WO2013031252A1 - セレンの回収方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1) 水溶性セレン化合物を含む試料を、水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物と、温度が35℃を超えて40℃以下及びpH7.0~9.4の条件下で接触させることにより水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成させることを含む、セレンの回収方法。
(2) 水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物が、好気性微生物である、請求項1に記載のセレンの回収方法。
(3) 水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物が、Pseudomonas属細菌である、請求項1又は2に記載のセレンの回収方法。
(4) 水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物が、Pseudomonas stutzeriである、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
(5) 水溶性セレン化合物を含む試料を、水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物としてのPseudomonas stutzeri NT-I株(受託番号NITE BP-685)と温度35~40℃及びpH7.0~9.4の条件下で接触させることにより水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成させることを含む、セレンの回収方法。
(6) 水溶性セレン化合物がセレン酸又は亜セレン酸である、(1)から(5)の何れか1項に記載の方法。
(7) 水溶性セレン化合物を含む試料を、水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物と通気条件下において接触させる、(1)から(6)の何れか1項に記載の方法。
(8) 通気条件が1L/分~5L/分である、(7)に記載の方法。
(9) 水溶性セレン化合物を含む試料を、水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物と、通気条件下において接触させた後に、通気を停止した条件下で接触させる、(7)又は(8)に記載の方法。
(10) 水溶性セレン化合物を含む試料を水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物と攪拌条件下において接触させる、(1)から(9)の何れか1項に記載の方法。
(11) 攪拌条件が、250rpm以下の攪拌速度である、(10)に記載の方法。
(12) 水溶性セレン化合物を含む試料中におけるセレン濃度が100~6000μmol/Lである、(1)から(11)の何れか1項に記載の方法。
(13) 水溶性セレン化合物を含む試料が、セレン含有材料を前処理することにより得られる試料である、(1)から(12)の何れか1項に記載の方法。
(14) 水溶性セレン化合物を含む試料が、セレン含有材料を無機酸に溶解することにより得られる試料である、(13)に記載の方法。
(15) 水溶性セレン化合物を含む試料が、セレン含有材料を無機酸に溶解し、次いでアルカリ水溶液で中和することにより得られる試料である、(13)又は(14)に記載の方法。
(16) セレン含有材料が、銅(Cu)、インジウム(In)、及びセレン(Se)を含む材料である、(13)から(15)の何れか1項に記載の方法。
(17) セレン含有材料が、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及びセレン(Se)を含む材料である、(13)から(16)の何れか1項に記載の方法。
(18) セレン含有材料が、パネル材料である、(13)から(17)の何れか1項に記載の方法。
(19) セレン含有材料が、太陽電池パネルである、(13)から(18)の何れか1項に記載の方法。
(20) 銅(Cu)、インジウム(In)、及びセレン(Se)を含む材料を前処理することにより得られる水溶性セレン化合物を含む試料を、水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物と接触させることにより水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成させることを含む、セレンの回収方法。
(21) 水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物が、好気性微生物である、(20)に記載のセレンの回収方法。
(22) 水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物が、Pseudomonas属細菌である、(20)又は(21)に記載のセレンの回収方法。
(23) 水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物が、Pseudomonas stutzeriである、(20)から(22)の何れか1項に記載の方法。
(24) 水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物が、Pseudomonas stutzeri NT-I株(受託番号NITE BP-685)である、(20)から(23)の何れか1項に記載の方法。
(25) 銅(Cu)、インジウム(In)、及びセレン(Se)を含む材料が、更にガリウム(Ga)を含む材料である、(20)から(24)の何れか1項に記載の方法。
