WO2007037532A9 - Srms遺伝子の治療的又は診断的用途 - Google Patents
Srms遺伝子の治療的又は診断的用途Info
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Abstract
本発明は、SRMSタンパク質の発現阻害物質または活性阻害物質を含有するがん治療剤;そのような治療剤の有効成分として使用し得る化合物のスクリーニング方法;SRMSタンパク質に対する抗体;その抗体などを用いるがん診断剤・がん診断方法などを提供する。
Description
明細書
S RM S遺伝子の治療的又は診断的用途 技術分野
本発明は、 がんにおいて特異的に増幅している遺伝子である S RMS 遺伝子、 その治療的又は診断的用途などに関する。 背景技術
悪性腫瘍 (がん) の特徴として、 増殖 · 浸潤 · 転移を経て全身化する ことによる致死があげられる。 外科的な切除または放射線治療のような 局所療法では、 転移性再発がんに対して十分な対処はできず、 全身療法 である薬物療法の発展が、 今後のがん治療成績の向上に期待されている。 がん薬物療法の現在の中心である化学療法は、 直接がん細胞の DNA および または RN Aに作用し、 細胞を死に至らせる殺細胞薬剤を用い る場合が多いが、 がん細胞以外の、 例えば、 骨髄細胞、 生殖細胞、 毛母 細胞、 消化管上皮細胞など分裂がさかんな正常細胞に対しても作用し、 強い副作用をもたらしていた。 一方、 近年の分子細胞生物学の進歩によ り、 がん細胞の浸潤 · 増殖 · 転移などにかかわるメカニズムが解明され、 そのがん細胞の特定メカニズムに特異的に作用する分子標的薬の開発が 注目されている。 代表例として、 非小細胞肺がんの治療に効果のある E G F R (上皮成長因子受容体) 、 チロシンキナーゼ阻害剤であるィレツ サ (一般名 : ゲフィチニブ) (WO 9 6 /3 3 9 8 0 ) 、 乳がんの治療 に効果のある HE R— 2 (ヒ ト上皮成長因子受容体 2 ) のヒ ト化モノク ローナル抗体のハーセプチン (一般名 : トラスッズマブ) (W〇 9 4Z 0 0 1 3 6 ) などがあげられる。 しかしながら、 現状では未だ有効な分 子標的薬は少なく、 今後更なる各がん種に対する有効な分子標的薬の開 発が望まれている。
日本人の大腸がんは年々増加の傾向にあり、 死亡数は、 肺がん、 胃が
んに次いで 3位になっている。 年齢別では 6 0歳代が一番多く、 次いで 5 0歳代、 7 0歳代の順である。 大腸がんの増加の原因には、 遺伝的要 因、 環境的要因などが考えられるが、 食生活の西欧化、 特に動物性脂肪 の取りすぎが原因ではないかと指摘されている。 大腸がんの有効な分子 標的薬の開発が待たれている。 また、 診断に用いられている腫瘍マーカ 一 ( C E A , C A 1 9 - 9 ) は、 進行大腸がんであっても約半数が陽性 を示すのみで、 臓器特異性も無く、 より高性能な診断薬の開発が望まれ ている。 発明の開示
上記のような状況下で、 がんを治療および Zまたは診断するための新 たな薬剤または方法が求められている。
特に、 がんに対して特異性の高い治療薬およびノまたは診断薬が求め られている。
上記のような状況に鑑み、 本発明者らは、 鋭意研究を重ねた結果、 が ん (特に、 大腸がん) において高頻度に増幅が起きている遺伝子が、 s
R M S遺伝子であることを見出した。 本発明者らはさらに、 大腸がん細 胞株ならびに子宮頸がん細胞株において S R M S夕ンパク質の発現を阻 害することによって、 癌細胞の増殖を抑制し得ることを見出し、 本発明 を完成するに至った。 すなわち、 本発明は、 以下に記載するがん治療剤、 がん抑制作用を有する候補物質のスクリーニング方法、 がん診断剤、 が ん診断用キッ ト、 がんの診断方法などを提供する。
( 1 ) S R M S遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治 療剤。
( 2 ) 上記 S R M S遺伝子の発現阻害物質が、
( a ) S R M S遺伝子の発現を R N A i効果により阻害する作用を有 する核酸、
( b ) S R M S遺伝子 しくはその一部、 またはその転写産物に対す るアンチセンス核酸、
(c ) S RMS遺伝子またはその一部に対するデコイ核酸、
( d ) S RM S遺伝子またはその一部に対してドミナントネガティブ に作用する S RM S遺伝子変異体
( e ) S RM S遺伝子の転写産物を.特異的に切断するリポザィム活性 を有する核酸、
および
( f ) S RM S遺伝子の転写または S RM S mRNAの翻訳を阻害 する化合物 (上記核酸を除く)
からなる群から選択される物質を含む、 上記 ( 1 ) に記載のがん治療剤。 ( 3) S RM Sタンパク質の活性阻害物質を有効成分として含有するが ん治療剤。
(4) 上記 S RM Sタンパク質の活性阻害物質が、
( a ) 該 S RM Sタンパク質に対する抗体、
(b) 該 S RMSタンパク質に対してドミナ トネガティブの性質を 有する S RM Sタンパク質変異体、 および、
(c ) 該 S RMSタンパク質に結合する化合物 (上記抗体および変異 体を除く)
からなる群から選択される物質を含む、 上記 ( 3) に記載のがん治療剤。
( 5 ) 上記がんが、 大腸がんまたは子宮頸がんである、 上記 ( 1 ) 〜 (4) のいずれかに記載のがん治療剤。
( 6 ) S RM S遺伝子の発現阻害物質をスクリ一二ングする方法であつ て、
(a) S RM S遺伝子を発現する細胞に、 被検化合物を接触させるェ 程、
(b) 該 S RMS遺伝子の発現レベルを測定する工程、 および
(c ) 被検化合物を接触させない場合と比較して、 該発現レベルを低 下させる化合物を選択する工程を包含する、 スクリーニング方法。
( 7 ) S RM S夕ンパク箅の活性阻害物質をスクリ一ニングする方法で あって、
( a) S RMSタンパク質と被検化合物とを接触させる工程、
(b) 該 S RMS夕ンパク質と被検化合物との結合活性を測定するェ 程、 および
(c ) 該 S RMSタンパク質と結合,する化合物を選択する工程を包含 する、 スクリ一二ング方法。
( 8 ) 上記がんが、 大腸がんまたは子宮頸がんである、 上記 (6 ) また は ( 7 ) に記載の方法。
(9) S RM Sタンパク質に対する抗体。
( 1 0 ) 上記 ( 9 ) に記載の抗体を含有するがん治療剤。
( 1 1 ) 放射性同位元素、 治療タンパク質、 低分子の薬剤、 または治療 遺伝子を担持したベクターをさらに含有する、 上記 ( 1 0 ) に記載のが ん治療剤。
( 1 2 ) 上記がんが、 大腸がんまたは子宮頸がんである、 上記 ( 1 0 ) または ( 1 1 ) に記載のがん治療剤。
( 1 3 ) 上記 ( 9 ) に記載の抗体を含有するがん診断剤。
( 1 4) S RM S遺伝子またはその一部の塩基配列にス トリンジェント なハイプリダイゼーション条件下でハイプリダイズ可能な塩基配列を含 有するがん診断剤。
( 1 5 ) 上記がんが大腸がんである、 上記 ( 1 3 ) または ( 1 4) に記 載のがん診断剤。
( 1 6 ) 上記 ( 9 ) に記載の抗体を含有するがん診断用キッ 卜。
( 1 7 ) S RM S遺伝子またはその一部の塩基配列にス トリンジェン卜 なハイプリダイゼーショ ン条件下でハイプリダイズ可能な塩基配列から なるポリヌクレオチドを含有するがん診断用キッ ト。
( 1 8 ) 上記がんが大腸がんである、 上記 ( 1 6 ) または ( 1 7 ) に記 載のがん診断用キッ ト。
( 1 9 ) 被験者由来の生体試料中の S RMSタンパク質または S RMS 遺伝子をがんマーガーとして検出および/または定量する方法。
( 2 0 ) 前記生体試料が、 全血、 血清、 または血漿である、 上記 ( 1
9 ) に記載の方法。
( 2 1 ) 質量分析装置を用いて、 S RM Sタンパク質を検出および/ま たは定量する、 上記 ( 1 9 ) または ( 2 0 ) に記載の方法。
(2 2 ) 抗 S RMS抗体を用いて、 S RM Sタンパク質を検出および Z または定量する、 上記 ( 1 9 ) 〜 ( 2 1 ) のいずれかに記載の方法。
(2 3 ) ( a) 被験者由来の生体試料と、 S RMSタンパク質に対する 抗体とを接触させる工程、 および
(b) 上記試料中での上記抗体と、 S RMSタンパク質との結合を検 出および または定量する工程、
を包含する、 上記 ( 2 2 ) に記載の診断方法。
(2 4) ( a) 被験者由来の生体試料と、 S RM S遺伝子またはその断 片の塩基配列にス 卜リンジェン卜なハイプリダイゼーション条件下でハ ィプリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドとを接触させる 工程、 および
(b) 上記試料中での上記ポリヌクレオチドと、 S RM S遺伝子また はその断片とのハイプリダイゼ一ションを検出および Zまたは定量する 工程、
を包含する、 上記 ( 1 9) または (2 0 ) に記載の方法。
(2 5 ) がんの診断に用いるための上記 ( 1 9 ) 〜 (2 4) のいずれか に記載の方法。
( 2 6 ) 前記がんが、 大腸がんである、 上記 ( 2 5 ) に記載の方法。
( 2 7 ) S RM S遺伝子の発現阻害物質を患者に投与する工程を包含す る、 がん治療方法。
( 2 8 ) S RM S夕ンパク質の活性阻害物質を患者に投与する工程を包 含する、 がん治療方法。
( 2 9 ) がんを治療するための医薬の製造のための、 S RMS遺伝子の 発現阻害物質の使用。
(3 0 ) がんを治療するための医薬の製造のための、 S RM Sタンパク 質の活性阻害物質の使用。
( 3 1 ) 配列番号 5、 配列番号 6、 配列番号 7、 配列番号 8、 配列番号 9、 または配列番号 1 0の塩基配列を有する、 ポリヌクレオチド。
( 3 2 ) S RM S遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん 治療剤であって、 配列番号 5、 配列番号 6、 配列番号 7、 配列番号 8、 配列番号 9、 または配列番号 1 0の塩基配列を有するポリヌクレオチド を含有する、 がん治療剤。
本発明により、 がん (例えば、 大腸がん) の治療およびノまたは診断 に有用な新規な薬剤、 キッ トおよび方法、 ならびにがん抑制作用を有す る候補化合物のスクリ一ニング方法が提供される。 図面の簡単な説明
図 1は、 S RM S遺伝子の大腸がん患者由来の 2 0 0検体における遺 伝子増幅度に対する頻度を示すヒス トグラムである。
図 2は、 (A) 大腸がん細胞株 C a c o 2、 および (B) 大腸がん細 胞株 RKOに、 S RMS遺伝子の s i RNAをトランスフエク トした場 合の、 RN A i解析の結果を示す光学顕微鏡写真(位相差像)である。 図 3は、 (A) 大腸がん細胞株 C a c o 2、 および (B) 大腸癌細胞 株 RKOに S RMS遺伝子の s i RNAをトランスフエク トした場合の、 生細胞数測定による RNA i効果を評価した結果を示すグラフである。 図 4は、 大腸正常組織由来の細胞株 C C D 1 8 C oに S RM S遺伝子 の s i RNAを トランスフエク 卜した場合の、 RNA i効果を光学顕微 鏡により検証した結果を示す写真(位相差像)である。
図 5は、 大腸正常組織由来の細胞株 C CD 1 8 C oに S RMS遺伝子 の s i RNAを トランスフエク 卜した場合の、 RNA i効果を生細胞数 測定により検証した結果を示すグラフである。
図 6は、 FISH 法で解析した大腸癌患者由来の検体組織のがん細胞の 一部 ( 6細胞分) の光学顕微鏡写真(蛍光像)である。
図 7 Aおよび Bは、 質量分析により解析した (A) 大腸がん患者由来 の血清および (B) 健常者由来の血清についての結果をそれぞれ示すグ
ラフである。
図 8 A〜Cは、 M S/M S解析によって決定された、 図 7に示すピー クとアミノ酸 (またはアミノ酸配列) との対応関係を示す。
図 9は、 子宮頸癌細胞株 HeLa 細胞,株に S R M S遺伝子の s i R N A をトランスフエク トした場合の、 R N A i効果を生細胞数測定により検 証した結果を示すグラフである。
図 1 0は、 図 9の実験を時系列に従い、 顕微鏡下で撮影し、 その動態 を詳細に観察した結果を示す光学顕微鏡写真(微分干渉像)である。 発明を実施するための最良の形態
本発明者らは、 大腸がん患者由来の検体を用いてアレイ C GH法によ る増幅遺伝子の検証を行い、 大腸がん特異的な遺伝子増幅領域を特定し た。 検体において高頻度に増幅が起きている領域のうち、 ヒ ト S RMS (S r c— r e l a t e d k i n a s e l a c k i n C— t e r m i n a 1 r e g u l a t o r y t y r o s i n e a n d N — t e r m i n a l my r i s t y l a t i o n s i t e s ) 遺伝 子が大腸がん患者由来の検体において高頻度であることを見出した。
S RMSは.、 非受容体型のチロシンキナーゼ (NR— P TK) であり、 S r c h omo l o g y ( S H) ドメインを持つ S r cファミ リーメ ンバーである (K o hmu r a, N. , e t a 1. ( 1 9 9 4) M o 1 C e l l B i o l . 1 4 ( 1 0) , 6 9 1 5 - 2 5 ) 。
c— s r cは、 R o u s s a r c omaウィルスのがん原遺伝子と して同定された非受容体型のチロシンキナーゼであり、 : ^ama g u c h i 7 3および E s h s a r c oma、 ならびに He l i n e G_ a r d n e r - R_a s h e e d s a r c o m aでそれぞれ同定された c一 y e sおよび c— / ,、 ならびに I c k、 f y π、 1 y n、 h c k、 b 1 k、 および y " と共通のドメイン構造を持つことから、 S r cファミ リ一として知られている (H a n k s , S . K. , e t a 1. ( 1 9 8 8 ) S c i e n c e 24 1 , 42 - 5 2 ; H o i t z m a n ,
