WO2014174844A1 - 料金設定装置、電力調整装置 - Google Patents

Abstract

　料金設定装置（１０）は、推定情報を取得する取得部（１１）と、対処期間における電力の単価を定める金額設定部（１２）と、対処期間を定める期間設定部（１３）とを備える。推定情報は、少なくとも一つの電気事業者が電力を供給する複数の地域（Ａ１～Ａｚ）ごとに、異常事象の影響を受ける日時を推定した情報である。金額設定部（１２）は、異常事象の影響を受ける対象地域に対して電力を融通可能である融通地域の対処期間における電力の単価を、対象地域の電力の単価よりも高く設定する。

Description

料金設定装置、電力調整装置

　本発明は、料金設定装置、および電力調整装置に関し、より詳細には、電力系統から受電する電力の対価（単位料金）を設定する料金設定装置、および料金設定装置で設定された単位料金に基づいて蓄電池の充電と放電とを制御する電力調整装置に関する。

　通常、電気事業者は、火力発電や水力発電、風力発電など様々な種類の複数の発電設備を所有している。しかしながら、電気事業者から供給可能な電力量には限りがある。このため、消費される電力量が相対的に増加すると、電力の需給が逼迫する可能性がある。

　たとえば、災害が発生した場合、発電設備あるいは送電設備に障害が生じる可能性があり、これに起因して供給可能な電力量が減少すると、消費される電力量に変化がないとしても、供給可能な電力量に対する消費される電力量の割合が増加する。

　また、災害の発生が予想される場合、停電に備えて、災害の影響を受けると予想される地域の蓄電池の利用者が、充電量を高めるように行動することが考えられる。この場合にも、災害の影響を受けると予想される地域において、電力の需要量が増加するので、供給可能な電力量が減少しなくとも、結果的に、供給可能な電力量に対する消費される電力量の割合が増加する可能性がある。

　日本国特許出願公開番号２０１１－１６６９７２（以下、文献１と呼ぶ）には、電動車両の車載電池（蓄電池）に給電するための給電スタンドに無線基地局を併設する技術が記載されている。文献１の技術では、電気事業者から供給される商用電源が利用できない非常時（停電時）に、電動車両の車載電池を無線基地局の電源に用いている。

　しかしながら、文献１に記載された技術でも、災害の影響を受けると予想される地域において、蓄電池の利用者が、停電に備えて蓄電池の充電量を高めるという行動を行った場合には、供給電力の不足を招く可能性がある。要するに、災害の危険性が高くなると、蓄電池への充電が広い地域で行われるから、電力の需給が逼迫する（供給電力量が不足する）おそれがある。

　本発明は、電力の需給の逼迫を回避できるように電力の単価を設定する料金設定装置を提供することを目的とし、さらに、料金設定装置と連携して蓄電池の充電と放電とを制御する電力調整装置を提供することを目的とする。

　本発明に係る料金設定装置は、少なくとも一つの電気事業者から電力が供給される複数の地域ごとに、異常事象の影響を受ける日時を推定した推定情報を取得するよう構成される取得部と、前記推定情報に基づいて、対処期間を定めるよう構成される期間設定部と、前記複数の地域のうちで、前記異常事象の影響を受ける対象地域に対して電力を融通可能な地域であって前記異常事象の影響を受けない地域である融通地域の前記対処期間における電力の単価である単位料金を、前記対処期間における前記対象地域の単位料金よりも高く設定するよう構成される金額設定部とを備える。

　本発明に係る電力調整装置は、上記の料金設定装置が定めた単位料金の情報を取得するよう構成される金額取得部と、蓄電池の充電と放電とを行うよう構成される電力変換部と、前記電力変換部の動作を制御するよう構成される制御部と、前記単位料金が所定の設定値以下である期間は前記蓄電池の充電を放電に優先して行い、前記単位料金が前記設定値を超える期間は前記蓄電池の放電を充電に優先して行うよう構成される判断部とを備える。

　本発明の料金設定装置は、電力の需給の逼迫を回避できるように電力の単価を設定することが可能になるという利点を有する。また、本発明の電力調整装置は、料金設定装置と連携して蓄電池の充電と放電とを制御することが可能になるという利点を有する。

実施形態１を示すブロック図である。 同上の使用例を説明する図である。 実施形態２を示す要部のブロック図である。 実施形態１の複数の地域の区分の一例を説明する図である。 同上の複数の地域の区分の他例を説明する図である。 同上の料金設定装置の具体例を示すブロック図である。

　以下に説明する実施形態において、異常事象は、電気事業者から供給可能な電力量に対する消費される電力量の総量の割合が、基準値以上になることが予想される事象を意味している。

