明 細 書 酵素補充療法用医薬組成物 技術分野
本発明は、 酵素補充療法用医薬組成物、 具体的には、 フアプリ一病治療用医 薬組成物に関する。 また本発明は、 当該医薬組成物に用い得る基質特異性を変 換した新規高機能酵素、 具体的には -ガラクトシダーゼ活性を有する組換えタ ンパク質に関する。 背景技術
これまで根本的治療法がなかった遺伝性酵素欠損症に対して、 当該酵素を遺 伝子工学的に産生し、 これを点滴静注等により血管内に投与する酵素補充療法 が開発されつつある。 また、 遺伝性酵素欠損症としては、 比較的発生頻度が高 く、 特定疾患 (難病) に指定されている、 フアプリ一病 (Fabry Disease) (遺伝 性 α -ガラクトシダーゼ欠損症;ライソゾーム病又はリソソーム病と呼ばれる遺 伝子疾患群のひとつである) がよく知られている (Kenneth J. Dean et al., Fabry Disease, "Practical Enzymology of the Sphingolipidoses" , U.S.A., Aln R. Liss, Inc., 1997, p.173-216 参照) 。
フアブリ一病とは、 ヒ ト細胞内小器官のひとつであるリソソームに存在する 酵素のうち、 「ひ -ガラクトシダーゼ」 という酵素の活性低下もしくは欠損が原 因となり、 その生体内基質であるグロボトリアオシルセラミ ド (GL-3 ;セラミ ドトリへキソシド (CTH)とも言う) という糖脂質が分解されずに体内 (例えば、 血管、 皮膚、 角膜、 神経、 腎臓、 心臓等) に蓄積することによって生じる、 糖 脂質代謝異常性疾患である。
ひ -ガラクトシダーゼをコードする遺伝子は X染色体上にあるため、 この疾患 は X染色体性の遺伝型式をとる。 そのため、 本症では、 主にへミ接合体の男性 において明確な臨床像を呈する。 典型的な臨床経過をとる 「古典型フアブリ一 病」 は、 約 4万人の男児に 1人の割合で発生すると考えられており、 少年期や
青年期に、 手足の痛み、 低汗症、 被角血管腫、 角膜混濁等の症状がみられ、 そ れが進行して、 中年期以後に腎不全、 心不全、 脳血管障害等の全身の臓器障害 を生じ、 これが死因となる。 また、 「古典型フアブリ一病」 のような典型的な 臨床経過をとらず、 発症が遅く比較的緩やかな経過を示すものとして、 「亜型 フアブリ一病」 も存在し、 このタイプの患者においては、 僅かながら α _ガラク トシダーゼの残存活性が認められる。 亜型フアブリ一病としては、 例えば 「心 フアブリ一病」 が知られており、 前記糖脂質の蓄積が主に心臓で生じ、 それに より心臓肥大が発症して心不全や不整脈等の障害を生じる。 一方、 ヘテロ接合 体のフアブリ一病女性患者では、 X染色体の特性により、 その臨床像としては 様々な形がみられ、 へミ接合体の男性と変わらない重症のものからほとんど無 症状のものまで存在し得る。 しカゝし、 最近の調查により、 ヘテロ接合体のファ ブリー病女性患者は、 高年齢になると、 そのほとんどが何らかの症状を示すこ とが明らかになり、 これらを 「保因者」 としてではなく 「患者」 として扱うベ きであるとの見方もある。
ところで、 近年、 このようなフアブリ一病に対しても酵素補充療法が確立さ れ、 ほ乳類由来の細胞で産生した組換えヒ トひ -ガラクトシダーゼが、 上記療法 におけるフアブリ一病治療薬の有効成分として広く使用されている (Eng CM et al., Am J Hum Genet, 68:711-722 (2001); Eng CM et al., N Engl J Med, 345:9- 16 (2001); Schiffmann R et al., Proc Natl Acad Sci USA, 97:365-370 (2000)参照) 。
また、 動物細胞以外の細胞 (酵母など) を宿主として産生した組換えヒ ト α - ガラクトシダーゼをフアプリ一病の治療 (酵素補充療法) に用い得るものとす る方法 (特開 2002- 369692号公報参照) や、 さらには、 ヒト α -ガラクトシダー ゼをコ一ドする遺伝子を障害組織の細胞に導入して発現させることで酵素の補 充を行う遺伝子治療的な方法 (特表 2002-522509号公報 参照) なども提案され ている。 発明の開示
しかしながら、 現行のフアブリ一病治療用の補充用酵素薬は、 もともと酵素 (ヒト -ガラクトシダーゼ) を持たない患者に対して投与されることが多いた め、 投与した患者の多くにおいて治療薬中の酵素が異物として認識され、 抗体 が産生されてしまい、 その結果、 アレルギー反応を主体とする副作用が高頻度 に出現するという問題が生じる。 このような問題は、 遺伝子治療的な方法で酵 素を補充する場合においても同様である。
また、 補充用酵素薬は血管内に投与されるが、 ガラクトシダーゼ自体は血 液中で不安定であるため、 実際の治療においては、 頻繁に投与 (2週間に 1回 の割合) しなければならず、 また 1回当たりの投与量を多くする必要も生じ得 る。 さらに、 ヒトひ -ガラクトシダーゼ (α -GAL) には、 障害臓器の細胞内 (詳 しくは細胞内のリソソーム) に取り込まれるために必要なマンノース- 6 -リン酸 (M6P) 残基が結合し得る糖鎖 (N型糠鎖) の数が少ないため、 血液中から当該 細胞に取り込まれ難い。 特に、 フアブリ一病における主な障害臓器である腎臓 や心臓での取り込み効率が低く、 腎障害や心障害に対する治療効果が十分とは 言い難い。 これらのことから、 治療において一定量の酵素を標的細胞に取り込 ませるためには、 大量の酵素が必要となり、 補充用酵素薬をより頻繁に、 より 多く投与する必要が生じる。 このような治療の現状は、 患者にとって、 体力的 な面や精神的な面、 さらには経済的な面において大きな負担となり、 「生活の 質 (Quality of Life: QOL)」 に悪影響を及ぼすこととなっている。
そこで、 本発明が解決しょうとする課題は、 アレルギー性副作用がなく、 血 中 (血漿中) 安定性が高く、 かつ障害臓器の細胞に取り込まれやすい、 a -GAL 活性を有するタンパク質を用いた、 フアプリ一病治療用医薬組成物を提供する ことにある。 また本発明は、 上記 α -GAL活性を有するタンパク質のごとき、 基 質特異性を変換した新規高機能酵素を提供することを目的とする。
本発明者は、 上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。 その結果、 α - GAL とは基質特異性が異なるが全体として立体構造が酷似したタンパク質で ある 「α -Ν-ァセチルガラタ トサミニダーゼ(a -NAGA)」 に着目した。 そして、 この - NAGAの活性部位の構造を変化させ、 活性を有するように基 質特異性を転換して得られた新規高機能酵素 (ひ - NAGA変異体) を、 酵素補
充療法に用いるフアプリ一病治療用医薬組成物の有効成分として用いれば、 上 記課題を解決し得ると考えた。
しかしながら、 当該分野においては、 次のことが一般的に知られている。
1 ) タンパク質を構成するアミノ酸の一部を別のアミノ酸に置換すると、 当 該アミノ酸とその周囲に存在するアミノ酸との相互作用の状態 (水素結合、 疎 水結合など) が変化する可能性がある。 相互作用の状態が変換した場合、 アミ ノ酸の一部が置換されたタンパク質の立体構造 (3次元構造) は変化し、 その タンパク質の本来の機能 (特に、 酵素の場合は酵素活性) が損なわれるおそれ がある。
2 ) タンパク質を構成するアミノ酸の一部を別のアミノ酸に置換することに よる、 上述の立体構造変化は、 当該タンパク質の表面構造の変化につながる可 能性がある。 表面構造が変換したタンパク質を生体内に投与した場合、 生体は、 当該タンパク質とは異なるタンパク質 (生体にとっては異物) を投与されたも のと認識し、 免疫反応が生じてしまう。 この免疫反応は、 タンパク質を医薬品 として生体内に投与し使用する場合には、 当該タンパク質の機能を低下させる だけでなく、 アナフィラキシーを誘発する場合もあり、 生命に関わる極めて大 きな問題となる。
すなわち、 医薬品として生体内に投与するタンパク質は、 その機能 (活性) を有していることのみでなく、 投与後に免疫反応を生じないように設計をする 必要がある。
上記の理由から、 α -GAL に類似している α -NAGA にっき、 その活性部位 のアミノ酸をひ - GAL の活性部位と同様のアミノ酸に置換したとしても、 置換 したアミノ酸の位置及び種類によっては、 当然に、 α -GAL活性を有し、 かつ 立体構造上はひ "NAGAであるタンパク質 (ひ -NAGA変異体) を作製するこ とができるとは言えない。
本発明者は、 これらの問題を解決するために、 まず、 ホモロジ一モデリング による立体構造解析によるシミュレーションを行い、 ひ -NAGA の表面構造を 維持しつつ、 α -GAL活性を獲得することが可能なアミノ酸置換の態様を詳細 に検討し、 フアプリ一病治療薬候補の a -NAGA変異体のァミノ酸配列を決定
した。 その上で、 実際に、 この α -NAGA変異体を発現させ、 a -GAL の基質 を分解する活性を持つことを確認した。 さらに、 この a -NAGA変異体を、 実 際にファブリ一病モデルマウスに投与し、 α -GAL活性が障害組織に分布して いることをも確認した。
これらの検証により、 当該ひ -NAGA変異体が、 初めてフアブリ一病治療用 の医薬品として、 有効に使用し得ることを見出し、 本発明を完成した。 すなわち、 本発明は以下の通りである。
( 1 ) 野生型ヒトひ - N-ァセチルガラクトサミニダーゼの活性部位の構造を変化さ せてひ -ガラク トシダーゼ活性を獲得したタンパク質を含むことを特徴とする、 フアブリ一病治療用医薬組成物。
本発明の医薬組成物は、 例えば、 上記タンパク質がひ -ガラクトシダーゼの基 質特異性を有するものが挙げられる。
( 2 ) 以下の (a)又は (b)のタンパク質を含むことを特徴とする、 フアブリ一病治 療用医薬組成物。
(a) 下記 (i)〜(: iii)のいずれかのァミノ酸配列を含むタンパク質。
(i) 配列番号 2に示されるアミノ酸配列において第 188番目のアミノ酸がセ リン以外のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列のうち、 第 18番目〜第 411番目の アミノ酸からなるアミノ酸配列
ϋ) 配列番号 2に示されるアミノ酸配列において第 番目のアミノ酸がァ ラニン以外のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列のうち、 第 18番目〜第 411番目 のアミノ酸からなるアミノ酸配列
(iii) 配列番号 2に示されるアミノ酸配列において第 188番目のアミノ酸がセ リン以外のアミノ酸に置換され第 191番目のアミノ酸がァラニン以外のアミノ酸 に置換されたアミノ酸配列のうち、 第 18番目〜第 411番目のアミノ酸からなるァ ミノ酸配列
(b) 上記 (a)の (i)〜0ii)のいずれかのァミノ酸配列において前記置換部位のァミ ノ酸を除く 1若しくは数個のアミノ酸が欠失、 置換若しくは付加されたァミノ 酸配列を含み、 かつひ -ガラク トシダーゼ活性を有するタンパク質。
本発明の医薬組成物は、 例えば、 上記 (a)のタンパク質において、 上記セリン 以外のアミノ酸がグルタミン酸若しくはァスパラギン酸であるもの、 上記ァラ ニン以外のアミノ酸がロイシン、 バリン、 イソロイシン、 フエ-ルァラニン及 びメチォニンからなる群より選ばれるいずれか 1つであるもの、 又は、 上記セ リン以外のアミノ酸がグルタミン酸であり、 かつ、 上記ァラニン以外のァミノ 酸がロイシンであるものが挙げられる。
( 3 ) 上記( 1 )及び( 2 )に記載の医薬組成物をフアブリ一病患者に投与すること を特徴とする、 フアブリ一病の治療方法。
( 4 ) 野生型ヒ トひ - N-ァセチルガラク トサミニダーゼの活性部位の構造を変化さ せて α -ガラク トシダーゼ活性を獲得したタンパク質であって、 野生型ヒ ト -ガ ラタトシダーゼ由来のシグナルペプチドを含むものである、 前記タンパク質。
( 5 ) 以下の (a)又は (b)のタンパク質。
(a) 下記 (i)〜(iii)のいずれかのァミノ酸配列を含むタンパク質。
(i) 配列番号 6に示されるアミノ酸配列において第 202番目のアミノ酸がセ リン以外のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(ϋ) 配列番号 6に示されるアミノ酸配列において第 205番目のアミノ酸がァ ラニン以外のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(id) 配列番号 6に示されるアミノ酸配列において第 202番目のアミノ酸がセ リン以外のアミノ酸に置換され第 205番目のアミノ酸がァラニン以外のアミノ酸 に置換されたァミノ酸配列
(b) 上記ひ)〜 (iii)のいずれかのアミノ酸配列において前記置換部位のアミノ酸 を除く 1若しくは数個のアミノ酸が欠失、 置換若しくは付加されたアミノ酸配 列を含み、 かつ ガラク トシダーゼ活性を有するタンパク質。
本発明のタンパク質は、 例えば、 上記セリン以外のアミノ酸がグルタミン酸 若しくはァスパラギン酸であるもの、 上記ァラニン以外のアミノ酸がロイシン、 パリン、 イソロイシン、 フエ二ルァラニン及びメチォニンからなる群より選ば れるいずれか 1つであるもの、 又は、 上記セリン以外のアミノ酸がグルタミン 酸であり、 かつ、 上記ァラニン以外のアミノ酸がロイシンであるものが挙げら れる。
( 6 ) 上記( 6 )又は( 7 )記載のタンパク質をコードする遺伝子。
( 7 ) 以下の (a)又は (b)の DNAを含む遺伝子。
(a) 下記 (i)〜 iii)のいずれかの塩基配列を含む DNA。
(i) 配列番号 5に示される塩基配列において第 604番目〜第 606番 の塩基が セリン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配列
ϋ) 配列番号 5に示される塩基配列において第 613番目〜第 615番目の塩基 がァラニン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配列
Oii) 配列番号 5に示される塩基配列において第 604番目〜第 606番目の塩基 がセリン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換され第 613番目〜第 615番目 の塩基がァラニン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配列
(b) 上記 (i)〜Oii)のいずれかの塩基配列を含む DNAに対し相補的な塩基配列か らなる DNAとストリンジヱントな条件下でハイブリダィズする DNAであって、 前記置換部位の塩基に対応する塩基が当該置換部位の塩基と同一であり、 かつ α -ガラクトシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする DNAo
本発明の遺伝子は、 例えば、 上記セリン以外のァミノ酸がグルタミン酸若し くはァスパラギン酸であるもの、 上記ァラニン以外のアミノ酸がロイシン、 バ リン、 ィソロイシン、 フェニルァラ二ン及びメチォニンからなる群より選ばれ るいずれか 1つであるもの、 又は、 上記セリン以外のアミノ酸がグルタミン酸 であり、 かつ、 上記ァラ二ン以外のァミノ酸がロイシンであるものが挙げられ る。
( 8 ) 上記( 6 )又は( Ί )記載の遺伝子を含む組換えべクタ一。
( 9 ) 上記(8 )記載の組換えベクターを含む形質転換体。
( 1 0) 上記(9 )記載の形質転換体を培養する工程と、 得られる培養物から α -ガ ラクトシダーゼ活性を有するタンパク質を採取する工程とを含む、 当該タンパ ク質の製造方法。 図面の簡単な説明
図 1は、 野生型 a -GAL及ぴ野生型 a -NAGAのサブュニット全体の立体構造を 表す模式図である。
図 2 Aは、 野生型 a -GAL及ぴ野生型 a -NAGAの活性部位の構造を表す模式図 である。 なお、 図中に示したアミノ酸 (スティック表示 (基質を除く) ) は、 野生型ひ- GAL及び野生型 -NAGAの基質に近接するアミノ酸残基の中で、 α - GALと α -NAGAに共通するアミノ酸残基の立体構造上での位置を示す。
図 2 Bは、 野生型ひ -GAL及び野生型ひ -NAGAの活性部位の構造を表す模式図 である。 なお、 図中に示したアミノ酸 (スティック表示 (基質を除く) ) は、 野生型ひ- GAL及び野生型 α -NAGAの基質に近接するアミノ酸残基の中で、 ひ- GALと a -NAGAとの間で異なるァミノ酸残基の立体構造上での位置を示す。
図 2 Cは、 野生型 a -GAL及び野生型 -NAGAの活性部位を構成するアミノ酸 と、 それぞれの基質との相互作用部位を示す概略図である。
図 3は、 野生型ひ -GAL及び野生型 a -NAGAの各サブュ-ットにおける N型糖 鎖結合部位 (N-glycosylation sites) の個数及び位置の比較を示す模式図である。 図 4は、 野生型ひ -GAL及び野生型 -NAGAの各サブュニットにおける N型糖 鎖結合部位 (スティック表示 (基質を除く) ) を、 各サブユニットの立体構造 中に示した模式図である。
図 5は、 (a)が、 野生型 α -NAGAが自己の基質と結合する様子を示す模式図で あり、 (b)が、 ひ -NAGA変異体であるひ -NAGA(S188E/A191L)が a -GALの基質 と結合する様子を示す模式図である。
図 6 は、 野生型 ひ -NAGA、 及び a -NAGA変異体であ る - NAGA(S 188E/A191L)の活性部位の構造を表す模式図である。
図 7は、 フアブリ一病患者由来線維芽細胞内の CTH蓄積量について、 a -GAL シダナルぺプチド融合ひ -NAGA, a -GALシダナルぺプチド融合ひ -NAGA変異 体、 及び野生型 の添加による影響を示す、 免疫染色の結果を表す図であ る。
図 8は、 α -NAGA変異体であるひ- NAGA(S188E/A191L)の、 各精製ステップ での試料の C.B.B.染色像を示す図である。
図 9は、 肝臓、 腎臓及び心臓における α -GALの基質である CTHの分析結果を 示す図である。
図 1 0は、 腎臓組織の免疫染色の結果を示す図である。
図 1 1は、 心臓組織の免疫染色の結果を示す図である。
図 1 2は、 肝臓組織の免疫染色の結果を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明を詳細に説明する。 本発明の範囲はこれらの説明に拘束される ことはなく、 以下の例示以外についても、 本発明の趣旨を損なわない範囲で適 宜変更し実施し得る。
なお、 本明細書は、 本願優先権主張の基礎となる特願 2 0 0 7 - 1 3 3 5 3 6号明細書の全体を包含する。 また、 本明細書において引用された全ての刊行 物、 例えば先行技術文献、 及ぴ公開公報、 特許公報その他の特許文献は、 参照 として本明細書に組み込まれる。
1. 本発明の概要等
(1) 用語の定義
本明細書においては、 特に言及した場合を除き、 以下のように用語の定義を するものとする。
「0;-ガラク トシダーゼ」 及び Γ a -GALJ とは、 いずれも、 「ヒ ト α·ガラク トシダーゼ Α」 を意味する。
「ο;-Ν-ァセチルガラタトサミニダーゼ」 及び 「ひ- NAGA」 は、 いずれも、 「 ヒ ト α-ガラクトシダーゼ B」 、 すなわち 「ヒト α-Ν-ァセチルガラク トサミニダ ーゼ」 を意味する。
「wt」 とは、 野生型 (wild type) を意味する。
ΓΜ6Ρ] とは、 「マンノース- 6-リン酸」 を意味する。
「a-GAL活性」 とは、 後述する の基質を加水分解し得る活性 (後述 の反応式 (1)参照) を意味し、 ひ- GALタンパク質 (野生型 α-GAL) が有する活 性という意味に限定されるものではない。
「a-NAGA活性」 とは、 後述する oi-NAGAの基質を加水分解し得る活性 (後 述の反応式 (2)参照) を意味し、 α-NAGAタンパク質 (野生型 α-NAGA) が有す る活性という意味に限定されるものではない。
「ひ - GAL活性を獲得した」 とは、 基質結合部位において、 ひ - NAGAの基質と の結合反応性よりもひ - GALの基質との結合反応性が相対的に高くなつたことを 意味する。
「Q! -GALの基質特異性を有する」 とは、 活性部位の構造 (特に、 基質の結合 反応性に重要な役割を果たすァミノ酸残基の位置及び種類) が野生型 a -GALの それと同じであることを意味する。
「第 188番」 及ぴ 「第 191番」 とは、 野生型 α -NAGAのアミノ酸配列 (配列番 号 2 ) からみた位置 (当該アミノ酸配列の N末端のアミノ酸残基を第 1番として C末端側方向へ数えたときの位置) を示す。
