明 細 書 機能素子およびその製造方法ならびに機能システムならぴに機能材 料 技術分野
この発明は、 機能素子およびその製造方法ならびに機能システムな らびに機能材料に関し、 特に、 ボトムアップ系のシステムと トップダ ゥン系のシステムとの統合に関するものである。 背景技術
従来の機能素子は、 半導体集積回路に代表されるように、 微細加工 に基づく トップダウンのアプローチで製造されたものが主流である。 そして、 特に半導体素子に関しては、 バーディーン (Bardeen)らによ るトランジスタの発明や、 ノイス (Noyce)らによる半導体集積回路の 発明を経て現在、 このトップダウンのアプローチに基づく巨大な半導 体エレク トロニクス産業が興っている。
一方、 トップダウンのアプローチは様々な点で限界が見え始めてい るため、 この限界を打破する手法として、 自己組織化などによるボト ムアツプのアプローチが近年注目され、 盛んに研究されている。
なお、 細胞系も神経系も各場所において自律分散的に時間とともに 連続的に拡大 ·成長することが報告されており (R. R. U i nas, The B i o l ogy of the Brain, p. 94, W. H. Freeman & Company, NY, 1989)、 こ れはボトムアツプの範疇に属する。
また、 ボトムアップでは、 自律分散局所性により各部が局所ルール に従って勝手に構造形成していくが、 この構造形成には四つのタイプ
(一定、 周期的 [入れ子的] 、 機能構造的、 ランダム) があることが セルラ一オートマトンを使って示されている (S. Wolfram, A New Kin d of Science, pp.51-81, Wolfram Media Inc., IL, USA, 2002)。
また、 ドリフ ト速度の一定性に基づき、 時間とともに連続的に移動 する 2次電子 (素粒子の飛跡に沿って生成する電子) を利用した素粒 子検出器としてタイムプロジヱクションチェンバ一 (Time Projectio n Chamber, T P C ) の改良が本発明者らにより報告されている (P.Ne methy, P. Oddone, N. Toge, and A. Ishibashi, Nuclear Instruments and Methods 212 (1983) 273-280) 0
また、 金属界面により形成されるナノ空間、 特に、 2次元試料平面 とこれに対向する探針との局所空間に観測されているブラズモン励起 による表面増強効果など、 有用で興味深い物理現象が観測されている (二又等、 日本分光学会、 平成 1 4年度春季講演会シンポジウム 「顧 微振動分光法の最前線」 講演要旨集、 PP.20- 23) 。
また、 有機金属化学気相成長法 (M0 CVD法) を用いた半導体成 長において成長方向に 1原子層の分解能が得られることが本発明者に より報告されている (A. Ishibashi, MOCVD-grown Atomic Layer Supe rlattices, Spectroscopy of Semiconductor Microstructures, eds. G. Fasol, A. Fasolino, P. Lugl i, Plenum Press, NY, 1989)。
また、 電気化学的成長においても、 その機構の詳細が知られている (春山志郎、 表面技術者のための電気化学 p. il2, 丸善、 東京、 2 0 0 1 ) o ― '
また、 電気化学分野において、 中和した高分子電解質を水中に分散 させた溶液に被塗物と対極とを浸漬し、 被塗物と対極との間に直流電 流を印加して被塗物に高分子電解質を析出させることができることが 知られている (山岡亜夫監修 「実用高分子レジスト材料の新展開ーフ
オ トポリマーとしての応用展開一」 、 第 6章、 シーエムシー出版、 1 9 9 6年) 。
また、 幅約 4 0 nmの金属ヮ'ィヤーの十字配置の交差部に分子エレ メ ントをはさんだ構造が報告されている (Y. Chen, D. A. A. Ohlber g, X. Li, D. R. Stewart, R. S. Williams, J. 0. Jeppesen, K. A. Nielsen, J. F. Stoddart, D. L. Olynick, and E. Anderson,. Nano scale molecular switch devices fabricated by imprint 1 i thograp hy, Appl. Phys. Lett. 82 (2003) 1610) 0
また、 ボトムアップの範疇の他の例として自己組織前進自律的階層 ¾得 ( self-organized progressive hierarchical acquisition, S O P H I A) 化による構造形成の方法やニューロンの成長方法が提案さ れている (特開 2 0 0 0— 2 1 6 4 9 9号公報、 国際公開第 0 2 / 3 5 6 1 6号パンフレッ ト) ほか、 一般に生命 ·生体系に遍く見られる 遺伝子支配による形態発現 (遺伝子由来構造) がある。 他方、 トップ ダウンの範疇の他の例としては M E M S (micro electromechanical systems)系やマイクロケミカルリアク夕一があるほか、 一般的にはホ モ · フアベルとしての人間の脳による構造物形成 (脳由来構造) が挙 【ずられる (例えば、 養老 猛、 「唯脳論」 、 青土社、 1 9 8 9年) 。 上述のトップダゥン系とボトムアツプ系とを統合することができれ ば、 両者の利点を最大限活かすことができ、 従来にない新たな機能素 子の実現が可能になると考えられるが、 本発明者の知る限り、 これま で、 そのための有効な具体的手法は何ら提案されていなかった。
従って、 この発明が解決しょうとする課題は、 生命体に代表される ボトムァップ系とシリコン L S Iに代表されるトップダウン系との利 点を最大限活かすことができる高機能の機能素子およびその製造方法 ならびにそのような機能素子を用いた機能システムを提供することに
ある。
この発明が解決しょうとする他の課題は、 上記の機能素子に用いて 好適な機能材料を提供すること'にある。
上記課題およびその他の課題は、 添付図面を参照した本明細書の以 下の記述により明らかとなるであろう。 発明の開示
本発明者は、 従来技術が有する上記の課題を解決すべく、 鋭意考察 を行った。 以下にその概要について説明する。
周知のように、 トップダウンのアプローチによる半導体デバイスの 製造においては、 フォ トリソグラフィ一を用いた 2次元のパターニン グが多用される。 第 1図 Aに半導体デバイスの一例として M O S L S I (例えば、 メモリ) を示す。 第 1図 Aに示すように、 2次元のパ夕 —ニングは通常、 U V (紫外線) 、 E U V (極紫外線) フォ トリソグ ラフィーや、 電子線リソグラフィ一を用いて、 半導体基板において空 間的に横方向の情報の交換を行うことなく、 各時点で一気に (一括露 光、 現像、 エッチングなど各要素プロセスが行われる時刻、 時刻にお いて瞬間的につまり、 時間軸上の一点一点で) 行われている。 すなわ ち、 2次元のパターニングの大きな特徴は時間が非連続、 散発的 (sp orad i c) に織り込まれていることである。
2次元のパターユングでは、 フォ トレジス トに対する、 フォ トマス クを使った一括露光により構造が決まるめで、 構造形成においては構 造間の横方向の情報の交換はない。 すなわち、 因果律は主に、 面内で はなく面と垂直方向の相互作用の中に存在する (out- of- p l ane causa l i ty) 。 2次元のパターユングでは、 第 1図 Bに示すように、 大局的 ルールの存在のもと、 ブロック構造をとり、 また各ブロック每にある
特別な方位が存在するため、 空間構造は一般に、 微視的にも巨視的に も非等方的になる。 言い換えれば、 構造は外在的要因から決まってお り、 回路設計図の実空間表現にすぎないと言える。 また、 基板上の構 造の変化量は、 時間に対して δ関数状のパルス列となる。
このように、 トップダウン系は、 いわば非連続的に時間が投影され た非等方的な (方向性のある) 構造である。 今、 系が時間連続投影性 あるいは空間等方性を有するときそれぞれ† と記し、 時間非連続投影 性あるいは空間非等方性を有するときそれぞれ と記し、 例えば、 系 が時間連続投影性と空間等方性とを有するとき、 (時間投影性、 空間 方位性) = (†、 † ) のように記すことにすると、 トップダウン系は 時間非連続投影性と空間非等方性とを有するため、 (時間投影性、 空 間方位性) = ( i、 1 ) と表される。
一方、 すでに述べたように、 最近その重要性が認識されてきたもう ひとつの流れはボトムアツプ系である。 そのシステムとしては、 例え ば半導体量子ドッ トに代表される無機物系の自己組織化系がある。 ま た、 生物系の細胞の培養では、 第 2図 Aに示すような細胞および神経 系の成長が挙げられる。 第 2図 Aにおいて、 符号 1 1は生体組織体、 1 2は神経、 1 3は細胞を示す。 細胞系も神経系も各場所において自 律分散的に時間とともに連続的に拡大 ·成長することは、 すでに述べ たとおりである (R. R. L l inas, The B i o l ogy of the Brain, p. 94, f. Freeman & Company, NY, 1989) 0
