明 細 書
電気デバイスモジュール及び電気デバイスモジュール集合体
技術分野
[0001] 本発明の一つは、複数のフィルム外装電気デバイスが一体化された電気デバイス モジュールに関する。本発明の他の一つは、複数の電気デバイスモジュールが相互 に電気接続された電気デバイスモジュールの集合体に関する。
背景技術
[0002] 近年、電動モータを駆動源とする電気自動車やハイブリッド電気自動車 (以下、単 に「電気自動車」 t ヽぅ)の開発が急速に進められて!/、る。電気自動車に搭載される 電動モータの電源には、電気自動車の操縦特性や一回の充電での走行距離等を向 上させるために、小型軽量ィ匕が求められる。力かる要求に応える電源を実現すベぐ 特開 2001— 76691号公報などに開示されているフィルム外装電池が開発される。 また、前記フィルム外装電池をケース内に多数収容して所望の出力電圧が得られる ようにした電池パック(「組電池」と呼ばれることもある)も開発されている。特開 2001 — 76691号公報などに開示されているフィルム外装電池の基本構造を図 5に示す。 このフィルム外装電池 100は、正極側活電極、負極側活電極、及び電解液からなる 発電要素 101がラミネートフィルム 102によって被覆されている。ラミネートフィルム 10 2は、アルミニウムなどの金属フィルムと熱融着性の榭脂フィルムとが重ね合わされた フィルムである。発電要素 101を被覆している 2枚のラミネートフィルム 102の対向す る 4辺は、気密に溶着されている。また、溶着されたラミネートフィルム 102の一方の 短辺からは、フィルム状の正電極端子 103が引き出され、他方の短辺からはフィルム 状の負電極端子 104が引き出されている。
発明の開示
[0003] フィルム外装電池 1個あたりの出力電圧は 3〜4V程度である。従って、実用的な出 力電圧を得るためには、多数のフィルム外装電池を直列接続する必要がある。しかし 、接続されるフィルム外装電池の数が多くなると、実装、運搬、保管等に手間が掛か る。例えば、電動モータによって自動車を走行させるためには、一般的に 300V〜40
OV程度の電圧が必要とされる。 300V〜400Vの電圧を得るためには、 100個以上 のフィルム外装電池が必要となる。 100個以上のフィルム外装電池がバラバラの状態 では非常に扱い難ぐ電池パックの組立にも手間や時間を要する。
[0004] 本発明の目的は、フィルム外装電気デバイスを所定個数ずつモジュールィ匕すること によって、大量のフィルム外装電気デバイスを取り扱う際の利便性を向上させることで ある。
[0005] 本発明は、複数のフィルム外装電気デバイスが個別に収容された複数のセルケー スカ それらセルケースを貫通する 2以上の固定部材によって一体ィ匕されていること を主要な特徴とする。
[0006] 本発明の電気デバイスモジュールは、充放電可能な電気デバイス要素がフィルム によって被覆された複数のフィルム外装電気デバイスと、前記複数のフィルム外装電 気デバイスが個別に収容された複数のセルケースと、前記複数のセルケースが積層 されて収容されているモジュールケースとを有している。さらに、前記モジュールケー スは、積層方向一端のセルケースと接する側板を備えた保持部材と、積層方向他端 のセルケースと接する蓋板とを備え、前記保持部材又は前記蓋板に設けられた 2以 上の揷入孔力 挿入された細長の固定部材力 前記モジュールケース内の複数の セルケースをその積層方向に貫通して 、る。
[0007] 本発明の電機デバイスモジュール集合体は、前記本発明の電気デバイスモジユー ルがケース内に複数収容され、それら複数の電気デバイスモジュールが相互に電気 接続されている。
図面の簡単な説明
[0008] [図 1]フィルム外装電池の外観斜視図である。
[図 2]ケース入りフィルム電池の分解斜視図である。
[図 3]電池モジュールの分解斜視図である。
[図 4]電池パックの分解斜視図である。
[図 5]従来のフィルム外装電池の外観斜視図である。
発明を実施するための最良の形態
