まず概要を説明する。本発明者は、企業から個人への金銭支払に関して以下の課題があると考えた。(1)報酬や料金等の支払対象となる個人が多数存在する企業では、支払先の管理や、支払明細の管理、各個人の口座への振込等のために多大なコストがかかっている。(2)平成28年から、企業は、金銭支払にあたり各個人の個人番号を受け入れる必要があり、番号法に基づく本人確認や安全管理措置のために多大なコストがかかることが想定される。(3)一方、金銭支払を受ける個人は、士業の場合等、複数の企業から金銭支払を受けることがあり、報酬や料金が適切に支払われたか、言い換えれば、未受領が発生していないかを管理するためのコストがかかる。
このような課題を解決するために、実施の形態で提案する報酬支払システムは以下の特徴を有する。(1)各企業は、自社の当座預金口座を準備し、複数の個人に対する支払予定金を自社の当座預金口座に一括してプールする。(2)企業毎の当座預金口座と別途準備される支払予定明細から個人単位の仮想口座を作成する。このとき、複数の企業の支払明細を個人単位で名寄せするため、個人番号カードに含まれる電子証明書のシリアル番号を利用する。(3)金銭を受け取る個人は、個人番号カードの電子証明書を利用した本人確認を行うことを前提に、自身の仮想口座をATMやPCから照会し、複数の企業それぞれとの支払関係の確認や、複数の企業から支払われる金銭の引出を可能にする。
実施の形態の報酬支払システムによると、例えば以下の効果を奏する。(1)報酬を受け取る個人は、自身の銀行口座を開設せずとも、個人番号カードを使用して、企業から報酬や料金を受け取ることができる。言い換えれば、報酬を支払う企業は、報酬支払先となる複数の個人それぞれの銀行口座の情報を管理することが不要になる。なお、実施の形態では個人番号カードを使用するが、実施の形態に記載の技術は、公的機関から個人へ付与された個人番号に相当するID(社会保障番号等)を記録した様々な媒体を使用して金銭を受け取るシステムに適用可能である。
また、(2)報酬を受け取る個人は、個人番号カードを提示するだけで即時にサービスを利用できる。例えば、サービス入会時に基本4情報等を手入力で登録することが不要になる。(3)報酬を受け取る個人は、複数の企業との支払関係を容易に把握できる。(4)報酬を受け取る個人は、二度目以降のサービスログイン時に、個人情報を送信することなくログイン可能になり、またサービスを利用可能になる。(5)報酬を支払う企業は、報酬支払先の管理、報酬支払の手続(銀行振込等)のコストを低減できる。(6)報酬を支払う企業は、個人番号の取扱いが最小限になり、漏洩等のリスクを低減することができる。以下、実施の形態の報酬支払システムを詳細に説明する。
図1は、実施の形態の報酬支払システム10の構成を示す。報酬支払システム10は、報酬支払GW(ゲートウェイ)12、企業業務装置14a、企業業務装置14b、個人番号管理装置16a、個人番号管理装置16b、銀行サーバ18、認証サーバ20、ATM22で総称されるATM22a、ATM22b、ATM22cを備える。これらの各装置は、LAN・WAN・インターネット・専用線網を含む既知の通信網を介して接続される。
企業業務装置14aと企業業務装置14bは、個人へ支払われる報酬の原資を提供する企業に設置された情報処理装置であり、経理等の各種業務を支援する。個人番号管理装置16aと個人番号管理装置16bは、報酬支払先となる個人の個人番号を管理する情報処理装置である。
実施の形態では、企業業務装置14aと個人番号管理装置16aは企業Aが管理する装置とし、企業業務装置14bと個人番号管理装置16bは企業Bが管理する装置とする。すなわち、個人から告知された個人番号の所有主体は企業とする。なお、企業Aと企業Bの少なくとも一方は、ASP(Application Service Provider)事業者が提供する個人番号管理サービスを利用してもよく、その場合、個人番号管理装置16aと個人番号管理装置16bの少なくとも一方は物理的にはASP事業者に設けられてもよい。
銀行サーバ18は、企業Aと企業Bが当座預金口座を開設した銀行の情報処理装置である。各企業の当座預金口座は、複数の個人に対する報酬として企業が支払うべき金銭が一括して預け入れられるマネープールになる。なお、企業Aと企業Bは異なる銀行に当座預金口座を開設してもよく、すなわち報酬支払システム10は複数の銀行の複数の銀行サーバ18を備えてもよい。後述するように、銀行サーバ18は、当座預金口座の残高照会への回答処理や、ATM22の出金制御を実行する。
認証サーバ20は、行政機関もしくは行政機関に委託された民間企業が管理する情報処理装置であり、個人番号カードを用いた公的個人認証サービスを提供する。認証サーバ20は、個人番号の失効リストを保持し、報酬支払GW12からの依頼に基づいて、個人番号カードに記憶される電子証明書(署名用電子証明書および利用者証明用電子証明書)の有効性を確認する処理を実行する。
ATM22は、報酬支払先の個人(以下「ユーザ」とも呼ぶ。)により操作される情報端末であり、各種メッセージの表示や、ユーザが入力した情報を読み込む等、ユーザとのインタフェース機能を提供する。例えばATM22は、銀行店舗やコンビニエンスストアに設置される。ATM22の詳細な構成は図2に関連して後述する。
報酬支払GW12は、企業から個人への報酬支払や、支払調書の作成を支援する情報処理装置である。報酬支払GW12は、複数のATM22、複数の企業の装置(企業業務装置14a、企業業務装置14b、個人番号管理装置16a、個人番号管理装置16b)、複数の銀行サーバ18、認証サーバ20に接続され、電子データを中継するゲートウェイ装置とも言える。
