WO2011121655A1 - 車両用燃料タンク - Google Patents

Abstract

　給油案内筒の下方開口部をフレイムアレスタで覆った車両用燃料タンクにおいて、下端部（４６ａ）が前記タンク本体（３１）内の下部に開口すると共に上端部が給油口装置（４０）内に開口して前記上端部からタンク本体（３１）内の燃料を抜き取り可能とする抜油パイプ（４６）を備える。

Description

車両用燃料タンク

　本発明は、自動二輪車等の車両に用いられる車両用燃料タンクに関する。

　従来、エンジン用燃料としてエタノール燃料を用いる自動二輪車の燃料タンクにおいて、タンク本体の上壁に設けられた給油口と、この給油口からタンク本体内に延びる給油案内筒と、この給油案内筒の下方開口部を覆って燃料の流通を許容するフレイムアレスタと、を備えたものがある（例えば、特許文献１参照）。

日本国特開２００９－１０１８５４号公報

　しかし、上記従来の技術では、フレイムアレスタが給油案内筒の下方開口部を覆っているため、給油口からホース等を挿入して燃料タンク内の燃料を抜き取ることができなかった。他方、給油口の他に燃料タンクの外壁に別途開口を設けると、その開口の蓋は密閉構造にする必要があるため構造が複雑となり、燃料タンクの大型化を招く虞がある。

　そこで、本発明は、給油案内筒の下方開口部をフレイムアレスタで覆った車両用燃料タンクにおいて、給油口からの燃料の抜き取りを可能にすることを目的とする。

　上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用した。
　（１）本発明は、タンク本体の上壁に設けられる給油口と、この給油口から前記タンク本体内に延びる給油案内筒と、この給油案内筒の下方開口部を覆って前記タンク本体内への燃料の流通を許容すると共に、前記タンク本体内の空気を排出可能なフレイムアレスタと、を具備する給油口装置を備えた車両用燃料タンクであって、一端が前記タンク本体内の下部に開口すると共に他端が前記給油口装置内に開口して前記他端から前記タンク本体内の燃料を抜き取り可能とする抜油パイプを備えている。

　（２）上記（１）に記載の車両用燃料タンクでは、前記給油案内筒の下方に、給油ガンに当接してこの給油ガンの前記タンク本体内への挿入量を規制するガンストッパが設けられ、前記抜油パイプの他端が、前記ガンストッパに設けられる構成としてもよい。

　（３）上記（１）に記載の車両用燃料タンクでは、前記抜油パイプの他端が、前記給油案内筒に設けられる構成としてもよい。

　（４）上記（３）に記載の車両用燃料タンクでは、前記給油案内筒にこの給油案内筒の径方向外側に向けて凹む凹部が設けられ、この凹部内に前記抜油パイプの他端が設けられる構成としてもよい。

　（５）上記（３）又は（４）に記載の車両用燃料タンクでは、前記給油案内筒の下方に、給油ガンに当接してこの給油ガンの前記タンク本体内への挿入量を規制するガンストッパが設けられる構成としてもよい。

　（６）上記（１）から（５）の何れか１項に記載の車両用燃料タンクでは、前記給油口の軸方向視で、前記抜油パイプの他端が前記給油口の開口領域を避けた位置に設けられる構成としてもよい。

　（７）上記（１）から（６）の何れか１項に記載の車両用燃料タンクでは、前記フレイムアレスタが、前記給油案内筒の下方に設けられたガンストッパを全周に亘って囲繞するように円筒状に形成された周壁部を備え、このフレイムアレスタの周壁部の上部が、前記給油案内筒の下部に固着され、前記周壁部の軸方向視において、前記ガンストッパが、前記周壁部をこの周壁部の径方向で横切るように配置されると共に、このガンストッパの両端部が、前記周壁部に固着され、前記抜油パイプの他端が、前記周壁部の周方向で前記ガンストッパと重なる位置に設けられる構成としてもよい。

　（８）上記（１）から（６）の何れか１項に記載の車両用燃料タンクでは、前記フレイムアレスタが、前記周壁部の下部開口を覆うキャップ部材を備え、前記給油口装置内から前記タンク本体内へ燃料を流通可能とする連通孔が、前記周壁部及びキャップ部材に設けられる構成としてもよい。

　（９）上記（１）に記載の車両用燃料タンクでは、前記フレイムアレスタが、前記給油案内筒の下方に設けられるガンストッパを全周に亘って囲繞するように円筒状に形成された周壁部と、この周壁部の下部開口を覆うキャップ部材とを備え、このキャップ部材に前記抜油パイプの他端が設けられる構成としてもよい。

　（１０）上記（１）から（９）の何れか１項に記載の車両用燃料タンクでは、前記抜油パイプの一端が、当該燃料タンクを備える自動二輪車の車体中心線を基準にしてサイドスタンドと同じ側に設けられる構成としてもよい。

　（１１）上記（７）に記載の車両用燃料タンクでは、前記フレイムアレスタの周壁部の外周に、前記抜油パイプを支持する支持ステーが固着され、前記給油案内筒が前記タンク本体に固着される構成としてもよい。

　上記（１）に記載した発明によれば、給油口からホース等を挿入して給油口装置内に開口する抜油パイプの他端からタンク本体内の燃料を抜き取ることができるため、燃料タンクの外壁に開口や抜油のための機構を別途設ける必要がなく、燃料タンクの大型化を防ぐことができる。

　上記（２）の場合、比較的強固なガンストッパに抜油パイプの他端が開口することで、燃料を抜き取るためのホース等の燃料吸引装置を抜油パイプの他端に着脱するときに抜油パイプにかかる負荷をガンストッパで支持することができる。

　上記（３）の場合、給油口近くの給油案内筒に抜油パイプの他端が開口することで、燃料を抜き取るためのホース等の抜油パイプへの着脱を容易にできる。

　上記（４）の場合、給油案内筒に設けた凹部内に抜油パイプの他端を設けることで、給油案内筒に挿入される給油ガンの挿入スペースへの抜油パイプの突出量を減らすことができる。すなわち、給油案内筒内の給油ガンの挿入スペースを確保しつつ、給油案内筒の小径化を図ることができる。

　上記（５）の場合、ガンストッパよりも給油口側で抜油パイプの他端が開口することで、燃料を抜き取るためのホース等を抜油パイプの他端に着脱する作業をガンストッパに邪魔されることなく行うことができる。

　上記（６）の場合、給油口の軸方向視で抜油パイプの他端が給油口内に突出しなくなるため、給油ガンを給油口から挿入する際に給油ガンと抜油パイプとの干渉を避けることができる。

　上記（７）の場合、ガンストッパがフレイムアレスタの周壁部を径方向で横切るように配置されると共にこの周壁部に固着されることで、ガンストッパによりフレイムアレスタの円管剛性を向上させることができる。また、フレイムアレスタの上部が給油案内筒の下部に固着されることで、給油案内筒の管剛性も併せて向上させることができる。さらに、抜油パイプの他端にホース等を着脱する際の力をガンストッパで受けることができるため、抜油パイプの他端が設けられる部材の薄肉軽量化を図ることができる。