「ひ - NAGA変異体」 とは、 基本的には、 野生型 α -NAGAの変異体を全て含む 意味であり、 特定の変異体 (アミノ酸変異体) に限定はされるものではないが、 本明細書においては、 野生型 a -NAGAのアミノ酸配列 (配列番号 2 ) のうち第 188番目のセリンがグルタミン酸に置換され、 かつ、 第 191番目のァラニンがロイ シンに置換された変異型タンパク質 (すなわち 「ひ - NAGA(S188E/A191L)」 と 表記される) を、 ひ - NAGA変異体と称して (定義づけて) 、 説明している場合 力 sある。
「ひ -GALシグナルぺプチド融合 a -NAGA」 とは、 通常、 野生型 a -NAGAの シグナルぺプチド部分 (配列番号 2に示されるアミノ酸配列のうちの第 1番目〜 第 17番目のアミノ酸からなるペプチド部分) 1S 野生型 α -GALのシグナルぺプ チド部分 (配列番号 1 0に示されるアミノ酸配列のうちの第 1番目〜第 31番目の アミノ酸からなるペプチド部分) に置換されたタンパク質を意味する。 ここで、 当該シグナルペプチド部分とは、 一般に、 タンパク質が細胞内で発現した後、 細胞外に分泌された際には、 既に除かれているものであるが、 本発明において は、 便宜上、 細胞外に分泌された後のものに対しても、 「 - GALシグナルぺプ チド融合 -NAGA」 と称することがある。
「ひ - GALシグナルペプチド融合 α -NAGA変異体」 及び 「o; -GALシグナルぺ プチド融合 a -NAGA(S188E/A191L)」 とは、 通常、 - NAGA変異体のシグナル ペプチド部分 (例えば、 配列番号 2に示されるアミノ酸配列のうちの第 1番目〜 第 17番目のアミノ酸からなるペプチド部分) 、 野生型ひ - GALのシグナルぺプ
チド部分 (配列番号 1 0に示されるアミノ酸配列のうちの第 1番目〜第 31番目の アミノ酸からなるペプチド部分) に置換されたタンパク質を意味する。 ここで、 当該シグナルペプチド部分とは、 一般に、 タンパク質が細胞内で発現した後、 細胞外に分泌された際には、 既に除かれているものであるが、 本発明において は、 便宜上、 細胞外に分泌された後のものに対しても、 「c¾ -GALシグナルぺプ チ ド融合 a -NAGA変異体」 又は 「 ひ -GALシグナルぺプチ ド融合 α - NAGA(S 188E/A191L)」 と称することがある。
( 2 ) 配列表の説明
本明細書に記載の配列番号 1〜 1 0に示される塩基配列及ぴァミノ酸配列が、 どのような酵素タンパク質に関する配列であるかについて、 下記表 Aに示す。 なお、 表 A中、 「本体」 とは、 タンパク質のシグナルペプチド部分を除いた成 熟タンパク質となる部分を意味する。 また、 「十」 の表記は、 所定のシグナルぺ プチド部分と本体部分とが結合したものであることを表す。 表 A
( 3 ) 本発明の概要 · 本発明は、 フアブリ一病の酵素補充療法に有効に用いることができ優れた治 療効果を発揮し得るファブリ一病治療用医薬組成物、 及び当該医薬組成物の有
効成分として有用な新規高機能酵素としての組換えタンパク質を提供するもの である。
現行のフアブリ一病治療用の補充用酵素薬は、 CHO細胞ゃヒト繊維芽細胞な どのほ乳類由来の細胞で産生した組換えヒ トひ - GALを使用している。 しかしな がら、 このヒ ト a -GALの使用には、 アレルギー性副作用、 血液中での不安定性、 障害臓器の細胞への取り込まれ難さなどの問題点があり、 実際の治療において は患者への負担が非常に大きいものとなっているため、 その改善が課題となつ ている。
本発明者は、 これらの課題を解決するため、 α -GAL以外の酵素をフアブリ一 病治療用の補充用酵素として利用することができないか検討し、 ひ - GALと同様 にリソソーム酵素であり (すなわち細胞内での局在性が同じであり) 、 かつ a - GALと全体の立体構造は酷似しているが基質特異性の点では異なる、 「 a -N-了 セチルガラクトサミニダーゼ(ひ -NAGA)」 に着目した。
a -GALは古くはひ -ガラクトシダーゼ Aと呼ばれ、 このひ -GALと生化学的性 状がよく似た a -ガラクトシダーゼ Bと呼ばれるアイソザィムが存在すると考え られていた。 このひ -ガラクトシダーゼ Bは、 a -GALに比べて安定性が高いが、 フアブリ一病で体内に蓄積するグロボトリァオシルセラミ ド (セラミ ドトリへ キソシド (CTH)) を分解する能力は無いことが知られていた。 その後、 この a - ガラクトシダーゼ Bの実態は a -N-ァセチルガラタトサミニダーゼ(ひ -NAGA)で あることが判明した。 このひ - NAGAは、 ひ - GALをコードする遺伝子と同じ祖先 遺伝子から派生したと考えられる遺伝子によりコードされている。 α -NAGAの cDNAは既にクローン化されており、 1 7アミノ酸残基から成るシグナルぺプチ ドを含む合計 4 1 1アミノ酸残基から構成されるタンパク質をコードするもの であることが分かっている。 また、 ヒト a -NAGAの構造は、 ヒト a -GALと比較 して、 塩基配列レベルで 57.9%、 アミノ酸配列レベルで 52.2 %の相同性を示す。 さらに、 ヒト a -NAGAは、 ヒ トひ - GALと同様にホモ二量体の形で存在する酵素 である。
本発明者は、 以上の知見に基づいて、 まずひ - NAGAと a -GALの三次元構造モ デルを構築し、 比較を試みた。 具体的には、 プロテインデータバンク (PDB (
http:〃 www.rcsb.org/pdb/) ) に登録されているニヮトリのひ - NAGAの構造情報 (ID: 1KTC) を参考にしてヒト α -NAGAの三次元構造モデルを構築し、 この構 造と、 PDBに登録されているヒ ト α -GALの三次元構造 (ID: 1R47) とを比較 した。 その結果、 ヒ ト - NAGAの三次元構造は、 全体としても活性部位につい ても、 ヒ ト α -GALの三次元構造と非常によく似ていることが分かった。 しかし ながら、 活性部位に関しては、 厳密には、 数個のアミノ酸残基が異なるだけで はあるが、 これらのアミノ酸残基の中には、 基質結合部位に存在し α -GAL及ぴ α -NAGAの各々の基質特異性の違いに影響を与えている重要なアミノ酸残基が 存在する。 この点で、 α -GAL及び α -NAGAの活性部位には顕著といえる三次元 構造上の違いがあることが分かった。
このように a -NAGAは、 活性部位のうち基質結合部位の一部の構造において α -GALと異なっているが、 その他の部分については、 触媒部位も含め、 構造面 及ぴ性質面のレ、ずれにおいてもひ -GALと非常によく似ているという特性を有す る酵素である (図 1、 図 2 A及び図 2 B 参照) 。 そのため、 α -NAGAの触媒反 応機構は、 反応基質及び反応生成物の種類等において、 の触媒反応機構 と非常に類似している。
そこで本発明者は、 前述の通りひ - NAGAに着目し、 このひ - NAGAに遺伝子操 作を加えて活性部位 (特に基質結合部位) の構造を変化させ、 α -ガラク トシダ 一ゼ活性を有するように a -NAGAの基質特異性を転換すれば (例えば a -NAGA の基質認識に関係するアミノ酸残基のうち、 鍵となるものをひ - NAGAタイプか ら α -GALタイプのものに置換すれば) 、 フアブリ一病の治療に用い得る新規か つ優れた高機能酵素を創出できることを見出した。
a -NAGAに着目した理由としては、 さらに下記 (i)〜(iii)の点も挙げられる。
(i) α -NAGAは、 Schindler病及び Kanzaki病の責任酵素であり (Schindler 病の場合と同じ酵素の異常によって起こる異なる臨床表現型の疾患が Kanzaki病 と呼ばれる) 、 ひ - NAGAの欠損が Schindler病及び Kanzaki病を発症する原因と なっている。 しかし、 通常、 フアブリ一病患者であっても Schindler病や
Kanzaki病の発生は極めて稀であるため、 フアブリ一病患者のほぼ全員において α -NAGAは正常に存在すると言える。 そのため、 α -NAGAの基質特異性のみを
α -GALの基質特異性に転換したものを補充用酵素薬として投与しても、 野生型 α -NAGAを投与した場合と同様に、 その抗原性が現れる場合は極めて少なく、 アレルギー性副作用などの有害な免疫反応を誘発する可能性は実質的に無いと 考えられる。
(ϋ) ひ - NAGAは a -GALと同様にホモ二量体として機能するが、 一般に α -
NAGAの方が二量体形成時の安定性が高い。 これは、 本発明者が構築した立体 構造モデルからも推測され、 具体的には、 ヒト α -NAGAでは二量体形成時に両 サブュニット間で Asp45と Arg350との間に静電相互作用による結合が 2ケ所存 在することが認められたが、 このような結合は α -GALには認められなかった。 従って、 α -NAGAと同様に α -NAGAの変異体も、 a -GALに比べて高い血中 ( 血漿中) 安定性を有すると考えられ、 酵素補充療法に非常に適している。 また、 当該安定性により二量体としての存在比がより多くなれば、 下記 (iii)の点との関 係で、 細胞内のリソソームへの取り込み効率もより向上することが期待される。 さらに、 投与前においては、 酵素製剤としてその効果を長期間維持し得るとい うメリットも考えられる。
Oii) 酵素補充療法で使用する酵素は、 障害臓器の細胞内のリソソ一ムに酵 素が取り込まれる必要があり、 通常、 細胞膜からリソソームへの輸送は、 酵素 の糖鎖部分に存在するマンノース- 6-リン酸 (M6P)を認識するカルシウム非要求 性 M6Pレセプターを介して行われる。 よって、 この M6P残基が結合し得る糖鎖 (N型糖鎖) を多く有する方がリソソームへの取り込み効率が高くなるため望ま しい。 この糖鎖の数については、 - GALでは、 X線結晶構造解析からサブュ- ット当たり 3個 (Asnl39, Asnl92, Asn215の 3ケ所;二量体形成時は 6個) 存 在することが明らかになつている。 これに対して、 α -NAGAでは、 サブュ-ッ ト当たり 5個 (二量体形成時は 1 0個) 存在するが (図 3及び図 4参照) 、 そ のうち 3個 (Asnl24, Asnl77, Asn201の 3ケ所) はひ - GALにおける糖鎖の位 置に相当するものであり、 残りの 2個 (Asn359と Asn385の 2ケ所) は α - NAGAに特有のものである。 従って、 α -NAGAは α -GALに比べて、 血液中から 障害 J]蔵器の細胞内のリソソームに取り込まれる効率が高いと考えられる。
本発明者は、 以上のような観点から、 α -NAGAについて、 その基質結合部位 を構成するアミノ酸残基群のうち、 第 188番目のアミノ酸 (セリン (Ser)) 及ぴ第 191番目のアミノ酸 (ァラニン (Ala)) に着目した。 そして、 第 188番目のセリン (Ser)をグルタミン酸 (Glu)に置換し、 第 191番目のァラニン (Ala)をロイシン
(Leu)に置換した組換え酵素 (変異体酵素) の作製を試みた。 次いで、 この組換 え酵素をフアプリ一病患者由来の線維芽細胞を用いて発現させて採取し、 解析 したところ、 高い α -GAL活性が認められ、 しかもこの組換え酵素の血中安定性 は、 野生型 α -GALに比べてはるかに高いものであった。 このような基質特異性 を変換した組換え酵素を用いれば、 フアブリ一病の酵素補充療法に有用なファ ブリ一病治療用医薬組成物として、 現行のものより格段に優れたものを提供す ることができる。
2 . タンパク質
本発明のタンパク質は、 後述する本発明のフアプリ一病治療用医薬組成物の 有効成分として利用可能なタンパク質であり、 具体的には、 ひ - N-ァセチルガラ ク トサミニダーゼ(a -NAGA)の変異体酵素である。
詳しくは、 本発明のタンパク質は、 以下の (la)のタンパク質、 または (lb)のタ ンパク質であり、 好ましくは以下の (lc)のタンパク質である。
(la) 野生型 α -NAGAの活性部位 (特に基質結合部位) の構造を変化させるこ とにより α -ガラクトシダーゼ(α -GAL)活性を獲得したタンパク質、 好ましくは a -GALの基質特異性を有するタンパク質。
(lb) シグナルペプチドを含むものである上記 (la)のタンパク質。 ここで、 シ ダナルぺプチドの種類は特に限定はされず、 野生型ひ - NAGA由来のシグナルぺ プチドであってもよいし、 他のタンパク質由来のものであってもよい。
(lc) シグナルペプチドが野生型 - GAL由来のシグナルペプチドである上記 (lb)のタンパク質。
ここで、 「a -GAL活性を獲得した」 とは、 前述の通り、 - NAGAの基質結合 部位において、 ひ - NAGAの基質との結合反応性よりも - GALの基質との結合反 応性が相対的に高くなつたことを意味する。 従って、 上述した構造変化としては、
α -NAGAの基質との結合を完全に不可能にする構造変化には限定されず、 本来 a -GALの基質との結合反応性よりも a -NAGAの基質との結合反応性が相対的に 有意に高かったのを、 逆にひ -GALの基質との結合反応性が有意に高くなるよう にする構造変化も含む。 また 「 - GALの基質特異性を有する」 とは、 前述の通 り、 活性部位の構造 (特に、 基質の結合反応性に重要な役割を果たすアミノ酸 残基の位置及び種類) がひ -GALと同じであることを意味する。
本発明において、 - GALの基質とは、 非還元末端にひ結合したガラクトース 残基を持つグロポトリァオシルセラミ ド (セラミ ドトリへキソシ (CTH)) 等の 糖脂質などの天然化合物や、 4-メチルゥンべリフエリル-ひ -D-ガラクトシドなど の合成化合物を意味する。 また、 α -NAGAの基質とは、 非還元末端にひ結合し た N-ァセチルガラクトサミン残基を持つオリゴ糖、 糖タンパク質及び糖脂質な どの天然化合物や、 4-メチルゥンベリフエリノ ひ - N-ァセチル -D-ガラク トサミ 二ドなどの合成化合物を意味する。
ここで、 野生型 α -GALの触媒反応を下記反応式(1 )に示し、 野生型 a -NAGA の触媒反応を下記反応式( 2 )に示す。
〔反応式 (1)中、 R1は、基質が天然化合物の場合は 「糠複合体由来の基」 を表 し、 基質が合成化合物の場合は 「4-メチルゥンベリフェリル基」 を表す。 〕
〔反応式 (2)中、 R2は、基質が天然化合物の場合は 「糖複合体由来の基」 を表 し、 基質が合成化合物の場合は 「4-メチルゥンベリフヱリル基」 を表す。 〕 本発明のタンパク質としては、 例えば、 以下の (2a)又は (2b)のアミノ酸配列か らなり、 かつひ -GAL活性を有するタンパク質が好ましく挙げられる。
(2a) 野生型 a -NAGAのアミノ酸配列における第 188番目及び第 191番目のアミ ノ酸のうちの少なくとも 1つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配 列、 好ましくは第 188番目及び第 191番目のアミノ酸がいずれも他のァミノ酸に置 換されたアミノ酸配列。
(2b) 上記 (2a)のアミノ酸配列のうち第 188番目及び第 191番目のアミノ酸を除 く 1若しくは数個のアミノ酸が欠失、 置換若しくは付加されたアミノ酸配列。 なお、 野生型 α -NAGA (ホモ二量体) のサブユニッ トのアミノ酸配列 (配列 番号 2 ) 及び当該配列をコードする塩基配列 (配列番号 1 ) の情報は、 例えば GenBankには 「 accession number: NM— 000262」 として公表されており、 Swiss-Prot (http /tw.exp asy.org/uniprot/ ら取得可肯 fej には 「 entry name : NAGAB_HUMAN accession number: P17050J として登録されている。 ま た野生型ひ - GAL (ホモ二量体) のサブユニッ トのアミノ酸配列 (配列番号 1 0 ) 及び当該配列をコードする塩基配列 (配列番号 9 ) の情報も同様に、 例えば
GenBankには 「 accession number : NP_000160」 として公表されており、 Swiss-Prot (http:〃 tw.expasy.org/uniprot/ 力 ら取得可會 ) には 「 entry name : AGAL HUMAN, accession number: P06280」 として登録されている。
ここで、 上記 「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、 置換若しくは付加された アミノ酸配列」 としては、 例えば、 1個〜 1 0個程度、 好ましくは 1個〜 5個 程度のァミノ酸が欠失、 置換又は付加されたァミノ酸配列であることが好まし レ、。
また、 上記 「欠失、 置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク 質」 は、 α -GAL活性を安定して発揮し得るタンパク質であることが重要である ため、 例えば、 の基質中の α -ガラク トース残基との結合性 (基質結合性 ) 及び当該基質との触媒反応性に重要と考えられる第 28番目〜第 31番目、 第 77 番目〜第 81番目、 第 117番目〜第 127番目、 第 150番目〜第 158番目、 第 192番目、 第 209番目〜第 220番目及び第 242番目〜第 254番目のアミノ酸 (特に、 触媒部位 である第 156番目及び第 217番目のァスパラギン酸 (Asp: D) ) 、 ホモ二量体の 形成に重要と考えられる第 45番目のァスパラギン酸 (Asp : D) 及び第 350番目 のアルギニン (Arg : R) 、 並びに、 N型糖鎖結合部位である第 124番目、 第 177 番目、 第 201番目、 第 359番目及び第 385番目のアミノ酸 (いずれもァスパラギ ン (Asn: N)) などの全部又は一部 (好ましくは全部) は、 野生型ひ - NAGAのァ ミノ酸配列から変異 (欠失、 置換又は付加) されていないものが好ましい。
上記他のアミノ酸としては、 第 188番目のアミノ酸残基に関しては、 セリン (Ser: S)以外であれば特に限定はされないが、 例えば、 グルタミン酸 (Glu: E)及 ぴァスパラギン酸 (Asp: D)等を好ましく挙げることができ、 グルタミン酸がよ り好ましい。 同様に、 第 191番目のアミノ酸残基に関しては、 ァラニン (Ala : A) 以外であれば特に限定はされないが、 例えば、 ロイシン (Leu : L)、 パリン (Val : V)、 イソロイシン (lie : 1)、 フエ -ルァラ二ン (Phe: F)及びメチォニン (Met: M) 等を好ましく挙げることができ、 ロイシンがより好ましい。 中でも、 上記他の アミノ酸として、 第 188番目のアミノ酸がグルタミン酸であり、 かつ、 第 191番目 のアミノ酸がロイシンであることが特に好ましい。 なお、 上記置換後のアミノ酸 は、 他の置換されていないアミノ酸からなる構造に実質的に影響を及ぼさない
ものであることが好ましく、 この点でも、 第 188番目のアミノ酸残基をダルタミ ン酸とすること、 第 191番目のアミノ酸残基をロイシンとすることが、 特に好ま しい置換態様である。
基質結合部位に存在する第 188番目及び第 191番目のアミノ酸を、 それぞれ上 記のように置換することにより、 次のような効果が得られる。 すなわち、 図 5 に例示するように、 第 188番目のアミノ酸残基に関しては、 α -NAGAの基質中の N-ァセチル基 (特に酸素原子) との相互作用を無く し、 かつ α -GALの基質中の ヒ ドロキシル基との結合作用を生じさせることができ、 第 191番目のアミノ酸残 基に関しては、 α -NAGAの基質中の N-ァセチル基 (特にメチル基) との相互作 用を無く し、 かつ当該基質の結合空間 (特に N-ァセチル基の入り込む空間) を 制限することができる。 以上の結果、 上記アミノ酸置換後の組換え酵素 (組換 えタンパク質) は、 α -NAGAの基質との結合反応性よりもひ - GALの基質との結 合反応性の方が高いものとなり、 a -NAGA活性と比較して有意に高い -GAL活 性を有する酵素となり得る。 少なくとも、 第 188番目のアミノ酸 (セリン) がグ ルタミン酸に置換され且つ第 191番目のアミノ酸 (ァラニン) がロイシンに置換 されたアミノ酸配列を有する組換え酵素は、 上記効果が十分に得られる点で特 に好ましい。 本発明のタンパク質はまた、 以下の (3a)又は (3b)のタンパク質であることが好 ましい。
(3a) 下記 (0〜(: id)のいずれかのァミノ酸配列を含むタンパク質。
G) 配列番号 2に示されるアミノ酸配列において第 188番目のアミノ酸がセリ ン以外のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列のうち、 第 18番目〜第 411番目のァ ミノ酸からなるアミノ酸配列
Gi) 配列番号 2に示されるアミノ酸配列において第 191番目のアミノ酸がァ ラニン以外のァミノ酸に置換されたアミノ酸配列のうち、 第 18番目〜第 411番目 のアミノ酸からなるアミノ酸配列
(iii) 配列番号 2に示されるアミノ酸配列において第 188番目のアミノ酸がセ リン以外のァミノ酸に置換され第 191番目のアミノ酸がァラニン以外のァミノ酸
に置換されたァミノ酸配列のうち、 第 18番目〜第 411番目のアミノ酸からなるァ ミノ酸配列
