明 細 書
スピントロ二タス材料及び TMR素子
技術分野
[0001] 本発明は、ハーフメタル等のスピントロ-タス材料及びそれを用いた TMR素子に関 する。
背景技術
[0002] 物質の電気伝導性に注目すると、電気を通すもの(導体)、絶縁体、低温では電気 を通さないが高温では通す半導体や、抵抗がない超伝導体等がある。このような性 質のメカニズムはナノレベルの世界での電子の振る舞いを調べると解明できることが 多い。
[0003] 電子は負の電荷と共に、上向き(up)スピン又は下向き(down)スピンの磁気モーメ ントを担っている。即ち、電子は上向き又は下向きの磁石となっている。それ故、上向 き又は下向きスピンが同数でない原子や物質は、スピン分極して磁石になる。近時、 このようなスピン分極を利用した「スピントロ-タス」という新たな分野が開拓され、発展 している。即ち、従来のデバイスは電荷を制御して利用している力 電荷以外にスピ ンをも制御する新し 、素子の開発に関する分野である。完全にスピン分極した電流 が得られれば、例えば、上向きスピンの電子だけが流れる電流が得られれば、これま でのデバイスとはまったく異なる機能を具えたデバイスが得られ、広 、分野での応用 が期待できる。
[0004] そして、このことを可能にするハーフメタル (完全にスピン分極した電流が流れる)が 発見され、新たな機能材料として注目されている。ハーフメタルに対して、期待されて いる典型的な応用例は、 MRAM (Magnetoresistive Random Access Memory)である 。この MRAMは、 TMR (Tunneling Magnetoresistive)素子を使用し、磁気によって データを記録する次世代メモリであり、世界中でその開発にしのぎが削られている。 2 つのハーフメタル薄膜で絶縁体の薄膜を挟み込むと、静電エネルギーを得するため に 2つのハーフメタル薄膜のスピンは互いに逆向きになるため、 TMR素子として格好 のものになる。また、量子計算機への応用等も期待されている。
[0005] 近年、ホイスラー合金 X YZ (L2型)及びハーフホイスラー合金 XYZ (C1型)の中
2 1 b にハーフメタルが存在すると理論的に予測され、実験的検証が盛んに行われように なっている。し力し、ハーフメタルの性質は原子配列の乱れに弱ぐハーフメタルであ る力否かを実験的に検証することは困難である。このため、ハーフメタルであることが 検証された例は極めて少ない。また、高いスピン分極率のスピントロ-タス材料の報 告も十分とはいえない。
[0006] 特許文献 1:特開 2003— 218428号公報
特許文献 2:特開平 11― 18342号公報
発明の開示
[0007] 本発明は、原子の乱れに強く高いスピン分極率が得られるスピントロ-タス材料及 びそれを用いた TMR素子を提供することを目的とする。
[0008] 本願発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明 の諸態様に想到した。
[0009] 本願発明に係るスピントロ-タス材料は、 X (Mn Cr ) Zを含有することを特徴と
2 l-y y
する。但し、 Xは、 Fe、 Ru、 Os、 Co及び Rhからなる群力も選択された少なくとも 1種 の元素であり、 Zは、 ΙΠΒ族元素、 IVB族元素及び VB族元素力 なる群力 選択さ れた少なくとも 1種の元素であり、 yは 0以上 1以下である。また、 Fe MnZ、 Co MnZ
2 2 ゝ Co CrAl及び Ru MnZは除かれる。
2 2
[0010] 本願発明に係る TMR素子は、上記のスピントロ-タス材料カゝらなる 2つの強磁性層 と、前記 2つの強磁性層の間に挟みこまれた非磁性層と、を有することを特徴とする。 図面の簡単な説明
[0011] [図 1A]図 1Aは、 Co MnSiの up— spinのE (k)曲線を示すグラフである。
2
[図 1B]図 1Bは、 Co MnSiの down— spinの E (k)曲線を示すグラフである。
2
[図 1C]図 1Cは、 Co MnSiの状態密度曲線を示すグラフである。
2
[図 2A]図 2Aは、 Ru CrSiの状態密度を示すグラフである。
2
[図 2B]図 2Bは、 (Ru Cr ) (Cr Ru ) Siの状態密度を示すグラフである
15/16 1/16 2 7/8 1/8
[図 2C]図 2Cは、 (Ru Cr ) (Cr Ru ) Siの状態密度を示すグラフである
13/16 3/16 2 5/8 3/8
図 3A]図 3Aは、(Ru Cr ) (Cr Ru ) Siの状態密度を示すグラフである。
7/8 1/8 2 3/4 1/4
図 3B]図 3Bは、 Ru (Cr Si ) (Si Cr )の状態密度を示すグラフである。
2 3/4 1/4 3/4 1/4
図 3C]図 3Cは、 (Ru Si ) Cr (Si Ru )の状態密度を示すグラフである。
7/8 1/8 2 3/4 1/4
図 4A]図 4Aは、強磁性状態での Ru CrSiの状態密度を示すグラフである。
2
図 4B]図 4Bは、強磁性状態での Ru CrGeの状態密度を示すグラフである。
2
図 4C]図 4Cは、強磁性状態での Ru CrSnの状態密度を示すグラフである。
2
図 5A]図 5Aは、強磁性状態での Fe CrSiの状態密度を示すグラフである。
2
図 5B]図 5Bは、強磁性状態での Fe CrGeの状態密度を示すグラフである。
2
図 5C]図 5Cは、強磁性状態での Fe CrSnの状態密度を示すグラフである。
2
図 6A]図 6Aは、(Fe Cr ) (Cr Fe ) Snの状態密度を示すグラフである
15/16 1/16 2 7/8 1/8 図 6B]図 6Bは、 Fe (Cr Sn ) (Sn Cr )の状態密度を示すグラフである。
2 7/8 1/8 7/8 1/8
図 6C]図 6Cは、 (Fe Sn ) Cr (Sn Fe )の状態密度を示すグラフである
15/16 1/16 2 7/8 1/8 図 7A]図 7Aは、(Fe Cr ) (Cr Fe ) Siの状態密度を示すグラフである。
15/16 1/16 2 7/8 1/8
