明 細 書
ケミカルゲノム情報に基づぐタンパク質一化合物相互作用の予測と化合 物ライブラリーの合理的設計
技術分野
[0001] 本発明は、 2種類の化学物質のデータベースを用いて効率よくスクリーニングを行 い、合理的設計を行うためのデータ構造に関する。詳細には、遺伝子の配列情報な どゲノム情報とィ匕合物の化学特性などのケミカル情報の両情報を用いて、化合物 タンパク質相互作用予測する計算手法に関する。
背景技術
[0002] ヒトゲノムが公開されている現在、ゲノム情報を利用した医薬応用が注目されている 。ゲノム情報に基づく医薬品開発には、タンパク質 (遺伝子)と化合物の相互作用を 解明することが不可欠であるが、これら相互作用を実験的に解明するには莫大な労 力である。ノィォインフォマテイクスの日本での巿場は 2004年度約 350億円で前年 比横ばいと推定されている。このうちノ ッケージソフトの巿場は約 50億円でやはり横 ばい。しかし薬物動態や毒性検査のシミュレーション、タンパク質機能解析ソフトの巿 場は拡大している(日経バイオ年鑑 2005)。また、別の資料では、バイオインフォマ テイクスの世界巿場は 2003年 2116億円、 2010年予測 1兆 7700億円、 2015年予 測 2兆 8700億円と見込まれて 、る (非特許文献 1 =日経産業新聞 2004年 11月 29 日)。現在、この技術の適用ならびに、製品化に向けた研究が製薬企業およびバイオ ベンチャーにおいて盛んに行われて、医薬品、バイオ産業への巿場の拡大が見込ま れる。
[0003] タンパク質と化合物との相互作用を予測する従来技術としては、一般に、立体構造 モデルを用いた予測システムが知られている(非特許文献 2〜5)。このシステムは、 生体高分子の立体構造情報に基づき、リガンドとの安定な複合体構造およびその結 合の強さを推定する方法であり、このようなアプローチはドッキングスタディと呼ばれ ている。し力しこれらの手法は、 X線結晶解析などで信頼できる立体構造を得ている 場合でなければ科学的根拠を有する予測が成り立たないこと、さらに立体構造を用
いた計算は負荷が高く計算時間が膨大にかかるため、無限のバリエーションを有す る化合物群やタンパク質群の組み合わせを網羅的に計算することが不可能であるこ となどの問題点を有する。
[0004] また発明者自身の従来法 (非特許文献 6)は、タンパク質群と化合物群を別々に統 計処理 (クラスター解析など)した後、タンパク質処理データと化合物処理データを融 合すること (2次元マップ表示)により、タンパク質と化合物の相互作用ペアを推測する もので
あつたが、本手法はタンパク質群と化合物群を同時に統計処理することにより、予測 性能の著し ヽ向上に成功した技術である。
[0005] さらには、 2004年 12月の Nature誌 Chemical Space特集号(非特許文献 7)で は、「ィ匕合物のノ リエーシヨンは膨大であり全ての化合物を追 、求めることは不可能 であるため、生物にとって有用な化合物群のみを対象にしなければならない」ことが 示されている力 これまでにその具体的方法に関する報告はなされていない。本技 術はタンパク質群と化合物群の相互作用様式の統計モデルを構築していることから 、生物にとって有用な化合物群の化学特性の統計モデル化に成功している。
[0006] 特表 2002— 530727号公表公報 (特許文献 1)は、ケミカル空間の高活性領域 を特定し、ライブラリー構築を行うことを記載している。しかし、この方法は、ケミカル情 報 (構造活性相関情報、フアルマコフォア情報など)のみを用いてケミカル空間を定 義しているに過ぎない。しかし、この方法では、主成分分析 (PCA)が用いられている
[0007] 2004年に米国 NIHは国家プロジェクトとしてケミカルゲノミタスプロジェクトを開始し た。以来、米国や欧州を中心にゲノム情報の化学分野への応用が世界中で取り糸且ま れている。従って、少なくとも米国など先進国において、効率的な予測方法に対する 需要が存在する。
非特許文献 1:日経産業新聞 2004年 11月 29日
非特干文献 2 :YoshilUmi Fukunishi, Yoshiaki Mikami, and Haruki Nakamura Thefilli ngpotential method:A methodfor estimating the free energy surfaceforprotein— ligand docking" J.Phys. Chem. B. (2003) 107, 13201—13210.
非特許文献 3 : Shoichet, B.K..D.L. Bodian'and I.D. Kuntz, "Molecular docking using shapedescriptors. j .Comp. Chem., 1992. 13{S), 380-397.
非特許文献 4 : Jones G, WillettP, Glen RC, Leach AR.Taylor R. "Developmentand v alidation ofa geneticalgorithm for flexible docking." J Mol Biol.1997.267(3):727— 748. 非特許文献 5 : Rarey M, KramerB, Lengauer T. "Time-efficient doc ing of flexibleliga nds intoactive sites olproteins." Proc Int Conf IntellSyst Mol Biol.1995;3:300-308. 非特許文献 6 : Okuno, Y., Yang, J., Taneishi, K., Yabuuchi'H., Tsujimoto, G, "GLID A : GPC R-Liganddat abas efor Chemical Genomic Drug Discovery" Nucleic AcidsRese arch,34,D673-677, 2006
非特許文献 7 : "Chemical Space", Nature, 432 No 7019 (Insight) 823-865 特許文献 1:特表 2002— 530727号公表公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 本発明は、化合物のスクリーニングを合理的にかつ効率的に行うことを目的とする。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明者らは、鋭意開発した結果、第 1の化学物質群の空間座標を表す第 1空間と 第 2の化学物質群の空間座標を表す第 2空間とを定義し、第 1の化学物質群は第 1 の特徴量により特徴付けられ、第 2の化学物質群は第 2の特徴量により特徴付けられ 、前記第 1空間と前記第 2空間との相関が最大になるように、多変量解析手法、機械 学習法およびそれらの等価方法力 なる群より選択される手法によって、該第 1空間 の座標および該第 2空間の座標を写像変換することによって解決した。具体的には、 タンパク質群と化合物群の相互作用様式をタンパク質の特徴量 (配列や発現情報な どの生物学的情報)と化合物の特徴量 (化学構造、物性などの化学物質情報)の統 計的パターンとして機械学習し、それに基づく相互作用予測を実現したシステムであ り、これにより上記の問題点が解決された。
[0010] 化合物のライブラリー設計やリード探索における従来法は、図 1上段のように化合 物のケミカル情報のみを用いて行って 、た (ケモインフォマテイクス)。本発明者らの 手法はこのケミカル情報のみの従来手法に、図 1下段のバイオインフォマティクス技
術を融合させ、ゲノム情報を考慮に入れた化合物ライブラリー設計やリード探索という 新 、手法を開発することができた。
[0011] 化合物のリード探索やライブラリー設計を計算で行う際の基本的な考え方は、個々 の化合物の相対的な位置関係 (類似度)を示す座標空間が必要である。
[0012] 例えば、図 1上段のケミカル空間上の丸印はそれぞれ異なる化合物を表しており、 特性の似て 、る化合物は相対的に近 、位置関係になるように配置されて 、るとする とこれら化合物の位置力 構成される座標空間をケミカル空間という。
[0013] 同様に、遺伝子 (タンパク質)についても類似関係を相対的な位置関係として表現 したものがバイオ空間である(図 1下段、四角印が遺伝子またはタンパク質)。さらに 個々の化合物とタンパク質の結合をリンク(図 1、中央矢印)することによって、これら ケミカル空間とバイオ空間を融合したモデルを作ることができる。
[0014] 従って、本発明は、以下を提供する。
(1)第 1の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 1空間と、第 2の 化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 2空間とを備えるデータ構 造物であって、第 1の化学物質は、第 1の特徴量により特徴付けられ、第 2の化学物 質は、第 2の特徴量により特徴付けられる、データ構造物。
(2)上記第 1の特徴量と上記第 2の特徴量とは互いに単純な関連が見られないことを 特徴とする、項目 1に記載のデータ構造物。
(3)上記第 1の特徴量は、上記第 1の化学物質の化学特性であり、上記第 2の特徴 量は、上記第 2の化学物質の生物活性である、項目 1に記載のデータ構造物。
(4)上記第 1の化学物質は化合物であり、上記第 2の化学物質は、生体物質である、 項目 1に記載のデータ構造物。
(5)上記生体物質は、核酸、ペプチドまたはポリペプチドまたはタンパク質、サッカリ ドまたはポリサッカリド、脂質、およびそれらの複合体力もなる群より選択される、項目 4に記載のデータ構造物。
(6)上記生体物質の空間座標は配列情報、二次構造、三次構造、四次構造、立体 構造情報、発現情報、パスウェイ情報、機能情報および生物活性情報からなる群より 選択される少なくとも 1種類の情報により定義される、項目 4に記載のデータ構造物。
(7)上記第 1空間と上記第 2空間との相関が最大になるように上記第 1空間の座標お よ
び上記第 2空間の座標が定義される、項目 1に記載のデータ構造物。
(8)上記第 1空間と上記第 2空間とは、多変量解析手法、機械学習法およびそれら の等価方法からなる群より選択される手法によって定義されることを特徴とする、項目 1に記載のデータ構造物。
(9)上記多変量解析手法は、正準相関分析 (CCA)およびカーネル正準相関分析( kernel CCA)力らなる群より選択される、項目 8に記載のデータ構造物。
(10)上記機械学習法は、サポートベクターマシン (SVM)法を含む、項目 8に記載 のデータ構造物。
(11)上記第 1化学物質の空間座標は、ケミカル情報および化学特性からなる群より 選択される情報によって定義される、項目 1に記載のデータ構造物。
(12)上記ケミカル情報は、化合物記述子によって定義される、項目 9に記載のデー タ構造物。
(13)上記化合物記述子は、一次元記述子、二次元記述子および三次元記述子か らなる群より選択される、項目 12に記載のデータ構造物。
(14)上記化合物記述子は、一次元記述子であり、上記一次元記述子は、化学組成 を記述することを特徴とする、項目 12に記載のデータ構造物。
(15)上記化合物記述子は、二次元記述子であり、上記二次元記述子は、化学トポロ ジーを記述することを特徴とする、項目 12に記載のデータ構造物。
(16)上記化合物記述子は、三次元記述子であり、上記三次元記述子は、三次元形 状および官能性からなる群より選択される特徴を記述することを特徴とする、項目 12 に記載のデータ構造物。
(17)上記化合物記述子は、フアルマコフォアである、項目 12に記載のデータ構造物
(18)上記化合物記述子は、フアルマコフォアであり、上記フアルマコフォアは、少なく とも 3つの空間的に離れたフアルマコフォア中心を含み、各フアルマコフォア中心は、
(i)空間位置と、
(ii)ある化学特性を特定する所定のフアルマコフォア型と、を含み、基本セットのフ アルマコフォア型には、少なくとも、水素結合受容体、水素結合供与体、負電荷中心
、正電荷中心、疎水性中心、芳香族中心、ならびに他のいずれのフアルマコフォアの 型にも入らないデフォルトカテゴリが含まれる、項目 12に記載のデータ構造物。
(19)上記空間位置を、隣接するフアルマコフォア中心間の隔絶距離あるいは隔絶距 離範囲として与える、項目 18に記載のデータ構造物。
(20) 所望の特性を有する化学物質を生産する方法であって、
A)第 1の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 1空間に包含さ れる第 1の化学物質群を提供する工程と、
B)第 2の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 2空間に包含さ れる第 2の化学物質群を提供する工程であって、第 1の化学物質は、第 1の特徴量に より特徴付けられ、第 2の化学物質は、第 2の特徴量により特徴付けられる、工程と、
C)第 2の特徴量にぉ 、て所望の特性を選択する工程と、
D)上記選択された所望の特性を有する第 2の化学物質の、第 2空間における目的 領域を算出する工程と、
E)上記目的領域と所定の距離以下に存在する第 1空間の標的領域を算出するェ 程と、
F)上記第 1空間の標的領域に存在する化学物質を選択する工程と、
を包含する、方法。
(21)サンプルデータを用いて上記第 1空間と第 2空間とを相関させるようトレーニン グすること工程をさらに包含する、項目 20に記載の方法。
(22)上記トレーニングにより、行列 Aと行列 Bを生成し、第一モダリティの第一空間を 表わす XAと第二モダリティの第一空間を表わす YBとの間の相関は最大となり、これ により、上記第一モダリティから第二モダリティへの特徴の移転が可能となり、上記移 転は、行列 X、 Yの行には化学物質のエントリーが、列には化学物質情報が並ぶ 2種 の異質な
データ (例えばィ匕合物とタンパク質)を行列 Χ,Υ (第一空間が行列 X、第二空間が行列 Υ)
と表現したとき、
[0015] [数 1]
X = n Π"歹り γ =
η y. 亍歹リ n≥p≥q≥l f = Xa g二 Yb
第一空間と第二空間の相関を最大にするために、 相関係数
[0016] [数 2] rfx =
σ,
[0017] を最大にする係数ベクトル a,bの組を探し、
ここで
[0018] 画
<j, - σ. = 1
[0019] 、の条件付のとき、
[0020] [数 4]
[0021] を最大にするとき、
[0022] [数 5]
[0023] を正準相関、
[0024] [数 6] f,g
[0025] を正準変量と呼ぶ、方法。
(23)上記正準相関解析にお 、て、 Xと Yの特異値分解を行!、、
[0026] [数 7]
X = UXDXV Y = U7D7V
U'X UY = UDV'
U, D,Vを算出し、上記 U,D,Vを用い、
を求め、
ただし、 A, B, F, Gは、
[0028] [数 9]
= ."。 J B … AJ
F = \f^- q \ G
F = XA G = YB であり、ここで、 i=lから順番に相関の高いもの
[0029] [数 10]
[0030] ことを特徴とする項目 22に記載の方法。
(24)
上記第一空間を表わす XAのクエリは、上記第二空間を表わす YBの上記クエリの結 果のみが与えられると、 YBは XAと最大の相関を有すること力 特定可能であること を特徴とする項目 19に記載の方法。
(25)上記工程 A)〜F)を機械学習法によって自動的に行うことを包含する、項目 20 に記載の方法。
(26)上記機械学習法は、 SVM法によって達成される、項目 25に記載の方法。
(27) 上記機械学習法において、
G1)既知の第 1化学物質と第 2化学物質との結合データを機械学習アルゴリズムに トレーニングさせる工程;
G2)問い合わせとなる第 1化学物質と第二化学物質との問い合わせペアを、第 1の 化学物質の空間座標のデータベースおよび第 2の化学物質の空間座標のデータべ ースによって構築された空間モデルにおいてマッピングする工程;および
G3)上記問い合わせペアが、空間エリア内に存在する場合、第 1化学物質と第二 化学物質とが結合すると判定し、空間エリア内に存在しない場合、第 1化学物質と第 二化学物質とが結合しないと判定する工程を包含する、
項目 25に記載の方法。
(28)上記第 1の特徴量と上記第 2の特徴量とは互いに相関しないことを特徴とする、 項目 20に記載の方法。
(29)上記第 1の特徴量は、上記第 1の化学物質の化学特性であり、上記第 2の特徴 量は、上記第 2の化学物質の生物活性である、項目 20に記載の方法。
(30)上記第 1の化学物質は化合物であり、上記第 2の化学物質は、生体物質である 、項目 20に記載の方法。
(31)上記生体物質は、核酸、ペプチドまたはポリペプチドまたはタンパク質、サッカリ ドまたはポリサッカリド、脂質、およびそれらの複合体力もなる群より選択される、項目 30に記載の方法。
(32)上記生体物質の空間座標は配列情報、二次構造、三次構造、四次構造、立体 構造情報、発現情報、パスウェイ情報、機能情報および生物活性情報からなる群より 選択される少なくとも 1種類の情報により定義される、項目 30に記載の方法。
(33)上記第 1の特徴量は、上記第 1の化学物質の生物特性であり、上記第 2の特徴 量は、上記第 2の化学物質の化学活性である、項目 20に記載の方法。
(34)上記第 2の化学物質は化合物であり、上記第 1の化学物質は、生体物質である 、項目 20に記載の方法。
(35)上記生体物質は、核酸、ペプチドまたはポリペプチドまたはタンパク質、サッカリ
ドまたはポリサッカリド、脂質、およびそれらの複合体力もなる群より選択される、項目
34に記載の方法。
(36)上記生体物質の空間座標は配列情報、二次構造、三次構造、四次構造、立体 構造情報、発現情報、パスウェイ情報、機能情報および生物活性情報からなる群より 選択される少なくとも 1種類の情報により定義される、項目 30に記載の方法。
(37)上記第 1空間と第 2空間との相関が最大になるように上記第 1座標および上記 第 2座標が定義される、項目 20に記載の方法。
(38)上記第 1空間と上記第 2空間とは、多変量解析手法、機械学習法およびそれら の等価方法からなる群より選択される手法によって定義されることを特徴とする、項目 20に記載の方法。
(39)上記多変量解析手法は、正準相関分析 (CCA)およびカーネル正準相関分析 (kernel CCA)力もなる群より選択される、項目 38に記載の方法。
(40)上記機械学習法は、サポートベクターマシン (SVM)法を含む、項目 38に記載 の方法。
(41)さらに、多変量解析手法、機械学習法または等価方法のうち 2つ以上を組み合 わせて適用することを特徴とする、項目 38に記載の方法。
(42)上記相関は、上記目的領域と上記標的領域との間の相関である、項目 20に記 載の方法。
(43)さらに、上記選択されたィ匕学物質をインシリコで生産する工程を包含する、項目 20に記載の方法。
(44)さらに、上記選択されたィ匕学物質をウエットで生産する工程を包含する、項目 2 0に記載の方法。
(45)上記ウエットでの生産は、コンビナトリアルケミストリを用いて達成される、項目 44 に記載の方法。
(46)上記ウエットでの生産は、遺伝子組み換え技術を用いて達成される、項目 44に 記載の方法。
(47)さらに、上記第 1空間の化学物質の選択の後、上記第 1空間の化学物質の上 記第 2の特徴量を測定して、実際に所望の活性を有する化学物質を選択する工程を
さらに包含する、項目 20に記載の方法。
(48)上記化学物質の選択工程にお!、て、上記化学物質を上記第 2の特徴量に基 づいてスコア付けすることを特徴とする、項目 20に記載の方法。
(49)上記生体物質の空間座標は配列情報、二次構造、三次構造、四次構造、立体 構造情報、発現情報、パスウェイ情報、機能情報および生物活性情報からなる群より 選択される少なくとも 1種類の情報により定義される、項目 20に記載の方法。
(50)上記第 1化学物質の空間座標は、ケミカル情報または化学特性によって定義さ れる、項目 20に記載の方法。
(51)上記ケミカル情報は、化合物記述子によって定義される、項目 50に記載の方 法。
(52)上記化合物記述子は、一次元記述子、二次元記述子および三次元記述子か らなる群より選択される、項目 51に記載の方法。
(53)上記化合物記述子は、一次元記述子であり、上記一次元記述子は、化学組成 を記述することを特徴とする、項目 51に記載の方法。
(54)上記化合物記述子は、二次元記述子であり、上記二次元記述子は、化学トポロ ジーを記述することを特徴とする、項目 51に記載の方法。
(55)上記化合物記述子は、三次元記述子であり、上記三次元記述子は、三次元形 状および官能性からなる群より選択される特徴を記述することを特徴とする、項目 51 に記載の方法。
(56)上記化合物記述子は、フアルマコフォアである、項目 51に記載の方法。
(57)上記第 1化学物質は、フアルマコフォアであり、上記フアルマコフォアは、少なく とも 3つの空間的に離れたフアルマコフォア中心を含み、各フアルマコフォア中心は、
(i)空間位置と、
(ii)ある化学特性を特定する所定のフアルマコフォア型と、を含み、基本セットのフ アルマコフォア型には、少なくとも、水素結合受容体、水素結合供与体、負電荷中心
、正電荷中心、疎水性中心、芳香族中心、ならびに他のいずれのフアルマコフォアの 型にも入らないデフォルトカテゴリが含まれる、項目 20に記載の方法。
(58)上記空間位置を、隣接するフアルマコフォア中心間の隔絶距離あるいは隔絶距
離範囲として与える、項目 57に記載の方法。
(59)項目 20〜58の 、ずれか 1項に記載の方法によって生産された化学物質。
(60)化合物ライブラリーを生産する方法であって、
A)第 1の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 1空間に包含さ れる第 1の化学物質群を提供する工程と、
B)第 2の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 2空間に包含さ れる第 2の化学物質群を提供する工程であって、第 1の化学物質は、第 1の特徴量に より特徴付けられ、第 2の化学物質は、第 2の特徴量により特徴付けられる、工程と、
C)第 2の特徴量にぉ 、て所望の特性を選択する工程と、
