WO2010007663A1

WO2010007663A1 - フィルタ複合体及びマスク

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Publication number: WO2010007663A1
Application number: PCT/JP2008/062736
Authority: WO
Inventors: 遠藤　光志
Original assignee: 坂本明
Priority date: 2008-07-15
Filing date: 2008-07-15
Publication date: 2010-01-21

Abstract

【課題】　有害物質を分解浄化させる機能と、有機化合物と無機化合物の有害物質を捕獲する機能の特化を講ずること、および呼吸に伴う吸気と呼気の生得的動作およびこの生得エネルギ利用を重視し、一貫した濾過作業のシステム化を図り、相乗効果を狙って、フィルタ複合体及びそのようなフィルタ複合体を利用したマスクを提供する。【解決手段】　マスクの呼気側と吸気側に、繊維素材の表面から深部に、カーボン微粒子とアナターゼ型チタニア微粒子とが均一に分散されてこれらの微粒子を含蓄せしめて形成された有機化合物分解浄化フィルタ１ｂ及び１ａを、備えると共に、それらのフィルタ１ａ及び１ｂの間に、吸気側のフィルタ１ａ側から呼気側のフィルタ１ｂ側に向けて、親水性化工を施した吸湿フィルタ２と、帯電性を施し、且つ撥水性を持たせた無機化合物捕獲フィルタ３の順に、備えられている。

Description

フィルタ複合体及びマスク

　本発明は、フィルタ複合体及びマスクに関する。

　１９１８年（大正８年）世界的に大流行したスペインかぜ、すなわちインフルエンザが、日本でも猖獗し、その頃からマスクが使われるようになったと、後述する非特許文献１に書かれている。これはマスクと風邪の予防が結びつけられたことになる。

　しかし、冷たい空気を直接吸い込んで鼻腔や口腔内の抵抗を低下させ、風邪をひきやすくすることは避けられても、マスクのガーゼをウィルスや細菌は、多数通過して鼻腔や口腔から体外に飛散したり、逆に侵入したりするのは事実であり、本質的な予防にならないとされている。

　そのため本発明者のうちの一人は、下記特許文献１において、特定のチタニア混合溶液を繊維素材（不織布状態のものを含む）に含蓄せしめた布状体が提案されており、そのような布状体によれば、カーボンの除電による吸着予防の効果で、そしてチタニア（酸化チタンのことで、以下チタニアと言ったり酸化チタンと言ったりする）のイオン効果で、有機物の分解機能、分解過程で生じる中間生成物の吸着機能、親水性機能、を積極的に利用して、光触媒反応の過程で生じる中間生成物の吸着除去機能、そして、空気中を浮遊する細菌類、病原菌ウィルスを始めとする有機物、有機化合物の有害ガス、などの分解機能と、無機物の塵埃の遮断機能を発揮できるという効果を得ている。
特許第３７７１２２７号小学館大日本百科事典ジャポニカ１６巻第２版（昭和５１年発行　７０２ページ参照）

　しかし、上記特許技術を用いて作られたマスクであっても、マスク着用で否めない呼気（口が接しているマスク面へ空気を吐く）に伴う湿度上昇で湿気抵抗による性能劣化と、水分の詰まりによる息苦しさが生じるという問題がある。そればかりでなく、悪臭が付きまとい、マスク着用を毛嫌いする問題さえあった。

　本発明は、これらの問題を解決するために、本発明者の一人が取得した特許技術の有害物質を分解浄化させる機能（上記特許文献１参照）に加えて、新たに有機化合物と無機化合物の有害物質を捕獲する機能の特化を講ずること、および呼吸に伴う吸気と呼気の生得的動作およびこの生得的エネルギ利用を重視し、一貫した濾過作業のシステム化を図り、相乗効果を狙って、フィルタ複合体及びそのようなフィルタ複合体を利用したマスクを提供せんとするものである。

　この発明の全体像を知るためには、本発明に至った経緯を説明する必要がある。そのため、該経緯につき、以下に詳述する。

　新型インフルエンザに変異する危険性が最も高いとされるウィルスの１つがＨ５Ｎ１型である。１９９７年に香港で１８人が感染、６人が死亡して大きな衝撃を与えた。世界保健機構（ＷＨＯ）の集計によると本年１月２１日現在、世界で３５１人が発症し、２１９人が死亡したが、「発展途上国などでは把握漏れの症例も多く統計の数値は氷山の一角」と専門家は指摘している。

　人類がこの脅威に直面するのは初めてでなく、前述のスペインかぜを含めて２０世紀に３回発生している。１９５７年にアジアかぜ、１９６８年には香港かぜが大流行した。何れも鳥インフルエンザが変異したものだが、Ｈ５Ｎ１型は過去の新型に比べても毒性が極めて強く、発生すれば未曾有の被害を引き起こす可能性が高い。スペインかぜの場合、人で流行するまでに必要だった遺伝子を構成するアミノ酸の数で約１０個である。国立感染症研究所では「Ｈ５Ｎ１型は既に４、５個のアミノ酸が変異した」と説明している。

　他方、新型インフルエンザの被害想定は、阪神大震災の死者数や首都圏直下地震の想定を数倍から百倍も上回る。この想定は致死率をスペインかぜと同じ２％と仮定したもので、実際の犠牲者はさらに膨らむ可能性がある。そもそも海外の国々が新型インフルエンザ対策を「国家の安全保障」として取組んでいるのに対し、日本はあくまでも公衆衛生という行政レベルの側面が残ったままである。

