明 細 書
ヒトグリオ一マ治療に有用な変異 HSVベクター
技術分野
[0001] 本発明は、 Musashilプロモーターを利用したヒトグリオ一マ治療に有用な変異 HSV ベクター、より詳しくは-ユーロビルレンスファクターと呼ばれる γ 34. 5などのヒトグリ ォーマ細胞内で HSVの複製増殖能に関与する遺伝子産物を発現することができる 前記アンプリコンベクター由来のウィルス粒子と、前記 HSVの複製増殖能に関与す る遺伝子産物を発現する機能を失ったヘルパーウィルス由来のウィルス粒子とを含 むヒトグリオ一マ(ダリオ一マ)治療に有用な複製欠陥 HSVベクター(ウィルスストック) 等に関する。
背景技術
[0002] 悪性ダリオ一マ、特に、多型性神経膠芽腫 (GBM)は、成人の主要な脳腫瘍の最 も一般的で絶望的な形態である(例えば、 Benign Cerebral Gliomas, Vol. 1. pp. 181-189, 1995参照。 ) 0 GBMは、周囲の正常な脳組織を広範囲に浸潤する傾向が あるため、最近の神経画像処理技術や外科的技術の改善による助けを用いても、そ れを完全に除去することは実質的に不可能であり、その他の治療の形態を必要とし た。しかしながら、診断上の手順、放射線治療、化学療法及び支持療法の大きな進 展にも関わらず、これらの新生物 (neoplasm)は、従来の治療に対して強い耐性を示 す(例えば、 Hum. Gene Ther. 8, 965-977, 1997, Pathol. Res. Pract. 194, 149-155, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95, 14453-14458, 1998, J. Neurooncol. 42, 95-102, 1999参照。 ) 0患者の予後は、過去 20年間において低いままであり、患者の ほとんどが診断から 1年以内に病気に屈する(例えば、 J. Neurosurg. 88, 1-10, 1998, Cancer Res. 62, 756-763, 2002参照。 )。したがって、有効な治療がなぐこの病気 の予後が著しく低いことから、遺伝子治療等の新たな治療の選択肢が必要となる。
[0003] 現在まで、非複製ベクター (replication-defective vector)による腫瘍への遺伝子導 入(tumor transduction)の高効率性が達成していないため、複製型ウィルスベクター (replication-competent virus vector)は癌治療剤として期待されている(例えば、 Nat.
Med. 6, 879-885, 2000, Gene Ther. 7, 867-874, 2000, Gene Ther. 7, 859-866, 2000参照。 ) 0癌の遺伝子治療における近年の発達は、細胞毒性遺伝子を腫瘍細胞 に送達 (deliver)するばカゝりでなく融解性感染を介してそれらを直接破壊する、遺伝 子改変して分裂細胞において選択的に複製するように設計された殺腫瘍性ウィルス の使用を中心に展開し(例えば、 Surg. Oncol. Clin. N. Am. 7, 589-602, 1998, Science 252, 854-856, 1991参照。)、少なくとも 10種のウィルス種について臨床試験 が始まっている(Nat. Med. 7, 781-787, 2001参照。 ) 0分裂細胞において選択的に 複製するように設計された殺腫瘍性ウィルスの使用は、新生物内複製(
intraneoplastic replication)力 接種した腫瘍塊に抗癌効果の解剖学的広がりの増大 や、抗癌遺伝子の送達 (delivery)による腫瘍性効果の増強を可能にすることから(例 えば、 Hum. Gene. Ther. 5, 183-191, 1994, Cancer Res. 58, 5731-5737, 1998参照 。;)、殺腫瘍活性と安全性の両面で有望視されている。
[0004] HSVは 2本鎖 DNAウィルスで、核内で増殖する DNAウィルスの中で最大長のゲ ノム(153kb)を有し、 84種のオープンリーディングフレームをコードする。ゲノムは L ( long)領域と S (short)領域力も構成され、各ユニーク配列をその両側に倒置反復配 列が挟む形で存在する。ウィルスゲノムの全塩基配列が決定され、ほとんどのウィル ス遺伝子の機能は解明されている。そして、この HSVの、分裂細胞において選択的 に複製するように設計された殺腫瘍性変異体として、 2つのタイプの単一遺伝子が変 異した HSV変異体が研究されてきた。 1つは、チミジンキナーゼ、リボヌクレオチドリ ダクターゼ(RR)、ゥラシル N—グリコシレート(uracyl N- glycosylate)等の核酸代謝に 必要とされるウィルス遺伝子の機能に欠陥を持つウィルス変異体であり、もう 1つは、 宿主タンパク質合成の遮断の抑制を通して感染細胞のウィルス放出数を著しく増強 することによりビルレンスファクタ一として機能する γ 34. 5遺伝子 (ICP34. 5)の機 能に欠陥を持つウィルス変異体である(例えば、 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89, 3266-3270, 1992, Nat Cell Biol 3, 745-750, 2001参照。)。
[0005] 単一遺伝子が変異した HSV変異体は、相同組み換え等のバックミューテーシヨン による野生型への復帰変異の危険の他、例えば、チミジンキナーゼの機能欠損変異 体におけるガンシクロビルに対する抵抗力の増強、 γ 34. 5の機能欠損変異体にお
ける殺腫瘍活性の減少等の問題を有する。そこで、野生型への復帰変異の危険性を 減少させるため、多重変異が導入された HSVが開発された。これらには、 γ 34. 5の 欠失変異及びリボヌクレオチドリダクタ一ゼの揷入変異(insertional mutation)の両方 の機能が欠損した変異体である G207及び MGH1を挙げることができる。これら二重 変異体は、頭蓋内に直接注入することにより-ユーロビルレンスの著しい減少を示し
、ガンシクロビルに対し感受性を維持し、正常な組織と比較して腫瘍細胞において相 対的に選択的な複製を示す。このような二重変異 HSV系統は、欠陥 γ 34. 5遺伝子 を維持し、それによつて正常な組織に対して弱いビルレンスを示す。しカゝしながら、そ れらは腫瘍細胞に対して明らかな殺腫瘍効果を示すが、かかる効果は正常な γ 34. 5遺伝子を有する変異体にぉ 、て観察されるものより少な!/、。
[0006] 上記 G207は、 Martuzaらにより、 γ 34. 5遺伝子における欠失及び ICP6遺伝子へ の lacZ遺伝子挿入により、単純へルぺスウィルス 1型(HSV— 1)の二重変異体として 開発された(例えば、 Nat. Med. 1, 938-943, 1995,米国特許第 5585096号明細書 参照。;)。 G207は他のウィルスベクター類よりも治療上の観点において優れている。 G207は分裂細胞において複製され、その結果感染細胞は融解して死に至るが、非 分裂細胞ではその増殖は顕著に弱まっている。無胸腺症マウスに榭立された腫瘍内 に G207を接種すると腫瘍選択的複製によって腫瘍増殖が抑制され、マウスが延命 された(例えば、 Cancer. Res. 55, 4752, 1995参照。)。また、免疫応答性マウスにお V、ては G207を腫瘍内接種することにより腫瘍特異的免疫応答が誘導され、 G207を 接種しなかった腫瘍の増殖をも抑制する(例えば、 Hum. Gene Ther. 9, 2177-2185, 1998参照。 )0この場合、 G207がインサイチュー癌ワクチンとして機能している。現在 まで、脳腫瘍を中心に変異へルぺスウィルス G207を用いた遺伝子治療が行われ、 米国で臨床応用も開始された(例えば、 Gene Ther. 7, 867-874, 2000参照。 ) 0この 臨床応用において、 G207の安全性は証明されている力 これまでに報告された臨 床結果は、あまり効果的でないことが報告されている(例えば、 Gene Ther. 7, 867-874, 2000, Gene Ther. 7, 859-866, 2000参照。)。
[0007] 臨床的に関連するウィルスベクターを構築する際は、安全性及び殺腫瘍の有効性
(oncolytic efficacy)の両方が必須である(例えば、 J. Virol. 73, 3843-3853, 1999, J.