(3b) 上記 (3a)の 〜0ii)のいずれかのアミノ酸配列において前記置換部位のァ ミノ酸を除く 1若しくは数個のアミノ酸が欠失、 置換若しくは付加されたアミ ノ酸配列を含み、 かつひ -ガラク トシダーゼ活性を有するタンパク質
配列番号 2に示されるアミノ酸配列は、 野生型 - NAGAを構成する 411個の ァミノ酸からなるアミノ酸配列である。
上記 (3a)のタンパク質は、 詳しくは、 この配列番号 2に示されるアミノ酸配列 において上記 ω〜 ίϋ)に記載のように置換されたアミノ酸配列のうち、 野生型 NAGAのシグナルぺプチドを構成する第 1番目〜第 17番目のアミノ酸を除いた、 第 18番目〜第 411番目のアミノ酸配列を含むァミノ酸配列からなるタンパク質で ある。 前述したように、 第 188番目及ぴ第 191番目のアミノ酸残基はいずれも基質 結合部位を構成するアミノ酸の一つである。
ここで、 上記第 18番目〜第 411番目のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列として は、 例えば、 当該第 18番目〜第 411番目のアミノ酸配列の Ν末端に、 各種シグナ ルぺプチドが結合したァミノ酸配列などが好ましく挙げられる。 当該シグナル ペプチドとしては、 障害臓器の細胞膜を通過させ得るものであればよく、 限定 はされないが、 例えば、 野生型ひ - NAGA及び野生型 α -GAL等の各種リソソーム 酵素のシグナルぺプチド並びにプレプロ トリプシン等の分泌酵素のシグナルぺ プチドが好ましく、 より好ましくは野生型 a -NAGA及び野生型ひ -GALのシダナ ルぺプチドであり、 さらに好ましくは野生型 a -GALのシグナルぺプチドである。 なお、 野生型 a -NAGAのシグナルぺプチドは、 上述の通り、 配列番号 2に示さ れる野生型ひ - NAGAのアミノ酸配列のうち第 1番目〜第 17番目のアミノ酸から なるぺプチドであり、 野生型 α -GALのシグナルぺプチドは、 配列番号 1 0に示 される野生型 α -GALのアミノ酸配列のうち第 1番目〜第 31番目のアミノ酸から なるペプチドである。 また、 プレブロ トリプシンのシグナルペプチドは、 配列 番号 1 2に示されるアミノ酸配列からなるぺプチドである。
上記 (3a)のタンパク質としては、 上記 (0、 Oi)又は (iii)のアミノ酸配列を含むタ ンパク質のうち、 上記 (iii)のァミノ酸配列を含むタンパク質が特に好ましい。
また、 上記 (3a)のタンパク質としては、 上記 (0及び (Mi)の記載中の 「セリン以 外のアミノ酸」 がグルタミン酸又はァスパラギン酸である場合のタンパク質が 好ましく挙げられる。 同様に、 上記 (3a)のタンパク質としては、 上記 (ii)及び Gii) の記載中の 「ァラニン以外のアミノ酸」 がロイシン、 バリン、 イソロイシン、 フエ二ルァラニン及びメチォニンからなる群より選ばれるいずれか 1つである 場合のタンパク質も好ましく挙げられる。
さらに、 上記 (3a)のタンパク質としては、 上記 〜 (Mi)の記載中の 「セリン以 外のァミノ酸」 がグルタミン酸であり、 かつ、 「ァラニン以外のァミノ酸」 が ロイシンである場合のタンパク質が、 特に好ましく挙げられる。 当該タンパク 質としては、 例えば、 野生型 a -NAGAのァミノ酸配列 (配列番号 2 ) のうち第 188番目のセリンがグルタミン酸に置換され、 かつ、 第 191番目のァラニンがロイ シンに置換されたタンパク質 ( NAGA(S188E/A191L)) が好ましく挙げられ る (図 6及び配列番号 4参照) 。 なお、 アミノ酸のアルファベット表記は、 一般 に、 3文字 (例えば 「Ser」 ) 又は 1文字 (例えば 「S」 ) で表し、 N末端からの アミノ酸位置を示す数字 (例えば 「188」 ) の前に表示したアルファベッ トは置 換前のアミノ酸の 1文字表記を示し、 数字の後に表示したアルファべットは置換 後のアミノ酸の 1文字表記を示している。 従って、 例えば第 188番目の Serを Glu に置換した場合は 「S188E」 と表示する (以下同様) 。
上記 (3b)のタンパク質は、 上記 (3a)のタンパク質に含まれる上記 (i)〜(iii)のい ずれかのアミノ酸配列において前記置換部位のアミノ酸を除く、 1個又は数個 (例えば 1個〜 1 0個程度、 好ましくは 1個〜 5個程度) のアミノ酸が欠失、 置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、 かつ α -GAL活性を有するタンパク質 であればよく、 限定はされない。 ここで、 「前記置換部位」 とは、 上記 (i)〜(iii) のアミノ酸配列を構成する 394個のアミノ酸残基のうち、 配列番号 2に示される アミノ酸配列における第 188番目のアミノ酸の位置に対応するアミノ酸残基 (伹 し上記 G)及び Oii)のアミノ酸配列に限る) 、 並びに、 配列番号 2に示されるアミ ノ酸配列における第 191番目のアミノ酸の位置に対応するアミノ酸残基 (但し上 記 )及び dii)のアミノ酸配列に限る) を意味する。 より具体的には、 前者のアミ ノ酸残基は、 上記 (i)及び (iii)のアミノ酸配列における第 171番目のアミノ酸残基
を意味し、 後者のアミノ酸残基は、 上記 0i)及ぴ Oii)のアミノ酸配列における第 174番目のアミノ酸残基を意味する。
なお、 上記 (3b)のタンパク質は、 CK -GAL活性を安定して発揮し得るタンパク 質であることが重要である。 そのため、 例えば、 ひ - GALの基質中のひ -ガラクト ース残基との結合性 (基質結合性) 及び当該基質との触媒反応性に重要と考え られるアミノ酸残基は、 上記 ω〜(ίϋ)のアミノ酸配列から変異 (欠失、 置換又は 付加) されていないものが好ましい。 当該アミノ酸残基としては、 上記 (i)〜Gii) のアミノ酸配列を構成するアミノ酸残基のうち、 配列番号 2に示されるァミノ 酸配列における第 28番目〜第 31番目、 第 77番目〜第 81番目、 第 117番目〜第 127 番目、 第 150番目〜第 158番目、 第 192番目、 第 209番目〜第 220番目及び第 242 番目〜第 254番目のアミノ酸の位置に対応するアミノ酸残基 (特に、 触媒部位で ある第 156番目及び第 217番目のァスパラギン酸 (Asp : D)) が好ましく挙げられ る。
同様に、 ホモ二量体の形成に重要と考えられるアミノ酸残基も、 上記 i)〜(iii) のアミノ酸配列から変異 (欠失、 置換又は付加) されていないものが好ましレ、。 当該アミノ酸残基としては、 上記 )〜 (iii)のァミノ酸配列を構成するァミノ酸残 基のうち、 配列番号 2に示されるアミノ酸配列における第 45番目及び第 350番目 のアミノ酸の位置に対応するアミノ酸残基 (具体的には、 第 45番目のァスパラ ギン酸 (Asp : D)及び第 350番目のアルギニン (Arg : R)) が好ましく挙げられる。 さらに、 N型糖鎖結合部位であるァミノ酸残基も、 上記 (i)〜(iii)のァミノ酸配 列から変異 (欠失、 置換又は付加) されていないものが好ましい。 当該アミノ 酸残基としては、 上記 ( 〜(; iii)のアミノ酸配列を構成するアミノ酸残基のうち、 配列番号 2に示されるアミノ酸配列における第 124番目、 第 177番目、 第 201番 目、 第 359番目及び第 385番目のアミノ酸の位置に対応するアミノ酸残基 (いず れもァスパラギン (Asn : N)) が好ましく挙げられる。 本発明のタンパク質はさらに、 以下の (4a)又は (4b)のタンパク質であることが 好ましい。
(4a) 下記 ( 〜Oii)のいずれかのァミノ酸配列を含むタンパク質。
d) 配列番号 6に示されるァミノ酸配列において第 202番目のアミノ酸がセリ ン以外のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(ii) 配列番号 6に示されるアミノ酸配列において第 205番目のアミノ酸がァ ラニン以外のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(id) 配列番号 6に示されるアミノ酸配列において第 202番目のアミノ酸がセ リン以外のアミノ酸に置換され第 205番目のアミノ酸がァラニン以外のアミノ酸 に置換されたアミノ酸配列
(4b) 上記 〜 (iii)のいずれかのァミノ酸配列において前記置換部位のァミノ酸 を除く 1若しくは数個のアミノ酸が欠失、 置換若しくは付加されたアミノ酸配 列を含み、 かつ α -ガラク トシダーゼ活性を有するタンパク質
配列番号 6に示されるアミノ酸配列は、 野生型ひ - NAGAを構成する 411個の アミノ酸において、 シグナルぺプチド部分である第 1番目〜第 17番目のアミノ酸 が野生型 a -GALのシグナルぺプチド部分に変換されたァミノ酸配列 (計 425ァ ミノ酸) であり、 いわゆる融合タンパク質である。 ここで、 野生型ひ - GALのシ グナルペプチド部分は、 前述した通り、 配列番号 1 0に示される野生型ひ - GAL を構成するァミノ酸配列のうちの第 1番目〜第 31番目のアミノ酸からなるぺプチ ド部分である。
上記 (4a)のタンパク質を構成するアミノ酸配列において、 第 188番目及び第 191 番目のアミノ酸残基はいずれも基質結合部位を構成するアミノ酸の一つである。 上記 (4a)のタンパク質としては、 上記 (0、 (ii)又は (iii)のアミノ酸配列を含むタ ンパク質のうち、 上記 (iii)のァミノ酸配列を含むタンパク質が特に好ましい。 また、 上記 (4a)のタンパク質としては、 上記 (0及ぴ (iii)の記載中の 「セリン以 外のアミノ酸」 がグルタミン酸又はァスパラギン酸である場合のタンパク質が 好ましく挙げられる。 同様に、 上記 (4a)のタンパク質としては、 上記 (ii)及ぴ Gii) の記載中の 「ァラニン以外のアミノ酸」 がロイシン、 バリン、 イソロイシン、 フエ二ルァラニン及ぴメチォニンからなる群より選ばれるいずれか 1つである 場合のタンパク質も好ましく挙げられる。
さらに、 上記 (4a)のタンパク質としては、 上記 (0〜(: iii)の記載中の 「セリン以 外のアミノ酸」 がグルタミン酸であり、 かつ、 「ァラニン以外のアミノ酸」 が
ロイシンである場合のタンパク質が、 特に好ましく挙げられる。 当該タンパク 質としては、 例えば、 配列番号 6に示されるアミノ酸配列のうち第 202番目のセ リンがグルタミン酸に置換され、 かつ、 第 205番目のァラニンがロイシンに置換 されたタンパク質 ( a -GALシダナルぺプチド融合 a -NAGA(S202E/A205L)) が 好ましく挙げられる。
上記 (4b)のタンパク質は、 上記 (4a)のタンパク質に含まれる上記 ( 〜 ii)のレヽ ずれかのアミノ酸配列において前記置換部位のアミノ酸を除く、 1個又は数個
(例えば 1個〜 1 0個程度、 好ましくは 1個〜 5個程度) のアミノ酸が欠失、 置換又は付加されたァミノ酸配列を含み、 かつ a -GAL活性を有するタンパク質 であればよく、 限定はされない。 ここで、 「前記置換部位」 とは、 上記 (i)〜 iii) のアミノ酸配列を構成する 425アミノ酸残基のうち、 第 202番目のアミノ酸残基 (但し上記 (i)及び Oil)のアミノ酸配列に限る) 並びに第 205番目のアミノ酸残基 (伹し上記 (ii)及び (iii)のァミノ酸配列に限る) を意味する。
なお、 上記 (4b)のタンパク質は、 ひ - GAL活性を安定して発揮し得るタンパク 質であることが重要である。 そのため、 例えば、 ひ - GALの基質中の -ガラタ ト ース残基との結合性 (基質結合性) 及び当該基質との触媒反応性に重要と考え られるアミノ酸残基は、 上記0〜(iii)のアミノ酸配列から変異 (欠失、 置換又は 付加) されていないものが好ましい。 当該アミノ酸残基としては、 上記 (i)〜(iii) のアミノ酸配列を構成する 425アミノ酸残基のうち、 第 42番目〜第 45番目、 第 91番目〜第 95番目、 第 131番目〜第 141番目、 第 164番目〜第 172番目、 第 206番 目、 第 223番目〜第 234番目及び第 256番目〜第 268番目のアミノ酸残基 (特に、 触媒部位である第 170番目及び第 231番目のァスパラギン酸 (Asp: D)) が好まし く挙げら; | る。
同様に、 ホモ二量体の形成に重要と考えられるアミノ酸残基も、 上記ひ)〜 (iii) のアミノ酸配列から変異 (欠失、 置換又は付加) されていないものが好ましい。 当該アミノ酸残基としては、 上記 G)〜(iii)のアミノ酸配列を構成する 425ァミノ 酸残基のうち、 第 59番目及び第 364番目のアミノ酸残基 (具体的には、 第 59番目 のァスパラギン酸 (Asp: D)及ぴ第 364番目のアルギニン (Arg: R)) が好ましく挙 げられる。
さらに、 N型糖鎖結合部位であるアミノ酸残基も、 上記 (i)〜(iii)のアミノ酸配 列から変異 (欠失、 置換又は付加) されていないものが好ましい。 当該アミノ 酸残基としては、 上記i)〜(iii)のアミノ酸配列を構成する 425ァミノ酸残基のう ち、 第 138番目、 第 191番目、 第 215番目、 第 373番目及び第 399番目のアミノ酸 残基 (いずれもァスパラギン (Asn: N)) が好ましく挙げられる。 以上に述べた本発明のタンパク質について、 α -GAL活性は、 例えば、 CHO細 胞ゃヒ ト線維芽細胞等の哺乳類由来の細胞に目的タンパク質を発現させて採取 し、 当該タンパク質 (酵素溶液) と、 4-メチルゥンベリフェリル - a -D-ガラクト シド (ひ- D-ガラクトース及ぴ 4-メチルゥンベリフエロン (蛍光基質) から得ら れる合成基質) とを混合して、 酸性条件下で反応させた場合に、 当該酵素溶液 の単位量が単位時間当たりに遊離させ得る 4-メチルゥンベリフエロンの量を検出 することにより測定することができる。
なお、 α -NAGA活性も、 上記 oi -GAL活性と同様に、 目的タンパク質を発現さ せて採取し、 当該タンパク質 (酵素溶液) と、 4-メチルゥンベリフヱリル - α -Ν- ァセチル -D-ガラクトサミニド (α -Ν-ァセチル -D-ガラク トサミン及ぴ 4-メチル ゥンベリフ-ロン (蛍光基質) から得られる合成基質) とを混合して、 酸性条 件下で反応させた場合に、 当該酵素溶液の単位量が単位時間当たりに遊離させ 得る 4-メチルゥンべリフヱ口ンの量を検出することにより測定することができる。 上記 α -GAL活性及び a -NAGA活性の測定方法において、 蛍光基質の検出には、 公知の各種検出方法を採用できるが、 例えば、 蛍光光度計等により検出する方 法が好ましい。 また、 目的タンパク質の発現は、 公知の各種発現ベクター等に組 込んで細胞に導入し発現させればよい。 3 . 組換え遺伝子
本発明の遺伝子は、 上述した本発明のタンパク質をコードする遺伝子である。 本発明の遺伝子としては、 例えば、 以下の (la)又は (lb)の DNAを含む遺伝子が 好ましく挙げられる。 なお、 以下の (la)及ぴ (lb)の DNAは、 いずれも本発明のタ ンパク質の構造遺伝子であることが好ましいが、 これら DNAを含む遺伝子とし
ては、 これら DNAのみからなるものであってもよいし、 これら DNAを一部に含 み、 その他に遺伝子発現に必要な公知の塩基配列 (転写プロモーター、 SD配列、 Kozak配列、 ターミネータ一等) をも含むものであってもよく、 限定はされない。
(la) 下記i)〜(iii)のいずれかの塩基配列を含む DNA
) 配列番号 1に示される塩基配列において第 562番目〜第 564番目の塩基 「 agc」 がセリン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配列のうち、 第 52番目〜第 1,236番目の塩基からなる塩基配列
(ϋ)配列番号 1に示される塩基配列において第 571番目〜第 573番目の塩基 「 gcc」 がァラニン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配列のう ち、 第 52番目〜第 1,236番目の塩基からなる塩基配列
(iii)配列番号 1に示される塩基配列において第 562番目〜第 564番目の塩基 「 agcj がセリン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換され第 571番目〜第 573 番目の塩基がァラニン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配 列のうち、 第 52番目〜第 1,236番目の塩基からなる塩基配列
(lb) 上記 (la)の (i)〜(辻 ί)のいずれかの塩基配列を含む DNAに対し相補的な塩 基配列からなる DNAとストリンジヱントな条件下でハイブリダィズする DNAで あって、 前記置換部位の塩基に対応する塩基が当該置換部位の塩基と同一であ り、 かつ α -ガラクトシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする DNA
本発明において 「コドン」 とは、 転写後の RNA配列上の 3塩基連鎖 (トリプ レット) に限らず、 DNA配列上の 3塩基連鎖をも意味する。 よって、 DNA配列 上のコドンの表記は、 ゥラシル (U)の代わりにチミン (Τ)を用いて行う。
配列番号 1に示される塩基配列は、 野生型 α -NAGAをコードする 1,236個の塩 基からなる塩基配列である。
上記 (la)の DNAは、 詳しくは、 この配列番号 1に示される塩基配列において 上記 (i)〜(iii)に記載のように塩基置換がなされた塩基配列のうち、 野生型 NAGAのシグナルぺプチドをコ一ドする第 1番 g〜第 51番目の塩基を除いた、 第 52番目〜第 1,236番目の塩基配列を含む塩基配列からなる DNAである。
ここで、 上記第 52番目〜第 1,236番目の塩基配列を含む塩基配列としては、 例 えば、 当該第 52番目〜第 1,236番目の塩基配列の 5,側に、 各種シグナルペプチド
をコードする塩基配列 (ポリヌクレオチド) が結合した塩基配列が好ましく挙 げられる。 当該シグナルペプチドとしては、 障害臓器の細胞膜を通過させ得る ものであればよく、 限定はされないが、 例えば、 野生型 a -NAGA及び野生型 a - GAL等の各種リソソーム酵素のシグナルペプチド、 並びにプレプロ トリプシン (preprotrypsin) 等の分泌酵素のシグナルぺプチドが好ましく、 より好ましく は野生型 a -NAGA及ぴ野生型 a -GALのシグナルぺプチドであり、 さらに好まし くは野生型ひ - GALのシグナルペプチドである。 なお、 野生型ひ -NAGAのシグナ ルぺプチドをコードする塩基配列は、 配列番号 1に示される野生型 a -NAGAの 塩基配列のうち第 1番目〜第 51番目の塩基からなる塩基配列であり、 野生型 α · GALのシグナルペプチドをコードする塩基配列は、 配列番号 9に示される野生 型 -GALの塩基配列のうち第 1番目〜第 93番目の塩基からなる塩基配列である。 また、 プレブロ トリプシンのシグナルペプチドをコードする塩基配列は、 配列 番号 1 1に示される塩基配列である。
上記 (la)の DNAとしては、 上記 (0、 (ii)又は Oii)の塩基配列を含む DNAのうち、 上記 Gii)の塩基配列を含む DNAが特に好ましい。
また、 上記 (la)の DNAとしては、 上記 (i)及ぴ Gii)の記載中の 「セリン以外のァ ミノ酸のコ ドンを示す塩基」 がグルタミン酸又はァスパラギン酸のコドンを示 す塩基である場合の DNAが好ましく挙げられる。 同様に、 上記 (la)の DNAとし ては、 上記 ii)及ぴ Oii)の記載中の 「ァラニン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基 J がロイシン、 バリン、 イソロイシン、 フエ二ルァラニン及びメチォニンから なる群より選ばれるいずれか 1つのコドンを示す塩基である場合の DNAも好ま しく挙げられる。 ここで、 上記の各アミノ酸のコ ドンを示す塩基 (左端の塩基 を 5 '側の塩基とする) については、 グルタミン酸のコドンを示す塩基は 「gag」 又は 「gaa」 (好ましくは 「gag」 ) であり、 ァスパラギン酸のコドンを示す塩 基は 「gat」 又は 「gac」 である。 同様に、 ロイシンのコドンを示す塩基は 「ctc 」 、 「ctt」 、 「cta」 又は 「ctg」 (好ましくは 「ctc」 ) であり、 バリンのコド ンを示す塩基は 「gtt」 、 「gtc」 、 「gta」 又は 「gtg」 であり、 イソロイシンの コ ドンを示す塩基は 「att」 、 「atc」 又は 「ata」 であり、 フエ二ルァラニンの コドンを示す塩基は 「ttt」 又は 「ttc」 であり、 メチォニンのコドンを示す塩基
は 「atg」 である。 なお、 セリンのコドンを示す塩基としては、 前記 「agc」 以 外に 「agt」 があり、 ァラニンのコドンを示す塩基としては、 前記 「gcc」 以外に 「gct;」 、 「gca」 及び 「gcg」 がある。
