明 細 書
水可溶性有機物の回収方法及び回収システム
技術分野
[0001] 本発明は、水可溶性有機物を含む被処理水を、水可溶性有機物層と水層に分離 させ、水可溶性有機物を高濃度、且つ高回収率で回収する方法、及びその回収シス テムに関する。
背景技術
[0002] 水可溶性有機物を含む被処理水からの水可溶性有機物を分離'回収する方法とし ては、溶媒抽出方法と蒸留法が従来から一般的に広く用いられている。しかしながら 、これらの方法はそれぞれ以下に述べるような問題点がある。
[0003] まず、溶媒抽出法についてであるが、この方法は主に水に溶解しにくい有機物を水 力 除去する場合に広く用いられ、水に溶解している有機物を有機溶媒側に抽出分 離し、回収する方法として知られている。しかし、この方法は水に溶解している成分を ある一定の比率(分配係数)で溶媒側に抽出する方法であり、不純物の一部はその 比率に従って水側に残留する。このため、アルコール類ゃケトン類などの水に易溶な 有機物を分離 '回収する場合には、分離効率は悪い。
[0004] そのため、アルコール類ゃケトン類などの水に易溶な有機物は蒸留法を用いて分 離'回収する。この方法は沸点の違いを利用して、当該液を加熱して水と有機物を分 離する方法である。例えば、メタノールやアセトン、 2 _プロパノールなどの有機物が 含まれている水の場合、これらの成分は水より沸点が低い物質であるため、この蒸留 法を適用すれば、これらの成分を水から分離 ·回収することができる。し力、しながら、こ の蒸留方法では、処理対象の液体全体を、一旦分離される液体の沸点まで加熱す る操作と、気化した分離対象を再度凝集させるための冷却操作が必要であり、加熱と 冷却に多くのエネルギーを必要とする。蒸留法を利用した有機物の回収方法として は、例えば、特許文献 1に開示された方法がある。
[0005] また、水可溶性有機物を含む被処理水から水可溶性有機物を分離'回収する方法 として、塩析が用いられる場合がある。しかし、従来において用いられていた食塩を
添加して水可溶性有機物を分離 ·回収する方法も可溶性有機物を高濃度、且つ高 回収率で分離'回収するには至っておらず、また、特許文献 2には、アルカリ金属水 酸化物及び電解質を添加して水可溶性有機物を分離'回収する方法が提案されて いる力 水可溶性有機物を高濃度、且つ高回収率で分離 ·回収するには至っていな レ、。
[0006] 特許文献 1:特開平 11一 35504号公報「イソプロピルアルコールの回収方法」
特許文献 2:特開昭 59— 62540号公報「アルコールの乾燥方法」
非特許文献 1 :化学便覧 基礎編 Π (改訂 4版)、 日本化学会編(1993年) 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] そこで、本発明の技術的課題は、水可溶性有機物を含む被処理水からの水可溶 性有機物の回収に、多量のエネルギーを消費する蒸留を用いず、またアルコール類 ゃケトン類などの水に易溶な有機物を分離 ·回収する場合に分離効率の悪い溶媒抽 出を用いずに、水可溶性有機物を含む被処理水から水可溶性有機物を高濃度、且 つ高回収率で分離'回収する方法、及び回収システムを提供することにある。 課題を解決するための手段
[0008] 本発明者等は上記の現況に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、水可溶性有機物を含 む被処理水に、水可溶性有機物と水を分離するときの温度での水に対する溶解度 力 ¾0質量%以上で、且つ回収する水可溶性有機物に対する溶解度が 1質量%以下 である塩のうち少なくとも 1種類以上を添加して、被処理水を水可溶性有機物層と水 層に分離させ、水可溶性有機物を高濃度、且つ高回収率で回収する方法を見出し、 本発明をなすに至ったものである。
