明 細 書
FKBP型 PPIase、発現ベクター、形質転換体、融合タンパク質、融合タン パク質の製造方法、 目的タンパク質の製造方法、 FKBP型 PPIaseの精製方法、 及び融合タンパク質の精製方法
技術分野
[0001] 本発明は、 FKBP型 PPIase、発現ベクター、形質転換体、融合タンパク質、融合タ ンパク質の製造方法、 目的タンパク質の製造方法、 FKBP型 PPIaseの精製方法、及 び融合タンパク質の精製方法に関し、さらに詳細には、低温から常温域でかつ通常 の生化学的な環境下でも十分な活性を示す FKBP型 PPIase、該 FKBP型 PPIaseと 目的タンパク質との融合タンパク質を発現することができる発現ベクター、該発現べク ターを含有する形質転換体、 FKBP型 PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質 とその製造方法、該 FKBP型 PPIaseを利用した目的タンパク質の製造方法、疎水性 相互作用クロマトグラフィーによる該 PPIaseの精製方法、及び疎水性相互作用クロ マトグラフィ一による該融合タンパク質の精製方法に関する。
背景技術
[0002] 近年、種々の生物のゲノム解析が終了しつつあり、今後の研究は、遺伝子の発現 産物であるタンパク質の網羅的な機能解析へと進むものと考えられている。即ち、個 々のタンパク質の性質を明らかにするとともに、タンパク質同士の相互作用を網羅的 に解析することで、生命現象解明の一助としょうとする研究が急速に増加しつつある 。なかでも、各種の生理活性物質と特異的に結合し、その作用を伝達する細胞内受 容体タンパク質は、その受容体タンパク質と結合する活性物質が新規医薬品の候補 物質となり得ることから、その 3次元構造決定に重大な関心が持たれている。
[0003] タンパク質の性質を決定しょうとする場合は、そのタンパク質を組換え DNA技術に よって大量に合成し、解析試料とすることが多い。即ち、 目的タンパク質をコードする 遺伝子を発現ベクターに組み込み、該発現ベクターをバクテリア、酵母、昆虫細胞等 の宿主に導入し、宿主内で目的タンパク質の遺伝子を発現させ、得られた組換えタ ンパク質の性質を調べる方法が一般的である。しかし、タンパク質の性質を正確に評
価するためには、一次構造のみならず三次元的な立体構造が極めて重要であるとこ ろ、上記のようにして得られた組換えタンパク質においては、宿主内で折り畳み反応 が正しく行われず、正し ヽ立体構造を有しな 、異常型タンパク質としてしカゝ得られな いケースにしばしば遭遇する。さらに、このような異常型タンパク質は可溶性ではなく 封入体と呼ばれる不溶性の凝集体として得られることが多い。例えば、 目的タンパク 質が抗体の場合、大腸菌を宿主とすると、合成された組換えタンパク質のほとんどが 不溶性の封入体となることが知られている(非特許文献 1)。また、細胞内受容体タン ノ ク質のように、元々は生体膜の表面上または内部に埋もれて存在しているタンパク 質が目的タンパク質である場合も、組換えタンパク質として発現させると封入体になり やすい。
[0004] また、組換えタンパク質が宿主細胞のプロテアーゼにより分解されたりしてしまい、 解析対象の目的タンパク質がほとんど得られない場合もある。さらに、 目的タンパク質 が細胞に対する毒性を示す場合には、組換えタンパク質は発現にすら至らないことも ある。
[0005] 封入体となった異常型タンパク質を折り畳み直して正しい立体構造に戻す方法とし ては、封入体を高濃度の塩酸グァ-ジンや尿素等で可溶ィ匕した後、適当な緩衝液 等で 30— 100倍程度に希釈する方法が知られている。例えば、特許文献 1には、封 入体を含む希釈した緩衝液中にタンパク質の折り畳みを促進する機能を有するシャ ぺロニンを含有させることで、異常型タンパク質を正しく折り畳み、 目的タンパク質を 正常型タンパク質として取得する方法が記載されている。し力しながら、いったん封 入体となった異常型タンパク質を折り畳み直して正しい立体構造に戻すことは予想 以上に困難であり、上記した方法でもなかな力成功しないのが現実である。さらに、 シャぺ口ニンは、折り畳み反応の際に高エネルギー物質である ATP等のヌクレオチド 3リン酸を必要とし、経済的に不利である。また、シャぺ口ニンは分子量 80万一 100 万の巨大な分子であるので、折り畳み反応に用いるには重量比にすると極めて多大 な量が必要とされ、やはり経済的に不利である。
[0006] また、 目的タンパク質を、ダルタチオン- S—トランスフェラーゼ (GST)、チォレドキシ ン、マルトース結合蛋白質 (MBP)、 NusAなどの作用により正常型タンパク質として
取得する方法が提案されて 、るが、 、ずれもその効果は十分とは 、えな 、。
[0007] 一方、発現産物の収量を向上させることを目的とした方法もいくつか開示されてい る。特許文献 2には、分子シャペロンの一つであるシャぺ口ニンの部分断片と目的タ ンパク質(目的ポリペプチド)とを融合させることにより、 目的タンパク質の収量を増大 させる方法が開示されている。さらに、シグナルペプチドを目的タンパク質に付与し、 例えば大腸菌のペリブラズム領域に分泌発現させれば、通常は封入体となる目的タ ンパク質が可溶性タンパク質として発現できることが開示されている。しかしながら、 ペリブラズム領域への発現する場合は発現産物の収量が少な!/、だけでなく、可溶ィ匕 効率自体も不十分である。
[0008] ぺプチジループ口リル シス トランス イソメラーゼ(Peptidyl— prolyl cis— trans i somerase0以下、「PPIase」と称する。)は、タンパク質の折り畳みに関与する折り畳 み因子の 1つであり、細胞内で折り畳み途上のタンパク質中のアミノ酸のうち、プロリ ン残基の N末端側ペプチド結合のシス -トランス異性化反応を触媒する活性 (PPIas e活性)を有するものである。そして、至適生育温度が 55°C以上である好熱性古細菌 又は超好熱性古細菌に由来する FKBP (FK506 Binding Protein)型 PPIaseは 、 PPIase活性のみならず、分子シャペロン活性を有することが知られている。ここで、 「分子シャペロン活性」とは、タンパク質の不可逆的凝集を抑制すると同時に、変性タ ンパク質の再折り畳みを促進させる活性と定義される。そして、この分子シャペロン活 性を有する FKBP型 PPIaseを用いて、正常型のタンパク質を得る方法が提案されて いる (非特許文献 2、非特許文献 3、非特許文献 4、非特許文献 5)。この好熱性古細 菌又は超好熱性古細菌由来 FKBP型 PPIaseが有する分子シャペロン活性は、シャ ぺロニンが有する分子シャペロン活性と異なり、その活性発現に ATP等の高工ネル ギー物質を必要としな 、点で優れて 、る。
[0009] 特許文献 1:特開平 9 220092号公報
特許文献 2:国際公開 00Z075346号パンフレット
非特許文献 1:プルックサン(Pluckthun)、バイオテクノロジー(Biotechnology)、 第 9卷、第 545頁一、 1991年
非特許文献 2:古谷(Furutani)、バイオケミストリー (Biochemistry)、第 39卷、第 4
53頁一、 2000年
非特許文献 3:井手野 (Ideno)、ユーロビアン'ジャーナル ·ォブ ·ノ ィオケミストリー ( Eur. J. Biochem. )、第 267卷、第 3139頁一、 2000年
非特許文献 4:井手野 (Ideno)、バイオケミカル 'ジャーナル(Biochem. J. )、第 35 7卷、第 465頁一、 2001年
非特許文献 5:井手野 (Ideno)、アプライド ·エンバイロンメンタル ·マイクロノくィォロジ 一 (Appl. Env. Microbiol. )、第 68卷、第 464頁—、 2002年
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] 通常、タンパク質を取り扱う際には、熱失活を避けるために低温から常温域、具体 的には 4一 37°C程度の温度域で取り扱うことが多い。また、大腸菌や酵母等の宿主 を用いて組換えタンパク質を生産する場合は、宿主の至適生育温度である 25— 37 °Cで生産する場合が多い。しかし、上記した好熱性古細菌又は超好熱性古細菌の 至適生育温度は 55°C以上であり、それらの古細菌由来の FKBP型 PPIaseの最大 活性を示す温度も 55°C以上と考えられる。よって、これらの FKBP型 PPIaseは低温 から常温域での活性が高くなぐ試験管内又は宿主内で目的タンパク質を正しく折り 畳むには不適である。一方、常温性の古細菌としては高度好塩菌が知られている。 すなわち、好度好塩菌は 37°C前後に至適生育温度域を有しているため、同菌由来 の FKBP型 PPIaseは低温から常温域での高い活性が期待される。し力しながら、高 度好塩菌の菌体内は 1一 3M程度という高い塩濃度に保たれているため、その高度 好塩菌が有するタンパク質も高い塩濃度下でのみ活性を示すものが多ぐ通常の生 化学的な環境下でも十分な活性を示すかは不明である。他方、他の常温性の古細 菌としては、メタン生成能を有するメタン生成菌が知られている。しかし、メタン生成菌 由来の FKBP型 PPIaseは未だ単離されておらず、その作用や物理ィ匕学的性質につ いても定かではない。
[0011] 本発明の目的は、低温から常温域でかつ通常の生化学的な環境下でも十分な活 性を示す FKBP型 PPIaseを提供することにあり、さらに、該 FKBP型 PPIaseと目的 タンパク質との融合タンパク質を発現することができる発現ベクター、該発現ベクター
を含有する形質転換体、 FKBP型 PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質の製 造方法、該 FKBP型 PPIaseを利用した目的タンパク質の製造方法、該 PPIaseの精 製方法、及び該融合タンパク質の精製方法を提供することも本発明の目的である。 課題を解決するための手段
[0012] 本発明者らは、鋭意検討の結果、メタン生成菌に属する常温性古細菌由来の FKB P型 PPIaseを単離し、該 FKBP型 PPIaseが分子シャペロン活性を有しており、低温 力も常温域でかつ通常の生化学的な環境下でも十分な活性を示すことを見出した。 さらに、該 FKBP型 PPIaseの中でも特定のアミノ酸配列を有するもの、また、その中 でも特に、特定のアミノ酸配列を欠失または元来保有しないものは、極めて高い分子 シャペロン活性を有することを見いだした。さらに、該 FKBP型 PPIaseを目的タンパ ク質に作用させることによって、極めて高効率で目的タンパク質を正しく折り畳むこと ができることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りで ある。
[0013] (1) メタン生成菌に属する常温性古細菌に由来することを特徴とする FKBP型 PPI ase^
(2) 上記常温性古細菌は、 Methanosarcina属古細菌であることを特徴とする(1) 記載の FKBP型 PPIase、
(3) ショートタイプ FKBP型 PPIaseであることを特徴とする(1)又は(2)記載の FKB P型 PPIase、
(4) 配列番号 1、 2又は 3で表されるアミノ酸配列力 なるモチーフを、その一部に含 むアミノ酸配列を有することを特徴とする(1)、 (2)又は(3)記載の FKBP型 PPIase、
(5) 配列番号 4で表されるアミノ酸配列からなるモチーフを、その N末端領域に含ま ないアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項(1)、(2)、(3)又は (4)記載の PPI ase^
(6) 配列番号 6に記載のアミノ酸配列を有することを特徴とする FKBP型 PPIase、
(7)配列番号 8に記載のアミノ酸配列を有することを特徴とする FKBP型 PPIase、
(8) 配列番号 10に記載のアミノ酸配列を有することを特徴とする FKBP型 PPIase、
(9) ロングタイプ FKBP型 PPIaseであることを特徴とする(1)又は(2)記載の FKBP
型 PPIase、
(10) 配列番号 18に記載のアミノ酸配列を有することを特徴とする FKBP型 PPIase
(11) (1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)又は(10)記載の FKBP型 P Plaseと実質的に同一のアミノ酸配列を有し、かつ、実質的に同一の活性を有するこ とを特徴とする FKBP型 PPIase。
