WO2016043299A1 - 脳血管疾患の発症危険度予測システム - Google Patents

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Abstract

 疾病発症の危険度の予測を生体情報より得ようとする試みは従来からあったが、実用的には常時連続した生体情報取得が求められるが困難であり、また取得した生体情報のみに基づいた発症危険度変化予測の精度は上がらない。 小型の脈波情報取得素子を被測定者に装着し常時連続取得し、この常時連続取得した脈波情報に基づいて血圧、脈波波形の変動から脳血管疾患の発症危険度を予測する。

Description

脳血管疾患の発症危険度予測システム
 本発明は、特定の疾病発症の危険度を予測し、また発症危険度の変化を予測して警報を行うシステムに関するものである。
 従来、脳血管疾患のような重篤な疾病の発症を予防する目的で血圧や心拍数などの生体情報を断続的に医療機関受診時以外にも測定することが推奨されてきた。特に高血圧は多くの疾病の発生要因になることから注目されてきた。
 このような生体情報の中長期的な変動に関しては、疾病発症の危険度が低い者に対しては健康診断等で、年に数回程度の血圧測定や心電図測定などで把握している状況である。このような目的の生体情報測定は、簡便なものであり、また、一時的な血圧状態を測定するものであった。
 しかし、このような一時的な血圧状態の測定は、その時点の生体情報がいわば標準的な値とどれだけ離れているかを基準として発症の危険性や健康状態を判断するものであり、その測定対象である被測定者自身の生体情報の変動を継続的に観測して疾病発症の危険度を判断するものとはいえなかった。
 加齢や循環器機能の悪化が進行すると、血圧などの生体情報の測定も頻度を上げて行う必要がある。特に血管に対する影響が大きいため、高齢者であれば血圧値の変化の把握が重要となってくる。このため、頻度高く血圧値を測定するような測定技術が必要となる。
 血圧測定においては、自身の状態を測定する測定者(被測定者でもある)の負担を軽減する必要があり、このような目的で、血圧測定における測定者の負担を軽減する技術が、特許文献1や特許文献2に開示されている。
 しかし、これらの開示された技術を用いたとしても、測定者は一日数回の血圧測定の毎回についてその必要性を認識した上で意識して行わなければならないという心理的負担は軽減できない。
 このため、出願人は、特願2014-153171号として、小型軽量で薄膜可撓な生体情報読取装置を提案した。この生体情報読取装置は、被測定者に貼付けるなどして常時連続した生体情報の読取りが可能である。このような生体情報読取装置であれば、血圧の常時連続測定が可能であるので、被測定者は測定することの束縛からは解放される。
特開2011-200262号公報 特開平01-214339号公報
(生体情報知見問題)
 測定者が心理的負担なく常時連続した生体情報測定が可能となっても更に課題が存在する。血圧を例にとった場合、高血圧の症状が進行して血圧値の測定を高頻度で行ったとして、毎回測定された血圧値の時系列的な変動が種々の疾病に対しどのように作用するかという点について、測定者に必ずしも知見があるとは限らない。むしろ医師などの専門家の範疇であり、一般人は血圧値の変動を知ったとしても疾病発症の喫緊の危険度上昇を予測することは困難である。
(個人差問題)
 また、被測定者の個人の身体状態も発症危険度の変化に影響する。
 例えば、被測定者の身体的特徴(年齢・性別・身長・体重など)や医学的特徴(既往症の有無・先天性疾患の有無など)も重要な要素となる。
 これらの要素は、発症危険度に影響を与えるので、同じ環境下において類似の生体情報が取得されてもその評価は、測定対象となった被測定者ごとに異なる。
(検査漏れ問題)
 更には、従来の検査は血圧測定であれ心電測定であれ一日のうちの特定の短時間においてのみ行われるものであるため、各種疾病の諸症状の極早期の兆候を見逃すことが多かった。
 例えば、心電の場合、不整脈の類が不規則に極希に発生するような初期症状であると、年に一度の健康診断の類ではほぼ確実に発見は不可能である。特に若者については、極端に健康意識が高い者や遺伝上の不安を抱えている者以外は長時間にわたっての心電測定を希望することは一般的で無いので、仮に長時間連続して測定していれば発見できたかも知れない疾病の予兆が、検査実施のタイミングで発見できないという重大な問題も存在している。なお、いわゆる仮面高血圧もこの問題に属する。
(回避行動実感困難問題)
 加えて、疾病の多くは重篤な状態にまで進行しないと自覚症状が無く、患者は主治医などから疾病に対する禁忌や特定の状況に対する注意などの情報を得るものの、それらについて留意したことに対する効果を直接的に実感できないため留意を継続する動機付けにならず、結果として同じ疾病を繰返し発症するなどして医療資源を浪費するなどの問題もあった。
 具体的には、患者の疾病発症危険度およびその変化が長期的な視点においてどの程度であるかという概観の把握が困難である点と、個々の回避行動(高血圧の場合には「急に過激な運動をしない」「急に寒い環境に入らない」など)をとった際にその回避行動によって発症危険度の変化がどの程度低減されるかを把握するのが困難である点と、が挙げられる。
 そこで上述の問題を解決すべく本発明が成された。
 すなわち、本発明は、このような状況に鑑み、常時連続して生体情報、特に脈波情報を連続して取得し、連続して取得した脈波情報から血圧変動や脈波波形の変動、たとえば不整脈の情報を得て、その変動に基づいて疾病、特に脳血管疾患発症の危険度を予測しようとするものである。
 本発明は、被測定者の生体情報として脈波情報を連続して取得する生体情報取得部と、前記生体情報取得部が取得した脈波情報を記憶する取得情報記憶部と、前記記憶した脈波情報に基づいて前記被測定者における脳血管疾患の発症危険度の予測を行う疾病発症危険度予測部と、前記疾病発症危険度予測部の予測に基づいて発症危険度の警報を出力する警報出力部とを具備し、前記疾病発症危険度予測部は、前記連続して取得した脈波情報に基づく血圧および脈波波形の変動に基づいて脳血管疾患の発症危険度を予測することを特徴とする。
 なお、前記発症危険度の予測は、得られた血圧および脈波波形の変動があらかじめ設定された正常範囲を超えたか否かを判断するものであり、正常範囲を超えたことにより警報を出力することができる。
 また、前記血圧および脈波波形の変動が正常範囲を超えたか否かの判断は、得られた血圧および脈波波形の変動が、正常範囲であるか異常範囲であるかの判断を行う統計学上の判断手法を用いることができる。
 さらに、前記血圧および脈波波形から得られる脈拍数との相関関係をもとに、被測定者から得られた血圧値と脈拍数が相関範囲からを大きく外れる場合に発症危険度が高いと判断することができる。
 また、被測定者の活動情報、身体情報、疾病情報ならびに環境情報の一つまたは複数を取得しておき、前記発症危険予測部は、前記被測定者の活動情報、身体情報、疾病情報ならびに環境情報のすべての情報または任意に選択された情報と、前記取得した脈波情報とに基づいて、脳血管疾患の発症危険度を予測することができる。
 なお、予測する前記脳血管疾患は、虚血性脳血管障害、出血性脳血管障害とすることができる。
 本発明により、常時連続して取得する脈波情報に基づいて、血圧や脈波波形の変動の情報を得て、これに基づいて、脳血管疾患発症の危険度を予測し、危険度の高い場合には、これを警報として知らせることができる。
