WO2011104766A1 - コイル支持部材 - Google Patents

Abstract

　外れ防止機能を備え、管同士の隙間への挿入が容易なコイル支持部材を提供する。コイル支持部材（１０）では、挿入本体部（１２１）がコイル（４）の管（４０）同士の隙間に入るとき、第１係合部（１２２ａ）及び第２係合部（１２２ｂ）が管（４０）と接触して撓みながら進入し、最終的にコイル内空間から管（４０）と対峙する。コイル支持部材（１０）は、管（４０）から離れる方向に移動しようとしても第１係合部（１２２ａ）及び第２係合部（１２２ｂ）がその移動を阻止するので、管（４０）から外れることが防止される。

Description

コイル支持部材

　本発明は、貯水容器に配置される管を巻いたコイルのコイル支持部材に関する。

　近年、給湯機市場では、貯水容器内に配置される管を巻いたコイルにヒートポンプによって加熱された水を循環させて貯水容器内の水を加熱する給湯機が広く普及している。
　上記給湯機は、コイルの管同士の隙間を一定に維持して熱交換性能を安定させる必要があり、例えば、特許文献１（EP１９８３２８７Ａ１）に開示されている給湯機では、コイルの管同士の隙間にコイル支持部材が挿入され、そのコイル支持部材と管との隙間にコイル支持部材を固定する固定部材が挿入されている。コイル支持部材は、固定部材が抜き取られない限り管同士の隙間から外れることがなく、管同士の隙間は安定する。

　しかしながら、固定部材がコイル支持部材と管との隙間に挿入されるとき、固定部材の先端は管およびコイル支持部材に当たりながら進入するので、挿入作業は容易ではない。
　本発明の課題は、外れ防止機能を備え、管同士の隙間への挿入が容易なコイル支持部材を提供することにある。

　本発明の第１観点に係るコイル支持部材は、貯水容器内に配置される管を巻いたコイルに装着され、長手方向に並ぶように形成された複数の開口およびその開口を囲む部位によって、コイルの管同士の接触を防止するとともに貯水容器の内周面とコイルの外周面との接触を抑制するコイル支持部材であって、挿入部と非挿入部とから成る。挿入部は、互いに隣接する開口の間に形成され、コイルに装着されるときにコイルの外周面よりも径方向内側のコイル内空間に挿入される。非挿入部は、コイルに装着されるときにコイルの外周面よりも径方向外側のコイル外空間に位置する。また、挿入部は、挿入本体部と係合部とを有している。挿入本体部は、互いに隣接する管の接触を防止する。係合部は、挿入本体部から突出し、コイル内空間から管に接触して挿入本体部の挿入状態を維持する。
　このコイル支持部材では、挿入本体部が管同士の隙間に入るとき、係合部は管と接触して撓みながら進入し、最終的にコイル内空間から管と対峙する。コイル支持部材は、管から離れる方向に移動しようとしても係合部がその移動を阻止するので、管から外れることが防止される。

　本発明の第２観点に係るコイル支持部材は、第１観点に係るコイル支持部材であって、係合部の先端部分、及び係合部と挿入本体部との付根部分は円弧状に成形されている。
　このコイル支持部材では、係合部の先端部分が円弧状であるので、係合部の先端部分と管表面とが互いに滑りやすくなり、挿入本体部が管同士の隙間に入り易くなる。また、係合部が撓むとき付根部分に応力が集中するが、付根部分が円弧状に成形されているので応力が一点に集中することが抑制され、付根部分の損傷が防止される。

　本発明の第３観点に係るコイル支持部材は、第１観点に係るコイル支持部材であって、係合部が、１つの挿入本体部からその両側に隣接する開口の一方側へ突出する第１係合部と、他方側へ突出する第２係合部とを含んでいる。
　挿入本体部は、係合部の有る側が管に押されて捩じれようとし、一方向に捩じれたとき係合部が傾くので管から外れ易くなる。しかしながら、このコイル支持部材では、反対側にもう1つ係合部があることによって一方向への捩じれが防止されるので、管から外れ難くなる。

　本発明の第４観点に係るコイル支持部材は、第３観点に係るコイル支持部材であって、第１係合部および第２係合部が、開口が並ぶ方向と直交する方向に所定距離だけ離れて位置する。
　第１係合部と第２係合部とが１直線上に並んでいる場合、挿入部がコイルに挿入されるとき、２つの係合部が同時に撓むので挿入力が大きくなる。しかしながら、このコイル支持部材では、第１係合部と第２係合部とが所定距離だけ離れて位置するので、一方の係合部が先に撓み、他方の係合部が遅れて撓むように挿入することが可能となる。その結果、挿入力のピークを低くすることができ、その分、挿入が容易になる。