　図１に示すように、以下の実施形態で説明する料金設定装置１０は、推定情報を取得する取得部１１と、対処期間における電力の単価を定める金額設定部１２と、対処期間を定める期間設定部１３とを備える。推定情報は、少なくとも一つの電気事業者が電力を供給する複数の地域Ａ１～Ａｚごとに、異常事象の影響を受ける日時を推定した情報である。対処期間は、推定情報に基づいて、（異常事象に対処する期間として）期間設定部１３が定める。金額設定部１２は、異常事象の影響を受ける地域（対象地域）に対して電力を融通可能である外部の地域（融通地域）について、対処期間における電力の単価である単位料金を、異常事象の影響を受ける地域（対象地域）よりも高く設定する。

　図１に示すように、料金設定装置１０は通信インターフェイス部１４を備え、通信インターフェイス部１４は、利用者が所有する端末装置５０に金額設定部１２が設定した単位料金を通知し、端末装置５０を通して単位料金を利用者に提示させることが好ましい。

　金額設定部１２は、対処期間における融通地域の単位料金を、対処期間を除く期間における融通地域の単位料金よりも高く設定することが好ましい。期間設定部１３は、推定情報に加えて異常事象の種類を用いて対処期間を定めることが好ましい。推定情報は、防災に関する警報情報であることが好ましい。複数の地域の各々は、複数の電気事業者のうちの一つが電力を供給する全範囲に対応する場合と、一つの電気事業者が電力を供給する全範囲を複数に区分した範囲の一つである場合とがある。

　電力調整装置２０は、金額取得部２４と、電力変換部２１と、制御部２２と、判断部２５とを備える（図３参照）。金額取得部２４は、料金設定装置１０が定めた単位料金の情報を取得する。電力変換部２１は、蓄電池３１の充電と放電とを行う。制御部２２は、電力変換部２１の動作を制御する。判断部２５は、単位料金が所定の設定値以下である期間は蓄電池３１の充電を放電に優先して行い、単位料金が設定値を超える期間は蓄電池３１の放電を充電に優先して行わせる。蓄電池３１は、電動車両３０に搭載されていることが好ましい。

　以下に説明する実施形態は、少なくとも一つの電気事業者（一般電気事業者、卸電気事業者、卸供給事業者など）が電力を供給する複数の地域の各々について、電力使用の対価である単位料金を設定する料金設定装置１０を備える。

　一例において、図４に示すように、少なくとも一つの電気事業者は複数の電気事業者Ｘ１～Ｘｚ（図４の例では、ｚ＝６）を含む。そして、“料金設定装置１０が単位料金を設定する複数の地域”は、複数の電気事業者Ｘ１～Ｘｚから電力が供給される複数の地域Ａ１～Ａｚに対応する。複数の地域Ａ１～Ａｚの各々は、一つの電気事業者Ｘｉ（ｉ＝１～ｚのいずれか）から電力が供給される全範囲（一つの電気事業者の供給地域）に対応する。図４の例では、第１～第６の電気事業者Ｘ１～Ｘ６が、第１～第６の地域Ａ１～Ａ６にそれぞれ割り当てられている。料金設定装置１０は、第１～第６の地域Ａ１～Ａ６の各々について、単位料金を設定する。

　別例において、図５に示すように、少なくとも一つの電気事業者は一つの電気事業者Ｘ０である。そして、“料金設定装置１０が単位料金を設定する複数の地域”は、一つの電気事業者Ｘ０から電力が供給される全範囲Ａ０を区分した複数の地域Ａ１～Ａｚ（図５の例では、ｚ＝６）に対応する。複数の地域Ａ１～Ａｚの各々は、一つの電気事業者Ｘ０から電力が供給される全範囲Ａ０を区分した複数の地域Ａ１～Ａｚのうちの一つに、対応する。図５の例では、電気事業者Ｘ０が電力を供給する全範囲Ａ０が、第１～第６の地域Ａ１～Ａ６に区分されている。料金設定装置１０は、第１～第６の地域Ａ１～Ａ６の各々について、単位料金を設定する。

　すなわち、“料金設定装置１０が単位料金を設定する地域”は、一つの電気事業者から電力が供給される範囲（サービスエリア）の全域が１単位である場合（図４参照）と、一つの電気事業者から電力が供給される範囲を複数に区分した範囲が１単位である場合（図５参照）とがある。