D. A. , e t a 1. ( 1 9 8 7 ) P r o c . N a t l . A c a d. S c i . U S A 8 4 , 8 3 2 5 - 8 3 2 9 ; H u n t e r , T. ( 1 9 9 1 ) M e t h o d s E n z ymo l . 2 0 0 , 3 - 3 3 ; V e t r i e , D . , e t a 1. ( 1 9 9 3 ) N a t u r e 3 6 1 , 2 2 6— 2 3 3 ) 。
S r c ファミリ一は、 非受容体型のチロシンキナーゼであり、 分子量 δ 0〜 6 0 k D a前後のタンパク質である。 その共通のドメイン構造は、 N末端側から、 細胞膜への局在に必要なミリスチン酸が結合するグリシ ン残基を含む S H 4 ドメイン、 S r cファミ リ一間で保存されていない ユニーク ドメイン、 プロリンに富む配列を認識する S H 3 ドメイン、 リ ン酸化チロシンを認識する S H 2 ドメイン、 およびキナーゼドメインで ある S H 1キナ (ーゼ活性の制御に重要な調節領域から構成される。
S RM Sは、 S r cファミリ一で見られる N末端側の S H 4 ドメイン にあるグリシン残基が無い。 このため、 ミ リスチン酸の付加がなく、 細 胞膜には局在せずに細胞質に局在する。 また、 C末端側の調節領域にあ るチロシン残基がない。 このため、 他のファミ リーでは C s k ( C - t e r m i n a 1 S r c k i n a s e ) により リン酸化されて不活性 化される (N a d a, S . , e a 1. ( 1 9 9 3 ) C e l l 7 3, 1 1 2 5 - 1 1 3 5 ; O k a d a, M. , e t a 1. ( 1 9 9 1 ) J . B i o l . C h e m. 2 5 6 , 2 4 2 4 9— 2 4 2 5 2 ) 力 S RM Sは C s kの調節を受けないことが推定されている。
S r c ファミ リ一は、 がん化における役割、 血球系や神経系などの細 胞の増殖 · 分化 · 機能に関わる重要な細胞内シグナル伝達分子として知 られているが、 S RM Sについてはその機能の詳細は未知である。 現在 のところ、 他の S r cファミ リ一同様、 重要な細胞内シグナル伝達分子 であると考えられている。
S RM Sの発現については、 準定量的 P C Rアツセィにより、 正常組 織の十二指腸に中程度の発現、 精巣に低レベルの発現が認められるが、 その他 (脳、 心臓、 腎臓、 肺、 膝臓、 胎盤、 唾液腺、 骨格筋、 脾臓、 胃、
胸腺、 小脳、 肝臓、 子宮、 前立腺) では認められていない。 一方、 がん 由来細胞株においては、 結腸腫瘍細胞株 (HC T_ 1 5, SW4 8 0 , ΗΤ - 2 9 ) 、 卵巣がん ( I G R Ο V 1 ) 、 盲腸原発がん ( S NU— C 2 Β) では高い発現が報告されている、 (特表 2 0 0 2— 5 1 3 2 8 9) 。 また、 酵母で発現し調製した S RM S力 i n / oの変性エノ ラーゼ及びポリ— G 1 u— T y rを用いたアツセィにより リン酸化活性 をもつことが報告されている (特表 2 0 0 2— 5 1 3 2 8 9) 。
本発明者らは、 S RM S遺伝子の発現を RNA i (RNA干渉) によ つて抑制することによってがん細胞の増殖を抑制できることも確認した。 したがって、 S RMS遺伝子の発現を抑制することによって、 がんを治 療することが可能となる。 また、 S RM S遺伝子の発現量を測定するこ とによってがんの診断を行うことも可能となる。
以下、 本発明のがん治療剤、 スクリーニング方法、 診断剤などについ て詳細に説明する。
1. がん抑制作用を有する薬剤
まず、 本発明は、 ( 1 ) S RMS遺伝子の発現阻害物質を有効成分と して含有するがん治療剤、 及び ( 2 ) S RM Sタンパク質の活性阻害物 質を有効成分として含有するがん治療剤を提供する。
本明細書中、 「S RM S遺伝子」 という場合、 . NC B I ヌクレオチド データベースにおいて、 A c c e s s i o n N o . : NM— 0 8 0 8 2 3で登録されている 1 5 1 6塩基からなるヒ ト S RM S遺伝子 (配列 番号 1 ) を意味するが (文献 (K o hmu r a , N. , e t a I . ( 1 9 94 ) M o 1 C e l l B i o l . 1 4 ( 1 0) , 6 9 1 5 - 2 5 ) ) , これに限定されず、 例えば、 当該遺伝子の塩基配列におい て 1つ以上の塩基の置換、 欠失、 付加、 または挿入などを有することに よって変化している変異体のような、 当該遺伝子の塩基配列またはその 相補配列にス トリンジェ.ン卜なハイブリダイゼーション条件下でハイブ リダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドからなる遺伝子も本
明細書中で使用する 「S RMS遺伝子」 に含まれるものとする。
ハイプリダイゼーシヨンは、 公知の方法あるいはそれに準じる方法、 例えば、 モレキュラー ' クローニング (Mo 1 e c u 1 a r C 1 o n i n g T h i r d E d i t i o n , J . S amb r o o k e t a 1. , C o l d S p r i n g H a r b o r L b. P r e s s . 2 0 0 1 ) に記載の方法などに従って行う とができる。 また、 市販のライブラリーを使用する場合、 添付の使用説明書に記載の方法に 従って行う ことができる。 ここで、 「ス トリンジェン卜な条件」 は、 低 ストリンジェン卜な条件、 中ス 卜リンジェン.卜な条件及び高ス トリンジ ェントな条件のいずれでもよい。 「低ス トリンジ ントな条件」 は、 例 えば、 5 X S S C、 5 Xデンハルト溶液、 0. 5 % S D S、 5 0 %ホル ムアミ ド、 3 2での条件である。 また、 「中ス トリ ンジェン卜な条件」 は、 例えば、 5 X S S C、 5 Xデンハルト溶液、 0. 5 % S D S、 5 0 %ホルムアミ ド、 4 2 °Cの条件である。 「高.ス ト リ ンジェン 卜な条 件」 は、 例えば、 5 X S S C、 5 Xデンハルト溶液、 0. 5 % S D S、 5 0 %ホルムアミ ド、 5 0 の条件である。 これらの条件において、 温 度を上げるほど高い相同性を有する DN Aが効率的に得られることが期 待できる。 ただし、 ハイブリダィゼーシヨンのス トリンジエンシーに影 響する要素としては温度、 プローブ濃度、 プローブの長さ、 イオン強度、 時間、 塩濃度など複数の要素が考えられ、 当業者であればこれら要素を 適宜選択することで同様のス トリンジエンシーを実現することが可能で ある。
ハイブリダィズ可能なポリヌクレオチドとしては、 FA S TA、 B L A S Tなどの相同性検索ソフトウェアにより、 デフォルトのパラメ一夕 一を用いて計算したときに、 配列番号 1の塩基配列と、 例えば、 7 0 % 以上、 7 5 %以上、 8 0 %以上、 8 5 %以上、 9 0 %以上、 9 1 %以上、 9 2 %以上、 9 3 %以上、 9 4 %以上、 9 5 %以上、 9 6 %以上、 9 7 %以上、 9 8 %以上、 .9 9 %以上の同一性を有するポリヌクレオチド をあげることができる。
本明細書中、 「遺伝子の発現阻害」 とは、 遺伝子からタンパク質生成 までの一連の事象 (例えば、 転写 (mRNAの生成) 、 翻訳 (タンパク 質の生成) を含む) のうちのいずれかの事象を阻害することによってそ の遺伝子によってコ一ドされるタンパ、ク質の生成を阻害することを意味 するものとする。
本明細書中、 「S RMSタンパク質」 という場合、 NC B Iタンパク 質デ一夕ベースにおいて、 A c c e s s i o n N o. : N P— 54 3 0 1 3で登録されている 4 8 8アミノ酸残基からなるヒ ト S RMSタン パク質 (配列番号 2 ) およびこのタンパク質と実質的に同質の活性 (例 えば、 標的タンパク質のチロシン残基のリン酸化、' 自己リン酸化活性か ら選択される一種以上の活性) を保持し、 このタンパク質のアミノ酸配 列に対して 1〜複数個のアミノ酸残基の欠失、 置換、 挿入、 及び また は付加が生じたアミノ酸配列からなる変異タンパク質をいう。
上記変異タンパク質における、 アミノ酸の変異部位および個数は、 変 異タンパク質が元のタンパク質と実質的に同質の活性を保持している限 り特に制限はないが、 変異個数は、 例えば、 1〜 5 0個、 1〜4 0個、 ;!〜 3 0個、 :!〜 2 5個、 ;!〜 2 0個、 :!〜 1 5個、 1〜: 1 0個、 :!〜 9個、 :!〜 8個、 1〜 7個、 :!〜 6個 ( 1〜数個) 、 1〜 5個、 :!〜 4 個、 1〜 3個、 1〜 2個、 1個である。 変異個数は一般的に少ない程好 ましい。 また、 .このような変異タンパク質は、 配列番号 2のアミノ酸配 列と約 7 0 %以上、 7 5 %以上、 8 0 %以上、 8 5 %以上、 9 0 %以上、 9 1 %以上、 9 2 %以上、 9 3 %以上、 9 4 %以上、 9 5 %以上、 9 6 %以上、 9 7 %以上、 9 8 %以上、 9 9 %以上の同一性を有するアミ ノ酸配列を有し、 かつ元のタンパク質と実質的に同質の活性を有する夕 ンパク質を含む。 上記相同性の数値は一般的に大きい程好ましい。
上記 S R M Sタンパク質には、 S RM Sタンパク質の 「部分べプチ ド」 も含まれる。 S RM Sタンパク質の部分ペプチドとしては、 S RM Sタンパク質のアミノ酸配列 (配列番号 2 ) の一部の連続するアミノ酸 の配列からなる部分ペプチドであって、 好ましくは、 前述の S RMS夕
ンパク質の活性と同様の活性を有するものであればいずれのものでも良 レ 例えば、 配列番号 2で表されるアミノ酸配列において、 少なく とも 2 0個、 好ましくは少なく とも 5 0個、 さらに好ましくは少なく とも 7 0個、 より好ましくは少なくとも 1 0 0個、 最も好ましくは少なくとも 2 0 0個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有するポリべプチドな どが挙げられる。 好ましくは、 これらのポリペプチドは、 S RM Sタン パク質の活性に関与する部分に対応するアミノ酸配列を含有する。 また、 本発明で使用される部分ペプチドは、 上記のポリペプチドにおいて、 そ のアミノ酸配列中の 1または複数個 (例えば、 1〜 2 0個程度、 より好 ましくは 1〜 1 0個程度、 さらにより好ましくは Γ〜 5個程度) のアミ ノ酸残基が欠失、 付加、 置換、 または挿入により変更されているもので もよい。
本発明で用いる S RM Sタンパク質は、 そのタンパク質を発現してい る細胞や組織から調製することができる。 また、 .これらのタンパク質は、 公知のペプチド合成機によっても合成できるし、 原核生物あるいは真核 生物から選択される適当な宿主細胞を用いた組換え方法によっても調製 することができる。 本発明で用いる S RM Sタンパク質は、 いずれの種 由来のものでもよいが、 好ましくはヒ ト由来である。
「実質的に同質の活性」 とは、 それらの活性が性質的に同等であるこ とを示す。 したがって、 酵素活性 (標的タンパク箅のチ口シン残基のリ ン酸化、 自己リン酸化など) が同等 (例えば、 約 0 · 0 1〜 1 0 0倍、 好ましくは約 0. 5〜 2 0倍、 より好ましくは約 0. 5〜 2倍) である ことが好ましいが、 これらの活性の程度やタンパク質の分子量などの量 的要素は異なっていてもよい。 酵素活性の測定は、 既存のアツセィ、 例 えば W 09 6 /40 2 7 6 ( 1 9 9 6年 1 2月 1 9 日公開) および W Ο 9 6 / 1 44 3 3 ( 1 9 9 6年 5月 1 7 日公開) などの文献に記載の公 知の方法に準じて行うことができるが、 例えば、 後に記載するスクリー ニング方法に従って測定することができる。
なお、 アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、 カーリンおよびアルチュ
—ルによるアルゴリズム B LA S T ( p r o c . N a t 1. A c a d. S c i . U S A 8 7 2 2 6 4 - 2 2 6 8 , 1 9 9 0 ; p r o c . N a t l . A c a d. S c i U S A 9 0 : 5 8 7 3 , 1 9 9 3 ) を用いて決定できる。 B LA S Tのアルゴリズムに基づいた B L A S Τ Nや B LA S TXと呼ばれるプログラムが開発されている ( A 1 t s c h u 1 S F , e t a 1 : J M o l B i o l 2 1 5 : 40 3, 1 9 9 0 ) 。 B LAS T Nを用いて塩基配列を解析する場合は、 ノ\°ラメ一夕一は、 例えば s c o r e = 1 0 0、 wo r d l e n g t h = 1 2とする。 また、 B LAS TXを用いてァミノ酸配列を解析する場合 は、 ノ ラメ一夕一は、 例えば s c o r e = 5 0、 o r d 1 e n g t h = 3とする。 B LA S Tと G a p p e d B LA S Tプログラムを用い る場合は、 各プログラムのデフォルトパラメ一夕一を用いる。
本明細書中、 「がん治療剤」 という用語は、 抗癌剤、 癌転移阻害剤、 癌細胞のアポトーシス誘導剤、 癌細胞の増殖抑制剤、 癌細胞の浸潤抑制 剤、 がん予防剤等を含む意味で使用される。 なお、 本願明細書中、 用語 「癌 (または、 がん) 」 と 「腫瘍」 とは同じ意味を有する用語として使 用される。
1. 1 S RMS遺伝子の発現阻害物質を含有するがん治療剤
本発明は、 1つの実施形態において、 S RM S遺伝子の発現阻害物質 を有効成分として含有するがん治療剤を提供する。
本明細書中、 「S RM S遺伝子の発現阻害物質」 には、 S RMS遺伝 子の発現を阻害するものであれば制限はないが、 例えば、 ( i ) S RM
S遺伝子から S RM S mR N Aへの転写を阻害する物質、 および ( i i ) S RM S mR N Aから S RM Sタンパク質への翻訳を阻害する物 質が含まれる。
S RMS遺伝子から S RMS mRNAへの転写を阻害する物質の例 としては、
