WO2013137093A1 - 光学積層体及びその製造方法、並びに立体画像表示装置 - Google Patents

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Abstract

 立体画像表示装置に設けられうる光学積層体であって、前記光学積層体は、透明樹脂フィルム、第一の粘着層、パターン位相差層及び第二の粘着層をこの順に備え、前記パターン位相差層は、右目用画像及び左目用画像の一方を表示する光を透過させうる第一領域と、前記右目用画像及び左目用画像の他方を表示する光を透過させうる第二領域とを備え、前記第一の粘着層の緩和弾性率が、2N/cm~15N/cmである、光学積層体。

Description

光学積層体及びその製造方法、並びに立体画像表示装置
 本発明は、光学積層体及びその製造方法、並びに立体画像表示装置に関する。
 立体画像表示装置のある態様として、画素と位置合わせされた状態で設けられた、特定のパターンを有する位相差層(パターン位相差層)を備えるものが知られている。例えば、パッシブ形式の立体画像表示装置では、通常、同一画面内に右目用の画像と左目用の画像とを同時に表示させ、これらの画像を専用のメガネを用いて左右の目それぞれに振り分けるようにしている。そのため、パッシブ形式の立体画像表示装置には、右目用の画像及び左目用の画像のそれぞれを、異なる偏光状態で表示させることが求められる。そのような表示を達成するため、パッシブ形式の立体画像表示装置には、2つ以上の異なる位相差(レターデーション)を有する複数種類の領域からなるパターンを有するパターン位相差層が設けられることがある。また、2以上の異なる方向に遅相軸を有する複数種類の領域からなるパターンを有するパターン位相差層が設けられることもある(特許文献1~4参照)。
 また、特許文献5及び6のような技術も知られている。
特開2005-49865号公報 特開2004-279946号公報 特開2005-10738号公報 特開2011-22419号公報 特開平9-105814号公報 特開2001-262103号公報
 パターン位相差層は、通常、他のフィルムと貼り合わせた光学積層体として用いられる。例えば、パターン位相差層は、粘着層を用いて透明樹脂フィルムと貼り合わせて光学積層体として用いられることがある。
 ところが、このような光学積層体を備えた立体画像表示装置を高温及び/又は高湿度の環境において用いると、クロストークが生じることがあった。ここで、高温及び/又は高湿度の環境とは、高温環境、高湿度環境、又は、高温且つ高湿度の環境を意味する。また、クロストークとは、立体画像表示装置において、左目用画像が右目で視認されたり、右目用画像が左目で視認されたりする現象を意味する。このようなクロストークについて本発明者らが検討したところ、パターン位相差層の各領域のパターン形状の変化が原因であることが判明した。
 本発明は前記の課題に鑑みて創案されたもので、高温及び/又は高湿度の環境においてもパターン位相差層のパターン形状が変化し難い光学積層体、及びその製造方法、並びに当該光学積層体を備える立体画像表示装置を提供することを目的とする。
 本発明者らは前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。すなわち、パターン位相差層と貼り合わせる透明樹脂フィルムの中には、温度条件及び/又は湿度条件に応じて例えば膨張及び収縮などの寸法変化を生じるものがある。透明樹脂フィルムが寸法変化を生じると、その寸法変化によって生じる応力がパターン位相差層に伝わり、パターン位相差層のパターン形状が変化することがある。このようにパターン形状が変化すると、立体画像表示装置において画素の位置とパターン位相差層の当該画素に対応する領域の位置とがずれるので、クロストークが生じることがあった。
 そこで、パターン位相差層と透明樹脂フィルムとを粘着層を介して貼り合わせる場合に、粘着層で応力緩和を生じうるように粘着層の緩和弾性率の範囲を設定する。これにより、高温及び高湿度の環境においても、パターン位相差層のパターン形状が変化し難い光学積層体を実現しうる。本発明者は、このような知見に基づき、本発明を完成させた。
 すなわち、本発明は以下の通りである。
 〔1〕 立体画像表示装置に設けられうる光学積層体であって、
 前記光学積層体は、透明樹脂フィルム、第一の粘着層、パターン位相差層及び第二の粘着層をこの順に備え、
 前記パターン位相差層は、右目用画像及び左目用画像の一方を表示する光を透過させうる第一領域と、前記右目用画像及び左目用画像の他方を表示する光を透過させうる第二領域とを備え、
 前記第一の粘着層の緩和弾性率が、2N/cm~15N/cmである、光学積層体。
 〔2〕 前記透明樹脂フィルムが、防眩機能層及び反射防止機能層の一方又は両方を含み、酢酸セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びノルボルネン系樹脂からなる群より選ばれる樹脂のフィルムを備える、〔1〕記載の光学積層体。
 〔3〕 前記パターン位相差層の前記第一領域が、1/2波長の面内位相差を有し、
 前記パターン位相差層の前記第二領域が、面内位相差を有さず、
 前記第二の粘着層のパターン位相差層とは反対側に、面内において均一な1/4波長の面内位相差及び遅相軸方向を有する位相差フィルムを備える、〔1〕又は〔2〕記載の光学積層体。
 〔4〕 前記位相差フィルムの遅相軸と、前記パターン位相差層の前記第一領域の遅相軸とがなす角度が90°±15°又は45°±15°である、〔3〕記載の光学積層体。
 〔5〕 〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の光学積層体の製造方法であって、
 前記パターン位相差層を、前記透明樹脂フィルムとは別に形成する工程と、
 前記パターン位相差層を、第一の粘着層を介して前記透明樹脂フィルムに貼り合わせる工程とを有する、光学積層体の製造方法。
 〔6〕 〔3〕又は〔4〕に記載の光学積層体の製造方法であって、
 前記パターン位相差層を、前記透明樹脂フィルムとは別に形成する工程と、
 前記パターン位相差層と前記透明樹脂フィルムとを、前記第一の粘着層を介して貼り合わせる工程と、
 前記パターン位相差層と前記位相差フィルムとを、前記第二の粘着層を介して貼り合わせる工程とを含む、光学積層体の製造方法。
 〔7〕 前記パターン位相差層の前記第一領域及び前記第二領域がそれぞれ1/4波長の面内位相差を有し、
 前記パターン位相差層の前記第一領域の遅相軸方向と前記第二領域の遅相軸方向とが垂直である、〔1〕又は〔2〕に記載の光学積層体。
 〔8〕 〔7〕記載の光学積層体の製造方法であって、
 前記パターン位相差層を、前記透明樹脂フィルムとは別に形成する工程と、
 前記パターン位相差層を、第一の粘着層を介して前記透明樹脂フィルムに貼り合わせる工程とを有する、光学積層体の製造方法。
 〔9〕 ガラスに対する前記第一の粘着層の剥離強度が、20N/25mm以上である、〔1〕~〔4〕及び〔7〕のいずれか一項に記載の光学積層体。
 〔10〕 前記透明樹脂フィルムの湿度線膨張係数が、0.5×10-5cm/cm/%RH~1.5×10-5cm/cm/%RHである、〔1〕~〔4〕、〔7〕及び〔9〕のいずれか一項に記載の光学積層体。
 〔11〕 〔1〕~〔4〕、〔7〕、〔9〕及び〔10〕のいずれか一項に記載の光学積層体を備える、立体画像表示装置。
 本発明の光学積層体は、高温及び/又は高湿度の環境においてもパターン位相差層のパターン形状が変化し難い。
 本発明の光学積層体の製造方法によれば、パターン位相差層のパターン形状を変形させないようにしながら、本発明の光学積層体を製造することができる。
 本発明の立体画像表示装置によれば、高温及び/又は高湿度の環境下においてクロストークを抑制することができる。
図1は、本発明の第一実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。 図2は、パターン位相差層が有しうるパターンの一例を概略的に示す上面図である。 図3は、本発明の第二実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。 図4は、本発明の第三実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。 図5は、本発明の第四実施形態に係る立体画像表示装置として使用しうる液晶表示装置の例を概略的に示す分解上面図である。 図6は、本発明の第五実施形態に係る立体画像表示装置として使用しうる液晶表示装置の例を概略的に示す分解上面図である。 図7は、本発明の第六実施形態に係る立体画像表示装置として使用しうる液晶表示装置の例を概略的に示す分解上面図である。 図8は、実施例1において多層フィルム1Aを厚み方向に平行に切った様子を模式的に示す断面図である。 図9は、実施例1において多層フィルム1Bを厚み方向に平行に切った様子を模式的に示す断面図である。 図10は、実施例1において多層フィルム1Cを厚み方向に平行に切った様子を模式的に示す断面図である。 図11は、実施例1において光学積層体を厚み方向に平行に切った様子を模式的に示す断面図である。 図12は、実施例1における光学積層体のパターン形状の安定性の評価に用いる評価用サンプルを、光学積層体の厚み方向から見た様子を示す図である。 図13は、実施例1における評価用サンプルを、異方性領域及び等方性領域が延在する方向Xに垂直な面で切った断面を模式的に示す図である。
 以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に挙げる実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
 以下の説明において、「長尺」とは、幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。幅に対する長さの倍率の上限は、特に限定されないが、通常5000倍以下としてもよい。
 また、「偏光板」、「1/4波長板」及び「1/2波長板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
 また、「位相差」とは、別に断らない限り、面内位相差(面内レターデーション)のことを意味する。フィルムの面内位相差は、(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表わす。また、nyは、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。さらに、dは、フィルムの膜厚を表す。面内位相差は、市販の位相差測定装置(例えば、フォトニックラティス社製「WPA-micro」)あるいはセナルモン法を用いて測定しうる。
 また、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及び「メタクリレート」のことを意味し、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び「メタクリル」のことを意味する。
 また、「紫外線」とは、波長が1nm以上400nm以下の光のことを意味する。
 さらに、偏光メガネのレンズは、別に断らない限り、必ずしも光を集束又は拡散させうるものでなくてもよい。例えば、平らなフィルムのみからなる光学部材も、ここではレンズと呼ぶ。
 また、偏光板の透過軸、位相差フィルムの遅相軸等のような、光学素子の光学軸の角度は、別に断らない限り、厚み方向から見た角度のことを意味する。
 また、光学軸については、水平方向を0°方向とし、時計回り方向を(+)、反時計回りを(-)で表記することがある。
 また、構成要素の方向が「平行」又は「垂直」とは、特に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。さらに、ある方向に「沿って」とは、ある方向に「平行に」との意味である。
[1.第一実施形態]
 図1は、本発明の第一実施形態に係る光学積層体100を模式的に示す断面図である。図1に示すように、光学積層体100は、立体画像表示装置に設けられうる光学部材であって、マスキングフィルム110と、透明樹脂フィルム120と、第一の粘着層130と、パターン位相差層140と、第二の粘着層150と、位相差フィルム160と、第三の粘着層170と、セパレータフィルム180とを、この順に備える。
 (マスキングフィルム110)
 マスキングフィルム110は、光学積層体100の表面を保護するフィルムである。マスキングフィルム110を備えることにより、光学積層体100の表面が傷付いたり、汚れたり、フィルム同士がブロッキングしたりすることを防止できる。マスキングフィルム110としては、微粘着層を有する剥離可能なフィルムを用いてもよい。微粘着層の透明樹脂フィルムに対する剥離強度は、0.005N/25mm以上が好ましく、0.01N/25mm以上がさらに好ましく、また、0.1N/25mm以下が好ましく、0.05N/25mm以下がさらに好ましい。この範囲にすることで、光学積層体100のブロッキングを防止することができると同時に、光学積層体100を剥離する場合に、透明樹脂フィルム側に糊残りせず、パターン位相差層140に損傷を与えることなく剥離することができる。
 (透明樹脂フィルム120)
 透明樹脂フィルム120は、透明な、樹脂を含むフィルムである。ここで、透明樹脂フィルム120が透明であるとは、光学積層体100が全体として十分な全光線透過率を有する程度に、透明樹脂フィルム120の全光線透過率が高いことを意味する。透明樹脂フィルム120は、通常、光学積層体100に様々な機能を備えさせるべく設けられるフィルムである。透明樹脂フィルム120の例を挙げると、防眩フィルム及び反射防止フィルムが挙げられる。さらに透明樹脂フィルム120は、特開2007-254653号公報、特開2010-176022号公報などに記載する易接着層を有していてもよい。易接着層の厚さは任意であるが、通常0.01μm以上、通常5μm以下である。
 防眩フィルムは、外部から照射された光の画面における反射によって写り込みが生じることを防止する機能(以下、「防眩機能」ということがある。)を有するフィルムである。このような防眩フィルムは、防眩機能を発揮しうる層(以下、適宜「防眩機能層」ということがある。)のみを備える単層構造のフィルムであってもよく、基材フィルムと防眩機能層とを備える複層構造のフィルムであってもよい。前記の防眩機能層としては、例えば、表面に微細な凹部又は凸部を有し、当該表面において反射する光を散乱させうる層が挙げられる。
 また、反射防止フィルムは、外部から照射された光の画面における反射量を抑制する機能(以下、「反射防止機能」ということがある。)を有するフィルムである。このような反射防止フィルムは、反射防止機能を発揮しうる層(以下、適宜「反射防止機能層」ということがある。)のみを備える単層構造のフィルムであってもよく、基材フィルムと反射防止機能層とを備える複層構造のフィルムであってもよい。前記の反射防止機能層としては、例えば、屈折率が低い(例えば、屈折率が1.30~1.45)層を最表面側に設け、屈折率が低い層と屈折率が高い層とを繰り返し積層した層などが挙げられる。
 透明樹脂フィルム120に含まれる樹脂の中には、高温及び/又は高湿度の環境においては、通常の環境と比べて膨張又は収縮を生じうるものがある。例えば、トリアセチルセルロース樹脂は、温度及び/又は湿度が高くなると収縮を生じる傾向がある。本実施形態においては、温度及び/又は湿度によって収縮を生じうるフィルムを透明樹脂フィルム120として用いているものとする。そのため、透明樹脂フィルム120は、温度及び/又は湿度が高くなると、寸法変化を生じる。このような透明樹脂フィルム120の寸法変化は、応力を生じさせる。この応力が仮に粘着層を介してパターン位相差層140に伝わると、パターン位相差層140のパターン形状が変化する可能性がある。これに対し、本実施形態では、パターン位相差層140のパターン形状の変化を抑制するために、第一の粘着層130として、後述するように応力緩和を生じうるものを用いている。
 (第一の粘着層130)
 第一の粘着層130は、透明樹脂フィルム120とパターン位相差層140との間に設けられた粘着層である。すなわち、第一の粘着層130により、透明樹脂フィルム120とパターン位相差層140とは貼り合せられている。この際、本実施形態では、第一の粘着層130において応力緩和が生じうるようにすることで、透明樹脂フィルム120の寸法変化により生じる応力をパターン位相差層140に伝わり難くしている。このため、本実施形態においては、パターン位相差層140のパターン形状の変化は抑制されている。
 具体的には、第一の粘着層130の緩和弾性率は、通常2N/cm以上、好ましくは2.5N/cm以上、より好ましくは3N/cm以上である。緩和弾性率が大きい第一の粘着剤を用いることにより、透明樹脂フィルム120に生じた応力を第一の粘着剤において緩和(吸収)させて、透明樹脂フィルム120の寸法変化による応力をパターン位相差層140に伝わり難くできる。また、第一の粘着層130の緩和弾性率は、通常15N/cm以下、好ましくは14.5N/cm以下、より好ましくは14N/cm以下である。これにより、本来の粘着剤としての機能を維持でき、糊残り防止やリワーク性に優れる。また、高温の雰囲気下で当該粘着剤に含まれる低沸点成分が気化して粘着層内部に泡が生じ、粘着剤自体の耐熱性や耐熱湿性が劣化するのを防止することができる。
 第一の粘着層130の緩和弾性率は、例えば、粘弾性測定装置を用いて測定しうる。具体的には、20℃を基準温度として温度-時間換算のマスターカーブから周波数1Hzにおける貯蔵弾性率G’を測定し、その測定データから、緩和時間100秒における緩和弾性率を求めうる。
 このとき、粘弾性測定装置を用いた測定条件は、以下のように設定する。
 温度:20℃~150℃
 角振動数:ω=0.005rad/sec~500rad/sec
 パラレルプレート:25mmφ
 歪み量:3%
 また、透明樹脂フィルム120とパターン位相差層140とを安定して貼り合わせるために、第一の粘着層130は剥離強度が高いことが好ましい。ここで剥離強度が高いとは、第一の粘着層130がある物体に粘着している場合に、その物体から第一の粘着層130を剥離させるために要する力が大きいことを意味する。具体的には、第一の粘着層130のガラスに対する剥離強度は、好ましくは20N/25mm以上、より好ましくは25N/25mm以上、特に好ましくは30N/mm以上である。
 第一の粘着層130のガラスに対する剥離強度は、例えば、JIS-Z0237に準拠して、以下の要領で測定しうる。すなわち、PETフィルム(厚さ100μm)の表面に第一の粘着層130を形成し、その粘着層130と、ガラス(日本板硝子製のフロートガラス;厚み3mm)とを接触させ、JIS-K6253に準拠した2kgのローラーで貼り合わせる。その後、温度23℃、湿度70%RHで24時間保持し、剥離強度測定用のサンプルとする。このサンプルについて、島津製作所社製のAUTOGRAPH(登録商標)「AGS-500D」を用いて、次の条件でガラスに対する剥離強度を測定する。
 温度:23℃
 剥離角度:180°
 剥離速度:300mm/min
 サンプル幅:25mm
