WO2019016900A1 - スライドファスナーのスライダー - Google Patents

Abstract

前後方向へ貫通するエレメント路（１ａ）と上方に通じる爪穴（１１ａ）とが内部に形成され上側を覆う上翼板（１１）の上面から前取付柱（１５）および後取付柱（１６）が突出する胴体（１）、前後方向に回動可能であると共に回動の中心となる軸部（２１）が前記上翼板の上に配置される引手（２）、前記前取付柱と前記後取付柱の間において前記軸部の上に載せると共に前記胴体を移動可能および移動不能に制御し前記爪穴から前記エレメント路に突入する爪部（３２）の突入長さが前記軸部の上下位置に応じて変化することによって前記胴体の移動を制御する制御爪（３）、前記制御爪を上方及び側方から上板部および側板部が覆うと共に前記前取付柱と前記後取付柱に対して上下方向に揺動可能に取り付けられ前記上板部の前端から前記前取付柱の前面に沿って延びる板バネ部（４２）の復元力によって前記上板部が前記制御爪を下方に押し込むカバー（４）、これらは別々の部品であるスライダー。

Description

スライドファスナーのスライダー

　本発明はスライドファスナーのスライダーに関するもので、より詳しくはスライダーのうち自動停止機能を備えるものに関する。

　自動停止機能を備える従来のスライダーの一例としては、胴体と、胴体を操作する引手と、引手の一部を覆うと共に引手を胴体に回動可能に取り付けるカバーとの３部品で構成されたものが存在する（特許文献１）。
　カバーは、前後方向に延びる上壁と、上壁の側端から下方に延びる側壁とを備えるものである。またカバーは、上壁の前端から下方に向かう板バネとしての弾性片と、側壁の下端から下方に延びると共に胴体を移動可能および移動不能に制御する制御爪としての停止爪とを備えるものである。
　またカバーは胴体に対して上下に揺動可能に取り付けられている。より詳しく言えば、カバーは、側壁の前部を揺動の中心部とすると共に、側壁の後部を上下に変位（揺動）する変位部とするものである。また引手を操作してカバーの後部を上方に変位させたときに、カバーの弾性片は弾性変形してカバーの後部を下方に押し戻す復元力を発生させるものである。ちなみにカバーの後部を上方に変位させると、停止爪も上方に変位した状態になる。そして引手から手を離すと、復元力により自動的にカバーの後部も停止爪も下方に変位して、停止爪が胴体の内部に深く突入して、胴体が一対のエレメント列に対して移動不能（停止した状態）となる。つまりスライダーには自動停止機能が付いている。

　また自動停止機能を備える従来のスライダーの一例としては、胴体と、引手と、胴体を移動可能および移動不能に制御する制御爪としての爪杆と、爪杆の一部を胴体の内部に突入させる復元力を弾性変形により発生させる板バネと、引手・板バネ・爪杆を胴体に取り付けるカバーとの５部品で構成されたものが存在する（特許文献２）。

特許４６２８２２７号公報 特許５００８５１８号公報

　しかしながら特許文献１に開示されたスライダーのカバーは、その一部分として制御爪としての停止爪を備えるものである。したがって制御爪の剛性はカバーの厚みに左右されることとなる。しかもカバーはプレス加工によって折り曲げて形成されるものである。そうするとカバーの厚みはプレス加工のし易さに配慮した寸法になるので、制御爪は所望の剛性を得ることが難しい。より詳しく言えば、カバーの厚みはプレス加工のし易さに配慮すると、薄くなるので、制御爪の剛性は理想よりも低くなり易い。

　また特許文献２に開示されたスライダーは制御爪（爪杆）・板バネ・カバーを別々の部品とするものであり、部品点数が多くなる。しかもこのスライダーは爪杆・板バネ・カバーを上下方向に重ね合わせて配置するものなので、スライダーの上下方向の寸法が大きくなり易い。ちなみにこのスライダーは、カバーを胴体に対し上下に揺動不能に固定してあると共に、引手の操作に伴ってカバーの内部で制御爪を上下に揺動させるものである。したがってカバーの上下方向の寸法は制御爪を上下に揺動させる空間部に対応させて大きくなり、そのカバーの上下方向の寸法に対応させてスライダーの上下方向の寸法も大きくなる。

