改変フィトクロム 技術分野
本発明は、 人工改変フイトクロム遺伝子、 該遺伝子を組み込んだプラスミドべ クタ一、 ならびに該遺伝子を導入した植物体およびその作出方法に関する。 さら に詳しくは、 該遺伝子の導入により、 高光感受性、 含有色素量の増加、 開花期間 の延長、 子房の肥大、 茎又は株の肥明大等の特徴を有する植物を提供することに関 する。 細 1
書 背景技術
植物にとって、 光は光合成のためのエネルギー源、 および周囲の環境に適応す るための情報源として重要である。そのため植物は、他の植物の陰に入ったとき、 光合成産物を専ら茎の伸長にあて、 その陰から抜け出ようとする。 これを避陰反 応という。 避陰反応は、 植物種の存続にとっては不可欠であるが、 農業的には不 利益な要素の 1つである。 例えば、 農地面積の限られた場所では、 単一の植物種 を密植するのが原則であり、 そのため集団全体が避陰反応を引き起こす。 すなわ ち、 茎が伸長し、 イネや小麦等の穀物では、 風雨や水害に極端に弱くなつてしま うといつた問題がある。
避陰反応は、 日陰においてフィトクロムと呼ばれる植物固有の光受容体の活性 が低下することによって引き起こされる。 すなわち、 フイトクロムは避陰反応 ( 茎の伸長) を阻害する方向に働く。 フイトクロムは単量体分子量約 12万の色素 夕ンパク質であり、 種子の光発芽から花成の際の日長感受にいたるまで植物の 様々な光応答における光受容体として働くことが知られている(Sm i t h H. Phy t och rome s and l i gh t s i gna l e r c e p t i o n by p l an t s - a n eme r g i ng s y n t h e s i s. Na t ur e 407, 585- 591, 2000)。 また、 フイト クロムは赤色光を吸収すると細胞質から核内に移行し、 転写因子と相互作用する
ことにより、 核内で様々な遺伝子の発現を制御することも知られている (Yam aguch i R. E t a 1 : J. Ce l l B i o l (1999) 145 : 437-445 ; Qua i l PH : Na t Rev Mo 1 Ce l l B i o l (2002) 3 : 85— 93)。
フイトクロム分子の特徴は、 N末端領域 (以下、 シグナル伝達ドメインと呼ぶ ことがある) および C末端領域の 2つのドメインからなり、 それぞれが互いに独 立に立体構造を保持し、 固有の機能を持つという点にある。 N末端領域は発色団 と結合して光受容に働く一方、 C末端領域にはシグナル伝達に関与すると思われ るモチーフが複数存在する。 このため、 C末端領域がシグナルを下流の因子に伝 達すると信じられてきた (和田正三ら監修:植物の光センシング;植物細胞工学 シリーズ 16, 秀潤社, 2001)。 また、 フィトクロム分子は、 C末端領域を 介して常に二量体化しているが、 この生理学的意義についてはこれまで知られて いなかった。
これまで、 植物の光受容体であるフィトクロムを農作物において過剰に発現さ せ、 単位面積あたりの収量を高める試みがなされてきた。 しかし、 改変を施して いないフィトクロムを過剰に発現させても、 飽和反応量は増加するものの光感受 性は変化しなかった (Ro b s on, P. R. H. e t a 1. (199 6) Na t ure Bi o t e ch. 14, 995— 998·)。
本発明は、 フイトクロムのシグナル伝達ドメイン改変遺伝子、 該遺伝子を組み 込んだプラスミドベクター、および該改変遺伝子を導入することで、高光感受性、 色素沈着量の増加、 開花期間の延長、 子房の肥大、 茎又は株の肥大等の特徴を有 する植物体を提供することを主な目的とする。 発明の開示
本発明者らは、 フィトクロム分子の N末端領域が核内シグナル伝達能を有する こと、 N末端領域が効率良くシグナル伝達をするために二量体ィ匕が好ましいこと、 ならびに、 N末端領域に二量体化に関与するドメインおよび核移行シグナルを融 合させたフイトクロム分子は、 全長フイトクロム分子に比べ、 100倍以上高い 光感受性を有することを見出し、 本発明を完成するに至つた。
本発明は、 遺伝子操作により光感受性が高められた人工改変フイトクロム、 該 遺伝子を組み込んだプラスミドベクタ一、 および該遺伝子を導入した植物体に関 する。 さらに、 本発明の人工改変フイトクロム遺伝子を有する植物体は、 含有色 素量の増加、 開花期間の延長、 子房の肥大、 茎又は株の肥大等の特徴を有する。 図面の簡単な説明
図 1 ; phyBの N末端及び C末端領域の細胞内局在及び生理活性
a:喑所 (Da r k) 及び連続白色光 (cW) のもとでの細胞内局在。 同一の視 野における GFP及びプロピジゥムィオダイド (P I) 像を示す。 矢印は核を表 す。 スケールバー、 10 m。
b : phyB誘導体の図。 点線は、 N末端 (N t e r) 及び C末端 (C t e r) 領域間の境界を表す。 4つの連なった長方形は、 発色団を表す。
c :連続赤色光 (4. 9 n o 1 m— 2 s -1) のもとでの胚軸長 (h y p o c o t y 1 1 e n g t h)。 WTは、 野生型を示す。 cの下のパネルは、 mB A 1 (左) 及び抗 GFP抗体 (右) によるィムノブロッテイングを示す。 パネル下部 に総タンパク量を で示す。 2つの非特異的なバンド (星印) が観察された。 矢印は、 特異的なバンドを示す。
図 2 ;核内における p h y Bの N末端領域のシグナル伝達活性。
a、 b: phyB誘導体の細胞内局在 (a)、 及び phyB誘導体の図 (b)。 詳 細は、 図 1 a及び 1 bに同じ。
c :連続赤色光 (4. 9 n o 1 m_2 s— のもとでの胚軸長。 cの下のパ ネルは、 mB A 1によるィムノブロッテイングを示す。
d:野生型における内在性 phyBに対する比で表された、 導入蛋白レベルの関 数で表される、 連続赤色光 (4. 9 o 1 m-2 s"1) のもとでの胚軸長。 各点の番号は、 形質転換植物の系統名を示す。
e:連続赤色光のもとでの胚軸長に対するフルエンスレート(F 1 u e n c e r a t e) —反応曲線。 eの右パネルは、 mB A 1によるィムノブロッテイングを 示す。
図 3 ; NG— GUS— NLSは、 様々な p h y B応答を引き起こすことが可能
である。
a、 b:連続白色光 (50 ^mo lm_2 s— のもとで 1週間育生した芽生え のクロロフィルレベル (a) 及び子葉面積 (b)。 f . w. :生鮮重量。
c :連続白色光 (44 mo 1 m_2 s—1) のもとで 3週間育生した芽生えの d:連続白色光 (80/xmo 1 m_2 s—1) のもとで 4週間育生した成熟植 物。 スケ一ルバ一、 2 cm。
図 4; G 767 /R突然変異は、 p h y Bの核への蓄積を阻害する。
a: phyB誘導体の細胞内局在。 詳細は、 図 1 aのとおり。
b: phyB誘導体の mBAlによるィムノブロッテイング。 各レーンは、 25 gの総タンパク質を含む。
c:連続赤色光のもとでの胚軸長に対するフルエンスレート(F 1 u e n c e r a t e) —反応曲線。
図 5;細胞内における p h y B及び N G— G U S— N L Sの働きに関するモデル。 phyB及び NG— GUS— NLSは、 それぞれ p h y Bの C末端領域 (C) 及 び NLSの働きによって核内に入る。 喑所では、 N末端領域 (N) は、 phyB の核内への進入を阻害する。 喑所での NG— GUS—NLSの核への蓄積は、 反 応を引き起こすのに充分ではない。 明所において、 二量体化された phyB及び NG— GUS—NLSの Nは、 効率的にシグナルを伝達する。 phyBにおいて Nのシグナル伝達活性は、 Cによって阻害される。
図 6 ;本実施例で使用したプラスミドを示す。 本発明は、 以下の改変フイトクロム遺伝子、 および該遺伝子にコードされる改 変フィトクロムタンパク質、 ならびに該遺伝子を導入した植物体を提供する。
1. フィトクロム遺伝子のシグナル伝達ドメインをコ一ドする DNAと核移行シ グナルをコードする DN Aを含む改変フィトクロム遺伝子。