 これにより、上述の生体情報知見問題・個人差問題・検査漏れ問題・回避行動実感困難問題等も解決できる。
本発明の利用形態の一例を示す図である。 本発明で扱う脈波波形について説明する図である。 本発明において脈波波形を読み取る手順を説明する図である。 外気温変化と脈波波形の関係を示す図である。 脈波波形の揺らぎを示す図である。 本発明の利用形態の一例を示すブロック図である。 心拍間隔時間をヒストグラム化したものであり、(a)は健常者、(b)は不整脈のある者のデータである。 図7のデータを正規化したものである。 図7の不整脈のある者のデータにスミルノフ-グラッブス検定を適用した例を説明する図である。 運動時の血圧と心拍数の相関を示す例である。 運動時の血圧と心拍数の相関を示す別例である。 脈拍と血圧のマハラノビス距離による検定を示す図である。 発症危険度の算出概念の式を示す図である。 疾病の月毎死亡者数を示す図である。 年齢別の脳血管疾患死亡者数を示す図である。 年齢と動脈硬化度の相関を示す図である。 環境温度変化に対する血圧・脈拍の変化を示す図である。 警報出力のアルゴリズム例を示す図である。 使用する生体情報の優先度の例を示す図である。 長野県松本市の気温・気圧の変化の例を示す図である。 図20の気温・気圧に基いた発症危険度の例を示す図である。 脈波波形の特徴となる点を説明する図である。 心電図での不整脈の一例を示す図である。 R―R間隔のヒストグラムの一例を示す図である。 虚血性脳血管疾患の警報出力アルゴリズムの一例を示す図である。 ローレンツプロットの一例を示す図である。 図26とは異なるR―R間隔に基づくヒストグラムおよびローレンツプロットを示す図である。 図27とは異なるR-R間隔に基づくヒストグラムおよびローレンツプロットを示す図である。 踏台昇降運動の継続時間と脈拍の変化の一例を示す図である。
 以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
(第一の実施の形態)
 本発明の実施の形態に係るシステムの概要について、図1~図6を参照しながら説明する。
 生体情報取得部と疾病発症危険度予測部により構成される本発明の脳血管疾患の発症危険度予測システムは、図1に示すように、例えば橈骨動脈近傍のように被測定者(測定者自身)の血管の脈動取得に適した部位に取り付けられ、被測定者の生体測定情報である血管脈動波形を生体情報取得部にて取得する。特に出血性脳血管障害を対象とする場合には浅側頭動脈や顔面動脈の様な頭部血管の近傍が血管の脈動取得箇所として好適である。
 なお、この血管脈動波形のことを脈波波形と表記する。
 生体情報取得部は、投光器と受光器を有する。
 なお、ここで用いた投光器と受光器は、血管脈動情報を取得する代表的な一手段であり、圧電素子・マイク・圧力/荷重センサー・生体インピーダンスセンサーによっても同等の情報を取得することが可能である。
 図1に示す生体情報取得部にて得られる脈波波形の例を図2に示す。ここに示している2つの波形(上下)は、同一人物のそれぞれ異なる状況で取得したものである。
 図2に示した上下2つの波形が異なる様に、同一対象者より取得された血管脈動情報であっても、心身の状況に応じた体内循環器系の活動により時々刻々と変化している。
 また、図2に示した脈波の一周期の最初の立ち上がり時間と血圧値に相関があることや、呼吸状態やマイヤー波により脈拍間隔(=脈波周期)に変化が生じることは広く知られており、血管脈動情報の処理により多くの生体情報を得ることが可能である。
 図3は血管脈動情報の処理フロー例である。
 近赤外線を発するLEDより構成された投光器より出射した(近赤外)光は血管にて反射し、フォトダイオードより構成された受光器にてその反射光を検出し、更にIV変換回路にて電圧信号に変換する。
 次に、例えば特開平10-295657号公報に開示されているような微分回路を用いて速度脈波に変換することで脈波立ち上がり時間と脈拍間隔時間の取得を容易としている。
 微分回路より出力される速度脈波をコンパレーターにて二値化し、その二値化信号を所定のクロックにて動作するカウンタの割り込み入力部に入力する。
 その結果、割り込みが発生するまでの間隔をクロックのカウント値として取得する。結果、脈波立ち上がり時間と脈拍間隔時間を取得することが可能となる。
 図4は被測定者に本システムを取り付け、室温(25℃)環境から低温(5℃)環境へ移動した際の脈波立ち上がり時間と脈拍間隔時間を連続モニタリングした結果である。
 低温時の血液循環器系の反応は、血圧の上昇と心拍数の低下が主なものであり、図4の結果でも脈波立ち上がり時間の短縮(血圧上昇)と脈拍間隔時間の延長(心拍≒脈拍の低下)を読み取ることが可能である。
 図5の上部は、脈波波形より得られる脈の周期時間の概念を示すものである。横軸は時間を単位にしている。連続する脈波の周期をT1~Tnとして考え、図5の下部にあるように、脈動毎に周期時間がどのように変動したかを周波数解析してゆらぎを求める。このゆらぎが自律神経の活性度合を示す。
 図6は本システムの概略を示すブロック図である。
 センサー1~NはN個のセンサーを表す。このセンサーは具体的には生体情報取得部や環境情報取得部のことである。Nは1でも2以上でも良い。センサーが取得した信号や情報はアナログ部でA/D(アナログ・ディジタル)変換されてディジタルの数値となる。
 このディジタル値を演算部が演算したり、記憶部に記憶したり、演算結果に基づいて警報の必要がある場合には危険通知部を通じて警報を発する。
 情報入力部は、本システム上に存在する入力装置であり、直接的に入力操作を行うためのものである。具体的にはLEDやLCDなどの入力情報確認手段を有したキーボードやマウスやタッチスクリーンなどである。
 無線通信部は、本システムの演算部が行った判断の結果を外部へ通知することを主な目的としている。危険通知部が主に測定者に対しての警報を発するのに対し、無線通信部はセンサーで取得したデータや演算部が行った判断の結果を外部へ転送し、更なるサービスの材料とする為のものである。
 例えば、被測定者の生体情報を長期間連続して測定する場合にはシステム内の記憶部では容量が不足する場合があるので、それを補う為に外部に転送するような利用方法が可能である。
 また、演算部が行った判断に基づいて発せられる警報を遠隔地にある医療機関や親族や地域自治体(民生委員など)や行きつけの介護事業者などに転送することも可能である。
 ここで、この実施の形態で実行する脳血管疾患の発症危険度予測を説明する。
 脳血管疾患である脳卒中は、虚血性脳血管障害と出血性脳血管障害とに大きく分けられる。これらの脳卒中の発症には、血圧の変動と脈拍間隔の変動、特に不整脈の発生が大きく寄与しているとされている。
 不整脈は主に心房細動によって生じている。これにより心臓内に血液が滞留し、血液凝固因子が活性化されることで凝固し血栓が生じやすくなる。加えて、血管のプラークが不整脈の発生を契機に血管内を移動する。これらが脳へ移動して脳血管を梗塞すると考えられている。
 また、出血性脳血管障害では、急激な血圧上昇が大きく寄与しているとされている。
 このため、血圧の変動、特に血圧上昇と、不整脈の発生とを検知し、被測定者の平常状態の値からどの程度かけ離れたかによって、発症の危険度を推測することができる。
