明 細 書
ヒト K一 ras遺伝子転写抑制剤
技術分野
[0001] 本発明は、ヒトのガン遺伝子である K ras遺伝子、特に K ras癌遺伝子の発現を 特異的に抑制することのできるヒト K— ras遺伝子転写抑制剤ならびにヒト K— ras遺 伝子転写抑制活性を有する蛋白質に関する。
背景技術
[0002] Rasは、発ガンウィルスにより誘導される悪性腫瘍の原因となる遺伝子として最初に 同定されたガン遺伝子 (非特許文献 1、非特許文献 2)であり、 Ras遺伝子群 (H— Ra s、 K-Ras、 N-Ras、 R-Ras )を構成して ヽる。
[0003] Ras遺伝子は、分子量 21kDaの GTP結合タンパク質をコードしており、いずれも成 長因子の受容体を介して GDP結合型カゝら GTP結合型へと活性ィ匕されることで、 MA Pキナーゼカスケードにシグナルを伝達して細胞の増殖ゃ分ィ匕に関与している。
[0004] Ras遺伝子(蛋白質)はそのままでは発癌活性を持たな ヽが、これらの遺伝子に変 異が生じると発癌活性を獲得し、該変異を有する細胞が形質転換されることが知られ ている(非特許文献 3)。これまでにも数多くのヒトの癌細胞において Ras遺伝子の突 然変異が報告されて ヽる (非特許文献 4)。
[0005] Ras遺伝子群を構成する K— Ras遺伝子は、ヒト第 12染色体の短腕上に位置して いる。その活性ィ匕型変異体 (K—ms癌遺伝子)は、ヒトの癌において最も多く見いだ される癌遺伝子の一つであり、ヒト大腸癌の約 50%、肺癌の 25〜50%、膝癌の 70 〜90%においてその存在が認められている(非特許文献 5、非特許文献 6)。これら の癌では、 K— ras癌遺伝子力 の変異型 K— Ras蛋白質の持続的な発現、生成が 、細胞の癌化ならびに癌細胞としての形質維持に必要不可欠であることが明ら力とな つている。
[0006] このため、生体内において、 ras遺伝子、例えば K ras遺伝子、特に K ras癌遺 伝子の発現ある!/、は K ras癌遺伝子産物の機能を抑制することで、癌を抑制しょう とする試みがなされて 、る。
[0007] 例えば、 RAS遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた RAS遺伝子 の阻害 (特許文献 1)や、フアルネシルァミン、ゲラ-ルゲラニルァミンまたはそれらの 誘導体の有効量を用いた脾癌治療剤が知られて ヽる (特許文献 2)。
[0008] 本発明は、 K ras遺伝子、特に K ras癌遺伝子の発現を抑制することのできる蛋 白質性の医薬を提供するものである。
[0009] 特許文献 l :WO99Z02732公報
特許文献 2 :特開平 10— 218764号公報
非特許文献 l : Barbacid, M. , Annu. Rev. Biophem. 56, 779-827 (1987) 非特許文献 2 :Lowy, D. R. & Willumsen, B. M. , Annu. Rev. Biophem. 62, 851 -891 (1993)
非特許文献 3 : Storer RD et al. Cancer Res. 46 : 1458- 1464, 1986 非特許文献 4 : Minamoto T et al. Cancer Detection and Prevention 2
4 : 1 - 12, 2000
非特許文献 5 : Clark, G. J. & Der, C. J. , Cellular Cancer Markers (eds Garrett, C. T. & Sell, S. ) 17— 52 (Humana Press, Totowa, New Jers ey(1995)
非特許文献 6 : Bos, L. , Cancer Res. 49, 4682-4689 (1989)
発明の開示
[0010] 本発明者らは、配列番号 1に示されるアミノ酸配列からなる、ホメォドメインを含むヒ ト精巣で発現が確認されている蛋白質 (以下、 ESXR1とする)の生理学的機能につ いて研究を行った結果、意外にも、 ESXR1ならびにその N末端部分断断片(以下、 ESXRl— A Cとする)力 インビボで癌細胞における K— ras遺伝子の転写を特異的 に抑制する活性を有していることを見いだし、以下の各発明を完成した。
[0011] 1)配列番号 1に示されるアミノ酸配列よりなる蛋白質、配列番号 1に示されたアミノ酸 配列において 1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列 よりなる蛋白質であってヒト K ms遺伝子転写抑制活性を有する蛋白質、またはそ れらのヒト K—ms遺伝子転写抑制活性を有する部分断片蛋白質よりなる群力 選ば れるーもしくはそれ以上の蛋白質力もなる、ヒト K— ms遺伝子転写抑制剤。
[0012] 2)部分断片蛋白質が、分子量 45kdの N末端断片である、 1)に記載のヒト K— ras遺 伝子転写抑制剤。
[0013] 3)部分断片蛋白質のアミノ酸配列が、配列番号 1の 1〜229番目のアミノ酸配列また は 1〜229番目のアミノ酸配列において 1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしく は付加されたアミノ酸配列である、 2)に記載のヒト K—ms遺伝子転写抑制剤。
[0014] 4)配列番号 2〜4に示された何れかのアミノ酸配列力 なる蛋白質、または配列番号 2〜4に示された何れかのアミノ酸配列において 1または数個のアミノ酸が置換、欠失 もしくは付加され、かつヒト K—ms遺伝子転写抑制活性を有する蛋白質。
[0015] 5) 4)に記載の蛋白質をコードする核酸。
[0016] 6)配列番号 2〜4の何れかに示された塩基配列からなる核酸、または配列番号 2〜4 に示された何れかの塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダィズする塩基 配列からなり、かつヒト K ras遺伝子転写抑制活性を有する蛋白質をコードする核 酸。