さらに、 上記 (la)の DNAとしては、 上記 (i)〜(iii)の記載中の 「セリン以外のァ ミノ酸のコドンを示す塩基」 がグルタミン酸のコドンを示す塩基であり、 かつ、 「ァラニン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基」 がロイシンのコドンを示す塩 基である場合の DNAが、 特に好ましく挙げられる。 当該 DNAとしては、 例えば、 野生型 a -NAGAの塩基配列 (配列番号 1 ) のうち第 562番目〜第 564番目の塩基 がセリンのコドンを示す塩基からグルタミン酸のコドンを示す塩基に置換され ( 「agc」 → 「gag」 ) 、 かつ、 第 571番目〜第 573番目の塩基がァラニンのコ ド ンを示す塩基からロイシンのコドンを示す塩基に置換された ( 「gcc」 → 「ctc」 ) 塩基配列 (配列番号 3 ) からなる DNAが好ましく挙げられる。 この例示にお いては、 置換後の第 562番目〜第 564番目の塩基は、 グルタミン酸のコドンを示 す塩基であれば上記 「gag」 以外の塩基であってもよいし、 同様に、 置換後の第 571番目〜第 573番目の塩基は、 ロイシンのコドンを示す塩基であれば上記 「ctc 」 以外の塩基であってもよく、 限定はされない。
以上のよ うな変異置換型の DNAは、 例えば、 Molecular Cloning, A Lao oratory Manual 2nd ea., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、 Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987.1997) 等に 記載の部位特異的変位誘発法に準じて調製することができる。 具体的には、 Kunkel法や Gapped duplex法等の公知手法により、 部位特異的突然変異誘発法 を利用した変異導入用キットを用いて調製することができ、 当該キットとして は、 例えば、 QuickChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit (ストラタジーン 社製) 、 GeneTailor™ Site-Directed Mutagenesis System (インビトロジェン 社製) 、 TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System ( Mutan-K , Mutan- Super Express Km等:タカラバイオ社製) 等が好ましく挙げられる。
また、 後述する実施例に記載のように、 所望のアミノ酸のコドンを示す塩基 となるようにミスセンス変異が導入されるように設計した PCRプライマーを用 レ、、 野生型 α -NAGAをコードする塩基配列を含む DNA等をテンプレートとして、
適当な条件下で PGRを行うことにより調製することもできる。 こ用いる DNAポリメラーゼは、 限定はされないが、 正確性の高い DNAポリメラーゼであ ることが好ましく、 例えば、 Pwo DNAポリメラーゼ (ロシュ ·ダイァグノステ イツタス) 、 Pfu DNAポリメラーゼ (プロメガ) 、 プラチナ Pfx DNAポリメラー ゼ (インビトロジェン) 、 KOD DNAポリメラーゼ (東洋紡) 、 KOD-plus-ポリ メラーゼ (東洋紡) 等が好ましい。 PCRの反応条件は、 用いる DNAポリメラーゼ の最適温度、 合成する DNAの長さや種類等により適宜設定すればよいが、 例えば、 サイクル条件であれば 「90〜98°Cで 5〜30秒 (熱変性 '解離) →50〜65°Cで 5〜 30秒 (アニーリング) →65〜80°Cで 30〜: 1200秒 (合成 ·伸長) 」 を 1サイクル として合計 20〜200サイクル行う条件が好ましい。
上記 (lb)の DNAは、 上記 (i)〜(iii)のいずれかの塩基配列を含む DNA (すなわ ち上記 (la)の DNA) 若しくはそれと相補的な塩基配列からなる DNA、 又はこれら を断片化したものをプローブとして用い、 コロニーハイブリダィゼーシヨン、 プ ラークハイブリダィゼーシヨン、 及びサザンブロット等の公知のハイプリダイゼ ーシヨン法を実施し、 cDNAライブラリーやゲノムライブラリーから得ることが できる。 ライブラリ一は、 公知の方法で作製されたものを利用してもよいし、 巿 販の cDNAライブラリーやゲノムライブラリーを利用してもよく、 限定はされな い。
ハイブリダィゼーシヨン法の詳細な手順については、 Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)% ¾r 適宜参照することができる。
ハイブリダィゼーシヨン法を実施における 「ストリンジヱントな条件」 とは、 ハイブリダイゼーション後の洗浄時の条件であって、 バッファーの塩濃度が 15 ~330mM、 温度が 25〜65°C、 好ましくは塩濃度が 15〜: l50mM、 温度が 45〜55 °Cの条件を意味する。 具体的には、 例えば 80mMで 50°C等の条件を挙げること ができる。 さらに、 このような塩濃度や温度等の条件に加えて、 プローブ濃度、 プローブの長さ、 反応時間等の諸条件も考慮し、 上記 (lb)の DNAを得るための 条件を適宜設定することができる。
ハイブリダイズする DNAとしては、 上記 (la)の DNAの塩基配列に対して少な くとも 40%以上の相同性を有する塩基配列であることが好ましく、 より好まし くは 60%以上、 さらに好ましくは 90%以上、 特に好ましくは 95%以上、 最も好 ましくは 99%以上である。
また、 上記 (lb)の DNAは、 前記置換部位の塩基に対応する塩基が当該置換部 位の塩基と同一である。
ここでいう 「置換部位」 とは、 上記 (la)の DNAに含まれる上記 (i)〜(iii)のいず れかの塩基配列においてなされた塩基置換の部位であり、 詳しくは、 当該塩基 置換により生じた変更後のコドンを示す塩基 (トリプレット) の部位を意味す る。 具体的には、 「置換部位」 とは、 上記 (i)〜(iii)の塩基配列を構成する 1,185 個の塩基のうち、 配列番号 1に示される塩基配列における第 562番目〜第 564番 目の塩基の位置に対応する塩基 (伹し上記 ( 及び ii)の塩基配列に限る) 、 並び に、 配列番号 1に示される塩基配列における第 571番目〜第 573番目の塩基の位 置に対応する塩基 (但し上記 (ϋ)及び Gii)の塩基配列に限る) を意味する。 さらに 具体的には、 前者の塩基は、 上記 (i)及ぴ Gii)の塩基配列における第 511番目〜第 513番目の塩基を意味し、 後者の塩基は、 上記 (ii)及び (iii)の塩基配列における第 520番目〜第 522番目の塩基を意味する。
また 「前記置換部位の塩基に対応する塩基」 の 「対応する塩基」 とは、 上記 (lb)の DNAが上記 (la)の DNAに対する相補鎖とハイブリダィズした場合に、 こ のハイプリッドにおいて、 前記置換部位の塩基に対する相補塩基 (トリプレツ ト) と、 位置的に対向する関係にある塩基 (トリプレット) を意味する。 例え ば、 上記 (lb)の DNAの塩基配列が、 上記 (la)の DNAと比較して欠失及び付加の 変異が無い場合 (つまり両 DNAの長さ(塩基数)が同じ) であれば、 上記 (lb)の DNAの塩基配列における第 511番目〜第 513番目の塩基及び Z又は第 520番目〜 第 522番目の塩基が、 上記 「対応する塩基」 となる。
なお、 上記 (lb)の DNAは、 α -GAL活性を有するタンパク質をコードする DNA であることが重要である。 そのため、 例えば、 - GALの基質中の -ガラクトー ス残基との結合性 (基質結合性) 及び当該基質との触媒反応性に重要と考えら れるアミノ酸残基のコドンを示す塩基は、 上記ひ)〜 (iii)の塩基配列から変異 (欠
失、 置換又は付加) されていないものが好ましい。 上記 (0〜0ii)の塩基配列上の そのような塩基としては、 当該塩基配列のうち配列番号 1に示される塩基配列 における第 82番目〜第 93番目(4コドン)、 第 229番目〜第 243番目(5コドン)、 第 349番目〜第 381番目(11コドン)、 第 448番目〜第 474番目(9コドン)、 第 574番目 〜第 576番目(1コドン)、 第 625番目〜第 660番目(12コドン)及び第 724番目〜第 762番目(13コドン)の塩基の位置に対応する塩基が好ましく挙げられ、 中でも特 に、 触媒部位のアミノ酸残基のコドンを示す第 466番目〜第 468番目及び第 649 番目〜第 651番目の塩基に対応する塩基が好ましい。
また、 上記 (lb)の DNAは、 ホモ二量体の形成に重要と考えられるアミノ酸残 基のコドンを示す塩基も、 上記 ω〜0ϋ)の塩基配列から変異 (欠失、 置換又は付 カロ) されていないものが好ましい。 上記 (i)〜0ii)の塩基配列上のそのような塩基 としては、 当該塩基配列のうち、 配列番号 1に示される塩基配列における第 133 番目〜第 135番目及ぴ第 1,048番目〜第 1,050番目の塩基の位置に対応する塩基が 好ましく挙げられる。
さらに、 上記 (lb)の DNAは、 N型糠鎖結合部位であるアミノ酸残基のコドンを 示す塩基も、 上記 (i)〜(iii)の塩基配列から変異 (欠失、 置換又は付加) されてい ないものが好ましい。 上記i)〜(iii)の塩基配列上のそのような塩基としては、 当 該塩基配列のうち、 配列番号 1に示される塩基配列における第 370番目〜第 372 番目、 第 529番目〜第 531番目、 第 601番目〜第 603番目、 第 1,075番目〜第 1,077 番目及び第 1,153番目〜第 1,155番目の塩基の位置に対応する塩基が好ましく挙 げられる。
上記 (lb)の DNAとしては、 例えば、 上記(la)の DNAと比較して、 塩基配列に ついては完全に同一ではないが、 翻訳された後のアミノ酸配列については完全 に同一となるような塩基配列からなる DNA (すなわち上記 (la)の DNAにサイレ ント変異が施された DNA) 力 特に好ましい。 また、 本発明の遺伝子としては、 以下の (2a)又は (2b)の DNAを含む遺伝子も好 ましく挙げられる。 以下の (2a)及び (2b)の DNAは、 いずれも本発明のタンパク質 の構造遺伝子であることが好ましいが、 これら DNAを含む遺伝子としては、 こ
れら DNAのみからなるものであってもよいし、 これら DNAを一部に含み、 その 他に遺伝子発現に必要な公知の塩基配列 (転写プロモーター、 SD配列、 Kozak 配列、 ターミネータ一等) をも含むものであってもよく、 限定はされない。
(2a) 下記 i)〜(iii)のいずれかの塩基配列を含む DNA
( 配列番号 5に示される塩基配列において第 604番目〜第 606番目の塩基 「 agc」 がセリン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配列
(ϋ) 配列番号 5に示される塩基配列において第 613番目〜第 615番目の塩基 「 gcc」 がァラニン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配列
(iii)配列番号 5に示される塩基配列において第 604番目〜第 606番目の塩基 「 agc」 がセリン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換され第 613番目〜第 615 番目の塩基がァラニン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配 列
(2b) 上記 (2a)の (i)〜(辻 ί)のいずれかの塩基配列を含む DNAに対し相補的な塩 基配列からなる DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする DNAで あって、 前記置換部位の塩基に対応する塩基が当該置換部位の塩基と同一であ り、 かつ α -ガラクトシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする DNA
配列番号 5に示される塩基配列は、 野生型 α -NAGAをコードする 1,236個の塩 基配列において、 シグナルぺプチド部分をコードする第 1番目〜第 51番目の塩基 からなる配列が野生型 - GALのシグナルぺプチド部分をコードする塩基配列に 変換された塩基配列であり、 いわゆる融合タンパク質をコードする塩基配列で ある。 ここで、 野生型 α -GALのシグナルペプチド部分をコードする塩基配列は、 前述した通り、 配列番号 9に示される野生型 α -GALをコードする塩基配列のう ち、 第 1番目〜第 93番目の塩基からなる配列である。
上記 (2a)の DNAとしては、 上記 (i)、 (ii)又は Oii)の塩基配列を含む DNAのうち、 上記 ii)の塩基配列を含む DNAが特に好ましい。
また、 上記 (2a)の DNAとしては、 上記 (i)及ぴ (iii)の記載中の 「セリン以外のァ ミノ酸のコドンを示す塩基」 がグルタミン酸又はァスパラギン酸のコドンを示 す塩基である場合の DNAが好ましく挙げられる。 同様に、 上記 (2a)の DNAとし ては、 上記 (ii)及び (iii)の記載中の 「ァラニン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基
J がロイシン、 パリン、 ィソロイシン、 フエ二ルァラニン及びメチォニンから なる群より選ばれるいずれか 1つのコドンを示す塩基である場合の DNAも好ま しく挙げられる。 ここで、 上記の各アミノ酸のコドンを示す塩基については、 前記 (la)の DNAに関する説明が同様に適用できる。
さらに、 上記 (2a)の DNAとしては、 上記 (i)〜(iii)の記載中の 「セリン以外のァ ミノ酸のコドンを示す塩基」 がグルタミン酸のコドンを示す塩基であり、 かつ、 「ァラニン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基」 がロイシンのコドンを示す塩 基である場合の DNAが、 特に好ましく挙げられる。 当該 DNAとしては、 例えば、 配列番号 5に示される塩基配列のうち、 第 604番目〜第 606番目の塩基がセリン のコドンを示す塩基からグルタミン酸のコドンを示す塩基に置換され ( 「agc」 → 「gag」 ) 、 かつ、 第 613番目〜第 615番目の塩基がァラニンのコドンを示す塩 基からロイシンのコドンを示す塩基に置換された ( 「gcc」 → 「ctc」 ) 塩基配列 (配列番号 7 ) からなる DNAが好ましく挙げられる。 この例示においては、 置 換後の第 604番目〜第 606番目の塩基は、 グルタミン酸のコドンを示す塩基であ れば上記 「gag」 以外の塩基であってもよいし、 同様に、 置換後の第 613番目〜 第 615番目の塩基は、 ロイシンのコドンを示す塩基であれば上記 「ctc」 以外の塩 基であってもよく、 限定はされない。
以上のような変異置換型の DNAの調製法などについては、 前記 (la)の DNAに 関する説明が同様に適用できる。
上記 (2b)の DNAは、 上記 (i)〜(iii)のいずれかの塩基配列を含む DNA (すなわ ち上記 (2a)の DNA) 若しくはそれと相補的な塩基配列からなる DNA、 又はこれら を断片化したものをプローブとして用い、 公知のハイプリダイゼーション法を実 施し、 cDNAライブラリーやゲノムライプラリーから得ることができる。 ハイブ リダィゼーシヨン法の種類、 手順及ぴ条件、 並びに各ライブラリーについては、 前記 (lb)の DNAに関する説明が同様に適用できる。
ハイプリダイズする DNAとしては、 上記 (2a)の DNAの塩基配列に対して少な くとも 40%以上の相同性を有する塩基配列であることが好ましく、 より好まし くは 60%以上、 さらに好ましくは 90%以上、 特に好ましくは 95%以上、 最も好 ましくは 99%以上である。
また、 上記 (2b)の DNAは、 前記置換部位の塩基に対応する塩基が当該置換部 位の塩基と同一である。
ここでいう 「置換部位」 とは、 上記 (2a)の DNAに含まれる上記 (i)〜(; Mi)のいず れかの塩基配列においてなされた塩基置換の部位であり、 詳しくは、 当該塩基 置換により生じた変更後のコドンを示す塩基 (トリプレット) の部位を意味す る。 具体的には、 「置換部位」 とは、 上記 (i)〜(: iii)の塩基配列を構成する 1,275 個の塩基のうち、 第 604番目〜第 606番目の塩基 (但し上記 G)及ぴ (iii)の塩基配列 に限る) 並びに第 613番目〜第 615番目の塩基 (但し上記 (ii)及び (iii)の塩基配列 に限る) を意味する。
また 「前記置換部位の塩基に対応する塩基」 の 「対応する塩基」 とは、 上記 (2b)の DNAが上記 (2a)の DNAに対する相補鎖とハイブリダィズした場合に、 こ のハイプリッドにおいて、 前記置換部位の塩基に対する相補塩基 (トリプレツ ト) と、 位置的に対向する関係にある塩基 (トリプレット) を意味する。 例え ば、 上記 (2b)の DNAの塩基配列が、 上記 (2a)の DNAと比較して欠失及び付加の 変異が無い場合 (つまり両 DNAの長さ(塩基数)が同じ) であれば、 上記 (2b)の DNAの塩基配列における第 604番目〜第 606番目の塩基及び/又は第 613番目〜 第 615番目の塩基が、 上記 「対応する塩基」 となる。
なお、 上記 (2b)の DNAは、 α -GAL活性を有するタンパク質をコードする DNA であることが重要である。 そのため、 例えば、 α -GALの基質中の《-ガラクトー ス残基との結合性 (基質結合性) 及び当該基質との触媒反応性に重要と考えら れるアミノ酸残基のコドンを示す塩基は、 上記 (i)〜0ii)の塩基配列から変異 (欠 失、 置換又は付加) されていないものが好ましい。 上記 (i)〜(iii)の塩基配列上の そのような塩基としては、 当該塩基配列のうち第 124番目〜第 135番目(4コドン)、 第 271番目〜第 285番目(5コドン)、 第 391番目〜第 423番目(11コドン)、 第 490番 目〜第 516番目(9コドン)、 第 616番目〜第 618番目(1コドン)、 第 667番目〜第 702 番目(12コドン)及び第 766番目〜第 804番目(13コドン)の塩基が好ましく挙げられ、 中でも特に、 触媒部位のアミノ酸残基のコドンを示す第 508番目〜第 510番目及 び第 691番目〜第 693番目の塩基が好ましい。
また、 上記 (2b)の DNAは、 ホモ二量体の形成に重要と考えられるアミノ酸残 基のコドンを示す塩基も、 上記 〜0ii)の塩基配列から変異 (欠失、 置換又は付 カロ) されていないものが好ましい。 上記 0〜(iiOの塩基配列上のそのような塩基 としては、 当該塩基配列のうち第 175番目〜第 177番目及び第 1,090番目〜第 1,092番目の塩基が好ましく挙げられる。
さらに、 上記 (2b)の DNAは、 N型糖鎖結合部位であるアミノ酸残基のコドンを 示す塩基も、 上記 〜dii)の塩基配列から変異 (欠失、 置換又は付加) されてい ないものが好ましい。 上記 (i)〜 iii)の塩基配列上のそのような塩基としては、 当 該塩基配列のうち第 412番目〜第 414番目、 第 571番目〜第 573番自、 第 643番目 〜第 645番目、 第 1,117番目〜第 1,119番目及び第 1,195番目〜第 1,197番目の塩基 が好ましく挙げられる。
上記 (2b)の DNAとしては、 例えば、 上記 (2a)の DNAと比較して、 塩基配列に ついては完全に同一ではないが、 翻訳された後のアミノ酸配列については完全 に同一となるような塩基配列からなる DNA (すなわち上記 (2a)の DNAにサイレ ント変異が施された DNA) 力 特に好ましい。
以上に述べた本発明のタンパク質をコードする遺伝子としては、 翻訳後の個々 のアミノ酸に対応するコドンは、 特に限定はされないため、 転写後、 ヒト等の哺 乳類において一般的に用いられているコドン (好ましくは使用頻度の高いコドン ) を示す DNAを含むものであってもよいし、 また、 大腸菌や酵母等の微生物や、 植物等において一般的に用いられているコドン (好ましくは使用頻度の高いコド ン) を示す DNAを含むものであってもよい。
4 . 組換えべクタ一及び形質転換体
本発明のタンパク質を発現させる場合、 通常は、 まず上述の本発明の遺伝子を 発現ベクターに組込んだ組換えベクターの構築が行われる。 この際、 発現べクタ 一に組込む遺伝子には、 必要に応じて、 予め、 上流に転写プロモーター、 SD配 列 (宿主が原核細胞の場合) 及び Kozak配列 (宿主が真核細胞の場合) を連結し ておいてもよいし、 下流にターミネータ一を連結しておいてもよく、 その他、 ェ ンハンサー、 スプライシングシグナル、 ポリ A付加シグナル、 選択マーカー等
を連結しておくこともできる。 なお、 上記転写プロモーター等の遺伝子発現に必 要な各要素は、 初めから当該遺伝子に含まれていてもよいし、 もともと発現べク ターに含まれている場合はそれを利用してもよく、 各要素の使用態様は特に限定 されない。
