WO2017056571A1

WO2017056571A1 - 弦楽器

Info

Publication number: WO2017056571A1
Application number: PCT/JP2016/067593
Authority: WO
Inventors: 健太石坂; 亮篠田
Original assignee: ヤマハ株式会社
Priority date: 2015-09-30
Filing date: 2016-06-13
Publication date: 2017-04-06
Also published as: JP2017068072A; US20180240441A1; EP3358562A1; CN108140365A; EP3358562A4

Abstract

　エレクトリックギターなどの弦楽器において、演奏に支障をきたすおそれが低く、かつ演奏音の音質を改善することが可能な技術を提供する。本発明の弦楽器は、ヘッドにおける１または複数の位置に錘を固定したことを特徴とする。前記１または複数の位置は、弦の振動に応じた前記ヘッドの振動の腹の位置であるとよい。前記錘を前記ヘッド内に埋め込むとよい。前記錘の形状はブロック状であるとよい。

Description

弦楽器

　この発明は、弦楽器に関する。

　弦楽器の一例であるエレクトリックギターでは、弦を弾いて演奏すると、弦の振動に応じてエレクトリックギター本体も振動する。このエレクトリックギター本体の振動は、弦の振動に影響を及ぼし、それがピックアップで検出されることで放音される音の音質に影響を与える。

"ＦＡＴＦＩＮＧＥＲＴＭ　ＧＵＩＴＡＲ"、［ｏｎｌｉｎｅ］、ＦＥＮＤＥＲ、［２０１５年９月１６日検索］、インターネット＜ＵＲＬ：ｈｔｔｐ：／／ｉｎｔｅｌ．ｆｅｎｄｅｒ．ｃｏｍ／ｅｎ－ＪＰ／ａｃｃｅｓｓｏｒｉｅｓ／ｍｉｓｃｅｌｌａｎｅｏｕｓ／ｆａｔｆｉｎｇｅｒ－ｇｕｉｔａｒ－ｎｉｃｋｅｌ／＞

　非特許文献１には、Ｕ字状に折れ曲がった板状の錘が開示されている。この錘は、Ｕ字の内側においてエレクトリックギターのヘッドの一部を挟み込んで当該ヘッドに取り付けられる。演奏者がこの錘をヘッドにおける好みの位置に取り付けて演奏すると、当該錘が取り付けられていない通常のエレクトリックギターに比べ、エレクトリックギター本体の振動の状態が変わり、演奏音の音質（具体的にはサステイン）が改善される、と非特許文献１に記載されている。

　しかし、エレクトリックギター本体の振動の状態の変化の程度は、当該錘の取り付けられる位置によって異なる。非特許文献１の錘では、当該錘の取り付けられる位置が演奏者に依存する。このため、非特許文献１の錘では、当該錘の取り付け方によってはエレクトリックギター本体の振動の状態を適切に変えることができず、演奏音の音質を改善する効果が得られないこともあり得る。また、非特許文献１の錘は、Ｕ字の内側においてエレクトリックギターのヘッドの一部を挟み込むものであるため、演奏者が演奏中に錘に触れた場合等に錘の位置が移動し、または錘がエレクトリックギター本体から外れて演奏者の演奏に却って支障をきたすおそれがある。

　また、非特許文献１の錘は、重さが約１００ｇもある。エレクトリックギターの演奏者は立って演奏をすることが多いため、ヘッドが１００ｇも重くなると演奏者に負担を与える虞がある。また、ヘッドが１００ｇも重くなると、錘を取り付けていない場合に比べ、ヘッドの位置が下がった演奏姿勢になり易く、演奏性が低下する虞がある。

　この発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、エレクトリックギターなどの弦楽器において、演奏に支障をきたすおそれが低く、かつ演奏音の音質を改善することが可能な技術を提供することを目的とする。

　この発明は、ヘッドにおける１または複数の位置に錘を固定したことを特徴とする弦楽器を提供する。

　この発明の弦楽器では、ヘッドにおける１または複数の位置に錘が固定されているため、当該錘の位置が移動することはない。このため、演奏者による使用態様の影響を受けることを抑制しつつ弦楽器本体の振動の状態を変えることができ、演奏音の音質を改善することができる。また、ヘッドにおける１または複数の位置を、弦の振動に応じたヘッドの振動の腹の位置とすれば、ヘッドの振動の腹の位置に錘を固定することで、固定する錘の重さを非特許文献１の錘の重さほど重くしなくても、弦楽器本体の振動の状態を確実に変えることができ、演奏音の音質を確実に変えることができる。従って、本弦楽器は、演奏に支障をきたすおそれが低く、かつ演奏音の音質を改善することができる。