　以下に説明する実施形態は、電力を供給する配電網において、料金設定装置１０が単位料金を設定する複数の地域Ａ１～Ａｚ間で、電力の融通が可能になっていることを前提にしている。たとえば、料金設定装置１０が単位料金を設定する地域の１単位が、一つの電気事業者から電力が供給される範囲の全域である場合（図４参照）、異なる電気事業者Ｘ１～Ｘｚの間で電力が融通可能である。また、料金設定装置１０が単位料金を設定する地域の１単位が、一つの電気事業者Ｘ０から電力が供給される全範囲Ａ０を複数に区分した範囲である場合（図５参照）、電気事業者Ｘ０は、異なる地域Ａ１～Ａｚ間で電力を融通可能である。複数の地域間で電力の融通を可能にするために、常時は地域ごとに独立した配電網が形成され、必要に応じて異なる地域の配電網が相互に接続される。

　前提から明らかなように、複数の地域Ａ１～Ａｚの配電網は、常時は独立している。そのため、ある地域Ａｉ（ｉは、１～ｚのいずれか）において、電気事業者から供給可能な電力量に対する、地域Ａｉ内で消費される電力量（負荷での消費以外に送電損失を含む）の割合が増加すると、地域Ａｉ内の配電網の電圧が低下する可能性がある。また、消費される電力量が供給可能な電力量を上回ると、負荷に供給する電力が不足することになり、配電網への電力供給が遮断される場合もある。

　以下に説明する実施形態では、複数の地域Ａ１～Ａｚのうちの少なくとも一つの地域（着目する地域と呼ぶ）Ａｎ（ｎは、１～ｚのうちの少なくとも一つ）において、供給可能な電力量に対する消費される電力量の割合が基準値以上になる場合に、着目する地域Ａｎの外部の地域Ａｍ（ｍ≠ｎ）で、電力の余剰を生じさせやすくする技術を提供する。この技術により、着目する地域Ａｎは、外部の地域Ａｍから電力の融通が受けられるようになり、結果的に、着目する地域Ａｎでの供給電力の不足を回避することが可能になる。具体的には、消費される電力量または供給可能な電力量が異常事象によって影響を受けることが予測される地域Ａｎ（以下、“対象地域”と呼ぶ）に対して、異常事象の影響を受けない地域Ａｍ（以下、“融通地域”と呼ぶ）から、電力を融通させやすくする技術を提供する。

　ここで、“異常事象”は、供給可能な電力量に対する消費される電力量の割合が、基準値以上になることが予想される事象である。この種の異常事象は、災害が生じる可能性のある事象を含む。したがって、異常事象は、台風、竜巻、雷のように事前に予報が告知される気象現象、噴火、地震のように予測が困難な自然現象などを含む。

　この種の異常事象が発生すると、発電あるいは送電の設備に損傷を与えることがあり、結果的に、電気事業者が供給可能な電力量が低下する場合がある。この場合、消費される電力量が一定であれば、電気事業者が供給可能な電力量に対する消費される電力量の割合が基準値以上になる可能性が生じる。

　また、事前に予報が告知される異常事象であれば、蓄電池の所有者は、電気事業者から供給される電力が不足する前に、電動車両に搭載された蓄電池、蓄電装置の蓄電池などに充電を行うことが予想される。異常事象の影響を受けることが予想される地域内で、蓄電池が一斉に充電されると、電力需要の増加によって、電気事業者から供給可能な電力量に対する消費される電力量の割合が基準値以上になる可能性が生じる。

　以下では、異常事象の影響を受ける日時を推定した情報を「推定情報」と呼び、推定情報が防災に関する警報情報である場合を想定して説明する。“防災に関する警報”は、たとえば、公的機関（日本では気象庁（JMA）、米国では国立気象局（NWS）など）が発表する気象警報である。

　一般に防災に関する警報は、地域区分を単位として発令される。電気事業者により区分される地域の単位（料金設定装置１０が単位料金を設定する地域の単位）は、警報が発令される地域区分の単位と一致していることが望ましいが、一般に両者は一致していない。したがって、料金設定装置１０は、警報が発令される地域を包含するように、“対象地域”を設定することが好ましい。

　ところで、対象地域Ａｎは、料金設定装置１０が単位料金を設定する複数の地域Ａ１～Ａｚにおいて、消費される電力量または供給可能な電力量が異常事象の影響を受けると推定される地域（電力の需給が逼迫する可能性が高い地域）を意味する。また融通地域Ａｍは、料金設定装置１０が単位料金を設定する複数の地域Ａ１～Ａｚにおいて、対象地域Ａｎとは異なる地域であって、対象地域Ａｎと電力の融通が可能である地域であり、消費される電力量および供給可能な電力量が異常事象の影響を実質的に受けないと推定される地域（電力の需給が逼迫する可能性が低い地域）を意味する。つまり、融通地域Ａｍは、対象地域Ａｎの周辺あるいは対象地域Ａｎに隣接している地域を意味する。ただし、対象地域Ａｎから離れており、対象地域Ａｎに直接には電力を融通できない地域であっても、他の地域を通して対象地域Ａｎに間接的に電力を融通できる場合は融通地域Ａｍと言える。