さらに、
(12) (1)、(2)、(3)、(4)、 (5)、 (6)、(7)、(8)、 (9)、 (10)又は(11)記載の FK BP型 PPIaseをコードする第 1コード領域と、少なくとも 1つの制限酵素サイトを有し、 前記制限酵素サイトに目的タンパク質をコードする第 2コード領域を挿入することによ り FKBP型 PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を発現することができることを 特徴とする発現ベクター、
(13) 上記制限酵素サイトは、前記第 1コード領域の下流に位置することを特徴とす る(12)記載の発現ベクター、
(14) 上記第 1コード領域と前記制限酵素サイトの間に、ペプチドリンカ一をコードす る塩基配列を有することを特徴とする(12)又は(13)記載の発現ベクター、
(15) 上記ペプチドリンカ一は、プロテアーゼ消化アミノ酸配列を含むことを特徴と する(14)記載の発現ベクター、
(16) (12)、(13)、(14)又は(15)に記載の発現ベクターの制限酵素サイトに、目 的タンパク質をコードする第 2コード領域が組み込まれていることを特徴とする発現べ クタ一、
(17) 上記第 2コード領域は、抗体又は抗体の部分断片をコードする遺伝子である ことを特徴とする(16)記載の発現ベクター、
(18) 上記第 2コード領域は、細胞内受容体タンパク質をコードする遺伝子であるこ とを特徴とする(16)記載の発現ベクター、
(19) (16)、(17)又は(18)記載の発現ベクターを含有することを特徴とする形質 転換体、
(20) 宿主が大腸菌であることを特徴とする( 19)記載の形質転換体。
さらに、
(21) (1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、 (10)又は(11)記載の FK BP型 PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質、
(22) 上記 FKBP型 PPIaseと前記目的タンパク質との間にプロテアーゼ消化アミノ 酸配列を有することを特徴とする(21)記載の融合タンパク質、
(23) (16)記載の発現ベクターに組み込まれた第 1コード領域及び第 2コード領域 を転写及び翻訳させ、 FKBP型 PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を合成 することを特徴とする融合タンパク質の製造方法、
(24) (16)記載の発現ベクターに組み込まれた第 1コード領域及び第 2コード領域 を転写及び翻訳させ、 FKBP型 PPIaseと目的タンパク質の融合タンパク質を合成し 、次いで、該融合タンパク質から目的タンパク質を切り出すことを特徴とする目的タン パク質の製造方法、
(25) 前記発現ベクターは第 1コード領域と第 2コード領域の間にプロテアーゼ消化 アミノ酸配列をコードする塩基配列を有し、第 1コード領域と、プロテアーゼ消化アミノ 酸配列をコードする塩基配列と、第 2コード領域とを転写及び翻訳させ、 FKBP型 PP Iaseと目的タンパク質との間にプロテアーゼ消化アミノ酸配列を有する融合タンパク 質を合成し、該融合タンパク質に該プロテアーゼを作用させることにより目的タンパク 質を切り出すことを特徴とする(24)に記載の目的タンパク質の製造方法、
(26) (1)、(2)、(3)、(4)、 (5)、 (6)、(7)、(8)、 (9)、 (10)又は(11)記載の FK BP型 PPIaseをコードする遺伝子と目的タンパク質をコードする遺伝子を同一宿主内 で共発現させることにより、宿主内で目的タンパク質に FKBP型 PPIaseを作用させ、 目的タンパク質を可溶ィ匕し、宿主の可溶画分から目的タンパク質を採取することを特 徴とする目的タンパク質の製造方法、
(27) (1)、(2)、(3)、(4)、 (5)、 (6)、(7)、(8)、 (9)、 (10)又は(11)記載の FK BP型 PPIaseを含む試料を疎水性相互作用クロマトグラフィーに供することにより、該 FKBP型 PPIase以外の成分を除去することを特徴とする FKBP型 PPIaseの精製方 法、
(28) (1)、(2)、(3)、(4)、 (5)、 (6)、(7)、(8)、 (9)、 (10)又は(11)記載の FK
BP型 PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を含む試料を疎水性相互作用ク 口マトグラフィ一に供することにより、該融合タンパク質以外の成分を除去することを 特徴とする融合タンパク質の精製方法。
発明の効果
[0016] 本発明の FKBP型 PPIaseによれば、低温から常温域でかつ通常の生化学的な環 境下でも効率的に目的タンパク質を折り畳むことができる。
[0017] 本発明の発現ベクターによれば、 FKBP型 PPIaseと目的タンパク質との融合タン ノ ク質を発現することができ、 目的タンパク質は低温から常温域でかつ通常の生化 学的な環境下でも効率的に折り畳まれる。
[0018] 本発明の形質転換体によれば、低温から常温域でかつ通常の生化学的な環境下 でも十分な活性を示す FKBP型 PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を生産 することができる。
[0019] 本発明の融合タンパク質によれば、 目的タンパク質は低温から常温域でかつ通常 の生化学的な環境下でも効率的に折り畳まれる。
[0020] 本発明の融合タンパク質の製造方法によれば、本発明の融合タンパク質を効率よく 製造することができる。
[0021] 本発明の目的タンパク質の製造方法によれば、正しく折り畳まれた目的タンパク質 を高効率で製造することができる。
[0022] 本発明の FKBP型 PPIaseの精製方法によれば、低温から常温域でかつ通常の生 化学的な環境下で高い活性を示す FKBP型 PPIaseを簡便に精製することができる
[0023] 本発明の融合タンパク質の精製方法によれば、 目的タンパク質の製造に有用な融 合タンパク質を簡便に精製することができる。
図面の簡単な説明
[0024] [図 1]メタン生成菌に属する古細菌由来の 9種のショートタイプ FKBP型 PPIaseのアミ ノ酸配列を並べて比較した図である。
[図 2]実施例 1で構築した発現ベクター pMml8F2の構成を表す模式図である。
[図 3]実施例 5で MaFKBP17. 8を製造した結果を表す SDS— PAGEZCBBのゲ
ルの写真である。
[図 4]実施例 8で MaFKBP28. 0を製造した結果を表す SDS— PAGE/CBBのゲ ルの写真である。
[図 5]実施例 9で行った MaFKBP17. 8の分子シャペロン活性の評価結果を表すグ ラフである。
[図 6]実施例 10における SDS— PAGEZCBBのゲルの写真であり、図 6 (a)は融合タ ンパク質を製造した結果を表し、図 6 (b)はロダネーゼを製造した結果を表し、図 6 (c )は比較例の結果を表す。
[図 7]実施例 15、 16及び 17における SDS— PAGEZCBBのゲルの写真であり、図 7 (a)は実施例 15で融合タンパク質を製造した結果を表し、図 7 (b)は実施例 16で融 合タンパク質を製造した結果を表し、図 7 (c)は実施例 17で融合タンパク質を製造し た結果を表す。
発明を実施するための最良の形態
[0025] 以下、本発明を実施するための最良の形態について、詳しく説明する。
[0026] 本発明の FKBP型 PPIaseの一つは、メタン生成菌に属する常温性古細菌に由来 するものである。ここで、「常温性古細菌」とは常温菌(中温菌ともいう)のうち古細菌 に属する生物種を指し、 Madiganらの分類法によると、一般に、至適生育温度が 20 一 45°Cである古細菌を指す(Madigan, M. T. et al., 1997, "Block Biolog y of Microorganizm 8th ed., Prentice Hall, New York)。また、この場 合の「至適生育温度」とは、その微生物の増殖速度が最も早められる温度を指す。メ タン生成菌に属する常温性古細菌としては、特に限定されず、例えば、 Methanosa rcma晨、 MethanobacteriumJ¾、 Methanosphaera腐、 Methanococcus属、 M ethanocaldococcus属、及び MethanoignisJ禹、並びに MethanomicroDiaies目 等に属する古細菌が挙げられる。特に、 Methanosarcina属に属する古細菌、とりわ け、 Mathanosarcma barkeri、 Methano sarcma mazei、及び Methanosarcm a acetivorans由来の FKBP型 PPIaseは、低温から常温域でかつ通常の生化学的 な環境下において、 PPIase活性及び Z又は分子シャペロン活性が高ぐ好適である 。なお、本発明の FKBP型 PPIaseのタンパク質折り畳み作用は、その分子シャぺ口
ン活性によるところが大き 、と考えられる力 PPIase活性も寄与して 、る。
[0027] 一般に、 FKBP型 PPIaseは、分子量が 16— 18kDa程度のショートタイプ FKBP型 PPIaseと、分子量が 26— 33kDa程度のロングタイプ FKBP型 PPIaseとに大別され る。そして、 FKBP型 PPIaseは、これまでの解析の結果、ショートタイプとロングタイプ のいずれもが分子シャペロン活性を有する力 PPIase活性については、ショートタイ プ FKBP型 PPIaseの方がより高いことが知られている。さらに、古細菌由来 FKBP型 PPIaseは、ショートタイプ及びロングタイプのいずれも、 PPIase活性及び FK506結 合活性を担う FKBPドメインを有し、 FKBPドメイン中に古細菌 FKBP型 PPIaseに特 徴的なノ レジ領域及びフラップ領域の 2つの挿入配列を有していることが特徴である (Maruyama T, Suzuki R, Furutani M., Front Biosci. (2004) 9:168 0-720)。そして、ロングタイプ古細菌由来 FKBP型 PPIaseは、上記 2つの挿入配列 を有する FKBPドメインの C末端側に、約 100— 150アミノ酸カゝらなる C末端ドメインを 有する。本発明の FKBP型 PPIaseは、ショートタイプ、ロングタイプのいずれでもよい
[0028] また、本発明の FKBP型 PPIaseでショートタイプのものは、配列番号 1、 2又は 3で 表されるアミノ酸配列(以下、「コンセンサス配列 B」と称する。)からなるモチーフを、 その一部に含むアミノ酸配列を有することが好ましい。なお、配列番号 1、 2又は 3で 表されるアミノ酸配列中の Xaaは任意のアミノ酸で、それらは互いに異なるアミノ酸で もよいし、同じアミノ酸でもよい。コンセンサス配列 Bは、配列番号 1、 2又は 3の他に、 下記一般式 (I)で表すこともできる。
[化 1]
Asp-A-Asn-His-B-Leu-Ala-Gly-X-Phe (I)
(Aspはァスパラギン酸、 Asnはァスパラギン、 Hi sはヒスチジン、 Leuは口イシ ン、 Al aはァラニン、 G l yはグリシン、 Aは任意のアミノ酸、 Bは任意のアミノ酸、 Xは 3 ~ 5個の任意のアミノ酸からなるぺプチド)
[0029] さらに、本発明の FKBP型 PPIaseでショートタイプのものは、配列番号 4で表される アミノ酸配列(以下、「コンセンサス配列 A」と称する。)からなるモチーフを、その N末
端領域に含まないことが好ましい。ここで、 N末端領域とは、そのタンパク質の N末端 力 略 40アミノ酸残基までの領域を 、う。
[0030] 本発明者らは、メタン生成菌に属する常温性古細菌由来の 9種のショートタイプ FK BP型 PPIaseのアミノ酸配列(遺伝子の塩基配列からの推定)を比較し、上記したコ ンセンサス配列の有無により 3つのグループに分類されることを見出した。すなわち、 グループ 1のショートタイプ FKBP型 PPIaseは、コンセンサス配列 Aをその N末端領 域に含まないが、コンセンサス配列 Bをそのアミノ酸配列中に含むものである。また、 グループ 2ショートタイプ FKBP型 PPIaseは、コンセンサス配列 Aその N末端領域に 含まな 、が、コンセンサス配列 Bの Pheが他のアミノ酸に置き換わったアミノ酸配列を そのアミノ酸配列中に含むものである。また、グループ 3のショートタイプ FKBP型 PP Iaseは、コンセンサス配列 Aをその N末端領域に含み、かつコンセンサス配列 Bもそ のアミノ酸配列中に含むものである。これらのグループ 1、グループ 2及びグループ 3 の FKBP型 PPIaseのアミノ酸配列を並べて比較した図を図 1に示す。なお、図 1にお Vヽてはアミノ酸配列を 1文字表記で表して 、る。