　「新型インフルエンザの発生自体は、誰にも止められない。だが、備えを万全にすることで、被害は大きく軽減することができる。」と日本経済新聞２００８年１月２３日、朝刊３１ページでは、このように記している。

　厚生労働省のホームページでも、インフルエンザ予防はマスク着用が重要と説明している。現状では新型インフルエンザは出現していないが、出現した場合もインフルエンザと同様な経過を辿ると指導している。

　マスクの着用は、環境衛生上、安全衛生上日本のみならず欧米文化にも浸透している。濾過性、生産性、コスト性から化学繊維の不織布が主流を占めているが、花粉症予防からマスク装着者が増え、装着の不快感が問題視されるようになっている点は見逃すわけにはゆかない。

　これは、実際マスク着用で否めない問題であり、多湿化に伴う抵抗増加による息苦しさとマスク性能の劣化があること、他方睡眠中など長時間の着用が困難とする人、毛嫌いする人も少なくない。

　特に、呼吸に伴うマスク自体のグショグショ感は不快であり、鳥インフルエンザ対策に万全を期すためには、長時間着用に絶え得ることと、着用習慣を植え付けるため、そして緊急事態に備えるためにも、低コストで不快感を解消する製品の技術開発が急務となった。

　性能面では、ウィルス対策と称して光触媒酸化チタンや銀イオンを、口元側とは反対側のマスク表面のみに加工して、製品化している例が数々見受けられ、大きく進歩している。

　しかし、外気に触れるマスク表面に対する対応だけで、口元側のマスクの表面に装着者から飛散する病原菌の付着、セキ、クシャミによる飛沫の付着、さらに口臭の付着に対する処理技術や使用済みの汚染したマスクの無害化処理技術に考えが及んでおらず短絡的な考えが否めない問題も軽視できない。

　マスク自体の使用実態を考えると、保菌者の使用したマスクの方が、汚染の程度は予防用に使用したものより遥かに高く、２次的感染災害のポテンシャルがはるかに大きい点、解消しておくことが緊急的課題である。

　鳥インフルエンザ（高病原性鳥インフルエンザＨ５Ｎ１型）では、人から人への感染に注目されている点、パンデミックの心配から放置できない問題であり、先ずはマスク着用に対する不快感を軽減し、すなおに受け入れられるように改善したものを開発し、確実な機能と性能を有するマスクを、家庭のみならず人の集まる場所や公共機関には常備しておく必要性が叫ばれ始めた。その１つの理由は、薬には有効期限があるがマスクにはない点にある。

　特に、感染者と接触する可能性の高い検疫官や感染症指定病院の医師、税関職員、その他の医療従事や警察官、国会議員、国際航空機等乗務員、救援活動の主役となる自衛隊員、ライフライン維持者、情報通信など社会機能維持者には必需品となる。備えあれば患えなしの言葉のように、「ふだんの準備があれば、万一の事態が起きても心配しないですむ」は重要である。

　予防面では、吸入する空気から受ける障害を避けるために、あるいは咳、クシャミ、談話時の痰や唾の飛沫による病原菌の放出作用を防ぐために用いられる。

　風邪の予防としては、冷たい空気を直接肺に吸い込み肺の冷却作用を予防したり、低温低湿の環境下では、呼吸によるマスク繊維の湿り気で刺激を和らげ、症状の悪化作用を予防したりするには、極めて有効である。しかし、不織布が主流を占める化学繊維系のマスクでは、呼吸に伴い水滴が生成されるので、程好い湿り気を得ることは困難である。

　何れの予防用途でも長時間の使用では、呼吸により、温まり、水滴が形成されると細菌類の繁殖を助長することになる。

　細菌類の増繁殖条件が、温度、湿度、栄養であり、３０～５０℃、相対湿度９５％以上が最適条件とされている。この最適条件が整った着用中の呼気側（息を吐く側）のマスク表面は、さらに捕獲された有機物の浮遊塵埃が栄養源であり、細菌類が増繁殖を続ける場となっている。

　口臭の悪臭化の原因も細菌類の増繁殖によるものだとする意見が圧倒的に多い。

　ウィルスは、動植物や細菌類の細胞の中に寄生しているため、マスクによる単独での遮断は不可能である。細菌類の増繁殖を無くす環境整備の配慮が必要となっており、微生物を始めとする有機物は、マスク上で分解浄化してしまうことが重要な課題である。

　捕獲した細菌類の増繁殖問題と水滴の詰まりによる息苦しさが伴う問題が提起されている他、呼気に伴う問題として、口臭の付着がある。

　口臭も有機化合物の分子であり、化学結合によりマスク素材に容易に付着し蓄積した結果、悪臭と化し、１時間もしない内に不快感が溢れるなど、マスク装着に毛嫌いとなって現れ、装着の口臭を原因とする抵抗感を示す人が多い。

　特に、使い捨てであるが故に、マスク表面に細菌類が付着し、増繁殖を続けているままでの廃棄は、二次汚染、二次感染の可能性を持っており、環境汚染対策としての技術が強く要求されている。

　これらの問題が動機となり、水滴によるグショグショ感から解放され、吸気側（マスクで言えば息を吸う時のマスク外表面側）と呼気側双方に有機化合物分解機能を持つ特化した濾過構成を考えるに至った。

　酸化チタンは、近年有害な有機物を太陽などの自然光に含まれる紫外線エネルギで分解浄化できるメリットから、細菌類の分解浄化、ハウスシック症候群や化学物質過敏症問題で原因となるトルエンやＶＯＣガスなどの分解浄化技術は、広い範囲での用途が報告されている。

