ということがある。)と、
 プロトン性化合物、及び下記式(2)で表されるアニオンユニットを有し、かつプロトン性カチオンユニットを有しない化合物(本明細書においては「化合物(2-2)」ということがある。)、の組み合わせ(本明細書においては「組み合わせ(2-2)」ということがある。)と、
 が挙げられる。そして、本実施形態においては、前記化合物(1)と、前記化合物(2-1)と、前記組み合わせ(2-2)と、からなる群より選択される1種又は2種以上を、前記触媒として用いることができる。
 本明細書において、化合物(1)と化合物(2-1)の両方に該当する化合物は、化合物(2-1)から除くことができる。すなわち、本明細書において、化合物(1)と化合物(2-1)の両方に該当する化合物は、化合物(1)である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
(式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基である。)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
(式(2)中、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素原子数6~30のアリール基である。)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
(式(3)中、Rは、水素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基である。)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012
(式(4)中、Rは単結合又は置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在していてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビレン基であり;R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基である。)
 本実施形態の製造方法によれば、上記のような特定構造を有する触媒を用いることで、従来の製造方法の場合よりも高収率で、大環状化合物(A)が得られる。
 大環状化合物(A)は、後述する大環状化合物(A)の酸化体(本明細書においては「大環状化合物(B)」ということがある。)の製造原料として好適である。
 なお、本明細書において、「置換されていてもよい」とは、特に断りのない限り、対象となる基を構成する水素原子の一部又はすべてが、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1~30のヒドロカルビル基、炭素原子数1~30のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数1~30のハロゲン化ヒドロカルビル基、炭素原子数1~30のハロゲン化ヒドロカルビルオキシ基、又は炭素原子数1~30のヒドロカルビルメルカプト基等の置換基で置換されていてもよいことを意味する。すなわち、「置換されていてもよい」とは、前記置換基で置換されているか、又は置換されていないことを意味する。
 前記ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
 前記置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1~12のヒドロカルビル基、炭素原子数1~12のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数1~12のハロゲン化ヒドロカルビル基、又は炭素原子数1~12のハロゲン化ヒドロカルビルオキシ基であることが好ましく、フッ素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1~8のヒドロカルビル基、又は炭素原子数1~8のフッ化ヒドロカルビル基であることがより好ましく、フッ素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、フェニル基又はトリフルオロメチル基であることが特に好ましい。
 本明細書において、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Prはプロピル基を、Phはフェニル基を、Buはブチル基を、t-Buはターシャリブチル基を、それぞれ表す。
 本明細書において、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等と記載されている場合、これらの基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。
 Rにおける「ヘテロ原子が介在してもよいヒドロカルビレン基」とは、ヒドロカルビレン基中の少なくとも1つの炭素原子が、炭素原子、水素原子以外の原子であるヘテロ原子で置換されていてもよい2価の基を意味する。
 本明細書において、「置換されていてもよい炭素原子数Xの基」(Xは、1以上の整数である)とは、置換されていない状態での前記基の炭素原子数がXであり、Xには置換基の炭素原子数は含まれない。すなわち、置換されている炭素原子数Xの基において、炭素原子の総数は、Xを超えることがある。
 本明細書において、「大環状化合物」とは、4個以上の芳香族環を有し、これら4個以上の芳香族環の環骨格を構成している原子によって、さらに、これら個々の芳香族環よりも環員数(環骨格を構成している原子の数)が多い大環状骨格が構成されている化合物を意味する。ここで、「環骨格を構成している原子」とは、例えば、ピロール環の場合であれば、4個の炭素原子と1個の窒素原子であり、これら炭素原子及び窒素原子に結合している、合計で5個の水素原子は、環骨格を構成している原子ではない。
 本明細書において、「芳香族環」は、環骨格を構成している原子の少なくとも一つがヘテロ原子(例えば窒素原子等)であるヘテロ芳香族環を含む。
 また、本明細書において「大環状骨格」とは、上述のとおり、これよりも環員数が少ない芳香族環ではなく、これら芳香族環によって構成されている、これら芳香族環よりも環員数が多い環骨格を意味する。
 なお、本明細書において、例えば、ベンゾトリアゾール環、ナフタレン環、フェナントロリン環等の、2個以上の芳香族環が縮環した環構造は、1個の芳香族環として取り扱う。
 本実施形態における大環状化合物(A)は、6個以上の芳香族環によって、前記大環状骨格が構成されている化合物であることが好ましく、6個の芳香族環によって、前記大環状骨格が構成されている化合物であることがより好ましい。
 本発明の別の側面としては、本実施形態における大環状化合物(A)は、4個以上9個以下の芳香族環によって前記大環状骨格が構成されている化合物であることが好ましく、4個以上6個以下の芳香族環によって前記大環状骨格が構成されている化合物であることがより好ましい。
 本明細書において、上述の大環状化合物(A)の芳香族環の数を数える場合、前記式(4)で表されるピロール環含有化合物由来の芳香族環の数のみを数え、前記式(3)で表されるアルデヒド由来の芳香族環の数は含めない。
 大環状化合物(A)は、配位可能な原子として4個以上の窒素原子を有するものが好ましく、配位可能な原子として4個以上6個以下の窒素原子を有するものが好ましく、配位可能な原子として4個の窒素原子及び2個の酸素原子を有するものがより好ましい。
 大環状化合物(A)において、その最大の環骨格を構成する最小の原子数(前記大環状骨格の内周を構成する原子の数)は、好ましくは9~50であり、より好ましくは16~33であり、さらに好ましくは17~32であり、特に好ましくは19~20である。
[化合物(1)のカチオンユニット]
 化合物(1)は、前記触媒の1種であり、前記式(1)で表されるカチオンユニットを有する。また、化合物(1)は、その一分子が全体として電気的に中性となるように、このカチオンユニットの対イオンであるアニオンユニットを有する。
 化合物(1)は、前記式(1)で表されるカチオンユニットを有し、Hを放出し得る構造を有しており、ブレンステッド酸として機能する。
 化合物(1)が有するアニオンユニットについては、後ほど別途、詳しく説明する。
 式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基である。すなわち、R~Rは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部(2個)のみ同一であってもよい。
 R~Rの前記ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
 R及びRは、それぞれ独立に好ましくは炭素原子数1~30のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基であり、より好ましくは炭素原子数1~18のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素原子数1~8の直鎖状アルキル基である。
 R及びRの例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数1~30の直鎖状又は分岐鎖状(すなわち鎖状)のアルキル基;
 シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等の炭素原子数3~30の環状飽和ヒドロカルビル基(環状のアルキル基);
 エテニル基、プロペニル基、2-ブテニル基等の炭素原子数2~30のアルケニル基;
 フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、4-フェニルフェニル基等の炭素原子数6~30のアリール基;
 フェニルメチル基(ベンジル基ともいう)、2-フェニルエチル基(フェネチル基ともいう)等の炭素原子数7~30のアリールアルキル基(アラルキル基ともいう)等が挙げられる。
 Rの例としては、R及びRと同じものが挙げられる。
 なかでも、Rは、好ましくは置換されていてもよい炭素原子数6~30のアリール基であり、より好ましくは置換されていてもよいフェニル基であり、さらに好ましくは炭素原子数1~8のヒドロカルビル基で置換されていてもよいフェニル基である。
 R~Rのうち、少なくとも1個(1個、2個又は3個)は、置換されていてもよいアリール基であることが好ましく、少なくとも1個は、置換されていてもよいフェニル基であることがより好ましく、炭素原子数1~8のヒドロカルビル基で置換されていてもよいフェニル基であることがさらに好ましい。
 R及びRは、互いに異なっていてもよいが、互いに同一であることが好ましい。
 R及びRと、Rとは、互いに同一であってもよいが、互いに異なっていることが好ましい。
 前記式(1)で表されるカチオンユニットにおいて、R~Rは、上述の好ましいもの同士の組み合わせであることが好ましい。
 好ましい前記カチオンユニットの例としては、R及びRがそれぞれ独立に炭素原子数1~30のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基であり、かつ、Rが置換されていてもよい炭素原子数6~30のアリール基又はRが置換されていない炭素原子数6~30のアリール基であるものが挙げられる。
 より好ましい前記カチオンユニットの例としては、R及びRがそれぞれ独立に炭素原子数1~18のアルキル基であり、かつ、Rが置換されていてもよい炭素原子数6~30のアリール基又はRが置換されていない炭素原子数6~30のアリール基であるものが挙げられる。
 さらに好ましい前記カチオンユニットの例としては、R及びRがそれぞれ独立に炭素原子数1~8の直鎖状アルキル基であり、かつ、Rが置換されていてもよいフェニル基又はRが置換されていないフェニル基であるものが挙げられる。
 特に好ましい前記カチオンユニットの例としては、R及びRがそれぞれ独立に炭素原子数1~8の直鎖状アルキル基であり、かつ、Rが炭素原子数1~8のヒドロカルビル基で置換されていてもよいフェニル基又はRが置換されていないフェニル基であるものが挙げられる。
 前記式(1)で表されるカチオンユニットの例としては、下記式a1~a12のいずれかで表されるカチオンユニットが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013