第 2図 Bに示すように、 ボトムアップでは、 自律分散局所性により 各部が局所ルールに従って勝手に構造を形成していくため、 時間が連 続的に投影されている。 このとき、 例えば、 第 1図 Aの場合と同様の 2次元的広がりを持つボトムアップ構造 (例えば、 膀胱上皮細胞など) では、 因果律は面内に存在する (in- p l ane causal i ty) 。 S. Wo l fram
がセルラーオートマトンを使って示しているように、 この構造形成に は四つのタイプ I〜 I V (—定、 周期的 [入れ子的] 、 機能構造的、 ランダム) がある (S. Wo l fram,' A New Kind of Sc i ence, pp. 51-81,
Wo l fram Med i a Inc. , I L, USA, 2002)。 また、 ボトムアップ系では、 局所ルールに従うことから、 大局的にはこれといった特別な方向が存 在しないため、 空間構造は一般に等方的になる。 この場合、.全体構造 は、 生成則に則って内在的要因から決まる。 構造の変化量は、 時間に 対してスム一ズな連続線となる。
このように、 ボトムアップ系は、 時間が連続的に投影された等方的 な (方向性のない) 構造であるので、 上記の記法に従うと (時間投影 性、 空間方位性) = (†、 † ) と表される。 '
さて、 生物は、 遺伝子により支配される体組織性に基づくボトムァ ップ性と脳による統御性に基づく トツプダウン性とをうまく絡み合わ せて、 総体としてそれらの統合を具現化している。 より具体的には、 体組織形成におけるボトムァップ性と脳によるトツプダゥン性との統 合を、 長い進化の過程を経て、 受精卵からの個体の成長に際し、 細胞 に神経系を付随させることにより行っている。
すなわち、 第 2図 Bに示すように、 ボトムアップの起こった細胞の 集合体では、 神経系という連絡網を随伴することで各場所へのァクセ スが可能となり、 この神経系を介して脳からの指令 ·制御 ·情報抽出 などが行われる。 自己組織化体としての生物にほこの随伴神経系があ ることが本質的である。 '
一方、 系を有効に運用するには、 制御系は被制御系よりはるかに少 ない 「体積」' で情報伝達 '制御を行わなければならない。 生体系は、 そのために、 3次元の細胞系に対し神経系という 1 + α (ただし、 0
< α < 1 ) のフラクタル次元のひもをつけていると言える。 伝達 ·制
御系の次元は常に細胞系の次元より小さいことが必要である。 この神 経系は生体内に 3次元的に張り巡らされている。
生体は、 このように、 受精卵の発生からの経過時間が連続的に投影 された神経系というボトムアツプの自己相似的な低次元性構造物を通 じて、 いわば最小限のセッ トアップによって、 細胞系という 3次元性 を持つ別種のボトムアップ系を制御 ·統合している。
他方、 上述のような生体そのもののシステム以外にも、 人工のシス テムにおいて、 リジッ ドな固体系ではないが、 ドラム缶様の容器中に 充填されたガスという最小限のセッ トアップにおいて、 経過時間の空 間座標への連続的投影を利用し、 フルに 3次元的に空間ア ドレスを認 知するシステムとして第 3図に示すような T P Cがあり、 本発明者ら によりその開発および優れた性能が報告されている (P. Nemethy, P. 0 ddone, N. Toge, and A. I shi bashi , Nuc l ear I nstruments and Method s 212 (1983) 273-280) o
この T P Cについて少し詳しく説明すると、 第 3図に示すように、 ガスの入った円筒形状の T P C 2 1の両端から入射した電子ビーム 2 2 と陽電子ビーム 3とが衝突して新たな素粒子 1 4がジヱッ ト状に 生成する。 この素粒子 2 4の飛跡に沿って生成した電子 2 5は、 軸方 向に一定のドリフト速度で、 T P C 2 1の両端にあるセクター 2 6と 呼ばれる 2次元検出器へ到達するので、 上記の衝突時刻を起点とした ときのセクタ一 2 6への到達までの経過時間で軸方向、 すなわち z方 向の位置が分かる。 第 4図はセクタ一 2' 6の部分の拡大図であり、 符 号 2 6 aはセンスワイヤー、 2 6 bはグリッ ド、 2 6 cはパッ ド、 1 6 dは電気力線を示す。 第 4図に示すように、 セクタ一 2 6のセンス ワイヤー 2 6 aの部分で電子がアバランシヱを引き起こし、 それによ つて電気信号をセンスワイヤー 2 6 aとその下部に存在するパッ ド
6 cとに与えることで x、 y方向の位置が求まる。 こう して 3次元位 置が求まるが、 z方向の位置は、 電子のドリフ ト速度が一定であるこ とに起因して上述のように時間情報が空間に投影されている。 この特 徴からそのシステムはタイムプロジヱクシヨン (時間投影) チヱンバ 一と呼ばれ、 この空間への時間投影のコンセプトの有用性を実証する ひとつの例となっている。
セクタ一 2 6では、 いわばセンスワイヤ一 2 6 aとパッ ド 2 6 cと の間の状態が読み出されている。 つまり、 一種の情報読み出しが行わ れており、 局所アドレシングを行っているとみなすことができる。 パ ッ ド 2 6 cの代わりに例えばワイヤ一とワイヤーとを近接させて交差 させても同様の作用が生じる。 第 4図では、 センスワイヤ一 2 6 aと いう微小電極の近傍の電場集中の様子が端的に示されている。 強い電 場を生じるにはなるべく細いセンスワイヤー 6 aが望ましいが、 こ のように T P Cは時間の空間への投影と、 細い構造体の交差部におけ る電場集中 (およびそれに伴なう信号増幅) という 2つの重要な特徴 を有している。
さて、 ムーア (Moore)の法則に代表されるロードマップに沿った展 開を示すシリコン L S Iは、 いわゆるトップダウン型のデバイスおよ びシステムの代表格であるが、 そのサイズ上、 動作パワー上 (環境温 度上) 、 ならびに製造設備投資上の限界が言われているけれども、 根 本的な解決策は見出されておらず、 早晩、 限界'を迎えると危惧されて 久しい。 ― '
トップダウン型に対するアンチテーゼとしてボトムアツプが叫ばれ て注目されているが、 その最大の難点は、 個別アドレスができないと いう点である。
—ルでは、 生物由来の機能と非生物由来の機能とが、 同じ
相互作用機構 (究極的には電磁相互作用) にまで還元できるので、 進 展の著しいナノテクノロジ一は、 非生物と生物とを統合する潜在的重 要性を秘めているが、 依然として本格的実用化に至っていない。
すなわち、 従来技術の延長線上にある微細構造の作製方法は、 E U Vや電子線リソグラフィーなどを使うものか、 分子などを用いるいわ ゆるボトムアップのものがあるが、 両者をつなぎ、 さらには結合によ りシナジーを見出そうとするデバイス · システムはない。 これは、 上 述の時間連続投影性と空間等方性とに関する記法に従うと、 ボトムァ ップという (時間投影性、 空間方位性) = (†、 † ) のシステムと ト ップダウンという (時間投影性、 空間方位性) = ( i、 ) のシステ ムとの両者がまったく正反対の、 すなわち 対 という性格を持った め、 水と油とが相容れないのとまったく同様に、 両者の間に接点を見 出すことが難しいことによる。
ナノスケールの世界と巨視的スケールの世界とをつなぐことは、 ナ ノテクノロジー分野で今後得られる新しい効果や機能を既存のシリコ ンベースの I Tインフラ構造と接続し、 相乗効果を引き出そうとする 際に避けて通れない関門である。 しかし、 未だ嘗て誰もその接続に十 分に成功していないと考えられる。
ナノテクノロジーを通じてその高度な効能が期待されるボトムアツ プ物質系はこのようにナノスケールで個別ァドレシング可能な仕組み がないため、 本格的な実用化に至っていない。 '
これはすなわち、 人工のボトムアップ系では、 生体の脳と体組織と を結ぶ神経に相当するボトムアップの主体に随伴する制御ラインを設 けることに成功していないため、 これがトップダウン · ボトムアツプ 両系統の接続をこれまで困難にしてきたといえる。
時間とともに成長して 3次元的に構造を張り巡らしアクセスすると
いう生体の神経系の備える特徴を部分的に満たす、 似て非なるシステ ムとして上述の T P Cがある。 これは、 電子の一定ドリフト速度に基 づく時間連続投影性と、 細い導電構造体の交差部における信号増幅に 基づくシステム全体への 3次元的なアクセスという 2つの重要な特徴 を有しているが、 この T P Cはその内部にガスを含むので、 完全な固 体デバイスとしては成立していない。
すでに述べたように、 従来、 トップダウン系をなす半導体集積回路 (例えば、 メモリ一) などの 2次元構造体の製造には、 第 1図 Aに示 すような一括露光によるパターユングが用いられる。 この場合、 分解 能は x、 yの 2方向に要求されるが、 その精度は現在の最高の分解能 でも、 生産レベルで 7 O n m程度、 研究室のチャンピオンデータでも 数 n m程度であり、 しかもこれはバルクサィズ全体に亘つては実現さ れていない。