2. フイトクロム遺伝子のシグナル伝達ドメインの C末端側に、 直接或いはスぺ —サ一ペプチドを介して核移行シグナルを融合させた項 1に記載の改変フィトク ロム遺伝子。
3. さらに、 二量体化に働くドメイン (二量体ィ匕ドメイン) をコードする D NA を含む項 1に記載の改変フィトクロム遺伝子。
4. 該フィトクロム遺伝子がフィトクロム B遺伝子である項 1に記載の改変フィ トクロム遺伝子。
5. 該フィトクロム遺伝子のシグナル伝達ドメインがフィトクロム B遺伝子の N 末端から 1〜4 5 0ポリペプチドで構成される、 項 1に記載の改変フィトクロム 退 feナ。
5. 該ニ量体化に働くドメインが、 β一ダルク口ニダーゼである項 3に記載の 改変フィトクロム遺伝子。
6. 該核移行シグナルが、 S V 4 0ウィルス由来である項 1に記載の改変フィ トクロム遺伝子。
7. 項 1に記載の改変フイトクロム遺伝子を、 発現可能に組み込んだプラスミ ドベクター。
8. 項 1から 6のいずれかに記載される遺伝子又は項 7に記載のプラスミドべ クタ一を導入した植物体およびその子孫。
9. 開花期間が延長された項 8に記載の植物体およびその子孫。
1 0. 含有色素量が増加した項 8に記載の植物体およびその子孫。
1 1 . 子房の数が増加した項 8に記載の植物体およびその子孫。
1 2 . 茎、 塊茎、 葉、 根、 塊根、 蕾、 花、 花弁、 子房、 果実、 さや、 さく果、 種子、 線維または胚珠の形態である項 8に記載の植物体およびその子孫。
1 3 . 項 8に記載の植物体およびその子孫を栽培し、 該植物体の器官内に産生さ れた物質を回収することを特徴とする有用物質の産生方法。
1 4. 以下の工程:
( 1 ) 植物中で機能し得るプロモー夕一の制御下にある項 1に記載のフィトク口 ム遺伝子を含む少なくとも 1つの発現ベクターで、 植物の細胞を形質転換し、
( 2 ) 該形質転換細胞から、 該フイトクロム遺伝子を有していない植物に比べて 高光感受性、 含有色素量の増加、 開花期間の延長、 子房数の増加、 子房の肥大、 茎の S巴大、 茎又は枝数の増加、 株の肥大等から選択される少なくとも 1つの特徴 を有する植物体を再生し、
( 3 ) 該植物体から受粉により種子を採取し、 および
( 4) 該種子を栽培して得られる植物体から受粉により得られる種子における該 フイトクロム遺伝子を検定して該核酸配列のホモ接合体を選抜すること を含む、 該フイトクロム遺伝子についてホモ接合体である、 該フイトクロム遺伝 子を有していない植物に比べて高光感受性、含有色素量の増加、開花期間の延長、 子房数の増加、 子房の肥大、 茎の肥大、 茎又は枝数の増加、 株の肥大等から選択 される少なくとも 1つの特徴が固定された植物の作出方法。
本発明の改変フィトクロム遺伝子は、 シグナル伝達ドメインと核移行シグナル を含み、 さらに、 二量体化に働くドメイン (二量体化ドメイン) を含むのが好ま しい。 これらの連結順序は、 特に限定されないが、 シグナル伝達ドメインが 5 ' 側(発現夕ンパク質の N末端側)に存在するのが好ましく、次に核移行シグナル、 必要に応じてさらに二量体化ドメインが連結されるのがよい。 これらは相互に直 接連結されてもよく、 適当なスぺーサ一となるペプチドを介して連結されてもよ い。
本発明の限定的解釈を望むものではないが、 本発明の作用機序について、 本発 明者は以下のように考える。
フィトクロム分子は、 赤色光を受容すると構造変化を起こして細胞質から核内 に移行し、 シグナル伝達を行う。 このシグナル伝達は、 フィ卜クロム分子の N末 端領域が促進的にはたらき、 C末端領域が N末端領域からのシグナル伝達を阻害 することで制御されていると考えられる。 本発明者らは、 光受容に働く発色団の 結合サイトを有する、 フイトクロム分子の N末端領域のみを単離し、 そこに核移 行シグナルを融合させて核内に蓄積させることにより、 弱いながらもシグナル伝 達活性を有するコンストラクトを作製した。 さらに、 このコンストラクトに二量 体ィ匕ドメインを融合させることで、 シグナル伝達活性が明らかに上昇することが 示された。 このコンストラクトのシグナル伝達活性を詳細に調べた結果、 正常な フィトクロムに比べて光感受性が 1 0 0倍近くも高まっていることがわかり、 結 果として曰陰であっても活性が低下せず、避陰反応が抑制されることがわかった。
( 1 ) 人工改変フィトクロム遺伝子
本発明においてシグナル伝達ドメインの由来となるフィトクロム遺伝子は、 フ
ィトクロムファミリーに属する 5種類のフィトクロム遺伝子 (フィトクロム A— E) のいずれであってもよいが、 光に対して安定なフイトクロム Bであることが 好ましい。 また、 本発明の実施例においてはシロイヌナズナから単離されたフィ トクロム B遺伝子を用いているが、 光受容体としての機能、 および光安定性を有 していれば、 その由来は特に限定されない。
導入されるフィトクロム遺伝子改変体は、 導入前の植物に由来するフィトク口 ム遺伝子改変体、 或いは該植物の類縁植物の改変体であってもよく、 遺伝子が導 入される植物において機能する限り分類学上の系統が異なる植物に由来するフィ トク口ム遺伝子改変体であってもよい。
本発明の改変フィトクロム遺伝子の作製は、 当業者によって通常用いられるプ ラスミドコンストラクションを作製する方法によって行うことができる。
シロイヌナズナのフィトクロム Bのシグナル伝達ドメインは、 6 5 1ポリぺプ チドのサイズを有し、 配列番号 1に示される遺伝子によりコードされる。 本発明 'の改変フィトクロム遺伝子の構成単位として使用されるシグナル伝達ドメインは、 フィトクロム Bの N末端より 1—4 5 0ポリペプチドのものを使用することがで きるが、 N末端から 4 5 1 - 6 5 1の任意のポリペプチドをさらに連結したもの であってもよい。 また、 配列番号 1の 1—4 5 0或いは 1—6 5 1のポリべプチ ドはシロイヌナズナに由来するものでもよく、 他の植物由来の対応する遺伝子を 用いることも可能である。 シロイヌナズナ以外の植物由来のフィトクロム B遺伝 子としては、 例えば、 タバコ (N i c o t i a n a t o b a c urn) のフィト クロム B ( 1— 6 2 2ポリペプチド)、 イネ (O r y z a s a t i v a) のフィ トクロム B ( 1 6 6 0ポリペプチド) 等があげられる。
さらに、 本発明のシグナル伝達ドメインによりコードされるポリペプチドは、 シグナル伝達活性を有する限りフィトクロム遺伝子の該ドメインにおいて、 1ま たは複数、 例えば 1または数個のアミノ酸が置換、 付加、 欠失または挿入された ものであってもよい。 さらに、 シグナル伝達ドメインをコードする D NAとスト リンジェントな条件下にハイブリダィズし、 かつ、 シグナル伝達活性を有する夕 ンパク質であってもよい。
本明細書において 「ストリンジェントな条件」 とは, 特異的なハイブリダィゼ
—ションのみが起き, 非特異 β勺なハイプリダイゼ一ションが起きないような条件 をいう。 このような条件は, 通常, 「1 XSSC, 0. 1 %SDS, 37°C」 程 度であり, 好ましくは「0. 5 XSSC, 0. 1 %SDS, 42° (:」程度であり, 更に好ましくは 「0. 2XSSC, 0. 1 %SDS, 65°C」 程度である。 しかし、 十分な光受容にはシグナル伝達ドメインの全体構造が望ましいと考え られることから、 1 _651ポリペプチドであるものが最も好ましく、 シグナル 伝達ドメインからのシグナル伝達を阻害しない限り、 N末端から 651以上のポ リペプチド、 すなわち、 C末端領域に含まれるポリペプチド、 或いは他の任意の ペプチド配列を含んでいてもよい。
本発明で使用される核移行シグナル (Nuc l e a r Loc a l i z a t i on S i gna l : NL S) とは、 本発明の改変フイトクロム遺伝子にコ一 ドされるタンパク質を、 該遺伝子を導入した細胞の核内に輸送することができる ものを指す。 核移行シグナルとしては、 S V40ウィルスラージ T抗原由来の N LS、 アデノ随伴ウィルス VP 2 N末端由来の NLS、 ヌクレオプラズミン由来 の NLS、 MAT 0;2由来の 3、 c一 my c由来の NL S等があげられ、 植物中で機能し得るものであれば特に限定されないが、 S V 40由来の核移行シ グナルであることが好ましい。 また、 フイトクロム遺伝子の C末端領域にコード される、 核移行シグナルを用レ てもよい。 さらに、 本発明の核移行シグナルによ りコードされるポリペプチド〖ま、 核移行活性を有する限り 1または複数、 例えば 1または数個のアミノ酸が置換、 付加、 欠失または挿入されたものであってもよ い。 さらに、 核移行シグナルをコードする DNAとストリンジェントな条件下に ハイブリダィズし、 かつ、 核移行活性を有するタンパク質であってもよい。 本発明の改変フィトクロム分子は、 単量体であってもシグナル伝達能を有する が、 二量体化することによってシグナル伝達ドメインのシグナル伝達能が高まる ため、 二量体化していることが好ましい。