 (パターン位相差層)
 パターン位相差層140は、その面内に、右目用画像及び左目用画像の一方を表示する光を透過させうる第一領域と、右目用画像及び左目用画像の他方を表示する光を透過させうる第二領域とを備える層である。第一領域及び第二領域は、通常、位相差又は遅相軸方向が異なる。ここで、第一領域及び第二領域は、位相差のみが異なっていてもよく、遅相軸方向のみが異なっていてもよく、位相差及び遅相軸方向の両方が異なっていてもよい。通常、第一領域及び第二領域は所定のパターンを形成するようになっている。このため、パターン位相差層の名称には「パターン」との用語が付されている。
 本実施形態では、第一領域及び第二領域として異方性領域141及び等方性領域142を備える例を示して説明する。
 異方性領域141とは、面内の屈折率が異方性を有する領域のことをいう。異方性領域141は、面内の屈折率が異方性を有することにより、面内位相差を有する。異方性領域141の面内位相差の具体的な大きさは、例えば、1/2波長であってもよい。これにより、異方性領域141は1/2波長板として機能しうる。ここで位相差が1/2波長であるとは、測定波長543nmで測定した面内位相差の値が、通常225nm以上、好ましくは245nm以上、また、通常285nm以下、好ましくは265nm以下であることをいう。
 また、等方性領域142とは、面内の屈折率が等方性を有する領域のことをいう。等方性領域142は、面内の屈折率が等方性を有することにより、面内位相差を有しない。ここで、面内位相差を有しないとは、測定波長543nmで測定した面内位相差の値が、通常20nm以下、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下のことをいう。下限は理想的には0nmであるが、通常は1nm以上である。
 パターン位相差層140は、前記の異方性領域141及び等方性領域142を、それぞれ複数有する。これらの異方性領域141及び等方性領域142は、通常、一方向に延在して形成されている。また、異方性領域141及び等方性領域142は、その延在する方向に交差する方向では交互に並んでいて、全体として光学積層体100の用途に応じたパターンを構成している。通常、光学積層体100は立体画像表示装置の表示パネルと組み合わせて使用されるので、表示パネルの画素の配置に応じて、パターン位相差層140の異方性領域141及び等方性領域142の具体的なパターンが設定される。
 パッシブ形式の立体画像表示装置においては、表示パネルは通常2組の画素群、即ち、右目用画像を表示する画素群及び左目用画像を表示する画素群を有する。この場合、パターン位相差層140の異方性領域141及び等方性領域142のパターンは、これらの画素群のうちの一方に対応する領域が等方性領域142であり、他方に対応する領域が異方性領域141であるパターンとしてもよい。
 図2は、パターン位相差層140が有しうるパターンの一例を概略的に示す上面図である。なお、図2において、異方性領域141には斜線を付して示す。
 図2に示すように、パターン位相差層140において、異方性領域141及び等方性領域142は、通常は一方向Xに延在する帯状の形状を有する。また、パターン位相差層140は、面内において異方性領域141と等方性領域142とを、異方性領域141及び等方性領域142が延在する方向Xに垂直な方向Yにおいて交互に有する。したがって、パターン位相差層140は、これらの異方性領域141及び等方性領域142からなるストライプ状のパターンを有している。また、パターン位相差層140は、異方性領域141と等方性領域142との境界線143を、一方向に延在する線として有する。
 (第二の粘着層150)
 第二の粘着層150は、パターン位相差層140の第一の粘着層130とは反対側に設けられた粘着層である。第二の粘着層150は、パターン位相差層140を他の部材に貼り付ける機能を有する。本実施形態では、第二の粘着層150を介して、パターン位相差層140には位相差フィルム160が貼り付けられている。
 パターン位相差層140と位相差フィルム160とを安定して貼り合わせるために、第二の粘着層150は剥離強度が高いことが好ましい。第二の粘着層150の具体的な剥離強度の範囲は、第一の粘着層130と同様にしてもよい。
 また、第二の粘着層150の応力緩和の程度は、第一の粘着層130の応力緩和の程度よりも小さいことが好ましい。したがって、第二の粘着層150の緩和弾性率は、第一の粘着層130の緩和弾性率よりも小さいことが好ましい。これにより、透明樹脂フィルム120に生じた応力を第一の粘着層130で緩和させる一方で、位相差フィルム160とパターン位相差層140をより強固に貼り合わせることができ、パターン位相差層140のパターン寸法を安定化することができる。
 (位相差フィルム160)
 位相差フィルム160は、第二の粘着層150のパターン位相差層140とは反対側に設けられたフィルムである。この位相差フィルム160は、少なくとも位相差フィルム160の有効領域において、面内に均一な位相差を有する。ここで有効領域とは、位相差フィルム160を立体画像表示装置に設けた場合に、画像を表示する光が当該位相差フィルム160を透過しうる領域のことを意味する。一般に、立体画像表示装置の画面は外周をフレームに囲まれており、このフレームに囲まれた画面を厚み方向において位相差フィルム160に投影した領域が、通常は位相差フィルム160の有効領域である。
 また、面内に均一な位相差を有するとは、パターン位相差層140とは異なり、第一領域及び第二領域からなるパターンを位相差フィルム160が有しないという意味である。具体的には、位相差フィルム160の面内の位相差のばらつきが、好ましくは±20nm以内、より好ましくは±10nm以内であれば、位相差が均一である。
 さらに、位相差フィルム160は、通常、少なくとも位相差フィルム160の有効領域において、面内において均一な遅相軸方向を有している。ここで、面内において均一な遅相軸方向を有するとは、位相差フィルム160の面内の遅相軸方向のばらつきが、好ましくは±5°以内、より好ましくは±1°以内であることをいう。
 本実施形態では、有効領域以外の領域を含む全体において、位相差フィルム160は均一な位相差を有し、かつ、遅相軸の方向が均一となっているものとする。
 位相差フィルム160の具体的な位相差は、位相差フィルム160を適用する立体画像表示装置の構成に応じて設定してもよい。本実施形態では、位相差フィルム160の位相差は1/4波長であり、位相差フィルム160が1/4波長板として機能しうるようになっている。ここで、位相差が1/4波長であるとは、位相差が、透過光の波長範囲の中心値の1/4の値から、通常±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲にあるか、または、中心値の3/4の値から通常±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲にあることを示す。前記の透過光は通常は可視光であるため、透過光の波長範囲の中心値としては、通常、透過光の波長範囲の中心値である543nmを適用する。
 また、位相差フィルム160の遅相軸の方向は、パターン位相差層140の構成に応じて設定することが好ましい。具体的には、位相差フィルム160の遅相軸と、パターン位相差層140の第一領域である異方性領域141の遅相軸とがなす角度が、90°±15°又は45°±15°となるようにすることが好ましい。これにより、立体画像表示装置に光学積層体100を取り付けた場合に、立体画像表示装置においてクロストーク率が7%以下になるような適切な画像表示を実現できる。
 (第三の粘着層170)
 第三の粘着層170は、位相差フィルム160の第二の粘着層150とは反対側に設けられた粘着層である。第三の粘着層170は、位相差フィルム160を他の部材に貼り付ける機能を有する。本実施形態では、第三の粘着層170を介して、位相差フィルム160にはセパレータフィルム180が貼り付けられている。また、通常、立体画像表示装置に光学積層体100を取り付ける際にはセパレータフィルム180は剥がされ、位相差フィルム160は第三の粘着層170を介して偏光板に貼り付けられるようになっている。
 位相差フィルム160と偏光板とを安定して貼り合わせるために、第三の粘着層170は剥離強度が高いことが好ましい。第三の粘着層170の具体的な剥離強度の範囲は、第一の粘着層130と同様にしてもよい。一方、偏光板とのリワーク性の観点より、第三の粘着層170の偏光板に対する剥離強度は、1N/25mm以上が好ましく、2N/25mm以上がより好ましく、また、20N/25mm以下が好ましく、15N/25mm以下がさらに好ましい。また、第三の粘着層170のセパレータフィルムに対する剥離強度は、0.005N/25mm以上が好ましく、0.01N/25mm以上がより好ましく、また、0.5N/25mm以下が好ましく、0.3N/25mm以下がさらに好ましい。この範囲にすることで、位相差フィルム160と偏光板とを貼り合わせ、長期にわたって表示装置を使用した際に、位相差フィルム160や光学積層体100が偏光板から剥がれたり浮きあがったりすることを防止できる。また、位相差フィルム160や光学積層体100を偏光板から剥離して貼り直す際に、糊残りをせずリワークができ、パターン位相差層140に損傷を与えることなく剥離することができる。
 第三の粘着層170の応力緩和の程度は任意であり、例えば、第二の粘着層150の応力緩和の程度と同様にしてもよい。したがって、第三の粘着層170の緩和弾性率は、第一の粘着層130の緩和弾性率よりも小さくしてもよい。
 (セパレータフィルム180)
 セパレータフィルム180は、光学積層体100の保存時及び運搬時に、光学積層体100の表面を保護するフィルムである。また、セパレータフィルム180として滑り性に優れるフィルムを用いることにより、光学積層体100をロール状に巻回して保存する場合にブロッキングを防止しうるようにすることが好ましい。また、通常、光学積層体100を立体画像表示装置に取り付けるときには、セパレータフィルム180は光学積層体100から剥がされる。したがって、セパレータフィルム180は、例えば透明性などの光学特性に優れていなくても構わない。
 また、セパレータフィルム180を光学積層体100から剥す場合、マスキングフィルム付き光学積層体からマスキングフィルム110が先に剥がれないように、マスキングフィルム110の微粘着層および第三の粘着層170の各基材に対する剥離力を調整することが好ましい。
 (光学積層体100の物性)
 光学積層体100は、通常、マスキングフィルム110及びセパレータフィルム180を剥がした状態において高い透明性を有する。具体的には、マスキングフィルム110及びセパレータフィルム180を剥がした状態での光学積層体100の全光線透過率は、通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。なお、上限は理想的には100%である。ここで、全光線透過率は、JIS K7361-1997に準拠して測定する。
 また、光学積層体100は、通常、マスキングフィルム110及びセパレータフィルム180を剥がした状態においてヘイズが小さい。具体的には、マスキングフィルム110及びセパレータフィルム180を剥がした状態での光学積層体100のヘイズは、通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下である。なお、下限値は理想的にはゼロであるが、通常は0.1%以上である。ここで、ヘイズは、JIS K7361-1997に準拠して測定する。
 (光学積層体100の製造方法)
 光学積層体100の製造方法に制限は無い。例えば、マスキングフィルム110、透明樹脂フィルム120、第一の粘着層130、パターン位相差層140、第二の粘着層150、位相差フィルム160、第三の粘着層170及びセパレータフィルム180を、任意の順番で貼り合せて製造してもよい。
 ただし、パターン位相差層140は、透明樹脂フィルム120とは別に形成した後に、第一の粘着層130を介して透明樹脂フィルム120に貼り合わせることが好ましい。したがって、本実施形態に係る光学積層体100は、パターン位相差層140を、透明樹脂フィルム120とは別に形成する工程と、パターン位相差層140と透明樹脂フィルム120とを第一の粘着層130を介して貼り合わせる工程と、パターン位相差層140と位相差フィルム160とを第二の粘着剤150を介して貼り合わせる工程とを含む製造方法によって製造することが好ましい。通常、これらの工程は、前記の記載したとおりの順番で行う。
 通常は、所定の基材フィルム(図示せず。)の表面にパターン位相差層140を形成し、そのパターン位相差層140を第一の粘着層130を介して透明樹脂フィルム120に貼り合せた後で、パターン位相差層140から基材フィルムを剥離する。このように、基材フィルムから透明樹脂フィルム120にパターン位相差層140を転写することを含む製造方法によって光学積層体100を製造することにより、以下のような利点が得られる。
 一般に、パターン位相差層140は薄く、剛性が低い。このため、外力によってパターン位相差層140のパターン形状は容易に変化する傾向がある。この点、例えば基材フィルムの表面に密着しているときにはパターン位相差層140のパターン形状は容易には変形しないが、パターン位相差層140を単独で取り扱ったり、剛性の低いフィルムに貼り付けて取り扱ったりする時には、パターン位相差層140のパターン形状は容易に変形する。これに対し、立体画像表示装置用の光学積層体100に用いられる透明樹脂フィルム120は、一般に剛性が高く、自己支持性を有する。このため、透明樹脂フィルム120とは別にパターン位相差層140を形成した後で、そのパターン位相差層140を第一の粘着層130を介して透明樹脂フィルム120に貼り合わせるようにすれば、透明樹脂フィルム120によりパターン位相差層140を安定して支持できる。したがって、パターン位相差層140のパターン形状を変形しないようにしながら、光学積層体100を製造することができる。よって、本実施形態のように異方性領域141及び等方性領域142が帯状に延在する形状の領域となっている場合には、第一領域及び第二領域の直進性を高いレベルで維持することができる。ここで直進性とは、パターン位相差層140において第一領域及び第二領域が、真っ直ぐに所望の一方向へと延在する性質をいう。
 また、一般に、異なる位相差を有する2種類以上の領域を含むパターン位相差層140では、一部の領域の高さ(厚み方向の寸法)が別の領域の高さよりも高くなり、パターン位相差層140の表面に微細な凹部又は凸部が形成されることがあった。本実施形態の場合、通常は、異方性領域141よりも等方性領域142の方が高くなる傾向がある。これに対し、本実施形態では緩和弾性率が小さく応力緩和に優れた粘着層を第一の粘着層130として用いている。緩和弾性率が小さく応力緩和に優れた第一の粘着層130は、微細な凹部又は凸部に対しても容易に密着可能である。したがって、前記のように透明樹脂フィルム120とは別にパターン位相差層140を形成した後で、そのパターン位相差層140を第一の粘着層130を介して透明樹脂フィルム120に貼り合わせるようにしても、本実施形態では、パターン位相差層140と第一の粘着層130との界面で気泡が生じる可能性は低く、光学積層体100の品質を高めることができる。
 (主な利点)
 本発明の第一実施形態に係る光学積層体100は、高温及び/又は高湿度の環境において透明樹脂フィルム120に寸法変化があっても、パターン位相差層140のパターン形状が変化し難い。このため、光学積層体100を適用した立体画像表示装置においてクロストークの発生を防止して、高画質の画像表示を可能にできる。また、光学積層体100の保管安定性を向上させることも期待できる。
 また、光学積層体100は、パターン位相差層140のパターン形状が変化し難いので、パターン位相差層140のパターン形状の寸法安定性に優れる。そのため、光学積層体100を立体画像表示装置に取り付ける際に、立体画像表示装置の表示パネルの画素と、光学積層体100のパターン位相差層140の異方性領域141及び等方性領域142との位置合わせを正確に行うことができる。したがって、表示パネルにおけるブラックマトリクスの幅を狭くして、視野角を広くすることが可能である。
 (その他)
 本発明の第一実施形態に係る光学積層体100は、本発明の効果を著しく損なわない限り、更に変更して実施してもよい。
 例えば、光学積層体100の任意の位置に、マスキングフィルム110、透明樹脂フィルム120、第一の粘着層130、パターン位相差層140、第二の粘着層150、位相差フィルム160、第三の粘着層170、及びセパレータフィルム180以外の任意の層を設けてもよい。そのような任意の層の例を挙げると、易接着層(プライマー層ともいう。)、配向膜などが挙げられる。
[2.第二実施形態]
 図3は、本発明の第二実施形態に係る光学積層体200を模式的に示す断面図である。図3に示すように、光学積層体200は、透明樹脂フィルム120の代わりに別の透明樹脂フィルム220を備えること以外は、第一実施形態に係る光学積層体100と同様である。したがって、光学積層体200は、マスキングフィルム110と、透明樹脂フィルム220と、第一の粘着層130と、パターン位相差層140と、第二の粘着層150と、位相差フィルム160と、第三の粘着層170と、セパレータフィルム180とを、この順に備える。
 透明樹脂フィルム220は、第一実施形態に係る透明樹脂フィルム120と比べて温度及び/又は湿度が高くなっても膨張又は収縮を生じ難いこと以外は、第一実施形態に係る透明樹脂フィルム120と同様である。具体的には、第二実施形態に係る透明樹脂フィルム220の湿度線膨張係数は、通常1.5×10-5cm/cm/%RH以下、好ましくは1.3×10-5cm/cm/%RH以下、より好ましくは1.0×10-5cm/cm/%RH以下である。このように膨張又は収縮を生じ難い透明樹脂フィルム220を用いることにより、パターン位相差層140のパターン形状の変化の原因となる応力の発生自体を抑制することが可能である。したがって、第二実施形態に係る光学積層体200においては、第一実施形態よりも更にパターン位相差層140のパターン形状の変化を抑制することができる。また、透明樹脂フィルム220の湿度線膨張係数は、通常0.5×10-5cm/cm/%RH以上である。
 透明樹脂フィルム220の湿度線膨張係数は、例えば、以下の要領で測定しうる。
 透明樹脂フィルムから、透明樹脂フィルムの幅方向が測定方向となるように、JIS K7127に記載の試験片タイプ1Bに準拠してフィルム片を切り出す。切り出したフィルム片を、恒温恒湿槽付引張試験機(インストロン社製)にセットし、「湿度35%RH、23℃の窒素雰囲気」又は「湿度70%RH、23℃の窒素雰囲気」に保ち、その時のフィルム片の長さをそれぞれ測定する。この測定結果から、次式にて湿度線膨張係数を算出する。このとき、測定方向は、切り出したフィルム片の長手方向と平行にする。また、測定は5回行い、その平均値を湿度線膨張係数とする。
 湿度線膨張係数=(L70-L35)/(L35×△H)
 L35:湿度35%RHのときのフィルム片の長さ(mm)
 L70:湿度70%RHのときのフィルム片の長さ(mm)