　例えば、特開２０００－２０２０５２号、特開２００２－３６９８８９号や特開平１１－３３２９６２号に開示されるように抗菌、脱臭機能を備えるために、マスク本体に二酸化チタンの光触媒を付着加工させ、吸気と呼気の区別ないマスクが提案されているが、これらの構成では、マスク装着によるグショグショ感から、マスク着用の毛嫌いの原因を作っており、長続きしない原因にもなっている。このような現実では、新型鳥インフルエンザの予防の足かせになることは、目に見えている。

　以上のような問題点の洗い出しにおいて、本発明に至る技術的課題は、マスク装着中に生じる水滴による不快感と性能低下の予防機能を持たせること、及び、吸気乃至呼気動作の生得的エネルギで有機物と無機物の有害物をそれぞれ一貫した双方向濾過と処理する機能を持たせることの双方にあることが明確となり、これらの双方を解決できる構成を創案することによって、精神衛生、環境衛生及び環境保全に優れたマスクの開発に至った。それと共に、該マスクの開発から始まって、医療用の手術衣、防塵衣、長期間の病床患者の肌着、オシメ類、エアコンディショナのフィルタ等の、状態及び室内の換気に使用される、双方を濾過する構成をも提供できるものとなったのである。特に高齢化が進み、寝たきり老人の抱える問題の１つは、床ずれとその化膿菌による炎症が切り離せない問題となってくるので、オシメや肌着類は有害物の分解浄化機能を持たせる必要が生じてくる。

　そのために、先ずマスクで処理する対象が、水分、有機化合物、無機化合物で、それぞれ捕獲作用が異なること、及び、呼吸における呼気と吸気の作用が、それぞれ異なること、に着眼し、主として呼気側は、水分と細菌類や口臭の元となる有機化合物を対象に、吸気側は、黄砂など浮遊する無機化合物と浮遊する有機化合物塵埃、ＶＯＣガスなど有害ガスを対象にし、それぞれを特化処理する一貫した機能を持たせてシステム化することを図ったのが本構成である。

　何層かにわたる各フィルタは、特化処理するよう、それぞれ帯電機能と除電機能を持たせて、撥水性化加工、親水性化加工を施し、物理的性質を積極的に利用したものである。

　その構成は、親水性及び撥水性作用を利用しながら水分の蒸発速度を上げ、また親水性作用により捕獲機能を高めると同時に、光触媒反応の分解浄化を中心とする化学的作用を、有機化合物に対して作用せしめ、さらに無機化合物については、機械的な引掛り作用を主とする濾過だけに留まらず、帯電特性を利用して素早く捕獲する物理的作用を利用するというものである。

　先ず、呼気に含まれる水分は、親水性化工を施したフィルタ表面にごく薄い膜を作り、さらに蓄積され飽和状態に達すると、帯電性を施し撥水性を持たせたフィルタ表面に水滴を形成する。水滴はやがて飽和状態に達し、親水性化工を施した吸湿フィルタに素早く移動し、ここから蒸発作用が限りなく続くので、蒸発速度が著しく向上し、親水性化工を施したフィルタ表面は程好い湿り気を得ることができるようになる。

　本発明のマスクとしての構成は、マスク着用で否めない、呼気による湿度上昇に伴い湿気抵抗が増大することによって起こる性能劣化と、水分の詰まりによる息苦しさ、さらに黄砂などの塵埃、細菌類や悪臭問題、これらの問題を解決するために、有害物を無機系と有機系に考え方を分け、これらをそれぞれが捕獲処理するための特化した構成について、考え抜いたものである。

　ある空間を仕切るバリアとして使用された場合に、そのバリアの最外層と最内層（マスクで言えば吸気側と呼気側）の双方向に、有機化合物を分解浄化するフィルタ層を、それぞれ設け、それらのフィルタの間に、最外層側から最内層側に向けて、水分を積極的に吸収するための、親水性化工を施した吸湿フィルタと、無機化合物を捕獲するために、帯電性を施し且つ撥水性を持たせた無機化合物捕獲フィルタの順に、備えることで、例えば、マスクの構成で言えば、呼吸に伴うこの動作と生得的エネルギをベースに、水分捕獲と蒸発、有害物質の捕獲と分解浄化の、一貫した処理が、可能な構成を提供したものである。

　そのうち、バリアの最外層と最内層に備えられた上記有機化合物分解浄化フィルタ層は、上記特許文献１に示された、優れた捕獲効率と分解効率、さらに安全性重視を特徴とした酸化チタンとカーボン微粒子が含蓄された、換言すれば、繊維素材の表面から深部に、カーボン微粒子とアナターゼ型チタニア微粒子とが均一に分散されてこれらの微粒子を含蓄せしめて形成された有機化合物分解浄化フィルタを用いるものとする。すなわち、チタニア混合溶液を、特定の圧力で吹き付けて、繊維素材に圧入し、水分を蒸発させて、該繊維素材に形成されたチタニア膜を備え、且つこのチタニア膜内にカーボン微粒子とアナターゼ型チタニア微粒子とが均一に分散されており、上記繊維素材の表面から深部に、上記の２つの微粒子を含蓄せしめて形成されたフィルタを用いることが、後述する実施例に示されるように、有機化合物分解浄化作用のあるフィルタとして用いられることになる。尚、上記特許文献１では、カーボン微粒子とアナターゼ型チタニア微粒子とをバインダの役目をするアモルファス型チタニア水溶液に分散せしめて得られたチタニア混合溶液を、ガンで５～７Ｋｇ／ｃｍ^２の圧力で吹き付けて、繊維素材に圧入し、水分を蒸発させることにより、該繊維素材に形成されたチタニア膜を備え、且つこのチタニア膜内にカーボン微粒子とアナターゼ型チタニア微粒子とが均一に分散されており、上記繊維素材の表面から深部に、上記の２つの微粒子を含蓄せしめた布状体（マスクを含む）の構成が特許されている。

