WO2005028161A1

WO2005028161A1 - セキュリティナット締結用工具、セキュリティナット解除用工具、セキュリティナット締結兼解除用工具、およびこれらの工具専用のセキュリティナット

Info

Publication number: WO2005028161A1
Application number: PCT/JP2004/013746
Authority: WO
Inventors: Katsuo Ito
Original assignee: Koyokizai Co.,Ltd.
Priority date: 2003-09-24
Filing date: 2004-09-21
Publication date: 2005-03-31
Also published as: JP4431773B2; JPWO2005028161A1; AU2004274305A1; US20060162507A1; EP1676675A1; US7219582B2; EP1676675A4

Description

明細書

セキュリティナット締結用工具、セキュリティナット解除用工具、セキュリティナット締結兼解除用工具、およびこれらの工具専用のセキュリティナット

技術分野

[0001] 本発明は、テーパーナット等の防犯用の特殊形状ナットの締め付けや解除に使用される工具およびセキュリティナットに関し、特に、通常の工具では不可能な円錐台形状を備えたセキュリティナットの締め付けや取り外しに好適な工具およびこの工具専用のセキュリティナットに関するものである。

背景技術

[0002] 締結具として使用されるボルトのヘッドやナットは、通常、六角形などの多角形状に形成されており、一般人力 Sスパナやモンキーレンチなどの市販工具を使用することで容易に緩められる。このため、近年、いたずら目的で鉄道レールの締結部分が外されたり、自動販売機の固定部分が外されて盗難されると！ヽぅ事件が発生して!/ヽる。

[0003] このような問題を解決するため、例えば、特開 2000— 205225号公報には、一般人が容易に取り外せないボルトおよびナットが開示されている（特許文献 1)。この発明では、ボルトのヘッドやナットが多角形または非円弧状の外輪郭に形成されており、この外輪郭の面が上方から下方にかけて拡がるように傾斜されている。そして、これらの各傾斜面と面接触する傾斜壁が形成された専用締結工具を用いて締め付けておけば、市販の工具では、傾斜した外輪郭を把持できないため、防犯効果が得られるとされている。

[0004] 特許文献 1：特開 2000— 205225号公報

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0005] しかしながら、特開 2000— 205225号公報に記載された発明においては、締め付けの回転トルクは、専用締結工具に形成された傾斜壁と、ボルトやナットの傾斜面との係合だけによつて伝達される。従って、ボルトやナットの外輪郭は専用締結工具を弓 Iつ掛けるために多角形状または任意の非円弧状に形成しなければならな、。本来であれば、最も回転させ難くて防犯効果の高い円錐台形状に形成したいところである力円錐台形状にすれば引っ掛かりが形成されず、前記専用締結工具によって回転させられないという問題がある。しかも多角形状に形成するのは製造工程が複雑になり、手間やコストがかかるため実用性がない。

[0006] また、防犯効果を高める一方で、便宜上、自動販売機の移動する際にはナットゃボルトを取り外せなければならない。この場合、取り外すためのトルクは締め付けるためのトルクよりも大きい力が必要であるが、前記先行技術に記載のナットや専用締結ェ具では、取り外すことは考慮されておらず、回転トルクが伝わりにくいことから取り外すのが極めて難し!/ヽとヽぅ問題がある。

[0007] さらに、防犯効果を高めるためには、通常のナットの締結 '解除に使用されるスパナやモンキーレンチだけではなぐペンチやプライヤー等の工具を使っても簡単に取り外せるものであってはならない。

[0008] 本発明は、このような問題点を解決するために、セキュリティナットの締め付けが容易であること、通常の工具を使っても簡単に取り外せないこと、専用工具を使えば簡単に取り外せることの、ずれかが可能なセキュリティナット締結用工具、セキュリティナット解除用工具、セキュリティナット締結兼解除用工具、およびこれらの工具専用のセキュリティナットを提供することを目的として、る。

課題を解決するための手段

[0009] 本発明に係るセキュリティナット締結用工具の特徴は、略円錐台形状に形成されたセキュリティナットをボルトに螺合させて締め付けるために使用するセキュリティナット締結用工具であって、前記セキュリティナットの外周テーパ面を収容する内空間を備えた中空体部と、この中空体部の上部に突出形成された回転用把持部と、この回転用把持部の軸線に沿って前記中空体部の内空間に連通されており前記セキュリティナットの頭部力突出するボルトに螺合する頭部雌ねじ部と、前記中空体部の内壁面に固定されており前記セキュリティナットの外周テーパ面に合わせてほぼ同一の傾斜角度に形成された内周テーパ面を備え、かつ弾力性を備えた弾力性摩擦部材とを有する点、にある。

