JP7150728B2 - 大環状化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
本願は、2017年7月31日に、日本に出願された特願2017-148187号に基づき、優先権を主張し、その内容をここに援用する。
また、ローゼムント型縮合反応は、ポルフィリン誘導体以外にも、ピロール環骨格を有する大環状化合物の製造に利用可能である。このような大環状化合物に金属を配位させたものには、触媒、発光材料、電子注入材料等の各種機能性材料として好適なものがある。
[1].下記式(1)で表されるカチオンユニットを有する化合物と、下記式(2)で表されるアニオンユニット及びプロトン性カチオンユニットを有する化合物と、プロトン性化合物、及び下記式(2)で表されるアニオンユニットを有し、かつプロトン性カチオンユニットを有しない化合物、の組み合わせと、からなる群より選択される1種又は2種以上を触媒として用い、下記式(3)で表されるアルデヒドと、下記式(4)で表されるピロール環含有化合物と、を反応させて、大環状化合物(A)を得る工程を含む、大環状化合物の製造方法。
[2].前記R5が単結合又は置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在していない炭素原子数1~30のヒドロカルビレン基である[1]に記載の大環状化合物の製造方法。
[3].前記R3が置換されていてもよい炭素原子数6~30のアリール基である、[1]又は[2]に記載の大環状化合物の製造方法。
[4].前記R1及びR2が、炭素原子数1~18のアルキル基である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の大環状化合物の製造方法。
[5].前記R4が置換されていてもよいフェニル基である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の大環状化合物の製造方法。
[6].[1]~[5]のいずれか一項に記載の大環状化合物の製造方法により、前記大環状化合物(A)を得る工程を行った後に、さらに、前記大環状化合物(A)を酸化することにより、前記大環状化合物(A)の酸化体を得る工程を含む、大環状化合物の製造方法。
[7].[6]に記載の大環状化合物の製造方法により、前記大環状化合物(A)の酸化体を得る工程を行った後に、さらに、前記大環状化合物(A)の酸化体を金属錯体化することにより、前記大環状化合物(A)の酸化体を含む金属錯体を得る工程を含む、大環状化合物の製造方法。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る大環状化合物の製造方法は、触媒を用いて、下記式(3)で表されるアルデヒド(本明細書においては「アルデヒド(3)」ということがある。)と、下記式(4)で表されるピロール環含有化合物(本明細書においては「化合物(4)」ということがある。)と、を反応させて、大環状化合物(A)を得る工程を含む。
本実施形態で用いる前記触媒としては、
下記式(1)で表されるカチオンユニットを有する化合物(本明細書においては「化合物(1)」ということがある。)と、
下記式(2)で表されるアニオンユニット及びプロトン性カチオンユニットを有する化合物(本明細書においては「化合物(2-1)」ということがある。)と、
プロトン性化合物、及び下記式(2)で表されるアニオンユニットを有し、かつプロトン性カチオンユニットを有しない化合物(本明細書においては「化合物(2-2)」ということがある。)、の組み合わせ(本明細書においては「組み合わせ(2-2)」ということがある。)と、
が挙げられる。そして、本実施形態においては、前記化合物(1)と、前記化合物(2-1)と、前記組み合わせ(2-2)と、からなる群より選択される1種又は2種以上を、前記触媒として用いることができる。
本明細書において、化合物(1)と化合物(2-1)の両方に該当する化合物は、化合物(2-1)から除くことができる。すなわち、本明細書において、化合物(1)と化合物(2-1)の両方に該当する化合物は、化合物(1)である。
大環状化合物(A)は、後述する大環状化合物(A)の酸化体(本明細書においては「大環状化合物(B)」ということがある。)の製造原料として好適である。
前記ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
本明細書において、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等と記載されている場合、これらの基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。
本明細書において、「芳香族環」は、環骨格を構成している原子の少なくとも一つがヘテロ原子(例えば窒素原子等)であるヘテロ芳香族環を含む。
また、本明細書において「大環状骨格」とは、上述のとおり、これよりも環員数が少ない芳香族環ではなく、これら芳香族環によって構成されている、これら芳香族環よりも環員数が多い環骨格を意味する。
なお、本明細書において、例えば、ベンゾトリアゾール環、ナフタレン環、フェナントロリン環等の、2個以上の芳香族環が縮環した環構造は、1個の芳香族環として取り扱う。
本発明の別の側面としては、本実施形態における大環状化合物(A)は、4個以上9個以下の芳香族環によって前記大環状骨格が構成されている化合物であることが好ましく、4個以上6個以下の芳香族環によって前記大環状骨格が構成されている化合物であることがより好ましい。
本明細書において、上述の大環状化合物(A)の芳香族環の数を数える場合、前記式(4)で表されるピロール環含有化合物由来の芳香族環の数のみを数え、前記式(3)で表されるアルデヒド由来の芳香族環の数は含めない。
化合物(1)は、前記触媒の1種であり、前記式(1)で表されるカチオンユニットを有する。また、化合物(1)は、その一分子が全体として電気的に中性となるように、このカチオンユニットの対イオンであるアニオンユニットを有する。
化合物(1)は、前記式(1)で表されるカチオンユニットを有し、H+を放出し得る構造を有しており、ブレンステッド酸として機能する。