[0017] 7) 1)〜4)に規定される蛋白質をコードする核酸、 5)または 6)に記載の核酸のいず れかを含む、癌の遺伝子治療用組換えウィルスベクター。
[0018] 8) 5)または 6)の 、ずれかに記載の核酸を含む組換えベクター。
[0019] 9) 1)〜3)の何れかに記載の記載のヒト K ras遺伝子転写抑制剤または 4)に記載 の蛋白質を癌細胞に投与することを特徴とする、癌の治療方法。
[0020] 10) 7)に記載の組換えウィルスベクターを患者の癌細胞に導入することを含む、癌 の遺伝子治療方法。
図面の簡単な説明
[0021] [図 1]図 1は、 GST—ESXR1—HDとP3コンセンサス領域を有するDNAとの結合試 験のァガロース電気泳動を表す。
[図 2]図 2は、 Myc— ESXRおよび Myc— ESXRl— A C1と任意の P3コンセンサス 領域を有する DNAとの結合試験のラシオオートグラフィーを表す。
[図 3]図 3は、任意の P3コンセンサス領域を有するレポータープラスミドに対する ESX R1の発現抑制効果を示す。
[図 4]図 4は、 DOX処理した U2ZtetESXRl細胞での細胞内 K Ras蛋白質の発
現レべノレを示す。
[図 5]図 5は、 DOX処理した U2— OS細胞での、細胞内 K Ras蛋白質の発現レべ ルを示す。
[図 6]図 6は、 S期及び G2ZM期で停止した U2ZtetESXRl細胞内の K Ras蛋 白質の発現を表す。
[図 7]図 7は、 DOX処理した U2ZtetESXRl細胞での細胞内 H— ras蛋白質の発現 レべノレを表す。
[図 8]図 8は、 ESXR1発現による、細胞内 K ras遺伝子の mRNA発現レベルの低 下を示す。
[図 9]図 9は、 ESXR1による、 K ras遺伝子中の P3コンセンサス領域を有するレポ 一タープラスミドに対する ESXR1の発現抑制効果を示す。
[図 10]図 10は、 ESXR1を発現する大腸癌細胞の増殖能を示す。
[図 11]図 11は、 ESXR1を発現する大腸癌細胞の細胞内 K Ras蛋白質の発現レべ ルを示す。
[図 12]図 12は、 ESXR1を発現する大腸癌細胞の増殖能を示す。
発明を実施するための最良の形態
[0022] 本発明のヒト K ms遺伝子転写抑制剤は、配列番号 1に示されるアミノ酸配列より なる蛋白質 (ESXR1)、配列番号 1に示されたアミノ酸配列にぉ 、て 1もしくは数個の アミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列よりなる蛋白質であってヒト K—r as遺伝子転写抑制活性を有する蛋白質、またはそれらのヒト K ms遺伝子転写抑 制活性を有する部分断片蛋白質よりなる群力 選ばれる一もしくはそれ以上の蛋白 質からなる。
[0023] ESXR1は、全 406個のアミノ酸残基からなる蛋白質であり、フォーンらによって、こ れをコードする遺伝子 (ESXR1)が主にヒト精巣で発現して 、ることが報告されて!、る (Fohn L. E. , et al. , Genomics, Vol. 74, pp. 105— 108, 2001)。この論文 は、核酸配列上の特徴としてホメォボックスドメインを持つことを開示している力 蛋白 質としての ESXR1の生理学的機能につ!、ては、何らの知見も与えて!/、な!/、。
[0024] また、本発明者らの研究により、 ESXR1は、ヒト細胞内においてサイクリン分解を抑
制する機能を有すること、また細胞内プロテアーゼによってプロセッシングを受け、約
45kdの N末端側断片と約 20kdの C末端側断片となること、さらにこの C末端側断片 がサイクリン分解に関与すること、 N末端側断片は核内に局在していることなどが報 告されている(Ozawaら、 Oncogene, Vol. 23、 6590— 6602、 2004)。
[0025] 意外なことに、この ESXR1の N末端側断片である ESXR1 Δ Cは、ヒト癌細胞に おける K—ras癌遺伝子に対して、同遺伝子の第 1イントロンに存在する核酸配列で ある TAATGTTATTAを認識して結合することにより、その発現を特異的に抑制し、 癌細胞の増殖を阻害する活性を有していることが明らかとなった。
[0026] 従って、 ESXR1 Δ Cある!/、は細胞内プロセッシングによってこれを生じさせる ES XR1を癌細胞に投与する、あるいは癌細胞内でこれらをコードする遺伝子を発現さ せることにより、癌細胞内で発現している K—ras遺伝子、特に K—ras癌遺伝子の発 現を特異的に抑制することが可能となる。この特異性は、癌細胞以外の正常細胞に 対しては何らの負の作用を示さないことを意味し、従って、本発明の K—ras遺伝子 転写抑制剤は、癌細胞に対して選択性の高い良好な抗癌剤となり得る。
[0027] なお、 K ras遺伝子転写抑制活性を有する限り、配列番号 1または 2に示されたァ ミノ酸配列において、 1以上のアミノ酸が置換、欠失、および Z若しくは付加したァミノ 酸配列からなるポリペプチドあるいは蛋白質、若しくはそれらを含む K ras遺伝子転 写抑制剤も、本発明の範囲内である。
[0028] 蛋白質においては、アミノ酸残基の電荷、大きさ、疎水性等の物理化学的性質に ついて、保存性の高い変異が許容されることが、経験的に認められている。例えば、 アミノ酸残基の置換にっ 、ては、グリシン(Gly)とプロリン(Pro)、 Glyとァラニン (Ala )またはパリン (Val)、ロイシン(Leu)とイソロイシン(lie)、グルタミン酸(Glu)とグルタ ミン(Gin)、ァスパラギン酸 (Asp)とァスパラギン (Asn)、システィン(Cys)とスレオ- ン (Thr)、 Thrとセリン(Ser)または Ala、リジン (Lys)とァノレギニン (Arg)等が挙げら れる。また、上述の意味の保存性を超えた場合でも、なおその蛋白質の本質的な機 能、本発明においては K ms遺伝子転写抑制活性を失わない変異、も当業者にお いて経験されるところである。さらに、異なる生物種間に保存される同種の蛋白質力 幾つかのアミノ酸が集中あるいは分散して欠失あるいは挿入されて 、ても、なお本質