報酬支払GW12の処理の概要を説明する。報酬支払GW12は、金銭の支払先を示す支払先IDと金銭の支払額を示す支払情報を企業業務装置14aおよび企業業務装置14bから取得する。報酬支払GW12は、個人番号カードからATM22が読取った個人データを取得する。報酬支払GW12は、ATM22から取得された個人データをもとに特定されるIDが企業Aから受け付けた支払情報が示す支払先IDに合致する場合、その支払情報が示す支払額を、企業Aの当座預金口座から個人へ支払うための処理を実行する。また、ATM22から取得された個人データをもとに特定されるIDが企業Bから受け付けた支払情報が示す支払先IDに合致する場合、その支払情報が示す支払額を、企業Bの当座預金口座から個人へ支払うための処理を実行する。報酬支払GW12の詳細な構成は図3に関連して後述する。
図2は、図1のATM22の機能構成を示すブロック図である。ATM22は、LCD30、カードリーダ32、プリンタ34、制御部36、記憶部38、通信部40を備える。
本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
LCD30は、ATM22の筐体に搭載された液晶ディスプレイであり、種々の電子コンテンツを表示する。またLCD30はタッチパネルの機能も有し、情報入力手段としても機能する。カードリーダ32は、キャッシュカードや個人番号カード等、ICカードや磁気ストライプカードからデータを読み込む。プリンタ34は、制御部36から出力された印刷対象データをロール紙等に印刷し、例えば領収書を印刷する。
制御部36は、金融取引に関連するデータ処理を実行するとともに、実施の形態では報酬受取に関するデータ処理、典型的にはユーザインタフェース制御を実行する。記憶部38は、制御部36により参照、更新されるデータを記憶する記憶領域である。通信部40は、所定の通信プロトコルにしたがって外部装置と通信する。制御部36は、通信部40を介して、報酬支払GW12や銀行サーバ18とデータを送受する。
記憶部38は表示データ保持部42を含む。表示データ保持部42は、LCD30に表示させ、ユーザへ提示すべき電子コンテンツを保持する。なお、ユーザへ提示すべき電子コンテンツは、報酬支払GW12に保持されてもよく、報酬支払GW12からATM22へ必要に応じて随時提供されてもよい。また、ATM22と報酬支払GW12の双方が複数の表示コンテンツを分散して保持してもよい。
制御部36は、操作検出部43、表示制御部44、カード情報送信部45、出金制御部46、印刷制御部47を含む。
操作検出部43は、ユーザがLCD30に対して入力した操作を検出し、操作内容を示す情報を他の機能ブロックへ通知する。表示制御部44は、LCD30の画面表示を制御する。例えば、操作検出部43により検出されたユーザ操作に応じて、表示データ保持部42に保持されたコンテンツをLCD30に表示させ、また、LCD30に表示させるコンテンツを切り替える。
カード情報送信部45は、カードリーダ32により読み込まれた個人番号カードのデータを報酬支払GW12へ送信する。出金制御部46は、ATM22からの金銭の出金を制御し、ユーザへ金銭を提供する。印刷制御部47は、プリンタ34の印刷処理を制御し、例えば印刷対象データをプリンタ34へ出力してロール紙等に印刷させる。
図3は、図1の報酬支払GW12の機能構成を示すブロック図である。報酬支払GW12は、制御部50、記憶部52、通信部54を備える。
制御部50は、企業から個人への金銭の支払を支援するためのデータ処理を実行する。記憶部52は、制御部50により参照、更新される各種データを記憶する記憶領域である。通信部54は、所定の通信プロトコルにしたがって外部装置と通信する。制御部50は、通信部54を介して、企業業務装置14a、企業業務装置14b、個人番号管理装置16a、個人番号管理装置16b、銀行サーバ18、認証サーバ20、ATM22とデータを送受する。
例えば、制御部50内の複数の機能ブロックに対応する複数のモジュールを含むコンピュータプログラムがDVD等の記録媒体に格納され、報酬支払GW12のストレージにインストールされてもよい。報酬支払GW12のCPUは、ストレージに格納されたコンピュータプログラムをメインメモリに読出し、実行することで、各機能ブロックの機能を発揮してもよい。記憶部52は、報酬支払GW12のストレージやメモリがデータを記憶することで実現されてよい。
記憶部52は、個人属性保持部56、支払予定保持部57、支払結果保持部58、支払調書保持部59を含む。
個人属性保持部56は、報酬支払先となる個人に関する属性情報(以下「個人属性情報」とも呼ぶ。)を保持する。個人属性保持部56は、報酬支払サービスの利用者登録を行った複数の個人に対応する複数の個人属性情報を保持する。
個人属性情報は、ATM22がある個人の個人番号カードから読み込んだ個人データをもとに特定される個人IDを、企業A支払先IDと企業B支払先IDとに対応付けたID情報を含む。企業A支払先IDは、企業Aが独自に決定した当該個人を識別するためのIDであり、企業B支払先IDは、企業Bが独自に決定した当該個人を識別するためのIDである。個人属性情報のID情報は、異なる体系の複数種類のIDの対応関係を示す情報と言える。