　本発明の第５観点に係るコイル支持部材は、第１観点に係るコイル支持部材であって、非挿入部、挿入本体部および係合部が一体成形されている。
　このコイル支持部材では、部品点数が低減されるうえに、フライス加工、打ち抜き成形、及び射出成形のいずれの方法でも製作できるので、生産数量に応じて合理的な製作方法を選択することができる。

　本発明の第６観点に係るコイル支持部材は、第５観点に係るコイル支持部材であって、高密度ポリエチレンで成形されている。
　このコイル支持部材では、高密度ポリエチレン樹脂が、軽量で適度の弾性を有するので管を傷つけ難い。また、飲料水・食品に対して悪影響がなく、給湯の高温水にも強く、長期間の水中浸漬に適している

　本発明の第７観点に係る貯水容器組立体は、第１観点から第６観点のいずれか１つに係るコイル支持部材と、コイルと、貯水容器とを備えている。
　この貯水容器組立体では、コイル支持部材の挿入本体部がコイルの管同士の隙間に入るとき、係合部は管と接触して撓みながら進入し、最終的にコイル内空間から管と対峙する。コイル支持部材は、管から離れる方向に移動しようとしても係合部がその移動を阻止するので、管から外れることが防止される。

　本発明の第８観点に係る貯水容器組立体は、第７観点に係る貯水容器組立体であって、コイル支持部材の非挿入部に、第１傾斜部と第２傾斜部とが形成されている。第１傾斜部は、長手方向の端面に近づくほど非挿入部の幅を狭くする方向に傾いている。第２傾斜部は、第１傾斜部よりもさらにその端面に近い位置からその端面に至るまで非挿入部の幅を狭くする方向に傾いている。
　この貯水容器組立体では、コイルが貯水容器に組み込まれるとき、コイルに装着されているコイル支持部材の端部は貯水容器の円周面に沿って強制的に撓まされるので、貯水容器の開口エッジに削られる可能性がある。
　そこで、非挿入部の幅が狭くなるように端面に向かって傾斜させることによって、組み込みの初期段階では、たわみ量が小さくなり、削れが抑制される。また、ある程度組み込まれた後は、未だ組み込まれていない部分も先に組み込まれた部分の撓みに倣って自ら撓むので、組み込みが容易になる。
　また、一般に容器の底部は、中心に向かって径が小さくなる「すり鉢状」になっているが、非挿入部の端部幅は第２傾斜部によって先細形状になっているので、端部の一局に応力が集中するような撓みは抑制され、長期使用に耐え得る。

　本発明の第９観点に係る貯水容器組立体は、第７観点または第８観点に係る貯水容器組立体であって、貯水容器の内周面半径Ｒとコイルの仮想最短寸法Ｓとの寸法差Ｓ－Ｒに相当する撓みを、非挿入部の自由端に与えるために必要な力Ｐ１が１００Ｎ未満である。ここで、仮想最短寸法Ｓは、コイルの中心軸からそのコイルに装着されたコイル支持部材の非挿入部の幅方向の自由端までを最短で結ぶ寸法である。
　この貯水容器組立体では、作業者が、コイルを貯水容器に組み込む際、コイル支持部材を撓ませながら組み込む作業が容易になる。

　本発明の第１０観点に係る貯水容器組立体は、第７観点から第９観点のいずれか１つに係る貯水容器組立体であって、コイル支持部材の係合部の総数Ｎと、係合部押し力Ｄと、非挿入部押し力Ｐとの間に、常に、Ｐ＜Ｎ×Ｄの関係式が成立することを条件に、貯水容器の内周面とコイルの外周面との隙間、コイルの高さ寸法、係合部の位置、非挿入部の材質、及び非挿入部の厚み寸法が選定されている。ここで、係合部押し力Ｄは、コイル支持部材の挿入部がコイルに挿入されるときに１つの係合部を撓ませるために必要な押し力である。また、非挿入部押し力Ｐは、コイル支持部材の非挿入部の幅方向の自由端がコイルの外周面に当たるまで押えるために必要な押し力である。
　この貯水容器組立体では、コイルの外周面が貯水容器の内周面に最も接近するまで振れたとき、非挿入部の幅方向の自由端はコイルの外周面に当たるまで押されると推定される。このとき、非挿入部に作用した力が反力として全ての係合部に作用した場合でも、係合部の撓みに要する力の方が大きいので、コイル支持部材が管から外れることは防止される。