 前記式a1~a7で表されるカチオンユニットは、R及びRがアルキル基(鎖状アルキル基)であり、Rが置換されていてもよいアリール基であるカチオンユニットに属する。
 前記式a8~a9で表されるカチオンユニットは、Rがアルキル基(鎖状アルキル基)であり、R及びRが置換されていてもよいアリール基であるカチオンユニットに属する。
 前記式a10で表されるカチオンユニットは、R、R及びRがすべて、置換されていてもよいアリール基であるカチオンユニットに属する。
 前記式a11~a12で表されるカチオンユニットは、R、R及びRがすべてアルキル基(鎖状アルキル基)であるカチオンユニットに属する。
 前記式(1)で表されるカチオンユニットは、Rが置換されていてもよいアリール基である、前記式a1~a10のいずれかで表されるものが好ましく、Rが置換されていてもよいアリール基であり、R及びRがアルキル基である、前記式a1~a7のいずれかで表されるものがより好ましい。
 一分子の化合物(1)を構成している、式(1)で表されるカチオンユニットは、1個だけであってもよいし、2個以上であってもよく、2個以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。例えば、一分子の化合物(1)を構成している前記カチオンユニットが2個以上である場合、これらカチオンユニットは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
[化合物(2-1)又は化合物(2-2)のアニオンユニット]
 前記式(2)で表されるアニオンユニットは、前記触媒の1種である前記化合物(2-1)、又は前記組み合わせ(2-2)(プロトン性化合物及び化合物(2-2)の組み合わせ)を構成する。組み合わせ(2-2)を触媒として用いる場合には、化合物(2-2)をプロトン性化合物と共存させて反応系に添加してもよいし、化合物(2-2)をプロトン性化合物とは分けて反応系に添加してもよい。
 化合物(2-1)は、前記式(2)で表されるアニオンユニットを有する。そして、化合物(2-1)は、その一分子が全体として電気的に中性となるように、このアニオンユニットの対イオンであるプロトン性カチオンユニットを有する。
 本実施形態において、大環状化合物(A)を得るためには、反応系中にプロトン(H)を放出し得るプロトン源が必要である。しかし、前記式(2)で表されるアニオンユニット自体は、プロトンを放出し得る構造を有していない。したがって、前記式(2)で表されるアニオンユニットを利用する場合には、例えば、このアニオンユニットとプロトン性カチオンユニットを有する化合物(2-1)を用いることができる。
 化合物(2-1)が有するプロトン性カチオンユニットについては、後ほど別途、詳しく説明する。
 一方、化合物(2-2)も、前記式(2)で表されるアニオンユニットを有する。ただし、化合物(2-2)は、プロトン性カチオンユニットを有しない。化合物(2-2)は、その一分子が全体として電気的に中性となるように、このアニオンユニットの対イオンである、プロトン性カチオンユニット以外のカチオンユニット(本明細書においては「非プロトン性カチオンユニット」ということがある。)を有する。すなわち、化合物(2-2)は、前記式(2)で表されるアニオンユニットを有し、かつプロトン性カチオンユニットを有さず、かつプロトン性カチオンユニット以外のカチオンユニットを有する化合物である。
 化合物(2-2)自体は、プロトンを放出し得る構造を有していない。したがって、化合物(2-2)を用いる場合には、プロトン性化合物を併用する。
 前記非プロトン性カチオンユニットと、プロトン性化合物については、後ほど別途、詳しく説明する。
 式(2)中、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素原子数6~30のアリール基である。すなわち、Ar~Arは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部(2個又は3個)のみ同一であってもよい。
 Ar~Arの前記アリール基は、それぞれ独立に単環状及び多環状のいずれであってもよい。
 Ar~Arは、好ましくは置換されていてもよいフェニル基又は置換されていないフェニル基であり、より好ましくは、フッ素原子含有基又はヒドロカルビル基で置換されていてもよいフェニル基であり、さらに好ましくはフッ素原子含有基で置換されていてもよいフェニル基である。
 Ar~Arにおける置換基である前記フッ素原子含有基は、フッ素原子を有する基であればよく、フッ素原子であってもよいし、フッ素原子とフッ素原子以外の原子で構成された基であってもよい。
 前記フッ素原子含有基の例としては、フッ素原子、フルオロアルキル基が挙げられ、フルオロアルキル基は、アルキル基中の1個又は2個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたものであり、すべての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基であってもよい。
 前記フルオロアルキル基の炭素原子数は、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、このようなフルオロアルキル基の例としては、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
 Ar~Arにおける置換基である前記ヒドロカルビル基は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数6~30のアリール基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基又はフェニル基であることがさらに好ましい。
 Ar~Arは、特に好ましくは、フェニル基、4-フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、4-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基又は4-フェニルフェニル基であり、最も好ましくはペンタフルオロフェニル基である。
 Ar~Arのうち、2個以上が同一であることが好ましく、3個以上が同一であることがより好ましく、4個すべてが同一であることがさらに好ましい。
 前記式(2)で表されるアニオンユニットの例としては、下記式b1~b8のいずれかで表されるアニオンユニットが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014
 前記式b1~b4で表されるアニオンユニットは、Ar~Arが、フッ素原子又はフルオロアルキル基(パーフルオロアルキル基)で置換されているフェニル基であるアニオンユニットに属する。
 前記式b5で表されるアニオンユニットは、Ar~Arがフェニル基であるアニオンユニットに属する。
 前記式b6~b8で表されるアニオンユニットは、Ar~Arが、アルキル基又はアリール基で置換されているフェニル基であるアニオンユニットに属する。
 前記式(2)で表されるアニオンユニットは、Ar~Arがフッ素原子含有基で置換されているフェニル基である、前記式b1~b4のいずれかで表されるものが好ましい。
 一分子の化合物(2-1)、又は一分子の化合物(2-2)を構成している、式(2)で表されるアニオンユニットは、1個だけであってもよいし、2個以上であってもよく、2個以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。例えば、一分子の化合物(2-1)、又は一分子の化合物(2-2)を構成している前記アニオンユニットが2個以上である場合、これらアニオンユニットは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
[化合物(1)のアニオンユニット]
 化合物(1)が有する前記アニオンユニットは、特に限定されない。
 化合物(1)が有する前記アニオンユニットの例としては、前記式(2)で表されるアニオンユニットが挙げられ、その具体例としては、前記式b1~b8のいずれかで表されるアニオンユニットが挙げられる。
 また、これら以外にも、化合物(1)が有する前記アニオンユニットの例としては、一般的なブレンステッド酸の共役塩基が挙げられる。このような前記アニオンユニットの例としては、I、HSO 、ClO 、Br、Cl、PhSO 、NO 、CFCO 、CClCO 、CFHCO 、CClHCO 、HSO 、CFHCO 、CClHCO 、F、NO 、PhCO 、CHCO 、HCO 、PhO等が挙げられる。
 これら共役塩基の中でも、化合物(1)が有する前記アニオンユニットとしては、I、HSO 、ClO 、Br、Cl、PhSO 、NO 、CFCO 、CClCO 、CFHCO 、CClHCO 、HSO 、CFHCO 、CClHCO 、F、NO 、PhCO が好ましい。その理由は、これら共役塩基にHが補充された化合物は、そのpKa値が比較的小さく、酸触媒として反応を進行させ易いためである。
 さらに、これら共役塩基の中でも、化合物(1)が有する前記アニオンユニットとしては、PhSO 、NO 、CFCO 、CClCO 、CFHCO 、CClHCO 、HSO 、CFHCO 、CClHCO 、F、NO 、PhCO がより好ましく、CFCO 、CClCO 、CFHCO 、CClHCO 、HSO 、CFHCO 、CClHCO がさらに好ましい。その理由は、これら共役塩基にHが補充された化合物は、酸触媒としての作用が強過ぎるということがなく、副生成物の発生を抑制するためである。
 上記の中でも、化合物(1)が有する前記アニオンユニットは、上述の一般的なブレンステッド酸の共役塩基よりも、前記式(2)で表されるアニオンユニットであることが好ましく、前記式b1~b8のいずれかで表されるアニオンユニットであることが特に好ましい。
 一分子の化合物(1)を構成している前記アニオンユニットは、1個だけであってもよいし、2個以上であってもよく、2個以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。例えば、一分子の化合物(1)を構成している前記アニオンユニットが2個以上である場合、これらアニオンユニットは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
[化合物(2-1)のプロトン性カチオンユニット]
 化合物(2-1)が有する前記プロトン性カチオンユニットとしては、プロトン(H)と、プロトンを放出し得るカチオンと、が挙げられる。
 プロトンを放出し得るカチオンの例としては、前記式(1)で表されるカチオンユニットが挙げられ、その具体例としては、前記式a1~a12のいずれかで表されるカチオンユニットが挙げられる。
 上記の中でも、化合物(2-1)が有する前記プロトン性カチオンユニットは、前記式(1)で表されるカチオンユニットであることが好ましく、前記式a1~a12のいずれかで表されるカチオンユニットであることがより好ましい。その理由は、これらカチオンユニットを有する化合物(2-1)は、有機溶媒中で反応を行うときに、溶解性に優れるためである。
 一分子の化合物(2-1)を構成している前記プロトン性カチオンユニットは、1個だけであってもよいし、2個以上であってもよく、2個以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。例えば、一分子の化合物(2-1)を構成している前記プロトン性カチオンユニットが2個以上である場合、これらカチオンユニットは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
[化合物(2-2)の非プロトン性カチオンユニット]
 化合物(2-2)が有する前記非プロトン性カチオンユニットは、プロトン(H)ではなく、プロトンを放出し得ないカチオンであれば、特に限定されない。
 前記非プロトン性カチオンユニットの例としては、公知の各種カチオンが挙げられる。このような非プロトン性カチオンユニットの例としては、Li、Na、K、Cs等の無機カチオン;Ph等の有機カチオンが挙げられる。
 上記の中でも、化合物(2-2)が有する前記非プロトン性カチオンユニットは、Phであることが好ましい。その理由は、このカチオンユニットを有する化合物(2-2)は、有機溶媒中で反応を行うときに、溶解性に優れるためである。
