WO2018122930A1

WO2018122930A1 - 止具

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Publication number: WO2018122930A1
Application number: PCT/JP2016/088748
Authority: WO
Inventors: 光奥山; 万里張; 誠山▲崎▼
Original assignee: Ykk株式会社
Priority date: 2016-12-26
Filing date: 2016-12-26
Publication date: 2018-07-05

Abstract

雄部材と雌部材の連結および分離が容易な止具を提供することである。本発明の止具は、位置決めされた状態で連結可能であると共に分離可能な雄部材（２）および雌部材（３）を備える。雄部材は、雄用基板（２１）と、雄用基板から厚み方向の一方向に突出する位置決め用の突起部（２２）と、雌部材に対し連結及び分離可能に係り合うための雄用係合部（２４）であって雄用基板において突起部を中心とする円周上に配置された雄用係合部を備える。雌部材は、雌用基板（３１）と、突起部を挿入する位置決め用の穴部（３２）であって雌用基板の厚み方向の二面のうち一面側において凹む位置決め用の穴部と、突起部を穴部に案内する案内部（３３）であって雌用基板の前記一面側であって穴部の周囲を取り囲む状態で凹むと共にその口径が厚み方向の前記一面側から穴部へ向かうにつれて狭まる案内部と、雄用係合部に対し連結及び分離可能に係り合うための雌用係合部（３４）であって雌用基板のうち案内部に対して口径方向外側であって穴部を中心とする円周上に配置された雌用係合部を備える。

Description

止具

　本発明は、雄部材と雌部材とを備える止具に関する。

　従来の止具の一例として、ピン体と称する雄部材と、グロメット体と称する雌部材とを備えるものが存在する（特許文献１）。この雄部材は、基板状の頭部と、頭部から突出する柱状のピン胴部とを備える。いっぽう雌部材は、雄部材の頭部に対向する基板状のフランジ部と、雄部材のピン胴部を挿入する筒状の胴部とを備える。また雄部材と雌部材は互いに連結および分離可能なように、雄部材のピン胴部にはその延長方向の中間部において直径を狭めた首部を備え、雌部材の胴部の内周面には雄部材の首部に嵌まり込むピン係止突起を備えている。

特開２０１１－１８５４１８号公報

　しかしながら上記した従来の止具は、雄部材のピン胴部と雌部材の胴部との位置を正確に合わせないと、雄部材と雌部材を連結することができないので、連結し難いものである。
　より詳しく言えば、止具は、雄部材と雌部材を単独で使用するのではなく、別々の対象物に取り付けて使用するものである。つまり止具は、対象物同士を雄部材と雌部材によって連結したり、分離したりするために使用するのである。連結するときには、対象物同士を重ね合わるようにしながら、雄部材と雌部材の位置を合わせ、両部材を嵌め合わせて連結する。しかしながら対象物の形状や大きさによっては、対象物同士の間に挟まれた雄部材と雌部材を目で確認できないことがあり、雄部材のピン胴部と雌部材の胴部との位置がなかなか合わない場合があり、雄部材と雌部材を止めるのに時間がかかってしまう。

　また上記した従来の止具において雄部材と雌部材との連結部分は、ピン胴部と胴部（より詳しくは首部とピン係止部）である。したがって雄部材と雌部材を分離しやすくするには、その分離するための力はピン胴部と胴部に直接加わるようにするのが望ましい。しかしながら従来の止め具は、雄部材と雌部材を分離するときに、連結部分から離れた部分、つまり、対向する状態の二枚の基板状の部分（頭部とフランジ部）に対して引き離す方向の力が加わり、その力が二枚の基板状の部分の中央部に伝達して加わるものである。そうすると、二枚の基板上の部分が連結部分を中心とする円周方向の一部において、ある程度離れても、その離れる長さが一定値以上でないと、首部とピン係止部との連結が全く解除されないことがある。

　本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その目的は雄部材と雌部材の連結および分離が容易な止具を提供することである。

　本発明の止具は、位置決めされた状態で連結可能であると共に分離可能な雄部材および雌部材を備える。
　雄部材は、雄用基板と、雄用基板から厚み方向の一方向に突出する位置決め用の突起部と、雌部材に対し連結及び分離可能に係り合うための雄用係合部であって雄用基板において突起部を中心とする円周上に配置された雄用係合部を備える。
　雌部材は、雌用基板と、突起部を挿入する位置決め用の穴部であって雌用基板の厚み方向の二面のうち一面側において凹む位置決め用の穴部と、突起部を穴部に案内する案内部であって雌用基板の前記一面側であって穴部の周囲を取り囲む状態で凹むと共にその口径が厚み方向の前記一面側から穴部へ向かうにつれて狭まる案内部と、雄用係合部に対し連結及び分離可能に係り合うための雌用係合部であって雌用基板のうち案内部に対して口径方向外側であって穴部を中心とする円周上に配置された雌用係合部を備える。

　雄用係合部と雌用係合部は、互いに連結および分離可能に係り合うものであれば良く、その好適な例としては次のものがある。
　すなわち雄用係合部と雌用係合部のうち一方は、対応する基板の厚み方向の一面から突出する複数の噛合素子の集合である噛合素子群である。