図 7B]図 7Bは、 Fe (Cr Si ) (Si Cr )の状態密度を示すグラフである。
2 7/8 1/8 7/8 1/8
図 7C]図 7Cは、((Fe Si ) Cr (Si Fe )の状態密度を示すグラフである
15/16 1/16 2 7/8 1/8 図 8A]図 8Aは、強磁性状態での Os CrSiの状態密度を示すグラフである。
2
図 8B]図 8Bは、強磁性状態での Os CrGeの状態密度を示すグラフである。
2
図 8C]図 8Cは、強磁性状態での Os CrSnの状態密度を示すグラフである。
2
図 9A]図 9Aは、 Fe CrPの状態密度を示すグラフである。
2
図 9B]図 9Bは、 Ru CrPの状態密度を示すグラフである。
2
図 9C]図 9Cは、 Os CrPの状態密度を示すグラフである。
2
図 10A]図 10Aは、 Fe CrSiの強磁性状態及び反強磁性状態における格子定数と
2
全エネルギーとの関係を示すグラフである。
[図 10B]図 10Bは、 Ru CrSiの強磁性状態及び反強磁性状態における格子定数と
全エネルギーとの関係を示すグラフである。
[図 11A]図 11Aは、(Fe Ru ) CrSiの状態密度を示すグラフである。
1/4 3/4 2
[図 11B]図 11Bは、(Fe Ru ) CrSiの状態密度を示すグラフである。
1/2 1/2 2
[図 11C]図 11Cは、(Fe Ru ) CrSiの状態密度を示すグラフである。
3/4 1/4 2
[図 12]図 12は、(Fe Ru ) CrSiの強磁性状態 (f)と 2つの反強磁性状態 (afl, af 2)の全エネルギー差 (ΔΕ)と Feの濃度 (X)との関係を示すグラフである。
[図 13A]図 13Aは、 (Fe Ru ) CrSiの状態密度を示すグラフである。
1/2 1/2 2
[図 13B]図 13Bは、 (Fe Ru ) CrGeの状態密度を示すグラフである。
1/2 1/2 2
[図 13C]図 13Cは、 (Fe Ru ) CrSnの状態密度を示すグラフである。
1/2 1/2 2
[図 14] (Fe Ru ) CrSiにおける Xの値と格子定数との関係を示すグラフである。
[図 15A]図 15Aは、(Fe Os ) CrSiの状態密度(D (E) )を示すグラフである。
1/2 1/2 2
[図 15B]図 15Bは、(Fe Co ) CrSiの状態密度(D (E) )を示すグラフである。
1/2 1/2 2
[図 15C]図 15Cは、(Ru Os ) CrSiの状態密度(D (E) )を示すグラフである。
1/2 1/2 2
[図 15D]図 15Dは、(Ru Co ) CrSiの状態密度(D (E) )を示すグラフである。
1/2 1/2 2
[図 16A]図 16Aは、 (Fe Ru ) MnSiの状態密度(D (E) )を示すグラフである。
1/2 1/2 2
[図 16B]図 16Bは、 (Fe Co ) MnSiの状態密度(D (E) )を示すグラフである。
1/2 1/2 2
[図 16C]図 16Cは、(Co Rh ) MnSiの状態密度(D (E) )を示すグラフである。
1/2 1/2 2
[図 16D]図 16Dは、(Ru Rh ) MnSiの状態密度(D (E) )を示すグラフである。
1/2 1/2 2
[図 17A]図 17Aは、 Fe MnSiの強磁性状態の状態密度を示すグラフである。
2
[図 17B]図 17Bは、 Ru MnSiの強磁性状態の状態密度を示すグラフである。
2
[図 18A]図 18Aは、 Fe (Cr Mn ) Siの強磁性状態の状態密度を示
2 1/2 1/2
ある。
[図 18B]図 18Bは、 Ru (Cr Mn ) Siの強磁性状態の状態密度を示
2 1/2 1/2
ある。
圆 19A]図 19Aは、原子が規則配列した Fe CrSiの状態密度 (D (E) )を示すグラフ
2
である。
圆 19B]図 19Bは、原子が規則配列した (Fe Ru ) CrSiの状態密度 (D (E) )を
1/2 1/2 2
示すグラフである。
[図 19C]図 19Cは、原子が規則配列した Fe CrSnの状態密度 (D (E) )を示すグラフ
2
である。
[図 19D]図 19Dは、原子が規則配列した Co MnSiの状態密度(D (E) )を示すグラフ
2
である。
[図 20A]図 20Aは、原子が不規則配列した Fe CrSiの状態密度 (D (E) )を示すダラ
2
フである。
[図 20B]図 20Bは、原子が不規則配列した (Fe Ru ) CrSiの状態密度 (D (E) )
1/2 1/2 2
を示すグラフである。
[図 20C]図 20Cは、原子が不規則配列した Fe CrSnの状態密度(D (E) )を示すダラ
2
フである。
[図 20D]図 20Dは、原子が不規則配列した Co MnSiの状態密度 (D (E) )を示すダラ
2
フである。
[図 21]図 21は、 5種類の合金における Cr又は Mnの乱れの割合 yとスピン分極率 Pと の関係を示すグラフである。
[図 22A]図 22Aは、原子が規則配列した (Fe Ru ) CrSiの状態密度 (D (E) )を
3/4 1/4 2
示すグラフである。
[図 22B]図 22Bは、原子が不規則配列した (Fe Ru ) CrSiの状態密度 (D (E) )
3/4 1/4 2
を示すグラフである。
[図 23A]図 23Aは、原子が規則配列した (Fe Ru ) CrSiの Feの d成分の状態
3/4 1/4 2
密度 (D (E) )を示すグラフである。
[図 23B]図 23Bは、原子が規則配列した (Fe Ru ) CrSiの Crの d成分の状態密
3/4 1/4 2
度 (D (E) )を示すグラフである。
[図 23C]図 23Cは、原子が規則配列した (Fe Ru ) CrSiの Ruの d成分の状態
3/4 1/4 2
密度 (D (E) )を示すグラフである。
[図 24A]図 24Aは、原子が不規則配列した (Fe Ru ) CrSiの通常の位置にある
3/4 1/4 2
Feの d成分の状態密度 (D (E) )を示すグラフである。