 本実施の形態では、脈波を連続して取得しているので、短期的に変動する要因、中期的に変動する要因、長期的に変動する要因に分けて、脈波の変化を判断することが可能である。このため、たとえば血圧については、起床から食事等の日中の活動や就寝時までの生活による血圧変動を考慮することで、疾病発症を引き起こす危険性のある血圧上昇を見いだすことができる。さらに、通常は発生しない不整脈の発生の頻度を考慮することで、脳血管疾病の発症の危険度が上昇したことを判断することが可能である。
 次に、脈波の時間間隔、すなわち心拍間隔のデータから不整脈発生を検出する判断手法の例を説明する。
 図7は、心拍間隔のデータをヒストグラムで表したもので、図7(a)は、健常者の場合、図7(b)は、不整脈のある者である。ここで、図7(b)の矢印が示す部分(約0.94秒)が不整脈として検出すべき対象を示している。図8は、図7の(a)、(b)の値を正規化した上で度数分布を重ねて表示したものである。
 図9は、上述の図8の不整脈のある者のデータをスミルノフ-グラッブス検定を行い、矢印のデータ(約0.94秒)が異常値であるかの判断を行った説明で、矢印の部分、すなわちZi=(χi-μ)/σで検定すると、平均値は0.704、標準偏差は0.058、最大値は0.939、最大値のZiは、4.080、グラッブス有意点(t)は2.957で、t<Ziより、最大値Zi(4.080 0.94秒に該当)は、異常値として判定でき、連続して測定している脈波から不整脈を検出することが可能である。
 また、血圧と心拍数とには相関のあることが知られている。図10、11は、運動時の最大血圧と心拍数の相関を図示したもので、図10は32才男性の例、図11は9才男性の例を示すものである(大阪教育大学紀要 第23巻 第3部門 昭和49年)。この血圧と心拍数との相関から、被測定者について連続して血圧(脈波波形から推定)および心拍数(脈波波形の周期から算出)を紐付けして記録しておくことで、被測定者個人の血圧と脈波数の相関情報が得られることになる。
 この紐付け記録のサンプリングを数多くしておき、「脈波波形から推定される血圧値」と「脈拍数相関から推定される血圧値」とを比較することにより、剥離しているかを確認できるようになる。もし、大きく剥離した場合には、「被測定者が過去にサンプル取得とは、異なった状態に陥っている」状態と判断できる。
 この「血圧と脈拍数の紐付け記録」を用いて、「特定の標本」と「それ以外の標本によって構成される集団」とのマハラノビス距離を求めることができ、図12に示すようにマハラノビス距離について、外れ値検定用の閾値を設定して、特定の標本が異常かどうか、また、その異常の度合いを検出できる。これにより、被測定者に血圧について異常が生じたことを検出できる。
 このように、血圧、不整脈について、取得した脈波から、被測定者の血圧が正常範囲から大きく外れ、また異常な不整脈が発生したことを検出できるので、この状態をもとに、血圧および脈拍について、正常状態から異常状態になり、脳血管疾患の発症危険性が高まったことを判定できる。
 不整脈についても、被測定者個人の発生頻度の情報があるため、個々の被測定者の不整脈発生頻度の情報に基づいて、正常範囲の不整脈の発生か、それとも正常範囲を外れた不整脈の発生かの判断を行うことが可能である。これにより、血圧、脈拍(心拍)の双方のデータに基づく、脳血管疾病の発生の危険度が高くなったこと、すなわち、危険度が変化したことを判断できる。
 この場合、血圧値や脈拍数が高すぎたり低すぎたりするという事象の判断ではなく、連続して取得されている血圧、脈拍数の変動から、その変動が通常の相関から逸脱しているかを判断するもので、値の高低を判断するものではない。
 測定値が正常範囲を外れたか否かの判断手法としては、上述のマハラノビス距離による判断の他、統計学的な検定方法等を用いることにより判断できる。
 本願では、常時連続して脈波を測定しているため、断続的に測定した血圧や心電の情報とは異なり、時間的に変化する血圧や脈拍の変化のうち、定常的な血圧や脈拍変化ではない異常な血圧の上昇、急激な不整脈の発生から疾患発症の危険を予測できる。
 ここで、脈波波形という用語の解釈について説明する。
 後に詳述するが、図22では脈波波形の形状の特徴を説明している。
一般に健常者の脈波波形はこの様な形状をしており、「Percussion wave」「Tidal wave」「Dicrotic wave」の各頂点とゼロクロス点の様な特徴点の相互の相対的位置関係によって脈波波形は特徴付けられる。よって、脈波波形が変動すると、前述の相対的位置関係が変化する。このため脈波波形の相対的位置関係を求めることで脈波波形の変動を把握することが可能となる。
 しかし、本願における脈波波形という用語には、上述のような一般的な波形の概念以外も含まれる。
 ミクロに属するものとして、例えば、脈波1波の波形に対してFFT(高速フーリエ変換)を施して周波数特性を求め、その特性を波形の把握に用いることも可能であるし、また、標準的な脈波波形データを定めておき、このデータとの相関値を求めて同様に波形の把握に用いることも可能である。脈波の時間幅や振幅も同様である。
 マクロに属するものとして、例えば、連続する脈波波形の相互関係に基づくもの(脈波周期・ローレンツプロット等)や、一定の期間に含まれる脈波波形に基づくもの(脈拍数・脈波周期ゆらぎ等)が挙げられる。
 複数の脈波が含まれる区間を対象として周波数特性を求めることにより、該複数の脈波波形や周期がスペクトラムとして明確となり、これをウォーターフォールで観察すると時系列で変化を把握しやすいのは勿論である。また、装着者個人から取得して蓄積したデータに基づいた統計データや特定の集団の統計データに基づいて脈波波形を評価するようにすることで、波形の変化が発症危険度予測に精度よく影響するようにすることも可能となる。
(第二の実施の形態)
 ここでは発症危険度の変化の予測について説明する。
 図13の式に示すように、危険度は医療情報・身体情報・生体情報・環境情報をパラメーターとする関数である。パラメーター相互の作用は元来複雑である。本実施例では説明を明瞭とする目的で関数式を簡略化しているが、実際の危険度変化予測はこの式に限定されない。
 ここで改めて生体情報・環境情報・身体情報・医療情報について説明する。
 生体情報とは、血圧や1分当りの脈拍のような測定者の身体を起源とするものである。常に変動するので、正確な測定の為には高頻度あるいは連続して測定する必要がある。
 また、直接的に得られる生体情報を元にして推測可能なものも生体情報に含む。
 これらを総合して例示すると、縮小期血圧・拡張期血圧・自律神経活性度・心拍数・脈拍数・呼吸数・呼吸リズム・体位・活動状態などが挙げられる。
 縮小期血圧および拡張期血圧は、血圧変動に基づく血管への悪影響を把握する目的で重要であり、特に硬化した動脈や血管狭窄部や動脈瘤の破裂などのリスク上昇要因として用いられる。
 自律神経活性度は、交感神経活性により血管収縮と心拍数の上昇を把握する目的で重要である。血圧上昇要因として交感神経活性時には各種疾病の発症危険度が上昇する。
 心拍数および脈拍数は、活動状況の判断指標にもなる。
 心拍間隔及び脈拍間隔は、心房細動などに起因する不整脈を把握する目的で重要である。拍間隔が長く血液が滞留した場合、血栓が発生し虚血性疾患発症の危険度が上昇する。
 呼吸数および呼吸リズムは、脳卒中の場合の部位を特定する上で重要である。また、活動状況の判断指標にもなる。
 なお、脳卒中の障害部位と呼吸リズムのタイプとの関連としては、両側大脳半球・間脳ではチェーンストークス呼吸、中脳下部・橋上部では中枢神経性過呼吸、橋中部・橋下部では呼気時休止性呼吸、橋下部・延髄上部では群発性呼吸、延髄では失調性呼吸、となることが知られている。