化合物(1)が有するアニオンユニットについては、後ほど別途、詳しく説明する。
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等の炭素原子数3~30の環状飽和ヒドロカルビル基(環状のアルキル基);
エテニル基、プロペニル基、2-ブテニル基等の炭素原子数2~30のアルケニル基;
フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、4-フェニルフェニル基等の炭素原子数6~30のアリール基;
フェニルメチル基(ベンジル基ともいう)、2-フェニルエチル基(フェネチル基ともいう)等の炭素原子数7~30のアリールアルキル基(アラルキル基ともいう)等が挙げられる。
なかでも、R3は、好ましくは置換されていてもよい炭素原子数6~30のアリール基であり、より好ましくは置換されていてもよいフェニル基であり、さらに好ましくは炭素原子数1~8のヒドロカルビル基で置換されていてもよいフェニル基である。
R1及びR2と、R3とは、互いに同一であってもよいが、互いに異なっていることが好ましい。
好ましい前記カチオンユニットの例としては、R1及びR2がそれぞれ独立に炭素原子数1~30のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基であり、かつ、R3が置換されていてもよい炭素原子数6~30のアリール基又はR3が置換されていない炭素原子数6~30のアリール基であるものが挙げられる。
より好ましい前記カチオンユニットの例としては、R1及びR2がそれぞれ独立に炭素原子数1~18のアルキル基であり、かつ、R3が置換されていてもよい炭素原子数6~30のアリール基又はR3が置換されていない炭素原子数6~30のアリール基であるものが挙げられる。
さらに好ましい前記カチオンユニットの例としては、R1及びR2がそれぞれ独立に炭素原子数1~8の直鎖状アルキル基であり、かつ、R3が置換されていてもよいフェニル基又はR3が置換されていないフェニル基であるものが挙げられる。
特に好ましい前記カチオンユニットの例としては、R1及びR2がそれぞれ独立に炭素原子数1~8の直鎖状アルキル基であり、かつ、R3が炭素原子数1~8のヒドロカルビル基で置換されていてもよいフェニル基又はR3が置換されていないフェニル基であるものが挙げられる。
前記式a8~a9で表されるカチオンユニットは、R2がアルキル基(鎖状アルキル基)であり、R1及びR3が置換されていてもよいアリール基であるカチオンユニットに属する。
前記式a10で表されるカチオンユニットは、R1、R2及びR3がすべて、置換されていてもよいアリール基であるカチオンユニットに属する。
前記式a11~a12で表されるカチオンユニットは、R1、R2及びR3がすべてアルキル基(鎖状アルキル基)であるカチオンユニットに属する。
前記式(2)で表されるアニオンユニットは、前記触媒の1種である前記化合物(2-1)、又は前記組み合わせ(2-2)(プロトン性化合物及び化合物(2-2)の組み合わせ)を構成する。組み合わせ(2-2)を触媒として用いる場合には、化合物(2-2)をプロトン性化合物と共存させて反応系に添加してもよいし、化合物(2-2)をプロトン性化合物とは分けて反応系に添加してもよい。
本実施形態において、大環状化合物(A)を得るためには、反応系中にプロトン(H+)を放出し得るプロトン源が必要である。しかし、前記式(2)で表されるアニオンユニット自体は、プロトンを放出し得る構造を有していない。したがって、前記式(2)で表されるアニオンユニットを利用する場合には、例えば、このアニオンユニットとプロトン性カチオンユニットを有する化合物(2-1)を用いることができる。
化合物(2-1)が有するプロトン性カチオンユニットについては、後ほど別途、詳しく説明する。
化合物(2-2)自体は、プロトンを放出し得る構造を有していない。したがって、化合物(2-2)を用いる場合には、プロトン性化合物を併用する。
前記非プロトン性カチオンユニットと、プロトン性化合物については、後ほど別途、詳しく説明する。
前記フッ素原子含有基の例としては、フッ素原子、フルオロアルキル基が挙げられ、フルオロアルキル基は、アルキル基中の1個又は2個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたものであり、すべての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基であってもよい。
前記フルオロアルキル基の炭素原子数は、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、このようなフルオロアルキル基の例としては、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
前記式b5で表されるアニオンユニットは、Ar1~Ar4がフェニル基であるアニオンユニットに属する。
前記式b6~b8で表されるアニオンユニットは、Ar1~Ar4が、アルキル基又はアリール基で置換されているフェニル基であるアニオンユニットに属する。
化合物(1)が有する前記アニオンユニットは、特に限定されない。
化合物(1)が有する前記アニオンユニットの例としては、前記式(2)で表されるアニオンユニットが挙げられ、その具体例としては、前記式b1~b8のいずれかで表されるアニオンユニットが挙げられる。
化合物(2-1)が有する前記プロトン性カチオンユニットとしては、プロトン(H+)と、プロトンを放出し得るカチオンと、が挙げられる。
プロトンを放出し得るカチオンの例としては、前記式(1)で表されるカチオンユニットが挙げられ、その具体例としては、前記式a1~a12のいずれかで表されるカチオンユニットが挙げられる。
化合物(2-2)が有する前記非プロトン性カチオンユニットは、プロトン(H+)ではなく、プロトンを放出し得ないカチオンであれば、特に限定されない。
前記非プロトン性カチオンユニットの例としては、公知の各種カチオンが挙げられる。このような非プロトン性カチオンユニットの例としては、Li+、Na+、K+、Cs+等の無機カチオン;Ph3C+等の有機カチオンが挙げられる。
化合物(2-2)と組み合わせて用いる前記プロトン性化合物は、プロトン(H+)を放出し得る化合物である。