[図 24B]図 24Bは、原子が不規則配列した (Fe Ru ) CrSiの他の原子位置を占
3/4 1/4 2
有した Feの d成分の状態密度 (D (E) )を示すグラフである。
[図 24C]図 24Cは、原子が不規則配列した (Fe Ru ) CrSiの通常の位置にある
3/4 1/4 2
Crの d成分の状態密度 (D (E) )を示すグラフである。
[図 24D]図 24Dは、原子が不規則配列した (Fe Ru ) CrSiの他の原子位置を
3/4 1/4 2
占有した Crの d成分の状態密度 (D (E) )を示すグラフである。
[図 24E]図 24Eは、原子が不規則配列した (Fe Ru ) CrSiの通常の位置にある
3/4 1/4 2
Ruの d成分の状態密度 (D (E) )を示すグラフである。
[図 25A]図 25Aは、 Ru MnSiの強磁性状態及び反強磁性状態における格子定数と
2
全エネルギーとの関係を示すグラフである。
[図 25B]図 25Bは、 Fe MnSiの強磁性状態及び反強磁性状態における格子定数と
2
全エネルギーとの関係を示すグラフである。
[図 26]図 26は、 TMR素子の構造を示す模式図である。
発明を実施するための最良の形態
[0012] 先ず、ハーフメタルの性質の有無を理論的にどのように予測するかについて説明 する。
[0013] 図 1 A及び図 1Bは、夫々 Co MnSiの up— spin及び down— spinの E (k)曲線を
2
示すグラフであり、電子のエネルギー(縦軸)と波数ベクトル (横軸:運動量に対応)と の関係を示している。水平な直線(点線)はフェルミエネルギー(E )を表しており、フ
F
エルミエネルギー Eは電子の最高のエネルギーに相当する。フェルミエネルギー E
F F
は 1 3 ^1の£ (1 曲線を横切り、 down— spinの E (k)曲線とは交わっていない。 即ち、 down— spin状態ではフェルミエネルギー Eはエネルギーギャップの中にある
F
。電場に反応するのはフェルミエネルギー E付近のエネルギーをもつ電子であるの
F
で、 up— spin状態の電子は電流に寄与する力 down— spin状態の電子は寄与し ない。
[0014] 図 1Cは、 Co MnSiの状態密度曲線を示すグラフであり、電子の状態数 (縦軸: D (
2
E) )とエネルギー (横軸: E)との関係を示している。図 1C中の垂直な直線 (実線)は フェルミエネルギー Eを表しており、これ以下のエネルギーの状態が電子により占有
F
されている。なお、このグラフは、結晶ポテンシャルを LSD (Local Spin Density)近似 の枠内で計算し、 LMTO (Linear
Muffin-Tin Orbital)法により電子構造を求めた結果を示すものである。以下に示す 状態密度曲線を示すグラフも同様である。
[0015] 上記のように、 down— spin状態では、 Co MnSiのフェルミエネルギー Eはェネル
2 F ギーギャップの中にある。なお、 E (k)と D (E)とでは、エネルギーの単位が同一では ないが、フェルミエネルギー E 自体は不変である。
F
[0016] また、スピン分極率 Pは、 up— spin及び down— spin状態のフェルミエネルギー E
F
での状態密度を D† (E )、D (E )とすると、(D† (E )— D (E ) ) / (D† (E )
F F F F F
+ O i (E;) )で求められる。スピン分極率 Pが大きいほどスピントロ-タス材料として
F
適している。 Co MnSiでは、 D (E ) =0なので、 P= l (100%のスピン分極率)で
2 F
ある。即ち、 Co MnSiはハーフメタルである。しかしながら、 Co MnSiの D† (E )の
2 2 F 値は、後述の合金と比較すると小さぐこのことは、原子配列の乱れ等によりハーフメ タルの特性が劣化すると、スピン分極率が悪くなることを示唆して 、る。
[0017] このように、 E (k)曲線又は状態密度曲線 (D (E) )を用いて、フェルミエネルギー E
F
がー方のスピン状態でエネルギーギャップの中に位置し、他方のスピン状態ではフエ ルミエネルギー Eの位置にエネルギーギャップがなければ、ハーフメタルであると判
F
断できる。
[0018] 次に、本願発明者が見出した X (Mn Cr ) Zで表わされる原子配列の乱れに強
2 l -y y
い合金について説明する。但し、 Xは、 Fe、 Ru、 Os、 Co及び Rhからなる群力も選択 された少なくとも 1種の元素であり、 Zは、 ΠΙΒ族元素、 IVB族元素及び VB族元素か らなる群力 選択された少なくとも 1種の元素であり、 yは 0以上 1以下である。また、 F e MnZ、 Co MnZ、 Co CrAl及び Ru MnZは除かれる。なお、これまでに、ホイスラ
2 2 2 2
一合金の Y原子位置に Mn及び Crを配置し、ハーフメタルやスピントロ-タス材料を 得ようとした研究はない。
[0019] [Ru CrSi]
2
図 2Aは、 Ru CrSiの状態密度(D (E) )を示すグラフであり、図 2Bは、 (Ru Cr
2 15/16 1
) (Cr Ru ) Siの状態密度 (D (E) )を示すグラフであり、図 2Cは、(Ru C
/16 2 7/8 1/8 13/16 r ) (Cr Ru ) Siの状態密度 (D (E) )を示すグラフである。なお、これらの合
3/16 2 5/8 3/8
金の組成は同一である力 原子の配列状態が相違している。即ち、 Ru CrSiを基準
2
として、 Crの 1Z8、 3Z8力 夫々 Ruの 1Z16、 3Z16と置換されている。図 2A乃至 図 2C中の実線及び点線は、夫々 up— spin、 down— spinの状態密度(D (E) )を表 わしている。
[0020] 図 2A乃至図 2Cのいずれにおいても、 down— spin状態でフェルミエネルギー E
F
がエネルギーギャップの中にある。このことは、 Ru CrSiのハーフメタル性が Ruと Cr
2
との置換に対して劣化しにく 、ことを示唆して 、る。
