JP2011066334A - ハーフメタリック反強磁性体 - Google Patents

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Abstract

【課題】化学的に安定で、然も安定な磁気構造を有するハーフメタリック反強磁性体を提供する。
【解決手段】本発明に係るハーフメタリック反強磁性体は、2種類以上の磁性元素とハロゲンとを含む化合物であって、前記2種類以上の磁性元素には、有効d電子数が5より少ない磁性元素と有効d電子数が5より多い磁性元素とが含まれている。そして、前記2種類以上の磁性元素の有効d電子数の総和は10或いは10に近い値である。
【選択図】図1

Description

本発明は、反強磁性を有し、且つ上向き電子スピン状態及び下向き電子スピン状態の内、一方の電子スピン状態で金属としての性質を示すのに対して他方の電子スピン状態で絶縁体或いは半導体としての性質を示すハーフメタリック反強磁性体に関するものである。
ハーフメタリック反強磁性は、ファン・ロイケンとド・グルートによって最初に提案された概念であり(非特許文献1参照)、ハーフメタリック反強磁性体は、上向き電子スピン状態及び下向き電子スピン状態の内、一方の電子スピン状態で金属としての性質を示すのに対して、他方の電子スピン状態で絶縁体或いは半導体としての性質を示す物質である。
この様なハーフメタリック反強磁性体として、従来、種々の物質が提案されている。例えば、ピケットは、2重ペロフスカイト構造を有するSrVCuO、LaMnVO、LaMnCoOについて電子状態計算を行ない、これらの金属間化合物の内、LaMnVOがハーフメタリック反強磁性を示す可能性があることを予言した(非特許文献2参照)。
又、本発明者らは、半導体を母体とした種々の反強磁性ハーフメタリック半導体を提案し(非特許文献3乃至7参照)、特許出願中である(特許文献1及び2参照)。本発明者らが提案している反強磁性ハーフメタリック半導体は、例えばII−VI族化合物半導体やIII−V族化合物半導体のII族原子やIII族原子を2種類以上の磁性イオンで置換したものである。具体的には、(ZnCrFe)S、(ZnVCo)S、(ZnCrFe)Se、(ZnVCo)Se、(GaCrNi)N、(GaMnCo)N等を提案している。
WO2006/028299号公報 特開2008−047624号公報
vanLeuken and de Groot, Phys. Rev. Lett. 74,1171(1995) W.E.Pickett, Phys. Rev. B57,10613(1998) H.Akai and M.Ogura, Phys. Rev.Lett. 97, 06401(2006) M.Ogura, Y.Hashimoto and H.Akai,Physica Status Solidi C 3, 4160(2006) M.Ogura, C.Takahashi and H.Akai,Journal of Physics: Condens. Matter 19, 365226(2007) H.Akai and M.Ogura, Journal ofPhysics D:Applied Physics 40, 1238(2007) H.Akai and M.Ogura, HyperfineInteractions (2008) in press
しかしながら、本発明者らの研究の結果、ピケットがハーフメタリック反強磁性を示す可能性を予言した金属間化合物LaMnVOは、ハーフメタリック反強磁性を発現する可能性は低く、ハーフメタリック反強磁性を発現したとしても安定な磁気構造を有する可能性は低いことが判明した。又、半導体を母体とした反強磁性ハーフメタリック半導体においては、磁性イオン間に強い引力的相互作用があるため、母体中で磁性イオンがクラスター化して、或いは平衡状態では二相分離を起こして、母体中に磁性イオンが析出した状態となる。従って、結晶状態を組み難く、化学的に不安定である問題がある。又、化学結合が弱いため、磁気的結合も弱く、磁気構造が不安定である問題がある。
そこで本発明の目的は、化学的に安定で、然も安定な磁気構造を有するハーフメタリック反強磁性体を提供することである。
本発明に係るハーフメタリック反強磁性体は、2種類以上の磁性元素とハロゲンとを含む化合物であって、前記2種類以上の磁性元素には、有効d電子数が5より少ない磁性元素と有効d電子数が5より多い磁性元素とが含まれており、前記2種類以上の磁性元素の有効d電子数の総和は10或いは10に近い値である。
磁性元素の有効d電子数は、磁性元素の全価電子数から、ハロゲンとの結合のために使われる価電子数を減算した数である。ここで、磁性元素の全価電子数は、原子中の電子の数(原子番号)からコア電子の数(3d遷移金属元素にあっては18)を減算した値である。
本発明に係るハーフメタリック反強磁性体として、例えばCrFeIが挙げられる。CrとFeはそれぞれ1対2の割合で再隣接ハロゲンと結合を作り、ハロゲンは1価であるため、Cr(原子番号24)とFe(原子番号26)の有効d電子数はそれぞれ、4個(=24−18−2)と6個(=26−18−2)となる。