 一分子の化合物(2-2)を構成している前記非プロトン性カチオンユニットは、1個だけであってもよいし、2個以上であってもよく、2個以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。例えば、一分子の化合物(2-2)を構成している前記非プロトン性カチオンユニットが2個以上である場合、これらカチオンユニットは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
 本実施形態においては、例えば、前記触媒を構成するものとして、一分子中に、1個又は2個以上の前記式(2)で表されるアニオンユニットと、2個以上のカチオンユニットと、を有する化合物を用いることができる。このような化合物のうち、カチオンユニットとして、プロトン性カチオンユニット及び非プロトン性カチオンユニットをともに有する化合物は、上述の定義にしたがって、化合物(2-1)に分類される。
[プロトン性化合物]
 化合物(2-2)と組み合わせて用いる前記プロトン性化合物は、プロトン(H)を放出し得る化合物である。
 好ましい前記プロトン性化合物の例としては、CFCOH、CClCOH、CFHCOH、CClHCOH、HSOH(すなわちHSO)、CFHCOH、CClHCOH、HF、HNO、PhCOHが挙げられる。
 本明細書において、化合物(1)とプロトン性化合物の両方に該当する化合物は、プロトン性化合物から除くことができる。すなわち、化合物(1)とプロトン性化合物の両方に該当する化合物は、化合物(1)である。
[組み合わせ(2-2)]
 上述のとおり、組み合わせ(2-2)とは、プロトン性化合物と、化合物(2-2)と、の組み合わせである。
 一組の組み合わせ(2-2)において、前記プロトン性化合物及び化合物(2-2)は、それぞれ1個だけであってもよいし、2個以上であってもよく、2個以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。例えば、一組の組み合わせ(2-2)において、化合物(2-2)が2個以上である場合、これら化合物(2-2)は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
同様に、一組の組み合わせ(2-2)において、プロトン性化合物が2個以上である場合、これらプロトン性化合物は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
 組み合わせ(2-2)におけるプロトン性化合物と、化合物(2-2)のモル比(プロトン性化合物/化合物(2-2))は0.1~100であることが好ましく、0.3~10であることがより好ましく、0.5~3であることがさらに好ましい。
[触媒]
 前記触媒を用いて反応を行う場合には、あらかじめ単離された状態の触媒を反応系に添加して、反応を行ってもよいし、反応系中で発生させた状態の触媒(換言すると、単離された状態ではないもの)を、単離することなく用いて、反応を行ってもよい。
 前記触媒のうち、化合物(1)を反応系中で発生させるためには、例えば、化合物(1)を構成するカチオンユニットを発生させるための化合物、及び化合物(1)を構成するアニオンユニットを発生させるための化合物を、それぞれ反応系に加えて、前記カチオンユニット及びアニオンユニットをそれぞれ発生させればよい。一例を挙げれば、N,N-ジメチルアニリンとトリフルオロ酢酸を、それぞれ反応系に加えることで、反応系中で、前記式a1で表されるカチオンユニットと、CFCO と、をそれぞれ発生させればよい。
 前記触媒のうち、化合物(2-1)を反応系中で発生させるためには、化合物(1)の場合と同様にすればよく、例えば、化合物(2-1)を構成するアニオンユニットを発生させるための化合物、及び化合物(2-1)を構成するプロトン性カチオンユニットを発生させるための化合物を、それぞれ反応系に加えて、前記アニオンユニット及びプロトン性カチオンユニットをそれぞれ発生させればよい。
 前記触媒のうち、組み合わせ(2-2)を反応系中で発生させるためには、例えば、化合物(2-2)を反応系中で発生させればよい。
 化合物(2-2)を反応系中で発生させるためには、化合物(1)の場合と同様にすればよく、例えば、化合物(2-2)を構成するアニオンユニットを発生させるための化合物、及び化合物(2-2)を構成する非プロトン性カチオンユニットを発生させるための化合物を、それぞれ反応系に加えて、前記アニオンユニット及び非プロトン性カチオンユニットをそれぞれ発生させればよい。
 先に説明したように、前記触媒を構成しているカチオンユニット及びアニオンユニットは、それぞれ1個だけであってもよいし、2個以上であってもよい。
 例えば、N,N―ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートは、化合物(1)及び化合物(2-1)に該当し、1個の前記式a1で表されるカチオンユニットと、1個の前記式b1で表されるアニオンユニットと、を有しており、この触媒を構成しているカチオンユニット及びアニオンユニットは、いずれも1個だけである。
 一方、Ph(BPhは、化合物(2-2)に該当し、1個の前記式b5で表されるアニオンユニットと、1個のカチオンユニットPhと、を有しており、この化合物を構成しているカチオンユニット及びアニオンユニットは、いずれも1個だけである。ただし、この化合物(2-2)は、触媒として用いる場合、プロトン性化合物を併用して、組み合わせ(2-2)として用いることが必要となる。そして、プロトン性化合物は、カチオンユニット(H)及びアニオンユニットを有しているといえる。したがって、例えば、Ph(BPh及びCFCOHからなる組み合わせ(2-2)は、反応系中で、Phと、(BPh(すなわち、式b5で表されるアニオンユニット)と、CFCO と、Hと、を発生し、見かけ上は、カチオンユニット及びアニオンユニットが、いずれも2個となる。
 大環状化合物(A)を得る工程においては、前記触媒として、化合物(1)と、化合物(2-1)と、組み合わせ(2-2)と、からなる群より選択される1種又は2種以上を用いることができる。
 すなわち、大環状化合物(A)を得る工程においては、化合物(1)のみを用いてもよいし、化合物(2-1)のみを用いてもよいし、組み合わせ(2-2)のみを用いてもよいし、化合物(1)、化合物(2-1)、及び組み合わせ(2-2)のいずれか2種又はすべてを併用してもよい。
 そして、化合物(1)自体、化合物(2-1)自体、及び組み合わせ(2-2)自体も、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
 なかでも、本実施形態においては、前記触媒として、化合物(1)及び組み合わせ(2-2)からなる群より選択される1種又は2種以上を用いることが好ましく、化合物(1)を用いることがより好ましい。
 表1に、反応系に添加する前記触媒、前記触媒を構成するカチオンユニットを発生させるための化合物、前記触媒を構成するアニオンユニットを発生させるための化合物、及びプロトン性化合物の例を、添加物1~3として挙げる。
 なお、表1には、「p-q構造の塩」という体裁で記載している添加物があるが、これは、pというカチオンユニットと、qというアニオンユニットと、から構成された塩(化合物)を意味する。そして、pがa1~a12のいずれかである場合には、このp(カチオンユニット)が前記式a1~a12のいずれかで表されるカチオンユニットであることを意味し、qがb1~b8のいずれかである場合には、このq(アニオンユニット)が前記式b1~b8のいずれかで表されるアニオンユニットであることを意味する。
 No.1~5において、添加物1は化合物(1)又は化合物(2-1)として好適である。No.1~5は、あらかじめ単離された状態の化合物(1)又は化合物(2-1)を反応系に添加するのに好適である。
 No.6~8において、添加物1は化合物(2-2)として好適であり、添加物2はプロトン性化合物として好適である。No.6~8は、反応系中で組み合わせ(2-2)を発生させるのに好適である。
 No.9において、添加物1は化合物(2-2)として好適であり、添加物3は化合物(1)におけるカチオンユニットを発生させるための化合物として好適であり、添加物2はプロトン性化合物と、化合物(1)におけるアニオンユニットを発生させるための化合物と、の両方として好適である。No.9は、反応系中で化合物(1)及び組み合わせ(2-2)をともに発生させるのに好適である。
 No.10~14、18、20、21において、添加物1は化合物(1)におけるカチオンユニットを発生させるための化合物として好適であり、添加物2は化合物(1)におけるアニオンユニットを発生させるための化合物として好適である。No.10~14、18、20、21は、反応系中で化合物(1)を発生させるのに好適である。
 No.15、17、19において、添加物1は化合物(1)におけるカチオンユニットを発生させるための化合物として好適であり、添加物3は化合物(2-2)として好適であり、添加物2はプロトン性化合物と、化合物(1)におけるアニオンユニットを発生させるための化合物と、の両方として好適である。No.15、17、19は、反応系中で化合物(1)及び組み合わせ(2-2)をともに発生させるのに好適である。
 No.16において、添加物1は化合物(1)におけるカチオンユニットを発生させるための化合物として好適であり、添加物3は化合物(1)又は化合物(2-1)として好適であり、添加物2は化合物(1)におけるアニオンユニットを発生させるための化合物として好適である。No.16は、あらかじめ単離された状態の化合物(1)又は化合物(2-1)を反応系に添加するとともに、反応系中で別途化合物(1)を発生させるのに好適である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000015
 好ましい前記触媒の例としては、前記式(1)で表されるカチオンユニットと、前記式(2)で表されるアニオンユニットと、をともに有するものが挙げられる。このような前記触媒の例としては、前記式a1~a12のいずれかで表されるカチオンユニットから選ばれる少なくとも1種と、前記式b1~b8のいずれかで表されるアニオンユニットから選ばれる少なくとも1種と、をともに有するものが挙げられる。このような触媒の具体例としては、表1中のNo.1~5における添加物1が挙げられる。
[アルデヒド(3)]
 アルデヒド(3)は、前記式(3)で表され、ホルミル基(-C(=O)-H)を有する。
 式(3)中、Rは、水素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基である。
 Rにおける、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基としては、前記式(1)中のR~Rにおける、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基と同様のものが挙げられる。
 アルデヒド(3)の例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、オクタナール、ノナナール、ベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、4-エチルベンズアルデヒド、4-ブチルベンズアルデヒド、4-オクチルベンズアルデヒド、4-アニスアルデヒド、4-イソプロピルベンズアルデヒド、4-ブロモベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる。
 Rは、置換されていてもよいフェニル基であることが好ましく、炭素原子数1~30のヒドロカルビル基で置換されていてもよいフェニル基であることがより好ましく、炭素原子数1~8のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であることがさらに好ましい。すなわち、アルデヒド(3)は、ベンズアルデヒド又はその誘導体であることが好ましい。なお、本明細書において、「誘導体」とは、特に断りのない限り、元の化合物の1個又は2個以上の水素原子が、水素原子以外の基で置換された構造を有する化合物を意味する。
 アルデヒド(3)は、ベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、4-エチルベンズアルデヒド、4-ブチルベンズアルデヒド又は4-オクチルベンズアルデヒドであることが好ましい。
