明 細 書
可変スペクトル光発生装置
技術分野
[0001] 本発明は、出力光のスペクトルの形状が可変である可変スぺクトノレ光発生装置に 関するものである。
背景技術
[0002] 出力光波長が可変である光発生装置としては種々のものがある。例えば、レーザ発 振装置は、共振器長を変化させることで、出力光波長を変化させることができる。しか し、共振器長を変化させるには、機械的な駆動部が必要である。このことは、装置の 安定性を保つ上では好ましくなぐまた、ナノ秒程度の高速の出力光波長の制御を することは困難である。半導体レーザ装置の場合には、温度変化に伴うバンドギヤッ プの変化を利用することで、出力光波長を変化させることができるが、温度制御のた めの時間を要し、周囲環境からの影響も大きい。
[0003] 非特許文献 1に記載されたような光パラメトリック発振を利用した光発生装置は、非 線形光学結晶の方位を変化させることで、広い波長範囲にわたって出力光波長を変 化させることができる。しかし、この光発生装置は、非線形光学結晶の方位を変化さ せるための機械的な駆動部が必要である。このことは、装置の安定性を保つ上では 好ましくない。
[0004] 非特許文献 2に記載されたような基本波から高次高調波を発生させて出力する光 発生装置は、様々な次数の高調波を発生させることができる。このため、必要とする 次数の高調波生成効率を最適化する条件を設定することにより、出力光波長を可変 とすることができる。この非特許文献 2には、第 27次の高調波生成効率を最適化する ことができた旨が記載されているが、この第 27次の高調波のスペクトルは広がりを有 しており、その帯域内で細かい制御を行なうまでに至っていない。
[0005] 以上に挙げたものを含め従来の光発生装置は、出力光波長が可変であるといって も、その可変の程度は限定されている。例えば、近接した任意の複数波長において 鋭い強度ピークを有し、他の波長成分を有しない光を高速な制御によって出力する
ことはできない。
非特許文献 1 :「レーザーハンドブック」第 143頁一第 145頁、レーザー学会編、ォー ム社、 1982年
^^特許乂献 2 : R. Bartels, et al., Shaped-pulse optimization of coherent emission of high-harmonic softX - rays", Nature, Vol.406, pp.164-166 (2000)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0006] 本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、出力光スペクトル形状 の可変の自由度を大きくすることができる可変スぺ外ル光発生装置を提供すること を目的とする。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明に係る可変スペクトル光発生装置は、 (1)所定波長帯域を有し、各波長成分 間の位相関係が時間的に一定である光を出力する光源部と、(2)この光源部から出 力された光を入力し、この光の各波長成分のパラメータを変調して、この変調した光 を出力する光変調部と、(3)この光変調部から出力された光を入力して波長変換し、こ の波長変換により得られた光を出力する波長変換部と、 (4)光変調部における光の 各波長成分のノ メータの変調を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。ここ で、光変調部は、パラメータとして振幅、位相、偏光および波面のうち何れか 1つ以上 のものを変調するのが好適である。
[0008] この可変スペクトル光発生装置では、光源部から出力される光は、所定波長帯域を 有し、各波長成分間の位相関係が時間的に一定であり、各波長成分のパラメータ( 例えば、上記したように、振幅、位相、偏光および波面のうち何れか 1つ以上のもの) が光変調部において変調されて、この変調された光が光変調部から出力される。この 光変調部から出力された光は波長変換部に入力して波長変換され、この波長変換 により得られた光が波長変換部から出力される。そして、光変調部における光の各波 長成分のパラメータの変調が制御部により制御されることにより、波長変換部から出 力される光のスペクトルは可変となる。
[0009] なお、上記した光発生装置において、「所定波長帯域を有し、各波長成分の間の
位相関係が時間的に一定である光」とは、パルス毎の位相波形力 時間が経過して も同じであるという場合のみではなぐ (a)スペクトル波形の位相成分において、パノレ ス毎に時間的にオフセットとして同じ定数値が重畳する場合、(b)スペクトル波形の位 相成分において、パルス毎に時間的にオフセットとして cZ Zx Aの値が重畳する 場合も含まれる(λ:波長、 c :光速、 A:任意の定数)。ここで、上記 (a)の場合は、各パ ルス毎に強度波形は変化しなレ、が、キャリアエンベロープフェーズと呼ばれるパルス 内の位相がドリフトしてレ、く場合に相当する。上記 (b)の場合は、各パルス毎に強度波 形は変化せず、時間的なドリフトが生じている状態を示す。