上記本発明に係る化合物がハーフメタリック反強磁性を発現する理由は次のように考えられる。以下の説明では、磁性元素が2種類である場合について説明する。
組成式ABX(A及びBは磁性元素、Xはハロゲン)で表わされる化合物は非磁性状態では、図15に示す如く磁性元素A及び磁性元素Bのs状態及びp状態が元素Xのs状態及びp状態と作る結合sp状態及び反結合sp状態がそれぞれバンドを形成しており、その間に磁性元素Aのd状態及び磁性元素Bのd状態からなるバンドが形成されている。
磁性元素Aのd軌道及び磁性元素Bのd軌道は、電子間相互作用によりスピン分裂する。このとき、磁気的状態としては、磁性元素Aの局所磁気モーメントと磁性元素Bの局所磁気モーメントとが互いに平行に向いている状態と反平行に向いている状態とが考えられる。尚、局所磁気モーメントがばらばらな方向を向いている常磁性状態や、その他の複雑な状態も考えられるが、局所磁気モーメントが平行に向いている状態と反平行に向いている状態の2つの状態について検討すれば十分である。
磁性元素Aの局所磁気モーメントと磁性元素Bの局所磁気モーメントとが互いに平行に向いている状態では、図16に示す如く、d状態から作られるバンド(dバンド)は交換分裂して典型的な強磁性体のバンド構造を示すことになる。ここで、局所磁気モーメントを互いに平行に揃えることによるエネルギー利得は、バンドが少し広がることによって生じ、このバンドの広がりは、エネルギーの異なる磁性元素Aのd状態と磁性元素Bのd状態とが混成することによって生じる。この様に、異なるエネルギー状態間の混成によってバンドエネルギー利得が生じることを超交換相互作用という。磁性元素Aと磁性元素Bの間のd状態の混成の強さを表わす飛び移り積分をtとすると、局所磁気モーメントを互いに平行に揃えることによるエネルギー利得E1は、下記数1で表わされる。
(数1)
E1=−|t|/D
ここで、Dは磁性元素Aと磁性元素Bのd軌道のエネルギー差であり、磁性元素Aと磁性元素Bの有効d電子数の差が大きい程大きな値をとる。
一方、磁性元素Aの局所磁気モーメントと磁性元素Bの局所磁気モーメントとが互いに反平行に向いている状態では、図17に示す如く、d状態から作られるバンドはスピン分裂して、平行に向いている状態とは異なるバンド構造を示すことになる。局所磁気モーメントを互いに反平行に揃えることによるエネルギー利得は、上向きスピンバンドにおいてエネルギー的に縮退した磁性元素Aと磁性元素Bのd状態が強く混成して結合d状態と反結合d状態を作り、結合d状態を主として電子が占めることによって生じる。この様に、エネルギー的に縮退した状態間の混成によってバンドエネルギー利得が生じることを二重交換相互作用という。二重交換相互作用によるエネルギー利得E2は、飛び移り積分をtとすると、−tに比例する。又、下向きスピンバンドにおいては、強磁性の場合と同様に、超交換相互作用によるエネルギー利得が生じる。
超交換相互作用によるエネルギー利得が飛び移り積分tの2次に比例(二次摂動)するのに対して、二重交換相互作用によるエネルギー利得は飛び移り積分tの1次に比例(縮退が起こる場合の一次摂動)する。従って、一般に、超交換相互作用よりも二重交換相互作用の方が大きなエネルギー利得を生じる。二重交換相互作用が生じるためには、d状態に縮退が起こらなければならず、局所磁気モーメントが互いに反平行に向いている状態では、磁性元素Aの有効d電子数と磁性元素Bの有効d電子数の和が3d電子軌道の最大収容電子数である10或いは10に近い値であるときに、この様な縮退が起こる。
上述の如く、有効d電子数の和が10或いは10に近い値であるときには、AとBの局所磁気モーメントは互いに反平行に向いた方がエネルギー的に有利である。又、強磁性交換分裂の2倍に相当する大きな交換分裂の効果を受ける下向きスピンバンドにおいては、図17に示す如く、大きなギャップが形成され、フェルミエネルギーがギャップの中央付近に位置することになる。
以上のことから、上記本発明に係る化合物は、ハーフメタリック反強磁性を基底状態で発現する可能性が高いと言える。
尚、2種類の磁性元素の有効d電子数の総和が10に近い値である場合には、両磁性元素の磁気モーメントの大きさが僅かに異なるため、全体として僅かに磁化を有するフェリ磁性が発現することになると考えられるが、本願特許請求の範囲及び明細書においては、「反強磁性体」に「磁化を持たないフェリ磁性体」及び「僅かに磁化を持つフェリ磁性体」が含まれるものとする。
又、3種類以上の磁性元素の有効d電子数の総和が10或いは10に近い値である場合にも、同様に、ハーフメタリック反強磁性が発現すると考えられる。
具体的には、前記ハーフメタリック反強磁性体は、ヨウ化カドミウム型或いは塩化カドミウム型の結晶構造を有している。
ヨウ化カドミウム型或いは塩化カドミウム型の結晶構造を有する化合物においては、磁性元素当たりハロゲンを2個ずつ配位することになる。又、ヨウ化カドミウム型結晶構造及び塩化カドミウム型結晶構造は6配位であり、6配位の結晶構造を有する物質は、s状態やp状態に関して絶縁体的な性質を有している。本来はバンドギャップが存在した領域に磁性元素のd状態からなるバンドが割り込んでくるのであるが、上向きスピンバンド及び下向きスピンバンドの内、一方のスピンバンドでは、本来のバンドギャップが残ってハーフメタリックが発現することになる。又、磁性元素のd状態は周りの陰イオンと混成するのであるが、原子軌道としてのd状態の性質を保っており、大きな磁気分裂と局所磁気モーメントを残して安定な反強磁性を発現することになる。