この発明の一実施形態であるギター１のヘッド１０の構成を示す正面図である。ヘッド１０のＡ－Ａ’線断面図である。図１のギター１とは異なるギター１’のヘッド１０の構成を示す正面図である。ヘッド１０のＢ－Ｂ’線断面図である。図１のギター１本体の振動の周波数特性および錘４０が取り付けられていない通常のギター本体の振動の周波数特性を示すグラフである。

　以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
　＜実施形態＞
　図１は、この発明の一実施形態によるエレクトリックギター（以下、単にギターという）１のヘッド１０の構成を示す正面図である。ヘッド１０には、６個のペグ（Ｍａｃｈｉｎｅ　Ｈｅａｄ　ともいう）３２が設けられている。図１では、ペグ３２のうちのペグポスト部分のみを例示している。各ペグ３２は、ヘッド１０の正面を見たときの当該ヘッド１０の左端（低音弦側端）付近に連なるように配置されている。各ペグ３２には、弦３４の一端付近が巻きつけられる。弦３４の他端は、ボディ（図示略）に保持され、弦３４は、ネック２０に沿って張られる。このように、ヘッド１０は、各弦３４の一端を保持する役割を果たす。

　ヘッド１０には錘４０が固定されている（図１では、ヘッド１０における１つの位置に錘４０が固定されている）。具体的には、ヘッド１０には、錘４０が埋め込まれている。図２は、ヘッド１０のＡ－Ａ’線断面図である。図２に示すように、ヘッド１０は、所定の厚さＴを有する板状をなしており、ヘッド本体１２に化粧板１４を張り合わせた構成となっている。錘４０は、金属をブロック状に形成した部材である。図１および図２の例では、錘４０は、ヘッド１０の厚さＴよりも長さが小さい円柱形状をなしている。具体的には、錘４０は、ヘッド１０の厚さ方向と軸が平行となるよう配設されており、この軸の長さがヘッド１０の厚さＴよりも小さい。ヘッド本体１２における化粧板１４と接する面側には、錘４０と同程度の寸法の穴１２２が設けられており、錘４０は、その穴１２２に収納されている。錘４０は、当該錘４０の回転対称軸がヘッド１０の板面に垂直な姿勢で穴１２２に収納されている。錘４０は、化粧板１４によって覆い隠されており、ヘッド１０の表面に露出していない。具体的には、錘４０の表面はヘッド本体１２の表面と面一状であり、この錘４０の表面及びヘッド本体１２の表面に当接するように化粧板１４が配設されている。錘４０の直径は、Ａ－Ａ´線断面におけるヘッド１０の幅よりも小さくなっている。例えば、錘４０の直径は、１ｃｍ程度である。錘４０におけるヘッド１０の正面への投影断面積は、ヘッド１０の正面の面積に対して十分に小さくなっている。

　ヘッド１０は、各弦３４の振動に応じて振動する。ヘッド１０の振動は、複数の振動モードの重ね合わせで表現される。各振動モードにおいて振動の腹となる位置は、振動レベルが他の位置に比べて高くなっている。

　錘４０は、ヘッド１０における予め定められた位置、具体的には、錘４０が無いとした場合のヘッドにおいて、振動レベルが当該ヘッドの他の位置に比べて高い位置に埋め込まれている（つまり、錘４０が固定された位置は、弦３４の振動に応じたヘッド１０の振動の腹の位置である）。このような振動レベルが高い位置は、振動の腹となる位置およびその近傍（以下、単に振動の腹という。つまり、本発明において「振動の腹」とは、振動の腹となる位置およびその近傍を意味する。）であり、振動モードによって異なる。このため、錘４０は、音質を改善したい音を発生させる振動モードにおける腹の位置に埋め込まれる。この錘４０の位置は、ヘッド１０の曲げ振動またはねじり振動の振動モードの腹の位置であることが好ましい。さらに、この錘４０の位置は、ヘッド１０の曲げ振動またはねじり振動の一次モードの腹の位置であることがより好ましい。また、このような振動モードは、ヘッドの形状や大きさなどによっても異なる。従って、錘４０を埋め込む位置は、ヘッドの型式毎に、振動モードやヘッドの形状やヘッドの大きさなどを考慮した振動の測定やシミュレーションを行って決定される。図１の例では、２弦を保持しているペグ３２（図１における上から２番目のペグ３２）の近傍に錘４０が埋め込まれているが、これは、振動レベルが高い位置の一例であり、錘４０が埋め込まれる位置はこの位置に限らない。