[0010] そして、このような構成を採用したことにより、セキュリティナットの外周テーパ面に合わせて中空体部を重ねてボルトに頭部雌ねじ部を螺合させながら回転用把持部をレンチ等によって回転させると、締結用補助具が頭部雌ねじ部を介してボルトの雄ねじ部に案内されて締め付け方向に進行し、この締め付けによって弾力性摩擦部材をセキユリティナットの外周テーパ面に押圧し、両者間に弾力的に摩擦力を発生させ、この摩擦力によりセキュリティナットに回転力を伝達して締め付ける。このとき前記テーパ面間は、弾力性を備えた弾力性摩擦部材によって摩擦力を発生させるため食い込んでしまうことがなぐ締結補助金具を取り外す方向に回転させてもセキュリティナットを共回りさせることはない。

[0011] また、本発明に係るセキュリティナット解除用工具の特徴は、略円錐台形状を備えたセキュリティナットをボルトから取り外す際に使用するセキュリティナット解除用工具であって、前記セキュリティナットの外周テーパ面を収容する内空間を備えていると共にその外周テーパ面に合わせてほぼ同一の傾斜角度に形成された内壁面を有する中空体部と、この中空体部の上部に突出形成された回転用把持部と、この回転用把持部の軸線に沿って前記中空体部の内空間に連通されており前記セキュリティナットの頭部力突出しているボルトに螺合する頭部雌ねじ部とを有しており、前記中空体部には、外側面力前記内空間へ貫通された側部雌ねじ孔が形成されていると共に、この側部雌ねじ孔にねじ込まれて前記セキュリティナットの外周テーパ面に係合する係合ねじが備えられて、る点にある。

[0012] そして、このような構成を採用したことにより、セキュリティナットを取り外す場合、セキユリティナットが螺合しているボルトの雄ねじ部に頭部雌ねじ部を螺合させて固定しておき、係合ねじを側部雌ねじ孔内に挿入して前記セキュリティナットの外周テーパ面に食い込ませ、中空体部の回転動作に連動し得るように一体ィ匕するので、この状態で回転用把持部を取り外し方向に回転させると、回転力をセキュリティナツトに伝達でき、セキュリティナットの締結を解除する。

[0013] また、本発明に係るセキュリティナット締結兼解除用工具の特徴は、略円錐台形状を備えたセキュリティナットをボルトに締め付ける際あるいは締結を解除する際に使用するセキュリティナット締結兼解除用工具であって、前記セキュリティナットの外周テ一パ面を収容する内空間を備えた中空体部と、この中空体部の上部に突出形成された回転用把持部と、この回転用把持部の軸線に沿って前記中空体部の内空間に連通されており前記セキュリティナットの頭部から突出しているボルトに螺合する頭部雌ねじ部と、前記中空体部の内壁面に固定され前記セキュリティナットの外周テーパ面に合わせてほぼ同一の傾斜角度に形成された内周テーパ面を備え、かつ弾力性を備えた弾力性摩擦部材とを有しており、前記中空体部には、外側面から前記内空間へ貫通された側部雌ねじ孔が形成されて、ると共に、この側部雌ねじ孔に連通するように前記摩擦部材にねじ挿入孔が形成されており、前記側部雌ねじ孔にねじ込まれて前記ねじ挿入孔を介して前記セキュリティナットの外周テーパ面に係合する係合ねじが備えられている点にある。

[0014] そして、このような構成を採用したことにより、締結する場合には、頭部雌ねじ部をボルト雄ねじ部に螺合させて各テーパ面を当接しておき、回転用把持部を回転させて中空体部に締め付け方向の回転力を付与すると、頭部雌ねじ部とボルトの雄ねじ部との螺合により弾力性摩擦部材をセキュリティナットの外周テーパ面に弾力を持って押圧して両者間に摩擦力を発生させ、この摩擦力によりセキュリティナットに回転力を伝達してセキュリティナットを締め付ける。また、解除する場合、頭部雌ねじ部をボルトの雄ねじ部に螺合させて固定し、係合ねじをセキュリティナットの外周テーパ面に係止させて中空体部と一体ィヒさせるので、この状態で、回転用把持部を回転させて中空体部に取り外し方向の回転力を付与すると、係合ねじがセキュリティナットの外周テーパ面を把持して回転力を伝達し、セキュリティナットの締結を解除する。