[0031] 図 1において、 MaFKBP17. 8は Methanosarcina acetivorans由来のグルー プ 1型ショートタイプ FKBP型 PPIase (配列番号 8)、 MmFKBP18. 0は Methanos arcina mazei由来のグループ 1型ショートタイプ FKBP型 PPIase (配列番号 6)、 M bFKBPl 9は Mathanosarcina barkeri由来のグループ 1型ショートタイプ FKBP 型 PPIase (配列番号 10)である。また、 MbFKBP21は M. barkeri由来のグルー プ 3型ショートタイプ FKBP型 PPIase (配列番号 11)、 MmFKBPl 7. 9は M. maz ei由来のグループ 3型ショートタイプ FKBP型 PPIase (配列番号 12)、 MaFKBP19 は M. acetivorans由来のグループ 3型ショートタイプ FKBP型 PPIase (配列番号 13)である。また、 MaFKBP18. 2は M. acetivorans由来のグループ 2型ショート タイプ FKBP型 PPIase (配列番号 14)、 MmFKBP18. 2は M. mazei由来のグル ープ 2型ショートタイプ FKBP型 PPIase (配列番号 15)、 MbFKBP18は M. barke ri由来のグループ 2型ショートタイプ FKBP型 PPIase (配列番号 16)である。
[0032] 各コンセンサス配列についてさらに詳しく説明する。まずコンセンサス配列 Bは、図 1で囲んで示した各アミノ酸配列の C末端側の配列、「D * NH * LAG * * * * F」(
*は任意のアミノ酸)に対応するアミノ酸配列である。このコンセンサス配列 Bを一般 化すると、 Asp— A— Asn— His— B— Leu— Ala— Gly— X— Phe (Aは任意のアミノ酸、 B は任意のアミノ酸、 Xは 3— 5個の任意のアミノ酸力 なるペプチド)と表現することが でき、これは、配列番号 1、 2又は 3で表されるアミノ酸配列と同じである。このコンセン サス配列 Bは、古細菌由来 FKBP型 PPIaseに見られる特徴的なモチーフである。こ のコンセンサス配列 Bの中で重要なアミノ酸は C末端の Pheであり、前述の通り、本箇 所のアミノ酸の種類によってショートタイプ FKBP型 PPIaseを、グループ 1とグループ 2に分類することができる。なお、コンセンサス配列 Bの Xは、 3— 5個の任意のァミノ 酸力もなるペプチドであるが、図 1の例のように 4個のアミノ酸力もなる場合が多い。
[0033] 一方、コンセンサス配列 Aは、図 1で囲んで示したグループ 3の N末端側の配列、「 GSGCJに対応するアミノ酸配列である。これは、配列番号 4で表されるアミノ酸配列 Gly— Ser— Gly— Cysである。このコンセンサス配列 Aは、一部の常温性古細菌由来 FKBP型 PPIaseの N末端に近い領域に見られるモチーフであり、前述の通り、本モ チーフの有無によってショートタイプ FKBP型 PPIaseをグループ 3とその他のグルー プに分類することができる。すなわち、本モチーフを有するショートタイプ FKBP型 PP Iaseは、グループ 3に属する。本発明の FKBP型 PPIaseにおいては、コンセンサス 配列 Bを有するグループ 1が特に好ましぐさらに、コンセンサス配列 Bを N末端領域 に有さないことが好ましい。なお、グループ 3のショートタイプ FKBP型 PPIaseであつ ても、その N末端領域を改変又は欠失させることによってコンセンサス配列 Aを除去 すれば、グループ 1のショートタイプ FKBP型 PPIaseに変換することができる。
[0034] これらのショートタイプ FKBP型 PPIaseのなかでも、グループ 1の FKBP型 PPIase は、グループ 2又はグループ 3の FKBP型 PPIaseに比べて、その分子シャペロン活 性が高い。このようなグループ 1の FKBP型 PPIaseは、例えば、上述の M. mazei 、 M. acetivorans, M. barkeri等の Methanosarcina属細菌に属する古細菌 が有している。ここで、 M. mazeiに由来するグループ 1型ショートタイプ FKBP型 P Plaseをコードする遺伝子の塩基配列と推定されるアミノ酸配列を配列番号 5に、アミ ノ酸配列のみを配列番号 6に示す。同様に、 M. acetivoransに由来するグループ 1型ショートタイプ FKBP型 PPIaseをコードする遺伝子の塩基配列と推定されるァミノ
酸配列を配列番号 7に、アミノ酸配列のみを配列番号 8に示す。また同様に、 M. b arkeriに由来するグループ 1型ショートタイプ FKBP型 PPIaseをコードする遺伝子の 塩基配列と推定されるアミノ酸配列を配列番号 9に、アミノ酸配列のみを配列番号 10 に示す。
[0035] 一方、本発明の FKBP型 PPIaseのうち、ロングタイプの例として、 Methanosarcin a acetivoransに由来するロングタイプ FKBP型 PPIaseをコードする遺伝子の塩基 配列と推定されるアミノ酸配列を配列番号 17に、アミノ酸配列のみを配列番号 18に 示す。
[0036] 本発明の FKBP型 PPIaseと実質的に同一のアミノ酸配列を有し、かつ、実質的に 同一の活性を有する FKBP型 PPIaseもまた、本発明の 1つである。ここで、「実質的 に同一のアミノ酸配列を有する」とは、アミノ酸配列中の 1又は 2個以上 (好ましくは 1 一 10個程度、より好ましくは 1一 5個程度)のアミノ酸が欠失したもの、アミノ酸配列に 1又は 2個以上 (好ましくは 1一 20個程度、より好ましくは 1一 10個程度、さらに好まし くは 1一 5個程度)のアミノ酸が付加したもの、アミノ酸配列中の 1又は 2個以上 (好ま しくは 1一 10個程度、より好ましくは 1一 5個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換さ れたもの等を意味する。また、実質的に同一のアミノ酸配列を有するとは、相同性が 少なくとも 50%以上、好ましくは 70%以上、より好ましくは 80%以上、さらに好ましく は 90%以上、特に好ましくは 95%以上であることを意味する。なお、アミノ酸配列の 相同性は、例えば、 CulustalW等の市販の多重整列プログラムを用いて計算するこ とがでさる。
[0037] また、「実質的に同一の活性」とは、分子シャペロン活性及び Z又は PPIase活性が 実質的に同一であることを指す。なお、分子シャペロン活性の評価は、例えば、ロダ ネーゼ、クェン酸合成酵素、リンゴ酸脱水素酵素、グルコース リン酸脱水素酵素 等をモデル酵素とし、これを 6M塩酸グァ-ジン等のタンパク質変性剤で変性処理後
、検定対象物質を含む緩衝液で変性剤を希釈した際に開始する変性タンパク質の 再生率や、変性タンパク質の凝集の抑制率を測定することにより行うことができる (河 田、ノィォサイエンスとインダストリ一 56, 593—、 1998年; Horowitz、 Methods
Mol. Biol. 40、 361—、 1995年; Taguchi、 Biol. Chem. 269、 8529—、 19
94年)。また、 PPIase活性の評価は、例えば、キモトリブシンカップリング法 . Bac teriol. 1998, 180 (2) : 388— 394)により行なうこと力 Sできる。
[0038] 本発明の発現ベクターは、上記した本発明の FKBP型 PPIaseと目的タンパク質と の融合タンパク質を発現できるものである。すなわち、本発明の発現ベクターは、本 発明の FKBP型 PPIaseをコードする第 1コード領域と、少なくとも 1つの制限酵素サ イトを有するものであり、この制限酵素サイトに目的タンパク質をコードする第 2コード 領域を挿入することにより FKBP型 PPIaseと目的タンパク質の融合タンパク質を発現 することができる。ここで、融合タンパク質が発現できるということは、換言すれば、制 限酵素サイトは、第 1コード領域と同じ解読枠内に位置しているということである。さら に換言すれば、該制限酵素サイトに第 2コード領域を挿入したときに、第 1コード領域 と第 2コード領域の解読枠が一致しており、かつ第 1コード領域と第 2コード領域の間 に終止コドンが存在しないということである。なお、制限酵素サイトの位置は第 1コード 領域の上流でもよいし下流でもよい。制限酵素サイトが第 1コード領域の下流にあると きは、第 1コード領域はプロモーターに有効に連結していることが必要である。そのよ うな発現ベクターによれば、該プロモーターによって第 1コード領域力 転写が開始さ れ、 N末端側が FKBP型 PPIaseで C末端側が目的タンパク質である融合タンパク質 を発現することができる。
[0039] 上記プロモーターとしては、用いる発現系に応じて適宜選択すればよぐ宿主内で 発現させる場合は、その宿主に適合したものを用いればよい。宿主が大腸菌であれ ば、例えば、 Placプロモーター、 Ptacプロモーター、 xylAプロモーター、 AraBプロ モーター、 lambdaプロモーター、 T7プロモーター等を用いることができる。ほ乳細胞 系によって発現させる場合は、ほ乳類細胞のゲノム力 単離された、例えばマウスメ タロチォネインプロモーター等のプロモーターや、これらの細胞で成長するウィルス 力 単離された、例えばバキュロウィルスプロモーター、ワクシニアウィルス 7. 5Kプロ モーター等のプロモーターを用いることができる。
[0040] 本発明の発現ベクターにおいては、さらに、第 1コード領域と前記制限酵素サイトの 間にペプチドリンカ一となる塩基配列を有してもよい。そのようなペプチドリンカ一の 代表例はプロテアーゼ消化アミノ酸配列である。すなわち、本発明の発現ベクターに
おいては、第 1コード領域と前記制限酵素サイトとの間にプロテアーゼ消化アミノ酸配 列をコードする塩基配列を有することが好まし 、。該プロテアーゼ消化アミノ酸配列を コードする塩基配列は、第 1コード領域及び第 2コード領域と同じ解読枠内で転写' 翻訳され、プロテアーゼ消化アミノ酸配列となる。すなわち、本実施形態の発現べク ターによれば、 FKBP型 PPIaseと目的タンパク質とがプロテアーゼ消化アミノ酸配列 を介して連結された融合タンパク質を発現することができる。そして、該融合タンパク 質に対応のプロテアーゼを作用させることにより、 目的タンパク質を切り出すことがで きる。
[0041] 上記プロテアーゼとしては特に限定されず、例えば、トロンビン、ファクター Xa、プレ シジョンプロテアーゼ、ェンテロキナーゼ等が挙げられる。これらのプロテアーゼとし ては、例えば、市販されているものを用いることができる。また、プロテアーゼ認識アミ ノ酸配列以外のペプチドリンカ一としては、例えば、インティンの自己切断アミノ酸配 列が挙げられる。すなわち、インティンの自己タンパク質スプライシング機能を利用し て融合タンパク質から目的タンパク質を切り出すことができる。なお、ペプチドリンカ 一をコードする塩基配列の長さは特に限定されないが、 15— 90塩基程度であること が好ましぐ翻訳されてグリシンゃセリン等の中性アミノ酸となる塩基配列を多く含むこ とが好ましい。
[0042] 本発明の発現ベクターは、さらに、他の従来公知の塩基配列を含んでいてもよい。
上記他の従来公知の塩基配列としては特に限定されず、例えば、発現産物の安定 性を付与する安定性リーダー配列、発現産物の分泌を付与するシグナル配列、ネオ マイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフエ二コール耐性遺伝子、 アンピシリン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子等の形質転換された宿主に おいて表現型選択を付与することが可能なマーキング配列等が挙げられる。