D)上記選択された所望の特性を有する第 2の化学物質の、第 2空間における目的 領域を算出する工程と、
E)上記目的領域と所定の距離以下に存在する第 1空間の標的領域を算出するェ 程と、
F)上記第 1空間の標的領域に存在する複数の化学物質を選択して所望の特性を 有するライブラリーを生産する工程と
を包含する、方法。
(61)項目 21〜59のいずれか 1項に記載の特徴を有する、項目 60に記載の方法。
(62)項目 60または 61に記載の方法によって生産されたライブラリー。
(63) 所望の特性を有する化学物質を生産する方法をコンピュータに実行させるプ ログラムであって、上記方法は:
A)第 1の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 1空間に包含さ れる第 1の化学物質群を提供する工程と、
B)第 2の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 2空間に包含さ れる第 2の化学物質群を提供する工程であって、第 1の化学物質は、第 1の特徴量に より特徴付けられ、第 2の化学物質は、第 2の特徴量により特徴付けられる、工程と、
C)第 2の特徴量にぉ 、て所望の特性を選択する工程と、
D)上記選択された所望の特性を有する第 2の化学物質の、第 2空間における目的 領域を算出する工程と、
E)上記目的領域と所定の距離以下に存在する第 1空間の標的領域を算出するェ 程と、
F)上記第 1空間の標的領域に存在する化学物質を選択する工程と、
を包含する、
プログラム。
(64) 所望の特性を有する化学物質を生産する方法をコンピュータに実行させるプ ログラムを格納したコンピュータ読み出し可能な記録媒体であって、上記方法は:
A)第 1の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 1空間に包含さ れる第 1の化学物質群を提供する工程と、
B)第 2の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 2空間に包含さ れる第 2の化学物質群を提供する工程であって、第 1の化学物質は、第 1の特徴量に より特徴付けられ、第 2の化学物質は、第 2の特徴量により特徴付けられる、工程と、
C)第 2の特徴量にぉ 、て所望の特性を選択する工程と、
D)上記選択された所望の特性を有する第 2の化学物質の、第 2空間における目的 領域を算出する工程と、
E)上記目的領域と所定の距離以下に存在する第 1空間の標的領域を算出するェ 程と、
F)上記第 1空間の標的領域に存在する化学物質を選択する工程と、
を包含する、
記録媒体。
(65)第 1の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 1空間と、第 2の 化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 2空間とを備えるデータ構 造物であって、第 1の化学物質は、第 1の特徴量により特徴付けられ、第 2の化学物 質は、第 2の特徴量により特徴付けられる、データ構造物が記録された記録媒体。
(66) 所望の特性を有する化学物質を生産するシステムであって、上記システムは:
A)第 1の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 1空間に包含さ れる第 1の化学物質群と、
B)第 2の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 2空間に包含さ
れる第 2の化学物質群であって、第 1の化学物質は、第 1の特徴量により特徴付けら れ、第 2の化学物質は、第 2の特徴量により特徴付けられる、第 2の化学物質群と、
C)第 2の特徴量にぉ 、て所望の特性を選択する手段と、
D)上記選択された所望の特性を有する第 2の化学物質の、第 2空間における目的 領域を算出する手段と、
E)上記目的領域と所定の距離以下に存在する第 1空間の標的領域を算出する手 段と、
F)上記第 1空間の標的領域に存在する化学物質を選択する手段と、
G)上記選択された化学物質を生産する手段と
を備える、システム。
(67) 所望の特性を有する化学物質をスクリーニングするシステムであって、上記シ ステムは:
A)第 1の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 1空間に包含さ れる第 1の化学物質群と、
B)第 2の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 2空間に包含さ れる第 2の化学物質群であって、第 1の化学物質は、第 1の特徴量により特徴付けら れ、第 2の化学物質は、第 2の特徴量により特徴付けられる、第 2の化学物質群と、
C)第 2の特徴量にぉ 、て所望の特性を選択する手段と、
D)上記選択された所望の特性を有する第 2の化学物質の、第 2空間における目的 領域を算出する手段と、
E)上記目的領域と所定の距離以下に存在する第 1空間の標的領域を算出する手 段と、
F)上記第 1空間の標的領域に存在する化学物質を選択する手段と、
を備える、システム。
(68)化学物質ライブラリーを作成する方法であって、
A)第 1の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 1空間を特定す る工程、
B)少なくとも 1つの特性が既知の第 2の化学物質の空間座標のデータベースにより
定義される第 2空間を特定する工程であって、ここで、第 1の化学物質は、第 1の特徴 量により特徴付けられ、第 2の化学物質は、第 2の特徴量により特徴付けられる工程
C)上記第 1空間と上記第 2空間との相関が最大になるように上記第 1空間の座標を 定義しなおす工程、
D)上記定義しなおした第 1空間を新たな化学物質ライブラリ一として生成する工程 、を包含する、方法。
(69)第 1の化学物質群と第 2の化学物質群との間の相互作用パターンを統計モデ ルとして定義するデータ処理方法であって、
第 1の化学物質群の空間座標を表す第 1空間と、第 2の化学物質群の空間座標を表 す第 2空間とを定義し、第 1の化学物質群は、第 1の特徴量により特徴付けられ、第 2 の化学物質群は、第 2の特徴量により特徴付けられ、
(I)第 1の化学物質群は化合物であり、該第 2の化学物質群は、核酸またはタンパク 質あるいはそれらの複合体であり、かつ
該第 1の特徴量は、該第 1の化学物質の 1種類以上の化学物質情報からなるベタト ルとして表現され、該第 2の特徴量は、該第 2の化学物質群の 1種類以上の生物学 的情報力 なるベクトルとして表現される場合、あるいは
(II)第 1の化学物質群は核酸またはタンパク質あるいはそれらの複合体であり、該第 2の化学物質群は、化合物であり、かつ
該第 1の特徴量は、該第 1の化学物質群の 1種類以上の生物学的情報からなるベタ トルとして表現され、該第 2の特徴量は、該第 2の化学物質の 1種類以上の化学物質 情報力 なるベクトルとして表現される場合において、
該第 1空間と該第 2空間とは、多変量解析手法、機械学習法およびそれらの等価方 法からなる群より選択される手法によって写像変換される、データ処理方法であって 前記第 1空間と前記第 2空間との相関が最大になるように、多変量解析手法、機械学 習法およびそれらの等価方法力 なる群より選択される手法によって、該第 1空間の 座標および該第 2空間の座標が写像変換され、変換後の第 1空間座標と変換後の第
2空間座標を定義する、
ことを特徴とするデータ処理方法。
(70)項目 69に記載のデータ処理方法において、第 1の化学物質と第 2の化学物質 との間の相互作用を予測するデータ処理方法であって、
A)相互作用することが既知である第 1の化学物質群と第 2の化学物質群について、 項目 69に記載のデータ処理方法によって、第 1の化学物質群の空間座標を表す第 1空間と第 2の化学物質群の空間座標を表す第 2空間とが写像変換される工程と、
B)相互作用の予測対象となる第 1の化学物質の第 1の特徴量力 なるベクトルを該 写像変換することによって第 1の化学物質を変換後の第 1空間へとマッピングするェ 程と、相互作用の予測対象となる第 2の化学物質の第 2の特徴量力 なるベクトルを 該写像変換することによって第 2の化学物質を変換後の第 2空間へとマッピングする 工程と
C)相互作用の予測対象となる第 1の化学物質の変換後の座標位置と相互作用の予 測対象となる第 2の化学物質の変換後の座標位置とによって、予測対象となる第 1の 化学物質と第 2の化学物質とが相互作用する確率をスコアとして算出する工程と、
D)特定のスコア以上を有する第 1の化学物質と第 2の化学物質を出力する工程と、 を包含する、
データ処理方法。
(71)項目 69に記載のデータ処理方法において、所望の特徴量を有する化学物質 またはライブラリーを生産するデータ処理方法であって、
A)相互作用することが既知である第 1の化学物質群と第 2の化学物質群について、 項目 69に記載のデータ処理方法によって、第 1の化学物質群の空間座標を表す第 1空間と第 2の化学物質群の空間座標を表す第 2空間とが写像変換される工程と、
B)第 1の化学物質群の第 1の特徴量力 なるベクトルを該写像変換することによって 第 1の化学物質群を変換後の第 1空間へとマッピングする工程と、第 2の化学物質群 の第 2の特徴量力 なるベクトルを該写像変換することによって第 2の化学物質群を 変換後の第 2空間へとマッピングする工程と
C)第 1の化学物質群の変換後の座標位置と第 2の化学物質群の変換後の座標位置
とによって、第 1の化学物質群と第 2ィ匕学物質群とが相互作用する確率をスコアとして 算出する工程と、
D)第 2の特徴量において所望の特徴量を選択する工程と、
E)該選択された所望の特徴量を有する第 2の化学物質群の、変換後の第 2空間に おける目的領域を算出する工程と、
F)該目的領域内に存在する第 2の化学物質群と所定のスコア以上を示す変換後の 第 1空間の標的領域を算出する工程と、
G)該標的領域に存在する第 1の化学物質または化学物質群を選択する工程と、 を包含する、
データ処理方法。
(72)第 1の化学物質群と第 2の化学物質群との間の相互作用パターンを統計モデ ルとして定義するデータ処理方法であって、
第 1の化学物質と第 2の化学物質のペアが、第 1の化学物質の第 1の特徴量と第 2の 化学物質の第 2の特徴量とを連結したベクトルとして表現され、
(I)該第 1の化学物質は化合物であり、該第 2の化学物質は、核酸またはタンパク質 あるいはそれらの複合体であり、
該第 1の特徴量は、該第 1の化学物質の 1種類以上の化学物質情報からなるベタト ルとして表現され、該第 2の特徴量は、該第 2の化学物質群の 1種類以上の生物学 的情報力 なるベクトルとして表現される場合、あるいは
(II)第 1の化学物質群は核酸またはタンパク質あるいはそれらの複合体であり、該第 2の化学物質群は、化合物であり、かつ
該第 1の特徴量は、該第 1の化学物質群の 1種類以上の生物学的情報からなるベタ トルとして表現され、該第 2の特徴量は、該第 2の化学物質の 1種類以上の化学物質 情報力 なるベクトルとして表現される場合において、
第 1の化学物質の第 1の特徴量と第 2の化学物質の第 2の特徴量とを連結したベ外 ルは、多変量解析手法、機械学習法およびそれらの等価方法力 なる群より選択さ れる手法によって特徴空間へと写像変換される
データ処理方法。
(73)項目 72に記載のデータ処理方法において、第 1の化学物質と第 2の化学物質 との間の相互作用を予測するデータ処理方法であって、
A)所望の相互作用情報を有する第 1の化学物質群と第 2の化学物質群のペアにつ いて、項目 72に記載のデータ処理方法によって、第 1の化学物質の第 1の特徴量と 第 2の化学物質の第 2の特徴量とを連結したべ外ルを、特徴空間へと写像変換する 工程と、
B)予測対象となる第 1の化学物質の第 1の特徴量と予測対象となる第 2の化学物質 の第 2の特徴量とを述結したベクトルを該写像変換することによって特徴空間へとマ ッビングする工程と
C)予測対象となる第 1の化学物質と予測対象となる第 2の化学物質の特徴空間上で の座標位置とによって、予測対象となる第 1の化学物質と第 2ィ匕学物質とが所望の相 互作用する確率をスコアとして算出する工程と、
D)特定のスコア以上を有する第 1の化学物質と第 2の化学物質を出力する工程と、 を包含し、
相互作用情報は、結合の有'無、結合活性、薬理活性力 なる群より選択される少な くとも 1種類の情報により定義される、データ処理方法。
(74) 項目 72に記載のデータ処理方法にお 、て、所望の特徴量を有する化学物 質またはライブラリーを生産するデータ処理方法であって、
A)所望の相互作用情報を有する第 1の化学物質群と第 2の化学物質群のペアにつ いて、項目 72に記載のデータ処理方法によって、第 1の化学物質の第 1の特徴量と 第 2の化学物質の第 2の特徴量とを連結したべ外ルを、特徴空間へと写像変換する 工程と、
B)第 1の化学物質群の第 1の特徴量と第 2の化学物質群の第 2の特徴量とを連結し たベクトルを該写像変換することによって特徴空間へとマッピングする工程と
C)第 1の化学物質と第 2の化学物質の特徴空間上での座標位置とによって、第 1の 化学物質と第 2化学物質とが所望の相互作用する確率をスコアとして算出する工程と
E)該選択された所望の特徴量を有する第 2の化学物質群の、変換後の第 2空間に おける目的領域を算出する工程と、
F)該目的領域内に存在する第 2の化学物質群と所定のスコア以上を示す変換後の 第 1空間の標的領域を算出する工程と、
G)該標的領域に存在する第 1の化学物質または化学物質群を選択する工程と、 を包含する、
データ処理方法。
(75)項目 69に記載のデータ処理方法を用いて、第 1の化学物質と第 2の化学物質 との間の相互作用を予測するデータ処理装置であって、該データ処理装置は、演算 装置を備え、かつ、以下の工程 A)〜D)、すなわち、
A)相互作用することが既知である第 1の化学物質群と第 2の化学物質群について、 項目 69に記載のデータ処理方法によって、第 1の化学物質群の空間座標を表す第 1空間と第 2の化学物質群の空間座標を表す第 2空間とが写像変換される工程と、
B)相互作用の予測対象となる第 1の化学物質の第 1の特徴量力 なるベクトルを該 写像変換することによって第 1の化学物質を変換後の第 1空間へとマッピングするェ 程と、相互作用の予測対象となる第 2の化学物質の第 2の特徴量力 なるベクトルを 該写像変換することによって第 2の化学物質を変換後の第 2空間へとマッピングする 工程と
C)相互作用の予測対象となる第 1の化学物質の変換後の座標位置と相互作用の予 測対象となる第 2の化学物質の変換後の座標位置とによって、予測対象となる第 1の 化学物質と第 2化学物質とが相互作用する確率をスコアとして算出する工程と
D)特定のスコア以上を有する第 1の化学物質と第 2の化学物質を出力する工程と、 を包含する方法を該演算装置に実行させる、
データ処理装置。
(76) 項目 69に記載のデータ処理方法を用いて、所望の特徴量を有する化学物 質またはライブラリーを生産するデータ処理装置であって、該データ処理装置は、演 算装置を備え、かつ、以下の工程 A)〜D)、すなわち、
A)相互作用することが既知である第 1の化学物質群と第 2の化学物質群について、
項目 69に記載のデータ処理方法によって、第 1の化学物質群の空間座標を表す第 1空間と第 2の化学物質群の空間座標を表す第 2空間とが写像変換される工程と、
B)第 1の化学物質群の第 1の特徴量力 なるベクトルを該写像変換することによって 第 1の化学物質群を変換後の第 1空間へとマッピングする工程と、第 2の化学物質群 の第 2の特徴量力 なるベクトルを該写像変換することによって第 2の化学物質群を 変換後の第 2空間へとマッピングする工程と
C)第 1の化学物質群の変換後の座標位置と第 2の化学物質群の変換後の座標位置 とによって、第 1の化学物質群と第 2ィ匕学物質群とが相互作用する確率をスコアとして 算出する工程と、
D)第 2の特徴量において所望の特徴量を選択する工程と、
E)該選択された所望の特徴量を有する第 2の化学物質群の、変換後の第 2空間に おける目的領域を算出する工程と、
F)該目的領域内に存在する第 2の化学物質群と所定のスコア以上を示す変換後の 第 1空間の標的領域を算出する工程と、
G)該標的領域に存在する第 1の化学物質または化学物質群を選択する工程と、 を包含する方法を該演算装置に実行させる、
データ処理装置。
(77)項目 72に記載のデータ処理方法を用いて、第 1の化学物質と第 2の化学物質 との間の相互作用を予測するデータ処理装置であって、該データ処理装置は、演算 装置を備え、かつ、以下の工程 A)〜D)、すなわち、
A)所望の相互作用情報を有する第 1の化学物質群と第 2の化学物質群のペアにつ いて、項目 72に記載のデータ処理方法によって、第 1の化学物質の第 1の特徴量と 第 2の化学物質の第 2の特徴量とを連結したべ外ルを、特徴空間へと写像変換する 工程と、
B)予測対象となる第 1の化学物質の第 1の特徴量と予測対象となる第 2の化学物質 の第 2の特徴量とを連結したベクトルを該写像変換することによって特徴空間へとマ ッビングする工程と
C)予測対象となる第 1の化学物質と予測対象となる第 2の化学物質の特徴空間上で
の座標位置とによって、予測対象となる第 1の化学物質と第 2ィ匕学物質とが所望の相 互作用する確率をスコアとして算出する工程と
D)特定のスコア以上を有する第 1の化学物質と第 2の化学物質を出力する工程と、 を包含する方法を該演算装置に実行させる、データ処理装置であって、
相互作用情報は、結合の有'無、結合活性、薬理活性力 なる群より選択される少な くとも 1種類の情報により定義される、
データ処理装置。
(78) 項目 72に記載のデータ処理方法を用いて、所望の特徴量を有する化学物 質またはライブラリーを生産するデータ処理装置であって、該データ処理装置は、演 算装置を備え、かつ、以下の工程 A)〜G)、すなわち、
A)所望の相互作用情報を有する第 1の化学物質群と第 2の化学物質群のペアにつ いて、項目 72に記載のデータ処理方法によって、第 1の化学物質の第 1の特徴量と 第 2の化学物質の第 2の特徴量とを連結したべ外ルを、特徴空間へと写像変換する 工程と、
B)第 1の化学物質群の第 1の特徴量と第 2の化学物質群の第 2の特徴量とを連結し たベクトルを該写像変換することによって特徴空間へとマッピングする工程と
C)第 1の化学物質と第 2の化学物質の特徴空間上での座標位置とによって、第 1の 化学物質と第 2化学物質とが所望の相互作用する確率をスコアとして算出する工程と
D)第 2の特徴量において所望の特徴量を選択する工程と、
E)該選択された所望の特徴量を有する第 2の化学物質群の、変換後の第 2空間に おける目的領域を算出する工程と、
F)該目的領域内に存在する第 2の化学物質群と所定のスコア以上を示す変換後の 第 1空間の標的領域を算出する工程と、
G)該標的領域に存在する第 1の化学物質または化学物質群を選択する工程と、 を包含する、方法を該演算装置に実行させる、
データ処理装置。
(79)項目 69に記載のデータ処理方法を用いて、第 1の化学物質と第 2の化学物質
との間の相互作用を予測するデータ処理プログラムであって、工程 A)〜D)、すなわ ち、
A)相互作用することが既知である第 1の化学物質群と第 2の化学物質群について、 項目 69に記載のデータ処理方法によって、第 1の化学物質群の空間座標を表す第 1空間と第 2の化学物質群の空間座標を表す第 2空間とが写像変換される工程と、
B)相互作用の予測対象となる第 1の化学物質の第 1の特徴量力 なるベクトルを該 写像変換することによって第 1の化学物質を変換後の第 1空聞へとマッピングするェ 程と、相互作用の予測対象となる第 2の化学物質の第 2の特徴量力 なるベクトルを 該写像変換することによって第 2の化学物質を変換後の第 2空間へとマッピングする 工程と
C)相互作用の予測対象となる第 1の化学物質の変換後の座標位置と相互作用の予 測対象となる第 2の化学物質の変換後の座標位置とによって、予測対象となる第 1の 化学物質と第 2化学物質とが相互作用する確率をスコアとして算出する工程と
D)特定のスコア以上を有する第 1の化学物質と第 2の化学物質を出力する工程と、 を包含する方法を計算機に実行させるための
データ処理プログラム。
(80) 項目 69に記載のデータ処理方法を用いて、所望の特徴量を有する化学物 質またはライブラリーを生産するデータ処理プログラムであって、以下の A)〜G)、す なわち、
A)相互作用することが既知である第 1の化学物質群と第 2の化学物質群について、 項目 69に記載のデータ処理方法によって、第 1の化学物質群の空間座標を表す第 1空間と第 2の化学物質群の空間座標を表す第 2空間とが写像変換される工程と、
B)第 1の化学物質群の第 1の特徴量力 なるベクトルを該写像変換することによって 第 1の化学物質群を変換後の第 1空間へとマッピングする工程と、第 2の化学物質群 の第 2の特徴量力 なるベクトルを該写像変換することによって第 2の化学物質群を 変換後の第 2空間へとマッピングする工程と
C)第 1の化学物質群の変換後の座標位置と第 2の化学物質群の変換後の座標位置 とによって、第 1の化学物質群と第 2ィ匕学物質群とが相互作用する確率をスコアとして
算出する工程と、
D)第 2の特徴量において所望の特徴量を選択する工程と、
E)該選択された所望の特徴量を有する第 2の化学物質群の、変換後の第 2空間に おける目的領域を算出する工程と、
F)該目的領域内に存在する第 2の化学物質群と所定のスコア以上を示す変換後の 第 1空間の標的領域を算出する工程と、
G)該標的領域に存在する第 1の化学物質または化学物質群を選択する工程と、 を包含する方法を計算機に実行させるための
データ処理プログラム。
(81)項目 72に記載のデータ処理方法を用いて、第 1の化学物質と第 2の化学物質 との間の相互作用を予測するデータ処理プログラムであって、以下の工程 A)〜D)、 すなわち、
A)所望の相互作用情報を有する第 1の化学物質群と第 2の化学物質群のペアにつ いて、項目 72に記載のデータ処理方法によって、第 1の化学物質の第 1の特徴量と 第 2の化学物質の第 2の特徴量とを連結したべ外ルを、特徴空間へと写像変換する 工程と、