　上記（８）の場合、フレイムアレスタの周壁部及びキャップ部材に連通孔を形成することで、タンク本体内への燃料の流通とタンク本体内の空気の排出とをスムーズに行うことができる。また、抜油パイプの他端を給油案内筒に設ける場合、フレイムアレスタの周壁部及びキャップ部材に形成した連通孔による燃料のタンク本体内への流通とタンク本体内の空気の排出とをスムーズに行うことができる。

　上記（９）の場合、抜油パイプの他端をフレイムアレスタの周壁部の下部のキャップ部材に設けることで、燃料タンクの下部に向けて延出する抜油パイプの延出量を抑え、抜油パイプの小型化を図ることができる。

　上記（１０）の場合、自動二輪車のサイドスタンドと同じ側に抜油パイプの一端を設けることで、サイドスタンドの使用により車体が傾斜している状態でも抜油作業を行うことができる。

　上記（１１）の場合、前記給油案内筒、ガンストッパ、フレイムアレスタ、抜油パイプ及び支持ステーを小組した状態でタンク本体に取り付け可能となるので、給油案内筒、ガンストッパ、フレイムアレスタ、抜油パイプ及び支持ステーのタンク本体への取り付けを容易にできる。

本発明の第一～第三実施形態における自動二輪車の左側面図である。 本発明の第一実施形態における燃料タンクの左側面図である。 上記燃料タンクの給油口軸線に沿う上面図である。 図２のＳ４－Ｓ４断面図である。 図４ＡのＳ４Ｂ－Ｓ４Ｂ断面図である。 上記燃料タンクの給油口装置の給油口軸線に沿う上面図である。 図５のＳ６－Ｓ６断面図である。 図６Ａの６Ｂ部拡大図である。 図５のＳ７－Ｓ７断面図である。 本発明の第二実施形態における燃料タンクの図４Ａに相当する断面図である。 本発明の第二実施形態における燃料タンクの要部の斜視図である。 図９Ａに示す給油口装置の図５に相当する上面図である。 本発明の第三実施形態における燃料タンクの図２に相当する左側面図である。 図１０Ａに示す給油口装置の図５に相当する上面図である。 本発明の第四実施形態における自動二輪車の左側面図である。 本発明の第四実施形態における燃料タンクの左右中心での断面図である。 図１２のＳ１３－Ｓ１３断面図である。 本発明の第四実施形態における給油口装置の給油口軸線に沿う上面図である。

　以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印ＦＲ、車両左方を示す矢印ＬＨ、車両上方を示す矢印ＵＰが示されている。

＜第一実施形態＞
　図１に本発明の第一実施形態に係る構造が適用された鞍乗り型車両としての自動二輪車１が示されている。先ず、自動二輪車１には車両の前部に前輪２が回転自在に設けられ、前輪２の上部にはフロントフェンダ３が設けられる。フロントフェンダ３の上方には前輪２を操向させるバーハンドル４が設けられ、バーハンドル４は車体フレーム５の前端に形成されたヘッドパイプ６に回転可能に支持されたステアリングステム７の上部に設けられる。

　ステアリングステム７の下部には左右に延在する板状のロアブリッジ８が設けられ、ロアブリッジ８の左右端部には前輪２を下部で回転自在に支持する左右一対のフロントフォーク９の上端が固定される。つまり、フロントフォーク９はヘッドパイプ６の下方に配置されている。

　車体フレーム５は、ヘッドパイプ６から後斜め下方に延出する一本の矩形断面の鋼製パイプ材からなるメインフレーム１０と、メインフレーム１０の後部から左右に分岐して略水平に後方に延出した後、後斜め上方に延出し、その後に再度略水平に後方に延出するシートレール１１と、メインフレーム１０の後端部から下方に延出するピボットプレート１０ａとを備える。

　ピボットプレート１０ａの前方であってメインフレーム１０の後部下方には、空冷単気筒のエンジン１２が支持される。シートレール１１の上方には乗員着座用のシート１３が配置され、シート１３の下方にはシートレール１１の周囲を覆うリヤカバー２５が設けられる。シート１３は前後に長く、このシート１３の前部上面が運転者用の着座面とされ、後部上面が後部同乗者用の着座面とされる。

　エンジン１２は、不図示のクランク軸を左右方向に沿わせた状態で配置される。エンジン１２のクランクケース１２ａの前端部からはシリンダ１２ｂが略水平状態で前方に向けて突出する。クランクケース１２ａの後部はピボットプレート１０ａに支持され、クランクケース１２ａの上部はメインフレーム１０から延出するエンジンハンガ１０ｂに支持される。

　自動二輪車１においては、シート１３の前方でメインフレーム１０の上方、より正確には、シート１３とヘッドパイプ６との間であって、メインフレーム１０の上方かつメインフレームカバー２３の上方に、運転者がシート１３に着座する際に跨ぐ跨ぎ空間Ｓが形成される。クランクケース１２ａの下部には、シート１３に着座した運転者の足を載せるステップ２８が支持される。ピボットプレート１０ａの下端部には、車体を直立状態で支持するメインスタンド（センタースタンド）２９ａが格納可能に支持される。ステップ２８の基端近傍で自動二輪車１の車体中心線ＣＬ（図３、図４Ａ等参照）よりも左側のクランクケース１２ａの下面には、自動二輪車１の車体を左側に傾けた起立状態で支持するサイドスタンド２９ｂが同じく格納可能に支持される。

　ピボットプレート１０ａには、ピボットシャフト１４を介してスイングアーム１５の前端部が上下方向に揺動可能に支持される。スイングアーム１５の後端部には後輪１６が回転自在に支持される。スイングアーム１５の後部とシートレール１１の後部との間にはリヤクッション１７が介装される。

　エンジン１２のシリンダ１２ｂの上部にはスロットルボディ１８の下流側が接続され、このスロットルボディ１８の上流側にはエアクリーナボックス１８ａが接続される。エンジン１２のシリンダ１２ｂの下部からは排気管１９が導出され、この排気管１９が後方に湾曲して延びて、後輪１６の右側方において後上がりに配置されたサイレンサ１９ａに接続される。

　自動二輪車１の車両外観を構成する車体カバー２０は、複数の樹脂製カバー体から構成される。詳しくは、車体カバー２０には、バーハンドル４の左右端部を外部に突出させてこのバーハンドル４の中央側を覆うハンドルカバー２１と、ハンドルカバー２１よりも下方でかつフロントフェンダ３よりも上方に配置されるフロントカバー２２と、フロントカバー２２の後端に接続され主にメインフレーム１０を囲うメインフレームカバー２３と、フロントカバー２２及びメインフレームカバー２３の下端に接続され主にエンジン１２のシリンダ１２ｂの側方を覆う下部カバー２４と、メインフレームカバー２３及び下部カバー２４の後端に接続されて主にシート１３の下方を覆うリヤカバー２５とが含まれている。

　シートレール１１後部の後方延出部には、燃料タンク２６の前後端部がそれぞれ支持される。なお、前記後方延出部の前端部には、シート１３の前部下方に配置された物品収納ボックス２７の後端部が燃料タンク２６の前端部と共に支持される。物品収納ボックス２７の前端部には、シート１３の前端部が左右方向に沿う回動軸２７ａを介して支持され、この回動軸２７ａを中心にシート１３が上下方向に回動することで、物品収納ボックス２７及び燃料タンク２６へのアクセスが可能となる。

