明細 フ ィ ルタ とそれを備えたバイ オセ ンサ 技術分野
本発明は、 化学、 生化学、 医学な ど の分野にお ける 臨床 試験、 特にポイ ン ト ォブケア検査、 ま たは家庭な どで使用 する 、 血液成分を分離する ため の フ ィ ルタお よびそのよ う な フ ィ ル夕 を備えたバイ オセ ンサに関する 。 背景技術
血液中の成分を測定する 生化学検査は各種の診断、 観察 に広 く 利用 さ れ、 臨床検査 と して重要な検査法 とな っ て い る。 各種の生化学検査装置が開発され多数の検体や多数の 検査項 目 が分析さ れてい る 。 こ のよ う な検査において、 血 液中 の特定の成分、 特に血球成分は、 測定値 に高いバ ッ ク グラ ン ド を生 じ る か、 ま たは測定装置の性能を妨害する た め、 サ ンプル中の血球成分の除去が望まれる 。 ま た、 検査 装置は、 多 く の場合、 少量のサ ンプル量での測定が可能で あ る こ とが望ま し い。
血球成分の 除去は、 し ば し ば、 一般的な フ ィ ル夕 材 を 使用 し て行われ る 。 例 え ば、 電気化学セ ンサ の血液試料 導入路 に一般的な フ ィ ルタ 材 (例 え ば、 グ ラ ス フ ァ イ バ 一、 セ ル ロ ー ス な ど の親水性繊維で構成 さ れ る 不織布、 ま た はパルプ、 濾紙な ど) を 組み入れた 、 フ ィ ルタ ー体 型セ ンサチ ッ プに 関す る 技術があ る (例 え ば、 米国特許
公開第 2 0 0 2 0 1 4 8 7 2 6 号公報を参照)。 しか しなが ら、 こ のよ う な一般的な フ ィ ルタ材を使用 し た フ ィ ル夕では、 相当量の血漿成分がフ ィ ル夕材に吸収さ れて し ま う ために、 濾過後に残るサ ン プルの量がかな り 減 少 して し ま う 。 そのため、 濾過後に十分な量のサ ンプルを 得る には、 多量の血液が必要で あ る 。
こ の よ う な フ ィ ル夕材の問題 に対処するべ く 、 少量の血 液で血球成分の除去を行 う 装置が開発 さ れてい る 例え ば 、 米国特許第 6 , 3 1 9 , 7 1 9 号明細書に開示さ れる 血 球成分分離構造物では、 毛管現象によ り サ ン プルを経路内 に導入 し、 経路内部に配置 し た多数の欠けた 月 ま たは弾丸 の形を した障害物を利用 して血球成分を分離 している 。
しか しなが ら、 こ のよ う な毛管現象 と経路内部の障害物 と を利用 した血球成分分離構造物で も 、 必要な血液量に関 しては、 未だ改善の余地があ る 。 現在、 チ ッ プ夕 イ ブの血 糖セ ンサに使用 さ れるサ ンプル容量は約 0 . 3 〜 4 1 で あ る が、 上記米国特許第 6 , 3 1 9 , 7 1 9 号の血球成分 分離構造物は、 血液の濾過を行 う ため に、 2 0 〜 5 0 μ 1 のサ ンプル容量を必要とする 。 したがつ て、 血球を分離せ ずに血糖セ ンサでの検査を行 う 場合に比ベて、 未だに多量 のサ ンプルが必要 と さ れる 。
また、 血糖セ ンサの代表的な大き さ が幅 6 m m 、 長さ 1
0 m mであ る が、 上記米国特許第 6 , 3 1 9 , 7 1 9 号の 血球成分分離構造物では、 血球移動遅延の効果で血球濾過 を xつ ている ため、 流路長を長 く と る必要があ り 、 流路で あ る毛管経路の幅力 2 〜 5 m m、 長さ が 7 0 m m程度必要
となる 。 その ためデバイ ス のサイ ズが大き く 、 チ ッ プタ イ プの血糖セ ンサ と一体化 して使用する こ とが困難であ る と い う 問題があ る 。
さ ら に、 血液中 に含まれる赤血球の割合は、 5 割近 く に もなる が、 こ の よ う に分離すべき成分が全体の 5 割近 く を も 占め る とい う 血液の性質は、 血液中 の血球成分の分離に おいて、 フ ィ ル夕 が目詰ま り を起 こ しやすい と い う 特有の 課題を提示する 。 発明の開示
本発明は、 こ の よ う な従来の課題を解決する も のであ り 、 必要 と さ れるサ ンプル量が極力少な く 、 チ ッ プタイ プの バイ オセ ンサに適用 し得る程度 に小さ なサイ ズの血液成分 分離用 フ ィ ル夕、 およびその よ う な フ ィ ル夕 と一体化 し た バイ オセ ンサを提供する こ と を 目 的 とする 。 さ ら に、 血球 成分に よ る フ ィ ルタ の 目詰ま り を効果的に防止する フ ィ ル 夕およ びその よ う な フ ィ ルタ と一体化 したバイ オセ ンサ を 提供する こ と を 目 的 とする。
上記 目 的を達成する ため に、 本発明は、 血球成分を含む 血液試料を濾過する ための フ ィ ルタ を提供 し、 こ の フ ィ ル 夕 は、
上記血液試料を流すための流路 と 、
上記流路の一端に上記血液試料を導入する ための開 口 部 と、
上記流路の他端に濾過さ れた上記血液試料を排出する た めの開 口部と を備え、 上記流路内 には血球成分の通過を妨
げる よ う に複数の構造物が配置さ れて い る。 さ ら に、 上記 構造物の各々 は、 隣接する流路の内壁または隣接する他の 構造物 と の間で血球成分が通過できな いよ う なス リ ッ ト を 形成する よ う に間隔をおいて配置さ れ、 上記複数の構造物 および上記流路の 内壁は、 血球成分を収容する ための血球 溜 と して機能する キ ヤ ピティ を少な く と も 1 つ上記流路内 に規定する。