B)予測対象となる第 1の化学物質の第 1の特徴量と予測対象となる第 2の化学物質 の第 2の特徴量とを連結したベクトルを該写像変換することによって特徴空間へとマ ッビングする工程と
C)予測対象となる第 1の化学物質と予測対象となる第 2の化学物質の特徴空間上で の座標位置とによって、予測対象となる第 1の化学物質と第 2ィ匕学物質とが所望の相 互作用する確率をスコアとして算出する工程と
D)特定のスコア以上を有する第 1の化学物質と第 2の化学物質を出力する工程と、 を包含する方法を計算機に実行させるためのデータ処理プログラムであって、 相互作用情報は、結合の有'無、結合活性、薬理活性力 なる群より選択される少な くとも 1種類の情報により定義される、
データ処理プログラム。
(82)項目 72に記載のデータ処理方法を用いて、所望の特徴量を有する化学物質
またはライブラリーを生産するデータ処理プログラムであって、以下の工程 A)〜G)、 すなわち、
A)所望の相互作用情報を有する第 1の化学物質群と第 2の化学物質群のペアにつ いて、項目 72に記載のデータ処理方法によって、第 1の化学物質の第 1の特徴量と 第 2の化学物質の第 2の特徴量とを連結したべ外ルを、特徴空間へと写像変換する 工程と、
B)第 1の化学物質群の第 1の特徴量と第 2の化学物質群の第 2の特徴量とを連結し たベクトルを該写像変換することによって特徴空間へとマッピングする工程と
C)第 1の化学物質と第 2の化学物質の特徴空間上での座標位置とによって、第 1の 化学物質と第 2化学物質とが所望の相互作用する確率をスコアとして算出する工程と
D)第 2の特徴量において所望の特徴量を選択する工程と、
E)該選択された所望の特徴量を有する第 2の化学物質群の、変換後の第 2空間に おける目的領域を算出する工程と、
F)該目的領域内に存在する第 2の化学物質群と所定のスコア以上を示す変換後の 第 1空間の標的領域を算出する工程と、
G)該標的領城に存在する第 1の化学物質または化学物質群を選択する工程と、 を包含する方法を計算機に実行させるための
データ処理プログラム。
(83)項目 79〜82のいずれか 1項に記載のデータ処理プログラムを格納したコンビ ユータ読み取り可能な記録媒体。
(84)項目 79〜82のいずれか 1項に記載のデータ処理プログラムを備え、該データ 処理プログラムによって予測、或いは生産された、或いは項目 75〜78のいずれ力 1 項に記載のデータ処理装置によって予測、或いは生産された化学物質および化学 物質群を化学合成する、化学合成装置。
(85)項目 79〜82のいずれか 1項に記載のデータ処理プログラムを備え、該データ 処理プログラムによって予測された、第 1空間の化学物質群をィ匕学合成した後、該第 1空間の化学物質の前記第 2の特徴量を測定して、実際に所望の活性を有する化学
物質を選択する手段を備える、スクリーニング装置。
(86)項目 79〜82に記載のデータ処理プログラム、または項目 83に記載のコンビュ ータ読み取り可能な記録媒体、および項目 16または 17に記載の装置を使用すること により実行された方法によって生産されたィ匕学物質。
発明の効果
[0031] 遺伝子の配列情報などゲノム情報と化合物の化学特性などのケミカル情報の両情 報を用いて、化合物 タンパク質相互作用予測する計算手法を開発することができ た。この手法では、従来型の化合物の化学特性情報のみを用いた予測とは異なり、 遺伝子の配列情報をも加えることによって予測の精度向上をは力ることに成功した。
[0032] 従って、この計算手法は具体的に次の 2つに適用できる。
1)化合物ライブラリーの生物活性に基づく合理的設計が実現できる。
2)従来法よりも性能の良いリードィ匕合物探索ができる。
[0033] 以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該 分野における周知慣用技術力もその実施形態などを適宜実施することができ、本発 明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
[0034] 従って、本発明のこれらおよび他の利点は、必要に応じて添付の図面等を参照し て、以下の詳細な説明を読みかつ理解すれば、当業者には明白になることが理解さ れる。
図面の簡単な説明
[0035] [図 1]図 1は、本発明の概念図である。化合物のライブラリー設計やリード探索におけ る従来法は、図 1上段のように化合物のケミカル情報のみを用いて行っていた。(ケモ インフォマテイクス)。本発明の手法はこのケミカル情報のみの従来手法に、図 1下段 のバイオインフォマティクス技術を融合させ、ゲノム情報を考慮に入れたィ匕合物ライブ ラリー設計やリード探索と 、う新し 、手法を開発した。
[図 2]図 2は、本発明の別の概念図である。上段のケミカル空間上の丸印はそれぞれ 異なる化合物を表しており、特性の似ている化合物は相対的に近い位置関係になる ように配置されて 、るとするとこれら化合物の位置力 構成される座標空間をケミカル 空間という。同様に、遺伝子 (タンパク質)についても類似関係を相対的な位置関係と
して表現したものがバイオ空間である(下段、四角印が遺伝子またはタンパク質)。さ らに個々の化合物とタンパク質の結合をリンク(図 1、中央矢印)することによって、こ れらケミカル空間とバイオ空間を融合したモデルを作ることができる。
[図 3]図 3は、本発明の別の概念図である。上段のケミカル空間上の丸印はそれぞれ 異なる化合物を表しており、特性の似ている化合物は相対的に近い位置関係になる ように配置されて 、るとするとこれら化合物の位置力 構成される座標空間をケミカル 空間という。同様に、遺伝子 (タンパク質)についても類似関係を相対的な位置関係と して表現したものがバイオ空間である(下段、四角印が遺伝子またはタンパク質)。さ らに個々の化合物とタンパク質の結合をリンク(図 1、中央矢印)することによって、こ れらケミカル空間とバイオ空間を融合したモデルを作ることができる。
[図 4]図 4は、本発明の別の概念図である。図に示すように、広大なケミカル空間のう ち、黄色のバイオ空間に対応するエリア(biologically relevant chemical space)内 の化合物が、バイオ空間を形成するタンパク群と相互作用する可能性が高いと考え られるため、生物活性を有する化合物ライブラリーの設計が可能となる。
[図 5]図 5は、最も重要である「ケミカル空間とバイオ空間を融合したモデル」の構築方 法について、本手法の特徴を示す。従来法 (上段)は、ケミカル情報のみを用い、化 合物の化学特性ができる限り多様になるように、ケミカル空間座標を定義していた。こ こで大きな問題点は、化合物の多様性と生物活性との直接の因果関係は無いという ことである。そこで、本手法は、ケミカル情報とタンパク配列情報の両情報を用いて、 ケミカル空間とタンパク空間の両空間の相関が高くなるように互いの空間座標を定義 することにした。これはバイオ空間との関連を考慮して、ケミカル空間座標を定義する 方が、生物活性にとって都合の良い空間座標を構築できると考えられる力もである。
[図 6]図 6は、従来法 (PCA)と本手法 (CCA)の性能評価をするために、それぞれで 構築した「ケミカル空間とバイオ空間の融合モデル」を用いて上述のインシリコスクリ 一ユング (In silico screening)を行った結果を示す。図は、予測性能を評価する 有名な方法の一つである ROC曲線である。このグラフは曲線が上に位置すれば位 置するほど、予測性能が良いことを表すものであり、本手法の曲線が従来法の曲線よ り上に位置することから、本手法の方が実際に予測性能が高いことがわかる。
[図 7A]図 7Aは、モデルの予測性能比較を目的とする ROC曲線を示す。
[図 7B]図 7Bは、 |8 2ARリガンド予測結果の検証の結果を示す。予測スコア上位 50 位 (Top 50) (B— 1)と下位 50 (Bottom 50) (B— 2)の化合物に対する調査 ·実 験結果を示す。それぞれ、左側が、文献調査および実験検証で判明した化合物の 内訳であり、右側が、 [12¾—シァノピンドロールに対する結合阻害曲線、縦軸が阻 害された割合、横軸が各化合物の濃度を示す。
[図 7C]図 7Cは、新規モデルおよび従来法による β 2ARリガンド予測結果の比較を 示す。各点が化合物であり、縦軸は新規モデル、横軸は従来の手法による相互作用 予測スコアを示して 、る。文献調査および実験検証の結果を以下の色分けにて表示 した。
[図 8]本発明の概念図である。本手法が従来法よりインシリコスクリーニング (In silic o screening)予測の性能が良いことから、本手法を用いて、実際に化合物ライブラ リーの構築 (標的遺伝子の予測)を行った。予測は、米国 NCBl/PubChemデータ ベース内の化合物 6, 391, 005件を用いて、それらの化合物が標的とし得るタンパ ク候補を予測し、化合物ライブラリーを構築した。
[図 9]図 9は、 PubChem化合物の生物活性予測の結果である。各列は化合物と標的 タンパクの結合可能性の信頼性を表すスコアごとに分かれて 、る。すなわちスコアが 高ければ高いほど、その化合物の生物活性の信頼性は高いと考えられる。また、各 行の項目は標的タンパクの機能 (遺伝子オントロジー (gene ontology)に基づく)ご との分類を表している。図 9中の数値は、該当する部分に対応する (予測された)ィ匕 合物の数である。例えば、 receptor activityに関するタンパクを標的とし、スコア値 27の信頼性を示すィ匕合物は、 198個予測されたことになる。
[図 10]図 10は、図 9と同様に、 PubChemィ匕合物の生物活性予測の結果であるが、 標的タンパクの機能分類を異なる基準で行ったものである。図 10の見方は図 9と同 様である。
圆 11]本発明における計算フロー(実施例としては、 CCAを適用した)を示す。
圆 12]本発明における計算フロー(実施例としては、 SVMを適用した)を示す。
[図 13]図 13は、本発明の概念図である。
発明を実施するための最良の形態
[0036] 以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及 しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形 の冠詞または形容詞 (例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及し ない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書に おいて使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で 用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細 書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の 当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細 書 (定義を含めて)が優先する。
[0037] (定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
[0038] 本明細書において「ィ匕学物質」とは、物質という一般用語の中で,とくに化学的な立 場で物質を取り扱う場合の用語であり、任意の一定の分子構造をもつ物質をいう。
[0039] 本明細書において「空間座標」とは、対象物の空間内の位置を特定するための指 標である。
[0040] 本明細書において「空間」とは、「スペース」と交換可能に使用され、集合の別名で あり、なんらかの位相や幾何学的構造を想定するものをいう。空間は、例えば、配列 情報、二次構造、三次構造、四次構造、立体構造情報、発現情報、パスウェイ情報、 機能情報および生物活性情報力 なる群より選択される少なくとも 1種類の情報によ り定義され得る。空間としては、例えば、化合物記述子や化学特性などのケミカル情 報で定義されるケミカルスペースや発現情報、パスウェイ情報、機能情報、および生 物活性などのバイオ情報で定義できるバイオロジカルスペース(Current Opinion in Chemical Biology 2005, 9 : 296— 303)を例示することができる。
[0041] 本明細書において「特性」とは、ある化学物質が有する、特別の性質をいい、特性と しては、例えば、物理的特性 (例えば、融点、沸点、比重など)、化学的特性 (反応性 、酸性、アルカリ性、など)、生物学的活性 (酵素活性、レセプターとの結合能、サイト 力イン能、細胞との相互作用力など)を挙げることができるがそれらに限定されない。
[0042] 本明細書において「単純な関連が見られない」とは、第一特性と第二特性を直感的 な相関が見られないことをいう。「単純な関連が見られない」とは、既知の相関がみら れない。その具体例としては、例えば、第一特性を示すベクトルを a, bとし、第二特性 を示すベタ卜ノレを X, yとしたとさ、 aと x、 aと y、 bと x、 bと yのペアにはネ目関力 ^無!ヽカ 線 形結合ベクトル m * a+n* bと M * x+N *y(m, n, M, Nは 0で無い係数)との間 に相関が見られるなどの、単純な相関は無いが、適当な変換をカ卩えた F (a, b,…;)と F' (X, y, · ··)の間に相関が見られる場合があることなどである。
[0043] 本明細書において「生体物質」とは、生物に関連する任意の物質を言う。生体物質 もまた、化学物質の一種として捕らえることができる。本明細書において「生体」とは、 生物学的な有機体をいい、動物、植物、菌類、ウィルスなどを含むがそれらに限定さ れない。従って、本明細書では生体物質は、生体力 抽出される分子を包含するが 、それに限定されず、生体に影響を与え得る分子であれば生体物質の定義に入る。 したがって、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る 低分子 (たとえば、低分子リガンドなど)もまた生体への効果が意図され得る力ぎり、 生体物質の定義に入る。そのような生体物質には、タンパク質、ポリペプチド、オリゴ ペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸 (例えば 、 cDNA、ゲノム DNAのような DNA、 mRNAのような RNAを含む)、ポリサッカライド 、オリゴサッカライド、脂質、低分子 (例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有 機低分子など)、これらの複合分子 (糖脂質、糖タンパク質、リポタンパク質など)など が包含されるがそれらに限定されない。生体物質にはまた、細胞への導入が企図さ れる限り、細胞自体、組織の一部も包含され得る。通常、生体物質は、核酸、タンパ ク質、脂質、糖、プロテオリピッド、リポプロテイン、糖タンパク質およびプロテオグリカ ンなどであり得る。好ましくは、生体物質は、核酸 (DNAまたは RNA)またはタンパク 質を含む。別の好ましい実施形態では、生体物質は、核酸 (例えば、ゲノム DNAま たは cDNA、あるいは PCRなどによって合成された DNA)である。他の好ましい実施 形態では、生体物質はタンパク質であり得る。好ましくは、そのような生体物質は、ホ ルモンまたはサイト力インであり得る。本明細書において使用される「サイト力イン」は 、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、細胞から産生さ
れ同じまたは異なる細胞に作用する生理活性物質をいう。サイト力インは、一般にタ ンパク質またはポリペプチドであり、免疫応答の制禦作用、内分泌系の調節、神経系 の調節、抗腫瘍作用、抗ウィルス作用、細胞増殖の調節作用、細胞分化の調節作用 などを有する。本明細書では、サイト力インはタンパク質形態または核酸形態あるい は他の形態であり得る力 実際に作用する時点においては、サイト力インは通常はタ ンパク質形態を意味する。本明細書において用いられる「増殖因子」とは、細胞の増 殖を促進または制御する物質をいう。増殖因子は、成長因子または発育因子ともい われる。増殖因子は、細胞培養または組織培養において、培地に添加されて血清高 分子物質の作用を代替し得る。多くの増殖因子は、細胞の増殖以外に、分化状態の 制御因子としても機能することが判明している。サイト力インには、代表的には、インタ 一ロイキン類、ケモカイン類、コロニー刺激因子のような造血因子、腫瘍壊死因子、ィ ンターフェロン類が含まれる。増殖因子としては、代表的には、血小板由来増殖因子 (PDGF)、上皮増殖因子 (EGF)、線維芽細胞増殖因子 (FGF)、肝実質細胞増殖 因子 (HGF)、血管内皮増殖因子 (VEGF)のような増殖活性を有するものが挙げら れる。
[0044] 本明細書において「レセプター」とは、細胞上または核内などに存在し、外界からの 因子または細胞内の因子に対する結合能を有し、その結合によりシグナルが伝達さ れる分子をいう。レセプターは通常タンパク質の形態をとる。レセプターの結合パート ナ一は、通常リガンドという。
[0045] 本明細書において「ァゴ二スト」とは、ある生体作用物質 (リガンド)のレセプターに 結合し、その物質のもつ作用と同じ (あるいは類似の)作用を現わすは因子をいう。
[0046] 本明細書において「アンタゴニスト」とは、ある生体作用物質(リガンド)のレセプター への結合に拮抗的に働き、それ自身はそのレセプターを介した生理作用を現わさな い因子をいう。拮抗薬、遮断剤 (ブロッカー)、阻害剤 (インヒビター)などもこのアンタ ゴニストに包含される。
[0047] 本明細書にお!、て「化合物」とは、化学変化によって 2種またはそれ以上の元素の 単体に分けることができる純粋物質を 、う。 2種以上の元素の原子の化学結合によつ て生じた
純粋物質といってもよい。通常、各元素の組成比は一般に定比例の法則に従って一 定である力 不定比化合物のように組成比がある範囲で連続的に変化しても安定な 結晶をつくるものもまた、本明細書において化合物の範疇に入れる。本明細書にお いて「ィ匕合物種」とは、ある化合物の集合において、特定の目的とする活性を有する など、所望の性質を有する 1種の化合物についていう。例えば、ある生体物質の活性 を調節する化合物の集合にぉ 、て、ある生体物質の活性を調節する化合物が特定 される場合、そのような単一の化合物は、化合物種と称され得る。本明細書では、単 に化合物とも称される。
[0048] 本明細書において「単純な関連が見られない」とは、第一特性と第二特性を直感的 な相関が見られないことをいう。単純な関連が見られないとは、例えば、既知の相関 がみられないことによって判定することができ、その具体例としては、例えば、第一特 性を示すベクトルを a, bとし、第二特性を示すベクトルを X, yとしたとき、 aと x、 aと y、 b と x、 bと yのペアには相関が無いが、線形結合ベクトル m * a + n * bと M * x + N *y (m, n, M, Nは 0で無い係数)との間に相関が見られるなどの、単純な相関は無い 力 適当な変換を加えた F (a, b,…;)と F' (x, y, · ··)の間に相関が見られる場合があ ることなどである。例えば、分子量と、融点または沸点とは、ある程度関連があることか ら、単純な関連が見られない、とはいわない。
[0049] 本明細書において「相関が最大になるように」「座標を変換」するとは、ある空間に おける各要素と、別の空間における各要素との関係が、全体としてみたときに、最大 限に相関している状態を言う。このような定義は、種々の計算手法によって達成する ことができる。
[0050] 本明細書において「相関」とは、数理統計学や生物統計学において,一般に二つ またはそれ以上の変量のぁ 、だの関連性を 、 、、 2つの確率変数の間の直線的な共 変関係をいう
。数量分類学において,対象とする二つの操作的分類単位 (OTU)間の類似係数( 類似の程度)によって表現することができる。従って、相関分析とは、対のデータに基 づいて相関の有無を検証し,あるいは相関の大きさを推定したりする統計方法のこと である。とくに一方が増すと他方も増す場合に正の相関が,この逆の場合に負の相
関があるという。データを 2次元平面にプロットしたものを散布図という。
[0051] 本明細書において相関係数とは、 2つの確率変数 X, Yの間の関連を示す,一次 変換で不変な量を 、う。 Xと Yの共分散を Xおよび Yのおのおのの分散の積の平方根 で割った値である。
[0052] 本明細書において相関関数とは、空間の相関関数と時間の相関関数がある。 2点 の物理量 A (r)と A (r ' )の積の平均値 A (r) A (r' )を空間の相関関数と!/、う。これが 2 点間の距離に対して指数関数的に変化するとき、これを
[0054] とおいて,相関距離 ξが定義される。時間の相関関数に対しても同様に相関時間 τ が定義される。 ξやては臨界点で発散する。
[0055] 本明細書において「相関距離」とは、空間の各点に存在する確率変数 A (r)の相関 関数く A (r) A (r' )〉が 2点間距離 r= | r-r' |の増大とともに絶対値として減少して いく場合,その減衰の目安となる距離をいう。相関関数力 xp (— r/ ξ )の形である 場合, ξが相関距離である。減衰が指数関数的でない場合に一義的に定義すること はできないが,多くの場合,適当な長さの尺度として定まる。
[0056] ある実施形態では、本明細書において相関を最大にする方法としては、例えば、正 準相関分析 (CCA)、カーネル正準相関分析(kernel CCA)、サポートベクターマ シン (SVM)法、多変量解析手法、機械学習法または等価方法によって達成するこ とがでさる。
[0057] 本明細書にぉ 、て「ケミカル情報」または「化学物質情報」とは、化学物質の化合物 としての情報をいう。より詳細に定義すると、化学構造自体や化学構造から計算処理 によって算出された各種記述子(文献 Handbook of Chemoinformatics: Fro m Data to Knowledge Lrasteiger, Johann (EDT) / Publisher: Jonn Wile y Published 2003/10)、化学構造や記述子より計算推定される化学特性、さら には化合物を計測して得られる化学特性が含まれる。通常、各々の情報は数値また は数値列(ベクトル)として表現される。各々の化合物は、適宜選択した各種ケミカル