　図２，３，４Ａを参照し、燃料タンク２６は、略水平な分割面Ｂ１上にて上下分割体３２，３３を一体に接合した略直方体形状の中空のタンク本体３１を有する。上分割体３２は下方に開放する容器形状を有し、下分割体３３は上方に開放する容器形状を有する。上下分割体３２，３３はそれぞれ鋼板プレス成形品とされ、上分割体３２の下方開放端と下分割体３３の上方開放端とが、分割面Ｂ１に沿う接合フランジＦ１を介して一体に溶接結合される。

　タンク本体３１（上分割体３２）における略水平な上壁部３２ａの後部には、給油キャップ３５を着脱可能な上面視円形の給油口３４が形成される。上壁部３２ａの前部左側には、段差状に下方に変位すると共にやや前下がりに傾斜する左前平坦部３２ｂが形成される。この左前平坦部３２ｂに形成された開口３２ｃ及びこの開口３２ｃの周囲に上方から固定されたブラケット３２ｄにより、燃料ポンプ３６がタンク本体３１にこのタンク本体３１の内部に臨んだ状態で取り付けられる。なお、タンク本体３１の下壁部３３ａの左右中央部には、この下壁部３３ａの下方に位置する後輪１６の上方への揺動範囲を確保する凹部３３ｂが形成される。

　ここで、自動二輪車１は、エンジン用燃料としてエタノール燃料を用いることもできる車両であり、前記エタノール燃料が燃料タンク２６に貯留される。この燃料タンク２６の給油口３４には、フレイムアレスタ４２を含む給油口装置４０が設けられる。

　図５，６Ａ，７を参照し、給油口装置４０は、前記給油口３４と、この給油口３４の下方に連なってタンク本体３１内に延びる給油案内筒４１と、この給油案内筒４１の下方開口部を覆うように設けられるフレイムアレスタ４２と、このフレイムアレスタ４２内に設けられて給油ガンＧの挿入量を規制するガンストッパ４３とを有する。

　給油口３４は、この給油口３４の周縁部に上方に凸の断面山形をなして周方向に沿って延びる環状の額部３４ａを有する。額部３４ａにおける内周側かつ下方に折り返してなる円筒状の内周壁部３４ｂは、概ね上下方向に沿う給油口軸線Ｃ１に沿って下方（タンク本体３１内）に向けて延びる。この内周壁部３４ｂの内径が給油口３４の開口の内径となる。以下、給油口３４の軸方向視における前記内径の開口領域を符号Ａ１で示す。

　給油案内筒４１は、給油口３４と同軸かつ比較的上下に浅い円筒状をなす周壁部４１ａと、この周壁部４１ａの上端外周に形成されるフランジ部４１ｂとを有する。フランジ部４１ｂは、給油口３４の外周側にて上壁部３２ａの平坦部分に下方（タンク本体３１内）から当接し、これらが溶接等により一体に結合される。給油案内筒４１の周壁部４１ａの外周には、これと同軸かつ比較的上下に長い円筒状をなすフレイムアレスタ４２の周壁部４２ａの上端部が嵌合し、これらが溶接等により一体に結合される。

　フレイムアレスタ４２は、タンク本体３１内への燃料の流通を許容すると共に、タンク本体３１内の空気を外部に排出可能とするもので、前記周壁部４２ａと、この周壁部４２ａの下端開口を閉塞するキャップ部材４４とを有する。

　周壁部４２ａは、例えば鋼板に多数の小孔（連通孔４２ｆ）を形成してなる多孔状のメッシュ部４２ｂを有する。周壁部４２ｂの上部４２ｃの内周には給油案内筒４１の周壁部４１ａが嵌合し、これらが溶接等により一体に結合される。周壁部４２ｂの下部４２ｄの内周にはこれと同軸のキャップ部材４４の周壁部４４ａが嵌合し、これらが溶接等により一体に結合される。

　キャップ部材４４は下方に開放する比較的上下に浅い有底円筒状に形成される。キャップ部材４４の底壁部４４ｂ及び周壁部４４ａは、フレイムアレスタ４２のメッシュ部４２ｂと同様に多数の小孔（連通孔４２ｆ）が形成されたメッシュ状に形成されて（図５、図６Ｂ参照）、燃料の流通を許容する。キャップ部材４４の周壁部４４ａは、フレイムアレスタ４２の下部４２ｄに溶接等により一体に結合される。

　ガンストッパ４３は、給油案内筒４１の下方に設けられて給油ガンＧのタンク本体３１内への挿入量を規制すると共に、給油ガンＧのフレイムアレスタ４２への接触を防ぐ。ガンストッパ４３は、フレイムアレスタ４２の上部４２ｃ内周に沿って湾曲する一対の接合板部４３ａと、これら各接合板部４３ａの下方に連なる一対の支持腕部４３ｂと、これら各支持腕部４３ｂの下端間に渡る架設部４３ｃとを一体に有する。

　両接合板部４３ａは略長方形状の板状をなし、孔の無い平坦状とされる。両接合板部４３ａは、これら両接合板部４３ａの長手方向を上部４２ｃの周方向に沿わせ、かつ上縁を給油案内筒４１の下縁に下方から突き当てるように配置される。この状態で、両接合板部４３ａがフレイムアレスタ４２の上部４２ｃ内周に溶接等により一体に結合される。
　図５に示すように、両接合板部４３ａの一方は給油口３４の斜め前左側に位置し、他方は給油口３４の斜め後右側に位置する。これら両接合板部４３ａは、フレイムアレスタ４２の径方向で互いに対向するように配置される。

　図４Ａ，７に示すように、両支持腕部４３ｂは、対応する接合板部４３ａの下縁から下方に向けて延びる帯状をなし、これら両支持腕部４３ｂの下側ほど幅を狭めるように先細りに形成される。
　図６Ａに示すように、両支持腕部４３ｂは、対応する接合板部４３ａの下縁中間部から段差状に内側に変位し、フレイムアレスタ４２から離間した状態でフレイムアレスタ４２の上下中間位置まで下方に向けて延びる。

　図５，７に示すように、架設部４３ｃは、フレイムアレスタ４２内をこのフレイムアレスタ４２の直径に沿うように横断する棒状をなし、上方に凸の断面山形をなして直線状に延びる。この架設部４３ｃに給油ガンＧの先端部が当接することで、給油ガンＧのタンク本体３１内への挿入量が規制される。

　ガンストッパ４３の外周は、フレイムアレスタ４２の周壁部４２ａに全周に亘って囲繞される。フレイムアレスタ４２のメッシュ部４２ｂへの給油ガンＧの接触は、給油ガンＧがガンストッパ４３の架設部４３ｃ及び両支持腕部４３ｂに干渉することで防止される。