[0021] 図 3Aは、(Ru Cr ) (Cr Ru ) Siの状態密度(D (E) )を示すグラフであり
7/8 1/8 2 3/4 1/4
、図 3Bは、 Ru (Cr Si ) (Si Cr )の状態密度 (D (E) )を示すグラフであり、
2 3/4 1/4 3/4 1/4
図 3Cは、(Ru Si ) Cr (Si Ru )の状態密度(D (E) )を示すグラフである。
7/8 1/8 2 3/4 1/4
なお、これらの合金の組成は同一である力 原子の配列状態が相違している。即ち、 Ru CrSiを基準として、夫々 Crの 1Z4が Ruの 1Z8と置換され、 Crの 1Z4が Siの 1
2
Z4と置換され、 Ruの 1Z8が Siの 1Z4と置換されている。図 3A乃至図 3C中の実線 及び点線は、夫々 up— spin、 down— spinの状態密度(D (E) )を表わしている。
[0022] Crと Ruとの置換の場合は、図 2A乃至図 2Cに示す例と同様に、スピン分極率 Pが 100%となり、このことは、上述と同様に、 Ru CrSiのハーフメタル性が Ruと Crとの置
2
換に対して劣化しにくいことを示唆している。また、 Crと Siとの置換の場合は、スピン 分極率 Pが 99%であり、ハーフメタルではないがスピン分極率は高い。これに対し、 R uと Siとの置換の場合は、スピン分極率 Pが 65%と低くなり、ハーフメタルの特性から 大きくずれる。但し、 Ruと Siとの置換については、置換後に得られる状態の全エネル ギ一が高いため、極めて不安定であり、このような置換は生じにくいと思われる。
[0023] [Ru CrZ (Z = Siゝ Geゝ Sn) ]
2
元素周期表の同族元素(同じ数の価電子を持つ)は互いに類似した性質を示すの で、ホイスラー合金 (X YZ)の Z原子として、 Siと同族元素である Ge又は Snを用いた
2
場合について説明する。
[0024] 図 4Aは、強磁性状態での Ru CrSiの状態密度 (D (E) )を示すグラフであり、図 4B
2
は、強磁性状態での Ru CrGeの状態密度 (D (E) )を示すグラフであり、図 4Cは、強
2
磁性状態での Ru CrSnの状態密度 (D (E) )を示すグラフである。図 4A乃至図 4C
2
中の実線及び点線は、夫々 up— spin、 down— spinの状態密度(D (E) )を表わして
いる。
[0025] いずれの合金においても、 up— spin状態についてはフェルミエネルギー E付近に
F
ピークが存在し (Z = Snの場合は、大きなピーク内に急峻な谷も存在する。)、 down spin状態についてはフェルミエネルギー E付近に大きな谷が存在する。これらの
F
ことは、 Ru CrSiがハーフメタルであり、 Ru CrGe及び Ru CrZnは、スピン分極率が
2 2 2
高い物質であることを示している。即ち、 Ru CrGe及び Ru CrZnのスピン分極率 P
2 2
は、夫々 98%、 94%である。従って、 Z原子の相違は状態密度曲線の全体的な形状 に大きな影響を与えな ヽと 、える。
[0026] [Fe CrZ (Z = Siゝ Geゝ Sn) ]
2
ホイスラー合金 (X YZ)の X原子として、 Ruと同族元素である Feを用いた場合につ
2
いて説明する。
[0027] 図 5Aは、強磁性状態での Fe CrSiの状態密度 (D (E) )を示すグラフであり、図 5B
2
は、強磁性状態での Fe CrGeの状態密度 (D (E) )を示すグラフであり、図 5Cは、強
2
磁性状態での Fe CrSnの状態密度 (D (E) )を示すグラフである。図 5A乃至図 5C中
2
の実線及び点線は、夫々 up— spin、 down— spinの状態密度(D (E) )を表わしてい る。
[0028] Ruを Feに置換するとピークは鋭くなつている力 全体的な傾向については、図 4A 乃至図 4Cと図 5A乃至図 5Cとの間に大きな相違はない。また、 Z原子を S も Ge、 Snと原子番号の大きなものにするにつれて、 D† (E )の値が大きくなり、 Snの場合
F
では、 D丄(E ) =0となる。 Fe CrSi、 Fe CrGe及び Fe CrSnのスピン分極率 Pは、
F 2 2 2
夫々 93%、 100%、 100%となる。即ち、 Fe CrSiはスピン分極率 Pが高ぐハーフメ
2
タルに近似したスピントロニクス材料である力 Fe CrGe及び Fe CrSnはハーフメタ
2 2
ルである。
[0029] Fe CrSn及び Fe CrSiについても、構成原子間の置換に伴う原子配列の乱れによ
2 2
る影響を調べた。
[0030] 図 6Aは、(Fe Cr ) (Cr Fe ) Snの状態密度 (D (E) )を示すグラフで
15/16 1/16 2 7/8 1/8
あり、図 6Bは、 Fe (Cr Sn ) (Sn Cr )の状態密度 (D (E) )を示すグラフで
2 7/8 1/8 7/8 1/8
あり、図 6Cは、(Fe Sn ) Cr (Sn Fe )の状態密度 (D (E) )を示すグラフ
15/16 1/16 2 7/8 1/8
である。いずれも、夫々 96%、 100%、 94%と高いスピン分極率 Pを示した。従って、 Fe CrSnのハーフメタル性は構成原子間の置換に対して劣化しにく 、と 、える。
2
[0031] 図 7Aは、(Fe Cr ) (Cr Fe ) Siの状態密度(D (E) )を示すグラフであ
15/16 1/16 2 7/8 1/8
り、図 7Bは、 Fe (Cr Si ) (Si Cr )の状態密度 (D (E) )を示すグラフであり
2 7/8 1/8 7/8 1/8
、図 7Cは、(Fe Si ) Cr (Si Fe )の状態密度 (D (E) )を示すグラフであ
15/16 1/16 2 7/8 1/8
る。これらの合金のスピン分極率 Pは 95%、 94%、 63%である。
[0032] Fe CrZ (Z = Si、 Sn)に関する全エネルギーを比較すると、低い順に、 Fe— Cr置
2
換、置換のない Fe CrZ、 Cr— Z置換、 Fe— Z置換となる。一方で、 Fe CrSnはハー