また、 2次元試料平面とこれに対向する探針との局所空間で観測さ れているプラズモン励起による表面増強効果など、 有用で興味深い物 理現象が観測されているが (二又等、 日本分光学会、 平成 1 4年度春 季講演会シンポジウム 「顕微振動分光法の最前線」 講演要旨集、 pp. 2 0-23) 。 このような物理現象を担いうるナノ構造体を例えば m m〜c mのバルクサィズに亘つて並列多重化したシステムは存在しない。 す なわち、 ナノスケールで稠密な構造を有し、 しかも個別アクセスが可 能な、 ナノ離散化バルクサイズ構造体をなす物 «は存在しない。
上記の課題の解決は、 いわば、 水と油とを結ぶところの石鹼の性質 (両親媒性) あるいは細胞系と脳系との間を結ぶところの神経系に相 当する資質を備えた接続中間層あるいは接続プラッ トフオームを用意 することにより達成することができ、 特に、 人工神経系によりボトム アップ系とトップダウン系とをつないだ配置を取ることにより達成す
ることができる。
より詳細には、 (時間投影性、 空間方位性) = (†、 † ) のボトム ァップ系と (時間投影性、 空間方位性) = ( 、 1 ) のトップダウン 系との間に、 第 3の構造として (時間投影性、 空間方位性) = (†、 i ) の性質を持つ系を揷入することにより達成することができる。 こ のために、 人工のボトムアップ系で神経に相当する随伴ラインを設け る。 あるいは、 あらかじめ設けておいた随伴系のそばに自己組織化系 を成長させる。
第 5図に示すように、 1次元超格子 3 1 の成長を、 時間が投影され たものとして起こさせる。 ここで、 1次元超格子 3 1の成長方向の空 間座標は時間の流れをそのまま表しているため、 これは時間が連続的 に空間構造へ投影された系と言える。 制御された成長速度、 望ましく は一定の成長速度を用いることにより、 時間 (座標) による空間構造 の連続的な制御を行う。 また、 成長方向という特別な方位を存在させ ることにより、 空間構造を一般に非等方的とすることができる。
さらに、 上記のようにして成長させた 1次元超格子 3 1の薄片化を 行う。 その意義は次の点にある。 第 6図 Aは 1次元超格子 3 1、 第 6 図 Bは 1次元超格子 3 1 をワイヤー化した超格子ワイヤー 3 2、 第 6 図 Cは 1次元超格子 3 1 を薄片化した超格子薄片 3 3を示す。 第 6図 A、 第 6図 Bおよび第 6図 Cに示すように、 1次元超格子 3 1は確か に成長方向に時間 tが織込まれている構造であ が、 時間 (=成長方 向の軸上の一点) にアクセスする際、 距離 rを指定しても面内座標は 無限にあること (第 6図 A ) 、 1次元超格子 3 1 をワイヤー化してし まうと、 時間 (=成長方向の軸上の一点) を指定した時、 その部分は 量子ドッ トであるため他所からアクセスができない (第 6図 B ) 、 と いった問題があるのに対し、 1次元超格子 3 1 を薄片化した時には、
一義的に位置を決定することができ、 かつ、 Γだけ離れた異なる別の 一点 (地点) も一義的に定まり、 そこから横ラインを通じてアクセス もできる (第 6図 C ) 。 このよ'うに、 1次元超格子 3 1の薄片化によ り、 上述の (†、 i ) の性質を有する系を実現することができる。 さらに、 第 7図に示すように、 上記の 2次元の超格子薄片 3 3をも うひとつの同様な超格子薄片 3 4と互いに 9 0度方位がずれた状態で 重ね合わせる。 この超格子薄片の 2枚重ねで擬似的 (離散的) な等方 性を回復すると同時に、 この 2枚重ねで 2次元格子を形成することに より、 ナノサイズにおいて離散的しかし稠密に空間にアクセスする仕 組みができ、 これを以つて全体で連続的な任意のボトムアップ系に対 し個別にァドレスする神経系に相当するものを人工的に付与すること ができる。
第 7図に示す構造は、 第 1図 Aおよび第 図 Bに示すボトムアップ 系が、 時間が連続的に投影された等方的な (方向性のない) 構造 (こ れを今第 1の構造とする) であり、 第 1図 Aおよび第 1図 Bに示すト ップダウン系が、 時間が非連続的に投影された非等方的な (方向性の ある) 構造 (これを今第 2の構造とする) であるのと対照的に、 丁度 それらの中間の性質を有する、 時間が連続的に投影された非等方的な (方向性のある) 構造 (これを今第 3の構造とする) であり、 ボトム アップ系とその連続時間性を、 またトップダウン系とその空間非等方 性を共有する。 このため、 この第 3の構造は、 ポトムアップ系とトツ プダゥン系との双方に良い親和性を有しており、 時間連続投影性およ び空間等方性具有、 つまり (†、 † ) なる性質と時間非連続投影性お よび空間非等方性具有、 つまり ( 、 ) なる性質というまったくの 両極端の構造 (だからこそそれらの結合がこれまでなされなかった) を結びつけることができる。
しかも、 第 7図に示すように、 第 3の構造は、 上記の超格子薄片を 2枚重ね合わせることで離散的な等方性 (擬似等方性) を回復させ、 ボトムァップ系に 2次元的に完全にアクセスすることができる。
さらに、 すでに述べたように、 従来、 トップダウン系をなす半導体 集積回路などの 2次元構造体では一括露光によるパターニングが用い られ、 分解能は x、 yの 2方向に要求され、 しかもその精度は現在の 最高の分解能でも、 数 n m程度であるのと対照的に、 上記の第 3の構 造の部分は、 時間を空間に投影する手法で形成するため原子層の分解 能を持つことができる。 このため、 たとえボトムアップ部分が分子程 度の大きさのュニッ トからなつていても、 そこへ個別アクセスするこ とが可能となる。
従来のリソグラフィ一の分解能限界を乗り越える手法そのものとし て、 自己組織化を用いる試みがなされている。 実際、 例えば、 自己組 織化でできた量子.ドッ トゃ単一分子を使った 2次元メモリでは、 数人 オーダーの精度での配列が可能である。 しかし、 これらの自己組織化 微細構造への独立アクセスに関しては方法がない。 金属配線などで外 からアクセスしょうとしても、 金属配線をリソグラフィ一により形成 するのでは、 すでに述べたように、 分解能が十分ではない。
すなわち、 トップダウン系で用いられる従来のリソグラフィ一では 1原子層オーダーの分解能はまったく得られておらず、 また、 ボトム アップのみを用いたのでは (分解能はまだしも)' 独立アクセスが不可 能であったものが、 上記の超格子薄片' 3' 3のように、 1次元超格子の 成長速度を制御して時間を空間に投影するとともに、 これを薄片化し て方向性の自由度を最小に絞った構造を用いることにより、 トップダ ゥン系とボトムアップ系とを相補的につなぐことができ、 1原子層ォ 一ダ一の分解能と独立アクセスとの両方を達成することができる。 す
でに述べたように、 分解能に関しては、 第 8図に示すように、 本発明 者により、 MO CVD法による A l A s/G aA s 2原子層超格子の 成長において成長方向に 1原子層の分解能が得られることが示されて レヽる Ishibashi, MOCVD - grown Atomic Layer Superlattices, Spe ctroscopy of Semiconductor Microstructures, eds. G. Fasol, A. F asolino, P. Lugl i, Plenum Press, NY, 1989)。 ここで、 第 8図 A、 第 8図 Bおよび第 8図 Cはそれぞれ、 透過型電子顕微鏡 (TEM) に よる暗視野像、 格子像および回折パターンを示す。
すでに述べたように、 MO CVDの成長機構は本質的に表面拡散と キンク成長とからなり、 第 9図に示す電気化学的成長機構と同じであ る (春山志郎、 表面技術者のための電気化学 p.112, 丸善、 東京、 2 0 0 1 ) 。 従って、 1次元超格子の成長は電気化学的手法を用いて も時間の関数として行うことができる。 つまり、 電気化学的手法を用 いて第 6図 Aに示すような時間の連続的な流れをそのまま表している 1次元超格子を成長させることができ、 連続的時間座標による空間構 造の制御を行うことができる。 第 1図 Aおよび第 1図 Bに示す一括露 光、 現像、 エッチングという時間軸上の離散的な点での空間構造の制 御に比べ、 一桁以上の分解能の向上が可能である。
このため、 上記の方法によれば、 微細で離散的かつ稠密な繰り返し 構造、 例えば、 金属などの導電体ストリップ /誘電体の繰り返し構造 を原子層の精度で形成することができる。
上記の第 3の構造をこのような導電体ストリップ /誘電体の繰り返 し構造で形成する場合、 第 1 0図 Cに示すような、 導電体ストリップ 4 4 2がそれらの面同士が対向するように交差していてその交差 部の面積が大きい配置ではなく、 第 1 0図 Bに示すように、 導電体ス トリップ 4 1、 4 2がそれらのナイフエツジ同士が対向するように交
差していて、 その交差部の面積が非常に小さい配置とするのが望まし い。 第 1 0図 Bの場合、 導電体ストリップ 4 1、 4 2の厚さ、 すなわ ちエッジ幅は例えば 1〜 1 O n'mオーダーであり、 このとき導電体ス トリップ 4 1あるいは導電体ストリップ 4 2を隔てる誘電体の厚さは 例えば 1 0〜 1 0 0 nmオーダーである。 第 1 0図 Bにおいて、 符号 4 5は 1辺のサイズが例えば 1〜 1 0 nmオーダーの擬 0次元スぺ一 スを示す。
第 1 0図 Bに示す配置が望ましい理由を以下に示す。