(26) 水溶性セレン化合物を含む試料が、銅(Cu)、インジウム(In)、及びセレン(Se)を含む材料を無機酸に溶解することにより得られる試料である、(20)から(25)の何れか1項に記載の方法。
(27) 水溶性セレン化合物を含む試料が、銅(Cu)、インジウム(In)、及びセレン(Se)を含む材料を無機酸に溶解し、次いでアルカリ水溶液で中和することにより得られる試料である、(20)から(26)の何れか1項に記載の方法。
(28) 銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)及びガリウム(Ga)を含む材料を無機酸に溶解し、次いでアルカリ水溶液で中和することにより、沈殿物として銅(Cu)及びインジウム(In)を回収し、上清としてセレン(Se)及びガリウム(Ga)を回収し、次いでセレン(Se)及びガリウム(Ga)を含む上記上清を、水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物と接触させることにより水溶性セレン化合物を還元して元素態セレンを沈殿物として回収し、ガリウム(Ga)を上清として回収することを含む、銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)及びガリウム(Ga)の回収方法。
水溶性セレン化合物とは、セレンを含有する水溶性化合物を指す。水溶性セレン化合物の例としてはセレン酸、亜セレン酸などが挙げられる。
元素態セレンとは、他の元素と化合物を形成していない元素の形態のセレンを指す。
ここでいう「気体セレン」とは、気体として回収可能なセレン化合物を意味し、例えばジメチルジセレニド、ジメチルセレニドなどが挙げられる。
形態 桿状
コロニーの色(TBS培地) 白色
グラム染色性 ―
運動性 +
O-Fテスト O
カタラーゼ活性 +
オキシダーゼ活性 +
好ましくは、水溶性セレン化合物を含む試料をPseudomonas stutzeri NT-I株(受託番号NITE BP-685)と温度35~40℃及びpH7.0~9.4の条件下で接触させることにより水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成させる。
実施例1では、バイオリアクターシステムによるセレン酸および亜セレン酸の還元最適条件を検討した。
(1)実験材料および方法
(1-1)培養方法
5 L容ジャーファーメンター(Bioneer-C500N型5L(S)、株式会社丸菱バイオエンジ)にTSB培地3000 mlを入れ、オートクレーブ処理を行った。500 mmol/Lのセレン酸溶液もしくは亜セレン酸溶液を3 ml本培地に添加した。12時間前培養を行った培養液を遠心分離により集菌し、OD660=1.0に調整後、30 ml(1%)接種した。各培養条件で培養を行った。
ジャーファーメンターより培養液を適当量採取し、菌体濁度(O.D.600)を測定した。培養液を2 ml分取し、15,000rpm、5分間の条件で遠心分離を行った。遠心分離後、上清をフィルタレーション(0.2 μm孔)した試料を上清試料とし、遠心分離により得られたペレットを沈澱試料とした。
上記の上清試料100 μlを分取し、超純水900 μlにて1/10倍希釈した。この希釈液をイオンクロマトグラフィー(ICS-1100;検出器、DS6 HEATED CONDUCTIVITY CELL;カラム、IonPac AS12A;ガードカラム、AG12A;サプレッサー、ASRS300;溶離液、3.0 mM Na2CO3;流速、1.5 ml/min、ダイオネクス社)に供し、セレン酸および亜セレン酸の濃度を測定した。
上清試料1000 μlを、濃硝酸100 μlを添加した超純水8900 μlに添加し、1/10倍希釈した。この溶液を測定試料とし、ICP-AES(iCAP 6300 Duo、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)により全セレン濃度の測定を行った。
沈澱試料に超純水2 mlを加え、ボルテックスにより洗浄後、遠心分離により沈殿を回収した。繰り返し、洗浄作業を行った後、沈澱試料に1500 μlの濃硝酸と50 μlの濃硫酸を添加し、ボルテックスにより沈殿物を溶解させた。
溶解液を15,000rpm、5分間の条件で遠心分離を行い、上清と沈殿物を分離した。上澄みの溶液は10 mlメスフラスコに分取した。沈澱物は、再度同条件で溶解操作を行い、上清を回収し、上澄み溶液を回収したメスフラスコに分取した。10 mlメスフラスコに超純水を標線まで足し、定容したものを測定試料とした。測定試料はICP-AESによりセレン濃度の測定を行った。
ジャーファーメンターの排気口にファーメードチューブを接続し、250 ml容の試薬瓶に添加した濃硝酸150 mlへバブリングを行った。濃硝酸との接触面にはエアーストーンを接続した。濃硝酸は経過時的にサンプリングし、ICP-AESによりセレン濃度を測定した。
NT-I株の菌体あたりの還元速度を算出するため、経時的にNT-I株の菌体数とO.D.600を測定し、相関を求めた。
培養にはジャーファーメンターを用い、38℃、pH9.0、1 L/miin、250rpmの条件下において、2.1の培養方法で培養を行った。実験開始後、経時的に培養液を採取し、菌体数とO.D.600を測定した。菌体数は、カウンティングチャンバー内の60区画内の菌数を、位相差顕微鏡(DM1000、Laica)を用いてカウントし、平均値を求めた。O.D.600の測定には分光光度計(V-600、日本分光株式会社)を用いた。
(2-1)ジャーファーメンターにおける還元特性