本発明の フ ィ ルタ の好ま し い実施形態では、 上記キヤ ビ ティ が、 少な く と も 2 つ上記流路内に規定さ れている。
本発明のフ ィ ル夕 の好ま しい実施形態では、 上記キ ヤ ビ ティ の奥行き は、 上記キ ヤ ビティ の開 口部の幅よ り も大き い
本発明の フ ィ ルタ の好ま し い実施形態では、 上記キヤ ビ ティ の開 口部の幅は、 約 2 m〜約 1 0 mの範囲であ る 本発明の フ ィ ルタ の好ま し い実施形態では、 上記キヤ ビ ティ の形状は、 ほぼ直方体であ る。
本発明の フ ィ ル夕 の好ま し い実施形態では、 上記ス リ ツ ト の幅は、 約 0 . 1 x m〜約 の範囲であ る。
本発明の フ ィ ル夕 の好ま し い実施形態では、 上記流路は 、 基板と 、 ス ぺ一サ と、 当該ス ぺーサ を介して当該基板に 張 り 合わ さ れる カ バー と か ら 形成さ れる。
本発明の フ ィ ルタ の好ま し い実施形態では、 上記構造物 は、 柱状の形状を有する。
本発明の フ ィ ル夕 の さ ら に好 ま し い実施形態では、 上記 構造物は、 円柱状の形状を有する 。
本発明の フ ィ ルタ の好ま し い実施形態では、 上記血液試 料は、 毛管作用 に よ り 上記流路内 に導入さ れる。
本発明の フ ィ ル夕 の好ま し い実施形態では 、 上記構造物 お よび上記流路の内壁は、 シ リ コ ー ン樹脂、 テフ ロ ン、 も し く はエポキシ樹脂で構成さ れている か、 ま たは これ ら の いずれかで表面が被覆さ れてい る 。
本発明は、 さ ら に別の局面において、 血球成分を含む血 液試料を濾過する ため の フ ィ ルタ領域を備えたノ ィ ォセ ン サを提供する 。 こ のバイ オセ ンサは、
基板 と、
上記基板に支持 された測定系 と、
上記測定系 またはその近傍の上記基板上に支持さ れた酸 化還元酵素を含む試薬系 と、
上記基板と組み合わ さ れる カ バーであ っ て 、 それによ り 上記基板との間に、 上記血液試料か ら 血球成分を除去する ための フ ィ ルタ領域 と、 上記測定系および上記試薬系 を収 容する 反応領域と 、 上記 フ ィ ル夕領域 と連結 し上記反応領 域に試料を導入する ための試料導入路 と を規定する 、 カ バ 一 と を含み、
上記 フ ィ ルタ領域は、
上記血液試料を流すための流路 と、
上記流路の一端に上記血液試料を導入する ための開 口部 と、
上記流路の他端に濾過さ れた上記血液試料を排出する た めの開 口部であ っ て、 上記試料導入路と連結 した開 口部 と
上記流路内に血球成分の通過 を妨げる よ う に配置さ れた 複数の構造物 と に よ っ て規定さ れ、
上記構造物の各々 は、 隣接する流路の内壁ま たは隣接す る他の構造物 と の間で血球成分が通過できない よ う なス リ ッ 卜 を形成する よ う に間隔をお いて配置され、
上記複数の構造物および上記流路の 内壁は、 血球成分を 収容する ための血球溜 と して機能する キ ヤ ビテ ィ を少な く と も 1 つ上記流路内に規定する 。
本発明のバイ オセ ンサの好ま し い実施形態では、 上記測 定系に、 少な く と も一対の電極を含む電極系を含む。
本発明のバイ オセ ンサめ好ま し い実施形態では、 上記キ ャ ビティ が少な く と も 2 つ上記流路内 に規定さ れてい る 。
本発明のバイ オセ ンサの好ま し い実施形態では、 上記キ ャ ビテ ィ の奥行き は、 上記キ ヤ ビティ の開 口部の幅よ り も 大きい。
本発明のバイ オセ ンサの好ま し い実施形態では、 上記キ ャ ビティ の開 口部の幅は、 約 2 m〜約 1 0 / mの範囲で あ る 。
本発明のバイ オセ ンサの好ま し い実施形態では、 上記キ ャ ビテ ィ の形状は、 ほぼ直方体であ る 。
本発明のバイ オセ ンサの好ま し い実施形態では、 上記ス リ ッ ト の幅は、 約 0 . 〜約 2 ΠΙの範囲であ る。
本発明のバイ オセ ンサの好ま し い実施形態では、 上記流 路は、 基板 と、 スぺ一ザ と、 当該スぺ一サを介して当該基 板に張 り 合わ さ れるカバー と か ら 形成 さ れる 。
本発明のバイ オセ ンサの好 ま し い実施形態では、 上記構
造物は、 柱状の形状を有する 。
本発明のバイ オセ ンサのさ ら に好ま し い実施形態では、 上記構造物は、 円柱状の形状を有する 。
本発明のバイ オセ ンサの好ま し い実施形態では、 上記血 液試料は、 毛管作用 によ り 上記流路内 に導入される 。
本発明のバイ オセ ンサの好ま し い実施形態では、 上 3構 造物お よび上記流路の内壁は、 シ リ コ ー ン樹脂 フ ロ ン 、 も し く はエポキシ樹脂で構成されて い るか、 ま たは こ れ ら のいずれかで表面が被覆さ れてい る 。
本明細書中で使用 さ れる 「血球」 ま たは 「血球成分」 と い う 用語は、 当該分野で認識さ れてい る通常の意味で使用 さ れ、 血液中 の赤血球、 白血球、 および血小板を意味する 。 しか しなが ら 、 検査目 的やデバイ ス設計における諸々 の 状況等に応 じ て、 測定結果の正確性に対 して特に影響を及 ぼし得る も の と して、 主に、 赤血球のみ、 も し く は白血球 のみ、 ま たは赤血球および白血球のみを 「血球」 または 「 血球成分」 と して考慮する場合 も あ り 得る。