[0010] ここで、光変調部の構成については、 (1)光源部から出力された光を空間的に波長 分岐する光分波手段と、 (2)この光分波手段により波長分岐された光の各波長成分 のパラメータを変調して出力する空間光変調手段と、(3)この空間光変調手段により 変調された光の各波長成分を合波して出力する光合波手段と、を含む構成を用いる ことが好ましい。この場合には、光源部から出力されて光変調部に入力した光は、光 変調部において、先ず光分波手段により空間的に波長分岐される。そして、この波長 分岐された光の各波長成分のパラメータが空間光変調手段により変調され、この変 調された光の各波長成分が光合波手段により合波されて出力される。光分波手段お よび光合波手段それぞれとしては、例えば回折格子が好適に用いられる。
[0011] また、光変調部は、音響光学効果を利用した素子 (A〇PDF ;Acousto-Optic
Programmable Dispersion Filter)単体で構成することも可能である。音響光学効果を 利用した素子を用いる場合、小型な系を実現することができる。また、光変調部として は、上記以外の構成を用いても良い。
[0012] 波長変換部は、非線形光学媒質を含み、この非線形光学媒質への入射光の波長 とは異なる波長の光を非線形光学媒質から出射させるのが好適である。この場合に は、光変調部から出力されて波長変換部に入力した光は、非線形光学媒質により波 長変換されて波長変換部から出力される。ここで、非線形光学媒質としては、非線形 光学結晶、非線形性を有する光導波路 (例えば、フォトニック結晶光ファイバ、テーパ 一光ファイバ、中空光ファイバ、等)、適切な圧力条件および温度条件を有する気体 媒質、または、これらの組み合わせが、好適に用レ、られる。また、非線形光学媒質を
用いて波長変換するに際しては、第 2次高調波や更に高次の高調波の発生、和周 波や差周波の発生、光パラメトリック発振、 自己位相変調、相互位相変調、などの現 象を利用することができる。
[0013] また、可変スペクトル光発生装置は、波長変換部から出力される光を計測する計測 部を更に備え、制御部が、計測部による計測結果に基づいて、光変調部における光 の各波長成分のパラメータの変調を制御する構成としても良レ、。この場合には、波長 変換部から出力される光のスペクトル等が計測部により計測される。そして、この計測 結果に基づいて、波長変換部からの出力光のスペクトル等が所定値に近づくように、 光変調部における光の各波長成分のパラメータの変調を制御部により制御すること が可能となる。
[0014] あるいは、可変スペクトル光発生装置は、波長変換部から出力された光が照射され た対象物における当該照射に伴う変化を検出する検出部を更に備え、制御部が、検 出部による検出結果に基づいて、光変調部における光の各波長成分のパラメータの 変調を制御する構成としても良い。この場合には、波長変換部から出力された光が 照射された対象物における当該照射に伴う変化が検出部により検出される。そして、 この検出結果に基づいて、対象物の変化が所望の状態となるように、光変調部にお ける光の各波長成分のパラメータの変調を制御部によりフィードバック制御することが 可能となる。このとき、波長変換部からの出力光のスペクトル等も所望値に近づいて いく。ここで、波長変換部からの出力光のスペクトル等の所望値は、予めわかってい る必要はない。
[0015] また、制御部は、光源部および波長変換部の双方または何れか一方の構成要素の 圧力、温度、電流値、電圧値、位置および角度のうち何れか 1つ以上のものを制御 するのが好適である。この場合には、光変調部だけでなぐ光源部および波長変換 部の双方または何れか一方の構成要素も制御されることで、制御の自由度が更に高 くなるので、出力光のスペクトルの可変の自由度が更に大きくなる。
発明の効果
[0016] 本発明に係る可変スペクトル光発生装置は、出力光スペクトル可変の自由度を大き くすることができる。
図面の簡単な説明
[0017] [図 1]図 1は、第 1実施形態に係る可変スペクトル光発生装置 1の概略構成を示すブ ロック図である。
[図 2]図 2は、第 2実施形態に係る可変スペクトル光発生装置 2の概略構成を示すブ ロック図である。
[図 3]図 3は、第 3実施形態に係る可変スペクトル光発生装置 3の概略構成を示すブ ロック図である。
[図 4]図 4は、実施例の可変スペクトル光発生装置 4の構成図である。
[図 5]図 5は、実施例の可変スペクトル光発生装置 4における変調光 Bの各波長成分 の強度および位相を示すグラフである。