ジャーファーメンターによる培養におけるNT-I株のセレン酸および亜セレン酸の還元特性を典型的な経時変化の例として、38℃、pH調整なし(初期pH7.0)、1 L/min、120rpmの培養条件下における培養の結果を図1に示す。0.5 mMのセレン酸を添加すると、約2時間の誘導機の後にセレン酸還元が開始し、4時間以内にすべてのセレン酸が還元され、蓄積した亜セレン酸も22時間以内に培養液中から完全に消失した。三角フラスコにおける実験においては、セレン酸の還元は10時間以内、亜セレン酸の還元は16時間以内に行われている。このことから本培養条件においては、三角フラスコに比べセレン酸の還元が促進され、亜セレン酸の還元が遅くなっていると言える。
ジャーファーメンターを用いた増殖系におけるNT-I株の菌体数の経時変化を図2に示す。この結果より、NT-I株の対数増殖期は約7時間であり、以降は定常期に達することがわかる。 O.D.600の値もNT-I株の増殖に伴って増加することがわかった(図3)。
この時の比例係数を用いてO.D.600の値から菌体数を算出した。
各培養条件の変化とセレン酸還元速度の関係を評価するために、各変数における単位時間当たりのセレン酸減少量をセレン酸還元速度(mmol/cell/hr)とし算出した。一例として、図4に38℃、pH調整なし(初期pH7.0)、1 L/min、120rpmの培養条件下におけるセレン酸濃度の経時変化を示す。セレン酸還元速度(mmol/cell/hr)は、まず直線的にセレン酸濃度が減少する期間において、その勾配(mmol/3 L/hr)を求めた。さらにセレン還元速度を算出した前後の菌体数(cell/ml)をO.D.600の値から算出し、勾配を菌体数で割ることでセレン酸還元速度(mmol/cell/hr)を算出した。亜セレン酸還元速度についても、同様に算出した。
これまでの知見から、NT-I株はpH6.0-9.0のpH域で増殖可能であり、増殖における最適pHは7.0であることが明らかになっている。そこでNT-I株のセレン酸、亜セレン酸還元に及ぼすpHの影響を調べた。
セレン酸還元については、pH6.5-9.0の範囲において4-5時間で0.5 mmol/Lのセレン酸を還元できることがわかった(図5)。また、pH10.0においては、生育が非常に遅いものの、60時間以降にセレン酸の還元が観察された(data not shown)。菌体あたりの比還元速度を算出した結果を図6に示した。この結果、ジャーファーメンター培養によるNT-I株のセレン酸還元は、pH7.5-8.0が最適であることがわかった。
これまでにNT-I株は10-42℃の温度域で増殖可能であり、38℃が増殖における最適温度であることが分かっている。そこでジャーファーメンター培養において、30-40℃に設定をして還元最適試験を行った。
この結果、30-40℃の範囲において、5時間以内にセレン酸が還元されることがわかった(図9)。特に38℃においてセレン酸が4時間で消失しており、最も早かった。比還元速度を算出したところ、35-38℃において高い比還元速度が得られた(図10)。これらの結果から、セレン酸還元における最適温度は38℃であると言える。
NT-I株のセレン酸・亜セレン酸の還元における酸素移動速度に影響を及ぼす因子の検討は、三角フラスコなどを用いた培養であったためにこれまでに行われていない。本来嫌気的反応である還元反応が好気条件において迅速に進むNT-I株の還元反応は非常に興味深い。そこでジャーファーメンター培養において、通気および攪拌について検討を行った。
セレン酸還元における通気量の変化の影響を図13に示した。この結果、0-5 L/minのどの通気量においても、4時間以内にセレン酸の還元が速やかに行われることがわかった。3時間時点でのセレン酸濃度は、通気量が大きいほど高くなっている。菌体数は通気量が大きいほど増殖が速く、0 L/minでは顕著に菌体の増殖が抑制された。比還元速度の比較においては、還元速度はほとんど変わらないものの、菌体数が抑制されていることから、0 L/minの比還元速度が高くなっている(図14)。これらのことから、NT-I株はセレン酸の還元について菌体数に依存しておらず、少量の菌体でも速やかに還元が進んでいることから、NT-I株は非常に高い還元能を持っていると考えられる。一方で、セレン酸還元が始まる点はどの時間においても2時間目以降であり、還元開始に他の因子が影響している可能性がある。
攪拌による培地中の酸素移動速度の影響を検討するために、溶存酸素(DO)とセレン酸還元の比較を行った(図17)。これらの図を比較すると、セレン酸還元はDOが0%になってから開始することがわかった。本来還元反応は嫌気条件下において進む反応であることから、菌体が増殖し、培養液中の酸素が消費されることで、微嫌気的な状況ができ、その後セレン酸の還元が進んでいるものと考えられる。300rpmにおいては、セレン酸還元途中でDOが上昇し、同時にセレン酸還元が停止していることからも、DOが0%まで低下するとセレン酸還元が進行し、DOが0%から増加すると還元が進まないことがわかる。
亜セレン酸還元における攪拌速度の変化の影響を図18に示した。この結果、120-400rpmの範囲において、15時間以内に亜セレン酸の還元が速やかに行われることがわかった。特に300rpmにおいて12時間で亜セレン酸が消失しており、最も早いことがわかった。菌体数の増殖に関しては、300rpmで菌体の生育が早く、400rpmでは菌体の生育速度は早いものの誘導期が長くなっていることがわかる。これらの結果から、亜セレン酸還元における最適攪拌速度は300rpmであると言える。
セレン酸および亜セレン酸の還元における最適条件を表1にまとめた。最適化前の条件下(38℃、pH調整なし、120rpm、1 L/min)においては、セレン酸還元は4時間以内に終わる一方で、亜セレン酸還元終了までには22時間かかっている(図1)。つまりセレン酸から元素態セレンまでの還元においては、亜セレン酸の還元が律速となっていることがわかる。このことから、セレン酸の還元が阻害されず、亜セレン酸の還元が最適となる条件を、セレンオキシアニオン還元最適条件とした。