本発明で使用される二量体ィ匕ドメインは、 少なくとも二量体化すればよく、 場 合によっては三量体化、 四量体化などの多量体ィ匕するものであってもよい。 該ニ 量体化ドメインは、 フイトクロム分子に融合し得るものであればよい。 該ニ量体 化ドメインとしては、 例えば、 大腸菌 β -ダルク口ニダ一ゼ (]3-g 1 u c u r
on i d a s e : GUS)、ダル夕チオン一 S—トランスフェラーゼ(GS T)、 抗体分子である I gG分子の Fc部分、 s yn t r oph i n、 nNOSの PD Zドメイン、 MyoD、 I d等があげられ、 当業者によって通常使用されている ものであれば特に限定されないが、 大腸菌 β―ダルク口ニダ一ゼであることが好 ましい。 大腸菌 iS—ダルクロニダーゼは、 植物体内での選択マ一カーとして利用 されている酵素であり、 四量体化および二量体ィ匕に働くことが知られている。 さ らに、 本発明の二量体化ドメインによりコードされるポリペプチドは、 二量体化 /多量体化活性を有する限り 1または複数、 例えば 1または数個のアミノ酸が置 換、 付加、 欠失または揷入されたものであってもよい。 さらに、 二量体化ドメイ ンをコ一ドする DNAとストリンジェントな条件下にハイブリダイズし、 かつ、 二量体化活性を有するタンパク質であってもよい。 例えば、 二量体化ドメインと して大腸菌 i3—ダルク口ニダーゼを採用した場合、 二量体化する限りにおいて /3 一ダルクロニダーゼ活性の有無は問わない。
或いは、 二量体化の代わりに、 同一であっても異なっていてもよい 2以上のシ グナル伝達ドメインを必要に応じてスぺ一サ一となるポリぺプチド (核移行シグ ナルを含む) を介してタンデムに連結したタンパク質をコードする遺伝子を植物 に導入して発現させてもよい。
本発明で使用されるプロモータ一としては、 植物中で機能し得るものであれば 特に限定されないが、例えば力リフラヮーモザィクウイルス 35S(CaMV 3
5S)、 ノパリン合成酵素 (NOS)、 またはォクトピン合成酵素 (OCS) のプ 口モータ一等の非植物に由来するプロモーター、 フエ二ルァラニンアンモニアリ ァ一ゼ (PAL) 遺伝子プロモータ一、 カルコンシンターゼ (CHS) 遺伝子プ 口モーターもしくは、 カルコン合成酵素等、 二次代謝系の酵素のプロモ一夕一、 またはグリシニン等の貯蔵夕ンパク質のプロモー夕一等の植物に由来するプロモ 一夕一があげられ、 C aMV 35 Sプロモーターであることが好ましい。 本発明で使用されるターミネータ一としては、 植物中で機能し得るものであれ ば特に限定されないが、 例えばァグロパクテリゥム属細菌 T i—プラスミド由来 のノパリン合成酵素遺伝子のターミネ一ター(NO S)、ニンニクウィルス GV1, GV 2等のウィルス由来の夕一ミネ一夕一等があげられ、 NO S夕一ミネ一夕一
であることが好ましい。
さらに、 本発明の改変フイトクロム遺伝子を組み込んだベクターは、 ェンハン サー配列等のシス調節エレメントを含んでも良い。
本発明の改変フィトクロム遺伝子を組み込んだベクターが導入された、 宿主細 胞を選択するためのマーカ一遺伝子として、 例えば、 カナマイシン耐性遺伝子、 ハイグロマイシン耐性遺伝子、 ネオマイシン而性遺伝子、 ジェンタマイシン耐性 遺伝子、 植物に除草剤耐性を付与し得る遺伝子等を含んでいてもよい。 選択圧を かけない条件下では、 組み込まれた遺伝子が脱落することもあるため、 除草剤耐 性遺伝子をべクタ一上で共存させておけば、 栽培中、 該遺伝子に対応する除草剤 を使用することにより、 常に選択圧がかかった条件を実現することができるとい う利点がある。
さらに、 該改変フイトクロム遺伝子を組み込んだベクタ一に、 必要に応じて G F P、 L a c— Z等のレポ一夕一遺伝子を付力 Πさせても良い。
本発明の改変フィトクロム遺伝子を組み込 ¾ベクターとしては、 植物細胞で発 現可能なプラスミド、 ファージ、 ファージミ ド等があげられ、 p U C系プラスミ ド、 p S C 1 0 1系プラスミド、 T i—プラスミド、 ブル一スクリプト系プラス ミド、 M l 3系ファージ、 λ系ファージ、 コスミド類等が例示される。 本発明で は、 大腸菌由来の P GV 9 1 0および p B R 3 2 2をもとに作製された p P Z P 2 1 1プラスミドベクターを使用した。 これらのベクターに本発明の改変フィト クロム遺伝子を通常の遺伝子工学的技術を用いて組み込むことにより、 本発明の 改変フィトクロム遺伝子を有するべク夕一を精築することが可能である。
本発明の目的を達成するための好ましい態様としては、 二量体化に働くタンパ ク質をコ一ドする遺伝子および核移行シグナフレ遺伝子がィンフレームの状態、 す なわちそれらの遺伝子産物であるタンパク質力 S所期の作用を奏するように組み込 まれた遺伝子が挙げられる。 これらの遺伝子は、 それらの遺伝子産物が所期の作 用を奏する限り、 それぞれが組み込まれている位置は限定されない。
また、フィトクロム分子の C末端領域は、シグナル伝達ドメインをニ量体化し、 それをシグナル伝達の場である核内に運ぶ働きをするが、 核内においてはシグナ ル伝達ドメインの活性を抑制することから、 この抑制シグナルの機能を欠損させ
た c末端領域をシグナル伝達ドメインに融合させることで光感受性の高いフィト クロムを得ることも可能である。
さらに、 本発明の他の好ましい実施態様として、 上記のいずれかのプロモータ
—の下流に、 2つのフィトクロム Bの N末端遺伝子および核移行シグナルを付カロ した改変フィトクロム遺伝子 (プロモー夕一 +フィトクロム Bのシグナル伝達ド メィン遺伝子 +フイトクロム Bのシグナル伝達ドメイン遺伝子 +核移行シダナ ル) を用い、 二量体化したフイトクロム分子を得ることもできる。
蛋白質として単離したフィトクロムを、 マイクロインジェクション法を用いて 植物細胞内に注入すると、 その細胞のみに於いて色素の沈着や葉緑体の発達の促 進などが見られることが知られている(Bowl e r, C. e t a 1. (1 994) P l an t Ce l l 6, 152 9— 1541)。
本発明者は、 避陰反応に関与するフィトクロム遺伝子改変体を植物体内で発現 させることにより、 色素の発現量が著明に増大することを見出した。
(2) 人工改変フイトクロムタンパク質
本発明の改変フィトクロムタンパク質は、以下の方法により得ることができる。 本発明の改変フィトクロム遺伝子を、 (1)に記載のベクタ一を用いて、当業者 によって通常使用される形質転換の方法で、 宿主細胞を形質転換させた後、 得ら れた形質転換体を培養して、 培養細胞内あるいは培養液から本発明の改変フィト クロムタンパク質を分離および精製することができる。 また、 これらに用いられ る手段や方法は公知のものを組み合わせることができる。 宿主細胞としては、 細 菌、 好ましくは大腸菌 (E. c o 1 i) 等を例示することができ、 真核生物細胞 としては、例えば 母(S a c c h a r omy c e s c e r ev i s i a e等)、 またはイネ、 トウモロコシ、 コムギ等の単子葉植物由来の細胞、 ダイズ、 エンド ゥ、 インゲン等のマメ科植物、 タバコ、 トマト、 ジャガイモ等のナス科植物、 キ ャべッ、 ナタネ、 力ラシナ等のァブラナ科植物 、 メロン、 カポチヤ、 キユウリ 等のゥリ科植物、 ニンジン、 セロリ等のセリ科植物、 もしくはレタス等のキク科 植物等の双子葉植物由来の細胞を例示できる。
得られたタンパク質の精製方法としては、 一般的にタンパク質の精製に用いら れる方法を適用することができ、 例えば、 イオン交換クロマトグラフィー、 疎水