　雌用係合部は雌用基板の側面から突出するか否かは問わないが、雄部材と雌部材を連結し易くするには次のようにすることが望ましい。
　すなわち雌用係合部は雌用基板の側面のうち案内部に対する口径方向外側の部分から突出することである。

　穴部の直径が突起部のうち穴部に挿入される部分の直径よりも大きいのは、穴部に突起部を挿入する関係上、普通であるが、穴部の直径が雄用係合部が配置される円の半径よりも小さいか否かは問わない。しかし雄部材と雌部材を連結し易くするには次のようにすることが望ましい。
　すなわち穴部の直径は、突起部のうち穴部に挿入される部分の直径よりも大きく、雄用係合部が配置される円の半径よりも小さいことである。

　本発明の止具によれば、雄部材と雌部材を連結しようとして雄用基板と雌用基板を互いの厚み方向に接近させたときに突起部と穴部が位置ズレをしていたとしても、穴部の周囲を取り囲む状態で案内部を配置してあるので、突起部が案内部に接触すれば、突起部が案内部から穴部に案内されるので、雄部材と雌部材を連結し易くなる。
　また雄部材と雌部材を分離しようとして、雄用基板と雌用基板に対して互いの厚み方向に引き離す力が加わると、突起部と穴部を取り囲むようにして雄用係合部と雌用係合部を備えているので、雄用係合部と雌用係合部とが少しでも分離すれば、雄部材と雌部材の連結強度が低下する。したがってその後に雄部材と雌部材を引き離す力は、雄用係合部と雌用係合部とが少し分離した状態での連結強度を上回る程度で済み、雄部材と雌部材を分離し易くなる。

　また雌用係合部が雌用基板の側面のうち案内部に対する口径方向外側の部分から突出する止具であれば、雄用基板と雌用基板を互いの厚み方向に接近させたときに突起部と穴部が位置ズレをしていたとしても、たとえば雌用係合部が雌用基板の側面のうち案内部に対する口径方向外側とは離隔している止具と比べれば、突起部が案内部に接触し易くなり、雄部材と雌部材を連結し易くなる。

　また穴部の直径が突起部のうち穴部に挿入される部分の直径よりも大きく、雄用係合部が配置される円の半径よりも小さい止具であれば、雄部材と雌部材を連結しようとして雄用基板と雌用基板を互いの厚み方向に接近させたときに突起部と穴部が位置ズレをしていたとしても、突起部と雄用係合部とが同時に穴部に嵌ることがなく、雄部材と雌部材を連結し易くなる。

（ａ）（ｂ）図は、本発明の第一実施形態の止具の連結状態、分離状態を示す断面図である。（ａ）（ｂ）（ｃ）（ｄ）図は、第一実施形態の止具に用いる雌部材を示す正面図、側面図、底面図、Ａ－Ａ線断面図である。（ａ）（ｂ）（ｃ）図は、第一実施形態の止具に用いる雄部材を示す正面図、平面図、Ａ－Ａ線断面図である。本発明の第二実施形態の止具の連結状態を示す断面図である。第二実施形態の止具に用いる雌部材を示す断面図である。本発明の第三実施形態の止具の連結状態を示す断面図である。（ａ）（ｂ）図は、第三実施形態の止具に用いる雌部材を示す断面図、底面図である。本発明の第四実施形態の止具の連結状態を示す断面図である。（ａ）（ｂ）図は、第四実施形態の止具に用いる雄部材を示す断面図、平面図である。（ａ）（ｂ）図は、本発明の第五実施形態の止具の連結状態を示す断面図、Ａ－Ａ線断面図である。（ａ）（ｂ）図は、本発明の第五実施形態の止具に用いる雌部材を示す正面図、平面図である。（ａ）（ｂ）図は、本発明の第五実施形態の止具に用いる雄部材を示す正面図、平面図である。（ａ）（ｂ）図は、本発明の第五実施形態の変形例の止具の連結状態を示す断面図、当該止具に用いる雌部材を示す断面図である。第一実施形態の止具の使用状態を示す説明図である。

　本発明の第一実施形態の止具１は図１に示すように、位置決めされた状態で連結可能であると共に連結された状態から分離可能な雄部材２、および雌部材３を備えるものである。

　雄部材２と雌部材３は、基板２１，３１を基本的構成要素としてそれぞれ備える。これら基板２１，３１は、平板であって、厚み方向の二面である表面及び裏面と、表面及び裏面に交差する側面をそれぞれ備える。また雄部材２と雌部材３は、互いの基板同士を厚み方向に対向させた状態で連結するものである。以後、各々の基板２１，３１の表裏面のうち、他方の基板３１，２１に対向する面を、対向面と称する。また以後、雄部材２の基板２１を雄用基板２１、雌部材３の基板３１を雌用基板３１と称する。なお雄部材２と雌部材３は、弾性変形可能なもので、例えば樹脂製である。