好ましい前記プロトン性化合物の例としては、CF3CO2H、CCl3CO2H、CF2HCO2H、CCl2HCO2H、HSO3H(すなわちH2SO3)、CFH2CO2H、CClH2CO2H、HF、HNO2、PhCO2Hが挙げられる。
本明細書において、化合物(1)とプロトン性化合物の両方に該当する化合物は、プロトン性化合物から除くことができる。すなわち、化合物(1)とプロトン性化合物の両方に該当する化合物は、化合物(1)である。
上述のとおり、組み合わせ(2-2)とは、プロトン性化合物と、化合物(2-2)と、の組み合わせである。
一組の組み合わせ(2-2)において、前記プロトン性化合物及び化合物(2-2)は、それぞれ1個だけであってもよいし、2個以上であってもよく、2個以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。例えば、一組の組み合わせ(2-2)において、化合物(2-2)が2個以上である場合、これら化合物(2-2)は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
同様に、一組の組み合わせ(2-2)において、プロトン性化合物が2個以上である場合、これらプロトン性化合物は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
組み合わせ(2-2)におけるプロトン性化合物と、化合物(2-2)のモル比(プロトン性化合物/化合物(2-2))は0.1~100であることが好ましく、0.3~10であることがより好ましく、0.5~3であることがさらに好ましい。
前記触媒を用いて反応を行う場合には、あらかじめ単離された状態の触媒を反応系に添加して、反応を行ってもよいし、反応系中で発生させた状態の触媒(換言すると、単離された状態ではないもの)を、単離することなく用いて、反応を行ってもよい。
化合物(2-2)を反応系中で発生させるためには、化合物(1)の場合と同様にすればよく、例えば、化合物(2-2)を構成するアニオンユニットを発生させるための化合物、及び化合物(2-2)を構成する非プロトン性カチオンユニットを発生させるための化合物を、それぞれ反応系に加えて、前記アニオンユニット及び非プロトン性カチオンユニットをそれぞれ発生させればよい。
例えば、N,N―ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートは、化合物(1)及び化合物(2-1)に該当し、1個の前記式a1で表されるカチオンユニットと、1個の前記式b1で表されるアニオンユニットと、を有しており、この触媒を構成しているカチオンユニット及びアニオンユニットは、いずれも1個だけである。
一方、Ph3C+(BPh4)-は、化合物(2-2)に該当し、1個の前記式b5で表されるアニオンユニットと、1個のカチオンユニットPh3C+と、を有しており、この化合物を構成しているカチオンユニット及びアニオンユニットは、いずれも1個だけである。ただし、この化合物(2-2)は、触媒として用いる場合、プロトン性化合物を併用して、組み合わせ(2-2)として用いることが必要となる。そして、プロトン性化合物は、カチオンユニット(H+)及びアニオンユニットを有しているといえる。したがって、例えば、Ph3C+(BPh4)-及びCF3CO2Hからなる組み合わせ(2-2)は、反応系中で、Ph3C+と、(BPh4)-(すなわち、式b5で表されるアニオンユニット)と、CF3CO2 -と、H+と、を発生し、見かけ上は、カチオンユニット及びアニオンユニットが、いずれも2個となる。
すなわち、大環状化合物(A)を得る工程においては、化合物(1)のみを用いてもよいし、化合物(2-1)のみを用いてもよいし、組み合わせ(2-2)のみを用いてもよいし、化合物(1)、化合物(2-1)、及び組み合わせ(2-2)のいずれか2種又はすべてを併用してもよい。
そして、化合物(1)自体、化合物(2-1)自体、及び組み合わせ(2-2)自体も、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
なかでも、本実施形態においては、前記触媒として、化合物(1)及び組み合わせ(2-2)からなる群より選択される1種又は2種以上を用いることが好ましく、化合物(1)を用いることがより好ましい。
なお、表1には、「p-q構造の塩」という体裁で記載している添加物があるが、これは、pというカチオンユニットと、qというアニオンユニットと、から構成された塩(化合物)を意味する。そして、pがa1~a12のいずれかである場合には、このp(カチオンユニット)が前記式a1~a12のいずれかで表されるカチオンユニットであることを意味し、qがb1~b8のいずれかである場合には、このq(アニオンユニット)が前記式b1~b8のいずれかで表されるアニオンユニットであることを意味する。
No.6~8において、添加物1は化合物(2-2)として好適であり、添加物2はプロトン性化合物として好適である。No.6~8は、反応系中で組み合わせ(2-2)を発生させるのに好適である。
No.9において、添加物1は化合物(2-2)として好適であり、添加物3は化合物(1)におけるカチオンユニットを発生させるための化合物として好適であり、添加物2はプロトン性化合物と、化合物(1)におけるアニオンユニットを発生させるための化合物と、の両方として好適である。No.9は、反応系中で化合物(1)及び組み合わせ(2-2)をともに発生させるのに好適である。
No.10~14、18、20、21において、添加物1は化合物(1)におけるカチオンユニットを発生させるための化合物として好適であり、添加物2は化合物(1)におけるアニオンユニットを発生させるための化合物として好適である。No.10~14、18、20、21は、反応系中で化合物(1)を発生させるのに好適である。
No.15、17、19において、添加物1は化合物(1)におけるカチオンユニットを発生させるための化合物として好適であり、添加物3は化合物(2-2)として好適であり、添加物2はプロトン性化合物と、化合物(1)におけるアニオンユニットを発生させるための化合物と、の両方として好適である。No.15、17、19は、反応系中で化合物(1)及び組み合わせ(2-2)をともに発生させるのに好適である。