( a ) S RMS遺伝子またはその一部に対するアンチセンス核酸、
(b) S RM S遺伝子またはその一部に対するデコイ核酸、
(c ) S RMS遺伝子またはその一部に対してドミナン卜ネガティブに 作用する S RMS遺伝子変異体、 あるいは
(d) その他の転写阻害化合物
などが含まれる。
また、 S RM S mR N Aから S RM Sタンパク質への翻訳を阻害す る物質の例としては、
( e ) S RMS mRN Aまたはその一部に対して RNA i作用を有す るポリヌクレオチド (例えば、 s i RNA) 、
( f ) S RMS mRNAまたはその一部に対するアンチセンスポリヌ クレオチド、
( g ) S RMS mR N Aまたはその一部に対してリボザィム活性を有 するポリヌクレオチド、 あるいは
(h) その他の翻訳阻害化合物
などが含まれる。
本明細書中、 「核酸」 とは R N Aまたは DN Aを意味する。 ここでい う 「核酸」 は、 プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、 修 飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいてもよい。 こうした修飾物は、 メチル化されたプリンおよびピリミジン、 ァシル化 されたプリンおよびピリミジン、 ァシル化されたプリンおよびピリミジ ン、 あるいはその他の複素環を含むものであって良い。 修飾されたヌク レオシドおよび修飾されたヌクレオチドはまた、 糖部分が修飾されてい て良く、 例えば、 1個以上の水酸基がハロゲンとか、 脂肪族基などで置 換されているか、 あるいはエーテル、 ァミンなどの官能基に変換されて いてよい。
本発明のがん治療剤においては、 S RM S遺伝子の発現を RN A i効 果により阻害する作用を有する核酸を有効成分として用いることができ る。 RNA i とは、 標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有す る二重鎖 RNAを細胞内に導入すると、 導入した外来遺伝子および標的
内在性遺伝子の発現がいずれも阻害される現象のことをいう。 ここで用 いられる R N Aとしては、 例えば、 1 9〜 3 0塩基長の R N A干渉を生 ずる二重鎖 RNA、 例えば、 d s RNA (d o u b 1 e s t r a n d R N A ) 、 s i R N A ( s m a 1 1 i n t e r f e r i n g R N A) 又は s h RNA ( s h o r t h a i r p i n R N A) が挙げら れる。 このような RNAは、 リボソームなどの送達システムにより所望 の部位に局所送達させることも可能であり、 また上記二重鎖 RN Aが生 成されるようなベクタ一を用いてこれを局所発現させることができる。 このような二重鎖 RNA ( d s RNA、 s i RNAまたは s h R N A) の調製方法、 使用方法などは、 多くの文献から公知である (特表 2 0 0 2 - 5 1 6 0 6 2号 ; 米国公開許第 2 0 0 2 / 0 8 6 3 5 6 A号 ; a t u r e G e n e t i c s , 2 4 ( 2 ) , F e b. ,
0 - 1 8 3 ; G e n e s i s , 2 6 (4) , Ap r i l ,
0 - 2 44 ; N a t u r e , S p e . 2 1, 4 0 7 : 6 8 0 2
9一 2 0 ; G e n e s & D e v . , V o l . 1 6 , (
Ap r . 1 6, 94 8 - 9 5 8 ; P r o c . N a t l . A c
S c i . U S A. , 9 9 ( 8 ) , 1 6 A p r . , 5 5 1 5
2 0 ; S c i e n c e , 2 9 6 ( 5 5 6 7 ) , 1 9 A p
5 5 0 - 5 5 3 ; P r o c N a t l . A c a d. S c i
S A, A p r . 3 0 , 9 9 : 9 , 6 04 7 - 6 0 5 2 ; N r e B i o t e c h n o l o g y, V o l . 2 0 ( 5 ) , y , 4 9 7 - 5 0 0 ; N a t u r e B i o t e c h n o l o
V o l . 2 0 ( 5 ) , M a y, 5 0 0 - 5 0 8 ; N u c l
A c i d s R e s . , M a y 1 5など) 。
本発明で用いられる R N A i効果を奏する二重鎖 R N Aの長さは、 通 常、 1 9〜 3 0塩基、 好ましくは 2 0〜 2 7塩基、 より好ましくは 2 1 〜 2 5塩基、 最も好ましくは 2 1〜 2 3塩基である。 本発明においては、 具体的には、 下記 s i RNA (実施例 3で使用) を用いることができる。
(表 1 )
s i R N A配列
本明細書中、 「アンチセンス核酸」 、 または 「アンチセンス リヌク レオチド」 とは、 ある対象となる DNA領域の少なくとも一部に相補的 なポリヌクレオチドを有し、 そのポリヌクレオチドが当該領域の少なく とも一部とハイプリダイズすることができる核酸のことをいう。 本発明 のアンチセンス核酸は、 RNA、 DNA、 あるいは修飾された核酸 (R NA、 DNA) である。 本発明のアンチセンス核酸は、 RNA、 DNA, あるいは修飾された核酸 (RNA、 DNA) である。 それらは二本鎖 D NA、 一本鎖 DNA、 二本鎖 RNA、 一本鎖 RNA、 さらに DNA : R N Aハイブリ ッ ドであってもよい。 修飾された核酸の具体例としては、 核酸の硫黄誘導体ゃチォホスフエ一卜誘導体、 さらにはポリヌクレオチ ドアミ ドゃオリゴヌクレオチドアミ ドの分解に抵抗性を有するものなど が挙げられるが、 それらに限定されるものではない。
使用されるアンチセンス核酸は、 適当なプロモーターの下流に連結さ れ、 好ましくは 3 ' 側に転写終結シグナルを含む配列が連結される。 こ のようにして調製された核酸は、 公知の方法を用いることで、 所望の動 物へ形質転換できる。 アンチセンス核酸の配列は、 形質転換される動物 が持つ内在性遺伝子またはその一部と相補的な配列であることが好まし いが、 遺伝子の発現を有効に抑制できる限りにおいて、 完全に相補的で なくてもよい。
例えば、 S RM S遺伝子の mR N Aの 5 ' 端近傍の非翻訳領域に相補 的なアンチセンス配列を設計すれば、 遺伝子の翻訳阻害に効果的である。 コ一ド領域もしくは 3 ' 側の非翻訳領域に相補的な配列も使用すること ができる。 遺伝子の翻訳阻害に効果的なアンチセンス核酸は、 標的遺伝 子の転写産物に対して約 7 0 %以上、 好ましくは約 8 0 %以上、 より好 ましくは約 9 0 %以上、 最も好ましくは約 9 5 %以上の相補性を有する。 アンチセンス核酸を用いて標的遺伝子の発現を効果的に抑制するには、 アンチセンス核酸の長さは少なくとも約 1 0塩基以上 (例えば、 1 0〜 40個程度) 、 好ましくは約 1 5塩基以上であり、 より好ましくは約 1 0 0塩基以上であり、 さらに好ましくは約 5 0 0塩基以上である。 アン チセンス核酸は公知の文献を参照して設計することができる (例えば、 平島および井上、 新生化学実験講座 2 核酸 I V遺伝子の複製と発現、 日本生化学会編、 東京化学同人、 1 9 9 3、 p . 3 1 9 - 3 4 7 ) 、 J . K a w a k a m i e t a 1 . , P h a r m T e c h J a p a n . V o l . 8 , p . 2 4 7 , 1 9 9 2 ; V o 1. 8, p. 3 9 5 , 1 9 9
2 ; S . T . C r o o k e e t a l . , e d. , An t i s e n s e R e s e a r c h a n d Ap p l i c a t i o n s , C R C P r e s s , 1 9 9 3など参照) 。
また、 本発明のがん治療剤においては、 S RM S遺伝子の転写産物を 特異的に切断するリボザィム活性を有する核酸を有効成分として用いる ことができる。 こごでいう 「リボザィム活性」 とは、 ターゲッ トとする 遺伝子の転写産物である mR N Aを部位特異的に切断する核酸のことを いう。 リボザィムには、 グループ Iイントロン型や R N a s e Pに含ま れる M l RNAのように 40 0ヌクレオチド以上の大きさのものもあ る力 ハンマーヘッ ド型やヘアピン型と呼ばれる 4 0ヌクレオチド程度 の活性ドメインを有するものもある (タンパク質核酸酵素、 1 9 9 0、
3 5、 p . 2 1 9 1 ) 。 ノ、ンマーヘッ ド型リポザィムについては、 例え ば、 F E B S L e t t , 1 9 8 8, 2 2 8 , p . 2 2 8 ; F E B S L e t t , 1 9 8 8, 2 3 9 , p. 2 8 5 ; タンパク質核酸酵素, 1 9
9 0, 3 5 , p . 2 1 9 1 ; N u c 1 A c i d s R e s , 1 9 8 9 , 1 7, p. 7 0 5 9などを参照することができる。 また、 ヘアピン型リ ボザィムについては、 例えば、 N a t u r e , 1 9 8 6, 3 2 3, p . 34 9 ; N u c 1 A c i d s R e s , 1 9 9 1, 1 9, p. 6 7 5 1 ; 菊池洋, 化学と生物, 1 9 9 2 , 3 0 , p . 1 1 2などを参照する ことができる。 このようなリボザィムを用いて本発明における S RM S 遺伝子の転写産物を特異的に切断することで、 該遺伝子の発現を阻害す ることができる。
さらに、 本発明は、 S RMS遺伝子の転写活性を阻害する核酸以外の 化合物を有効成分として用いることができる。 そのような化合物は、 例 えば、 S RMS遺伝子の発現 · 転写に関与する因子に結合する化合物で ある。 このような化合物は、 天然物でも合成化合物でもよい。 このよう な化合物は、 後述のスクリーニング方法によって、 取得することが可能 である。
1. 2 S RMSタンパク質の活性阻害物質を含有するがん治療剤
本発明はまた、 別の実施形態において、 S RM Sタンパク質の活性阻 害物質を含有するがん治療剤を提供する。
本明細書中、 「 S RM Sタンパク質の活性阻害物質」 には、 例えば、 ( a) S RM Sタンパク質に結合する抗体、
(b) S RM Sタンパク質に対してドミナン卜ネガティブの性質を有 する S RM Sタンパク質変異体、 あるいは
(c ) S RM Sタンパク質に結合する化合物 (上記抗体および変異体 を除く)
などが含まれる。
本明細書における 「抗体」 とはタンパク質の全長又は断片に反応する 抗体を意味する。 本発明の抗体の形態には、 特に制限はなく、 本発明の S RM Sタンパク質に結 する限り、 上記ポリクローナル抗体、 モノク ローナル抗体のほかに、 ヒ ト抗体、 遺伝子組み換えによるヒ ト型化抗体、
さらにその抗体断片や抗体修飾物も含まれる。 S RM Sタンパク質に結 合する抗体 (抗 S RMS抗体) は、 当業者に公知の方法により調製する ことが可能である。 なお、 抗 S RM S抗体の詳細については後述する。 本明細書における 「S RMSタンパク質に対してドミナントネガティ ブの性質を有する S RM Sタンパク質変異体」 とは、 それをコードする 遺伝子を発現させることによって、 内在性の野生型 S RMSタンパク質 の活性を消失もしくは低下させる機能を有するタンパク質を指す (土田 邦博著、 遺伝子の活性阻害実験法 多比良和誠編、 羊土社 ( 2 0 0 1 ) 2 6一 3 2など参照) 。
さらに、 本発明においては、 S R M Sタンパク質の活性を阻害し得る 物質として、 S RM Sタンパク質に結合する、 上記抗体または変異体以 外の化合物を有効成分として用いることができる。 そのような化合物は、 例えば、 S RM Sタンパク質に結合し、 その活性を阻害する化合物であ る。 S RM Sタンパク質 (キナーゼ)の機能を吗害すると報告されてい る分子の例としては、 ビス一環、 二環または複素環芳香族化合物 (WO 9 2/ 2 0 64 2 (M a g u i r e , 1 9 9 2年 1 1月 2 6 日公開) ) 、 ビニレン—ァザィンドール誘導体 (W0 94 Z 1 4 8 0 8 ( B a 1 1 i n a r i ら、 1 9 9 4年 7月 7 日公開) ) 、 1 —シクロプロピル一 4一 ピリジルキノロン類 (米国特許 5 , 3 3 0, 9 9 2 ) 、 スチリル化合物 (米国特許 5 , 2 1 7, 9 9 9 ) 、 スチリル置換ピリジル化合物 (米国 特許 5 , 3 0 2 , 6 0 6 ) 、 ある種のキナゾリ ン誘導体 (欧州特許出願 0 5 6 6 2 6 6 A 1 ) 、 セレノインドール類およびセレニド類 (WO 9 4 / 0 34 2 7 (D e n n yら、 1 9 9 4年 2月 1 7 日公開) ) 、 三環 ポリヒ ドロキシ化合物 (W〇 9 2 2 1 6 6 0 (D ow, 1 9 9 2年 1 0月 1 0日公開) ) 、 およびべンジルホスホン酸化合物 (WO 9 1 / 1 54 9 5 (D owら、 1 9 9 1年 1 0月 1 7 日公開) ) が挙げられる力 これらに限定されない。 このような化合物は、 天然物でも合成化合物で もよい。 このような化合物は、 後述のスクリーニング方法によって、 取 得することが可能である。
上記した本発明の S RM Sタンパク質の活性を阻害し得る物質は、 が ん治療剤として使用することができる。
2. S RM Sタンパク質の活性もしくは発現を阻害する物質のスクリ —ニング方法
本発明は、 がん抑制作用を有する候補化合物のスクリーニング方法を も提供する。
一つの好ましい態様は、 S RMSタンパク質と被検化合物との結合を 指標とする方法である。 通常、 S RMSタンパク質と結合する化合物は、 S RM S夕ンパク質の活性を阻害する効果を有することが期待される。 ここで、 該化合物は、 S RM Sタンパク質の活性部位に結合することが 好ましい。 本方法においては、 まず、 S RM Sタンパク質と被検化合物 とを接触させる。 S RM Sタンパク質は、 被検化合物との結合を検出す るための指標に応じて、 例えば、 S RM Sタンパク質の精製された形態、 細胞内または細胞外に発現した形態、 あるいはァフィ二ティーカラムに 結合した形態であり得る。 この方法に用いる被検化合物は必要に応じて 適宜標識して用いることができる。 標識としては、 例えば、 放射標識、 蛍光標識等を挙げることができる。