　ある地域に他の地域を通して間接的に電力を融通できる場合とは、具体的には以下の例のような場合を意味する。いま、着目する地域を（Ａ）とする。また、地域（Ａ）に隣接する地域を（Ｂ）とし、地域（Ａ）に隣接せず、かつ地域（Ｂ）に隣接する地域を（Ｃ）とする。地域（Ｃ）は、地域（Ｂ）を経由しなければ、地域（Ａ）に電力を融通することができない。この場合、地域（Ｂ）から地域（Ａ）に電力を融通し、地域（Ｂ）が地域（Ａ）に融通した電力を地域（Ｃ）から受電する。つまり、地域（Ｃ）から地域（Ｂ）を経由して、地域（Ａ）に間接的に電力を融通することになる。このような例の場合、地域（Ｃ）は、地域（Ａ）（対象地域）に対して間接的に電力を融通する融通地域になる。

　たとえば図４において、地域Ａ３－Ａ４間で電力の融通が可能であり且つ地域Ａ４－Ａ５間で電力の融通が可能である場合には、地域Ａ５は、地域Ａ３に対して間接的に電力の融通が可能であると言える。

　（実施形態１）
　本実施形態の料金設定システムは、図１に示すように、料金設定装置１０、電力調整装置２０、電動車両３０を主な構成要素とする。

　電動車両３０は、走行用のエネルギー源としての電力を蓄える蓄電池３１を搭載する。この種の電動車両３０は、電動自動車、ハイブリッド車、電動二輪車を含む。また、電動車両３０は、蓄電池３１に関する情報を収集する機能と、電力調整装置２０と通信する機能とを有した管理部３２を備える。すなわち、管理部３２は、蓄電池３１に関する情報を収集する情報収集部と、電力調整装置２０と通信する通信部とを備える。

　管理部３２は、蓄電池３１に関する情報として、蓄電池３１を識別するための情報（メーカ、型番など）を保持し、蓄電池３１の動作に関する情報（残容量、端子電圧、充放電回数、温度など）を収集する。これらの情報は、管理部３２が電力調整装置２０と通信することによって、電力調整装置２０に引き渡される。また、管理部３２は、蓄電池３１に異常が生じた場合に、電力調整装置２０に異常を通知する機能も有する。すなわち管理部３２は、蓄電池３１に異常が生じた場合に、電力調整装置２０に異常を通知する異常通知部を備える。

　電力調整装置２０は、蓄電池３１の充電および放電を行う電力変換部２１と、電力変換部２１の動作を制御する制御部２２とを備える。すなわち、電力調整装置２０は、パワーコンディショナとして機能する。

　電力変換部２１は、商用電源である電力系統４０から供給される交流電力を直流電力に変換し、この直流電力により蓄電池３１を充電するよう構成される。また、電力変換部２１は、蓄電池３１に蓄えられた電力から電力系統４０の交流電力と等価な交流電力を生成するよう構成される。電力変換部２１が生成した交流電力は、需要家が利用する電気負荷（図示せず）に供給される。蓄電池３１に蓄えられた電力を用いて電力変換部２１が生成した交流電力は、たとえば日本国の場合、現状では、電力系統４０への逆潮流が禁止されている。したがって、電力変換部２１が生成した交流電力は、電気負荷が消費する電力と比較され、電力系統４０への逆潮流が生じないように、電力変換部２１の電力系統４０への出力を調整してもよい。

　制御部２２は、蓄電池３１の充電時には、蓄電池３１の特性に応じて充電電流を調整する。制御部２２は、蓄電池３１の放電時には、電気負荷が消費する電力、蓄電池３１の残容量などに応じて放電電流を調節する。

　ところで、蓄電池３１の充電および放電を決める条件は、蓄電池３１の動作の状態だけではなく、電力系統４０から購入する電力の単位料金に関する情報を含む。電力の単位料金は、本実施形態の料金設定システムでは、料金設定装置１０が異常事象に基づいて設定する。

　料金設定装置１０は、インターネット網のような広域網である電気通信回線ＮＴ１を通して電力調整装置２０と通信可能に接続される。したがって、電力調整装置２０は、電気通信回線ＮＴ１に接続される通信Ｉ／Ｆ部２３を備える。

　料金設定装置１０は、単独のコンピュータで構成することが可能であるが、料金設定装置１０が設定した単位料金を、複数の地域に存在する多数台の電力調整装置２０に一斉に通知するために、クラウドコンピューティングシステムで構成することが望ましい。