相互クロマトグラフィ一、 ゲル濾過クロマトグラフィー、 逆ネ目クロマトグラフィ 一、等電点クロマトグラフィー、 分取電気泳動法、 および等電点電気泳動法等、 およびこれらから選ばれる 2つ以上の方法を組み合わせて使用することができる。 上記の改変フイトクロムタンパク質は、 単離された状態で用いてもよく、 該タ ンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞に導入して、 このタンパク質を細胞内で 発現させた状態で用いても良い。
( 3 ) トランスジエニック植物
本発明において、遺伝子導入を行う植物の部位としては、植物体全体、葉、茎、 根、 花器、 生長点、 種子等の植物器官、 表皮、 師部、 柔纖戠、 木部、 維管束等の 植物組織、 カルスなどの植物培養細胞等があげられる。 本発明の遺伝子は、 これ らの部位の 1つ以上において選択的に発現するプロモータ一を用いて発現させて、 植物の特定の部位で発現させることもでき、 植物体全体で発現するプロモ一ター を用いて植物体全体に発現させることができる。 例えば、 果実、 穀物、 地下茎等 の部位には発現させず、 茎や葉だけに特異的に発現させることによって、 食用部 位において遺伝子組み換え夕ンパク質が発現しないようにすることも可能である。 さらに、 時期特異的プロモータ一、 誘導性プロモータ一等を用いることで、 特定 の期間においてのみ、本発明の遺伝子を発現させることもできる。また、同様に、 部位特異的に発現している転写因子、 特定の朿躐に対して発現する転写因子に応 答する配列に、 本発明の遺伝子を結合することで、 部位特異的又は時期特異的に 発現させることも可能である。
本発明の改変フィトクロム遺伝子を導入したトランスジエニック植物は、 以下 のようにして得られる。
本発明の改変フィトクロムをコードする遺伝子を、 フィトクロム欠損株の細胞 に、 パーティクルガン法 (パーティクルガンによる組織細胞または培養細胞への 直接導入法) 等により、 植物細胞に導入することができる。 この改変フイトクロ ム遺伝子を導入された形質転換細胞から、 当業者によつて通常行われる方法で植 物体を再生することにより、改変フィトクロム遺伝子を有する植物体が得られる。 パーティクルガン法は、 栽培中の植物の頂端分裂組織に直接遺伝子を導入するこ とが可能であり、 有用である。
また、 (1)に記載のプラスミドベクタ一を、例えば、ァグロバクテリウム菌感 染法(ァグロパクテリゥム菌を植物組織に感染させる方法)、または電気白勺導入法 (エレクトロボ一レーション法ゃプロトプラストへの電気的導入法) 等の従来公 知の方法により植物細胞に導人することができる。
ァグロパクテリゥム菌感染法の場合、 形質転換に一般的に使用されているノィ ナリーベクターのボーダー配 u間に、 植物ウィルス (例えばトマトモザイクウイ ルス等) のジエミ二ウィルスのゲノム DNAを同時に挿入し、 栽培中の植物の花 芽に該菌懸濁液を接触させる; ^けで、 本発明の改変フィトクロム遺伝子が花内部 の生殖細胞に導入される。 次に、 この植物から得られた種子を抗生物質を含む選 択培地に播くことことによって、 植物全体に導入遺伝子を持つ形質転換植物を得 ることができる。 該方法において、 菌懸濁液を接触させる器官は、 花芽に限定さ れず、 任意の器官または細胞でよい。
さらに、 フィトクロム欠損株のカルスに本発明の改変フィトクロム遺伝子を導 入し、 該遺伝子を有する植物体を得ることもできる。 カルスからの植物体の再生 方法は、 特に限定されず、 従来公知の方法によって行うことができる。
例えば、 本願発明の改変フィトクロム遺伝子の導入にァグロパクテリゥムを使 用してトランスジェニック植物を作出する場合、 以下の方法を用いることができ る。ここでは、イネを例にとって具体的な条件を説明するが、イネに限定されず、 当業者であれば以下の記載を参考に、 イネの部分を他の植物に置き換えて容易に 他のトランスジェニック植物を作出することができる。
( i) 種子滅菌とカルス誘導
イネ(Oryz a s a t i va L.) の完熟種子を小型籾すり機(藤原製作 所製 No. 114) にかけ、 籾を取り除いた種子 100〜150個を 50m 1 のデイスポーザブルの遠沈管に入れる。 このとき、 褐変化したような種子は、 コ ン夕ミネ一シヨンの原因になるので用いない。次に、 70%エタノールで 1分間、 その後、 40mlの種子滅菌用溶液(次亜塩素酸ナトリゥム (有効塩素 5. 0%) を滅菌水で 2倍に希釈し、 Twe en20を 2〜3滴加えてよく混ぜた ¾の) を 遠沈管に入れ、 シェーカーで 20分間、 150 r pmで振盪する。 このとき、 あ まり激しく振盪すると種子が fjれてしまうので、 注意する。
その後、 クリーンベンチ内でビーカーに溶液を捨て、 滅菌水を適当量加え、 3 回振り洗いをする。 ピンセットで種子をカルス誘導培地 (N6C 1) に 16種子 /シャーレで置床し、 シャーレの周りをサージカルテ一プ (Mi c r opo r e Su r g i c a l Tape ; 3 M社製 Ca t. No. 1530— 0) でシ ールして、 60 mo l/m2s、 16時間明期 Z 8時間暗期 (以下この日仮条 件を明所とする) の条件で、 25°C、 3週間培養する。
この培養期間中に種子の滅菌が不完全でコンタミネーションした場合は、 コン 夕ミネ一ションのなかった種子のみを新しい培地に移植する。 コンタミネ一ショ ンした種子に隣接する種子は移植しない方が良い。
(i i) カルスの前培養とァグロパクテリゥムの培養
誘導 3週間後の種子と胚乳と苗条 (s hoo t) 部分をメスで切り取るか、 あ るいはピンセットでもぎ取り、 胚盤由来カルスのみを新しいカルス誘導培地 (N 6 C 1 ) に 16カルス/シャーレで移植し、 サージカルテープでシールして 3曰 間、 25T、 明所で培養する。 カルスは、 乳白色の直径 4〜 5 mmの硬いカルス がよい。 褐変化したり、 粘着物質の付いたカルスは使用しないようにする。
プロモーターに目的遺伝子を接続し、 カナマイシン及びハイグロマイシン耐性 遺伝子を有するプラスミドによって形質転換されたァグロバクテリウムのグリセ ローリレストック (YEP培地でァグロパクテリゥムを一昼夜培養した培養液と 1
00%グリセロールを 1: 1の割合で混ぜ、ポルテックスで良く混合して一 8 or: で保存しておいたもの) から滅菌したつま楊枝で菌体を取り、 AB培地に塗布す る。塗布した菌体を白金耳で培地全体に広げ、 3日間、 28°C、暗闇で培養する。
(i i i) ァグロパクテリゥムの感染と共存培養
AB培地で増殖したァグロパクテリゥムを滅菌した薬さじ (小さい方) で 2〜 3回搔き取り、 50mlの遠沈管に入れた 30mlのァセトシリンゴンの入つた ァグロパクテリゥム懸濁培地 (AA培地) に懸濁する。 この場合、 あまり濃度が 高いと感染効率が落ちるため、懸濁液が薄く濁る程度 (OD600= 0. 15〜0. 2) でよい。 懸濁液を滅菌シャーレに入れ、 1シャ一レ分の前培養したカルスを メッシュ付筒 (ガラス管にナイロンメッシュを張り、 jiPl糸を巻いて軽く固定し、 最後にビニールテープで固定したもの) に入れ、 1. 5〜 2分間メッシュ付筒ご
と懸濁液に浸漬する。 このとき、 時々、 筒をこま べ振ってカルスを懸濁液にな じませるようにする。
浸漬後、 メッシュ付き筒を滅菌したベーパ一タ ルの上に置いて余分な水分を 除去する。その後、共存培養培地 (N 6 C O)に 1 6カルス/シャーレで置床し、 サージカルテープでシールして 2 8 °C, 暗黒下で 3日間培養する。 3日間培養す ると、 菌体がカルスをうつすらと覆うように増殖する。
共存培養培地に置床する際に、 培地に滅菌した 意紙を敷いておくと次の操作が しゃすくなる。 濾紙の有無は、 感染効率に影響し? ¾い。
( i v) ァグロパクテリゥムの除去と選抜
5 0 O m g/ 1でカルべニシリンを入れた滅菌フ 洗浄液を滅菌シャーレ 3個に 3 5 m 1ずつ入れる。次に、 カルスをメッシュ付筒も 1シャーレ分 ( 1 6カルス) 入れ、 洗浄液の入ったシャーレに浸漬し、 メッシュ付筒を左右に細かく振って中 のカルスを洗浄する。 3個のシャーレに順に浸漬 てカルスからァグロパクテリ ゥムを除去する。 このとき、 洗浄液の濁りがひど 場合には、 新しい洗浄液に交 換する。 メッシュ付筒を滅菌したペーパータオル D上に置き、 余分な水分を除去 する。