No.16において、添加物1は化合物(1)におけるカチオンユニットを発生させるための化合物として好適であり、添加物3は化合物(1)又は化合物(2-1)として好適であり、添加物2は化合物(1)におけるアニオンユニットを発生させるための化合物として好適である。No.16は、あらかじめ単離された状態の化合物(1)又は化合物(2-1)を反応系に添加するとともに、反応系中で別途化合物(1)を発生させるのに好適である。
アルデヒド(3)は、前記式(3)で表され、ホルミル基(-C(=O)-H)を有する。
式(3)中、R4は、水素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基である。
R4における、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基としては、前記式(1)中のR1~R3における、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基と同様のものが挙げられる。
化合物(4)は、前記式(4)で表され、少なくとも2個のピロール環骨格を有する。
式(4)中、R5は単結合又は置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在していてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビレン基である。
R5が単結合である場合の化合物(4)においては、R6及びR7が結合している含窒素環(ピロール環骨格)と、R8及びR9が結合している含窒素環(ピロール環骨格)と、が直接結合している。
このとき、除かれる水素原子の位置は、特に限定されない。
シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、アダマンタンジイル基等の炭素原子数3~30の環状飽和ヒドロカルビレン基(環状のアルキレン基);
エテニレン基、プロペニレン基、2-ブテニレン基等の炭素原子数2~30のアルケニレン基;
ベンゼンジイル基、ナフタレンジイル基、ビフェニルジイル基等の炭素原子数6~30のアリーレン基;
炭素原子数1~30の直鎖状又は分岐鎖状(すなわち鎖状)のアルキレン基、炭素原子数3~30の環状飽和ヒドロカルビレン基(環状のアルキレン基)、炭素原子数2~30のアルケニレン基、又は炭素原子数6~30のアリーレン基中の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子に置換された基;及び
前記した基の二つ以上が組み合わされた基等が挙げられる。
前記炭素原子数2~30のアルケニレン基、又は炭素原子数6~30のアリーレン基中の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子に置換された基としては、3,6-ジフェニルフェナントレンー3’,3’’-ジイル基中の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子に置換された基が例として挙げられる。
R5が、ヘテロ原子が介在していている炭素原子数1~30のヒドロカルビレン基である場合、R5に含まれるヘテロ原子の数は2~6個であることが好ましく、2~4個であることがより好ましい。
前記ヒドロカルビル基としては、炭素原子数1~18のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~8のアルキル基がより好ましい。前記ヒドロカルビル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、分岐鎖状であることがより好ましい。中でも前記ヒドロカルビル基は、メチル基、tert-ブチル基が好ましく、tert-ブチル基が特に好ましい。R5が前記ヒドロカルビル基で置換されている場合、R5が有する前記ヒドロカルビル基の数としては1~4個が好ましく、1~2個がより好ましい。
R5がヒドロキシ基で置換されている場合、R5が有するヒドロキシ基の数としては1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
R5における前記フェニレン基は、1,3-フェニレン基であることが好ましい。
そして、R5、R6及びR7が結合している一方のピロール環骨格において、これらR5、R6及びR7は、上述の3個の炭素原子に、それぞれ別々に結合している。そして、これらR5、R6及びR7の結合先の炭素原子は、上述の3個の炭素原子のいずれかであれば、特に限定されない。ただし、R5は、上述の3個の炭素原子のうち、窒素原子に結合している炭素原子に結合していることが好ましい。
同様に、R5、R8及びR9が結合している他方のピロール環骨格において、これらR5、R8及びR9は、上述の3個の炭素原子に、それぞれ別々に結合している。そして、これらR5、R8及びR9の結合先の炭素原子は、上述の3個の炭素原子のいずれかであれば、特に限定されない。ただし、R5は、上述の3個の炭素原子のうち、窒素原子に結合している炭素原子に結合していることが好ましい。
R10A、R12A、R13A、R10B、R12B、R13B、R14B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bにおける前記ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
R10A、R12A、R13A、R10B、R12B、R13B、R14B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bにおける、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基としては、前記式(1)中のR1~R3における、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基と同様のものが挙げられる。
エテニルオキシ基、プロペニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基等の炭素原子数2~30のアルケニルオキシ基;
フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、4-フェニルフェニルオキシ基等の炭素原子数6~30のアリールオキシ基;
フェニルメチルオキシ基(ベンジルオキシ基)、2-フェニルエチルオキシ基(フェネチルオキシ基)等の炭素原子数7~30のアリールアルキルオキシ基(アラルキルオキシ基)等が挙げられる。
R10A、R12A、R13A、R10B、R12B、R13B、R14B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bにおけるヒドロカルビルオキシ基は、炭素原子数1~18の直鎖状のアルコキシ基であることが好ましい。
ただし、R10A、R12A、R13A、R10B、R12B、R13B、R14B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bにおけるヒドロカルビルオキシ基は、これらに限定されない。
R10A、R10B及びR14Bにおける前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、分岐鎖状であることがより好ましい。
中でもR10A、R10B及びR14Bにおける前記アルキル基は、メチル基、tert-ブチル基が好ましく、tert-ブチル基が特に好ましい。
置換基としてのR11A、R11B及びR15Bにおける、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビルオキシ基としては、それぞれ、R10A、R12A、R13A、R10B、R12B、R13B、R14B、R16B、R17B、R18B、R19B、R20B、R21B、R22B、及びR23Bにおける、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビル基、置換されていてもよい炭素原子数1~30のヒドロカルビルオキシ基と同様のものが挙げられる。
式(9-A)、式(9-C)中の複数あるR4、R5、R6、R7、R8、R9は、それぞれ同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
一方、前記触媒の使用量は、例えば、前記式(1)で表されるカチオンユニットと、前記式(2)で表されるアニオンユニットと、の合計モル量が、前記化合物(4)のモル量に対して、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.1%以上、特に好ましくは0.5%以上となるように調節する。
ここで合計モル量とは、触媒が前記式(1)で表されるカチオンユニットと、前記式(2)で表されるアニオンユニットの両方を有する場合は、両者のモル量の和であり、式(1)で表されるカチオンユニットのみを有する場合は、カチオンユニットのモル量であり、前記式(2)で表されるアニオンユニットのみを有する場合は、アニオンユニットのモル量である。
溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、1-プロパノ-ル、イソプロピルアルコール(2-プロパノ-ル)、2-メトキシエタノール、1-ブタノール、1,1-ジメチルエタノール、エチレングリコール、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、メチルエチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、デュレン、デカリン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン等が挙げられる。
これらの中でも、溶媒は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン又はN,N-ジメチルホルムアミドであることが好ましく、トルエン又はキシレンであることがより好ましい。
溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
ただし、溶媒の使用量は、化合物(4)の使用量(質量)に対して、好ましくは5質量倍以上、より好ましくは10質量倍以上、さらに好ましくは20質量倍以上であり、特に好ましくは30質量倍以上、最も好ましくは50質量倍以上である。溶媒の使用量がこれら下限値以上であることで、アルデヒド(3)と化合物(4)との反応による分子内環化反応が促進されて、大環状化合物(A)の収率がより高くなる。
一方、溶媒の使用量は、化合物(4)の使用量(質量)に対して、好ましくは2000質量倍以下、より好ましくは500質量倍以下、さらに好ましくは100質量倍以下である。溶媒の使用量がこれら上限値以下であることで、溶媒の過剰使用が避けられ、例えば、精製時の濃縮に伴うコストを低減できる。
上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて、化合物(4)の使用量(質量)に対する溶媒の使用量を適宜調節できる。例えば、溶媒の使用量は、化合物(4)の使用量(質量)に対して、好ましくは5質量倍以上2000質量倍以下、より好ましくは10質量倍以上500質量倍以下、さらに好ましくは10質量倍以上100質量倍以下、特に好ましくは10質量倍以上50質量倍以下である。
ただし、副反応が抑制されて、大環状化合物(A)の収率がより高くなる点では、アルデヒド(3)の使用量は、化合物(4)の使用量(モル量)に対して、好ましくは1倍モル量以上、より好ましくは1~3倍モル量であり、例えば、2~3倍モル量であってもよい。
前記反応温度は、室温(例えば23℃。以下同様。)と、溶媒の沸点と、の間の温度であることが好ましく、室温以上でかつ溶媒の沸点よりも35℃低い温度と、溶媒の沸点と、の間の温度であることがより好ましい。
反応時間は、反応温度に応じて、前記範囲内で適宜調節することが好ましい。例えば、反応温度を低めに設定して、反応時間を長めにしてもよい。
なお、ここで「反応時間」とは、前記触媒、アルデヒド(3)及び化合物(4)の共存が開始された時点を起点として、特定するものとする。
触媒含有液は、前記溶媒に前記触媒を添加して調製することが好ましい。