情報の数値列を連結した数値列(ベクトル)として表現される。
[0058] 通常、ケミカル情報は、化合物記述子によって定義される。このような記述子として は、例えば、一次元記述子、二次元記述子および三次元記述子からなる群より選択 されるものを挙げることができる。本明細書において「記述子」とは、ディスクリプタとも いい、ある情報を記述するための方法およびそれにより表された表現物をいう。記述 子は、電波、磁波、音、光、色、画像、数字、文字などならびにそれらの組み合わせ によって表現することができる。分子構造を特徴づける記述子群の特定は、数多くの 化合物を解析するプロセスでは重要な工程である。数多くの記述子が提案されて ヽ る力 分子構造へのアプローチに応じて、これらを分類することができる(M. Hassan et al. , Molecular Diversity, 1996, 2, 64 ; M. J. McGregor
et al. , J. Chem. Inf. Comput. Sci. , 1999, 39, 569 ;R. D. Brown, Pers pectives in Drug Discovery and Design, 1997, 7/8, 31参照。以上は先 に本明細書に参考文献として援用する。 R. D. Brown et al. , J. Chem. Inf. C omput. Sci. 1996, 36, 572 ;R. D. Brown et al. , J. Chem. Inf. Comput. Sci. 1996, 37, 1 ; D. E. Patterson et al. , J. Med. Chem. 1996, 39, 304 9 ; S . K. Kearsley et al. , J. Chem. Inf. Comput. Sci. 1996, 36, 118参照 。以上を本明細書に参考文献として援用する)。 1次元(1D)特性は、分子量や clog P等の全体的な分子特性をあらわす。 2次元特性 (2D)には、分子の機能性や結合 性が含まれる。 2D記述子の実例としては、 MDLサブストラクチャーキー(MDL Inf ormation Systemslnc. , 14600 Catalina St. , San Leandro, CA 9457 7) (M. J. McGregor et al. , J. Chem. Inf. Comput. Sci. , 1997, 37, 443 参照。これを本明細書に参考文献として援用する)や MSI50記述子 (Molecular S imulations Inc. , 9685 Scranton Road, San Diego, CA 92121— 3752 )が挙げられる。例えば、薬剤化合物に対する要件を特定する際に有用な、周知の 5 つの法則 (rule of five)は、 1次元記述子及び 2次元記述子から導かれる(C. A. Lipmski et al. , Advanced Drug Delivery Reviews, 1997, 23, 3参照。 これを本明細書に参考文献として援用する)。
[0059] 3次元記述子(3D)の算出には、適度なエネルギーを有する少なくとも 1つの 3次元
構造体が必要である。更に、複数のコンホメーシヨン(立体配座)からの寄与を考慮に いれて、 3次元記述子を算出してもよい。また、リガンド結合において重要な特徴に 基づいて、あるいは、その他の重要な所望の特徴に応じて、記述子を選択するように してもよい。あるいは、数多くの化合物群の解析に多数の記述子を用いる場合には、 主成分分析 (PCA)や部分最小 2乗法 (PLS)等の統計手法により最少数の重要な 記述子群を求めればよい。
[0060] 本明細書にぉ 、て「バイオ情報」または「生物学的情報」とは、遺伝子やタンパク質 などの生体物質である化学物質の生物学的特性に力かわる情報を 、う。生物学的情 報とは、例えば、配列情報、二次構造、三次構造、四次構造、立体構造情報、発現 情報、パスウェイ情報、機能情報、および生物活性情報などが挙げられる。本発明に おいては、この生物学的情報またはバイオ情報は、計算処理や計測によって数値ィ匕 した数値を各要素として持つ数値列(ベクトル)として表現され得る。
[0061] 本発明の分析では、系またはそれに相互作用する因子に起因する情報を検出する ことができる限り、種々の検出方法および検出手段を用いることができる。そのような 検出方法および検出手段としては、生物または細胞を対象とする場合、例えば、目 視、光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザー光源を用いた読取装置、表面プラズモン共 鳴 (SPR)イメージング、電気信号、化学的または生化学的マーカーのいずれかある いは複数種を用いる方法および手段を挙げることができるがそれらに限定されない。
[0062] 生体物質の特性は、その独自の記述子で生物学的特性を指標に表現することがで きる。従って、本明細書において、ある状態に関する「指標」とは、その状態を表すた めの目印となる関数をいう。本明細書では、例えば、生物または細胞であれば、その 生物または細胞内の種々の物理的指標 (電位、生体内温度、移動速度'距離、局在 化率。扁平率、伸長率、回転速度など)、化学的指標 (ゲノム量、特定の遺伝子の転 写産物 (例えば、 mRNA、翻訳タンパク質、翻訳後修飾されたタンパク質、イオン濃 度、 pHなどの量、代謝産物の量、イオン量など)、生物学的指標 (個体差、進化速度 、薬物応答など)など、あるいはその生物または細胞の環境、例えば、温度、湿度 (例 えば、絶対湿度、相対湿度など)、 pH、塩濃度 (例えば、塩全体の濃度または特定の 塩の濃度)、栄養 (例えば、ビタミン量、脂質量、タンパク質量、炭水化物量、金属ィ
オン濃度など)、金属(例えば、金属全体の量または特定の金属(例えば、重金属、 軽金属など)の濃度など)、ガス (例えば、ガス全体の量または特定のガス (例えば、 酸素、二酸化炭素、水素など)の量)、有機溶媒 (例えば、有機溶媒全体の量または 特定の有機溶媒 (例えば、エタノールなど)、 DMSO、メタノールの量)、圧力(例えば 、局所圧または全体の圧 (気圧、水圧)など、粘性、流速 (例えば、培地中に生物が 存在する場合のその培地の流速、膜流動など)、光度 (ある特定波長の光量など)、 光波長(例えば、可視光のほか紫外線、赤外線なども含み得る)、電磁波、放射線、 重力、張力、音波、対象となる生物とは異なる他の生物 (例えば、寄生虫、病原菌、 細菌、ウィルスなど)、化学薬品 (例えば、医薬品、食品添加物、農薬、肥料、環境ホ ルモンなど)、抗生物質、天然物、精神的ストレス、物理的ストレスなどのような指標に 対する反応性または耐性を、そのような状態に関する「指標」として使用することがで きる。 本明細書において「表示」、「ディスプレイ」および「提示」とは、交換可能に用いられ 、ある信号を感覚器官 (例えば、視覚、聴覚、嗅覚など)によって知覚されるように変 換して表現することをいう。代表的には、視覚的に表示することが挙げられ、ディスプ レイとは、特に限定的な意味で用いる場合、視覚的に信号を表示する手段をさす。 従って、「表示」、「ディスプレイ」および「提示」とは、本発明の方法に従って得られた ディスクリプタまたはそれに由来する情報を直接または間接的にあるいは情報処理を した形態で具現ィ匕することをいう。そのような表示の形態としては、グラフ、写真、表、 アニメーションなど種々の方法があり、限定されない。そのような技術としては、例え ば、 METHODS IN CELL BIOLOGY, VOL. 56, ed. 1998, pp : 185— 215、 A High― Resolusion Multimode Digital Microscope System (¾lu der & Wolf、 Salmon)において、顕微鏡を自動化し、カメラを制御するためのァ プリケーシヨンソフトウェアとともに、自動光学顕微鏡の顕微鏡、カメラ、 Z軸フォーカス 装置を含む、ハードウェアシステムの設計について議論されており、本発明において 利用することができる。カメラ〖こよるイメージ取得は、 Inoue and Spring, Video Miroscopy, 2d. Edition, 1997【こ詳糸田【こ記載されており、本明糸田書【こお!ヽて参考
文献として援用される。
[0064] 本明細書において用いられる数理処理は、例えば、生命システム解析のための数 学、コロナ社、清水和幸(1999)などにおいて記載される周知技術を適用することが できる。
[0065] 本明細書においてタンパク質の「立体構造 (コンピュータ)モデル」とは、コンビユー タを用いて表現された、ある化合物の立体構造のモデルをいう。そのようなモデルは 、当該分野において公知のコンピュータプログラムを用いて表示することができ、その ようなプログラムとしては、例えば、 CCP4でサポートされるプログラム、 DENZO (HK L2000)、 MolScript (Avatar Software AB)、 Raster3D、 PyMOL (DeLano
Scientific)、 TURBO - FRODO(AFMB - CNRS)、 0 (A. Jonesゝ Uppsala Universi
tet、 Sweden)、 ImageMagic (John Chrysty)、 RasMol (University of Mass achusetts, Amherst MA USA)などがあるがそれらに限定されない。そのような プログラムは、原子座標のデータを用いてモデルを生成することができる。
[0066] 本明細書にぉ 、て「フアルマコフォア」または「ファーマコフォア」とは、原子と官能基 との組み合わせ(およびそれらの三次元的な位置)を 、 、、これを用いることによって 薬物が特定の方式で標的タンパク質と相互作用できるようにし、その薬理学的活性を 示す。薬物分子の立体 (物理的)および電場によって形成される三次元の「機能的形 態」であり、これにより分子の薬理学的活性が生じる。医薬のリードィ匕合物、および特 定の標的に対するリード化合物の測定可能な活性を研究する様々なアプローチ法が 開発され、一連の構造活性の関係からフアルマコフォアが設計され得る。
[0067] フアルマコフォア(薬の担体)のスクリーニングは、コンピュータ支援薬剤デザインに おいて、ルーチンとして行われている手法である(P. W. Sprague et al. , Persp ectives in Drug Discovery and Design, ESCOM Science Publishers
B. V. , K. Muller, ed. 1995, 3, 1 ; D. Barnum et al. , J. Chem. Inf. Co mput. Sci. , 1996, 36, 563 ; J. Greene et al. , J. Chem. Inf. Comput. S ci. , 1994, 34, 1297参照。以上を本明細書に参考文献として援用する)。フアル マコフォアのスクリーニングは、ハイスループット.スクリーニングとコンビナトリアルケミ
ストリとにより与えられる数多くの化合物の解析に有効であると考えられる。フアルマコ フォアの概念は、水素結合やイオン化,疎水性結合等の分子認識で観察される相互 作用に基づく。フアルマコフォアは、リガンド群と 1つの生物学的標的との間の共通相 互作用を表わす特異的なコンホメーシヨン (例えば、三角形)における官能基群の種 類 (例えば、芳香族中心、マイナス電荷中心、水素結合供与体等)として定義される
。この定義において、フアルマコフォアは、立体的な記述子(3D記述子)である。
[0068] フアルマコフォアのスクリーニングを実行する市販のソフトウェアシステムとしては、 例えば、 Catalyst (Molecular Simulations Inc.製 9685Scranton Road, Sa n Diego, CA 92121 - 3752) (P. W. Sprague et al. , Perspectives inDr ug Discovery and Design, ESCOM Science Publishers B. V. , K. Mu Her, ed. 1995, 3, 1 ;D. Barnum et al. , J. Chem. Inf. Comput. Sci. , 199 6, 36, 563 J. Greene etal. , J. Chem. Inf. Comput. Sci. , 1994, 34, 129
7参照)やじ116111— のじ1161110^^:56モジュール(じ116111 &10651311 Ltd.製、 Ro undway House, Cromwell Park, C nipping Norton, Oxfordshire, OX75 SSR, U. K. ) (S. D. Pickett et al. , J. Chem. Inf. Comput. Sci. , 1996, 36, 1214参照。これを本明細書に参考文献として援用する)が挙げられる。ただし、 残念ながら、これらのソフトウェアシステムの利用にあたっては、製造者が所有する閉 鎖的なデータベースシステムへの化合物の登録が義務づけられている。
[0069] フアルマコフォア ·フィンガープリントは、種々の距離範囲を有する様々な種類のフ アルマコフォアによりフアルマコフォアの基本セットを構成する上述のアプローチを拡 張したものである。フアルマコフォアの基本セットをィ匕合物群に適用して、リガンドーレ セプタ結合にぉ 、て重要な特徴を示す記述子であるファーマ コフォア ·フィンガー プリントを生成する。フアルマコフォア ·フィンガープリントに関しては A. C. Good et al. , J. Comput. Aided Mo. Des. , 1995, 9, 373 J. S. Mason et al. , P erspective in Drug Discovery and Design, 1997, Ί / 8/, 85 ; S. D. Pi ckett et al. , J. Chem. Inf. Comput. Sci. , 1998, 38, 144 ; S. D. Pickett etal. , J. Chem. Inf. Comput. Sci. , 1996, 36, 1214 ;C. M. Murray et al. , J. Chem. Inf. Comput. Sci. , 1999, 39, 46 ;J. S. Mason et al. , J. M
ed. Chem. , 1999, 39, 46 ; S. D. Pickett etal. , J. Chem. Inf. Comput. Sc i. , 1998, 38, 144 ;R. Nilakantan et al. , J. Chem. Inf. Comput. Sci. , 1 993, 33, 79 に詳述されている。また、構造活性相関への適用に関しては、 X. Ch en et al. , J. Chem. Inf. Comput. Sci. , 1998, 38, 1054に報告されている。 以上の各々を本明細書に参考文献として援用する。
[0070] 算出された分子記述子は、いくつかの所望の特徴を有している。記述子は、分子類 似性の定量的な目安を与えるものであることが望ましい。実験的に測定可能な特性 に関連づけることにより、分子記述子の用途が広がる。例えば、 logP (ここで、 logPは 、物質の疎水性や移行性の指標を意味する。)の演算値を可能な限り測定値に近づ けることができる。生物学的標的に対するリガンドの結合は、薬剤デザインにおける 重要な特性である。標的の構造が (例えば、ドッキング演算を用いることで)利用でき る場合には、リガンドの結合を明確に計算することができる。しかし、通常は、リガンド の結合を、独立変数とみなせる、もっと簡単な算出特性力も推定する場合が多い。コ ンホメーシヨンの情報を含む記述子は、生理活性を推測するより優れたツールとなる
[0071] 本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上 に一定の順序に配列して 、る。タンパク質の一次構造を規定する構造遺伝子と 、 ヽ 、その発現を左右する調節遺伝子という。本明細書では、特定の状況において、「遺 伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに Zあるいは 「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」をさすことがある。
[0072] 高分子構造 (例えば、ポリペプチド構造)は種々のレベルの構成に関して記述され 得る。この構成の一般的な議論については、例えば、 Albertsら、 Molecular
Biology of the Cell (第 3版、 1994)、ならびに、 Cantorおよび Schimmel、 Bi ophysical Chemistry Part
I : The Conformation of Biological Macromolecules (1980)を参照。「一 次構造」とは、特定のペプチドのアミノ酸配列をいう。「二次構造」とは、ポリペプチド 内の局所的に配置された三次元構造をいう。これらの構造はドメインとして一般に公 知である。ドメインは、ポリペプチドの緻密単位を形成し、そして代表的には 50〜350
アミノ酸長であるそのポリペプチドの部分である。代表的なドメインは、 j8シート( j8ス トランドなど)および α —へリックスのストレッチ(stretch)のような、部分から作られる 。「三次構造」とは、ポリペプチドモノマーの完全な三次元構造をいう。「四次構造」と は、独立した三次単位の非共有的会合により形成される三次元構造をいう。異方性 に関する用語は、エネルギー分野において知られる用語と同様に使用される。
[0073] タンパク質の結晶構造解析は、当該分野において周知の方法を用いて行うことが できる。そのような方法は、例えば、タンパク質の X線結晶構造解析 (シュプリンガー · フエアラーク東京社)、生命科学のための結晶解析入門(丸善)などに記載されており 、本明細書ではそのような方法を任意に用いることができる。
[0074] 本明細書において、「トポロジー」とは、本明細書中において、タンパク質の二次構 造単位の並びまたは空間配置のことをいう。立体構造について、トポロジーなどの観 点から、タンパク質立体構造の公的データバンクであるプロテインデータバンク(PD B)に登録されて 、る種々のタンパク質 (機能が類似するタンパク質のフラグメントを含 む)の立体構造との比較を行 、得る。
[0075] タンパク質の「立体構造データ」または「原子座標データ」とは、そのタンパク質の三 次元構造に関するデータをいう。タンパク質の立体構造データには、代表的に、原子 座標データ、トポロジー、分子力場定数が挙げられる。原子座標データは、代表的に 、 X線結晶構造解析または NMR構造解析カゝら得られたデータであり、このような原子 座標データは、新規に X線結晶構造解析または NMR構造解析を行って得られ得る 力 または公知のデータベース(例えば、プロテイン ·データ'バンク(PDB) )から入 手し得る。原子座標データはまた、モデリングまたは計算によって作成されたデータ であり得る。
[0076] トポロジーは、巿販もしくはフリーウェアのツールプログラムを用いて算出し得るが、 自作プログラムを用いてもよい。また、市販の分子力場計算プログラム (例えば、 PRE STO、タンパク質工学研究所株式会社、に付属の preparプログラム)に付属の分子 トポロジー計算プログラムを使用し得る。分子力場定数 (または分子カ場ポテンシャ ル)もまた、巿販もしくはフリーウェアのツールプログラムを用いて算出し得る力 自作 データを用いてもよい。また、市販の分子力場計算プログラム(例えば、 AMBER, O
xford Molecular)に付属の分子力場定数データを使用し得る。
[0077] 本明細書にぉ 、て、改変体分子の設計は、変異前のタンパク質またはポリペプチド 分子 (例えば、野生型分子)のアミノ酸配列および立体構造を解析することによって、 各アミノ酸がどのような特性 (例えば、触媒活性、他の分子との相互作用など)を担う かを予測し、所望の特性の改変 (例えば、触媒活性の向上、タンパク質の安定性の 向上など)をもたらすために適切なアミノ酸変異を算出することにより行われる。設計 の方法は、好ましくはコンピューターを用いて行われる。このような設計方法で用いら れるコンピュータープログラムの例としては、本明細書において言及されるように、以 下が挙げられる:構造を解析するプログラムとして、 X線回折データの処理プログラム である DENZO (マックサイエンス);位相を決定するための処理プログラムとして、 P HASES (Univ. of Pennsylvania, PA、 USA);初期位相の改良のためのプログ ラムとして、プログラム DM (CCP4パッケージ、 SERC); 3次元グラフィックスを得るた めのプログラムとしてプログラム O (Uppsala Universitet、 Uppsala,スウェーデン) ;立体構造精密化プログラムとして、 XPLOR(Yale University, CT、 USA);そし て、変異導入モデリングのためのプログラムとして、 Swiss— PDBViewer (前出)。
[0078] コンピュータモデリングを行うためのコンピュータープログラムもまた、フラグメントま たは化学物質を選択するプロセスにおいて使用され得る。このようなプログラムとして は、以下が挙げられる。
[0079] 1. GRID (P. J. Goodford, 「A Computational Procedure for Determini ng Energetically Favoraole Binding Sites on Biologically Important
MacromoleculesJ , J. Med. Chem. , 28, 849— 857頁(1985) )。 GRIDは、 Oxford University, Oxford, UKから入手可能である。
[0080] 2. MCSS (A. Mirankerら, 「Functionality Maps of Binding Sites : A
Multiple Copy Simultaneous Search MethodJ Proteins : Structure, F unction and Genetics, 11, 29— 34頁(1991) )。 MCSSは、 Molecular Sim ulations, San Diego, CAから入手可能である。