　本発明の第１観点に係るコイル支持部材では、コイル支持部材が、管から離れる方向に移動しようとしても係合部がその移動を阻止するので、管から外れることが防止される。
　本発明の第２観点に係るコイル支持部材では、係合部の先端部分と管表面とが互いに滑りやすくなり、挿入本体部が管同士の隙間に入り易くなる。また、付根部分が円弧状に成形されているので応力が一点に集中することが抑制され、付根部分の損傷が防止される。
　本発明の第３観点に係るコイル支持部材では、挿入本体部の一方向への捩じれが防止されるので、管から外れ難くなる。
　本発明の第４観点に係るコイル支持部材では、第１係合部と第２係合部とが所定距離だけ離れて位置するので、一方の係合部が先に撓み、他方の係合部が遅れて撓むように挿入することが可能となり、挿入力のピークを低くすることができ挿入が容易になる。

　本発明の第５観点に係るコイル支持部材では、部品点数が低減されるうえに、フライス加工、打ち抜き成形、及び射出成形のいずれの方法でも製作できるので、生産数量に応じて合理的な製作方法を選択することができる。
　本発明の第６観点に係るコイル支持部材では、高密度ポリエチレン樹脂が、軽量で適度の弾性を有するので管を傷つけ難い。また、飲料水・食品に対して悪影響がなく、給湯の高温水にも強く、長期間の水中浸漬に適している。
　本発明の第７観点に係る貯水容器組立体では、コイル支持部材が、コイルの管から離れる方向に移動しようとしても係合部がその移動を阻止するので、管から外れることが防止される。
　本発明の第８観点に係る貯水容器組立体では、組み込みの初期段階で、たわみ量が小さくなるので削れが抑制される。また、未だ組み込まれていない部分も先に組み込まれた部分の撓みに倣って自ら撓むので、組み込みが容易になる。また、非挿入部の端部幅は先細形状になっているので、端部の一局に応力が集中するような撓みは抑制され、長期使用に耐え得る。

　本発明の第９観点に係る貯水容器組立体では、作業者がコイル支持部材を撓ませながらコイルを貯水容器に組み込むための作業が容易になる。
　本発明の第１０観点に係る貯水容器組立体では、コイルの外周面が貯水容器の内周面に最も接近するまで振れたとき、非挿入部に作用した力が反力として全ての係合部に作用した場合でも、係合部の撓みに要する力の方が大きいので、コイル支持部材が管から外れることは防止される。

本発明の一実施形態に係るコイル支持部材を備えた貯水容器組立体の正面図。 図１のＡ－Ａ線における貯水容器組立体の断面図。 コイル支持部材が装着されたコイルの斜視図。 コイル支持部材の正面図。 図２のＢ－Ｂ線におけるコイルとコイル支持部材の部分断面図。 ピッチＬ＝０における非挿入部の幅方向の端の変位を示す貯水容器組立体の部分横断面図。 ピッチＬ＝１０ｍｍにおける非挿入部の幅方向の端の変位を示す貯水容器組立体の部分横断面図。 ピッチＬ＝２４ｍｍにおける非挿入部の幅方向の端の変位を示す貯水容器組立体の部分横断面図。 ピッチＬ＝３０ｍｍにおける非挿入部の幅方向の端の変位を示す貯水容器組立体の部分横断面図。 ピッチＬ＝４２ｍｍにおける非挿入部の幅方向の端の変位を示す貯水容器組立体の部分横断面図。 第１変形例に係るコイル支持部材の正面図。 第２変形例に係るコイルとコイル支持部材の部分断面図。 第３変形例に係るコイルとコイル支持部材の部分断面図。

　以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
　＜貯水容器組立体３＞
　図１は、本発明の一実施形態に係るコイル支持部材を備えた貯水容器組立体の正面図である。図１において、貯水容器組立体３は、貯湯式給湯機の湯を貯める容器として使用され、貯水容器３０と、その内部に配置されるコイル４とを備えている。貯水容器３０は、ステンレス製の円筒形容器であって、頭部と底部とがすり鉢状に成形されている。
　コイル４は、管４０が円筒形螺旋状に巻かれている一種の熱交換器であって、本実施形態では、管４０は耐食性および耐熱性の高いステンレス製の管であり、内部を高温の湯が循環する。貯水容器３０内の水は、コイル４との熱交換によって約８０℃まで加熱されることが可能である。

　コイル４の管４０は、貯水容器組立体３の外側に設置されるヒートポンプユニット（図示せず）に接続されており、コイル４を循環する高温の湯はヒートポンプユニットによって加熱される。なお、ヒートポンプユニットによる加熱原理は周知技術であって、特許文献１にも紹介されているので、ここでは説明を省略する。
　図２は、図１のＡ－Ａ線における貯水容器組立体の断面図である。図２において、コイル４は、その外周面と貯水容器３０の内周面との間に隙間が確保されるようにコイル支持部材１０が装着されている。コイル４には、３つのコイル支持部材１０がコイル４の中心に対して１２０°間隔で配置されている。