[図 6]図 6は、実施例の可変スペクトル光発生装置 4における出力光 Cの各波長成分 の強度および位相を示すグラフである。
符号の説明
[0018] 1一 4…可変スペクトル光発生装置、 11…光源部、 12…光変調部、 13…波長変換 部、 14…制御部、 15…計測部、 16…ビームスプリッタ、 17…検出部、 21…反射鏡、 22…回折格子、 23…シリンドリカノレレンズ、 24…空間光変調素子、 25…シリンドリカ ノレレンズ、 26…回折格子、 27…反射鏡、 31…レンズ、 32…非線形光学結晶、 33· · - レンズ。
発明を実施するための最良の形態
[0019] 以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明す る。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を 省略する。
[0020] (第 1実施形態)
先ず、本発明に係る可変スペクトル光発生装置の第 1実施形態について説明する
。図 1は、第 1実施形態に係る可変スペクトル光発生装置 1の概略構成を示すブロッ ク図である。この図に示される可変スペクトル光発生装置 1は、光源部 11、光変調部
12、波長変換部 13および制御部 14を備える。
[0021] 光源部 11は、所定帯域に亘つて位相関係が一定である基本波光 Aを出力するも
のであり、或る程度広い帯域 (例えば帯域幅 10nm以上)に亘つて基本波光 Aを出力 すること力 Sできる。光源部 11は、例えば、基本波光 Aとしてフェムト秒光パルスを出力 するレーザ光源であるのが好適である。
[0022] 光変調部 12は、光源部 11から出力された基本波光 Aを入力し、この光の各波長成 分のパラメータを変調して、この変調した変調光 Bを出力する。ここで、光変調部 12 は、上記パラメータとして振幅、位相、偏光および波面のうち何れか 1つ以上のものを 変調するのが好適である。また、光変調部 12は、光源部 11から出力された光を空間 的に波長分岐する光分波手段と、この光分波手段により波長分岐された光の各波長 成分のパラメータを変調して出力する空間光変調手段と、この空間光変調手段により 変調された光の各波長成分を合波して出力する光合波手段と、を含むのが好適であ る。
[0023] また、光変調部 12は、音響光学効果を利用した素子 (A〇PDF ;Acousto-Optic
Programmable Dispersion Filter)単体で構成することも可能である。音響光学効果を 利用した素子を用いる場合 J、型な系を実現することができる。
[0024] 波長変換部 13は、光変調部 12から出力された変調光 Bを入力して波長変換し、こ の波長変換により得られた光 Cを出力する。例えば、波長変換部 13は、非線形光学 媒質を含み、この非線形光学媒質への入射光の波長とは異なる波長の光を非線形 光学媒質力 出射させるのが好適である。ここで、非線形光学媒質としては、非線形 光学結晶の他、非線形性を有する光導波路 (例えば、フォトニック結晶光ファイバ、テ 一パー光ファイバ、中空光ファイバ、等)、適切な圧力条件および温度条件を有する 気体媒質、または、これらの組み合わせが、好適に用いられる。また、非線形光学媒 質を用いて波長変換するに際しては、第 2次高調波や更に高次の高調波の発生、和 周波や差周波の発生、光パラメトリック発振、 自己位相変調、相互位相変調などの現 象を利用することができる。
[0025] 制御部 14は、光変調部 12における光の各波長成分のパラメータ(例えば、上記し たように、振幅、位相、偏光および波面のうち何れ力、 1つ以上のもの)の変調を制御 する。光変調部 12が上記のような空間光変調手段を含む場合には、制御部 14はこ の空間光変調手段を制御すれば十分である。
[0026] 第 1実施形態に係る可変スペクトル光発生装置 1は以下のように動作する。所定帯 域に亘つて位相関係が一定である基本波光 Aは、光源部 11から出力されて光変調 部 12に入力し、この光変調部 12におレ、て各波長成分のパラメータが変調されて変 調光 Bとされる。光変調部 12から出力された変長光 Bは、波長変換部 13に入力して 波長変換され、その波長変換により得られた光 Cが波長変換部 13から出力される。
[0027] 波長変換部 13から出力される光 Cの各波長成分は、光源部 11から出力される基 本波光 Aの殆ど全ての波長成分からの寄与を受けたものである。したがって、光変調 部 12における光の各波長成分のパラメータの変調が制御部 14により制御されること により、基本波光 Aが変調されて得られる変調光 Bにおいて或る程度広い帯域に亘 つて各波長成分のパラメータが設定されて、これにより、出力光 Cのスペクトルを可変 とすることができる。光変調部 12における光の各波長成分のパラメータの変調の自 由度が大きいので、出力光 Cのスペクトル可変の自由度も大きい。