気体セレンの生成を制御することは、固体セレンの回収率向上を図る上でも、重要なポイントである。そこで、実施例2では、微生物によるSe回収プロセス確立のために、気体セレンの回収方法を検討すると共に、気体セレン生成の制御方法を検討することで、固体セレン回収および気体セレン回収の検討を行った。また固体セレン回収条件を決定後、本プロジェクトの達成目標であるSe含有率30%以上の高濃度のSe汚泥回収を検討した。
(1-1)固体回収の培養方法
5 L容ジャーファーメンターにTSB培地3000 mlを入れ、オートクレーブ処理を行った。38℃、250rpm、1 L/minの条件で1時間通気を行った。12時間前培養を行ったNT-I前培養液を遠心分離により集菌し、再懸濁してO.D.660=1.0に調整後、30 ml(1%)接種した。38℃、pH9.0、250rpm、1 L/minの培養条件で培養を行った。培養開始12時間後に、500mmol /Lのセレン酸溶液を3 ml本培養液に添加し培養を行った。
5 L容ジャーファーメンターにTSB培地3000 mlを入れ、オートクレーブ処理を行った。38℃、250rpm、1 L/minの条件で1時間通気を行った。500mmol/Lのセレン酸溶液を3 ml本培地に添加した。12時間前培養を行ったNT-I前培養液を遠心分離により集菌し、再懸濁してO.D.660=1.0に調整後、30 ml(1%)接種した。38℃、pH9.0、250rpm、1 L/minの培養条件で培養を行った。
測定試料の調製および、各相の測定方法は実施例1に従った。
また、気相部の定性・定量としてGC-MSによる測定を行った。ジメチルセレン(DMSe)、ジメチルジセレン(DMDSe)、ジメチルスルフィド(DMS)、ジメチルジスルフィド(DMDS)については、評品を用いて保持時間により定性を行い、検量線を作成し定量を行った。ジメチルスルホセレナイド(DMSSe)については、GC-MS-MSにより構造を推定し、保持時間を決定した。
ジャーファーメンターの排気口にファーメードチューブを接続し、250 ml容の試薬瓶に添加した濃硝酸150 mlへバブリングを行った。濃硝酸との接触面にはエアーストーンを接続した。濃硝酸は経過時的にサンプリングし、ICP-AESによりセレン濃度を測定した。
また濃硝酸が入った試薬瓶の前には、水蒸気トラップ用に250 ml容の空の試薬瓶を接続した。
活性炭(SKC社製 Anasorb CSC、coconut charcoal 226-16)による気体Se回収を検討するため、ジャーファーメンター排気管にファーメードチューブを使って活性炭を直列に2本接続した。接続した活性炭の後には、硝酸への通気を接続した。活性炭にはヤシガラ活性炭を用いた。また前部の活性炭の前には、水蒸気トラップ用に250 ml容の空の試薬瓶を接続した。
目標値であるSe含有率30%以上の高濃度のSe汚泥回収を行うため、セレン酸の終濃度が通常の10倍の5 mmol/Lになるように添加し、固体回収条件において培養を行った。培養液は、全量遠心分離により沈殿を回収した。得られた沈澱は、洗浄のため70%エタノールにて懸濁し遠心分離をして沈殿を回収した。洗浄操作を再度行った後、沈澱を100%エタノールに懸濁し、ドラフトチャンバー内で乾燥したものをSe汚泥とした。Se汚泥は元素態セレンの溶解と同じ方法で溶解し、ICP-AESによりSe濃度を測定した。
(2-1)元素態セレン減少量への通気の影響
還元最適条件下において、NT-I株を12時間培養後、セレン酸を添加し、通気を1 L/minに保った場合と、0 L/minに変更し通気を止めた場合の結果を図22に示した。どちらの条件においても、セレン酸添加後から速やかに元素態セレンが生成することがわかった。元素態セレンの生成は通気をした場合のほうが早く、元素態セレンの最大濃度は0.37 mmol/Lであった。通気を止めた場合には元素態セレンの生成がやや遅れるものの、元素態セレンの最大濃度は0.44 mmol/Lと通気をした場合よりも高くなった(図22A)。
元素態セレンの減少に伴い発生すると考えられる気体セレンの定性を行うため、GC-MSを用いて気相の測定を行った。典型的な測定結果を図23に示した。この結果、ジャーファーメンター培養においては、DMDSeがメインピークとして検出された。またDMSSeに当たる保持時間にピークが検出された。スルフィドとしては、DMDSが検出されている。
DMSSeについては、DMDSeとDMDSの存在下において、平衡反応により生成することが考えられた。そこで、室温において99.4 ×103mg/LのDMDSe 350 μ、53 ×103mg/LのDMDS 350 μl を混合し、常温において保存バイアル瓶を用いて密閉下で12時間静置した後、GC-MSにより液相を測定した。この結果、保持時間12.7 min付近にDMSSeのピークが確認された(図24)。このことから、今回培養中の気相部から検出されたDMSSeについても、微生物反応により生成したDMDSeとDMDSが平衡反応を起こすことで生成した可能性も考えられる。
元素態セレンの減少に伴い生成する気体セレンの経時的な定量を行うため、ジャーファーメンター培養の排気を、硝酸に通すことで気体セレンをトラップし気体回収を試みた。還元最適条件下において、セレン酸を添加し培養を行った結果を図25に示した。
培養120時間後の各相の収量を合計すると85.8%となり(表2)、これに硝酸による気体セレンの回収率を考慮した場合、102.2%となることから、NT-I株によるセレン酸還元における気相、液相、固相のマスバランスがとれていると言える。
気体セレンの回収方法として、運搬が簡便であり、危険性の伴わない活性炭を用いた気体セレンの回収を試みた。還元最適条件下において、セレン酸を添加し、NT-I株によるジャーファーメンター培養を行った。ジャーファーメンターの排気管に活性炭を直列に2本接続し、ジャーファーメンターに近いものを活性炭(1)、次を活性炭(2)とした。活性炭の後ろには硝酸を介して通気を行った。各活性炭および硝酸の元素測定結果を図26に示した。
また活性炭による吸着において、水蒸気による脱離も考えられることから、活性炭による吸着操作の前段階において水蒸気を効率的にトラップすることで、活性炭による気体セレンの吸着効率が向上する可能性も考えられる。