2 2
フメタルになるという結果が得られた力 Fe CrSiにおいて Feと Zとの置換があると、 F
2
e CrZのスピン分極率 Pは低くなる。このため、原子配列が乱れた部分が混入すると
2
、スピン分極率 Pが低くなる可能性があるとも考えられる力 Fe CrSiの Fe— Z置換合
2
金の全エネルギーは他の合金と比較して、極めて高いため、この状態が生ずる可能 性は極めて低い。従って、 Z原子の効果を考慮すると、 Fe CrGeも含め Fe CrZ (Z =
2 2
Si、 Ge、 Sn)は、スピン分極率が大きぐまた、原子の乱れに強いスピントロ-タス材 料であるといえる。
[0033] [Os CrZ (Z = Siゝ Geゝ Sn) ]
2
ホイスラー合金 (X YZ)の X原子として、 Ruと同族元素である Osを用いた場合につ
2
いて説明する。
[0034] 図 8Aは、強磁性状態での Os CrSiの状態密度 (D (E) )を示すグラフであり、図 8B
2
は、強磁性状態での Os CrGeの状態密度 (D (E) )を示すグラフであり、図 8Cは、強
2
磁性状態での Os CrSnの状態密度 (D (E) )を示すグラフである。図 8A乃至図 8C中
2
の実線及び点線は、夫々 up— spin、 down— spinの状態密度(D (E) )を表わしてい る。
[0035] 図 8Aに示すように、 Os CrSiも Ru CrSiと同様にハーフメタルであることが予測で
2 2
きた。また、 Os CrSi, Os CrGe及び Os CrSnのスピン分極率 Pは、夫々 100%、 9
2 2 2
8%、 99. 7%と非常に大きい。
[0036] X原子が Fe、 Ru、 Osと変ると、ピークは低くなる力 down— spinの谷が広くなりノヽ ーフメタルになり易くなるといえる。
[0037] [X CrP (X=Feゝ Ruゝ Os) ]
2
図 9Aは、 Fe CrPの状態密度(D (E) )を示すグラフであり、図 9Bは、 Ru CrPの状
2 2 態密度 (D (E) )を示すグラフであり、図 9Cは、 Os CrPの状態密度 (D (E) )を示すグ
2
ラフである。図 9A乃至図 9C中の実線及び点線は、夫々 up— spin、 down— spinの 状態密度 (D (E) )を表わして 、る。
[0038] ホイスラー合金の Z原子を IVB族に属する Si、 Ge、 Snから V族に属する Pに置換し ても、状態密度曲線の傾向に大きな影響はなぐフェルミエネルギー Eの位置が高
F
エネルギー側に移動しているのみである。一般的に、状態密度曲線の形状の大部分 は X原子及び Y原子の d電子の態様による影響を受けやすぐ価電子力 電子及び p 電子である Z原子を ΠΙΒ、 IVB、 VB原子と置換しても、状態密度曲線の形状は変化 しにくい。従って、 Z原子の置換により、状態密度曲線の形状に大きな影響を与えるこ となくフェルミエネルギー Eの位置を移動させることができる。
F
[0039] 以上のように、 X CrZにおいて X原子を Fe、 Ru、 Osと換えると、フェルミエネルギー
2
Eの付近の谷が広くなり、ハーフメタルになり易い傾向がある力 その一方で、状態
F
密度のピークが低くなり、このために、 D† (E )の値が小さくなつてスピン分極率 Pが
F
小さくなる傾向がある。そこで、同族原子を混ぜ合わせることにより、新たなハーフメタ ル等の高 、スピン分極率をもつスピントロ-タス材料が得られると 、える。
[0040] [ (Fe Ru _ ) CrZ (Z=Siゝ Geゝ Sn) ]
図 10Aは、 Fe CrSiの強磁性状態及び反強磁性状態における格子定数と全エネ
2
ルギ一との関係を示すグラフであり、図 10Bは、 Ru CrSiの強磁性状態及び反強磁
2
性状態における格子定数と全エネルギーとの関係を示すグラフである。
[0041] Fe CrSiでは、図 10Aに示すように、強磁性状態における全エネルギーが反強磁
2
性状態における全エネルギーよりも低いため、強磁性状態が安定である。但し、図 5 Aに示すように、 Fe CrSiは、ハーフメタルではなぐスピン分極率 Pが高ぐハーフメ
2
タルに近 、スピントロ-タス材料である。
[0042] 一方、 Ru CrSiでは、図 10Bに示すように、反強磁性状態における全エネルギー
2
が強磁性状態における全エネルギーよりも低いため、反強磁性状態が安定である。 つまり、図 4Aに示すように、強磁性状態の Ru CrSiはハーフメタルである力 この状
態は発現しにくい。本願発明者が 3タイプの反強磁性状態を仮定して、これらについ て全エネルギーの比較を行ったところ、いずれのタイプにおいても同様の傾向が見ら れた。
[0043] そこで、 X原子として、 Fe及び Ruを混合した (Fe Ru ) CrSiの強磁性状態及び 反強磁性状態における電子構造につ!、て調べた。
[0044] 図 11Aは、(Fe Ru ) CrSiの状態密度(D (E) )を示すグラフであり、図 11Bは
1/4 3/4 2
、 (Fe Ru ) CrSiの状態密度(D (E) )を示すグラフであり、図 11Cは、(Fe R
1/2 1/2 2 3/4 u ) CrSiの状態密度 (D (E) )を示すグラフである。図 11A乃至図 11C中の実線
1/4 2
及び点線は、夫々 up— spin、 down— spinの状態密度(D (E) )を表わしている。
[0045] 図 11A乃至図 11Cに示すように、(Fe Ru ) CrSi, (Fe Ru ) CrSi及び
1/4 3/4 2 1/2 1/2 2
(Fe Ru ) CrSiのスピン分極率 Pは、夫々 100%、 100%、 99%と非常に大き
3/4 1/4 2
い。つまり、 Xく 3Z4であれば、強磁性状態が得られればノヽーフメタルとなる。また、 x= 3Z4でも、強磁性状態が得られればスピン分極率 Pの高 ヽスピントロ-タス材料 となる。
[0046] 図 12は、(Fe Ru ) CrSiの強磁性状態 (f)と 2つの反強磁性状態 (afl, af 2)の 全エネルギーと Feの濃度 )との関係を示すグラフである。図 12は、反強磁性状態 のエネルギーと強磁性状態のエネルギーの差(ΔΕ)を Xに対してプロットしたもので あり、 ΔΕが正の範囲 lZ3<xで強磁性状態が安定であると予測できる。
