WO2018003933A1 - 乗物用シート - Google Patents

Abstract

乗物用シート（１）は、互いに異なる硬さを有する軟質パッド（１０）と硬質パッド（２０）とを組み合わせたクッション材を備える。軟質パッドには、硬質パッドに向けて突出する係合突起（３１，３２）が設けられ、硬質パッドには、係合突起を受け入れる凹部（２１，２３）が設けられる。凹部は、軟質パッドと硬質パッドとの組み付け方向に対して交差する方向に延びる壁面（２１ｄ，２１ｅ，２３ｂ，２３ｃ）を有する。壁面及び係合突起の一方は、突部（２２，２４）を有し、壁面及び係合突起の他方は、突部と係合する係合部（３１ａ，３２ａ）を有する。突部及び係合部は、組み付け方向における軟質パッドと硬質パッドとの相対移動を規制するように互いに係合する。

Description

乗物用シート

　本発明は、自動車、飛行機、船および電車等の乗物に搭載される乗物用シートに関する。

　乗物用シートの一例として、軽量化等のため、軟質パッドと、軟質パッドの裏面側に設けた軽量の硬質パッドと、を組み合わせたクッション材を用いたシートが挙げられる。これらパッドを一体化する方法として、それらパッドを接着する方法と、それらパッドを機械的に結合する方法と、が挙げられる。特許文献１では、前者の方法（接着）はそれらパッドの界面の硬化を引き起こして座り心地に悪影響を及ぼすとの観点から、後者の方法（機械的結合）について検討がなされている。

　具体的には、特許文献１では、機械的結合に用いるワイヤを軟質パッドと一体化し、そのワイヤを硬質パッドを貫通させると共に車体構造部材（以下「シート固定部材」という。）に結合させるようになっている。

日本国特許第５５２０５８２号公報

　特許文献１に記載の方法では、ワイヤを車体構造部材に結合させること（換言すると、シートを車体に組み付けること）により、それらパッドが一体化する。即ち、シートを車体に組み付けるまで、軟質パッドと硬質パッドとは一体化していない。そのため、実際には、シートを車体に組み付ける際、軟質パッドと硬質パッドとの間の位置ずれを防ぐようにそれらパッドの相互位置を調整することになる。このような相互位置の調整は、シートを乗物に組み付ける作業の作業性を低下させる原因となり得る。

　本発明の目的の一つは、乗物用シートのクッション材を構成する軟質パッドと硬質パッドとの相互位置の調整を要することなく、それらパッドを機械的に一体化した乗物用シートを乗物に組み付けることが可能な乗物用シート、を提供することにある。

　本発明の第１の側面によれば、
　乗物用シートは、互いに異なる硬さを有する軟質パッドと硬質パッドとを組み合わせたクッション材を備え、
　前記軟質パッドには、前記硬質パッドに向けて突出する係合突起が設けられ、
　前記硬質パッドには、前記係合突起を受け入れる凹部が設けられ、
　前記凹部は、前記軟質パッドと前記硬質パッドとの組み付け方向に対して交差する方向に延びる壁面を有し、
　前記壁面及び前記係合突起の一方は、突部を有し、
　前記壁面及び前記係合突起の他方は、前記突部と係合する係合部を有し、
　前記突部及び前記係合部は、前記組み付け方向における前記軟質パッドと前記硬質パッドとの相対移動を規制するように互いに係合する。

　本発明の第１の側面において、係合突起は、例えば、ワイヤ、シートの骨格部材に固定された金属突片、及び、軟質パッドに埋設固定された樹脂ロッド等によって構成し得る。凹部は、例えば、硬質パッドに形成された空洞、及び、硬質パッドに固定される容器等によって構成し得る。突部は、例えば、凹部の壁面、及び、係合突起の外部に設け得る。係合部は、例えば、係合突起を成すワイヤ、及び、凹部の壁面の段部並びに窪みによって構成し得る。