Virol. 74, 4765-4775, 2000参照。 )0安全性は、変異ウィルスの複製の選択性に直 接依存する。有効性は、ウィルスの効率的に腫瘍細胞を感染させ、感染した新生物 塊の中で増殖する能力に依存する。 G207等の多重変異 HSVベクターは、安全性 を高め、野生型復帰変異のリスクを減らそうと努力して構築されたが、それらの殺腫 瘍の有効性は同時に減少したようである。 G207における欠失遺伝子のひとつである y 34. 5遺伝子は、ニューロビルレンスファクター(neurovirulence factor)とも呼ばれ ており、宿主タンパク質合成の遮断の抑制を通して感染細胞のウィルス放出数を著 しく増強する機能を有する(例えば、 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89, 3266-3270, 1992, Science 250, 1262-1266, 1990参照。;)。 γ 34. 5遺伝子を欠失させることにより 、 G207は非常に安全性が高くなつたが、その治療効果は少々低下したと考えられる
[0008] 腫瘍細胞に選択的な HSV複製を与えるいくつかの戦略が知られている。例えば、 分裂終了細胞における複製に必要とされるウィルス遺伝子の欠失又は変異 (例えば 、 Science 252, 854—856, 1991, Hum. Gene. Ther. 5, 183—191, 1994, Hum. Gene Ther. 8, 533-544, 1997参照。 )、ウィルスの子孫産生調節の責任を有するウィルス遺 伝子の欠失(例えば、 Neurosurgery 32, 597-603, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92, 1411-1415, 1995, Lab. Investig. 73, 636-648, 1995参照。 )0必須のウィルス遺 伝子の発現を調節するための腫瘍特異的プロモーターの使用(例えば、 J. Virol. 73, 7556-7564, 1999参照。)、正常な組織よりむしろ腫瘍に対する HSV糖タンパク質の 受容体特異性の変化 (例えば、 j. Virol. 72, 9683-9697, 1998参照。)等が知られて いる。
[0009] Musashilは、本発明者らにより見い出された神経の RNA結合タンパク質であり、神 経幹細胞 Z前駆細胞の進化的によく保存されたマーカーである(例えば、 Neuron 13, 67-81, 1994, Dev. Biol. 176, 230-242, 1996, Genomics 52, 382—384, 1998, Dev. Neurosci. 22, 139-153, 2000参照。 )0それは、固有の(proper)神経細胞及び 膠細胞の発達に必須である転写後の遺伝子調節において重要な役割を果たす可能 性が高い(例えば、 Neuron 13, 67-81, 1994, Dev. Biol. 176, 230-242, 1996, Genomics 52, 382—384, 1998, Dev. Neurosci. 22, 139—153, 2000, J. Neurosci. 17,
8300-8312, 1997参照。 )。近年、 Musashilは、複数の腫瘍、特に中枢神経系では悪 性グリオ一マに発現し(例えば、 Differentiation. 68, 141-152, 2001, BBRC 293, 150-154, 2002, GLIA 34, 1-7, 2001参照。 )、悪性ダリオ一マのマーカーとして使用 できることが解明された(例えば、 BBRC 293, 150-154, 2002, GLIA 34, 1-7, 2001参 昭 )ノ
[0010] さらに、マウスの Musashilプロモーター(PZMusashil)力ヒト胎児脳においても機能 することや、 PZMusashilの作動による GFP発現に基づいて、蛍光標識細胞分取器 (FACS)を用いて神経幹細胞の選別ができることが報告されている(例えば、 Nat. Biotechnol. 19, 843-850, 2001参照。 )。
[0011] 本発明の課題は、ヒトグリオ一マ細胞を特異的にインビボで殺傷する能力を有し、ヒ トグリオ一マの治療に有用でかつ安全な変異 HSVベクター(ウィルスストック)や、か 力るウィルスストックを作製するのに用いられる Musashilプロモータを利用したアンプ リコンベクターや、前記ウィルスストックを有効成分とするヒトグリオ一マ治療薬等を提 供することにある。
[0012] 本発明者らは、臨床的に適用可能な HSVベクターを構築することを考慮して、安 全性を可能な限り低下させずに、従来の変異体の殺腫瘍の有効性を増強することが 必要であると考えた。そこで、腫瘍細胞に選択的な HSV複製を与えるためのいくつ かの戦略のうち、必須のウィルス遺伝子の発現を調節するために腫瘍特異的プロモ 一ターを使用することが有望であると考えた。
[0013] 他方、単純へルぺスウィルス 1型(HSV— 1)の変異体 G207は、前記のように、 γ 3 4. 5遺伝子の一部欠失及び UL39遺伝子への lacZ挿入により、これら遺伝子が不 活性ィ匕されて γ 34. 5ゃリボヌクレオチドリダクターゼを発現する機能が欠失するよう に設計されている。 G207は、インビトロ及びインビボでの研究で効率的な殺腫瘍活 性(oncolytic activity)を示す力 正常な組織においては最小の毒性を示し、現在、 悪性ダリオ一マの臨床試験が行なわれている。し力しながら、フェイズ I試験の結果に よると、 G207の安全性については証明されている力 その殺腫瘍活性については 有効であるとの結果が得られな力つた。ニューロビルレンスファクターをコードする γ 34. 5遺伝子を欠失させることにより、 G207の安全性は非常に高くなつた力 HSV1
による殺腫瘍活性は著しく減少した。力かる G207の殺腫瘍活性の低下を考慮すると 、 γ 34. 5遺伝子が腫瘍細胞にのみ特異的に発現した場合、 γ 34. 5が発現しない 場合と比較して、治療効果はより強く増強すると考えた。