上記本発明に係るハーフメタリック反強磁性体は、半導体を母体としたハーフメタリック反強磁性半導体の様に磁性イオンが母体中に析出した状態ではなく、ハロゲンが磁性元素と互いに化学結合してなる化合物であって、その結合は十分に強く、生成エネルギーの計算からも安定な化合物であると言える。尚、類似する多くの遷移金属ハライドが安定に存在することも知られている。
又、磁性イオンとハロゲンとの化学結合が強いため、ハロゲンを介した磁性イオン間の化学結合も強い。ここで、磁気的結合は化学結合の内、磁気モーメントによるものであり、化学結合が強ければ磁気的結合も強いと言える。従って、本発明に係るハーフメタリック反強磁性体は、磁気的結合が強く、磁気的構造は安定であると言える。
ところで、本発明者らは、2種類以上の磁性元素とカルコゲンとからなるハーフメタリック反強磁性カルコゲナイド、及び2種類以上の磁性元素とプニクトゲンとからなるハーフメタリック反強磁性プニクタイドについて特許出願中(特願2008−073917)であるが、カルコゲンが2価、プニクトゲンが3価であるのに対して、ハロゲンは1価であるため、上記本発明に係る化合物(ハライド)は、ハーフメタリック反強磁性カルコゲナイド及びハーフメタリック反強磁性プニクタイドの様にABX(A及びBは磁性元素、Xはカルコゲン或いはプニクトゲン)の化学組成をもたず、上述の如くABXの化学組成をもつ。このため、本発明に係る化合物における磁性元素間の距離は、カルコゲナイド及びプニクタイドに比べて15%以上遠く、磁性元素の交換分裂に大きく寄与している。一方、陰イオンがカルコゲナイド及びプニクタイドに比べて2倍存在するために金属的な広いバンドが確保されており、高い磁気転移温度が得られる。又、イオン性の高いハライドが配位しているため、結晶場分裂は大きくなく高スピン状態が維持される。以上のことから、本発明に係る化合物は、カルコゲナイド及びプニクタイドよりも安定で、且つ調製も容易であると考えられる。
尚、本発明に係る化合物がハーフメタリック反強磁性を発現することは上述の如く理論的に説明することが可能であるが、実際にハーフメタリック反強磁性を発現するかどうかは、後述の第1原理電子状態計算を行なうことによって初めて判明するものである。
具体的には、前記ハーフメタリック反強磁性体は、2種類の磁性元素とハロゲンとから構成されており、該2種類の磁性元素は、CrとFe、VとCo、及びTiとNiの何れか1つの組合せである。上述の如く、Cr(原子番号24)とFe(原子番号26)の有効d電子数はそれぞれ4個(=24−18−2)と6個(=26−18−2)となるので、それらの総和は10となる。又、V(原子番号23)とCo(原子番号27)の有効d電子数はそれぞれ3個(=23−18−2)と7個(=27−18−2)となるので、それらの総和は10となる。更に、Ti(原子番号22)とNi(原子番号28)の有効d電子数はそれぞれ2個(=22−18−2)と8個(=28−18−2)となるので、それらの総和は10となる。
本発明によれば、化学的に安定に存在し、然も安定な磁気構造を有するハーフメタリック反強磁性体を実現することが出来る。
図1はCdI型結晶構造を有するCrFeIの反強磁性状態での電子状態密度を表わすグラフである。 図2はCdI型結晶構造を有するCrFeBrの反強磁性状態での電子状態密度を表わすグラフである。 図3はCdCl型結晶構造を有するCrFeClの反強磁性状態での電子状態密度を表わすグラフである。 図4はCdCl型結晶構造を有するVCoClの反強磁性状態での電子状態密度を表わすグラフである。 図5はCdI型結晶構造を有するVCoBrの反強磁性状態での電子状態密度を表わすグラフである。 図6はCdI型結晶構造を有するVCoIの反強磁性状態での電子状態密度を表わすグラフである。 図7はCdCl型結晶構造を有するTiNiIの反強磁性状態での電子状態密度を表わすグラフである。 図8はCdCl型結晶構造を有するTiNiBrの反強磁性状態での電子状態密度を表わすグラフである。 図9はCdI型結晶構造を有するCrFeClの反強磁性状態での電子状態密度を表わすグラフである。 図10はCdCl型結晶構造を有するCrFeIの反強磁性状態での電子状態密度を表わすグラフである。 図11はCdI型結晶構造を有するTiNiBrの反強磁性状態での電子状態密度を表わすグラフである。 図12はCdI型結晶構造を有するTiNiClの反強磁性状態での電子状態密度を表わすグラフである。 図13はCdCl型結晶構造を有するVCoBrの反強磁性状態での電子状態密度を表わすグラフである。 図14はCdI型結晶構造を有するVCoClの反強磁性状態での電子状態密度を表わすグラフである。 図15は組成式ABXで表わされる化合物の非磁性状態での状態密度曲線の概念図である。 図16は上記化合物の強磁性状態での状態密度曲線の概念図である。 図17は上記化合物の反強磁性状態での状態密度曲線の概念図である。