上記(2-1)において、通気を制御することで元素態セレンが蓄積するという結果が得られたことから、固体セレンの回収を試みた。セレン酸の終濃度が通常の10倍の5 mmol/Lになるように添加し、固体回収条件において培養を行った結果を図27に示した。培養中、亜セレン酸濃度の減少が停止したため、途中で1 L/minの通気を行った。通気は還元速度の減少が観察された時間に行い、33時間目に1 L/min、250rpmの条件で10分間、50時間目に1 L/min、120rpmの条件で1時間、122時間目に1 L/min、250rpmの条件で8時間の通気を行った。
(1)材料と実験方法
(1-1)排水の分析
2種類のSe含有排水を、溶液試料1、溶液試料2とした。実験には溶液試A料2を使用した。測定は、溶液試料1、溶液試料2を1/10、 1/100希釈測定溶液を調製し、液性を整えたのち、 ICP-AESにより測定を行った。測定回数はn=3で行った。
5 L容ジャーファーメンターにTSB培地2700 mlを入れ、オートクレーブ処理を行った。38℃、250rpm、1 L/minの条件で1時間通気を行った。12時間前培養を行ったNT-I株の前培養液を遠心分離により集菌し、再懸濁してOD660=1.0に調整後、ジャーファーメンターに30 ml(1%)接種した。38℃、pH9.0、250rpm、1 L/minの培養条件で培養を行った。培養開始12時間後に、溶液試料2(300 ml)を滅菌せずに本培養液に添加した。
5 L容ジャーファーメンターにTSB培地2700 mlを入れ、オートクレーブ処理を行った。38℃、250rpm、1 L/minの条件で1時間通気を行った。溶液試料2(300 ml)を滅菌せずに本培地に添加した。12時間前培養を行ったNT-I株の前培養液を遠心分離により集菌し、再懸濁してOD660=1.0に調整後、ジャーファーメンターに30 ml(1%)接種した。38℃、pH9.0、250rpm、1 L/minの培養条件で120時間培養を行った。
測定試料の調製および、各相の測定方法は上記に従った。
(2-1)溶液試料の分析
溶液試料のSe含有量を表4に示した。溶液2について、イオンクロマトグラフィーによる定量を行ったところ、セレン酸が4.54 mmol/L、亜セレン酸が0.791 mmol/Lであった。この値は、ICP-AESによる測定結果5.53 mmol/Lとほぼ一致する。
Se含有排水としては、セレン酸の含有量が高いため、物理化学的方法では処理が難しい排水である。溶液試料1と溶液試料2は、同じ場所から採取したが、濃度は約5~10 mmol/Lと約2倍の差が得られた。他の元素としてSiをはじめとしてほとんどの元素が、溶液試料1の濃度が溶液試料2よりも高いという結果が得られた。
固体回収条件における培養の結果を図28および表5に示した。固体回収条件において、排水から78.8%が固体Seとして回収された。モデル系においては、固体回収条件において87.7%の回収率が得られている。今回、モデル系と比較し回収率が若干低下したものの、高い回収率が得られた。セレン酸・亜セレン酸の還元についても非常に速やかであり、モデル系と遜色がなかった。これらの結果から、本排水からの固体Se回収が可能であると言える。
気体回収条件における培養の結果を図29および表6に示した。気体回収条件において、排水から38.9%(実測値)が気体Seとして回収された。モデル系においては、気体回収条件において71.2%(実測値)の回収率が得られている。今回、モデル系と比較すると約半分の回収率であった。
セレン酸・亜セレン酸の還元についても非常に速やかであり、オキサニオンの還元においてはモデル系と遜色がなかった。回収時における固体の含有量は3.8%であり、モデル系における4.0%と同じ水準まで減少している。一方で、液体Seの含有量が非常に高く、モデル系の10.5%に比べ、排水では35.9%となっている。
実施例4では、最適化したジャーファーメンターを用いた培養系による、CIGS系(銅(Cu)とインジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)の化合物を材料とする薄膜状態の物質)の太陽光パネルの粉末試料を用いたセレン回収実験を行った。
(1-1)粉末試料の分析方法
マイクロウェーブ試料分解装置により、分解溶液を用いて試料溶液化を行った。分解溶液は濃硝酸4 ml、濃フッ化水素酸4 mlを用いた。また、レアアースの溶解を行うために、分解操作後、ホウ酸1 gを添加し、再度分解操作を行った。測定は、各試料の液性を整えたのち、原液測定試料、1/1000、 1/100000希釈測定溶液を調製し、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)(X-Series 2、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))により測定を行った。測定回数はn=3で行った。
粉末試料を1 g、電子天秤により秤量し、50 mlコーニングチューブに分取した。これに濃硝酸を5 ml分注し、試料を溶解した。更に10 mlピペッターにより95 mlの超純水を加え、全量100 mlとした。これを5分間、遠心分離(15,000rpm)にかけ、得られた上澄み溶液をディスクフィルター(0.2μm孔)によりフィルトレーションした。ここで得られた溶液を溶液試料1とし、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)(iCAP 6300 Duo、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))で測定をした。ICP-AESでの測定は、各試料を1/10、 1/100、 1/1000希釈測定溶液を調製し、液性を整えたのち、 ICP-AESにより測定を行った。測定回数はn=3で行った。