 △H:35(=70-35)%RH
 また、第二実施形態に係る光学積層体200は、第一実施形態に係る光学積層体100と同様に製造することが可能であり、また、第一実施形態に係る光学積層体100と同様の利点を得ることができる。
 さらに、第二実施形態に係る光学積層体200は、第一実施形態に係る光学積層体100と同様に変更して実施してもよい。
[3.第三実施形態]
 図4は、本発明の第三実施形態に係る光学積層体300を模式的に示す断面図である。図4に示すように、光学積層体300は、パターン位相差層140の代わりに別のパターン位相差層340を備えること、並びに、位相差フィルム160及び第三の粘着層170が無いこと以外は、第一実施形態に係る光学積層体100と同様である。したがって、光学積層体300は、マスキングフィルム110と、透明樹脂フィルム120と、第一の粘着層130と、パターン位相差層340と、第二の粘着層150と、セパレータフィルム180とを、この順に備える。
 本実施形態に係るパターン位相差層340は、第一領域及び第二領域の遅相軸の方向及び面内位相差が異なること以外は、第一実施形態に係るパターン位相差層140と同様である。本実施形態では、パターン位相差層340は、第一領域及び第二領域として第一異方性領域341及び第二異方性領域342を備える。第一異方性領域341及び第二異方性領域342は、面内位相差は同じである。第一異方性領域341及び第二異方性領域342の面内位相差は、通常、1/4波長とする。
 第一異方性領域341の遅相軸の方向と第二異方性領域342の遅相軸の方向とは、異なる。具体的には、第一異方性領域341の遅相軸の方向と第二異方性領域342の遅相軸の方向とは、垂直になっている。ここで遅相軸の方向が垂直であるとは、これらの遅相軸の方向がなす角度が、通常90°±5°以内、好ましくは90°±1°以内であることをいう。第一異方性領域341の遅相軸の方向及び第二異方性領域342の遅相軸の方向の具体的な組み合わせの例を挙げると、第一異方性領域341及び第二異方性領域342が延在する方向に対して平行な遅相軸方向と垂直な遅相軸方向との組み合わせ、第一異方性領域341及び第二異方性領域342が延在する方向に対して+45°の角度をなす遅相軸方向と-45°の角度をなす遅相軸方向との組み合わせ、などが挙げられる。
 このように第一異方性領域341及び第二異方性領域342を備えるパターン位相差層340も、第一実施形態に係るパターン位相差層140と同様に、透明樹脂フィルム120とは別に形成した後に、第一の粘着層130を介して透明樹脂フィルム120に貼り合わせることが好ましい。
 また、本実施形態の光学積層体300は、位相差フィルム160及び第三の粘着層170が無いため、第二の粘着層150がパターン位相差層340とセパレータフィルム180とを貼り合せている。また、通常、立体画像表示装置に光学積層体300を取り付ける際にはセパレータフィルム180は剥がされ、パターン位相差層340は第二の粘着層150を介して偏光板に貼り付けられるようになっている。
 このような光学積層体300も、第一実施形態に係る光学積層体100と同様に、パターン位相差層340のパターン形状の変化を抑制することができる。また、第三実施形態に係る光学積層体300は、第一実施形態に係る光学積層体100と同様の利点を得ることができる。
 さらに、第三実施形態に係る光学積層体300は、第一実施形態に係る光学積層体100と同様に変更して実施してもよい。
[4.第四実施形態]
 上述した各実施形態の光学積層体を立体画像表示装置に取り付ける場合には、まず、光学積層体からセパレータフィルムを剥がす。その後、露出した第二の粘着層又は第三の粘着層を、表示パネルに設けられた偏光板に貼り付ける。この際、第二の粘着層又は第三の粘着層は、偏光板に直接に貼り付けてもよく、他の層を介して貼り付けてもよい。
 以下、上述した実施形態において説明した光学積層体を適用した立体画像表示装置について説明する。
 図5は、本発明の第四実施形態に係る立体画像表示装置として使用しうる液晶表示装置の例を概略的に示す分解上面図である。図5は、観察者が、立体画像表示装置400の表示面に対して垂直な方向から、右目及び左目により映像を視認する態様を上側から観察した例を示している。立体画像表示装置400は、図中左側に縦置きされている。即ち、立体画像表示装置400は、表示面が鉛直方向に平行となるよう置かれている。したがって、図中右側から観察する観察者の観察方向は、水平方向となる。
 図5に示すように、立体画像表示装置400は、表示パネル410を備える。また、表示パネル410の視認側偏光板413には、第一実施形態で説明した光学積層体100からセパレータフィルム180及びマスキングフィルム110を剥がして得られた光学部材が貼り合せられている。したがって、立体画像表示装置400は、表示パネル410と、第三の粘着層170と、位相差フィルム160と、第二の粘着層150と、パターン位相差層140と、第一の粘着層130と、透明樹脂フィルム120とを、この順に備える。
 使用の態様において、表示パネル410、第三の粘着層170、位相差フィルム160、第二の粘着層150、パターン位相差層140、第一の粘着層130及び透明樹脂フィルム120は、通常は接触した状態とされるが、図5では図示のためこれらを分解して示している。また、透明樹脂フィルム120、第一の粘着層130、第二の粘着層150及び第三の粘着層170は、大きな位相差を有さないので画像表示に大きな影響は与えない光学要素であり、図5においては破線にて示す。
 表示パネル410は、光源側から順に、直線偏光板である光源側偏光板411と、液晶セル412と、直線偏光板である視認側偏光板413とを備える。これらにより、表示パネル410を透過した光は、直線偏光となって出射しうる。視認側偏光板413の透過軸は、矢印A413で示す通り、水平方向に垂直である。したがって視認側偏光板413から出射する直線偏光の振動方向も、矢印A413で示されるように水平方向に垂直となる。ここで、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を意味する。
 表示パネル410には、厚み方向から見てそれぞれ異なる位置に、右目用画像を表示する画素領域(図示せず。)と左目用画像を表示する画素領域(図示せず。)とが設定されている。これらの画素領域はいずれも水平方向に延在する帯状の領域となっている。また、右目用画像を表示する画素領域及び左目用画像を表示する画素領域は幅が一定の領域となっていて、それらの配置は、右目用画像を表示する画素領域と左目用画像を表示する画素領域とが鉛直方向において交互となるように並んだストライプ状の配置となっている。
 位相差フィルム160は、透過光に対して1/4波長板として機能しうるフィルムであって、面内に一様な位相差を有する。位相差フィルム160の遅相軸は、矢印A160で示す通り、視認側偏光板413の偏光透過軸に対して45°の角度をなす方向である。本実施形態では、位相差フィルム160の遅相軸は、偏光メガネ500をかけて画面を見る向きにおいて、水平方向に対して+45°の角度をなしている。これにより、視認側偏光板413から出射した直線偏光は、この位相差フィルム160を透過することにより、矢印A420で示す回転方向を有する円偏光に変換されうる。
 パターン位相差層140は、水平方向に平行且つ均一に設けられた帯状の異方性領域141と帯状の等方性領域142とを有する。異方性領域141及び等方性領域142は、鉛直方向において交互に並んだストライプ状の配置となっている。また、厚み方向から見ると、異方性領域141は表示パネル410の左目用画像を表示する画素領域に重なり、等方性領域142は表示パネル410の右目用画像を表示する画素領域に重なっている。
 異方性領域141の位相差は透過光の1/2波長であり、異方性領域141の遅相軸は、矢印A141で示す通り、視認側偏光板413の偏光透過軸に対して垂直な方向(即ち水平方向)である。これにより、位相差フィルム160を透過した円偏光のうち、異方性領域141を透過した光は、矢印A431で示される、反転した回転方向を有する円偏光に変換されうる。他方、等方性領域142の位相差は実質的にゼロであり、したがって、位相差フィルム160を透過した円偏光のうち等方性領域142を透過した光は、矢印A432で示す通り、透過前と同じ回転方向を有する円偏光として出射しうる。
 偏光メガネ500は、観察者が立体画像表示装置400の表示面を視る際に装着するための器具である。観察者は、偏光メガネ500を通して立体画像表示装置400の表示面を観察することにより、立体画像を視認しうる。この偏光メガネ500は、1/2波長板510、1/4波長板520及び直線偏光板530をこの順に備える。
 1/2波長板510の遅相軸は、矢印A510で示す通り、水平方向に垂直である。また、1/4波長板520の遅相軸は、矢印A520で示す通り、偏光メガネ500をかけて画面を見る向きにおいて、水平方向に対して-45°の角度をなしている。さらに、直線偏光板530の偏光透過軸は、矢印A530で示す通り、水平方向に平行である。また、1/2波長板510は、偏光メガネ500の、右目に対応する部分に設けられているが、左目に対応する部分には設けられない。
 このような構成において、使用時には、立体画像表示装置400は、図示しない光源を発光させる。その光源から発せられた光は、表示パネル410の右目用画像を表示する画素領域及び左目用画像を表示する画素領域を透過する。
 光源側偏光板411、液晶セル412及び視認側偏光板413を透過した光は、直線偏光となって出射する。視認側偏光板413の偏光透過軸の方向は、矢印A413で示す通り水平方向に垂直であるため、視認側偏光板413から出射する直線偏光の振動方向は、矢印A413で示されるように、水平方向に垂直となる。この直線偏光は、第三の粘着層170を透過して、位相差フィルム160に入射する。
 位相差フィルム160の遅相軸は、矢印A160で示す通り、視認側偏光板413の偏光透過軸に対して45°の角度をなす方向である。このため、視認側偏光板413から出射した直線偏光は、この位相差フィルム160を透過することにより、矢印A420で示す回転方向を有する円偏光に変換される。この円偏光は、第二の粘着層150を透過して、パターン位相差層140に入射する。
 円偏光のうち、異方性領域141を透過した光は、矢印A431で示されるように、反転した回転方向を有する円偏光に変換される。他方、等方性領域142の面内レターデーションはゼロであるので、等方性領域142を透過した光は、矢印A432で示す通り、透過前と同じ回転方向を有する円偏光となっている。これらの円偏光は、第一の粘着層130、及び透明樹脂フィルム120をこの順に透過して、立体画像表示装置400の外部へと出て行く。
 異方性領域141を透過した光Lが、偏光メガネ500の左目に対応する部分に入射すると、光Lは、偏光を変換されることなく1/4波長板520に入射する。1/4波長板520を透過した光は、矢印A530と同じ方向に振動する直線偏光に変換されるので、直線偏光板530を透過することができる。したがって、異方性領域141を透過した光Lは、観察者の左目で視認される。
 一方、異方性領域141を透過した光Lが、偏光メガネ500の右目に対応する部分に入射し、1/2波長板510を透過すると、光Lは、反転した回転方向(即ち矢印A540とは反対方向)を有する円偏光に変換され、1/4波長板520に入射する。1/4波長板520を透過した光は、矢印A530に対して垂直な方向に振動する直線偏光に変換されるので、直線偏光板530を透過することができない。したがって、異方性領域141を透過した光Lは、観察者の右目で視認されない。
 また、等方性領域142を透過した光Rが、偏光メガネ500の右目に対応する部分に入射し、1/2波長板510を透過すると、光Rは、矢印A540で示されるように、反転した回転方向を有する円偏光に変換され、1/4波長板520に入射する。1/4波長板520を透過した光は、矢印A530と同じ方向に振動する直線偏光に変換されるので、直線偏光板530を透過することができる。したがって、等方性領域142を透過した光Rは、観察者の右目で視認される。
 一方、等方性領域142を透過した光Rが、偏光メガネ500の左目に対応する部分に入射すると、光Rは、偏光を変換されることなく1/4波長板520に入射する。1/4波長板520を透過した光は、矢印A530に対して垂直な方向に振動する直線偏光に変換されるので、直線偏光板530を透過することができない。したがって、等方性領域142を透過した光Rは、観察者の左目で視認されない。
 このように、観察者は、異方性領域141を透過した光を左目で視て、また、等方性領域142を透過した光を右目で視ることになる。したがって、立体画像表示装置400の異方性領域141に対応する画素領域で左目用の画像を表示し、等方性領域142に対応する画素領域で右目用の画像を表示することにより、観察者は、立体画像を視認できる。この際、パターン位相差層140のパターン形状は温度又は湿度が高くなっても変化し難いので、高温及び高湿度の環境下においてクロストークを抑制することができる。
 以上、立体画像表示装置400及び偏光メガネ500について説明したが、立体画像表示装置400及び偏光メガネ500は更に変更して実施してもよい。
 例えば、偏光メガネ500の右目に対応する部分と左目に対応する部分の構成を入れ替えて、且つ、表示パネル410の異方性領域141に対応する画素領域の画像と表示パネル410の等方性領域142に対応する画素領域の画像とを入れ替えて実施してもよい。
 また、本実施形態においては第一実施形態に係る光学積層体100を適用した例を示したが、代わりに第二実施形態に係る光学積層体200を適用してもよい。
 さらに、立体画像を適切に表示できる限り、各光学要素の遅相軸、透過軸等の光軸の方向は変更して実施してもよい。
[5.第五実施形態]
 前記の第四実施形態では、第一実施形態において説明した光学積層体100を適用した立体画像表示装置であって、パターン位相差層140の異方性領域141の遅相軸の方向と位相差フィルム160の遅相軸の方向とが45°の角度をなす例を示した。これに対し、パターン位相差層140の異方性領域141の遅相軸の方向と位相差フィルム160の遅相軸の方向とが90°の角度をなす場合も、光学積層体100を立体画像表示装置に適用しうる。以下、その場合の例を説明する。
 図6は、本発明の第五実施形態に係る立体画像表示装置として使用しうる液晶表示装置の例を概略的に示す分解上面図である。図6は、観察者が、立体画像表示装置600の表示面に対して垂直な方向から、右目及び左目により映像を視認する態様を上側から観察した例を示している。立体画像表示装置600は、図中左側に縦置きされている。即ち、立体画像表示装置600は、表示面が鉛直方向に平行となるよう置かれている。したがって、図中右側から観察する観察者の観察方向は、水平方向となる。
 図6に示すように、立体画像表示装置600は、表示パネル410の代わりに表示パネル610が設けられていること、並びに、位相差フィルム160の遅相軸の方向が矢印A660で示すとおり水平方向に垂直になっていること以外は、第四実施形態に係る立体画像表示装置400と同様である。したがって、立体画像表示装置600は、表示パネル610と、第三の粘着層170と、位相差フィルム160と、第二の粘着層150と、パターン位相差層140と、第一の粘着層130と、透明樹脂フィルム120とを、この順に備える。
 使用の態様においても、表示パネル610、第三の粘着層170、位相差フィルム160、第二の粘着層150、パターン位相差層140、第一の粘着層130、及び透明樹脂フィルム120は、通常は接触した状態とされるが、図6では図示のためこれらを分解して示している。また、透明樹脂フィルム120、第一の粘着層130、第二の粘着層150及び第三の粘着層170は、大きな位相差を有さないので画像表示に大きな影響は与えない光学要素であり、図6においては破線にて示す。
 表示パネル610は、光源側から順に、直線偏光板である光源側偏光板611と、液晶セル612と、直線偏光板である視認側偏光板613とを備える。これらにより、表示パネル610を透過した光は、第四実施形態と同様に、直線偏光となって出射する。ただし、本実施形態では、視認側偏光板613の透過軸は、矢印A613で示す通り、偏光メガネ500をかけて画面を見る向きにおいて、水平方向に対して+45°の角度をなしている。したがって、視認側偏光板613から出射する直線偏光の振動方向も、矢印A613で示されるように、偏光メガネ500をかけて画面を見る向きにおいて、水平方向に対して+45°の方向となる。
 このような構成の立体画像表示装置600は、第四実施形態に係る立体画像表示装置400と同様の要領で、画像を表示しうる。そして、観察者は、偏光メガネ500を通して、第四実施形態に係る立体画像表示装置400と同様の要領で、立体画像表示装置600の表示面を観察することにより、立体画像を視認することができる。ただし、本実施形態においては、1/4波長板520の遅相軸は水平方向に平行であり、直線偏光板530の偏光透過軸は、偏光メガネ500をかけて画面を見る向きにおいて、水平方向に対して-45°の角度をなしているものとする。この際、パターン位相差層140のパターン形状は温度及び/又は湿度が高くなっても変化し難いので、高温及び/又は高湿度の環境下においてクロストークを抑制することができる。また、立体画像表示装置600によれば、第四実施形態に係る立体画像表示装置400と同様の利点を得ることができる。
 以上、立体画像表示装置600及び偏光メガネ500について説明したが、立体画像表示装置600及び偏光メガネ500は更に変更して実施してもよい。
 例えば、本実施形態においては第一実施形態に係る光学積層体100を適用した例を示したが、代わりに第二実施形態に係る光学積層体200を適用してもよい。
 また、例えば、第四実施形態と同様に変更して実施してもよい。
[6.第六実施形態]
 次に、図面を用いて、第三実施形態に係る光学積層体を適用した立体画像表示装置について説明する。
 図7は、本発明の第六実施形態に係る立体画像表示装置として使用しうる液晶表示装置の例を概略的に示す分解上面図である。図7は、観察者が、立体画像表示装置700の表示面に対して垂直な方向から、右目及び左目により映像を視認する態様を上側から観察した例を示している。立体画像表示装置700は、図中左側に縦置きされている。即ち、立体画像表示装置700は、表示面が鉛直方向に平行となるよう置かれている。したがって、図中右側から観察する観察者の観察方向は、水平方向となる。
 図7に示すように、立体画像表示装置700は、表示パネル410を備える。また、表示パネル410の視認側偏光板413には、第三実施形態で説明した光学積層体300からセパレータフィルム180及びマスキングフィルム110を剥がして得られた光学部材が貼り合せられている。したがって、立体画像表示装置700は、表示パネル410と、第二の粘着層150と、パターン位相差層340と、第一の粘着層130と、透明樹脂フィルム120とを、この順に備える。