本明細書中で使用 さ れる 「血漿」 または 「血漿成分」 と い う 用語は、 当該分野で認識さ れてい る通常の意味で使用 され、 血液中の血球成分を除いた成分 (主に液状成分を構 成する血清お よびフ イ ブ リ ノ 一ゲン) の こ と を意味する 。 なお、 「血球」 と し て血小板 を特 に考慮 し な い場合 に は、 血小板 を血漿 ま たは血漿成分に含め る (「血球」 の他の成 分につ いて も 同様)。
本発明 によ り 、 微量サ ンプル量で、 小さ な形状で 、 短時 間で血球と血漿を分離する事が可能な フ ィ ルタ とそれを用
いたバィ ォセ ンサが提供さ れる 。
また、 本発明の フ ィ ル夕 の一実施形態では、 毛管作用 に よ り 血液サ ンプルを流路内に導入する こ と もでき、 その場 合、 従来の フ ィ ル夕材を使用 した も の のよ う に、 サンプル 液を流すため に シ リ ンジな どで圧力 をか ける必要 も ない。
また、 従来の フ イ リレタ材を使用 し た場合、 繊維な どに よ つ てでき る孔の大き さ は正確に決定できな い (平均値 と し て しか把握できな い) が、 本発明の フ ィ ルタ では、 ス リ ツ ト の大き さ が正確に決定し得る ため、 ス リ ッ ト 幅を適切 に 調節する こ と に よ っ て、 異な るサイ ズの分子の 中か ら所望 のサイ ズの も の を比較的容易 に選別する こ とが可能であ る また、 本発明の フ ィ ルタおよびその よ .う な フ ィ ルタ を組 み込んだバイ オセ ンサは、 半導体加工技術を利用 して作製 する こ と によ り 、 大量の均質な装置を ま とめて作製する こ とができ る。
典型的に は、 本発明によ り 、 幅 5 m m、 長さ 9 m m、 高 さ 2 . 5 m m程度の極小の フ ィ ルタ組込型バイ オセ ンサが 提供さ れ、 こ のバイ オセ ンサに よ り 、 3 0 n L 程度の極微 量の血液を血漿 と血球と に分離 し、 血漿中の グルコ ース濃 度な ど を測定する こ とが可能 と なる。 しか し なが ら 、 本発 明の技術的範囲は、 こ の よ う な実施形態に限定されない。 図面の簡単な説明
図 1 A は、 本発明の一実施形態に係る 、 血液中 の血球 と 血漿と を分離する血液成分分離フ ィ ル夕 1 の模式的な上面
図であ り 、 図 I B は、 その斜視図であ る 。
図 2 Aは、 本発明の一実施形態に係る 血液成分分離フ ィ ルタ 1 を図 1 B 中 に示 した切断線に沿っ て切断 した断面の -斜視図であ り 、 図 2 B は、 図 2 A に示す フ ィ ルタ 1 の流路 内部の拡大上面図であ る。
図 3 A、 図 3 B 、 および図 3 C は、 柱状構造物 1 9 およ びそれ ら の配置のバ リ エー シ ョ ン を示す模式図であ る。
図 4 Aは、 採取 し た血液か ら 血球を分離する ための フ ィ ル夕 と、 血糖値の よ う な検査項 目 の分析のため のバイ オセ ンサ とが一体化 した本発明のバイ オセ ンサ 2 の構成を示す 模式的な上面図であ り 、 図 4 B はその斜視図であ る 。
図 5 Aは、 本発明の フ ィ ルタ 1 によ り 血液を濾過 し た と き の試料導入前の状態を示す図であ り 、 図 5 B は、 試料導 入後の状態を示す図であ る 。
図 6 は、 本発明のバイ オセ ンサ 2 に よ る グルコ ース の応 答値変化を示す図であ る。
図 7 は、 本発明のバイ オセ ンサ 2 によ る コ レステ ロール の応答値変化を示す図である。 発明を実施する ため の最良の形態 図 1 は、 本発明の一実施形態に係る 、 血液中 の血球と血 漿 と を分離する血液成分分離フ ィ ル夕 1 の模式的な上面図 (図 1 A ) および斜視図 (図 1 B ) であ る 。
図 1 Aおよび図 1 B を参照 して、 本発明の血液成分分離 フ ィ ル夕 1 は、 基板 1 1 とカバー 1 2 と を含む。 基板 1 1 上には流路用 の溝が予め形成さ れてお り 、 カ バー 1 2 が張
り 合わ さ れる こ と に よ っ て、 流路 1 8 と、 流路 1 8 の両端 の試料導入口 1 4 および試料排出 口 1 5 とが規定さ れる 。 フ ィ ルタ 1 はさ ら に、 流路 1 8 上に血球を塞き止める ため の複数の構造物 1 9 を備える。
こ の実施形態では、 微細な構造物 1 9 がフ ィ ルタ流路 1 8 内 に複数並べ ら れてい る 。 構造物 1 9 の形状は、 好ま し く は柱状であ り 、 最 も好ま し く は円柱状であ る。 こ れ ら の 構造物 1 9 は、 血球を通過させないよ う に、 互い に適切な 間隔をおいて流路 1 9 内 に配置さ れる 。 典型的には、 こ の よ う な柱状構造物 1 9 は、 基板 1 1 を反応性イ オ ンエ ッ チ ングな どの半導体加工技術によ り 加工する こ と に よ っ て作 製する こ とができ る。 こ のよ う に構成さ れた フ ィ ル夕 1 に 血液サ ンプルを通す こ と によ り 、 血液中の血漿 と血球と を 分離する こ とができる 。 なお、 上記の例では、 基板 1 1 を エ ッ チ ングによ り 彫 り 込む こ と によ っ て流路 1 8 および構 造物 1 9 を形成したが、 構造物 1 9 の みをエ ッ チングに よ り 作製 した基板 1 1 の両脇にス ぺーサ を配置 し、 その上に カ バ一 1 2 を張 り 合わせる こ と によ っ て流路 1 8 を形成し て も よ い。