発現ベクターに当該遺伝子を組込む方法としては、 例えば、 制限酵素を用いる 方法や、 トポイソメラーゼを用いる方法など、 公知の遺伝子組換え技術を利用し た各種方法が採用できる。 また、 発現ベクターとしては、 例えば、 プラスミ ド DNA、 バクテリオファージ DNA、 レトロ トランスポゾン DNA、 レトロウイルス ベクター、 人工染色体 DNAなど、 本発明のタンパク質をコードする遺伝子を保 持し得るものであれば、 限定はされず、 使用する宿主細胞に適したベクターを適 宜選択して使用することができる。
次いで、 構築した上記組換えベクターを宿主に導入して形質転換体を得、 これ を培養することにより、 本発明のタンパク質を発現させることができる。 なお、 本発明で言う 「形質転換体」 とは宿主に外来遺伝子が導入されたものを意味し、 例えば、 宿主にプラスミド DNA等を導入すること (形質転換) で外来遺伝子が 導入されたもの、 並びに、 宿主に各種ウィルス及びファージを感染させること (形質導入) で外来遺伝子が導入されたものが含まれる。
宿主としては、 上記組換えベクターが導入された後、 本発明のタンパク質を発 現し得るものであれば、 限定はされず、 適宜選択することができるが、 例えば、 ヒトゃマウス等の各種動物細胞、 各種植物細胞、 細菌、 酵母等の公知の宿主が挙 げられる。
動物細胞を宿主とする場合は、 例えば、 ヒト繊維芽細胞、 CHO細胞、 サル細 胞 COS_7、 Vero, マウス L細胞、 ラット GH3、 ヒ ト FL細胞等が用いられる。 ま た、 Sf9細胞、 Sf21細胞等の昆虫細胞を用いることもできる。
細菌を宿主とする場合、 例えば、 大腸菌、 枯草菌等が用いられる。
酵母を宿主とする場合は、 例えば、 サッカロミセス ' セレピシェ ( Sacchaiomyces cerevisiae ) 、 シ ゾ サ ッ カ ロ ミ セ ス · ホ ン べ ( Schizosaccharomyces pombe) 等力 s用レ、られる。
植物細胞を宿主とする場合は、 例えば、 タバコ BY-2細胞等が用いられる。
形質転換体を得る方法は、 限定はされず、 宿主と発現ベクターとの種類の組み 合わせを考慮し、 適宜選択することができるが、 例えば、 電気穿孔法、 リポフエ クション法、 ヒートショック法、 PEG法、 リン酸カルシゥム法、 DEAEデキスト ラン法、 並びに、 DNAウィルスや RNAウィルス等の各種ウィルスを感染させる方 法などが好ましく挙げられる。
得られる形質転換体においては、 組換えベクターに含まれる遺伝子のコドン型 は、 実際に用いた宿主のコドン型と一致していてもよいし、 異なっていてもよく、 限定はされない。 5 . タンパク質の製法
本発明のタンパク質 (a -GAL活性を有するタンパク質) は、 例えば、 野生型 ひ - NAGAの活性部位 (特に基質結合部位) の構造を、 a -GALの基質が結合でき るように変化させることにより製造することができる。 α -GALの基質を結合さ せることができれば、 野生型 α -NAGAの触媒部位による触媒作用により当該基 質は加水分解され得る。
このような構造変化は、 例えば、 前述したように、 遺伝子組換え技術により、 野生型ひ - NAGAの活性部位 (基質結合部位) を構成するアミノ酸配列中、 (i) 第 188番目のセリンをグルタミン酸又はァスパラギン酸等の他のアミノ酸に置換し、 Gi)第 191番目のァラニンをロイシン、 バリン、 イソロイシン、 フエ二ルァラニン 又はメチォニン等の他のアミノ酸に置換し、 あるいは (iii) 第 188番目のセリン及 び第 191番目のァラニンを共に上記 i), ii)のように置換する。 このようにして、 置 換前と置換後のァミノ酸側鎖の立体構造を変化させることで行うことができ、 野 生型 - NAGAの基質特異性を変化させることができる。 特に、 上記構造変化は、 第 188番目のセリンをグルタミン酸に置換し且つ第 191番目のァラニンをロイシン に置換して行うことが好ましく、 これにより α -NAGAに α -GALの基質特異性を 付与することができる。 なお、 以上の構造変化において、 顕著な立体構造変化を もたらすァミノ酸置換は、 第 191番目のァラニンをロイシン等に置換することで ある。 詳しくは、 第 191番目のアミノ酸の側鎖が、 ァラニンの側鎖である 「- CH3 」 から、 ロイシンの側鎖である 「- CH2-CH(CH3)- CH3」 等のように占有空間の大
きな側鎖に変わることで、 α -NAGAの基質中の N-ァセチル基が活性部位に入り 込む空間が制限され、 当該基質との結合性が低減し、 その分 - GALの基質との 結合性が高まることとなる。
ここで、 上述した本発明のタンパク質の製造方法は、 構造変化前の野生型ひ - NAGAとして、 野生型 a -GAL由来のシグナルぺプチドを含む野生型 a -NAGAを 用いて行ってもよいし、 あるいは、 構造変化により変異型ひ - NAGAを得た後、 この変異型 a -NAGAに野生型 a -GAL由来のシグナルぺプチドを付加する (結合 させる) 工程、 若しくは、 変異型 a -NAGAが野生型ひ - NAGAのシグナルぺプチ ドを含むものである場合はこのシグナルぺプチドを野生型 a -GAL由来のシグナ ルペプチドに変換する工程を行ってもよく、 限定はされない。
そのため、 本発明のタンパク質の製造方法としては、 例えば、 野生型ヒト α · ガラクトシダーゼ由来のシグナルペプチドを含む野生型ヒ トひ - Ν-ァセチルガラ クトサミニダーゼの活性部位の構造を、 α -ガラクトシダーゼの基質が結合でき るように変化させることを特徴とする、 活性を有するタンパク質の製造 方法が好ましく挙げられる。
また、 本発明のタンパク質の製造方法としては、 野生型 - NAGAの活性部位 の構造を a -GALの基質が結合できるように変化させたタンパク質に野生型 GAL由来のシグナルペプチドを付加する (結合させる) 、 又は、 野生型ひ - NAGAの活性部位の構造を a -GALの基質が結合できるように変化させたタンパ ク質のシグナルぺプチド部分を野生型 - GAL由来のシグナルぺプチドに変換す ることを特徴とする、 ひ - GAL活性を有するタンパク質の製造方法も好ましく挙 げられる。
なお、 上述したシグナルペプチド部分の変換は、 野生型 a -NAGA及ぴ野生型 α -GALについての公知の塩基配列情報及ぴアミノ酸配列情報を用いて、 遺伝子 組換え技術の常法により行うことができる。
本発明のタンパク質の製造は、 具体的には、 前述した形質転換体を培養するェ 程と、 得られる培養物から ct -ガラク トシダーゼ活性を有するタンパク質を採取 する工程とを含む方法により実施することができる。 ここで、 「培養物」 とは、 培養上清、 培養細胞、 培養菌体、 又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも
意味するものである。 上記形質転換体の培養は、 宿主の培養に用いられる通常 の方法に従って行うことができる。 目的のタンパク質は、 上記培養物中に蓄積 される。
上記培養に用いる培地としては、 宿主が資化し得る炭素源、 窒素源、 無機塩 類などを含有し、 形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、 公知の各種天然培地及び合成培地のいずれを用いてもよい。
培養中は、 形質転換体に含まれる組換えベクターの脱落及び目的タンパク質を コードする遺伝子の脱落を防ぐために、 選択圧をかけた状態で培養してもよレ、。 すなわち、 選択マーカーが薬剤耐性遺伝子である場合には、 相当する薬剤を培 地に添加することができ、 選択マーカーが栄養要求性相補遺伝子である場合に は、 相当する栄養因子を培地から除くことができる。 例えば、 G418耐性遺伝子 を含むベクターで形質導入したヒ ト線維芽細胞を培養する場合、 培養中、 必要 に応じて G418 (G418硫酸塩) を添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換 した形質転換体等を培養する場合は、 必要に応じて、 好適なインデューサー ( 例えば、 IPTG等) を培地に添加してもよい。
形質転換体の培養条件は、 目的タンパク質の生産性及び宿主の生育が妨げられ ない条件であれば特に限定はされず、 通常、 10°C〜40°C、 好ましくは 20°C〜37 °Cで 5〜: L00時間行う。 pHの調整は、 無機又は有機酸、 アルカリ溶液等を用いて 行うことができる。 培養方法としては、 固体培養、 静置培養、 振盪培養、 通気 攪拌培養などが挙げられる。
培養後、 目的タンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、 菌体又は 細胞を破砕することにより目的タンパク質を採取することができる。 菌体又は細 胞の破砕方法としては、 フレンチプレス又はホモジナイザーによる高圧処理、 超音波処理、 ガラスビーズ等による磨砕処理、 リゾチーム、 セルラーゼ又はべ クチナ一ゼ等を用いる酵素処理、 凍結融解処理、 低張液処理、 ファージによる 溶菌誘導処理等を利用することができる。 破砕後、 必要に応じて菌体又は細胞 の破碎残渣 (細胞抽出液不溶性画分を含む) を除くことができる。 残渣を除去 する方法としては、 例えば、 遠心分離やろ過などが挙げられ、 必要に応じて、
凝集剤やろ過助剤等を使用して残渣除去効率を上げることもできる。 残渣を除 去した後に得られた上清は、 細胞抽出液可溶性画分であり、 粗精製したタンパク 質溶液とすることができる。
また、 目的のタンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合は、 菌体ゃ細胞 そのものを遠心分離、 膜分離等で回収して、 未破砕のまま使用することも可能 である。
一方、 目的のタンパク質が菌体外又は細胞外に生産される場合には、 培養液を そのまま使用するか、 遠心分離やろ過等により菌体又は細胞を除去する。 その 後、 必要に応じて硫安沈澱による抽出等により、 培養物中から目的タンパク質を 採取し、 さらに必要に応じて透析、 各種クロマトグラフィー (ゲルろ過、 イオン 交換クロマトグラフィー、 ァフィ-ティクロマトグラフィー等) を用いて単離 精製することもできる。
なお、 前述のように、 目的タンパク質が菌体又は細胞を用いて (菌体内又は 細胞内に、 あるいは菌体外又は細胞外に) 生産される場合は、 通常、 シグナル ぺプチド部分が、 菌体内又は細胞内の小胞体から細胞質に移動する際や、 菌体 外又は細胞外への分泌の際に除去され、 最終的に、 シグナルペプチド部分を有 しない成熟タンパク質の状態で回収されることになる。 しかしながら、 本発明 においては、 この態様には限定はされず、 例えば、 上述した小胞体から細胞質 への移動ゃ菌体外又は細胞外への分泌の際に必要なシグナルぺプチド部分を 2 つ以上重複して (連続して) 有するタンパク質をー且発現させ、 当該移動及び 分泌後においてもシグナルぺプチド部分を少なくとも 1つは有する状態のもの を回収するようにしてもよい。 この場合、 得られた目的タンパク質を医薬組成 物等の有効成分として利用する場合は、 例えば、 シグナルぺプチド部分を酵素 等を用いて切断又は分解し、 成熟タンパク質の状態にしてから利用すればよレ、。 形質転換体等を培養して得られたタンパク質の生産収率は、 例えば、 培養液あ たり、 菌体湿重量又は乾燥重量あたり、 粗酵素液タンパク質あたりなどの単位 で、 SDS-PAGE (ポリアタリルァミ ドゲル電気泳動) 等により確認することが できる。
また、 目的タンパク質の製造は、 上述したような形質転換体を用いたタンパク 質合成系のほか、 生細胞を全く使用しない無細胞タンパク質合成系を用いて行う こともできる。
無細胞タンパク質合成系とは、 細胞抽出液を用いて試験管等の人工容器内で目 的タンパク質を合成する系である。 また、 使用し得る無細胞タンパク質合成系と しては、 DNAを踌型として RNAを合成する無細胞転写系も含まれる。
この場合、 使用する細胞抽出液の由来は、 前述の宿主細胞であることが好まし い。 細胞抽出液としては、 例えば真核細胞由来又は原核細胞由来の抽出液、 より 具体的には、 CHO細胞、 ゥサギ網状赤血球、 マウス L-細胞、 HeLa細胞、 小麦胚 芽、 出芽酵母、 大腸菌などの抽出液を使用することができる。 なお、 これらの細 胞抽出液は、 濃縮又は希釈して用いてもよいし、 そのままでもよく、 限定はされ なレ、。
細胞抽出液は、 例えば限外濾過、 透析、 ポリエチレングリコール (PEG)沈殿等 によって得ることができる。
このような無細胞タンパク質合成は、 市販のキットを用いて行うこともできる。 例えば、 試薬キット PROTEIOSTM (東洋紡) 、 TNTTM System (プロメガ) 、 合 成装置の PG-MateTM (東洋紡) 、 RTS (ロシュ ·ダイァグノステイタス) 等が挙 げられる。
無細胞タンパク質合成によって産生された目的のタンパク質は、 前述したよう にクロマトグラフィー等の手段を適宜選択して、 精製することができる。
6 . フアプリ一病治療用医薬組成物
ω 補充用酵素薬等としての医薬組成物
本発明のタンパク質は、 前述したように、 フアブリ一病の治療に関して種々 の優れた効果を発揮し得るものであり、 フアプリ一病治療用医薬組成物 (ファ ブリー病治療剤) の有効成分として好適に用いることができる。 すなわち、 本 発明は、 前述した本発明のタンパク質を含有するフアプリ一病治療用医薬組成 物を提供するものである。 当該医薬組成物としては、 具体的には、 酵素補充療 法に用い得る補充用酵素薬の形態であることが好ましい。
当該医薬組成物において有効成分となる、 本発明のタンパク質は、 必要に応 じて各種塩や水和物等の状態で用いられてもよいし、 また、 治療剤としての保 存安定性 (特に酵素活性の維持) を考慮した適当な化学的修飾がなされた状態 で用いられてもよく、 特に限定はされない。
当該医薬組成物は、 本発明のタンパク質等以外にも他の成分を含むことがで きる。 他の成分としては、 当該医薬組成物の用法 (使用形態) に応じて必要と される、 製薬上許容され得る各種成分 (薬学的に許容し得る各種担体等) が挙 げられる。 他の成分は、 本発明のタンパク質等により発揮される効果が損なわ れない範囲で適宜含有することができる。
当該医薬組成物を補充用酵素薬として用いる場合は、 本発明のタンパク質の 配合割合や、 他の成分の種類及び配合割合は、 公知の補充用酵素薬 (特に、 フ アブリ一病治療用の補充用酵素薬) の調製法に準じて適宜設定することができ る。
当該医薬組成物の投与については、 その用法は限定はされないが、 補充用酵 素薬である場合は、 通常、 点滴静注などの非経口用法が採用される。 非経口用 法等の各種用法に用い得る製剤は、 薬剤製造上一般に用いられる賦形剤、 充填 剤、 増量剤、 結合剤、 湿潤剤、 崩壌剤、 潤滑剤、 界面活性剤、 分散剤、 緩衝剤、 保存剤、 溶解補助剤、 防腐剤、 矯味矯臭剤、 無痛化剤、 安定化剤、 等張化剤等 を適宜選択して使用し、 常法により調製することができる。
当該医薬組成物の形態は、 限定はされないが、 補充用酵素薬である場合は、 通常、 静脈内注射剤 (点滴を含む) が採用され、 例えば、 単位投与量アンプル 又は多投与量容器の状態等で提供され得る。
当該医薬組成物の投与量は、 一般には、 製剤中の有効成分の配合割合を考慮 した上で、 投与対象 (患者) の年齢、 体重、 病気の種類、 病状のほか、 投与経 路、 投与回数、 投与期間等を勘案し、 適宜、 広範囲に設定することができる。 特に、 当該医薬組成物が補充用酵素薬である場合は、 その投与回数は、 2〜4 週間に 1回程度が好ましく、 またその投与量 (/ 1回) は、 例えば、 有効成分 である本発明のタンパク質等 (組換え酵素) を、 患者の体重に対して 0.:!〜
10mg/kg程度投与できる量であることが好ましく、 より好ましくは 0.:!〜 5mg/kg 程度、 さらに好ましくは 0.2〜lmg/kg程度である。
本発明においては、 有効成分となる本発明のタンパク質 (組換え酵素) は、 血中安定性に優れ、 障害臓器の細胞への取り込み効率も高いため、 従来に比べ て少量の使用であっても従来と同様又はそれ以上の酵素補充効果を得ることが でき、 またアレルギー性副作用も極めて少ないので、 患者への体力的、 精神的 及び経済的な負担を大いに低減することができる。 ii)遺伝子治療剤としての医薬組成物
本発明の遺伝子は、 前述したように、 フアプリ一病の治療に関して種々の優 れた効果を発揮し得る本発明のタンパク質をコードするものであり、 フアブリ 一病治療用医薬組成物 (フアブリ一病治療薬 (遺伝子治療剤)) の有効成分として 用いることができる。 すなわち、 本発明は、 前述した本発明の遺伝子を含有す るフアブリ一病治療用医薬組成物を提供するものである。
当該医薬組成物が遺伝子治療剤に用いられる場合は、 注射により直接投与す る方法のほか、 核酸が組込まれたベクターを投与する方法が挙げられる。 上記 ベクターとしては、 アデノウィルスベクター、 アデノ関連ウィルスベクター、 へノレぺスゥイノレスベクター、 ヮクシニアウイノレスベタター、 レ トロウイノレスべ クタ一及びレンチウィルスベクター等が挙げられる。 これらのウィルスべクタ 一を用いることにより効率よく投与することができる。 なお、 市販の遺伝子導 入キット (例えば、 製品名 :アデノエクスプレス、 クローンテック社製) を用 いることもできる。
また、 当該医薬組成物を遺伝子治療剤に用いる場合、 当該組成物をリポソ一 ム等のリン脂質小胞体に導入し、 この小胞体を投与することも可能である。 本 発明の遺伝子を保持させた小胞体をリポフエクション法により所定の細胞に導 入する。 そして、 得られる細胞を例えば静脈内又は動脈内等に投与する。 ファ ブリー病の障害臓器に局所投与することもできる。 例えば、 成人に当該医薬組 成物を投与する場合は、 患者の体重に対し、 一日あたり O.l g/kg〜: I000mg/kg 程度であることが好ましく、 より好ましくは l w g/kg〜: I00mg/kg程度である。
7 . フアブリ一病の治療方法
本発明は、 上述した本発明の医薬組成物をフアブリ一病患者に投与すること を特徴とする、 フアブリ一病の治療方法を含むものである。 また本発明は、 フ アブリ一病を治療するための本発明の医薬組成物の使用、 及ぴ、 フアブリ一病 の治療のための薬剤を製造するための本発明の医薬組成物又は本発明のタンパ ク質の使用も含むものである。
本発明の治療方法に使用する医薬組成物は、 本発明のタンパク質を含む医薬 組成物 (前記 「6 . (0」 ) 、 又は本発明の遺伝子を含む医薬組成物 (前記 「6 .00」 ) 、 あるいはこれら両医薬組成物の併用であってもよく、 限定はされず、 患者の病状や副作用の有無、 あるいは投与効果などを考慮し、 適宜選択するこ とができる。 ここで、 フアブリ一病患者に投与する各医薬組成物は、 前述した 補充用酵素薬や遺伝子治療剤としての使用態様で投与することが好ましい。
特に、 上記併用の場合は、 それぞれの医薬組成物の投与量の割合、 投与回数 及び投与期間などを、 個々の患者に合わせて適宜設定することができる。 なお、 各医薬組成物等の好ましい投与方法及び投与量等については、 前述の通りであ る。 以下に、 実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、 本発明はこれら に限定されるものではない。
〔実施例 1〕
く ひ - N-ァセチルガラタトサミニダーゼ (α -NAGA)に導入する変異部位の選択〉 ヒト - NAGAの基質特異性をヒト α -GAL様に変換した新規酵素を設計するた め、 タンパク質立体構造モデルを用いた比較検討により、 ヒト α -NAGAへの変 異の導入部位 (アミノ酸位置) を決定した。 以下にその手順及び結果を具体的 に示す。
1 . 使用したデータ
ヒ トひ -NAGA及びヒト a -GALのアミノ酸配列データは、 Swiss'Protに、 それ ぞれ下記の通り登録されているものを使用した (表 1参照) 。 また、 ニヮトリ CK -NAGA及ぴヒ ト a -GALタンパク質立体構造データは、 Protein Data Bank (PDB)に、 それぞれ下記の通り登録されているものを使用した (表 2参照) 。 (1) アミノ酸配列データ
使用テータベース : Swiss-Prot (http 7/tw. expasy.org/uniprot/) 表 1 entry name accession number
ヒ卜 — NAGA NAGAB— HUMAN P 1 7050
ヒ卜 — GAL AGAL— HUMAN P06280
(2) タンパク質立体構造データ
使用データべース : Protein Data Bank (PDB) (http 7/w ww.rcsb.org/pdb/) 表 2 PDB ID
ニヮトリ - NAGA 1 KTC (下記 *1参照)
ヒ卜 GAL 1 R47 (下記 *2参照)
*1: Garman SC et al., Structure (Camb), 2002, 10(3):425-34.