[0047] Xが 3Z8の(Fe Ru ) CrSiでは、強磁性状態において全エネルギーが低ぐ
3/8 5/8 2
強磁性状態が安定であるが、 Xが 1Z4の (Fe Ru ) CrSiでは、反強磁性状態
1/4 3/4 2
において全エネルギーが低ぐ反強磁性状態が安定である。従って、 x=nZ8 (n= 1, 2, · · · , 8)に対して強磁性及び反強磁性の全エネルギーを比較すると、 1/3< Xく 3Z4の範囲内でハーフメタルであると予測できる。
[0048] 図 13Aは、(Fe Ru ) CrSiの状態密度(D (E) )を示すグラフであり、図 13Bは
1/2 1/2 2
、(Fe Ru ) CrGeの状態密度(D (E) )を示すグラフであり、図 13Cは、(Fe
1/2 1/2 2 1/2
Ru ) CrSnの状態密度(D (E) )を示すグラフである。つまり、図 13A乃至図 13C
1/2 2
に示すグラフは、 Z原子が相違する合金に関するものである。図 13A乃至図 13C中 の実線及び点線は、夫々 up— spin、 down— spinの状態密度(D (E) )を表わしてい
る。
[0049] (Fe Ru ) CrSi、(Fe Ru ) CrGe及び(Fe Ru ) CrSnのスピン分
1/2 1/2 2 1/2 1/2 2 1/2 1/2 2
極率 Pは、夫々 100%、 100%、 97%である。従って、(Fe Ru _ ) CrZは、 1/3< Xの範囲で、スピン分極率 Pが高いスピントロ-タス材料として有望であり、特に 1Z3 <x< 3/4の範囲で、ハーフメタルとして有望な材料であるといえる。但し、 Zは、 III B族元素、 IVB族元素又は VB族元素の!/、ずれ力 1種である。
[0050] 図 14は、(Fe Ru ) CrSiにおける xの値と格子定数との関係を示すグラフである 。図 14中の♦は理論値を示し、國は 873Kでの 24時間の焼鈍後の実測値を示し、 〇は焼鈍前の実測値を示す。理論値と実測値とがほぼ 1%以内の誤差で一致してお り、 1Z3く Xでは強磁性状態が安定した L2型ホイスラー合金となっているといえる。
[0051] [ (X X' ) CrSi(X、X' =Feゝ Co、Ruゝ Rh、 Os) ]
X原子の組み合わせとしては、同族元素同士の Fe Os という組み合わせや R
1/2 1/2
u Os という組み合わせ以外に、 Fe、 Ruより夫々原子番号が 1つ大きい Co、 Rh
1/2 1/2
を組み合わせた Fe Co 及び Ru Rh も有効である。
1/2 1/2 1/2 1/2
[0052] 図 15Aは、(Fe Os ) CrSiの状態密度(D (E) )を示すグラフであり、図 15Bは
1/2 1/2 2
、(Fe Co ) CrSiの状態密度(D (E) )を示すグラフであり、図 15Cは、(Ru O
1/2 1/2 2 1/2 s ) CrSiの状態密度(D (E) )を示すグラフであり、図 15Dは、(Ru Co ) CrS
1/2 2 1/2 1/2 2 iの状態密度 (D (E) )を示すグラフである。図 15A乃至図 15D中の実線及び点線は 、夫々 up— spin、 down— spinの状態密度(D (E) )を表わしている。
[0053] 図 15A乃至図 15Dに示すように、 X原子の組み合わせの中に Fe、 Ru及び Z又は Osが含まれている場合、フェルミエネルギーでの up— spinの状態密度が高ぐスピ ン分極率 Pが高い。
[0054] 図 16Aは、(Fe Ru ) MnSiの状態密度(D (E) )を示すグラフであり、図 16B
1/2 1/2 2
は、 (Fe Co ) MnSiの状態密度(D (E) )を示すグラフであり、図 16Cは、 (Co
1/2 1/2 2 1
Rh ) MnSiの状態密度(D (E) )を示すグラフであり、図 16Dは、(Ru Rh
/2 1/2 2 1/2 1/2
) MnSiの状態密度(D (E) )を示すグラフである。図 16A乃至図 16D中の実線及び
2
点線は、夫々 up— spin、 down— spinの状態密度(D (E) )を表わしている。
[0055] 図 16A乃至図 16Dに示すように、 X原子の組み合わせの中に Fe、 Ru及び Z又は
Osが含まれている場合、フェルミエネルギーでの up— spinの状態密度が高ぐスピ ン分極率 Pが高い。これに対し、 X原子が Co及び Rhである場合には、スピン分極率 Pは高いが、フェルミエネルギーの直上に down— spinの状態密度のピークの裾があ る。このことから、原子配列の乱れ等でスピン分極率 Pが減少することが予想される。
[0056] [X (Mn Cr ) Si (X=Feゝ Ru) ]
2 l-y y
次に、ホイスラー合金の Y原子に着目して説明する。図 17Aは、 Fe MnSiの強磁
2
性状態の状態密度 (D (E) )を示すグラフであり、図 17Bは、 Ru MnSiの強磁性状態
2
の状態密度 (D (E) )を示すグラフである。図 17A及び図 17B中の実線及び点線は、 夫々 up— spin, down— spinの状態密度(D (E) )を表わして!/ヽる。
[0057] これらの合金は、磁気モーメントが反強磁性成分を含んでおり、ハーフメタルである ことは期待できないが、強磁性状態ではハーフメタルとなる。 Fe CrSiは強磁性状態
2
が安定であることを考慮すると、 Fe (Mn Cr ) Siはハーフメタルになる可能性が高
2 l-y y
い。図 18Aは、 Fe (Cr Mn ) Siの強磁性状態の状態密度 (D (E) )を示すダラ
2 1/2 1/2
フであり、図 18Bは、 Ru (Cr Mn ) Siの強磁性状態の状態密度 (D (E) )を示す
2 1/2 1/2
グラフである。図 18A及び図 18B中の実線及び点線は、夫々 up— spin、 down— sp inの状態密度 (D (E) )を表わして 、る。