 大環状化合物(A)を得る工程において、アルデヒド(3)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
[化合物(4)]
 化合物(4)は、前記式(4)で表され、少なくとも2個のピロール環骨格を有する。
 式(4)中、Rは単結合又は置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在していてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビレン基である。
 Rが単結合である場合の化合物(4)においては、R及びRが結合している含窒素環(ピロール環骨格)と、R及びRが結合している含窒素環(ピロール環骨格)と、が直接結合している。
 Rにおける、置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在していてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビレン基としては、前記式(1)中のR~Rにおける、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基と同様のもの又は前記ヒドロカルビレン基中の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子に置換されたものから、1個の水素原子が除かれた2価の基が挙げられる。
このとき、除かれる水素原子の位置は、特に限定されない。
 Rにおけるヘテロ原子が介在していてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(メチルエチレン基)、トリメチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等の炭素原子数1~30の直鎖状又は分岐鎖状(すなわち鎖状)のアルキレン基;
 シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、アダマンタンジイル基等の炭素原子数3~30の環状飽和ヒドロカルビレン基(環状のアルキレン基);
 エテニレン基、プロペニレン基、2-ブテニレン基等の炭素原子数2~30のアルケニレン基;
 ベンゼンジイル基、ナフタレンジイル基、ビフェニルジイル基等の炭素原子数6~30のアリーレン基;
 炭素原子数1~30の直鎖状又は分岐鎖状(すなわち鎖状)のアルキレン基、炭素原子数3~30の環状飽和ヒドロカルビレン基(環状のアルキレン基)、炭素原子数2~30のアルケニレン基、又は炭素原子数6~30のアリーレン基中の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子に置換された基;及び
 前記した基の二つ以上が組み合わされた基等が挙げられる。
前記炭素原子数2~30のアルケニレン基、又は炭素原子数6~30のアリーレン基中の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子に置換された基としては、3,6-ジフェニルフェナントレンー3’,3’’-ジイル基中の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子に置換された基が例として挙げられる。
 ヘテロ原子とは、炭素原子、水素原子以外の原子を意味し、これらの中でもヘテロ原子としては窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。
 Rが、ヘテロ原子が介在していている炭素原子数1~30のヒドロカルビレン基である場合、Rに含まれるヘテロ原子の数は2~6個であることが好ましく、2~4個であることがより好ましい。
 ヘテロ原子が介在していてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビレン基がヘテロ原子として窒素原子を有する場合、その窒素原子は芳香族環の構成原子であることが好ましく、このような芳香族環としてはピリジン環が挙げられる。さらに、前記窒素原子を含む芳香族環は、他の芳香族環と縮環した環構造をとることが好ましく、このような縮環した環構造としては、フェナントレン環構造に含まれる2つの炭素原子が窒素原子で置換された環構造(フェナントロリン環構造)が例として挙げられる。より具体的には、R中に1,10-フェナントロリン-2,9-ジイル基を有することが好ましい。
 また、Rが置換されている場合、置換基としては、すでに定義した通りであるが、その中でも炭素原子数1~30のヒドロカルビル基、ヒドロキシ基等で置換されていることが好ましい。
 前記ヒドロカルビル基としては、炭素原子数1~18のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~8のアルキル基がより好ましい。前記ヒドロカルビル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、分岐鎖状であることがより好ましい。中でも前記ヒドロカルビル基は、メチル基、tert-ブチル基が好ましく、tert-ブチル基が特に好ましい。Rが前記ヒドロカルビル基で置換されている場合、Rが有する前記ヒドロカルビル基の数としては1~4個が好ましく、1~2個がより好ましい。
 Rがヒドロキシ基で置換されている場合、Rが有するヒドロキシ基の数としては1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
 なお、上述のヒドロカルビレン基において、遊離原子価の位置が特定されていないものは、その位置は特に限定されない。例えば、「ベンゼンジイル基」は、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基及び1,4-フェニレン基のいずれであってもよい。
 Rは、置換されていてもよいアルキレン基又はアリーレン基であることが好ましく、置換されていてもよいメチレン基又はフェニレン基であることがより好ましい。
 Rにおける前記フェニレン基は、1,3-フェニレン基であることが好ましい。
 式(4)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基である。すなわち、R~Rは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部(2個又は3個)のみ同一であってもよい。
 R~Rにおける、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基としては、前記式(1)中のR~Rにおける、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基と同様のものが挙げられる。
 R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1~8のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
 化合物(4)中の2個のピロール環骨格は、いずれも、この環骨格を構成する原子として、窒素原子と、この窒素原子と結合し、かつ水素原子とも結合している炭素原子と、これら窒素原子及び炭素原子以外の3個の炭素原子と、を有する。
 そして、R、R及びRが結合している一方のピロール環骨格において、これらR、R及びRは、上述の3個の炭素原子に、それぞれ別々に結合している。そして、これらR、R及びRの結合先の炭素原子は、上述の3個の炭素原子のいずれかであれば、特に限定されない。ただし、Rは、上述の3個の炭素原子のうち、窒素原子に結合している炭素原子に結合していることが好ましい。
 同様に、R、R及びRが結合している他方のピロール環骨格において、これらR、R及びRは、上述の3個の炭素原子に、それぞれ別々に結合している。そして、これらR、R及びRの結合先の炭素原子は、上述の3個の炭素原子のいずれかであれば、特に限定されない。ただし、Rは、上述の3個の炭素原子のうち、窒素原子に結合している炭素原子に結合していることが好ましい。
 化合物(4)は、下記式(5)で表される化合物であることが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000016
(式(5)中、R、R、R、R及びRは、それぞれ前記式(4)中のR、R、R、R及びRと同じである。)
 化合物(4)は、下記式(6―A)又は下記式(6-B)で表される化合物であることがより好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000017
(式(6―A)、式(6-B)中、R6A、R7A、R8A、R9A、R6B、R7B、R8B及びR9Bは、それぞれ前記式(4)中のR、R、R及びRと同じであり;R10A、R12A、R13A、R10B、R12B、R13B、R14B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基、又は置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビルオキシ基であり;R11A、R11B及びR15Bは水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビルオキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基又はスルホ基である。)
 式(6―A)、式(6-B)中、R10A、R12A、R13A、R10B、R12B、R13B、R14B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基、又は置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビルオキシ基である。
 R10A、R12A、R13A、R10B、R12B、R13B、R14B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bにおける前記ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
 R10A、R12A、R13A、R10B、R12B、R13B、R14B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bにおける、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基としては、前記式(1)中のR~Rにおける、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基と同様のものが挙げられる。
 R10A、R12A、R13A、R10B、R12B、R13B、R14B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bにおける、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビルオキシ基としては、上述の置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基が、酸素原子に結合した1価の基が挙げられる。
 R10A、R12A、R13A、R10B、R12B、R13B、R14B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bにおけるヒドロカルビルオキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ドコシルオキシ基等の炭素原子数1~30の直鎖状又は分岐鎖状(すなわち鎖状)のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基等の炭素原子数3~30の環状飽和ヒドロカルビルオキシ基(環状のアルコキシ基);
 エテニルオキシ基、プロペニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基等の炭素原子数2~30のアルケニルオキシ基;
 フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、4-フェニルフェニルオキシ基等の炭素原子数6~30のアリールオキシ基;
 フェニルメチルオキシ基(ベンジルオキシ基)、2-フェニルエチルオキシ基(フェネチルオキシ基)等の炭素原子数7~30のアリールアルキルオキシ基(アラルキルオキシ基)等が挙げられる。