　図１の例では、ヘッド１０に１個の錘４０が埋め込まれている。しかし、ヘッド１０に埋め込まれる錘４０の個数は、１個に限らない。つまり、ギター１は、ヘッド１０の複数の位置に錘４０を埋め込むための穴１２２を有し、この複数の穴１２２に錘４０が埋め込まれていてもよい。上述の振動レベルが高い位置は、複数箇所あることが想定される。このような場合には、当該振動レベルが高い各位置にそれぞれ穴１２２を設け、これらの穴１２２に錘４０を埋め込んでも良い。また、振動レベルが高い各位置の全てに錘４０を埋め込んでも良いし、振動レベルが高い複数の位置のうちのギター１の設計者（提供者）が決定した１または複数の位置に錘４０を埋め込んでも良い。

　図３及び図４に複数の錘４０がヘッド１０に埋め込まれたギター１’を示す。図３では、図１と同様の位置に錘４０が埋め込まれていることに加え、錘４０とは異なるヘッド１０の振動の腹の位置に錘４０’が埋め込まれている。具体的には、錘４０’は図１の錘４０と同様の材料によって錘４０と同様の形状に形成されている。また、ヘッド本体１２における化粧板１４と接する面側には、錘４０と同程度の穴１２２に加え、図４に示すように錘４０’と同程度の穴１２２’が設けられており、錘４０，４０’はそれらの穴１２２，１２２’に収納されている。なお、図３及び図４では、２つの錘４０，４０’が同様の材料によって同様の形状に形成される場合を説明したが、２つの錘４０，４０’の材料及び形状は異なっていてもよい。また、図３及び図４は、２つの錘４０，４０’の埋め込む場合の一例であって、錘４０，４０’の埋め込み位置は図３及び図４の位置に限定されるものではない。

　錘４０，４０’の重さは、１個あたり５～５０ｇであり、典型的には１個あたり１０ｇ程度である。ヘッド１０の複数箇所に錘４０，４０’を埋め込む場合には、それら複数の錘４０，４０’の重さの合計を１００ｇ未満（より好ましくは５０ｇ以下）にするのが好ましい。

　図５の実線Ｆ１は、ヘッド１０に１つの錘４０が埋め込まれた図１に示す本実施形態のギター１本体の振動の周波数特性を示している。また、図５の破線Ｆ２は、図１のヘッド１０から錘４０を取り除いた通常のギター本体の振動の周波数特性を示している。図５に示すように、実線Ｆ１の１００Ｈｚ付近のピークは、破線Ｆ２の１００Ｈｚ付近のピークに比べて、低周波数側にシフトしている。また、実線Ｆ１の１００Ｈｚ付近のピークの大きさと破線Ｆ２の１００Ｈｚ付近のピークの大きさは、ほぼ同じになっている。このように、ヘッド１０における振動レベルが他の位置に比べて高い位置に錘４０を埋め込んだギター１では、錘が取り付けられていない通常のギター本体の振動の周波数特性に対してギター１本体の振動の周波数特性が変化している。この結果は、振動する物体の重さが重くなると振動の周波数が低下する現象に一致しており、設計通りの結果となっている。このため、ギター１の演奏音の音質は、錘が取り付けられていない通常のギターの演奏音の音質から変化して改善される。

　以上のように、本実施形態のギター１，１’は、弦３４の振動に応じたヘッド１０の振動の腹の位置に錘４０，４０’が埋め込まれている。これにより、当該錘４０，４０’の位置が移動することはない。このため、ギター１，１’では、演奏者による使用態様の影響を受けることなく、通常のギターに対してギター本体の振動の状態を変えることができ、演奏音の音質を改善することができる。また、ヘッド１０の振動の腹の位置は、通常、ギター１の設計者（提供者）しか知り得ない情報である。ギター１，１’では、ヘッド１０の振動の腹の位置に的確に錘４０，４０’を固定することで、演奏音の音質を的確に改善することができる。また、ギター１，１’では、ヘッド１０の振動の腹の位置に的確に錘を固定することで、錘４０，４０’の重さを非特許文献１の錘の重さほど重くしなくても、ギター１，１’本体の振動の状態を適切に変えることができる。具体的には、非特許文献１の錘の重さが約１００ｇであるのに対し、ギター１，１’の錘４０，４０’は１０ｇ程度である。このため、ギター１，１’では、非特許文献１の錘を取り付けたギターに比べて、演奏者に負担を与える虞が少なく、ヘッド１０が下がった演奏姿勢になる虞も少ない。従って、ギター１，１’では、演奏に支障をきたすことなく演奏音の音質を改善することができる。