図 1 に示すよ う に、 フ ィ ル夕 1 にお いて、 流路 1 8 上の 柱状構造物 1 9 が形成さ れた部分であ る フ ィ ル夕領域 1 1 0 をはさ んで両側 (試料導入 口側およ び試料排出 口側) に それぞれ、 血球を含む血液用 の液溜 1 6 および血漿用 の液 溜 1 7 が規定さ れる。
本発明の血液成分分離 フ ィ ル夕 1 の好適な実施形態では 、 へマ ト ク リ ツ ト 値が 4 0 力 ら 6 0 で ある血液を試料 と し
て用 い、 その試料を毛管現象に よ り 試料導入 口 1 4 か ら 流 路 1 8 内へ導入する 。 なお、 へマ ト ク リ ッ ト 値 と は、 血球 が血液のなかで 占める容積の割合を示 し、 通常は赤血球の 容積の割合を示す。 導入さ れた血液成分の う ち 、 血球は多 数形成させた柱状構造物 1 9 で塞き止め ら れ、 残 り の血漿 が試料排出 口 1 5 側の血漿用 の液溜 1 7 へ と通過する 。 こ のよ う に して、 シ リ ンジポ ン プな ど を使用せずに、 簡単に 血液中の血球を血漿成分か ら 分離する こ とができ る 。 なお 、 血液導入時、 及び導入後の血球は溶血さ れていない。
図 2 Aは、 本発明の一実施形態に係る血液成分分離フ ィ ル夕 1 を図 1 B 中 に示 し た切断線に沿っ て切断 した断面の 斜視図であ る 。 但 し、 図 2 Aでは、 見やすさ のため に、 力 バー 1 2 を基板 1 1 か ら離 して示 し、 さ ら に柱状構造物 1 9 の数や配置は簡略化 してい る 。 図中 の矢印は試料が進入 する方向を示す。
図 2 B は、 図 2 A に示すフ ィ ルタ 1 の流路内部の拡大上 面図である。 矢印は試料が進入する方向を示す。 図 2 B に 示すよ う に、 1 つ の柱状構造物 1 9 は、 隣 り 合 う 他の柱状 構造物 との間でス リ ッ ト 1 0 1 、 およ び流路 1 8 の内壁 と の間でス リ ツ 卜 1 0 3 を規定する 。
構造物 1 9 は、 血漿成分のみ通過さ せ、 血球を通過さ せ ないため に、 ス リ ッ ト 1 0 1 お よびス リ ッ ト 1 0 3 が最適 な幅になる よ う に、 流路 1 8 内 に配置される 。 構造物 1 9 はさ ら に、 図示さ れる よ う に、 流路 1 8 の内壁 と と も に血 球を収容する ため の血球溜 と して機能する キ ヤ ビティ 1 0 4 を流路 1 8 内に形成する よ う に、 折 り 返し部分を有 して
流路 1 8 内 に配置さ れる。 以下、 れ ら の構成につ いて、 さ ら に詳 し く 説明する。
以下の説明では、 1 つ の柱状構造物 と隣 り 合 う 他の柱状 構造物 と の間で規定さ れるス リ ッ ト 1 0 1 の幅を と し 、 柱状構造物 1 9 と隣接する 流路 1 8 の 内壁と の間で規定 さ れる ス リ ッ ト 1 0 3 の幅を、 τ と定義する 。 また、 柱状 構造物 1 9 と流路 1 8 の内壁か ら形成さ れる キ ャ ビティ 1 0 4 の入 口 1 0 2 の幅を、 β と定義する 。
まず、 幅 α は、 本発明の フ ィ レタ 1 に、 血球を塞き止 め るが血漿成分は通過させる フ ィ ル夕 と しての機能を付与 させる よ う に設定さ れる。 赤血球は扁平なディ ス ク 形状 を 有 してお り 、 その平均的な厚さ は約 2 m、 そ して直径が 約 8 程度であ る。 また、 白血球は、 直径が約 6 〜約 2
5 m の不定形の球状分子であ る 。 したがっ て、 血球を塞 き止め、 血漿が流れやす く する には、 約 2 m以下にする こ と が好ま し い。 また、 を糸勺 0 . 1 mよ り 小 さ く す る と、 液体の表面張力な どの作用 によ り 、 血漿成分でさ え もス リ ッ ト 1 0 2 を通過し に く く なつ て し ま う ため、 3. 約 0 . 1 m以上 とする こ と が好ま し い。 これ ら を実際に 試験 した結果を、 表 1 に示す。
(表 1 )
数値の単位: m
シンボルの説明 : O 血球 の塞き止 めを確認 。 X :血球 の塞き止 めを確
認できず。 厶:血球 および液成分の両方が塞き止められる。
なお、 キヤピティ 1 0 4の入 口 の幅 j8を 1 0 i m、 キヤビティ 1 0 4の入 口 の高 さを 、柱状構造物 の断面を 2 i m X 2 mの正 方形 とした。 α につ いての こ れ ら の最適値は、 柱状構造物 1 9 と流路 1 8 内壁と の間の幅 r につ いて も 同様に当てはま る 。 柱状 構造物間のス リ ッ ト 1 0 1 の幅 α お よび柱状構造物 と流路 の内壁と の間のス リ ツ ト 1 0 3 の幅 ァ を、 上記の よ う に設 定する こ と によ り 、 血漿は通過する が血球は通過さ ない、 血球分離フ ィ ル夕 が作製さ れ得る。