　本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その目的は、制御爪の剛性をカバーの厚みとは無関係にすることができ、しかも部品点数をできるだけ少なくでき、且つ上下方向の寸法をできるだけ小さくできるスライダーを提供することである。

　本発明のスライドファスナーのスライダーは、前後方向へ貫通するエレメント路とエレメント路に対して上方に通じる爪穴とが内部に形成される胴体であってエレメント路の上側を覆う上翼板の上面から前取付柱および後取付柱が突出する胴体、前後方向に回動可能であると共に回動の中心となる軸部が上翼板の上に配置される引手、前取付柱と後取付柱の間において軸部の上に載せると共に胴体を移動可能および移動不能に制御する制御爪であって爪穴からエレメント路に突入する爪部の突入長さが軸部の上下位置に応じて変化することによって胴体の移動を制御する制御爪、制御爪を上方及び側方から上板部および側板部が覆うと共に前取付柱と後取付柱に対して上下方向に揺動可能に取り付けられるカバーであって上板部の前端から前取付柱の前面に沿って延びる板バネ部の復元力によって上板部が制御爪を下方に押し込むカバーを備える。そして胴体と引手と制御爪とカバーは別々の部品である。

　また制御爪とカバーとの具体的な構成の一例としては、次のものが存在する。
　すなわち胴体が移動可能である場合に制御爪とカバーは上下に接触しているものである。

　またカバーの側板部の具体的な構成の一例としては、次のものが存在する。
　すなわちカバーの側板部は、上板部の左右側端から下方に向かって延びる側板本体部と、側板本体部の下部に対して前方に突出する前突出片部とを備える。そのうえで前突出片部は、カバーが揺動するときの中心部となるものである。

　胴体が移動不能である場合に制御爪とカバーは上下に接触しているか否かは問わないが、スライダーの上下方向の寸法をできるだけ小さくするには次のようにすることが望ましい。
　すなわち胴体が移動不能である場合に制御爪とカバーは上下に接触していることである。

　カバーの上面と前取付柱の上面との高さの相対的な関係は問わないが、スライダーの上下方向の寸法をできるだけ小さくするには次のようにすることが望ましい。
　すなわち板バネ部は、上板部の前端から前方に向かって延びる第１のバネ片部と、第１のバネ片部の前端から下方に向かって延びる第２のバネ片部とを備えるものとする。そのうえで前取付柱は上面の左右方向の中央部に、第１のバネ片部を収容する第１の凹部を備えるものとする。そして胴体が移動不能である場合に、カバーの上面は、前取付柱の上面に対して同じ高さか、低くしてある。

　本発明のスライダーは、制御爪とカバーを別々の部品とすると共に、カバーの一部を板バネ部にするものなので、制御爪とカバーと板バネを別々の部品とするもの（特許文献２に開示されたスライダー）に比べ、部品点数が少なくなる。また制御爪とカバーと板バネを別々の部品とするもの（特許文献２に開示されたスライダー）がカバーと板バネを上下に重ね合わせている分の上下方向の寸法を必須とするにも関わらず、本発明のスライダーは、カバーの一部である板バネ部が前取付柱の前面に沿って延びるものなので、単独の部品としての板バネをカバーの下側に重ね合わせなくても良く、上下方向の寸法を小さくできるものである。
　また本発明のスライダーは、制御爪とカバーを別々の部品としてあるので、制御爪をカバーの一部とするもの（特許文献１に開示されたスライダー）に比べて、制御爪の剛性とカバーの厚みとが無関係なものである。

　またスライダーは、胴体が移動不能である場合には制御爪とカバーとが上下に接触しているものであれば、上下方向の寸法をより小さくできる。

　またスライダーは、胴体が移動不能である場合にカバーの上面を前取付柱の上面に対して同じ高さか、低くしてあるものであれば、上下方向の寸法をより小さくできる。

本発明の第一実施形態のスライダーの分解状態を示す斜視図である。 第一実施形態のスライダーの組立状態示す斜視図である。 第一実施形態のスライダーの側面図である。 （Ａ）（Ｂ）図は、第一実施形態のスライダーの制御爪がエレメント路に入っている状態と、エレメント路から出ている状態を示す断面図である。 スライダーの胴体の平面図である。 スライドファスナーの平面図である。