[0014] 本発明者らは、 G207の安全性を低下させることなくその治療効果を増強するため 、本発明者らにより見い出された神経の RNA結合タンパク質であり、最近ヒト悪性ダリ ォーマに発現し、それらのマーカーとして使用されることが明らかになった Musashil のプロモーター(PZMusashil)が神経前駆細胞以外の悪性ダリオ一マにおいても機 能し、特に悪性ダリオ一マにおける HSVの複製増殖能に関与する HSV1遺伝子の 発現を調節するための腫瘍特異的プロモーターとして使用できるのではないかと考 えた。そこで、まず最初に、ヒトグリオ一マ細胞株(U87MG、 U251、 T98G)及びそ の他のいくつかの癌細胞株(肺癌細胞株 A549、胃癌細胞株 TMK - 1、大腸癌細胞 株 HT29、膀胱癌細胞株 KU19— 9及び T24、前立腺癌細胞株 DU145)における Musashilの mRNA発現について RT— PCR分析により調べた。その結果、腫瘍細胞 株の中では、 Musashilの mRNAがグリオ一マ細胞株及び-ユーロブラスト細胞株に 特異的に発現することを確認した。この結果は、これまでに報告された事例と完全に 一致した(Differentiation 68, 141-152, 2001、 GLIA 34, 1-7, 2001)。次に、ヒト胎児 脳の神経幹細胞にぉ 、て機能することが知られて 、る PZMusashilの転写活性につ いて調べた(Nat. Biotechnol. 19, 843-850, 2001)。 GFPレポーターアツセィにより、ヒ トグリオ一マ細胞株及びその他のいくつかの腫瘍細胞株における PZMusashilの転 写活性にっ 、て調べた結果、ヒトグリオ一マ細胞株の方がその他の癌細胞株と比較 して、 PZMusashilの転写活性が著しく高いデータが得られた。この結果から、本発 明者らは、 PZMusashilがヒトグリオ一マ細胞株で選択的に機能することを確認した。
[0015] 次に、本発明者らは、 HSVの複製増殖能に関与する HSV1遺伝子である γ 34. 5 遺伝子を PZMusashilで転写する再ターゲティング力 正常な組織にぉ 、ては減衰 したビルレンスを維持しながら、ダリオ一マにぉ ヽては選択的ビルレンスを達成する 手段を提供する可能性があると考えた。そこで、 γ 34. 5遺伝子を PZMusashilで転 写制御した複製欠損ウィルスを作製し、この複製欠損ウィルスとヘルパーウィルスとし ての G207とをグリオ一マ細胞にコ ·トランスフエクシヨンすることにより dvM345をウイ
ルスストックとして得た。そして、この dvM345 (ウィルスストック)力 培養において、 G 207単独の場合と比較して、ヒトグリオ一マ細胞株においてより高い細胞変性の有効 性を顕著に示すことがわ力つた。これに対して、その他の癌細胞株においては、 dvM 345と G207単独との場合の差異は明白ではな力つた。また、一段階ウィルス成長解 祈の結果によると、 PZMusashilが効率的に働くヒトグリオ一マ細胞株における U87 MGにおいては、 dvM345のより高い子孫ウィルス(G207)産生能力から、 dvM345 のより高い殺腫瘍活性が得られる力 PZMusashilが効率的に作動しない肺癌細胞 株 A549においては、力かる効果は観察されず、 dvM345の高い殺腫瘍活性は腫 瘍タイプ特異的であることを確認した。
[0016] 次いで、ヌードマウスにおける皮下 U87MG腫瘍モデル及び脳内 U87MG腫瘍モ デルの両モデルを用いて、 dvM345のインビボでの治療効果について調べた。皮下 腫瘍モデルにおいては、 dvM345は G207単独の場合と比較して、 U87MG腫瘍の 成長をより劇的に阻害した。脳内 U87MG腫瘍モデルにおいては、 5. O X 105PFU のウィルスの低投与量で、 G207で処理したグループと比較して、 dvM345で処理し た動物では統計的に有意な生存の増加を確認した。両モデルにおいて、 dvM345 ( ウィルスストック)の腫瘍内直接投与での治療効果が増大することがわ力つた。最後 に、本発明者らは、 3匹のマウスを使用して、 dvM345の安全性について調べたとこ ろ、投与量 5. O X 106PFUでは副作用を観察することができな力つた。
[0017] さらに、変異ウィルスの安全性について考慮すると、前記のように、ウィルスの複製 の選択性に直接依存する。本発明におけるように、腫瘍特異的プロモータ PZ Musashilを使用した場合、主要な問題はプロモータの特異性に直接依存する。原始 的な未分ィ匕 CNS細胞において優先的に発現する神経の RNA結合タンパク質であ る Musashilの性質(Dev. Biol. 176, 230-242, 1996、 J. Neurosci. 17, 8300-8312, 1997、 Genomics 52, 382-384, 1998、 Dev. Neurosci. 22, 139-153, 2000)を考慮する と、そのプロモーターは末端の分ィ匕した正常な組織においては機能しないと考えられ たが、本発明者らの得た結果から、 PZMusashilは、本発明者らによる文献 (Nat. Biotechnol. 19, 843-850, 2001)に最初にその活性を報告した神経前駆細胞以外に 、グリオ一マ特異的プロモーターと呼ぶことができる。このように、 PZMusashilを dv
M345作製に利用し、ダリオ一マ特異的に γ 34. 5を発現させた結果、 G207の治療 効果を、その安全性に障害を与えることなく増強しうることを見い出した。
[0018] 以上のとおり、 dvM345 (ウィルスストック)を用いると、 G207単独の場合と比較して 、インビトロ及びインビボでのより高い殺腫瘍活性を示しながら、安全性上好ましい毒 性プロファイルを維持しうることを確認した。本発明は以上の知見に基づいて完成す るに至ったものである。
発明の開示
[0019] すなわち本発明は、 Musashilプロモータと、その下流に連結された HSVの複製増 殖能に関与する遺伝子と、 Musashilプロモータによる前記遺伝子の転写を終結させ るポリ A配列と、 HSVoriと、 HSVの a倒置反復配列とを備えたことを特徴とするアンプ リコンベクター(請求項 1)や、 HSVの複製増殖能に関与する遺伝子力 HSVの γ 3 4. 5遺伝子であることを特徴とする請求項 1記載のアンプリコンベクター(請求項 2)に 関する。
[0020] また本発明は、宿主細胞に、(1) Musashilプロモータと、その下流に連結された HS Vの複製増殖能に関与する遺伝子と、 Musashilプロモータによる前記遺伝子の転写 を終結させるポリ A配列と、 HSVoriと、 HSVの a倒置反復配列とを備えたアンプリコ ンベクターと、(2)前記 HSVの複製増殖能に関与する遺伝子が破壊'欠損 ·置換等 により不活性化されて HSVの複製増殖能に関与する遺伝子産物を発現する機能を 失ったヘルパーウィルスとを、ともに感染させることにより得ることができる、感染細胞 内で HSVの複製増殖能に関与する遺伝子産物を発現することができる前記アンプリ コンベクター由来のウィルス粒子と、前記 HSVの複製増殖能に関与する遺伝子産物 を発現する機能を失ったヘルパーウィルス由来のウィルス粒子とを含むことを特徴と するウィルスストック(請求項 3)や、感染細胞が、ヒトグリオ一マ細胞、又は-ユーロブ ラストーマ等の未分化神経上皮腫瘍細胞であることを特徴とする請求項 3記載のウイ ルスストック (請求項 4)や、 HSVの複製増殖能に関与する遺伝子力 HSVの γ 34. 5遺伝子であることを特徴とする請求項 3又は 4記載のウィルスストック (請求項 5)や、 ヘルパーウィルス力 HSVの γ 34. 5及びリボヌクレオチドリダクターゼを発現する機 能を失ったヘルパーウィルスであることを特徴とする請求項 3— 5のいずれか記載の