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明に係るハーフメタリック反強磁性体は、ヨウ化カドミウム(CdI)型或いは塩化カドミウム(CdCl)型の結晶構造を有する金属間化合物であって、2種類以上の磁性元素とハロゲンとから構成されている。前記2種類以上の磁性元素には、有効d電子数が5より少ない磁性元素と有効d電子数が5より多い磁性元素とが含まれており、前記2種類以上の磁性元素の有効d電子数の総和は10或いは10に近い値である。ここで、ハロゲンは、Cl、Br及びIの何れかの元素である。
具体的には、2種類の遷移金属元素とハロゲンとから構成され、組成式ABX(A及びBは遷移金属元素、Xはハロゲン)で表わされる。ここで、2種類の遷移金属元素は、CrとFe、VとCo及びTiとNiの何れか1つの組合せである。尚、3種類以上の遷移金属元素とハロゲンとから構成することも可能である。
上記本発明に係るハーフメタリック反強磁性体は、固相反応法により調製することが可能であって、調製工程においては、粉末化した磁性元素とハロゲンとを十分に混合した後、クオーツガラス管に封入して1000℃以上に加熱した後、アニール処理を行なう。尚、レーザーアブレーション法によって調製することも可能である。
上記本発明に係るハーフメタリック反強磁性体は、半導体を母体としたハーフメタリック反強磁性半導体の様に磁性イオンが母体中に析出した状態ではなく、ハロゲンが磁性元素と互いに化学結合してなる化合物であって、その結合は十分に強く、生成エネルギーの計算からも安定な化合物であると言える。尚、類似する多くの遷移金属ハライドが安定に存在することも知られている。
又、磁性イオンとハロゲンとの化学結合が強いため、ハロゲンを介した磁性イオン間の化学結合も強い。ここで、磁気的結合は化学結合の内、磁気モーメントによるものであり、化学結合が強ければ、磁気的結合も強いと言える。従って、本発明に係るハーフメタリック反強磁性体は、磁気的結合が強く、磁気的構造は安定であると言える。
更に、本発明に係るハーフメタリック反強磁性体は、上述の如く容易に調製することが出来る。
ハーフメタリック反強磁性体は、フェルミ面が100%スピン分極した物質であるので、スピントロニクス材料として有用である。又、ハーフメタリック反強磁性体は、磁化を持たないため外部の摂動に対して安定であると共に、形状磁気異方性を生じないため電流やスピン注入によるスピン反転が容易に実現できる可能性が高く、高性能磁気メモリや磁気ヘッド材料等のより広い分野への応用が期待される。
第1実施例
本実施例のハーフメタリック反強磁性体は、CdI型(六方晶)の結晶構造を有し、組成式CrFeIで表わされる遷移金属ハライドである。
本発明者らは、本実施例の遷移金属ハライドがハーフメタリック反強磁性を有することを確認すべく第1原理電子状態計算を行なった。ここで、第1原理電子状態計算の方法としては、KKR(Korringa-kohn-Rostoker)法(グリーン関数法とも呼ばれる)とCPA(Coherent-Potential Approximation:コヒーレント・ポテンシャル近似)法とLDA(Local-Density Approximation:局所密度近似)法とを組み合わせた公知のKKR−CPA−LDA法を採用した(月刊「化学工業 Vol.53, No.4(2002)」pp.20-24、「システム/制御/情報 Vol.48, No.7」pp.256-260)。
図1は、CdI型結晶構造を有するCrFeIについて第1原理電子状態計算を行なうことにより得られた反強磁性状態での状態密度曲線を表わしている。図中の実線は全状態密度、点線はFeの3d軌道位置での局所状態密度、破線はCrの3d軌道位置での局所状態密度を表わしている。
図中に実線で示す如く、下向きスピン電子の状態密度がゼロとなってバンドギャップGpが形成され、該バンドギャップ中にフェルミエネルギーが存在している。一方、上向きスピン電子の状態密度はフェルミエネルギー付近でゼロよりも大きくなっている。この様に、下向きスピン電子の状態は半導体としての性質を示す一方、上向きスピン電子の状態は金属としての性質を示しており、ハーフメタリックが発現していると言える。又、上向きスピン全電子状態密度及び下向きスピン全電子状態密度をそれぞれフェルミエネルギーまで積分した結果、両積分値が等しかったことから、FeとCrが互いの磁気モーメントを打ち消し合って全体として磁化が0になっており、反強磁性が発現していると言える。更に、常磁性状態での状態密度曲線から得られる常磁性状態でのエネルギー(以下、常磁性状態エネルギーという)と強磁性状態での状態密度曲線から得られる強磁性状態でのエネルギー(以下、強磁性状態エネルギーという)との差を計算すると−0.0059236Ry、常磁性状態エネルギーと反強磁性状態での状態密度曲線から得られる反強磁性状態でのエネルギー(以下、反強磁性状態エネルギーという)との差を計算すると−0.0088222Ryであったことから、反強磁性状態が安定な磁気構造であると言える。従って、本実施例の遷移金属ハライドはハーフメタリック反強磁性を有すると言える。