 R10A、R12A、R13A、R10B、R12B、R13B、R14B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bにおけるヒドロカルビルオキシ基は、炭素原子数1~18の直鎖状のアルコキシ基であることが好ましい。
 ただし、R10A、R12A、R13A、R10B、R12B、R13B、R14B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bにおけるヒドロカルビルオキシ基は、これらに限定されない。
 置換基としてのR10A、R10B及びR14Bは、好ましくは水素原子又は炭素原子数1~18のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1~8のアルキル基である。
 R10A、R10B及びR14Bにおける前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、分岐鎖状であることがより好ましい。
 中でもR10A、R10B及びR14Bにおける前記アルキル基は、メチル基、tert-ブチル基が好ましく、tert-ブチル基が特に好ましい。
 置換基としてのR12A、R13A、R12B、R13B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bは、好ましくは水素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1~8のヒドロカルビル基であり、より好ましくは水素原子である。
 式(6―A)、式(6-B)中、置換基としてのR11A、R11B及びR15Bは水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビルオキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基又はスルホ基である。
 置換基としてのR11A、R11B及びR15Bにおける、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビルオキシ基としては、それぞれ、R10A、R12A、R13A、R10B、R12B、R13B、R14B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bにおける、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビルオキシ基と同様のものが挙げられる。
 置換基としてのR11A、R11B及びR15Bは、好ましくは炭素原子数1~18のヒドロカルビルオキシ基、又はヒドロキシ基であり、より好ましくはヒドロキシ基である。
 本実施形態においては、前記触媒を用いて、アルデヒド(3)と化合物(4)とを反応させることにより、ジピロメチン構造を有する下記式(7)で表される部分構造を含む、大環状化合物(A)が得られる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000018
(式(7)中、Rは、前記式(3)中のRと同じであり;R、R、R及びRは、それぞれ前記式(4)中のR、R、R及びRと同じである。)
 化合物(4)が、前記式(5)で表される化合物である場合には、下記式(8)で表される部分構造を含む大環状化合物(A)が得られる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000019
(式(8)中、Rは、前記式(3)中のRと同じであり;R、R、R及びRは、それぞれ前記式(4)中のR、R、R及びRと同じである。)
 化合物(4)が、前記式(5)で表される化合物である場合、より具体的には、下記式(9-A)、下記式(9-B)又は下記式(9-C)で表される大環状化合物(A)もしくはこれらのうちの2種以上の大環状化合物(A)を含む混合物が得られる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000020
(式(9-A)、式(9-B)、及び式(9-C)中、Rは、前記式(3)中のRと同じであり;R、R、R、R及びRは、それぞれ前記式(4)中のR、R、R、R及びRと同じである。)
 式(9-A)、式(9-C)中の複数あるR、R、R、R、R、Rは、それぞれ同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
 大環状化合物(A)は、例えば、下記式(10―A)又は下記式(10-B)で表される化合物であることが好ましい。この大環状化合物(A)は、化合物(4)が前記式(6―A)又は前記式(6-B)で表される化合物である場合の大環状化合物(A)である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000021
(式(10―A)、式(10-B)中、R4A及びR4Bは、前記式(3)中のRと同じであり;R6A、R7A、R8A、R9A、R6B、R7B、R8B及びR9Bは、それぞれ前記式(4)中のR、R、R及びRと同じであり;R10A、R11A、R12A、R13A、R10B、R11B、R12B、R13B、R14B、R15B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bは、それぞれ前記式(6―A)、前記式(6-B)中のR10A、R11A、R12A、R13A、R10B、R11B、R12B、R13B、R14B、R15B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bと同じである。)
 大環状化合物(A)を得る工程において、前記触媒の使用量は、例えば、前記式(1)で表されるカチオンユニットと、前記式(2)で表されるアニオンユニットと、の合計モル量が、前記化合物(4)のモル量に対して、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下となるように調節する。
 一方、前記触媒の使用量は、例えば、前記式(1)で表されるカチオンユニットと、前記式(2)で表されるアニオンユニットと、の合計モル量が、前記化合物(4)のモル量に対して、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.1%以上、特に好ましくは0.5%以上となるように調節する。
 ここで合計モル量とは、触媒が前記式(1)で表されるカチオンユニットと、前記式(2)で表されるアニオンユニットの両方を有する場合は、両者のモル量の和であり、式(1)で表されるカチオンユニットのみを有する場合は、カチオンユニットのモル量であり、前記式(2)で表されるアニオンユニットのみを有する場合は、アニオンユニットのモル量である。
 大環状化合物(A)を得る工程においては、前記合計モル量が上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内となるように、前記触媒の使用量を適宜調節できる。例えば、前記触媒の使用量は、前記式(1)で表されるカチオンユニットと、前記式(2)で表されるアニオンユニットと、の合計モル量が、前記化合物(4)のモル量に対して、好ましくは0.01~50%、より好ましくは0.05~30%、さらに好ましくは0.1~20%、特に好ましくは0.5~10%となるように調節できる。
 表1に示すように、反応系に添加する添加物1~3等の添加物という観点で前記触媒を考えた場合、これら添加物の1種又は2種以上は、その使用量を大過剰とすることが可能な場合がある。一例を挙げれば、N,N-ジメチルアニリン等は、溶媒を兼ねて用いてもよい。したがって、このような場合には、前記添加物の合計使用量の上限値は、特に限定されない。ただし、使用量が最小である前記添加物のその使用量は、前記化合物(4)の使用量(モル量)に対して、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることが特に好ましい。
 大環状化合物(A)を得る工程において、アルデヒド(3)と化合物(4)との反応は、溶媒の存在下に行うことが好ましい。
 前記溶媒は、反応を阻害しない限り、特に限定されない。
 溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、1-プロパノ-ル、イソプロピルアルコール(2-プロパノ-ル)、2-メトキシエタノール、1-ブタノール、1,1-ジメチルエタノール、エチレングリコール、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、メチルエチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、デュレン、デカリン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン等が挙げられる。
 これらの中でも、溶媒は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン又はN,N-ジメチルホルムアミドであることが好ましく、トルエン又はキシレンであることがより好ましい。
 溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
 溶媒の使用量は、特に限定されない。
 ただし、溶媒の使用量は、化合物(4)の使用量(質量)に対して、好ましくは5質量倍以上、より好ましくは10質量倍以上、さらに好ましくは20質量倍以上であり、特に好ましくは30質量倍以上、最も好ましくは50質量倍以上である。溶媒の使用量がこれら下限値以上であることで、アルデヒド(3)と化合物(4)との反応による分子内環化反応が促進されて、大環状化合物(A)の収率がより高くなる。
 一方、溶媒の使用量は、化合物(4)の使用量(質量)に対して、好ましくは2000質量倍以下、より好ましくは500質量倍以下、さらに好ましくは100質量倍以下である。溶媒の使用量がこれら上限値以下であることで、溶媒の過剰使用が避けられ、例えば、精製時の濃縮に伴うコストを低減できる。
 上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて、化合物(4)の使用量(質量)に対する溶媒の使用量を適宜調節できる。例えば、溶媒の使用量は、化合物(4)の使用量(質量)に対して、好ましくは5質量倍以上2000質量倍以下、より好ましくは10質量倍以上500質量倍以下、さらに好ましくは10質量倍以上100質量倍以下、特に好ましくは10質量倍以上50質量倍以下である。
 アルデヒド(3)の使用量(モル量)は、例えば、化合物(4)の使用量(モル量)よりも、多くてもよいし、少なくてもよい。
 ただし、副反応が抑制されて、大環状化合物(A)の収率がより高くなる点では、アルデヒド(3)の使用量は、化合物(4)の使用量(モル量)に対して、好ましくは1倍モル量以上、より好ましくは1~3倍モル量であり、例えば、2~3倍モル量であってもよい。
 アルデヒド(3)と化合物(4)とを反応させるときの反応温度は、特に限定されない。例えば、アルデヒド(3)と化合物(4)とを、冷却しながら反応させてもよいし、加熱しながら反応させてもよく、さらに一例を挙げれば、オートクレーブやマイクロ波の照射等によって、溶媒の沸点よりも高い温度で加熱して反応させてもよい。
 前記反応温度は、室温(例えば23℃。以下同様。)と、溶媒の沸点と、の間の温度であることが好ましく、室温以上でかつ溶媒の沸点よりも35℃低い温度と、溶媒の沸点と、の間の温度であることがより好ましい。
 反応時間は、例えば、1分間~1週間とすることができるが、3分間~24時間であることが好ましく、5分間~6時間であることがより好ましい。反応時間が3分間以上であることにより、反応率がより高くなり、反応時間が24時間以下であることにより、大環状化合物(A)の平衡反応を経由した分解をより抑制できる。
 反応時間は、反応温度に応じて、前記範囲内で適宜調節することが好ましい。例えば、反応温度を低めに設定して、反応時間を長めにしてもよい。
 なお、ここで「反応時間」とは、前記触媒、アルデヒド(3)及び化合物(4)の共存が開始された時点を起点として、特定するものとする。
 アルデヒド(3)と化合物(4)との反応は、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