[0015] また、本発明に係るセキュリティナットの特徴は、請求項 1乃至請求項 3のいずれかに記載された工具によって締め付け、および解除するための外周テーパ面を備えたセキュリティナットであって、その外周テーパ面のテーパ角度が当該セキュリティナットの軸線方向に対して 27° — 30° の範囲に形成されている点にある。

[0016] そして、このような構成を採用したことにより、 27° 以上に形成された外周テーパ面は、通常のペンチやプライヤーでは回転させられず、セキュリティナットの取り外しを極めて困難にさせる。また、 30° 以下に形成された外周テーパ面は、弾力性摩擦部材から受ける摩擦力や、係合ねじから受ける係止力のうち、軸線に垂直な成分を確保して外周テーパ面を確実に回転させる。し力もセキュリティナットの外径をあまり大きくしなくても軸線方向の高さを確保して、簡単には破損しない強度を得る。

[0017] また、本発明に係る締結用頭部付セキュリティナットの特徴は、略円錐台形状のテーパナット部の上部に切断部を介して締結用頭部が形成されたセキュリティナットであって、前記テーパナット部には、請求項 2または請求項 3に記載された工具によつて取り外すための外周テーパ面を備えているとともに、その外周テーパ面のテーパ角度が当該セキュリティナットの軸線方向に対して 27° — 30° の範囲に形成されてヽる、にめる。

[0018] そして、このような構成を採用したことにより、締結する場合には、締結用頭部を巿販の工具を使って簡単に締め付けられるし、さらに強く締め付けることで切断部から締結用頭部を切断してテーパナット部のみが強固に締め付けられた状態で残留する発明の効果

[0019] 本発明によれば、セキュリティナットの締め付けが容易であること、通常の工具を使つても簡単に取り外せないこと、専用工具を使えば簡単に取り外せることができ、安全性を確保しつつ必要に応じて容易に締結を解除することができるセキュリティナットおよびその専用工具を提供できる。

発明を実施するための最良の形態

[0020] 以下、本発明に係るセキュリティナットの締結用工具 1A、解除用工具 IBおよび締結兼解除用工具 1Cの実施形態について図面を用いて説明する。図 1は、本発明の第 1の実施形態である締結用工具 1Aを示す斜視図であり、図 2は正面図、図 3は図 2の 3A— 3A断面図である。なお、以下の説明では、円錐台形状に形成されたテーパナットとも呼ばれるセキュリティナット Nと、円錐台形状に形成されたヘッド部を有するテーパボルト Bの締結および解除を行う場合を例にして説明する。

[0021] 図 1から図 3に示すように、本第 1実施形態の締結用工具 1Aは、セキュリティナット Nを収容する内空間 21を備えた中空体部 2と、この中空体部 2を回転させる回転用把持部 3と、この回転用把持部 3の軸線に沿って内空間 21に連通された頭部雌ねじ部 4と、中空体部 2の内壁面 22に固定された弾力性摩擦部材 5とから構成されている [0022] 本第 1実施形態の各構成部についてより詳細に説明すると、中空体部 2は、その内壁面 22および外壁面 23がテーパ状に形成されており、この内壁面 22の内側に内空間 21が形成されている。この内空間 21は、セキュリティナット Nの外周テーパ面 nをほぼ完全に収容するように形成されている。また、中空体部 2の上部には、回転用把持部 3が突出するように形成されている。この回転用把持部 3は、通常のナットと同形状に形成されており、その側面 31はスパナやモンキーレンチなどの巿販工具により把持することができる。なお、本第 1実施形態では、操作性および汎用性を考慮して回転用把持部 3を六角形状に形成しているが、巿販工具で把持し得る側面 31であれば四角形や他の多角形もしくは円弧形状であってもよい。

[0023] 回転用把持部 3の中央部分の軸線に沿う方向には、中空体部 2の内空間 21に連通するように頭部雌ねじ部 4が形成されている。この頭部雌ねじ部 4は、テーパボルト Bの雄ねじ部 bと螺合して締結用工具 1Aを雄ねじ部 b回りに回転させるとともに、その軸線方向に移動させるようになつている。なお、頭部雌ねじ部 4が回転用把持部 3を完全に貫通されて、るか否かは問わな！/、。