[0081] 3. AUTODOCK(D. S. Goodsellら, 「Automated Docking of Substrate s to Proteins by Simulated AnnealingJ , Proteins : Structure, Function
, and Genetics, 8, 195— 202頁(1990) )。 AUTODOCKは、 Scripps Resea rch Institute, La Jolla, CAから入手可能である。
[0082] 4. DOCK (I. D. Kuntzら, 「A Geometric Approach
to Macromolecule― Ligand InteractionsJ , J. Mol. Biol. , 161, 269— 28 8頁(1982) )。 DOCKは、 University of California, San Francisco, CAから 入手可能である。
[0083] 本明細書において「ライブラリー」とは、スクリーニングをするための化合物または生 体物質などの化学物質などの一定の集合をいう。ライブラリ一は、同様の性質を有す る化合物の集合であっても、ランダムな化合物の集合であってもよい。好ましくは、同 様の性質を有すると予測される化合物の集合が使用されるが、それに限定されない
[0084] 本明細書において「相互作用」とは、 2以上の分子が存在する場合、ある分子と別 の分子との間の作用をいう。そのような相互作用としては、水素結合、ファンデルヮー ルスカ、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、受容体リガンド相互作用、静電的 相互作用およびホスト ゲスト相互作用が挙げられるがそれらに限定されない。分子 間の相互作用を定量ィ匕する手法の 1つとしては、分子間相互作用の熱力学的あるい は速度論的な定量評価法が挙げられるが、これらの限定されるものではない。分子 間相互作用の熱力学的あるいは速度論的な定量評価法としては、例えば、熱測定( calorimetory)、表面プラズモン共鳴法、超遠遠心分析法などが挙げられるがこれら に限定されない。分子間相互作用は、複合体を形成した状態と解離した状態の熱力 学量の変化を示す指標により表現可能であり、例えば、結合定数、解離定数、結合 Z解離に伴う標準化学ポテンシャル変化、ェンタルピー変化、イオン結合数変化な どにより表現可能である。
[0085] 本明細書において、「相互作用情報」は、例えば、分子間における結合の有無、結 合活性、薬理活性などにより表現される力 これらに限定されるものではない。 1つの 好ましい実施形態において、「薬理活性」は、一般に、薬物の効力を示す指標であつ て、例えば、生理活性の 50%阻害効果を示す濃度である IC50や生理活性の 50% 亢進効果を示す濃度の EC50として与えられ、また、「結合の有無」および「結合活性
」についても、例えば、解離定数 Kdとして与えられる。
[0086] 本願明細書で使用される場合、「情報 (information)」とは、一定の文脈にお!ヽて 意味を有する、事実やデータ等の集合をいう。
[0087] 本願明細書で使用される場合、「データ」とは、情報の表現であり、解釈、処理など に適するように形式化、符号化されたもの示す一般的用語である。例えば、計算機処 理の入力に用いられる場合においては、数字、英字、記号、アナログ量、意味を与え られる文字またはアナログ量表現などを示す。例えば、タンパク質において、その「立 体構造データ」または「原子座標データ」とは、そのタンパク質の三次元構造に関す るァータをいう。
[0088] 本願明細書で使用される場合、「情報処理 (information processing)」または「 処理 (processing)」とは、情報をより取り扱いやすくするため、一つの形式から他の 形式へ変換または統合することをいう。また、「データ処理」とは、データを一つの形 式力 他の形式へと変換または統合する過程と定義できる。
[0089] 本願明細書で使用される場合、「パターン認識」とは、自然情報処理の 1つであって 、例えば、形態、図形、物体、画像、音声、生理的現象のような単純な数量として与 えられない情報を識別し認定することをいう。このような諸情報を、「パターン情報」ま たは、単に「パターン」という。パターン認識を行う識別器としては、例えば、 SVM (サ ポートベクターマシン)、ベイズ分類、ニューラルネットワークなど、機械学習により大 量のデータ力も識別パラメータを構成する手法を用いることが可能である。本明細書 において、「相互作用パターン」は、上述の識別器により統計モデルとして定義づけ られる情報をいう。
[0090] 本願明細書にぉ 、て「モデル (model)」とは、自然科学における系(例えば、物理 的、生物的な系)を理解するため(つまり、ある解釈を具体的に表現するため)に用い られる、ある特定の条件に従う数学的、物理的な系をいう。特に、統計的な解析の対 象となる場合、そのモデルを「統計モデル」という。本願明細書において使用される場 合、ある現象の「モデル化」とは、データの背後にある現象の解明と予測 '制御、そし て新たな知識発見のために「モデル」を導入することをいう。さらに、「モデル選択」と は、モデル化の過程において、モデルの良し悪しをいずれかの基準に基づいて評価
することをいう。このモデルの選択に用いられる基準としては、例えば、赤池情報量基 準 AIC (Akaike,s Information Criterion)、ベイズ情報量規準 BIC (Bayesian Information Criteriaノ、最 /Jヽ じ述お (Minimum Description Lengthノ、お よび交差検証法 (Cross Validation)などが挙げられる。
本発明における、「写像変換」とは、集合 X (本発明では化学物質の集合)の要素が 任意に与えられたとき、関数 fによって集合 Yの要素がひとつ対応づけられて 、ること を「集合 Xから集合 Yへの写像」と表現し、関数 fによって集合 Xから集合 Yへと移行す ることを「写像変換」という。
また本発明における「マッピング」とは、トレーニングデータを CCAや PCAやカーネル 化などの計算によって写像変換することによって算出される重み係数行列やカーネ ル関数をテストデータにかけることでなされる。
[0091] 本発明で使用するライブラリ一は、例えば、コンビナトリアルケミストリ技術、醱酵方 法、植物および細胞抽出手順などが挙げられるがこれらに限定されない、いずれか の手段により、作製することができる力または入手することができる。コンビナトリアル ライブラリーを作成する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、 E. R. Felder , Chimia 1994, 48, 512— 541 ;Gallopら、 Med. Chem. 1994, 37, 1233 - 1251 ;R. A. Houghten, Trends Genet. 1993, 9, 235- 239 ;Houghten ら、 Nature 1991, 354, 84— 86 ; Lamら、 Nature 1991, 354, 82-84 ;Carel 1ら、 Chem. Biol. 1995, 3, 171— 183 ;Maddenら、 Perspectives in Drug D iscovery and Design2, 269— 282 ; Cwirlaら、 Biochemistry 1990, 87, 63 78— 6382 ; Brennerら、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1992, 89, 5381— 538 3 ;Gordonら、 Med. Chem. 1994, 37, 1385— 1401 ;Leblら、 Biopolymers 1995, 37 177— 198 ;およびそれらで引用された参考文献を参照のこと。これらの 参考文献は、その全体を、本明細書中で参考として援用する。
[0092] コンビナトリアル'ケミストリとハイスループット'スクリーニングの最近の発展に伴い、 数多くの化合物に対する実験的アプローチが可能になった(D. K. Agrafiotis et al. , Molecular Diversity, 1999, 4, 1; U. Eichleret al. , Drugs oftne Fu ture, 1999, 24, 177 ;A. K. Ghose et al. , J. Comb. Chem. , 1, 1999, 55
; E. J. Martin et al. , J. Comb. Chem. , 1999, 1, 32 ;P. R. Menard et al . , J. Chem. Inf. Comput. Sci. , 1998, 38, 1204 ;R. A. Lewis et al. , J. Chem. Inf. Comput. Sci. , 1997, 37, 599 ;M. Hassanet al. , Molecular Diversity, 1996, 2, 64 ;M. J. McGregor et al. , J. Chem. Inf. Comput. S ci. , 1999, 39, 569 ;R. D. Brown, Perspectives in Drug Discovery and Design, 1997, 7/8, 31参照。以上を本明細書に参考文献として援用する)。この ため、数多くの化合物に関する演算特性を解析する技術が、薬剤開発において、ま すます重要になってきている。特定ライブラリー、すなわち、標的ライブラリーの構築 並びにプライマリ 'ライブラリーの構築という 2つの適用例では、数多くの化合物に関 する演算特性の解析により、薬剤設計にとって特に重要な情報を提供することができ る。
[0093] 標的ライブラリーの構築は、本質的には、スキヤフォールド(3次元構造モチーフ)設 計とビルディングブロックの選択に定量的構造活性相関 (QSAR)を利用する計算化 学と分子モデルの技術を発展させたものである。 QSARでは、分子記述子 (ディスク リブタ)を算出し、この分子記述子を用いて、個々の標的に対する生理活性を予想す るモデルを構築する。
[0094] プライマリ 'ライブラリーを利用して、レセプタ (受容体)やリガンド (受容体に結合す るもの)の構造に関する情報を必要とすることなぐ 1つあるいは複数の標的に対する 活性ィ匕合物を生成することが可能である。また、多くの構造的に無関係な多様な標 的に対して、プライマリ 'ライブラリーのスクリーニングを行うことができる。さらに、薬剤 活性分子の重要な活性であるリガンド結合に無関係な特性である、最適の吸収、分 布、代謝、排泄 (ADME)、並びに、毒性プロファイルを有する化合物の生成にブラ ィマリ'ライブラリーを利用することも可能である。
[0095] さらに、構造的に関連のある化合物群に対して活性のある化合物の同定に、中間ラ イブラリーを用いることも可能である。従って、中間ライブラリ一は、標的ライブラリーと プライマリ ·ライブラリーの 2つに特徴的な特性をあわせもつ。
[0096] (本発明の応用)
本発明において、以下に、化合物の空間(すなわち、ケミカル空間)と生体物質の
空間 (すなわち、バイオ空間)をモデルとして説明する。
[0097] 化合物のリード探索やライブラリー設計を計算で行う際の基本的な考え方は、個々 の化合物の相対的な位置関係を示す座標空間が必要である。例えば、図 1〜3のケ ミカル空間上の丸印はそれぞれ異なる化合物を表しており、特性の似ている化合物 は相対的に近い位置関係になるように配置されているとするとこれら化合物の位置か ら構成される座標空間をケミカル空間という。同様に、遺伝子 (タンパク質)について も類似関係を相対的な位置関係として表現したものがバイオ空間である(図 1下段、 四角印が遺伝子またはタンパク質)。さらに個々の化合物とタンパク質の結合をリンク (図 1、中央矢印)することによって、これらケミカル空間とバイオ空間を融合したモデ ノレを作ることができる。
[0098] このケミカル空間とバイオ空間の融合モデルが存在するとき、活性未知の化合物の 標的タンパクを予測する場合を考えると、 1)活性未知の化合物 (星印)の化学構造か らその化合物がケミカル空間座標にマッピングされる。 2)ケミカル空間にマッピングさ れた未知化合物の近隣ィ匕合物からのバイオ空間へのリンク情報をたどること (矢印) により、その未知化合物が関係するバイオ空間のエリア(円内)を指定することができ る。 3)このエリア内のタンパク群力 この活性未知の化合物が相互作用する可能性 のあるタンパク群と推定される(図 2)。
[0099] また、この「ケミカル空間とバイオ空間を融合したモデル」があれば、例えば図の矢 印で示すように、疾患ターゲット遺伝子に作用するリードィ匕合物の予測も可能となる( 図 3)。
[0100] さらに、このケミカル空間とバイオ空間を融合したモデルは化合物ライブラリーの合 理的設計にも適用できる(図 4)。
[0101] 図に示すように、広大なケミカル空間のうち、黄色のバイオ空間に対応するエリア (b iologically relevant chemical space)内の化合物力 バイオ空間を形成するタンパ ク群と相互作用する可能性が高いと考えられるため、生物活性を有する化合物ライブ ラリーの設計が可能となる。
[0102] また、バイオ空間のタンパク群を例えば GPCRファミリーなどに限定してやると Focus ed
libraryの設計が可能となる。
[0103] (空間の定義)
最も重要である「ケミカル空間とバイオ空間を融合したモデル」の構築方法にっ ヽ て、本手法の特徴を示す。図 5を参照しながら、以下の説明を行う。
[0104] 従来法 (上段)は、ケミカル情報のみを用い、化合物の化学特性ができる限り多様 になるように、ケミカル空間座標を定義して 、た。
[0105] ここで大きな問題点は、化合物の多様性と生物活性との直接の因果関係は無いと いうことである。
[0106] そこで、本手法は、ケミカル情報とタンパク配列情報の両情報を用いて、ケミカル空 間とタンパク空間の両空間の相関が高くなるように互いの空間座標を定義することに した。これはバイオ空間との関連を考慮して、ケミカル空間座標を定義する方が、生 物活性にとって都合の良い空間座標を構築できると考えられるからである。
[0107] 従来法 (PCA)と本手法 (CCA)の性能評価をするために、それぞれで構築した「ケ ミカル空間とバイオ空間の融合モデル」を用いて上述のインシリコスクリーニング (In silico screening 行つた。
[0108] 図 6は、予測性能を評価する有名な方法の一つである ROC曲線である。このグラフ は曲線が上に位置すれば位置するほど、予測性能が良いことを表すものであり、本 手法の曲線が従来法の曲線より上に位置することから、本手法の方が実際に予測性 能が高いことがわかる。
[0109] 図 7A〜図 7Cにおいて、化合物 GPCR相互作用予測手法の一実施例を示す。
本発明の SVM法を、 Gタンパク質共役型受容体 (GPCR)と化合物の相互作用予測 に適用して性能評価を行った。 5分割交差検証法(5— fold cross— validation)に より評価した結果、化合物構造に基づく従来の方法では約 82%、相互作用情報に 基づく SVM法では約 91 %の相互作用を正しく予測した。
[0110] さらに、 SVM法を用いてヒト |8 アドレナリン受容体(j8 AR)に結合するリガンドの
2 2
探索を行い、インビトロ (in vitro)実験等で検証を行ったところ、予測されたリガンド の 81% (17Z21)が実際に結合することが確認され、さらに、従来法では見つからな いような新規骨格を持つ 13 ARリガンドの検出に成功した。
[0111] 本研究結果は、ケミカルゲノミタス情報がリガンド予測精度の向上のみならず、新規 骨格を持つリガンドの検出にも有用であることを示している。
[0112] 図 8において示すように、本手法が従来法よりインシリコスクリーニング (In silico screening)予測の性能が良いことから、本手法を用いて、実際に化合物ライブラリー の構築 (標的遺伝子の予測)を行った。
[0113] 予測は、米国 NCBlZPubChemデータベース内の化合物 6, 391, 005件を用い て、それらの化合物が標的とし得るタンパク候補を予測し、化合物ライブラリーを構築 した。ここで、予測の基準座標となる「ケミカル空間とバイオ空間の融合モデル」の作 成には、薬物とその標的タンパク質のデータを蓄積したカナダの DrugBankデータ ベースを用いた。
[0114] 図 9は、 PubChemィ匕合物の生物活性予測の結果である。各列は化合物と標的タ ンパクの結合可能性の信頼性を表すスコアごとに分かれて 、る。すなわちスコアが高 ければ高いほど、その化合物の生物活性の信頼性は高いと考えられる。ここで言うス コアは、第一空間内の任意の化学物質 Aと第二空間内の任意の化学物質 Bの結合 のしやすさ (結合予測の統計的有意性)を示すものと考えられる。例えば、 Aと Bとの 結合スコアは次のように定義できる。第二空間内の全ての化学物質数を N、そのうち 化学物質 Aと結合する個数が Lあつたとする。ここで、 Bに近接する第二空間内の化 学物質 K個を考えた場合、そのうち化学物質 Aと結合する個数が Hであったとする。 その際の化学物質 A力も Bの結合スコアは log (H/K) / (L/N) ) t 、うようなォッズ スコアとして定義できる。また逆に、第一空間内の全ての化学物質数を n、そのうちィ匕 学物質 Bと結合する個数が 1あつたとする。ここで、 Aに近接する第一空間内の化学物 質 k個を考えた場合、そのうち化学物質 Bと結合する個数が hであったとする。その際 の化学物質 Bから Aの結合スコアは log (h/k) / (1/n) ) t 、うようなオッス、スコアとし て定義できる。図 9では化学物質 A力 Bへのスコアと B力 Aへのスコアから、化学 物質 Aと Bの結合可能性の総合スコアを log ( (H/K) / (L/N) ) +log ( (h/k) / ( lZn) ) + 20と定義した。
[0115] また、各行の項目は標的タンパクの機能(遺伝子オントロジー(gene ontology)に 基づく)ごとの分類を表している。表中の数値は、該当する部分に対応する(予測され
た)ィ匕合物の数である。例えば、 receptor activityに関するタンパクを標的とし、ス コア値 27以上の信頼性を示すィ匕合物は、 198個予測されたことになる。
[0116] 図 10では、図 9と同様に、 PubChemィ匕合物の生物活性予測の結果である力 標 的タンパクの機能分類を異なる基準で行ったものである。図 10の見方は図 9と同様 である。
[0117] 以下に本発明を実施するための実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本 発明を実施するための単なる例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形 態に限定されないことが理解されるべきである。
[0118] 1つの局面において、本発明は、第 1の化学物質群の空間座標を表す第 1空間と 第 2の化学物質群の空間座標を表す第 2空間とを定義し、第 1の化学物質群は第 1 の特徴量により特徴付けられ、第 2の化学物質群は第 2の特徴量により特徴付けられ るデータ構造物を提供する。ここで、データ構造物とは、データ要素間の相互関係で 表される、データの有する論理的構造をいう。
[0119] 1つの実施形態において、本発明において使用される第 1の特徴量と第 2の特徴量 とは互いに単純な関連が見られな 、ものであり得る。
[0120] ある具体的な実施形態としては、例えば、第 1の特徴量は、第 1の化学物質の化学 特性であり、前記第 2の特徴量は、第 2の化学物質の生物活性であり得る。生物活性 と化学活性とは、互いに単純な関連が見られな 、特性の組の代表である。
[0121] 別の実施形態では、第 1の化学物質は化合物であり、第 2の化学物質は、生体物 質である。このような場合、第 1の空間は、ケミカル空間と呼ばれ、第 2の空間は、ノ ィ ォ空間と呼ばれ得る。化合物としては、任意の化合物のライブラリーを挙げることがで き、例えば、コンビナトリアルライブラリー、ある企業が有する任意の化合物ライブラリ 一、公的機関が運営するデータベース、コンソーシアムによって運営されている化合 物ライブラリーデータベースなどを挙げることができるがそれらに限定されない。生体 物質としては、例えば、前記生体物質は、核酸、ペプチドまたはポリペプチドまたはタ ンパク質、サッカリドまたはポリサッカリド、脂質、およびそれらの複合体などを挙げる ことができるがそれらに限定されない。
[0122] 本発明の空間座標の作成には、どのような情報を用いてもよい。例えば、生体物質
の空間座標の場合、配列情報、二次構造、三次構造、四次構造、立体構造情報、発 現情報、パスウェイ情報、および機能情報カゝらなる群より選択される少なくとも 1種類 の情報を用いることができる。
[0123] 好ましい実施形態では、第 1空間と第 2空間との相関が最大になるように第 1空間の 座標および第 2空間の座標が定義される。ここで、第 1空間と第 2空間との相関を最 大にするには、以下のように行う。正準相関(CCA)、カーネル正準相関(kernel CC A)ゝ
サポートベクターマシン (SVM)法などの多変量解析や機械学習法または等価方法 により行うことができる。手順は CCAや SVMなどの手順そのものを利用することがで きる。
[0124] ここで、第 1空間と第 2空間の相関付けは、例えば、正準相関分析 (CCA)、カーネ ル正準相関分析(kernel CCA)、サポートベクターマシン(SVM)法、多変量解析 手法、機械学習法または等価方法により行うことができる。
[0125] 正準相関分析 (CCA)とは、 2種類の異質なデータセット (例えば、化合物とタンパ ク質)が与えられたときに、そのデータセット間の相関関係を解析する多変量解析手 法の一種である。 CCAでは、両データセット間の相関を最もよく表すように写像変換 し、それによつて 2つのデータ間の相関を解析するものである。具体的には、以下を
[0126] 正準相関分析の具体的手順は、以下のような物を例示することができる (T. W.