[0058] 図 18A及び図 18Bに示すように、 Ru (Cr Mn ) Siはハーフメタルであり、 Fe
2 1/2 1/2 2
(Cr Mn ) Siはハーフメタルではないものの、そのスピン分極率 Pは 98%と高い
1/2 1/2
。つまり、これらの合金の特徴は、 X CrZ合金の特徴と類似している。特に、スピント
2
ロニクス材料の判定で重要となるフェルミエネルギー E付近における up— spinでの
F
高いピーク及び down— spinでの大きな谷が存在する。従って、これらの合金も、強 磁性状態が安定ならばスピン分極率が高 、スピントロ-タス材料であると!/、える。
[0059] なお、文献「J. Phys. Soc. Jpn" Vol. 64, No. 11, Nov., 1995, pp 4411- 4417」の Fig . 10には、 Fe Mn Cr Siの磁気モーメントの実測値として 2. 5となることが示さ
2 1/2 1/2
れている。この結果は、図 18Aに示す結果と一致している。このことは、本願発明者 が行った予測の信憑性が高 、ことを示して 、る。
[0060] 図 19Aは、原子が規則配列した Fe CrSiの状態密度 (D (E) )を示すグラフであり、
2
図 19Bは、原子が規則配列した (Fe Ru ) CrSiの状態密度 (D (E) )を示すダラ
1/2 1/2 2
フであり、図 19Cは、原子が規則配列した Fe CrSnの状態密度 (D (E) )を示すダラ
2
フであり、図 19Dは、原子が規則配列した Co MnSiの状態密度 (D (E) )を示すダラ
2
フである。また、図 20Aは、原子が不規則配列した Fe CrSiの状態密度 (D (E) )を示
2
すグラフであり、図 20Bは、原子が不規則配列した (Fe Ru ) CrSiの状態密度
1/2 1/2 2
(D (E) )を示すグラフであり、図 20Cは、原子が不規則配列した Fe CrSnの状態密
2
度 (D (E) )を示すグラフであり、図 20Dは、原子が不規則配列した Co MnSiの状態
2
密度(D (E) )を示すグラフである。図 19A乃至図 19D及び図 20A乃至図 20D中の 実線及び点線は、夫々 up— spin、 down— spinの状態密度(D (E) )を表わしている 。なお、図 20A乃至図 20Dにおける原子の乱れの割合は 1Z8である。
[0061] 図 19A乃至図 19D及び図 20A乃至図 20Dに示すように、 Feを含む 3種の合金( 図 19A乃至図 19C、図 20A乃至図 20C)では、 Fe— Cr間の原子の乱れがエネルギ 一的に安定であるため、不規則配列の場合でも高いスピン分極率 Pが得られた。これ に対し、 Co— Mn間で原子の乱れを生じさせた Co MnSiでは、スピン分極率 Pが大
2
きく低下した。この傾向は、図 16Cに示す (Co Rh ) MnSiでも現れると考えら
1/2 1/2 2
れる。
[0062] 図 21は、 5種類の合金における Cr又は Mnの乱れの割合 yとスピン分極率 Pとの関 係を示すグラフである。 Fe CrSn
2 、(Fe Ru ) CrSi
3/4 1/4 2 、 Fe CrSi及び(Fe Ru
2 1/2 1/
) CrSiの不規則配列では、 Fe— Cr間で原子の乱れを生じさせた。また、 Co MnSi
2 2 2 の不規則配列では、 Co— Mn間で原子の乱れを生じさせた。これらの合金の不規則 配列はエネルギー的に安定である。
[0063] 図 21に示すように、 Feを含む 4種類の合金では、乱れの割合 yが増加してもスピン 分極率 Pの低下は緩やかであった力 Co MnSiでは、乱れの割合 yが 1Z8となった
2
だけでスピン分極率 yが著しく低下した。
[0064] 図 22Aは、原子が規則配列した (Fe Ru ) CrSiの状態密度 (D (E) )を示すグ
3/4 1/4 2
ラフであり、図 22Bは、原子が不規則配列した (Fe Ru ) CrSiの状態密度 (D (
3/4 1/4 2
E) )を示すグラフである。なお、図 22Bにおける原子の乱れの割合は 1Z4であり、こ の組成において最もエネルギー的に安定である。
[0065] 図 22A及び図 22Bに示すように、規則配列及び不規則配列のいずれにおいても、
up— spin状態のフェルミエネルギー Eでの状態密度 D† (E )が高い。但し、不規
F F
則配列では、規則配列と比較すると若干低!、。
[0066] 図 23Aは、原子が規則配列した (Fe Ru ) CrSiの Feの d成分の状態密度(D
3/4 1/4 2
(E) )を示すグラフであり、図 23Bは、原子が規則配列した (Fe Ru ) CrSiの Cr
3/4 1/4 2 の d成分の状態密度 (D (E) )を示すグラフであり、図 23Cは、原子が規則配列した (F e Ru ) CrSiの Ruの d成分の状態密度(D (E) )を示すグラフである。また、図 2
3/4 1/4 2
4Aは、原子が不規則配列した(Fe Ru ) CrSiの通常の位置にある Feの d成分
3/4 1/4 2
の状態密度 (D (E) )を示すグラフであり、図 24Bは、原子が不規則配列した (Fe R
3/4 u ) CrSiの他の原子位置を占有した Feの d成分の状態密度 (D (E) )を示すグラフ
1/4 2
であり、図 24Cは、原子が不規則配列した (Fe Ru ) CrSiの通常の位置にある
3/4 1/4 2
Crの d成分の状態密度 (D (E) )を示すグラフであり、図 24Dは、原子が不規則配列 した (Fe Ru ) CrSiの他の原子位置を占有した Crの d成分の状態密度(D (E)
3/4 1/4 2
)を示すグラフであり、図 24Eは、原子が不規則配列した (Fe Ru ) CrSiの通常
3/4 1/4 2
の位置にある Ruの d成分の状態密度(D (E) )を示すグラフである。このように、図 24 A、図 24C及び図 24Eには、通常の位置にある原子に関する局所状態密度を示し、 図 24B及び図 24Dには、他の原子位置を占有した原子に関する局所状態密度を示 している。