[0024] つぎに、弾力性摩擦部材 5は、外周テーパ面 nへの食い込みを防ぐためと、締結用工具 1 Aの離脱を容易にするために弾力性を有しており、セキュリティナット Nの外周テーパ面 nに向けて押圧されたときに高い摩擦力を生じさせるゴム素材等により構成されている。前記弾力性摩擦部材 5は、中空体部 2の内壁面 22に合わせてほぼ同一の傾斜角度に形成された外周面 51を有し、その内壁面 22に接着材等によって一体的に固定されている。また、弾力性摩擦部材 5の内周面は、外周テーパ面 nとほぼ同一の傾斜角度に形成された内周テーパ面 52に形成されており、外周テーパ面 nと完全に面接触し得るようになつている。さらに、頭部雌ねじ部 4に対応する位置には凹状の円形穴 53が形成されており、テーパボルト Bの雄ねじ部 bを導き入れやすくなつている。

[0025] なお、本第 1実施形態では、外周テーパ面 nを均等に押圧するため、弾力性摩擦部材 5の外周面 51および中空体部 2の内壁面 22の形状を外周テーパ面 nとほぼ同一の傾斜角度に形成しているが、これに限られるものではなぐ弾力性摩擦部材 5が中空体部 2に一体的に固定され、かつ、外周テーパ面 nに合致し得る傾斜角度を備える内周テーパ面 52であれば、どんな形状であってもよい。また、本第 1実施形態では、中空体部 2と弾力性摩擦部材 5との間に、より大きな摩擦力を発生させるため、セキユリティナット Nの外周テーパ面 nに対して完全に面接触する弾力性摩擦部材 5を用いているが、これに限られるものではなぐ必要な回転トルクを伝達できるのであれば、周方向に複数個に分割した弾力性摩擦部材 5を間隔を空けて配置するようにしてもよい。

[0026] つぎに、このような構成を備えた本第 1実施形態における締結用工具 1Aの作用について図 4から図 7を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、セキュリティナツト Nをテーパボルト Bに締め付ける際の動作を例にして説明する。

[0027] 本第 1実施形態の締結用補助具 1Aによって、セキュリティナット Nをテーパボルト B の雄ねじ部 bに締め付けて締結物 Xを被締結物 Yに締結させる場合、まず、図 4に示すように、締結物 Xおよび被締結物 Yを連通するように穿孔した下穴 hにテーパボルト Bを揷通する。つぎに、図 5に示すように、テーパボルト Bの雄ねじ部 bにセキュリティナット Nを軽く螺合させた後、締結用工具 1Aの頭部雌ねじ部 4をテーパボルト Bの雄ねじ部 bに螺合させ、締め付け方向に回転する。そして、図 6に示すように、弾力性摩擦部材 5の内周テーパ面 52がセキュリティナット Nの外周テーパ面 nに当接するまで締め付け方向に回転する。このとき、内周テーパ面 52は外周テーパ面 nに対してほぼ全面で当接するため、より大き、摩擦力が発生させられるようになつて、る。

[0028] 締結用工具 1Aがセキュリティナット Nに当接した後、スパナ等の巿販工具により回転用把持部 3の側面 31を把持し、締め付け方向の回転トルクを付与する。すると、回転用把持部 3が中空体部 2を回転させるとともに、頭部雌ねじ部 4が雄ねじ部 b回りに回転して中空体部 2をセキュリティナット N側に移動させるため、弾力性摩擦部材 5はセキュリティナット Nに強く押圧されながら回転する。これにより、弾力性摩擦部材 5とセキュリティナット Nの間には大きな摩擦力が発生し、この摩擦力がセキュリティナット Nを締め付け方向に回転させ、強固に締結させるようになって!/、る。

[0029] 締結作業が完了した後、回転用把持部 3に取り外し方向の回転トルクを付与する。

このとき、弾力性摩擦部材 5が緩衝材の役割を果たすため、セキュリティナット Nを共回りさせることなく締結用補助具 1Aはセキュリティナット N力離脱する方向に移動する。そのため、弾力性摩擦部材 5とセキュリティナット Nの間には摩擦力が発生しないので、締結用工具 1 Aだけが取り外される。ここで、もし、セキュリティナット Nの外周テーパ面 nとの当接面に弾力性を有さない部材を設けると、締め付け作業により両者が互いに嚙み合ってしまう。そのため、取り外し方向に回転させると両者が共回りしてセキユリティナット Nも外れてしまう。また、弾力性を備えることにより、本補助具 1Aを離脱させる際に、セキュリティナット Nに対しては締結部材方向に弾力を付与し、離脱方向へは後押しする力を付与することになり離脱作業が確実で容易に行える。したがつて、本第 1実施形態では、弾力性摩擦部材 5は弾力性を有する部材により形成することを要する。