選抜培地 (N 6 S E) に 1 6カルス/'シャーレ" T置床し、 サージカルテープで シールして 2 5 °C, 明所で 3週間培養する。 感染させたカルスは、 全て選抜培地 に移す。 この培養期間中にァグロバクテリゥムの除去が十分でなく、 増殖してく るようであれば、もう一度洗浄して新しい培地に置床し直すか捨てるようにする。
( V ) 再分化
全てのカルスを再分化培地 (M S R E) に 9カスレスノシャーレで移植する (力 ルスあたりの栄養分を考えて、 1シャーレあたりのカルス数を減らす)。サージ力 ルテ一プでシールし、 2 5 °C、 明所で再分化してくるまで培養する。 3〜5週間 で再分化してくるが、 培地は 3週間で新しいものに換える。
(v i ) 検定と耐性個体のその後の生育
再分化固体を検定培地 (M S HF) に置床し、 Λ、イダロマイシン耐性を検定す る。 耐性であれば発根し、 野生型と同様の生育を示す。 非形質転換体は、 新しい 根が伸長せず 1週間程で枯死する。 シャーレ一杯に植物体が生育したら、 蓋をあ
けて水を入れ、 4〜 5日間馴化させる。
その後、 閉鎖系温室のポットに移植する。 水は、 毎日換えないと培地にカビが 生え、 植物体に悪影響を与える。
上記 (i) 〜 (v i) に使用する培地は、 以下の組成のものを使用することが できる。
ァグロパクテリゥム培養培地
• YEP培地 (pH7. 2)
10 g/l バクトペプトン
l O gZl バクトイースト抽出物
5g/l NaC 1
• AB培地 (pH7. 2)
3g/l K2HP04
1 g/ 1 NaH2P04 · 2H20
l g/1 NH4C 1
0. 3 g/ 1 MgS04 · 7H20
0. 15 gZ 1 KC 1
0. 012g/l C aC 12 · 2H20
0. 025 g/ 1 F e S04 · 7H20
5 g/ 1 グルコース
15 g/1 ァガー 植物体培養培地
,カルス誘導培地 (N 6 C 1 ) (pH5. 8)
N6無機塩
N 6ビタミン
30 g/1 スクロース
2mg/ 1 2, 4-D
2 g/1 ge 1 r i t e (登録商標)
'選抜培地 (N6 SE) (pH5. 8)
N 6無機塩類
N 6ビタミン
30 g/ 1 スクロース
2mg/ 1 2, 4一 D
2 g/l ge 1 r i t e (登録商標)
50 Omg/ 1 カルべニシリン
(C a 1 b e n i c i 1 1 i n、 フアイザ一製薬 注射用ゼォペン;ァグロバ クテリウム除菌用 500mgZmlの濃度で滅菌水に溶解し、 一20^:に保 存したもの)
5 Omg/ 1 ハイグロマイシン ,
(Hy g r omy c i n B, Bo eh r i nge r Mannhe im, Ca t No. 843555)
•ァグロパクテリゥム懸濁培地 (AA) (pH5. 8)
AA無機塩
. アミノ酸
B 5ビタミン
20 g/ 1 スクロース
2mg/ 1 2, 4一 D
0. 2mg/ 1 力イネチン
1 Omg/ 1 ァセトシリンゴン '
•再分化培地 (MSRE) (pH5. 8)
MS無機塩
MSビタミン
30 g/ 1 スクロース
30 g/1 ソルビトール
2 g/1 カザミノ酸
lmg/ 1 NAA
2mg/ 1 BAP
25 Omg/ 1 カルべニシリン (選択培地 (N 6 S E) に使用のものと同 じ)
5 Omg/ 1 ハイグロマイシン (選択培地 (N6SE) に使用のものと同 じ)
4g/l e 1 r i t e (登録商標)
•共存培養培地 (N6CO) (pH5. 2)
N6無機塩
N 6ビタミン
30 gZ 1 スクロース
l O gZl グルコース
2mg/ 1 2, 4一 D
1 Omg/ 1 ァセトシリンゴン
2 g/l ge 1 r i t e (登録商標)
•検定培地 (MSHF) (pH5. 8)
MS無機塩
MSビタミン
30 gZl スクロース
5 Omg/ 1 ハイグロマイシン (選択培地 (N6SE) に使用のものと同 じ)
8g/l ァガー
さらに、 The P l an t J ou r n a l (1994) 6 (2), 2 71 - 282や、 The P l an t J ou rna l (1998) 16, 735— 743を参考することで、 容易に本発明の改変フィトクロム遺伝子を導 入したトランスジェニック植物を作成することが可能である。
得られたトランスジエニック植物より、 常法に従って DNAを抽出し、 この D NAを適当な制限酵素で切断し、 改変フィトクロム遺伝子をプローブとして用い てサザンハイプリダイゼーションを行い、 遺伝子導入の有無を確認することがで さる。
また、 1、ランスジエニック植物や、 非トランスジエニック植物より、 常法に従 つて蛋白質を抽出し、 フィトクロムを認識する抗体を用いてウエスタンブロッテ ィングを行い、 目的蛋白質の蓄積量や状態を調べることができる。
また、 卜ランスジエニック植物や、 非トランスジエニック植物より、 常法に従 つて RNAを抽出し、 改変フイトクロム遺伝子のセンス配列、 もしくはアンチセ ンス配列を有するプローブを作製し、 これらのプロ一ブを用いてノーザンハイブ リダィゼーションを行い、 目的遺伝子の発現の状態を調べることができる。
上記のトランスジエニック植物は、 フイトクロム欠損株の植物に、 遺伝子工学 的手法により本発明の改変フィトクロム遺伝子が導入され、 かつ安定に保持され たものを指す。 ここで、 「安定に保持された」 とは、少なくとも本発明の改変フィ トクロム遺伝子が導入された当代の植物体で該遺伝子が発現し、 それによる表現 型が現れるのに充分な期間、 この植物細胞内に保持されることをいう。 したがつ て、 本発明の改変フイトクロム遺伝子は、 宿主植物の染色体上に組み込まれるこ とが好ましく、 次世代に安定的に遺伝することがより好ましい。
本発明の改変フイトクロム遺伝子を、 次世代に安定的に遺伝させるため、 該遺 伝子についてホモ接合体のトランスジエニック植物を作成することが好ましい。 ホモ接合体のトランスジエニック植物は、 例えば、 以下の方法によって得られ る。 得られたトランスジエニック植物 (T1) の、 自家受粉により得られる T2 種子の形質転換出現比率は、 通常メンデルの法則に従う。 該改変フィトクロム遺 伝子が一遺伝子座にヘテロ (he t e r ozygou s) に組み込まれた場合、 T 2種子では形質転換体は 3 : 1の割合で分離する。 T 2種子を栽培して、 自家 受粉させて得られる T 3種子において、形質転換体がすべての種子で出現すれば、 該 T 2形質転換植物はホモ接合体 (homozygo t e) であり、 該形質転換 植物が 3 : 1に分離すれば、 該 T 2形質転換植物は導入された改変フィトクロム 遺伝子についてヘテロ (he t e r ozygo t e) であると決定できる。
このようにして選抜された、 導入された改変フィトクロム遺伝子についてホモ 接合体である植物は、 高い光感受性等の表現型が固定された系統として、 種子産 業の分野において極めて有用である。
フイトクロムは、 全ての植物に存在し、 異なる植物種においてもほぼ同様に機 能するため、 あらゆる植物種に本発明の改変フィトクロム遺伝子を導入すること が可能である。
本発明の改変フィトクロムを導入した植物には、植物体全体(全樹)に限らず、 そのカルス、種子、 あらゆる植物組織、 葉、 茎、 塊茎、 根、 塊根、 蕾、 花、花弁、 子房、 果実、 さや、 胚珠、 繊維などが含まれる。 更にその子孫も本発明の植物に 含まれる。
本発明の改変フィトクロム遺伝子を導入した植物体は、 茎、 塊茎、 葉、 根、 塊 根、 蕾、 花、 花弁、 子房、 果実、 さや、 さく果、 種子、 繊維、 胚珠等の器官 (組 織) の数量、 形、 生育期間、 着色、 性質、 特性等において、 該改変フィトクロム 遺伝子を導入する前の植物体と比較して顕著な違いが観察される。
例えば、 本発明の改変フイトクロム遺伝子を有する植物体は、 該改変フィトク ロム遺伝子を導入する前の植物体に比べて高光感受性を示し、 その結果、 避陰反 応が抑制される。 ここで、 高光感受性とは、 本発明の改変フイトクロム遺伝子を 導入する前の植物に比し、 約 1 0倍以上、 好ましくは約 8 0倍以上、 より好まし くは約 1 0 0倍以上の光感受性を有することを指す。 光感受性が高まることによ つて、 避陰反応が抑制され、 茎の伸長が抑制される。