　＜コイル支持部材１０＞
　図３は、コイル支持部材が装着されたコイルの斜視図である。図３において、コイル支持部材１０は、コイル４の管４０同士の接触を防止するとともに貯水容器３０の内周面とコイル４の外周面との接触を抑制する。なお、コイル４の外周面とは、図２に示すように、平面視における管４０の最外周の線をコイル４の長手方向に延長した仮想面であり、本実施形態では、螺旋状のコイル４の螺旋外径を持つ仮想円筒状面ＳＦｏである。
　（開口１１）
　図４は、コイル支持部材の正面図である。図３、図４において、コイル支持部材１０には、ただ単にコイル４の管４０同士の接触を防止するだけでなく、互いに隣接する管４０の隙間を一定範囲に維持する機能も要求され、これらの機能を実現するために、コイル支持部材１０には、長手方向に間隔をあけて並ぶように形成される複数の開口１１が設けられている。開口１１は長穴形状であって、その長手方向はコイル支持部材１０の長手方向とは垂直である。開口１１のコーナーは円弧状に成形されている。

　（挿入部１２）
　図４に示すように、コイル支持部材１０は挿入部１２と非挿入部１３とから成る。挿入部１２は、互いに隣接する開口１１の間に形成され、コイル４に装着されるときコイル４の外周面よりも径方向内側のコイル内空間に挿入される。
　また、挿入部１２は、挿入本体部１２１と係合部１２２とを有している。挿入本体部１２１は、互いに隣接する管４０の隙間をほぼ一定に維持する。係合部１２２は、挿入本体部１２１から突出し、コイル内空間から管４０に接触して挿入本体部１２１の挿入状態を維持する。
　係合部１２２は、第１係合部１２２ａと第２係合部１２２ｂとを含んでいる。図４に示すように、コイル支持部材１０がコイル４に装着される前の状態では、第１係合部１２２ａは、１つの挿入本体部１２１からその上下両側に隣接する開口の上側の開口１１に向かってへ突出し、第２係合部１２２ｂは下側の開口１１に向かって突出している。つまり、第１係合部１２２ａおよび第２係合部１２２ｂの突出方向は、コイル支持部材１０の長手方向とほぼ平行である。なお、係合部１２２は、第１係合部１２２ａおよび第２係合部１２２ｂのいずれか一方だけでも良いが、その場合、挿入本体部１２１は、第１係合部１２２ａおよび第２係合部１２２ｂのいずれか一方の有る側が管４０に押されて一方向に捩じれ易くなることに注意する必要がある。したがって、反対側にもう1つ係合部があることは、一方向への捩じれを防止するので、管４０から更に外れ難くなるという効果がある。これ以降の説明で、係合部１２２と記載しているときは、第１係合部１２２ａ及び第２係合部１２２ｂに共通の事項を記載していることとする。

　また、第１係合部１２２ａと第２係合部１２２ｂとは、開口１１が並ぶ方向と直交する方向、つまり開口１１の長手方向に沿って一定距離（以後、ピッチＬとよぶ）だけ離れて位置している。本実施形態では、ピッチＬは１０ｍｍに設定されているが、これに限定されるものではない。なお、ピッチＬ＝０、即ち、第１係合部１２２ａと第２係合部１２２ｂとが１直線上に並ぶことも可能である。但し、その場合、挿入本体部１２１が管４０同士の隙間に挿入されるとき、２つの係合部が同時に撓むので挿入力が大きくなることに注意する必要がある。したがって、第１係合部１２２ａと第２係合部１２２ｂとがピッチＬだけ離れて位置することは、一方の係合部が先に撓み、他方の係合部が遅れて撓むように挿入することを可能とするので、挿入力のピークを低くすることができる。その結果、挿入が更に容易になる。

　組立作業者は、コイル支持部材１０をコイル４に装着する際、挿入本体部１２１を管４０同士の隙間に入れる。このとき、係合部１２２は管４０と接触して撓みながら進入し、最終的にコイル内空間から管４０と対峙する。
　なお、係合部１２２の先端部分は円弧状に成形されているので、係合部１２２の先端部分と管４０表面とが互いに滑りやすく、その結果、挿入本体部１２１が管４０同士の隙間に入り易くなっている。また、係合部１２２が撓むとき係合部１２２と挿入本体部１２１との付根部分に応力が集中するが、その付根部分も円弧状に成形されているので応力が一点に集中することが抑制される。その結果、付根部分の損傷が防止される。
　図５は、図２のＢ－Ｂ線におけるコイルとコイル支持部材の部分断面図である。図５において、第１係合部１２２ａは、１つの挿入本体部１２１からその上下両側に隣接する開口１１の上側の開口１１に向かってへ突出し、その突出方向はコイル４の長手方向に平行である。第２係合部１２２ｂは下側の開口１１に向かって突出し、第１係合部１２２ａと同様にコイル４の長手方向に平行である。