　そして、給油口装置４０には、抜油パイプ４６を含む抜油装置４５が一体的に設けられる。
　図２，３，４Ａ，５，６Ａ，７を参照し、抜油パイプ４６は例えば小径の鋼管からなり、この抜油パイプ４６の下端部４６ａがタンク本体３１内の下端近傍に至って下方に向けて開口し、上端部４６ｂが給油口装置４０内に至って、給油口装置４０の径方向内側に向けて開口する。この抜油パイプ４６の上端部４６ｂに不図示の燃料吸引装置のホース等を接続することで、タンク本体３１内の燃料を抜き取り可能となる。

　抜油パイプ４６の上端部４６ｂは、給油口軸線Ｃ１に沿う矢視（給油口３４の軸方向視、燃料タンク２６の上面視）にて、給油口３４の斜め前左側に位置するガンストッパ４３の一方の接合板部４３ａと周方向位置を同一にするように（詳細には、架設部４３ｃの一端部と周方向位置を同一にするように）配置される。抜油パイプ４６の上端部４６ｂは、給油口３４左前の接合板部４３ａ及びフレイムアレスタ４２の周壁部４２ａの上部４２ｃをこれらの外周側から内周側へ径方向に沿って貫通することで、給油口装置４０内に開口する。抜油パイプ４６の上端部４６ｂは、給油口３４内に突出しないように（換言すれば、給油口３４の軸方向視でこの給油口３４の開口領域Ａ１と重ならないように）配置される。

　図６Ａに示すように、抜油パイプ４６の上端部４６ｂが貫通する接合板部４３ａには、抜油パイプ４６の貫通孔４３ｄ及びこの貫通孔４３ｄの周縁から給油口３４外周側に向けて起立する短フランジ４３ｅが形成される。この貫通孔４３ｄ及び短フランジ４３ｅに抜油パイプ４６の上端部４６ｂが挿通保持されると共に、これらが溶接等により一体に結合される。なお、抜油パイプ４６が貫通する接合板部４３ａの上端には、貫通孔４３ｄ等の形成範囲を確保するべく凸部４３ｆが形成され、これに対応する凹部４１ｃが給油案内筒４１の下端に形成される。

　フレイムアレスタ４２の上部４２ｃにおける抜油パイプ４６の上端部４６ｂが貫通する部位には、この上端部４６ｂ及び短フランジ４３ｅを挿通する挿通孔４２ｅが形成される。すなわち、抜油パイプ４６の上端部４６ｂを直接支持する部材はガンストッパ４３の接合板部４３ａのみである。なお、ガンストッパ４３、フレイムアレスタ４２及び給油案内筒４１の少なくとも一つが抜油パイプ４６の上端部４６ｂを支持する構成であればよい。

　図４Ａに示すように、抜油パイプ４６の下端部４６ａは、タンク本体３１の下壁部３３ａ左側の近傍で開口する。抜油パイプ４６の中間部は、タンク本体３１内でフレイムアレスタ４２の下部４２ｄ外周から延びる支持ステー４７の先端部に支持される。

　以上の構成により、自動二輪車１の完成検査終了後等に燃料タンク２６内の燃料を抜き取る際には、抜油パイプ４６の上端部４６ｂに給油口装置４０内から燃料吸引装置のホース等を接続することで、前記燃料の抜き取り作業が可能となる。

　このとき、抜油パイプ４６の上端部４６ｂが比較的強固なガンストッパ４３の接合板部４３ａに支持されることで、燃料吸引装置の着脱時の負荷によりフレイムアレスタ４２を撓ませたり変形させたりすることを抑制することができる。また、抜油パイプ４６の下端部４６ａがタンク本体３１左側の下端近傍（自動二輪車１の車体中心線ＣＬを基準にしてサイドスタンド２９ｂと同じ側である左側の下端近傍）にて開口することで、サイドスタンド２９ｂを用いて自動二輪車１の車体を左側に傾けた起立状態で前記燃料の抜き取り作業を行うことができる。なお、抜油パイプ４６の下端部４６ａは異物の流通を抑えるべく圧潰されている（４Ｂ参照）。

　以上説明したように、上記実施形態における車両用燃料タンク２６は、タンク本体３１の上壁部３２ａに設けられる給油口３４と、この給油口３４から前記タンク本体３１内に延びる給油案内筒４１と、この給油案内筒４１の下方開口部を覆って前記タンク本体３１内への燃料の流通を許容すると共に、前記タンク本体３１内の空気を排出可能なフレイムアレスタ４２と、を具備する給油口装置４０を備えたものであって、下端部４６ａが前記タンク本体３１内の下端部に開口すると共に上端部４６ｂが前記給油口装置４０内に開口して前記上端部４６ｂから前記タンク本体３１内の燃料を抜き取り可能とする抜油パイプ４６を備えたものである。
　この構成によれば、給油口３４からホース等を挿入して給油口装置４０内に開口する抜油パイプ４６の上端部４６ｂからタンク本体３１内の燃料を抜き取ることができるため、燃料タンク２６の外壁に開口や抜油のための機構を別途設ける必要がなく、燃料タンク２６の大型化を防ぐことができる。

　また、上記車両用燃料タンク２６は、前記給油案内筒４１の下方に、給油ガンＧに当接してこの給油ガンＧの前記タンク本体３１内への挿入量を規制するガンストッパ４３が設けられ、前記抜油パイプ４６の上端部４６ｂが、前記ガンストッパ４３に設けられている。
　この構成によれば、比較的強固なガンストッパ４３に抜油パイプ４６の上端部４６ｂが開口することで、燃料吸引装置の着脱時の負荷をガンストッパ４３で支持することができる。

　また、上記車両用燃料タンク２６は、前記給油口３４の軸方向視で、前記抜油パイプ４６の上端部４６ｂが前記給油口３４の開口領域Ａ１を避けた位置に設けられている。
　この構成によれば、給油口３４の軸方向視で抜油パイプ４６の上端部４６ｂが給油口３４内に突出しなくなり、給油ガンＧを給油口３４から挿入する際に給油ガンＧと抜油パイプ４６との干渉を避けることができる。

　また、上記車両用燃料タンク２６は、前記フレイムアレスタ４２が、前記ガンストッパ４３を全周に亘って囲繞するように円筒状に形成され、このフレイムアレスタ４２の周壁部４２ａの上部が、前記給油案内筒４１の下部（周壁部４１ａ）に固着され、前記ガンストッパ４３が、前記周壁部４２ａをこの周壁部４２ａの径方向で横切るように配置されると共に、このガンストッパ４３の両端部（接合板部４３ａ）が、前記周壁部４２ａに固着され、前記抜油パイプ４６の上端部４６ｂが、給油口軸線Ｃ１に沿う方向から見たときに、前記周壁部４２ａの周方向で前記ガンストッパ４３と重なる位置（詳細には、架設部４３ｃと同じ位置）に設けられている。
　この構成によれば、ガンストッパ４３がフレイムアレスタ４２の周壁部４２ａを径方向で横切るように配置されると共にこの周壁部４２ａに固着されることで、ガンストッパ４３によりフレイムアレスタ４２の円管剛性を向上させることができる。また、フレイムアレスタ４２の上部が給油案内筒４１の下部に固着されることで、給油案内筒４１の管剛性も併せて向上させることができる。さらに、抜油パイプ４６の上端部４６ｂにホース等を着脱する際の力をガンストッパ４３で受けることができるため、抜油パイプ４６の上端部４６ｂが設けられる部材の薄肉軽量化を図ることができる。