図4は、個人属性保持部56に保持される個人属性情報の例を示す。個人属性情報は、個人IDとしての署名用シリアル番号および利用者証明用シリアル番号と、企業A支払先IDとしての企業A支払先番号と、企業B支払先IDとしての企業B支払先番号を含む。さらに個人属性情報は、個人の基本4情報と呼ばれる氏名、住所、生年月日、住所を含む。個人属性保持部56は、ATM22を介して利用者登録を行った個人毎に、図4に示す構成の個人属性情報を保持する。図4には不図示だが、個人属性情報は、各個人の連絡先情報(メールアドレス等)をさらに含む。ただし、個人属性情報は、報酬支払先となる個人の個人番号を含まない。
図3に戻り、支払予定保持部57は、企業業務装置14a(企業A)および企業業務装置14b(企業B)から受け付けた支払情報としての支払予定明細を保持する。支払予定明細は、金銭の支払先を示す企業A支払先番号または企業B支払先番号と、金銭の支払予定額を対応付けた文書データである。支払結果保持部58は、支払予定明細に対応する支払結果明細(支払済明細とも言える)を保持する。支払結果明細は、金銭の支払先を示す企業A支払先番号または企業B支払先番号と、金銭の支払済額を対応付けた文書データである。
支払調書保持部59は、金銭支払に関する事実を記載して税務署等の公的機関へ提出すべき法定調書である支払調書のデータを保持する。支払調書のデータは、支払日時(いつ)、支払元企業の情報(誰が)、支払先個人の情報(誰に)、支払額(いくら支払ったか)を含む。なお、支払調書保持部59に保持される支払調書データは、支払先個人の個人番号を含まない。
制御部50は、個人データ取得部61、有効性確認部62、個人属性取得部63、個人番号登録部64、個人属性記録部65、支払予定取得部66、入金確認部67、支払可能通知部68、金銭支払部69、調書作成部73、調書提供部74を含む。
個人データ取得部61は、ATM22が個人番号カードから読取ったデータである個人データをATM22から取得する。実施の形態における個人データは、署名用電子証明書または利用者証明用電子証明書である。
有効性確認部62は、個人データ取得部61により取得された署名用電子証明書および利用者証明用電子証明書の有効性を認証サーバ20と連携して確認する。この有効性確認処理は既知の方法により実現されてもよい。例えば、有効性確認部62は、個人データ取得部61により取得された署名用電子証明書または利用者証明用電子証明書のデータを認証サーバ20へ送信し、その電子証明書が有効か否かを示す情報を認証サーバ20から受信してもよい。
個人属性取得部63は、個人データ取得部61により取得された署名用電子証明書を既知の方法で開封し、署名用電子証明書から個人の属性情報を抽出する。具体的には、個人の属性情報として、基本4情報、個人番号、署名用シリアル番号を取得する。また個人属性取得部63は、個人データ取得部61により取得された利用者証明用電子証明書を既知の方法で開封し、利用者証明用電子証明書から個人の属性情報を抽出する。具体的には、個人の属性情報として、利用者証明用シリアル番号を取得する。
また個人属性取得部63は、既知の方法により、認証サーバ20から、個人の署名用シリアル番号をもとにその個人の利用者証明用シリアル番号を取得する。例えば、認証サーバ20に設けられた利用者証明用シリアル番号取得用のAPIを、署名用シリアル番号を引数として呼び出してもよい。そして、公的機関においてその署名用シリアル番号に予め対応付けられた利用者証明用シリアル番号を返値として取得してもよい。
個人番号登録部64は、個人属性取得部63により取得された個人の個人番号を個人番号管理装置16aと個人番号管理装置16bへ送信して登録する。ATM22にて個人が個人番号の申告先として企業Aと企業Bの一方のみを指定する場合、個人番号登録部64は、指定された申告先企業の装置のみに個人番号を登録してもよい。なお個人番号管理装置16aと個人番号管理装置16bは、個人属性情報の正当性を確認してもよい。この場合、個人番号登録部64は、個人属性取得部63により取得された他の個人属性情報であり、氏名や住所等、正当性確認に必要な情報をさらに個人番号管理装置16aと個人番号管理装置16bへ送信してもよい。
実施の形態の個人番号管理装置16a(個人番号管理装置16b)は、ある個人の個人番号の登録を受け付けると、企業A(企業B)がその個人を識別するための企業独自のIDである企業A支払先番号(企業B支払先番号)を採番する。そして、企業A支払先番号(企業B支払先番号)と個人番号とを対応付けて記憶する。個人番号登録部64は、個人番号管理装置16a(個人番号管理装置16b)に対して個人番号を登録すると、その登録に応じて採番された企業A支払先番号(企業B支払先番号)を、個人番号管理装置16a(個人番号管理装置16b)から取得する。以下、企業A支払先番号と企業B支払先番号を総称する場合、「支払先番号」と呼ぶ。
個人属性記録部65はID記録部として機能する。個人属性記録部65は、利用者登録すべき個人について、個人属性取得部63が取得した基本4情報、署名用シリアル番号、利用者証明用シリアル番号と、個人番号登録部64が取得した支払先番号を対応付けた個人属性情報を個人属性保持部56へ格納する。なお個人は、自身の連絡先情報(例えばメールアドレス)をATM22へ入力することとし、個人属性記録部65は、個人の連絡先情報も個人属性保持部56へ格納する。
支払予定取得部66は支払情報取得部として機能する。支払予定取得部66は、企業A支払先番号と金銭の支払額を示す支払予定明細のデータを企業業務装置14aから取得し、企業A支払予定明細として支払予定保持部57へ格納する。また支払予定取得部66は、企業B支払先番号と金銭の支払額を示す支払予定明細のデータを企業業務装置14bから取得し、企業B支払予定明細として支払予定保持部57へ格納する。