第 1 0図 Aは局所的な電磁場による表面増強効果が確認されている S PM (表面プローブ顕微鏡) の配置を示し、 探針 4 3の先端が試料 の表面 4 4 ( 2次元面) に近接している。 以下、 第 1 0図 Aに示す場 合と第 1 0図 Bに示す場合とについてナノ空間での電位の空間分布を 計算する。'
第 1 0図 Aの場合は、 鏡映効果を勘案して探針同士が対向している 場合として計算することができる。 この時の探針の先端間の距離と、 第 1 0図 Bの交差部の導電体ストリップ 4 1 と導電体ストリップ 4 2 との間隔は、 比較のため同じとする。 今、 真空中に金属性の構造物が あり、 金属部の電位は外から設定しているとすると、 空間電荷はゼロ であるので、 この場合に解くべきポアッソン方程式は簡単になってラ プラス方程式
( d z/dx2+ d 2/Θγ2+ d z/dz2) φ (x, y, z) = 0 ( 1 ) となる。 空間をメッシュ (間隔 Δ) に ΐ刀り差分方程式化すると Φ (i, j,k) に対して、
d φ (i, j,k)/3x = (φ (\, Λ)-Φ (卜 1, j,k))/ Δ
d φ (i, j,k)/5y = (φ (ι,ί )-φ (i, j-l,k))/ Δ
d φ (i, j,k)/5z = (φ (i, j,k)-<^ (i, j,k-D)/ Δ
となる。 例えば、 X については、
d 2 Ι dx2= (φ' (i + 1, j,k)- Φ' (i, j,k))/A
= ((Φ (ill, j,k)-<^ (i, ))/ -Α-( (i,j,k)-<^ (i-1, j,k))/ Δ)/Δ = ((Φ (i + 1, j,k) + ^ (i-l,j,k) - 2φ (i, j,k))/ Δ2
となる。 同様にして 32 φ I δγ d 2 φ I 3z2を求めて ( 1 ) 式に 代入すると結局
0 = ((Φ (i + 1, j,k) + ^ (i-1, j,k)— 2φ (i, j,k))/ Δ2
+ ((φ (i, j ,k) + 0 (i, j-l,k)- 2φ (U,k))/ Δ2 + ((φ (U,k+1) + φ (i, j,k_l)— Ζφ (i,j,k))/ Δ2
となる。 以上をまとめると
Φ (i, j,k) = (Φ (i + 1, j,k) + ^ (i-1, j,k)
+ (φ (i, j + l,k) + ^ (i, j-Lk) + (Φ (i, j,k+l) + (i, j,k-l))/ 6
( 2 ) という漸化式を回すことによってラプラス方程式の解が求まる。
第 1 0図 Aの配置における境界条件を入れて ( 2 ) 式を用いて計算 すると第 1 1図〜第 1 4図に示す電位分布が得られる。 ここで、 第 1 1図〜第 1 4図の各番号 ( 1〜 1 2 ) は探針の先端間の空間座標を表 し、 0と 1 2が探針の先端の位置である。 第 1 1図〜第 1 4図の各 a 図においては、 z軸はフルスケール 1 0 0 0 (任意単位) で固定であ り、 各 b図においては、 電位の大きさによってスケ一リングを行って 縦軸を描いてある。
同様にして第 1 0図 Bの場合、 すなわち導電体ストリップ 4 1、 4 のナイフェツジ同士が対向している場合について計算すると、 第 1 5図〜第 1 8図に示す電位分布が得られる。 第 1 5図〜第 1 8図でも 上記と同じく、 各番号は導電体ストリップ 4 1、 4 2のナイフェツジ 間の空間座標を表し、 0と 1 2がナイフエッジの先端の位置である。
また、 上記と同じく、 第 1 5図〜第 1 8図の各 a図においては、 z軸 はフルスケール 1 - 0 0 0 (任意単位) で固定であり、 各 b図において は、 電位の大きさによってスケ一リングを行って縦軸を描いてある。 第 1 1図〜第 1 4図と第 1 5図〜第 1 8図とを比較すると、 第 1 0 図 Aに示す場合および第 1 0図 Bに示す場合ともに、 交差部の断面積 は 0次元であることを反映して、 中間地点付近では似たよう.な電位変 化、 すなわち急峻な電場変化をしていることが分かるが、 第 1 2図の 番号 5から第 1 3図の番号 7への変化量と、 第 1 6図の番号 5から第 1 7図の番号 7への変化量とを比較すると、 同じ電位を与えた場合で も、 探針の先端同士が対向している場合よりもむしろ、 導電体ストリ ップ 4 1、 4 2のナイフエッジ同士が十字状に交差して対向している 場合の方が、 単位長さあたりの電場変化が大きく、 強い量子効果を引 き出すことができることを示唆している。
第 1 1図〜第 1 4図に見られるように、 対向探針間のポテンシャル は両探針の先端を結ぶ軸の方向 (図中、 上下方向) に対称であり、 ま た、 その軸の周りに回転対称であるのに対し、 ナイフエッジの十字交 差配置では、 第 1 6図および第 1 7図に見られるように、 中間点付近 でポテンシャルが鞍点状の特異な形状となる。 すなわち、 上下非対称 であり、 2回回転対称性と、 ;r / 4回転 +上下反転の対称操作に対す る不変性とを有する。 すなわち、 D 2 d対称性を持つ。 これらは、 十字 交差部にはさまれる分子の配置 ·荷電対称性を制御して新しい量子機 能を引き出すための良いッ一ルとする とができる。 また、 交差角を 9 0度からずらすことにより、 D 2 対称性へとブレークダウンするこ ともできる。
また、 第 6図 Cあるいは第 7図に示す構造において、 1次元超格子 3 1 を導電体層と誘電体層との周期構造体とし、 その導電体層の厚さ
を十分に小さくすることにより、 第 1 0図 Bに示す構造および第 1 5 図〜第 1 8図に示す電位分布を実現することができることが分かる。 これにより、 上記の第 3の構造において、 表面増強効果を引き起こ すようなサイ トを超多重並列に並べることができる。 この場合、 表面 プローブ顕微鏡のへッ ドを多数並べた構造の多重並列表面プローブの 場合とまったく異なり、 稼動部がない点が大きなメ リッ トである。 ま た、 超格子薄片として例えば厚さが 1〜 1 0 0 mのものを用いるこ とにより、 導電体ストリップ 4 1、 4 2を極めて細くすることができ- かつ、 導電体ストリップ 4 1、 4 2の高い導電性と薄片面の平坦性と を維持することができる。
例えば、 第 1 0図 Bに示す導電体ストリップ 4 1、 4 2の交差部の 擬 0次元スペース 4 5にボトムアップ物質を設けると、 この第 3の構 造における x、 y交差系をなす導電体ストリップ 4 1、 4 2を人工神 経ラインとして、 例えばこの第 3の構造の外側に設けた従来のシリコ ン L S I系とそのボトムアップ物質とをつないで新規の機能を得るこ とも可能となる (例えば、 特開 2 0 0 0 _ 2 1 6 4 9 9号公報、 国際 公開第 0 2 / 3 5 6 1 6号パンフレッ ト) 。
導電体ストリップ 4 1、 4 2、 より一般的には導電ラインは、 電子 を媒体としているので、 相互作用が伝わる速さが極めて速い。 他方、 ボトムアップ領域の変化、 特に原子の配置 (コンフィグレーショ ン) の変化 (官能基の位置変化など) は慣性質量が大きいため、 速さはか なり遅い。 通常、 両者の速さの間には一桁以上 (一般には数桁) の差 がある。 従って、 第 7図に概念的に示した配置を実物質を用いて実現 した一例である第 1 9図に示す構造はナノスケールで離散化されたバ ルクサイズ時空間系であり、 各導電ラインの交差部にはさまれた原子 -分子とラインを流れる電子 (または正孔) とを断熱近似的に扱うこ
とができる。 すなわち、 第 1 9図は金属と誘電体との周期構造体から なる 2枚の超格子薄片を互いに 9 0度方位がずれた状態で重ね合わせ たものであり、 金属からなる導電体スト リップ 4 1、 4 2の交差部の 擬 0次元スペース 4 5にボトムアップ物質が設けられる。 導電体スト リップ 4 1は誘電体層 4 6で分離され、 導電体ストリップ 4 2は誘電 体層 4 7で分離されている。 第 1 9図には、 この系がメモリであると した場合に記憶密度 1 T b / i n 2 に相当する各部の寸法の例を記載 した。
通常、 原子団 ·分子団の相互作用は最近接のものを通じて漣が立つ ように、 いわば近接場的に伝わる。 しかし、 第 1 9図に示す系では、 導電ラインを通じて原子 ·分子にとっては瞬時に、 いわば遠隔作用的 にやり取りが起こる。 系が隅々までを 「知っている」 ことが臨界状態 の本質のひとつであるので、 この第 1 9図に示す系は、 従来の物質に ない (例えば、 連続系に対し離散系であるセルラ一オートマ トン (例 えば、 (S. Wo l fram, A New Kind of Sc i ence, pp. 51-81, Wo l fram Me di a Inc. , IL, USA, 2002)参照のこと) がそうであるように) 「臨界 状態」 に親しい新物質ということができる。 そして、 この系に現れる と期待される変調された自己組織化臨界現象や自発的対称性の破れを 通じてナノ構造物理の新側面を現出させることができる。 すなわち、 局所的かつ個別的にァドレスすることの可能なナノ構造体を大局的サ ィズで得ることによつて微視的世界と巨視的世界とをつなぐとともに 新しい量子機能を創出することができる。
この発明は上記の考察に基づいて案出されたものであり、 上記の考 察、 後に記述する発明の実施の形態などにより裏付けられるものであ る。
すなわち、 上記課題を解決するために、 この発明の第 1の発明は、