[0028] 光変調部 12における光の各波長成分のパラメータの変調に際しては、機械的な駆 動部を用いることなぐ電気的な制御機構を用いることができる。この場合には、装置 の安定性を保つ上で好適であり、また、高速に制御することが可能である。
[0029] また、基本波光 Aから出力光 Cへの波長変換に際して、不要な波長成分が生成さ れないようにすることができ、出力光 Cの必要な波長成分への変換のみに基本波光 Aを利用することができる。これにより、光変調を行わない状態において波長変換効 率が飽和している場合には、光変調を行なうことにより、基本波光 Aから出力光 C中 の必要波長成分への変換のみを高効率に行なうことができる。
[0030] このような可変スペクトル光発生装置 1を用いれば、例えば、光反応材料の結合を 選択的に切断するというような用途において、切断したいバンドに対応する 1または 2 以上の波長の出力光 Cを生成する一方で、切断したくないバンドに対応する波長域 の成分を出力光 Cに含ませないようにすることも、容易に行うことができる。これにより 、例えば光化学反応制御等の工業的な応用にも、可変スペクトル光発生装置 1を用 レ、ることができる。
[0031] 可変スペクトル光発生装置 1から出力される光 Cは、所望の波長成分のみを含むよ うにすることができる。したがって、この出力光 Cを励起等の反応に利用すれば、不必
要な熱の発生を抑制することができる。
[0032] なお、制御部 14は、光変調部 12を制御するだけでなぐ図 1中に破線によって示 すように、光源部 11および波長変換部 13の双方または何れか一方の構成要素の圧 力、温度、電流値、電圧値、位置および角度のうち何れか 1つ以上のものを制御する 構成としても良い。例えば、光源部 11から出力される基本波光 Aの波長が可変であ る場合には、その基本波光 Aの波長を変更するよう制御してもよい。また、波長変換 部 13が光パラメトリック発振を利用するものである場合には、非線形光学媒質への光 の入射方位を制御するようにしてもよい。この場合には、制御の自由度が更に高くな るので、出力光 Cのスペクトルの可変の自由度が更に大きくなる。
[0033] (第 2実施形態)
次に、本発明に係る可変スペクトル光発生装置の第 2実施形態について説明する 。図 2は、第 2実施形態に係る可変スペクトル光発生装置 2の概略構成を示すブロッ ク図である。この図に示される可変スペクトル光発生装置 2は、光源部 11、光変調部 12、波長変換部 13および制御部 14に加えて、計測部 15およびビームスプリッタ 16 を更に備える。
[0034] ビームスプリッタ 16は、波長変換部 13から出力された光 Cを分岐して、その大部分 を透過させ、一部を反射させる。計測部 15は、このビームスプリッタ 16により分岐され て到達した光 Cを受光して、その光 Cを計測する。ここで、ビームスプリッタ 16の透過 光と反射光とを置換したような構成であっても構わないことは言うまでもない。計測部 15には、例えば分光計測器を用いることが可能で、これが受光した光 Cの全帯域もし くは一部帯域におけるスペクトルを計測する構成であってもよいし、また、その光 Cの うち注目すべき 1または 2以上の波長における強度を計測する構成であってもよい。
[0035] 制御部 14は、計測部 15による計測結果に基づいて、光変調部 12における光の各 波長成分のパラメータの変調を制御する。このとき、制御部 14は、計測部 15による計 測結果が所望値に近づくように光変調部 12をフィードバック制御することも可能とな る。この制御の際のアルゴリズムとしては、例えば、シミュレ一ティドアニーリング( Simulated Annealing)法や遺伝的アルゴリズム(Generic Algorithm)等の最適化アル ゴリズムが好適に用いられる。また、制御条件が複雑でない場合は、この制御を手動
で行うことも可能である。
[0036] 第 2実施形態に係る可変スぺ外ル光発生装置 2は以下のように動作する。所定帯 域に亘つて位相関係が一定である基本波光 Aは、光源部 11から出力されて光変調 部 12に入力し、この光変調部 12におレ、て各波長成分のパラメータが変調されて変 調光 Bとされる。光変調部 12から出力された変調光 Bは、波長変換部 13に入力して 波長変換され、その波長変換により得られた光 Cが波長変換部 13から出力される。 波長変換部 13から出力された光 Cは、その一部がビームスプリッタ 16により分岐され て計測部 15に到達し、この計測部 15によりスペクトル等が計測される。そして、この 計測結果に基づいて、波長変換部 13からの出力光 Cのスペクトル等が所定値に近 づくように、光変調部 12における光の各波長成分のパラメータの変調が制御部 14に より制御される。