的な機能を保持して ヽる例も多く認められて ヽる。
[0029] 従って、配列番号 1または 2に示されたアミノ酸配列において、 1以上のアミノ酸が置 換、欠失、および Z若しくは付加したアミノ酸配列力もなる蛋白質であっても、 K-ra s遺伝子転写抑制活性を有する蛋白質であれば、これらは本発明の K ras遺伝子 転写抑制剤として範囲内にあると言うことができる。
[0030] このようなアミノ酸の改変は、遺伝子多形等の様に自然界において認められ得る他 、当業者に公知の方法、例えば NTGなどの変異誘発剤を用いた突然変異誘発法や 種々の組換遺伝子手法を用いた部位特異的変異法を利用して、人為的に行うことが できる。
[0031] アミノ酸の変異部位および個数は、 K ras遺伝子転写抑制活性を有する蛋白質を 提供する限り、特に制限はないが、変異個数は通常数十アミノ酸以内、好ましくは 10 アミノ酸以内である。アミノ酸配列の同一性の程度で改変の許容範囲を表せば、本 発明の蛋白質のアミノ酸配列は、配列番号 1または 2に示されたアミノ酸配列に対し て 80%以上、好ましくは 90%以上、より好ましくは 95%以上の同一性を有していれ ばよい。
[0032] 本発明の核酸は、配列番号 2〜4に示される何れかのアミノ酸配列力 なる蛋白質 をコードする遺伝子、典型的には配列番号 2〜4に示される何れかの塩基配列力ゝらな る核酸である。かかる核酸は、配列番号 2〜4に開示された塩基配列を基に、一般的 なノ、イブリダィゼーシヨン等の遺伝子工学的手法を用いたクローユングや、ホスホアミ ダイト法などの化学合成的手法を利用して、当業者により容易に調製される。その形 態としては cDNA、ゲノム DNAの他、化学合成 DNAなどが含まれる力 特に制限は ない。
[0033] また、配列番号 2〜4に示される塩基配列から導かれる RNAの配列や、これに相補 的な DNAおよび RNAの配列などは一義的に決定されるので、本発明は、かかる R
NA、相補鎖 DNAもしくは RNAもまた提供する。
[0034] また、本発明の核酸は、配列番号 2〜4に示された何れかの塩基配列にストリンジェ ントな条件下でノ、イブリダィズする塩基配列力 なり、かつヒト K ras遺伝子転写抑 制活性を有する蛋白質をコードする核酸をも含むものである。
[0035] 配列番号 2〜4に記載の塩基配列力 なる核酸とストリンジ ントな条件でノ、イブリ ダイズする核酸においては、その核酸にコードされる蛋白質が K—ms遺伝子転写抑 制活性を有する範囲内において、その塩基配列を変化させることができる。
[0036] 例えば、同一アミノ酸残基をコードする複数のコドン (縮重コドン)や、種々の人為的 処理例えば部位特異的変異導入、変異剤処理によるランダム変異、制限酵素切断 による核酸断片の変異 ·欠失'連結等により、部分的に塩基配列が変化したものであ つても、これらが配列番号 2〜4に記載の核酸配列とストリンジ ントな条件下でハイ ブリダィズし、かつ K ras遺伝子転写抑制活性にっ 、て配列番号 2〜4に示された 塩基配列からなる核酸にコードされる蛋白質と機能的に同等な蛋白質を提供する核 酸であれば、配列番号 2〜4に示した塩基配列との相違に関わらず、本発明の範囲 内のものである。
[0037] 上記の変異の程度は、配列番号 2〜4に記載の塩基配列と 80%以上、好ましくは 9 0%以上の相同性を有するものであれば許容範囲内である。また、ハイブリダィズす る程度としては、通常の条件下、例えば DIG DNA Labeling kit (ベーリンガ一'マンハ ィム社製)でプローブをラベルした場合に、 32°Cの DIG Easy Hyb溶液(ベーリンガー 'マンハイム社製)中でハイブリダィズさせ、 50°Cの 0. 5 X SSC溶液(0. l% [w/v] SDSを含む)中でメンブレンを洗浄する条件(1 X SSCは 0. 15M NaCl、0. 015M クェン酸ナトリウムである)でのサザンハイブリダィゼーシヨンで、配列表で特定した核 酸にハイブリダィズする程度であればよ!、。
[0038] 本発明の核酸は、 ESXRl— A Cの組換え的生産、あるいは遺伝子治療用べクタ 一の生産に使用することができる。すなわち、本発明の核酸は、形質転換細胞の調 製、さらには該形質転換細胞を用いた ESXR1— A Cの生産方法、さらには ESXR1 — A Cを用いた癌の遺伝子治療に有用である。同様に、 ESXR1— A Cを生体内で 提供し得る ESXR1をコードする核酸を含むベクター、特に遺伝子治療用ウィルスべ クタ一は、癌の遺伝子治療に利用することができ、従って、力かるベクターも本発明を 構成する。
[0039] 本発明の ESXRl— A Cあるいは ESXR1をコードする遺伝子を有する形質転換細 胞は、当業者に公知の技術を適用して調製することが可能であり、例えば、市販され
あるいは当業者が一般に入手容易な様々なベクターを利用して、適当な宿主細胞へ 本発明の核酸を組み入れることが可能である。その際、プロモーターゃェンハンサー に代表される発現制御遺伝子の影響下におくことで、宿主細胞内での発現を任意に コントロールすることが可能である。
[0040] (核酸)
本発明の核酸は 1本鎖であっても、それに相補的な配列を有する核酸や RNAと結 合して 2重鎖、 3重鎖を形成していても良い。また、当該核酸は、ホースラディッシュぺ ルォキシダーゼ (HRPO)等の酵素や放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質等で 標識されていてもよい。
[0041] 本発明の核酸を DNAライブラリ一力 得る例としては、ヒト精巣のゲノム DNAライブ ラリーや cDNAライブラリーを、ノ、イブリダィゼーシヨンによるスクリーニング法や、抗 体を用いたィムノスクリーニング法等でスクリーニングし、 目的の核酸を有するクロー ンを増幅させ、そこ力 制限酵素等を用いて切り出す方法がある。