粉末試料を1 g、電子天秤により秤量し、50 mlコーニングチューブに分取した。これに濃塩酸を4 ml、濃硝酸を1 ml分注し、超音波で30分間試料を溶解した。更に10 mlピペッターにより95 mlの超純水を加え、全量100 mlとした。これを5分間、遠心分離(15,000rpm)にかけ、得られた上澄み溶液をディスクフィルター(0.2 μm孔)によりフィルトレーションした。ここで得られた溶液を溶液試料2とし、遠心分離にて得られた沈澱物を酸溶解残渣として、ICP-AESで測定をした。溶液試料2に5N 水酸化ナトリウム溶液を10 ml加え、遠心分離を行い、上清と沈澱に分けた。ここで得られた上清を中和溶液試料、沈澱を中和沈殿物として、ICP-AESで測定をした。ICP-AESでの測定は、各試料を1/10、 1/100希釈測定溶液を調製し、液性を整えたのち、 ICP-AESにより測定を行った。測定回数はn=3で行った。
5 L容ジャーファーメンターにTSB培地3000 mlを入れ、オートクレーブ処理を行った。38℃、250rpm、1 L/minの条件で1時間通気を行った。12時間前培養を行ったNT-I前培養液を遠心分離により集菌し、再懸濁後OD660=1.0に調整後、30 ml(1%)接種した。38℃、pH9.0、250rpm、1 L/minの培養条件で培養を行った。培養開始12時間後に、溶液試料130 mlもしくは中和溶液試料40 mlを本培養液に添加し培養を行った。
5 L容ジャーファーメンターにTSB培地3000 mlを入れ、オートクレーブ処理を行った。38℃、250rpm、1 L/minの条件で1時間通気を行った。溶液試料1(30 ml)もしくは溶液試料2(35 ml)または中和溶液試料40 mlを滅菌せずに本培地に添加した。12時間前培養を行ったNT-I前培養液を遠心分離により集菌し、再懸濁後OD660=1.0に調整後、30 ml(1%)接種した。38℃、pH9.0、250rpm、1 L/minの培養条件で培養を行った。
測定試料の調製および、各相の測定方法は上記に従った。また硝酸イオン、亜硝酸イオンの定量はイオンクロマトグラフィー(ICS-1100、日本ダイオネクス(株))を用い、測定方法は上記に従った。
気体回収条件において容器壁面についた付着物を回収し、元素分析を行った。分取したサンプルは沈澱試料の測定と同様の方法で溶解し、ICP-AESによる分析を行った。
(2-1)粉末試料および溶液試料の分析結果
粉末試料のSe組成、溶液試料のSe組成を、表8に示した。溶液試料について、イオンクロマトグラフィーによる定量を行ったところ、セレン酸は検出されず、亜セレン酸が45.5 mmol/Lであった。この値は、ICP-AESで定量した値44.9 mmol/Lとほぼ一致した(表8)
溶液試料1からの固体回収条件における培養の結果を図30および表10に示した。固体回収条件において、溶液試料1から27.5%が固体Seとして回収された。モデル系においては、固体回収条件において87.7%の回収率が得られていることから、回収率が低下していることがわかる。特に亜セレン酸の還元が明らかに阻害されている。この原因として粉末試料の溶解に使用した硝酸の影響や、共存するCIGS系の他の金属元素による影響が考えられた。硝酸・亜硝酸の挙動を図31に示す。硝酸が還元され精製した亜硝酸が還元され、それと並行するように亜セレン酸の還元が徐々に進んでいることがわかる。このことから硝酸の存在が、亜セレン酸の還元に何らかの影響を及ぼしていると考えられる。
硝酸の影響を抑えるために、硝酸の濃度を減らして粉末試料を溶解した。また、他の金属元素の影響を除くために、中和を行った中和溶液試料を用いて培養を行った。中和試料からの固体回収条件における培養の結果を図32および表11に示した。固体回収条件において、中和溶液試料から60.0%が固体Seとして回収された。中和溶液試料においては、亜セレン酸の還元は非常に速やかであり、溶液試料1に比べ回収率が約2.2倍に向上した。
溶液試料1からの気体回収条件における培養の結果を図33および表12に示した。気体回収条件において、溶液試料1から11.9%(実測値)が気体Seとして回収された。モデル系においては、気体回収条件において71.2%(実測値)の回収率が得られていることから、回収率が非常に低下している。
しかし、ここでは、固体回収条件において見られた、亜セレン酸の還元への阻害は観察されなかった。図34に示した硝酸・亜硝酸の挙動においては、硝酸は速やかに還元されるものの、亜硝酸は還元されないことがわかった。
溶液試料2からの気体回収条件における培養の結果を図35および表13に示した。気体回収条件において、溶液試料2から14.4%(実測値)が気体Seとして回収された。モデル系においては、気体回収条件において71.2%(実測値)の回収率が得られていることから、溶液試料1に比べ若干改善したものの回収率は依然として低い。
この結果から、Se気体回収においては、硝酸濃度よりも、共存するCuやInといった金属元素の存在が悪影響していることが示唆された。
中和溶液試料からの気体回収条件における培養の結果を図36および表14に示した。気体回収条件において、中和溶液試料から44.3%(実測値)が気体Seとして回収された。中和溶液試料を用いた回収においては、溶液試料1に比べ回収率が約3.7倍に向上した。
この原因としては、中和によりCuやInが除去されたことで、溶液試料1からの気体セレン回収実験において観察されたような凝集が解消され、気体セレンが生成し易くなっためであると考えられる。元素態セレンの測定においても、CuやInが原因と思われる凝集による不均一が原因と考えられる元素態セレンの測定値のばらつきは観察されなかった。
モデル系の気体Se回収率(71.1%)に比べ、回収率が低いものの、より厳密に阻害金属元素を除去することで、回収率はさらに向上するものと考えられる。
実施例5では、ジャーファーメンターを用いた培養系による、Seを含む太陽光パネル廃棄物を用いたSe回収実験を行った。