*2: Garman SC et al" J. Mol. Biol., 2004, 19;337(2):319— 35. 2 . ヒ ト α -NAGA の立体構造モデルの構築
ヒ ト α -NAGAの立体構造モデルの構築は、 ニヮトリ α -NAGAの立体構造に基 づいて、 既存の手法であるホモロジーモデリング法 (Sutcliffe MJ et al., Prot. Eng., 1987, 1, 377-84; Sutcliffe MJ et al" Prot. Eng., 1987, 1, 385-92 参照) を 用いて行った。 ホモロジーモデリングで使用するテンプレートの立体構造とし
て、 PDBに登録されているニヮトリ由来 α -NAGA (基質複合体) の立体構造を 使用した。 ヒ ト a -NAGAと二ヮトリ a -NAGAのァミノ酸一致度 (identity) は 75%であり、 ホモロジ一モデリング法による立体構造モデルの構築の条件 ( identity≥ 30%) を満たす。 ホモロジ一モデリング法による立体構造モデルの構 築は、 既存のソフトウエアである MODELLER (MODELLER CBSU Web ( http://cbsuapps.tc.cornell.edu/modeller.aspx )にアクセスすることにより利用可 能) を使用して行った。 さらに、 ニヮトリ α -NAGAに結合している基質の位置 に準じて、 当該基質を、 構築したヒト α -NAGAの立体構造モデルにはめ込むこ とにより、 ヒ ト α -NAGAの基質複合体モデルを構築した。
3 . ヒ ト a -GALとヒト a -NAGAの基質特異性に寄与する立体構造の比較
ヒト α -NAGAとヒト - GALの立体構造は類似しており、 いずれも、 触媒ドメ イン (catalytic domain)は(j8 G: ) 8バレル構造をとる。 活性部位 (触媒部位及ぴ基 質結合部位) に存在する触媒作用に必要なアミノ酸残基 (catalytic residue)は、 ( )3 ひ) 8バレル構造の各ストランドの C末端側に局在している。 図 1、 図 2 A及び 図 2 Bに、 ヒト a -NAGAとヒ ト ひ -GALの立体構造をリボンモデル表示で示し、 各構造における触媒部位及び基質結合部位のアミノ酸残基をスティック表示で 示した。 これら触媒部位及び基質結合部位の残基と基質との立体構造上の位置 関係を比較するため、 Kabschの重ね合わせ法 (Kabscli W. et al., Acta CrystaHogr.; 1976: A32, 827-828. ; Kabsch W. et al., Acta CrystaUogr.; 1978: A34, 922-923. 参照) により、 a -NAGAと a -GALの立体構造の重ね合わせを行 つた。 その後、 ヒ ト ひ - NAGAモデルにおいて、 基質に近接するアミノ酸残基を 抽出することにより、 基質の結合に関与するアミノ酸残基を選定した。 その結 果を下記表 3に示す。 表 3の右欄にはヒトひ - NAGAから選択された 1 4ァミノ 酸残基を示し、 左欄には当該 1 4アミノ酸残基に位置的に相当するヒ a -GAL におけるアミノ酸を示す。
表 3
Human 一 GAL Human Qf -NAGA
Trp47 Trp33
Asp92 Asp78
Asp93 Asp79
Tyr134 Tyr119
Cys142 Cys127
Lys168 Lys154
Asp 170 (*) Asp 156 (*)
Cys172 Cys158
Glu203 Scr188
Lou206 Ala101
Tyr207 Tyr192
Arg227 Arg213
Asp231 (*) Asp217 (*)
Asp266 Asp252
(*) catalytic residue
これらのアミノ酸残基をヒト α -NAGAとヒト ひ -GALの立体構造を重ね合わせ て比較し、 一致する残基と異なる残基を検出にすることにより、 ヒ トひ - GALと ヒト α -NAGAのアミノ酸配列における共通点と相違点を明らかにした。 4 . ヒ トひ -GALとヒ トひ -NAGAの共通点
その結果、 抽出された 1 4残基中、 ヒトoί -NAGAの触媒部位でぁるAspl56及 び Asp217を含む 1 2残基が、 - NAGAとひ - GALとで一致していることがわか つた。 重ね合わせた立体構造でもこれらのアミノ酸残基中の原子はよく重なり 合い、 立体構造上の位置も酷似していることが確認された。 α -NAGA及ぴひ - GALに共通するアミノ酸残基の立体構造上での位置を図 2 Aに示す。 また、 各 アミノ酸残基と基質との相互作用を図 2 Cに示す。 これらの残基はいずれも、 水素結合又は疎水性結合により基質と関与していると推測される。 なお、 図 2 Cでは、 下線を付していないアミノ酸が α -NAGA及び α -GALに共通するァミノ
酸であり、 下線を付しているアミノ酸が α -NAGAと α -GALとの間で異なるアミ ノ酸である。
5 . ヒ ト -GALとヒ ト ひ -NAGAの相違点
ヒ ト a -GALとヒ ト ひ -NAGAとの間で異なる残基は 2残基あり (図 2 C参照) 、 α -NAGAでの Serl88及ぴ Alal91に対応するアミノ酸残基が、 - GALではそれ ぞれ Glu203及び Leu206であった。 a -NAGAと a -GALとで異なるァミノ酸残基 の立体構造上での位置を図 2 Bに示した。
図 2 Cに示すように、 ひ - GAL及び α -NAGAに対する各基質中の糖 (6員環) の 2位の炭素原子には、 ひ - GALでは 「-OH基 (ヒ ドロキシル基) 」 、 a - NAGAでは 「- NH-C(CH3)=O基 (N-ァセチル基) 」 ヽ それぞれ存在する。
ひ - NAGAでは、 Serl88の側鎖のヒドロキシル基が、 基質中の N-ァセチル基の 酸素原子と水素結合していることが推測され、 Alal91の側鎖のメチル基が、 基 質中の N-ァセチル基のメチル基と疎水性結合していることが推測された。 これ らの推測から、 ひ - NAGAの Serl88及び Alal91は、 基質中の N-ァセチル基を認 識するために重要な残基であると考えられた。
一方、 ヒ ト - GALでは、 ひ - NAGAとの間で異なる残基である Glu203及ぴ Leu206力 S、 - GALの基質の認識に重要であると報告されている (Garaian SC et al., J. Mol. Biol., 2004, 19;337(2):319-35.) 。 そして、 ひ - GALの Glu203の側 鎖のカルボキシル基は、 基質中の前記ヒ ドロキシル基と水素結合を形成するこ とが X線結晶構造解析から明らかになつている。 また、 a -GALの Leu206は、 か さ高い側鎖を有する残基であり、 - GALの基質結合部位の空間を一部占有する。 一方、 α -GALの基質中の前記ヒ ドロキシル基 (2位) は、 かさの小さい官能基 であり、 例えば α -NAGAの基質中の N-ァセチル基と比較すると前記ヒドロキシ ル基が小さいことは明らかである。 従って、 α -GALと基質との結合においては、 ひ - GALの基質結合部位の空間の大きさは、 基質中の前記ヒドロキシル基の大き さにちょうど適していると考えられる。 よって、 α -GALにおいては、 Glu203及 び Leu206の 2残基が基質特異性の高さに寄与していると考えられた。
6 . 立体構造モデルによる基質特異性の検証
さらに、 ひ - NAGAの基質に対する相互作用、 及び α -GALの基質に対する相互 作用を検証するため、 相互の基質を交換したモデル、 すなわち (0 の基 質とひ -NAGAとの複合体モデル、 及ぴ (ii) a -NAGAの基質とひ -GALとの複合 体モデルを構築し、 α -NAGAと α -GALとの間で異なる 2残基の基質に対する関 与について調べた。
その結果、 a -NAGAモデル構造に a -GALの基質をはめ込んだ複合体モデルで は、 a -NAGA の Serl88の側鎖は a -GALの基質の 2位のヒドロキシル基とは相 互作用せず、 Alal91と α -GALの基質との間には隙間が生じ、 ヒドロキシル基と の相互作用は見られなかった。 一方、 ひ - GALの構造にひ - NAGAの基質をはめ込 んだ複合体モデルでは、 a -NAGAの基質の 2位の N-ァセチル基はひ - GALの Glu203及び Leu206と衝突することが確認され、 これらの 2残基の存在により、 基質の結合が阻害されることが予測された。
これらの予測結果は、 これまでの実験結果を支持するものであり、 ひ - NAGA の Serl88及ぴ Alal91、 並びにひ -GALの Glu203及び Leu206が、 α -NAGA及び a -GALのそれぞれの基質特異性に重要であることが裏付けられた。
7 . ヒ ト a -NAGAの基質特異性をヒ ト α -GAL様に変換するためのァミノ酸残基 置換
以上のように、 ヒトひ - GALとヒト α -NAGAとでは、 各基質中の糖 (6員環) の 2位の炭素原子に存在する官能基を認識する 2残基以外は、 アミノ酸配列は、 触媒部位を含めて全て共通であり、 基質特異性の高さに寄与するこれら 2残基 の置換により、 触媒活性は置換前のものを維持しつつ、 基質特異性のみをひ - GAL及びひ -NAGAの相互間で変更できる可能性が示された。 ヒ ト ひ -NAGAの基 質特異性を変更し、 α -NAGAに α -GAL活性を発現させるためには、 これら 2ケ 所のアミノ酸置換が重要である。 ヒ ト α -NAGAの Serl88を Gluに置換すること により、 ひ- NAGAの基質の N-ァセチル基との水素結合による認識をなくし、 α - GALの基質のヒドロキシル基への水素結合による相互作用を導入することがで きる。 さらに、 ヒト α -NAGAの Alal91を Leuに置換することにより、 ひ-NAGA
の基質の結合の際に N」ァセチル基が入る空間を、 Leuのかさ高い側鎖により占有 させ、 この立体障害により当該基質の結合を阻害する。 これらの効果により、 α -NAGAにおいて、 本来のひ - NAGAの基質への認識をなくし、 α -GALの基質 への高い特異性を持たせることが可能であると予測された。
8 . ヒ ト a -NAGATミノ酸置換体モデルの評価
a -NAGA に対し、 Serl88を Gluに置換し、 Alal91を Leuに置換した場合、 周 辺の立体構造に与える影響を確認するため、 a -NAGA変異体 ( α · NAGA(S188E/A19lD) モデルを構築し、 野生型ひ - NAGAの立体構造と比較し た。 その結果、 上記置換は周辺アミノ酸残基からなる立体構造に影響を及ぼさ ないことを確認した。 このため、 ヒ ト a -NAGAへこれらの変異を導入した
NAGA変異体は、 立体構造上、 問題なく存在することができると推測された。 また、 a -NAGA変異体の構造に α -GALの基質をはめ込んだ複合体モデルを構 築した結果、 a -NAGA変異体の Glul88の側鎖は、 当該基質の 2位のヒドロキシ ル基と水素結合をし得る距離に存在することが確認された (図 5 (b)参照) 。 さ らに、 変異体ひ -NAGAの構造にひ -NAGAの基質をはめ込んだ複合体モデルでは、 当該基質の 2位の N-ァセチル基が Leul91の側鎖と立体障害を起こし、 基質が結 合できな!、構造になっていると推測された。
以上により、 変異体 α -NAGAは、 本来の α -NAGAの基質への特異性を失い、 α -GALの基質への高い特異性を獲得すること (すなわち、 実質的に α -NAGA活 性を失い、 活性を獲得すること) が期待される結果となった。
構築した α -NAGA変異体 ( a -NAGA(S 188E/A19 lD) の構造を図 6に示す。
9 . ヒ ト -NAGAァミノ酸置換のその他の候補
以上に述べた基質特異性の改変は、 ひ - NAGAの基質への立体障害による結合 阻害と、 - GALの基質との水素結合の形成という、 2つの作用によりもたらさ れるが、 上述したアミノ酸置換について、 他のアミノ酸への置換可能性の有無 を検割 ·した。
まず上記結合阻害作用のために、 第一候補として と同じ Leuへの置換 を行ったが、 同様の作用をもたらす置換としては、 疎水性アミノ酸残基である Val, lie, Hie又は Metへの置換が考えられた。
また、 上記水素結合の形成作用のために、 第一候補としてひ - GALと同じ Glu への置換を行ったが、 同様の作用をもたらす置換としては、 Gluと同じく力ルポ キシル基を持つ Aspへの置換が考えられた。
1 0 . 野生型ヒ ト -NAGAのァミノ酸配列と改変型ひ -NAGAのァミノ酸配列 野生型ヒ ト a -NAGAのァミノ酸配列を 「配列番号 2」 に示し、 ひ -NAGA変異 体 (a -NAGA(Sl88E/Al9lL)) のアミノ酸配列を 「配列番号 4」 に示した。
〔実施例 2〕
く α -GALシグナルぺプチド融合ひ - NAGA変異体の作製 >
以下の手順により、 a -NAGA変異体である -NAGA(S188E/A191L) に a - GALのシグナルぺプチドを融合した、 Γ a -GALシグナルぺプチド融合 a - NAGA変異体 (α -GALシグナルペプチド融合ひ - NAGA(S188E/A191L)) 」 を作 製した。
1 . ひ - N-ァセチルガラタトサミニダーゼ ( a -NAGA) レトロウイルスベクター の作製
-NAGA cDNA clone (Homo sapiens N-acetylgalactosamimdase, alpna, m- RNA, Gene Bank Accession:BC000095, IMAGE :3504221)は Open biosystem 社より購入した。 購入した o; -NAGA cDNAをテンプレートとし、 下記プライマ 一及び KOD-plus-ポリメラーゼ (東洋紡) を用いて、 以下の反応液組成及び反応 条件の PCRにより、 ひ - NAGAのコーディングシークェンスを増幅した。
NAGA-5'プライマー:
5'-GATGCTGCTGAAGACAGTGCTCTT-3' (配列番号 13)
NAGA-3'プライマー:
5'-TCACTGCTGGGACATCTCCAGGTT-3' (配列番号 14) ぐ反応液組成 >
テンプレート (10ng/ il) : 2μ1
10 Xバッファー: 10μ\
2.5mM dNTP: ΙΟμΙ
25mM MgSO4: 4μ1
KOD-plus-ポリメラーゼ: 2μϊ
NAGA-5'プライマー (10 M) 2μΙ
NAGA- 3,プライマー (10/zM) 2μ1
滅菌水: 68ul
合計 100 ΐ ぐ反応条件 >
94°Cで 2分間加熱後、 「熱変性'解離: 94°C (15sec) →アニーリング: 60 °C (30sec) →合成'伸長: 68°C (90sec) 」 を 1サイクルとして計 35サイクル 行い、 4 °Cで冷却した。 得られた a -NAGA DNAフラグメントを、 ァガロースゲル電気泳動で精製した。 T4 polynucleotide kinase (New England Biolabs: NEB)で末端をリン酸化し た a -NAGA DNAフラグメントと、 制限酵素 Hpa I (Blant end) (NEB)で切断し た後に Alkaline Phosphatase, Calf Intestine (NEB) を用いて脱リン酸化したレ トロウイノレスベクター pCX4Neo (Tsuyoshi Alcagi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100, 13567-13572 (2003)) とを、 ライゲーシヨンした。 ライゲーシヨン 反応により得られた a-NAGApCX4Neoを、 DH5ひ コンビテントセル (インビ
トロジェン) にトランスフォームし、 アンピシリン含有 LBプレートに撒いた後 アンピシリン耐性コ口ニーを得た。
得られたそれぞれの耐性コ口ニーを LB培地で懸濁し、 その菌液をテンプレー トとし、 下記プライマー及ぴ PCR Master mix (プロメガ社製)を用いて、 以下の 反応液組成及び反応条件でコ口ニー PCRを行った。
NAGA-5'プライマー:
5'-GATGCTGCTGAAGACAGTGCTCTT-3' (配列番号 13)
pCX4-3'プライマー:
5'-AAACCGTTGCTAGCTTAAGTT-3' (配列番号 15) ぐ反応液組成 >
テンプレー ト(1コロニー/ 10 1) : l il
PCR Master mix : 10 μΐ
NAGA-5,プライマー (ΙΟμΜ) : 0.5 il
pCX4-3,プライマー (ΙΟμΜ) : 0.5 Μ1
滅菌水: 8 1
Aき 20 μΐ く反応条件 >
95°Cで 2分間加熱後、 「熱変性'解離: 95°C (30sec) →アニーリング: 55 °C (30sec) →合成 '伸長: 72°C (90sec) 」 を 1サイクルとして計 40サイクル 行い、 4 °Cで冷却した。 得られた增幅産物から、 α-NAGADNAを正方向に組込んだクローンを選別し た。 具体的には、 1.4 kbの増幅断片が得られた大腸菌テンプレートを、 a- NAGADNAを正方向に組込んだクローンとして選別した。 選別したひ -NAGA pCX4Neoの大腸菌クローンを大量培養して、 l mg以上 (lmg/mL) の a-NAGA pCX4Neoプラスミ ド DNAを得た。
2. α-NAGA変異体の作製
a -NAGA変異体である -NAGA(S 188E/A191L)は、 まず -NAGA(S 188E)を 作製した後、 これを基にして作製した。 作製方法は、 適宜、 GeneTailor Site- Directed Mutagenesis System (インビトロジェン) を使用説明書の記載を参照 して行った。
まず、 a-NAGApCX4Neo(100ng) を DNA Methylase (4 U) でメチル化し た。 ひ -NAGA(S188E)の作製は、 メチル化したひ -NAGA pCX4Neoをテンプレ ートとし、 第 188番目のセリン (S)をグルタミン酸 (E)とするミスセンス変異 (S188E)が導入されるように設計した NAGAS188E-GT-5'プライマー (S188Eミ スセンス変異を導入した箇所にアンダーライン) 及び NAGAS188E-GT-3'プラ イマ一、 並びに KOD-plus-ポリメラーゼを用いて、 以下の反応液組成及び反応条 件の PCRにより DNAを増幅した。 NAGAS188E-GT-5'プライマー :
5'-CCCATCGCCTTCTCCTGCGAGTGGCCAGCCTATGA-3' (配列番号 16) NAGAS188E-GT-3'プライマー :
5'-GCAGGAGAAGGCGATGGGGCGGCCTGTG-3' (配列番号 17) く反応液組成 >
テンプレート (6ng//il): Ιμΐ
10 Xバッファー : 5μ1
2.5mM dNTP: 5μ1
25mM MgSO4: 2μ1
KOD-plus-ポリメラーゼ: 1 μ 1
NAGASl88E-GT-5,プライマー (10 ζΜ) : 1^1
NAGAS188E-GT-3'プライマー (10/ Μ): Ιμΐ
滅菌水: 34^1
合計: 50 1
<反応条件 >
94°Cで 2分間加熱後、 「熱変性'解離: 94°C (15sec) →アニーリング: 60 °C (30sec) →合成 '伸長: 68°C (8min) 」 を 1サイクルとして計 35サイクル 行い、 4 °Cで冷却した。 増幅した DNAフラグメント ( a -NAGA(S 188E) pCX4Neo) は、 メチル化さ れた DNAを切断する McrBCェンドヌクレアーゼを持つ DH5a_Tl コンビテント セノレ (インビトロジェン) にトランスフォームした。 テンプレートとしたひ - NAGA pCX4Neoはメチル化されたものであるため、 McrBCエンドヌクレアーゼ により切断されコロニーを形成できず、 S188E変異を持つプラスミ ドはメチル 化されていないため切断されず形成できる。 形成された数個のコロニーを培養 し、 プラスミ ド DNAを抽出及び精製し、 S188E変異が導入されていることを、 シークェンサ一を用いた公知の塩基配列決定法で確認した。