[0042] ノ、イブリダィゼーシヨン法によるスクリーニングは、配列番号 2に記載の塩基配列も しくはその一部を有する核酸を32 P等でラベルしてプローブとし、任意の cDNAライブ ラリーに対して、公知の方法で(例えば、 Maniatis T.等, MolecularCloning, a Laboratory Manual, Cola spring harbor Laboratory, New York, 1982 年)行うことができる。
[0043] ィムノスクリーニング法で用いる抗体は、後述する本発明の抗体を使用することがで きる。本発明の核酸はまた、ゲノム DNAライブラリーもしくは cDNAライブラリーを铸 型とする PCR (Polymerase Chain Reaction)によっても得る事ができる。例えば 、配列番号 1または 2に記載の塩基配列をもとに、センスプライマー、アンチセンスプ ライマーを作成し、任意の DNAライブラリーに対し、公知の方法(例えば Michael A. I.等, PCR Protocols, a Guide to Methods and Applications, Acad emic Press, 1990年参照)等を行うことで、本発明の核酸を得る事もできる。
[0044] 上記各種方法で使用する DNAライブラリ一としては、本発明の核酸を有する DNA ライブラリーを挙げることができ、好適にはヒト精巣由来のライブラリーであれば、いか なるものも使用可能である。また、本発明の核酸を有する細胞から cDNAライブラリ
一を作成するのに適した細胞を選び、公知の方法 (J. Sambrook等、 Molecular C lonmg, a Laboratory Manual 2nd ed. , Cold Spring Haroor Laborato ry, New York, 1989年参照)に従って、 cDNAライブラリーを作製し、利用するこ とがでさる。
[0045] また本発明の核酸は、本明細書に開示された配列を基にホスホアミダイト法などの 化学合成的手法により調製することも可能である。
[0046] 本発明の核酸を有する組換えベクターは、環状、直鎖状等 、かなる形態のもので あってもよい。力かる組換えベクターは、本発明の核酸に加え、必要ならば他の塩基 配列を有していてもよい。他の塩基配列とは、ェンハンサー配列、プロモーター配列 、リボゾーム結合配列、コピー数の増幅を目的として使用される塩基配列、シグナル ペプチドをコードする塩基配列、他のポリペプチドをコードする塩基配列、ポリ A付加 配列、スプライシング配列、複製開始点、選択マーカーとなる遺伝子の塩基配列等 のことである。
[0047] 遺伝子組み換えに際しては、適当な合成 DNAアダプターを用いて翻訳開始コドン や翻訳終止コドンを本発明の核酸に付加したり、あるいは塩基配列内に適当な制限 酵素切断配列を新たに発生させたりあるいは消失させたりすることも可能である。これ らは当業者が通常行う作業の範囲内であり、当業者は本発明の核酸を基に任意か つ容易に加工することができる。
[0048] また本発明の核酸を保持するベクターは、使用する宿主に応じた適当なベクターを 選択して使用すればよぐプラスミドの他にバタテリオファージ、バキュロウィルス、レト ロウィルス、ワクシニアウィルス等の種々のウィルスを用いることも可能である力 遺伝 子治療用に開発されたウィルスベクターの利用が特に好ま 、。
[0049] 本発明の遺伝子の発現は、該遺伝子固有のプロモーター配列の制御下に発現さ せることができる。あるいは、本発明の遺伝子の上流に別の適当な発現プロモーター を該遺伝子固有のプロモーター配列に接続あるいは置き換えて使用することもできる 。この場合に使用するプロモーターは、宿主及び発現の目的に応じて適宜選択すれ ばよぐ例えば宿主が大腸菌である場合には T7プロモーター、 lacプロモーター、 trp プロモーター、え PLプロモーターなど力 宿主が酵母である場合には PH05プロモ
一ター、 GAPプロモーター、 ADHプロモーター等力 宿主が動物細胞である場合に は SV40由来プロモーター、レトロウイルスプロモーター等を例示できる力 当然なが らこれらには限定されない。
[0050] 核酸をベクターに導入する方法は公知である (J. Sambrook等、 Molecular Clo nmg, a Laboratory Manual 2nd ed. , Cold Spring Harbor Laborator y,ニューヨーク(New York) , 1989年、参照)。すなわち、核酸とベクターをそれぞ れ適当な制限酵素で消化し、得られたそれぞれの断片を DNAリガーゼを用 ヽてライ ゲーシヨンさせればよい。
[0051] (蛋白質)
本発明の蛋白質は、ヒト精巣力も調製することもできるが、ペプチド合成機 (例えば 、ペプチドシンセサイザー 430A型、パーキンエルマ一ジャパン (株)製)を使用した 化学合成法、あるいは原核生物もしくは真核生物から選択される適当な宿主細胞を 用いた組換え方法によって調製することが、生成物の純度ならびに回収量の面から も好ましい。
[0052] 前項の組換えベクターを用いて形質転換させる宿主細胞には特に制限はなぐ E. coli, B. subtilisあるいは S. cerevisiaeに代表される遺伝子工学手法において利 用可能な下等細胞、昆虫細胞、 COS7細胞、 CHO細胞、 Hela細胞に代表される動 物細胞など多くの細胞が、本発明に対しても利用可能である。
[0053] 糸且換えベクターを宿主細胞に導入する方法としては、エレクト口ポレーシヨン法、プ ロトプラスト法、アルカリ金属法、リン酸カルシウム沈澱法、 DEAEデキストラン法、マ イク口インジェクション法、ウィルス粒子を用いる方法等がある力 いずれの方法も利 用することができる。
[0054] 当該蛋白質を遺伝子工学的に生産するには、上述の形質転換体を培養して培養 混合物を回収し、当該蛋白質を精製する。形質転換体の培養は、一般的な方法で 行うことができる。
[0055] 培養混合物力 本発明の蛋白質を精製する方法としては、蛋白質の精製に通常使 用されている方法の中から適切な方法を適宜選択して行うことができる。すなわち、 塩析法、限外濾過法、等電点沈澱法、ゲル濾過法、電気泳動法、イオン交換クロマト