[0043] 上記した発現ベクターの制限酵素サイトに、 目的タンパク質をコードする第 2コード 領域がすでに組み込まれている発現ベクターも、本発明の 1つである。このような発 現ベクターによれば、第 2コード領域を組み込む操作が不要であり、そのまま転写' 翻訳させることにより FKBP型 PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を製造す ることができる。第 2コード領域にコードされる目的タンパク質としては、例えば、抗体
又は抗体の部分断片が挙げられる。抗体の部分断片としては、 Fab、 Single chain Fv(scFv)、 Fc、抗体の各ドメインの 2個以上の断片がペプチド結合で連結したポリ ペプチド等が挙げられる。また、上記抗体の由来動物やサブクラスは何でもよい。こ のように、抗体又は抗体の部分断片をコードする第 2コード領域を含むベクターを使 用すると、大腸菌等の宿主内で発現させても封入体とならず、正しく折り畳まれた抗 体を得ることができる。その結果、従来のように動物を用いて抗体を作らせる必要が なぐより簡便かつ大量に抗体を得ることができる。なお、抗体をコードする遺伝子は 、例えば、ハイプリドーマ力も調製することができる。そして、単一のハイプリドーマか ら得られる抗体をコードする遺伝子は単一であるので、得られる抗体はモノクローナ ルな抗体である。一方、ポリクローナルな抗体を取得する場合は、例えば、複数種の ノ、イブリドーマ力もそれぞれ抗体をコードする遺伝子を取得し、それらの遺伝子を別 々のベクターに組み込み、別々の形質転換体を作製し、それらの形質転換体を混合 培養すればよい。
[0044] 第 2コード領域にコードされる目的タンパク質の他の例としては、細胞内受容体タン パク質が挙げられる。生理活性物質を受容する細胞内受容体タンパク質は、ほとんど が生体膜中に存在する。これらの細胞内受容体タンパク質は細胞外の様々な物質に 選択的に応答し、細胞内に多彩なシグナルを伝達することから、その機能を解明す ることが創薬に直接繋がるとして非常に注目されている。これらの細胞内受容体タン ノ ク質は構造的によく保存されたファミリーを形成しており、大きく分けて、イオンチヤ ネル内在型、チロシンカイネース型、及び Gタンパク質共役型の 3つに分類される。
[0045] イオンチャネル内在型は、リガンドが受容体に結合すると、受容体そのものに存在 するイオンチャネルが開き、 Na+や Ca2+等を細胞内外のイオン勾配を利用して細胞内 に移動させるタイプである。チロシンカイネース型は、リガンドの結合をリン酸ィ匕活性 の上昇に転換させ、一連のカスケードを引き起こすことによりシグナルを増幅する。 G タンパク質共役型は、受容体自身はイオンチャネルや酵素活性を持たず、リガンドの 結合による情報を Gタンパク質を介して細胞内に伝達する。
[0046] 細胞内受容体タンパク質を標的とした医薬品は数多く開発されているが、その多く 力 タンパク質共役型受容体 (GPCR)をターゲットとしている。したがって、 GPCRの
内因性リガンドを特定し、さらにその機能及び構造を明らかにすることによって、迅速 な医薬品開発が可能になることが期待できる。これらのリガンドスクリーニングや構造 解析のための結晶化や重水素化のためには GPCRの大量発現技術の開発が不可 欠である力 これまで GPCRの発現は大腸菌や酵母では不可能であるとされてきて おり、主に CHOや COS— 7、 HEKのような動物培養細胞で発現した微量なサンプル を用いて様々な分析を行っているのが現状であった。しかし、本発明の発現ベクター によれば、細胞内受容体タンパク質についても、大腸菌等を用いて組換え型タンパク 質を安価に、かつ、大量に製造することができる。
[0047] 本発明の形質転換体は、上記した発現ベクターのうち、第 2コード領域がすでに組 み込まれて!/、る発現ベクターを含有するものである。本発明の形質転換体を培養す ることにより、 FKBP型 PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を製造することが できる。本発明の形質転換体の元となる宿主は、本発明の発現ベクターの特性と適 合するものであれば特に制限はなぐ例えば、細菌等の原核生物、酵母、真菌、植物 、昆虫細胞、ほ乳類細胞等が挙げられる。ここで、宿主が発現ベクターの特性と適合 するとは、宿主内においてその発現ベクターが複製可能であり、かつ第 1コード領域 と第 2コード領域を転写'翻訳できるということである。特に、転写が正常に行われるた めには、発現ベクター上のプロモーターが正常に働く宿主を選択することが必要であ る。
[0048] 上記宿主のうち、大腸菌はその取り扱いが容易であり、かつ宿主ベクター系も充実 しているので特に好適である。大腸菌を宿主として用いる場合、発現ベクターから転 写 ·翻訳される融合タンパク質は、細胞質に発現させてもよいし、ペリブラズム領域に 発現させてもよい。ペリブラズム領域に融合タンパク質を発現させる場合は、融合タン ノ ク質の 5'末端にシグナル配列が付加されるように発現ベクターを構築し、大腸菌 に導入すればよい。
[0049] 本発明の形質転換体を作成する際の、発現ベクターを宿主に導入する方法は、公 知の種々の方法を用いることができ、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、電気穿孔、リ ポソーム融合、核注入、ウィルス又はファージ感染等が挙げられる。
[0050] なお、本発明の発現ベクターは、宿主に導入する以外に、ノ クテリア又は真核生物
抽出液等を用いた無細胞翻訳系(Spirin, A. S. , 1991, Science, 11, 2656-2664 : Falcone, D. et al. , 1991, Mol. Cell. Biol. , 11, 2656— 2664)にて発現させることも可能である。無細胞翻訳系は、 目的タンパク質 が宿主に毒性を示すものである場合等に有効である。
[0051] 本発明の融合タンパク質の主な実施形態は、メタン生成菌に属する常温性古細菌 由来の FKBP型 PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質である。本発明の融合 タンパク質によれば、 目的タンパク質が単独で発現すると正しく折り畳まれずに異常 型タンパク質となってしまう場合でも、 FKBP型 PPIaseとの融合タンパク質として発現 させることで、 目的タンパク質を正しく折り畳まれた正常型タンパク質として発現するこ とができる。その結果、正常型の目的タンパク質の生産性を飛躍的に向上させること ができる。なお、 目的タンパク質は適宜の方法で融合タンパク質力も切り出すことが できる。例えば、 FKBP型 PPIaseと目的タンパク質の間にプロテアーゼ認識アミノ酸 配列を挿入しておけば、融合タンパク質に該プロテアーゼを作用させることにより、 目 的タンパク質を切り出し、単離することができる。なお、本発明の融合タンパク質は、 例えば、上記した発現ベクター上の第 1コード領域と第 2コード領域を転写 '翻訳する ことにより製造することができる。さらに、第 1コード領域と第 2コード領域の間にプロテ ァーゼ認識アミノ酸配列をコードする塩基配列を挿入しておけば、 FKBP型 PPIase と目的タンパク質の間にプロテアーゼ認識アミノ酸配列を有する融合タンパク質を製 造することができる。
[0052] 本発明の目的タンパク質の製造方法は、メタン生成菌に属する常温性古細菌由来 の FKBP型 PPIaseの作用を利用して、正しく折り畳まれた正常型の目的タンパク質 を製造するものである。この際、該 FKBP型 PPIaseを目的タンパク質に作用させる態 様は主に 2つある。 1つの態様は、上記したように、 目的タンパク質を FKBP型 PPIas eとの融合タンパク質として発現させる、融合発現法である。融合発現法の場合は、 目的タンパク質を切り出す工程が必要である。もう 1つの態様は、 FKBP型 PPIaseと 目的タンパク質をそれぞれ単独に同時に発現させる、共発現法である。共発現法に よれば、 目的タンパク質を切り出す必要がなぐ製造工程を減らすことができる。なお 、宿主を用いた共発現法の場合は、 FKBP型 PPIaseの遺伝子と目的タンパク質の
遺伝子は、同じ発現ベクター上に存在してもよぐ別々の発現ベクターに組み込まれ ていてもよい。同じ発現ベクター上に存在する場合は、例えば、それぞれの遺伝子が 別々のプロモーター下流に糸且み込めばよい。さらに、 FKBP型 PPIaseの遺伝子を宿 主のゲノム上に、 目的タンパク質の遺伝子を発現ベクター上に組み込む構成も可能 である。
[0053] 本発明の FKBP型 PPIase及び融合タンパク質は、タンパク質の精製に一般的に 用いられている手法、すなわち、塩析、膜分離、各種クロマトグラフィー等を組み合わ せること〖こより精製することができる。特に、本発明の FKBP型 PPIaseの分子表面が 疎水性アミノ酸に富んでいることを利用し、疎水性相互作用クロマトグラフィーを用い ることにより、本発明の FKBP型 PPIase及び融合タンパク質を高純度に精製すること ができる。例えば、榭脂等に固定ィ匕された疎水基を介して FKBP型 PPIase又は融合 タンパク質を榭脂に吸着させ、 FKBP型 PPIase又は融合タンパク質が溶出されない ような条件で榭脂を洗浄して不純物となる成分を除去することができる。なお、疎水 基の例としては、 C4一 C20程度のアルキル基、フエ-ル基等が挙げられる。また、精 製に供するための FKBP型 PPIase及び融合タンパク質を含む試料は、例えば、そ れらの遺伝子を含有する形質転換体の培養物から調製することができる。
[0054] また、本発明の FKBP型 PPIase及び融合タンパク質は、 FKBP型 PPIaseと FK50 6との親和性を利用して精製することもできる。すなわち、 FK506ゃラパマイシン、そ の類縁ィ匕合物を担持させた担体を調製して、該担体に FKBP型 PPIase又は融合タ ンパク質を含む試料を接触させ、担体上に FKBP型 PPIase又は融合タンパク質を 捕捉することができる。その後、適宜の方法で担体力 FKBP型 PPIase又は融合タ ンパク質を回収すればょ 、。
[0055] また、ヒスチジン 6残基程度力もなるヒスチジンタグをあら力じめ、本発明の FKBP型 PPIase又は融合タンパク質の末端に導入しておくことにより、それらの精製を容易に することができる。すなわち、ヒスチジンタグを末端に有する FKBP型 PPIase又は融 合タンパク質は、ニッケル等の金属をキレートした担体上に、ヒスチジンタグを介して 結合する。具体的には、ニッケル等の金属をキレートした担体に FKBP型 PPIase又 は融合タンパク質を含む試料を接触させ、該担体上にヒスチジンタグを介して FKBP
型 PPIase又は融合タンパク質を捕捉することができる。その後、イミダゾール等で溶 出して担体力 FKBP型 PPIase又は融合タンパク質を回収すればよ!、。このようなタ グを用いる方法としては、ダルタチオン S—トランスフェラーゼ又はその一部分をタグ とし、ダルタチオン榭脂によるァフィ二ティークロマトグラフィーにより精製する方法や 、マルトース結合タンパク質又はその一部をタグとし、マルトース榭脂により精製する 方法等がある。なお、これらのタグは、 PPIase又は融合タンパク質の N末端側及び C 末端側の 、ずれに導入してもよく、双方に導入してもよ 、。
[0056] 以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例の みに限定されるものではない。
実施例 1
[0057] 本実施例では、メタン生成菌に属する古細菌 Methanosarcina mazei由来ショー トタイプ FKBP型 PPIase (MmFKBP18. 0)と目的タンパク質との融合タンパク質を 発現することができる発現ベクターを構築した。なお、 MmFKBP18. 0はグループ 1 型のショートタイプ FKBP型 PPIaseである。