入金確認部67は、支払予定保持部57に保持された1つ以上の企業A支払予定明細を参照して、企業Aから個人への支払総額を算出する。入金確認部67は、銀行サーバ18へアクセスして企業Aの当座預金口座(以下「企業A口座」と呼ぶ。)の残高を確認する。企業A口座の残高が企業Aの支払総額以上であれば入金済と判定し、企業A支払予定明細のそれぞれに入金済フラグを設定する。同様に入金確認部67は、支払予定保持部57に保持された1つ以上の企業B支払予定明細を参照して、企業Bから個人への支払総額を算出する。入金確認部67は、銀行サーバ18へアクセスして企業Bの当座預金口座(以下「企業B口座」と呼ぶ。)の残高を確認する。企業B口座の残高が企業Bの支払総額以上であれば入金済と判定し、企業B支払予定明細のそれぞれに入金済フラグを設定する。
なお、支払予定明細には支払日付、例えば報酬の支払が可能になる日付が設定されてもよい。入金確認部67は、支払日付に達した企業A支払予定明細を参照して企業Aの支払総額を算出し、上記処理を実行してもよい。同様に入金確認部67は、支払日付に達した企業B支払予定明細を参照して企業Bの支払総額を算出し、上記処理を実行してもよい。
支払可能通知部68は、個人に対して報酬の支払(受取)が可能である旨を通知する。具体的には、支払可能通知部68は、入金済フラグが設定された支払予定明細が示す企業A支払先番号または企業B支払先番号に対応付けられた個人の連絡先を、個人属性保持部56の個人属性情報を参照して特定する。そして、特定した個人の連絡先へ、報酬の受取が可能である旨のメッセージを送信する。例えば、当該個人が連絡先として登録したメールアドレスを宛先とする電子メールを送信する。なお、支払予定明細に支払日付が設定されている場合、入金済フラグが設定され、かつ、支払日付に達した支払予定明細を通知対象とする。
金銭支払部69は、ATM22から取得された個人データをもとに特定されるIDが支払予定明細が示す支払先IDに合致する場合、企業が予め開設した当座預金口座から支払予定明細が示す支払額を個人へ支払うための処理を実行する。金銭支払部69は、名寄せ処理部70、明細提示部71、支払実行部72を含み、これらの連携により上記処理を実行する。
名寄せ処理部70は、個人属性保持部56の個人属性情報を参照して、ATM22から取得された利用者証明用シリアル番号に予め対応付けられた企業A支払先番号と企業B支払先番号を識別する。名寄せ処理部70は、支払予定保持部57に格納された企業Aの支払予定明細のうち企業A支払先番号が記載された1つ以上の支払予定明細を該当企業A支払予定明細として識別する。また、支払予定保持部57に格納された企業Bの支払予定明細のうち企業B支払先番号が記載された1つ以上の支払予定明細を該当企業B支払予定明細として識別する。
名寄せ処理部70は、支払可能フラグが設定済の1つ以上の該当企業A支払予定明細に記載された支払額を、企業AからATM22のユーザへの現在支払可能額として識別する。その一方、支払可能フラグが未設定の1つ以上の該当企業A支払予定明細に記載された支払額を企業AからATM22のユーザへの将来支払予定額として識別する。同様に名寄せ処理部70は、支払可能フラグが設定済の1つ以上の該当企業B支払予定明細に記載された支払額を、企業BからATM22のユーザへの現在支払可能額として識別する。その一方、支払可能フラグが未設定の1つ以上の該当企業B支払予定明細に記載された支払額を企業BからATM22のユーザへの将来支払予定額として識別する。
明細提示部71は、企業Aと企業Bそれぞれの現在支払可能額を示す明細である支払可能明細と、企業Aと企業Bそれぞれの将来支払予定額を示す明細である支払予定明細の少なくとも一方のデータをATM22へ送信して画面に表示させる。ATM22にて個人が選択した明細種類に応じた支払可能明細または支払予定明細を提示してもよく、支払可能明細と支払予定明細の両方を提示してもよい。なお、現在支払可能額と将来支払予定額は、個人単位の集計結果を提示してもよく、個人かつ企業単位の集計結果を提示してもよく、個々の支払予定明細単位で提示してもよい。
支払実行部72は、支払可能明細が表示されたATM22において個人が報酬支払(現金引出)を要求した場合、企業Aの当座預金口座と企業Bの当座預金口座の少なくとも一方からの現金引出を要求するデータである現金引出要求を銀行サーバ18へ送信する。例えば、支払可能明細が企業Aからの支払可能額を示す場合、銀行サーバ18がオンラインで受付可能な形式の、企業Aの口座番号と引出金額(現在支払可能額)を設定した現金引出要求を銀行サーバ18へ送信してもよい。現金引出要求を受け付けた銀行サーバ18は、当該要求で指定された金額をATM22から出金するよう指示するデータをATM22へ送信してもよい。
また支払実行部72は、個人に対する金銭支払処理を実行した場合、例えば現金引出要求を銀行サーバ18へ送信した場合に、支払結果明細のデータを生成して支払結果保持部58へ格納する。例えば、支払予定明細から支払額と支払元企業の情報を抽出して支払結果明細に設定し、個人属性保持部56の個人属性情報から支払先個人の情報(個人番号は含まない)を抽出して支払結果明細に設定し、さらに支払日時を支払結果明細に設定してもよい。