　しかし、上記特許文献１の構成におけるカーボン微粒子の役割は、有機化合物の分解浄化中における中間生成物を吸着するだけで、有機化合物の分解浄化の本来的作用は、酸化チタンが担っている。そのようなことは、本発明者の実験により確認された。そのため、本発明のフィルタ複合体の別発明として、
　ある空間を仕切るバリアとして使用された場合に、そのバリアの最外層と最内層に、繊維素材の表面から深部に、アナターゼ型チタニア微粒子が均一に分散されてこの微粒子を含蓄せしめて形成された有機化合物分解浄化フィルタを、備えると共に、
　それらのフィルタの間に、最外層側から最内層側に向けて、親水性化工を施した吸湿フィルタと、帯電性を施し、且つ撥水性を持たせた無機化合物捕獲フィルタの順に、備える構成についても提案する。

　以上の説明から明らかなように、本発明者等は、鋭意研鑽の結果、以下に示す構成からなるフィルタ複合体を発明するに至った。

　すなわち、本発明に係るフィルタ複合体は、
　ある空間を仕切るバリアとして使用された場合に、そのバリアの最外層と最内層に、繊維素材の表面から深部に、アナターゼ型チタニア微粒子が均一に分散されてこの微粒子を含蓄せしめて形成された有機化合物分解浄化フィルタを、備えると共に、
　それらのフィルタの間に、最外層側から最内層側に向けて、親水性化工を施した吸湿フィルタと、帯電性を施し、且つ撥水性を持たせた無機化合物捕獲フィルタの順に、備えたことを基本的特徴としている。

　また上述の様に、酸化チタンにより、有機化合物の分解浄化中に、中間生成物ができるが、それを効率よく吸着させるために、カーボン微粒子が用いられるとなお良い。そのため、２つ目の発明として、
　ある空間を仕切るバリアとして使用された場合に、そのバリアの最外層と最内層に、繊維素材の表面から深部に、カーボン微粒子とアナターゼ型チタニア微粒子とが均一に分散されてこれらの微粒子を含蓄せしめて形成された有機化合物分解浄化フィルタを、備えると共に、
　それらのフィルタの間に、最外層側から最内層側に向けて、親水性化工を施した吸湿フィルタと、帯電性を施し、且つ撥水性を持たせた無機化合物捕獲フィルタの順に、備えたフィルタ複合体の構成について提案する。

　上記構成では、２つの有機化合物分解浄化フィルタの間に設けられる、吸湿フィルタと無機化合物捕獲フィルタについては、上述のように、最外層側から最内層側に向けて、上記吸湿フィルタと、無機化合物捕獲フィルタの順に、これらのフィルタが設けられる必要がある。

　これらの各フィルタの構成が必要な理由と、これらのフィルタ層が特定の順序に並んでいなければならない理由について、マスクの構成を例にして再度確認すると、次のようになる。

　空気中を浮遊する有害物や体内から排出される有害物には、有機化合物と無機化合物が存在する。各々性格や捕獲後の作用が異なるため、濾過の考え方を考慮しなければならない。また、有機化合物を代表する細菌類やＶＯＣガスは、吸気に伴い容易に体内に侵入する点と、細菌類を始めとする微生物は、増繁殖の傾向を示すので、より一層の考慮を要する。

　マスク表面に付着した細菌類がそのまま廃棄された場合など、環境汚染予防も技術的には対応しておくことも、極めて重要になので、次の点が原則となる。

　ＶＯＣガスやウィルスが寄生する細菌類は、体内に侵入する一歩手前で捕獲し、分解浄化しなければならない。一方、保菌者の呼気や、クシャミ、セキからは、大量の細菌類が放出されるので、空気中に飛散される１歩手前で捕獲し、分解浄化しなければならない。さらに、使用済みの廃棄品に対しては、細菌類を皆無にしておかねばならない。

　有機化合物分解浄化フィルタの層は、主として有機化合物塵埃を対象としている。マスク表面が活性化するよう分解浄化機能並びに除電機能を設けることを考え、マスク装着者の吐く息に含まれる水分や口臭の蓄積による不快感から解放されるよう、水分の蒸発速度を上げる効果のある、親水性加工を施した上に酸化チタン等を含蓄させた。

　中間に介在する１つのフィルタは、主として無機化合物の捕獲を対象としている。そのフィルタに至る前の段階の有機化合物分解浄化フィルタ層を通過してしまった１部の有機化合物について、さらに積極的に捕獲させるために、帯電性及び撥水性加工を施している。撥水性であるが故の問題として、該フィルタ層には水滴ができる。これはむしろ積極的に水滴を形成させ、該フィルタ層に隣接させた、親水性加工を施した吸湿フィルタ層に吸収させる目的を持たせたものであり、この２つのフィルタ層がこの順序で並ぶことによって、集中的に蒸発を促進させる狙いがある。

　特に、最外層と最内層の有機化合物分解浄化フィルタ層と、吸湿フィルタ層との、親水性効果は、マスク自体に水滴が形成される現象を排除し、冷気刺激緩和を目的とした、程好い湿り気が得られることになる。