イネ、 コムギ等においては、 避陰反応によって茎が徒長した個体は台風等の環 境的な要因によって倒伏しやすいが、 本発明の改変フィトクロム遺伝子を有する 植物体は避陰反応が抑制され、 背丈が低くなるために倒伏しにくく、 台風などに 対して極めて高い耐性を示す。
また、 改変フイトクロム遺伝子を導入した植物体では、 花成時期は該改変フィ トクロム遺伝子を導入する前の植物体に比べ、 2〜 4倍程度遅れる傾向にあり、 開花期間 (花を咲かせている時間) が該改変フイトクロム遺伝子を導入する前の 植物体に比べて明らかに延長されることが観察されている。 ここで、 開花期間が 延長されるとは、 該改変フイトクロム遺伝子を導入する前の植物体に比べて、 開
花期間が 5 %以上、 好ましくは 2 0 %以上延長されることを指し、 5 0 %以上延 長される場合も含まれる。 この特徴を利用し、 バラ科植物、 ラン科植物等の任意 の観賞用植物に遺伝子導入することで、 従来よりも長期間にわたって花を観賞す ることができる。
さらに、 本発明の改変フイトクロム遺伝子を導入した植物体は、 1個体当たり の花芽の密度が該改変フィトクロム遺伝子を導入する前の植物体に比べて、 5 % 以上、 好ましくは 2 0 %以上、 より好ましくは 5 0 %以上、 さらに好ましくは 1 0 0 %以上、 特に好ましくは 2 0 0 %以上増加する。 花芽の密度の増大は、 1つ の植物当たりの枝分かれの数が増大することと節間 (茎) が短くなること或いは その両方の作用による。
さらに、 本発明の改変フィトクロム遺伝子を導入したトランスジエニック植物 は、 天然色素、 サポニン、 ポリフエノール、 テルペン類、 配糖体、 抗生物質、 抗 癌剤、甘味物質、精油(ハーブ等)、香料などの有用物質の生産量を高めることが できる。 従って、 薬用植物や、 色素産生用の植物に本発明の遺伝子を導入するこ とで、薬効成分や天然色素などの有用物質を多量に生産することができる。また、 果実ないし根茎、 塊茎などの成長を促進することが可能であり、 これらに含まれ るデンプン、 油分、 タンパク質、 炭化水素、 セルロースなどの有用物質の収穫量 を高めることもできる。
これらの有用物質は、 該改変フィトクロム遺伝子を導入したトランスジェニッ ク植物を栽培し、 該トランスジエニック植物の器官に産生される物質を回収する ことによって得られる。 ここで、 トランスジエニック植物の器官とは、 目的とす る有用物質を産生または蓄積する任意の器官を指す。 また、 有用物質を回収する 方法としては、 従来公知の方法を用いればよく、 目的とする有用物質によって適 宜選択される。 なお、 色素の産生量が高まることで、 花や葉の色が濃くなつたり 色調が変化するため、 観賞用植物においてもその商品価値をさらに高めることが できる。 また、 植物の丈の伸長を抑制することで、 矮小化 (ミニチュア化) した 観賞用植物を得ることも可能である。 該植物は、 密植により丈の伸長が起こるこ とはなく、 観賞用植物の生産性を増大させることができる。
有用物質の一例として、 本発明者らは、 本発明の改変フイトクロム遺伝子を導
入された植物体では、 沈着する色素の量が増加し、 該改変フイトクロム遺伝子を 導入する前の植物体よりも、葉および花の色が濃くなることを確認した。ここで、 沈着する色素の量が増加するとは、 本発明の改変フィトクロム遺伝子を導入する 前の植物体に比べ、 約 2 0 %以上、 好ましくは約 3 0 %以上、 色素量が増加した ことを指す。
したがって、 本発明の植物によれば、 上記の有用物質のなかでも、 特に天然色 素を効率的に得ることができる。天然色素としては、例えば、シソ、赤キャベツ、 ァカダイコン、 ムラサキイモ、 紅花、 クチナシ等から得られるアントシァニン、 カロテノイド色素、 赤キャベツ色素、 紅花黄色素、 紫トウモロコシ色素、 コチニ ール色素、 ムラサキトウモロコシ色素、 ブドウ果皮色素、 エルダ一ベリ一色素、 ゥコン色素、 パーム油カロテン、 ァカキャベツ色素、 ァカダイコン色素、 トウガ ラシ色素、 アナト一色素等があげられる。
上記以外にも、 本発明の改変フイトクロム遺伝子を有する植物体は、 1株あた りの茎 (主茎、 側茎、 花茎、 幹、 枝等を含む) の数が増加し (分岐が増える)、 各 茎の太さも太くなる;株の肥大; 1株あたりの葉および花が大きくなる; 1株あ たりの子房の数が増え、 大きくなる等の特徴を有する。
本発明の改変フィトクロム遺伝子を有する植物を密植することにより、 該改変 フイトクロム遺伝子を導入する前の植物に比べて、 単位面積あたりの収穫量 (例 えば、 果実数等) の増加が期待される。 - 本発明の改変フイトクロム遺伝子を導入した植物を、 開花期間の延長、 色素含 有量の増加を目的として栽培する場合には、 日陰よりも日向 (1 0—l O O m o l m— s s—1程度) で栽培することが好ましい。 この場合、 日照条件は、 短日条 件であっても効果は見られるが、 連続光条件、 もしくは長日条件であることが望 ましい。 植物種によって異なるが、 一般的に短日条件とは、 喑期が 1 4〜1 8時 間、好ましくは 8時間明期 / 1 6時間暗期、長日条件とは、喑期が 7〜1 0時間、 好ましくは 1 6時間明期/ 8時間暗期を指す。 連続光条件とは、 2 4時間明期/ 0時間喑期を指す。
また、 開花期間は、 鉢植えの花のみならず、 切り花の場合でも延長される。 さらに、 より光感受性を高めたトランスジエニック植物を作製し、 改変フイト
クロム蛋白質の発現量を増加させれば、 強い光の下での飽和反応量を上昇させる ことによって、 日向での効果を、 より高めることが可能であり、 光合成量を増加 させることで有用物質の収穫量の増大にも寄与する。
フイトクロムは、 色素合成に関わる遺伝子の発現を誘導すること、 花芽形成の 促進因子である C Oの分解を促進すること等が知られており、 本発明のトランス ジエニック植物においてはこれらの活性が上昇することよって、 色素量の増加、 開花期間の延長等の特徴が見られるものと考えられる。
本発明の改変フィトクロム遺伝子導入によって形質転換される植物は、 特に限 定されるものではなく、 双子葉植物、 単子葉植物、 草本性植物、 木本性植物等に ついて広く適用され得る。 例えば、 サツマィモ、 トマト、 キユウリ、 カポチヤ、 メロン、 スイカ、 タバコ、 シロイヌナズナ、 ピ一マン、 ナス、 マメ、 サトイモ、 ホウレンソゥ、 ニンジン、 イチゴ、 ジャガイモ、 セィヨウアブラナ、 イネ、 トウ モロコシ、 アルフアルファ、 コムギ、 ォォムギ、 ダイズ、 ナタネ、 ソルガム、 ュ 一カリ、 ポプラ、 ケナフ、 杜仲、 サトウキビ、 ァカザ、 ユリ、 ラン、 力一ネ一シ ヨン、 バラ、 ペチュニア、 トレニァ、 キンギヨソゥ、 シクラメン、 カスミソゥ、 ゼラニゥム、 ヒマヮリ、 シバ、 ヮタ、 マツタケ、 シィタケ、 キノコ、 チョウセン ニンジン、 柑橘類、 バナナ、 キウイ、 キヤッサバ、 サゴヤシ等が挙げられ、 夕バ コ、 イネ、 トマト、 エンドゥ、 セィヨウアブラナ、 キユウリ、 ソルガム等が好ま しい。 本発明の改変フイトクロム遺伝子を樹木細胞に導入した場合、 丈が低く、 株および幹が太レゝ個体を得られる。
また、 本発明の改変フイトクロムの光感受性を利用し、 高感度の光スィッチと して使用することが可能である。 例えば、 フイトクロム Bの構造が赤色光によつ て活性型 (P f r型) に変化し、 遠赤外光によって非活性型 (P r型) に変化す る特徴を利用して、 "オン ·オフ型"の光スィツチとして遺伝子発現を制御する方 法等があげられる。
発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明を実施例に基づき、 より詳細に説明するが、 本発明がこれら実施 例に限定されないことは言うまでもない。
植物材料、 生育条件及び測定 '
ヌルアレル phyB— 5突然変異を有する Land s be r g e r e c t a (L e r ) ェコタイフ (e c o type) Ar ab i dop s i s t ha i
1 an a植物 (Re e d, J. W. e t a 1., P l an t Ce l l 5, 147-157, 1993) を使用した。芽生えを、特に記載がなければ、