 使用の態様において、表示パネル410、第二の粘着層150、パターン位相差層340、第一の粘着層130、及び透明樹脂フィルム120は、通常は接触した状態とされるが、図7では図示のためこれらを分解して示している。また、透明樹脂フィルム120、第一の粘着層130及び第二の粘着層150は、大きな位相差を有さないので画像表示に大きな影響は与えない光学要素であり、図7においては破線にて示す。
 表示パネル410は、第一の例において説明したものと同様である。
 パターン位相差層340は、画面の長手方向に対して平行且つ均一に設けられた帯状の第一異方性領域341と帯状の第二異方性領域342とを有する。第一異方性領域341及び第二異方性領域342は、鉛直方向において交互に並んだストライプ状の配置となっている。また、厚み方向から見ると、第一異方性領域341は表示パネル410の左目用画像を表示する画素領域に重なり、第二異方性領域342は表示パネル410の右目用画像を表示する画素領域に重なっている。
 第一異方性領域341の位相差は透過光の1/4波長である。また、第一異方性領域341の遅相軸の方向は、矢印A341で示す通り、偏光メガネ800をかけて画面を見る向きにおいて、水平方向に対して+45°の角度をなしている。これにより、視認側偏光板413から出射した直線偏光のうち、この第一異方性領域341を透過した光は、矢印A731で示す回転方向を有する円偏光に変換されうる。
 他方、第二異方性領域342の位相差も透過光の1/4波長である。ただし、第二異方性領域342の遅相軸の方向は、矢印A342で示す通り、偏光メガネ800をかけて画面を見る向きにおいて、水平方向に対して-45°の角度をなしており、したがって第一異方性領域341の遅相軸に垂直になっている。これにより、視認側偏光板413から出射した直線偏光のうち、この第二異方性領域342を透過した光は、第一異方性領域341を透過した光とは反対に、矢印A732で示す回転方向を有する円偏光に変換されうる。
 偏光メガネ800は、観察者が立体画像表示装置700の表示面を視る際に装着するための器具である。観察者は、偏光メガネ800を通して立体画像表示装置700の表示面を観察することにより、立体画像を視認しうる。この偏光メガネ800は、1/4波長板810、1/4波長板820及び直線偏光板830を備える。
 1/4波長板810の遅相軸は、矢印A810で示す通り、偏光メガネ800をかけて画面を見る向きにおいて、水平方向に対して+45°の角度をなしており、したがってパターン位相差層340の第一異方性領域341の遅相軸と平行である。
 また、1/4波長板820の遅相軸は、矢印A820で示すとおり、偏光メガネ800をかけて画面を見る向きにおいて、水平方向に対して-45°の角度をなしており、したがってパターン位相差層340の第二異方性領域342の遅相軸と平行である。
 さらに、直線偏光板830の偏光透過軸は、矢印A830で示す通り、水平方向に平行である。
 また、1/4波長板810は偏光メガネ800の左目に対応する部分に設けられ、1/4波長板820は偏光メガネ800の右目に対応する部分に設けられている。直線偏光板830は、偏光メガネ800の右目に対応する部分及び左目に対応する部分の両方に設けられている。
 このような構成において、使用時には、立体画像表示装置700は、図示しない光源を発光させる。その光源から発せられた光は、表示パネル410の右目用画像を表示する画素領域及び左目用画像を表示する画素領域を透過する。
 光源側偏光板411、液晶セル412及び視認側偏光板413を透過した光は、直線偏光となって出射する。視認側偏光板413の偏光透過軸の方向は、矢印A413で示す通り水平方向に垂直であるため、視認側偏光板413から出射する直線偏光の振動方向は、矢印A413で示されるように、水平方向に垂直となる。この直線偏光は、第二の粘着層150を透過して、パターン位相差層340に入射する。
 直線偏光のうち、第一異方性領域341を透過した光は、矢印A731で示される回転方向を有する円偏光に変換される。他方、第二異方性領域342を透過した光は、矢印A732で示す通り、第一異方性領域341を透過した光とは反対の回転方向を有する円偏光に変換される。これらの円偏光は、第一の粘着層130及び透明樹脂フィルム120をこの順に透過して、立体画像表示装置700の外部へと出て行く。
 第一異方性領域341を透過した光Lが、偏光メガネ800の左目に対応する部分に入射すると、光Lは、1/4波長板810に入射する。1/4波長板810を透過した光は、直線偏光板830の透過軸A830と平行な振動方向を有する直線偏光に変換されるので直線偏光板830を透過することができる。したがって、第一異方性領域341を透過した光Lは、観察者の左目で視認される。
 一方、第一異方性領域341を透過した光Lが、偏光メガネ800の右目に対応する部分に入射すると、光Lは、1/4波長板820に入射する。1/4波長板820を透過した光は、直線偏光板830の透過軸A830に対して垂直な振動方向を有する直線偏光に変換されるので、直線偏光板830を透過することができない。したがって、第一異方性領域341を透過した光Lは、観察者の右目で視認されない。
 また、第二異方性領域342を透過した光Rが、偏光メガネ800の右目に対応する部分に入射すると、光Rは、1/4波長板820に入射する。1/4波長板820を透過した光は、直線偏光板830の透過軸A830と平行な振動方向を有する直線偏光に変換されるので、直線偏光板830を透過することができる。したがって、第二異方性領域342を透過した光Rは、観察者の右目で視認される。
 一方、第二異方性領域342を透過した光Rが、偏光メガネ800の左目に対応する部分に入射すると、光Rは、1/4波長板810に入射する。1/4波長板810を透過した光は、直線偏光板830の透過軸A830に対して垂直な振動方向を有する直線偏光に変換されるので、直線偏光板830を透過することができない。したがって、第二異方性領域342を透過した光Rは、観察者の左目で視認されない。
 このように、観察者は、第一異方性領域341を透過した光を左目で視て、また、第二異方性領域342を透過した光を右目で視ることになる。したがって、立体画像表示装置700の第一異方性領域341に対応する画素領域で左目用の画像を表示し、第二異方性領域342に対応する画素領域で右目用の画像を表示することにより、観察者は、立体画像を視認できる。この際、パターン位相差層340のパターン形状は温度及び/又は湿度が高くなっても変化し難いので、高温及び/又は高湿度の環境下においてクロストークを抑制することができる。
 以上、立体画像表示装置700及び偏光メガネ800について説明したが、立体画像表示装置700及び偏光メガネ800は更に変更して実施してもよい。
 例えば、偏光メガネ800の右目に対応する部分と左目に対応する部分の構成を入れ替えて、且つ、表示パネル410の第一異方性領域341に対応する画素領域の画像と表示パネル410の第二異方性領域342に対応する画素領域の画像とを入れ替えて実施してもよい。
 さらに、立体画像を適切に表示できる限り、各光学要素の遅相軸、透過軸等の光軸の方向は変更して実施してもよい。
[7.材料等]
 以下、上述した光学積層体に設けられる層及びフィルムの材料等について説明する。
 〔7.1.マスキングフィルム〕
 マスキングフィルムは、透明性、機械的強度、熱安定性及び水分遮蔽性に優れる樹脂により形成することが好ましい。このような樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース等の酢酸セルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;鎖状ポリオレフィン樹脂;ノルボルネン系の脂環式オレフィン樹脂;アクリル樹脂;メタクリル樹脂等が挙げられる。また、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 マスキングフィルムの厚みは任意であるが、通常5μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは150μm以下である。
 このマスキングフィルムの例として、SAT116T、SAT2038T-JSL、SAT4538T-JSL(いずれもサンエー化研社製);NBO-0424、TFB-K001、TFB-K0421、TFB-K202(いずれも藤森工業社製);DT-2200-25、K-6040(いずれも日立化成工業社製);6010#75、6010#100、6011#75、6093#75(いずれも寺岡製作所社製)などを市販品として挙げることができる。
 〔7.2.透明樹脂フィルム〕
 透明樹脂フィルムは、酢酸セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びノルボルネン系樹脂からなる群より選ばれる樹脂のフィルムを備えることが好ましい。酢酸セルロース系樹脂は、一般に、高温及び/又は高湿度において膨張又は収縮を生じやすい。したがって、酢酸セルロース系樹脂のフィルムを備えた透明樹脂フィルムを用いた場合には、膨張又は収縮を生じやすい透明樹脂フィルムを用いているのにパターン位相差層のパターン形状の変化を抑制できるので、本発明の効果を有効に発揮させることができる。また、ポリカーボネート系樹脂及びノルボルネン系樹脂は、一般に、高温及び/又は高湿度において膨張又は収縮を生じ難い。したがって、ポリカーボネート系樹脂及びノルボルネン系樹脂のフィルムを備えた透明樹脂フィルムを用いた場合には、パターン位相差層のパターン形状の変化を高度に抑制できる。
 また、マスキングフィルムを剥離したり、光学積層体を製造する際の外部応力による影響を少なくしたりするために、透明樹脂フィルムの光弾性係数は、通常85×10-12/Pa以下、好ましくは25×10-12/Pa以下、より好ましくは12×10-12/Pa以下である。光弾性係数が上記値より高すぎると、熱などによる応力を受けたときの複屈折率の変化率が大きく、色むら及び光漏れが発生しやすくなる。光弾性係数はピエゾ光学係数とも称され、ピエゾ光学効果(光弾性効果)の大きさを表わす物質定数であり、エリプソメータなどを用いて測定することができる。光弾性係数は外部応力に対する光学歪みの程度を示す値であり、値が小さければ小さい程、パターン位相差層の保護フィルムとして光学的に良好である。
 酢酸セルロース系樹脂とは、酢酸セルロース系重合体を含む樹脂のことをいう。酢酸セルロース系重合体としては、例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等が挙げられる。中でも光学的透明性、機械的強度、無配向性等の観点から、トリアセチルセルロースが特に好ましい。また、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。酢酸セルロース系の光弾性係数は、通常10×10-12/Pa~12×10-12/Paである。
 さらに、酢酸セルロース系樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、酢酸セルロース系重合体以外の任意の成分を含んでいてもよい。その例を挙げると、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤;酢酸セルロース系重合体以外の重合体、などが挙げられる。
 ポリカーボネート系樹脂とは、ポリカーボネートを含む樹脂のことをいう。ポリカーボネートとしては、カーボネート結合(-O-C(=O)-O-)による繰り返し単位(以下、適宜「カーボネート成分」という。)を有する重合体であれば任意のものを使用しうる。また、ポリカーボネートは、1種類の繰り返し単位からなるものを用いてもよく、2種類以上の繰り返し単位を任意の比率で組み合わせてなるものを用いてもよい。さらに、ポリカーボネートは、カーボネート成分以外の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。ただし、ポリカーボネートがカーボネート成分以外の繰り返し単位を有する場合でも、ポリカーボネートが含むカーボネート成分の含有率が高いことが好ましい。具体的には、ポリカーボネートが含むカーボネート成分の含有率は、80重量%以上が好ましく、85重量%以上がより好ましく、また、通常100重量%以下である。
 ポリカーボネートの例を挙げると、ビスフェノールAポリカーボネート、分岐ビスフェノールAポリカーボネート、o,o,o’,o’-テトラメチルビスフェノールAポリカーボネートなどが挙げられる。また、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 さらに、ポリカーボネート系樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、ポリカーボネート以外の任意の成分を含んでいてもよい。その例を挙げると、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤;ポリカーボネート以外の重合体、などが挙げられる。ポリカーボネート系樹脂の光弾性係数は、通常65×10-12/Pa~85×10-12/Paである。
 ノルボルネン系樹脂とは、ノルボルネン系重合体を含む樹脂のことをいう。ノルボルネン系重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と任意の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と任意の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物;等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。なお、「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体のことをいう。
 ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。なお、ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン基などが挙げられる。
 ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な任意の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。なお、ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な任意の単量体との開環共重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより得ることができる。
 ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な任意の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの炭素数2~20のα-オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエンなどの非共役ジエンなどが挙げられる。これらの中でも、α-オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。なお、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な任意の単量体との付加共重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより得ることができる。
 ノルボルネン系重合体の中でも、下記の要件(i)~(iii)を満たすものが好ましい。
 (i)繰り返し単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4-ジイル-エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン-7,9-ジイル-エチレン構造とを有する。
 (ii)これらの繰り返し単位X及びYの含有量が、ノルボルネン系重合体の繰り返し単位全体に対して、90重量%以上である。
 (iii)繰り返し単位Xの含有割合と繰り返し単位Yの含有割合との比が、X:Yの重量比で100:0~40:60である。
 このようなノルボルネン系重合体を用いることにより、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れる積層フィルムを得ることができる。
 また、ノルボルネン系樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、ノルボルネン系重合体以外の任意の成分を含んでいてもよい。その例を挙げると、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤;ノルボルネン系重合体以外の重合体、などが挙げられる。ノルボルネン系樹脂の光弾性係数は、通常3×10-12/Pa~6×10-12/Paである。
 また、透明樹脂フィルムは、防眩機能層及び反射防止機能層の一方又は両方を含むことが好ましい。この際、上述した酢酸セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びノルボルネン系樹脂からなる群より選ばれる樹脂のフィルム自体が防眩機能層及び反射防止機能層の一方又は両方として機能するようにしてもよい。また、上述した酢酸セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びノルボルネン系樹脂からなる群より選ばれる樹脂のフィルムとは別に、透明樹脂フィルムが防眩機能層及び反射防止機能層の一方又は両方を備えていてもよい。
 防眩機能層及び反射防止機能層が酢酸セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びノルボルネン系樹脂からなる群より選ばれる樹脂のフィルムとは別に形成される場合、防眩機能層及び反射防止機能層の材料としては、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等の樹脂系材料;樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド系材料;テトラエトキシシラン等の金属アルコキシドを用いたゾル-ゲル系材料;などが挙げられる。また、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 防眩機能層及び反射防止機能層としては、例えば、特許4556613号公報、特許4300522号公報、特許4556664号公報などに記載のものを用いてもよい。
 透明樹脂フィルムの厚みは、通常5μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上、さらに好ましくは50μm以上であり、通常300μm以下、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。透明樹脂フィルムの厚みが上記範囲にあると、自己支持性、耐久性、機械的強度、耐擦傷性及び光学性能に優れた光学部材が得られる。
 〔7.3.第一の粘着層〕