　本発明の第１の側面によれば、軟質パッドと硬質パッドがと組み合わされた状態にて、軟質パッドに設けられた係合突起が硬質パッドに備えられた凹部に嵌合される。そのため、それらパッドの組み付け方向に対して交差する方向に、軟質パッド及び硬質パッドの一方が他方に対して相対移動しようとしても、係合突起が凹部の壁面に当接してその相対移動が規制される。更に、組み付け方向と逆向き（両パッドが引き離される向き）に、軟質パッド及び硬質パッドの一方が他方に対して相対移動しようとしても、突部と係合部とが係合して相対移動が規制される。

　したがって、乗物用シートのクッション材を構成する軟質パッドと硬質パッドとの相互位置の調整を要することなく、それらパッドを機械的に一体化した乗物用シートを乗物に組み付けられる。

　本発明の第２の側面によれば、上述した第１の側面において、
　前記軟質パッドは、該乗物用シートとしての剛性を確保するための骨組みである骨格部材に固定され、
　前記係合突起は、前記骨格部材に設けられる。

　本発明の第２の側面において、骨格部材は、例えば、ワイヤフレーム、金属板材を組み合わせたフレーム、及び、樹脂の一体成形フレーム等によって構成し得る。更に、骨格部材は、例えば、軟質パッドに埋設してもよく、軟質パッドに接着してもよい。

　本発明の第２の側面によれば、係合突起が軟質パッドの骨組み（骨格部材）に設けられているため、係合突起を骨格部材から独立した別部材として設ける場合に比べ、係合突起を介した軟質パッドと硬質パッドとの結合強度を高められる。

　本発明の第３の側面によれば、上述した第２の側面において、
　前記骨格部材は、線材を所定形状に成形したワイヤによって構成され、
　前記係合突起は、前記ワイヤによって構成される。

　本発明の第３の側面によれば、係合突起が骨格部材を構成するワイヤにより構成されているため、係合突起をワイヤから独立した別部材として設ける場合に比べ、係合突起の構成を簡素化できる。

　本発明の第４の側面によれば、上述した第３の側面において、
　前記係合突起は、前記ワイヤの一部が前記硬質パッドに向けて突出した凸形状を有する突出形状部を有し、
　前記突出形状部は、前記凹部に受け入れられると共に前記係合部を構成し、前記壁面に設けられた前記突部に係合する。

　本発明の第４の側面によれば、骨格部材を成すワイヤに係合突起が形成されるため、係合突起を骨格部材に固定する作業等を排除できる。更に、壁面に設けられた突部と係合する係合部を突出形状部によって構成できるため、係合部をワイヤから独立した別部材として準備する必要がない。よって、乗物用シートの生産性が高まる。

　本発明の第５の側面によれば、上述した第４の側面において、
　前記突出形状部は、前記凸形状の突出端に相当する突出端側部の幅が、前記凸形状の基端に相当する一対の基端側部同士の間隔に比べて小さいように構成され、
　前記凹部は、前記凸形状に対応した凹部形状であって、前記一対の前記突出端側部が配置される部分の幅が前記基端側部が配置される部分の幅に比べて小さい凹部形状、を有する。

　本発明の第５の側面によれば、硬質パッドに形成される凹部の形状が、突出端側部が基端側部同士の間隔に比べて幅狭とされたワイヤの屈曲形状に対応する。そのため、硬質パッドの凹部を成形する成形型は、成形型を分離する向きにおいて徐々に拡がるような形状を有する。よって、成形型にアンダーカット部を設ける場合等に比べ、成形型から硬質パッドを分離することが容易であり、硬質パッドを容易に製造できる。

　本発明の第６の側面によれば、上述した第５の側面において、
　前記突出形状部は、前記突出端側部と前記一対の前記基端側部とを繋ぐ一対の接続部を有し、
　前記一対の前記接続部の一方を構成する前記ワイヤと、前記一対の前記基端側部の一方から延びる前記ワイヤと、の間の屈曲角度は、前記一対の前記接続部の他方を構成する前記ワイヤと、前記一対の前記基端側部の他方から延びる前記ワイヤと、の間の屈曲角度よりも大きく、
　前記一対の前記接続部の一方は、該乗物用シートに乗員が着座したときに前記一対の前記接続部の他方に比べてより大きな座圧を受ける位置に配置される。

　本発明の第６の側面によれば、突出形状部を成すワイヤの突出端側部と基端側部とをつなぐ一対の接続部のうち、屈曲角度が大きい側の接続部が、乗物用シートに乗員が着座したときに大きな座圧を受ける位置に配置される。これにより、接続部が乗員に異物感を与え難くなる。