調書作成部73は、支払調書のデータを生成して支払調書保持部59へ格納する。支払調書の生成タイミングは、年末~3月の所定の日時に至った場合や、報酬支払GW12の管理者が入力した調書作成指示を受け付けた場合でもよい。調書作成部73は、支払結果保持部58に格納された支払結果明細を支払元企業単位かつ支払先個人単位に集計して、いつ、誰から誰へ、いくら金銭が支払われたかを示す支払調書を作成する。調書作成部73により作成される支払調書には個人番号は含まれない。調書作成部73は、作成した支払調書のデータを、個人の利用者証明用シリアル番号と、企業A支払先番号または企業B支払先番号に対応付けて企業別に支払調書保持部59へ格納する。
調書提供部74は、支払調書保持部59に保持された企業Aの支払調書のデータを企業A支払先番号とともに個人番号管理装置16aへ送信する。同様に、支払調書保持部59に保持された企業Bの支払調書のデータを企業B支払先番号とともに個人番号管理装置16bへ送信する。送信タイミングは、年末~3月の所定の日時に至った場合や、報酬支払GW12の管理者が入力した調書提供指示を受け付けた場合、支払調書保持部59に新たな支払調書データが格納されたことを検出した場合でもよい。
調書提供部74は、支払調書のデータを個人番号管理装置16aおよび個人番号管理装置16bへ送信して、支払調書のデータへ報酬支払先個人の個人番号を設定する処理を個人番号管理装置16aおよび個人番号管理装置16bに実行させる。個人番号管理装置16aと個人番号管理装置16bは、支払調書とともに受け付けた支払先番号をもとに予め保持する個人番号を識別して、その個人番号を支払調書へ追加的に設定する。また調書提供部74は、ATM22にて個人が支払調書の提供を要求する操作を入力した場合、支払調書保持部59に保持された当該個人の支払調書のデータをATM22へ送信する。
以上の構成による報酬支払システム10の動作を説明する。図5は、報酬支払システム10の動作を示すシーケンス図である。本明細書のシーケンス図では、説明の簡明化のために企業Bの装置(企業業務装置14b、個人番号管理装置16b)の記載を省略しているが、実際には企業Bの装置も企業Aの装置(企業業務装置14a、個人番号管理装置16a)と同様の処理を実行する。前提として、個人は企業Aと企業Bそれぞれとの間で、所定の役務を提供することと、その報酬を報酬支払システム10を利用して受け取ることを定めた契約を結ぶ。以下、個人を「報酬受取人」とも呼ぶ。
図5のS10~S24は、報酬受取人から報酬支払GW12への利用者登録に関する処理を示す。報酬受取人は、ATM22のメニュー画面で報酬支払サービスの利用者登録を選択し、自身の個人番号カードをATM22へ挿入する。ATM22は、報酬支払サービスの利用者登録が選択されると、個人番号カードから署名用電子証明書のデータを読み込む。そして、選択メニューである利用者登録を示す情報とともに署名用電子証明書のデータを報酬支払GW12へ送信する(S10)。
報酬支払GW12は、報酬支払サービスの利用者登録が選択されたことが通知されると以降の処理を実行する。報酬支払GW12の個人データ取得部61は、署名用電子証明書のデータを取得し、有効性確認部62は、認証サーバ20と連携して署名用電子証明書の有効性を確認する(S12)。ここでは署名用電子証明書が有効と確認されたこととする。報酬支払GW12の個人属性取得部63は、署名用電子証明書に対する既知の開封処理を実行し、署名用電子証明書から報酬受取人の基本4情報、個人番号、署名用シリアル番号を抽出する(S14)。
報酬支払GW12の個人番号登録部64は、少なくとも個人番号を含む報酬受取人の属性情報を個人番号管理装置16aへ送信する(S16)。個人番号管理装置16aは、企業Aが報酬受取人を識別するためのIDである企業A支払先番号を採番し、報酬受取人の個人番号と企業A支払先番号とを対応付けて記録する(S18)。個人番号管理装置16aは、報酬受取人の企業A支払先番号を報酬支払GW12へ通知する(S20)。図5には不図示の個人番号管理装置16bも同様の処理を実行する。
報酬支払GW12の個人属性取得部63は、S14で取得した署名用シリアル番号をキーとして、報酬受取人の利用者証明用シリアル番号を認証サーバ20から取得する(S22)。後述するように、報酬受取人の利用者証明用シリアル番号は、報酬受取人の個人番号カードからも取得できるが、実施の形態では認証サーバ20から取得することにより、不正な利用者証明用シリアル番号の登録を防止する。報酬支払GW12の個人属性記録部65は、図4で示したように、報酬受取人の基本4情報、署名用シリアル番号、利用者証明用シリアル番号、企業A支払先番号、企業B支払先番号を対応付けて個人属性保持部56へ格納する(S24)。
図5のS30~S36は、報酬受取人に対して報酬の受取が可能であることを通知することに関する処理を示す。企業業務装置14aは、報酬受取人の企業A支払先番号と報酬受取人への金銭支払額を記載した支払予定明細を報酬支払GW12へ送信する(S30)。実際には、複数の個人に対する金銭支払のための複数の支払予定明細を報酬支払GW12へ送信する。企業業務装置14aは、企業Aの当座預金口座に対して支払予定金を預け入れるためのデータを銀行サーバ18へ送信する(S32)。図5には不図示の企業業務装置14bも同様の処理を実行する。なお、当座預金口座に対する支払予定金の預け入れはオフラインで実施されてもよい。
報酬支払GW12の入金確認部67は、定期的に銀行サーバ18へアクセスして、支払予定保持部57に保持された各支払予定明細が示す支払額が企業Aの当座預金口座および企業Bの当座預金口座に入金済か否かを確認する(S34)。図5の例における報酬支払者宛の支払予定明細が示す支払額が入金済であれば、報酬支払GW12の支払可能通知部68は、報酬支払者が保持する情報端末(携帯電話機やスマートフォン等)へ報酬の受取が可能であることを示すメッセージを送信する(S36)。