ウィルスストック (請求項 6)に関する。
[0021] さらに本発明は、請求項 3— 6のいずれか記載のウィルスストックを有効成分とする ことを特徴とするヒトグリオ一マ治療薬 (請求項 7)や、請求項 7記載のヒトグリオ一マ治 療薬を、ヒトグリオ一マに直接投与することを特徴とするヒトグリオ一マの治療方法 (請 求項 8)に関する。
図面の簡単な説明
[0022] [図 1]第 1図は、本発明において用いられる GFP発現ベクター pHCMV: GFPの概要 を示す図である。
[図 2]第 2図は、本発明にお 、て用いられる GFP発現ベクター pHmsi: GFPの概要を 示す図である。
[図 3]第 3図は、本発明のアンプリコンプラスミド pSRaPZMusashil :ICP34. 5の概要 を示す図である。
[図 4]第 4図は、 10種のヒト由来腫瘍細胞株における Musashil遺伝子 mRNAの発現 の結果を示す図である。各細胞株から RNAを単離した後、プライマーセットを用いて 逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応法 (RT— PCR)を行な!/、、 Musashilの mRNAを検 出した。 PCR産物を 2%のァガロースゲルで分析し (run on)、臭化工チジゥム染色に より視覚化した。調べた全ての悪性ダリオ一マ細胞株及び SK— N— SHにおいて、予 想したサイズ(199bp)の明白なバンドが現れた。一方、本実験で使用した癌細胞株 においては、そのようなバンドは認められなかった。 j8ァクチンのプラーマ セットを正 のコントロールとして使用した。
[図 5]第 5図は、いくつかの腫瘍細胞株における PZMusashilの転写活性の結果を示 す図である。 P/Musashilによる hGFPシグナル強度と CMVプロモーターによる hG FPのシグナル強度との割合を図示した。ダリオ一マ細胞株の方が本研究にお!、て 調べたその他の細胞株と比較して著しく高力つた。データは、 3回の平均士 SDを表 す。
[図 6]第 6図は、様々な腫瘍細胞株における dvM345のインビトロの細胞変性効果の 結果を示す図である。(A) U87MG、(B) U251、(C)A549、(D) HT29、(E) B10 4。(A)及び(B)においては、 dvHmsi: GFP、 dvHCRLl及び G207単独を、コント
ロールウィルスとして使用した。(C)、(D)及び(E)においては、 dvHmsi: GFP及び G207単独をコントロールとして使用した。 dvM345とコントロールウィルスとの間では 、(A)と (B)の両方において (pく 0. 05 ;不対 t検定)、感染から 18時間後に細胞毒 性効果の統計学的な有意差が認められた。また、(C)、(D)及び (E)においては、 d vM345とコントロールウィルスとの間に有意差は認められなかった。図示したデータ は、 3回の試行の平均士 SDである。
[図 7]第 7図は、 dvM345の一段階ウィルス成長の結果を示す図である。ヘルパーゥ ィルス(G207)の力価を、感染後 4時間毎にカウントした。 dvHmsiGFP及びへルパ 一ウィルス (G207)単独をコントロールとして使用した。 PZMusashilが効率的に機 能する U87MGにおいては、 dvM345は子孫ウィルスの産生を増加させた。これに 対し、 PZMusashilが効率的に機能しない A549においては、そのような効果は認め られなかった。
[図 8]第 8図は、皮下腫瘍 (U87MG)を有する BALBZc (nuZnu)マウスにおける、 G207 (グループ Π)及び dvM345 (グループ III)の新生物内接種の結果を示す図で ある。皮下 U87MG腫瘍を有するマウスを、 0日目に、ヘルパーウィルス(G207)の 力価に基づき、モッタ溶液(グループ 1)、 1. 0 X 106PFUの G207 (グループ II)又は 1. 0 X 106PFUの dvM345 (グループ III)のいずれかで処理した。データは、平均 腫瘍成長率士標準偏差を表す。
[図 9]第 9図は、 dvM345で処理した脳内 U87MG腫瘍を有するマウスの生存延長 の結果を示す図である。脳内 U87MG腫瘍を有する BALBZcヌードマウス(nuZn u) (移植力ら 10日後)に、 5 X 105PFUの G207 (グループ 11)、 5 X 105PFUの dvM
345 (グループ m)又はモッタ抽出物(グループ I)を与えた。グループ mとその他の 2 つのグループとの生存の差は、統計学的に有意であった(p< 0. 01、 Wilcoxon signed ranks test)。
発明を実施するための最良の形態
本発明のアンプリコンベクターとしては、 Musashilプロモータ(PZMusashil)と、そ の下流に連結された HSVの複製増殖能に関与する遺伝子と、 P/Musashilによる前 記遺伝子の転写を終結させるポリ A配列と、 HSVoriと、 HSVの a倒置反復配列とを
備えたものであればどのようなものでもよぐまた、本発明のウィルスストックとしては、 宿主細胞に、(l) PZMusashilと、その下流に連結された HSVの複製増殖能に関与 する遺伝子と、 PZMusashilによる前記遺伝子の転写を終結させるポリ A配列と、 HS Voriと、 HSVの a倒置反復配列とを備えたアンプリコンベクターと、(2)前記 HSVの 複製増殖能に関与する遺伝子が破壊'欠損 ·置換等により不活性化されて HSVの 複製増殖能に関与する遺伝子産物を発現する機能を失ったヘルパーウィルスとを、 ともに感染させることにより得ることができる、感染細胞内で HSVの複製増殖能に関 与する遺伝子産物を発現することができる前記アンプリコンベクター由来のウィルス 粒子と、前記 HSVの複製増殖能に関与する遺伝子産物を発現する機能を失ったへ ルパーウィルス由来のウィルス粒子とを含むものであればどのようなものでもよぐ上 記 HSVの複製増殖能に関与する遺伝子としては、 HSVの γ 34. 5遺伝子、リボヌク レオチドリダクターゼ (ICP6)遺伝子、 ICP0遺伝子、 ICP4遺伝子、 ICP27遺伝子等 を挙げることができる力 殺腫瘍活性と安全性の両立の点で、 HSVの γ 34. 5遺伝 子が好ましぐまた、 HSVのタイプとしては、 HSV1及び HSV2を挙げることができる
[0024] 本発明のアンプリコンベクター作製に用いられる PZMusashilは、文献(Nat.