[0037] したがって、第 2実施形態に係る可変スペクトル光発生装置 2は、第 1実施形態に 係る可変スぺ外ル光発生装置 1で得られる効果と同様の効果を得ることができるだ けでなぐ光変調部 12における変調と出力光 Cのスペクトル等との間の関係が明らか でなレ、場合等にぉレ、ても、波長変換部 13からの出力光 Cのスペクトル等を所望値に 近づけることができる。
[0038] (第 3実施形態)
次に、本発明に係る可変スペクトル光発生装置の第 3実施形態について説明する 。図 3は、第 3実施形態に係る可変スペクトル光発生装置 3の概略構成を示すブロッ ク図である。この図に示される可変スペクトル光発生装置 3は、光源部 11、光変調部 12、波長変換部 13および制御部 14に加えて、検出部 17を更に備える。
[0039] 検出部 17は、波長変換部 13から出力された光 Cが照射された対象物 9における当 該照射に伴う変化を検出する。制御部 14は、検出部 17による検出結果に基づいて 、光変調部 12における光の各波長成分のパラメータの変調を制御する。この制御の 際にも、例えば、シミュレ一ティドアニーリング法や遺伝的アルゴリズム等の最適化ァ ルゴリズムが好適に用レ、られる。
[0040] 例えば、出力光 Cを対象物 9に照射することで該対象物 9において反応生成物を生 成させる場合であって、その反応生成物の生成量を制御したいというようなときに、生
成量が所望値に近づくように制御部 14が光変調部 12を制御することで、波長変換 部 13からの出力光 Cのスペクトル等を所望値に近づけることができる。このとき、出力 光 Cのスぺクトノレ等の所望値は予め分かってレ、る必要はなレ、。
[0041] 次に、本発明に係る可変スペクトル光発生装置の実施例について説明する。図 4は 、実施例の可変スペクトル光発生装置 4の構成図である。この図に示される可変スぺ タトル光発生装置 4は、上述した第 2実施形態に係る可変スペクトル光発生装置 2の より具体的な構成のものである。実施例の可変スペクトル光発生装置 4は、光源部 11 、光変調部 12、波長変換部 13、制御部 14、計測部 15およびビームスプリッタ 16を 備える。
[0042] 光源部 11は、所定帯域に亘つて位相関係が一定である基本波光 Aを出力するも のであり、本実施例では、チタンサファイアレーザ光源が用いられる。このチタンサフ アイアレーザ光源から出力される基本波光 Aは、パルス幅が lOOfs以下のパルス光 で、帯域幅が 10nm以上であり、また、その帯域に亘つて位相関係が一定である。
[0043] 光変調部 12は、光源部 11から出力された基本波光 Aを入力し、この光の各波長成 分のノ メータを変調して、この変調した変調光 Bを出力するものであり、本実施例で は、反射鏡 21、回折格子 22、シリンドリカルレンズ 23、空間光変調素子 24、シリンド リカルレンズ 25、回折格子 26および反射鏡 27を含む。
[0044] 反射鏡 21は、光源部 11から出力された基本波光 Aを入力し、この基本波光 Aを回 折格子 22へと入射させる。回折格子 22は、反射型のものであって、反射鏡 21から到 達した基本波光 Aを入力し、この基本波光 Aの各波長成分を該波長に応じた回折角 で回折させて、これに因り、基本波光 Aを空間的な方向に応じて波長分岐を実現す る。シリンドリカルレンズ 23は、回折格子 22により波長分岐された各波長成分を一軸 方向のみ集光することで、空間的に波長成分を分離する。その集光面には空間光変 調素子 24を光線に対して垂直な方向に配置する。
[0045] 空間光変調素子 24は、配列された複数の画素それぞれについて透過光の位相を 調整することができるものであり、シリンドリカルレンズ 23から入力した各波長成分の 光に対して位相を変調して、その位相変調した各波長成分の光をシリンドリカルレン ズ 25へ出力する。空間光変調素子 24における位相変調は、制御部 14から与えられ
る電気的な制御信号に基づいて制御される。
[0046] シリンドリカルレンズ 25は、空間光変調素子 24から出力された各波長成分の光を 入力し、その光を回折格子 26の回折面上に集光する。このとき、各波長成分に対し てはコリメートしている。回折格子 26は、反射型のものであって、シリンドリカルレンズ 25から出力されて集光された各波長成分の光を入力し、その各波長成分を該波長 に応じた回折角で回折させて、これに因り光を合波する。反射鏡 27は、回折格子 26 により合波された光を入力し、この光を反射させて、変調光 Bとして波長変換部 13へ 出力する。
[0047] なお、所望の動作を実現する為には、回折格子 22、シリンドリカルレンズ 23、空間 光変調素子 24、シリンドリカルレンズ 25および回折格子 26は 4f系をなすことが好適 であるが、これに限定されない。