　また雄部材２と雌部材３は、雄用基板２１と雌用基板３１の他に、互いの位置関係を定める位置決め手段４と、連結および分離可能に係り合う係合手段５とを備える。

　位置決め手段４は、雄用基板２１と雌用基板３１を対向させた状態で嵌め合わせる突起部２２および穴部３２と、突起部２２を穴部３２に案内する案内部３３とを備える。また突起部２２は雄部材２に、穴部３２と案内部３３は雌部材３に備えるものである。

　突起部２２は図３に示すように、雄用基板２１の対向面から厚み方向の一方向に突出する。突起部２２の突出長さは雌用基板３１の厚みよりも長いもので、より詳しく言えば、雄部材２と雌部材３の連結状態において突起部２２が雌用基板３１をその穴部３２と案内部３３において貫通し、突起部２２の少なくとも先部が雌用基板３１の対向面とは反対面側まで突出する状態になる長さである。また突起部２２は、円柱状であって、その側面２２ａを雄用基板２１から離れるにつれて直径が小さくなるテーパー形状（円錐台の側面形状）としてある。なお円柱状である突起部２２の軸２Ｌは、図示の例では円形状である雌用基板３１の中心を通過する直線である。さらに突起部２２は、その先端面２２ｂと側面２２ａとが交差する角部２２ｃを、恰も面取りされた形状としてある。つまり角部２２ｃは、突起部２２の側面２２ａにおける角部２２ｃの近傍（図では、角部２２ｃに対してその直ぐ下側部分）と比べて、直径が雄用基板２１から離れるにつれてより急激に小さくなる形状としてある。

　穴部３２は図２に示すように、雌用基板３１の対向面に形成された凹みであって、より詳しくは雌用基板３１を厚み方向に貫通する貫通穴であり、その内面を円筒面にしてある。穴部３２の直径３２Ｄは図１に示すように、突起部２２のうち穴部３２に挿入される部分の直径２２Ｄの最大値よりも大きくなっている。

　案内部３３は図２に示すように、雌用基板３１の対向面において凹むと共に穴部３２を中心としてその周囲を取り囲むもので、厚み方向（雌用基板３１の対向面側）から視て、環状、より詳しくは円環状である。また案内部３３の内面は、その口径が雌用基板３１の対向面側から穴部３２へ向かうにつれて狭まる形状であり、より詳しくは図示の例では、テーパー形状（円錐台の側面形状）である。また案内部３３と穴部３２とが交差する角部３３ａも、恰も面取りされた形状としてある。つまりこの角部３３ａも、案内部３３の内面における角部３３ａの近傍（図では、角部３３ａに対してその直ぐ下側部分）と比べて、口径が穴部３２へ向かうにつれてより緩やかに小さくなる形状としてある。

　係合手段５は図１に示すように、雄部材２の雄用基板２１において突起部２２を中心とする円周上に配置された雄用係合部２４と、雌部材３の雌用基板３１において案内部３３に対して口径方向外側であって穴部３２を中心とする円周上に配置された雌用係合部３４を備える。

　雄用係合部２４は図３に示すように、雄用基板２１の対向面であって突起部２２を中心とする円周上に間隔（望ましくは等間隔）をあけて配置された複数（図示の例では４つ）の雄用フック２５，２５，…である。雄用フック２５は、突起部２２よりも雄用基板２１の対向面からの突出長さが充分に短いものである。具体的には、雄用フック２５の長さは、突起部２２が穴部３２に案内され、雄部材２と雌部材３の中心が一致し位置決めされるまでは雄用フック２５と雌用フック３５が係合しないような高さに設定されている。また雄用フック２５は、雄用基板２１の対向面から厚み方向の一方向に突出するベース部２５ａと、ベース部２５ａの先端部から突起部２２を中心とする半径方向内側へ向かって突出するフック本体部２５ｂとを備える。またフック本体部２５ｂの内周面２５ｃは、雄用基板２１から離れるにつれて突起部２２から半径方向に離れる斜面としてある。雄用基板２１の厚み方向から視ると、ベース部２５ａとフック本体部２５ｂとは、いずれも突起部２２を中心とする円周方向に延長する円弧状である。なお雄用基板２１は、各雄用フック２５に対して突起部２２を中心とする半径方向内側に、雄用基板２１の厚み方向に貫通する貫通穴２１ａを備えている。貫通穴２１ａは、扇形状であって、その扇形状の中心は、雄用基板２１の厚み方向から視て、突起部２２を中心として放射状に延長する線２１Ｌ上に位置すると共に、その扇形状の中心を通過する線２１Ｌは、扇形状の円弧をちょうど二等分するものである。
　なお雄用係合部２４が配置される円の半径２８Ｒは、突起部２２の軸２Ｌを中心とする半径方向の距離であり、より詳しくは雄用係合部２４（雄用フック２５のフック本体部２５ｂの内周面）と軸２Ｌとの最短距離である。そして雄用係合部２４が配置される円の半径２８Ｒは図１に示すように穴部３２の直径３２Ｄよりも大きくなっている。