Biotechnol. 19, 843-850, 2001)記載の方法により調製することができる。また、転写 を終結させるポリ A配列としては、哺乳動物に由来するポリ A配列であれば特に制限 されるものではなぐ例えばラビット j8—グロビン、 SV40、 BGH等のポリ A配列を例示 することができる。これらは常法により調製することができる。また、 HSVoriと HSVの a 倒置反復配列は、文献(Mol Cell Neurosci 2, 320-330, 1991)記載のプラスミド pHCL より調製することができる。本発明のアンプリコンベクターは、 P/Musashilとその下流 に連結される γ 34. 5遺伝子等の HSVの複製増殖能に関与する遺伝子と、 P/
Musashilによる前記遺伝子の転写を終結させるポリ A配列と、 HSVoriと、 HSVの a 倒置反復配列とから、常法により作製することができる。
[0025] 本発明のウィルスストックの作製に用いられる上記宿主細胞としては、アンプリコン ベクターとヘルパーウィルスとをともに感染させた場合、アンプリコンベクター由来の ウィルス粒子と、ヘルパーウィルス由来のウィルス粒子とが混在しているウィルス液を
得ることができる細胞であれば制限されず、 HSVの宿主となりうる哺乳動物細胞を挙 げることができる。また、本発明のウィルスストックにおける感染細胞としては、 PZ Musashilが特異的に作動する腫瘍細胞を好適に例示することができ、具体的には、 ヒトグリオ一マ細胞や、ニューロブラストーマ等の未分化神経上皮腫瘍細胞を挙げる ことができ、ヒトグリオ一マ細胞としては、 U87MG、 U251、 T98G等のヒトグリオ一マ 細胞株やヒトグリオ一マ組織から単離された腫瘍細胞を例示することができる。
[0026] 本発明のウィルスストックの作製に用いられる HSVの複製増殖能に関与する遺伝 子が破壊'欠損 ·置換等により不活性化されて HSVの複製増殖能に関与する遺伝 子産物を発現する機能を失ったヘルパーウィルスとしては、前記アンプリコンベクタ 一作製に用いられた HSVの複製増殖能に関与する遺伝子と同じ遺伝子が不活性 化されている HSV変異体であれば特に制限されず、 Ύ 34. 5遺伝子が不活性化さ れて HSVの複製増殖能に関与する γ 34. 5を発現する機能を失った R3616や 171 6や、リボヌクレオチドリダクターゼ (ICP6)遺伝子が不活性ィ匕されて HSVの複製増殖 能に関与するリボヌクレオチドリダクターゼを発現する機能を失った hrR3や、これら γ 34. 5及びリボヌクレオチドリダクターゼを発現する機能を失った G207や、 ICP4遺 伝子が不活性化されて HSVの複製増殖能を失った dl20等を具体的に例示すること ができる。これらヘルパーウィルスは、 R3616については文献(Science 250, 1262-1266, 1990)、 1716については文献(Gene Ther 7, 859-866, 2000)、 hrR3に ついては文献 (J Virol 62, 196-205, 1988)、 G207については文献(Nat. Med. 1, 938-943, 1995、米国特許第 5585096号明細書)にそれぞれ記載の方法で調製す ることがでさる。
[0027] 本発明のウィルスストックは、前記アンプリコンベクターと上記ヘルパーウィルスとを 前記宿主細胞に感染させることにより、感染細胞内で HSVの複製増殖能に関与する 遺伝子産物を発現することができるアンプリコンベクター由来のウィルス粒子と、 HS Vの複製増殖能に関与する遺伝子産物を発現する機能を失ったヘルパーウィルス 由来のウィルス粒子の混在物として得ることができる力 上記ヘルパーウィルス由来 のウィルス粒子は、感染させたヘルパーウィルスの子孫ウィルスであり、ヘルパーウイ ルスと同等物である。また、本発明のウィルスストックの形態としては、液状、その凍結
物、その凍結乾燥による粉体、プロファージ状態の宿主細胞の凍結物等を挙げること ができる。さらに、本発明のウィルスストックにおけるアンプリコンベクター由来のウイ ルス粒子とヘルパーウィルス由来のウィルス粒子の混在割合は、ヘルパーウィルス の添加等により適宜変更しうる。
[0028] 本発明のヒトグリオ一マ治療薬は、上記本発明のウィルスストックを有効成分として 含有するものであれば特に制限されるものではなぐ上記ヒトグリオ一マ治療薬には、 ヒトグリオ一マの他、便宜上-ユーロブラストーマ等の未分化神経上皮腫瘍に対する 治療薬も含まれる。また、本発明のヒトグリオ一マの治療方法としては、上記ヒトグリオ 一マ治療薬をヒトグリオ一マ (便宜上-ユーロブラストーマ等の未分化神経上皮腫瘍 も含む)に直接投与する方法であれば特に制限されるものではない。本発明のヒトグ リオ一マ治療薬を医薬品として用いる場合は、薬学的に許容される通常の担体、結 合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、 pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等 張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。また、これら予防若しくは 治療剤は、経口的又は非経口的に投与することができる。すなわち通常用いられる 投与形態、例えば粉末、顆粒、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的 に投与することができ、あるいは、例えば溶液、乳剤、懸濁液等の剤型にしたものを 注射の型で非経口投与することができる他、スプレー剤の型で鼻孔内投与することも できるが、ヒトグリオ一マ組織に直接接種することが、即答的な腫瘍融解を誘導しうる 点で好ましい。
[0029] 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこ れらの例示に限定されるものではない。
[材料と方法]
実施例 1
[0030] (細胞株)
ヒトグリオ一マ細胞株(U87MG、 U251及び T98G)、ヒトニユーロブラストーマ細胞 株 SK— N— SH、 6種のヒト由来癌細胞株 (肺癌 (A549)、胃癌 (TMK— 1)、大腸癌( HT29)、膀胱癌(KU19— 9、 T24)、前立腺癌(DU145) )、ラットニユーロブラストー マ細胞株 B104及びアフリカミドリザル腎細胞(Vero細胞)を、 American Type
Culture Collectionより入手した。 SK— N— SH、 A549、 B104及び Vero細胞を、 10 %の熱不活性化ゥシ胎児血清 (IFBS)を補充したダルベッコ変法イーグル培地 (D MEM)で培養した。 TMK— 1及び HT29を、 10%の IFBSを補充した RPMI1640 培地で培養した。全ての細胞株は、抗生物質 (Sigma社製)を添加した培地で、加湿 下 5%の C02、 37°Cで維持した。 0. 25%のトリプシン エチレンジァミン四酢酸溶液 (Sigma社製)を用いて、通常は 2週間に 1度の継代を行なった。
実施例 2
[0031] (Musashilの RT—PCR分析)
10種のヒト由来腫瘍細胞株(U87MG、 U251、 T98G、 SK— N— SH、 A549、 TM K 1、 HT29、 KU19— 9、 T24及び DU145)の RNAパネルを用いて、逆転写酵素 ポリメラーゼ連鎖反応法 (RT— PCR)増幅を行なうことにより、 Musashilの mRNAの 発現を分析した。