　図５に示すように、コイル支持部材１０は、一旦、コイル４に装着されてしまうと、管４０から離れる方向に移動しようとしても第１係合部１２２ａと第２係合部１２２ｂとがその移動を阻止するので、管４０から外れることができない。
　（非挿入部１３）
　非挿入部１３は、コイル４に装着されるときにコイル４の外周面よりも径方向外側のコイル外空間に位置し、貯水容器３０の内周面とコイル４の外周面との接触を抑制する。図２に示すように、非挿入部１３は、両端（幅方向の自由端）を貯水容器３０の内周面に接触させており、振動などによってコイル４の外周面が貯水容器３０の内周面に接近するように振れたとき、非挿入部１３の両端が撓み貯水容器３０の内周面を押し返す。それゆえ、貯水容器３０の内周面とコイル４の外周面とが衝突するような当たりは防止される。

　また、非挿入部１３の輪郭は、図４正面視において、上側の端１３ａ、左右の端１３ｃ、左右の第１傾斜部１３１、左右の端１３ｄ、左右の第２傾斜部１３２、及び下側の端１３ｂによって形成されている。第１傾斜部１３１は、図４正面視の下側の端１３ｂに近づくほど非挿入部１３の幅を狭くする方向に傾いている。説明の便宜上、図４正面視の下側の端を先入端１３ｂとよぶ。第２傾斜部１３２は、第１傾斜部１３１よりもさらに先入端１３ｂに近い位置、つまり、左右の端１３ｄの終点から先入端１３ｂに至るまで非挿入部１３の幅を狭くする方向に傾いている。
　貯水容器組立体３の組立作業において、作業者は、コイル４を貯水容器３０に挿入するとき、コイル４に装着されているコイル支持部材１０の端部を貯水容器３０の円周面に沿って強制的に撓ませて挿入する。このとき、仮に非挿入部１３の幅が上側の端１３ａから先入端１３ｂに至るまで同じ寸法の場合、先入端１３ｂ側は貯水容器３０の開口エッジに削られる可能性があった。

　しかし、非挿入部１３の先入端１３ｂ側の幅は、先入端１３ｂに向かって狭くなるように傾斜しているので、組み込みの初期段階での撓み量は小さく、削れは抑制される。また、ある程度組み込まれた後は、未だ組み込まれていない部分も先に組み込まれた部分の撓みに倣って自ら撓むので、組み込みが容易になる。
　また、図３で示されている「Ｓ」は、コイル４の中心軸からそのコイル４に装着されたコイル支持部材１０の非挿入部１３の幅方向の端（図４正面視の左右の端）１３ｃまでを最短で結ぶ仮想最短寸法である。ここで、貯水容器３０の内周面半径Ｒと仮想最短寸法Ｓとの寸法差Ｓ－Ｒに相当する撓みを、非挿入部１３の幅方向の端１３ｃに与えるために必要な力Ｐ１としたとき、本実施形態のコイル支持部材１０では、Ｐ１＜１００Ｎとなるように設定されている。これは、作業者が、コイル４を貯水容器３０に組み込む際、コイル支持部材１０を撓ませながら組み込むための作業を容易にすることができる条件であり、以下のシミュレーションによって確認されている。

　（ピッチＬと力Ｐ１）
　図６Ａ～図６Ｅは、大きさが異なる５種類のピッチＬａ～Ｌｅごとに非挿入部の幅方向の端の変位を示した貯水容器組立体の部分横断面図である。図６Ａ～図６Ｅから順にピッチＬは０、１０ｍｍ、２４ｍｍ、３０ｍｍ、４２ｍｍに設定されている。図６Ａ～図６Ｅにおいて、コイル４が貯水容器３０に組み込まれる前の非挿入部１３は２点鎖線で表されており、ピッチＬが大きいほどコイル４の外周面ＳＦｏ（図２参照）から外側へ離れている。それゆえ、コイル４が貯水容器３０に組み込まれるとき、非挿入部１３の幅方向の端１３ｃに与える力Ｐ１はＰ１ａ～Ｐ１ｅの順に大きくなっている。ここでは、具体的数値の公表を控えるが、ピッチＬが３０ｍｍ以下でＰ１＜１００Ｎであることは確認されており、本実施形態で採用されているピッチＬｂ＝１０ｍｍでＰ１＜１００Ｎであることは明らかである。