　雌用係合部３４は図２に示すように、雌用基板３１の側面のうち案内部３３に対する口径方向外側の部分から突出するものである。言い換えれば雌用係合部３４は、雌用基板３１の側面であって穴部３２を中心とする円周上に円環状に連続して配置された雌用フック３５である。断面形状で見ると、雌用基板３１の側面は、対向面とは反対面側の部分に対して、対向面側の部分を、段差状に案内部３３側へ凹ませてある。つまり雌用基板３１は、穴部３２を中心とする直径が相対的に相違する大径部３１ｓと小径部３１ｔとを備える。また雌用基板３１のうち対向面側の部分を小径部３１ｔとし、対向面とは反対側の部分を大径部３１ｓとする。また雌用フック３５は、大径部３１ｓの対向面から厚み方向に突出すると共に、小径部３１ｔの側面（外周面）から半径方向外側に突出するものである。つまり本実施形態では、雌用フック３５の一部（後述のベース部）は、大径部３１ｓおよび小径部３１ｔと一体となっており、外観上、雌用基板３１と区別がつかず、雌用基板３１の一部になっている。

　雌用フック３５は、雌用基板３１の厚み方向から視ると、雌用基板３１の側面（外周面）全周を取り囲む円環状である。より詳しくは雌用フック３５は、雌用基板３１の対向面から厚み方向に突出すると共に小径部３１ｔの側面から半径方向外側に突出する円環状のベース部３５ａと、ベース部３５ａの先端部からその外周全周に亘って延長すると共にベース部３５ａの先端部から穴部３２を中心とする半径方向外側へ向かって突出する円環状のフック本体部３５ｂとを備える。またフック本体部３５ｂの外周面（側面）３５ｃは、雌用基板３１の対向面から厚み方向に離れるにつれて直径が大きくなる斜面としてある。

　また雌用フック３５（フック本体部３５ｂ）が穴部３２を中心とする半径方向外側へ突出する形状であるため、雌用基板３１の側面のうち大径部３１ｓとフック本体部３５ｂとの間の部分は、穴部３２を中心とする半径方向内側に凹んでおり、フック本体部３５ｂよりも直径の小さな溝部３５ｄになる。

　上述したように雄部材２は、雄用基板２１、突起部２２、雄用係合部２４を備える。また雌部材３は雌用基板３１、穴部３２、案内部３３、雌用係合部３４を備える他に、穴部３２に挿入した突起部２２のうち穴部３２から突出した部分を収容する収容部３６を備える。

　収容部３６は図２に示すように、突起部２２の側面および先端面を覆うキャップ部３７と、雌部材３を対象物に取り付けるための取付部４０であってキャップ部３７の外側面から半径方向外側に突出する取付部４０とを備える。

　キャップ部３７は、突起部２２の側を覆う円筒状のキャップ本体部３８と、突起部２２の先端面を覆うと共にキャップ本体部３８のうち穴部３２とは反対側を閉鎖する閉鎖部３９を備える。

　閉鎖部３９は円盤状である。

　キャップ本体部３８は、雌用基板３１側に近い側の胴本体部３８ａと、雌用基板３１側から遠い方の胴先部３８ｄとを備える。胴先部３８ｄの外側面および内側面は、テーパー形状であり、このテーパー形状は雌用基板３１から厚み方向に離れるにつれて直径が小さくなるものである。なお胴先部３８ｄの先端部は、閉鎖部３９によってその半径方向内側を塞がれている。
　また胴本体部３８ａは、穴部３２を中心とする円周方向に間隔をあけて配置された一対の胴半身部３８ｂ，３８ｂを備えている。雌用基板３１の厚み方向から視ると、一対の胴半身部３８ｂ，３８ｂは穴部３２を中心として対称的に形成されると共に、穴部３２を中心とする円周方向に延長する円弧状である。また一対の胴半身部３８ｂの前記した円周方向の間隔は、穴部３２を中心とする半径方向に貫通する一対の空間部３８ｓ，３８ｓとなっている。

　取付部４０は、胴先部３８ｄから雌用基板３１に向かって延長する二枚の爪部４１，４１を備える。爪部４１は、板状であり、穴部３２を中心とする円周方向を爪部４１自身の厚み方向とするものである。また二枚の爪部４１は、穴部３２を中心とする半径方向にも延長するもので、その半径方向内側部分を一対の胴半身部３８ｂの間（一対の空間部３８ｓ，３８ｓ）にそれぞれ配置すると共に、その半径方向外側部分を、キャップ部３７よりも半径方向外側に突出するものである。ちなみに爪部４１の厚みは、一対の胴半身部３８ｂの間隔よりも狭く、爪部４１が一対の胴半身部３８ｂに接触しないように配置されている。また爪部４１は図１（ａ）に示すように、穴部３２を中心とする半径方向外側の側面を胴先部３８ｄから雌用基板３１に近づくにつれて穴部３２と中心とする半径方向外側に拡げる拡大部４２と、穴部３２を中心とする半径方向外側の側面を拡大部４２から雌用基板３１に近づくにつれて穴部３２を中心とする半径方向内側に狭める狭小部４３とを備える。拡大部４２の側面は、キャップ本体部３８の胴先部３８ｄにおけるテーパー形状の側面に連続する斜面となっている。また一対の爪部４１は、穴部３２を中心とする半径方向内側の側面同士の間隔Ｗ１を、胴本体部３８ａの内側に収容する突起部２２における対応部分の直径よりも広くしてある。この間隔Ｗ１により、一対の爪部４１は、突起部２２の方へ向かって接近するように弾性変形することができる。