　この程よい湿り気は、黄砂の捕獲と、黄砂に含まれる大気汚染物質の分解浄化に一役買っている。地球温暖化による気候変動が１つの要因されている中国大陸の砂漠化現象で、近年、黄砂が日本列島に降り注ぎ、年々増加の傾向にある。注意しなければならない問題は、黄砂には大量の大気汚染物質が含まれている点であり、硫黄酸化物や二酸化珪素がその代表である。特に二酸化珪素の含有量は６０％を占め、発癌性物質である点、要注意事項であり、完全に捕獲する必要がある。黄砂の大きさは約３μｍであり、程よい湿り気を持ったこのフィルタで容易に捕獲することができ、黄砂に含まれた硫黄酸化物や窒素酸化物は、最外層と最内層の有機化合物分解浄化フィルタの段階で捕獲されたときに、分解浄化される。

　上記無機化合物捕獲フィルタを通過した有機化合物塵埃は、さらに２段目の有機化合物分解フィルタ層により、分解浄化させる必要があり、複数回通過させるように考えた。

　さらに、シックハウス症候群の原因とされるＶＯＣガスは、吸気と共に呼吸器官に入り込み、障害をもたらす。有機溶剤の蒸気比重は、空気より重いため、マスクを通して侵入する場合は、上を向いている時の方が可能性が高く、睡眠中は要注意である。そのため、同様に有機化合物分解浄化フィルタを複数回通過させることを本発明の基本事項としている。

　環境保全上では、有害物質を吸気および呼気の双方向で、捕獲する機能と分解浄化する機能とを併せ持たせ、マスク表面に付着した細菌類、その排泄物や死骸までを分解浄化させることで、廃棄後の環境汚染など、２次災害の予防を考えている。

　マスクの全体的構造は、マスク着用自体が１つの文化であることを重視し、簡単に使用でき、安価に完成され、一般的に普及した形体から逸脱しないように、計量且つシンプルにまとめるように、前述のフィルタ類の他、布状態で作られた補強材、サイドリボン、フィット感を補う芯がね、耳にかける２本のゴムひもで構成するように考えている。また装着後は、顔の一部を覆うため美的なデザインも重要であるが、上記の理由を優先した。

　呼気と吸気の生得的エネルギに基づく、このようなマスクの考えから出発したフィルタ複合体の構成を、ある空間を仕切るバリアの構成として考えた場合に、空間を仕切るバリアの内側と外側の層に、即ち、そのバリアの最外層と最内層に、繊維素材の表面から深部に、カーボン微粒子が均一に分散されて（上述の様にアナターゼ型チタニア微粒子も一緒に均一分散される構成の場合もある）これらの微粒子を含蓄せしめて形成された有機化合物分解浄化フィルタを、備えると共に、それらのフィルタの間に、最外層側から最内層側に向けて、親水性化工を施した吸湿フィルタと、帯電性を施し、且つ撥水性を持たせた無機化合物捕獲フィルタの順に、備えるという、本発明の構成は、例えば、鳥インフルエンザなどの病原菌の蔓延した環境下で、そのシールド層として用いられる場合でも、同様な構成とする必要があると考えられる。

　例えば、程度の差はあるが、皮膚呼吸についても、以下のような例が考えられる。医療関連業務に付かれている医師の内、長時間にわたる手術室の医師達は、伝染、感染予防の目的で手術衣を着用される。特に、執刀を受けた患者の細菌汚染予防はもとより、長時間に渡り集中力を限界まで高め、執刀される執刀医には、患者の持つ細菌類に対する予防と、汗によるグショグショ感は、マスク同様の本発明の基本的な構成で対応可能である。

　さらに寝たきりの患者や最近急激に増え、今後も益々増加が叫ばれる老人の床ずれ問題は、化膿菌による炎症予防として、また肌着に対する対応でも、上記本発明の基本構成が、解決手段として有効である。

　室内では、汚染空気を新鮮な空気と入れ替える手段、また温度調整手段として、換気口が設けられている。人数の多い居室ではこの換気口を設け、一人あたり、３０ｍ^３／時間の換気量を、またシックハウス予防としては０．５回／時間の換気回数を求めるなど、状態に応じて強制換気が法令で義務付けられている。

　硫黄酸化物や窒素酸化物あるいは黄砂が著しく増加している昨今の汚染外気、或いは新建材に含まれるＶＯＣガスや、老人ホームなど悪臭を含む汚染空気は、室内換気口を設けるだけでは済まない状況下にあり、マスク同様の無機物と有機物とを区分した有害物質の処理が重要である。

　また、エアコンディショナでも、吸気口と排気口に、それぞれ同様な解決手段で望むことが重要条件になる。特に四季を通じて、エアコンディショナの内部にはカビが発生するので、軽視できない。

　塵埃清浄度や温湿度のハイレベルな制御を必要とする、半導体等製造用クリーンルームでは、空気調和システムにおける室内エアーを再処理する内調機、外気を処理する外調機、何れも上記本発明の基本構成が、その解決策として巧を奏する。特に、ウェハは、細菌によるシミとなって現れ、歩留まりを大きく左右する原因になっているので、細菌類の対策が、品質安定化と不良低減に結び付くことになる。