[0067] 図 23A乃至図 23Cに示すように、規則配列では、 Fe及び Crの局所状態密度が非 常に高い。また、図 24A乃至図 24Eに示すように、不規則配列では、他の原子位置 を占有した Fe及び Crの局所状態密度は低いが、通常の位置にある Fe及び Crの局 所状態密度は高 、ままである。
[0068] これらの(Fe Ru ) CrSiに関する解析結果から、次のことが導かれる。
3/4 1/4 2
(A) (Fe Ru ) CrSiは、 xが 1/3より大きい場合には、強磁性体でスピン分極率 が高い物質である。
(B)スピン分極率が高い理由は、 up— spin状態の状態密度が大きぐ down-spi n状態の状態密度が小さ 、からである。
(C) up - spin状態の状態密度が大き 、理由は、 Fe及び Crの局所状態密度が大き V、からである。 Ruからの寄与も Fe及び Crほどではな!/、が存在する。
[0069] 以上、詳述したように、数種類の合金につ!、ての結果から以下のように考えられる。
[0070] (1)ハーフメタル等のスピン分極率が高い物質をホイスラー合金 X YZ (L2型)の
2 1 中力も探索するに当たって、 X原子として、「Fe、 Ru、 Os、 Co及び Rh」の中から 1種 を選択するか、又は 2種以上を適当な割合で組み合わせ、且つ、 Y原子として、「Cr 及び Mn」の中から 1種を選択する力、又は双方を適当な割合で組み合わせることに より、 up— spinの状態密度にはフェルミレベル付近にピークができ、 down— spinの 状態密度にはフェルミレベル付近に深い谷ができる。
[0071] (2) X原子を 3d (Fe又は Co)遷移元素、 4d (Ru又は Rh)遷移元素、 5d (Os又は Ir )遷移元素に変えていくと、 up— spinの状態密度におけるピークは低くなつていくが 、 down— spinの状態密度における谷が広がっていき、総合的にはハーフメタルが得 られやすくなる。
[0072] (3)同族元素 (元素周期表の同じ列に並んだ元素)は互いに類似した性質をもつこ と、及び、 Z原子は電子構造 (E (k)曲線及び状態密度曲線)に大きな影響を与えな Vヽことを考慮すると、 X (Mn Cr ) Z (但し、 Xは、 Fe、 Ru、 Os、 Co及び Rhからなる
2 l-y y
群から選択された少なくとも 1種の元素であり、 Zは、 ΠΙΒ族元素、 IVB族元素及び V B族元素力もなる群力 選択された少なくとも 1種の元素である。)は、原子配列の乱 れに対して壊れにく 、ノヽーフメタル等のスピン分極率の高 、物質であると 、える。
[0073] 但し、 Fe MnZ及び Ru MnZでは、安定した強磁性状態が得られな 、ため、スピン
2 2
トロ-タス材料として適しているとはいえない。図 25Aは、 Ru MnSiの強磁性状態及
2
び反強磁性状態における格子定数と全エネルギーとの関係を示すグラフであり、図 2 5Bは、 Fe MnSiの強磁性状態及び反強磁性状態における格子定数と全エネルギ
2
一との関係を示すグラフである。
[0074] 図 25Aに示すように、 Ru MnZでは、反強磁性状態が安定している。また、図 25B
2
に示すように、 Fe MnZでは、強磁性状態と反強磁性状態とが競合している。このよう
2
に、 Fe MnZ及び Ru MnZでは、安定した強磁性状態が得られない。
2 2
[0075] また、 Co MnZでは、 majority— spin († )のフェルミエネルギー Eでの DOSの値
2 F
力 S小さぐ原子の乱れ等によりスピン分極率 Pが小さくなりやすい。
[0076] 更に、 Co CrAlでは、 2相分離が生じ、ハーフメタルとならな!/、ことが分かって!/、る。
[0077] そして、上述のようなスピントロ-タス材料は TMR素子に好適である。例えば、図 2 6に示すように、スピントロ二タス材料力 なる強磁性層 1及び 2の間に非磁性層 3を 挟みこむことにより、 TMR素子を形成することができる。
[0078] なお、スピン分極率 Pと実験結果の報告に用いられる TMRの値との間には次のよう な関係がある。前述のように、 up— spin及び down— spin状態のフェルミエネルギー Eでの状態密度を D† (E )、 D丄(E )とすると、スピン分極率 Ρは(D† (Ε )—D丄
F F F F
(E ) ) / (D† (E ) +D i (E ) )で求められる。一方、 TMRの値は、強磁性層 1、 2
F F F
のスピン分極率を夫々 P、 Pとすると、 2P P 求められる。
1 2 1 2 Z(l— P P )で
1 2
[0079] そして、強磁性層 1及び 2がいずれもハーフメタルであれば(P =P = 1)、TMRは
1 2
無限大となる。また、強磁性層 1及び 2のスピン分極率が互いに等しい値 Pである場
0 合には、 TMRの値は 2P
0 V(l -P 2)となる。
0
[0080] 従来、 Co Cr Fe A1の TMRの値は 5Kの温度下で 0· 265 (26. 5%)であると
2 0. 6 0. 4
いわれている(Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 42 (2003), pp. L419-L422) Gこの 0· 265とい う TMRに相当するスピン分極率 Pは 0· 342 (34. 2%)である。上述の種々の本願
0
発明者が検証した材料 (ノヽーフメタルを含む)では、 60%以上のスピン分極率が得ら れており、本願発明によれば、 Co Cr Fe A1と比較して著しく高いスピン分極率
2 0. 6 0. 4
が得られるといえる。なお、 60%のスピン分極率に相当する TMRの値は 1. 059 (10 5. 9%)であり、スピン分極率の値と TMRの値との間には大きな相違があり、スピン 分極率 60%は高 ヽスピン分極率と判断できる。
産業上の利用可能性
[0081] 以上詳述したように、本発明によれば、十分に高!、スピン分極が得られる。そして、 スピン分極が 100%であれば、ハーフメタルとして用いることができる。