グラフィー、疎水性クロマトグラフィーや抗体クロマトグラフィー等の各種ァフィ二ティ 一クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング法、吸着クロマトグラフィーおよび逆相ク 口マトグラフィ一等、通常使用され得る方法の中から適切な方法を適宜選択し、必要 により HPLCシステム等を使用して適当な順序で精製を行えば良い。
[0056] また、本発明の蛋白質を他の蛋白質やタグ (例、ダルタチオン Sトランスフェラーゼ、 プロテイン A、ヒキサヒスチジンタグ、 FLAGタグその他)との融合蛋白質として発現さ せることも可能である。発現させた融合型は、適当なプロテアーゼ (例、トロンビンその 他)を用いて切り出すことが可能であり、ときとして蛋白質の調製をより有利に行うこと が可能となる。本発明の蛋白質の精製は当業者に一般的な手法を適宜組み合わせ て行えばよぐ特に融合蛋白質の形態で発現させたときは、その形態に特徴的な精 製法を採用することが好ましい。
[0057] また、組換え DNA分子を利用して無細胞系の合成方法 (J. Sambrook、 et al. : Molecular Cloning 2nd ed. (1989年))で得る方法も、遺伝子工学的に生産 する方法の 1つである。
[0058] この様に本発明の蛋白質は、それ単独の形態でも別種の蛋白質との融合蛋白質 の形態でも調製することができる力 これらのみに制限されるものではなぐ本願発明 の蛋白質を更に種々の形態へと変換させることも可能である。例えば、蛋白質に対す る種々の化学修飾、ポリエチレングリコール等の高分子との結合、不溶性担体への 結合、リボソームへの封入など、当業者に知られている多種の手法による加工が考え られる。
[0059] 本発明の K ras転写抑制剤は、患者あるいは患者の癌組織に直接、単独である いは適当な賦形剤及び Z又は添加剤とともに投与することができる。例えば、適当な リボソームに本発明の転写抑制剤を封入し、これを癌組織に直接デリバリーすること ができる。
[0060] 以下、本発明を、非限定的な実施例を示してさらに詳述する。以下の実施例にお いて、特に断らない限り、制限酵素処理その他の市販されている酵素またはキットの 利用は、すべてそれらにつ!、て推奨された反応条件下で行った。
実施例 1
[0061] l) Myc—タグ付カ卩 ESXR1ならびに ESXR1— A C発現ベクターの作製
Myc—ェピトープならびに ESXR1の N末端の 1番目〜 11番目のアミノ酸残基をコ ードする下記配列のオリゴヌクレオチド 1、ならびに ESXR1の C末端の 232番目〜2
41番目のアミノ酸残基をコードする核酸に相補する下記の配列力 なるオリゴヌタレ ォチド 2をそれぞれ合成した。
[0062] オリゴヌクレオチド 1:5'— CGGGATCCGCCGCCATGGAGCAAAAGCTCATTTCTGA
AGAGGACTTGAACGAG
TCTCTTCGCGGGTACACCCACAGTGAT-3'
オリゴヌクレオチド 2:5 ' -TAGTTGTGGCACCAGATGAACACACAAAGC-3 ' オザワら(Ozawa et a Oncogene, Vol. 23、 6590— 6602、 2004)の方法に 従ってクローユングされた ESXR1遺伝子を铸型にして、下記の条件で、 Takara E xTaqキット(Takara社)を用いて PCR (全 50 μ 1)を行い、 Myc—タグが Ν末端に付 カロされた ESXR1をコードする DNAフラグメントを調製した。
[0063] 水 38 1
オリゴヌクレオチド 1 1 1 (10 /ζ Μ)
オリゴヌクレオチド 2 Ι ^ Ι (ΙΟ ^ Μ)
dNTPミックス 4 1 (2. 5mM)
lOxPCR緩衝液 5 ^ 1
Ex Taq 0. 25 ^ 1
反応サイクル: 94°Cで 30秒、 55°Cで 30秒、 72°Cで 1分を 30回
上記の PCR反応により増幅された DNAフラグメントと哺乳動物発現ベクター pcDN A3(Invitrogen社)とを制限酵素 BamHI(New England BioLabs (NEB)社)と XbaI (N EB社)で消化し、 1509base pair (bp)の消化フラグメントと開環 pcDNA3とを DNAリ ガーゼ (Takara社)を用いて連結させ、大腸菌 DH5 α株を宿主として pcDNA3ZM yc— ESXR1を作製した。また、前記増幅 DNAフラグメントを制限酵素 BamHI (NE B社)で消化して得られる 731bpの消化フラグメントと、同制限酵素で消化した開環 p CDNA3とを DNAリガーゼ(Takara社)を用いて連結させて、大腸菌 DH5 α株を宿
主として pcDNA3/Myc— ESXR1— A Cを作製した。
[0064] 2)細胞株 U2ZtetESXRl、 U2/tet Δ Cの作製
制限酵素 EcoRI (NEB社)で消化し、 DNA Blunting Kit (Takara社)を用い平滑末 端化して得られる開環された発現ベクター pOPTET— BSD (畠山ら、 Anal. Biochem ., 261, 211-218, 1998; Proc. Natl. Acad. Sci.USA, 95, 8574-8579, 1998)と、 1)で調 整した 2種類のベクターをそれぞれ、制限酵素 Hindlll (NEB社)と Xbal (NEB社)で 消化して回収される Myc— ESXR1 (配列番号 3)または制限酵素 KpnI (NEB社)と Xbal (NEB社)で消化し回収される Myc— ESXRl - A C (配列番号 4)をコードする 各消化断片を DNA Blunting Kit (Takara¾:)を用い平滑末端化後、 DNAリガーゼを 用いて連結し、大腸菌 DH5 α株を宿主として pOPTET— BSDZMyc— ESXR1な らびに pOPTET— BSD/Myc— ESXR1 - Δ Cを作製した。