 第一の粘着層の材料としては、通常、貼り合わせるフィルムを形成する樹脂の種類により適切な粘着剤を選択する。例を挙げると、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、変性ポリオレフィン系粘着剤、ポリビニルアルキルエーテル系粘着剤、ゴム系粘着剤、エチレン-酢酸ビニル系粘着剤、塩化ビニル-酢酸ビニル系粘着剤、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)系粘着剤、SIS(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体)系粘着剤、エチレン-スチレン共重合体などのエチレン系粘着剤、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル系粘着剤などが挙げられる。特に、光学的透明性、粘着特性、耐候性、ハンドリング性、溶剤との相溶性の観点で、アクリル系粘着剤が好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 アクリル系粘着剤を形成するベースポリマーの具体例として、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、ラウリル基、ドデシル基、デカニル基、イソデカニル基等のアルキル基を有するアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルなどが挙げられる。また、前記のアルキル基の炭素原子数は、2~14が好ましい。さらに、前記のアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル等のベースポリマーは、必要に応じ改質用モノマーと共に重合処理をして用いてもよい。また、ベースポリマー及び改質用モノマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 また前記ベースポリマーの形成に際しては、必要に応じて(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な改質用モノマーを用いうる。その具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の燐酸基含有モノマーなどがあげられる。
 また、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;なども改質用モノマーとしてあげられる。
 さらに、例えば、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルボン酸アミド類、スチレン等のビニル系モノマー;ジビニルベンゼン等のジビニル系モノマー;1,4-ブチルジアクリレート、1,6-ヘキシルジアクリレート等のジアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー;メチル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等の、上記した主成分をなすモノマーとは異なるエステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;なども改質用モノマーとしてあげられる。
 前記アクリル系粘着剤には、ベースポリマーの種類に応じて、任意の配合剤を配合してもよい。任意の配合剤としては、粘着付与剤、架橋剤又は硬化剤、酸化防止剤、光拡散剤、消泡剤、安定剤が挙げられる。また、配合剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 第一の粘着層は、上述したように、緩和弾性率が低い。第一の粘着層の緩和弾性率を低くするための手段としては、例えば、ベースポリマー組成又は粘着付与剤の量、架橋剤の量などを変える方法が挙げられる。また、上記した改質用モノマーにおいて、分子間架橋剤と反応しうる官能基を有してアクリル系共重合体の分子間架橋に関与しうるモノマーを用いる方法も挙げられる。分子間架橋剤と反応しうる官能基を有してアクリル系共重合体の分子間架橋に関与しうるモノマーとしては、例えば上記のうちカルボキシル基含有モノマー、酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、ヒドロキシル基含有モノマーなどが好ましく用いられる。特に、例えばカルボキシエチルアクリレート及び(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシルのような架橋反応性に富むモノマーは、少量で必要な架橋性を付与しうることから、得られるアクリル系共重合体の緩和弾性率を上昇させにくく、特に好ましい。
 第一の粘着層の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下である。第一の粘着層の厚みが前記範囲の下限値以上となることにより粘着層の塗工むらによる光学的な欠陥を取り除くことができ、上限値以下となることにより良好な接着力保持ができる。
 粘着剤の塗工方法は特に制限されず、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法などが挙げられる。
 〔7.4.パターン位相差層〕
 パターン位相差層は、例えば、液晶相を呈することができ且つ紫外線(UV)等のエネルギー線の照射を受けて硬化しうる材料を用いて製造しうる。かかる材料を、以下において「液晶層形成用組成物」ということがある。また、かかる材料の、未硬化状態の層又は硬化後の層を、以下において「液晶樹脂層」ということがある。
 例えば、上述した第一実施形態及び第二実施形態に係る光学積層体のパターン位相差層のように異方性領域と等方性領域とを備えるパターン位相差層は、液晶層形成用組成物を適切な基材に塗布して未硬化状態の液晶樹脂層を得て、その液晶樹脂層の一部をある配向状態で硬化させ、他の一部を等方相の配向状態(すなわち、配向していない状態)で硬化させることにより製造してもよい。このような製造方法は、基材として長尺の基材フィルムを用いて行うことが可能である。また、このような製造方法は、基材フィルムを搬送方向にラビングすることで、そのラビング方向と平行に液晶層形成用組成物が配向させることが可能である。そのため、このような製造方法は、パターン位相差層を長尺のフィルムとして製造できるので、生産効率の点で優れている。
 具体的には、
i.基材フィルムの一方の表面に、エネルギー線を遮光しうる遮光部と前記エネルギー線を透過させうる透光部とを有するマスク層を作製する工程と、
ii.前記基材フィルムの前記マスク層とは反対側の表面に、未硬化状態の液晶樹脂層を設ける工程と、
iii.前記基材フィルムの前記マスク層側から、前記遮光部で遮光されるが前記透光部を透光する波長のエネルギー線を照射して、前記液晶樹脂層の一部の領域を硬化させる第一の硬化工程と、
iv.前記液晶樹脂層の未硬化状態の領域における配向状態を変化させる工程と、
v.前記基材フィルムの前記マスク層とは反対側からエネルギー線を照射して前記液晶樹脂層の未硬化状態の領域を硬化させる第二の硬化工程と
を有する製造方法により製造してもよい。
 これらのようにして製造されたパターン位相差層は、通常は基材フィルム及びマスク層を剥がした後で使用される。ただし、適宜、基材フィルム及びマスク層は、本発明の効果を著しく損なわない限り、剥がさずに使用してもよい。
 上記のパターン位相差層の製造方法において、基材フィルムの材料としては、未硬化状態の液晶樹脂層を硬化させる工程において液晶樹脂層が硬化できる程度に紫外線等のエネルギー線を透過させられる材料を用いうる。通常は、1mm厚で全光線透過率が80%以上である材料が好適である。ここで、基材フィルムの全光線透過率は、JIS K7361-1997に準拠して、濁度計(日本電色工業社製、NDH-300A)を用いて測定しうる。
 基材フィルムの材料の例としては、樹脂が挙げられる。これらの樹脂が含む重合体の例を挙げると、鎖状オレフィン重合体、シクロオレフィン重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、鎖状オレフィン重合体及びシクロオレフィン重合体が好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、シクロオレフィン重合体が特に好ましい。
 ここで、樹脂は、1種類の重合体を単独で含むものを用いてもよく、2種類以上の重合体を任意の比率で組み合わせて含むものを用いてもよい。また、樹脂には、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含ませてもよい。好適な樹脂の具体例を挙げると、日本ゼオン社製「ゼオノア1420」を挙げることができる。
 基材フィルムの厚みは、製造時のハンドリング性、材料のコスト、薄型化及び軽量化の観点から、好ましくは30μm以上、より好ましくは60μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。
 基材フィルムは、延伸されていない未延伸フィルムであってもよく、延伸された延伸フィルムであってもよい。また、等方なフィルムであっても、異方性を有するフィルムであってもよい。
 基材フィルムは、一層のみからなる単層構造のフィルムであってもよく、二層以上の層からなる複層構造のフィルムであってもよい。通常は、生産性及びコストの観点から、単層構造のフィルムを用いる。
 基材フィルムは、その片面又は両面に表面処理が施されたものであってもよい。表面処理を施すことにより、基材フィルムの表面に直接形成される他の層との密着性を向上させることができる。表面処理としては、例えば、エネルギー線照射処理や薬品処理などが挙げられる。また、基材フィルムの液晶層形成用組成物を塗布する面に配向膜を有していてもよい。
 マスク層の材料としては、エネルギー線、特に紫外線を遮光することができ、且つパターンの形成が容易なマスク用組成物を適宜選択して用いてもよい。
 通常、マスク用組成物としては、樹脂を用いる。前記の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ウレタンアクリレート硬化樹脂、エポキシアクリレート硬化樹脂およびポリエステルアクリレート硬化樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類の樹脂が好ましい。これらの樹脂を含むことにより、紫外線を遮光する材料を高温環境下においても保持し、安定した遮光部を作製することができる。前記の樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 マスク用組成物に含まれる樹脂のガラス転移温度は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上であり、通常400℃以下、好ましくは350℃以下である。ガラス転移温度を80℃以上にすることによりマスク層の耐熱性を高めることができ、例えば液晶樹脂層の加熱時にマスク層が変形することを防止できる。また、ガラス転移温度を400℃以下にすることにより、樹脂の溶解性を高めてマスク用組成物の印刷を簡単にできる。印刷前の状態とマスク層を形成した後の状態とで樹脂のガラス転移温度が変化する場合には、マスク層を形成した後の状態においてガラス転移温度が前記の範囲に収まることが好ましい。
 マスク用組成物は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。これによりマスク層の遮光部が紫外線吸収剤を含むことになり、遮光部において紫外線を安定して遮光することができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種類の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。紫外線吸収剤の使用量は、マスク層中のモノマー、オリゴマー及びポリマー100重量部に対して、通常5重量部以上、好ましくは8重量部以上、より好ましくは10重量部以上であり、通常20重量部以下、好ましくは18重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。
 マスク用組成物は、さらに、着色剤、金属粒子、溶媒、光重合開始剤、架橋剤、その他の成分を含んでいてもよい。
 マスク用組成物を用いてマスク層を形成する方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、ロータリースクリーン印刷法、グラビアオフセット印刷法、インクジェット印刷法、又はこれらの組み合わせである印刷法を好ましく挙げることができる。透光部と遮光部は、例えば、マスク層の厚みが薄い層と厚い層とを形成することにより設けてもよい。
 液晶層形成用組成物としては、液晶化合物(液晶性を有する化合物)を含む組成物を用いうる。前記の液晶化合物としては、例えば、重合性基を有する液晶化合物、側鎖型液晶ポリマー化合物などが挙げられる。重合性基を有する液晶化合物としては、例えば、特開平11-513360号公報、特開2002-030042号公報、特開2004-204190号公報、特開2005-263789号公報、特開2007-119415号公報、特開2007-186430号公報などに記載された重合性基を有する棒状液晶化合物などが挙げられる。また、側鎖型液晶ポリマー化合物としては、例えば、特開2003-177242号公報などに記載の側鎖型液晶ポリマー化合物などが挙げられる。また、好ましい液晶化合物の例を製品名で挙げると、BASF社製「LC242」等が挙げられる。液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 液晶層形成用組成物における液晶化合物の屈折率異方性Δnは、波長546nmにおいて、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上であり、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25以下である。屈折率異方性Δnが0.05未満では所望の光学的機能を得るために液晶樹脂層の厚みが厚くなって配向均一性が低下する可能性があり、また経済コスト的にも不利である。屈折率異方性Δnが0.30より大きいと所望の光学的機能を得るために液晶樹脂層の厚みが薄くなり、厚み精度に対して不利である。また、屈折率異方性Δnが0.30より大きい場合、液晶樹脂層の紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合がありえるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。
 液晶層形成用組成物が液晶化合物を1種類だけ含む場合には、当該液晶化合物の屈折率異方性を、そのまま液晶層形成用組成物における液晶化合物の屈折率異方性とする。また、液晶層形成用組成物が液晶化合物を2種類以上含む場合には、各液晶化合物それぞれの屈折率異方性Δnの値と各液晶化合物の含有比率とから求めた加重平均の値を、液晶層形成用組成物における液晶化合物の屈折率異方性とする。屈折率異方性Δnの値は、セナルモン法により測定しうる。
 さらに、液晶層形成用組成物は、製造方法や最終的な性能に対して適正な物性を付与するために、液晶化合物以外に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分の例を挙げると、有機溶媒、界面活性剤、キラル剤、重合開始剤、紫外線吸収剤、架橋剤、酸化防止剤などが挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 有機溶媒のうち好適な例を挙げると、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、およびエーテル類等が挙げられる。これらの中でも、環状ケトン類、環状エーテル類が、液晶化合物を溶解させやすいために好ましい。環状ケトン溶媒としては、例えば、シクロプロパノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられ、中でもシクロペンタノンが好ましい。環状エーテル溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン等が挙げられ、中でも1,3-ジオキソランが好ましい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよく、液晶層形成用組成物としての相溶性や粘性、表面張力の観点などから最適化されることが好ましい。
 有機溶媒の含有割合は、有機溶媒以外の固形分全量に対する割合として、通常は30重量%以上95重量%以下である。
 界面活性剤としては、配向を阻害しないものを適宜選択して使用することが好ましい。好ましい界面活性剤の例を挙げると、疎水基部分にシロキサン及びフッ化アルキル基等を含有するノニオン系界面活性剤などが挙げられる。中でも、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤の例を製品名で挙げると、OMNOVA社PolyFoxのPF-151N、PF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520、PF-3320、PF-651、PF-652;ネオス社フタージェントのFTX-209F、FTX-208G、FTX-204D;DIC社メガファックのF-477、F-553、F-554、F-555、F-556、TF-1367;住友スリーエム社ノベックのFC-430、FC-4430、FC-4432;セイミケミカル社サーフロンのKH-40等が挙げられる。界面活性剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 界面活性剤の配合割合は、液晶層形成用組成物を硬化して得られる液晶樹脂層中における界面活性剤の濃度が0.05重量%以上3重量%以下となるようにすることが好ましい。界面活性剤の配合割合が0.05重量%より少ないと空気界面における配向規制力が低下して配向欠陥が生じる可能性がある。逆に3重量%より多い場合には、過剰の界面活性剤が液晶性化合物分子間に入り込み、配向均一性を低下させる可能性がある。
 キラル剤は、重合性化合物であってもよく、非重合性化合物であってもよい。キラル剤としては、通常、分子内にキラルな炭素原子を有し、液晶化合物の配向を乱さない化合物を使用する。キラル剤の例を挙げると、重合性のキラル剤としてはBASF社製「LC756」等が挙げられる。また、例えば、特開平11-193287号公報、特開2003-137887号公報などに記載されているものも挙げられる。キラル剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。キラル剤は、通常、ツイステッドネマチック相を有する領域を形成する場合に、重合性を有する液晶化合物と併用して用いられる。