　本発明の構成によれば、マスクとして使用された場合は、装着中に生じる水滴による不快感と性能低下の予防機能を持たせ、吸気および呼気動作の生得的エネルギで有機物と無機物の有害物を夫々一貫した双方向濾過機能を持たせることができると共に、特定領域の衛生状態を良好に保つシールド層として使用される場合（フィルタ複合体として使用される衛生的に使用されるタオル、雑巾、或いはカーテンなどの狭い意味を含むほか、さらにこのフィルタ複合体を環境のバリアとして単に用いたり、或いは任意の加工を施して使用するものも含む）は、シールド層の内と外で不快感を感じさせず、性能低下の予防機能を持たせ、水滴の滞留による細菌類などの増繁殖を助長させない、という優れた効果を奏し得ることになる。

　そのうち、マスクとして用いられる構成では、悪臭、グショグショ感から解放され、冷気刺激緩和で重要な適度な湿り気を保持する従来にない効果が達成でき、マスク着用の毛嫌い問題を解決に導き、日常生活をはじめ、睡眠中にも不快感なく着用できると同時に、飛躍的に向上させることができた有害物質の捕獲性能が、相乗効果として得られる特徴を併せ持つことになる。

　このようなマスクの構成を含むシールド構成は、鳥インフルエンザ、黄砂を始めとする安全衛生及び環境保全に、特に優れた効果を発揮する。

本発明のコンセプトを示す双方向濾過のシステムの概念図である。本発明の構成が用いられたマスクの説明図である。上記マスクの断面構成を示す断面図である。本発明マスクと従来のノーマルマスクとの水分蒸発比較をした試験結果を示すグラフである。本発明のマスクによる抗菌試験結果を示すグラフである。本発明のマスクによるアルデヒドの分解試験結果を示すグラフである。

符号の説明

　　１ａ、１ｂ　　　有機化合物分解浄化フィルタ
　　２　　　　　　　吸湿フィルタ
　　３　　　　　　　無機化合物捕獲フィルタ
　　４　　　　　　　マスク本体
　　５　　　　　　　補強材
　　６　　　　　　　芯がね
　　７　　　　　　　ゴムひも
　　８　　　　　　　サイドリボン

　以下、本発明の実施の形態を、次の図示する例と共に説明する。

　本発明のフィルタ複合体をマスクの構成として用いた場合の、一実施形態につき、図１の概念図を参照しながら詳述する。勿論、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

　本発明の構成によって達成される双方向濾過システムとは、口腔や鼻腔から排出される水分を積極的に蒸発させること、咳、痰に含まれる細菌類の有害物質と口臭の捕獲と分解浄化処理をした後清浄化空気として、空気中に放出すること、外気から取り込まれる汚染空気に含まれる有害物質の捕獲と分解浄化をした後、無害化した清浄空気を取り込むこと、同時に使用済み品を無害化した廃棄物とすることを、一貫システムとして処理するプロセス（方法としての意味ではない）技術である。

　図１は、本発明の構成が用いられたマスクの構造をフィルタ毎に分離して示した説明図である。

　同図に示すように、人間の口腔及び鼻腔をその外界から仕切るバリアとしてのマスクに使用された場合に、バリアの最外層をマスクの吸気側とし、バリアの最内層をマスクの呼気側とすることになる。

　そして、その呼気側と吸気側に、繊維素材の表面から深部に、カーボン微粒子とアナターゼ型チタニア微粒子とが均一に分散されてこれらの微粒子を含蓄せしめて形成された有機化合物分解浄化フィルタ１ｂ及び１ａを、備えると共に、それらのフィルタ１ａ及び１ｂの間に、吸気側のフィルタ１ａ側から呼気側のフィルタ１ｂ側に向けて、親水性化工を施した吸湿フィルタ２と、帯電性を施し、且つ撥水性を持たせた無機化合物捕獲フィルタ３の順に、備えられている。

　吸湿フィルタ２と無機化合物捕獲フィルタ３は、有機化合物分解浄化フィルタ１ａ、１ｂの中間に配置し、呼吸で排出される炭酸ガスを始めとする息と吸気プロセスの空気との流れを示している。体内から排出される息に含まれる多量の湿気は、マスクを通過する過程で、自然に吸湿フィルタ２に集められ、有害物を含む、吐かれた息は、マスクを通過する過程で、有機化合物分解浄化フィルタ１ａ、１ｂで処理されて空気中に放出される。

　外気から取り込まれる汚染された空気は、分解浄化された後、さらに無機化合物捕獲フィルタ３で処理されて、体内に取り込むことができる。

　フィルタ層の親水性化工、撥水性加工、酸化チタン等の含蓄加工、等の各処理、及び吸湿フィルタ２の設置など、複数の要因が重なることによって、それらがもたらす効果の和以上の相乗効果を提供することができる。

　有機化合物分解浄化フィルタ１ａ、１ｂの表面は薄い水の膜が形成させることが功を奏するものであり、相乗効果として狙う有機化合物の捕獲率と分解浄化作用の向上を図るために、重要な構成要素となった。

　特に、悪臭の元になる口臭と細菌類増繁殖の予防に、相乗的に作用し、特筆すべき長所となった。

　体内から排出された汚染された息は、有機化合物分解浄化フィルタ１ｂを通過する過程で、口臭や細菌類が捕獲されると同時に、光触媒作用のイオン化効果により分解浄化されるし、痰や唾も同様な工程を経て処理されれてゆく。ここを通り抜けた微細な無機化合物は、無機化合物捕獲フィルタ３で捕獲され、さらに有機化合物は、有機化合物分解浄化フィルタ１ａで処理されて、清浄度を上げた状態で空気中に放出される。