本方法においては、 次いで、 S RM Sタンパク質と被検化合物との結 合を検出する。
本方法に用いる被検化合物としては、 特に制限はない。 例えば、 天然 化合物、 有機化合物、 無機化合物、 タンパク質、 ペプチドなどの単一化 合物、 並びに、 化合物ライブラリー、 遺伝子ライブラリーの発現産物、 細胞抽出物、 細胞培養上清、 発酵微生物産生物、 海洋生物抽出物、 植物 抽出物等が挙げられるが、 これらに限定されない。
S RM Sタンパク質と被検化合物との結合は、 例えば、 S RM Sタン パク質に結合した被検化合物に付された標識によって検出することがで きる。 また、 細胞内または細胞外に発現している S RM Sタンパク質へ の被検化合物の結合により生じる S RMSタンパク質の活性の変化を指
標として検出することもできる。 タンパク質と被検化合物との結合活性 は、 公知の手法によって測定することができる (例えば、 抗リン酸化抗 体やリ ン酸の放射性同位元素 (P 3 2 Pや P 33など) を利用した、 E L I S A法、 免疫沈降法、 ウエスタンプロッ ト法やそれらの組み合わせな どが挙げられるが、 これらに限定されない。 ) 。
本方法においては、 次いで、 S RM Sタンパク質と結合し、 その活性 を阻害する被検化合物を選択する。
本方法により単離される化合物は、 がん抑制作用を有することが期待 され、 がん治療剤として有用である。
本発明のスクリーニング方法の他の態様は、 S RMS遺伝子の発現を 指標とする方法である。
本方法においては、 まず、 S RM S遺伝子を発現する細胞に、 被検化 合物を接触させる。 用いられる 「細胞」 の由来としては、 ヒ 卜、 マウス、 ネコ、 ィヌ、 ゥシ、 ヒッジ、 トリなど、 ペッ ト、 家畜等に由来する細胞 が挙げられるが、 これら由来に制限されない。 「S RM S遺伝子を発現 する細胞」 としては、 内因性の S RMS遺伝子を発現している細胞、 ま たは外因性の S RM S遺伝子が導入され、 該遺伝子が発現している細胞 を利用することができる。 外因性の S RM S遺伝子が発現した細胞は、 通常、 それぞれ S RMS遺伝子が挿入された発現ベクターを宿主細胞へ 導入することにより作製することができる。 該発現べクタ一は、 一般的 な遺伝子工学技術によって作製することができる。
本方法に用いる被検化合物としては、 特に制限はないが、 例えば、 天 然化合物、 有機化合物、 無機化合物、 タンパク質、 ペプチドなどの単一 化合物、 並びに、 化合物ライブラリー、 遺伝子ライブラリーの発現産物、 細胞抽出物、 細胞培養上清、 発酵微生物産生物、 海洋生物抽出物、 植物 抽出物等が用いられる。
S RMS遺伝子を発現する細胞への被検化合物の 「接触」 は、 通常、 それぞれ S RM S遺伝子を発現する細胞の培養液に被検化合物を添加す ることによって行う力 この方法に限定されない。 被検化合物がタンパ
ク質等の場合には、 該タンパク質を発現する D N Aベクターを、 該細胞 へ導入することにより、 「接触」 を行うことができる。
本方法においては、 次いで、 該 S RM S遺伝子の発現レベルを測定す る。 ここで 「遺伝子の発現」 には、 転写および翻訳の双方が含まれる。 遺伝子の発現レベルの測定は、 当業者に公知の方法によって行うことが できる。 例えば、 S RMS遺伝子を発現する細胞から mRNAを常法に 従って抽出し、 この mRNAを铸型としたノーザンハイプリダイゼ一シ ヨン法または R T— P C R法を実施することによって該遺伝子の転写レ ベルの測定を行うことができる。 あるいは、 S RMS遺伝子のプロモー 夕一領域を常法に従って単離し、 その下流に標識遺伝子 (例えば、 ルシ フェラ一ゼ、 G F P、 ガラク トシダ一ゼ等の発光、 蛍光、 発色などを指 標に検出可能な遺伝子が挙げられるが、 これらに限定されない) をつな げ、 その標識遺伝子の活性を見ることによっても該遺伝子の転写レベル の測定を行うことができる。 また、 S RMS遺 子を発現する細胞から タンパク質画分を回収し、 それぞれ S RMSタンパク質の発現を S D S _ PAGE等の電気泳動法で検出することにより、 遺伝子の翻訳レベル の測定を行うこともできる。 さらに、 S RM Sタンパク質に対する抗体 を用いて、 ウエスタンプロッティ ング法を実施することにより該タンパ ク質の発現を検出することにより、 遺伝子の翻訳レベルの測定を行うこ とも可能である。 S RMSタンパク質の検出に用いる抗体としては、 検 出可能な抗体であれば、 特に制限はないが、 例えばモノクローナル抗体、 またはポリクローナル抗体の両方を利用することができる。
本方法においては、 次いで、 被検化合物を接触させない場合 (コント ロール) と比較して、 該発現レベルを低下させる化合物を選択する。 こ のようにして選択された化合物は、 がん治療剤のための候補化合物とな る。
3. 抗 S RM S抗体及びこの抗体を含有する治療剤、 複合体および組 成物
本発明はまた、 抗 S RMS抗体、 この抗体を含有するがん治療剤など を提供する。 本発明の 1つの好ましい態様では、 上記がん治療剤は、 が んの標的化療法または標的化薬物送達のために使用される。 3. 1 抗 S RM S抗体
本明細書中、 「抗 S RMS抗体」 には、 S RMSタンパク質 (その断 片 (部分ペプチド) もしくはその塩を含む) に特異的に結合する抗体が 含まれる。 本発明において使用する抗 S RMS抗体は、 ポリクローナル 抗体であってもよいし、 モノクローナル抗体であってもよい。 抗体のク ラスは、 特に限定されず、 I g G、 I gM、 I gA'、 I g D、 または I g E等のいずれのアイソタイプを有する抗体をも包含する。 好 しくは、 I g Gまたは I gMであり、 精製の容易性等を考慮すると、 より好まし くは I g Gである。 また、 ここでいう 「抗体」 という用語は、 任意の抗 体断片または誘導体を含む意味で用いられ、 例え.ば、 F a b、 F a b ' 2、 C DR、 ヒ ト化抗体、 多機能抗体、 単鎖抗体 (S c F v) などを含 む。 本発明の抗体は、 公知の方法で製造することができる。 このような 抗体の製造法は当該分野で周知である (例えば H a r 1 ow E . & L a n e D. , An t i b o d y, C o l d S p r i n g H a r b o r L a b o r a t o r y P r e s s ( 1 9 8 8 ) を参照) 。 ( 1 ) 抗原の調製
本発明において、 感作抗原として使用されるタンパク質は、 通常、 S RMSタンパク質またはその塩である。 上記 S RM Sタンパク質には、 その部分ペプチドも含まれ、 これは、 限定されることはないが、 例えば、 配列番号 2のアミノ酸配列の断片であって、 例えば、 2 0個以上、 4 0 個以上、 6 0個以上、 8 0個以上、 1 0 0個以上の、 連続するアミノ酸 配列部分を有する部分ペプチドである。 これらの断片として、 例えば、 ァミノ (N) 末端断片やカルボキシ (C) 末端断片が用いられる。 本発 . 明で用いられる部分ぺプチドは、 上記アミノ酸配列中の 1または 2個以 上 (好ま しく は、 1〜 1 0個程度、 さ らに好ましく は数個 ( 1〜 6
個) ) のアミノ酸残基が欠失、 置換、 挿入及び Z又は付加されたもので あってもよい。 ここで用いられる S RM Sタンパク質またはその部分べ プチドの塩としては、 例えば、 無機酸 (例えば、 塩酸、 硫酸) との塩、 あるいは有機酸 (例えば、 酢酸、 ギ酸,、 プロピオン酸) との塩などが用 いられる。 抗体取得の感作抗原として使用される牢発明の S RM Sタン パク質は、 その由来となる動物種に制限されないが哺乳動物、 例えばマ ウス、 ヒ ト由来のタンパク質が好ましく、 特にヒ ト由来のタンパク質が 好ましい。
( 2 ) S RM Sタンパク質に対するモノクローナル抗体の作製
( i ) 抗体産生細胞の採取
上記のような S RM Sタンパク質、 その部分ペプチド又はその塩 (本 明細書中、 抗体に関する説明では、 これらをまとめて、 「S RMSタン パク質」 という。 ) を抗原として、 哺乳動物、 例えばラッ ト、 マウス、 ゥサギなどに投与する。 抗原の動物 1匹当たりの投与量は、 アジュバン トを用いないときは 0. l〜 1 0 0mgであり、 アジュバントを用いる ときは l〜 1 0 0 / gである。 アジュバントとしては、 フロイント完全 アジュバント (F CA) 、 フロイント不完全アジュバント (F I A) 、 水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。 免疫は、 主として静 脈内、 皮下又は腹腔内等に注入することにより行われる。 また、 免疫の 間隔は特に限定されず、 数日から数週間間隔、 好ましくは 2〜 5週間間 隔で、 1〜 1 0回、 好ましくは 2〜 5回免疫を行う。 そして、 最終の免 疫日から 1〜 6 0 日後、 好ましくは 1〜 1 4日後に抗体産生細胞を採集 する。 抗体産生細胞としては、 脾臓細胞、 リンパ節細胞、 末梢血細胞等 が挙げられるが、 脾臓細胞又は局所リンパ節細胞が好ましい。
( i i ) 細胞融合
ハイプリ ドーマを得るため、 抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞 融合を行う。 抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞として、 マウス などの動物の一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。 使用 する細胞株としては、 薬剤選択性を有し、 未融合の状態では HAT選択
培地 (ヒポキサンチン、 アミノプテリン、 チミジンを含む) で生存でき ず、 抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが 好ましい。 ミエローマ細胞としては、 例えば X 6 3 A g. 8. 6 5 3、 N S l Z l —A g 4— l、 N S 0Z 1などのマウスミエローマ細胞株、 YB 2 0などのラッ トミエローマ細胞株が挙げられる。
次に、 上記ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを細胞融合させる。 細胞 融合は、 血清を含まない DMEM、 R P M I — 1 6 40培地などの動物 細胞培養用培地中で、 1 X 1 0 6〜 1 X 1 0 7個/ m l の抗体産生細胞 と 2 X 1 0 5〜 2 X 1 0 6個 Zm l のミエローマ細胞とを混合し (抗体 産生細胞とミエローマ細胞との細胞比 2 : 1〜 3 :' 1が好ましい) 、 細 胞融合促進剤存在のもとで融合反応を行う。 細胞融合促進剤として、 平 均分子量 1 0 0 0〜 6 0 0 0ダルトンのポリエチレングリコール等を使 用することができる。 また、 電気刺激 (例えばエレク トロボレーショ ン) を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞とミエローマ 細胞とを融合させることもできる。
( i i i ) ハイプリ ドーマの選別及びクローニング
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイプリ ドーマを選別する。 そ の方法として、 細胞懸濁液を例えばゥシ胎児血清含有 R PM I - 1 64 0培地などで適当に希釈後、 マイクロ夕イタ一プレー ト上に 3 X 1.05 個 w e 1 1程度まき、 各ゥエルに選択培地を加え、 以後適当に選択培 地を交換して培養を行う。 その結果、 選択培地で培養開始後、 1 4日前 後から生育してくる細胞をハイブリ ドーマとして得ることができる。
次に、 増殖してきたハイプリ ドーマの培養上清中に、 S RMSタンパ ク質に反応する抗体が存在するか否かをスクリ一二ングする。 ハイプリ ドーマのスクリーニングは、 通常の方法に従えばよく、 特に限定される ものではない。 例えば、 ハイプリ ドーマとして生育したゥエルに含まれ る培養上清の一部を採集し、 酵素免疫測定法、 放射性免疫測定法等によ つてスクリーニングすることができる。 融合細胞のクローニングは、 限 界希釈法等により行う。 そして、 最終的に、 S RM Sタンパク質と反応
するモノクローナル抗体を産生する細胞であるハイプリ ドーマを樹立す る。
( i V ) モノクローナル抗体の採取
上記のようにして得たハイプリ ドーマからモノクローナル抗体を採取 する方法として、 通常の細胞培養法又は腹水形成法等を採用することが できる。 細胞培養法においては、 ハイプリ ドーマを 1 0 %ゥシ胎児血清 含有 R PM I — 1 6 40培地、 ME M培地又は無血清培地等の動物細胞 培養培地中で、 通常の培養条件 (例えば 3 7で、 δ % C 02濃度) で 7〜 1 4日間培養し、 その培養上清から抗体を取得する。 腹水形成法の 場合は、 ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種系動物の腹腔内にハイブ リ ドーマを約 1 X I 07個投与し、 ハイプリ ドーマを大量に増殖させる。 そして、 1〜 2週間後に腹水を採取する。 上記抗体の採取方法において 抗体の精製が必要とされる場合は、 硫安塩析法、 イオン交換クロマトグ ラフィー、 ゲル濾過、 ァフィ二ティークロマトグラフィーなどの公知の 方法を適宜選択して、 又はこれらを組み合わせることにより精製するこ とができる。
( 3 ) S RM S夕ンパク質に対するポリクローナル抗体の作製
まず、 上記した抗原を哺乳動物、 例えばラッ ト、 マウス、 ゥサギなど に投与する。 抗原の動物 1匹当たりの投与量は、 アジュバントを用いな いときは 0. :!〜 1 0 0 m gであり、 アジュバントを用いるときは 1 0 〜 1 0 0 0 である。 アジュバントとしては、 フロイント完全アジュ バント (F CA) 、 フロイン卜不完全アジュバント (F I A) 、 水酸化 アルミニウムアジュバント等が挙げられる。 免疫は、 主として静脈内、 皮下又は腹腔内等に注入することにより行われる。 また、 免疫の間隔は 特に限定されず、 数日から数週間間隔、 好ましくは 2〜 5週間間隔で、 1〜 1 0回、 好ましくは 2〜 5回免疫を行う。 そして、 最終の免疫日か ら 6〜 6 0日後に、 酵素免疫測定法 (E L I S A ( e n z ume— 1 i n k e d i mmu n o s o r b e n t a s s y) 又は E I A ( e n z y m e i mm u n o a s s a y) ) 、 放射性免疫測定法 (R I