(1-1)粉末試料の作製と分析方法
Seを含む廃棄物粉末試料0.25 gを分取し、分解溶液として濃硝酸10 mlを用いた。マイクロウェーブ試料分解装置により、分解溶液を用いて試料溶液化を行った。測定は、各試料の液性を整えたのち、原液測定試料、1/1000、 1/100000希釈測定溶液を調製し、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)(iCAP 6300 Duo、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))により測定を行った。測定回数はn=3で行った。
粉末試料を2 g、電子天秤により秤量し50 mlコーニングチューブに分取した。これに濃硝酸1 mlずつ1000 ul可変式マイクロピペッターを用いて10 ml分注し、試料を溶解した。更に10 mlピペッターにより20 mlの超純水を加え、全量30 mlとした。これを5分間、遠心分離(15,000rpm)にかけ、得られた上澄み溶液をディスクフィルター(0.2 μm孔)によりフィルトレーションした。ここで得られた溶液を酸溶解試料とし、遠心分離にて得られた沈澱物を酸溶解残渣として、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)(iCAP 6300 Duo、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))で測定をした。得られた酸溶解試料に5N水酸化ナトリウム溶液を30 ml加えた。生成された沈殿物除去のため、5分間遠心分離(15,000rpm)にかけ、上澄み溶液と沈殿物を分離した。ここで得られた沈殿物を中和沈殿物とした。 ここで得られた上澄み溶液はディスクフィルター(0.2 μm孔)を用いてフィルトレーションを行った。
5 L容ジャーファーメンターにTSB培地3000 mlを入れ、オートクレーブ処理を行った。
38℃、250rpm、1 L/minの条件で1時間通気を行った。12時間前培養を行ったNT-I前培養液を遠心分離により集菌し、再懸濁後OD660=1.0に調整後、30 ml(1%)接種した。38℃、pH9.0、250rpm、1 L/minの培養条件で培養を行った。培養開始12時間後に、溶液試料50 mlを本培養液に添加し培養を行った。
5 L容ジャーファーメンターにTSB培地3000 mlを入れ、オートクレーブ処理を行った。38℃、250rpm、1 L/minの条件で1時間通気を行った。溶液試料50 mlを滅菌せずに本培地に添加した。12時間前培養を行ったNT-I前培養液を遠心分離により集菌し、再懸濁後OD660=1.0に調整後、30 ml(1%)接種した。38℃、pH9.0、250rpm、1 L/minの培養条件で培養を行った。
測定試料の調製および、各相の測定方法は上記に従った。
(2-1)粉末試料の分析結果および溶液試料の調製と調整過程における各元素濃度の変化
粉末試料の測定を行った結果、セレンを含む廃棄物の主成分であるSeが検出された。Se濃度は、908 mmol/kgであった。
溶液試料のSe濃度は30.6 mmol/Lであり、イオンクロマトグラフィーによる定量を行ったところ、セレン酸は検出されず、亜セレン酸が28.6 mmol/Lであることがわかった。
固体回収条件における培養の結果を図37および表15に示した。固体回収条件において、廃棄物の溶解溶液から83.6%が固体Seとして回収された。モデル系においては、固体回収条件において87.7%の回収率が得られていることから、モデル系と同程度の高い回収率が得られた。セレン酸・亜セレン酸の還元についても非常に速やかであり、本Seを含む廃棄物からの固体Se回収が可能であると言える。
気体回収条件における培養の結果を図38および表16に示した。21.1%(実測値)が気体セレンとして回収された。モデル系においては、気体回収条件において71.2%(実測値)の回収率が得られており、モデル系と比較すると約3分の1の回収率であった。
セレン酸・亜セレン酸の還元については非常に速やかであり、オキサニオンの還元においてはモデル系と遜色がなかった。固体Seの減少も速やかであり、気体回収時(48h)における固体Seは12.7%であるものの、144時間目には4.0%まで減少しており、モデル系における4.0%と同じ水準であると言える。一方で、液体Seの含有量が非常に高く、気体回収時(48h)における液体Seは49.5%で、144時間目でも53.9%となり、モデル系の10.5%に比べ非常に高くなっている。
上記の実施例において生成した元素態セレンの写真を図40に示す。
CIGS太陽電池粉末からのレアメタル回収試算を図41に示す。
Claims (28)
- 水溶性セレン化合物を含む試料を、水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物と、温度が35℃を超えて40℃以下及びpH7.0~9.4の条件下で接触させることにより水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成させることを含む、セレンの回収方法。
- 水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物が、好気性微生物である、請求項1に記載のセレンの回収方法。
- 水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物が、Pseudomonas属細菌である、請求項1又は2に記載のセレンの回収方法。
- 水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物が、Pseudomonas stutzeriである、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