[0009] 以下、本発明の電気デバイスモジュール集合体 (以下、単に「モジュール集合体」と
記す)の実施形態の一例について説明する。本例のモジュール集合体は、ケースに 収容された複数のフィルム外装電池 (フィルム外装電気デバイス)が直列接続された 電池パックである。さらに、前記ケース内に収容されている前記複数のフィルム外装 電池は、所定個数ずつ一体ィ匕されて電池モジュール (電気デバイスモジュール)を構 成している。要するに、本例のモジュール集合体は、複数の電池モジュールがケース 内に収容された電池パックである。
[0010] 本例の電池パックを構成しているフィルム外装電池について図 1を参照しながら説 明する。図 1に示すフィルム外装電池 10は、不図示の正極側活電極、負極側活電極 、及び電解液を有する発電要素 11が 2枚のラミネートフィルム 12によって気密に包 装された二次電池であって、出力電圧は約 3. 6Vである。ラミネートフィルム 12は、ァ ルミ-ゥムなどの金属フィルムと熱融着性の榭脂フィルムとが重ね合わされたフィルム である。発電要素 11を被覆している上下 2枚のラミネートフィルム 12の対向する 4辺 は気密に溶着されている。
[0011] フィルム外装電池の発電要素には、積層型と捲回型とがある。積層型の発電要素 では、独立した正極側活電極と負極側活電極とがセパレータを介して積層されて!ヽ る。一方、捲回型の発電要素では、セパレータを介して積層された帯状の正極側活 電極と負極側活電極とが捲回され、扁平状に圧縮されている。もっとも、正極側活電 極と負極側活電極とが交互に積層されている点では、積層型も捲回型も同じである。 図 1に示すフィルム外装電池 10の発電要素 11は、積層型及び捲回型の!/、ずれであ つてもよい。さらに、前記正極側活電極及び負極側活電極には、一般的なリチウムィ オン二次電池に用いられて ヽる正極板及び負極板を用いることができる。一般的な 正極板は、アルミニウム箔などの両面に、リチウム 'マンガン複合酸ィ匕物、コバルト酸リ チウム等の正極活物質が塗布されている。一般的な負極板は、銅箔などの両面に、 リチウムをドープ'脱ドープ可能な炭素材料が塗布されている。従って、セパレータを 介して対向させた前記一般的な正極板と負極板とにリチウム塩を含む電解液を含浸 させることによって図 1に示す発電要素 11を得ることができる。もっとも、発電要素 11 は、特定の発電要素に限定されず、正極、負極および電解質を含む発電要素であ れば如何なる発電要素であっても構わない。例えば、通常の電池に用いられる任意
の発電要素をそのまま、或いは適宜設計変更して使用することも可能である。
[0012] 再び図 1を参照する。フィルム外装電池 10の一方の短辺からは、前記正極側活電 極に接続された正電極端子 13が引き出され、他方の短辺からは、前記負極側活電 極に接続された負電極端子 14が引き出されている。正電極端子 13及び負極用電極 14の材料は、電気的特性を考慮して選択される。図 1に示すフィルム外装電池 10で は、正電極端子 13にアルミニウム、負電極端子 14に銅又はニッケルが用いられてい る。
[0013] 本例の電池パックでは、上記構造を有するフィルム外装電池 10が 1つずっセルケ ース 20に収容されている。さらに、セルケース 20に収容されたフィルム外装電池 10 ( 以下「ケース入りフィルム電池 21」)が所定個数ずつ一体ィ匕されて電池モジュール 30 を構成している。そこで、セルケース 20の構造を図 2に示し、電池モジュール 30の構 造を図 3に示す。