A ; r a d i o i mmu n o a s s a y) 等で抗体価を測定し、 最大 の抗体価を示した日に採血し、 抗血清を得る。
次いで、 例えば、 抗血清中のポリクローナル抗体を、 S R M Sタンパ ク質で固定されたァフィ二ティーカラムにかけて S RM Sタンパク質と 反応する抗体 (カラム吸着画分) を採取する。 S RM Sタンパク質に対 する抗血清中のポリクロ一ナル抗体の反応性は、 E L I S A法などで測 定することができる。
( 4 ) 抗体の断片など
F a bまたは F a b ' 2断片は、 従来の方法によるプロテアーゼ (例 えば、 ペプシンまたはパパイン) を用いた消化により作製することがで きる。 ヒ ト化抗体は、 例えば R i e c h m a n n ら (R i e c h m a n n J M o l B i o l . O c t 5 ; 2 0 3 ( 3 ) : 8 2 5 - 8 , 1 9 8 8 ) 、 および J o n e s ら ( J o n e s ら N a t u r e 3 2 1 : 5 2 2 - 5 2 5 , 1 9 8 6 ) に記載のような方法の 1つにより調製 することができる。
また、 キメラ抗体は、 例えば、 「実験医学 (臨時増刊号) 、 V o し 1 . 6, N o . 1 0, 1 9 8 8」 、 特公平 3 — 7 3 2 8 0号公報等を、 ヒ ト化抗体は、 例えば、 「 N a t u r e G e n e t i c s , V o l . 1 5 , p . 1 4 6 — 1 5 6, 1 9 9 7」 、 「 N a t u r e G e n e t c s , V o l . 7 , p . 1 3 - 2 1 , 1 9 9 4」 、 特表平 4 一 5 0 4 3 6 5号公報、 国際出願公開 W0 9 4 * 2 5 5 8 5号公報等、 「日経サ ィエンス、 6月号、 第 4 0〜第 5 0頁、 1 9 9 5年」 、 「 N a t u r e , V o l . 3 6 8 , p . 8 5 6 — 8 5 9 , 1 9 9 4」 、 特表平 6 — 5 0 0 2 3 3号公報等を参考にそれぞれ製造することができる。 本発明の S R M Sタンパク質に結合する抗体は、 例えば、 癌細胞の増殖もしくは転移 の抑制等を目的とした使用が考えられる。 得られた抗体を人体に投与す る目的 (抗体治療) で使用する場合には、 免疫原性を低下させるため、 ヒ ト抗体ゃヒ ト型抗体が好ましい。
抗体は、 診断剤として用いる場合は、 モニタリング等のための標識物
質 (例えば、 放射性同位元素、 蛍光物質など) で標識されていてもょレ 必要に応じて、 放射性物質、 蛍光化合物などにより標識することができ る。 最も慣用の蛍光標識化合物の中には、 フルォレセインイソチオシァ ネート、 ローダミン、 フィコエリ トリンおよびフルォレスカミンがある。 同様に、 生体発光性化合物を用いて、 抗体 S RMS抗体を標識すること もできる。 生体発光性タンパク質の存在は、 蛍光の存在を検出すること によって測定される。 この標識目的に重要な生体発光性化合物は、 ルシ フェリン、 ルシフェラ一ゼおよびイエクオリンである。
なお、 本発明の抗体は、 体液や組織などの被検体中に存在する S RM Sタンパク質等を特異的に検出するために使用することができる。 また、 S RM Sタンパク質等を精製するために使用する抗体カラムの 製、 精 製時の各分画中の S RM S夕ンパク質等の検出、 被検細胞内における S RMSタンパク質の挙動の分析などのために使用することができる。 3. 2 抗 S RMS抗体を含有する複合体など
また、 本発明において使用する抗 S RMS抗体は、 本発明の治療剤ま たは診断剤において、 それ自体が、 抗原の活性を減弱させるような中和 活性を有する薬剤 ( a g e n t ) であり得るが、 必要に応じて、 治療効 果を奏するための他の薬剤と組み合わせて用いることができる。 したが つて、 本発明は、 もう一つの態様において、 がん .(例えば、 大腸がん) の標的化療法または標的化イメージング等に使用するための、 抗 S RM S抗体と他の薬剤との複合体、 そのような複合体を含有する組成物など をも提供する。 このような態様によれば、 本発明において使用する抗 S RM S抗体を用いて、 治療効果を奏する他の薬剤または診断のための標 識剤などを、 S RMSタンパク質を高発現する標的部位へ送達すること ができる。
本発明において用いられる 「その他の薬剤」 としては、 例えば、 放射 性同位元素、 治療タンパク質、 または低分子の薬剤など、 標的への遺伝 子導入のためのウィルスベクタ一もしくは非ウィルスベクターなどが例
示される。
本発明において、 「放射性同位元素」 の例としては、 フッ素一 1 8、 ヨウ素一 1 2 5 ( 1 25 I ) 、 およびヨウ素一 1 3 1などの放射性ハロゲ ン元素が挙げられる。 これらの放射性ハロゲン元素も上述の放射性金属 元素と同様に抗体やペプチドに標識して、 放射性治治療剤あるいは放射 性診断剤として広く利用し得る。 例えば、 1 25 I または1 3 1 Iでのョ一 ド化は、 クロラミン T法等の公知の方法により、 抗体または抗体断片に 結合させることができる。 さらに、 診断用としてはテクネチウム一 9 9 m、 インジウム一 1 1 1およびガリウム— 6 7 ( 6 7 G a ) など、 また 治療用としてはイ ッ トリウム— 9 0 ( 9 0 Y) 、 レニウム— 1 8 6 ( 1 8 6 R e ) またはレニウム一 1 8 8 88 R e ) などが使用され る。 放 射性同位元素を用いて抗体に標識する場合には、 通常、 金属キレート剤 が用いられる。 金属キレート剤としては、 E DTA、 DT PA、 ジアミ ノジチォ化合物、 サイクラム、 および DOTA どが知られている。 こ れらのキレート剤は抗体に予め結合しておき、 その後放射性金属で標識 する場合と、 放射性金属キレートを形成後、 抗体に結合して標識する方 法がある。
本発明において、 「治療タンパク質」 の例としては、 免疫を担う細胞 を活性化するサイ ト力インが好適であり、 例えば、 ヒ トインターロイキ ン 2、 ヒ ト顆粒球一マクロファージ一コロニー刺激因子、 ヒ トマクロフ ァージコロニー刺激因子、 ヒ トインターロイキン 1 2等が挙げられる。 また、 大腸がん細胞を直接殺傷するため、 リシンやジフテリア毒素など の毒素を用いることができる。 例えば、 治療タンパク質との融合抗体に ついては、 抗体または抗体断片をコードする c DN Aに治療タンパク質 をコードする c DN Aを連結させ、 融合抗体をコードする DNAを構築 し、 この DN Aを原核生物または真核生物用の発現ベクターに挿入し、 この発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現 させ、 融合抗体を製造することができる。
「低分子の薬剤」 は、 本明細書中で 「放射性同位元素」 や 「治療タン
パク質」 等以外の診断または治療用化合物を意味するものとして用いら れる。 「低分子の薬剤」 の例としては、 ナイ トロジェン ' マスタード、 サイクロファスフアミ ドなどのアルキル化剤、 5—フルォロウラシル、 メソ トレキセ一卜などの代謝拮抗剤、 ダウノマイシン、 ブレオマイシン、 マイ トマイシン C, ダウノルビシン、 ドキソルビシンなどの抗生物質、 ビンクリスチン、 ビンブラスチン、 ビンデシンのような植物アル力ロイ ド、 夕モキシフェン、 デキサメタソンなどのホルモン剤等の抗癌剤 (臨 床腫瘍学 (日本臨床腫瘍研究会編 1 9 9 6年 癌と化学療法社) ) 、 またはハイ ド口コーチゾン、 プレドニゾンなどのステロイ ド剤、 ァスピ リン、 インドメ夕シンなどの非ステロイ ド剤、 金チォマレート、 ぺニシ ラミンなどの免疫調節剤、 サイクロフォスフアミ ド、 ァザチォプリンな どの免疫抑制剤、 レイン酸クロルフエ二ラミン、 クレマシチンのよう な抗ヒスタミン剤等の抗炎症剤 (炎症と抗炎症療法 昭和 5 7年 医歯 薬出版株式会社) などがあげられる。 例えば、 ダウノマイシンと抗体を 結合させる方法としては、 ダルタールアルデヒ ドを介してダウノマイシ ンと抗体のアミノ基間を結合させる方法、 水溶性カルボジィミ ドを介し てダウノマイシンのアミノ基と抗体のカルボキシル基を結合させる方法 等があげられる。
「ウィルスベクター」 の例としては、 本発明の抗 S RMS抗体に結合 し得るように改変されたウィルスベクターが使用し得る (例えば、 アデ ノウィルスベクタ一 (Wa n g, P. , e t a に ( 1 9 9 5 ) S om a t i c C e l l a n d M o l e c . G e n e t . 2 1, 4 2 9— 4 4 1 ) 、 レ トロウイルスベクター (N a v i a u x R. K. , e t a 1 . ( 1 9 9 6 ) J . V i r o l 7 0, 5 7 0 1 - 5 7 0 5 ) 、 レンチウィルスベクタ一 (N a l d i n i , L . ( 1 9 9 8 ) C u r r . O p i n . B i o t e c h n o に 9, 4 5 7 - 4 6 3 ) などが挙げられる) 。 このようなウィルスべク 夕一には、 細胞増殖関連遺伝子、 アポトーシス関連遺伝子、 免疫制御遺 伝子等の、 標的部位 (例えば、 大腸がん) において、 例えば、 癌細胞の
アポトーシスを誘導するなどの治療効果を奏する遺伝子 (治療遺伝子) が組み込まれる。 抗 S R M S抗体に結合するウィルスベクターは、 抗 S R M S抗体と共に遺伝子治療を必要とする患者に投与された場合、 抗 S R M S抗体が認識する抗原 (すなわち、 S R M S ) が存在する部位に標 的化することができる。
抗 S R M S抗体と上記他の薬剤とは、 化学的または遺伝子工学的に結 合され得る。 ここで、 「化学的な結合」 には、 イオン結合、 水素結合、 共有結合、 分子間力による結合、 疎水性相互作用による結合などが含ま れるものとし、 「遺伝子工学的な結合」 には、 例えば、 抗体と治療タン パク質とからなる融合夕ンパク質を遺伝子組換えなどの技術を用いて作 製した場合の、 抗体と治療夕ンパク質との間の結合様式などが含まれる ものとする。
4 . 製剤化および製剤の投与方法
本発明の S R M S遺伝子の発現阻害物質を含有するがん治療剤、 S R M Sタンパク質の活性阻害物質を含有するがん治療剤、 本発明の抗 S R M S抗体を含有する治療剤、 または本発明において使用する抗 S R M S 抗体が、 放射性同位元素、 治療タンパク質、 低分子の薬剤、 および治療 遺伝子を担持したウィルスベクタ一もしくは非ウィルスベクターのうち のいずれか、 またはこれらの任意の組み合わせと化学的または遺伝子ェ 学的に結合されている治療剤は、 公知の手法に基づいて製剤化すること ができる。
本発明の治療剤の製剤化にあたっては、 常法に従い、 必要に応じて薬 学的に許容される担体を添加することができる。 例えば、 界面活性剤、 賦形剤、 着色料、 着香料、 保存料、 安定剤、 緩衝剤、 懸濁剤、 等張化剤、 結合剤、 崩壊剤、 滑沢剤、 流動性促進剤、 矯味剤等が挙げられるが、 こ れらに制限されず、 その他常用の担体を適宜使用することができる。 具 体的には、 軽質無水ケィ酸、、 乳糖、 結晶セルロース、 マンニトール、 デ ンプン、 カルメロースカルシウム、 カルメロースナトリウム、 ヒ ドロキ
シプロピルセルロース、 ヒ ドロキシプロピルメチルセルロース、 ポリビ 二ルァセ夕一ルジェチルァミノアセテー ト、 ポリビエルピロリ ドン、 ゼ ラチン、 中鎖脂肪酸トリダリセライ ド、 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ 油 6 0、 白糖、 カルボキシメチルセルロース、 コーンスターチ、 無機塩 類等を挙げることができる。
本発明の治療剤の剤型の種類としては、 例えば、 経口剤として錠剤、 粉末剤、 丸剤、 散剤、 顆粒剤、 細粒剤、 軟 *硬カプセル剤、 フィルムコ 一ティ ング剤、 ペレッ ト剤、 舌下剤、 ペース ト剤等、 非経口剤として注 射剤、 坐剤、 経皮剤、 軟膏剤、 硬膏剤、 外用液剤等が挙げられ、 当業者 においては投与経路や投与対象等に応じた最適の剤型を選ぶことができ る。 有効成分としての S RM Sタンパク質の活性 (または S RM S遺伝 子の発現) 阻害物質は、 製剤中 0. 1から 9 9. 9重量%含有すること ができる。
本発明の薬剤の有効成分の投与量は、 投与対象、 対象臓器、 症状、 投 与方法などにより差はあるが、 経口投与の場合、 一般的に例えば、 患者 (6 0 k gとして) に対して一日につき約 0. l mg〜: 1, 0 0 0 mg、 好ましくは約 1. 0〜: L 0 0 mg、 より好ましくは約 1. 0〜5 0mg である。 非経口的に投与する場合は、 その一回投与量は投与対象、 対象 臓器、 症状、 投与方法などによっても異なるが、 例えば、 注射剤の形で は通常例えば、 患者 (6 0 k gに対して) 、 一日につき約 0. 0 1から 3 0mg程度、 好ましくは約 0. 1から 2 0mg程度、 より好ましくは 約 0. 1〜 1 0 mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。 しかしながら、 最終的には、 剤型の種類、 投与方法、 患者の年齢や体重、 患者の症状等を考慮して、 医師または獣医師の判断により適宜決定する ことができる。
このようにして得られる製剤は、 例えば、 ヒ トやその他の哺乳動物 (例えば、 ラッ ト、 ゥサギ、 ヒッジ、 ブ夕、 ゥシ、 ネコ、 ィヌ、 サルな ど) に対して投与することができる。 ヒ ト以外の動物の場合も、 上記の 6 0 k g当たりに換算した量を投与することができる。
本発明の治療剤は、 がん (例えば、 大腸がん、 胃がん、 肺がん、 乳が ん、 前立腺がん、 食道がん、 肝臓がん、 胆道がん、 脾臓がん、 腎がん、 膀胱がん、 子宮がん (例 : 子宮頸がん、 子宮体がん) 、 精巣がん、 甲状 腺がん、 膝臓がん、 卵巣がん、 脳腫瘍,、 血液腫瘍など) の予防 · 治療、 好ましくは、 大腸がんの予防 ' 治療に用いられる。