- 水溶性セレン化合物を含む試料を、水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物としてのPseudomonas stutzeri NT-I株(受託番号NITE BP-685)と温度35~40℃及びpH7.0~9.4の条件下で接触させることにより水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成させることを含む、セレンの回収方法。
- 水溶性セレン化合物がセレン酸又は亜セレン酸である、請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
- 水溶性セレン化合物を含む試料を、水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物と通気条件下において接触させる、請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
- 通気条件が1L/分~5L/分である、請求項7に記載の方法。
- 水溶性セレン化合物を含む試料を、水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物と、通気条件下において接触させた後に、通気を停止した条件下で接触させる、請求項7又は8に記載の方法。
- 水溶性セレン化合物を含む試料を水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物と攪拌条件下において接触させる、請求項1から9の何れか1項に記載の方法。
- 攪拌条件が、250rpm以下の攪拌速度である、請求項10に記載の方法。
- 水溶性セレン化合物を含む試料中におけるセレン濃度が100~6000μmol/Lである、請求項1から11の何れか1項に記載の方法。
- 水溶性セレン化合物を含む試料が、セレン含有材料を前処理することにより得られる試料である、請求項1から12の何れか1項に記載の方法。
- 水溶性セレン化合物を含む試料が、セレン含有材料を無機酸に溶解することにより得られる試料である、請求項13に記載の方法。
- 水溶性セレン化合物を含む試料が、セレン含有材料を無機酸に溶解し、次いでアルカリ水溶液で中和することにより得られる試料である、請求項13又は14に記載の方法。
- セレン含有材料が、銅(Cu)、インジウム(In)、及びセレン(Se)を含む材料である、請求項13から15の何れか1項に記載の方法。
- セレン含有材料が、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及びセレン(Se)を含む材料である、請求項13から16の何れか1項に記載の方法。
- セレン含有材料が、パネル材料である、請求項13から17の何れか1項に記載の方法。
- セレン含有材料が、太陽電池パネルである、請求項13から18の何れか1項に記載の方法。
- 銅(Cu)、インジウム(In)、及びセレン(Se)を含む材料を前処理することにより得られる水溶性セレン化合物を含む試料を、水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物と接触させることにより水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成させることを含む、セレンの回収方法。
- 水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物が、好気性微生物である、請求項20に記載のセレンの回収方法。
- 水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物が、Pseudomonas属細菌である、請求項20又は21に記載のセレンの回収方法。
- 水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物が、Pseudomonas stutzeriである、請求項20から22の何れか1項に記載の方法。
- 水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物が、Pseudomonas stutzeri NT-I株(受託番号NITE BP-685)である、請求項20から23の何れか1項に記載の方法。
- 銅(Cu)、インジウム(In)、及びセレン(Se)を含む材料が、更にガリウム(Ga)を含む材料である、請求項20から24の何れか1項に記載の方法。
- 水溶性セレン化合物を含む試料が、銅(Cu)、インジウム(In)、及びセレン(Se)を含む材料を無機酸に溶解することにより得られる試料である、請求項20から25の何れか1項に記載の方法。
- 水溶性セレン化合物を含む試料が、銅(Cu)、インジウム(In)、及びセレン(Se)を含む材料を無機酸に溶解し、次いでアルカリ水溶液で中和することにより得られる試料である、請求項20から26の何れか1項に記載の方法。
- 銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)及びガリウム(Ga)を含む材料を無機酸に溶解し、次いでアルカリ水溶液で中和することにより、沈殿物として銅(Cu)及びインジウム(In)を回収し、上清としてセレン(Se)及びガリウム(Ga)を回収し、次いでセレン(Se)及びガリウム(Ga)を含む上記上清を、水溶性セレン化合物を還元して元素態セレン又は気体セレンを生成できる能力を有する微生物と接触させることにより水溶性セレン化合物を還元して元素態セレンを沈殿物として回収し、ガリウム(Ga)を上清として回収することを含む、銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)及びガリウム(Ga)の回収方法。
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