例えば、前記原料含有液は、前記触媒含有液に対して、一括添加してもよいし、滴下により添加してもよい。滴下により添加する場合の滴下時間は、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、副反応が抑制されて、大環状化合物(A)の収率がより高くなる点から、1分間~3時間であることが好ましく、10分間~1時間であることがより好ましい。
これ以外で好ましい手順としては、さらに、下記(ii)~(x)が挙げられる。すなわち、本実施形態において、大環状化合物(A)を得る工程での好ましい手順は、下記(i)~(x)のいずれかである。
(ii)触媒の添加→加熱→アルデヒド(3)の添加→化合物(4)の添加
(iii)触媒、化合物(4)及びアルデヒド(3)の同時添加→加熱
(iv)加熱→触媒、化合物(4)及びアルデヒド(3)の同時添加
(v)加熱→触媒及びアルデヒド(3)の添加→化合物(4)の添加
(vi)加熱→アルデヒド(3)の添加→触媒及び化合物(4)の同時添加
(vii)加熱→触媒の添加→アルデヒド(3)及び化合物(4)の同時添加
(viii)アルデヒド(3)の添加→加熱→触媒及び化合物(4)の添加
(ix)触媒及びアルデヒド(3)の添加→加熱→化合物(4)の添加
(x)化合物(4)及びアルデヒド(3)の添加→加熱→触媒の添加
また、(v)の手順における触媒及びアルデヒド(3)の添加、(viii)の手順における触媒及び化合物(4)の添加、(ix)の手順における触媒及びアルデヒド(3)の添加、のそれぞれにおいて、添加する2成分は、一方を先に添加して、他方を後から添加してもよいし、同時に添加してもよい。また、これら添加する2成分は、一方又は両方を粉体として、反応容器に添加してもよい。
一方、例えば、トリフルオロ酢酸等の酸触媒を用いる、従来のローゼムント型縮合反応によって、目的物である大環状化合物を得た場合には、この大環状化合物を得た後の段階で、反応系にアミン系の化合物(塩基性化合物)を添加して、酸触媒を不活性化させる(中和する)ことがある。すなわち、このような従来法では、大環状化合物を得た後の段階で、反応系にアミン系化合物を添加するのであって、たとえこの添加後に、前記式(1)で表されるカチオンユニットが発生したとしても、このカチオンユニットは、大環状化合物の生成には全く関与していない。
このように、本実施形態の製造方法は、大環状化合物を得るための触媒が従来とは全く相違する。
また、取り出した大環状化合物(A)は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
ここで、「大環状化合物(A)を用いる他の工程」には、後述する「大環状化合物(A)の酸化体(大環状化合物(B))を得る工程」が包含される。
本発明の第2実施形態に係る大環状化合物の製造方法は、上述の第1実施形態の大環状化合物の製造方法により、前記大環状化合物(A)を得る工程を行った後に、さらに、前記大環状化合物(A)を酸化することにより、前記大環状化合物(A)の酸化体(大環状化合物(B))を得る工程を含む。
大環状化合物(B)は、後述する大環状化合物(A)の酸化体を含む金属錯体(本明細書においては「大環状化合物(C)」ということがある)の製造原料として好適である。
式(12-A)、式(12-C)中の複数あるR4、R5、R6、R7、R8、R9は、それぞれ同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
例えば、溶媒中の大環状化合物(A)に対して、酸素存在下(例えば空気雰囲気下)での加熱による空気(酸素)酸化を行う方法、又は酸素以外の酸化剤を用いる酸化を行う方法が挙げられる。前記酸素以外の酸化剤の例としては、クロラニル(テトラクロロ-p-ベンゾキノン)、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(DDQ)等が挙げられる。
この場合の加熱温度は、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下、さらに好ましくは300℃以下、特に好ましくは250℃以下である。一方、前記加熱温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは175℃以上、特に好ましくは200℃以上である。
大環状化合物(A)の粉体の前記加熱温度は、例えば、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内となるように、適宜調節できる。例えば、前記加熱温度は、好ましくは100~500℃、より好ましくは150~400℃、さらに好ましくは175~300℃、特に好ましくは200~250℃である。
大環状化合物(A)の粉体の前記加熱時間は、例えば、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内となるように、適宜調節できる。例えば、前記加熱時間は、好ましくは1秒間~72時間、より好ましくは1分間~12時間、さらに好ましくは10分間~3時間である。
また、前記酸素濃度は、例えば、100ppm以上であることが好ましく、1000ppm以上であることがより好ましく、5000ppm以上であることがさらに好ましい。
大環状化合物(A)の粉体を置く環境の酸素濃度は、例えば、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内となるように、適宜調節できる。例えば、前記酸素濃度は、好ましくは100ppm~22%であり、より好ましくは100ppm~10%であり、さらに好ましくは1000ppm~5%であり、さらに好ましくは5000ppm~1%である。
ここで、「大環状化合物(B)を用いる他の工程」には、後述する「大環状化合物(A)の酸化体を含む金属錯体(大環状化合物(C))を得る工程」が包含される。
本発明の第3実施形態に係る大環状化合物の製造方法は、上述の第2実施形態の大環状化合物の製造方法により、前記大環状化合物(B)を得る工程を行った後に、さらに、前記大環状化合物(B)(大環状化合物(A)の酸化体)を金属錯体化することにより、前記大環状化合物(B)を含む金属錯体(大環状化合物(C))を得る工程を含む。