本発明の薬剤は、 S R M S夕ンパク質の活性阻害物質または S R M S 遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有しているため、 抗癌剤、 癌 転移阻害剤、 癌細胞のアポ卜一シス誘導剤等として使用し得る。 対象と なる細胞、 組織、 臓器、 または癌の種類は特定のものに限定されない。 また、 本発明の薬剤は、 S R M Sタンパク質の活性阻害物質および S R M S遺伝子の発現阻害物質の両方を含んでいても良い。
本発明の治療剤において、 アンチセンス核酸を用いる場合、 該アンチ センス核酸を単独あるいはレトロウイルスベクター、 アデノウイルスべ クタ一、 アデノウイルスァソシェ一テツ ドウィルスベクターなどの適当 なベクターに挿入した後、 公知の手段に従って投与することができる。 アンチセンス核酸は、 単独で、 あるいは生理学的に認められる担体とと もに製剤化し、 遺伝子銃やハイ ドロゲルカテーテルのようなカテーテル によって投与することができる。
また、 本発明において組換えアデノウイルス粒子のようなウィルスべ クタ一と抗 S R M S抗体との組み合わせを癌治療のために使用する場合 は、 これら単独で使用してもよいが、 一般には製薬的に許容できる担体 と共に使用される。 そのような担体としては、 既に上記したような担体、 ならびに水、 生理食塩水、 グルコース、 ヒ トアルブミン等の水性等張溶 液が好ましい。 更に、 製薬的に通常使用される添加剤、 保存剤、 防腐剤、 衡量等を添加することもできる。 そのように調製した医薬組成物は、 治 療すべき疾病に依存して適切な投与形態、 投与経路によって投与するこ とができる。 投与形態としては、 例えば、 乳剤、 シロップ剤、 カプセル、 錠剤、 顆粒剤、 注射剤、 軟膏等が挙げられる。 本発明の抗 S R M S抗体 一ウィルスベクター粒子またはこれを含む医薬組成物を治療のために投
与する場合は、 通常成人一人当たり 1回に 1 03〜 1 01 5個のウィルス 粒子を投与するのが好ましいが、 疾病の状態や標的細胞 ·組織の性質に よって変更してよい。 投与回数は、 1 日 1回〜数回でよく、 投与期間は 1 日〜数ケ月以上にわたってもよく、 1〜数回の投入を 1セッ トとして、 長期にわたって断続的に多数セッ トを投与してもよい。 また、 本発明に おいて使用されるウィルスベクター粒子またはウィルスベクター核酸分 子は、 特定の細胞および または組織の検出、 または疾病状態の診断に 使用することができる。 例えば、 ウィルスベクターの核酸分子に検出可 能なマーカー遺伝子を組込み、 これを適切な宿主細胞にトランスフエク シヨンして得られたウィルスベクター粒子は、 抗 S RM S抗体と組み合 わせて腫瘍細胞を検出診断するために使用することができる。 あるいは、 抗 S RM S抗体に検出可能な標識を結合させて腫瘍細胞を検出診断する ために使用することができる。 5. がんの診断剤及び診断方法
本発明はまた、 がんの診断剤を提供する。 1つの好ましい態様におい て、 本発明のがんの診断剤は、 (a) S RM Sタンパク質に対する抗体、 又は (b) S RM S遺伝子またはその一部の塩基配列にス トリンジェン 卜なハイプリダイゼーション条件下でハイプリダイズ可能な塩基配列か らなるポリヌクレオチドを含有する。
5. 1 抗 S RMS抗体を用いる診断剤及び診断方法
S RM Sタンパク質に対する抗体は、 S RMSタンパク質等を特異的 に認識することができるので、 被検液中の S RM S夕ンパク質を定量す ることができる。 具体的には、 本発明の抗 S RMS抗体を用いる診断方 法は、 例えば、 (a) 被験者由来の生体試料と、 S RM Sタンパク質に 対する抗体とを接触させる工程、 および (b) 前記試料中での前記抗体 と、 S RM S夕ンパク質もしぐはその部分べプチドまたはその塩との結 合を検出および または定量する工程を包含する。 好ましくは、 上記検
出および/または定量する工程において、 標識された抗 S R M S抗体を 用いて、 S R M Sタンパク質またはその断片と抗 S R M S抗体との結合 が検出およびノまたは定量される。
本明細書中、 「被験者由来の生体試 」 は、 被験者由来の組織、 細胞、 または体液 (例えば、 血液 (全血、 血漿、 血清等を含む) 、 尿、 リンパ 液、 唾液、 汗、 精液等) を含む。 また、 「被験者」 .は、 通常、 がん検診 を受ける、 または受けることが望まれるヒ ト被験体であり、 がんに罹患 しているか、 または罹患していると疑われるヒ ト被験体等が含まれる。 このようながんの例としては、 大腸がん、 胃がん、 肺がん、 乳がん、 前 立腺がん、 食道がん、 肝臓がん、 胆道がん、 脾臓がん、 腎がん、 膀胱が ん、 子宮がん (例 : 子宮頸がん、 子宮体がん) 、 精巣がん、 甲状腺がん、 塍臓がん、 卵巣がん、 脳腫瘍、 血液腫瘍などが含まれるが、 とりわけ、 大腸がんが好ましい。
上記のような被験者由来の生体試料における S R M Sの発現を検出す るための免疫測定は、 がん (例えば、 大腸がん) を有すると疑われる力 がんの危険性を有する被験体から採取した生体試料を、 特異的抗原ー抗 体結合を生じさせる条件下で抗 S R M S抗体と接触させ、 次いで、 抗体 による免疫特異的結合量を測定することを包含する。 このような抗体の 結合を使用して、 S R M S夕ンパク質の存在およびノまたは増大した発 現が検出される。 この場合、 増大した S R M Sタンパク質発現の検出が 疾病状態の指標となる。 必要に応じて、 生体試料中の S R M Sタンパク 質のレベルを、 がんを有しない健常者のレベルと比較してもよい。
上記免疫測定法の 1つの態様では、 例えば、 血清試料などの生体試料 を、 試料中に存在する全部のタンパク質を固定する目的で、 ニトロセル ロースなどの固相支持体または担体と接触させる。 次いで、 この支持体 を緩衝液で洗浄し、 続いて検出可能に標識した抗 S R M S抗体により処 理する。 次いで、 この固相支持体を緩衝液で 2回洗浄し、 未結合抗体を 除去する。 固相支持体上の結合した抗体の量を、 周知の方法に従って測 定する。 各測定に適する検出条件は、 慣用的な試験方法を使用して当業
者により適宜決定され得る。
抗 S RM S抗体を検出可能に標識する方法の 1つにおいて、 当該抗体 を、 酵素、 例えば、 酵素ィムノアッセィ (E I A) に使用されるものの ような酵素に結合させる [V o l 1 e r , A. による 「酵素標識した免 疫吸着アツセィ」 ( "T h e E n z yme L i n k e d I mm u n o s o r b e n t A s s a y) (E L I S A) , 1 9 7 8 , D i a g n o s t i c H o r i z o n s , 2 : 1〜 7 , M i c r o b i o l
0 g i c a 1 A s s o c i a t e s Q u a r t e r l y P u b 1
1 c a t i o n , W a 1 k e r s v i 1 1 e . M D ; V o i 1 e r , A. による J . C l i n . P a t h o l . , 3 1 : '5 0 7〜 5 2 0, 1
9 7 8 : B u t i e r , J . E . による M e t h. E n z ymo l . , 7 3 : 4 8 2〜 5 2 3, 1 9 8 1 ] 。 抗体に結合する酵素を、 例えば分 光光度測定により、 可視手段による蛍光測定により検出することができ る化学分子が生成されるような方法で、 適当な基.質、 好ましくは色素原 性基質と反応させる。 抗体に検出可能な標識を付けるために使用するこ とができる酵素は、 ペルォキシダーゼおよびアル力リ性ホスファ夕ーゼ を包含するが、 これらに限定されない。 この検出はまた、 酵素に対する 色素原性基質を用いる比色法により達成することができる。
その他の本発明において使用し得る方法としては、 ラジオィムノアツ セィ (R I A;) 、 サンドイッチ免疫測定法、 ィムノメ トリック法、 ネフ ロメ トリー、 蛍光免疫測定法 (F I A) 、 時間分解蛍光免疫測定法 (T R F I A) 、 酵素免疫測定法 (E I A) 、 発光免疫測定法 (L I A) 、 電気化学発光免疫測定法 (E C L I A) 、 ラテックス凝集法、 免疫沈降 アツセィ、 沈降素反応法、 ゲル拡散沈降素反応法、 免疫拡散検定法、 凝 集素検定法、 補体結合検定法、 免疫放射分析検定法、 蛍光免疫検定法、 およびプロティン A免疫検定法からなる群から選択される免疫測定法な どが挙げられる (W〇 0 0 / 1 42 2 7号公報第 3 9頁第 2 5行〜第 4 2頁第 8行、 E P 1 1 1 1 04 7 A 2号公報段落 [ 0 1 1 5 ] 第 1 9頁 第 3 5行〜第 2 0頁第 4 7行など参照) 。
以上のように、 本発明の抗体を用いる、 生体内での S RM Sタンパク 質の定量法を利用することにより、 S RM S夕ンパク質の機能不全に関 連する各種疾患の診断をすることができる。 例えば、 S RM Sタンパク 質の濃度増加が検出された場合は、 例えば、 S RM Sタンパク質の過剰 発現に起因する疾患 (例えば、 がん (例 : 大腸がん) ) である可能性が 高いまたは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
なお、 本発明の抗 S R M S抗体は、 i n v i v oでの診断に用いる こともできる。 ここで使用し得る抗体調製物の調製および使用方法は当 該分野でよく知られている。 例えば、 抗体ーキレート剤について、 N u c 1. M e d . B i o l . 1 9 9 0 1 7 :' 24 7— 2 5 4に記 載されている。 また、 磁気共鳴イメージングで用いる標識としての常磁 性イオンを有する抗体については、 例えば、 M a g n e t i c R e s o n a n c e i n M e d i c i n e 1 9 9 1 2 2 : 3 3 9 - 3 42に記載されている。
5. 2 ポリヌクレオチド (例えば、 DNA) プローブを用いる診 断剤及び診断方法
本発明の診断方法においては、 S RM S遺伝子の塩基配列に基づいて 設計されるプローブ又はプライマーを用いることができる。 具体的には、 そのような診断方法は、 例えば、 ( a) 被験者由来の生体試料と、 S R M S遺伝子またはその断片の塩基配列にス 卜リンジェン卜なハイプリダ ィゼーション条件下でハイブリダィズ可能な塩基配列からなるポリヌク レオチド (プローブ) とを接触させる工程、 および (b) 前記試料中で の前記ポリヌクレオチドと、 S RM S遺伝子またはその断片とのハイブ リダイゼーションを検出および/または定量する工程を包含する。
上記本発明の方法では、 被験者由来の生体試料中の S RM S遺伝子の DNA (またはその遺伝子断片) を、 上記プローブを使用して検出およ び/または定量する。 プローブとして用いる塩基配列の長さは、 例えば、 1 2塩基以上、 1 5塩基以上、 1 8塩基以上、 2 1塩基以上、 2 4塩基
以上、 2 7塩基以上、 3 0塩基以上、 またはさらに長い長さのポリヌク レオチド断片であり得る。 ハイブリダィゼーシヨンには、 上記した低、 中又は高ス トリ ンジェン卜な条件を使用し得る。 なお、 本明細書中、 「S RM S遺伝子またはその断片の塩基配列にス トリンジェン卜なハイ ブリダィゼーシヨン条件下でハイブリダィズ可能な塩基配列」 には、 S RMS遺伝子またはその断片の塩基配列に相補的な塩基配列 (アンチセ ンスポリヌクレオチド) も含まれるものとする。 プローブおよび核酸の ハイプリダイゼーシヨンの方法は当業者に知られており、 例えば国際公 開公報第 8 9 Z 0 6 6 9 8号、 E P— A 0 2 0 0 3 6 2、 米国特許第 2 , 9 1 5, 0 8 2号、 E P— A 0 0 6 3 8 7 9、 E P— A 0 1 7 3 2 5 1 、 E P -A 0 1 2 8 0 1 8に記載されている。
本発明の診断方法においては、 S RM S遺伝子に対する特異的ポリヌ クレオチドプローブまたはプライマーを用いて、 公知の手法を用いて標 的配列を検出または定量することができる。 そのような公知の手法とし て、 例えば、 サザンハイブリダィゼーシヨン、 ノーザンハイブリダィゼ ーシヨン、 RT— P C R法、 P C R— S S C P法 (G e n om i c s , 第 5巻, 8 7 4〜 8 7 9頁 ( 1 9 8 9年) ) 、 P r o c e e d i n g s o f t h e N a t i o n a l A c a d e my o f S c i e n c e s o f t h e U n i t e d S t a t e s o f Ame r i c a , 第 8 6巻, 2 7 6 6〜 2 7 7 0頁 ( 1 9 8 9年) ) 、 F I S H 法、 DNAチップあるいはアレイ C GH (C omp a r a t i v e G e n o m i c Hy b r i d i z a t i o n) 法などを用いることがで きる。 定量的な検出は、 定量 R T— P C Rによって実施可能である。 アレイ C GH法は、 染色体 C GH法 (K a l l i o n i e m i , A. e t a 1 . ( 1 9 9 2 ) S c i e n c e 2 5 8 , 8 1 8 - 8 2 1 ) を応用した方法で、 スライ ド上に染色体領域をカバ一するゲノム D NA断片 (BAC, PA C, YACなど) を高密度にスポッ トした D N. Aチップを用いて、 別々の色素で標識したがん由来 DN Aと正常 DN A を、 スライ ド上のゲノム D N A断片に対して同時にハイブリダィゼーシ
ヨンを行い、 その結合状態を検出することにより、 がんにおける DNA コピー数異常を高解像度に検出する方法である (P i n k e l , D. e t a 1 . ( 1 9 9 8 ) N a t . G e n e t . 2 0 , 2 0 7 - 2 1
1 、
なお、 本発明においては、 S RM S遺伝子の発現が上方制御されるか 否かを検出するために、 細胞の S RMSの mR N Aレベルを標準遺伝子 (ハウスキーピング遺伝子 (例えば、 S h a p e r , N. L . ら、 J .