[0030] 以上のような作業により、図 7に示すように、セキュリティナット Nは締結物 Xと被締結物 Yを狭持した状態でテーパボルト Bと強固に締結される。そして、この状態では、通常のスパナやペンチ等によって解除することができないため一般人が締結を解除することは極めて困難となる。

[0031] 以上のような本第 1実施形態によれば、弾力性摩擦部材 5をセキュリティナット Nの外周テーパ面 nに密接させて高い摩擦力を発生させ、その摩擦力により回転トルクを伝達するので、防犯性の高いセキュリティナット Nを雄ねじ部 bに強固に締め付けることがでさる。

[0032] つぎに、本発明に係るセキュリティナットの解除用工具の第 2の実施形態にっ、て図面を用いて説明する。図 8は、第 2実施形態であるセキュリティナットの解除用工具 1Bを示す斜視図であり、図 9は正面図、図 10は図 9の 10A— 10A断面図である。なお、本第 2実施形態の構成のうち、前述した第 1実施形態の構成と同一若しくは相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。

[0033] 図 8乃至図 10に示すように、本第 2実施形態の解除用工具 1Bの特徴は、主に、セキユリティナット Nの締結を解除する工具として使用するため、係合ねじ 6とこれをねじ込む側部雌ねじ孔 7を備えている点にある。係合ねじ 6は、とがり先を有する六角穴付き止めねじを使用しており、その先端が鋭角状に形成されているとともに、側部雌ねじ孔 7と螺合する雄ねじ部 61が形成されている。また、この係合ねじ 6の後端には、締め付け用の六角穴 62が形成されており、六角棒レンチ等により回転させられるようになっている。一方、側部雌ねじ孔 7は、中空体部 2の外壁面 23と内壁面 22を連通するように形成されており、係合ねじ 6の先端を中空体部 2の内壁面 22から突出させられるようになっている。

[0034] また、解除用工具 1Bは、弾力性摩擦部材 5が設けられていないため、中空体部 2 の内壁面 22がセキュリティナット Nの外周テーパ面 nに合わせてほぼ同一の傾斜角度に形成されている。これ〖こより、内壁面 22が外周テーパ面 nとほぼ完全に面接触するようになつている。また、側部雌ねじ孔 7は、内壁面 22の周方向において 120° の等角度間隔で 3つ形成されており、セキュリティナット Nをより安定的に係止し得るようになつている。

[0035] つぎに、本第 2実施形態における解除用工具 1Bの作用について図 11から図 14を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、締結物 Xおよび被締結物 Yを締結した状態の円錐台形状のセキュリティナット Nを円錐台形状のヘッド部を有するテーパボルト B力も取り外す際の動作を例にして説明する。

[0036] 本第 2実施形態の解除用工具 1Bを使用してセキュリティナット Nをテーパボルト Bから取り外す場合、まず、図 11に示すように、解除用工具 1Bの頭部雌ねじ部 4をテーパボルト Bの雄ねじ部 bに螺合させながら回転させる。このとき、係合ねじ 6は側部雌ねじ孔 7に軽く螺合されており、その先端は内壁面 22から突出していない。

[0037] つぎに、中空体部 2の内壁面 22がセキュリティナット Nの外周テーパ面 nに当接するまで回転させた後、図 12に示すように、係合ねじ 6の六角穴 62に図示しない六角棒レンチを差し込み、側部雌ねじ孔 7にねじ込む。このとき、解除用工具 1Bは、頭部雌ねじ部 4を雄ねじ部 bに螺合させているため、テーパボルト Bの軸線方向に移動しないようになっている。そのため、係合ねじ 6は、側部雌ねじ孔 7にねじ込まれても解除用工具 1Bをセキュリティナット N力も浮力せることがなぐその先端を内壁面 22から突出させ、セキュリティナット Nの外周テーパ面 nに食い込んで係止する。ここで、本第 2実施形態では、側部雌ねじ孔 7の軸線方向が内壁面 22に対して垂直となるように形成されている。これにより、係合ねじ 6が外周テーパ面 nに対して略垂直に突出されるので、より確実で強力に外周テーパ面 nを係止する。