又、反強磁性状態から常磁性状態に移行する磁気転移温度(ネール温度)を計算すると、464Kであった。ここで、ネール温度は、常磁性状態でのエネルギーと反強磁性状態でのエネルギーとの差から評価する公知の方法によって算出した(J.Phys.:Condens. Matter 19(2007)365215, Physica Status Solidi C3, (2006)4160(2006))。
第2実施例
本実施例のハーフメタリック反強磁性体は、CdI型(六方晶)の結晶構造を有し、組成式CrFeBrで表わされる遷移金属ハライドである。
図2は、CdI型結晶構造を有するCrFeBrについて第1原理電子状態計算を行なうことにより得られた反強磁性状態での状態密度曲線を表わしている。図中の実線は全状態密度、点線はFeの3d軌道位置での局所状態密度、破線はCrの3d軌道位置での局所状態密度を表わしている。図中に実線で示す状態密度曲線からハーフメタリックが発現していると言える。又、上向きスピン全電子状態密度及び下向きスピン全電子状態密度をそれぞれフェルミエネルギーまで積分した結果、両積分値が等しかったことから、全体として磁化が0になっており、反強磁性が発現していると言える。更に、常磁性状態エネルギーと強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0085131Ry、常磁性状態エネルギーと反強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0120155Ryであったことから、反強磁性状態が安定な磁気構造であると言える。従って、本実施例の遷移金属ハライドはハーフメタリック反強磁性を有すると言える。
又、ネール温度を計算すると、632Kであった。
第3実施例
本実施例のハーフメタリック反強磁性体は、CdCl型(立方晶に近い三方晶)の結晶構造を有し、組成式CrFeClで表わされる遷移金属ハライドである。
図3は、CdCl型結晶構造を有するCrFeClについて第1原理電子状態計算を行なうことにより得られた反強磁性状態での状態密度曲線を表わしている。図中の実線は全状態密度、点線はFeの3d軌道位置での局所状態密度、破線はCrの3d軌道位置での局所状態密度を表わしている。図中に実線で示す状態密度曲線からハーフメタリックが発現していると言える。又、上向きスピン全電子状態密度及び下向きスピン全電子状態密度をそれぞれフェルミエネルギーまで積分した結果、両積分値が等しかったことから、全体として磁化が0になっており、反強磁性が発現していると言える。更に、常磁性状態エネルギーと強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0178482Ry、常磁性状態エネルギーと反強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0203808Ryであったことから、反強磁性状態が安定な磁気構造であると言える。従って、本実施例の遷移金属ハライドはハーフメタリック反強磁性を有すると言える。
又、ネール温度を計算すると、1072Kであった。
第4実施例
本実施例のハーフメタリック反強磁性体は、CdCl型(立方晶に近い三方晶)の結晶構造を有し、組成式VCoClで表わされる遷移金属ハライドである。
図4は、CdCl型結晶構造を有するVCoClについて第1原理電子状態計算を行なうことにより得られた反強磁性状態での状態密度曲線を表わしている。図中の実線は全状態密度、点線はVの3d軌道位置での局所状態密度、破線はCoの3d軌道位置での局所状態密度を表わしている。図中に実線で示す状態密度曲線からハーフメタリックが発現していると言える。又、上向きスピン全電子状態密度及び下向きスピン全電子状態密度をそれぞれフェルミエネルギーまで積分した結果、両積分値が等しかったことから、VとCoが互いの磁気モーメントを打ち消し合って全体として磁化が0になっており、反強磁性が発現していると言える。更に、常磁性状態エネルギーと強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0018847Ry、常磁性状態エネルギーと反強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0027309Ryであったことから、反強磁性状態が安定な磁気構造であると言える。従って、本実施例の遷移金属ハライドはハーフメタリック反強磁性を有すると言える。
又、ネール温度を計算すると、143Kであった。
第5実施例
本実施例のハーフメタリック反強磁性体は、CdI型(六方晶)の結晶構造を有し、組成式VCoBrで表わされる遷移金属ハライドである。
図5は、CdI型結晶構造を有するVCoBrについて第1原理電子状態計算を行なうことにより得られた反強磁性状態での状態密度曲線を表わしている。図中の実線は全状態密度、点線はCoの3d軌道位置での局所状態密度、破線はVの3d軌道位置での局所状態密度を表わしている。図中に実線で示す状態密度曲線からハーフメタリックが発現していると言える。又、上向きスピン全電子状態密度及び下向きスピン全電子状態密度をそれぞれフェルミエネルギーまで積分した結果、両積分値が等しかったことから、全体として磁化が0になっており、反強磁性が発現していると言える。更に、常磁性状態エネルギーと強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0015616Ry、常磁性状態エネルギーと反強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0023763Ryであったことから、反強磁性状態が安定な磁気構造であると言える。従って、本実施例の遷移金属ハライドはハーフメタリック反強磁性を有すると言える。