　スライドファスナーＦは図６に示すように、一対のファスナーストリンガーＦ１，Ｆ１と、一対のファスナーストリンガーＦ１，Ｆ１を開閉するスライダーＳを備えるものである。

　一対のファスナーストリンガーＦ１，Ｆ１は、帯状であって且つ帯幅方向に対向する一対のファスナーテープＦ２，Ｆ２と、一対のファスナーテープＦ２，Ｆ２の対向する側縁部に別々に固定された一対のエレメント列Ｆ３，Ｆ３とを備えるものである。ちなみにエレメント列Ｆ３は、図示の例のようにモノフィラメントをコイル状に曲げ、そのコイルの一巻分のエレメントが多数連続するものや、図示しないが、多数のエレメントがファスナーテープに対してその延びる方向に間隔をあけて固定されたもの等がある。

　以下では、互いに直交する三本の直線方向を用いて、方向を定める。
　第１の直線方向は、一対のファスナーストリンガーＦ１を対向させる方向、言い換えれば一対のエレメント列Ｆ３，Ｆ３が対向する方向であり、左右方向と言う。ちなみにファスナーストリンガーＦ１（ファスナーテープＦ２）は帯状であり、その帯幅方向が左右方向である。左右方向とは、図６の左右方向である。
　第２の直線方向は、一対のファスナーストリンガーＦ１の長手方向、言い換えれば帯状であるファスナーストリンガーＦ１の延びる方向であり、長手方向または、前後方向と言う。前方向とは、一対のファスナーストリンガーＦ１を閉じるときに（一対のエレメント列Ｆ３，Ｆ３を噛合させるときに）スライダーＳを移動させる方向である。後方向とは一対のファスナーストリンガーＦ１を開くときに（一対のエレメント列Ｆ３，Ｆ３を分離させるときに）スライダーＳを移動させる方向である。前方向とは、図６の上方向であり、後方向とは図６の下方向である。
　第３の直線方向は、ファスナーストリンガーＦ１の厚み方向、言い換えればファスナーテープＦ２や、エレメント列Ｆ３の厚み方向であり、上下方向と言う。上方向とは、図６の紙面に対して直交する方向のうち手前を向く方向である。下方向とは、図６の紙面に対して直交する方向のうち奥を向く方向である。

　本発明の第一実施形態のスライダーＳは図６に示すように、一対のファスナーストリンガーＦ１を開閉可能な胴体１と、胴体１の上に配置されると共に前後に回動可能な引手２と、胴体１の上に載せられると共に引手２の態様に応じて胴体１を移動可能および移動不能に制御する制御爪３と、制御爪３を覆うと共に引手２と制御爪３を胴体１に連結するカバー４であって上下方向に揺動可能なカバー４とを備える。第一実施形態のスライダーＳは、胴体１と引手２と制御爪３とカバー４を別々の部品とするもので、４つの部品より構成されるものである。ちなみに引手２に関して、回動とは、スライダーＳによって一対のファスナーストリンガーＦ１，Ｆ１を開閉するときに引手２を操作して前後に回すときの動きである。以後、制御爪３が胴体１を移動不能に制御した状態のスライダーＳを基準にして、各部品について説明する。

　引手２は図１に示すように、回動するときの半径方向に延びるものであって、半径方向の一端部には回動の中心となる軸部２１を、半径方向の他端部には引手２を摘まむための摘まみ部２２を備える。より詳しく言えば、引手２は、半径方向の一方側にはカバー４を通す貫通穴２３を備える。貫通穴２３に対して半径方向の他方側の部分が摘まみ部２２であり、貫通穴２３を形成する枠部のうち摘まみ部２２に対して半径方向に対向する部分が軸部２１である。この軸部２１が胴体１の上に配置され、軸部２１の上に制御爪３が配置される。

　制御爪３は、軸部２１の上側において前後に延びると共に軸部２１によって押し上げられる被押上げ部３１と、被押上げ部３１の後部から下方に向かう爪部３２とを備える。また制御爪３は、被押上げ部３１の後端よりも前側に爪部３２を備えるものであり、それゆえ被押上げ部３１の後端部３１ｃは、爪部３２よりも後方に張り出している。