[0038] つづいて、スパナ等の通常の工具を使用して回転用把持部 3の側面 31を把持し、解除方向に回転させる。すると、図 13に示すように、係合ねじ 6に係合されているセキユリティナット Nも解除用工具 1Bと共に回転する。これにより、係合ねじ 6はセキユリティナット Nの外周テーパ面 n上を滑ることなぐセキュリティナット Nを取り外し方向に回転させ、強固な締結状態を簡単に解除できる。また、締結を解除した後は、図 14 に示すように、係合ねじ 6を取り外して側部雌ねじ孔 7内に引っ込ませ、セキュリティナット Nを解除用工具 1Bから離脱させる。

[0039] 以上のような本第 2実施形態によれば、通常の工具では滑って取り外せないセキュリティナット Nに対し、係合ねじ 6を外周テーパ面 nに食、込ませることで高、把持力を発生させ、その把持力により回転トルクを伝達するので、強く締め付けられているセキユリティナット Nであっても簡単に緩めて取り外すことができる。

[0040] つぎに、本発明に係るセキュリティナットの締結兼解除用工具 1Cの第 3の実施形態について図面を用いて説明する。図 15は、第 3実施形態の締結兼解除用工具 1Cを示す斜視図であり、図 16は正面図、図 17は図 16の 17A— 17A断面図である。なお、本第 3実施形態の構成のうち、前述した第 1実施形態および第 2実施形態の構成と同一若しくは相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。

[0041] 図 15乃至図 17に示すように、本第 3実施形態の締結兼解除用工具 1Cの特徴は、セキュリティナット Nを締め付ける作業と、締結を解除する作業の両方に兼用できるよう、弾力性摩擦部材 5と係合ねじ 6および側部雌ねじ孔 7をそれぞれ備えて、る点にある。弾力性摩擦部材 5には、側部雌ねじ孔 7に対応する位置にねじ挿入孔 54が形成されており、係合ねじ 6を挿通してその先端を内周テーパ面 52から突出させられる

[0042] 本第 3実施形態の締結兼解除用工具 1Cによって、セキュリティナット Nを締め付ける場合、係合ねじ 6の先端を弾力性摩擦部材 5の内周テーパ面 52から突出しない状態にする。これにより、第 1実施形態の締結用工具 1Aと同様に、弾力性摩擦部材 5とセキュリティナット Nの間に生じる摩擦力により回転トルクを伝達し、セキュリティナット Nを強固に締め付けることができる。一方、セキュリティナット Nを取り外す場合、係合ねじ 6の先端を弾力性摩擦部材 5の内周テーパ面 52から突出させる。これにより、第 2実施形態の解除用工具 1Bと同様に、係合ねじ 6がセキュリティナット Nに係止されて生じる把持力により回転トルクを伝達し、強固に締め付けたセキュリティナット Nを緩めて取り外すことができる。

[0043] 以上のような本第 3実施形態によれば、セキュリティナット Nの締め付け作業と、セキユリティナット Nの締結を解除する作業の双方を兼用することができる。

[0044] つぎに、上述した各実施形態で使用されるセキュリティナット Nの実施形態について説明する。前述した各本実施形態の工具 1A, IB, 1Cは、外周テーパ面 nの傾斜が合えば各種のセキュリティナット Nに使用することが可能である。しかし、セキユリティナット Nと称される製品の中には、十分なセキュリティが確保できな、製品や専用ェ具を使用しても締め付けや解除がし難い製品が存在する。特に、外周テーパ面 nが垂直に近!、傾斜角に形成されて!、る製品が存在するが、ペンチによって容易に取り外せてしまうため、十分な安全性が確保されているとはいえない。逆に、外周テーパ面 nが水平に近い傾斜角に形成されている製品は、高さが小さいため強度が弱くなるし、締め付けや取り外しの作用力が伝達しにくいため作業性が悪い。

[0045] そこで、本願発明者は、上記各問題点を考慮して試行錯誤を繰り返した結果、外周テーパ面 nのテーパ角度について、最適な角度範囲を見い出した。具体的には、図 18に示すように、外周テーパ面 nのテーパ角度が、セキュリティナット Nの軸線方向に対して、 28° — 29° の角度となるように形成することが好ましい。そして、この角度範囲は、製造誤差等を考慮しても、少なくとも 27° — 30° に設定されていれば所望の効果が得られる。なお、本実施形態では、 JIS (Japanese Industrial Standard)によるサイズが M8または M10のセキュリティナット Nでは 29° に設定しており、 M12のセキュリティナット Nでは 28° に設定している。

[0046] このような外周テーパ面 nの傾斜角に形成することにより、 27° 以上の角度であれば、市販のペンチやプライヤー等のように平行な狭持面を有する工具を使用すると、その狭持面と外周テーパ面 nとの接触面積が著しく小さくなるため、回転させるのに十分な摩擦力が得られず、市販の工具によるセキュリティナットの取り外しを極めて困難にさせられる。