　本発明の第７の側面によれば、上述した第１～第６の側面において、
　前記凹部は、一対の前記壁面を有し、
　前記突部は、前記一対の前記壁面のうち、前記硬質パッドの重心に近い位置に設けられている前記壁面に設けられる。

　本発明の第７の側面によれば、硬質パッドの凹部の壁面に突部を形成するため、硬質パッドの成形型に突部に対応したアンダーカット部分を設けることになる。成形後に硬質パッドを成形型から分離する際、突部は、成形型のアンダーカット部に押圧されて変形しながら、成形型から分離する。突部が硬質パッドの重心に近い側に位置する壁面に設けられているため、突部が成形型に押圧されたとき、突部とその周辺のみが変形し、硬質発泡体の大部分が変形することを抑制できる。なお、突部が硬質パッドの重心から離れた側に位置する壁面に設けられていると、成形型から硬質パッドを分離する際、突部だけでなく、凹部よりも重心から離れる位置にある硬質パッド（凹部から硬質パッドの端部までの部分。通常、重心に近い側の硬質パッドよりも肉幅が薄い）も、成形型に押されて変形してしまう可能性がある。

　本発明の第８の側面によれば、上述した第４の側面において、
　前記ワイヤは、複数の前記突出形状部を有し、
　前記複数の前記突出形状部は、一の前記突出形状部を構成する前記ワイヤが属する仮想平面と、他の前記突出形状部を構成する前記ワイヤが属する仮想平面と、が互いに交差するように、配置されている。

　本発明の第８の側面によれば、複数の突出形状部が設けられ、一の突出形状部を構成する屈曲されたワイヤが属する仮想平面と、他の突出形状部を構成する屈曲されたワイヤが属する仮想平面と、が互いに交差している。そのため、クッション材に外力が及んだときに複数の突出形状部が同時に接続部から分離することを防ぎ、クッション材全体として軟質パッドと硬質パッドとの係合力を高められる。

図１は、本発明の一実施形態におけるクッションパッドの斜視図である。 図２は、上記クッションパッドにおける軟質パッドの裏面側斜視図である。 図３は、上記クッションパッドにおける硬質パッドの裏面側斜視図である。 図４は、上記硬質パッドの表面側の部分拡大斜視図である。 図５は、上記硬質パッドの表面側の部分拡大斜視図であり、図４の更に一部を拡大した斜視図である。 図６は、上記硬質パッドの表面側の部分拡大斜視図であり、図５とは別の一部を拡大した斜視図である。 図７は、図１のＶＩＩ－ＶＩＩ断面矢視拡大図である。 図８は、図１のＶＩＩＩ－ＶＩＩＩ断面矢視拡大図である。 図９は、図１のＩＸ－ＩＸ断面矢視拡大図である。 図１０は、図１のＸ－Ｘ断面矢視拡大図である。

　図１～１０は、本発明の一実施形態を示す。この実施形態は、自動車用リヤシート（以下、単に「シート」という。）に本発明を適用した例である。シートは、周知のように、座部に対応したシートクッションと、背もたれに対応したシートバックと、を備える。この実施形態では、シートクッションにおけるクッションパッド１に本発明が適用されている。各図に図示した矢印は、シートを自動車に搭載した状態における各方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、これら各方向を基準として行う。

　図１に示すように、クッションパッド１は、ウレタンパッド（本発明における軟質パッドに相当）１０と硬質発泡体（本発明における硬質パッドに相当）２０とが組み合わされたクッション材を有する。ウレタンパッド１０と硬質発泡体２０とは、互いに硬さが異なる。ウレタンパッド１０は、ポリウレタンの発泡体であり、図２に示すようにクッションパッド１の外形形状を有するように形成されている。硬質発泡体２０は、例えば、ポリスチレン又はポリプロピレンの発泡体（発泡スチロール）であり、図３に示す形状を有するように成形されている。ウレタンパッド１０と硬質発泡体２０とは、別体として形成されている。硬質発泡体２０は、発泡成形以外の手法（例えば、射出成形等）によって形成されてもよい。硬質発泡体２０は、ウレタンパッド１０の裏面側に固定されてウレタンパッド１０と一体化されている。ウレタンパッド１０と硬質発泡体２０とが組み合わされたクッション材は、クッションパッド１の主要部品を構成している。