 重合開始剤は、例えば熱重合開始剤を用いてもよいが、通常は光重合開始剤を用いる。光重合開始剤としては、例えば、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させる化合物を使用しうる。光重合開始剤の例を挙げると、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2-ジエトキシアセトフェノン、β-アイオノン、β-ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α-アミルシンナックアルデヒド、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、2-クロロベンゾフェノン、pp′-ジクロロベンゾフェノン、pp′-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6-メトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、アントラセンベンゾフェノン、α-クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1-クロルメチルナフタリン、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(o-ベンゾイルオキシム)]や1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン1-(o-アセチルオキシム)などのカルバゾールオキシム化合物、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3-メチル-2-ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-(p-フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。重合開始剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて液晶層形成用組成物に、例えば三級アミン化合物等の光増感剤又は重合促進剤を含ませて、液晶層形成用組成物の硬化性を調整してもよい。光重合効率を向上させるためには、液晶化合物及び光重合開始剤などの平均モル吸光係数を適切に選定することが好ましい。
 紫外線吸収剤としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート、4-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)-1-(2-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤;2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系;などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、所望する耐光性を付与するために、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 紫外線吸収剤の配合割合は、液晶化合物100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上であり、通常5重量部以下、好ましくは1重量部以下である。紫外線吸収剤の配合割合が、0.001重量部未満の場合には紫外線吸収能が不十分となり所望する耐光性を得られない可能性があり、5重量部より多い場合には液晶層形成用組成物を紫外線等の活性エネルギー線で硬化させる際に硬化が不十分となり、液晶樹脂層の機械的強度が低くなったり耐熱性が低くなったりする可能性がある。
 液晶層形成用組成物には、所望する機械的強度に応じて架橋剤を含ませてもよい。架橋剤の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、4,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;などが挙げられる。架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、液晶層形成用組成物には架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を含ませ、膜強度や耐久性向上に加えて生産性を向上させるようにしてもよい。
 前記架橋剤の配合割合は、硬化後の液晶樹脂層中における架橋剤の濃度が0.1重量%以上20重量%以下となるようにすることが好ましい。架橋剤の配合割合が0.1重量%より少ないと架橋密度向上の効果が得られない可能性があり、逆に20重量%より多いと硬化後の液晶樹脂層の安定性を低下させる可能性がある。
 酸化防止剤としては、例えば、テトラキス(メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。酸化防止剤の配合量は、透明性が低下しない範囲としうる。
 未硬化状態の液晶樹脂層を設ける場合、通常は、塗布法を用いる。液晶層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、リバースグラビアコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法等の方法が挙げられる。液晶層形成用組成物を基材フィルムの表面に塗布することにより、未硬化状態の液晶樹脂層が形成される。
 液晶層形成用組成物は、基材フィルムの表面に直接に塗布してもよいが、基材フィルムの表面に例えば配向膜等を介して間接的に塗布してもよい。配向膜を用いれば、液晶樹脂層において液晶化合物を容易に配向させることができる。
 配向膜は、例えば、セルロース、シランカップリング剤、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エポキシアクリレート、シラノールオリゴマー、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリオキサゾール、環化ポリイソプレンなどを用いて形成してもよい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 配向膜の厚みは、通常、所望の液晶樹脂層の配向均一性が得られる厚みとする。具体的な厚みの範囲は、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。
 さらに、例えば、特開平6-289374号公報、特表2002-507782号公報、特許4022985号公報、特許4267080号公報、特許4647782号公報、米国特許5389698号明細書などに示されるような光配向膜と偏光UVを用いる方法によって、液晶化合物を配向させるようにしてもよい。
 また、上述した配向膜以外の手段によって、液晶化合物を配向させるようにしてもよい。例えば、配向膜を使用せずに基材フィルムの表面を直接ラビングするような配向処理を施してもよい。通常、基材フィルムの搬送方向とラビング方向は平行になる。
 前記の配向膜の形成、基材フィルムの表面のラビング等の処理工程は、マスク層形成工程の工程前、工程中及び工程後のいずれの時点で行ってもよいが、未硬化状態の液晶樹脂層を設ける工程の前に行うことが好ましい。
 パターン位相差層の製造方法においては、第一の硬化工程に先立ち、必要に応じて、未硬化状態の液晶樹脂層を設ける工程を行った後で、液晶樹脂層の液晶化合物を配向させる配向工程を行ってもよい。配向工程における具体的な操作としては、例えば、オーブン内で未硬化状態の液晶樹脂層を所定の温度に加熱する操作を挙げることができる。
 配向工程において液晶樹脂層を加熱する温度は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは140℃以下である。また、加熱処理における処理時間は、通常1秒以上、好ましくは5秒以上であり、通常3分以下、好ましくは120秒以下である。これにより、液晶樹脂層中の液晶化合物が配向しうる。また、液晶層形成用組成物に溶媒が含まれていた場合、前記の加熱によって通常は溶媒が乾燥するので、液晶樹脂層から溶媒が除去される。したがって、配向工程を行うと、通常は液晶樹脂層を乾燥させる乾燥工程も同時に進行する。通常、液晶樹脂層の配向軸はラビング方向と平行となり、配向軸が遅相軸となる。
 必要に応じて配向工程を行った後で、液晶樹脂層の一部の領域を硬化させる第一の硬化工程を行う。第一の硬化工程は、通常、紫外線の照射により行う。紫外線の照射時間、照射量、及びその他の条件は、液晶層形成用組成物の組成及び液晶樹脂層の厚みなどに応じて適切に設定しうる。照射時間は通常0.01秒から3分の範囲であり、照射量は通常0.01mJ/cmから50mJ/cmの範囲である。また、紫外線の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。
 第一の硬化工程の後で、液晶樹脂層の未硬化状態の領域における配向状態を変化させる工程を行う。この工程において、配向状態を変化させる方法としては、例えば、ヒーターにより、液晶樹脂層を、液晶層形成用組成物の透明点(NI点)以上に加熱してもよい。これにより、液晶化合物分子の配向はランダムになるので、液晶樹脂層の未硬化状態の領域は等方相となる。
 液晶樹脂層の未硬化状態の領域における配向状態を変化させた後で、第二の硬化工程を行う。第二の硬化工程は、紫外線の照射により行ってもよい。紫外線の照射時間、照射量などは、液晶層形成用組成物の組成及び液晶樹脂層の厚みなどに応じて適切に設定しうるが、照射量は通常50mJ/cmから10,000mJ/cmの範囲である。また、紫外線の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。照射に際して、必要に応じてヒーターによる加熱を継続して、未硬化状態の液晶樹脂層の等方相を維持した状態で照射を行ってもよい。
 さらに、別の製造方法として、異方性領域と等方性領域とを備えるパターン位相差層は、
i.基材フィルムの一方の表面に、未硬化状態の液晶樹脂層を設ける工程と、
ii.前記基材フィルムの液晶樹脂層を設けた面と反対側の表面に、ストライプパターンの透光部および遮光部をガラス上に設けたガラスマスクを介して、エネルギー線を照射して、前記液晶樹脂層の一部の領域を硬化させる第一の硬化工程と、
iii.前記液晶樹脂層の未硬化状態の領域における配向状態を変化させる工程と、
iv.前記基材フィルムの液晶樹脂層を設けた面にエネルギー線を照射して前記液晶樹脂層の未硬化状態の領域を硬化させる第2の硬化工程と
を有する製造方法により製造してよい。この製造方法においては、先に説明した製造方法と同様の操作は、先に説明した製造方法と同様の条件で行ってもよい。
 また、第一の硬化工程としては、特開平4-299332号公報に示した方法を使用してもよい。また、ガラスマスクは、例えば、ガラス表面にクロムスパッタを施し、さらにフォトレジストを塗布し、ストライプ状に露光してフォトレジストを感光させて、洗浄し、クロムをエッチングしたものを用いてもよい。あるいは、例えば感光性乳剤を塗布したPETフィルムをストライプ状にレーザー描画し、洗浄し、該PETフィルムをガラス上に接着層を介して貼り合わせたものを用いてもよい。
 さらに、上述した各製造方法では、パターン位相差層が得られる限り、各工程の順番は任意である。
 上述した製造方法によれば、いずれも、遮光部及び透光部により形成されるマスク層又はガラスマスクのマスクパターンを精度よく写し取ったパターンを有するパターン位相差層が製造できる。さらに、当該方法により得られたパターン位相差層においては、異方性領域と等方性領域との間には、物質的な連続性がある。したがって、領域間の空隙による反射及び散乱等を生じない点で光学的に有利であり、また、領域間の空隙を起点とした破損等を生じない点で機械的強度の点でも有利である。
 また、例えば、上述した第三実施形態に係る光学積層体のパターン位相差層のように遅相軸方向が異なる複数の異方性領域を備えるパターン位相差層は、以下に説明する方法で製造してもよい。
 すなわち、この製造方法は、
i.基材フィルムの表面に、光配向材料の層(以下、「光配向材料層」ということがある。)を形成する工程と、
ii.光配向材料層の一部の領域に、偏光を照射する工程と、
iii.光配向材料層の全体に、前記の偏光に対して垂直な振動方向を有する偏光を照射して、配向膜を得る工程と、
iv.前記配向膜の表面に、液晶化合物を含み活性エネルギー線の照射により硬化しうる液晶層形成用組成物の層(即ち、未硬化状態の液晶樹脂層)を形成する工程と、
v.前記液晶樹脂層に活性エネルギー線を照射して、液晶樹脂層を硬化させる工程とを有する。
 これらのようにして製造されたパターン位相差層は、通常は基材フィルムを剥がした後で使用される。ただし、本発明の効果を著しく損なわない限り、基材フィルムは、剥がさずに使用してもよい。
 基材フィルムとしては、異方性領域と等方性領域とを備えるパターン位相差層の説明において上述したものと同様のフィルムを用いてもよい。
 光配向材料とは、偏光を照射されることにより不可逆的に配向する材料である。このような光配向材料の例としては、特許4267080号公報に記載のPPN層に使用されるPPN材料、特許4647782号公報に記載のLPP/LCP混合物、第2543666号公報に記載のPPN材料などが挙げられる。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 基材フィルムの表面に、コロナ放電処理(出力0.2kW、基材フィルム濡れ指数56dyne/cm)を施し、処理面に例えば光配向材料を塗布することにより、光配向材料層を形成する。光配向材料層の厚みは、通常、所望する液晶樹脂層の配向均一性が得られる厚みにする。具体的な範囲を挙げると、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。
 光配向材料層を形成した後で、光配向材料層の一部の領域に偏光を照射する工程(第一の偏光照射工程)を行う。偏光を照射された領域では、光配向材料層において光配向材料が不可逆的に配向し、その配向状態を維持したまま固定化される。
 第一の偏光照射工程では、通常、マスクを介して光配向材料層に偏光を照射する。この際、マスクとしては、通常、ある方向に対して平行に延在する帯状の遮光部及び透光部を有するマスクを用いる。これにより、光配向材料層の、ある方向に対して平行に延在する帯状の領域に、偏光を照射することができる。
 マスクとしては、例えば、基材フィルムの光配向材料層とは反対側に形成されたマスク層を用いてもよい。マスク層は、異方性領域と等方性領域とを備えるパターン位相差層の説明において上述したものと同様に形成してもよい。
 また、マスクとしては、例えば、ガラス表面にクロムスパッタを施し、さらにフォトレジストを塗布し、ストライプ状に露光してフォトレジストを感光させて、洗浄し、クロムをエッチングしたガラスマスクを用いてもよい。
 あるいは、例えば感光性乳剤を塗布したPETフィルムをストライプ状にレーザー描画し、洗浄し、該PETフィルムをガラス上に接着層を介して貼り合わせたマスクを用いてもよい。
 第一の偏光照射工程では、偏光として、光配向材料を配向させうる波長であって、マスクの遮光部で遮光されるが透光部を透過しうる波長の光を用いる。このような偏光として、通常は紫外線を用いる。紫外線の照射時間、照射量、及びその他の条件は、光配向材料の組成及び光配向材料層の厚みなどに応じて適切に設定しうる。また、偏光の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。
 第一の偏光照射工程の後で、光配向材料層の全体に、前記の偏光に対して垂直な振動方向を有する偏光を照射する第二の偏光照射工程を行う。これにより、第一の偏光照射工程において偏光が照射されていなかった領域において、光配向材料が不可逆的に配向し、その配向状態を維持したまま固定化される。また、第一の偏光照射工程で照射した偏光と第二の偏光照射工程で照射した偏光とは振動方向が垂直であるので、光配向材料層において第二の偏光照射工程で配向した領域の配向方向は、第一の偏光照射工程で配向した領域の配向方向とは垂直になる。
 第二の偏光照射工程は、例えば、マスクを介さずに偏光を照射することにより行ってもよい。偏光の照射時間、照射量などは、光配向材料の組成及び光配向材料層の厚みなどに応じて適切に設定しうるが、照射量は通常50mJ/cmから10,000mJ/cmの範囲である。また、偏光の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。
 上述した製造方法により、基材フィルムの表面に光配向材料層からなる配向膜が得られる。この配向膜においては、配向方向が互いに垂直な2群の領域が、遮光部及び透光部により形成されるマスクのマスクパターンを精度よく写し取ったパターンを形成する。本例においては、配向方向が互いに垂直な2群の領域が、いずれもある方向に対して平行に延在する帯状の形状を有して交互に並ぶことにより、全体としてストライプ状のパターンが形成される。
 基材フィルムに配向膜を形成した後で、その配向膜の表面に、液晶樹脂層を形成する。液晶層形成用組成物としては、例えば、異方性領域と等方性領域とを備えるパターン位相差層の説明において上述したものと同様の液晶層形成用組成物を用いてもよい。
 未硬化状態の液晶樹脂層を設ける場合、通常は、塗布法を用いる。液晶層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、異方性領域と等方性領域とを備えるパターン位相差層の説明において上述したものと同様の方法を用いてもよい。液晶層形成用組成物を基材フィルムの表面に塗布することにより、未硬化状態の液晶樹脂層が形成される。
 未硬化状態の液晶樹脂層を形成する工程を行った後で、必要に応じて、液晶樹脂層に含まれる液晶化合物を配向させる配向工程を行ってもよい。配向工程を行うことにより、配向膜の各領域の配向方向に応じた方向へと液晶化合物が配向する。配向工程における具体的な操作としては、例えば、異方性領域と等方性領域とを備えるパターン位相差層の説明において上述したのと同様の操作を行なってもよい。
 必要に応じて配向工程を行った後で、未硬化状態の液晶樹脂層を硬化させる工程(硬化工程)を行う。硬化させられる液晶樹脂層の各領域では液晶層形成用組成物において重合反応が進行し、液晶化合物は配向状態を維持したまま固定化される。これにより、基材フィルムの表面に、配向膜を介して、液晶樹脂層からなるパターン位相差層が形成される。
 硬化工程は、通常、紫外線の照射により行う。紫外線の照射時間、照射量などは、液晶層形成用組成物の組成及び液晶樹脂層の厚みなどに応じて適切に設定しうるが、照射量は通常50mJ/cmから10,000mJ/cmの範囲である。また、紫外線の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。
 このパターン位相差層においては、遅相軸方向が異なる2種類の異方性領域が、配向膜に形成された異なる配向方向を有する領域のパターンを精度よく写し取ったパターンを形成する。通常、配向膜の各領域における配向方向と、その表面に形成されたパターン位相差層の各異方性領域の遅相軸方向とは、平行又は垂直となる。したがって、本例のように配向方向が互いに垂直な領域を配向膜に形成した場合、パターン位相差層において各異方性領域の遅相軸方向は垂直となる。