大環状化合物(C)は、配位している金属種に応じて、種々の機能を有し、例えば、有機合成反応の触媒、電極上の反応促進触媒、発光材料、電子注入材料等として好適である。なかでも、大環状化合物(C)は、空気電池の正極触媒として、特に好適である。
このときの金属を配位させる方法としては、例えば、公知のポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体等の製造時に、金属を配位させる場合と同様の方法を適用できる。
これらの中でも、前記金属は、好ましくは、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステンであり、より好ましくは、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅であり、特に好ましくは、鉄、コバルトである。
そして、金属含有成分を2種以上用いる場合、これら金属含有成分中の金属は、合計で1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
[実施例1]
国際公開第2017/073467号に記載の方法により、化合物(4)として、(4-tert-ブチル-2,6-ジ-1H-ピロール-2-イル)フェノールを製造した。
窒素雰囲気下、200mL3つ口ナス形フラスコに、脱水トルエン23mL、化合物(1)としてa1-b1構造の塩(N,N―ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート)112mg(0.140mmol)を加え、回転子を用いて、得られた溶液を撹拌しながら80℃になるまで加熱した。この溶液の温度を80℃で維持し、撹拌を続けながら、この溶液へ、アルデヒド(3)としてベンズアルデヒド578mg(5.45mmol)と、(4-tert-ブチル-2,6-ジ-1H-ピロール-2-イル)フェノール766mg(2.73mmol)と、トルエン22mLと、の混合液を、45分間かけて滴下した。滴下終了時から3分後に、得られた反応液の放冷を開始し、反応液の温度を徐々に室温に合わせた。以上により、前記(i)の手順に従って、大環状化合物(A)-1を得た。
次いで、得られた反応液をろ過し、ろ液を重量が6gになるまで濃縮して、この濃縮物をメタノール125mL中に滴下することで再沈殿を行った。次いで、得られた液体をろ過して、ろ過物を乾燥させて、目的物である深紫色の大環状化合物(B)-1を700mg得た(収率70%)。
a1-b1構造の塩に代えて、化合物(1)として、同じモル量のN,N-ジメチルアニリンと同じモル量のトリフルオロ酢酸(CF3CO2H)との組み合わせ(上述のNo.10の添加物1~2)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ操作を行い、大環状化合物(B)-1を得た(収率66%)。大環状化合物(B)-1の構造は、実施例1の場合と同じ方法で確認した。
a1-b1構造の塩に代えて、化合物(1)として、同じモル量のN,N-ジメチルアニリンと同じモル量のトリクロロ酢酸(CCl3CO2H)との組み合わせ(上述のNo.11の添加物1~2)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ操作を行い、大環状化合物(B)-1を得た(収率72%)。大環状化合物(B)-1の構造は、実施例1の場合と同じ方法で確認した。
a1-b1構造の塩に代えて、化合物(1)として、同じモル量のN,N-フェニルアニリンと同じモル量のトリフルオロ酢酸(CF3CO2H)との組み合わせ(上述のNo.18の添加物1~2)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ操作を行い、大環状化合物(B)-1を得た(収率68%)。大環状化合物(B)-1の構造は、実施例1の場合と同じ方法で確認した。
a1-b1構造の塩に代えて、組み合わせ(2-2)として、同じモル量のPh3C+-b1構造の塩と同じモル量のトリフルオロ酢酸(CF3CO2H)との組み合わせ(上述のNo.6の添加物1~2)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ操作を行い、大環状化合物(B)-1を得た(収率79%)。大環状化合物(B)-1の構造は、実施例1の場合と同じ方法で確認した。
a1-b1構造の塩に代えて、同じモル量のトリフルオロ酢酸(CF3CO2H)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ操作を行った。しかし、目的物である大環状化合物(B)-1以外にも多種類の副生物が生じた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行ったところ、大環状化合物(B)-1の収率は36%であった。大環状化合物(B)-1の構造は、実施例1の場合と同じ方法で確認した。
[実施例6]
窒素雰囲気下、1L3つ口ナス形フラスコに、5.00g(6.82mmol)の大環状化合物(B)-1をクロロホルム225mLに溶解させたクロロホルム溶液と、5.10g(20.5mmol)の酢酸コバルト4水和物をメタノール208mLに溶解させたメタノール溶液と、を加え、回転子を用いて、得られた溶液を撹拌しながら4時間加熱還流させた。
得られた反応液を濃縮し、濃縮物に水を加えて懸濁液とし、この懸濁液をろ過し、ろ過物を乾燥させて、目的物である大環状化合物(C)-1を5.78g得た(収率100%)。
Gaussian Inc.社製「Gaussian09」プログラムを用いて、計算手法を密度汎関数法(B3LYP)とし、基底関数として6-31G(d,p)を使用して、(4-tert-ブチル-2,6-ジ-1H-ピロール-2-イル)フェノールと、ベンズアルデヒドと、上述の各種触媒と、が共存した反応系モデルについて、各種中間体の安定構造及び遷移状態の構造を、計算により特定した。それぞれの状態については、エネルギー値も計算できるため、これらエネルギー値を比較することによって、大環状化合物の合成過程における律速段階を決定し、その活性化エネルギーを算出した。
[実施例7]