[0058] Methanosarcina mazei Goel (DSM3647)の菌懸濁液から菌ペレットを回 収し、フエノール Zクロ口ホルム処理、及び、エタノール沈殿法により、ゲノム DNAを 回収した。一方、配列番号 5に示される公知の MmFKBP18. 0遺伝子の塩基配列 を参考にして、 PCR用のプライマーとして配列番号 19に示される Mml8— F1プライ マー及び配列番号 20に示される Mml8— R1プライマーを合成した。次に、得られた ゲノム DNAを铸型とし、 Mml8— F1プライマー及び Mml8— R1プライマーをプライ マー対として PCRを行い、 MmFKBP18. 0遺伝子を増幅した。増幅された DNA断 片の塩基配列を確認したところ、公知の MmFKBP18. 0遺伝子の塩基配列と一致 した。なお、増幅された DNA断片の両端には、 Mml8— F1の 5'末端に由来する Nc olサイト及び Mml8-Rlの 3'末端に由来する Spelサイトが導入された。
[0059] 一方、配列番号 39に示されるリンカ一 Throm— F2及びその相補鎖であるリンカ一 Throm— R2を合成した。なお、リンカ一 Throm— F2は、 5'側に Spelサイトを、 3'側 に EcoRIサイトを有し、内部には目的タンパク質の遺伝子を導入するための BamHI サイト及び Ndelサイトを有している。さらに、融合タンパク質から目的タンパク質をトロ
ンビンにより切り出せるように、 BamHIサイトの上流に、翻訳されてトロンビン認識アミ ノ酸配列となる塩基配列を有している(図 2)。次に、リンカ一 Throm— F2とリンカ一 T hrom— R2をアニーリングさせ、 2本鎖リンカ一 Thromを調製した。
[0060] MmFKBP18. 0遺伝子を含む増幅 DNA断片を Ncol/Spelで、 2本鎖リンカ一 T hromを SpelZEcoRIでそれぞれ処理し、あらかじめ NcolZEcoRIにて処理した p ET2 Idプラスミド DNA (ノバジェン社製)に、 MmFKBP18. 0遺伝子— 2本鎖リンカ 一の順になるよう挿入して、発現ベクター pMml8F2を構築した。発現ベクター pM ml8F2の構成を図 2〖こ示す。すなわち、発現ベクター pMml8F2は、 T7プロモータ 一の下流に、順に、第 1コード領域となる MaFKBP18. 0遺伝子、トロンビン認識アミ ノ酸配列をコードする塩基配列、 BamHIサイト、及び Ndelサイトを有する。そして、 B amHIサイト又は Ndelサイトに第 2コード領域となる目的タンパク質をコードする遺伝 子を挿入することにより、 MmFKBP18. 0と目的タンパク質との融合タンパク質を発 現することができる。また、発現される該融合タンパク質は、 MmFKBP18. 0と目的 タンパク質の間にトロンビン消化アミノ酸配列を有する。
実施例 2
[0061] 本実施例では、メタン生成菌に属する古細菌 Methanosarcina barkeri由来ショ ートタイプ FKBP型 PPIase (MbFKBP19. 0)と目的タンパク質との融合タンパク質 を発現することができる発現ベクターを構築した。なお、 MbFKBP19. 0はグループ 1型のショートタイプ FKBP型 PPIaseである。
[0062] Methanosarcina barkeri type strain (DSM800)の菌懸濁液から菌ペレツ トを回収し、実施例 1と同様の操作でゲノム DNAを回収した。配列番号 9に示される 公知の MbFKBP19. 0遺伝子の塩基配列を参考にして、 PCR用のプライマーとして 配列番号 21に示される Mbl9— F1プライマー及び配列番号 22に示される Mbl9— R 1プライマーを合成した。次に、得られたゲノム DNAを铸型とし、 Mbl9— F1プライマ 一及び Mb 19— R1プライマーをプライマー対として PCRを行い、 MbFKBP19. 0遺 伝子を増幅した。増幅された DNA断片の塩基配列を確認したところ、公知の MbFK BP19. 0遺伝子の塩基配列と一致した。なお、増幅された DNA断片の両端には、 Mb 19-F 1の 5 '末端に由来する Sphlサイト及び Mb 19 R1の 3 '末端に由来する S
pelサイトが導入された。次に、実施例 1と同様にして、 MbFKBP19. 0遺伝子を含 む増幅 DNA断片と、 2本鎖リンカ一 Thromを pET21プラスミド DNAに挿入して、発 現ベクター pMbl9F2を構築した。すなわち、発現ベクター pMbl9F2は、図 2に示 される発現ベクター pMml8F2の構成のうち、 MmFKBP18. 0遺伝子に代わって MbFKBP19. 0遺伝子とした構成を有する。
実施例 3
[0063] 本実施例では、メタン生成菌に属する古細菌 Methanosarcina acetivorans由 来ショートタイプ FKBP型 PPIase (MaFKBP17. 8)と目的タンパク質との融合タン ノ ク質を発現することができる発現ベクターを構築した。なお、 MaFKBP17. 8はグ ループ 1型のショートタイプ FKBP型 PPIaseである。
[0064] Methanosarcina acetivorans C2A (DSM2834)の菌懸濁液から菌ペレット を回収し、実施例 1と同様の操作でゲノム DNAを回収した。配列番号 7に示される公 知の MaFKBP17. 8遺伝子の塩基配列を参考にして、 PCR用のプライマーとして配 列番号 23に示される Mal7. 8— F1プライマー及び配列番号 24に示される Mal7. 8 R1プライマーを合成した。次に、得られたゲノム DNAを铸型とし、 Mal7. 8— F1プ ライマー及び Mal7. 8— R1プライマーをプライマー対として PCRを行い、 MaFKBP 17. 8遺伝子を増幅した。増幅された DNA断片の塩基配列を確認したところ、公知 の MaFKBP17. 8遺伝子の塩基配列と一致した。なお、増幅された DNA断片の両 端には、 Mal7. 8— F1の 5'末端に由来する Ncolサイト及び Mal7. 8— R1の 3'末 端に由来する Spelサイトが導入された。次に、実施例 1と同様にして、 MaFKBP17 . 8遺伝子を含む増幅 DNA断片と、 2本鎖リンカ一 Thromを pET21プラスミド DNA に挿入して、発現ベクター pMal7F2を構築した。すなわち、発現ベクター pMal7F 2は、図 2に示される発現ベクター pMml8F2の構成のうち、 MmFKBP18. 0遺伝 子に代わって MaFKBP17. 8遺伝子とした構成を有する。
実施例 4
[0065] 本実施例では、 Methanosarcina acetivorans由来ロングタイプ FKBP型 PPIas e (MaFKBP28. 0)と目的タンパク質との融合タンパク質を発現することができる発 現ベクターを構築した。
[0066] 1.発現ベクターの構築
公知の配列番号 17に示される MaFKBP28. 0遺伝子の塩基配列を参考にして、 PCR用のプライマーとして、配列番号 37で示される Ma28— F1プライマー及び配列 番号 38で示される Ma28-Rlプライマーを合成した。次に、実施例 3で調製した Met hanosarcina acetivorans C2A (DSM2834)のゲノム DNAを铸型とし、 Ma2 8— F1プライマー及び Ma28— R1プライマーをプライマー対として PCRを行 、、 MaF KBP28. 0遺伝子を増幅した。増幅された DNA断片の塩基配列を確認したところ、 公知の MaFKBP28. 0遺伝子の塩基配列と一致した。なお、増幅された DNA断片 の両端には、 Ma28— F1の 5'末端に由来する Ncolサイト及び Ma28— R1の 3'末端 に由来する Spelサイトが導入された。次に、実施例 1と同様にして MaFKBP28. 0 遺伝子及び 2本鎖リンカ一 Thromを pET21dプラスミド DNAの NcolZEcoRIサイト に挿入して、発現ベクター pMa28F2を構築した。すなわち、発現ベクター pMa28F 2は、図 2に示される発現ベクター pMml8F2の構成のうち、 MmFKBP18. 0遺伝 子に代わって MaFKBP28. 0遺伝子とした構成を有する。
実施例 5
[0067] 本実施例では、 MaFKBP17. 8を製造'精製した。
[0068] 1. MaFKBP17. 8の製造
実施例 3で調製した発現ベクター pMal7F2を大腸菌 BL21 (DE3)株(Novagen 社)に導入し、形質転換体を得た。 2L容の三角フラスコに、 lOO ^ g/mL アンピシ リンを含む 2 XYT培地(16g/L 酵母エキス、 20g/L バクトトリプトン、 5gZL N aCl、 pH7. 5) 700mLを仕込み、得られた形質転換体を白金耳で 2— 3回接種し、 3 5°Cで 24時間回転培養(l lOrpm)した。培養終了後、培養液を遠心分離(lOOOOr pm X 10分)し、菌体を回収した。得られた菌体を ImM EDTAを含む 25mM HE PES緩衝液 (pH6. 8) 20mLに懸濁し、— 20°Cにて凍結保存した。
[0069] 凍結保存した菌体懸濁液を融解し、超音波処理をして菌体を破砕した。菌体破砕 液を遠心分離し、その上清 (可溶性画分)と沈殿部 (沈殿画分)に分離した。さらに沈 殿画分を 4%Triton X— 100を含む 25mM HEPES/lmM EDTA緩衝液(pH 6. 8)に懸濁して 30分間処理し、膜成分を可溶化した。懸濁液を遠心分離して、沈
殿を回収した。この操作を 2回繰り返し、得られた沈殿を 20mLの 25mM HEPES /ImM EDTA緩衝液 (pH6. 8)に懸濁して封入体画分を調製した。可溶性画分 10 g (5 L)と、 5 Lの封入体画分をそれぞれ SDS— PAGE供し、クマシ一ブリリ アントブルー(CBB)にてゲルを染色した。図 3にゲルの写真を示す。図 3において、 左側のレーンが可溶性画分であり、右側のレーンが沈殿画分である。すなわち、 Ma FKBP17. 8に相当するバンド (矢印)は、可溶性画分のみに検出された。以上より、 MaFKBP17. 8は封入体になることなぐ可溶状態で回収された。
2. MaFKBP17. 8の精製
得られた可溶性画分を下記条件の疎水性相互作用クロマトグラフィー、及び、ゲル 濾過の順でカラム精製を繰り返すことにより、 MaFKBP17. 8をほぼ単一にまで精製 した。なお、疎水性相互作用クロマトグラフィーの段階で、 MaFKBP17. 8はほとん ど単一になっていた。
(a)疎水性相互作用クロマトグラフィーの条件
使用カラム: HighTrap Phenyl FF
(容量 5mL、アマシャムバイオサイエンス社製)
溶離液
A液: 10mMリン酸緩衝液 (pH6. 8) Z500mM硫酸アンモ-ゥム含有
B液: 10mMリン酸緩衝液 (pH6. 8)
溶出条件: 0-50分: B液 0-100%の直線グラジェント溶出
50— 70分: B液 100 %のイソクラティック溶出
流速: 3mLZ分
カラム温度:室温
(b)ゲル濾過条件
使用カラム: HiLoad 26/60 Superdex 200pg column
(26 mm X 60cm,アマシャムバイオサイエンス社製)
溶離液: lOOmMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH7. 0、0. 15M NaCl含有) 溶出条件:イソクラティック溶出
カラム温度:室温
[0071] 次に、精製した MaFKBP17. 8の PPIase活性を以下の手順で評価した。 PPIase 活性の測定はキモトリプシンカップリング法に準拠して行った。すなわち、 2mLの 10 OmMリン酸緩衝液 (pH7. 8)に、 MaFKBP17. 8を 2. 5— 25nM、 PPIaseの基質ぺ プチドである N- sue- Ala- Leu- Pro- Phe-p--トロア-リド(ペプチド研究所)を最終 濃度 2 /z Mになるようにカ卩え、 15°Cで 2分間プレインキュペートした。次いで、キモトリ プシンを最終濃度 2 Mとなるように添加し、遊離される トロア-リドの吸光度を 測定することで PPIase活性を評価した。その結果、 MaFKBP17. 8の PPIase活性( kcat/Km)は 3. 34s— M—
1であった。この値は、以下の既報の好熱'超好熱菌由 来 FKBP型ショートタイプ PPIaseの PPIase活性、すなわち、好熱性古細菌 Methan ococcus thermolithotrophicus由来 PPIase(MtFKBP17)の 0. 38s"
1 - μ
超好熱性古細菌 Thermococcus sp. KS- 1 PPIase (TcFKBP18)の 0. 35s—
1 ' μ 超好熱性古細菌 Methanococcus jannaschii由来 PPIase(MjFKBP18) の 0. 92s— Μ—