　カバー４は、胴体１の上面に対向する上板部４１、上板部４１の前端から下方に向かって延びる板バネ部４２、上板部４１の左右側端から下方に向かって延びる一対の側板部４３，４３を備える。カバー４は金属板をプレス加工によって折り曲げて形成したものである。またカバー４（側板部４３）の厚みは、制御爪３の左右方向の厚みよりも薄くなっている。なおカバー４の詳細は後で説明する。

　胴体１はエレメントを噛合および分離させるためのものである。胴体１は空間部として図１～５に示すように、その前後面には前後方向に貫通すると共に一対のエレメント列を通すエレメント路１ａを備え、その左右側面には前後方向に貫通すると共に一対のファスナーテープを通すテープ溝１ｂを備えるものである。
　エレメント路１ａは、その前部が左右に仕切られた空間部である。言い換えればエレメント路１ａの前部は、左右に分岐された二本の分岐路であり、エレメント路１ａの後部は、二本の分岐路が合流して後方へ向かう一本の通路となっている。

　またエレメント路１ａとテープ溝１ｂを形成するために胴体１は、胴体１は、エレメント路１ａの上側を覆う上翼板１１、上翼板１１に対して下方に間隔をあけて対向すると共にエレメント路１ａの下側を覆う下翼板１２、上翼板１１と下翼板１２の上下の間隔を狭めるように上または下方向に突出すると共に上翼板１１と下翼板１２の少なくとも一方の左右端部から突出するフランジ１３，１３（図示の例では両方の左右端部から突出する４枚のフランジ１３，…）、上翼板１１と下翼板１２の前部で且つ左右方向の中間部において上翼板１１と下翼板１２を連結する柱１４であって一対のエレメント列Ｆ３，Ｆ３の間に挟まれる柱１４、上翼板１１の上面の前後で且つ左右方向の中間部からそれぞれ上方に突出すると共にカバー４を取り付ける前取付柱１５と後取付柱１６を備える。

　上翼板１１と下翼板１２とは上下方向を厚み方向とする板である。上翼板１１は、前取付柱１５と後取付柱１６の間であって且つ後取付柱１６寄りの位置には、エレメント路１ａに爪部３２を突入させるための爪穴１１ａを備える。爪穴１１ａは上翼板１１をその厚み方向である上下方向に貫通するものである。また上翼板１１は、前取付柱１５と後取付柱１６の間であって且つ爪穴１１ａに対して後側に隣接して、制御爪３の被押上げ部３１の後端部３１ｃを載せ置く載置部１１ｂを備える。載置部１１ｂは、その周囲において爪穴１１ａ以外の部分よりも段差状に凹んで形成されている。そして載置部１１ｂの上に被押上げ部３１の後端部３１ｃが載る場合、爪部３２は爪穴１１ａからエレメント路１ａに突入する。したがって載置部１１ｂの凹み具合（上下方向の位置）は、爪穴１１ａからエレメント路１ａに突入する爪部３２の突入長さの最大値を定めることになる。

　また胴体１は、上翼板１１・下翼板１２・フランジ１３・柱１４・前取付柱１５・後取付柱１６の他に、前取付柱１５と後取付柱１６の間であって且つ後取付柱１６に対して前側には、上翼板１１の上面から突出する内板１７を備える。より詳しく言えば、内板１７は、爪穴１１ａと載置部１１ｂの側方であって後取付柱１６から前側に突出しており、カバー４における一対の側板部４３，４３の内側であって片方の側板部４３に沿うようにして配置される。

　胴体１は、前取付柱１５と後取付柱１６の間において制御爪３を前後左右に位置決めすると共に上下に揺動可能に収容するものである。制御爪３の前部を揺動の中心部として位置決めするために胴体１と制御爪３は互いの前部において上下方向に嵌り合う揺動用の凹部１５ａと凸部３１ａとを備える。
　揺動用の凹部１５ａは、前取付柱１５の上面に形成される。より詳しく言えば、前取付柱１５はその上面の左右方向の中間部において、下方に向かって凹んだ凹部１５ａを備える。また揺動用の凸部３１ａは、制御爪３の被押上げ部３１の前端部に形成される。より詳しく言えば、制御爪３の被押上げ部３１は、前後に延びる被押上げ部本体３１ｂと、被押上げ部本体３１ｂの前端部から下方に延びると共に揺動用の凸部３１ａとを備える。ちなみに側面視すると、被押上げ部本体３１ｂは円弧状であって、その円弧の中心が被押上げ部本体の下方に位置するものとなっている。