[0014] 図 2に示すように、セルケース 20は、ケース本体 21と枠体 22とから構成されている 。ケース本体 21は、枠状の底板 23と、底板 23の周縁から立ち上げられた側壁 24と を有する。側壁 24は、その内側に図 1のフィルム外装電池 10を収容可能な形状及び 寸法を有する。一方、枠体 22は、ケース本体 21の側壁 24の内側に嵌合可能な形状 及び寸法を有する。枠体 22をケース本体 21に収容されたフィルム外装電池 10の上 に被せると、フィルム外装電池 10の周縁力 本体ケース 21の底板 23と枠体 22との 間に挟まれる。ケース本体 21の底板 23には、 7個の貫通孔 25が形成されている。こ れら貫通孔 25は、ケース本体 21内に収容されたフィルム外装電池 10、及びそのフィ ルム外装電池 10の上に被せられた枠体 22と重複しない位置に形成されている。換 言すれば、貫通孔 25の開口位置は、ケース入りフィルム電池 21の表裏面に連通す るように設計されている。尚、セルケース 20に収容されたフィルム外装電池 10の正電 極端子 13及び負極用電極 14は、ケース本体 21の短辺に設けられている 2つの切り 欠き 26を通してセルケース 20の外部にそれぞれ弓 Iき出されて!/、る。
[0015] 次に、電池モジュール 30について説明する。図 3に示すように、電池モジュール 30 は、モジュールケース内に、複数のケース入りフィルム電池 21を収容し、収容された 複数のケース入りフィルム電池 21を一体化したものである。モジュールケースは、榭
脂製の保持部材 31及び蓋板 32を有する。モジュールケース内には、 12個のケース 入りフィルム電池 21が収容されている。
[0016] モジュールケースの保持部材 31は、側板 33と、側板 33の四隅力も蓋板 32に向け て突設されたアーム 34とを有する。さらに、各アーム 34の内側には、ケース入りフィ ルム電池 21 (セルケース 20)及び蓋板 32の四隅がそれぞれ嵌合可能な略 L字形の 案内溝 35が長手方向に沿って形成されている。 12個のケース入りフィルム電池 21 は、案内溝 35の案内に従って 4本のアーム 34の内側に収容され、セルケース 20の 厚み方向に積層されている。
[0017] 蓋板 32は、 12個のケース入りフィルム電池 21がアーム 34の内側に収容された後 に、同じく案内溝 35の案内に従って 4本のアーム 34の内側に嵌め込まれる。嵌め込 まれた蓋板 32は、積層方向最も手前のケース入りフィルム電池 21aに接触する。ここ で、アーム 34の長さは、 12個のケース入りフィルム電池 21の厚みの合計よりも蓋板 3 2の厚み分だけ長くなつている。従って、 12個のケース入りフィルム電池 21に次いで アーム 34の内側に嵌め込まれた蓋板 32の表面と、アーム 34の端面とは面一になつ ている。尚、側板 33及びアーム 34の表面には、補強のために多数のリブが形成され ている。
[0018] 保持部材 31の側板 33には、各セルケース 20に設けられている貫通孔 25 (詳しくは 図 2参照)と連通するロッド挿入孔 36が複数形成されている。また、蓋板 32にも、貫 通孔 25と連通するボルト挿入孔 37が複数形成されている。そして、保持部材 31の口 ッド揷入孔 36から挿入された固定部材としてのロッド 38が、全てのケース入りフィル ム電池 21を貫いて、蓋板 32のボルト揷入孔 37に達している。ロッド 38は、細長中空 で、その内周面には不図示の螺子が形成されている。ボルト揷入孔 37に達したロッド 38の一端には、ロッド 38と反対側力もボルト挿入孔 37に挿入されたボルト 39が螺合 されている。すなわち、保持部材 31、 12個のケース入りフィルム電池 21及び蓋板 32 は、これらを貫く 7本のロッド 38によって一体化(モジュール化)されている。
[0019] ロッド 38の他端には矩形の頭部 40が形成され、ロッド揷入孔 36の周縁には、頭部 40が嵌合可能な矩形の凹部(不図示)が形成されている。ロッド 38の頭部 40を前記 凹部に嵌合させることによって、ロッド 38の一端にボルト 39を螺合する際のロッド 38
の共回りが防止される。前記凹部の深さは、該凹部に嵌合した頭部 40が側板 33の 表面力も突出することがないように、頭部 40の厚み以上とされている。また、ロッド 38 に螺合されたボルト 39の頭部 41が蓋板 32の表面カゝら突出しないように、蓋板 32の ボルト挿入孔 37の周縁にもボルト 39の頭部 41が嵌合可能な凹部が形成されている