1の(Ideno et al. , Gene 2002 Jun 12 ; 292 (1— 2) : 57 —63)と比較して、有意に高力つた。
実施例 6
[0072] 本実施例では、 MmFKBP18. 0を製造'精製した。
[0073] 1. MmFKBP18. 0の製造
実施例 1で調製した発現ベクター pMml8F2を大腸菌 BL21 (DE3)株に導入し、 形質転換体を得た。次に、実施例 5と同様にして、形質転換体を培養し、菌体回収後 、菌体懸濁液を 20°Cで凍結保存した。さらに、実施例 5と同様にして菌体懸濁液を 超音波処理し、その上清画分 (可溶性画分)を得た。上清画分 ΙΟ /z gを SDS - PAG Eに供したところ、 MmFKBP18. 0に相当する濃いバンドが検出され、 MmFKBPl 8. 0が大量に可溶性画分に発現して 、ることが確認された。
[0074] 2. MmFKBP18. 0の精製
得られた上清画分を実施例 5と同様の疎水性相互作用クロマトグラフィー及びゲル 濾過法、並びに、下記条件の陰イオン交換クロマトグラフィーに供し、カラム精製を繰 り返すこと〖こより、 MmFKBP18. 0をほぼ単一にまで精製した。
(c)陰イオン交換クロマトグラフィー条件
使用カラム: DEAE Toyopearl column
( 16mm X 60cm;東ソ一社)
溶離液
A液: 25mM HEPES— KOH衝液(pH6. 8)
B液: 0. 5M NaClを含む 25mM HEPES— KOH緩衝液(pH6. 8) 溶出条件: 0-300分: B液 0-100%の直線グラジェント溶出
300— 420分: B液 100%のイソクラティック溶出
流速: lmLZ分
カラム温度:室温
実施例 7
[0075] 本実施例では、 MbFKBP19. 0を製造'精製した。
[0076] 1. MbFKBP19. 0の製造
実施例 2で調製した発現ベクター pMbl9F2を大腸菌 BL21 (DE3)株に導入し、 形質転換体を得た。次に、実施例 5と同様にして、形質転換体を培養し、菌体回収後 、菌体懸濁液を 20°Cで凍結保存した。さらに、実施例 5と同様にして菌体懸濁液を 超音波処理し、その上清画分 (可溶性画分)を得た。上清画分 10 /z gを SDS - PAG Eに供したところ、 MbFKBP19. 0に相当する濃いバンドが検出され、 MbFKBP19 . 0が大量に可溶性画分に発現して 、ることが確認された。
[0077] 2. MbFKBP19. 0の精製
得られた上清画分を実施例 6と同様にして疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル 濾過法、及び、陰イオン交換クロマトグラフィーに供し、カラム精製を繰り返すことによ り、 MbFKBP19. 0をほぼ単一にまで精製した。
実施例 8
[0078] 本実施例では、 MaFKBP28. 0を製造した。
[0079] 実施例 5と同様にして、発現ベクター pMa28F2を含有する形質転換体の作製、培 養、菌体破砕、可溶性画分と沈殿画分の調製、及び SDS - PAGEを行った。図 4〖こ ゲルの写真を示す。図 4において、左側のレーンが可溶性画分であり、右側のレーン
が沈殿画分である。すなわち、 MaFKBP28. 0に相当するバンド (矢印)は、可溶性 画分のみに検出された。以上より、 MaFKBP28. 0は封入体になることなぐ可溶状 態で回収された。
実施例 9
[0080] 本実施例では、 MaFKBP17. 8が分子シャペロン活性を有することを確認した。
[0081] 6M 塩酸グァ-ジン及び 5mM DTTを含む 50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7 . 8)にロダネーゼを最終濃度 63 Mになるよう溶解し、 25°Cで 60分処理し、ロダネ ーゼを変性させた。得られた変性ロダネーゼ溶液を 10 M MaFKBP17. 8及び 1 OmM DTTを含む 50mM リン酸ナトリウム緩衝液 (pH7. 8)で 60倍に希釈し、そ のまま 45分間処理した。処理後、再生したロダネーゼの活性をホロピッチ(Methods in Molecular Biology 40, 361— 368 (1995) )の方法に従って評価した。再 生したロダネーゼ活性の値を、ネイティブ型ロダネーゼの活性を 100%とした相対値 で表し、分子シャペロン活性とした。対照として、 MaFKBP17. 8を添カ卩しなかった 溶液におけるロダネーゼの活性を測定した。結果を図 5に示す。すなわち、 MaFKB P17. 8非存在下では、ロダネーゼは 5%程度しか再生しなかったのに対し、 MaFK BP17. 8存在下では約 76%のロダネーゼが再生した。以上より、 MaFKBP17. 8の 作用によって変性ロダネーゼが正しく折り畳まれて正常型のロダネーゼに再生される ことが示された。
実施例 10
[0082] 本実施例では、 MaFKBP17. 8と超好熱菌(Aeropyrum pernix)由来ロダネー ゼカもなる融合タンパク質を発現することができる発現ベクターを構築した。さらに、 該発現ベクターを含有する形質転換体を作製した。さらに、該形質転換体を培養す ることにより、該融合タンパク質を製造した。さらに、疎水性相互作用クロマトグラフィ 一を用い、該培養物より該融合タンパク質を精製した。さらに、精製された該融合タン ノ ク質力もロダネーゼを切り出し、ロダネーゼを正常型タンパク質として取得した。
[0083] 1.発現ベクターの構築と形質転換体の作製
理化学研究所より入手した Aeropyrum pernix (JCM9820。 DSM11879と同じ 。)の菌ペレットを用いて実施例 1と同様の方法によりゲノム DNAを調製した。一方、
配列番号 40に示される公知の A. pernix由来ロダネーゼ遺伝子の塩基配列を参 考にして、 PCR用のプライマーとして配列番号 25に示される ApTS— F1プライマー 及び配列番号 26に示される ApTS-Rlプライマーを合成した。次に、得られたゲノム DNAを铸型とし、 ApTS— F1プライマー及び ApTS— R1プライマーをプライマー対と して PCRを行 、、 A. pernix由来ロダネーゼ遺伝子を増幅した。増幅された DNA 断片の塩基配列を確認したところ、公知の A. pernix由来ロダネーゼ遺伝子の塩 基配列と一致した。なお、増幅された DNA断片の両端には、 ApTS— F1の 5,末端 に由来する Ndelサイト及び ApTS— R1の 3 '末端に由来する Hindlllサイトが導入さ れた。次に、 A. pernix由来ロダネーゼ遺伝子を含む増幅 DNA断片を Ndel/Hi ndlllにて処理し、実施例 3で構築した発現ベクター pMal7F2の NdelZHindlllサ イトに挿入し、 MaFKBP17. 8と A. pernix由来ロダネーゼとの融合タンパク質を 発現することができる発現ベクターを構築した。すなわち、該発現べクタ一は、 T7プ 口モーターの下流に、順に、第 1コード領域となる MaFKBP17. 8遺伝子、トロンビン 認識アミノ酸配列をコードするアミノ酸配列、及び第 2コード領域となる A. pernix由 来ロダネーゼをコードする遺伝子を有する。よって、該発現べクタ一によれば、 MaF KBP17. 8と A. pernix由来ロダネーゼとの融合タンパク質を発現することができる 。また、発現される該融合タンパク質は、 MmFKBP17. 8と A. pernix由来ロダネ ーゼの間にトロンビン消化アミノ酸配列を有する。次に、構築した発現ベクターを大 腸菌 BL21 (DE3)株に導入し、形質転換体を作製した。
2.融合タンパク質の製造
作製した形質転換体を、実施例 5と同様の方法により培養、回収した後、菌体破砕 液の可溶性画分及び封入体画分を得た。実施例 5と同様にして可溶性画分と封入 体画分を SDS— PAGEに供し、 CBBにてゲルを染色した。ゲルの写真を図 6 (a)に 示す。すなわち、 MaFKBP17. 8と A. pernix由来ロダネーゼとの融合タンパク質( (図中では「MaFKBP17. 8_rho融合タンパク質」と表示))に相当するバンド (矢印) 1S 可溶性画分に認められた。以上より、 A. pernix由来ロダネーゼは MaFKBPl 7. 8との融合タンパク質とすることにより、封入体とはならず、可溶状態で合成された
[0085] 3.融合タンパク質の精製
得られた可溶性画分を実施例 5と同様の条件で疎水性相互作用クロマトグラフィー 及びゲル濾過の順でカラム精製を繰り返すことにより、 MaFKBP17. 8と A. perni x由来ロダネーゼの融合タンパク質を精製した。
[0086] 4.ロダネーゼの製造
精製した融合タンパク質 lmg当たりに 1Uのトロンビンをカ卩え、 22°Cにて 16時間処 理した。反応液を SDS— PAGEに供し、 CBBにてゲルを染色した。ゲルの写真を図 6 (b)に示す。左側のレーンはトロンビン添加前、右側のレーンはトロンビン添加'処理 後の試料である。すなわち、トロンビン添カ卩前の試料では MaFKBP17. 8と A. per nix由来ロダネーゼとの融合タンパク質のみが検出された力 トロンビン添加'処理後 の試料では当該融合タンパク質は検出されず、ロダネーゼに相当するバンドと MaF KBP17. 8に相当するバンドが検出された。以上より、 MaFKBP17. 8と A. perni x由来ロダネーゼとの融合タンパク質のトロンビン認識サイトが切断され、ロダネーゼ が切り出されて ヽることが確認された。
[0087] 比較例として、以下の手順で A. pernix由来ロダネーゼ遺伝子を単独で発現させ た。実施例 10で調製した A. pernix由来ロダネーゼ遺伝子の NdelZHindlll消化 産物を、あらかじめ NdelZHindlllにより処理してお!、た pET21aプラスミド DNAに 挿入し、 A. pernix由来ロダネーゼを単独で発現する発現ベクターを構築した。得 られた発現ベクターを大腸菌 E. coli BL21 (DE3)株に導入し、形質転換体を作製 した。作製した形質転換体を実施例 4と同様の方法で培養 '回収し、得られた菌体破 砕液の可溶性画分及び封入体画分を SDS— PAGEに供し、 CBBにてゲルを染色し た。ゲルの写真を図 6 (c)に示す。左側のレーンは可溶性画分、右側のレーンは沈殿 画分である。すなわち、 A. pernix由来ロダネーゼ (矢印)は封入体画分にのみ検 出され、可溶性画分にはほとんど検出されな力つた
以上より、 A. pernix由来ロダネーゼは、大腸菌内で単独で発現させると封入体と なるが、 MaFKBP17. 8との融合タンパク質にすると、封入体とならず、可溶性画分 に合成されることが分力ゝつた。
実施例 11
[0088] 本実施例では、 MaFKBP17. 8と Fab抗体断片からなる融合タンパク質を発現す ることができる発現ベクターを構築した。さらに、該発現ベクターを含有する形質転換 体を作製した。さらに、該形質転換体を培養することにより、該融合タンパク質を製造 した。
[0089] 1.発現ベクターの構築と形質転換体の作製
マウス由来 anti— HEL Fab抗体断片の発現ベクター pEHELFab—l (Ideno、 Ap pi. Env. Microbiol. 68、 464—、 2002)を NdelZBpull02Iにより処理し、ァ ガローズゲル電気泳動により、 anti-HEL Fab抗体断片の遺伝子断片を精製した。 なお、この遺伝子断片は、 Fab抗体断片の重鎖をコードする遺伝子と Fab抗体断片 の軽鎖をコードする遺伝子とが並んで配置され、転写によってポリシスト口ニックな m RNAが合成されるが、翻訳は別々に行われ、 Fab抗体断片の重鎖と軽鎖とが融合タ ンパク質としてではなくそれぞれが単独で合成される。次に、実施例 3で構築した発 現ベクター pMal7F2の NdelZBpul l02Iサイトに、得られた anti— HEL Fab抗 体断片の遺伝子断片を挿入することにより、 MaFKBP17. 8と Fab抗体断片の重鎖 との融合タンパク質を発現することができる発現ベクターを構築した。すなわち、該発 現ベクターは、 T7プロモーターの下流に、順に、第 1コード領域となる MaFKBP17 . 8遺伝子、トロンビン認識アミノ酸配列をコードするアミノ酸配列、及び第 2コード領 域となる Fab抗体断片の重鎖をコードする遺伝子を有する。よって、該発現ベクター によれば、 MaFKBP17. 8と Fab抗体断片の重鎖との融合タンパク質を発現すること ができる。また、発現される該融合タンパク質は、 MaFKBP17. 8と Fab抗体断片の 重鎖との間にトロンビン消化アミノ酸配列を有する。なお、 Fab抗体断片の重鎖をコ ードする遺伝子の下流に位置している Fab抗体断片の軽鎖をコードする遺伝子によ り、 Fab抗体断片の軽鎖は単独で合成される。次に、構築した発現ベクターを大腸菌 BL21 (DE3)株に導入し、形質転換体を作製した。