　また、上記車両用燃料タンク２６は、前記フレイムアレスタ４２が、前記周壁部４２ａの下部開口を覆うキャップ部材４４を備え、前記給油口装置４０内から前記タンク本体３１内へ燃料を流通可能とする連通孔４２ｆが、前記周壁部４２ａ及びキャップ部材４４に設けられている。
　この構成によれば、タンク本体３１内への燃料の流通とタンク本体３１内の空気の排出とをスムーズに行うことができる。

　また、上記車両用燃料タンク２６は、前記抜油パイプ４６の下端部４６ａが、当該燃料タンク２６を備える自動二輪車１の車体中心線ＣＬを基準にしてサイドスタンド２９ｂと同じ側に設けられている。
　この構成によれば、サイドスタンド２９ｂの使用により車体が傾斜している状態でも抜油作業を行うことができる。

＜第二実施形態＞
　次に、本発明の車両用燃料タンクの第二実施形態について、図１，２，３，４Ａ，５，６Ａ，７を援用し図８，９Ａ，９Ｂを参照して説明する。
　本実施形態の燃料タンク１２６は、前記第一実施形態の構成に対して、上端部１４６ｂをガンストッパ４３ではなく給油案内筒４１及びフレイムアレスタ４２に支持させる抜油パイプ１４６を含む抜油装置１４５を備えると共に、給油案内筒４１及びフレイムアレスタ４２における抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂを支持する部位に外周側に凹む凹部４１ｄを形成する点が特に異なっている。その他の、前記第一実施形態と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。

　前記凹部４１ｄは、給油案内筒４１の周壁部４１ａの斜め前左側にて架設部４３ｃの一端部と周方向位置を同一にするように配置される。凹部４１ｄは、給油口軸線Ｃ１に対して仰向きに傾斜する傾斜壁４１ｅを形成する。抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂは、この傾斜壁４１ｅと略直交する方向に沿って、この傾斜壁４１ｅをこの傾斜壁４１ｅの外周側から内周側へ貫通することで、給油口装置４０内に開口する。抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂは、給油口３４の軸方向視でこの給油口３４の開口領域Ａ１と重ならないように配置される。

　本実施形態の抜油パイプ１４６は、この抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂが前記凹部４１ｄ内で開口すると共に、下端部１４６ａがタンク本体３１の下壁部３３ａ左側に形成した凹部３３ｃ内で開口する。抜油パイプ１４６の中間部は、タンク本体３１内で上分割体３２の内面から延びる支持ステー１４７の先端部に支持される。

　以上の構成により、前記第一実施形態と同様、抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂに給油口装置４０内から燃料吸引装置のホース等を接続することで、前記燃料の抜き取り作業が可能となる。

　このとき、抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂが給油案内筒４１の凹部４１ｄ内で傾斜壁４１ｅから突出すると共に、給油口装置４０の給油口３４寄りである給油案内筒４１に抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂが支持されることで、燃料吸引装置のホース等の着脱がし易くされる。また、抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂが給油口３４の軸方向視でこの給油口３４の開口領域Ａ１を避ける（給油口３４内に突出しない）ことで、抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂが給油ガンＧを挿通する際の妨げになることもない。さらに、タンク本体３１の下壁部３３ａ左側に最下端部となる凹部３３ｃが形成され、この凹部３３ｃ内で抜油パイプ１４６の下端部１４６ａが開口することで、燃料抜き取りを容易にできる。

　以上説明したように、上記実施形態における車両用燃料タンク１２６も、第一実施例と同様、下端部１４６ａが前記タンク本体３１内の下端部に開口すると共に上端部１４６ｂが前記給油口装置４０内に開口して前記上端部１４６ｂから前記タンク本体３１内の燃料を抜き取り可能とする抜油パイプ１４６を備えたものであり、給油口３４からホース等を挿入して給油口装置４０内に開口する抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂからタンク本体３１内の燃料を抜き取ることができ、燃料タンク１２６の大型化を防ぐことができる。

　また、上記車両用燃料タンク１２６は、前記抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂが、前記給油案内筒４１に設けられている。
　この構成によれば、給油口３４近くの給油案内筒４１に抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂが開口することで、燃料を抜き取るためのホース等の抜油パイプ１４６への着脱を容易にできる。

　また、上記車両用燃料タンク１２６は、前記給油案内筒４１にこの給油案内筒４１の径方向外側に向けて凹む凹部４１ｄが設けられ、この凹部４１ｄ内に前記抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂが設けられている。
　この構成によれば、給油案内筒４１に挿入される給油ガンＧの挿入スペースへの抜油パイプ１４６の突出量を減らすことができる。すなわち、給油案内筒４１内の給油ガンＧの挿入スペースを確保しつつ、給油案内筒４１の小径化を図ることができる。

　また、上記車両用燃料タンク１２６は、前記給油案内筒４１の下方に、給油ガンＧに当接してこの給油ガンＧの前記タンク本体３１内への挿入量を規制するガンストッパ４３が設けられている。
　この構成によれば、ガンストッパ４３よりも給油口３４側で抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂが開口することで、燃料を抜き取るためのホース等を抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂに着脱する作業をガンストッパ４３に邪魔されることなく行うことができる。

　また、上記車両用燃料タンク１２６は、前記給油口３４の軸方向視で、前記抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂが前記給油口３４の開口領域Ａ１を避けた位置に設けられている。
　この構成によれば、給油口３４の軸方向視で抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂが給油口３４内に突出しなくなるため、給油ガンＧを給油口３４から挿入する際に給油ガンＧと抜油パイプ１４６との干渉を避けることができる。

　また、上記車両用燃料タンク１２６は、前記フレイムアレスタ４２が、前記ガンストッパ４３を全周に亘って囲繞するように円筒状に形成され、このフレイムアレスタ４２の周壁部４２ａの上部が、前記給油案内筒４１の下部（周壁部４１ａ）に固着され、前記ガンストッパ４３が、前記周壁部４２ａをこの周壁部４２の径方向で横切るように配置されると共に、このガンストッパ４３の両端部（接合板部４３ａ）が、前記周壁部４２ａに固着され、前記抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂが、前記周壁部４２ａの周方向で前記ガンストッパ４３と重なる位置に設けられている。
　この構成によれば、ガンストッパ４３がフレイムアレスタ４２の周壁部４２ａを径方向で横切るように配置されると共にこの周壁部４２ａに固着されることで、ガンストッパ４３によりフレイムアレスタ４２の円管剛性を向上させることができる。また、フレイムアレスタ４２の上部が給油案内筒４１の下部に固着されることで、給油案内筒４１の管剛性も併せて向上させることができる。さらに、抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂにホース等を着脱する際の力をガンストッパ４３で受けることができるため、抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂが設けられる部材の薄肉軽量化を図ることができる。