 体位は、立位・座位・臥位などの姿勢のことであり、重力方向に対する脳および肺と心臓の位置関係を示す。この変化は血圧の変動要因となり、血圧変動要因を特定する上で重要である。
 活動状態は、運動・安静・睡眠などの身体の状態を意味する。特に血圧の変動要因となるので特定する上で重要である。
 環境情報とは、測定者のおかれている環境の情報であり、例えば気温・湿度・気圧・日時などである。これらも常に変動する性質のものであるので、発症危険度の変化の予測の精度を考えると高頻度あるいは連続して測定する必要がある。
 気温は、体温調整に影響する重大要因であり、温度そのもの高低と単位時間当りの変化、その温度に曝された総和時間の両方が疾病発症に影響する。
 湿度は、気温と同様に体温調整に影響する要因である。高湿度は発汗による体温調整を阻害する上に、高気温時には大量の発汗による体内水分喪失などを引起こし、結果、血液循環の影響を及ぼす。
 気圧は、脳卒中の発症上昇要因であり、気圧低下が起きると脳卒中発症率が上昇することが統計的に知られている。
 日時は、日付と時間のことである。
 日付は、中期的な気温の変動や月(衛星)の位置による重力変化などを把握する目的で利用する。特に脳卒中の発症率は図8で示すように月毎に有意な差のあることが統計的に判っている。データは厚生労働省発表の人口動態調査結果より抽出した。
 また、月(衛星)の位置による重力の変動は頭部への血液流入量に影響を及ぼし、脳疾患の発症に影響する。
 更には、日付に基づいて曜日や祝日などの「日にちの種類」を把握することもできる。平日と休日とでは生活パターンが異なるので疾病の発症に対する影響も異なるため、予測精度を高めることができる。
 時間は、1日の生活サイクルのどの段階にあるかを把握する目的で利用する。特に起床後の早朝高血圧の検出などで重要である。運動や食事など他の活動状況と併せて利用すると、より精度の高い予測を可能とすることができる。
 身体情報とは、測定者の身体に関わるものであるが、短中期的には変化しないものである。具体的には、年齢・性別・体重・身長・喫煙や飲酒習慣の有無などである。
 これらの情報は本システムを稼働させる前にプリセット値として入力しておく。体重や年齢のような長期的に変化するものについては、変化に気付いた際にプリセット値を修正することで対応する。
 年齢は、特に脳血管疾患の発症率においては図15に示す通り重要な要因である。年齢が高くなるにつれて発症率も指数関数的に上昇するため、ある年代以上では高年齢というだけで発症危険度が高いということが窺い知ることができ、危険度予測そのものが重要であることを示唆している。データは厚生労働省発表の人口動態調査より抽出した。
 また、図16に示す通り、年齢に応じて動脈硬化進展度も2次関数的に上昇する。動脈硬化が発症要因となる疾病については発症危険度を加増させる。データはコーリンメディカルテクノロジー株式会社の年齢別脈波伝播速度資料より引用した。
 性別は、男性と女性の違いで血管年齢(動脈硬化度)が異なり、特に女性の閉経前後での変化が大きい。一般に女性は、閉経前は女性ホルモンの影響で動脈硬化度は同年齢の男性より低い値となるが閉経後10年程度は男性と同じレベルに上昇する。この為、性別は年齢と併せて把握し、危険度予測に利用する。
 体重と身長は、BMIを算出することで肥満状態が判り、この値より糖尿病や高血圧症の危険度を把握することができる。BMIが25~30は過体重、30以上は肥満、として扱い、発症危険度の数値を加増させる。
 喫煙および飲酒の習慣は、血圧上昇と血液粘度上昇の要因となる。
 喫煙時には20mmHg程度の血圧上昇を引き起こし、更に赤血球数血液粘度が上昇する。脳卒中死亡リスクが統計的に非喫煙者に対して2.8倍である。
 また、過度な飲酒も血圧を上昇させ、更に肝機能障害を要因として血液凝固因子の産生低下および低コレステロール血症を引き起こし、結果として脳卒中発症リスクを上昇させる。活動状況より飲酒および喫煙を検出できる場合には、その都度、発症危険度予測に利用する。
 医療情報とは、測定者のその時点で判明している医療に関する情報であり、短期的には変動しないものである。具体的には、医療検査値や持病や測定者本人と近親者までの既往症についてであり、発症危険度の上昇に関与するものはその程度に応じてポイントで重み付して加算する。
 ここで用いる近親者とは、第一度近親者(本人の父母、子供、兄弟姉妹)、及び第二度近親者(本人の祖父母、おじ・おば、甥・姪、孫、片親の異なる兄弟姉妹)までである。
 医療検査値としては、血糖値(HbA1cを含む)や血中脂質値、血液粘度、動脈硬化度、血栓症診断結果、DNA検査である。
 血糖値は国立がん研究センターの12年間の追跡調査にて糖尿病患者の脳梗塞発症リスク上昇が確認されており、危険度予測に利用できる。
 血中脂質値の上昇は動脈内壁損傷および粥状硬化発生の主要因であり、同じく危険度予測に利用できる。
 血液粘度は血液検査項目である赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリットより把握することが可能であり、虚血性脳血管障害の危険度予測に利用できる。
 動脈硬化度は、血管内皮機能検査や動脈壁硬化検査、脈波伝播速度、足関節上腕血圧比検査から得ることが可能であり、出血性脳血管障害の危険度予測に利用できる。
 血栓症診断結果はCTやMRI、超音波検査、血管造影検査から得ることが可能であり、虚血性脳血管障害の危険度予測に利用できる。
 DNA検査はミトコンドリアDNAのサブハプログループKのDNA保有者は他のハプログループDNA保有者と比較して脳卒中の発症リスクが顕著に低いことがThe Lancet Neurology掲載の研究成果より知られている。
 持病や既往症のポイントの重み付の一例として、脳卒中既往歴:300pt、高血圧症:300pt、脳卒中の近親者あり:100pt、高脂血症100pt、心房細動:100pt、糖尿病:50pt、となる。
 また、具体的な発症危険度のポイント付の別の例として、下記の論文およびWEBサイトにある情報も有用である。
 Stroke Risk Profile: Adjustment for Antihypertensive Medication, The Framingham Study
 R B D'Agostino, P A Wolf, A J Belanger and W B Kannel Stroke. 1994;25:40-43
Framingham Heart Study 内WEB
 https://www.framinghamheartstudy.org/risk-functions/stroke/stroke.php
 (第三の実施の形態)
 気温の変化と血圧および脈拍の変化について、図17を用いて説明する。
 図17は、被験者AとBについて、気温が摂氏25度から5度へ変化した際の収縮期血圧・拡張期血圧および脈拍数がどのように変化したかを実験した結果である。
 被験者は座位にて摂氏25度環境下で十分な安静状態を保った後、上腕カフ式血圧計を用いて収縮期血圧および拡張期血圧および脈拍数を測定した。
 その後、摂氏5度に設定した恒温室に入室し、10分間座位にて安静状態を保ち、その後に再度、収縮期血圧および拡張期血圧および脈拍数を測定した。
 被験者AおよびBとも摂氏25度環境での生体情報値はほぼ同じであったが、摂氏5度環境での生体情報は被験者によって温度に対する生体反応に差異があることから、生体情報の変化に相違が生じている。このことから、温度変化に対する傾向は同じであるものの個人差の解消を必要とすることが判る。