[0090] 2.融合タンパク質の製造
作製した形質転換体を、実施例 5と同様の方法により培養、回収した後、菌体破砕 液の可溶性画分及び封入体画分を得た。実施例 5と同様にして可溶性画分と封入 体画分を SDS— PAGEに供し、 CBBにてゲルを染色した。その結果、可溶性画分に
MaFKBP17. 8と Fab重鎖の融合タンパク質のメジャーバンドが認められた。 CBB 染色した可溶性画分の電気泳動像から、該融合タンパク質のバンド密度をデンシトメ ータで測定した結果、大腸菌由来全可溶性タンパク質の約 19 %が該融合タンパク質 であり、該融合タンパクが大量に製造されていた。なお、 Fabの軽鎖部分に相当する バンドは認められなかった。
[0091] 比較例として、以下の手順で Fab抗体断片遺伝子を単独で発現させた。実施例 11 で調製した Fab抗体断片遺伝子の NdelZBpul 1021消化産物を、あらかじめ Ndel /Bpul 1021により処理しておいた pET21aプラスミド DNAに挿入し、 Fab抗体断片 を単独で発現する発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを大腸菌 BL21 ( DE3)株に導入し、形質転換体を作製した。作製した形質転換体を実施例 5と同様 の方法で培養'回収し、得られた菌体破砕液の可溶性画分及び封入体画分を SDS PAGEに供した。その結果、 Fab抗体断片の重鎖は封入体画分にのみ検出された 。以上より、 Fab抗体断片の重鎖は、大腸菌内で単独で発現させると封入体となるが 、 MaFKBP17. 8との融合タンパク質にすると、封入体とならず、可溶性画分に合成 されることが分力つた。
実施例 12
[0092] 本実施例では、 MaFKBP17. 8と scFv抗体断片からなる融合タンパク質を発現す ることができる発現ベクターを構築した。さらに、該発現ベクターを含有する形質転換 体を作製した。さらに、該形質転換体を培養することにより、該融合タンパク質を製造 した。
[0093] 1.発現ベクターの構築と形質転換体の作製
PCR用のプライマーとして配列番号 27に示される SCF— F3プライマー及び配列番 号 28に示される SCF-R3プライマーを合成した。次に、プラスミド pAALSC (伊庭ら
1997、 Gene 194、 35—)を铸型とし、 SCF— F3プライマー及び SCF— R3プライ マーをプライマー対として PCRを行い、マウス由来 anti—-ヮトリリゾチーム(HEL) s cFv抗体断片(D1. 3)遺伝子を増幅した。増幅された遺伝子を TAクローユングによ り、 pT7ブルーベクター(Novagen社)に挿入し、 Ndel/Notl処理後、実施例 3で 構築した pMal7F2の Ndel/Notlサイトに挿入して、 MaFKBP17. 8と scFv抗体
断片との融合タンパク質を発現することができる発現ベクターを構築した。すなわち、 該発現べクタ一は、 T7プロモーターの下流に、順に、第 1コード領域となる MaFKB P17. 8遺伝子、トロンビン認識アミノ酸配列をコードするアミノ酸配列、及び第 2コー ド領域となる scFv抗体断片をコードする遺伝子を有する。よって、該発現べクタ一に よれば、 MaFKBP17. 8と scFv抗体断片との融合タンパク質を発現することができる 。また、発現される該融合タンパク質は、 MaFKBP17. 8と scFv抗体断片の間にトロ ンビン消化アミノ酸配列を有する。次に、構築した発現ベクターを大腸菌 BL21 (DE 3)株に導入し、形質転換体を作製した。
[0094] 作製した形質転換体を、実施例 5と同様の方法により培養、回収した後、菌体破砕 液の可溶性画分及び封入体画分を得た。実施例 5と同様にして可溶性画分と封入 体画分を SDS— PAGEに供し、ゲルを CBBにて染色した。その結果、可溶性画分に 、 MaFKBP17. 8とマウス由来 antl— HEL scFv抗体断片の融合タンパク質のメジ ヤーバンドが認められた。 CBB染色した可溶性画分の電気泳動像から、該融合タン ノ ク質のバンド密度をデンシトメータで測定した結果、大腸菌由来全可溶性タンパク 質の約 18%が該融合タンパク質であり、該融合タンパクが大量に製造されていた。
[0095] 比較例として、以下の手順でマウス由来 anti— HEL scFv抗体断片(D1. 3)を単 体で発現させた。実施例 12で調製したマウス由来 anti—二ヮトリリゾチーム (HEL) sc Fv抗体フラグメント (D1. 3)遺伝子断片を、あら力じめ制限酵素 NdelZBpul l02I 処理してお!、た pET21aプラスミド DNAに挿入し、 scFv抗体を単独で発現する発現 ベクターを調製した。得られた発現ベクターを大腸菌 BL21 (DE3)株に導入し、形質 転換体を作製した。得られた形質転換体を実施例 5と同様の方法で培養'回収し、得 られた菌体破砕液の可溶性画分及び封入体画分を SDS— PAGEに供し、ゲルを CB Bにて染色した。その結果、マウス由来 anti— HEL scFv抗体は可溶画分にはほと んど発現せず、封入体画分に凝集体として発現することがわかった。以上より、マウス 由来 anti— HEL scFv抗体断片は、大腸菌内で単独で発現させると封入体となるが 、 MaFKBP17. 8との融合タンパク質にすると、封入体とならず、可溶性画分に合成 されることが分力つた。
実施例 13
[0096] 本実施例では、 MaFKBP17. 8とヒト由来セロトニン(HTla)レセプターからなる融 合タンパク質を発現することができる発現ベクターを構築した。さらに、該発現べクタ 一を含有する形質転換体を作製した。さらに、該形質転換体を培養することにより、 該融合タンパク質を製造した。
[0097] 1.発現ベクターの構築と形質転換体の作製
公知の HTlaレセプター遺伝子の塩基配列情報(NCBIコード: HSSERR51)をも とに、 PCR用のプライマーとして配列番号 29に示される HTla— F1プライマー及び 配列番号 30に示される HTla— R1プライマーを合成した。次に、ヒト胎盤 cDNAライ ブラリー(タカラバイオ社)を铸型とし、 HTla-Flプライマー及び HTla-Rlプライマ 一をプライマー対として PCRを行い、 HTlaレセプター遺伝子を増幅した。増幅され た DNA断片を pT7ブルー Tベクターに挿入後、その塩基配列を確認したところ、デ ータベースの登録情報と一致した。なお、増幅された DNA断片の両端には、 HTla F 1の 5 '末端に由来する Ndelサイト及び HT1 a— R 1の 3 '末端に由来する Notlサイ トが導入された。次に、 HTlaレセプター遺伝子を含む増幅 DNA断片を NdelZNo tlにて処理し、実施例 3で構築した発現ベクター pMal7F2の NdelZNotlサイトに 挿入し、 MaFKBP17. 8と HTlaレセプターとの融合タンパク質を発現することがで きる発現ベクターを構築した。すなわち、該発現べクタ一は、 T7プロモーターの下流 に、順に、第 1コード領域となる MaFKBP17. 8遺伝子、トロンビン認識アミノ酸配列 をコードするアミノ酸配列、及び第 2コード領域となる HTlaレセプターをコードする遺 伝子を有する。よって、該発現べクタ一によれば、 MaFKBP17. 8と HTlaレセプタ 一との融合タンパク質を発現することができる。また、発現される該融合タンパク質は 、 MaFKBP17. 8と HTlaレセプターの間にトロンビン消化アミノ酸配列を有する。次 に、構築した発現ベクターを大腸菌 BL21 (DE3)株に導入し、形質転換体を作製し た。
[0098] 2.融合タンパク質の製造
作製した形質転換体を、実施例 5と同様の方法により培養、回収した後、菌体破砕 液の可溶性画分及び封入体画分を得た。実施例 5と同様にして可溶性画分と封入 体画分を SDS— PAGEに供した。融合タンパク質の検出は、 CBBによるゲル染色と、
抗セロトニンレセプター抗体を用いたウェスタンブロッテイング法の両方を行った。そ の結果、可溶性画分にのみ MaFKBP17. 8と HTlaレセプターの融合タンパク質が 検出された。 CBB染色した可溶性画分の電気泳動像から、該融合タンパク質のバン ド密度をデンシトメータで測定した結果、大腸菌由来全可溶性タンパク質の約 2%が 該融合タンパク質であった。
実施例 14
[0099] 本実施例では、 MaFKBP17. 8と scFv抗体断片を宿主細胞内で共発現させて、 s cFv抗体断片を製造した。
[0100] 実施例 12と同様にして、マウス由来 anti— HEL scFv抗体断片の遺伝子を増幅し た。この増幅 DNA断片を pT7ブルー Tベクターに挿入し、 NdelZNotl処理後、あら かじめ Ndel/Notlにより処理してお!、た pET21aプラスミド DNAに挿入し、上記 sc Fvの発現ベクター pETscFvを構築した。次に、 pETscFvを铸型とし、配列番号 35 に示される T7— F1プライマーと配列番号 36に示される T7— R1プライマーをプライマ 一対として PCRを行!、、上記 scFv遺伝子及び T7プロモーター部を含む scFvの発 現ユニット DNA断片を増幅した。なお、増幅された DNA断片の両端には、 T7-F1 プライマーの 5'末端に由来する Sph Iサイト及び T7— R1プライマーの 3'末端に由来 する BamHIサイトが導入された。この増幅 DNA断片を TAクロー-ングにより pT7ブ ルー Τベクターに挿入した後、制限酵素 SphlZBamHIで処理後、 pACYC184ブラ スミド(和光純薬社)の SphlZBamHIサイトに挿入し、共発現用ベクター pACscFv を構築した。
[0101] 2種類のベクター、すなわち、共発現用ベクター pACscFvと実施例 3で調製した発 現ベクター pMal7F2を、コンビテントセル大腸菌 JM109 (DE3)株に導入し、 100 μ gZmLアンピシリン及び 100 μ gZmLクロラムフエ-コールを含む LB寒天培地に て培養した。得られたコロニーを、 100 μ g/mLアンピシリン及び 100 μ gZmLクロ ラムフエ-コールを含む 2 XYT培地 700 mLに接種した。 35°Cで回転培養(110 rp m)した後、 OD600力 . 6となった時点で lOOmM IPTGを 7mL添カ卩し、培養温度 を 20°Cに下げてさらに約 18時間培養し、 MaFKBP17. 8及びマウス由来 anti— HE L scFv抗体断片の発現を誘導した。培養終了後、遠心分離(10000 rpmX 10分
)にて菌体を回収した。回収した菌体を 1 mM EDTAを含む 25 mM HEPES緩 衝液 (pH6. 8) 20 mLに懸濁し、— 20°Cにてー晚凍結保存した。菌体を融解し、超 音波破砕を行って上清 (可溶画分)及び沈澱画分に分離し、それぞれを SDS - PAG Eに供し、 CBBにて染色した。一方、比較例として、 pACscFvのみを導入した組換え 大腸菌についても同様の操作を行った。その結果、 pACscFvのみを導入した組換 え大腸菌では scFv抗体断片は全て沈殿画分に検出されたが、 pACscFvと pMal7 F2の両方を導入した組換え大腸菌では、 scFv抗体断片は上清画分に検出された。 以上より、 MaFKBP17. 8と共発現させることにより、 scFvは可溶性画分に発現させ ることが可能となった。
実施例 15
[0102] 本実施例では、 MaFKBP28. 0と scFv抗体断片からなる融合タンパク質を発現す ることができる発現ベクターを構築した。さらに、該発現べクタ一含有する形質転換体 を作製した。さらに、該形質転換体を培養することにより、該融合タンパク質を製造し た。
[0103] 1.発現ベクターの構築