　また、上記車両用燃料タンク１２６は、前記フレイムアレスタ４２が、前記周壁部４２ａの下部開口を覆うキャップ部材４４を備え、前記給油口装置４０内から前記タンク本体３１内へ燃料を流通可能とする連通孔４２ｆが、前記周壁部４２ａ及びキャップ部材４４に設けられている。
　この構成によれば、タンク本体３１内への燃料の流通とタンク本体３１内の空気の排出とをスムーズに行うことができる。また、抜油パイプ１４６の上端部１４６ｂを給油案内筒４１に設けることで、フレイムアレスタ４２の周壁部４２ａ及びキャップ部材４４に形成した連通孔４２ｆによる燃料のタンク本体３１内への流通とタンク本体３１内の空気の排出とを妨げることもない。

　また、上記車両用燃料タンク１２６は、前記抜油パイプ１４６の下端部１４６ａが、当該燃料タンク１２６を備える自動二輪車１の車体中心線ＣＬを基準にしてサイドスタンド２９ｂと同じ側に設けられている。
　この構成によれば、サイドスタンド２９ｂの使用により車体が傾斜している状態でも抜油作業を行うことができる。

＜第三実施形態＞
　次に、本発明の車両用燃料タンクの第三実施形態について、図１，２，３，４Ａ，５，６Ａ，７を援用し図１０Ａ，１０Ｂを参照して説明する。
　本実施形態の燃料タンク２２６は、前記第一実施形態の構成に対して、上端部２４６ｂをフレイムアレスタ４２のキャップ部材４４に支持させる抜油パイプ２４６を含む抜油装置２４５を備える点が特に異なっている。その他の、前記第一実施形態と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。

　抜油パイプ２４６の上端部２４６ｂは、キャップ部材４４の底壁部４４ｂの左前部をこの底壁部４４ｂの下方から上方へ貫通することで、給油口装置４０内に開口する。抜油パイプ２４６の上端部２４６ｂは、給油口３４の軸方向視でこの給油口３４の開口領域Ａ１内であってガンストッパ４３と重ならないように配置される。抜油パイプ２４６は、タンク本体３１内で下壁部３３ａに沿うように例えば前方に向けて湾曲し、タンク本体３１の下壁部３３ａ左側の近傍で開口する。

　以上の構成により、燃料タンク２２６内の燃料を抜き取る際には、給油口３４から給油口装置４０内に燃料吸引装置のホース等を挿入し、これを抜油パイプ２４６の上端部２４６ｂに接続することで、タンク本体３１内の燃料の抜き取り作業が可能となる。

　以上説明したように、上記実施形態における車両用燃料タンク２２６も、第一実施例と同様、下端部２４６ａが前記タンク本体３１内の下端部に開口すると共に上端部２４６ｂが前記給油口装置４０内に開口して前記上端部２４６ｂから前記タンク本体３１内の燃料を抜き取り可能とする抜油パイプ２４６を備えたものであり、給油口３４からホース等を挿入して給油口装置４０内に開口する抜油パイプ２４６の上端部２４６ｂからタンク本体３１内の燃料を抜き取ることができ、燃料タンク２２６の大型化を防ぐことができる。

　また、上記車両用燃料タンク２２６は、前記フレイムアレスタ４２が、前記ガンストッパ４３を全周に亘って囲繞するように円筒状に形成された周壁部４４ａと、この周壁部４４ａの下部開口を覆うキャップ部材４４とを備え、このキャップ部材４４に前記抜油パイプ２４６の上端部２４６ｂが設けられている。
　この構成によれば、燃料タンク２２６の下部に向けて延出する抜油パイプ２４６の延出量が抑えられ、抜油パイプ２４６の小型化を図ることができる。

　また、上記車両用燃料タンク２２６は、前記フレイムアレスタ４２が、前記周壁部４２ａの下部開口を覆うキャップ部材４４を備え、前記給油口装置４０内から前記タンク本体３１内へ燃料を流通可能とする連通孔４２ｆが、前記周壁部４２ａ及びキャップ部材４４に設けられている。
　この構成によれば、タンク本体３１内への燃料の流通とタンク本体３１内の空気の排出とをスムーズに行うことができる。

　また、上記車両用燃料タンク２２６は、前記抜油パイプ２４６の下端部２４６ａが、当該燃料タンク２２６を備える自動二輪車１の車体中心線ＣＬを基準にしてサイドスタンド２９ｂと同じ側に設けられている。
　この構成によれば、サイドスタンド２９ｂの使用により車体が傾斜している状態でも抜油作業を行うことができる。

＜第四実施形態＞
　次に、本発明の第四実施形態について、図５，６Ａ，７を援用し図１１～１４を参照して説明する。
　本実施形態の燃料タンク３２６は、前記各実施形態の構成に対して、ヘッドパイプ１０３から後方に延びるメインフレーム１０４を左右に跨ぐ鞍形のタンク本体３３１を有し、このタンク本体３３１の左右下端部に向けて左右一対の抜油パイプ３４６を延ばす点が特に異なっている。その他の、前記第一実施形態と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。

　図１１に示す自動二輪車１０１において、その車体フレーム１０２は、前輪懸架系を操向可能に支持するヘッドパイプ１０３と、このヘッドパイプ１０３から後方に延びた後に屈曲して後方斜め下方に延びるメインフレーム１０４と、このメインフレーム１０４の下方にてヘッドパイプ１０３から後方斜め下方に延びるダウンチューブ１０５と、メインフレーム１０４の後部に連結されて後輪懸架系のリヤスイングアーム１１２を上下揺動可能に支持するピボットプレート１０６とを備える。

　なお、図中符号１０７は前輪、符号１０８は左右一対のフロントフォーク、符号１０９は操向用のハンドル、符号１１０は車体フレーム１０２に支持されたエンジン、符号１１１は後輪、符号１１３は後輪懸架系の左右一対のリヤクッション、符号１１４は乗員着座用のシート、符号１１５はシート１１４を支持するシートフレーム、符号１１６は車体中心線に対して左側に配置されると共にピボットプレート１０６の下部に支持され、自動二輪車１０１の車体を左側に傾けた起立状態で支持するサイドスタンドをそれぞれ示す。

　図１２，１３を併せて参照し、燃料タンク３２６は、シート１１４前方にてメインフレーム１０４上に支持されるもので、この燃料タンク３２６の鞍形のタンク本体３３１は、タンク外観を形成する外分割体３３２と、内側部及び下部を形成する内分割体３３３とに分割構成される。各分割体３３２，３３３は、主にこれらの下縁部に沿う接合フランジＦ２を介して一体に溶接結合されて、中空のタンク本体３３１を形成する。

　タンク本体３３１の上壁部３３２ａ前側には下方へ段差状に変位する平坦部３３２ｂが形成され、この平坦部３３２ｂに上面視円形の開口３３４ａが形成される。開口３３４ａの周縁部には下方（タンク本体３３１内）に起立する円筒状の短フランジ３３４ｂが形成され、この短フランジ３３４ｂの内周に給油案内筒３４１の上端部が嵌合し、これらが溶接等により一体に結合される。なお、タンク本体３３１の下壁部３３３ａ後側には、燃料ポンプ３６取り付け用のブラケット３２ｄが固定される。