22°Cにて 2% (w/V) スクロースを添加した Mu r a s h i ge-Skoo g (MS) 培地を含む 0. 6%ァガープレート上にて生育させた。
胚軸アツセィ用として、 芽生えを、 スクロースを含まない MSァガ一プレート 上にて 5日間生育させた。 相対的な胚軸の長さを、 それぞれの喑所での値に対す る比 した。
ィムノブロット麟斤用として、 連続白色光(44 mo 1 m_2 s— のも とで 1週間生育させた。 クロロフィルアツセィを、 Moch i z uk i, N. e t a l., P r oc. Na t l Ac ad. Sc i. USA 98, 2053-2058, 2001に記載の通りに行った。
葉柄の長さを、 各植物の最も長い葉を写真に撮った後に測定した。 白色光光源 及び赤色光光源は、 Yamaguch i, R. e t a 1., J. Ce 1 1 B i o l. 145, 437-445, 1999に記載の通りである。 データを、 各測定について平均値土 s. d. (n =25 -30) で表す。 プラスミドコンストラクシヨン
SV40NLS (Ka l de r on, D., e t a 1., Ce l l 3 9, 499-509, 1984) を以下に示す 2つのオリゴヌクレオチドのァ ニーリングによって得た:
5 ' -GCCTAAGAAGAAGAGAAAGGTTGGAGGATAGCCCGGGCTGCA-3 ' (配列番号 2 ) 及び 5 ' -GCCCGGGCTATCCTCCAACCTTTCTCTTCTTCTTAGGCTGCA-3, (配列番号 3 ) 上記の配列 (配列番号 2及び 3) は、 NLSアミノ酸残基 (核局在シグナル) を コ一ドする: LQPKKKRKVGG(s t op) (配列番号 4)
PK I由来の NES (We n, W. e t a 1., Ce l l 82, 4 63 -473, 1995) を、 以下のォリゴヌクレオチドのァニーリングから 得た:
5' -GAACGAGCTTGCTCTTAAGTTGGCTGGACTTGATATTAACAAGACTGGAGGATAGCCCGGGCTGCA-3
' ( 配 列 番 号 5 ) 及 び 5' -GCCCGGGCTATCCTCCAGTCTTGTTAATATCAAGTCCAGCCAACTTAAGAGCAAGCTCGTTCTGCA-3 ' (配列番号 6)
上記の配列 (配列番号 5及び 6) は、 NESアミノ酸残基 (核外移行シグナル) をコードする: LQNELALKLAGLDINKTGG(s t op) (配列番号 7)
phyBの N及び C末端ドメインをコードする断片を、 PCRによって増幅さ せ、 PBGの PHYB部分 (Yamaguch i, R. e t a 1., J. Ce l l B i o l. 145, 437—445, 1999) をそれぞれ置 換して、 NG及びCGを得た。 これらを、 NLS又はNES及びZ又はPCRで 増幅された GUS断片をコードする配列に融合させた。 G 767/R及び C 35 7/A突然変異を、 Qu i kCh ang e S i t e -D i r e c t ed Mu t agene s i s Ki t (S t r a t a g e n e ) を使用することによつ て導入した。 全てのコンストラクトを pPZP21 lZ35S— no sT (Mo ch i zuk i, N. e t a 1. , P r o c . Na t l Ac ad. S c i. USA 98, 2053-2058, 2001 ) の恒常的力リフラ ヮーモザイクウィルス 35 Sプロモーターと No s夕一ミネ一夕一の間に挿入し た。 本実施例で使用したプラスミドを、 図 6に示す。
植物形質転換及びトランスジエニック系統の再生
Ag r ob ac t e r i um— me d i a t e d f l o r a l d i p m e t hod (C I o u g h, S. e t a 1., P l an t J. 16, 735-743, 1998) を用いて、 p h y B突然変異体を上記のプラスミ ドにより形質転換を行い、 カナマイシン 25 mg ml— 1及びクラフォラン (H o e ch s t) 166 mg ml—1を含む MS培地上にて形質転換体の選択を 行った。 各コンストラクトについて、 T 2世代においてカナマイシン耐性につい て約 3 : 1に分離される、 少なくとも 20の独立した系統を確立した。 生理学的 な試験については、 過剰発現のレベルに基づいて数系統が選択された。 全ての実 施例について、 ホモ接合体 T 2植物の T 3自家受粉系統を使用した。 カナマイシ ン耐性は、 GFP蛍光と強く共分離した。
形質転換芽生えにおける細胞内局在の解析
暗所又は 44 mo l m— 2 s— 1 の連続白色光のもと で生育したトラ ンスジェニックシロイヌナズナの芽生えを、 核及び細胞壁を可視ィ匕するために 2 0 β g m l—1 のプロピジゥムィオダイド (P I) (Mo 1 e c 11 1 a r P r o b e社製) GF P及び P I蛍光の細胞内局在は、 F I TCチャンネル (緑色, GFP) 及び TR I TCチャンネル (赤色, P I) によって共焦点レーザー顕微 鏡 (Z e i s s LSM5 1 0) を使用することで可視ィ匕した。 黄化芽生えにつ いて〖ま、 顕微鏡観察前までのあらゆる操作を薄暗い緑色の安全光のもとで行い、 観察を開始してから一分以内に写真を撮影した。 各コンストラクトについて、 少 なくとも 20の独立したトランスジエニック系統を解析した。 芽生えのあらゆる 器官■組織において観察を行い、 それぞれの系統において同様の結果を得た。 そ こで根細胞から得られた結果を、 代表例として示す。
本実施例において解析した全てのコンストラク 1、について、 パーティクルガン 法 (p a r t i c 1 e b omb a r dme n t) によってタマネギ細胞におけ る一過的な発現をさせたところ、 同様の細胞内局在を現すことがわかった。 免疫化学的試験
大咅 15分の手順を、 Yama gu c h i, R. e t a 1., J. C e l 1 B i o l . 145, 437-445, 1 999に記載の通りに行った。 熱い SDS緩衝溶液を用いた直接タンパク質抽出 (D i r e c t p r o t e i n e x t r a c t i on) を行ったところ、 本実施例において解析された全 ての植物において同様の結果が得られた。
タンパク質レベルをィムノブロッテイングのバンドの濃さから測定した。 モノ クロ一ナル抗体 mBAlは、 phyBの N末端領域に特異的である (Sh i no mu r a, T. e t a 1. , P r o c. Na t l Ac ad. S c i . USA 93, 8 1 29-8 1 33, 1 9 96)。抗 GF Pモノクローナル抗 体は、 S i gm aから購入した。
緑色蛍光タンパク質 (GFP) を融合させた phyBの N又は C末端領域 (以 下、 それぞれ N G及び C Gと呼ぶ) のいずれかを発現するシロイヌナズナ p h y B突然変異体の形質転換体を作製した(図 1 b)。 このトランスジエニック植物の 共焦点顕微鏡観察によると、 以前に報告されたように、 CGは核に局在し、 斑点
を形成した (Nag y, F. e t a 1., S emi n. Ce l l D e v. B i o l. 11, 505- 510, 2000 ; S a k amo t o, K. e t a 1., P l an t J. 10, 859-868, 19 96)。 一方で、 NGは核及び細胞質に均等に分布した (図 l a)。
これらのパターンは、 光照射によって影響を受けなかった。 phyBが連続赤 色光のもとで、 胚軸の伸長を阻害することから (Re e d, J. W. e t a 1., P l an t Ce l l 5, 147- 157, 1993)、 連続赤色 光のもとでのこれらの系統の胚軸長の減少を測定した。