[0032] RNA抽出及び RT— PCRは、 Toda et al. (GLIA 34, 1-7, 2001)に記載の方法に変 更を加えて行なった。つまり、トリゾル (Trizol)試薬(Sigma社製)を用いてグァ-ジ-ゥ ムチオシァネート法(guanidinium thiocyanate method)を行なうことにより、全 RNAを 調製した。全 RNAテンプレート(1 μ g)、オリゴ (dT)アダプタープライマー及びトリ骨 髄芽球症ウィルス逆転写酵素(Takara社製)を 40°Cでインキュベーションし、 RT— PC R反応においてテンプレートとして使用される cDNA調製物を合成した。その後、 94 °Cの変性温度(1分 Zサイクル)、 60°Cのアニーリング温度(1分 Zサイクル)及び 72 °Cの伸展温度(1分 Zサイクル)で、 35サイクル (Musashil)又は 30サイクル( j8ァクチ ン)からなる PCR反応において、イントロンにまたがる(intron- spanning) Musashilプラ イマ一対(CCGGCTTCGGCCACAGTCTTGGG (フォワード;配列番号 1)、 GC AGGCAGTAGCGGGTCCGAGTCG (リノくース;酉己歹 U番号 2) )又【ま j8ァクチンプ ライマー対(GTCGACAACGCTCCGGCATGTGCA (フォワード;配列番号 3)、 GGATCTTCATGAGGTAGTCAGTCAG (リバース;配列番号 4) )の!、ずれか を用いて、合成した cDNAを増幅した。得られた増幅産物を 2%のァガロースゲル上 で分画し、次に臭化工チジゥム染色により視覚化した。 |8ァクチン特異的プライマー を用いた PCRにより、各サンプルの cDNA合成の効率性を測定した。
実施例 3
[0033] (Musashilプロモーターの転写活性)
GFPレポータープラスミドを用いて、ヒトグリオ一マ細胞株(U87MG、 U251及び T
98G)又はその他の腫瘍細胞(A549、 HT29、 B104及び Vero細胞)におけるマウ スの Musashilプロモーター(PZMusashil)の転写活性を測定した。
[0034] 本実施例において、プラスミド pm-msi : GFP (切断 (truncated) )、 pHCMV: GFP、 pHmsi: GFP及び pHCMV.SLアンプリコンベクターを GFPレポータープラスミドとし て用いた。
[0035] pm-msi: GFP (切断)は発明者らが構築し(Nat. Biotechnol. 19, 843-850, 2001)、 pHCMV.SLアンプリコンベクターは、 Dr. Samuel D. Rabkin (Department of
Neurosurgery, Georgetown University Medical Center)より 手し、ネ刀ァイブコント ロールとして使用した。
[0036] pHCMV: GFP (図 1)は、以下の通りに構築した。 pm- msi : GFP (切断)から Sac II ( 平滑末端ィ匕した) ZSal Iにより hGFP—SV40ポリ(A)断片を切除し、 hGFPが CMV プロモーター下で作動するように、 pHCMV.SLの pHIND III (平滑末端化した) ZSalの 制限部位に挿入した。
[0037] pHmsi: GFP (図 2)は、以下の通りに構築した。 pHCMV.SLを Spe Iで消化し、 自己 結合(self- ligated)させ、 pHCMV.SLの CMVプロモーター配列が欠如する pHSLを生 成した。その後、 pm- msi: GFP (切断)から Sal Iにより PZMusashil— hGFP— SV40ポ リ(A)発現カセットを切除し、 hGFPが PZMusashil下で作動するように、 pHSLの制 限部位の Sal Iに挿入した。したがって、 pHCMV: GFP及び pHmsi: GFPはともに、 hG FPのプロモーター配列以外にも同じ配列を有する(両者は共通して、 pHCMV.SLの HSVa及び HSVori配列を有する)。
[0038] GFPレポータープラスミドをトランスフエクシヨンする 1日前に、 1. 0 X 105細胞 Zml の密度で、細胞をガラス皿に蒔いた。細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、培 地を OPTI— MEM (GIBCO BRL)に置き換え、 Lipofectamine Plus試薬(Life Technologies社製)を用いてトランスフエクシヨンした。トランスフエクシヨンから 48時間 後、細胞を PBSで 2度洗浄し、 4%のパラホルムアルデヒド (Nacalai Tesque社製)で
固 ¾Eした。
[0039] PZMusashilの転写活性は、各ゥエルの(hGFP)蛍光の強度により測定した。蛍光 強度は、 Fluorlmager 595 (Molecular Dynamics Japan社製)を用いて測定し、 ImageQuaNT analysis software (Molecular Dynamics Japanノ 用いて疋量ィ匕した。 実施例 4
[0040] (pSRA P/Musashil : ICP34. 5アンプリコンプラスミドの構築)
pm- msi : GFP (切断)から Hind Ill/Sac II (平滑末端化した)を用いて PZMusashil を切除して、 Dr. Samuel C. Rabkinより入手した pSRaori4アンプリコンプラスミドの制限 部位 Hind IIl/Bgl IIに導入し、 pSRaori4 : PZMusashilを生成した。
[0041] 全 ICP34. 5コード配列を含むプラスミド pBGL34. 5は、 Peter Pechan (
Massachusetts General Hospital)より提供された。完全長 ICP34. 5cDNAを pBGL3 4. 5から Nco 1 (平滑末端ィ匕した) -Sac I断片として切除し、 Sac I/Pvu IIの制限部位 で、事前に BGHポリ(A)配列が取り込まれた、 BamH I (平滑末端ィ匕した) ZSac Iの 制限部位で pKF3 (Takara社製)に結合した。得られた γ 34. 5— BGHポリ(A)配列を Sal I/Pvu IIで切除し、 pSRaori4 : PZMusashilに取り込み、 ICP34. 5cDNAの PZ Musashil上流及び BGHポリ(A)配列下流を有するアンプリコンプラスミド pSRaPZ Musashil : ICP34. 5 (図 3)を構築した。
[0042] さらに、 pSRaPZMusashil : ICP34. 5による ICP34. 5の発現の効果を確認するた め、 Lipofectamine Plus試薬を用いて、 pSRaPZMusashil : ICP34. 5を U87MG、 A5 49又は B104にトランスフエクシヨンした。モッタ(PBS)及び pHmsi : GFPをネガティブ コントロールとして使用し、 pSRap/Musashil : ICP34. 5の場合と全く同じ方法でトラ ンスフエクシヨンした。トランスフエクシヨンから 2日後、 G207を低い感染効率で重感 染させた。重感染カゝら 48時間後、細胞を収集し、得られたウィルスの収率を、他で記 載の通り(Science 252, 854-856, 1991) Vero細胞に滴定した。
実施例 5
[0043] (PZMusashilで作動する γ 34. 5発現 HSV— 1ヘルパー Ζ欠陥ウィルスベクター、 dvM345の生成)
pSRa P/Musashil : ICP34. 5アンプリコンプラスミドを、 Lipofectamine Plus試薬を
用いて Vero細胞にトランスフエクシヨンした。約 48時間のインキュベーションの後、培 地を除去した。細胞を 0. 01の感染効率(MOI)で G207により重感染させ、 1%の IF BSを含む DMEMで培養した。 Kaplitt et al. (Molecular and Cellular Neurosciences 2, 320-330, 1991)に記載の方法に従い、ウィルスストックを作製した。 G207ヘルパ 一ウィルスの滴定は、文献(Science 252, 854-856, 1991)記載の通りに、 Vero細胞 のプラーク形成アツセィを行なうことにより決定した。以下に説明するように、 U87MG の細胞培養細胞毒性(cell culture cytotoxicity)及び一段階ウィルス成長( single-step viral growth)に基づき、各ストック中の欠陥ウィルスベクターの割合を推 測した。 U87MGにお ヽて最も高!ヽ細胞変性の有効性及びウィルス成長を示した最 良のストックは、継代 4で出現した。このストックを、その後のインビトロ及びインビボ実 験に使用した。