[0009] 即ち、本発明の一態様によれば、水可溶性有機物を含む被処理水に、溶解度が 水に対して 30質量%以上で、且つ回収する水可溶性有機物に対して 1質量%以下 である塩のうち少なくとも 1種を添加して、前記水可溶性有機物と水とを分離すること を特徴とする水可溶性有機物の回収方法が得られる。
[0010] また、本発明のもう一つの態様によれば、水可溶性有機物を含む被処理水を蓄え る蓄積手段と、前記被処理水に、溶解度が水に対して 30質量%以上で、且つ回収
する水可溶性有機物に対して 1質量%以下である塩のうち少なくとも 1種を添加する 分離塩添加手段と、前記水可溶性有機物と水とを分離して回収する分離回収手段と を備えていることを特徴とする水可溶性有機物の回収システムが得られる。
発明の効果
[0011] 本発明によれば、水可溶性有機物を含む被処理水からの水可溶性有機物の回収 に、多量のエネルギーを消費する蒸留を用いず、またアルコール類ゃケトン類などの 水に易溶な有機物を分離'回収する場合に分離効率の悪い溶媒抽出を用いずに、 水可溶性有機物を含む被処理水から水可溶性有機物を高濃度、且つ高回収率で 分離'回収する方法、及び回収システムを提供することができる。
発明を実施するための最良の形態
[0012] 以下、本発明をより詳細に説明する。本発明では、水可溶性有機物を回収する方 法及び回収システムを提供する。
[0013] 具体的に、本発明の水可溶性有機物を回収する方法では、水可溶性有機物を含 む被処理水に、水に対する溶解度が 30質量%以上で、且つ回収する水可溶性有機 物に対する溶解度が 1質量%以下である塩のうち少なくとも 1種類以上を添加して、 被処理水を水可溶性有機物層と水層に分離させ、水可溶性有機物を回収すること により、水可溶性有機物を含む被処理水から水可溶性有機物を高濃度、且つ高回 収率で分離'回収するものである。
[0014] また、本発明の水可溶性有機物を回収するシステムでは、上記水可溶性有機物を 回収する方法を実施するための装置であって、水溶性有機物からなる被処理水を収 容するための容器等からなる蓄積手段と、この水溶性有機物を含む被処理水に、前 記塩を添加するための分離塩添カ卩手段と、前記塩によって水可溶性有機物層と水 層とに分離された前記分離塩添加被処理水から、前記水可溶性有機物を分け、回 収する分離回収手段を備えている。これらの各手段はその機能を果たすならば、ど のような器具であっても良いことは勿論である。
[0015] また、本発明では、水可溶性有機物を含む被処理水に添加する塩は、高回収率が 得られるように、水に対する溶解度が 30質量%以上で、且つ回収する水可溶性有機 物に対する溶解度が 1質量%以下の塩であり、好ましくは水に対する溶解度が 40質
量%以上で、且つ回収する水可溶性有機物に対する溶解度が 0. 5質量%以下であ り、より好ましくは水に対する溶解度が 50質量%以上で、且つ回収する水可溶性有 機物に対する溶解度が 0. 1質量%以下の塩である。また、水及び水可溶性有機物 に対する塩の溶解度を上記溶解度範囲に変化させるために、被処理水を加熱、また は冷却してもよい。
[0016] また、本発明では、水可溶性有機物を含む被処理水に添加する塩は、水に対する 溶解度が 30質量%以上で、且つ回収する水可溶性有機物に対する溶解度が 1質量 %以下である塩のうち少なくとも 1種類以上を添加することにより、水可溶性有機物を 高濃度、且つ高回収率で分離'回収する回収方法、及びそれらを使用した回収シス テムであり、塩としては、水可溶性有機物の回収率を高めるために好ましくは飽和に 、さらに好ましくは過飽和に添加することが好ましい。また、塩を添加した被処理水を 飽和あるいは過飽和状態にするために、被処理水溶液を加熱、または冷却してもよ レ、。
[0017] また、本発明では、水可溶性有機物を含む被処理水から水可溶性有機物を高濃 度、且つ高回収率で分離'回収する水可溶性有機物の回収方法、及びそれらを使 用した回収システムであり、水可溶性有機物としては比誘電率が 82以下であり、好ま しくは、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、ジェチルケトンなどであり、さら に好ましくは 2—プロパノール、アセトンなどがある。