　上述した第一実施形態の止具１は以下のようにして連結する。
　１）雄部材２と雌部材３を雄用基板２１と雌用基板３１の厚み方向に間隔をあけて対向させる。
　２）雄部材２の突起部２２を雌部材３の穴部３２に差し込むことを目的として、雄部材２と雌部材３を相対的に接近させる。
　３）相対的に接近させたときに、突起部２２と穴部３２とが図１（ｂ）に示すように位置ズレをしていたとしても、穴部３２の周囲を取り囲む状態で案内部３３を配置してあるので、その位置ズレの程度が突起部２２の先端が案内部３３に接する程度であれば、突起部２２が案内部３３から穴部３２へ向かって案内されるので、穴部３２と突起部２２の位置合わせが容易になる。しかも雌用係合部３４が雌用基板３１の側面のうち案内部３３に対する口径方向外側の部分から突出しているので、位置ズレをしていたとしても、たとえば雌用係合部が雌用基板の側面のうち案内部に対する口径方向外側とは離隔している止具と比べれば、突起部２２が案内部３３に接触し易くなり、穴部３２と突起部２２の位置合わせが容易になる。また図示の例では、雄用フック２５は突起部２２よりも雄用基板２１の対向面からの突出長さが充分に短いものであるため、雄部材２と雌部材３の対向面が平行ではない状態で接近して突起部２２の先端が案内部３３に接したとしても、雄用フック２５が案内部３３に接触して突起部２２が穴部３２に挿入されるのを妨げることは無い。また穴部３２の直径３２Ｄは、挿入される突起部２２の直径２２Ｄ（図示の例では、突起部２２の最も太い位置の直径）よりも大きく、雄用係合部２４が配置される円の半径２８Ｒよりも小さい。このため、突起部２２と穴部３２とが図１（ｂ）に示すように位置ズレをしていたとしても、穴部３２に突起部２２と雄用係合部２４とが同時に嵌ってしまうことは無い。このとき突起部２２の角部２２ｃが面取りされた形状であるので、突起部２２が案内部３３の内面を移動し易くなる。なお突起部２２が案内部３３の内面を移動するとき、雄用係合部２４と雌用係合部３４とは非接触状態である。
　４）さらに相対的に接近させたときに、穴部３２と案内部３３とが交差する角部３３ａに突起部２２の角部２２ｃが接し、突起部２２の先部が穴部３２に挿入される。このとき２つの角部３３ａ，２２ｂにより、突起部２２が穴部３２に挿入され易くなる。そして最終的には、突起部２２の先部が穴部３２を貫通して、突起部２２が穴部３２と取付部４０の内部空間に収容されると共に、雄用係合部２４と雌用係合部３４とが互いに弾性変形しながら、溝部３５ｄに雄用フック２５のフック本体部２５ｂが嵌り込むと共に、雄用フック２５と雌用フック３５のフック本体部２５ｂ，３５ｂ同士が雄用基板２１の厚み方向に重なり合う。またフック本体部２５ｂ，３５ｂの斜面２５ｃ，３５ｃ同士によって、雄用フック２５と雌用フック３５とが嵌り込み易くなる。このように雄部材２と雌部材３が連結し易くなる。なお突起部２２の突出長さが雌用基板３１の厚みよりも長く、連結状態において突起部２２の少なくとも先部が雌用基板３１の対向面とは反対面側まで突出する長さなので、連結状態においては突起部２２の少なくとも先部が収容部３６の内部空間（一対の爪部４１，４１の間）に収容される。

　また雄部材２と雌部材３を分離しようとして、雄用基板２１と雌用基板３１に対して互いの厚み方向に引き離す力が加わると、突起部２２と穴部３２を取り囲むようにして雄用係合部２４と雌用係合部３４を備えているので、雄用係合部２４と雌用係合部３４とが少しでも分離すれば、雄部材２と雌部材３の連結強度が低下する。より具体的に言えば、突起部２２を中心にして３６０度の範囲のうち一部範囲、たとえば１８０度の範囲で雄用基板２１と雌用基板３１が互いの厚み方向に引き離されると、雄用係合部２４の４つの雄用フック２５のうち少なくとも一つが雌用フック３５から外れる。そうすると雄部材２と雌部材３の連結強度は、低下して残りの１８０度の範囲の分に対応した連結強度となる。したがってその後に雄部材２と雌部材３を引き離す力は、雄用係合部２４と雌用係合部３４とが少し分離した状態での連結強度を上回る程度で済み、雄部材２と雌部材３を分離し易くなる。