実施例 6
[0044] (細胞培養細胞毒性)
本発明者らは、コントロールとなるウィルスベクターとして、 2種のヘルパー Z欠陥ゥ ィルスベクターを作製した。すなわち、 dvHmsi: GFP及び dvHCRLlである。これら は、 dvM345の作製方法と全く同じ方法に従い、ヘルパーウィルスとして G207の重 感染とともに、 pHmsi: GFP又は pHCRLlを Vero細胞にトランスフエクシヨンすることに より得られた。また、本研究において、本発明者らは、継代 4から得られた系統を使用 した。
[0045] ウィルス感染の 24時間前に、 U87MG、 U251、 A549、 HT29及び B104細胞(1 . O X 106)を 6ゥエル皿に蒔いた。ウィルス感染は、 1%の IFBSを補充した 0. 5mlの PBS中で 30分間行なった。
[0046] ヘルパーウィルス (G207)力価に基づ!/、た 0. 02のプラーク形成単位(PFU) Z細 胞の MOIで、 U87MG及び U251細胞に dvM345を感染させ、また、ウィルス接種 に用いたときと同じ手順によりモッタ感染細胞 (mock-infected cells)から調製した抽 出物を用いて、コントロールをモッタ感染させた。同様に、 G207力価に基づき、 0. 0 2MOIで細胞に dvHmsi: GFP又は dvHCRLlを感染させた。グリオ一マ細胞株(U 87MG及び U251)に関しては、 dvHCRLlはコントロールウィルスとしても使用した
。生存細胞数は、感染後 6時間毎に行なったトリパンブルー排除法により決定した。 アツセィは、全て 3回ずつ行なった。
[0047] A549、 HT29及び B104細胞に関しては、 0. 1の MOIでウィルス感染を行なった 。その他の点においては、実験は上記と同様の方法で行なった。
実施例 7
[0048] (一段階ウィルス成長)
6ゥエル皿の U87MG又は A549のサブコンフルェントな単層を、 0. 02 (U87MG )又は 0. 1 (A549)の MOIで、 1%の IFBSを補充した 0. 5mlの PBS中の dvM345 、 dvHmsi: GFP又はヘルパーウィルス(G207)単独で感染させた。数値(count)は 、ヘルパーウィルス(G207)力価に基づいた。感染後 4時間毎にウィルスをゥエルか ら収集し、ヘルパーウィルス(G207)の滴定を行なった。プラーク数をカウントし、プラ ーク形成単 毎ミリリットル (plaque— forming units per mililiter) (PFU/ml)と表した。 実験は、また 3回ずつ行なった。
実施例 8
[0049] (動物実験)
Japan SLC社より購入した、生後 6週間の胸腺欠損の BALBZc雌ヌードマウス (nu Znu)を、 5匹又は 5匹以下のグループにして無菌ケージで飼育し、オートクレーブし た(autoclaved)食物及び水を自由に利用できるようにした。全ての動物手順 (animal procedure)は Laboratory Animal Center (慶應義塾大学医学部)により承認された。 外科的手順に関しては、 84%の静菌性生理的食塩水(bacteriostatic saline)、 10% のペントバルビタールナトリウム(50mgZml; Abbott Laboratories社製)及び 6%の エチルアルコール力もなる溶液を、各マウスの腹腔内に 0. 25ml投与して麻酔をか けた。マウスの生存状態を確認するために毎日巡回した。
実施例 9
[0050] (モデル 1:皮下腫瘍モデル及び皮下腫瘍への新生物内接種)
50 1中の 5. 0 X 106の U87MG細胞を右脇腹に注入し、皮下腫瘍を誘発した。 移植力ゝら約 10日後、皮下腫瘍の直径が 6mmに到達した頃、マウスをランダムに 3つ のグループに分けた(各グループにお!/、て、 n= 6)。
[0051] マウスは、 20 μ 1のウィルス緩衝液に懸濁した、 1. 0 X 106PFUの G207 (グループ I)又は dvM345 (グループ II)を用いて、新生物内(intraneoplastically)で処理した。 グループ IIIのマウスを、 20 1のモッタ感染抽出物で処理した。腫瘍は、 0. 1mm以 内の外側ノギス測定(external caliper measurements)で測定した。二次元直径測定( bidimensional diameter measurements)により段階的な腫瘍量を得て、腫瘍の成長速 度は、 a力長軸、 b力短軸である、 0. 5 (a X b)日 ηΖθ. 5 (a X b)日 0により決定した。 腫瘍の直径が 24mmを越えた場合、その動物を屠殺した。成長速度の統計学的差 異につ!/、ては、不対 t検定を用いることにより評価した。
実施例 10
[0052] (モデル 2:脳内腫瘍モデル及びウィルスの接種)
マウスに麻酔をかけて定位的装置(D. Kopf Instruments社製)で不動化した後、ブ レグマ上に直線的な皮膚切開を行ない、頭蓋骨に lmmの穴を開けた。 3 1の無血 清培地中の 2. 5 X 105の U87MG細胞を、 5 μ 1のハミルトンシリンジ(Hamilton Company社製)を用いて、ヌードマウスの右前頭葉に定位的に注入した。 10日後、マ ウスをランダムに 3つのグループに分けた(各グループにおいて、 n= 6)。 5. 0 X 105 の G207 (グループ II)、 dvM345 (グループ III)又は 3 μ 1のモッタ感染抽出物(グルー プ I)を同じ配位で定位的に接種し、生存を継続した(and survival was followed) 0生 存率の統計学的差異については、 Wilcoxon signed-ranks testを用いることにより評 価し 7こ。
[0053] 病理学的研究のため、移植から 17日後にマウスを 5. 0 X 105PFUの G207又は d vM345で処理し、力かる処理の 5日後に屠殺した。 PBS中の 1%の PFA及び 0. 5 %ダルタルアルデヒド(Nacalai Tesque社製)で灌流を行なった後、脳を取り除いた。 試料を PBS中の 1%の PFA及び 0. 5%のグルタルアルデヒドに 4°Cで 24時間固定し た。その後、 PBS中の 5—ブロモー 4 クロ口一 3—インドリル j8—D—ガラタトビラノシド( X—gal、 lmg/ml;Takara社製)、 5mMのフェリシアン化カリウム、 5mMのフエロシ アンィ匕カリウム及び 2mMの塩ィ匕マグネシウムを含む基質溶液に腫瘍を 37°Cで 6時 間入れ、 PBSで洗浄し、 30%のショ糖を含む冷えた PBSで 1晚インキュベーションし た。液体窒素中の OCTィ匕合物 (Miles社製)の中で凍結させた後、針路 (needle tract
)の周辺の脳をクリオスタツトで薄く切断した。切片をゼラチンでコートしたガラスのスラ イドに置いた。スライドを PBSで洗浄し、再び X— galで 1晚染色し、その後へマトキシリ ン及びェォシン溶液で対比染色を行なった。
[0054] dvM345の安全性を確認するため、 dvM345の 5. 0 X 106PFUを 3匹のヌードマ ウスの右大脳半球に注入し、接種から 90日後に屠殺した。脳、肺、肝臓及び腎臓を 取り除き、上記の方法と同様に固定及び染色を行なった。
[結果]
実施例 11