[0018] また、本発明では、水可溶性有機物を含む被処理水から水可溶性有機物を高濃 度、且つ高回収率で分離'回収する水可溶性有機物の回収方法、及びそれらを使 用した回収システムであり、水可溶性有機物としては、好ましくは、例えば、アルコー ノレ、ケトン、エーテル、エポキシド、ァノレデヒド、ァミン、二トリル、有機酸、フエノール、 チオール、スルフイドなどである。
[0019] アルコールとしては、好ましくは、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、 1 _ プロパノール、 1—ブタノール、 2—ブタノール、 t _ブチルアルコール、ァリルアルコ ール、ァノレドーノレ、フルフリールアルコール、 2_アミノエタノールなどであり、さらに 好ましくは、 2 _プロパノールである。また、ヒドロキシル基を 2個以上有する多価アル コールであってもよぐ好ましくは、例えばエチレングリコール、グリセリン、トリエタノー
ノレアミン、トリエチレングリコール、 1, 2—プロパンジオールなどがある。
[0020] ケトンとしては、好ましくは、例えばェチルメチルケトン、ジェチルケトンなどであり、 さらに好ましくはアセトンである。
[0021] エーテルとしては、好ましくは、例えばジメチルエーテル、メチルェチルエーテル、 1
, 3 _ジォキサン、 1, 4 _ジォキサンなどである。
[0022] エポキシドとしては、好ましくは例えばエチレンォキシド、 1 , 2_プロピレンォキシド などである。
[0023] アルデヒドとしては、ホノレムァノレデヒド、ァセトアルデヒド、ホルムアミドなどである。
[0024] ァミンとしては、好ましくは、例えばェチルァミン、トリエチノレアミン、ベンジルァミンな どである。
[0025] 二トリルとしては、好ましくは、例えばァセトニトリルなどである。
[0026] 有機酸としては、好ましくは、例えばギ酸、グリセリン酸、酢酸、ビュル酢酸、ピリジン 酸、プロピオン酸、酪酸などである。また、部分的にフッ素などのハロゲン原子に置換 されたものでもよく、好ましくは例えば 2—クロ口エタノールなどである。
[0027] また、被処理水に含まれる水可溶性有機物は 1種類のもではなぐ 2種類以上を混 合したものでもよい。例えば、組み合わせとしてアルコールより 1種類、ケトンより 1種 類混合したものでもよい。
[0028] ここで、本発明では、水可溶性有機物を含む被処理水中の水可溶性有機物の濃 度が 0. 5-99. 5質量%である被処理液に適用され、さらに、好ましくは 1〜99質量 %、より好ましくは 2〜98質量%であるものに適用される。
[0029] 本発明では、水可溶性有機物を含む被処理水に添加する塩は、水に対する溶解 度が 30質量%以上で、且つ回収する水可溶性有機物に対する溶解度が 1質量%以 下である塩のうち少なくとも 1種類以上を添加することにより、水可溶性有機物を高濃 度、且つ高回収率で分離'回収する回収方法、及びそれらを使用した回収システム であり、水可溶性有機物が 2—プロパノールの場合、塩としては、好ましくは、例えば 、フッ化セシウムなどであり、さらに好ましくはフッ化カリウム、炭酸カリウムなどがある。
[0030] 本発明は、水可溶性有機物を含む被処理水に添加する塩は、水に対する溶解度 力 ¾0質量%以上で、且つ回収する水可溶性有機物に対する溶解度が 1質量%以下
である塩のうち少なくとも 1種類以上を添加することにより、水可溶性有機物を高濃度
、且つ高回収率で分離'回収する回収方法、及びそれらを使用した回収システムで あり、求められる水可溶性有機物の純度によっては、回収した水可溶性有機物を蒸 留、溶媒抽出、イオン交換樹脂、イオン交換膜、電気透析などを用いてさらに精製し てもよい。