窒素雰囲気下、1L3つ口ナス形フラスコに、脱水トルエン188mL、化合物(1)としてa1-b1構造の塩(N,N―ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート)929mg(1.16mmol)を加え、回転子を用いて、得られた溶液を撹拌しながら80℃になるまで加熱した。加熱及び撹拌を続けながら、この溶液へ、アルデヒド(3)としてベンズアルデヒド4.92g(46.4mmol)と、(4-tert-ブチル-2,6-ジ-1H-ピロール-2-イル)フェノール6.50g(23.2mmol)と、トルエン187mLと、を室温下で混合して得られた混合液を添加した。この混合液の添加が終了してから45分後まで、そのまま、得られた反応液の加熱及び撹拌を続けた後、反応液の放冷を開始し、反応液の温度を徐々に室温に合わせた。
以上により、前記(i)の手順に従って、大環状化合物(A)-1を得た。
なお、(4-tert-ブチル-2,6-ジ-1H-ピロール-2-イル)フェノールとしては、実施例1の場合と同じ方法で製造したものを用いた。
次いで、得られた反応液をろ過し、ろ液を重量が30gになるまで濃縮して、この濃縮物をメタノール1L中に滴下することで再沈殿を行った。次いで、得られた懸濁液をろ過して、ろ過物を乾燥させて、目的物である深紫色の大環状化合物(B)-1を6.35g得た(収率75%)。
[実施例8]
国際公開第2017/073467号に記載の方法により、化合物(4)として、2,9-ビス[3-(1H-ピロール-2-イル)-5-tert-ブチル-2-ヒドロシキフェニル]フェナントロリンを製造した。
窒素雰囲気下、100mL3つ口ナス形フラスコに、脱水トルエン5.8mL、化合物(1)としてa1-b1構造の塩(N,N―ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート)14mg(0.018mmol)、2,9-ビス[3-(1H-ピロール-2-イル)-5-tert-ブチル-2-ヒドロシキフェニル]フェナントロリン303mg(0.50mmol)を加え、回転子を用いて、得られた溶液を撹拌しながら80℃になるまで加熱した。この溶液の温度を80℃で維持し、撹拌を続けながら、この溶液へ、アルデヒド(3)としてベンズアルデヒド118mg(1.12mmol)と、トルエン1.2mLと、の混合液を、60分間かけて滴下した。滴下終了時から2時間後に、得られた反応液の放冷を開始し、反応液の温度を徐々に室温に合わせた。得られた沈殿物をろ過、ヘプタンで洗浄後、乾燥することで、大環状化合物(D)-1を354mg得た。
a1-b1構造の塩に代えて、トリフルオロ酢酸(CF3CO2H)を用いた点以外は、実施例8の場合と同じ操作を行った。しかし、目的物である大環状化合物(E)-1以外にも多種類の副生物が生じた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行ったところ、大環状化合物(E)-1の収率は49%であった。大環状化合物(E)-1の構造は、実施例8の場合と同じ方法で確認した。
[実施例9]
窒素雰囲気下、100mL3つ口ナス形フラスコに、138mg(0.195mmol)の大環状化合物(E)-1をクロロホルム10mLに溶解させたクロロホルム溶液と、148mg(0.586mmol)の酢酸コバルト4水和物をメタノール10mLに溶解させたメタノール溶液と、を加え、回転子を用いて、得られた溶液を撹拌しながら5時間加熱還流させた。
得られた反応液を濃縮し、濃縮物に水を加えて懸濁液とし、この懸濁液をろ過し、ろ過物を乾燥させて、目的物である大環状化合物(F)-1を0.155g得た(収率92.3%)。なお、下記反応式中の大環状化合物(F)-1において、「OAc」は1当量の酢酸イオンが対イオンとして存在することを示す。
Claims (9)
- 下記式(1)で表されるカチオンユニットを有する化合物と、
下記式(2)で表されるアニオンユニット及びプロトン性カチオンユニットを有する化合物と、
プロトン性化合物、及び下記式(2)で表されるアニオンユニットを有し、かつプロトン性カチオンユニットを有しない化合物、の組み合わせと、
からなる群より選択される1種又は2種以上を触媒として用い、
下記式(3)で表されるアルデヒドと、下記式(4)で表されるピロール環含有化合物と、を反応させて、下記式(4)で表されるピロール環含有化合物由来の4個以上の芳香族環を有し、これら4個以上の芳香族環の環骨格を構成している原子によって、さらに、これら個々の芳香族環よりも環員数が多い大環状骨格が構成されている、大環状化合物(A)を得る工程を含む、大環状化合物の製造方法。
- 前記R5が単結合又は置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在していない炭素原子数1~30のヒドロカルビレン基である、請求項1又は2に記載の大環状化合物の製造方法。
- 前記式(4)で表されるピロール環含有化合物が、下記式(6-A)又は下記式(6-B)で表される化合物である、請求項1に記載の大環状化合物の製造方法。
- 前記R3が置換されていてもよい炭素原子数6~30のアリール基である、請求項1~4のいずれか一項に記載の大環状化合物の製造方法。
- 前記R1及びR2が、炭素原子数1~18のアルキル基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の大環状化合物の製造方法。
- 前記R4が置換されていてもよいフェニル基である、請求項1~6のいずれか一項に記載の大環状化合物の製造方法。
- 請求項1~7のいずれか一項に記載の大環状化合物の製造方法により、前記大環状化合物(A)を得る工程を行った後に、さらに、前記大環状化合物(A)を酸化することにより、前記大環状化合物(A)の酸化体を得る工程を含む、大環状化合物の製造方法。
- 請求項8に記載の大環状化合物の製造方法により、前記大環状化合物(A)の酸化体を得る工程を行った後に、さらに、前記大環状化合物(A)の酸化体を金属錯体化することにより、前記大環状化合物(A)の酸化体を含む金属錯体を得る工程を含む、大環状化合物の製造方法。
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