[0047] 一方、 30° 以下の角度で外周テーパ面 nを形成することにより、締め付ける際に弹力性摩擦部材 5から受ける摩擦力や、取り外す際に係合ねじ 6から受ける係止力のうち、軸線に垂直な成分が確保されるため、外周テーパ面 nを確実に回転させられる。し力もセキュリティナット Nの外径をあまり大きくしなくても軸線方向の高さを確保することができ、簡単には破損しな、強度を得ることができる。

[0048] なお、セキュリティナット Nの締結用工具 1Aおよび締結兼解除用工具 1Cにおける内周テーパ面 52や、解除用工具 1Bの内壁面 22は、上記外周テーパ面 nの傾斜角に合わせて 27° — 30° の範囲内に形成されている。

[0049] また、上述した各実施形態では、単なる円錐台形状のセキュリティナット Nを使用する場合について説明した力図 19および図 20に示すような、締結用頭部 n2を備えた締結用頭部付セキュリティナット N'を使用してもよい。この締結用頭部付セキユリティナット N，は、セキュリティナット Nと同等の構成を有するテーパナット部 nlと、通常のナットと同形状に形成される締結用頭部 n2と、この締結用頭部 n2とテーパナット部 n 1との間に形成された切断部 n3とから構成されている。そして、切断部 n3は、所定の回転力が加わると破断して締結用頭部 n2をテーパナット部 nlから分離するようになつている。

[0050] この締結用頭部付セキュリティナット N'を締め付ける場合、図 21に示すように、締結用頭部 n2をスパナ等の市販の工具を使って簡単に締め付けられる。そして、図 22 に示すように、さらに強く締め付けることによって切断部 n3から締結用頭部 n2を切断することができる。これにより、テーパナット部 nlのみが強固に締結された状態で残留するものである。一方、この締結用頭部付セキュリティナット N'を取り外す場合には、本発明に係る解除用工具 1Bまたは締結兼解除用工具 1Cを使用すれば簡単に取り外すことができる。もちろん、締結用頭部付セキュリティナット N'におけるテーパナット部 nlの外周テーパ面 nも、図 20に示すように、 27° — 30° の傾斜角範囲に形成されてヽることが好まヽ。

[0051] なお、本発明に係るセキュリティナットの締結用工具 1A、解除用工具 1B、締結兼解除用工具 1C、およびこれらの工具専用のセキュリティナットは、前述した実施形態に限定されるものではなぐ適宜変更することができる。

[0052] 例えば、上述した第 2実施形態および第 3実施形態では、係合ねじ 6および側部雌ねじ孔 7をそれぞれ周方向に 3つ形成している力これに限られるものではなぐ他の個数にしてもよい。

[0053] また、各実施形態では、主としてセキュリティナット Nに被せて締結および解除することを考慮している力ボルトヘッドが円錐台形状に形成されたテーパボルト Bの締め付けに応用することも可能である。