　料金設定装置１０は、警報（推定情報）を取得する取得部１１を備える。取得部１１は、原則として、電気通信回線を通して外部の装置から警報を取得する。取得部１１は、たとえば通信インターフェイス部１４を通して、警報（推定情報）を取得する。警報は、災害が生じる事象の種類、警報を発令する地域および日時を含む。

　警報について、気象現象として台風を例に説明する。台風の進路ＲＴ、および進路ＲＴの各地点を通過する日時が、たとえば図２のように予測されたとする。図示例における円形の部分は予報円であり、図示例では、隣接する予報円の接線の間の領域を進路ＲＴとみなしている。台風の進路ＲＴがこのように予測されると、例えば日本国では気象庁が、この予測に基づいて、進路ＲＴに沿った地域ごとに、暴風雨、高潮などに対する警報を発令する。

　異常事象が台風である場合、電力系統４０の障害（停電）に備えて、台風が最接近する日の前日あたりから蓄電池３１の充電が開始されることが予想される。したがって、警報が発令される地域あるいは当該地域の周辺地域において、電力の需給が逼迫する確率は、台風が通過する日の前日あたりから次第に高まり、台風が通過すると予想される日時の前に一旦ピークに達すると考えられる。

　このような事象が生じる理由は、発電設備あるいは送電設備が台風によって損傷するかもしれない、という人の心理に基づく行動に原因があると考えられる。電気事業者は人の心理に基づく行動を把握することはできないから、上述のような事象によって電力の需給が逼迫する場合に、事象に対する対応が遅れる可能性がある。

　これに対して、本実施形態の料金設定装置１０は、電力使用の対価である単位料金を地域ごとに設定し、電気事業者から地域ごとに単位料金の情報を提供する構成を採用している。この構成は、単位料金という情報を用いることにより、電力の需給が逼迫する可能性のある対象地域に、対象地域外の融通地域から電力が融通されやすくなる仕組みを提供する。

　ここでは、異常事象が台風に起因する場合を想定しているから、取得部１１は、台風に関連した警報（気象警報；暴風雨警報、波浪警報、高潮警報など）を取得する。また、取得部１１は、警報が発令された領域および日時も併せて取得する。料金設定装置１０は金額設定部１２と期間設定部１３とを備えており、金額設定部１２は、取得部１１が取得した推定情報（警報）を用いて地域ごとに単位料金を設定し、期間設定部１３は、設定した単位料金を適用する対処期間を定める。

　金額設定部１２は、取得部１１が取得した情報（推定情報）に基づいて、電力の需給が逼迫する可能性のある地域（対象地域）を推定し、該当する地域における単位料金に対して、この地域に電力を融通することが可能な地域（融通地域）における単位料金を高く設定する。

　たとえば、取得部１１で異常事象に関する推定情報が取得された場合、金額設定部１２は、取得部１１で取得された推定情報に関連付けられた地域（警報の発令された領域）に基づいて、複数の地域の各々を“対象地域”又は“融通地域”のいずれに分類する。そして金額設定部１２は、“対象地域”の単位料金よりも、“融通地域”の単位料金の方が高くなるように、対象地域の単位料金および融通地域の単位料金を設定する。

　つまり、金額設定部１２は、期間設定部１３が定めた対処期間において、電力供給が逼迫する可能性のある対象地域における単位料金よりも、融通地域の単位料金が高くなるように設定する。

　取得部１１は警報を取得するから、金額設定部１２は、警報が発令された地域を基準に用い、たとえば、警報が発令された地域に隣接する地域も供給電力が逼迫する可能性のある地域（対象地域）と推定してもよい。また、期間設定部１３は、警報が発令された日時を対処期間の開始時点に定め、対処期間の終了時点を、たとえば警報が解除された時点とする。すなわち、期間設定部１３は、警報が発令された時点から対処期間を開始し、警報が発令されている間は対処期間を維持し、警報が解除された時点で対処期間を終了する。

　本実施形態の料金設定装置１０の具体例を、図６を参照して説明する。

　本具体例の料金設定装置１０は、上述のように、取得部１１と、金額設定部１２と、期間設定部１３とを備える。本具体例の料金設定装置１０は、図６に示すように、地域記憶部１５と、期間記憶部１６とをさらに備える。

　地域記憶部１５は、料金設定装置１０が単位料金の設定を行う複数の地域の区分を記憶する。たとえば地域記憶部１５は、図４または図５に示すような、単位料金を設定する際に１つの単位として用いられる、複数の地域Ａ１～Ａｚ（図４、図５の例では、ｚ＝６）の区分を記憶する。

　期間記憶部１６には、取得部１１で取得される可能性のある推定情報と、それに対する推定期間（推定対処期間）とが、互いに対応付けて記憶されている。たとえば期間記憶部１６には、“暴風雨警報”という警報情報（推定情報）に対して“警報発令期間中”という推定対処期間が対応付けて記憶されている。