　なお、本実施形態では、本実施形態に係るシートに乗員が着座するときに乗員に向かい合うことになるシート面を「おもて面」と称呼し、その「おもて面」と反対側のシート面を「裏面」と称呼する。

　ウレタンパッド１０は、シートに着座する乗員に適度なクッション感を与える硬さを有している。硬質発泡体２０は、ウレタンパッド１０よりも押圧変形に対する耐性に優れた硬さを有している。具体的には、硬質発泡体２０は、クッションパッド１が自動車の車体に固定された後にクッションパッド１に乗員が着座したとき、クッションパッド１が過度に変形する（沈み込み過ぎる）ことを抑制し得る程度の硬さを有している。硬質発泡体２０は、そのような硬さを有することに加え、ウレタンパッド１０に比べて単位体積当りの重量が小さくなる材料を用いて構成されている。これにより、硬質発泡体２０の硬さのみに着目して高重量な材料を用いる場合に比べ、クッションパッド１の軽量化が図られる。

　硬質発泡体２０は、図１～図３に示すように、クッションパッド１の前側及び左右両側の下部に対応した位置に配置されている。これにより、硬質発泡体２０は、シートに着座した乗員の大腿部、並びに、シートの左側端及び右側端に着座した乗員の臀部の左側及び右側がクッションパッド１に沈み込み過ぎないように、クッションパッド１を支持している。

　ウレタンパッド１０の内部には、ワイヤ３０が埋設されている。具体的には、ウレタンパッド１０を発泡成形用の成形型を用いて成形する際、線材を所定形状に成形したワイヤ３０を予め成形型の内部に配置した状態にて、ウレタンパッド１０を発泡成形する。これにより、ウレタンパッド１０にワイヤ３０が埋め込まれる。ワイヤ３０は、ウレタンパッド１０がシートクッションとしての剛性を確保するための骨組みとして用いられ、クッションパッド１の外形形状に沿って形成されている。即ち、ワイヤ３０は、ウレタンパッド１０の骨格部材である。

　図１及び図２に示すように、ウレタンパッド１０の後端の左右両側には、斜め上方に向けて突出する取付突起１ａが設けられている。ウレタンパッド１０の前端の左右両側の下部には、下方に向けて突出する取付突起１ｂが設けられている。取付突起１ａは、ウレタンパッド１０の内部にワイヤ３０を埋設させるように構成されている。取付突起１ｂは、ウレタンパッド１０からワイヤ３０を突出させるように構成されている。取付突起１ｂを構成するワイヤ３０は、下方に突出するようにＵ字状に屈曲している。取付突起１ａ及び取付突起１ｂは、クッションパッド１を車体に固定する際の固定手段として使用される。なお、クッションパッド１を車体に固定する際、クッションパッド１にシートカバー（図示省略）が被せられる。

　図１及び図２に示すように、ウレタンパッド１０の硬質発泡体２０に対応する部位には、下方に向けてワイヤ３０が突出した突出形状部３１，３２（本発明における係合突起に相当）が設けられている。突出形状部３１は、図１、図２、図４、図５及び図７に示すように、ウレタンパッド１０の左右両側部にて、前後方向に沿って延びるワイヤ３０の途中が下方に屈曲して下方に突出した形状を有している。突出形状部３２は、図１、図２、図４、図６及び図１０に示すように、ウレタンパッド１０の前側の左右両側部にて、左右方向に沿って延びるワイヤ３０の途中が下方に屈曲して下方に突出した形状を有している。なお、図４～図６では、硬質発泡体２０に対するワイヤ３０の配置を判り易くするため、ウレタンパッド１０の図示を省略している。