　また胴体１は、板バネ部４２を前取付柱１５の前面に沿わせるようにして前後左右に位置決めして収容するものである。そのために胴体１と板バネ部４２は次のような構成をしている。
　板バネ部４２は、上板部４１の前端から前方に向かって延びる第１のバネ片部４２ａと、第１のバネ片部４２ａの前端から下方に向かって延びる第２のバネ片部４２ｂとを備える。
　胴体１の前取付柱１５は左右方向の中間部であって且つ上面から前面に亘って板バネ部用の凹部１５ｂを備える。板バネ部用の凹部１５ｂは、第１のバネ片部４２ａを収容する第１の凹部１５ｃと、第２のバネ片部を収容する第２の凹部１５ｄを備える。この第２の凹部１５ｄは、前取付柱１５の前面と上翼板１１の上面に亘って形成されている。また第１の凹部１５ｃは深さを板バネ部４２の第１のバネ片部４２ａの厚み以下にしてあり、それによってカバー４の上面は、前取付柱１５の上面に対してほぼ同じ高さに（より詳しく言えば同じ高さか、低く）してある。

　カバー４を胴体１に対して揺動可能に取り付ける構成は、以下の通りである。
　カバー４の側板部４３は、上板部４１の左右側端から下方に向かって延びる側板本体部４３ａと、側板本体部４３ａの下部に対して前方に突出する前突出片部４３ｂと、側板本体部４３ａに対して後方に突出する後突出片部４３ｃを備える。
　前突出片部４３ｂは、カバー４が揺動するときの中心部となり、後突出片部４３ｃは、カバー４が揺動するときの変位部となる。したがってカバー４は、側板部４３の前部を揺動の中心部とすると共に側板部４３の後部を揺動によって上下に変位する変位部とするものである。またカバー４の後部を上方に変位させたときには、板バネ部４２が弾性変形して撓み、制御爪３と一緒にカバー４の後部を下方に押し戻す大きな復元力が発生するものである。
　なお一対の側板本体部４３ａ，４３ａのうち側方に対向する部分は、左右に貫通すると共に下方に開口する貫通穴４３ａ１をそれぞれ備えている。この貫通穴４３ａ１は、引手２の軸部２１を通すと共に引手２を回動可能に支持するための穴である。
　胴体１は、前取付柱１５の左右側面の下部に、左右の前突出片部４３ｂを上下に変位不能に収容する前収容部１５ｅを備え、後取付柱１６の左右側面の下部に、後突出片部４３ｃを上下に変位可能に収容する後収容部１６ｅを備える。
　前収容部１５ｅは前取付柱１５の側面において凹むと共に後方に開口している。前収容部１５ｅの上下寸法は、前突出片部４３ｂの上下寸法よりも僅かに長いものである。また前取付柱１５の側面のうち前収容部１５ｅに対して上側の部分は、前収容部１５ｅに対して段差状に張り出した前張出部１５ｆである。前張出部１５ｆは、前収容部１５ｅに収容された前突出片部４３ｂを上方向に変位不能にする。
　後収容部１６ｅは後取付柱１６の側面において凹むと共に前方に開口している。また後収容部１６ｅの上下寸法は、後突出片部４３ｃの上下寸法よりも充分に長いものである。また後取付柱１６の側面のうち後収容部１６ｅに対して上側の部分は、後収容部１６ｅに対して段差状に張り出した後張出部１６ｆである。後張出部１６ｆは、上下方向に変位可能な後突出片部４３ｃの移動範囲のうち上方の限界位置を定める。