図6も、報酬支払システム10の動作を示すシーケンス図である。同図は、報酬受取人への報酬の支払に関する処理を示している。報酬受取人は、ATM22のメニュー画面で報酬支払サービスの報酬受取を選択し、自身の個人番号カードをATM22へ挿入する。ATM22は、報酬支払サービスの報酬受取が選択されると、個人番号カードから利用者証明用電子証明書のデータを読み込む。そして、選択メニューである報酬受取を示す情報ととともに利用者証明用電子証明書のデータを報酬支払GW12へ送信する(S40)。
報酬支払GW12は、報酬支払サービスの報酬受取が選択されたことが通知されると以降の処理を実行する。報酬支払GW12の個人データ取得部61は、利用者証明用電子証明書のデータを取得し、有効性確認部62は、認証サーバ20と連携して利用者証明用電子証明書の有効性を確認する(S42)。ここでは利用者証明用電子証明書が有効と確認されたこととする。
報酬支払GW12の個人属性取得部63は、利用者証明用電子証明書の開封処理を実行し、利用者証明用電子証明書から報酬受取人の利用者証明用シリアル番号を取得する。個人属性取得部63は、取得した利用者証明用シリアル番号が個人属性保持部56の個人属性情報に記録済か否かを確認する。すなわち、報酬受取人が報酬支払サービスの利用者として登録済か否かを確認する(S44)。ここでは利用者証明用シリアル番号が登録済とする。
報酬支払GW12の名寄せ処理部70は、個人属性保持部56の個人属性情報において報酬受取人の利用者証明用シリアル番号に対応付けられた報酬受取人の企業A支払先番号と企業B支払先番号を識別する。そして、支払予定保持部57に格納された企業Aの支払予定明細の中から、上記識別した企業A支払先番号に対応付けられた1つ以上の支払予定明細(該当企業A支払予定明細)を識別する。同様に、支払予定保持部57に格納された企業Bの支払予定明細の中から、上記識別した企業B支払先番号に対応付けられた1つ以上の支払予定明細(該当企業B支払予定明細)を識別する(S46)。
報酬支払GW12の明細提示部71は、名寄せ処理部70が識別した該当企業A支払予定明細の中で入金済フラグが設定された明細の支払額合計を示す企業A支払可能明細と、入金済フラグが未設定の明細の支払額合計を示す企業A支払予定明細をATM22へ送信し、ATM22の画面に表示させる。同様に明細提示部71は、名寄せ処理部70が識別した該当企業B支払予定明細の中で入金済フラグが設定された明細の支払額合計を示す企業B支払可能明細と、入金済フラグが未設定の明細の支払額合計を示す企業B支払予定明細をATM22へ送信し、ATM22の画面に表示させる(S48)。
報酬受取人は、企業A支払可能明細が示す支払額(企業Aからの支払可能額)と、企業B支払可能明細書が示す支払額(企業Bからの支払可能額)の受取を要求する操作をATM22へ入力する。ATM22は、企業A支払可能額を指定した現金引出要求と、企業B支払可能額を指定した現金引出要求を報酬支払GW12へ送信する(S50)。報酬支払GW12の支払実行部72は、企業Aの当座預金口座から企業A支払可能額を引き出すことを要求する第1の現金引出要求と、企業Bの当座預金口座から企業B支払可能額を引き出すことを要求する第2の現金引出要求を銀行サーバ18へ送信する(S52)。支払実行部72は、現金引出の対象になった支払予定明細の情報をもとに支払結果明細を生成して支払結果保持部58に格納する。なお、報酬支払GW12が銀行サーバ18へ送信する現金引出要求では、各企業の口座番号と、現金の引き出し場所であるATM22の識別情報が指定されてもよい。
銀行サーバ18は、第1の現金引出要求を受け付けると、企業A支払可能額の出金を指示する所定形式のデータである出金指示をATM22へ送信する。また、第2の現金引出要求を受け付けると、企業B支払可能額の出金を指示する出金指示をATM22へ送信する(S54)。この出金指示は、報酬支払GW12を介してATM22へ転送されてもよい。銀行サーバ18は、企業Aの当座預金口座の残高を、企業A支払可能額(ATM22からの出金額)だけ減じ、また、企業Bの当座預金口座の残高を、企業B支払可能額(ATM22からの出金額)だけ減じる。ATM22は、受け付けた出金指示に応じて、企業A支払可能額と企業B支払可能額を出金する(S56)。
このように、報酬受取人である個人は、報酬支払GW12が提供する報酬支払サービスを利用することで、自身の個人番号カードを使用して、複数の企業から支払われる金銭を一括して受領することができる。また、報酬支払サービスへの利用者登録後、金銭支払の際に個人番号カードから読取られる情報は、個人番号や基本4情報を含む署名用電子証明書でなく、利用者証明用電子証明書であるため、重要な個人情報の漏洩リスクを低減することができる。
図7も、報酬支払システム10の動作を示すシーケンス図である。同図のS60~S68は、報酬支払GW12から企業への支払調書の提供に関する処理を示している。報酬支払GW12の調書作成部73は、支払調書データの作成タイミングに至ったことを検出すると、支払結果保持部58に格納された支払結果明細と、個人属性保持部56に格納された個人属性情報を参照して、報酬受取人の個人番号を含まない支払調書のデータを作成し、支払調書保持部59へ格納する(S60)。調書作成部73は、複数の支払結果明細に対応する複数の支払調書を作成し、各企業向けの支払調書を作成する。