[0020] ボルト挿入孔 37の内径は、ロッド 38の外径よりも小さい。従って、蓋板 32に接して いるケース入りフィルム電池 21aを貫通したロッド 38は、ボルト挿入孔 37には挿入さ れない。このことは、複数のケース入りフィルム電池 21を挟んでいる保持部材 31の側 板 33と蓋板 32との間の距離をロッド 38の長さによって規定可能であることを意味す る。さらに、金属製のロッド 38は、榭脂製の保持部材 31及び蓋板 32に比べて寸法精 度が高いので、側板 33と蓋板 32との間の距離をより正確に規定可能であることを意 味する。また、側板 33と蓋板 32との間の距離が正確に規定されるということは、その 間の複数のケース入りフィルム電池 21が均一な圧力によって積層方向に加圧される ことを意味する。
[0021] 上記のようにしてモジュール化された 12個のケース入りフィルム電池 21は、上下の アーム 34間に架け渡されたノ スバー 42を介して直列接続されている。従って、 1つ の電池モジュール 30の出力電圧は約 43Vである。もっとも、各電池モジュール 30を 構成するケース入りフィルム電池 21の数は 12個に制限されない。但し、人間は、 50 V以下であれば感電による即死を免れるとされているので、安全性の観点からは、出 力電圧が 50V以下となる数が望まし 、。
[0022] 図 4に示すように、本例の電池パック 50では、図 3に示す電池モジュール 30が本体 ケース 51内に 8個収容されている。本体ケース 51は、電池モジュール 30が搭載され る下ケース 52と、下ケース 52に搭載された電池モジュール 30に被せられる上ケース 53と、上ケース 53の長手方向一方の開口部を閉塞するケース蓋 54とから構成され ている。上ケース 53の長手方向他方の開口部は、リレーボックス 55によって閉塞され ている。換言すれば、 8個の電池モジュール 30は、蓋板 54とリレーボックス 55との間 に一列に並べられた状態で本体ケース 51内に収容されて!、る。リレーボックス 55に は、ヒューズ、リレー、電流センサ等が収容されている。図示は省略されている力 電
池モジュール 30と上ケース 53の内側面との間には、絶縁材製のプレートが介在して いる。
[0023] 本体ケース 51内に収容された 8個の電池モジュール 30は、直列接続されている。
具体的には、直列接続された 4個の電池モジュール 30と、直列接続された他の 4個 の電池モジュール 30と力 リレーボックス 55内の安全プラグを介してさらに直列接続 されている。従って、電池パック 50の出力電圧は、約 350Vである。
[0024] これまでは、フィルム外装電気デバイスがフィルム外装電池である場合を例にとって 、本発明の実施形態を説明してきた。しかし、本発明の電気デバイスモジュール又は 電気デバイスモジュール集合体を構成するフィルム外装電気デバイスは、フィルム外 装電池に限られない。例えば、電気工ネルギを内部に蓄積可能な電気デバイス要素 (例えば、電気二重層キャパシタゃ電解コンデンサに代表されるキャパシタ素子)を 外装用フィルムで封止したフィルム外装電気デバイスも含まれる。
産業上の利用可能性
[0025] 本発明によれば、フィルム外装電気デバイスが所定個数ずつ一体化される。従って 、大量のフィルム外装電気デバイスを取り扱うに際に、それらフィルム外装電気デバ イスがバラバラである場合に比べて、運搬、保管その他の多くの場面において非常 に便禾 ljである。
[0026] モジュール化された個々のフィルム外装電気デバイスは、個別にセルケースに収容 されている。さら〖こ、 2以上の固定部材が、フィルム外装電気デバイスが収容された複 数のセルケースを貫通している。従って、モジュール内の複数のフィルム外装電気デ バイスが確実に位置決めされ、振動や衝撃によって位置ずれが発生する可能性が 極めて低い。