しか しな力 ら 、 上記のよ う にス リ ツ 卜 の幅を設定 した と して も、 ス リ ッ ト 1 0 1 およびス リ ッ ト 1 0 3 には、 血液 サ ンプルを流すにつれて血球が進入 し 「 目詰ま り 」 が発生 する 。 目 詰ま り が発生する と、 血漿でさ え フ ィ ルタ を通過 し得な く なる ため、 血漿の分離効率が低下する 。 本発明の フ ィ ル夕 1 では、 こ の現象を緩和する ため に、 柱状構造物 の配置を、 図 1 および図 2 に示すよ う に流路内の限 ら れた スペース 内で折 り 返し構造 と した。
柱状構造物 1 9 を、 流路 1 8 内で折 り 返 し に配置する こ と によ り 、 柱状構造物 1 9 を流路 1 8 内で直線的に並べた 場合に比べて、 血漿成分が通過する ス リ ッ ト の数を増加さ せる こ とができ る 。 さ ら に、 流路 1 8 内壁 と柱状構造物 1 9 の配列 と に よ っ て、 流路 1 8 内 にキ ヤ ビティ 1 0 4 が形 成さ れ、 こ のキ ヤ ピティ 1 0 4 が、 血球を収容する血球溜 の役割を果た し、 試料導入 口側の液溜め 1 6 に血球が蓄積 する こ と を緩和する こ とができ る 。 結果と して、 ス リ ッ ト
の 目詰ま り を抑制 し、 濾過効率を増大させ得る。
こ の よ う に して、 短時間でよ り 多 く の血漿成分がス リ ッ ト を通過する こ と ができ、 デバイ スサイ ズを大き く する こ とな く 、 効率的に血液成分の分離を行 う こ と ができ る。
構造物 1 9 の折 り 返 し構造と流路 1 8 の内壁と によっ て でき る キ ヤ ピティ 1 0 4 の入 口 1 0 2 の幅 (3 は、 赤血球の 厚さ が約 2 mで ある こ と を考える と 、 約 2 m以上に設 定する こ とが好ま し い。 幅 /3 が小さすぎる と 、 赤血球が入 口 1 0 2 を通過し得な く なっ て し ま う 。 なお、 赤血球の厚 さ は、 性差や個人差があ るため、 最適な i3 の最小値は、 目 的に応 じて変化 し得る 。
' ま た、 幅 を大き く すればする程、 キ ヤ ビティ 内部に留 ま る液成分の割合が大き く な る ため液成分の 回収率を低下 させて し ま う こ と か ら 、 幅 は大きすぎな い方が効率的で あ る 。 最適な ]3 の最大値は、 目 的に応 じて当業者が適宜決 定 し得る が、 血球がキ ヤ ビティ 1 0 4 内 に一列に並ぶよ う な状態が最も 良好な血球分離効率を与え る ため (デ一夕示 さ ず)、 幅 は、 赤血球の直径 と ほぼ同 じ大き さ で あ る 1 0 μ m程度ま たはそれ以下であ る こ とが好ま し レ 。 幅 /3 の 最大値は、 約 8 / m以下であ る こ とが最 も好ま し い
し たがっ て、 ]3 は、 約 2 ΠΙ以上約 1 0 m以下であ る こ と が好ま し く 、 約 2 以上約 8 以下であ る こ と が 最も好ま し い。 し か しなが ら 、 最適な ]3 の最大値は、 目 的 に応 じて 当業者が適宜決定 し得る。
キ ヤ ピティ 1 0 4 の深 さ ( または奥行き) は大き いほ ど 、 血漿の濾過効率は良いが、 キ ヤ ビティ 1 0 4 の大きさ は
、 フ ィ ルタ 1 本体または流路 1 8 の大き さ に よ っ て必然的 に限定さ れる ため、 所望の フ ィ ルタ のサイ ズに応 じて、 適 宜最適な奥行き を決定する。 典型的に は、 例えば、 1 0 m m程度の長さ のチ ッ プ ( フ ィ ル夕本体) に対 して、 2 m m 程度の深さ のキヤ ビティ を作製する こ とが可能であ る が、 これに限定さ れない。
キ ヤ ピティ 1 0 4 の形状は、 典型的には、 図 1 または図 2 に示 される よ う なほぼ直方体の形状である が、 これに限 定さ れない。 図 3 は、 柱状構造物 1 9 およびそれ ら の配置 のパ リ エーシ ョ ン を示す模式図である。 図 3 A〜図 3 C は 、 それぞれキ ヤ ビティ 1 0 4 部分を上か ら見た も のであ る 。 図 3 中 の矢印は、 サ ン プル液の流れる方向 を示す。
図 3 Aは、 図 1 および図 2 に示すも の と同様の ほ ぼ直方 体の形状を し たキ ヤ ビテ ィ を示すが、 各柱状構造物の断面 が円形である (各構造物が円柱状であ る) 点で、 図 1 お よ び図 2 に示すも の と は異な る 。
図 3 B およ び図 3 C は、 図 3 A と 同様に円柱状の構造物 1 9 を折 り 返 し に配匱 し た も のである が、 配置の形状が図 3 Aの も の と は異なる。 図 3 B に示すよ う にキ ヤ ビティ の 入 口 を オープン形状にする と 、 血球がキ ヤ ビティ 内 に入 り 込みやす く 、 また入口 付近での血球の滞留を 防止する こ と に役立つ。 図 3 C は、 キ ヤ ビテ ィ の入 口 の形状は、 図 1 、 図 2 、 お よび図 3 Aに示すも の と 同様である が、 キ ヤ ビテ ィ の底部が円形になっ てい る 点で異なる 。
こ の よ う にキ ヤ ビテ ィ の形状 と しては、 様々 な も のが可 能であ り 、 こ こ に例示 し た も の に限定されな い。