　本発明の第二実施形態の止具１は図４、５に示すように、雌部材３の案内部３３について第一実施形態と相違するものである。
　案内部３３の内面は、その口径が雌用基板３１の対向面側から穴部３２へ向かうにつれて狭まる形状であることについては、第一実施形態と共通する。しかしこの案内部３３の内面は、雌用基板３１の断面で見ると、穴部３２の中心を通過する中心線３２Ｌに対して円弧状の曲線３３ｂを半径方向に離して配置すると共に、円弧状の曲線３３ｂを中心線３２Ｌに対して一回りさせたときに描かれる曲面である。円弧状の曲線３３ｂの配置は、より詳しく言えば、円弧状の曲線３３ｂの弦３３ｃをその延長線３３ｄ上で中心線３２Ｌに対して傾いて交差するように配置すると共に、当該円弧状の曲線３３ｂを当該弦３３ｃよりも中心線３２Ｌに対して半径方向内側に接近するように配置するものである。

　本発明の第三実施形態の止具１は図６、７に示すように、雌部材３の案内部３３について第一実施形態と相違するものである。
　この案内部３３の内面は、その口径が雌用基板３１の対向面側から穴部３２へ向かうにつれて狭まる形状であることについては、第一実施形態と共通する。しかしこの案内部３３の内面は、雌用基板３１の断面で見ると、厚み方向に交互に配置されたテーパー面３３ｅと円筒面３３ｆとを備えるものである。ちなみに図示の例ではテーパー面３３ｅと円筒面３３ｆとが厚み方向に交互に複数ずつ配置されている。テーパー面３３ｅは、円錐台の側面形状である。また円筒面３３ｆは、穴部３２の貫通方向のどの地点においても直径が同じものである。

　本発明の第四実施形態の止具１は図８，９に示すように、雄部材２の雄用係合部２４について第一実施形態と相違するものである。
　この雄用係合部２４は、複数の噛合素子６１の集合である噛合素子群５０である。これらの噛合素子６１は、突起部２２を中心とする円周方向に間隔（より詳しくは等間隔）をあけて配置されている。

　噛合素子６１は、雄用基板２１からの厚み方向のうち突起部２２の突出方向と同じ方向に突出する円柱状の柱部６２、柱部６２の先端から柱部６２の延長方向および半径方向外側に突出する頭部６３を備える。また頭部６３は図示の例では半球状である。そして頭部６３の半球状の底面の中央部に柱部６２が配置されている。
　噛合素子群５０が雌用係合部３４に連結するときは、噛合素子６１が基板側を中心にして瞬間的に倒れ、噛合素子６１が復元力によって元に戻ったり、戻ろうとして倒れた状態を保ったりして、噛合素子６１の頭部６３が雌部材３の溝部３５ｄに嵌り込むと共に、雌用フック３５のフック本体部３５ｂに噛み合うものである。

　本発明の第五実施形態の止具１は図１０～１２に示すように、雄部材２の雄用係合部２４と雌部材３の雌用係合部３４について第一実施形態と相違するものである。

　雄用係合部２４は、第四実施形態の噛合素子群５０と同様に、複数の噛合素子６１の集合である噛合素子群５１である。ただし本実施形態では、これらの噛合素子６１は、同心円状、より詳しく言えば突起部２２を中心とする複数（図示の例では、４つ）の仮想の同心円の円周上に間隔をあけて配置されている。説明の便宜上、半径方向に関して最も内側の円の円周上に配列された噛合素子６１の集まりを第１集団５１ａと称し、残りの各円の円周上に配列された噛合素子６１の集まりを、第１集団５１ａに対して半径方向に近い方から順に、第２集団５１ｂ、第３集団５１ｃ、第４集団５１ｄと称する。

　雌用係合部３４も、複数の噛合素子６１の集合である噛合素子群５２である。ただしこれらの噛合素子６１は、同心円状、より詳しく言えば穴部３２を中心とする複数（図示の例では２つ）の仮想の同心円の円周上に間隔をあけて配置されている。説明の便宜上、半径方向に関して内側の円の円周上に配列された噛合素子６１の集まりを第１集団５２ａと称し、半径方向に関して外側の円の円周上に配列された噛合素子６１の集まりを第２集団５２ｂと称する。
　そして雌用係合部３４の第１、第２集団５２ａ，５２ｂの噛合素子６１は、雄用係合部２４の第１～第４集団５１ａ～５１ｄの噛合素子６１と噛合するように配置されている。より詳しくは、雌用係合部３４の第１集団５２ａが雄用係合部２４の第１集団５１ａの半径方向外側に配置され、雌用係合部３４の第１、第２集団５２ａ，５２ｂの半径方向の間に雄用係合部２４の第２、第３集団５１ｂ、５１ｃが配置され、雌用係合部３４の第２集団５２ｂの半径方向外側に雄用係合部２４の第４集団５１ａが配置されている。
　案内部３３は、雌用基板３１の対向面において噛合素子６１が突出する対向面の位置よりも穴部３２側に凹むもので、その内面は、その口径が雌用基板３１の対向面側から穴部３２へ向かうにつれて狭まる形状であり、より詳しくは図示の例では、テーパー形状（円錐台の側面形状）である。