図面の簡単な説明

[0054] [図 1]本発明に係る締結用工具の第 1の実施形態を示す斜視図である。

[図 2]本第 1実施形態の締結用工具の正面図である。

[図 3]図 2の 3A— 3A線における断面図である。

[図 4]本第 1実施形態の締結用工具の使用方法を示す説明図である。

[図 5]本第 1実施形態の締結用工具の使用方法を示す説明図である。

[図 6]本第 1実施形態の締結用工具の使用方法を示す説明図である。

[図 7]本第 1実施形態の締結用工具の使用方法を示す説明図である。

[図 8]本発明に係る解除用工具の第 2の実施形態を示す斜視図である。

[図 9]本第 2実施形態の解除用工具の正面図である。

[図 10]図 9の 10A— 10A線における断面図である。

[図 11]本第 2実施形態の解除用工具の使用方法を示す説明図である。

[図 12]本第 2実施形態の解除用工具の使用方法を示す説明図である。

[図 13]本第 2実施形態の解除用工具の使用方法を示す説明図である。

[図 14]本第 2実施形態の解除用工具の使用方法を示す説明図である。

[図 15]本発明に係る締結兼解除用工具の第 3の実施形態を示す斜視図である。

[図 16]本第 3実施形態の締結兼解除用工具の正面図である。

[図 17]図 16の 17A— 17A線における断面図である。

[図 18]本発明に係るセキュリティナットの実施形態を示す正面図である。

[図 19]本発明に係る締結用頭部付セキュリティナットの実施例を示す斜視図である。

[図 20]本発明に係る締結用頭部付セキュリティナットの実施例を示す正面図である。

[図 21]本実施形態の締結用頭部付セキュリティナットの使用方法を示す説明図である。

[図 22]本実施形態の締結用頭部付セキュリティナットの使用方法を示す説明図である。

符号の説明

1A 締結用工具

1B 解除用工具

1C 締結兼解除用工具

2 中空体部

3 回転用把持部

4 頭部雌ねじ部

5 弾力性摩擦部材

6 係合ねじ

7 側部雌ねじ孔

21 内空間

22 内壁面

23 外壁面

31 側面

51 外周面

52 内周テーパ面

54 ねじ挿入孔

61 雄ねじ部

B テーパボルト

N セキュリティナット

n 外周テーパ面

N' 締結用頭部付セキュリティナット nl テーノナツ卜咅 |5

n2 締結用頭部

n3 切断部

Claims

請求の範囲

[1] 略円錐台形状に形成されたセキュリティナットをボルトに螺合させて締め付けるために使用するセキュリティナット締結用工具であって、

前記セキュリティナットの外周テーパ面を収容する内空間を備えた中空体部と、この中空体部の上部に突出形成された回転用把持部と、この回転用把持部の軸線に沿つて前記中空体部の内空間に連通されており前記セキュリティナットの頭部力突出するボルトに螺合する頭部雌ねじ部と、前記中空体部の内壁面に固定されており前記セキュリティナットの外周テーパ面に合わせてほぼ同一の傾斜角度に形成された内周テーパ面を備え、かつ弾力性を備えた弾力性摩擦部材とを有することを特徴とするセキュリティナット締結用工具。

[2] 略円錐台形状を備えたセキュリティナットをボルトから取り外す際に使用するセキュリティナット解除用工具であって、

前記セキュリティナットの外周テーパ面を収容する内空間を備えていると共にその外周テーパ面に合わせてほぼ同一の傾斜角度に形成された内壁面を有する中空体部と、この中空体部の上部に突出形成された回転用把持部と、この回転用把持部の軸線に沿って前記中空体部の内空間に連通されており前記セキュリティナットの頭部力突出しているボルトに螺合する頭部雌ねじ部とを有しており、

前記中空体部には、外側面力前記内空間へ貫通された側部雌ねじ孔が形成されていると共に、この側部雌ねじ孔にねじ込まれて前記セキュリティナットの外周テーパ面に係合する係合ねじが備えられていることを特徴とするセキュリティナット解除用工具。

[3] 略円錐台形状を備えたセキュリティナットをボルトに締め付ける際あるいは締結を解除する際に使用するセキュリティナツト締結兼解除用工具であって、

前記セキュリティナットの外周テーパ面を収容する内空間を備えた中空体部と、この中空体部の上部に突出形成された回転用把持部と、この回転用把持部の軸線に沿つて前記中空体部の内空間に連通されており前記セキュリティナットの頭部力突出しているボルトに螺合する頭部雌ねじ部と、前記中空体部の内壁面に固定され前記セキュリティナットの外周テーパ面に合わせてほぼ同一の傾斜角度に形成された内周テーパ面を備え、かつ弾力性を備えた弾力性摩擦部材とを有しており、前記中空体部には、外側面力前記内空間へ貫通された側部雌ねじ孔が形成されていると共に、この側部雌ねじ孔に連通するように前記摩擦部材にねじ挿入孔が形成されており、前記側部雌ねじ孔にねじ込まれて前記ねじ挿入孔を介して前記セキユリティナットの外周テーパ面に係合する係合ねじが備えられていることを特徴とするセキュリティナット締結兼解除用工具。

[4] 請求項 1乃至請求項 3のいずれかに記載された工具によって締め付け、および解除するための外周テーパ面を備えたセキュリティナットであって、その外周テーパ面のテーパ角度が当該セキュリティナットの軸線方向に対して 27° — 30° の範囲に形成されて!/ヽることを特徴とするセキュリティナット。

[5] 略円錐台形状のテーパナット部の上部に切断部を介して締結用頭部が形成されたセキュリティナットであって、前記テーパナット部には、請求項 2または請求項 3に記載された工具によって取り外すための外周テーパ面を備えているとともに、その外周テーパ面のテーパ角度が当該セキュリティナットの軸線方向に対して 27° — 30° の範囲に形成されていることを特徴とする締結用頭部付セキュリティナット。