報酬支払GW12の調書提供部74は、支払調書データの提供タイミングに至ったことを検出すると、支払調書保持部59に格納された企業A向けの支払調書のデータを企業A(ここでは個人番号管理装置16a)へ送信する(S62)。図7には不図示だが、調書提供部74は、支払調書保持部59に格納された企業B向けの支払調書のデータを企業B(個人番号管理装置16b)へ送信する。
個人番号管理装置16aは、報酬支払GW12から受信した支払調書データに、図5のS18にて予め登録された報酬受取人の個人番号を付加する(S64)。個人番号管理装置16aは、個人番号を設定済の支払調書データを企業業務装置14aへ送信する(S66)。企業業務装置14aは、個人番号を設定済の支払調書データを不図示の行政機関の装置(例えば税務当局の装置)へ送信することにより、支払調書を行政機関へ提出する(S68)。なお、支払調書を企業Aから行政機関へ提出する処理はオフラインで実施されてもよい。図7には不図示の企業B(企業業務装置14b、個人番号管理装置16b)の処理も企業Aと同様である。
このように実施の形態の報酬支払GW12によると、個人番号の開示先(管理主体)は報酬支払元の企業という前提の下、企業が行政機関へ提出すべき支払調書の作成を支援することができる。企業は報酬支払GW12から提供された支払調書に対して予め登録された個人番号を設定すればよく、支払調書作成のための企業のコストを大幅に抑制することができる。
図7のS70~S82は、報酬支払GW12から報酬受取人への支払調書の提供に関する処理を示している。報酬受取人(ここでは本年度内に企業から報酬を受け取った個人)は、ATM22のメニュー画面で報酬支払サービスの調書作成を選択し、自身の個人番号カードをATM22へ挿入する。ATM22は、報酬支払サービスの調書作成が選択されると、個人番号カードから利用者証明用電子証明書のデータを読み込む。そして、選択メニューである調書作成を示す情報ととともに利用者証明用電子証明書のデータを報酬支払GW12へ送信する(S70)。
報酬支払GW12は、報酬支払サービスの調書作成が選択されたことが通知されると以降の処理を実行する。報酬支払GW12の個人データ取得部61は、利用者証明用電子証明書のデータを取得し、有効性確認部62は、認証サーバ20と連携して利用者証明用電子証明書の有効性を確認する(S72)。ここでは利用者証明用電子証明書が有効と確認されたこととする。報酬支払GW12の個人属性取得部63は、利用者証明用電子証明書の開封処理を実行し、利用者証明用電子証明書から報酬受取人の利用者証明用シリアル番号を取得する。個人属性取得部63は、取得した利用者証明用シリアル番号が個人属性保持部56の個人属性情報に記録済か否かを確認する(S74)。ここでは利用者証明用シリアル番号が登録済とする。
報酬支払GW12の名寄せ処理部70は、個人属性保持部56の個人属性情報において報酬受取人の利用者証明用シリアル番号に対応付けられた報酬受取人の企業A支払先番号と企業B支払先番号を識別する。そして、支払結果保持部58に格納された企業Aの支払結果明細の中から、上記識別した企業A支払先番号に対応付けられた1つ以上の支払結果明細(「該当企業A支払結果明細」と呼ぶ。)を識別する。同様に、支払結果保持部58に格納された企業Bの支払結果明細の中から、上記識別した企業B支払先番号に対応付けられた1つ以上の支払結果明細(「該当企業B支払結果明細」と呼ぶ。)を識別する(S76)。
さらに名寄せ処理部70は、支払調書保持部59に格納された支払調書の中から、S74で取得した報酬受取人の利用者証明用シリアル番号に対応付けられた支払調書(以下「該当支払調書」と呼ぶ。)を識別する(S76)。報酬支払GW12の調書提供部74は、該当企業A支払結果明細、該当企業B支払結果明細(この2つは「前年支払明細」とも言える)、該当支払調書のデータをATM22へ送信して、ATM22の支払調書画面に表示させる(S78)。
報酬受取人が支払調書画面に対して印刷操作を入力すると、ATM22は、前年支払明細と支払調書の印刷要求を報酬支払GW12へ送信する(S80)。報酬支払GW12の調書提供部74は、前年支払明細と支払調書のデータを所定のネットワークプリンタへ送信し、そのネットワークプリンタに前年支払明細と支払調書を印刷させる(S82)。例えば、報酬受取人がコンビニエンスストアに設置されたATM22を操作する場合、同コンビニエンスストアに設置されたネットワークプリンタに印刷させてもよい。またATM22のプリンタ34に印刷させてもよい。報酬受取人は、印刷された支払調書に自己の個人番号を記載して、個人番号記載後の支払調書を税務署等へ提出する。
このように実施の形態の報酬支払GW12によると、報酬受取人である個人が行政機関へ提出すべき支払調書の作成を支援することができる。個人は報酬支払GW12から提供された支払調書に対して自己の個人番号を設定すればよく、支払調書作成のための個人の負担を大幅に軽減することができる。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下変形例を示す。
上記実施の形態では言及していないが、報酬支払GW12は、企業Aと企業Bから取得した支払予定明細の単位で、各企業から個人への金銭支払の有無、言い換えれば、報酬受取人が金銭を受け取ったか否かを管理してもよい。本変形例では、企業Aと企業Bのそれぞれから報酬支払GW12へ送信される支払予定明細に、報酬受取人である個人を示す支払先番号と支払額に加えて、各企業で支払予定明細を一意に特定するための各企業で決定されたIDである明細番号が含まれる。以下、A社からの支払予定明細に対応する明細番号を「企業A明細番号」と呼び、B社からの支払予定明細に対応する明細番号を「企業B明細番号」と呼ぶ。