　本具体例の動作を以下に説明する。

　異常事象に関する推定情報（警報）が取得部１１で取得されていない場合（通常時）、金額設定部１２は、複数の地域Ａ１～Ａｚについて、同一の単位料金を設定する。

　一方、取得部１１で異常事象に関する推定情報が取得されると、期間設定部１３は、取得部１１で取得した推定情報（警報）と、期間記憶部１６に記憶された推定情報と推定対処期間との対応関係とを比較して、対処期間を決定する。

　また、取得部１１で異常事象に関する推定情報が取得されると、金額設定部１２は、取得部１１で取得した推定情報に関連する地域（警報の発令された領域）と、地域記憶部１５に記憶された複数の地域Ａ１～Ａｚの区分とを比較して、複数の地域Ａ１～Ａｚの各々を“対象地域”又は“融通地域”のいずれに分類する。金額設定部１２は、“対象地域”となる地域が、警報が発令された領域の全てを含むように、複数の地域Ａ１～Ａｚの各々を“対象地域”又は“融通地域”のいずれかに分類する。

　そして金額設定部１２は、期間設定部１３で決定された対処期間の間、“対象地域”の単位料金よりも、“融通地域”の単位料金の方が高くなるように、対象地域の単位料金および融通地域の単位料金を設定する。たとえば金額設定部１２は、対処期間の間、対象地域の単位料金を第１値に設定し、融通地域の単位料金を第１値よりも大きな第２値に設定する。

　対処期間が終了すると、金額設定部１２は、複数の地域Ａ１～Ａｚについて同一の単位料金を設定する。

　なお、期間設定部１３は、対処期間の開始時点は警報が発令された日時を採用し、対処期間の終了時点は異常事象の種類に応じて推定するようにしてもよい。たとえば、発令された警報の種類によっては被害が発生し、警報の解除後も異常状態（電力の需給が逼迫する可能性がある状態）が継続する場合があるから、対処期間の終了時点は別途に定めるほうが望ましい。

　さらにまた、期間設定部１３は、対処期間の開始時点および終了時点を、取得部１１が警報を取得する前に、異常事象に関する情報に基づいて設定してもよい。たとえば、取得部１１が、異常事象としての台風の進路ＲＴと地域ごとの通過時刻との情報を取得する場合、期間設定部１３は、進路ＲＴに基づいて対象地域を推定し、通過時刻に基づいて対処期間を推定することが可能である。

　すなわち、期間設定部１３は、取得部１１が取得した推定情報に加えて、異常事象の種類を用いて対処期間を定めることが望ましい。推定情報と異常事象の種類とによって対処期間を定めると、期間設定部１３は、電力の需給が逼迫する可能性のある対処期間をより精度よく推定することが可能になる。

　ところで、金額設定部１２が設定した単位料金は、利用者が所有する端末装置５０に通知される。料金設定装置１０は、端末装置５０と通信するために通信インターフェイス部（以下、「通信Ｉ／Ｆ部」という）１４を備える。端末装置５０はとくに制限はなく、また通信Ｉ／Ｆ部１４と端末装置５０との間の通信経路もとくに制限はない。端末装置５０は、たとえば、スマートフォン、タブレット端末、テレビジョン受像機などが用いられ、通信経路は、たとえば、移動体電話網、Ｗｉ－Ｆｉ（登録商標）、ＣＡＴＶ網などが用いられる。

　上述のような端末装置５０は、利用者が日常的に利用しており、かつ情報のプッシュ通知が可能である。したがって、料金設定装置１０は、期間設定部１３が定めた期間において、融通地域の利用者の端末装置５０に、金額設定部１２が定めた単位料金を通知して、利用者に周知させることが可能になる。融通地域は、着目する地域（対象地域）よりも単位料金が高く設定されるから、融通地域の利用者に節電を行う動機付けが与えられる。すなわち、融通地域では電力に余剰が生じやすくなり、対象地域への電力の融通が容易になる。

　ここに、対処期間における融通地域の単位料金は、対処期間を除く期間よりも高く設定され、融通地域における対処期間の電力の使用が抑制されるように動機付けを与えることが望ましい。対処期間における対象地域の単位料金は、対処期間を除く期間に対して引き下げることが可能であるが、対処期間と等しくしてもよい。

　以上述べたように、第１の態様の料金設定装置は、取得部１１と、期間設定部１３と、金額設定部１２と、を備える。取得部１１は、少なくとも一つの電気事業者から電力が供給される複数の地域Ａ１～Ａｚごとに、異常事象の影響を受ける日時を推定した推定情報を取得するよう構成される。期間設定部１３は、推定情報に基づいて、対処期間を定めるよう構成される。金額設定部１２は、複数の地域Ａ１～Ａｚのうちで、異常事象の影響を受ける対象地域に対して電力を融通可能な地域であって異常事象の影響を受けない地域である融通地域の、対処期間における電力の単価である単位料金を、対処期間における対象地域の単位料金よりも高く設定するよう構成される。