[0065] U2— OSヒト骨肉腫細胞由来の Tet—on細胞(CLONTECH社)にリン酸カルシゥ ム法(Hinds, P W. et al.、 Cell, 70、 993— 1006、 1992)を用いてこれらのプラ スミドベクターを遺伝子導入した後、 10 μ gZmlのブラストサイジンを含む DMEM培 地を用いて形質転換細胞を選択し、 Myc— ESXR1あるいは Myc— ESXR1— A C をテトラサイクリン依存的に誘導発現する細胞株として、 U2ZtetESXRlあるいは U 2/tet A Cを榭立した。
[0066] 3) ESXR1の認識配列の確認
M 13ベクター由来のフォワードプライマー配列(M 13— 20)、制限酵素 BamHI認 識配列、 paired -like homeodomainが認識する P3コンセンサス配列、制限酵素 Xbal認識配列ならびに M13由来リバースプライマー配列(M13reverse)を、 5'末 端から 3'末端に向けた順序で連結した下記に示される 59merのオリゴヌクレオチド 3 を合成し、さらにこれを ExTaq polymerase (Takara社)を用いて 2本鎖 DNA化 した。
[0067] オリゴヌクレオチド 3: 5, GTAAAACGACGGCCAGT— GGATCC— TAATNNNATTA— TCTAGA- CATGGTCAT
AGCTGTTTCC-3'
ダルタチオン Sトランスフェラーゼ (GST)との融合蛋白質を調製するためのベクタ
一 pGEX 4T— 2 (Amershambiosciences社)の所定の位置に、 ESXR1の 139番 目〜198番目のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる合成 DNAを挿入後、推 奨条件下で GST— ESXR1ホメォドメイン融合蛋白(GST— ESXR1HD)を誘導後 、精製した。得られた GST—ESXR1HDの 0. 4 gと前述の 2本鎖化した DNAの 5 μ gを、 50mM NaCl、 ImM EDTA、 5mM DTT、 ImM PMSF、 lO ^ g/ ^ l ロイぺプチン、 10 gZ 1ァプロチュンならびに 10 μ 1トリプシンインヒビターを 含む 50mMトリス塩酸緩衝液 ρΗ8. 0 (sonication buffer)と、 l%TritonX— 100 及び 0. 1%牛血清アルブミン(BSA、 SIGMA社)とを含む緩衝液中でグルタチオン セファロース 4Bビーズ(Pharmacia Biotech社)の存在下に混合して蛋白— DNA 複合体を形成させた後、ビーズを sonication buffer、 l%TritonX— 100、 0. 1% 3八及び0. 1%NP— 40を含む緩衝液を用いて洗浄した。
[0068] 次に、ビーズを下記の溶液 49.5 μ 1に浮遊し、 100°Cで 5分間処理した。ビーズを 取り除いた溶液に ExTaq 0. 5 1を加え、以下の PCRを行なった。
[0069] 水 29. 5 1
オリゴヌクレオチド 4: 5, -GTAAAACGACGGCCAGT-3, 5 μ l(lOpmol) オリゴヌクレオチド 5: 5, -GGAAACAGCTATGACCATG-3, 5 μ l(lOpmol) dNTP mix 5 ^ 1
10XPCR buffer 5 ^ 1
反応サイクル: 94°Cで 1分インキュベート後、 94°Cで 30秒、 70°Cで 30秒ならびに 72 。Cで 60秒を、 10— 20回
上記の PCR反応により増幅された DNAを制限酵素 BamHI及び Xbal (V、ずれも N EB社)で消化し、 17bpの消化フラグメントを単離した後、再び上記と同様の条件で G ST—ESXR1HD融合蛋白と混合して蛋白—DNA複合体を形成させ、ダルタチォ ンセファロース 4Bビーズにて回収した。この操作を合計 8サイクル行った後、 PCRに て増幅された DNA断片を pBluescript vector (Stratagene社)にクロー-ングし、 DNA塩基配列を決定した(図 1)。その結果、 ESXR1ホメォドメインは、 TAATNN NATTA (Nは任意のヌクレオチド)力 なる P3コンセンサス領域に特異的に結合す ることが明ら力となった。
[0070] 4) Electrophoretic mobility shift assay
3)の結果に基づき、下記の塩基配列力もなるオリゴヌクレオチドならびにこれに相 補的なオリゴヌクレオチド 6をそれぞれ合成し、 2本鎖プローブとした。
[0071] [化 1]
5 , -cgcgmTTTGATTAfcOTMTTTGATTA|GCfrAATTTGATT¾cgcg-3
[0072] プローブは [ a— P」dCTP (3, 000 μ Ci/mmoU Amersham Biosciences社 )と Klenow DNAポリメラーゼ (Takara社)を用いて放射能標識した。 1. 5 X 106個 の COS— 7細胞に、 1)で調整した pcDNA3ZMyc— ESXR1ならびに pcDNA3Z Myc—ESXRl— A Cそれぞれ 20 μ gをリン酸カルシウム法を用いてトランスフエクシ ヨンした。 DMEM培地で 40時間培養後に形質転換細胞を回収し、細胞抽出液 10 gに 8 1の結合バッファー(10mM HEPES pH7. 5、 60mM NaCl、 4mM MgCl、 0. ImM EDTA、 0. 1 %NP— 40、 10%グリセロール)、 1;^のポリ((11—
2
dc)、 10 gの BSAおよび 0. 02pmolの前記放射性標識 2本鎖プローブを加え、全 量 20 μ 1の反応液とし、氷上にて DNA結合反応を行った。反応後の DNA—蛋白複 合体を 0. 5 Χトリス硼酸— EDTA (TBE)緩衝液を泳動バッファ一として、 4%ポリア クリルアミドゲルを用いて 200Vで電気泳動し、泳動後のゲルをオートラジオグラフィ 一によつて解析した(図 2)。
[0073] 5)ノレシフェラーゼアツセィ