Anderson. An Introduction to Multivariate StatisticalAnaly sis . Wil ey & Sons, 1984. 、 H. Hotelling. Relations between two sets of variates. Biometrika, 28 : 321— 377, 1936. )。
[0127] 行列 X、 Yの行には化学物質のエントリ一力 列には化学物質情報が並ぶ 2種の異 質なデータ (例えばィ匕合物とタンパク質)を行列 X, Y (第一空間が行列 X、第二空間 が行列 Y)と表現したとき、
[0128] [数 111]
X= n x 丁歹 lj Y = n . 亍歹 lj η≥ Ό .a≥Y
f = Xa g=Yb 'f ^ = ^if'8 ^ n-l 第一空間と第二空間の相関を最大にするために、
相関係数
[数 112]
J s
[0130] を最大にする係数ベクトル a,bの組を探し、
ここで
[0131] [数 113]
Cj - Cg = I
[0132] 、の条件付のとき、
[0133] [数 114] rn = afS
[0134] を最大にするとき、
[0135] [数 115]
[0136] を正準相関、
[0137] [数 116]
[0138] を正準変量と呼ぶ。より具体的には、正準相関解析において、 Xと Yの特異値分解を 行い、
[0139] [数 117]
X = UXDXV Y=UYDYV
Uゝ UY=UDV'
U, D, Vを算出し、その U, D, Vを用い、
[0140] [数 118]
A = - n-WxOy"U B = n-WYDY'lV
を求め、
ただし、 A, B,F, Gは、
[0141] [数 119]
= Xat
A-. = [¾ .. ,。J B = -
F = - =
F =XA G = YB であり、ここで、 i=lから順番に相関の高いもの
[0142] [数 120]
[0143] を得ることができる。
[0144] カーネル正準相関分析 (kernel CCA)とは、通常の正準相関分析にカーネル法 を導入した手法であり、線形モデルに基づく正準相関分析に対して、非線形モデル に基づく相関分析がカーネル正準相関分析では可能である。
[0145] 上記正準相関分析で対象にした第一空間の Xと第 2空間の Yをそれぞれヒルベルト 空間に写像した X'と Y'について、正準相関分析を行う方法である(S. Akaho, A kernel method lor canonical correlation
analysis, International Meeting of Phychometric Society (IMPS) , 2001)。
[0146] サポートベクターマシン (SVM)法とは、教師付き識別問題を解くための機械学習 ァノレゴリズムである。(文献 B. E. Boser, I. M. Guyon, and V. N. Vapnik. A t raining algorithm for optimal margin classifiers. In D. Haussler, edit or, 5th Annual ACM Workshop on COLT, pages 144— 152) SVMで は、データを 2種類に分類するために各データ点との距離が最大となる分離平面 (超 平面)を求めるマージン最大化という考え方を用いる特徴を有する。さらに、カーネル 関数を用いてパターンを有限もしくは無限次元の特徴空間へ写像し、特徴空間上で 線形分離を行う方法を取ることによって非線形分離問題にも優れた性能を示すという 特徴も有する。ここで、教師付き分類問題を、タンパク質と化合物の結合予測に適用 すると、タンパク質と化合物が結合すると 、うクラスと結合しな 、と 、うクラスを分類す る識別器を作ることになる。この場合、文献や実験などで得られる既知のタンパク質と 化合物の結合データを教師データと用いることができる。
[0147] 多変量解析手法とは、複数の変数 (項目、属性、次元数)を持つデータ (多変量デ ータ)を利用し、その変数間の相互の関係性をとらえるために使われる統計的手法の 総称。重
回帰分析や判別分析、正準相関分析、主成分 '因子分析、クラスター分析、多次元 尺度法、フェース分析、数量化分析、コンジョイント分析などの手法がある。複雑なデ ータが持つ傾向や特徴を"要約"したり、結果に影響する相関関係を明らかにして" 原因発見"や"推定 ·予測"を行ったり、あるいは因果関係のモデルィ匕などに有効であ る。 CCA、カーネル CCAもまた、この多変量解析に該当する。
[0148] 機械学習法とは、人工知能における研究課題の一つで、人間が自然に行っている 学習能力と同様の機能をコンピュータで実現させるための技術 '手法のことである。あ る程度の数のサンプルデータ集合を対象に解析を行 ヽ、そのデータカゝら有用な規則 、ルール、知識表現、判断基準などを抽出する。
[0149] これらは、以下のように組み合わせることができる。
[0150] 1つの実施形態では、本発明における第 1化学物質の空間座標は、ケミカル情報 によって定義される。ここで、ケミカル情報は、化合物記述子によって定義される。
[0151] 具体的な実施形態では、化合物記述子は、一次元記述子、二次元記述子および
三次元記述子からなる群より選択される。 1つの実施形態では、化合物記述子は、一 次元記述子であり、この一次元記述子は、化学組成を記述することを特徴とする。
[0152] 別の実施形態では、化合物記述子は、二次元記述子であり、この二次元記述子は
、化学トポロジーを記述することを特徴とする。
[0153] 別の実施形態では、化合物記述子は、三次元記述子であり、この三次元記述子は
、三次元形状および官能性からなる群より選択される特徴を記述することを特徴とす る。
[0154] 別の実施形態では、化合物記述子は、フアルマコフォアである。
[0155] 具体的な実施形態では、フアルマコフォアは、少なくとも 3つの空間的に離れたファ ルマコフォア中心を含み、各フアルマコフォア中心は、(i)空間位置と、(ii)ある化学 特性を特定する所定のフアルマコフォア型と、を含み、基本セットのフアルマコフォア 型には、少なくとも、水素結合受容体、水素結合供与体、負電荷中心、正電荷中心、 疎水性中心、芳香族中心、ならびに他のいずれのフアルマコフォアの型にも入らない デフォルトカテゴリが含まれる。
[0156] 1つの実施形態では、空間位置を、隣接するフアルマコフォア中心間の隔絶距離あ るいは隔絶距離範囲として与えることによって、フアルマコフォアをより詳細に記述す ることがでさる。
[0157] (生産方法)
1つの局面では、本発明は、所望の特性を有する化学物質を生産する方法を提供 する。この方法は、 A)第 1の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される 第 1空間に包含される第 1の化学物質群を提供する工程と、 B)第 2の化学物質の空 間座標のデータベースにより定義される第 2空間に包含される第 2の化学物質群を 提供する工程であって、第 1の化学物質は、第 1の特徴量により特徴付けられ、第 2 の化学物質は、第 2の特徴量により特徴付けられる、工程と、 C)第 2の特徴量におい て所望の特性を選択する工程と、 D)該選択された所望の特性を有する第 2の化学 物質の、第 2空間における目的領域を算出する工程と、 E)該目的領域と所定の距離 以下に存在する第 1空間の標的領域を算出する工程と、 F)該第 1空間の標的領域 に存在する化学物質を選択する工程と、を包含する。
[0158] この方法において用いられている「目的領域」とは、スクリーニングの参照側(クエリ 側)の空間においてスクリーニングの目的の空間の領域を指す。
[0159] この方法において用いられている「標的領域」とは、スクリーニングの計算対象側( アウトプット側)の空間において算出されるべき対象の空間の領域を指す。
[0160] ここで、 A)第 1の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 1空間に 包含される第 1の化学物質群を提供する工程では、化学構造自体や化学構造から 計算処理によって算出された各種記述子、化学構造や記述子より計算推定される化 学特性、さらには化合物を計測して得られる化学特性の数値を各要素として持つ数 値列 (ベクトル)として化学物質は表現される。よって、各々の化学物質は第一空間 座標上のベクトルとして位置が特定される。
[0161] B)第 2の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 2空間に包含さ れる第 2の化学物質群を提供する工程では、配列情報、二次構造、三次構造、四次 構造、立体構造情報、発現情報、パスウェイ情報、機能情報、および生物活性情報 などのバイオ情報を計算処理や計測によって数値ィ匕した数値を各要素として持つ数 値列 (ベクトル)として化学物質は表現される。よって、各々の化学物質は第 2空間座 標上のベクトルとして位置が特定される。
[0162] ここで、第 1の化学物質は、第 1の特徴量により特徴付けられ、第 2の化学物質は、 第 2の特徴量により特徴付けられる。第 1の特徴量と、第 2の特徴量とは、好ましくは、 相互に単純に関連しないことが有利である。そのような 2つの相互に関連しない特性 によって規定された空間を二種類以上使用してスクリーニングすることによって、より 詳細なかつ綿密なスクリーニングを行うことができることが判明した。
[0163] C)第 2の特徴量において所望の特性を選択する工程において、スクリーニングが 対象とする任意の所望の活性を選択することができる。
[0164] D)選択された所望の特性を有する第 2の化学物質の、第 2空間における目的領域 を算出する工程において、目的領域は、例えば、一定以上の活性などの特性を選択 すると、それに対応する、空間内の任意の領域を決定することができる。
[0165] スクリーニングの目的とする特定のタンパク質 (遺伝子)あるいはタンパク質群が与 えられている場合、その目的タンパク質 (群)と配列や構造などが相同なタンパク質群
を選出し、それらが占有する空間領域として目的領域は定義できる。
[0166] また、タンパク質に定義されている機能(例えば、遺伝子オントロジー(gene ontol ogy)など)に基づ ヽて目的領域を定義した ヽ場合は、目的とする特定タンパク質 (群 )と同等の機能が定義されているタンパク質群を選出し、それらが占有する空間領域 として目的領域を定義する。
[0167] さらには、タンパク質に定義されている遺伝子発現パターン、パスウェイ位置情報、 生物活性情報 (例えば、マイクロアレイデータ、反応経路、薬理活性など)に基づいて 目的領域を定義したい場合は、目的とする特定タンパク質 (群)と同等の遺伝子発現 ターン、パスウェイ位置情報、生物活性情報が定義されているタンパク質群を選出 し、それらが占有する空間領域として目的領域を定義する。
[0168] E)目的領域と所定の距離以下に存在する第 1空間の標的領域を算出する工程に おいて、当業者は、一旦目的領域が決まると、所定の距離以下に存在する標的領域 を計算するこ
とがでさる。
[0169] 目的領域内の各々のタンパク質につ 、て、結合し得る第一空間の化合物群が特定 される。特定された化合物各々について、第一空間座標内で所定の距離以下に存 在する標的領域を算出する。ここで言う距離とは、ユークリッド距離、マンハッタン距 離などの距離の公理を満たすものから、相関係数やカーネルなどの類似度指標も含 むものとする。
[0170] F)該第 1空間の標的領域に存在する化学物質を選択する工程では、一旦算出さ れた標的領域に対応する化学物質を選択することができる。これは、一旦空間が定 義されていると、自動的な計算によって選択することも可能である。
[0171] 1つの実施形態では、本発明は、サンプルデータを用いて前記第 1空間と第 2空間 とを相関させるようトレーニングすること工程をさらに包含する。
[0172] 本明細書において「トレーニング」とは、装置の使用のための訓練に要する計算機 操作で,取付け操作,操作卓操作,変換操作,印刷操作のような活動や,必要なデ モンストレーシヨンを行なうのに使われた操作をいう。
[0173] 本明細書において「トレーニングデータ」とは、操作の始めにロボットのコンピュータ
一へ入力される練習データをいう。
[0174] 1つの実施形態において、トレーニングは、直交行列 A=C _1/2Uと B=C
xx y
_1/2 Vを生成し(ここで、 det(A) =det(B) =1かつ
y
[0175] [数 131]
C E{(X- π (Χ- π 1}, C^EKY- π^ΧΥ- , C^EttX- mJiY-ng1}, K=C 1/2. C^-C^-U-S-V7
[0176] である)、
第 1モダリティの第 1空間を表す AXと第 2モダリティの第 2空間を表す BYとの間の 相関は最大となり、これにより、該第 1モダリティカ 該第 2モダリティへの特徴の移転 が可能となる、ことを特徴としてもよい。
[0177] 別の実施形態では、前記トレーニングにより、行列 Aと行列 Bを生成し、第一モダリ ティの第一空間を表わす XAと第二モダリティの第一空間を表わす YBとの間の相関 は最大となり、これにより、該第一モダリティカ 第二モダリティへの特徴の移転が可 能となり、該移転は、行列 X、 Yの行には化学物質のエントリーが、列には化学物質情 報が並ぶ 2種
の異質なデータ (例えばィ匕合物とタンパク質)を行列 X, Y (第一空間が行列 X、第二 空
間が行列 Y)と表現したとき、
[0178] [数 141]
JT= « X ϊ歹 U ; Γ= « X 亍歹 lj n≥p≥q≥\
f = Xa g=Yb び/ 2=^ϊ,', afS =^xrs =^lg g 第一空間と第二空間の相関を最大にするために、
相関係数
[0179] [数 142]
[0180] を最大にする係数ベクトル a,bの組を探し、 ここで
[0181] [数 143] σ, =ag =1
[0182] 、の条件付のとき、
[0183] [数 144]
[0184] を最大にするとき、
[0185] [数 145]
[0186] を正準相関、
[0187] [数 146]
[0188] を正準変量と呼ぶ。
[0189] 前記正準相関解析にぉ 、て、 Xと Yの特異値分解を行 、、 [0190] [数 147]
X = UXDXV Y = rDrV'y
U'XUY=UDV
U, D,Vを算出し、該 U,D,Vを用い、
[0191] [数 148]
Α = η- Ι ,,Ζ 1ひ B = -fn- W^D^V
ただし、 A,B,F,Gは、
A = ..., aq \ β = … , ¾ J
F = XA G = YB
であり、ここで、 i=lから順番に相関の高いもの
[0193] [数 150]
[0194] を得ることができる。
[0195] 本明細書において「モダリティー」とは、特徴的属性をいう。
[0196] 1つの実施形態において、上記式では、第 1空間を表す AXのクエリは、第 2空間を 表す BYの前記クエリの結果のみが与えられると、 BYは AXと最大の相関を有するこ とから特定可能である。
[0197] 本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法は、工程 A)〜F)を機械学習法に よって自動的に行うことを包含する。機械学習法としては、どのようなものであっても 使用することができるが、好ましくは、機械学習法は、 SVM法によって達成される。
[0198] 本明細書において「サポートベクターマシン (SVM)」とは、教師付き識別問題を解 くための機械学習アルゴリズムである。(文献 B. E. Boser, I. M. Guyon, and V. N. Vapnik. A training algontnm for
optimal margin classifiers. In D. Haussler, editor, 5th Annual A CM Workshop on COLT, pages 144— 152) SVMでは、データを 2種類に 分類するために各データ点との距離が最大となる分離平面 (超平面)を求めるマージ ン最大化という考え方を用いる特徴を有する。さらに、カーネル関数を用いてパター ンを有限もしくは無限次元の特徴空間へ写像し、特徴空間上で線形分離を行う方法 を取ることによって非線形分離問題にも優れた性能を示すと!、う特徴も有する。ここ
で、教師付き分類問題を、タンパク質と化合物の結合予測に適用すると、タンパク質 と化合物が結合すると 、うクラスと結合しな 、と 、うクラスを分類する識別器を作ること になる。この場合、文献や実験などで得られる既知のタンパク質と化合物の結合デー タを教師データと用いることができる。
[0199] 具体的な実施形態では、機械学習法において、 G1)問い合わせとなる第 1化学物 質と第二化学物質との問い合わせペアを、第 1の化学物質の空間座標のデータべ一 スおよび第 2の化学物質の空間座標のデータベースによって構築された空間モデル においてマッピングする工程; G2)該問い合わせペア力 空間エリア内に存在する場 合、第 1化学物質と第二化学物質とが結合すると判定し、空間エリア内に存在しない 場合、第 1化学物質と第二化学物質とが結合しないと判定する工程を包含する。
[0200] 1つの重要な実施形態では、第 1の特徴量と第 2の特徴量とは互いに相関しないこ とを特徴とする。
[0201] 別の実施形態では、第 1の特徴量は、第 1の化学物質の化学特性であり、第 2の特 徴量は、第 2の化学物質の生物活性である。第 1の特徴量と第 2の特徴量とは互いに 相関しない例として、化学特性と生物特性とはその代表例である。従って、この場合 、代表的には、第 1の化学物質は化合物であり、前記第 2の化学物質は、生体物質 である。
[0202] 生体物質は、本発明ではどのようなものを用いてもよいが、例えば、前記生体物質 は、核酸、ペプチドまたはポリペプチドまたはタンパク質、サッカリドまたはポリサッカリ ド、脂質、およびそれらの複合体などであり得る。従って、生体物質の空間座標は配 列情報、二次構造、三次構造、四次構造、立体構造情報、発現情報、パスウェイ情 報、および機能情報力 なる群より選択される少なくとも 1種類の情報により定義され る。このような情報は、種々のデータベースから取得することもでき、自ら生成したデ ータベースを用いてもよ ヽ。
[0203] 本発明の方法では、第 1空間と第 2空間とは、第 1空間と第 2空間との相関が最大 になるように前記第 1座標および前記第 2座標が定義されるが、この場合、正準相関 分析(CCA)、カーネル正準相関分析(kernel CCA)、サポートベクターマシン(SV M)法等を含む、多変量解析手法、機械学習法または等価方法を用いることができる
。これらにカ卩え、さら〖こ、正準相関分析 (CCA)、カーネル正準相関分析 (kernel C CA)、サポートベクターマシン (SVM)法等を含む多変量解析手法、機械学習法ま たは等価方法のうち 2つ以上を組み合わせて適用してもよい。多変量解析手法は、 正準相関分析 (CCA)およびカーネル正準相関分析 (kernel CCA)等であり得る。 機械学習法は、サポートベクターマシン(SVM)法を含み得る。
[0204] 本発明において、標的とする相関は、どのような特性の相関であってもよぐ好まし くは、相関は、目的領域と標的領域との間の相関である。
[0205] 1つの実施形態では、本発明の方法は、さらに、選択された化学物質をインシリコで 生産する工程を包含する。インシリコでの生産方法は、本明細書において別の場所 にお 、て記載されており、周知の技術を用いることができる。
[0206] 別の実施形態では、本発明の方法は、さら〖こ、ウエットで選択された化学物質を生 産する工程を包含する。ウエットでの生産方法は、本明細書において別の場所にお いて記載されており、周知の技術を用いることができる。ウエットでの生産の代表例と しては、コンビナトリアルケミストリを用いることがあり得る。
[0207] あるいは、ウエットでの生産は、遺伝子組み換え技術を用いて達成されてもよい。
[0208] 1つの具体的な実施形態では、本発明の方法は、さらに、前記第 1空間の化学物 質の選択の後、該第 1空間の化学物質の前記第 2の特徴量を測定して、実際に所望 の活性を有する化学物質を選択する工程をさらに包含する。
[0209] 1つの実施形態では、本発明の化学物質の選択工程において、該化学物質を前 記第 2の特徴量に基づいてスコア付けすることを特徴とする。