[0055] (悪性グリオ一マ細胞における Musashilの mRNA発現)
まず、本発明者らは、 10種のヒト由来腫瘍細胞株、すなわち、 3種の悪性ダリオ一 マ(U87MG、 U251、 T98)、 1種の-ユーロブラストーマ(SK—N—SH)、肺癌(Α5 49)、胃癌(TMK— 1、 MKN74)、大腸癌(HT29、 HCT15ZW)、膀胱癌(KU19 9、 T24)及び前立腺癌(DU145)における Musashilの mRNA発現について、 RT PCR分析により調べた。
[0056] 図 4に示すように、調べた全ての悪性ダリオ一マ細胞が Musashilの mRNAに対し 陽性を示した。 SK— N— SHも陽性であった。これに対して、今回調べたその他の癌 細胞株においては、 Musashilの mRNAは検出されなかった。
実施例 12
[0057] (悪性ダリオ一マ細胞における PZMusashilの転写活性)
腫瘍タイプに特異的な様式(tumor- type specific fashion)において Musashilプロモ 一ターが機能するかどうかを調べて確認するため、 RT— PCR分析により、 Musashil mRNAが発現したグリオ一マ又は Musashil mRNAの発現が検出されなかった A54 9及び HT29を含むいくつかの腫瘍細胞株における GFPレポータープラスミドを用い て、 PZMusashilの転写活性を評価した。 PZMusashilが機能しない B104 (データ は図示せず)をネガティブコントロールとして使用した。各細胞株において、 CMVプ 口モーターによる蛍光レベル (A)は P/Musashilによるレベルよりも高かった(B)。し 力しながら、細胞株の間の (A)と (B)の割合は、ダリオ一マ細胞株の方が調べたその 他の細胞株と比較して著しく高力つた(図 5)。
実施例 13
[0058] (培養における U87MGの pSRa PZMusashil :ICP34. 5の開存性)
pSRa P/Musashil :ICP34. 5による ICP34. 5の発現の効果を調べて確認するた め、 pSRa P/Musashil :ICP34. 5を U87MG、 A549又は B104にトランスフエクショ ンした。モッタ(PBS)及び pHmsi: GFPをネガティブコントロールとして使用した。トラ ンスフエクシヨンの後、 G207を低 MOIで重感染させた。 2日後、得られたウィルスの 収率(G207)をカウントした。 pSRa P/Musashil :ICP34. 5をトランスフエクシヨンし た細胞と、 PBS (モッタ)をトランスフエクシヨンした細胞とのウィルスの収率の割合を計 算した。予想した通り、 U87MG (81 ± 3. 61)における割合は著しく高ぐこれに対し 、 P/Musashil力効率的に働力な!、 A549 (l. 13±0. 15)及び B104 (l. 03±0. 15)では、ほとんど 1. 0であった。このことから、 U87グリオ一マ細胞株において、 P ZMusashilが ICP34. 5を効率的に発現することを確認した。(コントロールプラスミド として pHmsi: GFPも使用したところ、その結果はモッタ(PBS)とほとんど同じであった ) oデータは、 3回の試行の平均及び SDを表す。
[0059] dvM345の細胞毒性の特徴を調べるため、 PZMusashilが効率的に働くヒト由来グ リオ一マ細胞株(U87MG及び U251)及び、 PZMusashilが効率的に働かないその 他の腫瘍細胞株 (A549、 HT29及び B104)について検査を行なった。ダリオ一マ 細胞株に関しては、細胞を 0. 02の MOIで感染させ、 dvHmsi: GFP、 dvHCRLl又 は G207単独をコントロールとして使用した。また、 A549、 HT29及び B104に関し ては、細胞を 0. 1の MOIで感染させ、 dvHmsi: GFP又は G207単独をコントロール として使用した。感染から 18時間後、ダリオ一マ細胞株においてのみ、 dvM345の 細胞変性効果とコントロールウィルスの細胞変性効果との間に統計学的な有意差が 認められた (p >0. 05、不対 t検定)(図 6A、 B)。一方、その他の腫瘍細胞株におい ては、本研究で使用したウィルスの間で細胞変性効果の差異は認められな力つた( 図 6C、 D、 E)。
実施例 14
[0060] (培養における dvM345の成長の特徴)
欠陥ウィルス (dvM345)の存在がヘルパーウィルス (G207)のウィルス収率に景
響を与えるかどうかを調べるため、一段階成長分析を行なった。 dvHmsiGFP及び ヘルパーウィルス (G207)単独をネガティブコントロールとして使用した。その結果、 PZMusashilが効率的に働く U87MGにおいては、早ければ感染から 12時間後に は、 dvM345とコントロールとのウィルス収率(G207)の差力 統計学的に有意であ つた(Pく 0. 05 ;不対 t検定)(図 7A)。また、 PZMusashilが働かない A549におい ては、差異は認められなかった(図 7B)。
実施例 15
[0061] (皮下 U87MG腫瘍における新生物内接種)
U87MG細胞株を用いて、 BALBZc (nu/nu)マウスの脇腹の皮下組織に異種 移植腫瘍を作製した。腫瘍が直径で約 6mmに到達したとき、 1. 0 X 106PFUの G2 07 (グループ II)、 dvM345 (グループ III)又はモッタ抽出物(グループ I)を脇腹の腫 瘍の新生物内に注入した。接種より 6日目以降、 3つのグループの腫瘍の大きさが分 かれた(図 8)。コントロール動物(グループ I)の腫瘍による負担が大きくなつたため( 直径で > 24mm)、実験を 16日目に終了したが、グループ Iとグループ IIとの平均腫 瘍成長割合の差は統計学的に有意であった (p< 0. 0005、不対 t検定)。さらに重 要なことには、グループ IIとグループ IIIとの差は、統計学的に有意であった (p< 0. 0 005)。 16曰目におけるグノレープ IIの腫瘍の成長率は、 9. 94± 1. 13 (SEM)、グノレ ープ IIIの成長率は 1. 42±0. 71であり、グループ IIIの成長率は 21. 9± 1. 37であ つた o
実施例 16
[0062] (dvM345処理後の、 U87脳内ダリオ一マを移植した胸腺欠損マウスの生存)
脳内 U87腫瘍モデルを有するヌードマウスを用いた生存研究において、 G207 (グ ループ II)又はモッタ抽出物(グループ I)で処理したマウスの生存と比較して、 dvM3 45 (グループ III)で処理したマウスの生存では統計学的に有意な生存の延長を確認 した(図 9)。また、 dvM345の安全性について調べるため、 3匹のマウスで実験を行 なった。今回、技術的に得られた最も高い用量(highest dose technically obtained)は 、 5. 0 X 106PFUであった。全てのマウスが、ウィルスの接種より 3ヶ月後まで、顕著 な副作用を示さずに生存した。力かるマウスの脳、肺、肝臓及び腎臓の切片は、針路
の周辺の瘢痕を除いては、異常を見せな力つた。
産業上の利用可能性
本発明によると、ヒトグリオ一マ細胞を特異的にインビボで殺傷する能力を有し、ヒト ダリオ一マの治療に有用でかつ安全な変異 HSVベクター(ウィルスストック)や、かか るウィルスストックを作製するのに用いられる Musashilプロモータを利用したアンプリ コンベクターや、前記ウィルスストックを有効成分とするヒトグリオ一マ治療薬等を提供 することができる。本発明のウィルスストックがヒトグリオ一マ組織に直接投与された場 合、 Musashilプロモータがヒトグリオ一マ細胞内でのみ特異的に作動することから、選 択的にヒトグリオ一マ細胞内で変異 HSVが増殖し、ダリオ一マ細胞が融解して、腫瘍 組織の増殖抑制や消滅を図ることができる。