局所的な相互作用により形成される第 1の構造と予め設定された大 局的な規則により形成された第 2の構造とが、 非等方的な構造を有す る第 3の構造を介して結合されてなることを特徴とする機能素子であ る。
この発明の第 2の発明は、
第 1の構造と第 2の構造とが第 3の構造を介して結合されてなる機 能素子の製造方法であって、
第 3の構造を非等方的な構造を有するように形成する工程と、 第 2の構造を予め設定された大局的な規則により形成する工程と、 第 1の構造を局所的な相互作用により形成する工程とを有すること を特徴とするものである。
この発明の第 3の発明は、
局所的な相互作用により形成される第 1の構造と予め設定された大 局的な規則により形成された第 2の構造とが、 非等方的な構造を有す る第 3の構造を介して結合されてなる機能素子を用いたことを特徴と する機能システムである。
第 1、 第 2および第 3の発明においては、 例えば、 第 1の構造が自 律分散型相互作用により形成されたものであり、 第 2の構造が予め設 定された大局的な設計ルールにより形成されたものであり、 第 3の構 造が非等方的な周期構造を有する平面または曲面からなるものである c あるいは, 第 1の構造が自律分散型相互作用により形成されたもので あり、 第 2の構造が予め設定された大局的な設計ル一ルにより形成さ れたものであり、 第 3の構造が非等方的な周期構造を有する面を複数 交差させて重ねたものである。
この発明の第 4の発明は、
時間が連続的に投影された等方的な第 1の構造と時間が不連続的に
投影された非等方的な第 2の構造とが、 非等方的な周期構造を有する 第 3の構造により結合されてなることを特徴とする機能素子である。
この発明の第 5の発明は、 - 第 1 の構造と第 2の構造とが第 3の構造を介して結合されてなる機 能素子の製造方法であって、
第 3の構造を非等方的な構造を有するように形成する工程と、 第 2の構造を時間が不連続的に投影された非等方的なものとして形 成する工程と、
第 1 の構造を時間が連続的に投影された等方的なものとして形成す る工程とを有することを特徴とするものである。
この発明の第 6の発明は、
時間が連続的に投影された等方的な第 1の構造と時間が不連続的に 投影された非等方的な第 2の構造とが、 非等方的な周期構造を有する 第 3の構造により結合されてなる機能素子を用いたことを特徴とする 機能システムである。
第 4、 第 5および第 6の発明においては、 例えば、 第 3の構造が非 等方的な周期構造を有する面を複数交差させて重ねたものである。
この発明の第 7の発明は、
時間が連続的に投影された等方的な第 1の構造と時間が不連続的に 投影された非等方的な第 2の構造とが、 時間が連続的に投影された非 等方的な第 3の構造により結合されてなることを特徴とする機能素子 である。 . - '
この発明の第 8の発明は、
第 1の構造と第 2の構造とが第 3の構造を介して結合されてなる機 能素子の製造方法であつて、
第 3の構造を時間が連続的に投影された非等方的なものとして形成
する工程と、
第 2の構造を時間が不連続的に投影された非等方的なものとして形 成する工程と、 - 第 1の構造を時間が連続的に投影された等方的なものとして形成す る工程とを有することを特徴とするものである。
この発明の第 9の発明は、
時間が連続的に投影された等方的な第 1の構造と時間が不連続的に 投影された非等方的な第 2の構造とが、 時間が連続的に投影された非 等方的な第 3の構造により結合されてなる機能素子を用いたことを特 徴とする機能システムである。
第 7、 第 8および第 9の発明においては、 例えば、 第 3の構造が、 時間が連続的に投影された非等方的な 2次元構造をその方向性をずら して少なく とも二つ重ねて擬似的に等方性を回復したものである。 この発明の第 1 0の発明は、
ボトムアップで形成された第 1の構造とトップダウンで形成された 第 2の構造とが、 非等方的な周期的な第 3の構造を介して結合されて なることを特徴とする機能素子である。
この発明の第 1 1の発明は、
第 1の構造と第 2の構造とが第 3の構造を介して結合されてなる機 能素子の製造方法であつて、
第 3の構造を非等方的な周期的なものとして形成する工程と、 第 2の構造をトップダウンで形成す—る.工程と、
第 1の構造をボトムアップで形成する工程とを有することを特徴と するものである。
この発明の第 1 Iの発明は、
ボトムアップで形成された第 1の構造とトップダウンで形成された
第 2の構造とが、 非等方的な周期的な第 3の構造を介して結合されて なる機能素子を用いたことを特徴とする機能システムである。
第 1 0、 第 1 1および第 1 2.の発明においては、 例えば、 第 1の構 造が自己組織化によるボトムアツプで形成されたものであり、 第 2の 構造がトップダウンで形成された集積回路 (半導体集積回路など) で あり、 第 3の構造が、 時間が連続的に投影された非等方的な 2次元構 造を複数交差させて重ねて擬似的に等方性を回復したものである。
この発明の第 1 3の発明は、
自己相似性またはフラクタル構造を有する第 1の構造とトップダウ ンで形成された集積回路からなる第 2の構造とが、 非等方的な周期構 造を有する第 3の構造により結合されてなることを特徴とする機能素 子である。
この発明の第 1 4の発明は、
第 1の構造と第 2の構造とが第 3の構造を介して結合されてなる機 能素子の製造方法であって、
第 3の構造を非等方的な周期構造を有するように形成する工程と、 第 2の構造をトップダウンで集積回路として形成する工程と、 第 1の構造を自己相似性またはフラクタル構造を有するものとして 形成する工程とを有することを特徴とするものである。
この発明の第 1 5の発明は、
自己相似性またはフラクタル構造を有する第' 1の構造とトップダウ ンで形成された集積回路からなる第 2の構造とが、 非等方的な周期構 造を有する第 3の構造により結合されてなる機能素子を用いたことを 特徴とする機能システムである。
第 1 3、 第 1 4および第 1 5の発明においては、 例えば、 第 3の構 造が、 非等方的な周期構造を有する面を複数交差させて重ねたもので
あり、 また、 集積回路は半導体集積回路などである。
第 1〜第 1 5の発明において、 第 3の構造は、 例えば、 厚さが 0 . 2 n in以上 6 0 n m以下、 好適には 0 . 2 n m以上 3 0 n m以下、 典 型的には 1〜 1 0 n mオーダ一の導電体層と厚さが 0 · 1 n m以上 5 0 m以下、 典型的には 0 . 2 n m以上 6 0 0 n m以下、 より典型的 には 1 0〜 1 0 0 n mオーダーの誘電体層との周期構造体からなる薄 片をその層が互いに交差するように少なく とも 2枚重ねた構造を有す る。
また、 非等方的な構造は、 単一の空間周波数を有するものであって も、 複数の空間周波数を有するものであってもよい。 さらに、 非等方 的な構造は、 例えば、 相互作用が伝わる特徴的な時間に 1桁以上の差 がある互いに異なる性質を有する複数種の相互作用または物理現象の 担体を有し、 注目している相互作用または物理現象についてそのホス トとなる物質の系において、 速い相互作用時間または物理現象時間で 特徴付けられる担体 (例えば、 電子) に対応する第 1 のホスト物質に より、 遅い相互作用または物理現象で特徴付けられる担体 (例えば、 原子または分子) に対応する第 1のホスト物質が、 1 n m以上 1 0 0 n m以下のスケールのオーダ一 (例えば、 0 . 2 ]1 111以上6 0 0 11 111 以下) で離散化されたものである。 また、 この場合、 例えば、 第 1の ホスト物質について、 全体システムの内部の任意の位置に対して、 こ れと連結しているこの第 1のホス ト物質が、 少なく とも 1箇所、 この システムを囲む 1次元ラインまたは曲線上に存在するか、 露出してい る。
第 3の構造に導電体層と誘電体層との繰り返し構造を用いる場合、 導電体層に接触する両側の誘電体層の性質は互いに同一であっても異 なっていてもよい。
典型的な一つの例では、 トップダウンで製造された集積回路 (半導 体集積回路など) からなる第 2の構造と第 1の構造および第 3の構造 の結合体とがこの結合体の辺縁に存在する直線または曲線状の一次元 構造をィンターフェ一ス領域として結合する。
この発明の第 1 6の発明は、
第 1、 第 4、 第 7、 第 1 0、 第 1 3の発明における第 3の構造が 3 層以上積層されてなることを特徴とする機能材料である。
この発明の第 1 了の発明は、
第 1、 第 4、 第 7、 第 1 0、 第 1 3の発明における第 1の構造およ び第 3の構造からなる積層体が 2層以上積層されてなることを特徴と する機能材料である。
この発明の第 1 8の発明は、
スト リップ状の導電体層と誘電体層との周期構造体からなる薄片を その層が互いに交差するように、 かつ、 導電体層のエッジ同士が対向 するように少なく とも 2枚重ねた構造を含むことを特徴とする機能素 子である。
この発明の第 1 9の発明は、
スト リップ状の導電体層と誘電体層との周期構造体からなる薄片を その層が互いに交差し、 かつ、 導電体層のエッジ同士が対向するよう に少なく とも 2枚重ねた構造を含むことを特徴とする機能材料である ( この発明の第 0の発明は、