　本態様の料金設定装置１０は、異常事象の影響を受ける地域（対象地域）に対して電力の融通が可能である地域（融通地域）で、電力の対価である単位料金を、対象地域よりも高く設定する金額設定部１２を備えている。すなわち、着目する地域（対象領域）において、電気事業者から供給可能な電力量が不足する可能性がある場合に、着目する地域の外部の地域（融通地域）の単位料金が高く設定される。これにより、融通地域では電力使用量が低減され、融通地域で電力に余剰が生じやすくなる。そのため本実施形態の料金設定装置１０によれば、融通地域から対象地域へ電力が融通されやすくなり、電力の需給の逼迫が回避可能になるという利点がある。

　一例において、異常事象は台風であり、異常事象の影響を受ける対象地域は、台風が通過すると予報された地域である。

　第２の態様の料金設定装置は、第１の態様の料金設定装置において、異常事象は、電気事業者から供給可能な電力量に対する消費される電力量の総量の割合が、基準値以上になることが予想される事象である。

　第３の態様の料金設定装置は、第１又は第２の態様の料金設定装置において、金額設定部１２は、対処期間における融通地域の単位料金を、対処期間を除く期間における融通地域の単位料金よりも高く設定するよう構成される。

　第４の態様の料金設定装置は、第１～第３のいずれかの態様の料金設定装置において、推定情報は、防災に関する警報情報である。

　第５の態様の料金設定装置は、第１～第４のいずれかの態様の料金設定装置において、期間設定部１３は、推定情報に加えて異常事象の種類を用いて対処期間を定めるよう構成される。

　第６の態様の料金設定装置は、第１～第５のいずれかの態様の料金設定装置において、少なくとも一つの電気事業者は、複数の電気事業者Ｘ１～Ｘｚを含む。複数の地域Ａ１～Ａｚの各々は、複数の電気事業者Ｘ１～Ｘｚのうちの一つＸｉ（ｉ＝１～ｚのいずれか）が電力を供給する全範囲に対応する。

　第７の態様の料金設定装置は、第１～第５のいずれかの態様の料金設定装置において、少なくとも一つの電気事業者は、一つの電気事業者Ｘ０である。複数の地域Ａ１～Ａｚの各々は、一つの電気事業者Ｘ０が電力を供給する全範囲Ａ０を複数に区分した範囲の一つである。

　第８の態様の料金設定装置は、第１～第７のいずれかの態様の料金設定装置において、金額設定部１２は、複数の地域Ａ１～Ａｚのうちで、推定情報を基に異常事象の影響を受けると推定された地域を対象地域に指定し、複数の地域Ａ１～Ａｚのうちで、対象地域以外の地域を融通地域に指定するよう構成される。金額設定部１２は、対処期間の間、対象地域の単位料金を第１値に設定し、融通地域の単位料金を第１値よりも大きな第２値に設定するよう構成される。

　（実施形態２）
　実施形態１の料金設定システムでは、料金設定装置１０が端末装置５０に単位料金を通知し、端末装置５０の利用者に、電力の使用量を低減するか否かを判断させている。本実施形態の料金設定システムは、図３に示すように、融通地域に設けられた電力調整装置２０に電動車両３０が接続され、かつ電力調整装置２０から電力系統４０への逆潮流が可能であることを前提としている。電力調整装置２０は、料金設定装置１０が定めた単位料金に基づいて、電力系統４０に逆潮流を行うか否かを判断する。

　電力調整装置２０は、上述したように、蓄電池３１の充電と放電とを行う電力変換部２１と、電力変換部２１の動作を制御する制御部２２とを備える。電力変換部２１は、蓄電池３１の放電を行う場合には、蓄電池３１の電力を電力系統４０に逆潮流させる交流電力に変換する。電力調整装置２０は、実施形態１で説明した構成に加えて、料金設定装置１０から料金単価（単位料金）を取得する金額取得部２４と、料金単価に応じて制御部２２に指示を与える判断部２５とを備える。

　金額取得部２４および判断部２５は、プログラムに従って動作するプロセッサを備えたデバイスを主なハードウェア構成として備える。この種のデバイスは、プロセッサとメモリとを一体に備えるマイコンを代表例とするが、プロセッサにメモリを付設する構成であってもよい。