　なお雄用係合部２４の噛合素子６１も雌用係合部３４の噛合素子６１も、第四実施形態の噛合素子６１と同じであるので、説明を省略する。

　第五実施形態の止具１は、雄部材２と雌部材３とが連結したときの状態は、雄部材２の噛合素子６１の頭部６３と雌部材３の噛合素子６１の頭部６３が、互いの半球状の底面が対向する形態で穴部３２の貫通方向に重なり合う状態になる。

　本発明の第五実施形態の変形例の止具１は図１３に示すように、雌用基板３１の対向面３１ａのうち外周部（雌用係合部３４である噛合素子群５２を突出する部分）を、案内部３３の外周端に比べて、対向面３１ａとは反対面側に向かって段差状に凹ませてあるものである。言い換えれば雌用基板３１の側面３１ｂは、対向面３１ａとは反対面側の部分に対して、対向面３１ａ側の部分を段差状に案内部３３側へ凹ませてある。つまり雌用基板３１は穴部３２を中心とする直径が相対的に相違する大径部３１ｓと小径部３１ｔとを備え、対向面３１ａとは反対面側の部分が大径部３１ｓとなり、対向面３１ａ側の部分が小径部３１ｔとなるものである。したがって雌用基板３１の対向面３１ａは、小径部３１ｔの対向面３１ａ１と大径部３１ｓの対向面３１ａ２を備える。そして小径部３１ｔの対向面３１ａ１は案内部３３となり、大径部３１ｓの対向面３１ａ２は雌用係合部３４を突出する面となる。また小径部３１ｔの対向面３１ａ１の外周と大径部３１ｓの対向面３１ａ２の内周とは、両者に交差する境界面３１ｂ１により段差状に接合されている。境界面３１ｂ１は、雌用基板３１の側面３１ｂのうち対向面側の部分である。

　雌用係合部３４と境界面３１ｂ１との最短距離Ｌ１は、雄部材２の突起部２２の先端面２２ｂの直径２２ｂ１よりも短い。雌用係合部３４のうち、噛合素子群５２のうち半径方向に関して最も内側に配置された第１集団５２ａの噛合素子６１が、境界面３１ｂ１との間に最短距離Ｌ１を形成する部分である。
　突起部２２の外面は本実施形態では、先端面２２ｂを半球状に膨らむ曲面にすると共に、側面２２ａ（先端面２２ｂから雄用基板２１に向かう面）をテーパー形状の筒状面としてある。そして突起部２２の先端面２２ｂの直径２２ｂ１とは、側面２２ａの先端（側面２２ａと先端面２２ｂとの境界部分）の部分の直径である。
　このような最短距離Ｌ１と突起部２２の先端面２２ｂの直径２２ｂ１との関係により、突起部２２が雌用係合部３４と境界面３１ｂ１との間に入り込まなくなる。

　上記した各実施形態の止具１の具体的な用途の一例を、各実施形態の止具１を代表して第一実施形態の止具１を用いて説明する。第一実施形態の止具１は、たとえば二枚の板を接合する用途に用いられる。これら二枚の板は、たとえば図１４に示すように、自動車のボディ側を形成する外板８１と、外板８１の内側に固定される内板８２である。この場合、外板８１の内面には雌部材３を取り付けるための補強部８３を予め固定しておく。

　補強部８３は、外板８１に対してその内側において平行に配置される平板８４と、平板８４の縁部を外板８１に接合する接合部８５とを備えるものである。また平板８４はその中央部に、厚み方向に貫通すると共に雌部材３の取付部４０を挿入する貫通穴８４ａを備える。

　このような補強部８３を介して外板８１と内板８２を複数の第一実施形態の止具１で固定する。まずは、内板８２の一面には雄部材２を接着あるいは溶着等して取り付ける。なお雄部材２の固定位置は、補強部８３の位置を想定して、内板８２に設定する。そして外板８１の内面には補強部８３を介して各止具１における雌部材３を取り付ける。
　雌部材３の取り付けの詳細は、以下の通りである。雌部材３の収容部３６をその先端から補強部８３の貫通穴８４ａに差し込むと、一対の爪部４１，４１が貫通穴８４ａの内面を擦りながら、その半径方向の幅を狭めることによって、爪部４１の拡大部４２が貫通穴８４ａを通過し、爪部４１の狭小部４３が貫通穴８４ａの内部に嵌り込む。このようにして雌部材３は取り付けられる。

　雌部材３が取り付けられた外板８１の内面側に、雄部材２が取り付けられた内板８２を配置すると、内板８２の内面側からは各止具（雄部材２、雌部材３）が見えなくなる。しかし作業者は感覚を頼りに、突起部２２を案内部３３に合わせることができる。そのうえで作業者は内板８２を外板８１に押し付けるようにすれば、突起部２２が案内部３３から穴部３２に案内され、突起部２２を穴部３２に挿入でき、それに伴って雄用係合部２４と雌用係合部３４を連結させることができる。なお雄用係合部２４と雌用係合部３４とが連結した状態では、突起部２２の少なくとも先部が収容部３６の内部空間（一対の爪部４１，４１の間）に収容される。