M amm a r y G l a n d B i o l . N e o p l a s i a 3 ( 1 9 9 8 ) 3 1 5— 3 24 ; Wu, Y. Y. および R e e s , J . L . , A c t a D e r m. V e n e r e o l . ' 8 0 ( 2 0 0 0 )
2— 3 ) の mRNAレベルと、 好ましくは R T— P C Rによって比較す ることもできる。
上記のような手法によって標的配列 (DNA、 mR NAなど) を検 出 · 定量し、 S RM S遺伝子の発現過多が確認 れた場合は、 例えば、 S RM Sの過剰発現に起因する疾患 (例えば、 がん (例 : 大腸がん) ) である可能性が高い、 あるいは将来罹患する可能性が高いと診断するこ とができる。
5. 3 質量分析装置を用いる診断方法
本発明の診断方法の別の実施形態では、 被検試料中の標的タンパク質 またはその断片の存在を、 質量分析装置 (MS) を用いて同定すること ができる。 すなわち、 質量分析装置を用いることによって、 標的タンパ ク質またはその断片のアミノ酸配列の決定を行うことができ、 被験者由 来の生体試料中に S RM Sタンパク質が存在するか否かを判定すること ができる。 質量分析法は、 MSを用いてタンパク質やペプチドのような 試料をイオン化し、 得られた質量 Z電荷 (mZz) に従って分離し、 そ の強度を測定することにより、 試料の質量を決定する方法である。 その 質量分析の結果から、 タンパク質やべプチドのアミノ酸配列を構成する 個々のアミノ酸を同定することができる。
イオン化には、 マトリクスアシステツ ドレーザーデソープショ ンィォ ン化法 (MAL D I ) 、 エレク トロスプレーイオン化法 (E S I ) 、 気 相法 (E I, C I ) 、 電界脱離 (F D) 法など種々の方法が使用され得 る。 イオン分離には、 イオン化法と相性のよいイオン分離法が用いられ、 例えば、 M A L D Iの場合には、 飛行時間型 ( t i me o f f 1 i g h t : T O F ) 質量分析計、 E S Iの場合には、 四重極型 (QMS) 、 イオントラップ型、 磁場型などの質量分析計がそれぞれ用いられる。 質 量分析装置は、 タンデムで用いられることもある。 例えば、 L C— E S I M SZMS、 Q - T O F MS、 MALD I _TO F M S等が挙 げられる。 なお、 その他のアミノ酸配列決定法、 例えば、 シークェンサ 一 (例 : 気相シークェンサ一) によるアミノ酸配列決定法が利 されて もよい。
5. 4 診断用キッ ト
本発明はまた、 抗 S RMS抗体を含有する、 被験者の体液試料中の S RMSタンパク質またはその断片をがんマーカーとして検出および Zま たは定量するためのキッ トを提供する。 さらに、 S RM S遺伝子または その一部の塩基配列にス 卜リンジェントなハイプリダイゼーショ ン条件 下でハイプリダイズ可能な塩基配列を含有する、 被験者由来の生体試料 中の S RM S遺伝子またはその断片をがんマーカーとして検出およびノ または定量するためのキッ トをも提供する。 これらのキッ トは、 上述の 免疫学的手法またはハイブリダィゼーシヨン法等により、 がんマーカー を検出するために用いられる。 このようながんとしては、 例えば、 大腸 がん、 胃がん、 肺がん、 乳がん、 前立腺がん、 食道がん、 肝臓がん、 胆 道がん、 脾臓がん、 腎がん、 膀胱がん、 子宮がん (例 : 子宮頸がん、 子 宮体がん) 、 精巣がん、 甲状腺がん、 膝臓がん、 卵巣がん、 脳腫瘍、 血 液腫瘍などが含まれるが、 とりわけ、 大腸がんが好ましい。
本明細書中、 「がんマーカー」 とは、 被験者の体液 (例えば、 血液、 尿、 リ ンパ液、 唾液、 汗、 精液等) または細胞もしくは組織中における、
正常組織に由来していないか、 あるいはがん細胞または組織において選 択的に発現の亢進している分子のことをいい、 被験者の体液または細胞 もしくは組織中における当該分子の存在ががんの存在を示すかまたは示 唆するものをいう。
上記第一の態様のキッ トは、 被験者からの体液試料中の S R M S抗原 ( S R M S夕ンパク質およびその部分べプチドを含む) を検出および または定量する成分を含有する。 例えば、 S R M Sタンパク質が E L I S Aで検出および/または定量される場合、 このような成分は、 例えば、 組織切片、 または血液や尿のような体液試料中の S R M Sのレベルを検 出およびノまたは定量するために使用され得る。 このような抗体は放射 能、 蛍光、 比色、 または酵素標識で標識されていてもよい。 本発明のキ ッ トは、 標識された二次抗体を含有していてもよい。
上記第二の態様のキッ トは、 S R M S遺伝子またはその一部の塩基配 列にス トリ ンジェン卜なハイプリダイゼーショ ン条件下でハイブリダイ ズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する。 例えば、 本発 明のキッ トは、 D N Aチップ上に固定された上記ポリヌクレオチドを含 有し得る。
本発明のキッ トは、 抗 S R M S抗体、 S R M S遺伝子またはその一部 の塩基配列にス 卜リンジェン卜なハイプリダイゼ一ショ ン条件下でハイ ブリダィズ可能な塩基配列等の他に、 容器およびラベルを含んでいても よい。 容器上のまたは容器に伴うラベルには、 薬剤が大腸がんマーカー の検出に使用されることが示されていてもよい。 また、 他のアイテム、 例えば、 使用説明書等がさらに含まれていてもよい。
以下、 本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、 本発明の範 囲は、 これらの実施例によって限定されない。 実施例
実施例 1 : アレイ G H法による大腸がん特異的増幅遺伝子の同定
本実施例では、 大腸がん特異的な遺伝子増幅領域を特定するために、
大腸がん検体 2 0 0症例のサンプル調製およびアレイ. C GH法に基づく 検証を実施した。
その結果、 大腸がん検体において高頻度に増幅が起きている領域の内、 公共 D Bでの遺伝子情報 (N C B I : h t t p : //www. n c b i . n l m. n i h. g o v/) を利用し、 精査した結果、 使用した B A C C l o n e R P 1 1— 9 5 N 1 3に位置している、 S RM S (S r c — r e l a t e d k i n a s e l a c k i n g し 一 t e r m i n a 1 r e g u l a t o r y t y r o s i n e a n d N— t e r m i n a 1 my r i s t y l a t i o n s i t e s ) ( N C B I A c c e s s i o n N o. : NM_ 0 8 0 8 2 3 ) 遺伝子が大腸がん 患者において高頻度で高値であることを見出した (図 1 , 表 2 ) 。 図 1 は、 S RM S遺伝子の大腸がん患者 2 0 0検体での増幅度に対する頻度 を示すヒス トグラムである。 また、 下記の表 2は、 S RMS遺伝子の大 腸がん患者 2 0 0検体での増幅度 (GZR値) および頻度を示す。 平均 値は、 G R値が 1. 2以上の検体での平均値を示している。
表 2に示されるように、 S RMS遺伝子は、 2 0 0検体の大腸がん患 者の 7 5. 5 %において増幅が認められ、 その増幅度の平均値は、 2. 0であった。 最大値は 3. 7であり、 非常に高頻度で顕著な増幅が起こ つていた。
(表 2 )
本実施例では、 大腸がん患者において高頻度で高値な遺伝子領域につ いて、 大腸がん由来培養細胞株での増幅度を検証した。
ぐサンプル調製 >
培養細胞株は、 大腸がん由来の細胞株である C a c o 2および RK〇 を使用した。 培養細胞より B l o o d & C e l l C u l t u r e D N A K i t (Q I AGEN) を使用して、 キッ ト添付のプロ トコ一 ルに従い、 ゲノム DNAを抽出した。
ぐアレイ C GH〉
遺伝子領域の増幅を確認するために、 アレイ C GHを実施した。 方法 の詳細は実施例 1 と同様に実施した。 ¾
表 3に、 S RMS遺伝子の大腸がん由来の細胞株での増幅度 (GZR 値) を示した。 示されるように、 大腸がん由来細胞株においても、 BA C C l o n e R P 1 1— 9 5 N 1 3に位置している、 S RM S遺伝 子で増幅が起きていることを見出した。
(表 3 )
<定量的 P C R>
S RM S遺伝子領域の増幅を確認するために、 定量的 P C Rを実施し た。 定量的 P C Rは、 S YB R G r e e n RT— P C R R e a g e n t s (A p p l i e d B i o s y s t e rn s ) を使用して、 添付 のプロ トコールに従い、 7 5 0 0 R e a l -T i me P C R S y s t e m ( A p 1 i e d B i o s y s t ern s ) を用いて実施した。 プライマーは、 以下の配列を合成し (〇 P E R ONに合成委託) 使用し た。
プライマー配列 :
5 ' - GA C T GGA G G C AGAC T T C AG TATGA G - 3 ' (配列番号 3)
5 ' — C T C GGC T C C C GT C C TTT C— 3, (配列番号 4) 結果
表 4に、 S RMS遺伝子の大腸がん由来の細胞株での増幅度を示した。 値は対照 DNA (正常) との相対値を示している。 示されるように、 大 腸がん由来細胞株においても、 S RM S遺伝子領域に増幅が起きている ことを見出した。
(表 4
これらの結果により、 大腸がん由来の細胞株 (C a c o 2 , R K〇) においても、 S RM S遺伝子が増幅していることが確認された。 よって、 がんにおける S RM S遺伝子の機能解析に使用可能な培養細胞が選択さ れた。 実施例 3 : 大腸がん細胞株を用いた RN A i解析による機能解析
本実施例では、 大腸がん患者 2 0 0検体において高頻度に増幅が認め られた S R M S遺伝子について、 大腸がん由来の細胞株であり、 且つ、 ゲノムレベルで遺伝子の増幅が認められた細胞株 (C a.c o 2 , R K O) を用いて、 RNA i解析を行い、 その表現型を観察した。
<R N A i解析 >
細胞株は AT C Cより購入し、 添付のプロ トコールに従い培養を行つ た。 s i RNAは遺伝子内の特異的な 2 1 me rを選択しその配列を標
的とする s i RNAを合成した (Q I A G E Nに合成委託) 。
(表 5 )
s i R N A配列
s i RNAの C a c o 2細胞内への導入は、 〇 1 i g o f e c t am i n e ( I n v i t r o g e n ) を使用し、 Ι Ο Ο η Μの s i RNAを 添付のプロ トコールに従い細胞に導入した。 s i. R NAの R KO細胞内 への導入は、 : L i p o f e c t am i n e ( I n v i t r o g e n を 使用し、 5 0 1 1^の 5 i RNAを添付のプロ トコールに従い細胞に導入 した。 対照には N e g a t i V e C o n t r o l s i R N A ( Q I AG E N) を使用した。 細胞に導入後 4 日間、 倒立顕微鏡下で観察した。
<定量的 RT— P C R解析 >
定量的 R T— P C R法を用いて、 s i R N Aの効果を mR N Aレベル で検証した。 s i R NA導入後 2 4時間の細胞から、 M i c r o— t o —M i d i T o t a l RNA P u r i f i c a t i o n S y s t e m ( I n v i t r o g e n ) を使用して、 添付のプロ トコールに 従い、 全 RNAを抽出した。 その後、 S u p e r S c r i p t I I I F i r s t — S t r a n d S y n t h e s i s S y s t e m f o r R T— P C R ( I n v i t r o g e n ) を使用して、 添付のプロ ト コールに従い、 c DNAを合成した。
この c D N Aを錶型にレて、 定量的 R T— P C Rを実施した。 定量的 P C Rは、 S Y B R G r e e n R T— P C R R e a g e n t s
( A p p 1 i e d B i o s y s t em s ) を使用して、 添付のプロ ト コールに従い、 7 5 0 0 R e a l -T i me P C R S y s t em
( A p p 1 i e d B i o s y s t ern s ) を用いて実施した。 プライ マ一は、 以下の配列を合成し (O P E R〇Nに合成委託) 使用した。 プライマー配列 :
5, — GC TGGGTGAAGGC TAC TTTGG— 3, (配列番号 1 1 )
5 ' — GC GAGGTCAGTGAGC TTCATG— 3, (配列番号 1 2)
相対比を算出するための標準遺伝子には G l y c e r a l d e h y d e— 3— p h o s p h a t e d e h y d r o g e n a s e (GAP D H ) C o n t r o l R e a g e n t s (A p p l i e d B i o s y s t e m s ) を用いて GAP DHの発現量を求め、 相対比を算出した。
<生細胞数の測定 >
s i R N A導入後の生細胞数を A 1 a m a r B l u e (B i o s o u r c e ) を用いて、 添付のプロ トコールに従い、 Wa 1 1 a c 1 4 2 0 Mu l t i l a b e l / L u m i n e s c e n c e C o u n t e r ARVO (P e r k i n E l me r ) により測定した。 |έ¾
大腸がん由来の細胞株である C a c o 2および R KOを用いて、 S R MS遺伝子の RN A i解析を実施した。
図 2 Aおよび図 2 Bに、 それぞれ、 C a c o 2細胞および R KO細胞 に S R M S遺伝子の s i RNAを T r a n s f e e t i o n後、 4日目 の観察像を示す (上段 : X 40 ; 下段 : X 2 0 0 ) 。 a, b, および c は、 それぞれ S RM S遺伝子の s i R N A 3種であり、 N Cはネガティ ブコントロールを示す。 示されるように、 表現型の観察では、 a、 b、 および c 3種類の s i RNA共に N e g a t i v e C o n t r o 1 (NO と比較して顕著に細胞数が減少していた (図 2 A, B) 。
図 3 Aおよび図 3 Bには、 それぞれ、 C a c o 2細胞および R KO細 胞に S R M S遺伝子の s i RNAを T r a n s f e e t i o n後、 4 日 目の細胞を用いて測定試薬により生細胞数を測定した結果を示す。 ダラ フは N Cに対する相対量を示した。 示されるように、 生細胞数の測定を 行った結果、 表現型同様、 N e g a t i v e C o n t r o l (NC) と比較して顕著に細胞数が減少していた (図 3 A, B) 。 S RM S遺伝 子の s i R NA 3種 ( a , b, c ) 全てについて、 t検定において有意 ( P < 0. 0 1 ) であった。
よって、 RNA 1効果により S RM S遺伝子の発現が抑制された結果、 C a c 0 2細胞および R KO E 6細胞の両方において、 顕著にがん細胞 の増殖が抑制されることが見出された。 実施例 4 : 大腸由来正常細胞株を用いた RN A i解析による機能解析 本実施例では、 大腸の正常組織由来の細胞株を用いて RN A 1解析を 実施することにより、 標的遺伝子の抑制効果ががん特異的であることを 検 SJ した。
<R N A i解析〉
細胞株は AT C Cより購入した C C D 1 8 C oを使用した。 培養条件 は、 添付のプロ トコールに従った。 使用した s i R NAは、 実施例 3の c配列を使用した。 s i RNAの細胞内への導入は、 L i p o f e c t am i n e 2 0 0 0 ( I n v i t r o g e n ) を使用し、 2 5 n Mの s i R N Aを添付のプロ トコールに従い細胞に導入した。 対照には N e g a t i v e C o n t r o l s i R NA (Q I AG E N) を使用し た。 導入後 5 日間、 倒立顕微鏡下で観察した。
<定量的 R T— P C R解析 >
実施例 3の記載方法と同様に実施した。
<生細胞数の測定 >
実施例 3の記載方法と同様に実施した。
結果
S RMS遺伝子の、 大腸正常組織由来の細胞株 C CD I 8 C 0での R N A i の効果は以下の通りである。
図 4に、 C C D 1 8 C O細胞に S RM S遺伝子の s i RNAを T r a n s f e c t i o n後、 5日目に得た観察像を示す (上段 : X 4 0 ; 下 段 : Χ 2 0 Ό ) 。 S RM S cは、 S RM S遺伝子の s i R N Aの 1種
(実施例 3の c配列) を示し、 N Cはネガティ ブコントロールを示す。 示されるように、 表現型の観察では、 NCとほぼ同様で、 効果は認めら れなかつた (図 4 ) 。
図 5に、 C C D 1 8 C O細胞に S RM S遺伝子の s i RNAを T r a n s f e c t i o n後、 5日目の細胞を用いて測定試薬により生細胞数 を測定した結果を示す。 グラフは NCに対する相対量を示す。 その結果、 表現型同様、 N e g a t i v e C o n t r o l (NC) とほぼ同様で、 効果は認められなかった (図 5 ) 。
このことにより、 大腸がん由来の細胞株である C a c o 2細胞および RKO細胞では、 RNA i効果により S RMS遺伝子の発現が抑制され た結果、 顕著にがん細胞の増殖が抑制されたが、 大腸正常組織由来の細 胞株 C C D 1 8 C oでは影響が無いことが見出された。 よって、 S RM S遺伝子が、 正常細胞には影響が少ないことより、 がん特異的な創薬標 的遺伝子となりうることを見出した。 実施例 5 : 遺伝子増幅の評価
検体組織のがん細胞において S RMS遺伝子領域で遺伝子増幅がおき ていることを当該技術分野で公知の FISH法により評価した。
アレイ CGH法により、 遺伝子増幅度(G/R)が 1.2 以上であった検体組 織 (大腸癌患者由来) を用いて、 S RM S遺伝子が位置する BAC Clone RP11-95N13の DNA Probeでハイブリダイゼーションを実施した。 結果.