濾過効率は、 流路 1 8 の限 ら れた空間内で構造物 1 9 の 配列の折 り 返し 回数を多 く する こ と に よ り 、 さ ら に向上さ せる こ とができ る。 典型的には、 流路幅を 1 . 5 m m とす る と、 幅 1 0 mの ほほ直方体のキ ヤ ビテ ィ を 1 0 a m m 隔で 7 5 0 回繰 り 返し た配置を とる こ とができ る が、 こ れ よ り 多 く 繰 り 返して ち い し、 少な く て も よい。
また 、 幅 Q! 、 /3 および ァ は、 被験者の血球のサイ ズに よ つ て も変化 させて も よ い。 例え ば、 通常、 男性 と女性 と で は、 赤血球のサイ ズが異なる (女性の赤血球の ほ う がよ り 小さ い ) ため、 女性の血液サ ン プルを使用する場合には、 上記の代表的な値よ り 小 さ い も の を使用する こ と もでき る 本発明の フ ィ ルタ を用 いる濾過に必要なサンプル量は、 流路の深さ 、 構造物の配置な ど に依存 して変化 し得る た め 、 当業者はフ ィ ル夕 の大き さ な どに よ り 適宜最適な量を決 定 し得る 。 本発明の フ ィ ル夕 では、 従来技術にみ られた よ う な フ ィ ルタ材に よ る 吸収はな い。 ま た、 本発明の フ ィ ル 夕でば、 血球移動遅延の効果で濾過を行っ てい る のではな い こ とか ら 、 フ ィ ル夕 のサイ ズを小さ く する こ と ができ る 。 し たがっ て、 サ ンプル量を従来よ り も少量にする こ と が 可能であ る 。
本発明の フ ィ ル夕 の濾過効率は、 柱状構造物の配置、 キ ャ ビティ の形状、 キヤ ピティ 内部の容積な ど に依存する た め、 こ れ ら を適宜最適化する こ とが必要であ る
柱状構造物は断面形状が四角や丸等、 どのよ う な形状で あ っ て も構わない。 しか しなが ら 、 赤血球膜の破壊 (溶血
) をでき る だけ防止する ため には、 柱状構造物は滑 ら かな 表面を有する (例えば、 断面が円形で あ る) こ とが好ま し い。
柱状構造物および流路の内壁は、 シ リ コ ー ン樹脂、 テ フ ロ ン、 エポキ シ樹脂な どの、 血液が凝固 し に く い材料で構 成さ れる か、 またはその よ う な材料で表面が被覆さ れて い る こ とが好ま し い。 ある いは、 血液の凝固 を促進する C a の含有量が少な い、 S i 〇 2 な どの純度の高 いガラ ス 層 を 用 いて作製さ れ得る。
流路 1 8 内部またはキヤ ビテ ィ 1 0 4 内部の高さ (ま た は、 厚さ) は、 任意であ り 得る が、 現在の製造技術の レべ ルを考慮する と、 l O O ^ m程度以下であ る こ とが現実的 であ る 。 しか しなが ら 、 技術水準の変化に応 じて、 それ以 上の厚さ (高 さ) も あ り 得る 。
また、 本発明の フ ィ ルタ は、 半導体加工技術で基板上に 作製した も の に限定されず、 例えば、 プラス チ ッ ク 成型技 術な どで も 同様に作製 し得る 。
本発明はまた、 上記の よ う な フ ィ ルタ を備えたバイ オセ ンサを提供する 。
図 4 は、 採取 し た血液か ら 血球を分離する ための フ ィ ル 夕 と、 血糖値の よ う な検査項 目 の分析のため のバイ オセ ン サ とが一体化 した本発明のバイ オセ ンサ 2 の構成を示す。 図 4 Aは、 バイ オセ ンサ 2 の模式的な上面図であ り 、 図 4 B は、 その斜視図であ る。
図 4 Aおよ び図 4 B を参照 して、 本発明の フ ィ ルタ一体 型バイ オセ ンサ 2 は、 基板 2 1 と、 基板 2 1 に重ね合わ さ
れたカバ一 2 2 と 、 基板 2 1 と カノ、一 2 2 と によ っ て規定 さ れる流路 2 8 と を備えてい る 。 バイ オセ ンサ 2 はさ ら に 、 上記流路 2 8 の一端に形成さ れた試料を導入する ため の 試料導入 口 2 4 と 、 他端に形成さ れた流路か ら 空気を逃が すための空気逃が し 口 2 5 と を備え る 。
バイ オセ ンサ 2 はさ ら に、 流路 2 8 上に形成さ れた、 複 数の柱状構造物 2 9 を備える フ ィ ル夕領域 2 1 0 と 、 その フ ィ ル夕領域 2 1 0 の上流に血球成分を含む血液サ ンプル が滞留する ための液溜 2 6 と、 その フ ィ ル夕領域 2 1 0 の 下流に作用極 2 0 5 、 対極 2 0 6 、 および反応領域 2 1 1 に試料が到達 した こ と を検出する ための液導入検知電極 2 1 2 を収容し た反応領域 2 1 1 と を備え、 さ ら に上記フ ィ ル夕領域 2 1 0 と上記反応領域 2 1 1 と の間 に、 それ ら を 連結する 試料導入路 2 7 と を備える 。 作用極 2 0 5 上に は 、 酵素 (例え ば、 グルコ ース ォキシダーゼ ) およびメ ディ エータ (例え ば、 シア ン化鉄イ オンのよ う な金属錯体) を 含む試薬 2 0 7 が配置さ れてい る。 上記流路 2 8 および柱 状構造物 2 9 は、 反応性イ オ ンエッ チ ングの よ う な半導体 加工技術を用 い る こ と によ り 、 基板 2 1 上に形成し得る 。