次に、 ひ - NAGA(S188E/A191L)の作製は、 精製した - NAGA(S188E) pCX4Neoをテンプレートとし、 第 191番目のァラニン (A)をロイシン (L)とするミ スセンス変異 (A191L)が導入されるように設計した NAGA A191L-GT-5'プライマ 一 (A191Lミスセンス変異を導入した箇所にアンダーライン) 及び NAGA A191L- GT-3'プライマー、 並びに KOD-plus-ポリメラーゼを用いて、 以下の反応液組成 及び反応条件の PCRにより増幅して行った。
NAGA A191L-GT-5'プライマー:
5'-TTCTCCTGCGAGTGGCCACTCTATGAAGGCGGCCT-3' (配列番号 18) NAGA A191L-GT-3'プライマー:
5'-TGGCCACTCGCAGGAGAAGGCGATGGGG-3' (配列番号 19)
ぐ反応液組成 >
テンプレート (6ng/ il) : Ιμΐ
10 Xバッファー : 5μ1
2.5mM dNTP: 5μ1
25mM MgSO4: 2μ1
KOD-plus-ポリメラーゼ: ΙμΙ
NAGAA191L-GT-5'プライマー (10/iM): Ιμΐ
NAGAA191L-GT-3'プライマー (ΙΟμΜ) : Ι,αΐ
滅菌水: : 34 1
合計: 50μ1
<反応条件 >
94°Cで 2分間加熱後、 「熱変性'解離: 94°C (I5sec) →アニーリング: 60 °C (30sec) →合成 '伸長: 68°C (8min) 」 を 1サイクルとして計 35サイクル 行い、 4 °Cで冷却した。 増幅した DNAフラグメ ン ト ( -NAGA(S188E/A191L) pCX4Neo) を、 DH5a-Tl コンビテントセルにトランスフォームした後、 プラスミ ド DNAを抽 出及び精製し、 S188E変異に加えて A191L変異が導入されていることを、 シー タエンサーを用いた公知の塩基配列決定法で確認した。
3. a -GALシグナルぺプチド融合 a _NAGA、 及び a -GALシグナルぺプチド融 合ひ -NAGA変異体の作製
α-NAGA遺伝子を動物細胞に遺伝子導入した場合、 培養上清中に分泌される リコンビナント α-NAGA酵素タンパク質は少量で、 大部分は細胞内に存在した ままであることが判明した。 そこで、 ひ- NAGA (野生型) 及びひ- NAGA変異体 ( a -NAGA(S188E/A191L)) を培養上清中に大量に分泌させる目的で、 それら のシグナルぺプチド部分 (ひ- NAGA由来のシグナルペプチド部分) を、 培養上 清中に大量に分泌されることがよく知られている a -GAL由来のシグナルぺプチ
ド部分に変えた、 リコンビナント a-NAGA酵素タンパク質を作製した。
α-GAL cDNAは、 公知の塩基配列情報及ぴクローエング方法を用いて得た。 まず、 α-GAL cDNAを铸型にして、 α-GALのシグナルペプチドをコードする 塩基配列を GLA-5'プライマーと SigGALNAGA2-3'プライマーとを用いて、 以下 の反応液組成及び反応条件の PCRにより増幅した。 ここで、 SigGALNAGA2-3' プライマーは、 a -GALのシグナルぺプチドをコードする塩基配列の 3 '末端部分 に相同のシークェンスと、 a -NAGAをコ一ドする塩基配列の 5 '末端に相同のシ ークエンスとを有するプライマーである。 当該 PCRにより、 増幅産物として、 α-GALのシグナルぺプチドをコードする塩基配列を有する DNA断片 (以下、 PGR産物 A) を得た。
GLA-5'プライマー:
5'-ACAATGCAGCTGAGGAACCCAGAA-3' (配列番号 20)
SigGALNAGA2-3' プライマー:
5'-GTCCAGTGCTCTAGCCCCAG-3' (配列番号 21)
<反応液組成 >
テンプレート (6ng// ): 1^1
10Xバッファー:
2.5mM d TP: 5^1
25mM MgS04: 2μ1
KOD-plus-ポリメラーゼ: : 1
GLA-5'プライマ一 (10 μ M): l l
SigGALNAGA2-3' プライマー (10 μΜ): lul
纏水: ― ― 34ul
50 1 (PCR産物 A)
<反応条件 >
94°Cで 2分間加熱後、 「熱変性'解離: 94°C (I5sec) —アニーリング: 60 °C (30sec) →合成 '伸長: 68°C (15 sec ) 」 を 1サイクルとして計 35サイク ル行い、 4 °Cで冷却した。 次に、 -NAGA及び a -NAGA(S188E/A191L)の cDNAをそれぞれ铸型にし、 そのうち α -NAGA由来のシグナルぺプチド部分をコードする塩基配列を除いた 塩基配列からなる cDNA領域を、 SigGALNAGA2- 5 'プライマーと NAGA-3'プラ イマ一とを用いて、 以下の反応液組成及ぴ反応条件の PCRにより増幅した。 こ こで、 SigGALNAGA2-5'プライマーは、 a -GALのシグナルペプチドをコードす る塩基配列の 3 '末端部分に相同のシークェンスと、 ひ -NAGAの 5 '末端部分に相 同のシークェンスとを有するプライマーである。 当該 PCRにより、 増幅産物と して、 -NAGA及びひ -NAGA(S188E/A191L)のシグナルぺプチド部分を除いた 部分をコードする塩基配列を有する DNA断片 (以下、 PCR産物 B ) を得た。
SigGALNAGA2-5'プライマー :
5'-AGAGCACTGGACAATGGGCT-3' (配列番号 22)
NAGA-3'プライマー:
5'-TCACTGCTGGGACATCTCCAGGTT-3' (配列番号 23)
<反応液組成 >
テンプレート (6η^/μ1): Ιμΐ
10 Xバッファー: 5μΙ
2.5mM dNTP: 5μ1
25mM MgSO4: 2 μϊ
KOD-plus-ポリメラーゼ: 1 μ 1
SigGALNAGA2-5'プライマー (10 μ M): 1^1
NAGA-3'プライマー (10 μ M): 1^1
水: 34jil
A
πき +Τ■ 50 1 (PCR¾¾B)
<反応条件〉
94°Cで 2分間加熱後、 「熱変性 ·解離: 94°C ( 15sec) →アニーリング: 60 °C (30sec) →合成 '伸長: 68°C (lmin20sec) 」 を 1サイクルとして計 35サ イクル行い、 4 °Cで冷却した。 最後に、 上記各 PCRにより得られた: PCR産物 A及ぴ PCR産物 Bを共に铸型と し、 GLA-5'プライマーと NAGA-3'プライマーとを用いて、 以下の反応液組成及 ぴ反応条件の PCRにより増幅した。
ぐ反応液組成 >
PCR産物 A(6ng/ xl): Ι ΐ
PCR産物 B(6ng/ l): 1μ\
10 Xノくッファー: 5μ1
2.5mM dNTP: 5μ1
25mM MgSO4: 2μ1
KOD-plus-ポリメラーゼ: Ιμΐ
GLA-5'プライマー (10;uM): Ιμΐ
NAGA-3'プライマー (10 : Ιμΐ
滅菌水: 34wl
Aき . 50μ1 ぐ反応条件 >
94°Cで 2分間加熱後、 「熱変性.解離: 94°C (I5sec) →アニーリング: 60°C (30sec) →合成 '伸長: 68°C (lmin20sec ) 」 を 1サイクルとして計 35サイク ル行い、 4 °Cで冷却した。 当該 PCRにより、 増幅産物として、 -GALシグナルぺプチド融合 a -NAGAを コードする塩基配列を有する DNA断片、 及び a -GALシグナルぺプチド融合 a - NAGA(S188E/A191L)をコードする塩基配列を有する DNA断片を、 それぞれ得 た。 得られた各 DNA断片を、 ローメルティングァガロースゲルによる電気泳動 で分離した後、 市販の: DNA断片精製キットを用いて精製した。
次いで、 上記精製後に得られた各 DNA断片の末端を T4 polynucleotide kinase (NEB)でリン酸化したものと、 制限酵素 Hpa I (Blant end) (NEB)で切断後に Alkaline Phosphatase, Calf Intestine (NEB) を用いて脱リン酸化したレトロゥ ィルスべクタ一 pCX4Neo (Tsuyos i Alcagi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100, 13567-13572 (2003)) とを、 遺伝子組換え技術の常法によりライゲーショ ンした。 ライゲーション反応により得られた、 -GALシダナルぺプチド融合 a - NAGApCX4NeoN 及びひ -GALシグナルぺプチド融合ひ -NAGA( S188E/A191L)
pCX4Neoを、 それぞれ DH5 コンビテントセル(ィンビトロジェン) に卜ラン スフオームし、 アンピシリン含有 LBプレートに撒いた後、 アンピシリン耐性コ ロニーを得た。
得られたそれぞれの耐性コ口ニーを LB培地で懸濁し、 その菌液をテンプレー トとし、 下記プライマー及ぴ PCR Master mix (プロメガ社製)を用いて、 以下の 反応液組成及ぴ反応条件でコ口ニー PCRを行つた。 pCX4-5,プライマー:
5'-GGGTGGACCATCCTCTAGACT-3' (配列番号 24)
NAGA-3'プライマー:
5'-TCACTGCTGGGACATCTCCAGGTT-3' (配列番号 23)
<反応液組成 >
テンプレート(1コロニー /10 1): ΙμΙ
PCR Master mix: 10^1
pCX4-5,プライマー (10/ M): 0.5 1
NAGA-3'プライマー(10/zM): 0.5^1
滅菌水: 8ul
合計: 20 il
<反応条件 >
95°Cで 2分間加熱後、 「熱変性 '解離: 95°C (30sec) →ァユーリング: 55 °C (30sec) →合成 '伸長: 72°C (lmin20sec) 」 を 1サイクルとして計 40サ ィクル行い、 4 °Cで冷却した。 当該 PCI こより得られた増幅産物から、 α-GALシグナルぺプチド融合ひ - NAGA及ぴ a -GALシグナルぺプチド融合 a -NAGA(S188E/A191L)の DNA断片 が正方向に組込まれたクローンをそれぞれ選別した。 具体的には、 1.4 kbの増幅 断片が得られた大腸菌テンプレートを、 α-GALシグナルぺプチド融合 a-NAGA
及ぴ a -GALシグナルぺプチド融合 a -NAGA( S188E/A191L)の DNA断片が正方 向に組込まれたクローンとして選別した。 選別した o -GALシグナルぺプチド融 合 a -NAGA pCX4Neo及び a -GALシグナルペプチ ド融合 a -NAGA( S188E/A191L) pCX4Neoの大腸菌クローンを、 それぞれ大量培養して、 1 mg以 上 (lmg/mL) のプラスミド DNAを得た。
〔実施例 3〕
< a -GALシグナルぺプチド融合 a -NAGA及び a -GALシグナルぺプチド融合 - NAGA変異体を発現する組換えレト口ウィルスの作製 >
レトロウイルスのパッケージング細胞 (Phoenix Ampho Batch#:F- 14727 Transformed Human Embryonic Kidney HEK293)は、 ATCCより購入した (Coligan, J. E. et al., Curr. Protocols Immunol., Suppl. 31, 10.28.1-10.28.17 (1999))。 Phoenix Ampho細胞は、 10 % 不動化済み FBSと抗生物質を加えた DMEM (高グルコース)培養液で、 37°C, 5 % C02濃度条件下で培養した。
組換えレトロウイルスを作製するため、 Phoenix Ampho細胞に、 ひ - GALシグ ナルペプチド融合ひ - NAGA pCX4Neoレトロウイルスベクター、 及び a 'GALシ グナルぺプチド融合 a -NAGA( S188E/A191L) pCX4Neoレト口ウィルスべクタ 一を、 それぞれトランスフエクシヨンした。 トランスフエクシヨンは、 ; Phoenix Ampho細胞 (5 X 105/60 mm dish )に、 1 gのレトロウイルスベクター、 1 μ gの pCLAMP (RK Naviaux et al., J. Virol., 70, 5701-5705 (1996))、 及ぴ 18 1の Dofect-GTl ( トランスフエクション試薬; 同仁化学) 入りの 2 mLの ΟΡΊΊ- MEM培養液 (インビトロジェン) を加えて、 37°Cで 4時間インキュベートし、 その後通常の培地に交換して、 48時間培養して行った。 培養後、 上清を回収し、 1000 rpmで 10分間遠心して、 上清中に含まれる組換えレト口ウィルスを分注し、 当該ウィルスを- 80°Cでストツクした。
〔実施例 4〕
く a -GALシグナルぺプチド融合 a -NAGA及ぴ -GALシグナルぺプチド融合ひ - NAGA変異体を発現する CHO-K1安定発現株の樹立 >
実施例 3で作製したひ -GALシグナルぺプチド融合ひ -NAGA及び a -GALシグ ナルぺプチド融合ひ -NAGA( S188E/A191L)を発現する組換えレトロウイルスを それぞれ CHO-K1細胞に感染させ、 a -GALシグナルぺプチド融合 a -NAGA及び a -GALシグナルぺプチド融合 a -NAGA( S188E/A191L)の安定発現株を樹立し た。 具体的には、 下記 (i)〜(v)のようにして行った。
(i) 1 X 105個の CHO-K1細胞を 60 mm dishにまき、 10 % 不動化済み FBSと抗 生物質を加えた αΜΕΜ培養液で、 37°Cでー晚培養した。
(ϋ) 最終濃度 2 IX g/mLになるようにポリブレン (シグマ H-9266,
Hexadimethrine Bromide) を培地に加え、 37°Cで 30分間培養した。
Gii) 培地を除きウィルス液を 1 mL入れて 37°Cで 60分間吸着させた。
v) ウィルス液を除き、 培地を 5 mL加えてー晚培養した。
(V) G418(250 μ g/mL)を培地に加えた選択培地で培養して、 G418耐性 CHO- Kl細胞を樹立した。 なお、 選択培地の交換は 3日に 1回の間隔で 14日以上行つ た。 また、 樹立した細胞は目的のタンパク質を発現しているか、 酵素活性及び ウェスタンブロット法 (詳細は下記の通り) で確認した。
〔ウェスタンプロット法による目的タンパク質の発現確認〕
レトロウイルスを用いて樹立した -GALシグナルぺプチド融合ひ -NAGA発現 CHO-K1細胞、 及び α -GALシグナルペプチド融合 a -NAGA(S188E/A191L)発現 CHO-K1細胞が、 それぞれ目的のタンパク質を発現しているかどうかを調べる 目的で、 ウェスタンプロットを行った。 なお、 当該ウェスタンプロットで用い る抗体として、 公知の抗体作製方法により得られた抗ひ - NAGAポリクローナル 抗体を準備した。
ウェスタンプロットにおけるサンプルは、 α -GALシグナルぺプチド融合ひ - NAGA発現 CHO-K1細胞、 及び a -GALシグナルぺプチド融合 α - NAGA(S188E/A191L)発現 CHO-Kl細胞の培養上清を、 それぞれ使用した。 SDS-PAGEは、 サンプルのタンパク質濃度を測定した後、 5 ;u g分のタンパク質 を含むサンプルに当容量の 2 XSDS サンプルバッファー (62.5 mM Tris-HCl
pH 6.8, 4 % SDS, 30 % glycerol, 0.2 % BPB)をカロえ、 5分間煮沸した後、 当該サ ンプルを 4〜20 %ゲル (PAG mini:第一化学薬品) にアプライし、 30 mAの定 電流で 2時間電気泳動を行つた。
電気泳動後、 タンパク質を: PVDFメンブラン (Immobilon-P, MILLIPORE) に トランスファーするために、 ゲノレをブロッテイングバッファー (25 mM Tris- HC1 pH 8.3, 192 mM ダリカン, 20 % メタノール) に 20分間浸し、 ブロッティ ングバッファ一で平衡化した PVDFメンブランに上に置き、 Hoefer TE 70 semi- dry transfer unit (アマシャムバイオサイエンス)を使用して 60 mAの定電流で 1 時間トランスファーを行った。
トランスファーの終了後、 メンブランをブロッキングバッファー (5%スキム ミルク in TBS (50 mM Tris-HCl pH 7.4, 100 mM NaCl))で 30分間ブロッキン グした後、 ブロッキングバッファーで 500倍希釈した抗 NAGAポリク口一ナル抗 体 (一次抗体) を加え、 4°Cでー晚インキュベートした。
一次抗体とのインキュベーション後のメンブランは、 TBSにより 5分間の洗 浄を 3回行った後、 ブロッキングバッファーで 5000倍希釈した抗ゥサギ IgG HRP標識抗体 (二次抗体;アマシャムバイオサイエンス) を加え、 室温で 1時 間インキュベートした。
二次抗体とのインキュベーション後のメンブランは、 TBSにより 5分間の洗 浄を 3回行った後、 ECL発色試薬 (ナカライテスク) を加え、 室温で 2分間反 応させた。 その後、 喑室内で Hyperfflm™ ECLと 1分間コンタク トして現像し た。
以上の結果、 樹立したひ -GALシグナルぺプチド融合ひ -NAGA発現 CHO-K1細 胞、 及び a -GALシグナルぺプチド融合ひ -NAGA(S 188E'/A191L)発現 CHO-K1細 胞は、 それぞれ、 約 45kDの野生型 a -NAGA及びひ -NAGA変異体 ( α - NAGA(S188E/A191L)) を培養上清中に分泌していることを確認した。
〔実施例 5〕
く a -GALシグナルぺプチド融合 a -NAGA変異体の酵素活性の遷移 >
a -GALシグナルぺプチド融合 -NAGA( S188E/A191L)が、 a -GALの基質特 異性を獲得したものであることを、 以下の手順で確認した。
実施例 4で樹立したひ -GALシグナルぺプチド融合ひ -NAGA発現 CHO-K1細胞、 及びひ -GALシグナルぺプチド融合 a -NAGA( S188E/A191L)発現 CHO-K1細胞 の培養上清を、 それぞれサンプルにして、 a -GAL活性及び a -NAGA活性の酵素 活性測定を行った。 酵素活性は、 蛍光基質である 4-メチルゥンベリフ ロン (4- MU) 誘導体の合成基質を用い、 酵素溶液 l niLが 1時間当たりに遊離させるこ とのできる 4-MU量を蛍光強度として測定した。 具体的には、 α -GALの合成基 質としては、 4-MU- a -D-ガラクトシド (4-MU- a -GAL; Calbiochem, CA) を用 い、 ひ - NAGAの合成基質としては、 4-MU- - N-ァセチル -D-ガラクトサミニド (4-MU- a -NAGA; 生化学工業) を用いた。 なお、 a -GAL活性の測定には、 4- MU-ひ - GALに対して同時に反応するひ - NAGAの阻害剤として、 Ν-ァセチル -D- ガラクトサミン (シグマ, ΜΟ) を、 最終濃度 117mMとなるように予め基質溶液 に添加した。
培養上清 (10 L) に対して、 5mMの 4-MU- GALを含有する Mcllvainバッ ファー (タエン酸/リン酸, pH 4.6, 40 // L) 、 又は、 ImMの 4-MU- a -NAGAを 含有する Mcllvainバッファー (クェン酸 Zリン酸, H 4.7, 40 ^ L) を添加し混 合した後、 37°Cで 30分間反応させた。 0.2M グリシンバッファー (pH 10.7, 950 j L) を添加して当該反応を停止させ、 遊離した 4-MUの量を検出するため、 蛍 光分光光度計 (AHVO MX, PerkinElmer)を用いて、 励起波長 365nm、 蛍光波長 450nmで測定した。 ひ - GAL及び a -NAGAの酵素活性は、 酵素溶液の容積およ ぴ反応時間当たりの遊離させることのできる 4-MU量 (nmol 4-MU/h/ml) で算 出した。
酵素活性測定の結果、 CHO-K1細胞に発現させたひ -GALシグナルぺプチド融 合 a -NAGA(S188E/A191L)は、 培養上清中に分泌され、 高い α -GAL活性を示す ものであり、 ひ -GALの基質特異性を獲得したものであることが分かつた。
以上の結果を表 4に示す。 .