 大環状化合物(A)を得る工程においては、例えば、前記触媒と溶媒との混合物である触媒含有液(例えば、触媒溶液)を調製し、この触媒含有液を反応温度になるまで加熱して、この加熱された触媒含有液に、アルデヒド(3)、化合物(4)及び溶媒の混合物である原料含有液(例えば、原料溶液)を添加することで、反応を行うことが好ましい。このような手順で各成分を添加して反応を行うことにより、副反応が抑制されて、大環状化合物(A)の収率がより高くなる。
 触媒含有液は、前記溶媒に前記触媒を添加して調製することが好ましい。
 上述の手順では、各成分は対象物に対して、一括添加してもよいし、非液状物は分割添加により、液状物は滴下により、それぞれ添加してもよい。
 例えば、前記原料含有液は、前記触媒含有液に対して、一括添加してもよいし、滴下により添加してもよい。滴下により添加する場合の滴下時間は、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、副反応が抑制されて、大環状化合物(A)の収率がより高くなる点から、1分間~3時間であることが好ましく、10分間~1時間であることがより好ましい。
 上述の手順は、反応容器への各成分の添加と、反応を行うための反応容器の加熱と、のタイミングに着目した場合、下記(i)に記載の順序で操作を行うものである。
 これ以外で好ましい手順としては、さらに、下記(ii)~(x)が挙げられる。すなわち、本実施形態において、大環状化合物(A)を得る工程での好ましい手順は、下記(i)~(x)のいずれかである。
 (i)触媒の添加→加熱→アルデヒド(3)及び化合物(4)の同時添加
 (ii)触媒の添加→加熱→アルデヒド(3)の添加→化合物(4)の添加
 (iii)触媒、化合物(4)及びアルデヒド(3)の同時添加→加熱
 (iv)加熱→触媒、化合物(4)及びアルデヒド(3)の同時添加
 (v)加熱→触媒及びアルデヒド(3)の添加→化合物(4)の添加
 (vi)加熱→アルデヒド(3)の添加→触媒及び化合物(4)の同時添加
 (vii)加熱→触媒の添加→アルデヒド(3)及び化合物(4)の同時添加
 (viii)アルデヒド(3)の添加→加熱→触媒及び化合物(4)の添加
 (ix)触媒及びアルデヒド(3)の添加→加熱→化合物(4)の添加
 (x)化合物(4)及びアルデヒド(3)の添加→加熱→触媒の添加
 前記(i)~(x)の手順において、同時添加する2種以上の成分は、あらかじめ混合してこの混合物を添加することで同時添加してもよいし、あらかじめ混合することなく、別々に同時添加してもよい。
 また、(v)の手順における触媒及びアルデヒド(3)の添加、(viii)の手順における触媒及び化合物(4)の添加、(ix)の手順における触媒及びアルデヒド(3)の添加、のそれぞれにおいて、添加する2成分は、一方を先に添加して、他方を後から添加してもよいし、同時に添加してもよい。また、これら添加する2成分は、一方又は両方を粉体として、反応容器に添加してもよい。
 前記(i)~(x)の手順は、いずれも、触媒の存在下、常に化合物(4)がアルデヒド(3)よりも過剰量存在しないように、換言すると、触媒の存在下、常にアルデヒド(3)が化合物(4)よりも同等以上の量だけ存在するように、反応系を設計するものである。このような反応系は、副反応を抑制し、大環状化合物(A)の収率をより高くできる点で重要である。
 また、本実施形態においては、例えば、前記(i)、(iii)、(iv)及び(vii)の手順で示すように、アルデヒド(3)及び化合物(4)の同時添加によって、大環状化合物(A)が好適に得られる。このように、触媒を用いた反応を行う際に、2種以上の原料成分の同時添加は、通常行わないが、本実施形態は、このような添加方法でも、目的物が高収率で得られるなど、種々の添加方法を適用でき、汎用性に優れる。
 本実施形態においては、ここまでで説明したように、アルデヒド(3)と化合物(4)とを反応させて、大環状化合物(A)を得るまでの段階において、例えば、前記式(1)で表されるカチオンユニットを有する化合物(1)を前記触媒として使用する。
 一方、例えば、トリフルオロ酢酸等の酸触媒を用いる、従来のローゼムント型縮合反応によって、目的物である大環状化合物を得た場合には、この大環状化合物を得た後の段階で、反応系にアミン系の化合物(塩基性化合物)を添加して、酸触媒を不活性化させる(中和する)ことがある。すなわち、このような従来法では、大環状化合物を得た後の段階で、反応系にアミン系化合物を添加するのであって、たとえこの添加後に、前記式(1)で表されるカチオンユニットが発生したとしても、このカチオンユニットは、大環状化合物の生成には全く関与していない。
 このように、本実施形態の製造方法は、大環状化合物を得るための触媒が従来とは全く相違する。
 また、上述のa1-b1構造の塩等の触媒は、オレフィン重合用の触媒として使用できることが知られているが、本実施形態での大環状化合物(A)を得る反応は縮合反応であって、オレフィン重合とは、反応形式が全く相違する。したがって、大環状化合物(A)を得るための反応において、a1-b1構造の塩等の触媒が有用であることは、全く意外であるといえる。
 本実施形態によれば、大環状化合物(A)が得られるが、本実施形態において、少なくとも2個のピロール環骨格を有する化合物(4)に代えて、ピロール環骨格を1個のみ有するピロール又はピロール誘導体を用いることにより、ポルフィリン又はポルフィリン誘導体が得られる。
 本実施形態においては、例えば、大環状化合物(A)を得る工程の終了後、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、次いで、大環状化合物(A)を取り出すことができる。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、次いで、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、大環状化合物(A)を取り出すことができる。
また、取り出した大環状化合物(A)は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
 また、本実施形態においては、例えば、大環状化合物(A)を得る工程の終了後、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、次いで、大環状化合物(A)を取り出すことなく、例えば液状の混合物(例えば溶液)の状態のまま、この混合物を引き続き、大環状化合物(A)を用いる他の工程に供してもよい。
 ここで、「大環状化合物(A)を用いる他の工程」には、後述する「大環状化合物(A)の酸化体(大環状化合物(B))を得る工程」が包含される。
 本実施形態で得られた大環状化合物(A)は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)、紫外・可視分光法(UV-VIS吸収スペクトル)等の公知の手法で、その構造を確認できる。
<第2実施形態>
 本発明の第2実施形態に係る大環状化合物の製造方法は、上述の第1実施形態の大環状化合物の製造方法により、前記大環状化合物(A)を得る工程を行った後に、さらに、前記大環状化合物(A)を酸化することにより、前記大環状化合物(A)の酸化体(大環状化合物(B))を得る工程を含む。
 本実施形態の製造方法によれば、大環状化合物(A)の酸化体である大環状化合物(B)が高収率で得られる。
 大環状化合物(B)は、後述する大環状化合物(A)の酸化体を含む金属錯体(本明細書においては「大環状化合物(C)」ということがある)の製造原料として好適である。
 より具体的には、本実施形態によれば、上述の大環状化合物(A)における、ジピロメチン構造を有する前記式(7)で表される部分構造(メチン骨格部位)が酸化されることにより、下記式(11)で表される部分構造を含む、大環状化合物(B)が得られる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000022
(式(11)中、Rは、前記式(3)中のRと同じであり;R、R、R及びRは、それぞれ前記式(4)中のR、R、R及びRと同じである。)
 化合物(4)が、前記式(5)で表される化合物である場合には、下記式(12―A)、下記式(12-B)又は下記式(12-C)で表される大環状化合物(B)もしくはこれらのうちの2種以上の大環状化合物(B)を含む混合物が得られる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000023
(式(12-A)、式(12-B)、及び式(12-C)中、Rは、前記式(3)中のRと同じであり;R、R、R、R及びRは、それぞれ前記式(4)中のR、R、R、R及びRと同じである。)
 式(12-A)、式(12-C)中の複数あるR、R、R、R、R、Rは、それぞれ同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
 大環状化合物(B)は、例えば、下記式(13―A)又は下記式(13-B)で表される化合物であることが好ましい。この大環状化合物(B)は、化合物(4)が前記式(6―A)又は前記式(6-B)で表される化合物である場合の大環状化合物(B)である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000024
(式(13―A)、式(13-B)中、R4A及びR4Bは、前記式(3)中のRと同じであり;R6A、R7A、R8A、R9A、R6B、R7B、R8B及びR9Bは、それぞれ前記式(4)中のR、R、R及びRと同じであり;R10A、R11A、R12A、R13A、R10B、R11B、R12B、R13B、R14B、R15B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bは、それぞれ前記式(6―A)、前記式(6-B)中のR10A、R11A、R12A、R13A、R10B、R11B、R12B、R13B、R14B、R15B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bと同じである。)
 大環状化合物(A)の酸化反応は、前記メチン骨格部位を酸化可能な方法であれば、特に限定されず、公知の方法を幅広く適用できる。
 例えば、溶媒中の大環状化合物(A)に対して、酸素存在下(例えば空気雰囲気下)での加熱による空気(酸素)酸化を行う方法、又は酸素以外の酸化剤を用いる酸化を行う方法が挙げられる。前記酸素以外の酸化剤の例としては、クロラニル(テトラクロロ-p-ベンゾキノン)、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(DDQ)等が挙げられる。
 溶媒中の大環状化合物(A)に対して、空気(酸素)酸化を行うときの反応温度は、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。このような反応温度によって空気(酸素)酸化を行うときは、溶媒として、沸点が120℃以上であるものを用いることが好ましく、このような溶媒の例としては、キシレン、プロピオン酸、ブタン酸等が挙げられる。
 溶媒中の大環状化合物(A)に対して、酸素以外の酸化剤を用いて酸化を行うときの反応温度は、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、0℃~室温であることが好ましい。このような反応温度によって、酸化剤を用いて酸化を行うときは、溶媒として、例えば、トルエン、クロロホルム、塩化メチレン等を用いることができる。
 また、前記酸化反応は、大環状化合物(A)の粉体を、例えば酸素存在下(例えば空気雰囲気下)で加熱することでも、行うことができる。
 この場合の加熱温度は、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下、さらに好ましくは300℃以下、特に好ましくは250℃以下である。一方、前記加熱温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは175℃以上、特に好ましくは200℃以上である。
 大環状化合物(A)の粉体の前記加熱温度は、例えば、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内となるように、適宜調節できる。例えば、前記加熱温度は、好ましくは100~500℃、より好ましくは150~400℃、さらに好ましくは175~300℃、特に好ましくは200~250℃である。