　突出形状部３１，３２に対応するように、硬質発泡体２０には、図４～図１０に示すような凹部２１，２３が形成されている。凹部２１，２３は、その内部に突出形状部３１，３２を受け入れ可能な窪みである。凹部２１は、突出形状部３１を前後左右の各方向から挟み込むように構成されている。凹部２３は、突出形状部３２を前後方向から挟み込むように構成されている。具体的には、凹部２１は、図７及び図８に示すように、突出形状部３１の前後左右の各方向に対応する壁面２１ｂ，２１ｃ，２１ｄ，２１ｅを有する。凹部２３は、図９に示すように、突出形状部３２の前後方向に対応する壁面２３ｂ，２３ｃを有する。

　硬質発泡体２０の凹部２１，２３にウレタンパッド１０の突出形状部３１，３２が挿入されることにより、ウレタンパッド１０は、硬質発泡体２０に対して前後左右の各方向に相対移動しないように、硬質発泡体２０に固定されることになる。

　図５及び図８に示すように、硬質発泡体２０の凹部２１の左側壁面２１ｅには、対向する右側壁面２１ｄに向けて突出する突部２２が形成されている。突部２２は、凹部２１に突出形状部３１が挿入されたとき、突出形状部３１の突出端側部３１ａの上側に位置するように形成されている。突部２２は、突出形状部３１が上方に移動することを抑制する。これにより、ウレタンパッド１０（突出形状部３１を構成するワイヤ３０が埋め込まれている）が硬質発泡体２０（突部２２を有する）から離れる向きに移動することが、抑制される。即ち、突出形状部３１と突部２２とは、上記向きにおける相対移動を規制するように互いに係合している。突出形状部３１は、本発明における「係合部」に相当する。

　図６、図９及び図１０に示すように、硬質発泡体２０の凹部２３の後側壁面２３ｃには、対向する前側壁面２３ｂに向けて突出する突部２４が形成されている。突部２４は、凹部２３に突出形状部３２が挿入されたとき、突出形状部３２の突出端側部３２ａの上側に位置するように形成されている。突部２４は、突出形状部３２が上方に移動することを抑制する。これにより、ウレタンパッド１０（突出形状部３２を構成するワイヤ３０が埋め込まれている）が硬質発泡体２０（突部２４を有する）から離れる向きに移動することが、抑制される。即ち、突出形状部３２と突部２４とは、上記向きにおける相対移動を規制するように互いに係合している。突出形状部３２は、本発明における「係合部」に相当する。

　突部２２，２４を成形するにあたり、硬質発泡体２０の成形型にアンダーカット部を設けることになる。成形後に硬質発泡体２０を成形型から分離する際、突部２２，２４は、成形型のアンダーカット部に押圧されて変形しながら、成形型から分離する。このような成形型からの分離を考慮し、突部２２，２４は、壁面２１ｄ，２１ｅ，２３ｂ，２３ｃのうち、硬質発泡体２０の重心に近い側に位置する壁面２１ｅ，２３ｃに設けられている（図８及び図９参照）。

　なお、突部２２，２４が硬質発泡体２０の重心から離れた側に位置する壁面２１ｄ，２３ｂに設けられていると、成形型から硬質発泡体２０を分離する際、突部２２，２４だけでなく、凹部２１，２３よりも重心から離れる位置にある硬質発泡体２０（凹部２１，２３から硬質発泡体２０の端部までの部分。通常、重心に近い側の硬質発泡体２０よりも肉幅が薄い）も、成形型に押されて変形してしまう可能性がある。本実施形態では、突部２２，２４が硬質発泡体２０の重心に近い側に位置する壁面２１ｅ，２３ｃに設けられているため、突部２２，２４が成形型に押圧されたとき、突部２２，２４とその周辺のみが変形し、上述したように硬質発泡体２０の大部分が変形することを抑制できる。

　図７に示すように、突出形状部３１は、ワイヤ３０の一部が硬質パッド２０に向けて突出した凸形状を有する。突出形状部３１は、その凸形状の突出端に相当する突出端側部３１ａの前後方向における幅が、その凸形状の基端に相当する（換言すると、ワイヤ３０の屈曲開始部である）一対の基端側部３１ｂ同士の間隔に比べて小さいように、構成されている。凹部２１は、突出形状部３１の凸形状に対応した凹部形状を有する。別の言い方をすると、凹部２１は、その凹部形状が突出形状部３１の屈曲形状に対応するように形成されている。具体的には、凹部２１は、突出端側部３１ａが配置される部分２１ａの幅が一対の基端側部３１ｂが配置される部分２１ｆの幅に比べて小さい凹部形状、を有する。別の言い方をすると、凹部２１は、突出形状部３１の突出端側部３１ａを受け入れる部分２１ａの前後方向における幅が、基端側部３１ｂに対応する部分２１ｆ同士の間隔に比べて小さいように、形成されている。