　貯水容器３０に組み込まれた後のコイル支持部材１０では、非挿入部１３の自由端（図４正面視において、左右の端１３ｃ）は常に貯水容器３０の内周面に押された状態になる。特に、貯水容器３０の底部は、中心に向かって径が小さくなる「すり鉢状」に形成されているので、通常なら撓みが大きくなる。しかし、図４に示すように、非挿入部１３が第２傾斜部１３２によって先入端１３ｂに向かって先細形状になっているので、端部の一局に応力が集中するような撓みは抑制され、長期使用に耐え得る。
　また、本実施形態では、非挿入部１３、挿入本体部１２１、第１係合部１２２ａ及び第２係合部１２２ｂなどコイル支持部材１０の全ての部位が高密度ポリエチレン樹脂で一体成形されているので、部品点数が低減されるうえに、フライス加工、打ち抜き成形、及び射出成形のいずれの方法でも製作できる。
　特に生産数量が少ない場合は、金型を必要とする打ち抜き成形や射出成形などで製作するよりもフライス加工で製作する方が製造コストが抑えられるので、本実施形態のコイル支持部材１０はフライス加工の工具刃に適応できるように、予め開口１１のコーナーを円弧状に設定している。それゆえ、生産数量に応じて合理的な製作方法を選択することができる。
　また、材料である高密度ポリエチレン樹脂は、軽量で適度の弾性を有するのでコイル４の管４０を傷つけ難い。また、飲料水・食品に対して悪影響がなく、給湯の高温水にも強く、長期間の水中浸漬に適している。

　（コイル支持部材１０と管４０との装着条件）
　貯水容器組立体３では、コイル４の外周面が貯水容器３０の内周面に最も接近するまで振れたとき、非挿入部１３の幅方向の端（図４正面視の左右の端）１３ｃはコイル４の外周面に当たるまで押される可能性がある。このとき、非挿入部１３に作用した力が反力として全ての係合部１２２に作用すると想定した場合、全ての係合部１２２の撓みに要する力の方が大きければ、コイル支持部材１０が管４０から外れることはない。
　そこで、係合部押し力Ｄを、コイル支持部材１０の挿入部１２がコイル４に挿入されるときに１つの係合部１２２を撓ませるために必要な押し力とし、非挿入部押し力Ｐ（例えば、図６Ｂ参照）を、コイル支持部材１０の非挿入部１３の幅方向の端１３ｃがコイル４の外周面に当たるまで押えるために必要な押し力としたとき、コイル支持部材１０の係合部１２２の総数Ｎと、係合部押し力Ｄと、非挿入部押し力Ｐとの間に、常に、Ｐ＜Ｎ×Ｄの関係式が成立するように、貯水容器３０の内周面とコイル４の外周面との隙間、コイル４の高さ寸法、係合部１２２の位置、非挿入部１３の材質、及び非挿入部１３の厚み寸法が選定されなければならない。ここで、選定とは、任意に選定した後にＰ＜Ｎ×Ｄの関係を満たすか否かを確認しながら選定し直す行為も含む。

　＜本実施形態の特徴＞
　（１）
　コイル支持部材１０では、挿入本体部１２１がコイル４の管４０同士の隙間に入るとき、第１係合部１２２ａ及び第２係合部１２２ｂが管４０と接触して撓みながら進入し、最終的にコイル内空間から管４０と対峙する。コイル支持部材１０は、管４０から離れる方向に移動しようとしても第１係合部１２２ａ及び第２係合部１２２ｂがその移動を阻止するので、管４０から外れることが防止される。
　（２）
　コイル支持部材１０では、第１係合部１２２ａ及び第２係合部１２２ｂの先端部分が円弧状であるので、第１係合部１２２ａ及び第２係合部１２２ｂの先端部分と管４０表面とが互いに滑りやすくなり、挿入本体部１２１が管４０同士の隙間に入り易くなる。また、第１係合部１２２ａ及び第２係合部１２２ｂが撓むとき付根部分に応力が集中するが、付根部分が円弧状に成形されているので応力が一点に集中することが抑制され、付根部分の損傷が防止される。
　（３）
　コイル支持部材１０では、第１係合部１２２ａ及び第２係合部１２２ｂが互いに反対の位置にあることによって、挿入本体部１２１の一方向への捩じれが防止されるので、管４０から外れ難くなっている。

　（４）
　コイル支持部材１０では、第１係合部１２２ａと第２係合部１２２ｂとがピッチＬ＝１０ｍｍだけ離れて位置するので、第１係合部１２２ａが先に撓み、第２係合部１２２ｂが遅れて撓むように挿入することが可能となり、挿入力のピークを低くすることができ、その分、挿入が容易になる。
　（５）
　コイル支持部材１０では、非挿入部１３、挿入本体部１２１および第１係合部１２２ａ及び第２係合部１２２ｂが高密度ポリエチレン樹脂で一体成形されているので、部品点数が低減されるだけでなく、フライス加工、打ち抜き成形、及び射出成形のいずれの方法でも製作できる。それゆえ、生産数量に応じて合理的な製作方法を選択することができる。また、高密度ポリエチレン樹脂は、軽量で適度の弾性を有するので管を傷つけ難い上に、飲料水・食品に対して悪影響がなく、給湯の高温水にも強く、長期間の水中浸漬に適している。