ルシフェラーゼレポータープラスミド pGL3— Promoter Vector (Promega社)の クロー-ング部位に、 4)で得た 2本鎖プローブを挿入した組み換えレポータープラス ミドを調製した。このレポータープラスミド 2 μ gと pcDNA3ZMyc— ESXR1 20 μ g をリン酸カルシウム法を用いて U2— OS骨肉腫細胞に導入した。 DMEM培地で 12 時間培養後細胞を回収し、細胞抽出液中のルシフ ラーゼ活性を推奨方法により測 定した。その結果、 Myc— ESXRlが発現している細胞中では、 4)で得た塩基配列 特異的にルシフェラーゼの発現が抑制されることがわ力つた(図 3)。
[0074] 6) ESXR1の発現により転写が抑制される遺伝子の確認
DMEM培地で 24時間培養した 3. 0 X 106個の U2tetESXRl細胞に、 2 gZml
の濃度で DOXを添カ卩して Myc— ESXRlの発現を誘導し、 12時間後に細胞を回収 した。コントロールとして DOX未処理細胞を用いた。
[0075] Trizol試薬(GIBCO社)を用いて細胞から全 RNAを抽出し、ホルムアルデヒド変性 ゲルにて RNAの精度を確認した。 Affymetrix社によって推奨されて!、るプロトコ一 ルに従 、ゝ全 RNA5 μ gを Superscript II (Invitrogen社)を用いて逆転写し、 cD NAィ匕した。 cDNA作成の際のプライマーとして下記の配列からなる Amersham Bi oSciences社のオリゴヌクレオチド 7を用いた。
[0076] 5, -GGCCAGTGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGAGGCGG-(T)24-3 ' 上記 cDNAを 2本鎖化し、 Phase Lock Gel(Eppendorf社)によって精製した。 インビトロ転写反応は、 Enzo BioArray High Yield RNA transcript labelli ng kit (Enzo Diagnostics社)を用い、 1 gの cDNAを用いて行った。得られた c RNAは RNeasy clean-up columns (Qiagen社)を用いて精製後、 lOOmM K OAcならびに 30mM MgOAcを含む 40mMトリス酢酸緩衝液 pH8. 1中で熱をカロ えて断片化した。
[0077] 断片化された cRNAlO μ gを、 lOOmM MES、 1M NaCl、 20mM EDTA及び 0 . 01%Tween— 20を含むハイブリダィゼーシヨン緩衝液中でハイブリダィゼーシヨン (45°C、 16時間)に用いた。洗浄ならびに染色は、 EukGE-WS2v4プロトコールのもと Fluidics Station 400 (Affymetrix社)を用いて行った。チップデータのスキャン ユングには、 Affymetrix GeneChip scanner 3000 (Affymetrix社)を用いた 。また、チップ分析には、 Affymetrix GeneChip (登録商標) Operating Softwa re verl . 1 (Affymetrixネエリ 用いた。
[0078] 上記の DN Aチップ解析データをもとに、 ESXR1の発現により転写が抑制され、力 つゲノムシーケンス上に TAATNNNATTA (Nは任意の塩基)配列が存在する既 知遺伝子を選択した。その結果、第一イントロン塩基配列内に TAATGTTATTAと いう P3コンセンサス配列を有する K ras遺伝子力 ESXR1による転写抑制の標的 候補遺伝子として同定された。
[0079] 7) ESXR1による K Ras発現抑制
5. 0 X 105個の U2ZtetESXRl細胞を、 DMEM培地で 24時間培養した後、ドキ
シサイクリン (DOX)を 2 μ gZml培地となるように添カ卩して、 ESXR1の発現を誘導し た。
[0080] DOX添カ卩添加 12時間後に細胞を回収し、 El Aバッファーを用いて細胞を溶解後 、蛋白濃度を測定した。蛋白 150 gを用いて 15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動 を行な 、、ゲル上で分離された蛋白をポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)フィルター (Millipore社)に転写し、 K—Ras蛋白質を認識するモノクローナル抗体を用いてゥ エスタンブロッテイングを行った。 DOX非添カ卩細胞をコントロール細胞とし、内部コン トロールには抗ァクチン抗体を用いた。
[0081] 蛋白は、 ECL detection system (Perkin Elmer社)を用いて検出し、蛋白質 のバンドは、 luminescent image analyser (LAS— 1000、富士フィルム社製)を 用いて定量化した。
[0082] その結果、 ESXR1誘導発現にともない U2ZtetESXRl細胞内の K Ras蛋白レ ベルの有意な減少が観察された(図 4)。
[0083] 一方、 K— Ras発現に及ぼす DOXの影響を検討するため、親株である U2— OS細 胞を用いて K Ras蛋白の発現を比較したところ、 DOXによる K Ras蛋白の変化 は認められなかった(図 5)。さらに、 U2ZtetESXRl細胞において、 DOX誘導後 1 2時間では細胞周期に影響は及ぼさない(図 4)力 ESXR1は M期細胞周期停止を 誘導することが知られているため、 5mMのヒドロキシゥレア、 50 Μのノコダゾール 処理により、 S期あるいは G2ZM期に U2ZtetESXRl細胞を停止させた状態での K Ras発現を比較したが、細胞周期依存的な K Ras蛋白の発現の変化は認めら れなかった(図 6)。そこで、 ESXR1による K Ras蛋白の発現低下が K Rasに特 異的なもの力否かを検討するため、同じ Rasファミリー分子である H— Rasの発現を 検討した力 ESXR1発現は H— Ras蛋白レベルに全く影響を与えな力つた(図 7)。
[0084] 以上より、 ESXR1は、細胞内で K— Ras発現を特異的に抑制していることが確認さ れた。
[0085] 8)リアルタイム PCRによる K— ras mRNA発現解析