 図18は、個人差を解消する個人最適化機能の処理フローチャートである。
 アラーム発報値設定にあたり、最初に装着者情報と一致する過去の個人発報値の有無を確認する。無かった場合は工場出荷時より記憶部に保持されているプリセット値を個人発報値として使用する。
 個人発報値の書き込みにあたっては、定義済の周囲環境条件を超える変化(本実施例では周囲温度が摂氏5度以上変化)があった際、その変化前後の生体情報を比較し、その変化量より個人発報値の算出を行う。また、個人発報値の書き込みが行われた際には、再度アラーム値発報設定フローが実行される。
 このようにして、特定の環境変化に応じた個人の生体情報変化を検出し、個人発報値を更新してゆくのである。
(第四の実施の形態)
 生体情報および医療情報は、適宜可能なものを用意し、優先度に応じて採用する構成としても良い。
 例えば、図19に示すような表に基づき、優先度の高い情報が存在する場合にはそれを優先的に採用する。この優先度の高い情報とは一般に疾病発症危険度の変化を予測する上で精度の高い情報となり得るものを意味する。
 優先度Aのような上位の情報が存在する場合には優先度B以下の情報を採用して参酌する必要は無いが、優先度Bや優先度Cのような中位や下位の情報のみが存在する場合には、それぞれに重み付けをして採用する。
 同一優先度の情報が複数存在する場合には、検査日(情報取得日)の新しいもの、又は各情報から算出される疾病発症危険度の平均値を採用する。
 疾病発症危険度に対する環境情報の影響について、加えて説明する。説明を簡略化する為に気温と気圧のみを用いて説明するが、実際の実施はこれに限定されない。
 図20は長野県松本市の2014年2月12日(冬)と7月10日(夏)の気温と気圧の変化を示すグラフである。先述の通り、気温も気圧も発症危険度に対して影響を及ぼす。具体的には、気温低下と気圧低下はそれぞれ血圧の上昇を誘発する。データは気象庁発表の気象データより抽出した。
 図21は図20の2つのグラフの気温と気圧について発症危険度(図中では危険因子指数と記載)が正の数値になるよう係数を乗じたものである。
 2月12日は最低気温が摂氏氷点下10度まで冷え込み最高気温が摂氏3度程度となる典型的な冬の気候変化を示している。低い気温(=高い血圧)は脳疾患の発症危険度を高める為、一日を通して比較的高い発症危険度を示している。
 7月10日は最低気温が摂氏22度で最高気温が摂氏26度超程度の変化の少ない一日であるが、実はこの日は台風が接近していた為に気圧が終日漸減していた。また、気温も午前10時附近で頭打ちとなり以降午後2時まで低下している。この時は気象の変化で日差しが遮られた上に降雨が発生したのが原因である。その為、発症危険度も午前10時から午後2時にかけて急激に上昇している。続けて、午後3時附近で一旦日差しが戻った為に気温が再上昇し、その後再度降雨が発生して気温は低下してゆく。その為、発症危険度も午後3時で少し減少した後に再び上昇してゆく。
 この様に、気象情報だけでも発症危険度の変動が部分的に把握可能である。
 本実施例は環境情報として取得される気温と気圧に基づいて説明したが、本発明システムに設けた無線通信部を介して取得した気象観測機関発表の情報を利用しても良い。
(第五の実施の形態)
 第一の実施の形態において脈波波形と血圧値に相関がある旨の説明をしたが、本実施の形態ではそれを更に拡張して脈波(および心電)波形より得られる他の生体情報について説明する。
 図22は、脈波波形の概要を示すものである。心電波形(いわゆる心電図)も略相似の形状を示すので本実施例では脈波波形には心電波形も含むものとして説明する。
 脈波波形には図に示す通り「Percussion wave」「Tidal wave」「Dicrotic wave」といった特徴的な形状を示す頂点部がある。これらの頂点部は血管の物理的特性や心臓の弁機能によって個人差があるものの概ね固有の形状を保つ。この様な特徴点を検出することで連続する脈波の間隔(時間)を測定することができる。
 図23は、約10秒ほどの間に測定された心電図である。特徴点を捉えて心拍間隔を測定する点では脈波波形にて行う場合と同じである。心電図でのいわゆるR-R間隔は脈波波形の「Percussion wave」や「Tidal wave」や「Dicrotic wave」の間隔でも同様に測定できるが、一般には最も特徴的である「Percussion wave」を用いてP-P間隔として測定する。
 この波形はPHYSIONETのWEBサイトにて公開されているMIT-BIH Arrhythmia DatabaseのRecord232より抽出した。
 通常、心拍は呼吸やマイヤー波による揺らぎと異なる様な拍単位での急激な間隔変動や拍が欠落することは希であり、特にこの図の第1拍・第2拍・第3拍の間隔と比較すると第4拍・第5拍の間隔は2~3倍と異常に長く、不整脈の状態を示している。
 また、この図では基線の細かな動揺とP波の消失、不規則な心拍間隔に基づき、心房細動が推察される。
 一般に、不整脈による血液の淀みは血栓や塞栓の発生要因となり、結果的にこれらの血栓・塞栓が虚血性の疾患を引き起こすことになる。よって、第一の実施の形態で説明したように心電波形や脈波波形より心拍間隔を抽出してその数値(時間)を監視することは虚血性の疾患の予兆を掴むことに繋がる。
 図24は、同様にして得た心電波形に基づいて心拍間隔時間を30分間にわたって計測し、ヒストグラムとしたものである。心拍間隔時間の異常閾値を2秒とし、それ以上のものを異常な状態(不整脈が起きている)として扱う。
 本来はこの様な異常な状態が存在すること自体が問題であるが、例えば持病として不整脈のある測定者が低頻度の不整脈に対して過敏に神経質になることは避けるべきである。即ち、一日数回程度の不整脈は中高年者の大多数で発生しており、血栓や塞栓が発生する要因となる異常状態の発生頻度と心拍間隔の時間との関係が重要となるのである。
 図25は、虚血性脳血管疾患アラームの動作の一例をフローチャートとしたものである。
 詳細な説明は省略するが、要旨として、心拍間隔の閾値(例えば2秒)を越えた心拍間隔が所定の期間に何回発生したかを計数するものである。発生回数が高いほど疾病の発症危険度が高いことになる。
 また、血栓や塞栓は血流が滞留した時間が長いほど発生確率が上がるという事情を考慮し、純粋に発生回数のみでは無く、心拍間隔時間を累積するとより精度の高い発症危険度の予測が可能となる。また、心拍間隔時間を単純に累積する以外に指数関数的な演算(例えば二乗など)をした上で累積するとより実情に合った疾病発症危険度予測に資することが可能となる。
 図26は、図25でのデータをローレンツプロットという手法で描画したものである。
 これは、連続して測定される心拍間隔を順番に1・2・3…n-1・n・n+1・…回目として捉えた時、横軸にn回目の心拍間隔の時間/縦軸にn+1回目の心拍間隔の時間、としたものである。上述の通り、心拍間隔の時間は拍単位で急激に変化する性質のものでは無いので、基本的には45度線上附近にプロットされる。
 ところが、この図の場合、縦軸=約0.8秒と横軸=約0.8秒の2線の上に多くのプロットが観測できる。これは即ち、正常の間隔の心拍の前後で不整脈などが頻発していることを意味する。
 図27は、ある本発明システムが対象とする疾病の所見を有さない被験者の心拍間隔データのヒストグラムと上述のローレンツプロットを適用したグラフである。