　（６）
　貯水容器組立体３では、コイル支持部材１０に、非挿入部１３の幅が狭くなるように先入端１３ｂに向かって傾斜させる傾斜部１３１が形成されることによって、組み込みの初期段階で、たわみ量が小さくなり削れが抑制されている。非挿入部１３の先入端１３ｂは第２傾斜部１３２によって先細形状になっているので、端部の一局に応力が集中するような撓みは抑制され、長期使用にも耐え得る。
　（７）
　貯水容器組立体３では、非挿入部１３を撓ませるために必要な力Ｐ１が１００Ｎ未満に設定されているので、作業者がコイル支持部材１０を撓ませながらコイル４を貯水容器に組み込むための作業が容易になる。

　（８）
　貯水容器組立体３では、コイル支持部材１０の係合部１２２の総数Ｎと、係合部押し力Ｄと、非挿入部押し力Ｐとの間に、常に、Ｐ＜Ｎ×Ｄの関係式が成立することを条件に、貯水容器３０の内周面とコイル４の外周面との隙間、コイル４の高さ寸法、係合部１２２の位置、非挿入部１３の材質、及び非挿入部１３の厚み寸法が選定されている。それゆえ、非挿入部１３に作用した力が反力として全ての係合部１２２に作用した場合でも、全ての係合部１２２の撓みに要する力の方が大きいので、コイル支持部材１０が管から外れることは防止される。

　＜第１変形例＞
　上記実施形態では、第１係合部１２２ａ及び第２係合部１２２ｂの形状を爪状に成形しているが、これに限定されるものではない。図７は、本実施形態の第１変形例に係るコイル支持部材の正面図である。なお、図７は、図４の係合部の形状が変更されているだけであるので、第１係合部および第２係合部以外の部位には図４で使用されている符号と同一の符号を使用し、説明を省略する。
　図７において、係合部１２２は、第１係合部１２２ｒと第２係合部１２２ｓとを含んでいる。第１係合部１２２ｒは、１つの挿入本体部１２１からその上下両側に隣接する開口１１の上側の開口１１に向かってへ突出し、第２係合部１２２ｓは下側の開口１１に向かって突出している。第１係合部１２２ｒ及び第２係合部１２２ｓともに、挿入本体部１２１との付根の幅が、先端までの高さより長い、いわゆる山形状を成している。このため、開口１１の開口面積は、上記実施形態の開口に比べて小さくなるが、第１係合部１２２ｒ及び第２係合部１２２ｓともに頂点と挿入本体部１２１との付根とを結ぶ斜面が緩やかになり、挿入本体部１２１が管４０同士の隙間に入り易くなる。

　＜第２変形例＞
　上記実施形態では、第１係合部１２２ａ及び第２係合部１２２ｂの突出方向はコイル４の長手方向に平行であるが、これに限定されるものではない。図８は、第２変形例に係るコイルとコイル支持部材の部分断面図である。図８において、第１係合部１２２ｕは、互いに隣接する管４０の間からコイル４の内周面ＳＦｉ付近に向かって斜め上方に突出している。また、第２係合部１２２ｖは、互いに隣接する管４０の間からコイル４の内周面ＳＦｉ付近に向かって斜め下方に突出している。この場合でも、コイル支持部材１０は、一旦、コイル４に装着されてしまうと、管４０から離れる方向に移動しようとしても第１係合部１２２ｕと第２係合部１２２ｖとがその移動を阻止するので、管４０から外れることができない。

　＜第３変形例＞
　さらに、図９は、第３変形例に係るコイルとコイル支持部材の部分断面図である。図９において、図９において、第１係合部１２２ｘは、コイル４の内周面ＳＦｉよりも内側から内周面ＳＦｉに向かって斜め上方に突出している。また、第２係合部１２２ｙは、コイル４の内周面ＳＦｉよりも内側から内周面ＳＦｉに向かって斜め下方に突出している。この場合でも、コイル支持部材１０は、一旦、コイル４に装着されてしまうと、管４０から離れる方向に移動しようとしても第１係合部１２２ｘと第２係合部１２２ｙとがその移動を阻止するので、管４０から外れることができない。

　以上のように、本発明によれば、コイル支持部材１０によって、コイル４の管４０同士の隙間が安定するとともにコイル４の外周面と貯水容器３０との内周面との接触も抑制されるので、給湯機だけに限らず、管が巻かれたコイル状の熱交換器が容器内に配置されるような機器に有用である。