又、ネール温度を計算すると、125Kであった。
第6実施例
本実施例のハーフメタリック反強磁性体は、CdI型(六方晶)の結晶構造を有し、組成式VCoIで表わされる遷移金属ハライドである。
図6は、CdI型結晶構造を有するVCoIについて第1原理電子状態計算を行なうことにより得られた反強磁性状態での状態密度曲線を表わしている。図中の実線は全状態密度、点線はCoの3d軌道位置での局所状態密度、破線はVの3d軌道位置での局所状態密度を表わしている。図中に実線で示す状態密度曲線からハーフメタリックが発現していると言える。又、上向きスピン全電子状態密度及び下向きスピン全電子状態密度をそれぞれフェルミエネルギーまで積分した結果、両積分値が等しかったことから、全体として磁化が0になっており、反強磁性が発現していると言える。更に、常磁性状態エネルギーと強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0008055Ry、常磁性状態エネルギーと反強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0011057Ryであったことから、反強磁性状態が安定な磁気構造であると言える。従って、本実施例の遷移金属ハライドはハーフメタリック反強磁性を有すると言える。
又、ネール温度を計算すると、58Kであった。
第7実施例
本実施例のハーフメタリック反強磁性体は、CdCl型(立方晶に近い三方晶)の結晶構造を有し、組成式TiNiIで表わされる遷移金属ハライドである。
図7は、CdCl型結晶構造を有するTiNiIについて第1原理電子状態計算を行なうことにより得られた反強磁性状態での状態密度曲線を表わしている。図中の実線は全状態密度、点線はNiの3d軌道位置での局所状態密度、破線はTiの3d軌道位置での局所状態密度を表わしている。
図中に実線で示す状態密度曲線によれば、局所密度近似法の範囲ではハーフメタリックは発現していない。一方、上向きスピン全電子状態密度及び下向きスピン全電子状態密度をそれぞれフェルミエネルギーまで積分した結果、両積分値が等しかったことから、NiとTiが互いの磁気モーメントを打ち消し合って全体として磁化が0となっており、反強磁性は発現していると言える。又、常磁性状態エネルギーと強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0053210Ry、常磁性状態エネルギーと反強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0066595Ryであったことから、反強磁性状態が安定な磁気構造であると言える。更に、ネール温度を計算すると、350Kであった。
上述の如く、局所密度近似法の範囲ではハーフメタリックは発現しないが、Ni、Feのハライドは金属・絶縁体転移の近傍であり、電子間相互作用の影響が大きい系として知られている。この様な系に対しては、局所密度近似法では交換分裂を小さく見積もる傾向があり、この点を補正するために自己相互作用補正等を行なえば、ハーフメタリックが発現すると予想される。従って、本実施例の遷移金属ハライドがハーフメタリック反強磁性を発現する可能性は高いと言える。
第8実施例
本実施例のハーフメタリック反強磁性体は、CdCl型(立方晶に近い三方晶)の結晶構造を有し、組成式TiNiBrで表わされる遷移金属ハライドである。
図8は、CdCl型結晶構造を有するTiNiBrについて第1原理電子状態計算を行なうことにより得られた反強磁性状態での状態密度曲線を表わしている。図中の実線は全状態密度、点線はTiの3d軌道位置での局所状態密度、破線はNiの3d軌道位置での局所状態密度を表わしている。
図中に実線で示す状態密度曲線によれば、局所密度近似法の範囲ではハーフメタリックは発現していない。一方、上向きスピン全電子状態密度及び下向きスピン全電子状態密度をそれぞれフェルミエネルギーまで積分した結果、両積分値が等しかったことから、全体として磁化が0となっており、反強磁性は発現していると言える。又、常磁性状態エネルギーと強磁性状態エネルギーとの差を計算すると+0.0007029Ry、常磁性状態エネルギーと反強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0009824Ryであったことから、反強磁性状態が安定な磁気構造であると言える。更に、ネール温度を計算すると、51Kであった。