　さらに外部からの汚染された空気は、有機化合物分解浄化フィルタ１ａ、無機化合物捕獲フィルタ３で捕獲すると同時に、同様なプロセス処理を経て無害化され、取り込むことができる。

　特に、有機化合物の内、有機化合物分解浄化フィルタ１ａで処理しきれなかった有害なガスは、無機化合物捕獲フィルタ３を通過し、さらに有機化合物分解浄化フィルタ１ｂと、複数段構えのプロセスを経て処理される。

　有機化合物の捕獲から分解浄化の工程で捕獲効率と分解効率向上に大きく効果をもたらす新たな発見は、有機化合物分解浄化フィルタ１ａ及び１ｂの表面状態が湿り気を持っている状態に加工処理されていること、この表面状態は有機化合物が分解浄化されるまで、そこに保持する力となっている点にある。ここで各フィルタは、化学繊維、木綿、紙繊維の単独、または混紡の布状態である。

　図２は、マスク全体の総組立図である。４はマスク本体であり、５は補強材、６は芯がね、７はゴムひも、８はサイドリボンを、各示す。

　図３は、マスク本体４の断面図である。２は吸湿フィルタ、３は無機化合物捕獲フィルタ、１ａ及び１ｂは吸気側と呼気側の有機化合物分解浄化フィルタで、夫々構成されている。各フィルタ間は、基本的には、熱圧着方式で組み立てられる。

　有機化合物分解浄化フィルタ１ａ及び１ｂの間に配置した、無機化合物捕獲フィルタ３は、主として無機化合物の塵埃を捕獲することを目的としている。

　用途に応じて複数枚重ねられるように考え、要求される捕集効率に容易に対応できるようにした。実際には、約抵抗値１０ｇ／ｃｍ^２のフィルタを２枚重ねて、粒径約０．３ミクロンを捕集効率９７％にしたり、また睡眠など長時間の使用に適合するように、１枚で組み立てたりすることも可能にした。

　芯がね６は、軟鉄製の薄板状であり、防錆のためポリエチレン被覆で密着させ衛生上の配慮をした。機能的には、顔の凹凸にフィットするように仮装着後（両ゴムひも７を耳に掛けた状態）、親指と人差し指で摘むように鼻を押さえ、同時に片方の手で、マスク本体４の下部を顎の下部に引き摺り下ろして、マスク本体４を装着できるように、該マスク本体４は、蛇腹構造をとっている。尚、芯がね６の部分を覆っている補強材５は、マスク本体４の上部からの漏れを防ぐ目的で設けた。

　この蛇腹構造は、有機化合物分解浄化フィルタ１ａ、吸湿フィルタ２、無機化合物捕獲フィルタ３、有機化合物分解浄化フィルタ１ｂを一体整形し、鼻口とマスクとの間に程好い空間を形成しつつ、両サイドから漏れが生じないように、両サイドに設けたサイドリボン８の強制力で矯正し、絞りを形作るように考え、マスキング効率と装着時の不快感を軽減することが可能となった。

　呼吸器系に障害を持つ人は、冷気緩和の対応策の１つとして、マスクを着用して睡眠をとることが一般的ある。マスク自体が、湿気を吸収し、飽和状態のひどくぬれた状態になり、不快感を訴える問題と非衛生的である問題は、先にも述べた通りである。有機化合物分解浄化フィルタ１ａ及び１ｂは、親水性加工を施した上に、呼吸による湿気が成長して水玉を作らないように、親水性に富む吸湿フィルタ２を介在させ、蒸発を促進させたため、不快感を軽減し、巧を奏した。

　空気中を浮遊する塵埃等は、帯電した状態である。特に、湿度の低い地域、冬季ではこの傾向は著しく、吸い付けられようにして吸着する。マスクでは、吸気の力以外で、浮遊している塵埃を積極的に集める必要は全くない。このようなことから、マスク表面は帯電しないように除電しておく必要がある。

　有機化合物分解浄化フィルタ１ａ及び１ｂに含蓄した酸化チタンの微粒子等の微粒子が、放電現象を起こすと同時に、紫外線下では表面の空気がイオン化するため、一層効率よく除電作用を発揮する。

　この除電作用は、有機化合物分解浄化フィルタ１ａ及び１ｂの表面を親水性化する作用ともなり、水分の蒸発速度を上げ、一層の不快感軽減に繋げることができた。

　図４に、一般的に使用されている親水性、撥水性を無視したノーマルマスクと、フィルタ複合体構成を有する本発明マスクで水分の蒸発効果を比較した結果を示す。水分は、０．５ｃｃの水を表面に含ませ、２５℃のクリーンベンチ内で自然蒸発させ、重量変化を時間経過で比較した。

　前者のノーマルマスクは、水滴が形成された状態であるが、後者の本発明マスクは、水滴を作らず、ぬれた状態で、全面を薄い水の膜で覆った状態を示す、違いがある。蒸発速度は、著しい差があり、発明マスクは、ノーマルマスクに対して、２０倍以上の乾燥速度がある。

　また、試作した本発明の、マスクの抗菌特性と、加齢臭の原因とされるガスクロマトグラフィによるアセトアルデヒドの分解試験を、さらに実施した。図５は、本発明マスクの抗菌特性を評価した結果を示す。

　使用した菌は、ＭＲＳＡ（ＡＴＣＣ３３５９２）、サルモネラ菌（ＡＴＣＣ１３１１）、大腸菌（ＡＴＣＣ８７３９）の三種類であり、各試験菌を、ソイビン・カゼイン・ダイジェスト寒天培養地に移植した後、３０～３５℃で、１８～２４時間ほど培養した。