　本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、案内部３３は本実施形態では、雌用基板３１の厚み方向から視て、円環状であったが、本発明ではこれに限らず、たとえば多角形状、より望ましくは正多角形状であっても良い。この場合、案内部３３の内面は、角錐台の側面形状になる。
　また穴部３２は本実施形態では雌用基板３１の厚み方向に貫通する凹み（貫通穴）であったが、本発明ではこれに限らず、雌用基板３１の厚みが充分にあれば、雌基板の厚み方向に貫通しない凹みであってもよい。この場合、雌部材３は、収容部３６の無いもの、つまり雌用基板３１、穴部３２、案内部３３、雌用係合部３４を備えるものである。
　また雄用基板２１と雌用基板３１は、本実施形態では円形状であったが、本発明ではこれに限らず、他の形状であっても良い。

　１　止具
　２　雄部材
　２Ｌ　軸
　２１　雄用基板
　２１ａ　貫通穴
　２１Ｌ　突起部の中心を通過する線
　２２　突起部
　２２ａ　側面
　２２ｂ　先端面
　２２ｃ　角部
　２２Ｄ　直径
　２４　雄用係合部
　２５　雄用フック
　２５ａ　ベース部
　２５ｂ　フック本体部
　２５ｃ　内周面（斜面）
　２８Ｒ　雄用係合部が配置される円の半径
　３　雌部材
　３１　雌用基板
　３１ａ　対向面
　３１ａ１　小径部の対向面
　３２ａ２　大径部の対向面
　３１ｂ　側面
　３１ｂ１　境界面
　Ｌ１　雌部材の噛合素子群の第１集団と境界面との最短距離
　３１ｓ　大径部
　３１ｔ　小径部
　３２　穴部
　３２Ｄ　穴部の直径
　３２Ｌ　中心線
　３３　案内部
　３３ａ　角部
　３３ｂ　曲線
　３３ｃ　弦
　３３ｄ　弦の延長線
　３３ｅ　テーパー面
　３３ｆ　円筒面
　３４　雌用係合部
　３５　雌用フック
　３５ａ　ベース部
　３５ｂ　フック本体部
　３５ｃ　外周面（斜面）
　３５ｄ　溝部
　３６　収容部
　３７　キャップ部
　３８　キャップ本体部
　３８ａ　胴本体部
　３８ｂ　胴半身部
　３８ｄ　胴先部
　３８ｓ　空間部
　３９　閉鎖部
　４０　取付部
　４１　爪部
　Ｗ１　一対の爪部の間隔
　４２　拡大部
　４３　狭小部
　４　位置決め手段
　５　係合手段
　５０　噛合素子群
　５１　噛合素子群
　５１ａ　第１集団
　５１ｂ　第２集団
　５１ｃ　第３集団
　５１ｄ　第４集団
　５２　噛合素子群
　５２ａ　第１集団
　５２ｂ　第２集団
　６１　噛合素子
　６２　柱部
　６３　頭部
　８１　外板
　８２　内板
　８３　補強部
　８４　平板
　８４ａ　貫通穴
　８５　接合部

Claims

　位置決めされた状態で連結可能であると共に分離可能な雄部材（２）および雌部材（３）を備え、
　前記雄部材（２）は、雄用基板（２１）と、前記雄用基板（２１）から厚み方向の一方向に突出する位置決め用の突起部（２２）と、前記雌部材（３）に対し連結及び分離可能に係り合うための雄用係合部（２４）であって前記雄用基板（２１）において突起部（２２）を中心とする円周上に配置された前記雄用係合部（２４）を備え、
　前記雌部材（３）は、雌用基板（３１）と、前記突起部（２２）を挿入する位置決め用の穴部（３２）であって前記雌用基板（３１）の厚み方向の二面のうち一面側において凹む位置決め用の穴部（３２）と、前記突起部（２２）を前記穴部（３２）に案内する案内部（３３）であって前記雌用基板（３１）の前記一面側であって前記穴部（３２）の周囲を取り囲む状態で凹むと共にその口径が厚み方向の前記一面側から前記穴部（３２）へ向かうにつれて狭まる前記案内部（３３）と、前記雄用係合部（２４）に対し連結及び分離可能に係り合うための雌用係合部（３４）であって前記雌用基板（３１）のうち前記案内部（３３）に対して口径方向外側であって前記穴部（３２）を中心とする円周上に配置された前記雌用係合部（３４）を備えることを特徴とする止具。
　前記雄用係合部（２４）と前記雌用係合部（３４）のうち少なくとも一方は、対応する前記基板（２１，３１）の厚み方向の一面から突出する複数の噛合素子（６１）の集合である噛合素子群（５０，５１，５２）であることを特徴とする請求項１記載の止具。
　前記雌用係合部（３４）は前記雌用基板（３１）の側面のうち前記案内部（３３）に対する口径方向外側の部分から突出するものであることを特徴とする請求項１又は２記載の止具。
　前記穴部（３２）の直径（３２Ｄ）は、前記突起部（２２）のうち前記穴部（３２）に挿入される部分の直径（２２Ｄ）よりも大きく、前記雄用係合部（２４）が配置される円の半径（２８Ｒ）よりも小さいことを特徴とする請求項１、２又は３記載の止具。