予想外に、 連続赤色光に対して、 CGを発現する植物は反応しなかったのに対 し、 NGを発現する植物は有意な反応を示した(図 1 c)。 これは NGがシグナル 伝達活性を有するが、 CGは有していないことを示唆するものである。 GFPを 有さない N末端領域 (N) が NGと同様に活性を持つことから、 これは、 GFP の影響によるものではないことがわかる (図 2b、 c)。 この観察は、 野生型のバ ックグラウンドにおいて報告された、 Nの優性阻害 (domi nan t— ne g a t i v e)活性と矛盾しない (Wa gn e r, D. e t a 1., P I a n t Ce l l 8, 859— 871, 1996)。活性の低い Nは、下流の コンポ一ネン卜をめぐつて内在性の phyBと競合することによってシグナル伝 達を阻害しうる。
細胞内における NGシグナル伝達の場を決定するため、 核移行シグナル (NL S) 又は核外移行シグナル (NES) と組み合わせて NGを発現するトランスジ エニック植物を作製した(図 2 b)。比較的小さいタンパク質はしばしば核内に受 動的に入る。 そこでそのような核内への受動的な移行を阻害するために、 β—グ ルクロニダーゼ (GUS) に融合させた NGを発現する植物も作製した。 予想通 り、 NG— NLS及び NG— GUS— NLSは、 核内に蓄積したが、 光のもとで も斑点を形成しなかった(図 2 a )。対照的に、 NG-NES及び N G— GU Sは、 細胞質にのみ局在し、 N末端領域が核移行活性を欠いていることが示された。 胚 軸アツセィにより、 NG— NLSは NG— NESよりも、 また NG— GUS— N LSは NG— GUSよりも高い phyB活性を有することが示された (図 2 c)。 したがって、 NGは核内でシグナルを伝達するということが結論付けられた。
胚軸アツセィにおいて、 NG— GUS—NLSは NG— NLSよりもさらに高 い活性を示した。 この活性の違いは、 導入タンパク質を異なるレベルで発現する いくつかの独立したトランスジエニック系統における飽和光条件下での p h y B 活性により、 さらに確かめられた(図 2d)。全長フィトクロムは二量体を形成す る性質を持つのに対し、 C末端領域から分離された N末端領域は単量体として存 在することから (Wa gn e r, D. e t a 1., P l an t Ce l l
8, 859- 871, 1996)、 GUSの phyB活性増強効果は、 GUS の多量体形成活性によるものであるかもしれない (K a t o, A. e t a
1., P l an t Ce l l Phy s i o l. 40, 586- 591, 1
999)。
この可能性を、 非変性ゲル電気、泳動によって調べた。 単量体分子量に対する測 定されたネイティブサイズの比は、 GFPに融合された全長 phyB (PBG) 及び NG— GUS— NLSについて、 それぞれ 3. 19及び 3. 26であり、 全 長フイトクロムにおける比と一致した(Wa gn e r, D. e t a 1., P 1 an t Ce l l 8, 859— 871, 1996 ; Che r ry, J. R. e t a 1., P l an t Ce l l 5, 565 - 575, 1 993)。いくつかの GUSキメラタンパク質は、二量体のみならず四量体を形成 するが (K a t o, A., e t a 1., P l an t Ce l l Phy s i o l. 40, 586- 591, 1999)、 NG— GUS— NL Sの四量 体のバンドは検出されなかった。 一方、 NG— NLSについての比は、 1. 57 であり、 PBG又は NG— GUS—NLSについての比の半分であった。 従って 我々は、 ごくー咅 βの N G— GUS—NLSが四量体として存在する可能性はある が、 NG— GUS—NLSは二量体として、 一方 NG— NLSは単量体として存 在すると結論付けた。
要約すれば、 N末端領域は、 単量体であってもシグナル伝達が可能であるが、 完全な活性には二量体化が必要である。
様々な強度の連続赤色光のもとでの phy B活性を測定するために、 NG-G US— NLS又は PBGを発現する植物で胚軸アツセィを行った(図 2 e)。ィム ノブロッティングにおいて N G-GUS-NLS植物よりも P B G植物の方がわ
ずかに高い外因性タンパク質発現を示したにもかかわらず、 NG-GUS-NL Sは PBGよりもおよそ 100倍高い感受性を示した(図 2 e)。 PBGと PBG — NLSは同様の光感受性を示すことから、 この違いは NLSによるものではな い。 これらの結果は、 全長 phyBにおいて C末端領域が N末端領域のシグナル 伝達を阻害していることを示唆する。 また、 このアツセィにより、 喑所において NG— GUS— NLSは何の活性も示さないことが明らかになった(図 2 e)。こ のことは、 N末端領竑の核内への蓄積は反応を引き起こすのには十分ではないこ とを示している。 発色団結合部位に突然変異を有する N G— G U S _ N L Sが光 に対して応答しなかつたことは、 以上の結論と矛盾しない。
NG— GUS—NL Sは、 クロロフィ レの蓄積、 子葉の拡大及び葉柄の伸長阻 害等、 他の phyB反応を引き起こすことが可能であることが確認された (Sm i t h, H. e t a 1., Na t u r e 407, 585— 591, 2
0004; Ree d, J. W. e t a l., P l an t Ce l l 5,
147-157, 1 993) (図 3 a— c:)。 全ての場合において、 NG— GU S— NLSは PBGよりも高い活性を示した。 トランスジエニック植物及び野生 型植物の形態を、 図 3 dに示す。
フィトクロムの C末端領域内でのいくつかのミスセンス突然変異は、 分光光学 的特性や二量体化能力に影響を与えることなく、 各フィトクロムの生物学的活性 を低減させる(Wa g n e r , D. e t a 1., P r oc. Na t l A c ad. S c i. USA 92, 8596— 8600, 1995)。 これ らの変異はどのようにして p h y Bの活性に影響を及ぼすのだろうか?最も重度 の変異表現型を引き起こす G 767 /R突然変異は PBGの二量体ィ匕に影響しな かったにもかかわらず (Wa gn e r, D. e t a 1., P r oc. N a t 1 Ac ad. S c i. USA 92, 8596-8600, 19 95)、 この変異を伴ラ PBGである PBG (G 767/R) を発現する植物は、 PhyB活性を示さなかった (図 4b、 c)。 PBG (G 767/R) は、 光のも とであっても主に細胞質に局在した(図 4 a)。 このことは、 PBG (G767/ R) は核内に蓄積できないために活性が低いことを示唆する。 さらにこの可能性 を検証するため、 NL Sを付加した PBG (G767ZR)、 PBG (G767/
R) 一 NLSを発現するトランスジエニック植物を作製した。 この融合タンパク 質は、予想通り、 核内に蓄積したが、斑点は形成しなかった (図 4a)。胚軸アツ セィにより、 PBG (G767/R) — NL Sが P B Gと同じくらい活性がある ことを明確に示された (図 4b、 c)。 さらにこの観察結果は、その他の phyB 応答についても確かめられた。 この結果は、 G767ZR突然変異が、 核内への 該タンパク質の蓄積を妨げることによって p h y B活性を低減させるが、 P B G (G767/R) は、 核内に局在した場合にシグナル伝達が可能であることを示 す。
上記の知見に基づき、 p h y Bの C末端領域ではなく、 N末端領域が下流の因 子にシグナルを伝達するというモデルが考えられる (図 5)。
産業上の利用の可能性
本発明の改変フィトクロムは、 植物の避陰反応を効果的に阻害することで高価 な化学肥料、 および過剰量の農薬等を用いることなく農作物の単位面積あたりの 収穫量を格段に高めることができる。 また、 本発明の改変フイトクロム遺伝子を 導入した植物体は、 高光感受性、 含有色素量の増加、 開花期間の延長、 子房の肥 大、 茎又は株の肥大等の特徴を示す。 さらに、 フイトクロムは全ての植物に存在 し、 その機能は植物種を超えて保存されていることから、 ほぼ全ての農作物に、 本発明の改変フイトクロムを応用することが可能であり、 本発明の改変フィトク ロム遺伝子を植物の染色体内に導入することで、 該導入遺伝子は半永久的に安定 に遺伝させることが可能である。