　また、ギター１，１’では、錘４０，４０’の寸法がヘッド１０の寸法に比べて十分に小さく、長さの短い円柱形状の錘４０，４０’の回転対称軸がヘッド１０の板面に垂直になっている。このため、ギター１，１’では、ヘッド１０に対して錘４０，４０’を質点とみなすことができ、錘４０，４０’がヘッド１０全体の剛性に影響を与えることが殆どなく、演奏音の音質が劣化し難い。これに対して、例えば、長さの長い棒状の錘を当該錘の長手がヘッドの板面にほぼ水平となるようにヘッドに埋め込んだとした場合や、板状の錘を当該板面がヘッドの板面にほぼ水平となるようにヘッドに埋め込んだとした場合、回転対称軸がヘッドの板面に垂直になるように埋め込んだ場合に比べ、ヘッド全体の剛性が変わる虞がある。ヘッド全体の剛性が変わると、演奏音の音質が劣化する虞がある。従って、錘４０の形状は、棒状や板状よりも、長さの短い円柱形状や球状や立方体のようなブロック状であることが好ましい。

　また、ギター１，１’では、錘４０，４０’がヘッド１０内に埋め込まれているため、ヘッドを挟み込むように取り付ける非特許文献１の錘に比べ、振動の中心に近い位置に錘４０，４０’が配置される。このため、錘４０，４０’をヘッド１０内の質点とみなすことができ、ギター１，１’では、非特許文献１の錘を取り付けたギターに比べ、ギター１本体の振動の状態を的確に制御することができる。

　また、ギター１、１’では、錘４０，４０’がヘッド１０内に埋め込まれているため、演奏者が錘４０，４０’に触れることはない。このため、ギター１，１’では、演奏やギター１，１’の収納を妨げることもない。

　また、ギター１，１’では、錘４０，４０’がヘッド１０の表面に露出していないため、ギター１，１’の美観が損なわれることはない。

　＜他の実施形態＞
　以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。

　（１）前記実施形態では、ギター１，１’の錘４０，４０’は、ヘッド１０の穴１２２に収容されて化粧板１４によって覆い隠されることでヘッド１０内に埋め込まれていた。しかし、錘４０，４０’をヘッド１０内に埋め込む具体的な態様は、この態様に限らない。また、見た目を気にしなければ、錘４０，４０’は、ヘッド１０の表面に露出していても良いし、ヘッド１０内に埋め込まれつつヘッド１０の表面に露出していても良い。また、錘４０，４０’は、ヘッド１０内に埋め込まれる態様に限らず、少なくともヘッド１０における１または複数の位置に固定されていれば良い。例えば、錘４０，４０’は、ヘッド１０の表面における１または複数の位置に接着剤などで固定されても良い。錘が固定されていれば、演奏者の使用態様に影響を受けることなく演奏音の音質を改善することができるからである。

　（２）錘４０，４０’の形状は、ヘッド１０の剛性に影響を与え難い形状であれば良く、長さの短い円柱形状に限らない。例えば、錘４０，４０’の形状は球状や直方体や立方体であっても良い。

　（３）上記実施形態では、エレクトリックギターのヘッド１０に錘４０，４０’を埋め込んでいた。しかし、エレクトリックギターに限らず、例えば、エレクトリックベースのヘッドに錘を埋め込んでも良い。すなわち、弦の一端を保持するヘッドを有する弦楽器であれば上記実施形態の技術的特徴を付加することが可能である。特に、エレクトリックギターのようなボディが中実（ｓｏｌｉｄ）な構造の弦楽器に上記実施形態の技術的特徴を付加する態様が好ましい。ボディが中実な構造の弦楽器では、弦楽器本体の振動におけるヘッドの影響が大きいからである。また、アコースティックギターのようなボディが中空な構造の弦楽器に上記実施形態の技術的特徴を付加することも可能である。しかし、ボディが中空な構造の弦楽器では、ボディが中実な構造の弦楽器に比べ、上記実施形態の技術的特徴の効果による利益が得られ難い。ボディが中空な構造の弦楽器では、ヘッドの振動よりもボディにおける共鳴の方が放音される音の音質に影響を与え易いからである。

　１，１’…ギター、１０…ヘッド、１２…ヘッド本体、１４…化粧板、２０…ネック、３２…ペグ、３４…弦、４０，４０’…錘、１２２，１２２’…穴。

Claims

　ヘッドにおける１または複数の位置に錘を固定したことを特徴とする弦楽器。
　前記１または複数の位置は、
　弦の振動に応じた前記ヘッドの振動の腹の位置であることを特徴とする請求項１に記載の弦楽器。
　前記錘を前記ヘッド内に埋め込んだことを特徴とする請求項１または２に記載の弦楽器。
　前記錘の形状はブロック状であることを特徴とする請求項１から３のいずれか１の請求項に記載の弦楽器。
　１または複数の位置に錘を埋め込むための穴が設けられたヘッドを有することを特徴とする弦楽器。