３　貯水容器組立体
４　コイル
１０　コイル支持部材
１１　開口
１２　挿入部
１３　非挿入部
３０　貯水容器
４０　管
１２１　挿入本体部
１２２　係合部
１２２ａ，１２２ｒ，１２２ｕ，１２２ｘ　第１係合部
１２２ｂ，１２２ｓ，１２２ｖ，１２２ｙ　第２係合部
１３１　第１傾斜部
１３２　第２傾斜部

EP１９８３２８７Ａ１

Claims (10)

1. 　貯水容器（３０）内に配置される管を巻いたコイル（４）に装着され、長手方向に並ぶように形成された複数の開口（１１）及び前記開口（１１）を囲む部位によって、前記コイル（４）の管（４０）同士の接触を防止するとともに前記貯水容器（３０）の内周面と前記コイル（４）の外周面との接触を抑制するコイル支持部材であって、
   　互いに隣接する前記開口（１１）の間に形成され、前記コイル（４）に装着されるときに前記コイル（４）の外周面よりも径方向内側のコイル内空間に挿入される挿入部（１２）と、
   　前記コイル（４）に装着されるときに前記コイル（４）の外周面よりも径方向外側のコイル外空間に位置する非挿入部（１３）と、
   から成り、
   　前記挿入部（１２）は、
   　互いに隣接する前記管（４０）の接触を防止する挿入本体部（１２１）と、
   　前記挿入本体部（１２１）から突出し、前記コイル内空間から前記管（４０）に接触して前記挿入本体部（１２１）の挿入状態を維持する係合部（１２２）と、
   を有している、
   コイル支持部材（１０）。
2. 　前記係合部（１２２）の先端部分、及び前記係合部（１２２）と前記挿入本体部（１２１）との付根部分は円弧状に成形されている、
   請求項１に記載のコイル支持部材（１０）。
3. 　前記係合部（１２２）は、１つの前記挿入本体部（１２１）からその両側に隣接する前記開口（１１）の一方側へ突出する第１係合部（１２２ａ）と、他方側へ突出する第２係合部（１２２ｂ）とを含む、
   請求項１に記載のコイル支持部材（１０）。
4. 　前記第１係合部（１２２ａ）及び前記第２係合部（１２２ｂ）は、前記開口（１１）が並ぶ方向と直交する方向に所定距離だけ離れて位置する、
   請求項３に記載のコイル支持部材（１０）。
5. 　前記非挿入部（１３）、前記挿入本体部（１２１）および前記係合部（１２２）は一体成形されている、
   請求項１に記載のコイル支持部材（１０）。
6. 　高密度ポリエチレンで成形されている、
   請求項５に記載のコイル支持部材（１０）。
7. 　請求項１から請求項６のいずれか１項に記載のコイル支持部材（１０）と、
   　前記コイル（４）と、
   　前記貯水容器（３０）と、
   を備えた貯水容器組立体
8. 　前記コイル支持部材（１０）の前記非挿入部（１３）に、
   　長手方向の端面に近づくほど前記非挿入部（１３）の幅を狭くする方向に傾く第１傾斜部（１３１）と、
   　前記第１傾斜部（１３１）よりもさらに前記端面に近い位置から前記端面に至るまで前記非挿入部（１３）の幅を狭くする方向に傾く第２傾斜部（１３２）と、
   が形成されている、
   請求項７に記載の貯水容器組立体。
9. 　前記貯水容器（３０）の内周面半径Ｒと、
   　前記コイル（４）の中心軸から前記コイル（４）に装着された前記コイル支持部材（１０）の前記非挿入部（１３）の幅方向の自由端までを最短で結ぶ仮想最短寸法Ｓと、
   の寸法差Ｓ－Ｒに相当する撓みを、前記非挿入部（１３）の前記自由端に与えるために必要な力Ｐ１は、１００Ｎ未満である、
   請求項７又は請求項８に記載の貯水容器組立体。
10. 　前記コイル支持部材（１０）の前記係合部（１２２）の総数Ｎと、
    　前記コイル支持部材（１０）の前記挿入部（１２）が前記コイル（４）に挿入されるときに１つの前記係合部（１２２）を撓ませるために必要な係合部押し力Ｄと、
    　前記コイル支持部材（１０）の前記非挿入部（１３）の幅方向の自由端が前記コイル（４）の外周面に当たるまで押えるために必要な非挿入部押し力Ｐと、
    の間に、常に、Ｐ＜Ｎ×Ｄの関係式が成立することを条件に、
    　前記貯水容器（３０）内周面と前記コイル（４）の外周面との隙間、前記コイル（４）の高さ寸法、前記係合部（１２２）の位置、前記非挿入部（１３）の材質、及び前記非挿入部（１３）の厚み寸法が選定されている、
    請求項７から請求項９のいずれか１項に記載の貯水容器組立体。

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