[0210] ここで言うスコアは、第一空間内の任意の化学物質 Aと第二空間内の任意の化学 物質 Bの結合のしゃすさ (結合予測の統計的有意性)を示すものと考えられる。例え ば、 Aと Bとの結合スコアは次のように定義できる。第二空間内の全ての化学物質数 を N、そのうち化学物質 Aと結合する個数力 あつたとする。ここで、 Bに近接する第 二空間内の化学物質 K個を考えた場合、そのうち化学物質 Aと結合する個数が PTC あつたとする。その際の化学物質 Aから Bの結合スコアは log (H/K) / (L/N) )と いうようなォッズスコアとして定義できる。また逆に、第一空間内の全ての化学物質数 を n、そのうち化学物質 Bと結合する個数が 1あつたとする。ここで、 Aに近接する第一
空間内の化学物質 k個を考えた場合、そのうち化学物質 Bと結合する個数が hであつ たとする。その際の化学物質 Bから Aの結合スコアは log (h/k) / (1/n) ) t 、うよう なオッス、スコアとして定義できる。従って、化学物質 A力 Bへのスコアと B力 Aへの スコアから、化学物質 Aと Bの総合スコアを log (H/K) / (L/N) ) +log (h/k) / (1 Zn) )と定義することができる。これらのスコアは CCAや kernel CCAで算出された 第一空間と第二空間の相関モデル力も算出される。また、 SVM法を用いた場合は、 第一空間内の化学物質群と第二空間内の化学物質群との間の既知の結合ペアと結 合しないペアを分離する超平面力もの距離に相当するものからスコアを換算できる。
[0211] 化学物質および生体物質の記述の仕方としては、本明細書において別の場所に 記載されて 、る任意の記述方法を用いることができることが理解される。
[0212] 別の局面において、本発明は、本発明の方法によって生産されたィ匕学物質を提供 する。
[0213] 別の局面において、本発明は、化合物ライブラリーを生産する方法を提供する。こ のような化合物ライブラリーの生産方法は、 A)第 1の化学物質の空間座標のデータ ベースにより定義される第 1空間に包含される第 1の化学物質群を提供する工程と、 B)第 2の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 2空間に包含され る第 2の化学物質群を提供する工程であって、第 1の化学物質は、第 1の特徴量によ り特徴付けられ、第 2の化学物質は、第 2の特徴量により特徴付けられる、工程と、 C) 第 2の特徴量にお 、て所望の特性を選択する工程と、 D)該選択された所望の特性 を有する第 2の化学物質の、第 2空間における目的領域を算出する工程と、 E)該目 的領域と所定の距離以下に存在する第 1空間の標的領域を算出する工程と、 F)該 第 1空間の標的領域に存在する複数の化学物質を選択して所望の特性を有するライ ブラリーを生産する工程とを包含する。
[0214] 本発明のライブラリー生産方法では、本明細書において記載される任意の実施形 態を利用することができることが理解される。
[0215] 別の局面において、本発明は、本発明の方法によって生産されたライブラリーを提 供する。
[0216] 別の局面において、本発明は、所望の特性を有する化学物質を生産する方法をコ
ンピュータに実行させるプログラムを提供する。このプログラムが規定する方法は: A) 第 1の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 1空間に包含される 第 1の化学物質群を提供する工程と、 B)第 2の化学物質の空間座標のデータベース により定義される第 2空間に包含される第 2の化学物質群を提供する工程であって、 第 1の化学物質は、第 1の特徴量により特徴付けられ、第 2の化学物質は、第 2の特 徴量により特徴付けられる、工程と、 C)第 2の特徴量において所望の特性を選択す る工程と、 D)該選択された所望の特性を有する第 2の化学物質の、第 2空間におけ る目的領域を算出する工程と、 E)該目的領域と所定の距離以下に存在する第 1空 間の標的領域を算出する工程と、 F)該第 1空間の標的領域に存在する化学物質を 選択する工程と、を包含する。このような実装方法は、プログラムが格納されたコンビ ユータ読み取り可能な記録媒体を記録媒体を読み取る手段 (例えば、 CD— Rであれ ば、 CD— Rドライブ)を介してコンピュータに実装させることによって達成することがで きる。プログラムの記述は、当該分野において任意の言語 (例えば、 C +言語、 Perl, Basic, html, XML、 Pascal, FORTRANなど)を挙げることができるがそれらに限 定されない。なお、特に限定しない限り、本明細書では、プログラムというとき、コンビ ユータプログラムを指すことが理解される。
別の局面において、本発明は、所望の特性を有する化学物質を生産する方法をコ ンピュータに実行させるプログラムを格納したコンピュータ読み出し可能な記録媒体 を提供する。この記録媒体が記録するプログラムが実行する方法は: A)第 1の化学 物質の空間座標のデータベースにより定義される第 1空間に包含される第 1の化学 物質群を提供する工程と、 B)第 2の化学物質の空間座標のデータベースにより定義 される第 2空間に包含される第 2の化学物質群を提供する工程であって、第 1の化学 物質は、第 1の特徴量により特徴付けられ、第 2の化学物質は、第 2の特徴量により 特徴付けられる、工程と、 C)第 2の特徴量において所望の特性を選択する工程と、 D )該選択された所望の特性を有する第 2の化学物質の、第 2空間における目的領域 を算出する工程と、 E)該目的領域と所定の距離以下に存在する第 1空間の標的領 域を算出する工程と、 F)該第 1空間の標的領域に存在する化学物質を選択するェ 程と、を包含する記録媒体を提供する。記録媒体としては、プログラムを記録すること
ができる限り、任意の形態(例えば、フレキシブルディスク、 MO、 CD-ROM, CD— R、 DVD— ROMのような任意のタイプ)を使用することができることが理解される。
[0218] 本発明はまた、本発明のデータ構造物を記録した記録媒体を提供する。代表的に は、この記録媒体は、第 1の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 1空間と、第 2の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 2空間とを 備えるデータ構造物であって、第 1の化学物質は、第 1の特徴量により特徴付けられ 、第 2の化学物質は、第 2の特徴量により特徴付けられる、データ構造物が記録され ている。
[0219] 別の局面において、本発明は、所望の特性を有する化学物質を生産するシステム を提供する。このシステムは: A)第 1の化学物質の空間座標のデータベースにより定 義される第 1空間に包含される第 1の化学物質群と、 B)第 2の化学物質の空間座標 のデータベースにより定義される第 2空間に包含される第 2の化学物質群であって、 第 1の化学物質は、第 1の特徴量により特徴付けられ、第 2の化学物質は、第 2の特 徴量により特徴付けられる、第 2の化学物質群と、 C)第 2の特徴量において所望の 特性を選択する手段と、 D)該選択された所望の特性を有する第 2の化学物質の、第 2空間における目的領域を算出する手段と、 E)該目的領域と所定の距離以下に存 在する第 1空間の標的領域を算出する手段と、 F)該第 1空間の標的領域に存在する 化学物質を選択する手段と、 G)該選択された化学物質を生産する手段とを備える。 ここで使用される A)〜G)の手段等としては、本明細書において記載された任意の実 施形態を使用することが理解される。
[0220] 別の局面において、本発明は、所望の特性を有する化学物質をスクリーニングする システムを提供する。このシステムは、 A)第 1の化学物質の空間座標のデータべ一 スにより定義される第 1空間に包含される第 1の化学物質群と、 B)第 2の化学物質の 空間座標のデータベースにより定義される第 2空間に包含される第 2の化学物質群 であって、第 1の化学物質は、第 1の特徴量により特徴付けられ、第 2の化学物質は、 第 2の特徴量により特徴付けられる、第 2の化学物質群と、 C)第 2の特徴量において 所望の特性を選択する手段と、 D)該選択された所望の特性を有する第 2の化学物 質の、第 2空間における目的領域を算出する手段と、 E)該目的領域と所定の距離以
下に存在する第 1空間の標的領域を算出する手段と、 F)該第 1空間の標的領域に 存在する化学物質を選択する手段と、を備える。ここで使用される A)〜F)の手段等 としては、本明細書において記載された任意の実施形態を使用することが理解され る。
[0221] 別の局面において、本発明は、化学物質ライブラリーを作成する方法を提供する。
この方法は、 A)第 1の化学物質の空間座標のデータベースにより定義される第 1空 間を特定
する工程、 B)少なくとも 1つの特性が既知の第 2の化学物質の空間座標のデータべ ースにより定義される第 2空間を特定する工程であって、ここで、第 1の化学物質は、 第 1の特徴量により特徴付けられ、第 2の化学物質は、第 2の特徴量により特徴付け られる工程、 C)該第 1空間と該第 2空間との相関が最大になるように該第 1空間の座 標を定義しなおす工程、 D)該定義しなおした第 1空間を新たな化学物質ライブラリ 一として生成する工程、を包含する。
[0222] また、本願発明は、以下に示すように局面、実施形態においても利用することが可 能である(図 11〜図 13は、以下の説明に関する概念図を示すものである)。
[0223] 別の局面において、本発明は、第 1の化学物質群と第 2の化学物質群との間の相 互作用パターンを統計モデルとして定義するデータ処理方法を提供し、この方法は 、第 1の化学物質群の空間座標を表す第 1空間と、第 2の化学物質群の空間座標を 表す第 2空間とを定義し、第 1の化学物質群は、第 1の特徴量により特徴付けられ、 第 2の化学物質群は、第 2の特徴量により特徴付けられ、(I)第 1の化学物質群は化 合物であり、該第 2の化学物質群は、核酸またはタンパク質あるいはそれらの複合体 であり、かつ該第 1の特徴量は、該第 1の化学物質の 1種類以上の化学物質情報か らなるベクトルとして表現され、該第 2の特徴量は、該第 2の化学物質群の 1種類以上 の生物学的情報力 なるベクトルとして表現される場合、あるいは (Π)第 1の化学物 質群は核酸またはタンパク質あるいはそれらの複合体であり、該第 2の化学物質群は 、化合物であり、かつ該第 1の特徴量は、該第 1の化学物質群の 1種類以上の生物 学的情報力 なるベクトルとして表現され、該第 2の特徴量は、該第 2の化学物質の 1 種類以上の化学物質情報力もなるベクトルとして表現される場合(図 13に記載される
ように、(I)の場合における化学物質ならびに特徴量の定義を取り替えた場合)にお いて、該第 1空間と該第 2空間とは、多変量解析手法、機械学習法およびそれらの等 価方法からなる群より選択される手法によって写像変換される、データ処理方法であ つて、前記第 1空間と前記第 2空間との相関が最大になるように、多変量解析手法、 機械学習法およびそれらの等価方法力 なる群より選択される手法によって、該第 1 空間の座標および該第 2空間の座標が写像変換され、変換後の第 1空間座標と変換 後の第 2空間座標を定義することを特徴とする。
[0224] ここで、本発明のこの局面における、写像変換には、 CCAや PCAなどの線形変換 のほか、カーネル関数による非線形変換が含まれる。また、(I)および (Π)の両方に おいて利用可能であるので、特定の標的タンパク質に活性を持つ化合物を探索する 目的に適用可能 (Iの用途)のほか、特定の化合物が与えられたときにその化合物に 作用される複数のタンパク質の推定 (Π)の用途)につながり、薬物の副作用に関する 知見を提供する。また、特定の化合物に作用できる人工タンパク質 (遺伝子改変タン パク質)の創製などの応用も可能であると考えられる。
[0225]
この方法における 1つの実施形態は、第 1の化学物質と第 2の化学物質との間の相 互作用を予測するデータ処理方法であり、以下の A)〜D)を包含する。すなわち、 A )相互作用することが既知である第 1の化学物質群と第 2の化学物質群について、請 求項 1に記載のデータ処理方法によって、第 1の化学物質群の空間座標を表す第 1 空間と第 2の化学物質群の空間座標を表す第 2空間とが写像変換される工程と、 B) 相互作用の予測対象となる第 1の化学物質の第 1の特徴量力 なるベクトルを該写 像変換することによって第 1の化学物質を変換後の第 1空間へとマッピングする工程 と、相互作用の予測対象となる第 2の化学物質の第 2の特徴量力 なるベクトルを該 写像変換することによって第 2の化学物質を変換後の第 2空間へとマッピングするェ 程と C)相互作用の予測対象となる第 1の化学物質の変換後の座標位置と相互作用 の予測対象となる第 2の化学物質の変換後の座標位置とによって、予測対象となる 第 1の化学物質と第 2の化学物質とが相互作用する確率をスコアとして算出する工程 と、 D)特定のスコア以上を有する第 1の化学物質と第 2の化学物質を出力する工程
とを包含する。ここでのマッピングとは、相互作用することが既知である第 1の化学物 質群の第 1空間と第 2の化学物質群の第 2空間との相関が最大になるように、多変量 解析手法、機械学習手法およびそれらの等価方法によって、写像変換した際に導出 される関数を用いて、予測対象となる第 1の化学物質および第 2の化学物質を写像変 換することである。さらに、 D)において、指定する「特定のスコア」について、その特 定のスコアに関する基準は、例えば、統計的有意点を示す 5%有意点などが挙げら れるがこれらに限定されない。
[0226] また、別の実施形態にお!、て、このデータ処理方法は、所望の特徴量を有する化 学物質またはライブラリーを生産するデータ処理方法を提供し、以下の A)〜D)を包 含する。すなわち、 A)相互作用することが既知である第 1の化学物質群と第 2の化学 物質群について、請求項 1に記載のデータ処理方法によって、第 1の化学物質群の 空間座標を表す第 1空間と第 2の化学物質群の空間座標を表す第 2空間とが写像変 換される工程と、 B)第 1の化学物質群の第 1の特徴量力 なるベクトルを該写像変換 することによって第 1の化学物質群を変換後の第 1空間へとマッピングする工程と、第 2の化学物質群の第 2の特徴量力 なるベクトルを該写像変換することによって第 2 の化学物質群を変換後の第 2空間へとマッピングする工程と C)第 1の化学物質群の 変換後の座標位置と第 2の化学物質群の変換後の座標位置とによって、第 1の化学 物質群と第 2ィ匕学物質群とが相互作用する確率をスコアとして算出する工程と、 D) 第 2の特徴量にお 、て所望の特徴量を選択する工程と、 E)該選択された所望の特 徴量を有する第 2の化学物質群の、変換後の第 2空間における目的領域を算出する 工程と、 F)該目的領域内に存在する第 2の化学物質群と所定のスコア以上を示す変 換後の第 1空間の標的領域を算出する工程と、 G)該標的領域に存在する第 1の化 学物質または化学物質群を選択する工程とを包含する。
[0227] 別の局面において、本発明は、第 1の化学物質群と第 2の化学物質群との間の相 互作用パターンを統計モデルとして定義するデータ処理方法であって、第 1の化学 物質と第 2の化学物質のペアが、第 1の化学物質の第 1の特徴量と第 2の化学物質 の第 2の特徴量とを連結したベクトルとして表現され、(I)該第 1の化学物質は化合物 であり、該第 2の化学物質は、核酸またはタンパク質あるいはそれらの複合体であり、
該第 1の特徴量は、該第 1の化学物質の 1種類以上の化学物質情報からなるベタト ルとして表現され、該第 2の特徴量は、該第 2の化学物質群の 1種類以上の生物学 的情報力 なるベクトルとして表現される場合、あるいは (Π)第 1の化学物質群は核 酸またはタンパク質あるいはそれらの複合体であり、該第 2の化学物質群は、化合物 であり、かつ該第 1の特徴量は、該第 1の化学物質群の 1種類以上の生物学的情報 力 なるベクトルとして表現され、該第 2の特徴量は、該第 2の化学物質の 1種類以上 の化学物質情報力 なるベクトルとして表現される場合において、第 1の化学物質の 第 1の特徴量と第 2の化学物質の第 2の特徴量とを連結したベクトルは、多変量解析 手法、機械学習法およびそれらの等価方法からなる群より選択される手法によって特 徴空間へと写像変換される。
1つの実施形態において、この方法は、第 1の化学物質と第 2の化学物質との間の 相互作用を予測するデータ処理方法であって、 A)所望の相互作用情報を有する第 1の化学物質群と第 2の化学物質群のペアについて、上述したデータ処理方法によ つて、第 1の化学物質の第 1の特徴量と第 2の化学物質の第 2の特徴量とを連結した ベクトルを、特徴空間へと写像変換する工程と、 B)予測対象となる第 1の化学物質の 第 1の特徴量と予測対象となる第 2の化学物質の第 2の特徴量とを述結したベクトル を該写像変換することによって特徴空間へとマッピングする工程と C)予測対象となる 第 1の化学物質と予測対象となる第 2の化学物質の特徴空間上での座標位置とによ つて、予測対象となる第 1の化学物質と第 2ィ匕学物質とが所望の相互作用する確率を スコアとして算出する工程と、
D)特定のスコア以上を有する第 1の化学物質と第 2の化学物質を出力する工程と、 を包含し、相互作用情報は、結合の有'無、結合活性、薬理活性からなる群より選択 される少なくとも 1種類の情報により定義される。ここで、「相互作用情報」には、解離 定数 Kd、 50%阻害効果濃度 IC50、 50%亢進効果濃度 EC50などが挙げられる。 医薬品開発の場合、結合の有無、結合活性、薬理活性の基準として、 Kd、 IC50、 E C50が、マイクロモルオーダー、ナノモルオーダーであると望ましい。また、「相互作 用する確率をスコア」を評価する基準としては、そのスコアは、特徴空間内でクラス分 類 (例えば、結合する化合物とタンパク質ペアのクラスと結合しな 、ィ匕合物とタンパク
質ペアのクラスなど)をする境界面 (超平面)力 の予測対象の距離で表され、境界 面力も遠距離にあるほど、相互作用する確率が高くなる。
[0229] 別の実施形態において、この方法は、所望の特徴量を有する化学物質またはライ ブラリーを生産するデータ処理方法であって、 A)所望の相互作用情報を有する第 1 の化学物質群と第 2の化学物質群のペアについて、請求項 4に記載のデータ処理方 法によって、第 1の化学物質の第 1の特徴量と第 2の化学物質の第 2の特徴量とを連 結したベクトルを、特徴空間へと写像変換する工程と、 B)第 1の化学物質群の第 1の 特徴量と第 2の化学物質群の第 2の特徴量とを連結したベクトルを該写像変換するこ とによって特徴空間へとマッピングする工程と C)第 1の化学物質と第 2の化学物質の 特徴空間上での座標位置とによって、第 1の化学物質と第 2化学物質とが所望の相 互作用する確率をスコアとして算出する工程と、 D)第 2の特徴量において所望の特 徴量を選択する工程と、 E)該選択された所望の特徴量を有する第 2の化学物質群 の、変換後の第 2空間における目的領域を算出する工程と、 F)該目的領域内に存 在する第 2の化学物質群と所定のスコア以上を示す変換後の第 1空間の標的領域を 算出する工程と、 G)該標的領域に存在する第 1の化学物質または化学物質群を選 択する工程とを包含する。
[0230] 上述で記載した本発明のいずれの局面のデータ処理方法を用いても、第 1の化学 物質と第 2の化学物質との間の相互作用を予測するデータ処理装置が提供される。 さらに別の実施形態において、上述のデータ処理方法を用いて、所望の特徴量を有 する化学物質またはライブラリーを生産するデータ処理装置が提供される。これらの 処理装置は、その処理装置に備え付けられた演算装置上で本発明の方法が実行さ れること〖こより実施される。
[0231] さらに別の実施形態において、本発明のデータ処理方法を用いて、所望の特徴量 を有する化学物質またはライブラリーを生産するデータ処理プログラムが提供される 。さらに別の実施形態において、本発明のデータ処理方法を用いて、第 1の化学物 質と第 2の化学物質との間の相互作用を予測するデータ処理プログラムが提供され る。このような実装方法は、プログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記録 媒体を記録媒体を読み取る手段 (例えば、 CD— Rであれば、 CD— Rドライブ)を介し