厚さが 0 . 2 n m以上 6 0 n m以下のストリップ状の導電体層とこ の導電体層の厚さ以上の厚さを有する誘電体層との周期構造体からな る薄片をその層が互いに交差し、 かつ、 導電体層のエッジ同士が対向 するように少なく とも 2枚重ねた構造を含むことを特徴とする機能素 子である。
この発明の第 1 1の発明は、
厚さが 0 . . 2 n m以上 6 0 n m以下のストリップ状の導電体層とこ の導電体層の厚さ以上の厚さを有する誘電体層との周期構造体からな る薄片をその層が互いに交差し、 かつ、 導電体層のエッジ同士が対向 するように少なく とも 2枚重ねた構造を含むことを特徴とする機能材 料である。
第 2 0および第 2 1の発明において、 導電体層の厚さは好適には 0 . 2 n m以上 3 0 n m以下、 誘電体層の厚さは一般的には 0, 2 n m以 上 2 0 0 〃m以下、 典型的には 0 . n m以上 5 0 u m以下である。
この発明の第 2 2の発明は、
非等方的な構造が、 相互作用が伝わる特徴的な時間に 1桁以上の差 がある互いに異なる性質を有する複数種の相互作用または物理現象の 担体を有し、 注目している相互作用または物理現象についてそのホス トとなる物質の系において、 速い相互作用時間または物理現象時間で 特徴付けられる担体に対応する第 1のホスト物質により、 遅い相互作 用または物理現象で特徴付けられる担体に対応する第 2のホスト物質 が、 l n m以上 1 0 0 n m以下のスケールのオーダ一で離散化されて いることを特徴とする機能素子である。
この発明の第 1 3の発明は、
非等方的な構造が、 相互作用が伝わる特徴的な時間に 1桁以上の差 がある互いに異なる性質を有する複数種の相互作用または物理現象の 担体を有し、 注目している相互作用または物理現象についてそのホス トとなる物質の系において、 速い相互作用時間または物理現象時間で 特徴付けられる担体に対応する第 1のホス ト物質により、 遅い相互作 用または物理現象で特徴付けられる担体に対応する第 2のホスト物質 を、 1 n m以上 1 0 0 n m以下のスケールのオーダ一で離散化するこ
とを特徴とする機能素子の製造方法である。
この発明の第 2 4の発明は、
非等方的な構造が、 相互作用 ·が伝わる特徴的な時間に 1桁以上の差 がある互いに異なる性質を有する複数種の相互作用または物理現象の 担体を有し、 注目している相互作用または物理現象についてそのホス トとなる物質の系において、 速い相互作用時間または物理現象時間で 特徴付けられる担体に対応する第 1のホスト物質により、 遅い相互作 用または物理現象で特徴付けられる担体に対応する第 2のホスト物質 が、 1 n m以上 1 0 0 n m以下のスケールのオーダーで離散化された 機能素子を用いたことを特徴とする機能システムである。
第 1 6〜第 2 4の発明においては、 その性質に反しない限り、 第 1 〜第 1 5の発明に関連して述べたことが成立する。
上述のように構成されたこの発明によれば、 局所的な相互作用によ り形成される第 1の構造と予め設定された大局的な規則により形成さ れた第 2の構造とを、 非等方的な構造を有する第 3の構造を介して結 合することにより、 従来困難であつたトツプダウン系とボトムアツプ 系との統合を容易に行うことができる。 図面の簡単な説明
第 1図 Aおよび第 1図 Bは、 この発明を説明するための略線図、 第 2図 Aおよび第 2図 Bは、 この発明を説明するナこめの略線図、 第 3図 および第 4図は、 T P Cを説明するための略線図、 第 5図は、 この発 明を説明するための略線図、 第 6図 A、 第 6図 Bおよび第 6図 Cは、 この発明を説明するための略線図、 第 7図は、 この発明を説明するた めの略線図、 第 8図 A、 第 8図 Bおよび第 8図 Cは、 A l A s / G a A s 2原子層超格子の成長を説明するための透過型電子顕微鏡による
暗視野像、 格子像および回折パターンを示す写真、 第 9図は、 電気化 学的成長機構を説明するための略線図、 第 1 0図 A、 第 1 0図 Bおよ び第 1 0図 Cは、 この発明を説'明するための略線図、 第 1 1図〜第 1 4図は、 第 1 0図 Aに示す場合の交差部の電場分布の計算結果を示す 略線図、 第 1 5図〜第 1 8図は、 第 1 0図 Bに示す場合の交差部の電 場分布の計算結果を示す略線図、 第 1 9図は、 この発明を説明するた めの略線図、 第 2 0図 Aおよび第 2 0図 Bは、 この発明の第 1の実施 形態を説明するための略線図、 第 2 1図は、 この発明の第 1の実施形 態を説明するための略線図、 第 2 2図は、 この発明の第 1の実施形態 を説明するための略線図、 第 2 3図 A、 第 2 3図 Bおよび第 2 3図 C は、 この発明の第 1の実施形態を説明するための略線図、 第 2 4図 A、 第 2 4図 Bおよび第 2 4図 Cは、 この発明の第 1の実施形態による機 能素子を示す略線図、 第 2 5図は、 この発明の第 2の実施形態を説明 するための略線図、 第 2 6図は、 この発明の第 3の実施形態を説明す るための略線図、 第 2 7図 Aおよび第 2 7図 Bは、 この発明の第 4の 実施形態を説明するための略線図、 第 2 8図は、 この発明の第 4の実 施形態を説明するための略線図、 第 2 9図 Aおよび第 2 9図 Bは、 こ の発明の第 5の実施形態を説明するための略線図、 第 3 0図 A、 第 3 0図 B、 第 3 0図 C、 第 3 0図 D、 第 3 0図 Eおよび第 3 0図 Fは、 この発明の第 6の実施形態を説明するための略線図である。 発明を実施するための最良の形態 '
以下、 この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。 まず、 この発明の第 1の実施形態について説明する。
この第 1の実施形態においては、 電気化学的成長法を用いて超格子 薄片を形成する。 第 2 0図 Aはそのための成長装置を示す。 第 2 0図
Aに示すように、 この成長装置においては、 電解槽 5 1に、 成長させ ようとする二種類の物質に対応したァニオン (A— ) 5 2およぴカチ オン (C + ) 5 3を含む電解液' 5 4が入れられている。 そして、 この 電解液 5 4中に、 電気化学的成長の基板となる例えば微小円柱状の電 極部を有する軸 5 5が挿入されているとともに、 この軸 5 5をはさむ ように二つの電極 5 6、 5 7が設けられている。 ここでは、 .軸 5 5の 電極部は接地されており、 電極 5 6、 5 7はそれぞれ電圧 V I、 V r にバイアスすることができるようになつている。 電極 5 6、 5 7はリ ング状に軸 5 5の電極部を囲む配置でもよい。 また、 電解槽 5 1に仕 切りを設けてァニオン 5 2 とカチオン 5 3 とを別々に配するとともに- 軸 5 5を回転させるようにしてもよい。
第 2 1図は軸 5 5の詳細構造の例を示す。 第 1 1図に示すように、 軸 5 5は、 成長時の基板となる電極部 5 5 aが他の部分 5 5 bに比べ て少し直径が大きくなつている。 そして、 電極部 5 5 aの下側にこれ と接触して例えばガラスやセラミックスなどからなる円板状の支持板 5 8が軸 5 5と同軸に取り付けられているとともに、 電極部 5 5 aの 上側に溶剤易溶性有機膜 5 9がプリコートされた円板状の支持板 6 0 が同じく軸 5 5と同軸に取り付けられている。 支持板 5 8、 6 0の直 径は同一とする。 また、 これらの支持板 5 8、 6 0の間隔は、 成長さ せるべき超格子薄片の厚さと同一とし、 具体的には例えば 1〜 1 0 0 0 Ai m、 典型的には例えば 1 0〜 1 0 0 w mである。
この成長装置を用いて超格子薄片を成長させるには、 例えば、 第 2 0図 Bに示すように、 電極 5 6、 5 7を交互に V 1 = + V 2、 V r = - V 1にバイアスする。 この場合、 電極 5 6が + V 2にバイアスされ ている時には、 電解液 5 4中のカチオン 5 3が軸 5 5の電極部 5 5 a の側面上に堆積し、 電極 5 7がー V 1にバイアスされている時には、
電解液 5 4中のァニオン 5 2が軸 5 5の電極部 5 5 aの側面上に堆積 する。 このようにして、 第 2 1図に示すように、 支持板 5 8と溶剤易 溶性有機膜 5 9との間の空間において、 軸 5 5の電極部 5 5 aの側面 上に、 交互に二種類の物質、 具体的には、 誘電体 (絶縁体) である溶 剤難溶性電析有機膜 6 1および電析金属膜 6 2の周期構造体を同心円 状 (年輪状あるいはバウムクーヘン状) にラテラル成長させることが できる。 成長終了後、 溶剤易溶性有機膜 5 9を溶剤で溶解して年輪状 の周期構造体を取り出す。
ここで、 電析金属膜 6 2の金属としては、 例えば、 金 (Au) 、 白 金 (P t ) 、 銅 (C u ) などを用いることができる。 めっき浴として は、 Auの場合は、 例えば KAu (CN) 、 (NH4 ) z HP 04 、 K2 HP 04 などを含むものを用い、 C uの場合は、 例えば C u S O, • 5 H2 0、 H2 S O 4 、 チォ尿素などを含むものを用い、 P tの場 合は、 例えば (NH 4 ) 2 P t C 1、 aHP04 · 1 2 H2 〇など を含むものを用いる。