 まず、ヒストグラムはピークが0.9秒附近にあり、閾値越えも無く、至って正常であると言える。また、ローレンツプロットも大半が45度線上附近にプロットされており例外的なプロットが少々あるものの閾値以内であるので正常であると言える。
 この様に、ヒストグラムやローレンツプロットを確認することで正常さが明確となる。
 図28は、心拍間隔に異常を持つ被験者の心拍間隔データのヒストグラムとローレンツプロットを適用したグラフである。
 まず、ヒストグラムは大きく分けて3つの山がある。環境を一定に整えた上での測定であるので、0.5秒や1.3秒といった時間を心拍間隔にもつことは通常では考えられず、心臓の弁機構の不具合や不整脈といった疾患の存在が疑われる。しかしながら閾値越えをしていないので、閾値を基準とした判定では異常を検出できない。ピークの数とその時間間隔値が適正であるかによって判断することは可能である。
 次に、ローレンツプロットでは前述の正常なものと比べて45度線上附近とは言いがたい領域に多数のプロットが存在する。視覚的にも異常性が十分に認識できるが、計算処理としては次の方法で判定し得る。
 45度線はy=xであるので、この線の上下にOK領域(例えばy=x±0.2sec)を設け、この領域の中に入るプロットをOKプロットとし、それ以外のプロットをNGプロットとし、それらの数の比率(NGプロット数/OKプロット数)で異常さを示すことができる。
 或いは、各プロットの直交座標系の座標値であるxyを極座標系のrθに変換し、直行座標系でのy=xとなる45度線が極座標系でのθ=0となる様にθを45度逆時計周りに回転させた極座標系を想定する。この極座標系においてNGプロットのθは大きな値をとることになるので、θの絶対値を積分してプロット数で割ることで平均値を求め、このθ平均値の大きさで異常さを示すこともできる。
 このような心拍間隔のローレンツプロットを用いることでも、心拍間隔に異常が生じたことを検出して、脳血管疾患の危険度変化を予測できる。
(その他の実施の形態)
 以上までは、本発明を「既に重篤な疾病の可能性が十分にある者」に対して適用する場合を前提として説明してきたが、これに限定はされない。
 本発明のシステムは測定対象の生体に装着することで常時測定を可能とし、それによってもたらされる利点を活用している。
(疾病予兆早期検出)
 例えば、疾病の発症には殆ど無縁であるような一見健康な20才台の人間であっても循環器に関する急性疾患で突然死する危険がゼロでは無い。よって、この様な者であっても本発明システムを装着して生体情報を取得・確認し、各種疾病に対してどの様な発症の危険があるかを早い段階から把握することが可能となる。極早期に発見されれば対処も軽微で済むが発見が遅れれば対処が困難となる疾病は枚挙に暇がない。更には早期の治療開始により医療費の抑制や当人のQOL(生活の質)向上も可能であるため、今後高齢化社会を迎える日本においては経済的・精神的な貢献が大きい。
 また、自発的に本発明システムを装着して自身の健康状態を積極的に把握するような意識を持つ者が増えると、そうでない者との間に健康に関する統計的な有意差が生じるようになり、生命保険や健康保険などで優遇されるとより本発明の経済的価値は向上する。
 (労災防止)
 また、本発明システムは、医療目的以外にも応用が可能である。
 例えば、高温下などの過酷な労働環境での作業に従事する者に対して本発明システムを適用することにより、当人が認識できない諸症状を事前に察知可能となることで労働災害を減じる効果が期待できる。加えて、使用者側が労働環境対策を適切に行うことができるので、使用者側の費用対効果を高めることもでき、結果として経済性の向上に寄与する。
(スポーツ競技)
 加えて、本発明システムは、スポーツやトレーニング目的にも応用が可能である。
 マラソンのような競技者に極度の負担をかけるスポーツでは、種々の急性症状を発症する危険性が高いもののそもそも自覚症状が出にくい上にアドレナリンなどの作用により競技者はより急性症状を自覚することが難しくなり、結果として競技者は大変危険な環境に晒されていることになる。更に競技者は勝利への執念があるため自発的に棄権を申出ることは期待できない上に、ドクターストップがかかるような客観的に危険な状態になった時には周囲の人間による緊急対応が必要となるほどに重篤化が進行し、医療機関への搬送が手間取れば命を失いかねない事態となる。
 その点、本発明システムをマラソンの競技者に装着することで急性症状の発症危険度を客観的な指標に基づいて警告することが可能であるので、競技者本人も納得の上で棄権ができるため心理的な不満足を生じること無く競技者の安全を確保することができる。競技者が普段より本発明システムを利用している場合には急性症状の発症危険度の判断も本人用にカスタマイズが進んでいるのでより適切(不必要に過度な警報を発しない)となり、競技者のモチベーションを損なうこと無く安全を確保することが可能となる。また、本発明システムを装着するマラソン競技者が増加すれば医療対策のスタッフ数を減らすなどマラソン大会全体の運営効率が向上し、経済的にも貢献できる。更には、本発明システムを参戦予定の競技者に対して事前に一定期間装着させて生体情報を取得し、この取得した生体情報をマラソン大会運営体に提出する運用にしても良い。競技者の健康面での危険があるレベル以下で無いとマラソン競技自体にエントリーできないという仕組みにすることでマラソン競技での危険を事前に排除することも可能となる。
 また、マラソン大会は開催場所(コースのアップダウン・標高など地理的な情報)・気温・湿度・風速・風向・気圧・日差といった諸条件によって参加する競技者にかかるストレスが異なる。参加した競技者の生体情報を大会後に提出させ、上述の諸条件を勘案しながら競技者の生体情報に基づいて疾病発症危険度の高低を検討することで、その後のマラソン大会の設定をより良いものにすることが可能となる。
 更に取得した競技者の生体情報分析結果より大会・コースの難易度や心肺影響度を数値化し、参加検討者に事前情報として提供、又はスポーツ保険掛け金の増減に利用可能である。
(運動による活動量上昇時の心拍数)
 活動量上昇時の心拍数変動に基づく発症危険度の算出について、スポーツ時を例として説明する。
 一般的に安静時の心拍数は、Jay W. Masonの調査結果の様に加齢とともに減少する。この安静時心拍数が60bpm以下の場合が除脈であり、発症危険度算出時の心拍数下限値として利用可能である。
 年齢層   |心拍数中心値
 0-9    | 84
 10-19   | 70
 20-29男性 | 63
 20-29女性 | 69
 30-69   | 68
 70-99   | 65
 但し、持久力を必要とするようなスポーツ競技者や愛好者(例えばマラソンや自転車)に多く見られるスポーツ心臓症候群の所見を有する者は安静時心拍数が30~50[回/分]程度となる。一般者では洞性除脈と診断されるレベルであるが、鍛錬によって心拍出効率が向上した結果であり、発症危険度算出時に加味する必要がある。
 更にウォーキングやスイミングといった適度な運動負荷の有酸素運動を継続して実施している者は動脈硬化度の指標となるcfPWV(頸動脈-大腿動脈間脈波伝搬速度)が非実施者に比べ低値となることが報告されている(Kakiyama T, et al. angiology 1998)。また、非実施者も数週間程度の有酸素運動実施によりcfPWVの改善がみられるため、本発明装置の記憶部に格納されている運動実施履歴を参照し発症危険度算出時に加味する必要がある。