[0048] また、光変調部 12の構成としては種々の変形例が有り得る。例えば、光分波手段 及び光合波手段を構成する回折格子は反射型および透過型の何れであってもよい し、空間光変調素子も反射型および透過型の何れであってもよい。また、シリンドリカ ノレレンズ 23, 25に替えて凹面鏡等を用いてもよい。
[0049] 波長変換部 13は、光変調部 12から出力された変調光 Bを入力して波長変換し、こ の波長変換により得られた光 Cを出力するものであり、本実施例では、レンズ 31、非 線形光学結晶 32およびレンズ 33を含む。
[0050] レンズ 31は、光変調部 12から出力された変調光 Bを入力し、この変調光 Bを集光し て非線形光学結晶 32へ入射させる。非線形光学結晶 32は、入射光の周波数の 2倍 の周波数を有する第 2次高調波を発生させることができるもので、レンズ 31により集 光された変調光 Bを入力して、この変調光 Bに対する第 2次高調波を発生させる。レ ンズ 33は、非線形光学結晶 32で発生した第 2次高調波を入力し、この第 2次高調波 をコリメートして出力光 Cとして出力する。
[0051] このようにして非線形光学結晶 32において第 2次高調波として得られる出力光 Cの 電場の振幅 E ( V )は、非線形光学結晶 32に入射する変調光 Bの電場の振幅 E ( V )
SH i に対して、下記の関係式で表される。ここで、 Vは光の周波数であり、出力光 Cおよ び変調光 Bそれぞれの電場の振幅 E ( V ), E ( V )は、光の周波数 Vの関数として表
SH i
されている。
[数 1] ) = J ( ' ) ^ - ') ' …
[0052] 例えば、非線形光学結晶 32に入射する変調光 Bの中心周波数が 375THz (中心 波長が 800nm)であるとし、非線形光学結晶 32において第 2次高調波として得られ る出力光 Cの中心周波数が 750THzであるとする。このとき、出力光 Cのうちの周波 数 750THz成分の電場振幅 E (750)は、変調光 Bの周波数(375 + ν ') ΤΗζ成分
SH
の電場振幅と周波数(375- V ') ΤΗζ成分の電場振幅との積(Ε (375 + ν ') · Ε (375_ l i
V '))を変数 V 'について積分した結果として得られる。
[0053] したがって、基本波光 Aの各周波数成分 (各波長成分)の位相関係を光変調部 12 の空間光変調素子 24により変調することで、変調光 Bの各周波数成分 (各波長成分 )の位相関係を適切に設定すれば、出力光 Cの各周波数成分 (各波長成分)の強度 を所望値とすることができる。
[0054] このように基本波光 Aを変調して変調光 Bを得るには、制御パラメータの数が多ぐ 制御の自由度が大きい。したがって、出力光 Cのうち或る周波数成分の強度を大きく する一方で、他の或る周波数成分の強度を小さくするというように、出力光 Cの各周 波数成分 (各波長成分)の強度を自由に設定することができる。このように、本実施例 によれば、出力光 Cのスぺクトノレを可変とすることができるだけでなぐ出力光 Cのス ぺクトル可変の自由度も大きくできる。
[0055] なお、実際には、光変調部 12における変調と出力光 Cのスペクトルとの間の関係が 明らかでなぐ出力光 Cの所望のスペクトルを得る為の空間光変調素子 24における 位相変調の具体的条件を予め見出しておくことは困難な場合もある。そこで、計測部 15として分光器を用いて、出力光 Cのスぺ外ルを計測部 15により計測し、この計測 で得られた出力光 Cのスペクトルが所望値に近づくように、空間光変調素子 24にお ける位相変調を制御部 14によりフィードバック制御するのが好適である。
[0056] このような制御を行なう制御部 14として例えばパーソナルコンピュータが用いられ、
また、制御アルゴリズムとしてシミュレ一ティドアニーリング法や遺伝的アルゴリズム等 の最適化アルゴリズムが好適に用いられる。また、或るスペクトルを有する出力光 cを 得る為の空間光変調素子 24における位相変調の具体的条件が一度求められると、 その後、これと同一のスペクトルを有する出力光 Cを得るには、既に求められた具体 的条件で空間光変調素子 24における位相変調を行なえばよい。
[0057] 次に、実施例の可変スペクトル光発生装置 4における変調光 Bおよび出力光 Cのシ ミュレーシヨン結果について説明する。図 5は、実施例の可変スペクトル光発生装置 4 における変調光 Bの各波長成分の強度および位相を示すグラフであり、グラフ(a)、 ( b)がそれぞれ各波長成分の強度、位相を示している。また、図 6は、実施例の可変ス ぺクトル光発生装置 4における出力光 Cの各波長成分の強度および位相を示すダラ フであり、グラフ(a)、 (b)がそれぞれ各波長成分の強度、位相を示している。