[0031] 以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものでは ないことは勿論である。
[0032] また、以下の例 1、例 2及び比較例では、次の表 1に示した塩を用いた。
[0033] (参考例)
下記表 1に示した No. :!〜 6の塩の 2_プロパノールに対する溶解度を測定した。 測定方法は 100mlの PFA容器に 2_プロパノールを入れた後、過剰の塩を入れ、攪 拌しながら一定温度下で 6時間放置した。その後、 1時間静置させてから、濾過した 上澄み液約 5gを白金シャーレに採り、重量を測定した。重量変化がなくなるまで、 15 0°Cのホットプレート上で蒸発乾固した後、重量を測定し、蒸発前後の重量から濃度 を計算して溶解度を求めた。
[0034] また、下記表 1に示した No.:!〜 6の塩の水に対する溶解度は、非特許文献 1に記 載のものによった。
[0035] [表 1]
[0036] (例 1)
被処理水として 2—プロパノールを 30質量%含むモデル被処理水を用いた。この モデル被処理水 50gを入れた PFA容器を 2本用意し、次いで、それぞれに塩を添加 した後の溶液が過飽和になるようにフッ化カリウム: 30. lgまたは炭酸カリウム: 41. 9 gを添加し、一定温度下で 2時間攪拌した。その後、 1時間静置させて上層と下層に 分離さてから、上層中の 2 _プロパノール含有量、上層の体積を測定して、 2_プロ パノールの濃度及び回収率を求めた。その結果を下記表 2に示す。
[表 2]
[0038] (例 2)
被処理水として 2_プロパノールを 30質量%含むモデル被処理水を用いた。この モデル被処理水 50gを入れた PFA容器を用意し、次いで、それぞれにフッ化力リウ ム: 10. lg、 15. lg、 24. Ogまたは 30. lgを添加し、一定温度下で 2時間攪拌した。 その後、 1時間静置させて上層と下層に分離さてから、上層中の 2_プロパノール含 有量、上層の体積を測定して、 2—プロパノールの濃度及び回収率を求めた。その 結果を下記表 3に示す。
[0039] [表 3]
(比較例)
上記本発明の例 1において、 2_プロパノールを 30質量%含むモデル被処理水 5 Ogを入れた PFA容器を 4本用意し、次いで、それぞれに塩を添加した後の溶液が過 飽和になるように、水酸化カリウム: 54. 6g、塩化カルシウム: 31. 0g、塩化ナトリウム : 11. 3g、フッ化ナトリム: 2. 0gを添加し、一定温度下で 2時間攪拌した。その後、 1
時間静置させた。上層と下層に分離したサンプルに関しては、上層中の 2—プロパノ ール含有量、上層の体積を分析して、 2—プロパノールの濃度及び回収率を求めた 。その結果を下記表 4に示す。
[表 4]
[0042] 以上説明の通り、本発明の実施の形態による水可溶性有機物の回収方法及び回 収システムは、水可溶性有機物を含む被処理水に、水可溶性有機物と水を分離する ときの温度での水に対する溶解度が 30質量%以上で、水可溶性有機物に対する溶 解度が 1質量%以下である塩のうち少なくとも 1種類以上を添加し、水可溶性有機物 を分離 ·回収するため、蒸留法のように加熱と冷却に多くのエネルギーを必要とせず 、また水に易溶な有機物に対して分離効率の悪いアルコール類ゃケトン類などに対 しても高濃度、且つ高回収率で分離 ·回収することができるものである。
産業上の利用可能性
[0043] 以上説明した通り、本発明に係る水可溶性有機物の回収方法及び回収システムは 、化学薬品や化学製品の製造における水可溶性有機物の回収、精製は勿論、産業 排水や半導体装置の製造における処理水の回収'リサイクル等や化学プラントにお ける水可溶性有機物の回収や、産業上用いられる資源の回収や水の純化にも有効 に利用することができる。