表 4 - GAL酵素活性
(隱1 4-MU/h/ml)
CHO-K1 (コントロール) 0-20
- GALシグナルべプチド融合 a -NAGA 0~20
一 GALシグナルぺプチド融合 a -NAGA(S188E/A191 L) 200〜400 _ 〔実施例 6〕
く ひ - GALシグナルペプチド融合 α -NAGA変異体の血中 (血漿中) 安定性〉 ひ - GALシグナルペプチド融合 a -NAGA(S l88E/Al91L)の血中 (血漿中) 安定 性について、 以下の手順で確認した。
まず、 ひ -GALシグナルぺプチド融合ひ -NAGA(S 188E/A191L)の酵素溶液は、 実施例 4と同様にして調製した。 また、 対照として、 野生型 α -GALの遺伝子を F377に導入した細胞を用い、 上記と同様にして酵素溶液を調製した。 それぞれ の酵素溶液 (50 に対して健常者の血漿 (50 を添加し混合した後、 37°Cで反応を開始し、 経時的に 10 // Lずつサンプリングして a -GAL活性を測定 した。 酵素活性の測定は、 実施例 4と同様にして行った。 酵素溶液及び血漿を 混ぜた時点でサンプリングした試料の a -GAL活性を基準 (100%) とし、 経時 的な酵素活性の低下を百分率で表した。
その結果、 a -GALシグナルペプチド融合 a -NAGA(Sl88E/Al91L)は、 野生型 a -GALと比べて、 血中 (血漿中) における経時的な a -GAL活性保持能に優れ ており、 高い血中安定性を有するものであった。
〔実施例 7〕
< a -GALシグナルぺプチド融合 a -NAGA変異体によるフアブリ一病患者由来線 維芽細胞内に蓄積したセラミ ドトリへキソシド (CTH)の分解 >
a -GALシグナルぺプチド融合 -NAGA発現 CHO-K1細胞、 及び a -GALシグ
ナルぺプチド融合 Q; -NAGA(S 188E/A191L)発現 CHO-K1細胞の培養上清を、 そ れぞれ回収し、 酵素サンプルとして使用した。 フアブリ一病患者由来培養線維 芽細胞 (F337) に対して、 1,000 nmol/h/mlの活性を有する α -GALシグナルぺ プチド融合ひ -NAGA、 a -GALシグナルぺプチド融合 α -NAGA(S188E/A191L)、 及び a -GALを培地中に加え、 2日間培養を行った。 培養後、 以下の方法により、 細胞内蓄積している CTHを蛍光抗体染色により検出した。
まず、 酵素添加により培養したフアブリ一病患者由来の線維芽細胞を培養後、 4% パラホルムアルデヒ ド /PBS (pH 7.0) で 1分間固定し、 1 % BSA/PBSを 加え、 室温で 30分間ブロッキングしたのち、 1 % BSA/PBSで 100倍に希釈した 抗 -CTHモノクローナル抗体 (1次抗体) を加え、 室温で 1時間インキュベート した。 1次抗体とのインキュベーション後、 PBSにより 5分間の洗浄を 3回行 つたのち 1 % BSA/PBSで 1000倍に希釈した Alexa Fluor 488 Goat anti-mouse- IgG ( 2次抗体:インビトロジェン)を加え、 室温で 1時間ィンキュベートした。 2次抗体とのインキュベーション後、 PBSにより 5分間の洗浄を 3回行ったの ち、 Permafluor Mount Medium (Theraio)で封入後、 共焦点レーザー蛍光顕微 鐃システム LSM510 (Carl Zeiss)で観察を行った。
抗体染色の結果、 α -GALシグナルペプチド融合ひ - NAGA(S 188E/A191L)、 及 び α -GALを培地中に加えたフアブリ一病患者由来の培養線維芽細胞では、 有意 な CTHの減少が観察されたが、 a -GALシグナルぺプチド融合ひ - NAGAでは CTHの有意な減少は観察されなかった (図 7 ) 。
〔実施例 8〕
< a -GALシグナルぺプチド融合ひ -NAGA変異体の精製技術の確立 ( 1 ) > α -GALシグナルぺプチド融合ひ - NAGA(S 188E/A191L)の精製方法を確立 するための予備実験を行つた。 実施例 4で得られた CHO-K1安定発現株細胞 から分泌された、 ひ -GALシダナルぺプチド融合 a -NAGA(S 188E/A191L)を 含む培養上清 (約 6リットル) を回収し、 限外ろ過 (分画分子量 30 1cD: ミ リポア YM30) により約 170 ml(30倍)に濃縮した。 その後、 透析により 20 mM MES (pH 6.0)バッファーに置換した。
まず、 第 1ステップとして、 20 mM MES (pH 6.0) で平衡化した陰イオン 交換 HiLoad Q Sepharose HP (26/10)力ラムに酵素活性 500 μ mol/h(約 6 mg) の α-NAGA変異体を吸着させ、 20mMMES(pH6.0)でカラム洗浄し、 さら に、 150mMNaCl/20mMMES (pH6.0)で洗浄した。 その後、 250 mM
NaCl/20 mM MES (pH 6.0)で a -NAGA変異体を溶出し、 酵素活性の高い画 分を回収した。 HiLoad Q Sepharose陰イオン交換カラムの回収率は、 47% 程度で、 ; Foldは 7.4倍であった。
第 2ステップとして、 20 mM MES (pH 6.0)で平衡化した HiT p Heparin HP カラムに、 Q Sepharose HPカラムの溶出液 (酵素活性 224 μ mol/h:約 3 mg)をアプライし、 不純物をカラムに吸着させた。 20mMMES (pH6.0)を力 ラムに通し、 素通りしてくる α-NAGA変異体の分画を集めた。 HeparinHP カラム後の回収率は、 44%で、 Foldは 15.7倍になった。
第 3ステップとして、 1 mM リン酸カリウムバッファー (pH 6.0)で平衡化し たへパリンカラム素通り画分 (酵素活性 213 /mol/h :約 3 mg) を Bio-Scale CHT-2 Hydroxyapatite カラムに吸着させた。 1 mM リン酸カリゥムバッファ 一 (pH 6.0)でカラムを洗浄後、 37.5 mMリン酸カリゥムバッファー (pH6.0))で 溶出し、 酵素活性の高い画分を集めた。 Bio-Scale CHT-2 Hydroxyapatiteカラ ム後の回収率は 18%、 Foldは 55倍に達した。
以上の精製過程を表 5に示す。
表 5 - GALシグナルペプチド融合 Of - NAGA変異体の精製過 I '王
* a- NAGA変異… 35mM リン酸カリウム緩衝液 (pH6.0)に溶解
〔実施例 9〕
< α -GALシグナルぺプチド融合ひ - NAGA変異体の各種臓器への取込み試験 > 市販の α -GAL製剤 (Fabrazyme; Genzyme社) 1 mg/kg又は 0.3 mg/kg と同程度の oi -GAL酵素活性を有する -GALシグナルぺプチド融合 a -NAGA 変異体 (粗精製;実施例 8で得られたもの) を、 フアブリ一病モデルマウスに、 腹腔内投与 (ip 投与) 又は静脈内投与 (iv投与) し、 肝臓への取込みを調べ た。 なお、 本実施例において、 「 ひ -NAGA 変異体」 とは、 「 - NAGA(S188E/A191L)」 を意味する。
〔方法〕
1 . フアブリ一病モデルマウス (フアブリ一病マウスともいう。 ) (雄, 9〜 13g)及ぴ野生型マウスを用い、 以下の実験群を設定した (野生型マウスは 1) の実験群のみ) 。
1) 非投与群 (コントロール) (n=l)
2) α -NAGA変異体 (Fabrazyme lmg/kg相当活性) ip投与群 (n=3)
3) a -NAGA変異体 (Fabrazyme 0.3mg/kg相当活性) iv投与群(n=2) 2 . コントロールを除き、 投与から 60分後、 麻酔下で、 PBS 30ml にて全身 還流を行い、 肝臓、 心臓、 腎臓を摘出した。 各臓器の α -GAL活性は常法に従 い行った。
〔結果〕
それぞれの実験群における各臓器での e -GAL活性の比較結果を表 6に示す。 表 6 野生型マウス フアブリ-病モデルマウス
非投与 非投与 - NAGA変異体 ip Of - NAGA変異体 iv 肝臓 17 0.18 31 31 心臓 7.0 0.12 1.8 3.2 腎臓 11 0.38 2.7 1.3
(,nmol/h/mg)
上記結果から分かるように、 非投与群 (コントロール) の肝臓における α - GAL活性はほぼ 0であった。 これに対し、 α -NAGA変異体 ip投与群では、 肝臓での a -GAL活性が平均で 31 (nmol/h/mg)となり、 野生型マゥスの肝臓に おける 活性を上回る結果となった。 また、 a -NAGA変異体 iv投与群
においても、 肝臓での a -GAL活性が平均で 31 (nmoMi/mg)という高い値が得 られた。
a -NAGA変異体の ip投与群と iv投与群との肝臓への取込み能の比較につ いては、 上記の通り、 31となり同じ値となった。 しかし、 ip投与群及び iv投 与群における投与量は、 それぞれ、 1.0mg/kg及ぴ 0.3mg/kg であったため、 iv投与による投与経路の方が、 ip 投与による投与経路よりも有効に肝臓に取 込まれることが分かった。
心臓及び腎臓における a -GAL活性は、 肝臓におけるひ -GAL活性に比べて低 い値となり、 心臓及び腎臓におけるひ - NAGA変異体の取り込み効率が、 肝臓に おける取り込み効率と比べて低いことが分かった。 しかしながら、 通常、 正常 値 (すなわち野生型マウスの非投与群の値) の 20%程度の活性があれば、 生体 内では異常をきたさないと考えられている。 そのため、 上記の心臓及び腎臓に おける α -GAL活性であっても、 α -NAGA変異体の有用性が十分に示されている と考えられた。
なお、 腎臓及び心臓は、 フアブリ一病発病時における機能不全が特に問題と なる臓器の一つであり、 治療薬投与の際に、 血管内皮細胞と並んで、 標的臓器 となる組織である。 また、 従来の酵素補充療法用治療薬では、 血管内皮細胞に はある程度の効果は示すものの、 腎臓及び心臓での効果が不十分であった。 そ のため、 上記の心臓及び腎臓において (フアブリ一病モデルマウスのひ - NAGA 変異体非投与群と比べて) α -GAL活性が向上する結果が得られたことにより、 α -NAGA変異体が、 フアブリ一病治療薬の有効成分として極めて優れた酵素タ ンパク質であることが示された。
〔実施例 1 0〕
< a -GALシグナルぺプチド融合ひ -NAGA変異体の精製技術の確立 ( 2 ) > a -GALシグナルぺプチド融合ひ -NAGA変異体 ( a -GALシダナルぺプチド融 合 a -NAGA(S 188E/A191L)。 以下、 本実施例において 「 a -NAGA変異体」 と称 する。 ) の精製を行った。
実施例 4で得られた CHO-K1安定発現株細胞から分泌された、 a -GALシグナ
ルペプチド融合ひ - NAGA(S188E/A191L)を含む培養上清 (約 20リットル) を回 収し、 限外ろ過 (分画分子量 30 kD : ミリポア YM30) により約 740 ml(27倍) に濃縮した。 その後、 硫酸アンモニゥムを 50%となるように添加し、 その沈殿 を遠心分離(17000rpm)によ り 、 回収した。 これを 20 mM MES (pH 6.0)/900mM硫酸ァンモニゥムに溶解し、 1,400 mlとした。
次に、 この溶液を 20 mM MES (pH 6.0)/900mM硫酸ァンモニゥムで平衡ィ匕し た HiLoad Phenyl Sepharose HP (26/10)力ラムに添カロし、 ひ -NAGA変異体を吸 着させた。 これを、 20 mM MES (pH 6.0)/900mM硫酸アンモニゥム、 及び、 20 mM MES (pH 6.0)/500mM硫酸ァンモニゥムにて洗浄した後、 20 mM MES (pH 6.0)/200mM硫酸アンモニゥムにて α -NAGA変異体を溶出し、 酵素活性の高い画 分を回収した。 HiLoad Phenyl Sepharose HP (26/10)カラムまでの回収率は 63%程度で、 Fold (精製倍率) は 12倍であった。
HiLoad Phenyl Sepharose HP (26/10)力ラムクロマトグラフィ一の活性画分 を 20 mM 酢酸ナトリウム (pH 5.0)で透析をした後、 20 mM 酢酸ナトリウム (pH 5.0) で平衡化した HiLoad SP Sepharose HP (26/10)カラムに添加した。 ひ - NAGA変異体は、 20 mM酢酸ナトリウム (pH 5.0) 素通り画分に回収された。 HiLoad SP Sepharose HP (26/10)カラムまでの活性回収率は 40% 程度で、 Fold は 188倍であった。
この活性画分を 20 mM MES (pH 6.0)で平衡化した Q Sepharose HP (26/10)力 ラムに添加し、 ひ - NAGA変異体を吸着させた。 これを、 20 mM MES (pH 6.0)/140 mM塩化ナトリウム、 及ぴ、 20 mM MES (pH 6.0)/190 mM塩ィ匕ナト リゥムにて洗浄した後、 20 mM MES (pH 6.0)/250 mM塩ィ匕ナトリウムにてひ - NAGA変異体を溶出し、 酵素活性の高い画分を回収した。 HiLoad Q Sepharose HP (26/10)力ラムまでの活性回収率は 38% 程度で、 Foldは 489倍に達した。
以上の α -NAGA変異体の精製過程を、 下記表 7に示す。
表 7 specific
タンパク質 activity Total
activity Recovery
Step 液量
(jU moI/h/ activity
(ml) ( mol/h/
(mg/ml) ml) (mmol/h) (%) mg)
アミコン濃縮 740 82 74 0.90 55 1 60936 100
50%硫安沈殿 1400 20 38 1.9 53 2.1 27983 96
Phenyl-
425 7.7 81 10 34 12 3269 63 Sepharose
SP-Sepharose 185 0.71 119 169 22 188 131 40
Q-Sepharose 45 1.06 465 439 21 489 48 38
また、 各精製段階における試料 (タンパク量として lO w g) を定法により、 SDS-ポリアクリルアミ ドゲル電気泳動法により分離した後、 これを CBB染色し た結果を図 8に示した。 図 8では、 ひ - NAGA変異体を示すパンドが 2本認めら れるが (図中の矢印参照) 、 N-ダリカナーゼで処理後のものは 1本のバンドの みとなる (図示せず) 。 従って、 前記 2本のバンドに由来のタンパク質は、 糖 鎖の本数が異なる以外は、 いずれも同一のひ - NAGA変異体であると _質ン2 S,言える。
パ量 ¾
〔実施例 1 1〕
< α -GALシグナルぺプチド融合 α -NAGA変異体の各種臓器への取込み試験 > 実施例 1 0により精製して得られた a -NAGA変異体を、 フアブリ一病モデ ルマウス(フアブリ一病マウスとも言う)に静脈内投与 (iv投与) し、 各種臓器 への取り込みを調べた。
なお、 本実施例において、 「 a -NAGA 変異体」 と は、 「 ひ - NAGA(S188E/A191L)」 を意味する。
〔方法〕
1 . フアプリ一病モデルマウス (雄, 25〜35g) 及び野生型マウスを用い、 以 下の 1)〜3)の実験群を設定した。
1) 野生型マウス (n=3)
2) フアブリ一病マウス (n=3)
3) フアブリ一病マウスひ -NAGA変異体投与群 (n=3) (投与量: 1.9 mmol/lir/kgマウス体重 (Fabrazyme 1 mg/kgの活性相当量))
2 . α -NAGA変異体を投与した 3)群については、 投与から 60分後、 麻酔下 で、 PBS 30mlにて全身還流を行い、 肝臓、 腎臓、 心臓、 肺、 脳、 骨格筋を摘 出した。 各臓器のひ - GAL活性は常法に従い行った。 '
〔結果〕
各臓器での -GAL活性の比較結果を、 下記表 8に示す , 表 8 フアブリ一病マウスへの Οί - NAGA(S188E/A191 L)単回投与 1時間後における
各組織の 0!-ガラクトシダーゼ活性
上記結果から分かるように、 フアブリ一病マウスの各組織におけるひ - GAL 活性は 1.0 nmol/h/mg protein以下であった。 これに対し、 α -NAGA変異体 投与群では、 脳と骨格筋を除き、 4つの臓器で、 フアプリ一病マウスに比べて、 α -GAL活性が増加していた。 フアプリ一病における主な障害臓器である腎臓 と心臓では、 野生型マウスの腎臓と心臓それぞれにおけるひ - GAL活性を上回 る結果となり、 α -NAGA変異体の有用性が示された。
〔実施例 1 2〕
< α -GAL シグナルペプチド融合 α -NAGA変異体複数回投与による各種臓器 における a -GAL活性の獲得及び蓄積物質の分解効果確認実験 >
実施例 1 0により精製して得られた a -NAGA変異体を、 フアプリ一病モデ ルマウス(フアブリ一病マウスとも言う)に複数回静脈內投与 (iv投与) した後、 24時間経過後の各種臓器への取り込み及ぴ各種臓器における蓄積物質の分解 効果を調べた。
なお、 本実施例において、 「 a -NAGA 変異体」 とは、 「 α - NAGA(S188E/A191L)」 を意味する。 〔方法〕
1 . プアブリー病モデルマウス (雄, 15〜20g) 及び野生型マウスを用い、 以 下の 1)〜3)の実験群を設定した。 なお、 下記 1), 2)は、 実施例 1 1の 1), 2)と 同様である。 1) 野生型マウス (n=3)
2) フアプリ一病マゥス (n=3)
3) ファブリ一病マウスひ -NAGA変異体投与群 (n=4) (1 回あたり 1.9 mmol/hr/kgマウス体重の投与量を 24時間毎に 4回投与) 2 . 《 a -GAL活性の測定》 a -NAGA変異体を投与した 3)群は、 4回目投与 から 24時間後に、 麻酔下で脱血した後、 肝臓、 腎臓、 心臓、 肺、 脳、 骨格筋 を摘出した。 各臓器の a -GAL活性は常法に従い行つた。
3 . 《基質分解効果の解析: TLC解析》 各臓器における基質分解効果は、 臓 器に蓄積するセラミ ドトリへキソシド (CTH)を測定することで判定した。 摘出 した肝臓、 腎臓、 心臓を- 80°Cで凍結し、 各臓器の総糖脂質の抽出に用いた。 凍結保存した臓器 (50mg〜250mg) を水に対し 250mg/ml となるようにホモ ジナイズし、 Svennerholm L & Fredman P の方法 ( Svennerholm L, Fredman P, A procedure for the quantitauve isolation of brain
gangliosides., Biochem. Biophys. Acta., 1980; 617: 97-109. 参'照) ίこ従レヽ、 溶媒組成ク口口ホルム:メタノール:水 = 4 : 8 : 3の溶媒で抽出をした。 遠 心分離をした後、 抽出液を回収した。 残渣には、 溶媒組成クロ口ホルム:メタ ノール:水 = 5: 10: の溶媒にて再度抽出を行った後、 遠心分離を行い、 抽出液を前述の抽出液と合わせた。 合わせた抽出液は窒素気流下、 乾固した。
CTH の分析の際には、 乾固した試料を溶媒組成クロ口ホルム : メタノー ル:水 =40: 20: 3で臓器湿重量 lmg当り 2 μ 1で溶解した。 調製した臓器抽 出溶液を、 CTH標準品 (プタ赤血球性 CTH、 和光純薬) と共にシリカゲル 60 HPTHL に添加し、 クロ口ホルム : メタノール: 0.22%塩化カルシゥム 水溶液 = 11: 9: 2 の展開溶媒にて展開した。 HPTLC を乾燥後、 オルシノ ール試薬にて化学発色させた。
4 . 《基質分解効果の解析:免疫組織化学的解析》各臓器における基質分解効 果を、 免疫組織化学的に解析した。 定法 (埜中征哉、 臨床のための筋病理 [第 3版贈補]、 日本医事新報社参照) に従い、 摘出した肝臓、 腎臓、 心臓をクラ ィォスタツトにより 6 μ ιη の薄層凍結薄切切片を作製した。 さらに定法 (Η. Sakuraba et al., Corrective effect of recombinant human a -galactosidase having mammalian-like-mannose-type sugar chains produced in yeast on Fabry mice., J. Human Genet., 51, 341-352, 2006.参照) に従い、 免疫組織 染色を行った。 凍結切片を 4% パラホルムアルデヒド /PBS (pH 7.0) で 1 5 分間固定し、 10% Goat serum/PBSを加え、 室温で 1時間プロッキングした のち、 10% Goat serum/PBS で 2倍に希釈した抗 -CTH モノクローナル抗体 ( 1次抗体) を加え、 3 7 °Cで 2時間インキュベートした。 1次抗体とのイン キュベーシヨン後、 o.05% Tween20/PBS(PBS-T)により 5分間の洗浄を 3回 行ったのち 10% Goat serum/PBS で 1000倍に希釈した Alexa Fluor 488 Goat anti-mouse-IgG ( 2次抗体:インビトロジェン)を加え、 室温で 1時間ィ ンキュベートした。 2次抗体とのインキュベーション後、 PBS-T により 5分 間の洗浄を 3回行ったのち、 Permafluor Mount Medium (Thermo)で封入後、 蛍光顕微鏡システム Axiovertl35 (Carl Zeiss)で観察を行った。
〔結果〕
1 . 《残存活性の測定》各臓器での a -GAL活性の比較結果を、 下記表 9に示 す。
表 9 フアブリ一病マウスへの ff-NAGA(S188E/A191 L)4回投与後 24時間後における 各組織の α-ガラクトシダーゼ活性
α -NAGA変異体 4回投与群は、 最終投与後 24時間後、 脳では、 a -GAL活 性が検出されなかった。 一方、 脳を除いた残りの臓器においては、 フアブリ一 病マウスに比較して、 多くの α -OAL活性が残存していた。 フアブリ一病にお ける主な障害臓器である腎臓と心臓では、 野生型マウスの腎臓と心臓それぞれ における α -GAL活性を上回る結果となった。 このことは、 - NAGA変異体 は、 投与直後だけでなく、 数日間は主な障害臓器である腎臓と心臓に残存して いることを示している。 通常、 正常値の 20%程度の活性があれば、 生体内で は異常をきたさないと考えられていることも考慮すると、 (x -NAGA変異体は 一定の間隔で、 投与をされても、 心臓及び腎臓において十分な活性を保てるこ とが示された。
腎臓及び心臓は、 フアブリ一病発病時における機能不全が特に問題となる臓 器の一つであり、 治療薬投与の際に、 血管内皮細胞と並んで、 標的臓器となる 組織である。 また、 従来の酵素補充療法用治療薬では、 血管内皮細胞にはある 程度の効果は示すものの、 腎臓及び心臓での効果が不十分であった。 そのため、 上記の心臓及び腎臓における a -GAL活性の結果により、 a -NAGA変異体が、 フアブリ一病治療薬の有効成分として極めて優れた酵素タンパク質であること が示された。
2 . 《基質分解効果の解析》肝臓、 腎臓、 心臓におけるひ - GAL の基質である CTHの分析結果を図 9に示した。 なお、 TLCシートを乾燥後、 抗 CTH抗体 を用いた TLC免疫染色を常法 (Kotani M et al., Generation of one set of murine monoclonal antibodies specific for globo-series glycolipids"- evidence for differential distribution of the glycolipids in rat small intestine., Arch. Biochem. Biophys., 1994; 310: 89-96. 参照) に従って行い、 図中の CTHの マークのバンドが CTHであることを確認した。
a -NAGA変異体 4回投与を行ったフアブリ一病マウスにおける肝臓、 腎臓、 心臓の CTHは、 投与を行っていないフアプリ一病マウスの各臓器の CTHに 比べ、 いずれにおいても CTHが減少した。
3 . 《基質分解効果の解析:免疫組織化学的解析》各臓器における基質分解効 果を、 定法により免疫組織化学的解析の結果を図 1 0 (腎臓) 、 図 1 1 (心 臓) 及び図 1 2 (肝臓) に示した。
抗体染色の結果、 a -NAGA改変体を投与したフアブリ一病マゥスの肝臓、 腎臓、 心臓では、 フアブリ一病マゥスの臓器に比べ、 CTH の減少が観察され、 α -NAGA改変体が臓器内の CTHを分解していることが示された。
これらの結果において、 フアブリ一病における主な障害臓器である腎臓と心 臓の CTH が減少していたことは、 ひ - NAGA改変体は生体内でも十分にひ - GAL の代わりに基質 CTH を分解し得ることを示しており、 プアブリー病の 治療や予防に有効であることを示すものであった。 産業上の利用可能性
本発明によれば、 アレルギー性副作用がなく、 血中 (血漿中) 安定性が高く、 かつ障害臓器の細胞に取り込まれやすい、 α -GAL活性を有するタンパク質 ( - NAGA変異体) を用いた、 フアブリ一病治療用医薬組成物を提供することがで きる。 ここで、 上記タンパク質がアレルギー性副作用の要因とならないのは、 通常、 フアプリ一病患者であっても、 健常者と同様に生体内に α -NAGAを有し
ているため、 o! -NAGAと表面構造が実質的に同一である α -NAGA変異体に対し てはアレルギー反応を起こさないからである。 また、 上記タンパク質の血中 ( 血漿中) 安定性が高いのは、 本来 α -NAGAは α -GALよりも血中安定性が高く、 この特性は a -NAGA変異体においても同様に発揮されるためである。 さらに、 上記タンパク質が障害臓器の細胞に取り込まれやすいのは、 もともと - NAGA はひ - GALよりも M6Pが結合し得る糖鎖を多く有しており、 この構造的特徴は a -NAGA変異体においても同様であるためである。
このように、 本発明の医薬組成物は、 フアブリ一病の治療方法の一つである 酵素補充療法に有効に用いることができ、 優れた治療効果を発揮し得る医薬組 成物として、 極めて有用なものである。
また本発明によれば、 基質特異性を変換した新規高機能酵素としての上述し た α -GAL活性を有するタンパク質 (ひ - NAGA変異体) のほか、 当該タンパク質 をコードし得る遺伝子、 当該遺伝子を含む組換えベクター、 当該組換えべクタ 一を含む形質転換体、 及び当該タンパク質の製造方法を提供することができる。 配列表フリーテキスト
配列番号 3 :組換え DNA
配列番号 4 :組換えタンパク質
配列番号 5 :組換え DNA
配列番号 6 :組換えタンパク質
配列番号 7 :組換え DNA
配列番号 8 :組換えタンパク質
配列番号 1 3 :合成 DNA
配列番号 1 4 :合成 DNA
配列番号 1 5 :合成 DNA
配列番号 1 6 :合成 DNA
配列番号 1 7 :合成 DNA
配列番号 1 8 :合成 DNA
配列番号 1 9 :合成 DNA
配列番号 2 0 合成 DNA 配列番号 2 1 合成 DNA 配列番号 2 2 合成 DNA 配列番号 2 3 合成 DNA 配列番号 2 4 合成 DNA