上述の如く、局所密度近似法の範囲ではハーフメタリックは発現しないが、Ni、Feのハライドは金属・絶縁体転移の近傍であり、電子間相互作用の影響が大きい系として知られている。この様な系に対しては、局所密度近似法では交換分裂を小さく見積もる傾向があり、この点を補正するために自己相互作用補正等を行なえば、ハーフメタリックが発現すると予想される。従って、本実施例の遷移金属ハライドがハーフメタリック反強磁性を発現する可能性は高いと言える。
第9実施例
本実施例のハーフメタリック反強磁性体は、CdI型(六方晶)の結晶構造を有し、組成式CrFeClで表わされる遷移金属ハライドである。
図9は、CdI型結晶構造を有するCrFeClについて第1原理電子状態計算を行なうことにより得られた反強磁性状態での状態密度曲線を表わしている。図中の実線は全状態密度、点線はFeの3d軌道位置での局所状態密度、破線はCrの3d軌道位置での局所状態密度を表わしている。図中に実線で示す状態密度曲線からハーフメタリックが発現していると言える。又、上向きスピン全電子状態密度及び下向きスピン全電子状態密度をそれぞれフェルミエネルギーまで積分した結果、両積分値が等しかったことから、全体として磁化が0になっており、反強磁性が発現していると言える。更に、常磁性状態エネルギーと強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0085766Ry、常磁性状態エネルギーと反強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0102102Ryであったことから、反強磁性状態が安定な磁気構造であると言える。従って、本実施例の遷移金属ハライドはハーフメタリック反強磁性を有すると言える。
又、ネール温度を計算すると、537Kであった。
第10実施例
本実施例のハーフメタリック反強磁性体は、CdCl型(立方晶に近い三方晶)の結晶構造を有し、組成式CrFeIで表わされる遷移金属ハライドである。
図10は、CdCl型結晶構造を有するCrFeIについて第1原理電子状態計算を行なうことにより得られた反強磁性状態での状態密度曲線を表わしている。図中の実線は全状態密度、点線はFeの3d軌道位置での局所状態密度、破線はCrの3d軌道位置での局所状態密度を表わしている。図中に実線で示す状態密度曲線からハーフメタリックが発現していると言える。又、上向きスピン全電子状態密度及び下向きスピン全電子状態密度をそれぞれフェルミエネルギーまで積分した結果、両積分値が等しかったことから、全体として磁化が0になっており、反強磁性が発現していると言える。更に、常磁性状態エネルギーと強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0078931Ry、常磁性状態エネルギーと反強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0103427Ryであったことから、反強磁性状態が安定な磁気構造であると言える。従って、本実施例の遷移金属ハライドはハーフメタリック反強磁性を有すると言える。
又、ネール温度を計算すると、550Kであった。
第11実施例
本実施例のハーフメタリック反強磁性体は、CdI型(六方晶)の結晶構造を有し、組成式TiNiBrで表わされる遷移金属ハライドである。
図11は、CdI型結晶構造を有するTiNiBrについて第1原理電子状態計算を行なうことにより得られた反強磁性状態での状態密度曲線を表わしている。図中の実線は全状態密度、点線はNiの3d軌道位置での局所状態密度、破線はTiの3d軌道位置での局所状態密度を表わしている。
図中に実線で示す状態密度曲線から、局所密度近似法の範囲ではハーフメタリックに極めて近い性質が発現しているがハーフメタリックが発現しているとは言えない。一方、上向きスピン全電子状態密度及び下向きスピン全電子状態密度をそれぞれフェルミエネルギーまで積分した結果、両積分値が等しかったことから、全体として磁化が0となっており、反強磁性は発現していると言える。又、常磁性状態エネルギーと強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0040625Ry、常磁性状態エネルギーと反強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0063391Ryであったことから、反強磁性状態が安定な磁気構造であると言える。更に、ネール温度を計算すると、333Kであった。
上述の如く、局所密度近似法の範囲ではハーフメタリックは発現しないが、Ni、Feのハライドは金属・絶縁体転移の近傍であり、電子間相互作用の影響が大きい系として知られている。この様な系に対しては、局所密度近似法では交換分裂を小さく見積もる傾向があり、この点を補正するために自己相互作用補正等を行なえば、ハーフメタリックが発現すると予想される。従って、本実施例の遷移金属ハライドがハーフメタリック反強磁性を発現する可能性は高いと言える。
第12実施例
本実施例のハーフメタリック反強磁性体は、CdI型(六方晶)の結晶構造を有し、組成式TiNiClで表わされる遷移金属ハライドである。