バイ オセ ンサ 2 はさ ら に、 作用極 2 0 5 と一体的に連結 した リ ー ド 2 0 8 、 対極 2 0 6 と一体的に連結 した リ 一 ド 2 0 9 、 およ び液導入検知電極 2 1 2 と一体的に連結 した リ ー ド 2 1 3 を備える。 これ ら の電極 ( 2 0 5 , 2 0 6 , 2 1 2 ) および リ ー ド ( 2 0 8 , 2 0 9 , 2 1 3 ) は、 力 バー 2 2 の基板 2 1 と対向する面上に 、 ス ッ 夕蒸着な ど の方法によ り 形成さ れ得る 。
こ の よ う に構成さ れた本発明の フ ィ ルター体型バイ オセ ンサ 2 は、 フ ィ ル夕 を備えていない従来のバィ ォセ ンサ と 同様のサイ ズにする こ と が可能であ り 、 微量サ ン プル量で 、 正確に、 短時間 に、 血糖値な どの分析が可能であ る。
以下、 実施例を用 いて、 本発明をよ り 具体的に説明する が、 本発明の範囲は、 こ れ ら の実施例に限定さ れない。
(実施例 1 )
• 作製 した フ ィ ル夕 を用 いた血液成分の分
本発明に基づく フ ィ ルタ を シ リ コ ン基板上に作製し、 血 液成分の分離を観察した。 以下、 図 1 および図 2 を参照 し て説明する 。
5 mm X 9 m m X 0 . 5 mmの大き さ の シ リ コ ン基板 1 1 を用 いて、 反応性イ オ ンエ ッ チングによ り 、 流路 1 8 、 および複数の柱状構造物 1 9 を上記基板 1 1 の ほぼ中央に 複数の折 り 返し部分を有する よ う に構築した。 さ ら に、 柱 状構造物 1 9 およびシ リ コ ン基板 1 1 の表面に、 熱酸化に よ り 酸化被膜 (図示せず) を形成 した。 こ の基板 1 1 上に 、 シ リ コ ー ン樹脂製の力 パー 1 2 を密着して張 り 合わせる こ と に よ り 、 本発明の フ ィ ルタ 1 を作製した
こ の よ う に して作製 し た フ ィ ルタ 1 は、 流路 1 8 の幅 1 . 5 mm、 咼 さ 3 0 /i m、 長さ 9 mmを有していた。 ま た 、 多数の柱状構造物 1 9 の折 り 返 し と流路 1 8 内壁 と に よ つ てでき る キ ヤ ビティ 1 0 4 は、 ほぼ直方体の形状であ り 、 その深さ (奥行き) は 2 m m , キヤ ビティ 入 口 の幅 ]3 は 1 0 / mであ っ た。 また、 柱状構造物 1 9 の各々 は、 2 a m X 2 j mの正方形の断面を有 し 、 の ピ ッ チで 2 β
mの幅のス リ ッ ト 1 0 1 およ び 1 0 3 を形成する よ う に配 置さ れた。 また、 折 り 返 しは、 2 0 ^ mの ピ ッ チで流路の 長手方向に対 して垂直方向に 7 5 0 回繰 り 返さ れた。
なお、 上記酸化被膜の形成に は、 熱酸化に よ る方法以外 に、 減圧 C V D (化学的気相成長)、 プラ ズマ C V D 、 常 圧 C V D な ど を使用 し得る 。
上記の よ う に作製さ れた本発明の一実施形態に係る血液 成分分離フ ィ ルタ 1 の評価手順は、 以下の通 り であ っ た。 最初に、 作製 した フ ィ ルタ 1 を顕微鏡のステージに載せ、 その フ ィ ルタ 1 の流路の一端に あ る試料導入 口 1 4 に試料 と しての血液を滴下し、 液体の流れを顕微鏡 ビデオ撮影に よ っ て記録 し た。 液体が移動する様子を図 5 に示す。
図 5 Aは、 試料導入前の フ ィ ルタ 1 の様子を示す。 図 5 B は、 試料導入後の フ ィ ルタ 1 の様子を示す。 図 5 の写真 において、 矢印は血液が移動する方向を示す。 それぞれの 写真は、 左側の黒い部分がフ ィ ルタ領域 1 1 0 、 右側の明 る い部分がフ ィ ルタ領域 1 1 0 を通過 したサンプルの液溜 1 7 を示 して いる 。 血液は毛管現象に よ り 写真の左か ら 右 へ と移動する。
血液が試料導入 口 1 4 か ら 導入される と 同時に フ ィ ルタ 1 の試料導入 口 1 4 側の液溜 1 6 に血液が充填さ れ、 続け て フ ィ ル夕領域 1 1 0 内 に充填さ れた。
図 5 B に示すよ う に、 試料導入後、 ろ過さ れた透明な血 漿はフ ィ ル夕領域 1 1 0 か ら下流側の液溜 1 7 へ と流れ出 した。 写真の 明る い部分に見え る境界線は、 血液か ら血球 が分離さ れ、 血漿のみを含むサ ンプル液の最前線の境界で
あ る。 血液導入か ら血漿ろ過完了 までに要した時間は、 平 均 してわずか 2 5 秒以内であ っ た。 こ のよ う に して効率的 に血液中の血球 と血漿を分離する事が可能 と なっ た。
(実施例 2 )
• 本発明のバイ オセ ンサ 2 の作製
図 4 Aおよび図 4 B を参照 して説明する 。 基板 2 1 は、 信越シ リ コ ン社製シ リ コ ン基板 ( P 型、 1 0 0 面、 直径 1 0 0 m m、 厚さ 5 2 5 x m、 抵抗率 1 0 〜 2 0 Q ' c m ) を使用 した。 その基板 2 1 上 に、 反応性イ オ ンエ ッ チ ン グ な どの半導体加工技術に よ っ て、 流路 2 8 、 および複数の 柱状構造物 2 9 を多数の折 り 返 し を有する よ う な配置にお いて作製した。 次に、 シ リ コ ン基板 2 1 表面に熱酸化する こ と に よ っ て絶縁膜を成膜 し た。