 さらに、当該製造方法により得られたパターン位相差層においては、遅相軸方向が異なる異方性領域の間には、物質的な連続性がある。したがって、上述した製造方法は、異なる異方性領域間の空隙による反射及び散乱等を生じない点で光学的に有利であり、また、異方性領域間の空隙を起点とした破損等を生じない点で機械的強度の点でも有利である。
 上述したパターン位相差層の製造方法においては、必要に応じて、上述した工程以外の工程を行うようにしてもよい。
 また、所望のパターン位相差層が得られる限り、各工程の順番は任意である。
 パターン位相差層としての液晶樹脂層の厚みは、液晶層形成用組成物における液晶化合物の屈折率異方性Δnの値に応じて、第一領域及び第二領域それぞれで所望の位相差Reが得られるように適切な厚みに設定しうる。通常は、液晶樹脂層の厚みは、0.5μm以上50μm以下の範囲である。
 〔7.5.第二の粘着層及び第三の粘着層〕
 第二の粘着層及び第三の粘着層の材料としては、通常、貼り合わせるフィルムを形成する樹脂の種類により適切な粘着剤を選択する。例としては、第一の粘着層の項で挙げたのと同様の粘着剤が挙げられる。また、粘着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
 第二の粘着層及び第三の粘着層の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下である。第二の粘着層及び第三の粘着層の厚みが前記範囲の下限値以上となることにより粘着層の塗工むらによる光学的な欠陥を取り除くことができ、上限値以下となることにより良好な接着力保持ができる。また、第二の粘着層の厚みと第三の粘着層の厚みは、同じでもよく、異なっていてもよい。
 粘着剤の塗工方法は特に制限されず、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法などが挙げられる。
 〔7.6.位相差フィルム〕
 位相差フィルムとしては、例えば、樹脂により形成された延伸フィルムを用いてもよい。延伸フィルムを形成する樹脂は、通常、重合体を含む。これらの樹脂が含む重合体の例を挙げると、鎖状オレフィン重合体、シクロオレフィン重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、鎖状オレフィン重合体及びシクロオレフィン重合体が好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、シクロオレフィン重合体が特に好ましい。
 ここで、樹脂は、1種類の重合体を単独で含むものを用いてもよく、2種類以上の重合体を任意の比率で組み合わせて含むものを用いてもよい。また、樹脂には、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含ませてもよい。好適な樹脂の具体例を挙げると、日本ゼオン社製「ゼオノア1420」を挙げることができる。
 さらに、位相差フィルムとしては、単層構造のフィルムを用いてもよく、複層構造のフィルムを用いてもよい。
 好適な位相差フィルムの例を挙げると、市販の斜め延伸フィルム、長尺の横延伸フィルム、例えば、日本ゼオン社製、製品名「斜め延伸ゼオノアフィルム」や「横延伸ゼオノアフィルム」などを挙げることができる。
 〔7.7.セパレータフィルム〕
 セパレータフィルムとしては、例えば、適切な基材フィルムに、必要に応じシリコーン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、フッ素系剥離剤、硫化モリブデン等の剥離剤による剥離コートを設けたフィルムを用いてもよい。取り扱い性やコストの観点から、基材フィルムとして、プラスチックフィルム又はプラスチックシートが好ましい。プラスチックフィルム又はプラスチックシートの素材としては、強度、耐熱性などの観点から、適切に選択しうる。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα-オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、アクリル樹脂などが挙げられる。これらの素材は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてよい。また、プラスチックフィルム又はプラスチックシートは、未延伸のものでもよく、1軸配向させたものでもよく、2軸配向させたものでもよい。また、これらのフィルム及びシートは、1層のみを備える単層構造を有していてもよく、2層以上の層を備える積層構造を有していてもよい。また、取り扱い性の観点から、適宜、不活性粒子などの滑剤を含むものを用いてもよい。上記、基材フィルムの厚みは、特に限定されないが、取り扱い性の観点などから、5μm~250μmが好ましい。
 以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
 以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
[評価方法の説明]
 [粘着層の緩和弾性率の測定方法]
 粘着層(直径25mmのパラレルプレート治具使用、粘着層厚さ1.5mm)につき、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製「ダイナミックアナライザーARES」)を用いて、20℃を基準温度として温度-時間換算のマスターカーブから周波数1Hzにおける貯蔵弾性率G’を測定した。その測定データから、緩和時間100秒における緩和弾性率を求めた。
 この際、粘弾性測定装置を用いた測定条件は、以下の通りにした。
 温度:20℃~150℃
 角振動数:ω=0.005rad/sec~500rad/sec
 パラレルプレート:25mmφ
 歪み量:3%
 [粘着層の剥離強度の測定方法]
 JIS-Z0237に準拠して、島津製作所社製のAUTOGRAPH(登録商標)「AGS-500D」を用いて、次の条件でガラスに対する剥離強度を測定した。
 温度:23℃
 剥離角度:180°
 剥離速度:300mm/min
 サンプル幅:25mm
 また、剥離強度測定用のサンプルは、以下の手順で準備した。PETフィルム(厚さ100μm)の表面に粘着層を厚み25μmで形成した。これを、ガラス(日本板硝子製のフロートガラス;厚み3mm)とを接触させ、JIS-K6253に準拠した2kgのローラーで貼り合わせた。その後、温度23℃、湿度70%RHで24時間保持し、剥離強度測定用のサンプルを得た。
 [透明樹脂フィルムの湿度線膨張係数の測定方法]
 透明樹脂フィルムから、透明樹脂フィルムの幅方向が測定方向となるように、JIS K7127に記載の試験片タイプ1Bに準拠してフィルム片を切り出した。切り出したフィルム片を、恒温恒湿槽付引張試験機(インストロン社製)にセットし、「湿度35%RH、23℃の窒素雰囲気」又は「湿度70%RH、23℃の窒素雰囲気」に保ち、その時のフィルム片の長さをそれぞれ測定した。この測定結果から、次式にて湿度線膨張係数を算出した。このとき、測定方向は、切り出したフィルム片の長手方向と平行にした。また、測定は5回行い、その平均値を湿度線膨張係数とした。
 湿度線膨張係数=(L70-L35)/(L35×△H)
 L35:湿度35%RHのときのフィルム片の長さ(mm)
 L70:湿度70%RHのときのフィルム片の長さ(mm)
 △H:35(=70-35)%RH
[実施例1]
 〔1.第一の粘着層の形成〕
 透明樹脂フィルムとして、凸版印刷社製の防眩機能層付きフィルム「VH82F」を用意した。この透明樹脂フィルムは、トリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製「フジタック TD80UL」、厚み80μm)の片面に防眩機能層(アンチグレア層;厚み6μm)が形成されたフィルムである。また、この透明樹脂フィルムの湿度線膨張係数は5.0×10-5(cm/cm/%RH)であった。
 他方、第一の粘着剤として、アクリル系粘着剤(リンテック社製「Opteria MO-T006C」。以下、「粘着剤A」ということがある。)を用意した。この粘着剤Aを用いて粘着層を形成し、その粘着層について上述した要領で緩和弾性率及び剥離強度を測定したところ、緩和弾性率は14.5N/cm、剥離強度は33.0(N/25mm)であった。
 用意した透明樹脂フィルムのアンチグレア層とは反対側に、粘着剤Aを厚み25μmで塗布して、第一の粘着層を形成した。これにより、多層フィルム1Aを得た。多層フィルム1Aを厚み方向に平行に切った模式的な断面図を、図8に示す。図8に示すように、多層フィルム1Aは、透明樹脂フィルム910及び第一の粘着層920をこの順に備えていた。
 〔2.パターン位相差層の形成〕
 重合性液晶化合物(BASF社製、製品名「LC242」)を75重量部と、下記の化合物1を20重量部と、架橋剤(新中村化学工業社製、トリメチロールプロパントリアクリレート)を5重量部と、重合開始剤(BASF社製、製品名「Irg 379」)を3重量部と、フッ素を含む界面活性剤メガファック-F477(DIC社製)を0.1重量部と、メチルエチルケトンを200重量部とを混合し、液晶層形成用組成物を調製した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
 基材フィルムとして、面内の屈折率が等方性で長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「PETフィルムA4100」;厚み100μm)を用意した。この基材フィルムをフィルム搬送装置の繰り出し部に取り付け、当該基材フィルムを搬送しながらラビング処理を施し、ラビング処理を施した面に前記にて用意した液晶層形成用組成物をダイコーターを使用して塗布した。これにより、基材フィルムの片面に、未硬化状態の液晶樹脂層を形成した。
 前記の液晶樹脂層を40℃で2分間配向処理して、液晶樹脂層中の重合性液晶化合物を配向させた。
 その後、液晶樹脂層に対して、基材フィルムの液晶樹脂層が形成されたのとは反対側からガラスマスクを介して15mJ/cmの微弱な紫外線を照射した。前記のガラスマスクとしては、所定の方向に延在する透光部及び遮光部が互いに平行に並んでストライプ状に形成されたものを用いた。ガラスマスクの透光部の幅は306.4μm、遮光部の幅は316.0μmとした。ガラスマスクの遮光部に相当する位置では露光されなかったために液晶樹脂層は未硬化状態のままであるが、ガラスマスクの透光部に相当する位置では露光されたために液晶樹脂層が硬化した。これにより、液晶樹脂層の露光部分において、1/2波長板として機能しうる面内位相差Reを有する異方性領域(λ/2領域;測定波長543nmにおける位相差Re=241nm)を形成した。
 次に、液晶樹脂層を90℃で10秒間加温処理して、液晶樹脂層の未硬化状態の部分(ガラスマスクの遮光部に相当した部分)の液晶相を等方相に転移させた。
 この状態を維持しながら、基材フィルムの液晶樹脂層側から窒素雰囲気下で液晶樹脂層に対して積算光量300mJ/cmの紫外線を照射して、液晶樹脂層の未硬化部分を硬化させた。これにより、面内位相差Reを有さない等方性領域(Iso領域;測定波長543nmにおける位相差Re=0.7nm)が液晶樹脂層に形成された。
 このようにして、1/2波長板として機能しうる面内位相差Reを有する異方性領域と、面内位相差Reを有さない等方性領域とを、同一面内に有する液晶樹脂層として、パターン位相差層を得た。このパターン位相差層を備えるフィルムは、(基材フィルム)-(パターン位相差層)の層構成を有する長尺のフィルムである。形成されたパターン位相差層の乾燥膜厚は、4.7μmであった。異方性領域の面内位相差Reは241nmであり、面内方向の遅相軸が基材フィルムの長手方向と0°の角度をなしていた。一方、等方性領域の面内位相差Reは0.7nmであった。異方性領域及び等方性領域は互いに平行な帯状の領域として形成され、それぞれの帯の幅は311.1μmであった。
 〔3.パターン位相差層の貼り合せ〕
 前記のパターン位相差層を備えるフィルムと多層フィルム1Aとを貼り合せた。この際、パターン位相差層を備えるフィルムのパターン位相差層と多層フィルム1Aの透明樹脂フィルムとが第一の粘着層を介して貼り合せられるように、パターン位相差層と第一の粘着層とを接触させるようにした。その後、パターン位相差層から基材フィルムを剥がした。これにより、多層フィルム1Bを得た。多層フィルム1Bを厚み方向に平行に切った模式的な断面図を、図9に示す。図9に示すように、多層フィルム1Bは、透明樹脂フィルム910、第一の粘着層920、並びに、異方性領域931及び等方性領域932を備えるパターン位相差層930をこの順に備えていた。
 〔4.位相差フィルムの貼り合せ〕
 位相差フィルム(日本ゼオン社製、製品名「横延伸ゼオノアフィルム」)を用意した。この位相差フィルムは、長手方向に対する配向角90°、測定波長543nmでの面内位相差Re125nm、面内における面内位相差Reのばらつき±10nm以下であった。
 他方、第二の粘着剤として、アクリル系粘着剤(巴川製紙所社製「ノンキャリアTD06A」。以下、「粘着剤B」ということがある。)を用意した。
 用意した位相差フィルムの表面に粘着剤Bを厚み25μmで塗布して、第二の粘着層を形成した。これにより、多層フィルム1Cを得た。多層フィルム1Cを厚み方向に平行に切った模式的な断面図を、図10に示す。図10に示すように、多層フィルム1Cは、第二の粘着層940及び位相差フィルム950をこの順に備えていた。
 また、粘着剤Bを用いて粘着層を形成し、その粘着層について上述した要領で緩和弾性率及び剥離強度を測定したところ、緩和弾性率は1.2N/cm、剥離強度は15.1(N/25mm)であった。
 前記の多層フィルム1Bのパターン位相差層と多層フィルム1Cの位相差フィルムとが第二の粘着層を介して貼り合せられるように、パターン位相差層と第二の粘着層を貼り合わせた。この際、パターン位相差層の異方性領域の遅相軸の方向を基準(0°方向)として、位相差フィルムの遅相軸の方向が+90°方向となるようにした。これにより、光学積層体900を得た。光学積層体900を厚み方向に平行に切った模式的な断面図を、図11に示す。図11に示すように、光学積層体900は、透明樹脂フィルム910、第一の粘着層920、パターン位相差層930、第二の粘着層940及び位相差フィルム950をこの順に備えていた。
 [光学積層体のパターン形状の安定性の評価方法]
 図12は、実施例1における光学積層体のパターン形状の安定性の評価に用いる評価用サンプル960を、光学積層体900の厚み方向から見た様子を示す図である。
 図12に示すように、光学積層体900を矩形に切り出した。切り出した光学積層体900は、パターン位相差層の異方性領域及び等方性領域が延在する方向Xに平行な短辺と、異方性領域及び等方性領域が延在する方向Xに垂直な長辺とを有する矩形の形状を有していた。
 この光学積層体900を、第二の粘着層と同様の粘着剤で形成された第三の粘着層(図12では図示せず。)を介してガラス板(厚み2.2mm)970の表面に貼り合わせ、評価用サンプル960とした。この評価用サンプル960を、異方性領域及び等方性領域が延在する方向Xに垂直な面で切った断面を模式的に示すと、図13のようになる。図13に示すように、評価用サンプル960は、透明樹脂フィルム910、第一の粘着層920、パターン位相差層930、第二の粘着層940、位相差フィルム950、第三の粘着層980及びガラス板970をこの順に備えていた。
 図12に示すように、ガラス板970に貼り合わせた光学積層体900において、ある基準始点P1から、異方性領域460個及び等方性領域460個だけ離れた基準終点P2までの距離(以下、「トータルピッチ」と呼ぶことがある。)Ltotalを測定した。この際、距離の測定は、パターン位相差層の異方性領域及び等方性領域が延在する方向に垂直な方向Yにおいて行った。また、測定には、非接触三次元CNC画像測定機(ミツトヨ社製「Super QV606-PRO」)を用いた。こうして測定されたトータルピッチLtotalを、試験前トータルピッチとした。
 試験前トータルピッチを測定した後、評価用サンプルを温度80℃、湿度ノーコントロールでドライの環境に500時間置くことにより、高温試験を行った。高温試験後、再びトータルピッチLtotalを測定した。そして、試験前トータルピッチと、高温試験後のトータルピッチとの差を算出し、これを高温試験によるトータルピッチLtotalの収縮量として求めた。
 また、前記の高温試験とは別に、試験前トータルピッチを測定した評価用サンプルを温度60℃、湿度90%RHの環境に500時間置くことにより、湿熱試験を行った。湿熱試験後、再びトータルピッチLtotalを測定した。そして、試験前トータルピッチと、湿熱試験後のトータルピッチとの差を算出し、これを湿熱試験によるトータルピッチLtotalの収縮量として求めた。
[実施例2]
 粘着剤Aの代わりにアクリル系粘着剤(リンテック製「Opteria MO-T007C」。以下、「粘着剤C」ということがある。)を用いて第一の粘着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を製造し、高温試験によるトータルピッチLtotalの収縮量と湿熱試験によるトータルピッチLtotalの収縮量を測定した。
 また、粘着剤Cを用いて粘着層を形成し、その粘着層について上述した要領で緩和弾性率及び剥離強度を測定したところ、緩和弾性率は2.3N/cm、剥離強度は27.5(N/25mm)であった。
[実施例3]
 アクリル酸ブチル84重量部、メタクリル酸メチル10重量部、アクリル酸1重量部及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル5重量部を、重合開始剤として2,2-アゾビスイソブチロニトリル0.3重量部を用いて共重合させた共重合体(重量平均分子量:約30万)を用意した。この共重合体100重量部を有機溶剤(酢酸エチル:トルエン=1:1(重量比))に溶解させて40重量%溶液とした。さらに、この溶液に、架橋剤として多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン工業社製「コロネートL」)を、共重合体100重量部に対して3重量部だけ加えて混合し、共重合体組成物を得た。この共重合体組成物を、以下、「粘着剤D」と呼ぶことがある。
 得られた粘着剤Dを、ポリエステルフィルム製セパレータ(リンテック社製「PET3801」)に塗布し、乾燥後の粘着剤層が25μmになるように調整した。その後、120℃で3分間加熱乾燥して、粘着層を形成した。この粘着層を第一の粘着層として用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を製造し、高温試験によるトータルピッチLtotalの収縮量と湿熱試験によるトータルピッチLtotalの収縮量を測定した。
 また、粘着剤Dを用いて粘着層を形成し、その粘着層について上述した要領で緩和弾性率及び剥離強度を測定したところ、緩和弾性率は8.4N/cm、剥離強度は20.8(N/25mm)であった。
[実施例4]
 (ハードコート剤1の調製)