図12は、CdI型結晶構造を有するTiNiClについて第1原理電子状態計算を行なうことにより得られた反強磁性状態での状態密度曲線を表わしている。図中の実線は全状態密度、点線はNiの3d軌道位置での局所状態密度、破線はTiの3d軌道位置での局所状態密度を表わしている。図中に実線で示す状態密度曲線からハーフメタリックが発現していると言える。又、上向きスピン全電子状態密度及び下向きスピン全電子状態密度をそれぞれフェルミエネルギーまで積分した結果、両積分値が等しかったことから、全体として磁化が0になっており、反強磁性が発現していると言える。更に、常磁性状態エネルギーと強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0055737Ry、常磁性状態エネルギーと反強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0062529Ryであったことから、反強磁性状態が安定な磁気構造であると言える。従って、本実施例の遷移金属ハライドはハーフメタリック反強磁性を有すると言える。
又、ネール温度を計算すると、329Kであった。
第13実施例
本実施例のハーフメタリック反強磁性体は、CdCl型(立方晶に近い三方晶)の結晶構造を有し、組成式VCoBrで表わされる遷移金属ハライドである。
図13は、CdCl型結晶構造を有するVCoBrについて第1原理電子状態計算を行なうことにより得られた反強磁性状態での状態密度曲線を表わしている。図中の実線は全状態密度、点線はCoの3d軌道位置での局所状態密度、破線はVの3d軌道位置での局所状態密度を表わしている。図中に実線で示す状態密度曲線からハーフメタリックが発現していると言える。又、上向きスピン全電子状態密度及び下向きスピン全電子状態密度をそれぞれフェルミエネルギーまで積分した結果、両積分値が等しかったことから、全体として磁化が0になっており、反強磁性が発現していると言える。更に、常磁性状態エネルギーと強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0014354Ry、常磁性状態エネルギーと反強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0018137Ryであったことから、反強磁性状態が安定な磁気構造であると言える。従って、本実施例の遷移金属ハライドはハーフメタリック反強磁性を有すると言える。
又、ネール温度を計算すると、95Kであった。
第14実施例
本実施例のハーフメタリック反強磁性体は、CdI型(六方晶)の結晶構造を有し、組成式VCoClで表わされる遷移金属ハライドである。
図14は、CdI型結晶構造を有するVCoClについて第1原理電子状態計算を行なうことにより得られた反強磁性状態での状態密度曲線を表わしている。図中の実線は全状態密度、点線はCoの3d軌道位置での局所状態密度、破線はVの3d軌道位置での局所状態密度を表わしている。図中に実線で示す状態密度曲線からハーフメタリックが発現していると言える。又、上向きスピン全電子状態密度及び下向きスピン全電子状態密度をそれぞれフェルミエネルギーまで積分した結果、両積分値が等しかったことから、全体として磁化が0になっており、反強磁性が発現していると言える。更に、常磁性状態エネルギーと強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0051663Ry、常磁性状態エネルギーと反強磁性状態エネルギーとの差を計算すると−0.0062961Ryであったことから、反強磁性状態が安定な磁気構造であると言える。従って、本実施例の遷移金属ハライドはハーフメタリック反強磁性を有すると言える。
又、ネール温度を計算すると、278Kであった。
本発明に係るハーフメタリック反強磁性体は、化学的に安定で、然も、安定な磁気構造を有している。特に、上記の第1実施例乃至第3実施例、第9実施例、第10実施例及び第12実施例の遷移金属ハライドは、室温を超えるネール温度を有しており、これらを用いたデバイスは室温で安定した動作を行なうことが出来るので、ハーフメタリック反強磁性体として有望である。
尚、2種類以上の磁性元素とハロゲンとの組合せとしては、第1原理電子状態計算を行なった上記組合せ以外であっても、ハーフメタリック反強磁性が発現する可能性はあると考えられる。

Claims (5)

  1. 2種類以上の磁性元素とハロゲンとを含む化合物であって、前記2種類以上の磁性元素には、有効d電子数が5より少ない磁性元素と有効d電子数が5より多い磁性元素とが含まれており、前記2種類以上の磁性元素の有効d電子数の総和は10或いは10に近い値であるハーフメタリック反強磁性体。
  2. ヨウ化カドミウム型或いは塩化カドミウム型の結晶構造を有している請求項1に記載のハーフメタリック反強磁性体。
  3. 2種類の磁性元素とハロゲンとから構成されている請求項1又は請求項2に記載のハーフメタリック反強磁性体。
  4. 前記2種類の磁性元素は、CrとFe、VとCo、及びTiとNiの何れか1つの組合せである請求項3に記載のハーフメタリック反強磁性体。
  5. 前記ハロゲンは、塩素、臭素及びヨウ素の何れかの元素である請求項1乃至請求項4の何れかに記載のハーフメタリック反強磁性体。
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