　判断部２５は、金額取得部２４が取得した単位料金に対する設定値（閾値）を定めており、単位料金が設定値を超える期間は、電力調整装置２０から電力系統４０への逆潮流を、電力系統４０からの受電に優先して行うように制御部２２に指示する。また、判断部２５は、単位料金が設定値以下である期間は、電力調整装置２０が電力系統４０から受電した電力により蓄電池３１を充電する動作を、電力系統４０への逆潮流に優先して行うように制御部２２に指示する。

　したがって、電力調整装置２０は、料金設定装置１０が定めた単位料金を取得し、着目する地域の電力調整装置２０は、蓄電池３１への充電を積極的に行い、融通地域の電力調整装置２０は、蓄電池３１から電力系統４０への逆潮流を積極的に行うことになる。

　本実施形態の料金設定システムにおいて、電動車両３０に搭載されている蓄電池３１の充電および放電を行う例について説明したが、需要家に設置されている蓄電池であっても本実施形態の技術を適用可能である。他の構成および動作は実施形態１と同様であるから説明を省略する。

　以上述べたように、第１の態様の電力調整装置は、金額取得部２４と、電力変換部２１と、制御部２２と、判断部２５とを備える。金額取得部２４は、料金設定装置１０が定めた単位料金の情報を取得するよう構成される。電力変換部２１は、蓄電池３１の充電と放電とを行うよう構成される。制御部２２は、電力変換部２１の動作を制御するよう構成される。判断部２５は、単位料金が所定の設定値（閾値）以下である期間は蓄電池３１の充電を放電に優先して行い、単位料金が設定値を超える期間は蓄電池３１の放電を充電に優先して行うよう構成される。

　第２の態様の電力調整装置は、第１の態様の電力調整装置において、蓄電池３１は、電動車両３０に搭載されている。

Claims (10)

1. 　少なくとも一つの電気事業者から電力が供給される複数の地域ごとに、異常事象の影響を受ける日時を推定した推定情報を取得するよう構成される取得部と、
   　前記推定情報に基づいて、対処期間を定めるよう構成される期間設定部と、
   　前記複数の地域のうちで、前記異常事象の影響を受ける対象地域に対して電力を融通可能な地域であって前記異常事象の影響を受けない地域である融通地域の、前記対処期間における電力の単価である単位料金を、前記対処期間における前記対象地域の単位料金よりも高く設定するよう構成される金額設定部と
   を備える
   　料金設定装置。
2. 　前記異常事象は、電気事業者から供給可能な電力量に対する消費される電力量の総量の割合が、基準値以上になることが予想される事象である
   　請求項１記載の料金設定装置。
3. 　前記金額設定部は、前記対処期間における前記融通地域の単位料金を、前記対処期間を除く期間における前記融通地域の単位料金よりも高く設定するよう構成される
   　請求項１又は２記載の料金設定装置。
4. 　前記推定情報は、防災に関する警報情報である
   　請求項１～３のいずれか１項に記載の料金設定装置。
5. 　前記期間設定部は、前記推定情報に加えて前記異常事象の種類を用いて前記対処期間を定めるよう構成される
   　請求項１～４のいずれか１項に記載の料金設定装置。
6. 　前記少なくとも一つの電気事業者は、複数の電気事業者を含み、
   　前記複数の地域の各々は、前記複数の電気事業者のうちの一つが電力を供給する全範囲に対応する
   　請求項１～５のいずれか１項に記載の料金設定装置。
7. 　前記少なくとも一つの電気事業者は、一つの電気事業者であり、
   　前記複数の地域の各々は、前記一つの電気事業者が電力を供給する全範囲を複数に区分した地域である
   　請求項１～５のいずれか１項に記載の料金設定装置。
8. 　前記金額設定部は、
   　　前記複数の地域のうちで、前記推定情報を基に前記異常事象の影響を受けると推定された地域を前記対象地域に指定し、
   　　前記複数の地域のうちで、前記対象地域以外の地域を前記融通地域に指定し、
   　　前記対処期間の間、前記対象地域の単位料金を第１値に設定し、前記融通地域の単位料金を前記第１値よりも大きな第２値に設定する
   　よう構成される
   　請求項１～７のいずれか一項に記載の料金設定装置。
9. 　請求項１～８のいずれか１項に記載の料金設定装置が定めた単位料金の情報を取得するよう構成される金額取得部と、
   　蓄電池の充電と放電とを行うよう構成される電力変換部と、
   　前記電力変換部の動作を制御するよう構成される制御部と、
   　前記単位料金が所定の設定値以下である期間は前記蓄電池の充電を放電に優先して行い、前記単位料金が前記設定値を超える期間は前記蓄電池の放電を充電に優先して行うよう構成される判断部とを有する
   　電力調整装置。
10. 　前記蓄電池は、電動車両に搭載されている
    　請求項９記載の電力調整装置。

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