　上記した第一実施形態のスライダーＳは、図４（Ａ）に示すように引手２の軸部２１が上翼板１１の上面に載っている場合には、カバー４の上板部４１が制御爪３に上下方向に接触し、板バネ部４２の下端部が胴体１の前面に接触していることから、板バネ部４２が僅かに撓んでいる。この板バネ部４２の復元力によって、カバー４の上板部４１が制御爪３を下方に押し込んで、爪部３２がエレメント路１ａに深く突入した状態になる。そして一方のエレメント列における隣り合うエレメントの間に爪部３２の先部（下端部）が嵌る。また爪部３２の上部の前面が爪穴１１ａの前面に接触し、載置部１１ｂの上に被押上げ部３１の後端部３１ｃが載った状態になる。したがって第一実施形態のスライダーＳは移動不能となる。このように第一実施形態のスライダーＳは自分の力（カバー４の復元力）で移動不能（停止した）状態となる。なお、このとき、板バネ部４２の復元力によって、カバー４の上板部４１が制御爪３の上方への移動を規制していれば、カバー４の上板部４１と制御爪３が接触していなくても（近接した状態であっても）よい。
　また第一実施形態のスライダーＳは、図４（Ｂ）に示すように引手２の軸部２１が制御爪３を押し上げて上翼板１１の上面よりも上方に離れた場合には、制御爪３がカバー４の上板部４１に接触し、側板部４３の前部を揺動の中心部としてカバー４を上方に持ち上げる。このとき、板バネ部４２が大きく撓んでおり、板バネ部４２には大きな復元力が発生している。この復元力はカバー４を制御爪３ごと下方へ押し込もうとする力である。また引手２の軸部２１が制御爪３を押し上げた場合には、爪部３２は上昇して、爪部３２の上部の前面が爪穴１１ａの前面から離れると共に、被押上げ部３１の後端部３１ｃが載置部１１ｂから離れた状態になる。このとき、軸部２１が上翼板１１の上面に載っている場合に比べて、エレメント路１ａに突入する突入長さが短くなり、図示の例では突入長さが０になっている。この場合、爪部３２の先部（下部）が一方のエレメント列における隣り合うエレメントの間から抜け出ており、第一実施形態のスライダーＳは移動可能となる。このように軸部２１の上下位置に応じて爪部３２の突入長さが変化することによって、制御爪３はスライダーＳ（胴体１）の移動を制御する。

　上記した第一実施形態のスライダーＳは以下の効果を有する。
　第一実施形態のスライダーＳは、４つの部品から構成されるものであって、制御爪３とカバー４を別々の部品とすると共に、板バネ部４２をカバー４の一部とするものなので、制御爪とカバーと板バネを別々の部品とするもの（特許文献２に開示されたスライダー）に比べ、部品点数が少なくなる。また制御爪とカバーと板バネを別々の部品とするもの（特許文献２に開示されたスライダー）がカバーと板バネを上下に重ねている分の上下方向の寸法を必須とするにも関わらず、第一実施形態のスライダーＳは、カバー４の一部である板バネ部４２が前取付柱１５の上面と前面に沿って延びるものなので、単独の部品としての板バネをカバーの下側に重ね合わせなくても良く、上下方向の寸法を小さくできるものである。
　また第一実施形態のスライダーＳは、制御爪３とカバー４を別々の部品としてあるので、制御爪３をカバー４の一部とするもの（特許文献１に開示されたスライダー）に比べて、制御爪３の剛性とカバー４の厚みとが無関係なものである。しかも制御爪３の左右方向の厚みをカバー４の側板部４３の厚みよりも厚くして、制御爪３の剛性をカバー４よりも高くしてあるので、制御爪３の爪部３２は破損し難いものである。
　また第一実施形態のスライダーＳは、胴体１が移動不能である場合、言い換えれば引手２を操作しておらず、一方のエレメント列における隣り合うエレメントの間に爪部３２の先部が嵌っている場合には、制御爪３とカバー４とが上下に接触しているので、上下方向の寸法をより小さくできる。
　また第一実施形態のスライダーＳは、カバー４の上面を前取付柱の上面とほぼ同じ高さにしてあるので、上下方向の寸法をより小さくできる。