　前培養終了後、滅菌済み１／５００普通ブイヨン培地（ＰＨ７.０～７．２）に懸濁し、約１．０～１０×１０^５ｃｆｕ／ｍＬの試験菌調整を行った。

　試験方法は、マスクを実際に使用し、５０×５０ｍｍに切断後、その表面上に、調整済みの試験菌を、０．５ｍＬを接種した。３５℃に設定した恒温槽内で、ブラックライト１．０ｍＷ／ｃｍ^２に設定して、接種後０分、１分、５分、３０分、６０分後の生残菌数を測定したものである。

　サルモネラ菌とＭＲＳＡは、接種直後１分から分解作用が始まり、５分後には、サルモネラ菌は９８％、ＭＲＳＡは７０％、大腸菌は３６％の分解を示した。　さらに、３０分後には、サルモネラ菌と大腸菌は、ほぼ９９～１００％分解され、１時間後では、サルモネラ菌、大腸菌、ＭＲＳＡは１００％の分解を示した。

　この結果から、マスク装着後直ぐに細菌類の分解浄化が始まり、安全衛生面では注目に値する。また、１時間後、１００％の分解を示した結果は、廃棄処理品に対して、２次伝染、２次汚染が完全に予防できる環境保全に貢献できる見通しを得ることができる結果となった。

　図６は、アセトアルデヒドの分解効果を、酸化チタンの有無によって比較する試験を実施した際の試験結果を示すグラフである。

　試験方法は、光触媒性能評価試験法ＩＩＡガスパックＡ法により、クリーンベンチ内に、ブラックライト１．０ｍＷ／ｃｍ^２に設定して、酸化チタン処理した試験片と未処理試験片を、０分、５分、１０分、３０分、６０分で、それぞれガスクロマトグラフィで濃度変化を測定した。

　処理品の効果は著しく、５分後には７０％に、３０分後には、ほぼ１００％分解されている。これに対し、未処理品は、約数％の濃度低下が見られるが、これは、アセトアルデヒドの分子がテトラパックの内面に付着したためと考えられる。

　尚、本発明のフィルタ複合体は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。

　本発明者の実験によれば、有機化合物分解浄化フィルタとして、カーボン微粒子について、アナターゼ型チタニア微粒子と一緒に均一分散されていないフィルタの構成であったとしても、均一に分散されたアナターゼ型チタニア微粒子により、有機化合物の分解浄化作用が十分あることが確認されている。もちろん、そのようなフィルタ複合体を製造するために、有機化合物分解浄化フィルタとして、チタニア混合溶液を、特定の圧力で吹き付けて、繊維素材に圧入し、水分を蒸発させて、該繊維素材に形成されたチタニア膜を備え、且つこのチタニア膜内にアナターゼ型チタニア微粒子が均一に分散されており、上記繊維素材の表面から深部に、上記の微粒子を含蓄せしめて形成されたフィルタを用いるようにしても良いことは、言うまでもない。

　本発明に係る構成は、マスクだけに限られず、エアコンのフィルタや汚染物質をシールドするものなど、汚染された外気と生き物の間に入ってその間をシールドするものなどに、適用が可能である。

Claims

ある空間を仕切るバリアとして使用された場合に、そのバリアの最外層と最内層に、繊維素材の表面から深部に、アナターゼ型チタニア微粒子が均一に分散されてこの微粒子を含蓄せしめて形成された有機化合物分解浄化フィルタを、備えると共に、
　それらのフィルタの間に、最外層側から最内層側に向けて、親水性化工を施した吸湿フィルタと、帯電性を施し、且つ撥水性を持たせた無機化合物捕獲フィルタの順に、備えたことを特徴とするフィルタ複合体。
上記有機化合物分解浄化フィルタとして、チタニア混合溶液を、特定の圧力で吹き付けて、繊維素材に圧入し、水分を蒸発させて、該繊維素材に形成されたチタニア膜を備え、且つこのチタニア膜内にアナターゼ型チタニア微粒子が均一に分散されており、上記繊維素材の表面から深部に、上記の微粒子を含蓄せしめて形成されたフィルタを用いることを特徴とする請求項１記載のフィルタ複合体。
フィルタ複合体の最外層を吸気側とし、最内層を呼気側とする請求項１又は２記載のフィルタ複合体を用いたマスク。
ある空間を仕切るバリアとして使用された場合に、そのバリアの最外層と最内層に、繊維素材の表面から深部に、カーボン微粒子とアナターゼ型チタニア微粒子とが均一に分散されてこれらの微粒子を含蓄せしめて形成された有機化合物分解浄化フィルタを、備えると共に、
　それらのフィルタの間に、最外層側から最内層側に向けて、親水性化工を施した吸湿フィルタと、帯電性を施し、且つ撥水性を持たせた無機化合物捕獲フィルタの順に、備えたことを特徴とするフィルタ複合体。
上記有機化合物分解浄化フィルタとして、チタニア混合溶液を、特定の圧力で吹き付けて、繊維素材に圧入し、水分を蒸発させて、該繊維素材に形成されたチタニア膜を備え、且つこのチタニア膜内にカーボン微粒子とアナターゼ型チタニア微粒子とが均一に分散されており、上記繊維素材の表面から深部に、上記の２つの微粒子を含蓄せしめて形成されたフィルタを用いることを特徴とする請求項４記載のフィルタ複合体。
フィルタ複合体の最外層を吸気側とし、最内層を呼気側とする請求項４又は５記載のフィルタ複合体を用いたマスク。