　凹部２１を上述した形状に成形するべく、硬質発泡体２０の凹部２１を成形する成形型は、成形型を分離する向きにおいて徐々に前後方向に拡がるような形状を有する。よって、上述したように成形型にアンダーカット部を設ける場合に比べ、成形型から硬質発泡体２０を分離することが容易であり、硬質発泡体２０を容易に製造できる。

　突出端側部３１ａの前後両側と一対の基端側部３１ｂとをつなぐ一対の接続部３１ｃは、異なる形状（前後方向において非対称な形状）を有している。具体的には、一対の接続部３１ｃは、基端側部３１ｂから延びるワイヤ３０の各々と、接続部３１ｃの各々と、がなす各々の角度（屈曲角度）が、前後において異なるような形状を有している。換言すると、一対の接続部３１ｃの一方を構成する前記ワイヤと一対の基端側部３１ｂの一方から延びるワイヤ３０との間の屈曲角度は、一対の接続部３１ｃの他方を構成する前記ワイヤと一対の基端側部３１ｂの他方から延びるワイヤ３０の間の屈曲角度と相違している。一対の接続部３１ｃは、前側の屈曲角度よりも後側の屈曲角度が大きいように構成されている。ワイヤ３０は、屈曲角度の大きい後側の接続部３１ｃが、シートに乗員が着座したときに座圧が大きくなる側に位置するように、構成されている。換言すると、一対の接続部３１ｃの一方（屈曲角度が大きい方）は、シートに乗員が着座したときに一対の接続部３１ｃの他方（屈曲角度が小さい方）に比べてより大きな座圧を受けるような位置に配置されている。これにより、突出形状部３１を形成するために屈曲されたワイヤ３０が着座乗員の臀部に異物感を与え難くなる。

　図１０に示すように、突出端側部３２ａと基端側部３２ｂとをつなぐ接続部３２ｃの長さは、突出形状部３１の接続部３１ｃに比べて長い。基端側部３２ｂから延びるワイヤ３０と接続部３２ｃとがなす屈曲角度は、突出形状部３１の接続部３１における屈曲角度に比べて大きい。これにより、突出形状部３２が乗員の大腿部に異物感を与え難くなる。

　図１、図７及び図１０に示すように、突出形状部３１の突出端側部３１ａ及び接続部３１ｃが属する仮想平面と、突出形状部３２の突出端側部３２ａ及び接続部３２ｃが属する仮想平面と、が互いに交差するように、突出端側部３１ａ，３２ａ及び接続部３１ｃ，３２ｃが配置されている。これにより、クッションパッド１に前後左右方向から外力が及んだ場合に突出形状部３１，３２が同時に接続部３１ｃ，３２ｃから分離することを防ぎ、クッションパッド１全体としてウレタンパッド１０と硬質発泡体２０との係合力を高められる。

　以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。

　例えば、上記実施形態では、本発明に係る乗物用シートを自動車用リヤシートに適用している。しかし、本構成に係る乗物用シートは、自動車のフロントシートに適用してもよい。更に、上記実施形態では、本発明に係る乗物用シートの構造をシートクッションのクッションパッドに適用している。しかし、本発明に係る乗物用シートの構造をシートバックのバックパッドに適用してもよい。加えて、上記実施形態では、本発明に係る乗物用シートを自動車シートに適用している。しかし、本発明に係る乗物用シートを飛行機、船および電車等に搭載するシートに適用してもよい。

　本出願は、２０１６年６月２９日出願の日本特許出願（特願２０１６－１２８６４３）に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

　本発明の乗物用シートによれば、乗物用シートのクッション材を構成する軟質パッドと硬質パッドとの相互位置の調整を要することなく、それらパッドを機械的に一体化した乗物用シートを乗物に組み付けることが可能である。この効果を奏する本発明は、乗物用シートに関して有用である。