 五酸化アンチモンの変性アルコールゾル(固形分濃度40%:触媒化成工業社製)100重量部に、UV硬化型ウレタンアクリレート(日本合成化学工業社製「紫光UV7640B」)10重量部、光重合開始剤(「チバガイギー社製」イルガキュア-184)0.4重量部、及びフッ素化アルキル基含有オリゴマー(大日本インキ化学工業社製「メガファックF470」)0.1重量部を混合し、UV硬化型のハードコート剤1を得た。
 (低屈折率層形成用塗工液1の調製)
 テトラメトキシシランのオリゴマ-(コルコート社製「メチルシリケート511」)と、メタノールと、水と、0.01Nの塩酸水溶液とを、重量比22:36:2:2で混合した。これを25℃の高温槽中で2時間撹拌して、重量平均分子量870のシリコーンレジンを得た。
 次に、中空シリカ粒子として中空シリカイソプロパノール分散ゾル(固形分25%,平均一次粒子径約30nm、外殻厚み約7nm)を、中空シリカ粒子/シリコーンレジン(縮合化合物換算)の固形分基準での重量比が8/2となるように、前記シリコーンレジンに加えた。その後、全固形分が1%になるようにメタノールで希釈し、低屈折率層形成用塗工液1を調製した。
 (反射防止フィルムの製造)
 厚み100μmのノルボルネン系重合体フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルムZF14-100」)を用意した。このフィルムの片面に、高周波発信機(春日電気社製)を用いて、そのフィルム面の表面張力が0.072N/mになるようにコロナ放電処理を施した。
 このフィルムのコロナ放電処理した面に、ハードコート剤1を、ダイコーターを用いて塗布した。次いで80℃で5分間乾燥させた。その後、紫外線照射(積算光量300mJ/cm)を行い、ハードコート剤1を硬化させて、厚み5μmのハードコート層を形成した。さらに、低屈折率層形成用塗工液1を、ハードコート層上に、マイクログラビアコーターによって塗布して、低屈折率層形成用塗工液1の被膜を形成した。その後、被膜を120℃で5分間熱処理して、厚み100nmの低屈折率層を形成した。これにより、ノルボルネン系重合体フィルム、ハードコート層及び低屈折率層をこの順に備える反射防止フィルムを得た。この反射防止フィルムの湿度線膨張係数は、1.0×10-5(cm/cm/%RH)であった。
 こうして得た反射防止フィルムを透明樹脂フィルムとして用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を製造し、高温試験によるトータルピッチLtotalの収縮量と湿熱試験によるトータルピッチLtotalの収縮量を測定した。
[実施例5]
 粘着剤Bの代わりに粘着剤Cを用いて第二の粘着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を製造し、高温試験によるトータルピッチLtotalの収縮量と湿熱試験によるトータルピッチLtotalの収縮量を測定した。
[実施例6]
 ウレタンアクリレート(日本合成化学社製「UV-7000B」、官能基数2~3)18部、アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル73部(ナガセケミテック社製「DA141」、粘度373mPa・s)、アクリル酸4-ヒドロキシブチル9部、メチルエチルケトン80部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティケミカルズ社製「DAROCURE TPO」)2.7部、及び不活性重合体としてウレタン樹脂(荒川化学工業社製「ユリアーノ5242」)330部を混合溶解させて、UV硬化型粘着剤を得た。
 得られたUV硬化型粘着剤を、ポリエステル製セパレータフィルム上にブレードを用いて塗布し、65℃で2分間乾燥した。その上に、さらに同じポリエステル製セパレータフィルムをラミネートした。これにより、セパレータフィルム、UV硬化型粘着剤の層及びセパレータフィルムをこの順に備える多層フィルム6Aを得た。ここで、UV硬化型粘着剤の層の厚みは、25μmであった。
 前記の多層フィルム6Aから一方のセパレータフィルムを剥離して、UV硬化型粘着剤の層を露出させた。次いで、露出させた粘着剤の層を位相差フィルムに貼り合わせた。粘着剤の層からもう一方のセパレータフィルムを剥離して、粘着剤の層を再び露出させた。露出させた粘着剤の層を多層フィルム1Bのパターン位相差層に貼り合せた。位相差フィルム側からメタルハライドランプ(日本電池社製の大型UV照射装置、照射時間12秒、積層光量1200mJ/cm)により光を照射して、粘着剤の層を硬化させて、粘着層にした。貼り合せの際、パターン位相差層の異方性領域の遅相軸の方向を基準(0°方向)として、位相差フィルムの遅相軸の方向が+90°方向となるようにした。これにより、光学積層体を得た。この光学積層体について、実施例1と同様にして、高温試験によるトータルピッチLtotalの収縮量と湿熱試験によるトータルピッチLtotalの収縮量を測定した。
 また、前記のUV硬化型粘着剤を用いて粘着層を形成し、その粘着層について上述した要領で緩和弾性率及び剥離強度を測定したところ、緩和弾性率は0.3N/cm、剥離強度は42.7(N/25mm)であった。
[実施例7]
 (液晶層形成用組成物の調製)
 重合性液晶化合物(BASF社製、製品名「LC242」)25部と、重合開始剤(チバ・ジャパン社製、製品名「Irg 379」)1部と、前記の化合物1を5部と、架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート3部と、界面活性剤としてフッ素系界面活性剤(ネオス社製、製品名「フタージェント209F」)0.03部と、溶媒としてメチルエチルケトン66部からなる液晶層形成用組成物を調製した。
 (パターン位相差層の形成)
 基材フィルムとして、長尺のノルボルネン樹脂のフィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルムZF14-100」;厚み100μm;測定波長550nmでの面内における位相差10nm以下)を用意した。この基材フィルムの片面に、光配向材料として(DIC社製「LIA-02」;固形分率1重量%;溶媒として2-ブトキシエタノール99重量%)を#2バーにより塗布し、80℃2分間で乾燥させて、光配向材料層を形成した。これにより、基材フィルムの片面に光配向材料層を備える配向材料積層体を得た。
 その後、光配向材料層に対して、ガラスマスクを介して、波長313nmの直線偏光紫外線を200mJ/cmの積算光量で照射した。前記のガラスマスクとしては、基材フィルムの長尺方向に延在する透光部及び遮光部が互いに平行に並んでストライプ状に形成されたものを用いた。ガラスマスクの透光部の幅は276.8μm、遮光部の幅は276.8μmとした。また、紫外線を照射する際、(基材フィルム)-(光配向材料層)の層構成を備える配向材料積層体には長尺方向に張力をかけた。この張力は、前記の配向材料積層体の引っ張り歪が0.13%となる大きさとした。これにより、光配向材料層の露光された領域において光配向材料を配向させた。
 次いで、ガラスマスクを外し、前記の直線偏光紫外線とは偏光方向が90°異なる波長313nmの直線偏光紫外線を10mJ/cmの積算光量で照射した。これにより、光配向材料層において未配向であった領域が配向し、配向膜が得られた。この配向膜では、配向方向が90°異なる領域がガラスマスクのマスクパターンを精度よく写し取ったパターンを形成していた。
 その後、配向膜の表面に、先の調製した液晶層形成用組成物を、ダイコーターを使用して塗布して、液晶樹脂層を得た。この液晶樹脂層を40℃で2分間配向処理して、液晶樹脂層中の重合性液晶化合物を配向させた。
 次に、窒素雰囲気下で液晶樹脂層に対して2000mJ/cmの紫外線を照射して、液晶樹脂層を硬化させた。これにより、遅相軸方向が90°異なる2群の異方性領域を、同一面内に有する液晶樹脂層を、パターン位相差層として得た。このパターン位相差層を備えるフィルムは、(基材フィルム)-(配向膜)-(パターン位相差層)の層構成を備える長尺のフィルムである。形成されたパターン位相差層の乾燥厚みは、2μmであった。パターン位相差層に含まれる各異方性領域の位相差Reは125nmであった。また、一方の群の異方性領域の面内の遅相軸は、フィルムの長尺方向と+45°の角度をなしており、他方の群の異方性領域の面内の遅相軸は、フィルムの長尺方向と-45°の角度をなしていた。パターン位相差層の各異方性領域の配置は、それぞれの異方性領域が長尺方向に帯状に延在する配置となっており、全体としてストライプ状のパターンを形成していた。それぞれの異方性領域の幅は、276.8μmであった。
 こうして得たパターン位相差層を備えるフィルムと実施例1で製造した多層フィルム1Aとを貼り合せた。この際、パターン位相差層を備えるフィルムのパターン位相差層と多層フィルム1Aの透明樹脂フィルムとが第一の粘着層を介して貼り合せられるように、パターン位相差層と第一の粘着層とを接触させるようにした。その後、パターン位相差層から基材フィルムを剥がした。その後、パターン位相差層の基材フィルムを剥がした面に、粘着剤Bを厚み25μmで塗布して、第二の粘着層を形成した。これにより、透明樹脂フィルム、第一の粘着層、パターン位相差層、配向膜、及び第二の粘着層をこの順に備える光学積層体を得た。
 この光学積層体は位相差フィルムを備えていないので、第二の粘着層に直接にガラス板を貼り合せて、トータルピッチLtotalの収縮量の評価用サンプルを用意した。この評価用サンプルを用いて、実施例1と同様にして、高温試験によるトータルピッチLtotalの収縮量と湿熱試験によるトータルピッチLtotalの収縮量を測定した。
[実施例8]
 多層フィルム1Bのパターン位相差層と多層フィルム1Cの位相差フィルムとを第二の粘着層を介して貼り合せる際、パターン位相差層の異方性領域の遅相軸の方向を基準(0°方向)として、位相差フィルムの遅相軸の方向が+135°方向となるようにした。この事項以外は実施例1と同様にして、光学積層体を製造し、高温試験によるトータルピッチLtotalの収縮量と湿熱試験によるトータルピッチLtotalの収縮量を測定した。
[比較例1]
 第一の粘着剤として、粘着剤Aの代わりに粘着剤Bを用いて第一の粘着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を製造し、高温試験によるトータルピッチLtotalの収縮量と湿熱試験によるトータルピッチLtotalの収縮量を測定した。
[比較例2]
 粘着剤Aの代わりにアクリル系粘着剤(リンテック製「Opteria MO-3006C」。以下、「粘着剤E」ということがある。)を用いて第一の粘着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を製造し、高温試験によるトータルピッチLtotalの収縮量と湿熱試験によるトータルピッチLtotalの収縮量を測定した。
 また、粘着剤Eを用いて粘着層を形成し、その粘着層について上述した要領で緩和弾性率及び剥離強度を測定したところ、緩和弾性率は1.9N/cm、剥離強度は16.5(N/25mm)であった。
[比較例3]
 三菱電機社製の立体画像表示装置(モデル名:RDT233WX-3D;23インチ)から、位相差フィルムを取り出した。この位相差フィルムは、1/4波長を有する2種類の異方性領域が、面内の基準方向に平行に延在して、交互に設けられたストライプ状のパターンを有していた。この位相差フィルムの2種類の異方性領域の遅相軸方向は、長手方向に対して+45°の角度をなす方向と-45°の角度をなす方向であった。また、前記の2種類の異方性領域は、遅相軸方向が互いに90°異なっていた。
 こうして得たパターン位相差フィルムの断面をマイクロスコープ(倍率2000倍)で観察したところ、その層構成は、実施例1と同様の透明樹脂フィルムの一方の面に第一の粘着層が無い状態で直接パターン位相差層が形成され、他方の面に防眩機能層が形成されていた。さらに、パターン位相差フィルムのパターン位相差層の面に、厚み25μmで別のPETフィルム(厚さ100μm)に形成した粘着剤Bを厚み25μmで転写して、第二の粘着層を形成した。これにより、透明樹脂フィルム、パターン位相差層、及び第二の粘着層をこの順に備える光学積層体を得た。
 この光学積層体は位相差フィルムを備えていないので、第二の粘着層に直接にガラス板を貼り合せて、トータルピッチLtotalの収縮量の評価用サンプルを用意した。この評価用サンプルを用いて、実施例1と同様にして、高温試験によるトータルピッチLtotalの収縮量と湿熱試験によるトータルピッチLtotalの収縮量を測定した。
[比較例4]
 実施例6の多層フィルム6Aと同様にして、セパレータフィルム、UV硬化型粘着剤の層及びセパレータフィルムをこの順に備える多層フィルム4aを得た。この多層フィルム4aから一方のセパレータフィルムを剥離して、UV硬化型粘着剤の層を露出させた。次いで、露出させた粘着剤の層を、実施例1と同様の透明樹脂フィルムのアンチグレア層とは反対側に貼り付けた。その後、粘着剤の層からもう一方のセパレータフィルムを剥離して、粘着剤の層を再び露出させた。これにより、透明樹脂フィルム及び粘着剤の層を備える多層フィルム4bを得た。
 こうして得た多層フィルム4bの粘着剤の層に、実施例1で製造したパターン位相差層を貼り合せ、パターン位相差層から基材フィルムを剥がした。その後、パターン位相差層側から実施例6と同様にメタルハライドランプにより光を照射して、粘着剤の層を硬化させて、第一の粘着層にした。これにより、透明樹脂フィルム、第一の粘着層、及びパターン位相差層をこの順に備える多層フィルム4cを得た。こうして得た多層フィルム4cを多層フィルム1Bの代わりに用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を製造し、高温試験によるトータルピッチLtotalの収縮量と湿熱試験によるトータルピッチLtotalの収縮量を測定した。
[結果]
 以下、前記の実施例及び比較例の結果を、表1~表3に示す。以下の表において、TACとはトリアセチルセルロースを示し、COPとはシクロオレフィンポリマーを示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
[検討]
 実施例の光学積層体は、比較例の光学積層体に比べて、高温及び/又は高湿度の環境においてもトータルピッチの収縮量が小さい。このことから、本発明の光学積層体は、高温及び高湿度の環境においてパターン位相差層のパターン形状が変化し難いことが分かる。
 100 光学積層体
 110 マスキングフィルム
 120 透明樹脂フィルム
 130 第一の粘着層
 140 パターン位相差層
 141 異方性領域(第一領域)
 142 等方性領域(第二領域)
 143 異方性領域と等方性領域との境界線
 150 第二の粘着層
 160 位相差フィルム
 170 第三の粘着層
 180 セパレータフィルム
 200 光学積層体
 220 透明樹脂フィルム
 300 光学積層体
 340 パターン位相差層
 341 第一異方性領域
 342 第二異方性領域
 400 立体画像表示装置
 410 表示パネル
 411 光源側偏光板
 412 液晶セル
 413 視認側偏光板
 500 偏光メガネ
 510 1/2波長板
 520 1/4波長板
 530 直線偏光板
 600 立体画像表示装置
 610 表示パネル
 611 光源側偏光板
 612 液晶セル
 613 視認側偏光板
 700 立体画像表示装置
 800 偏光メガネ
 810 1/4波長板
 820 1/4波長板
 830 直線偏光板
 900 光学積層体
 910 透明樹脂フィルム
 920 第一の粘着層
 930 パターン位相差層
 931 異方性領域
 932 等方性領域
 940 第二の粘着層
 950 位相差フィルム
 960 評価用サンプル
 970 ガラス板
 980 第三の粘着層

Claims (11)

  1.  立体画像表示装置に設けられうる光学積層体であって、
     前記光学積層体は、透明樹脂フィルム、第一の粘着層、パターン位相差層及び第二の粘着層をこの順に備え、
     前記パターン位相差層は、右目用画像及び左目用画像の一方を表示する光を透過させうる第一領域と、前記右目用画像及び左目用画像の他方を表示する光を透過させうる第二領域とを備え、
     前記第一の粘着層の緩和弾性率が、2N/cm~15N/cmである、光学積層体。
  2.  前記透明樹脂フィルムが、防眩機能層及び反射防止機能層の一方又は両方を含み、酢酸セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びノルボルネン系樹脂からなる群より選ばれる樹脂のフィルムを備える、請求項1記載の光学積層体。
  3.  前記パターン位相差層の前記第一領域が、1/2波長の面内位相差を有し、
     前記パターン位相差層の前記第二領域が、面内位相差を有さず、
     前記第二の粘着層のパターン位相差層とは反対側に、面内において均一な1/4波長の面内位相差及び遅相軸方向を有する位相差フィルムを備える、請求項1又は2記載の光学積層体。
  4.  前記位相差フィルムの遅相軸と、前記パターン位相差層の前記第一領域の遅相軸とがなす角度が90°±15°又は45°±15°である、請求項3記載の光学積層体。
  5.  請求項1~4のいずれか一項に記載の光学積層体の製造方法であって、
     前記パターン位相差層を、前記透明樹脂フィルムとは別に形成する工程と、
     前記パターン位相差層を、第一の粘着層を介して前記透明樹脂フィルムに貼り合わせる工程とを有する、光学積層体の製造方法。
  6.  請求項3又は4記載の光学積層体の製造方法であって、
     前記パターン位相差層を、前記透明樹脂フィルムとは別に形成する工程と、
     前記パターン位相差層と前記透明樹脂フィルムとを、前記第一の粘着層を介して貼り合わせる工程と、
     前記パターン位相差層と前記位相差フィルムとを、前記第二の粘着層を介して貼り合わせる工程とを含む、光学積層体の製造方法。
  7.  前記パターン位相差層の前記第一領域及び前記第二領域がそれぞれ1/4波長の面内位相差を有し、
     前記パターン位相差層の前記第一領域の遅相軸方向と前記第二領域の遅相軸方向とが垂直である、請求項1又は2記載の光学積層体。
  8.  請求項7記載の光学積層体の製造方法であって、
     前記パターン位相差層を、前記透明樹脂フィルムとは別に形成する工程と、
     前記パターン位相差層を、第一の粘着層を介して前記透明樹脂フィルムに貼り合わせる工程とを有する、光学積層体の製造方法。
  9.  ガラスに対する前記第一の粘着層の剥離強度が、20N/25mm以上である、請求項1~4及び7のいずれか一項に記載の光学積層体。
  10.  前記透明樹脂フィルムの湿度線膨張係数が、0.5×10-5cm/cm/%RH~1.5×10-5cm/cm/%RHである、請求項1~4、7及び9のいずれか一項に記載の光学積層体。
  11.  請求項1~4、7、9及び10のいずれか一項に記載の光学積層体を備える、立体画像表示装置。
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