[0058] ここでは、出力光 Cは、波長 397.7nm, 400.0nmおよび 401.2nmそれぞれの成 分が大きくなり、且つ、他の波長成分の強度が小さくなるようにした。また、最適化ァ ノレゴリズムとしてシミュレ一ティドアニーリング法を用いた。その結果、図 5のグラフ(a) 、 (b)に示されたような変調光 Bの強度分布および位相分布とすることで、出力光 Cは 、図 6のグラフ(a)中で矢印で示したように所望の 3波長で強度ピークを有するものと なった。
[0059] なお、図 6のグラフ(a)中の破線は、変調光 Bの各波長成分の位相が全て揃ってい る場合に得られる出力光 Cの強度分布を表し、出力光 Cの各波長成分で得られる最 大強度を表している。また、図 5および図 6で示したシミュレーションは出力光 Cの強 度分布を所望値とするものであつたが、出力光 Cの位相分布を所望値とすることもで きる。また、図 5および図 6で示したシミュレーションは基本波光 Aを位相変調して変 調光 Bを得るものであつたが、所望のスぺクトノレを有する出力光 Cを得る為の変調光 Bを実現するために、基本波光 Aの各波長成分の強度、偏光および波面の何れかを 変調してもよいし、基本波光 Aの各波長成分の位相、強度、偏光および波面のうちの 何れ力、 2以上のものを変調してもよい。
[0060] 本発明に係る可変スペクトル光発生装置は、例えば、光コヒーレンストモグラフィ(O CT: Optical Coherence Tomography)における光源として好適に用いられ得る。
[0061] OCTは、スぺクトノレ幅が広レ、低コヒーレント光を生体等の多重散乱物体(例えば眼 球)に照射して、その多重散乱物体の内部で発生する後方散乱光を高感度に検出 することにより、その多重散乱物体の三次元断層画像を測定する方法である(例えば 文献「佐藤学,他,〃光コヒーレンストモグラフィーの基礎",光学,第 32卷,第 4号,第 268頁一第 274頁, 2003年」を参照)。この OCTでは、多重散乱物体である測定対 象物に適合した光を出力する光源を予め用意しておくことで、その光源から出力され る光に対して特別な変調等を施すことなぐその光を測定対象物に照射して測定す るのが通常である。測定対象物の奥行き方向の測定の分解能は、照射光のコヒーレ ンス長に依存する。 OCTでは、吸収が比較的小さい生体の分光学的窓領域である 波長域 0.7 μ m— 1.3 μ mの光が用いられる。
[0062] 本発明に係る可変スペクトル光発生装置において、 Er元素および Yb元素が添カロ された光ファイバを光増幅媒体として含み中心波長 1.56 x mのレーザ光(基本波光 A)を出力するレーザ光源(例えば IMRA社製のモデル B-150)を光源部 11として用 レ、るとともに、第 2次高調波を発生する非線形光学媒質を含むものを波長変換部 13 として用いる。このとき、可変スペクトル光発生装置から出力される出力光 Cは、中心 波長が 0.78 μ mであって、生体の分光学的窓領域内に含まれる。
[0063] このような構成の可変スペクトル光発生装置は、光源部 11および波長変換部 13そ れぞれを小型とすることができるので、全体としても小型とすることができ、また、生体 の分光学的窓領域において高い自由度で出力光 Cのスペクトルを変更することがで きる。さらに、この可変スペクトル光発生装置は、 OCTにおいて用いられる際に以下 のような利点を有する。
[0064] 第 1の利点として、可変スペクトル光発生装置から出力される出力光 Cのコヒーレン ス長を調整することができる。一般に、スペクトル幅が広いほどコヒーレンス長は短ぐ スペクトル幅が狭いほどコヒーレンス長は長い。本発明に係る可変スぺクトノレ光発生 装置を用いれば、出力光 Cのスペクトル幅が可変であるので、出力光 Cのコヒーレン ス長も可変である。なお、出力光 Cのコヒーレンス長を短くするには、出力光 Cのスぺ タトル幅を広くすることが必要であるが、その為には、波長変換部 13に含まれる非線 形光学媒質として、非線型性が高いフォトニック結晶光ファイバ等を用いるのが好適
である。
[0065] 測定対象物に照射される光のコヒーレンス長が短いと、測定対象物が奥行き方向 に長い場合に、その測定対象物の全体を測定するには長い掃引時間が必要となり、 現実的ではない。また、分解能が高いままで粗い掃引を行なうと、測定対象物中の構 造を検知することができない事態も生じる。したがって、粗い掃引を行なうには、分解 能を低くしなければならない。