他方、 樹脂製シー ト か ら な る カバ一 2 2 の一方の面上 に 作用極 2 0 5 、 対極 2 0 6 、 お よび液導入検知電極 2 1 2 、 な ら びに リ ー ド 2 0 8 、 2 0 9 およ び 2 1 3 をスノ° ッ タ 蒸着する こ と に よ っ て作製 し た。 次いで、 作用極 2 0 5 上 に、 試薬 2 0 7 と して グルコ ース ォキ シダーゼおよびメ デ イ エ一夕 (例え ば、 シア ン化鉄イ オンのよ う な金属錯体) を シ リ ンジに よ るディ ス ペ ンス 法に よ り 配置 した。 こ の力 ノ ー 2 2 を、 上記電極 ( 2 0 5 , 2 0 6 , 2 1 2 ) が形成 された面が対向する よ う に基板 2 1 に加圧熱圧着によ っ て 貼 り 合わせた。 これによ り 、 試料用流路 2 8 、 その流路の 一端に試料導入用 の試料導入 口 2 4 、 他端に空気を逃がす ための空気抜き 口 2 5 が規定 さ れる。
上記電極 ( 2 0 5 , 2 0 6 、 2 1 2 ) お よ び試薬 2 0
定設れるえ 7 o 2
が配置 さ れた領域 (反応領域) 2 1 1 内で血漿内 の測 対象物が測定 さ れる 。 具体的 に は、 作用極 2 0 5 上 に けた試薬 2 0 7 が血液導入 と と も に 融解 し て 、 試薬 2 7 中 の酵素が血液 中 の グル コ ース と 反応す る 。 作用 極 0 5 と 対極 2 0 6 間 に 0 . 5 Vの電圧 を 印加 し て 、 こ ら の電極間 に流れる 電流 を 計測 し て 、 所定の 時間 (例 ば 3 0 秒) 経過後の電流値 か ら グル コ ー ス 値 を算 出す 上記方法で得 ら れたバイ オセ ンサ 2 は、 長さ m m、 幅 5 mm、 高 さ 2 . 5 mmであ り 、 流路 2 8 のサイ ズは
1 . 5 mm、 長 3 7 . 0 mm、 高さ 3 0 / mであ る。 必要 と さ れるサン プル量は 3 1 . 5 n l 未満 となる。 こ の よ う に、 本発明に よれば、 サ ンプル量が従来の血液成分分離 フ ィ ルタ を用 い る場合よ り 少な く な る フ ィ ルター体型バイ オ セ ンサ 2 が提供さ れる。
(実施例 3 )
• グルコース濃度の測定
図 6 は血液中の グルコ ース濃度 8 7 〜 6 4 8 m g Z d l にお けるバイ オセ ンサ感度を比較 した も のである 。 同図 に あ いて黒三角 は標準液を、 黒四角 は本発明の フ ィ ルター体 バイ オセ ンサ 2 での、 黒菱形は比較例 と してフ ィ ルタ を えて いな いバイ オセ ンサでの計測データ を示す。
グルコ ース濃度の異な る血液の調製は、 血液 (へマ ト ク ッ ト 値 : 4 4 ) に グルコ ース溶液を、 8 7 〜 6 4 8 m g d 1 の範囲で添加する こ と で行っ た。 標準液は、 リ ン酸 衝生理食塩水にグルコ ース を溶解した もの を使用 した。
バイ オセ ンサ 2 は、 実施例 2 に示すよ う に作製 した。 ま た、 比較例の フ ィ ル夕 を備えていないバイ オセ ンサは、 必 要 と さ れるサ ンプル量 6 0 0 n 1 の も の を使用 した。
電流値は試料導入 口 2 4 か ら血液を導入 し、 2 5 秒後に 作用極 2 0 5 の リ ー ド 2 0 8 と対極 2 0 6 の リ ー ド 2 0 9 に 0 . 5 Vの電圧を印加 し た。 その 5 秒後に計測を行つ た フ ィ フレタ あ り の本発明のデバイ ス 2 での応答は、 フ ィ ル 夕 な し のデバイ ス の応答よ り も約 2 0 パーセ ン ト 応答値が 上昇 し 、 グルコ一ス標準液の応答値に よ り 近づいた。 こ の こ とか ら感度が向上 し た事が分かる 。
(実施例 4 )
• Π レステ ロール濃度の測
図 7 は血液中の コ レス テ ロ —ル濃度 1 1 3 〜 2 8 8 m g / d 1 におけるノ ィ ォセ ンサ応答を比較 した も のであ る 。 同図 において黒菱形は本発明の フ ィ ルター体型ノ ィ ォセ ン サ 2 であ り 、 黒四角 は比較例 と しての フ ィ ルタ を備えて い ないバィ ォセ ンサであ る 。
コ レステ ロ一ルの異な る血液は、 全血 を遠心分離で血漿 を取 り 除いた後、 高コ レステ ロ ール値を もつ標準血清 (セ ラ ク U ァ ー : L P 異常域、 ァズゥ エル製) を添加する こ と で作製 した。 なお、 本実施の形態では試薬と してコ レス テ ロールエステ ラ一セを用 いた
図 7 に示さ れる よ う に、 フ ィ ルタ を付けていな いパィ ォ セ ンサでは血球が妨害物質 と して作用 し、 コ レス テ ロール 濃度に比例 し た電流値が得 ら れず、 測定不能 となつ たが、
フ ィ ルタ を付けたバイ オセ ンサ 2 の場合は、 コ レス テ ロ一 ル濃度に依存 した値が測定さ れた。 こ の こ と か ら フ ィ ル夕 付のデバイ ス 2 を使用する こ と によ り 、 は じ めて正確な測 定が可能 とな っ た事が分かる 。
なお、 実施例 3 および 4 にお いて、 酵素電極方式に基づ く 測定を例示 したが、 測定手段が酵素電極方式以外の も の を用 いて も良い。 その よ う な -一例 と して、 酵素比色方式が ある 。 産業上の利用可能性
こ の よ う に 、 本発明に係る血球と血漿の分離フ ィ ルタ は 、 バイ オセ ンサや D N A診断等の臨床検査の前処理デバィ ス と して有用であ る。