また、 溶剤難溶性電析有機膜 6 1の成長には、 例えば有機酸イオン をアクティブエージェントとして用いる (山岡亜夫監修 「実用高分子 レジスト材料の新展開一フォ トポリマ一としての応用展開一」 、 第 6 章、 シ一ェムシ一出版、 1 9 9 6年) 。
溶剤難溶性電析有機膜 6 1およぴ電析金属膜 6 2の成長にほぼ一定 の成長速度を用いることにより、 時間ィンタ一バルを構'造に射影する ことができ、 第 2 2図に示すように、 各層が原子層オーダ一の厚さ精 度を有する溶剤難溶性電析有機膜 6 1および電析金属膜 6 2の周期構 造体からなる円板状の超格子薄片を得ることができる。
次に、 この円板状の超格子薄片の一部を第 2 2図の実線の四角形で 示されるように切り出したものを 2枚用意する。 第 2 3図 Aおよび第
2 3図 Bにこのようにして切り出された四角形状の超格子薄片 7 1、 7 2を示す。 そして、 第 2 3図 A、 第 2 3図 Bおよび第 2 3図 Cに示 すように、 超格子薄片 7 1に対して超格子薄片 7 2の方位を 9 0度回 転して重ね合わせる。 このようにして、 2次元のパターンの最小単位 として、 人工神経系として信号 ·情報がアクセスすることができる格 子 (l att i ce)が完成する。 この格子の精度は原子層オーダと.すること ができる。 ここで、 各超格子薄片 7 1、 7 2の溶剤難溶性電析有機膜 6 1およぴ電析金属膜 6 2は厳密には円弧状であるが、 電析金属膜 6 2の周期は例えば 1 0 n m前後と極めて小さいため、 これらの溶剤難 溶性電析有機膜 6 1および電析金属膜 6 2は直線状に延在していると みなすことができる。 従って、 この格子は、 第 1 9図に示すものと実 質的に同様な構造を有する。
超格子薄片 7 1、 7 2の電析金属膜 6 2の本数をそれぞれ N本とす ると、 超格子薄片 7 1の電析金属膜 6 2と超格子薄片 7 2の電析金属 膜 6 との交差点は合計 N 2 個ある。 この場合、 これらの交差点 (ァ ドレス) へのアクセスは、 超格子薄片 7 1、 7 2の各電析金属膜 6 2 を通じて容易に行うことができる。 例えば、 第 3図 Cに示すように、 超格子薄片 7 1、 7 2の縁の電析金属膜 6 2にそれぞれリレー回路 7 3、 7 4を接続することで、 どのア ドレスにアクセスするかを制御す ることができる。 具体的には、 例えば、 超格子薄片 7 1、 7 2の一辺 を 1 c mとし、 電析金属膜 6 2の間隔を 1 0 n mとすると、 1 c m/ 1 0 n m = 1 0— 2 m / 1 0— 8 m = 1 0 6 '〜 2 2。であるが、 例えば 1 0 段のリレー回路 7 3、 7 4で 2 2 °〜 1 0 6 本の電析金属膜 6 2を選択 することができるので、 例えば (x y平面の一自由度あたり) 約 2 0 ビッ 卜の情報でァ ドレスへのアクセスを制御することができる。
超格子薄片 7 1の電析金属膜 6 2 と超格子薄片 7 2の電析金属膜 6
との N 2 個の交差点には、 ボトムアップにより生成される所望の機 能を有する構造を設ける。 このためには、 例えば、 超格子薄片 7 1 を 基板としてその上に自己組織化により量子ドッ トを成長させ、 その上 に超格子薄片 7 2を上記と同様に重ね合わせればよい。 あるいは、 超 格子薄片 7 1、 7 2の間に機能材料層 (例えば、 無機分子や有機分子 など) をはさみ込み、 互いに交差しかつ対向している電析金属膜 6 2 間に例えば電流通電を行ってエネルギーを注入することにより生じる 自己組織化臨界現象を用いて、 結果として、 ボトムアップ構造が超格 子薄片 7 1、' 7 2の間に設けられた構造を作製することができる。 超格子薄片 7 1、 7 2の N 2 個の交差点に設けるボトムアップ構造 をエネルギー注入と散逸とにより最後に形成する場合は、 これらのボ トムアップ構造を、 何ら位置合わせの必要もなく、 自己整合的に各交 差点に自動的に形成することができる。 この場合、 超格子薄片 7 1、 7 2の電析金属膜 6 2同士は必ずしも互いに直交している必要はなく - 縁とつながつていることのみが要件である。 各ボトムアップ構造は例 えば、 単純なメモリー素子でもよいし、 上述の自己組織化により高度 の機能を有するボトムアップ素子でもよい。 超格子薄片 7 1、 7 2の 電析金属膜 6 2によるメッシュ構造の次元は 1 とボトムアップ系 (今 の場合、 平面系である) の次元 2との間であり、 生体の神経系の次元 が細胞系の次元より小さいことと同等の関係が成立している。 上記の ボトムアップ構造を形成する元になる材料物質は例えばィンタカレー シヨ ンにより導入することもできる。 'また、 インタカレ一シヨ ンに先 立って、 電解エッチングにより電析金属膜 6 2のナイフェツジを先鋭 化させておくこともでき、 これによつて表面増強効果をより強化し、 超格子薄片 7 1、 7 2の電析金属膜 6 2の交差部に配置するボトムァ ップ構造をより少数の原子団 (分子団) とすることも可能である。
超格子薄片 7 1、 7 2の各交差点にボトムアップ構造がはさまれた 上記の 2次元構造体をシリコン L S I と接続して機能素子を作る。 す なわち、 第 2 4図 Aに示すように、 基板 8 1上に上記の 2次元構造体 8 2をマウントし、 超格子薄片 7 2の電析金属膜 6 2を接続パッ ド 8 3を介して配線接続部 8 4と接続するとともに、 超格子薄片 7 1の電 析金属膜 6 2を配線接続部 8 5と接続する。 接続パッ ド 8 3.は枕木状 の形状を有し、 その厚さは配線接続部 8 4の上面と超格子薄片 7 2の 下面との高さの差にほぼ等しい。 第 2 4図 Bは、 超格子薄片 7 2の電 析金属膜 6 2と接続パッ ド 8 3 との接続部を拡大して示したものであ り、 接続パッ ド 8 3に幅の狭い絶縁体 8 3 aを介して形成された、 溶 剤難溶性電析有機膜 6 1の幅 (厚さ) と等しい幅の電極部 8 3 bと電 析金属膜 6 2とが接続されている。 また、 第 2 4図 Cは、 超格子薄片 7 1の電析金属膜 6 2と配線接続部 8 5 との接続部を拡大して示した ものであり、 配線接続部 8 5に幅の狭い絶縁体 8 5 aを介して形成さ れた、 溶剤難溶性電析有機膜 6 1 とほぼ等しい幅の電極部 8 5 bと電 析金属膜 6 とが接続されている。 配線接続部 8 4、 8 5は配線 8 6 を介して所望の機能を有するトップダウン系の L S I 8 7と接続され ており、 結果として 2次元構造体 8 2と L S I 8 7とが接続されてい る。 こう して機能素子が得られる。 L S I 8 7は典型的にはシリコン L S Iであるが、 他の半導体、 例えば G a A sなどの化合物半導体を 用いた L S Iでもよい。 また、 L S I 8 7はチップ状のものを基板 8 1上にマウント したものであっても、 基板 8 1 としてシリコン基板な どの半導体基板を用い、 これに L S Iプロセスで回路を形成したもの でもよい。
超格子薄片 7 1、 7 2の電析金属膜 6 2 と外部の接続パッ ド 8 3ま たは配線接続部 8 5との接続は、 一辺あたり N個の接続でよい。 この
接続数と超格子薄片 7 1、 7 2の、 ボトムアップ構造が設けられる交 差点の数との比は 1 / Nでスケールする。 このため、 N 2 の位置合わ せ誤差を生ずる従来法と比べ、 'Nが大きくなるほど、 言い換えれば集 積度が上がるほど位置合わせ誤差が減少し、 従つて従来法に比べて素 子の製造歩留まりの向上を図ることができる。 特に、 第 2 4図 Bおよ び第 2 4図 Cに示すように、 接続パッ ド 8 3の電極部 8 3 b.の幅は超 格子薄片 7 2の誘電体である溶剤難溶性電析有機膜 6 1 の幅 (厚さ) とほぼ等しく、 また、 配線接続部 8 5の電極部 8 5 bの幅は超格子薄 片 7 2の誘電体である溶剤難溶性電析有機膜 6 1 の幅 (厚さ) とほぼ 等しく設定することができるので、 超格子薄片 7 1、 7 2の電析金属 膜 6 2と電極部 8 3 b、 8 5 bとの位置合わせのマージンを大きくす ることができ、 これも素子の製造歩留まりの向上に寄与する。
シリコン L S Iなどに代表される L S I 8 7からなるトップダウン 系は、 すでに述べたように、 時間が非連続に投影され、 かつ空間的に 非等方的な構造、 先の記法に従えば (時間投影性、 空間方位性) = ( 1 . 1 ) の構造を有している。 また、 超格子薄片 7 1、 7 2の間に はさまれたボトムアツプ構造は、 自律分散的生成則により形成された ものであるため、 時間が連続的に投影され、 局所ルールには大局性が 存在しないので、 特別な方向は特になく等方的な構造、 すなわち (時 間投影性、 空間方位性) = (†、 † ) の構造を有している。 両構造を 直接隣り合わせて並べてみても、 (†、 † ) ( 1 . 1 ) となって矢印 がフリップするので、 直ちにつながらない。 これに対し、 上記の 2次 元構造体 8 2は、 すでに述べたように、 時間を成長方向に連続的に投 影してできた空間座標の一方向に向いた非等方性を有する構造、 すな わち (時間投影性、 空間方位性) = (†、 1 ) の構造を有している。 第 2 4図 A、 第 2 4図 Bおよび第 2 4図 Cに示す機能素子においては.