報酬支払GW12の支払予定取得部66は、企業業務装置14aから支払予定明細を取得すると、その支払予定明細に記載された(もしくは支払予定明細とともに受信した)企業A明細番号を、報酬受取人の企業A支払先番号と対応付けた明細管理情報を個人属性保持部56に格納する。同様に支払予定取得部66は、企業業務装置14bから支払予定明細を取得すると、その支払予定明細に記載された明細番号を、報酬受取人の企業B支払先番号と対応付けた明細管理情報を個人属性保持部56に格納する。本変形例では、個人属性保持部56が、個人属性情報として明細管理情報をさらに保持するが、個人属性保持部56とは別の記憶手段が明細管理情報を独立して保持してもよい。
図8は、個人属性保持部56に保持される明細管理情報の例を示す。本変形例の明細管理情報では、企業A明細番号と企業B明細番号のそれぞれに支払フラグが対応付けて記録される。支払フラグは、支払予定明細が示す支払額が支払済か否かを示す情報であり、図8では「支払済」または「未払い」で示している。支払予定取得部66は、支払フラグの初期値として「未払い」を設定する。
報酬支払GW12の金銭支払部69(支払実行部72)は、報酬受取人に対する上述の金銭支払処理を実行した場合に、金銭支払済の支払予定明細が示す明細番号、言い換えれば、金銭支払済の支払予定明細に基づき作成した支払結果明細が示す明細番号を取得する。そして、報酬支払人の個人属性情報において当該明細番号(企業A明細番号または企業B明細番号)に対応付けられた支払フラグを「支払済」へ更新する。
本変形例の報酬支払GW12の金銭支払部69は、支払管理部をさらに備える。支払管理部は、1週間~1ヶ月等の予め定められた期間、例えば企業Aと企業Bのそれぞれが指定する期間が経過する都度、以下の処理を定期的に実行する。支払管理部は、個人属性保持部56に保持された複数の報酬受取人それぞれの明細管理情報を参照して、企業A向けの支払状況リストを生成し、また企業B向けの支払状況リストを生成する。支払管理部は、企業A向けの支払状況リストを企業業務装置14aへ送信し、企業B向けの支払状況リストを企業業務装置14bへ送信する。
支払管理部は、第1態様の企業A向けの支払状況リストとして、複数の報酬受取人それぞれの企業A支払番号と、企業A明細番号および支払フラグとを対応付けた一覧情報(例えば図8の上段)を生成してもよい。同様に、第1態様の企業B向けの支払状況リストとして、複数の報酬受取人それぞれの企業B支払番号と、企業B明細番号および支払フラグとを対応付けた一覧情報(例えば図8の下段)を生成してもよい。また支払管理部は、第2態様の企業A向けの支払状況リストとして、複数の報酬受取人それぞれの企業A支払番号と、支払フラグが「未払い」である企業A明細番号とを対応付けた一覧情報を生成してもよい。同様に、第2態様の企業B向けの支払状況リストとして、複数の報酬受取人それぞれの企業B支払番号と、支払フラグが「未払い」である企業B明細番号とを対応付けた一覧情報を生成してもよい。
さらにまた支払管理部は、上記第2態様を一層絞り込んだ第3態様の支払状況リストとして、支払フラグが「未払い」で、かつ、支払予定明細に記載された支払日から所定期間が経過した支払予定明細の明細番号を示す一覧情報を生成してもよい。この所定期間は、2週間~1ヶ月等であってもよく、企業Aと企業Bのそれぞれが指定する期間であってもよい。本変形例によると、報酬支払元の企業は、報酬支払先の個人が実際に金銭を受け取ったか否かを容易に把握できる。例えば、報酬の支払日を大幅に過ぎても報酬を受け取らない個人に対して、報酬を受け取るよう促す等の対応が可能になる。
なお、支払予定明細を発行する企業に代わって、報酬支払GW12が明細番号を採番してもよい。例えば、報酬支払GW12の支払予定取得部66は、企業業務装置14aから新たな支払予定明細を取得すると新たな企業A明細番号(明細受付番号とも言える)を採番し、企業業務装置14bから新たな支払予定明細を取得すると新たな企業B明細番号を採番してもよい。報酬支払GW12は、企業業務装置14aから受け付けた支払予定明細のファイル名に対応付けて、新たに採番された企業A明細番号を企業業務装置14aへ通知してもよい。同様に、企業業務装置14bから受け付けた支払予定明細のファイル名に対応付けて、新たに採番された企業B明細番号を企業業務装置14bへ通知してもよい。この構成でも上記変形例と同様の作用、効果を奏する。
上記実施の形態では、報酬受取人が報酬支払GW12へアクセスするための情報端末をATM22としたが、必ずしもATMに限定されない。例えば、図2に示す機能に対応した機能を有するATM以外の情報端末であってもよく、街角やコンビニエンスストア等に設置された公衆が利用可能なキオスク端末であってもよい。また、報酬受取人の自宅等に設置されたPCであってもよい。
報酬受取人が使用する情報端末が現金引出ができない機器(PC等)の場合、報酬受取人は、自身の銀行口座の口座番号を報酬振込先情報として情報端末へ入力し、情報端末は、例えば図6のS50において、報酬振込先の口座番号を報酬支払GW12へ通知してもよい。報酬支払GW12の金銭支払部69は、企業Aおよび企業Bから受け付けた当該報酬受取人への支払予定明細が示す支払額を、企業Aおよび企業Bの当座預金口座から報酬受取人の銀行口座へ振り込むための処理を実行してもよい。
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。