 大環状化合物(A)の粉体の加熱により、前記酸化反応を行うときの加熱時間は、好ましくは72時間以下、より好ましくは12時間以下、さらに好ましくは3時間以下である。一方、前記加熱時間は、好ましくは1秒間以上、より好ましくは1分間以上、さらに好ましくは10分間以上である。
 大環状化合物(A)の粉体の前記加熱時間は、例えば、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内となるように、適宜調節できる。例えば、前記加熱時間は、好ましくは1秒間~72時間、より好ましくは1分間~12時間、さらに好ましくは10分間~3時間である。
 前記酸化反応を行うとき、大環状化合物(A)の粉体を置く環境の酸素濃度は、特に限定されない。例えば、前記酸素濃度は、22%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、例えば、1%以下であっても、十分に酸化反応を行うことができる。
 また、前記酸素濃度は、例えば、100ppm以上であることが好ましく、1000ppm以上であることがより好ましく、5000ppm以上であることがさらに好ましい。
 大環状化合物(A)の粉体を置く環境の酸素濃度は、例えば、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内となるように、適宜調節できる。例えば、前記酸素濃度は、好ましくは100ppm~22%であり、より好ましくは100ppm~10%であり、さらに好ましくは1000ppm~5%であり、さらに好ましくは5000ppm~1%である。
 本実施形態においては、例えば、溶媒中の大環状化合物(A)に対して酸化反応を行った場合、大環状化合物(B)を得る工程の終了後、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、次いで、大環状化合物(B)を取り出すことができる。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、次いで、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、大環状化合物(B)を取り出すことができる。また、取り出した大環状化合物(B)は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
 また、本実施形態においては、例えば、溶媒中の大環状化合物(A)に対して酸化反応を行った場合には、以下に示すように、大環状化合物(B)を取り扱うこともできる。すなわち、大環状化合物(B)を得る工程の終了後、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、次いで、大環状化合物(B)を取り出すことなく、液状の混合物(例えば溶液)の状態のまま、この混合物を引き続き、大環状化合物(B)を用いる他の工程に供してもよい。
 ここで、「大環状化合物(B)を用いる他の工程」には、後述する「大環状化合物(A)の酸化体を含む金属錯体(大環状化合物(C))を得る工程」が包含される。
 一方、本実施形態においては、例えば、大環状化合物(A)の粉体を加熱することで酸化反応を行った場合には、以下に示すように、大環状化合物(B)を取り扱うことができる。すなわち、大環状化合物(B)を得る工程の終了後、公知の手法によって、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、大環状化合物(B)を精製してもよい。
 本実施形態で得られた大環状化合物(B)は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)、紫外・可視分光法(UV-VIS吸収スペクトル)等の公知の手法で、その構造を確認できる。
<第3実施形態>
 本発明の第3実施形態に係る大環状化合物の製造方法は、上述の第2実施形態の大環状化合物の製造方法により、前記大環状化合物(B)を得る工程を行った後に、さらに、前記大環状化合物(B)(大環状化合物(A)の酸化体)を金属錯体化することにより、前記大環状化合物(B)を含む金属錯体(大環状化合物(C))を得る工程を含む。
 本実施形態の製造方法によれば、大環状化合物(B)の金属錯体化物である大環状化合物(C)が高収率で得られる。
 大環状化合物(C)は、配位している金属種に応じて、種々の機能を有し、例えば、有機合成反応の触媒、電極上の反応促進触媒、発光材料、電子注入材料等として好適である。なかでも、大環状化合物(C)は、空気電池の正極触媒として、特に好適である。
 大環状化合物(C)を得る工程においては、大環状化合物(B)を金属含有成分と反応させることにより大環状化合物(B)に金属を配位させ、大環状化合物(C)を得ることができる。
 このときの金属を配位させる方法としては、例えば、公知のポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体等の製造時に、金属を配位させる場合と同様の方法を適用できる。
 前記金属含有成分は、金属のみを含有していてもよいし、金属と金属以外の成分を含有していてもよい。例えば、金属含有成分は、無電荷の金属原子であってもよいし、荷電している金属イオンであってもよく、金属イオンを用いる場合には、例えば、酢酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩等の金属塩として用いることが好ましい。
 金属含有成分の金属種は、元素周期表の第4周期~第6周期に属する金属であることが好ましい。このような金属の例としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
 これらの中でも、前記金属は、好ましくは、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステンであり、より好ましくは、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅であり、特に好ましくは、鉄、コバルトである。
 大環状化合物(C)を得る工程において、金属錯体化に用いる前記金属含有成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
 そして、金属含有成分を2種以上用いる場合、これら金属含有成分中の金属は、合計で1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
 一分子の大環状化合物(C)が有する金属の数は、大環状化合物(B)の構造と、金属種に依存して決定され、1個のみの場合と、2個以上の場合がある。通常、一分子の大環状化合物(C)が有する金属の数は、好ましくは1~2個である。
 一分子の大環状化合物(C)が、2個以上の金属を有する場合、これら2個以上の金属は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。これら2個以上の金属の組み合わせは、大環状化合物(B)の構造と、金属種に依存して決定される。通常、一分子の大環状化合物(C)が有する金属は、好ましくは1種である。
 本実施形態においては、大環状化合物(C)を得る工程の終了後、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、次いで、大環状化合物(C)を取り出すことができる。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、次いで、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、大環状化合物(C)を取り出すことができる。また、取り出した大環状化合物(C)は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
 また、本実施形態においては、例えば、大環状化合物(C)を得る工程の終了後、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、次いで、大環状化合物(C)を取り出すことなく、例えば液状の混合物(例えば溶液)の状態のまま、この混合物を引き続き、他の工程に供してもよい。
 本実施形態で得られた大環状化合物(C)は、例えば、単結晶X線解析法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)、紫外・可視分光法(UV-VIS吸収スペクトル)等の公知の手法で、その構造を確認できる。
 以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
<大環状化合物(A)及び大環状化合物(B)の製造>
[実施例1]
 国際公開第2017/073467号に記載の方法により、化合物(4)として、(4-tert-ブチル-2,6-ジ-1H-ピロール-2-イル)フェノールを製造した。
 窒素雰囲気下、200mL3つ口ナス形フラスコに、脱水トルエン23mL、化合物(1)としてa1-b1構造の塩(N,N―ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート)112mg(0.140mmol)を加え、回転子を用いて、得られた溶液を撹拌しながら80℃になるまで加熱した。この溶液の温度を80℃で維持し、撹拌を続けながら、この溶液へ、アルデヒド(3)としてベンズアルデヒド578mg(5.45mmol)と、(4-tert-ブチル-2,6-ジ-1H-ピロール-2-イル)フェノール766mg(2.73mmol)と、トルエン22mLと、の混合液を、45分間かけて滴下した。滴下終了時から3分後に、得られた反応液の放冷を開始し、反応液の温度を徐々に室温に合わせた。以上により、前記(i)の手順に従って、大環状化合物(A)-1を得た。
 次いで、大環状化合物(A)-1を含む前記反応液に、DDQ589mg(2.59mmol)をクロロホルム40mLに懸濁させた懸濁液を、室温のまま5分間かけて滴下した。
 次いで、得られた反応液をろ過し、ろ液を重量が6gになるまで濃縮して、この濃縮物をメタノール125mL中に滴下することで再沈殿を行った。次いで、得られた液体をろ過して、ろ過物を乾燥させて、目的物である深紫色の大環状化合物(B)-1を700mg得た(収率70%)。
 得られた大環状化合物(B)-1のH-NMR等の解析データは、国際公開第2017/073467号に記載の「化合物(F)」のものと同じであった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000025
[実施例2]
 a1-b1構造の塩に代えて、化合物(1)として、同じモル量のN,N-ジメチルアニリンと同じモル量のトリフルオロ酢酸(CFCOH)との組み合わせ(上述のNo.10の添加物1~2)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ操作を行い、大環状化合物(B)-1を得た(収率66%)。大環状化合物(B)-1の構造は、実施例1の場合と同じ方法で確認した。
[実施例3]
 a1-b1構造の塩に代えて、化合物(1)として、同じモル量のN,N-ジメチルアニリンと同じモル量のトリクロロ酢酸(CClCOH)との組み合わせ(上述のNo.11の添加物1~2)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ操作を行い、大環状化合物(B)-1を得た(収率72%)。大環状化合物(B)-1の構造は、実施例1の場合と同じ方法で確認した。
[実施例4]
 a1-b1構造の塩に代えて、化合物(1)として、同じモル量のN,N-フェニルアニリンと同じモル量のトリフルオロ酢酸(CFCOH)との組み合わせ(上述のNo.18の添加物1~2)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ操作を行い、大環状化合物(B)-1を得た(収率68%)。大環状化合物(B)-1の構造は、実施例1の場合と同じ方法で確認した。
[実施例5]
 a1-b1構造の塩に代えて、組み合わせ(2-2)として、同じモル量のPh-b1構造の塩と同じモル量のトリフルオロ酢酸(CFCOH)との組み合わせ(上述のNo.6の添加物1~2)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ操作を行い、大環状化合物(B)-1を得た(収率79%)。大環状化合物(B)-1の構造は、実施例1の場合と同じ方法で確認した。
[比較例1]