　本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。

　Ｆ　スライドファスナー
　Ｆ１　ファスナーストリンガー
　Ｆ２　ファスナーテープ
　Ｆ３　エレメント列
　Ｓ　スライダー
　１　胴体
　１ａ　エレメント路
　１ｂ　テープ溝
　１１　上翼板
　１１ａ　爪穴
　１１ｂ　載置部
　１２　下翼板
　１３　フランジ
　１４　柱
　１５　前取付柱
　１５ａ　揺動用の凹部
　１５ｂ　板バネ部用の凹部
　１５ｃ　第１の凹部
　１５ｄ　第２の凹部
　１５ｅ　前収容部
　１５ｆ　前張出部
　１６　後取付柱
　１６ｅ　後収容部
　１６ｆ　後張出部
　１７　内板
　２　引手
　２１　軸部
　２２　摘まみ部
　２３　貫通穴
　３　制御爪
　３１　被押上げ部
　３１ａ　凸部
　３１ｂ　被押上げ部本体
　３１ｃ　後端部
　３２　爪部
　４　カバー
　４１　上板部
　４２　板バネ部
　４２ａ　第１のバネ片部
　４２ｂ　第２のバネ片部
　４３　側板部
　４３ａ　側板本体部
　４３ａ１　貫通穴
　４３ｂ　前突出片部
　４３ｃ　後突出片部

Claims (5)

1. 　前後方向へ貫通するエレメント路（１ａ）と前記エレメント路（１ａ）に対して上方に通じる爪穴（１１ａ）とが内部に形成される胴体（１）であって前記エレメント路（１ａ）の上側を覆う上翼板（１１）の上面から前取付柱（１５）および後取付柱（１６）が突出する前記胴体（１）、
   　前後方向に回動可能であると共に回動の中心となる軸部（２１）が前記上翼板（１１）の上に配置される引手（２）、
   　前記前取付柱（１５）と前記後取付柱（１６）の間において前記軸部（２１）の上に載せると共に前記胴体（１）を移動可能および移動不能に制御する制御爪（３）であって前記爪穴（１１ａ）から前記エレメント路（１ａ）に突入する爪部（３２）の突入長さが前記軸部（２１）の上下位置に応じて変化することによって前記胴体（１）の移動を制御する前記制御爪（３）、
   　前記制御爪（３）を上方及び側方から上板部（４１）および側板部（４３）が覆うと共に前記前取付柱（１５）と前記後取付柱（１６）に対して上下方向に揺動可能に取り付けられるカバー（４）であって前記上板部（４１）の前端から前記前取付柱（１５）の前面に沿って延びる板バネ部（４２）の復元力によって前記上板部（４１）が前記制御爪（３）を下方に押し込む前記カバー（４）を備え、
   　前記胴体（１）と前記引手（２）と前記制御爪（３）と前記カバー（４）は別々の部品であることを特徴とするスライドファスナーのスライダー。
2. 　前記胴体（１）が移動可能である場合に前記制御爪（３）と前記カバー（４）は上下に接触していることを特徴とする請求項１に記載のスライドファスナーのスライダー。
3. 　前記カバー（４）の前記側板部（４３）は、前記上板部（４１）の左右側端から下方に向かって延びる側板本体部（４３ａ）と、前記側板本体部（４３ａ）の下部に対して前方に突出する前突出片部（４３ｂ）とを備え、
   　前記前突出片部（４３ｂ）は、前記カバー（４）が揺動するときの中心部となることを特徴とする請求項１又は２に記載のスライドファスナーのスライダー。
4. 　前記胴体（１）が移動不能である場合に前記制御爪（３）と前記カバー（４）は上下に接触していることを特徴とする請求項１～３の何れかに記載のスライドファスナーのスライダー。
5. 　前記板バネ部（４２）は、前記上板部（４１）の前端から前方に向かって延びる第１のバネ片部（４２ａ）と、前記第１のバネ片部（４２ａ）の前端から下方に向かって延びる第２のバネ片部（４２ｂ）とを備え、
   　前記前取付柱（１５）は上面の左右方向の中央部に、前記第１のバネ片部（４２ａ）を収容する第１の凹部（１５ｃ）を備え、
   　前記胴体（１）が移動不能である場合に、前記カバー（４）の上面は、前記前取付柱（１５）の上面に対して同じ高さか、低くしてあることを特徴とする請求項１～４の何れかに記載のスライドファスナーのスライダー。

Images