　　１　クッションパッド（乗物用シート）
　　１ａ，１ｂ　取付突起
　１０　ウレタンパッド（クッション材、軟質パッド）
　２０　硬質発泡体（クッション材、硬質パッド）
　２１，２３　凹部
　２２，２４　突部
　２１ｂ～２１ｅ，２３ｂ，２３ｃ　壁面
　３０　ワイヤ（骨格部材）
　３１，３２　突出形状部（係合部、係合突起）
　３１ａ，３２ａ　突出端側部
　３１ｂ，３２ｂ　基端側部
　３１ｃ，３２ｃ　接続部

Claims (8)

1. 　互いに異なる硬さを有する軟質パッドと硬質パッドとを組み合わせたクッション材を備えた乗物用シートであって、
   　前記軟質パッドには、前記硬質パッドに向けて突出する係合突起が設けられ、
   　前記硬質パッドには、前記係合突起を受け入れる凹部が設けられ、
   　前記凹部は、前記軟質パッドと前記硬質パッドとの組み付け方向に対して交差する方向に延びる壁面を有し、
   　前記壁面及び前記係合突起の一方は、突部を有し、
   　前記壁面及び前記係合突起の他方は、前記突部と係合する係合部を有し、
   　前記突部及び前記係合部は、前記組み付け方向における前記軟質パッドと前記硬質パッドとの相対移動を規制するように互いに係合する、
   　乗物用シート。
2. 　請求項１に記載の乗物用シートにおいて、
   　前記軟質パッドは、該乗物用シートとしての剛性を確保するための骨組みである骨格部材に固定され、
   　前記係合突起は、前記骨格部材に設けられる、
   　乗物用シート。
3. 　請求項２に記載の乗物用シートにおいて、
   　前記骨格部材は、線材を所定形状に成形したワイヤによって構成され、
   　前記係合突起は、前記ワイヤによって構成される、
   　乗物用シート。
4. 　請求項３に記載の乗物用シートにおいて、
   　前記係合突起は、前記ワイヤの一部が前記硬質パッドに向けて突出した凸形状を有する突出形状部を有し、
   　前記突出形状部は、前記凹部に受け入れられると共に前記係合部を構成し、前記壁面に設けられた前記突部に係合する、
   　乗物用シート。
5. 　請求項４に記載の乗物用シートにおいて、
   　前記突出形状部は、前記凸形状の突出端に相当する突出端側部の幅が、前記凸形状の基端に相当する一対の基端側部同士の間隔に比べて小さいように構成され、
   　前記凹部は、前記凸形状に対応した凹部形状であって、前記一対の前記突出端側部が配置される部分の幅が前記基端側部が配置される部分の幅に比べて小さい凹部形状、を有する、
   　乗物用シート。
6. 　請求項５に記載の乗物用シートにおいて、
   　前記突出形状部は、前記突出端側部と前記一対の前記基端側部とを繋ぐ一対の接続部を有し、
   　前記一対の前記接続部の一方を構成する前記ワイヤと、前記一対の前記基端側部の一方から延びる前記ワイヤと、の間の屈曲角度は、前記一対の前記接続部の他方を構成する前記ワイヤと、前記一対の前記基端側部の他方から延びる前記ワイヤと、の間の屈曲角度よりも大きく、
   　前記一対の前記接続部の一方は、該乗物用シートに乗員が着座したときに前記一対の前記接続部の他方に比べてより大きな座圧を受ける位置に配置される、
   　乗物用シート。
7. 　請求項１～請求項６の何れか一項に記載の乗物用シートにおいて、
   　前記凹部は、一対の前記壁面を有し、
   　前記突部は、前記一対の前記壁面のうち、前記硬質パッドの重心に近い位置に設けられている前記壁面に設けられる、
   　乗物用シート。
8. 　請求項４に記載の乗物用シートにおいて、
   　前記ワイヤは、複数の前記突出形状部を有し、
   　前記複数の前記突出形状部は、一の前記突出形状部を構成する前記ワイヤが属する仮想平面と、他の前記突出形状部を構成する前記ワイヤが属する仮想平面と、が互いに交差するように、配置されている、
   　乗物用シート。

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