 a1-b1構造の塩に代えて、同じモル量のトリフルオロ酢酸(CFCOH)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ操作を行った。しかし、目的物である大環状化合物(B)-1以外にも多種類の副生物が生じた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行ったところ、大環状化合物(B)-1の収率は36%であった。大環状化合物(B)-1の構造は、実施例1の場合と同じ方法で確認した。
<大環状化合物(C)の製造>
[実施例6]
 窒素雰囲気下、1L3つ口ナス形フラスコに、5.00g(6.82mmol)の大環状化合物(B)-1をクロロホルム225mLに溶解させたクロロホルム溶液と、5.10g(20.5mmol)の酢酸コバルト4水和物をメタノール208mLに溶解させたメタノール溶液と、を加え、回転子を用いて、得られた溶液を撹拌しながら4時間加熱還流させた。
 得られた反応液を濃縮し、濃縮物に水を加えて懸濁液とし、この懸濁液をろ過し、ろ過物を乾燥させて、目的物である大環状化合物(C)-1を5.78g得た(収率100%)。
 得られた大環状化合物(C)-1の、濃度が1mg/mLであるクロロホルム溶液を調製した。質量分析計(アジレント・テクノロジー社製「Agilent LCMS6130」)を用い、移動相をメタノール、イオン化モードをAPCI positiveとして、上記で得られた溶液を分析し、分子量を測定したところ、M/Z=847.1であった(計算値:847.2(M+H))。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000026
[計算例1]
 Gaussian Inc.社製「Gaussian09」プログラムを用いて、計算手法を密度汎関数法(B3LYP)とし、基底関数として6-31G(d,p)を使用して、(4-tert-ブチル-2,6-ジ-1H-ピロール-2-イル)フェノールと、ベンズアルデヒドと、上述の各種触媒と、が共存した反応系モデルについて、各種中間体の安定構造及び遷移状態の構造を、計算により特定した。それぞれの状態については、エネルギー値も計算できるため、これらエネルギー値を比較することによって、大環状化合物の合成過程における律速段階を決定し、その活性化エネルギーを算出した。
 その結果、触媒がN,N―ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートである場合の、律速段階の活性化エネルギーは72.4kJ/molであり、触媒がトリフルオロ酢酸である場合の、律速段階の活性化エネルギーは88.8kJ/molであった。このように、触媒がN,N―ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートである場合には、触媒がトリフルオロ酢酸である場合よりも、活性化エネルギーが小さくなっていた。この計算結果は、実施例1では、比較例1よりも、大環状化合物(B)-1の収率が高かった結果と整合しており、大環状化合物(A)-1の収率が高かったことを支持していた。
 以上の結果から、本発明の製造方法により、大環状化合物(A)~大環状化合物(C)の収率が向上することを確認できた。
<大環状化合物(A)及び大環状化合物(B)の製造>
[実施例7]
 窒素雰囲気下、1L3つ口ナス形フラスコに、脱水トルエン188mL、化合物(1)としてa1-b1構造の塩(N,N―ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート)929mg(1.16mmol)を加え、回転子を用いて、得られた溶液を撹拌しながら80℃になるまで加熱した。加熱及び撹拌を続けながら、この溶液へ、アルデヒド(3)としてベンズアルデヒド4.92g(46.4mmol)と、(4-tert-ブチル-2,6-ジ-1H-ピロール-2-イル)フェノール6.50g(23.2mmol)と、トルエン187mLと、を室温下で混合して得られた混合液を添加した。この混合液の添加が終了してから45分後まで、そのまま、得られた反応液の加熱及び撹拌を続けた後、反応液の放冷を開始し、反応液の温度を徐々に室温に合わせた。
以上により、前記(i)の手順に従って、大環状化合物(A)-1を得た。
 なお、(4-tert-ブチル-2,6-ジ-1H-ピロール-2-イル)フェノールとしては、実施例1の場合と同じ方法で製造したものを用いた。
 次いで、大環状化合物(A)-1を含む前記反応液に、DDQ5.00g(22.0mmol)をクロロホルム68mLに懸濁させた懸濁液を、室温のまま5分間かけて滴下した。
 次いで、得られた反応液をろ過し、ろ液を重量が30gになるまで濃縮して、この濃縮物をメタノール1L中に滴下することで再沈殿を行った。次いで、得られた懸濁液をろ過して、ろ過物を乾燥させて、目的物である深紫色の大環状化合物(B)-1を6.35g得た(収率75%)。
 得られた大環状化合物(B)-1のH-NMR等の解析データは、国際公開第2017/073467号に記載の「化合物(F)」のものと同じであった。
<大環状化合物(D)及び大環状化合物(E)の製造>
[実施例8]
 国際公開第2017/073467号に記載の方法により、化合物(4)として、2,9-ビス[3-(1H-ピロール-2-イル)-5-tert-ブチル-2-ヒドロシキフェニル]フェナントロリンを製造した。
 窒素雰囲気下、100mL3つ口ナス形フラスコに、脱水トルエン5.8mL、化合物(1)としてa1-b1構造の塩(N,N―ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート)14mg(0.018mmol)、2,9-ビス[3-(1H-ピロール-2-イル)-5-tert-ブチル-2-ヒドロシキフェニル]フェナントロリン303mg(0.50mmol)を加え、回転子を用いて、得られた溶液を撹拌しながら80℃になるまで加熱した。この溶液の温度を80℃で維持し、撹拌を続けながら、この溶液へ、アルデヒド(3)としてベンズアルデヒド118mg(1.12mmol)と、トルエン1.2mLと、の混合液を、60分間かけて滴下した。滴下終了時から2時間後に、得られた反応液の放冷を開始し、反応液の温度を徐々に室温に合わせた。得られた沈殿物をろ過、ヘプタンで洗浄後、乾燥することで、大環状化合物(D)-1を354mg得た。
 次いで、大環状化合物(D)-1を139mg(0.20mmol)含むTHF溶液3.0mLに、p-クロラニル54mg(0.22mmol)を含むTHF1.7mLを加え、60℃にて30分間攪拌した。次いで、得られた反応液に5%NaCO水溶液20mLを加え、エバポレーターで濃縮し、20mLとした後に沈殿物をろ過した。ろ過物を乾燥させて、目的物である深紫色の大環状化合物(E)-1を収率83%で得た。
 得られた大環状化合物(E)-1のH-NMR等の解析データは、国際公開第2017/073467号に記載の「化合物3」のものと同じであった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000027
[比較例2]
 a1-b1構造の塩に代えて、トリフルオロ酢酸(CFCOH)を用いた点以外は、実施例8の場合と同じ操作を行った。しかし、目的物である大環状化合物(E)-1以外にも多種類の副生物が生じた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行ったところ、大環状化合物(E)-1の収率は49%であった。大環状化合物(E)-1の構造は、実施例8の場合と同じ方法で確認した。
<大環状化合物(F)の製造>
[実施例9]
  窒素雰囲気下、100mL3つ口ナス形フラスコに、138mg(0.195mmol)の大環状化合物(E)-1をクロロホルム10mLに溶解させたクロロホルム溶液と、148mg(0.586mmol)の酢酸コバルト4水和物をメタノール10mLに溶解させたメタノール溶液と、を加え、回転子を用いて、得られた溶液を撹拌しながら5時間加熱還流させた。
 得られた反応液を濃縮し、濃縮物に水を加えて懸濁液とし、この懸濁液をろ過し、ろ過物を乾燥させて、目的物である大環状化合物(F)-1を0.155g得た(収率92.3%)。なお、下記反応式中の大環状化合物(F)-1において、「OAc」は1当量の酢酸イオンが対イオンとして存在することを示す。
 得られた大環状化合物(F)-1の、濃度が1mg/mLであるクロロホルム溶液を調製した。質量分析計(アジレント・テクノロジー社製「Agilent LCMS6130」)を用い、移動相をメタノール、イオン化モードをAPCI positiveとして、上記で得られた溶液を分析し、分子量を測定したところ、M/Z=866.0であった(計算値:866.17(M+H))。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000028
 本発明は、ピロール環骨格と金属配位子を有する、各種大環状化合物の製造に利用可能である。

Claims (7)

  1.  下記式(1)で表されるカチオンユニットを有する化合物と、
     下記式(2)で表されるアニオンユニット及びプロトン性カチオンユニットを有する化合物と、
     プロトン性化合物、及び下記式(2)で表されるアニオンユニットを有し、かつプロトン性カチオンユニットを有しない化合物、の組み合わせと、
     からなる群より選択される1種又は2種以上を触媒として用い、
     下記式(3)で表されるアルデヒドと、下記式(4)で表されるピロール環含有化合物と、を反応させて、大環状化合物(A)を得る工程を含む、大環状化合物の製造方法。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
    (式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基である。)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
    (式(2)中、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素原子数6~30のアリール基である。)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
    (式(3)中、Rは、水素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基である。)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
    (式(4)中、Rは単結合又は置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在していてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビレン基であり;R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基である。)
  2.  前記Rが単結合又は置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在していない炭素原子数1~30のヒドロカルビレン基である請求項1に記載の大環状化合物の製造方法。
  3.  前記Rが置換されていてもよい炭素原子数6~30のアリール基である、請求項1又は2に記載の大環状化合物の製造方法。
  4.  前記R及びRが、炭素原子数1~18のアルキル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の大環状化合物の製造方法。
  5.  前記Rが置換されていてもよいフェニル基である、請求項1~4のいずれか一項に記載の大環状化合物の製造方法。
  6.  請求項1~5のいずれか一項に記載の大環状化合物の製造方法により、前記大環状化合物(A)を得る工程を行った後に、さらに、前記大環状化合物(A)を酸化することにより、前記大環状化合物(A)の酸化体を得る工程を含む、大環状化合物の製造方法。
  7.  請求項6に記載の大環状化合物の製造方法により、前記大環状化合物(A)の酸化体を得る工程を行った後に、さらに、前記大環状化合物(A)の酸化体を金属錯体化することにより、前記大環状化合物(A)の酸化体を含む金属錯体を得る工程を含む、大環状化合物の製造方法。
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