図 6は、 各検体組織(A〜; ί)で観察したがん細胞の一部(6 細胞分)の光 学顕微鏡写真 (蛍光像) を示す。 示されるように、 がん細胞においてシ グナルが 3スポッ ト以上見出された。 アレイ CGH法により遺伝子増幅度 (G/R)が 1.2以上であった 10検体において、 S RM S遺伝子領域が増幅 していることが確認された。 また、 病態ステージの初期から後期にわた り遺伝子増幅が起きていることが示された。 このことは、 S RM S遺伝 子領域が、 がん治療薬の分子標的としてだけでなく、 FISH 法によるが ん診断に応用できることを示している。 実施例 6 : 質量分析による血中 S RM Sタンパク質の検出
1 ) 血液検体の前処理
大腸癌患者の血清検体 10 L及び健常者血清検体 10 Lを、 希釈バッ ファ溶液 ( 10mM Tris HC1 ph 7.4+150mM NaCl ) 500 L で希釈後、 ProteomeLab IgY-12 SC プロテオ一ムパーティ シ ョ ニングキ ッ ト (BECKMAN COULTER: A24618) を用いてアルブミン、 グロブリ ン等の血 清中多量蛋白質を除去した。 得られた画分に終濃度 lOmM となるように ジチオスレイ ト一ル (Wako:049-08972) を加え、 還元反応を 60°Cで 30 分間行った。 反応終了後、 終濃度 10mM となるようにョードアセトアミ ド (SIGMA: 144-48-9) を加え、 アルキル化反応を室温で 30 分間、 遮光 状態で行った。 反応終了後、 反応液の 4 倍量の冷アセ トン (Wako:014 - 08681, 一 20で) を加え、 _80でに 1 時間静置した後に 15, 000 x g で 30 分間遠心してタンパク質を沈殿として回収した。 回収したタンパク 質は の 2M尿素 + lOOmM重炭酸アンモニゥム溶液に溶解した。 溶 解後に一部を BCA法による夕ンパク質濃度測定に供した。 試料タンパク 質と 1/50 (w/w)となるようにトリプシン (Promega: V511C) を加え、 37でで 16時間消化反応を行った。
2) Nano-HPLC直結質量分析装置による解析
ペプチド断片 0. 量を ^- Precolumn cartridge (C18 PepMap300,
5 UL m, 300A, 300 M DI i. d. x 5 mm LC PACKINGS: 163589) と直結させた ナ ノ カ ラ ム (C18 PepMap 3 m, 100 A , 75 ^ m i. d. x 150 mm LC PACKINGS: 160321) によ り分離した。 HPLC 装置は Ultimate Plus (LC PACKINGS)を用いた。 流速は 200nL/min、 0. 1%ギ酸 (Wako:062-02901) 含有 2 ァセトニトリル (MERCK: 1287229) と 0. ギ酸含有 90%ァセ トニ トリルの濃度勾配が 0.57¾/minの直線グラジェントを設定して解析を行 つた。 Nano-HPLCで分離した試料は PicoTip (New Obj ect ive :FS360-20- 10-D-20) を通して直結したイオントラップ型質量分析装置に連続的に 導入した。 質量分析装置は HCT Plus (Bruker Dal tonics)を用いた。 試 料のイオン化はキヤピラリー電圧 1500V、 エンドプレートオフセッ ト値 500V、 ドライガス流量 12 L/min、 ドライガス温度 250°Cの条件で行った。 イオントラップの設定は標的 DI/Z の前後 2 Da の取り込みとし、 MRM モ 一ドでの MS/MS解析を行った。 3 ) データ解析
質量分析装置から得た全分析データは Data Analysis ソフ トウェア (Bruker Daltonics) を介して出力した。 出力した全デ一夕中から標的 分子の分析データのみを抽出した。 抽出したデータの中から各分析時間 における MS/MSデータを精査し、 標的分子のフラグメントイオンに相当 する質量を持つイオンピークの有無を解析した。 結果
図 7 Aおよび図 7 Bは、 ( A ) 大腸がん患者由来の血清、 および (B) 健常者由来の血清について、 上記の方法で解析した結果をそれぞ れ示す。
図 8 A〜Cは、 MS/MS 解析によって決定された、 図 7に示すピークと アミノ酸 (またはアミノ酸配列) との対応関係を示す。
図 7および図 8に示されるように、 標的分子のフラグメントイオンに 相当するイオンピークが、 大腸がん患者由来の血清中に明確に認められ
た。 すなわち、 図 8 Bに示すように、 少なくとも C末端側から N A A E PATWという部分配列が決定され、 これは、 S RMSタンパク質のァ ミノ酸配列 (配列番号 2 ) 中の 3 9 2位〜 3 9 9位のアミノ酸配列に相 当する。 よって、 図 8 Aに示すように、 ァミノ酸配列 3 9 2位〜 4 0 1 位の標的ペプチドフラグメント (配列番号 1 3 ) が同定された。 このよ うな部分配列に対応するイオンピークは健常者血清を用いた解析では認 められなかった (図 8 Cを参照) 。 よって、 この標的分子 (すなわち、 S RM Sタンパク質) は癌特異的に血中存在量が増加している可能性が 強く示唆された。 実施例 7 : 子宮頸がん由来株 HeLa細胞株での RNAi効果の評価
大腸がん細胞株では、 S RM S遺伝子のノックダウンにより、 増殖抑 制効果が認められたが、 子宮頸がん細胞株においてどのような効果が認 められるのか、 前述の RNAi解析法により、 評価した。
子宮頸がん由来細胞の HeLa細胞株を用いて、 前出の 3種の siRNA を 用いて RNAi 解析を実施した。 s i R N Aの細胞内への導入は、 〇 1 i g o f e c t am i n e ( I n v i t r o g e n ) を使用し、 1 0 0 nMの s i RNAを添付のプロ トコールに従い細胞に導入した。 対照に は N e g a t i v e C o n t r o l s i R NA (Q I AGE N) を 使用した。 結果
図 9は、 HeLa 細胞に S RMS遺伝子の s i RNAを T r a n s f e c t i o n後、 4 日目の細胞を用いて測定試薬により生細胞数を測定 (MTT assay) した結果を示す。 グラ フ は N C (Negat ive control siRNA (Qiagen 社製))に対する相対量を示した。 図に示されるように、 S R M S遺伝子の s i RNA 3種 ( a, b , c ) それぞれ、 siRNA a に おいて 31 , siRNA t)において 17 , s i A c において 22%の増殖抑制効 果が認められた (pく 0.01の t検定において有意)。
さらに、 時系列に従い、 顕微鏡下で微分干渉像を撮影し、 その動態を 詳細に観察した。 具体的には、 HeLa細胞に siRNA (a, b, c)を トランス フエクシヨ ン後、 1, 2, 3, 4 日後の同視野の微分干渉像を観察した。 その結果を図 1 ひに示す。 NC は Negative control s iRNA (Qiagen社製) を使用した。 NC と比較して増殖速度の抑制と、 細胞死の誘導(一部を矢 印で示す)が確認された。 図中、 a、 b、 および cはそれぞれ、 図 9の s i RNA a、 s i RNA b、 および s i RNA cに対応する。 図 1 0 に示されるように、 増殖抑制が認められた a, b, cにおいて細胞死の誘 導が認められた。
この結果より、 S RM S遺伝子機能の阻害が大腸がんだけでなく、 子 宮頸がんにおいても抗腫瘍性効果を示すことが示唆された。 産業上の利用可能性
本発明は、 がんの治療剤、 診断剤、 診断方法、 治療方法、 ならびにそ れに使用するキッ トなどを提供する。 したがって、 本発明は、 がんの診 断、 または標的治療等の分野において有用である。
Claims
1. S RM S遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治療 剤。
2. 前記 S RMS遺伝子の発現阻害物質が、
( a) S RMS遺伝子の発現を RN A i効果により阻害する作用を有 する核酸、
(b) S RM S遺伝子の転写産物またはその一部に対するアンチセン ス核酸、
および
( c ) S RM S遺伝子の転写産物を特異的に切断するリボザィム活性 を有する核酸、
からなる群から選択される物質を含む、 請求項 1に記載のがん治療剤。
3. S RM S夕ンパク質の活性阻害物質を有効 分として含有するがん 治療剤。
4. 前記 S RM Sタンパク質の活性阻害物質が、
該 S RM S夕ンパク質に対する抗体、
を含む、 請求項 3に記載のがん治療剤。
5. 前記がんが大腸がんまたは子宮頸がんである、 請求項 1〜4のいず れかに記載のがん治療剤。
6. S RM S遺伝子の発現阻害物質をスクリーニングする方法であって,
(a) S RM S遺伝子を発現する細胞に、 被検化合物を接触させるェ 程、
( b ) 該 S RM S遺伝子の発現レベルを測定する工程、 および
(c ) 被検化合物を接触させない場合と比較して、 該発現レベルを低 下させる化合物を選択する工程を包含する、 スクリーニング方法。
7. S RM S夕ンパク質の活性阻害物質をスクリ一ニングする方法であ つて、
(a ) S RMSタンパク質と被検化合物とを接触させる工程、
(b) 該 S R M S夕ンパク質と被検化合物との結合活性を測定するェ 程、 および
( c ) 該 S RM Sタンパク質と結合する化合物を選択する工程を包含 する、 スクリーニング方法。
8. 前記がんが大腸がんまたは子宮頸がんである、 請求項 6または 7に 記載の方法。
9. S RM Sタンパク質に対する抗体。
1 0. 請求項 9に記載の抗体を含有するがん治療剤。
1 1. 放射性同位元素、 治療タンパク質、 低分子の薬剤、 または治療遺 伝子を担持したベクターをさらに含有する、 請求項 1 0に記載のがん治 療剤。
1 2. 前記がんが大腸がんまたは子宮頸がんである、 請求項 1 0または 1 1に記載のがん治療剤。
1 3. 請求項 9に記載の抗体を含有するがん診断剤。
1 4. S RMS遺伝子またはその一部の塩基配列にス トリンジェントな 八ィプリダイゼーション条件下でハイプリダイズ可能な塩基配列を含有 するがん診断剤。
1 5. 前記がんが大腸がんである、 請求項 1 3または 1 4に記載のがん 診断剤。
1 6. 請求項 9に記載の抗体を含有するがん診断用キッ ト。
1 7. S RM S遺伝子またはその一部の塩基配列にス 卜リンジェン卜な ハイプリダイゼーション条件下でハイプリダイズ可能な塩基配列からな るポリヌクレオチドを含有するがん診断用キッ ト。
1 8. 前記がんが大腸がんである、 請求項 1 6または 1 7に記載のがん 診断用キッ 卜。
1 9. 被験者由来の生体試料中の S RM Sタンパク質または S RMS遺 伝子をがんマーカーとして検出および Zまたは定量する方法。
2 0. 前記生体試料が、 全血、 血清、 または血漿である、 請求項 1 9に 記載の方法。
2 1. 質量分析装置を用いて、 S RM Sタンパク質を検出および また は定量する、 請求項 1 9.または 2 0に記載の方法。
2 2. 抗 S RM S抗体を用いて、 S RM Sタンパク質を検出および Zま たは定量する、 請求項 1 9〜 2 1のい; Tれかに記載の方法。
2 3. ( a) 被験者由来の生体試料と、 S RM Sタンパク質に対する抗 体とを接触させる工程、 および
(b) 前記試料中での前記抗体と、 S RMSタンパク質との結合を検 出およびノまたは定量する工程、
を包含する、 請求項 2 2に記載の方法。
24. ( a) 被験者由来の生体試料と、 S RM S遺伝子またはその断片 の塩基配列にス トリンジェン卜なハイプリダイゼーショ ン条件下でハイ プリダイズ可能な塩基配列からなるポリヌクレオチドとを接触させるェ 程、 および
(b) 前記試料中での前記ポリヌクレオチドと.、 S RMS遺伝子また はその断片とのハイプリダイゼーションを検出およびノまたは定量する 工程、
を包含する、 請求項 1 9または 2 0に記載の方法。
2 δ . がんの診断に用いるための請求項 1 9〜 2 4のいずれかに記載の 方法。
2 6. 前記がんが、 大腸がんである、 請求項 2 5に記載の方法。
2 7. 配列番号 5、 配列番号 6、 配列番号 7、 配列番号 8、 配列番号 9、 または配列番号 1 0の塩基配列を有する、 ポリヌクレオチド。
2 8. S RMS遺伝子の発現阻害物質を有効成分として含有するがん治 療剤であって、 配列番号 5、 配列番号 6、 配列番号 7、 配列番号 8、 配 列番号 9、 または配列番号 1 0の塩基配列を有するポリヌクレオチドを 含有する、 がん治療剤。
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