てコンピュータ、計算機に実装させることによって達成することができる。本発明のデ ータ処理プログラムは、計算機、コンピュータ上で実行される。なお、本願明細書に おいて、「計算機」、「コンピュータ」は、交換可能に使用され、命令に基づいて情報 処理を自動的に行なう電子機械を示す。また、計算機は、最も代表的な場合、入力 装置、記憶装置、演算装置、制御装置、出力装置を備える。入力装置は、データや 情報を, 自動データ処理システムに転送するのに用いる装置であり、例えば、キーボ ード、マウス、タブレット、スキャナなどが挙げられるがこれらに限定されない。記憶装 置は、計算に必要な情報を記憶する装置であり、メモリ、ディスク、テープ、 CD— RO MZRAM、 DVDなどが挙げられるがこれらに限定されない。演算装置は、すべての 算術演算と論理演算を実行する計算機の部分であり、 CPUなどがこれの例である。 制御装置は、データバッファーと論理回路を備えた電子装置であり、計算機チャネル と入出力装置の間にあり、例えば、データ転送やテープ巻戻しのような操作を制御す る。演算装置および制御装置をまとめて、「処理装置」と呼び、また、演算装置との用 語を処理装置の意味で用いる場合もある。本願明細書においてプログラムの記述は 、当該分野において任意の言語(例えば、 C +言語、 Perl, Basic, html, XML、 Pa scal、 FORTRANなど)を挙げることができるがそれらに限定されない。なお、特に限 定しない限り、本明細書では、プログラムというとき、コンピュータプログラムを指すこと が理解される。また、本発明のデータ処理プログラムは、コンピュータ読み取り可能な 記録媒体に格納 (記憶)され得る。記録媒体としては、プログラムを記録することがで きる限り、任意の形態を使用することができることが理解される。
[0232] また、本発明の別の実施形態にとして、本発明のデータ処理プログラムを備え、そ のデータ処理プログラムによって予測、或いは生産された、或いは本発明のデータ 処理装置によって予測、或いは生産された化学物質およびィ匕学物質群をィ匕学合成 する、化学合成装置もまた、本発明によって提供される。
[0233] さらに、本発明のデータ処理プログラムを備え、そのデータ処理プログラムによって 予測された、第 1空間の化学物質群を化学合成した後、該第 1空間の化学物質の前 記第 2の特徴量を測定して、実際に所望の活性を有する化学物質を選択する手段を 備える、スクリーニング装置もまた、本発明によって提供される。
[0234] さらに、本発明のデータ処理プログラム、またはコンピュータ読み取り可能な記録媒 体、および装置を使用することにより、所望の化学物質が合成される。本発明のデー タ処理法により得た知見に基づき、所望の化学物質が通常の化学技術を用いて合 成され得る。
[0235] 本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、そ の全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援 用される。
[0236] 以上、本発明を、理解の容易のために好まし!/ヽ実施形態を示して説明してきた。以 下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は 、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従つ て、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限 定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
実施例
[0237] 以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、この発明は以下の例に限 定されるものではない。
[0238] (実施例 1: CCAを用いたバイオ空間およびケミカル空間でのスクリーニング)
従来法 (PCA)と本手法 (CCA)の性能評価をするために、それぞれで構築した「ケ ミカル空間とバイオ空間の融合モデル」を用いて上述のインシリコスクリーニング (In silico screening 行つた。
[0239] 図は、予測性能を評価する有名な方法の一つである ROC曲線である。このグラフ は曲線が上に位置すれば位置するほど、予測性能が良いことを表すものであり、本 手法の赤曲線が従来法の黒曲線より上に位置することから、本手法の方が実際に予 測性能が高いことがわかる。以下にその具体的手順を示す。
[0240] (プロトコール)
1、融合モデルの構築に用いる既知のタンパク質と化合物のデータは、 DrugBank 丁' ~~タべ ~~ス (http : z / redpoll, pharmacy, ualberta. caz drugbank/) 2005 年 8月リリース版から取得した。
2、全ての化合物エントリーの mol fileについて、 DragonXソフトウェアを用いて、 9
37個の化合物記述子を算出した。ここで、計算されたィ匕合物数は 3079個である。さ らに、 CCA計算を行うにあたり、属性となる記述子のプロファイルは独立していなけ ればならないため、相関係数 0. 8以上の相関性を持つ記述子は、情報量の高い記 述子 300個に縮約した。
3、全てのタンパク質エントリーの fasta fileについて、 mismatch string kernel を生成する手法と同様の手法により、ミスマッチを考慮した連続する 2アミノ酸の組成 比からなる 400次元(アミノ酸 20種 * 20種)のプロファイルを算出した。ここで、プロフ アイルイ匕されたタンパク質数は 3476個である。また、上記 2で算出された化合物との 結合数は 8006個であった。
4、予測性能の評価には、 5分割交差検証法(5 fold cross validation)を用いた 。すなわち、上記 2と 3で作成した 8006個の化合物—タンパク質結合データを無作 為に 4 : 1に分類し、 80%の結合データをトレーニングデータとして CCA計算や PCA 計算をし、タンパク質空間と化合物空間のそれぞれの座標を構築した。残りの 20% の結合データはテストデータとして用いた。ここで、テストデータの負例(結合しない データ)は、正例である結合データを構成する化合物とタンパク質の組合せで結合し ない組合せを発生させ、正例と同数を無作為に選出した。このように作成したテスト データをトレーニングデータによって構築したタンパク質空間と化合物空間にそれぞ れマッピングした。マッピングとは、トレーニングデータを CCAや PCA計算することに よって、算出される重み係数行列 (PCAの場合は主成分得点係数行列)をテストデ 一タ行列にかけることでなされる。タンパク質空間と化合物空間にそれぞれマツピン グされたタンパク質と化合物については各々についてスコアを算出した。
5、上記 4のようにテストデータを予測したとき、実際に結合するデータを結合すると予 測できたものの比率を真陽性率、実際には結合しないデータを結合すると予測してし まったものの比率を偽陽性率と呼ぶ。ここで、特定の予測スコア(閾値)以上の値を持 つデータは陽性とみなし、特定スコア以下の値を持つデータは陰性とみなす。上記 C CAと PCAにお!/、て予測した化合物一タンパク質結合スコアに基づ 、て、スコアの閾 値を動かし、それに伴う偽陽性率と真陽性率を (X, y)としてプロットした (ROC曲線)
[0241] (実施例 2:化合物 GPCR相互作用予測手法)
化合物 GPCR相互作用予測手法の開発を以下の手順で行った。
[0242] なお、本実施例にあたり用いたデータセットおよび解析方法等に関する詳細を記載 した文献等については、本文中に参照番号を付し、本実施例の末尾にその参考文 献一覧を添付した。これらの文献は、本明細書中で参考として援用される。
[0243] ( # 1 化合物 タンパク質相互作用情報の収集)
GLIDA (GPCR - LIgand DAtabase) [ 1 ]、 DrugBank [2]、 IUPHAR Rece ptor database [3] , PDSP Ki database [4]から、相互作用する化合物 GPC Rの組み合わせ 5207例(ィ匕合物: 866、 GPCR : 317)を収集した。ただし、ここでは ヒト、マウス、ラットの GPCRを用い、 GPCRの定義は GPCRDB [5]に従った。また、 化合物については、続く記述子 (descriptor)の計算に構造情報が必要であるため、 mol (sdf) 形式のファイルが提供されている GLIDAおよび PubChem Compoun d [6]に登録されて 、る化合物を用いた。
[0244] ( # 2 記述子の計算)
化合物およびタンパク質を特徴ベクトルとして表現するために、以下の方法によりそ れぞれの記述子を計算した。
'ィ匕 3己 iiiナ (chemical descriptor)
収集したィ匕合物の構造から、化合物の構造 *物性に関する記述子を DRAGONX ver. 1. 2 [7]により計算した。この研究では、カテゴリー 1— 10 (constitutional de scriptors, topological descriptors, walk and patn counts, connectivity indices, information indices, 2D autocorrelations , edge adjacency in dices, Burden eigenvalue descriptors, topological charge indicesおよび eigenvalue—based indices)、カァゴリ ~~ 17—18 (functional group counts および atom— centered fragments)、力アコリ ~~ 20 (molecular properties) CO 計 929記述子を計算した。なお、分子の三次元座標に依存する記述子 (カテゴリー 1 1— 14)、官能基や原子タイプの数を数える記述子 (カテゴリー 15および 16)、電荷 記述子 (カテゴリー 19)は、ここでは用いな力つた。続いて、これらの記述子のうち、す ベての化合物で同一の値として計算出力されるものを取り除き、結果として残った 79
7種類の記述子を以下で用いた。
•タンノ ク質己;!^子 (protein descriptor)
ミスマッチを許容したスペクトラム法 [8]により計算した。この方法は、タンパク質配 列を固定長 kのアミノ酸配列に分解し、この中に現れる、最大 m個のミスマッチまで許 容した長さ kのアミノ酸配列パターンの頻度を数えることにより計算される。発明者ら は (k, m)を (2, 1)に設定した。したがって、計算される記述子は、 1アミノ酸のミス マッチを許容した 2連アミノ酸 202種類となる。
[0245] ( # 3 サポートベクターマシン(SVM)による学習モデルの構築)
SVMは、 Vapnikら [9]により提案された学習アルゴリズムであり、その高い汎化能 力から各方面において多用されている。 SVMは、 2つの異なるグループの特徴べク トルを最大マージンで分離するような超平面を構築する。ここで、最大マージンとは、 分離した超平面力 各サンプル間までの最短距離を指す。
[0246] 発明者らは、化合物—タンパク質相互作用の有無を分離する超平面を求めるため に、正例 (相互作用するパターン)および負例 (相互作用しないパターン)に対応する 化学記述子、タンク質記述子をそれぞれ組み合わせて特徴ベクトルを構築し、 SVM を用いて学習モデルを構築した。ただし、負例については、相互作用しないパターン の情報が得られな 、ため、 2つの記述子をランダムに組み合わせて正例と同数を生 成した。ここで、 SVMライブラリとして、「Sequential Minimal OptimizationJァ ルゴリズム [10, 11]を採用している libsvmプログラム [12]のコードを用いた。 SVM モデルが得られると、新しいベクトル (ィ匕合物—タンパク質ペア)力 相互作用 有 Z 無 のどちらのクラスに属するかを予測することができる。さらに、判別だけでなぐサ ンプルのスコアリングを行う方法も報告されている [13]。これは、分離面に近いサン プルは、分離面力も遠いサンプルよりも、誤って分類される確率が高いであろうという 考えに基づいている。発明者らは、化合物—タンパク質間の相互作用予測において 、この方法により、その可能性のスコア化、および順位付けを行った。
[0247] ( # 4 化合物構造類似性によるリガンド予測)
発明者らは、モデルの比較対象となるリガンド予測方法として、化学記述子から計 算される化合物の類似性を用いた。この類似性は、一般的な化合物探索の方法であ
り、リードィ匕合物を発見する手助けになると言われている [14]。この研究では、上述 の「 # 2」で計算した 797種類の化学記述子を主成分分析し、主成分座標上で既知リ ガンドと隣接する化合物力も順にスコア付けを行った。化合物 A—タンパク質 Bペア のスコアは、主成分空間にお 、て化合物 Aから見て最近傍にあるタンパク質 B既知リ ガンドとの類似度で表現される。主成分は、累積寄与率 80%までのもの(30主成分) を用いた。また、類似度の尺度として相関係数(Pearson correlation coefficien t)を用いた。
[0248] ( # 5交差検証法 (cross validation)によるモデルの評価)
n分割交差検証法 (n— fold cross-validation)を用いて学習モデルの予測性 能を評価した。この評価法では、最初に全学習データセットが n個の等サイズなサブ セットに分割される。続いて、それぞれのサブセットについて、残りの n—lサブセット で学習して作られた分類器を用いて予測する。そして、この操作は、すべてのサブセ ットがー度だけ予測されるように繰り返されて評価される。予測性能の尺度としては、 以下の式で計算される正確度 (Accuracy)を用いた。
[0249] Accuracy = ( TP + TN) / (TP + TN +FP + FN)
ここで、 TPは真陽性、 TNは真陰性、 FPは偽陽性、 FNは偽陰性を表す。
[0250] ランダムな組み合わせで作られる負例によるスコア変動を考慮し、負例を交換しな 力 Sら 10回の異なるデータセットを生成して 5分割交差検証法(5— fold cross -vali dation)を繰り返し行い、正確度の平均値により発明者らのモデルを評価した。続い て、計算された相互作用予測スコア力も ROC分析を行った。ここで、各評価において 、化合物の構造類似性に基づ!ヽたリガンド予測法( # 4)を比較対象とした。
[0251] ( # 6 ヒト j8 2アドレナリン受容体(|8 2AR)のリガンド予測)
発明者らが収集した化合物 GPCR相互作用情報は、今までの研究により「強く結 合する」と知られているもののみであり、その他の大部分の化合物 GPCR相互作用 は不明である。発明者らの疑問は、リガンド探索において、予想に反して相互作用す ると予測されたィ匕合物が本当に相互作用しないかどうかということである。そこで、発 明者らは、インビトロ (in vitro)結合阻害実験により、相互作用予測スコアと相互作 用の有無との関連性を確認した。
[0252] そのために、ヒト β 2ARを標的タンパク質とし、作成した学習モデルを用いてリガン ド予測を行った。この受容体は、喘息治療の標的として治療薬の開発が進められて いる生理学的に重要な遺伝子である。リガンド予測の対象化合物は、 GPCRとの相 互作用が知られている上記 866ィ匕合物(ただし、モデル構築時にヒト β 2ARとの相互 作用を学習したィ匕合物は除く)とした。これらの化合物の化学記述子に対して j8 2AR のタンパク質記述子(protein descriptor)を組み合わせ、予測用データセットとし た。負例組み合わせによるスコア変動を考慮し、負例を交換しながら学習と予測の試 行を 30回繰り返し、各リガンドについて、得られたスコアの最大値を最終的な予測ス コアとした。
[0253] 次に、相互作用予測スコア上位 50 (Top 50)の化合物について、さらなる調査-実 験を行った。まず、文献'特許調査(SciFinder、 PubMed)により、 β 2ARとの相互 作用に関する報告が存在しな 、か確認した。
[0254] 続、て、相互作用情報を確認できな力つた化合物のうち、入手可能な化合物につ V、て、インビトロ (in vitro)結合阻害実験による検証を行った。この実験では、ヒト β 2AR強制発現細胞株から膜画分を調製し、放射性 β 2ARリガンドである [1251] -シ ァノピンドロールに対する競合的な阻害効果を確認した。
[0255] ところで、相互作用しないという情報の欠如により、発明者らのモデルでは、ランダ ムに発生させたィ匕合物—タンパク質ペアを負例 (相互作用なし)パターンとして採用 している。このため、相互作用予測スコアの低い化合物が本当に相互作用しないか、 ということを確認する必要がある。そこで、発明者らは、予測スコア下位 50 (Bottom 50)の化合物についても、上位 50 (Top 50)と同様の文献調査'検証実験を行った
[0256] (結果)
(交差検証法による新規リガンド予測モデルの評価)
まず、手始めに今回開発した方法と従来法との比較検討を行った。公共データべ 一スカも収集した GPCR—リガンド相互作用情報を用い、化合物—タンパク質相互 作用パターンの特徴ベクトルを SVM分類器の入力とし、学習モデルを構築した。負 例を交換しながら 5分割交差検証法を 10回試行した結果、発明者らが開発したモデ
ルの予測性能 (accuracy)は 91. 3% ±0. 3%だった。対照として、化合物類似度に 基づいた従来法についても同様に 5分割検証法を行ったところ、予測性能は 81. 9 ±0. 3%だった。また、 ROC曲線からも、発明者らの開発したモデルの予測性能が 高いことが判明した(図 7A)。
[0257] (ヒト β 2ARリガンド予測)
次に、新規手法をヒト i8 2ARの新規リガンド予測に適用し、その有効性を実験によ り検証した。また、新規手法でのみ予測されるリガンドが従来法では検出できないよう な新規骨格を持つ化合物を含むかどうか調べた。構築したモデルを用いて、 866種 類の GPCRリガンドについて β 2ARとの相互作用予測スコアを算出した。
[0258] 新規モデルが予測した |8 2ARリガンド候補 Top 50の化合物のうち、文献'特許調 查により 14種の化合物が /3 2ARとの相互作用に関する報告を確認した(図 7B (B — 1)左)。さらに、残りの相互作用不明な化合物のうち、入手可能な 21種類につい てインビトロ (in vitro)結合阻害実験を行ったところ、 17種類の化合物が相互作用( 10_5M<IC50< 10_3M)を示した(図 7B (B— 1)右)。実験のヒット率は 81% (17 /21)にのぼり、ここにおいても高い予測的中率が示された。
[0259] 一方、下位 50 (Bottom 50)の化合物については、 j8 2ARリガンドとして報告され ているものは文献および特許調査では確認されなかった(図 7B (B— 2)左)。さらに 、残りのうち入手可能な 9ィ匕合物についてインビトロ (in vitro)結合実験を行ったとこ ろ、 2個の化合物が同程度の強さの相互作用を示したが、残りの 7ィ匕合物は相互作 用を示さな力つた(図 7B (B— 1)右)。
[0260] これらの予測結果を従来法によるものと比較した図が図 7Cである。実験で相互作 用を確認したィ匕合物の半数近くは、化合物の構造類似性に基づく従来の方法では スコアが低力つた。実際に、これらの化合物は、典型的な |8 2AR作動薬の構造 (カテ コラミン骨格、イソプレナリン誘導体)および β 2AR拮抗薬の構造 (ァリルアルキルァ ミン誘導体)とは異なる多様な骨格 (図 7C左)を持っており、化合物の構造類似性に 基づく従来の方法では発見できないリガンド群であるといえる。すなわち、相互作用 情報に基づく新しいモデルは、多様な構造を持つ化合物が同一タンパク質に作用す るという関係を正しく予測することができたといえる。また、これらの化合物の中には、
ニューロぺプタイド受容体アンタゴニストなど、従来はペプチド受容体に作用する化 合物として知られていたものも含まれていた力 遠縁にあたる β 2ARとも相互作用す ることが実験により確認された。
[表 1]
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産業上の利用可能性
本技術によって、特に創薬の分野では新薬開発のコストを大幅に下げ、また研究開 発サイクルも短縮することができる。これにより、従来よりも短い期間でより良い薬品を
市場に送り出すことができる。また、製薬コストに占める研究開発費の割合を下げるこ とで、社会的には医療費負担の低減という貢献が期待できる。