3. O X 106個の U2ZtetESXRl細胞あるいは U2Ztet A C細胞から Trizol(GIB CO社)を用いて全 RN Aを抽出した。全 RNA10 μ g力ら Superscript II逆転写酵
素(Invitrogen社)により cDNAを合成し、以下の条件下に、 SYBRgreenPCRキッ ト(Strategene社)ならびに ABIPRISM7700シーケンスデテクター(PerkinElmer 社)を用いたリアルタイム PCRを行った。
[0086] PCR反応では、まず以下の反応液 (全量 13. 6 μ 1)を調製した。
[0087] オリゴヌクレオチド、 8: 5, -CCAGGTGCGGGAGAGAG-3,
オリゴヌクレオチド 9: 5 '— CCCTCATTGCACTGTACTCC— 3 '
全 RNA溶液 (lmgZml) 10 μ 1
オリゴ (dT) 溶液 (500 μ g/ml) 1 μ 1
12-18
DEPC処理 milli—<3水 2. 6μ\
上記反応液を 70°Cで 10分間加温後、氷上で 1分放置し、その後下記の組成よりな るプレミックスから 6.4 1を取り、反応液に加えた。
[0088] 5xFirst strand buffer(250mMトリス塩酸 pH8. 3、 375mM KCL、 15mM MgC12) 4 μ 1
25mMdNTPミックス 1 μ 1
0. 1M DTT 2μΙ
次に、 Superscript II逆転写酵素 1 1(200ユニット)をカ卩えよく混合後、 42°Cで 50分、 70°Cで 15分それぞれ放置後、 RNaseHを 1 1(2ユニット)をカ卩え、 37°Cで 2 0分反応させて铸型 RNAを分解し、一本鎖 cDNAを得た。この cDNAを用い、下記 の混合液 (全量 25 μ 1)を調製した。
[0089] 1 sample
SYBRgreenPCRキット(Strategene) 12. 5^1
Forward primer8(10pmol/ μ^:5,— CCAGGTGCGGGAGAGAG— 3, 1 μ\
Reverse primer9(10pmol/ μ^:5,—CCCTCATTGCACTGTACTCC— 3, 1μ\ cDNA 1 μ 1
MQ 9. 5^1
反応液 20 μ 1を用い、 ABIPRISM7700シーケンスデテクター(PerkinElmer社) にてリアルタイム PCRを行った。反応は、 50°Cで 2分、 95°Cで 10分それぞれ放置後 、 95°Cで 15秒、 60°Cで 1分を 40回繰り返した。その結果、 U2/tetESXRlあるい
は U2/tet A C細胞において、 ESXR1あるいは ESXR1— A Cの誘導により K— ras の mRNA発現が低下することが確認された(図 8)。得られた結果をさらに検証するた め、 pGL3プロモーターベクター(Promega社)の SV40プロモーターの上流に、 K ras遺伝子第一イントロン内に存在する 5'— TAATGTTATTA— 3'を含む下記の 配列からなるオリゴヌクレオチド 10を挿入したレポーターベクターを作製し、ルシフエ ラーゼアツセィを行った。
[0090] [化 2]
5 ' -TAA GGGTA GGACATCTtrAATGTTATTA^GAAAACAGTTTTGACCTCT-3
[0091] このレポーターアツセィにおいても、 ESXR1依存的なルシフェラーゼの転写抑制 が認められた(図 9)。さらに、 Electrophoretic mobility shift assayの結果から 、 ESXR1は、上記のコンセンサス配列部分と結合する一方、同配列を
[0092] [化 3]
5 , -cgcgTAAMGGGTAMGGACATCT†rACTGTTAGGdTGAAAACAGTTTTGACCTCTcgcg-3
[0093] に改変したオリゴヌクレオチド 11とは結合しな 、ことが確認された。
[0094] 9)癌細胞の増殖抑制能の確認
活性型 K— ras遺伝子変異を有するヒト大腸癌細胞 SW480 (4. O X 106個)に、 Li pofectamineTM2000試薬(Invitrogen)を用いて 19 gの pcDNA3ZMyc— ES XR1 - Δ C及び 1 μ gの pBabe— puro vectorを導入した。
[0095] DMEMZF12培地で 24時間後、細胞を 10分の 1に希釈して培養を続け、その 24 時間後より、 1. 5 gZmlのピューロマイシンを加えてさらに 3週間培養し、薬剤耐性 細胞を選択した。コントロールとして、 19 μ gの pcDNA3と 1 μ gの pBabe- puroを用い て同様に形質転換した SW480細胞を用いた。 ESXR1— A C発現細胞では、非発 現細胞に比較して薬剤耐性コロニーの著しい減少を認めた(図 10)。さらに、大腸癌 細胞 S W480にリン酸カルシウム法を用 、て pcDNA3/Myc - ESXR 1— Δ C及び pBabe-puroを導入し、ピューロマイシンにて選択することにより ESXR1— Δ Cを構成 的に発現するトランスフヱクタント細胞を得た。 ESXR1— A C発現細胞群は、 ESXR 1 A C非発現細胞群に比較して、 K Ras発現の有意な低下ならびに細胞増殖能
の低下を認めた(図 11、図 12)。
[0096] 以上の結果から、 ESXR1 Δ Cは K ras遺伝子発現を抑制し K Ras発現レべ ルを低下させることにより、変異型 K msにより癌形質が維持されている癌細胞の増 殖を抑制することが明らかとなった。
産業上の利用可能性
[0097] 本発明の K ras遺伝子転写抑制剤は、ヒト癌細胞において癌遺伝子である K ra s遺伝子の転写発現を特異的に抑制することにより、癌細胞の増殖抑制、さらには癌 細胞の正常細胞への復帰を誘導することができる。また、本発明の K— ras遺伝子転 写抑制剤によって正常 K— ras遺伝子の発現も抑制されるが、その機能は他の Rasフ アミリー遺伝子の発現により補填されるので、正常細胞における増殖あるいは分化〖こ は、本発明の抑制剤は影響を与えず、従って、正常細胞に対し副作用の少ない抗癌 剤となり得る。