 図29は活動量上昇時の心拍数変化を被験者3名にて実測した結果である。
 活動量の上昇は、高さ23cmで30[回/分]リズムの踏み台昇降運動によって行った。
 ここで本発明システムは、例えば加速度センサー・筋電位センサー・生体インピーダンスセンサーなどを1つ以上内蔵し活動量上昇を検知する。活動量上昇直後から心拍数の上昇が始まり、個人差はあるものの大凡2分程度で上昇の傾きが緩やかとなり5分程度で飽和状態となっている。この変化に沿って発報閾値を逐次更新する。安静時に心拍数上昇が発生した場合には発作性上室頻拍や心室頻拍の発症が疑われるが、心拍数と活動量の関係よりその可能性を排除することが可能となる。
 本発明システムの好適な使用例として、例えばマラソン大会や自転車競技中に前記の活動量上昇時心拍レベルよりの乱れや心拍数検出不能状態が検知された場合、それを装着者や医療関係者や主催者に通知し、競技停止やAED使用要否の判断材料として利用可能となる。
 また、前述の被験者3名に同一の運動を実施させた場合にも個人差により心拍数変化に差が生じている。この差に基づいて警報を発報する閾値をプリセット値から装着者向けに最適化し、本発明のシステムの発症危険度通知の妥当性を向上させる。
 ここで用いた「活動量上昇時」とは、人間または動物を構成する全要素(筋肉・脳・神経・循環器・呼吸器・消化器・感覚器・排泄器・生殖器など)が安静時よりも相応に多くのエネルギーを使う活動を行っている状態と定義する。
(疾病再発危険度)
 更に本実施例では、脳卒中の既往歴を有する装着者の発症危険度算出について説明する。
 秋田県脳卒中発症登録で得られた結果(日本老年医学会雑誌2008;45:169-171)によると、発症者の約12%で再発し、初回疾病と同疾病での再発率が高い。よって発症リスクを高める危険因子として取り扱う必要がある。
 本実施例で解決を図る主な問題は、一度の発症により、長期の療養や後遺症等による生活上の支障が生じたにも関わらず既存の取り組みや技術のみでは、既往者の十分な危険意識の向上や危険因子の回避行動に繋がっていないことである。そこで既往歴のある装着者の場合には、脳卒中に関して(1)発症時期(2)具体的な病種と発症部位(3)後遺症(4)服薬有無(抗血栓療法薬や降圧剤)を情報入力部を介して取得し、発症危険度算出精度を向上させる医療情報として利用する。
(不整脈に対する処理)
 一般的に安静時の呼吸数は15~20[回/分]程度であり、R-R間隔値を周波数分析すると呼吸周期に沿った0.3~0.5Hz程度のピークとして検出される。この呼吸性洞性不整脈は、他の不整脈と異なり正常な生体反応であるため、除脈頻脈症候群・心房細動・心室頻拍・トルサード=ド=ポアンツ・房室ブロック・心室期外収縮・上室期外収縮によるR-R間隔の変化と区別し、発症危険度の上昇要因から除外する。
(警報の発報)
 次に、本発明システムの警報について説明する。
 本発明システムの警報出力部はいくつかの方式が可能である。
 警報を行う先としては、装着している対象の人間(または動物)に対して行うものと、第三者(医療機関・親族・特定者・救助や援助を依頼したい周囲の不特定者)に対して行うものと、に大別できる。
(当事者に対する警報)
 警報の重大度に応じて小さな警報から順次大きな警報へと切替わる。ここでの小さな警報とは警報の到達可能範囲が相対的に狭いものを意味し、大きな警報とはその逆で到達可能範囲が相対的に広いものを意味する。
 警報が音によるものであれば、音量が小さいものから大きいものへと変化することである。音以外には光・振動・熱・香り・味なども適用可能である。光の場合には強弱以外に波長や発行パターンによる差異を設定可能である。振動の場合には強弱以外に振動波の波形そのものや振動パターンなどにより差異を設定することができる。香りの場合には、各種香料カプセル内の香料原料を加熱や減圧などにより気化しそれを装着者の鼻孔附近へ流動するようにしても良く、香りの種類や嗅覚細胞への刺激強度で差異を設定できるのは勿論である。味の場合には、外部からの電波などの信号で動作する弁機構を設けた義歯に着味液体を格納し、警報に応じてこの液体を口腔内(特に舌附近)へ流出するようにすることも可能であり、口腔内へ流出させる液体の量によって差異を設けることができる上に、液体そのものに頓服薬を含ませることでより効果的な対処が可能となる。例えば不整脈を有する者であれば、頓服薬として抗不整脈薬や血栓症予防薬が好適である。
 音声による警報については、装着している当事者に対して警報の種類を報知するのみならず、その原因や回避行動案を併せて報知するようにしても良い。これにより、当事者は発症危険度が上昇した事実と共にその原因や回避行動案を併せて理解することができ冷静且つ確実に対処することが可能となる。また、当事者が不幸にして回避行動を取る前に失神するなどした場合、周囲に居合わせた第三者がその音声での警報を理解することで当事者に代わり医療機関に連絡するなどの対処を期待することができる。
 上述の音声による警報は、無線や有線の通信に置き換えても良い。デファクトスタンダード的な通信プロトコルが普及すれば汎用的な電子端末で通信による警報を受信することが可能となり、音声による警報よりも高速且つ確実に警報の内容や原因や回避行動案を把握することができる。
 このような装置が救急車のような緊急車両に標準装備されれば、不幸にして発症して卒倒し人事不省となった当事者を緊急車両へ搬入した際、即時に警報の内容や原因や回避行動案といった情報を把握でき、素早く応急処置を開始できる上に搬送先の病院の選定を精度高く行うことができる。この際、本発明システム内に存在する当事者の生体情報や環境情報などのあらゆる情報を総合的に利用可能であることは言うまでもない。
 また、この当事者に対する警報は、疾病の予防の観点からは明確に判ることが要件とされる。しかしながら、状況によっては携帯電話の呼出し音と同様に警報も制約を設ける必要がある。
 例えば、劇場や美術館のような静粛な環境においては上述の明確な警報は生命の危機を回避するためとは言え誤報の可能性もあるために可能な限り控えるべきである。この様な場合には、後述の第三者に対する警報の送出先を任意に切り換えられるようにしても良い。例えば劇場の受付時に係員に対して装着者が自身の疾病について申告し第三者に対する警報の送出先を劇場側に設けられた受信装置を対象にするよう(そして自身に対する警報は控えめになるよう)設定を切替えるのである。このようにすることで装着者の発症危険度が不幸にして上昇した場合には劇場係員が本人に替ってこれに留意し、他の観客の迷惑とならないように劇場内部から控え室などへ誘導することが可能となり、装着者も他の観客も劇場の雰囲気を保ったまま観劇を続けることができるのである。劇場の音響効果や照明効果により、当事者が警報に気付かなかった場合のフェールセーフとしても利用可能である。
 更には、視覚や聴覚が制限されるような環境では異なる方法が可能である。
 例えば、スキューバダイビングや宇宙遊泳を行う人間を対象に警報を出力する場合には音や光や振動による警報は気付きにくく不適切である。この様な場合には、酸素ボンベに警報用の香気発生装置を併せて設ける方法もある。香気発生装置は柑橘系などの明確に知覚可能な香り成分を発生させて酸素ボンベから供給される酸素に混合する。疾病の発症危険度が上昇した場合にこの香気発生装置が作動するようにしておけばスキューバダイビングや宇宙遊泳中の人間も嗅覚で自身の異常を知ることができるのである。