[0066] 本発明に係る可変スペクトル光発生装置を用いれば、出力光 Cのスペクトル幅を変 更することで、出力光 Cのコヒーレンス長を変更することができ、したがって、分解能を も変更すること力 Sできる。また、分解能を変更することで、掃引の粗さも調整することが できるので、例えば、低分解能で粗い掃引を行なって測定対象物の全体を測定し、 詳細に測定したい構造が存在している特定部位については高分解能で細かい掃引 を行なって測定することができる。これにより、 OCTによる測定のダイナミックレンジを 上げること力 Sできる。これは、測定対象物の奥行き方向のズームに相当する。
[0067] このとき、測定対象物の横方向のズームも同時に行なうことができる。すなわち、可 変スぺ外ル光発生装置から出力される出力光 Cを集光して測定対象物に照射する 場合に、長焦点集光を行なうと、集光径が大きいので、横方向分解能が低くなり、そ の一方で、レイリー長(コンフォーカル長)も長くなるので、奥行き方向に比較的長い 距離に亘つて均一なビーム径が実現される。逆に、短焦点集光を行なうと、集光径が 小さいので、横方向分解能が高くなるが、奥行き方向に均一なビーム径が実現され る距離が短くなる。したがって、奥行き方向および横方向の双方で低分解能となる条 件で両方向に長距離掃引を行なった後、奥行き方向および横方向の双方で高分解 能となる条件で特定部位について詳細な測定をすることができる。
[0068] 第 2の利点として、可変スペクトル光発生装置から出力される出力光 Cの可干渉性 を様々に調整することができる。本発明では、出力光 Cのスぺクトノレ形状(強度ピーク の波長や数)を自由に変化させることができる。このことから、光コヒーレンス関数を自 由に変化させることができる。光コヒーレンス関数は、各遅延時間差毎の可干渉性の 大きさの度合いを示すものである(例えば文献「Kazuo Hotate, "Application of synthesized coherence mnction to distributed optical sensing , Measurement
Science and Technology, Vol.13, No.11, pp.1746-1755 (2002)」を参照)。
[0069] そして、出力光 Cの光コヒーレンス関数を変化させることで、 OCTの干渉信号に寄 与する奥行き方向の成分が変化する。例えば、測定対象物の界面における光反射 が大きい部位の近辺に被計測対象が存在する場合に、その界面からの反射を干渉 信号に寄与させないように出力光 Cのスペクトルを調整することで、測定対象物の測 定を有効に行なうことが可能となる。
[0070] 第 3の利点として、測定対象物の構成物質の特定が容易になる。測定対象物が如 何なる物質から構成されているかについては、分光計測を行なうことにより知ることが できる。ここで、 OCTにおいては、測定対象物の大きさや形状に応じて散乱 '吸収- 反射等が複雑に変化する。したがって、通常行われているように固定された波長の光 を測定対象物に照射して分光計測を行なっただけでは、十分な情報を得ることがで きない。
[0071] これに対して、本発明に係る可変スペクトル光発生装置を用いれば、出力光 Cのス ベクトル形状(強度ピークの波長や数)を自由に変化させることができる。したがって、 例えば、出力光 Cが 2波長で鋭い強度ピークを有するものとすることで、この 2波長の 干渉信号の比をとるという操作を容易に行なうことが可能となる。そして、測定対象物 の構成物質に固有の情報を干渉信号から得ることができ、これにより、構成物質の特 定が可能となる。
[0072] 第 4の利点として、測定対象物に照射する光のスペクトルの変更を電気的に行なう こと力 Sできる。光の波長の変更は、通常、機械的調整または温度調整により為される 力 両者ともに、変調が遅いという問題があり、また、複雑なスぺ外ルを実現すること ができない。さらに、機械的調整を行なうには、装置内に可動部が必要であるが、こ れは全体の安定性を損なう要因となる。特に、 OCTにおいては、測定対象物の奥行 き方向および横方法の何れにも掃引を行なう必要があるから、波長の操作に長時間 を要する方法では,実用的ではない。しかし、本発明に係る可変スペクトル光発生装 置では、出力光 Cのスペクトルの変更を電気的に高速に行なうことができるので、 OC Tによる測定の時間を短縮することができる。
[0073] 第 5の利点として、 OCTにより得られる三次元断層画像が最適なものとなるように出
力光 cのスペクトルをフィードバック制御することができる。例えば、特定距離にある位 置からの強い反射を低減するための照射光のスペクトル条件を予め求めることは困 難である。しかし、本発明に係る可変スペクトル光発生装置では、最適な測定をする ことができる条件が予め判っていなくても、測定結果を参照しながら、干渉信号が最 適なものとなるように、出力光 Cのスペクトルを変更することができる。
産業上の利用可能性
本発明の可変スペクトル光発生装置は、出力光スペクトル形状の可変の自由度を 大きくすることができる可変スぺ外ル光発生装置として利用可能である。