　給油案内筒３４１は、開口３３４ａと同軸の円筒状の周壁部３４１ａを有し、かつこの周壁部３４１ａの上端部には、内周側かつ下方に折り返してなる円筒状の内周壁部３４１ｂが形成される。本実施形態では、この内周壁部３４１ｂ内に形成される開口が給油キャップ３５を着脱可能な上面視円形の給油口３３４となり、内周壁部３４１ｂの内径が給油口３３４の開口の内径となる。以下、給油口３３４における概ね上下方向に沿う軸線を符号Ｃ２で示し、給油口３３４の軸方向視における前記内径の開口領域を符号Ａ２で示す。

　給油案内筒３４１の下端部外周には、これと同軸の円筒状をなすフレイムアレスタ４２の周壁部４２ａの上端部が嵌合し、これらが溶接等により一体に結合される。フレイムアレスタ４２内には、例えば前後一対のガンストッパ３４３が設けられる。各ガンストッパ３４３は、前記支持腕部４３ｂ及び架設部４３ｃを有してなり、これら各ガンストッパ３４３の支持腕部４３ｂが給油案内筒３４１の下端部内周に溶接等により一体に結合される。支持腕部４３ｂは、給油案内筒３４１の下端部を介してフレイムアレスタ４２の周壁部４２ａに固着されるともいえる。

　前記給油口３３４、給油案内筒３４１、フレイムアレスタ４２及び各ガンストッパ３４３を有する給油口装置３４０には、左右一対の抜油パイプ３４６を含む抜油装置３４５が一体的に設けられる。
　各抜油パイプ３４６は例えば小径の鋼管からなり、それぞれの下端部３４６ａがタンク本体３３１内の左右下端近傍に至って下方に向けて開口し、上端部３４６ｂが給油口装置３４０内に至ってこの給油口装置３４０の径方向内側に向けて開口する。これら各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂに不図示の燃料吸引装置のホース等を接続することで、タンク本体３３１内の燃料を抜き取り可能となる。

　図１４を併せて参照し、各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂは、給油口３３４の軸方向視（上面視）でこの給油口３３４の斜め前左側及び右側にそれぞれ配置される。各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂは、給油案内筒３４１をこれらの外周側から内周側へ貫通することで、給油口装置３４０内に開口する。各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂは、給油口３３４内に突出しないように（給油口３３４の軸方向視でこの給油口３３４の開口領域Ａ２と重ならないように）配置される。

　給油案内筒３４１における各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂが貫通する部位には、各抜油パイプ３４６の貫通孔３４１ｃ及びこの貫通孔３４１ｃの周縁から給油口３３４外周側に向けて起立する短フランジ３４１ｄが形成される。これら各貫通孔３４１ｃ及び短フランジ３４１ｄに各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂが挿通保持された状態で、これらが溶接等により一体に結合される。なお、各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂは、給油案内筒３４１、フレイムアレスタ４２及びガンストッパ３４３の少なくとも一つに支持される構成であればよい。

　各抜油パイプ３４６の下端部３４６ａは、タンク本体３３１の左右下端部の近傍で開口する。各抜油パイプ３４６の中間部は、タンク本体３３１内でフレイムアレスタ４２の上端部外周から二股状をなして延びる支持ステー３４７に支持される。

　以上の構成により、燃料タンク３２６内の燃料を抜き取る際には、各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂに給油口装置３４０内から燃料吸引装置のホース等を接続することで、前記燃料の抜き取り作業が可能となる。

　このとき、各抜油パイプ３４６の下端部３４６ａがタンク本体３３１内の左右下端近傍にて開口することで、サイドスタンド１１６（又はメインスタンド）を用いて自動二輪車１０１の車体を左側に傾けた（又は直立させた）起立状態で前記燃料の抜き取り作業を行うことができる。なお、各抜油パイプ３４６の下端部３４６ａは異物の流通を抑えるべく圧潰されている。

　以上説明したように、上記実施形態における車両用燃料タンク３２６も、第一実施例と同様、下端部３４６ａが前記タンク本体３３１内の下部に開口すると共に上端部３４６ｂが前記給油口装置３４０内に開口して前記上端部３４６ｂから前記タンク本体３３１内の燃料を抜き取り可能とする一対の抜油パイプ３４６を備えたものであり、給油口３３４からホース等を挿入して給油口装置３４０内に開口する各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂからタンク本体３３１内の燃料を抜き取ることができ、燃料タンク３２６の大型化を防ぐことができる。

　また、上記車両用燃料タンク３２６は、前記各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂが、前記給油案内筒３４１に設けられている。
　この構成によれば、給油口３３４近くの給油案内筒３４１に各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂが開口することで、燃料を抜き取るためのホース等の各抜油パイプ３４６への着脱を容易にできる。

　また、上記車両用燃料タンク３２６は、前記給油案内筒３４１の下方に、給油ガンＧに当接してこの給油ガンＧの前記タンク本体３３１内への挿入量を規制するガンストッパ３４３が設けられている。
　この構成によれば、ガンストッパ３４３よりも給油口３３４側で抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂが開口することで、燃料を抜き取るためのホース等を各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂに着脱する作業をガンストッパ３４３に邪魔されることなく行うことができる。

　また、上記車両用燃料タンク３２６は、前記給油口３３４の軸方向視で、前記各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂが前記給油口３３４の開口領域Ａ２を避けた位置に設けられている。
　この構成によれば、給油口３３４の軸方向視で各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂが給油口３３４内に突出しなくなるため、給油ガンＧを給油口３３４から挿入する際に給油ガンＧと各抜油パイプ３４６との干渉を避けることができる。

　また、上記車両用燃料タンク３２６は、前記フレイムアレスタ４２が、前記周壁部４２ａの下部開口を覆うキャップ部材４４を備え、前記給油口装置３４０内から前記タンク本体３３１内へ燃料を流通可能とする連通孔４２ｆが、前記周壁部４２ａ及びキャップ部材４４に設けられている。
　この構成によれば、タンク本体３３１内への燃料の流通とタンク本体３３１内の空気の排出とをスムーズに行うことができる。また、各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂを給油案内筒３４１に設けることで、フレイムアレスタ４２の周壁部４２ａ及びキャップ部材４４に形成した連通孔４２ｆによる燃料のタンク本体３３１内への流通とタンク本体３３１内の空気の排出とを妨げることもない。

　また、上記車両用燃料タンク３２６は、前記各抜油パイプ３４６の一方の下端部３４６ａが、当該燃料タンク３２６を備える自動二輪車１０１の車体中心線ＣＬを基準にしてサイドスタンド１１６と同じ側に設けられている。
　この構成によれば、サイドスタンド１１６の使用により車体が傾斜している状態でも抜油作業を行うことができる。

　なお、上記車両用燃料タンク３２６において、前記ガンストッパ３４３が、前記周壁部４２ａをこの周壁部の４２ａの径方向で横切るように配置され、このガンストッパ３４３の両端部が、前記周壁部４２ａに直接又は間接的に固着され、前記抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂが、前記周壁部４２ａの周方向で前記ガンストッパ３４３と重なる位置に設けられる構成とすれば、給油口装置３４０の管剛性を向上させると共に、各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂにホース等を着脱する際の力をガンストッパ３４３で支持可能とし、各抜油パイプ３４６の上端部３４６ｂが設けられる部材の薄肉軽量化を図ることができる。

　なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、本発明の構成は自動二輪車に限らず三輪（前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む）又は四輪の車両にも適用可能である。
　そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。

　本発明によれば、給油口からホース等を挿入して給油口装置内に開口する抜油パイプの他端からタンク本体内の燃料を抜き取ることができるため、燃料タンクの外壁に開口や抜油のための機構を別途設ける必要がなく、燃料タンクの大型化を防ぐことができる。

　１，１０１　自動二輪車（車両）
　２６，１２６，２２６，３２６　燃料タンク
　２９ｂ，１１６　サイドスタンド
　３１，３３１　タンク本体
　３２ａ，３３２ａ　上壁部（上壁）
　３４，３３４　給油口
　４０，３４０　給油口装置
　４１，３４１　給油案内筒
　４１ｄ　凹部
　４２　フレイムアレスタ
　４２ａ　周壁部
　４２ｆ　連通孔
　４３，３４３　ガンストッパ
　４４　キャップ部材
　４６，１４６，２４６，３４６　抜油パイプ
　４６ａ，１４６ａ，２４６ａ，３４６ａ　下端部（一端）
　４６ｂ，１４６ｂ，２４６ｂ，３４６ｂ　上端部（他端）
　Ａ１，Ａ２　開口領域
　ＣＬ　車体中心線
　Ｇ　給油ガン

Claims (11)

1. 　タンク本体（３１，３３１）の上壁（３２ａ，３３２ａ）に設けられる給油口（３４，３３４）と、この給油口（３４，３３４）から前記タンク本体（３１，３３１）内に延びる給油案内筒（４１，３４１）と、この給油案内筒（４１，３４１）の下方開口部を覆って前記タンク本体（３１，３３１）内への燃料の流通を許容すると共に、前記タンク本体（３１，３３１）内の空気を排出可能なフレイムアレスタ（４２）と、を具備する給油口装置（４０，３４０）を備えた車両用燃料タンク（２６，１２６，２２６，３２６）であって、
   　一端（４６ａ，１４６ａ，２４６ａ，３４６ａ）が前記タンク本体（３１，３３１）内の下部に開口すると共に他端（４６ｂ，１４６ｂ，２４６ｂ，３４６ｂ）が前記給油口装置（４０，３４０）内に開口して前記他端（４６ｂ，１４６ｂ，２４６ｂ，３４６ｂ）から前記タンク本体（３１，３３１）内の燃料を抜き取り可能とする抜油パイプ（４６，１４６，２４６，３４６）をさらに備えることを特徴とする車両用燃料タンク。
2. 　前記給油案内筒（４１）の下方に、給油ガン（Ｇ）に当接してこの給油ガン（Ｇ）の前記タンク本体（３１）内への挿入量を規制するガンストッパ（４３）が設けられ、前記抜油パイプ（４６）の他端（４６ｂ）が、前記ガンストッパ（４３）に設けられることを特徴とする請求項１に記載の車両用燃料タンク。
3. 　前記抜油パイプ（１４６，３４６）の他端（１４６ｂ，３４６ｂ）が、前記給油案内筒（４１，３４１）に設けられることを特徴とする請求項１に記載の車両用燃料タンク。
4. 　前記給油案内筒（４１）にこの給油案内筒（４１）の径方向外側に向けて凹む凹部（４１ｄ）が設けられ、この凹部（４１ｄ）内に前記抜油パイプ（１４６）の他端（１４６ｂ）が設けられることを特徴とする請求項３に記載の車両用燃料タンク。
5. 　前記給油案内筒（４１，３４１）の下方に、給油ガン（Ｇ）に当接してこの給油ガン（Ｇ）の前記タンク本体（３１，３３１）内への挿入量を規制するガンストッパ（４３，３４３）が設けられることを特徴とする請求項３又は４に記載の車両用燃料タンク。
6. 　前記給油口（３４，３３４）の軸方向視で、前記抜油パイプ（４６，１４６，２４６，３４６）の他端（４６ｂ，１４６ｂ，２４６ｂ，３４６ｂ）が前記給油口（３４，３３４）の開口領域（Ａ１，Ａ２）を避けた位置に設けられることを特徴とする請求項１から５の何れか１項に記載の車両用燃料タンク。
7. 　前記フレイムアレスタ（４２）が、前記給油案内筒（４１，３４１）の下方に設けられたガンストッパ（４３，３４３）を全周に亘って囲繞するように円筒状に形成された周壁部（４２ａ）を備え、このフレイムアレスタ（４２）の周壁部（４２ａ）の上部が、前記給油案内筒（４１，３４１）の下部に固着され、
   　前記ガンストッパ（４３，３４３）が、前記周壁部（４２ａ）をこの周壁部（４２ａ）の径方向で横切るように配置されると共に、このガンストッパ（４３，３４３）の両端部が、前記周壁部（４２ａ）に固着され、
   　前記周壁部（４２ａ）の軸方向視において、前記抜油パイプ（４６，１４６，２４６，３４６）の他端（４６ｂ，１４６ｂ，２４６ｂ，３４６ｂ）が、前記周壁部（４２ａ）の周方向で前記ガンストッパ（４３，３４３）と重なる位置に設けられることを特徴とする請求項１から６の何れか１項に記載の車両用燃料タンク。
8. 　前記フレイムアレスタ（４２）が、前記周壁部（４２ａ）の下部開口を覆うキャップ部材（４４）を備え、前記給油口装置（４０，３４０）内から前記タンク本体（３１，３３１）内へ燃料を流通可能とする連通孔（４２ｆ）が、前記周壁部（４２ａ）及びキャップ部材（４４）に設けられることを特徴とする請求項１から７の何れか１項に記載の車両用燃料タンク。
9. 　前記フレイムアレスタ（４２）が、前記給油案内筒（４１）の下方に設けられたガンストッパ（４３）を全周に亘って囲繞するように円筒状に形成された周壁部（４２ａ）と、この周壁部（４２ａ）の下部開口を覆うキャップ部材（４４）とを備え、
   　このキャップ部材（４４）に前記抜油パイプ（２４６）の他端（２４６ｂ）が設けられることを特徴とする請求項１に記載の車両用燃料タンク。
10. 　前記抜油パイプ（４６，１４６，２４６，３４６）の一端（４６ａ，１４６ａ，２４６ａ，３４６ａ）が、当該燃料タンク（２６，１２６，２２６，３２６）を備える自動二輪車（１，１０１）の車体中心線（ＣＬ）を基準にしてサイドスタンド（２９ｂ，１１６））と同じ側に設けられることを特徴とする請求項１から９の何れか１項に記載の車両用燃料タンク。
11. 　前記フレイムアレスタ（４２）の周壁部（４２ａ）の外周に、前記抜油パイプ（４６，３４６）を支持する支持ステー（４７，３４７）が固着され、前記給油案内筒（４１，３４１）が前記タンク本体（３１，３３１）に固着されることを特徴とする請求項７に記載の車両用燃料タンク。

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