 加えて、政治家や企業経営者など世間に影響力を持つ人物(VIP)が装着者となる場合、このVIPに対する警報が第三者に認識されることは問題である。即ち当該人物が健康面で不安があることを世間に曝露するに等しいからである。この様なVIPが装着者となる場合、警報はVIPの側に控える秘書やSPが持つ電子端末に対して秘密裏に出力されるようにしても良い。この電子端末を持つ者がVIPに対して警報が出力された旨を暗に伝えることで疾病の発症を予防することができ、第三者に当該VIPが健康面に不安を持つという秘密を曝露せずに済む。
(第三者に対する警報)
 続いて第三者に対する警報出力について説明する。
 上述の通り、疾病発症危険度の上昇について警報を出力する警報出力部は本発明システムを装着した者(および動物)のみを対象としていない。これは急激に疾病発症危険度が上昇して回避行動を取れずにいる内に発作となりそのまま失神してしまうような場合や、装着者(や動物)がそもそも回避行動を取れない状態(新生児や痴呆老人やICU内の入院患者など)である場合を想定している。この様な場合には第三者に警報を出力し、この警報を受信した第三者が回避行動を補助するのである。装着者の意識混濁や失神、身体機能障害により自身の情報の伝達に何らかの問題を有する場合、第三者が本発明装置記憶部内の情報を参照し、どのような処置を装着者に施すかの判断材料として利用できる。
 第三者とは、医療機関・親族・友人・知人・隣人・民生委員などのような特定者と、疾病を発症した際に居合わせた周囲の不特定者と、が該当する。
 特定者は装着者の近傍に存在しないことが前提となるので、無線(電波・光・超音波)を用いた通信を利用する。装着者の移動が制限されている場合には有線を用いた通信も可能である。
 疾病を発症した際に居合わせた周囲の不特定者については、当事者に対する警報のうち音・光による方法と同様でも良い。
(動物への適用)
 ここまでは、人間を対象とした生体情報についての実施例を挙げてきたが、人間に限定されるものでは無い。測定対象の生体に装着可能である利点を活かし、動物においても同様に常時連続した生体情報等の測定が可能となる。
(競走馬)
 例えば、競走馬の心肺機能を把握や健康を管理する目的で本発明システムを適用することも可能である。
 人間同様に競走馬も過酷な負担のかかる走行を行う関係で健康状態の把握は重要である。
(野生動物)
 また、野生動物の生態を解明する目的で本発明システムを適用することも可能である。
 多くの動物の生態調査は動物園のような特定箇所において行われているのに対し、野生動物については特定地点に設置した隠しカメラによる行動調査程度のものしか可能で無かったため、より実際の生息状況における生体情報は動物学者などに有用である。例えば、熊の体温・心拍が冬眠前後でどのように変化するかなどの研究においてはより実情に近い精度の高いものが測定可能となる。
(ペット監視)
 次に、犬や猫を主とするペットへの本発明装置の装着について説明する。
 ペットの生活する部屋に設置されたカメラの動画・静止画をPC等のWEB端末に転送し、留守宅のペット状況を確認する装置及びサービスが既に実用に供されている。しかし、画像のみでは監視対象動物が睡眠中か異常状態(発作・硬直・死亡)かを判別することは困難である。そこで本発明システムを適用して監視対象動物であるペットの生体情報と環境情報を連続取得し、飼育者に異常状態を通知することで重篤な状態となる前段階での処置が可能となる。更に空調機器や自動給餌機やカーテン開閉器等の留守宅内の機器と連動し、監視対象動物の置かれた環境を改善する材料として利用できる。
(家畜監視)
 加えて、放牧された家畜動物への本発明システムの適用について説明する。
 夏季を主に家畜動物の放牧が実施されている。この際に放牧場の広さと頭数の多さから全頭の状態を把握できず、盗難や疾病や転落や熊などの肉食動物による捕食があってもその発見が遅れている。そこで本発明システムを適用して監視対象である家畜動物の生体情報と環境情報を連続取得し、例えば疾病による心肺異常や坂・崖からの転落による姿勢変化や肉食動物に襲われた際のストレス状態や体の動きを検知し、管理者に通知することで被害を最小化できる。
 以上、本発明について好適な実施例を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない限り多くの改変を施すことが可能であるのは勿論である。
 量産可能な生体情報読取部およびこれを用いる本発明のシステムによって、測定者に対して物理的・心理的な負担を与えずに常時連続した生体情報測定が実現でき、測定した生体情報に基づいて重篤な疾病の発症危険度の変化の予測を精度よく行うことが可能となり、これを応用して医療目的以外にも高い負荷のかかるスポーツの競技者や過酷な環境での労働者に対して安全上の適切な警報を発するなどして効率良いトレーニング・作業が期待できるなどの効果を有している。
符号無し

Claims (6)

  1.  被測定者の生体情報として脈波情報を連続して取得する生体情報取得部と、
     前記生体情報取得部が取得した脈波情報を記憶する取得情報記憶部と、
     前記記憶した脈波情報に基づいて前記被測定者における脳血管疾患の発症危険度の予測を行う疾病発症危険度予測部と、
     前記疾病発症危険度予測部の予測に基づいて発症危険度の警報を出力する警報出力部と
     を具備し、
     前記疾病発症危険度予測部は、
     前記連続して取得した脈波情報に基づく血圧および脈波波形の変動から脳血管疾患の発症危険度を予測する
     ことを特徴とする脳血管疾患の発症危険度予測システム。
  2.  請求項1記載の疾病発症危険度予測システムであって、
     前記発症危険度の予測は、得られた血圧および脈波波形の変動があらかじめ設定された正常範囲を超えたか否かを判断するものであり、
     正常範囲を超えたことにより警報を出力する
     ことを特徴とする脳血管疾患の発症危険度予測システム。
  3.  請求項2記載の疾病発症危険度予測システムであって、
     前記血圧および脈波波形の変動が正常範囲を超えたか否かの判断は、得られた血圧および脈波波形の変動が、正常範囲であるか異常範囲であるかの判断を行う統計学上の判断手法を用いる
     ことを特徴とする脳血管疾患の発症危険度予測システム。
  4.  請求項3記載の疾病発症危険度予測シテスムであって、
     前記血圧および脈波波形から得られる脈拍数との相関関係をもとに、被測定者から得られた血圧値と脈拍数が相関範囲から大きく外れる場合に発症危険度が高いと判断する
     ことを特徴とする脳血管疾患の発症危険度予測システム。
  5.  請求項1から4のいずれか1項記載の疾病発症危険度予測システムであって、
     被測定者の活動情報、身体情報、疾病情報ならびに環境情報の一つまたは複数を取得しておき、
     前記発症危険予測部は、
     前記被測定者の活動情報、身体情報、疾病情報ならびに環境情報のすべての情報または任意に選択された情報と、前記取得した脈波情報とに基づいて、脳血管疾患の発症危険度を予測する
     ことを特徴とする脳血管疾患の発症危険度予測システム。
  6.  請求項1から5のいずれか1項記載の疾病発症危険度予測システムであって、
     予測する前記脳血管疾患は、虚血性脳血管障害、出血性脳血管障害である
     ことを特徴とする脳血管疾患の発症危険度予測システム。
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