実施例 12で調製した scFv抗体断片遺伝子を含む増幅 DNA断片を NdelZNotl にて処理し、実施例 4で構築した発現ベクター pMa28F2の Ndel/Notlサイトに揷 入し、 MaFKBP28. 0と scFv抗体断片との融合タンパク質を発現することができる発 現ベクター Ma28F2—scFvを構築した。すなわち、発現ベクター Ma28F2—scFvは 、 T7プロモーターの下流に、順に、第 1コード領域となる MaFKBP28. 0遺伝子、ト ロンビン認識アミノ酸配列をコードするアミノ酸配列、及び第 2コード領域となる scFv 抗体断片をコードする遺伝子を有する。よって、該発現べクタ一によれば、 MaFKB P28. 0と scFv抗体断片との融合タンパク質を発現することができる。また、発現され る該融合タンパク質は、 MaFKBP28. 0と scFv抗体断片の間にトロンビン消化アミノ 酸配列を有する。次に、構築した発現ベクター Ma28F2-scFvを大腸菌 BL21 (DE 3)株に導入し、形質転換体を作製した。
[0104] 2.融合タンパク質の製造
作製した形質転換体を、実施例 5と同様の方法により培養、回収した後、菌体破砕
液の可溶性画分及び封入体画分を得た。実施例 5と同様にして可溶性画分と封入 体画分を SDS— PAGEに供し、 CBBにてゲルを染色した。ゲルの写真を図 7 (a)に 示す。すなわち、 MaFKBP28. 0と scFv抗体断片との融合タンパク質(図中では「M aFKBP28. O-scFv融合タンパク質」と表示)に相当するバンド (矢印)が、可溶性画 分に認められた。以上より、 scFv抗体断片は MaFKBP28. 0との融合タンパク質と することにより、封入体とはならず、可溶状態で合成された。
実施例 16
[0105] 本実施例では、 MaFKBP28. 0と A. pernix由来ロダネーゼからなる融合タンパ ク質を発現することができる発現ベクターを構築した。さらに、該発現ベクター含有す る形質転換体を作製した。さらに、該形質転換体を培養することにより、該融合タンパ ク質を製造した。
[0106] 1.発現ベクターの構築と形質転換体の作製
実施例 10で調製した A. pernix由来ロダネーゼ遺伝子を含む増幅 DNA断片を NdelZHindlllにて処理し、実施例 4で構築した発現ベクター pMa28F2の NdelZ Hindlllサイトに挿入し、 MaFKBP28. 0と A. pernix由来ロダネーゼとの融合タン ノ ク質を発現することができる発現ベクター pMa28F2-rhoを構築した。すなわち、 発現ベクター pMa28F2— rhoは、 T7プロモーターの下流に、順に、第 1コード領域と なる MaFKBP28. 0遺伝子、トロンビン認識アミノ酸配列をコードするアミノ酸配列、 及び第 2コード領域となる A. pernix由来ロダネーゼをコードする遺伝子を有する。 よって、該発現べクタ一によれば、 MaFKBP28. 0と A. pernix由来ロダネーゼと の融合タンパク質を発現することができる。また、発現される該融合タンパク質は、 M aFKBP28. 0と A. pernix由来ロダネーゼの間にトロンビン消化アミノ酸配列を有 する。次に、構築した発現ベクター pMa28F2-rhoを大腸菌 BL21 (DE3)株に導入 し、形質転換体を作製した。
[0107] 2.融合タンパク質の製造
作製した形質転換体を、実施例 5と同様の方法により培養、回収した後、菌体破砕 液の可溶性画分及び封入体画分を得た。実施例 5と同様にして可溶性画分と封入 体画分を SDS— PAGEに供し、 CBBにてゲルを染色した。ゲルの写真を図 7 (b)に
示す。すなわち、 MaFKBP28. 0と A. pernix由来ロダネーゼとの融合タンパク質( 図中では「MaFKBP28. O_rho融合タンパク質」と表示)に相当するバンド (矢印)が 、可溶性画分に認められた。以上より、 A. pernix由来ロダネーゼは MaFKBP28 . 0との融合タンパク質とすることにより、封入体とはならず、可溶状態で合成された。 実施例 17
[0108] 本実施例では、 MaFKBP28. 0とォワンクラゲ由来天然型 GFP (Green fluoresc ent protein)力 なる融合タンパク質を発現することができる発現ベクターを構築し た。さらに、該発現ベクターを含有する形質転換体を作製した。さらに、該形質転換 体を培養することにより、該融合タンパク質を製造した。
[0109] 1.発現ベクターの構築と形質転換体の作製
PCR用のプライマーとして配列番号 31に示される GFP— F1プライマー及び配列番 号 32に示される GFP-R1プライマーを合成した。次に、ォワンクラゲ由来天然型 GF P遺伝子を含む発現ベクターであるコントロールベクター GFP (ロシュダイァグノスティ ックス社製 Cell- free protein translation systemキットに含まれているもの)を 铸型とし、 GFP— F1プライマー及び GFP— R1プライマーをプライマー対として PCR を行い、ォワンクラゲ由来天然型 GFP遺伝子を増幅した。なお、増幅された DNA断 片の両端には、 GFP— F 1の 5 '末端に由来する BamHIサイト及び GFP— R1の 3 '末 端に由来する EcoRIサイトが導入された。増幅された DNA断片を TAクローユングに より pT7ブルーベクターに挿入し、塩基配列を確認したところ、データベースに登録 されて ヽるォワンクラゲ由来天然型 GFP遺伝子の塩基配列と一致した。増幅された DNA断片を BamHlZEcoRIで処理後、実施例 4で構築した pMa28F2の BamHI /EcoRIでサイトに挿入して、 MaFKBP28. 0とォワンクラゲ由来天然型 GFPとの 融合タンパク質を発現することができる発現ベクターを構築した。すなわち、該発現 ベクターは、 T7プロモーターの下流に、順に、第 1コード領域となる MaFKBP28. 0 遺伝子、トロンビン認識アミノ酸配列をコードするアミノ酸配列、及び第 2コード領域と なるォワンクラゲ由来天然型 GFPをコードする遺伝子を有する。よって、該発現べク ターによれば、 MaFKBP28. 0とォワンクラゲ由来天然型 GFPとの融合タンパク質を 発現することができる。また、発現される該融合タンパク質は、 MaFKBP28. 0とォヮ
ンクラゲ由来天然型 GFPの間にトロンビン消化アミノ酸配列を有する。次に、構築し た発現ベクターを大腸菌 BL21 (DE3)株に導入し、形質転換体を作製した。
[0110] 2.融合タンパク質の製造
作製した形質転換体を、実施例 5と同様の方法 (ただし、培養温度は 15°C)により 培養、回収した後、菌体破砕液の可溶性画分及び封入体画分を得た。実施例 5と同 様にして可溶性画分と封入体画分を SDS— PAGEに供し、 CBBによりゲルを染色し た。ゲルの写真を図 7 (c)に示す。すなわち、 MaFKBP28. 0とォワンクラゲ由来天 然型 GFPとの融合タンパク質(図中では「MaFKBP28. 0- GFP融合タンパク質」と 表示)に相当するバンド (矢印)が、可溶性画分に認められた。以上より、ォワンクラゲ 由来天然型 GFPは MaFKBP28. 0との融合タンパク質とすることにより、封入体とは ならず、可溶状態で合成された。 CBB染色した可溶性画分の電気泳動像から、該融 合タンパク質のバンド密度をデンシトメータで測定した結果、大腸菌由来全可溶性タ ンパク質の約 28%が該融合タンパク質であり、大量に発現していた。
[0111] 比較例として、超好熱古細菌由来 FKBP型 PPIaseで同様の操作を行った。すなわ ち、超好熱性古細菌 Thermococcus sp. KS—l由来ショートタイプ FKBP型 PPIas e (TcFKBP18)の発現プラスミド pEFEl— 3 (Iidaゝ Gene 222、 249—、 1998)を铸 型とし、配列番号 33に示される TcFu-Flプライマー及び配列番号 34に示される Tc Fu— R2プライマーをプライマー対として PCRを行 、、 TcFKBP18遺伝子を含む DN A断片を増幅した。なお、増幅された DNA断片の両端には、 TcFu— F1の 5'末端に 由来する Ncolサイト及び TcFu— R2の 3 '末端に由来する Spelサイトが導入された。 増幅された DNA断片を pT7ブルー Tベクターに挿入して塩基配列を確認したところ 、データベースに登録されている塩基配列と一致した。増幅された DNA断片を制限 酵素 NcolZSpelで処理後、実施例 3で構築した pMa 17F2の NcolZSpelにサイト に挿入して、 TcFKBP18とォワンクラゲ由来天然型 GFPとの融合タンパク質を発現 することができる発現ベクターを構築した。すなわち、この発現ベクターは実施例 17 で構築した発現ベクターの MaFKBP28. 0遺伝子が TcFKBP18遺伝子に置き換 わったものである。この発現ベクターを用いて実施例 17と同様にして、形質転換体の 作製、培養、及び菌体破砕物の SDS-PAGEを行った。その結果、実施例 17と同様
に、可溶性画分に TcFKBP 18とォワンクラゲ由来天然型 GFPの融合タンパク質が 検出された。 CBB染色した可溶性画分の電気泳動像から、該融合タンパク質のバン ド密度をデンシトメータで測定した結果、大腸菌由来全可溶性タンパク質の約 19% が該融合タンパク質であり、大量に発現していた。
[0112] 実施例 17と上記比較例の各融合タンパク質の濃度を同一とした溶液試料を調製し 、 UVBを照射した。その結果、いずれの試料も蛍光を発した力 MaFKBP28. 0と の融合タンパク質を含む試料の蛍光強度は、 TcFKBP18との融合タンパク質を含 む試料の蛍光強度の約 2倍であった。以上より、可溶性画分力 得られた FKBP型 P Plaseとォワンクラゲ由来天然型 GFPとの融合タンパク質において、 MaFKBP28. 0 との融合タンパク質の方が TcFKBP18との融合タンパク質に比べて、より多くのォヮ ンクラゲ由来天然型 GFPが正しく折り畳まれた。
[0113] 以下の表に、上記した実施例で用いた PCR用のプライマーの塩基配列、制限酵素 サイト、及び配列番号をまとめて記載した。
[表 1]
制限酵素 プライマ一 塩基配列 配列番号 サイト ml8-F1 5' -GGCCATGGGATTGATTGTTATGACTGAG-3' Nco\ 19
Hm18-R1 5' -CCACTAGTTCATTCCTCCACTG-3' Spe\ 20
Mb19-F1 5" -GGGCATGCGATTCTCGTTTGTTTTATTGATTTTTATG-3' Sph\ 21
Mb19-R1 5' -CCACTAGTTCACTCCTCCAC-3 ' Spe\ 22
Ma17.8-F1 5 ' -GGCCATGGGAACTGAAGAGACAATTAAAAAC-3, Nco\ 23
Ha17.8-R1 5' -CCACTAGTTTATGCCTCCAATG-3' Spe\ 24
ApTS-F1 5' - GGCATATGTCGAGGC丌 GGCGTAGA- 3' Nde\ 25
ApTS-R1 5' -CTGAATTCTCAGGGTTCGTCCCCCTTCT-3' / "dil l 26
SCF-F3 5' -ATCATATGAAATACCTATTGCCTACG-3' Nde\ 27
SCF-R3 5 ' -ATGCGGCCGCCTATTACTCCAGCTTGGTCCCTC-3 ' Not\ 28
HT1a-F1 5' -ATCATATGGATGTGCTCAGCC-3' Nde\ 29
HT1a-R1 5' -ATGCGGCCGCCTAGCCGCCAG-3 ' Not\ 30
GFP-F1 5' -GGGGATCCAGTAAAGGAGAAGAACTTTTCACT-3' BamW\ 31
GFP-R1 5' -CCGAATTCTTATTTGTATAGTTCATCCATGCCATG-3' EcoRi 32
Tcfu- F1 5' -GGCCATGGGAAAAGTTGAAGCTGGTGAT-3' Nco\ 33
Tcfu - R2 5' -CCACTAGTAGCTTCTGAGTCCTCTTC-3' Spe\ 34
T7-F1 5' -GCATGCTAATACGACTCACTATA-3 ' Sph\ 35
T7-R1 5' -GGATCCCAAAAAACCCCTC-3' BamW\ 36
Ha28-F1 5' -ACCCATGGGTGCAATTCAGAAAGGCGATTT-3' Nco\ 37
Ma28-R1 5' -GGACTAGTTTCATGGGATTCTGAAGTCTCTTC-3* Spe\ 38
※アンダーラインは制限酵素サイトを示す。