この 2次元構造体 8 、 すなわち (†、 i ) 構造をボトムアップ構造、 すなわち (†、 † ) 構造と トップダウン構造の L S I 8 7、 すなわち ( 1、 1 ) 構造との間に介在きせていることにより、 (†、 † ) (†、 I ) ( I . I ) となり、 矢印が構造間でフリップすることなくつなが つていくので、 結局 (†、 † ) 構造と U、 i ) 構造とを、 すなわち ボトムアツプ系と トツプダウン系とを、 個別ァクセス性を失うことな く、 うまくつなげることができる。
このように、 この第 1の実施形態によれば、 ボトムァップ系とシリ コン L S Iに代表されるトップダウン系との利点を最大限活かすこと ができる高機能の機能素子を容易に実現することができる。 この機能 素子は、 ボトムアツプ系に持たせる機能とシリコン L S Iに持たせる 機能との組み合わせにより、 多彩な機能を発現することができる。 次に、 この発明の第 2の実施形態について説明する。 この第 2の実 施形態は、 ボトムアツプ構造として特に量子ドッ トを用いたものであ る。
第 2 5図に示すように、 この第 2の実施形態においては、 基板 8 1 の中央部に 2次元構造体 8 2がマウントされているが、 この場合、 こ の 1次元構造体 8 の超格子薄片 7 1、 7 2の電析金属膜 6 2の十字 交差点にボトムアップ構造として量子ドッ ト 9 1がはさまれている。 ここで、 超格子薄片 7 1、 7 2の電析金属膜 6 2の周期および厚さは 量子ドッ ト 9 1のサイズより十分小さくすることができるので、 超格 子薄片 7 1、 7 2の電析金属膜 6 2の十字交差点と量子ドッ ト 9 1 と は必ずしも 1対 1に対応している必要はない。 つまり、 全ての十字交 差点に量子ドッ ト 9 1が付随している必要はないが、 各量子ドッ ト 9 1には必ず十字交差点が付随している。 この冗長性は、 量子ドッ ト素 子の歩留まりを向上させるとともに、 量子ドッ トを活性部とする十字
交差よりなるダイォードへのサイ ドゲートの役割を果たさせることも でき、 従来極めて困難であった量子ドッ ト素子の 3端子素子化も可能 となる。 特にその際、 超格子薄片 7 1、 7 2 として、 極めて薄い誘電 体を間にはさんだ導電層 2層構造とやや厚めの誘電体との積層繰り返 し構造、 すなわち、 空間周波数として大 /J、二つの周波数を有する構造 のものを用いることが有効である。
また、 第 2 5図に示す構造は平面ディスプレイとしても適用するこ とができる。 この場合、 量子ドッ ト 9 1 として発光性量子ドッ トを用 いるが、 発光性有機分子モノマー、 オリゴマー、 ポリマ一であっても よい。 また、 この場合、 すでに述べたように、 超格子薄片 7 1、 7 2 の厚さの設定に自由度があるので、 電析金属膜 6 2を、 高い導電性を 持ち、 かつ、 極めて細い導電ラインとして構成することができるとい う長所を有する。 この平面ディスプレイによれば、 十字交差部の面積 が小さいので、 陰になることが少なく、 明るい画面を低消費電力で実 現することができる。 また、 図示は省略するが、 第 2 5図の縦横の各 電析金属膜 6 2、 すなわち各導電ラインに関して、 上述のような極め て薄い誘電体を間にはさんだ導電層 2層構造とやや厚めの誘電体との 積層繰り返し構造、 すなわち、 空間周波数として大小二つの周波数を 有する構造を用いることで導入される冗長性によって、 例えば活性部 の不良による画素落ちなどのリスクを低減することができ、 製造歩留 まりを向上させることができる。
さらに、 第 2 5図の配置は、 十字交差部にはさまれる冗電子系有機 分子の官能基の配置や荷電状態を制御することで、 光素子のみならず 電子素子としても利用することができ、 従って集積分子エレク トロ二 クス素子として利用することもできるが、 空間周波数として大小二つ の周波数を有する超格子薄片構造を用いることで得られる上述の冗長
性は、 分子ェレク トロニクス素子に求められているフオルト トレラン ス (欠陥許容性) を高める上で極めて効果が大きい。
基板 8 1の外周部 8 1 aは卜ップダウン型の L S Iが配置される領 域であるが、 必ずしも四方八方全てに配置する必要はなく、 一部に配 置するだけでもよい。
なお、 場合によっては、 多層構造にして、 基板 8 1 の中央部を含む 全面の上下にトップダウン型 L S I を配置することも可能である。
2次元構造体 8 2の周囲の額縁部 8 1 bは、 第 2 4図 Bおよび第 2 4図 Cと同様な配置で、 2次元構造体 8 2の N 2 個の交差点にァクセ スする x、 y方向の平行な電析金属膜 6 2 と接続する。
上記以外のことは、 その性質に反しない限り第 1の実施形態と同様 である。
この第 2の実施形態によっても、 第 1 の実施形態と同様な利点を得 ることができる。
次に、 この発明の第 3の実施形態について説明する。
第 2 6図に示すように、 この第 3の実施形態においては、 第 2の実 施形態においてボトムアツプ構造として用いた量子ドッ ト配列の代わ りに、 自己相似性を有する階層的な構造を有する面、 すなわちフラク タル構造を有する面 9 2をボトムアップ構造として用いる。 この場合 も、 空間周波数として大小二つの周波数を有する超格子薄片構造を用 いることで得られる上述の冗長性は、 系のロバストネスを高める上で 極めて大きな効力を発揮する。 ― '
上記以外のことは、 その性質に反しない限り第 1および第 2の実施 形態と同様である。
この第 3の実施形態によっても、 第 1および第 2の実施形態と同様 な利点を得ることができる。
次に、 この発明の第 4の実施形態について説明する。
この第 4の実施形態においては、 第 1 7図 Aに示すように、 第 1の 実施形態において用いた成長装置の電解液 5 4中に 2本の軸 1 0 1、 1 0 2を所定の間隔で互いに平行に設ける。 軸 1 0 1の長手方向には 複数の電極部 1 0 1 aが例えば等間隔に設けられ、 軸 1 0 2の長手方 向には複数の電極部 1 0 2 aが電極部 1 0 1 aと互い違いに例えば等 間隔に設けられている。 そして、 軸 1 0 1の一番下の電極部 1 0 1 a の上下に支持板 1 0 3および溶剤可溶樹脂板 1 0 4が所定の間隔を持 つて取り付けられ、 その上の電極部 1 0 1 aの上下に 2枚の溶剤可溶 樹脂板 1 0 5、 1 0 6が所定の間隔を持って取り付けられ、 さらにそ の上の電極部 1 0 1 aの上下に同様に 2枚の溶剤可溶樹脂板 1 0 7、 1 0 8が所定の間隔を持って取り付けられている。 一方、 軸 1 0 2の 一番下の電極部 1 0 2 aの上下に 枚の溶剤可溶樹脂板 1 0 9、 1 1 0が所定の間隔を持って取り付けられ、 その上の電極部 1 0 2 aの上 下に 2枚の溶剤可溶樹脂板 1 1 1、 1 1 2が所定の間隔を持って取り 付けられ、 さらにその上の電極部 1 0 aの上下に溶剤可溶樹脂板 1 1 3および支持板 1 1 4が所定の間隔を持って取り付けられているが- これらの 2枚の板の組み合わせは軸 1 0 1に取り付けられたものと互 い違いになっている。 この場合、 これらの支持板 1 0 3、 1 1 4およ び溶剤可溶樹脂板 1 0 4〜 1 1 3はいずれも円板状であり、 それらの 半径は軸 1 0 1、 1 0 2の間隔よりも少し小さく選ばれている。 この ため、 軸 1 0 1に取り付けられた支持板' 1 0 3および溶剤可溶樹脂板 1 0 4〜 1 0 8と、 軸 1 0 2に取り付けられた溶剤可溶樹脂板 1 0 9 〜 1 1 3および支持板 1 1 4とは、 軸 1 0 1、 1 0 2の間の部分で互 いに重なっている。
この成長装置においては例えば次のようにして成長を行う。
まず、 軸 1 0 1の電極部 1 0 1 aおよび軸 1 0 2の電極部 1 0 2 a の側面にあらかじめ導電性有機レジスト (図示せず) を所定の厚さ塗 布しておく。 この有機レジスト'としては、 例えば、 溶剤可溶樹脂板 1 0 4〜 1 1 3の溶解に用いられる溶剤により溶解することができるも のを用いる。 次に、 第 1の実施形態と同様にして、 軸 1 0 1に取り付 けられた支持板 1 0 3および溶剤可溶樹脂板 1 0 4の間の空間と溶剤 可溶樹脂板 1 0 5、 1 0 6の間の空間と溶剤可溶樹脂板 1 0 7、 1 0 8の間の空間とにおいて電極部 1 0 1 aの側面に導電性有機レジスト を介して周期構造体をラテラル成長させる。 同様に、 軸 1 0 2に取り 付けられた溶剤可溶樹脂板 1 0 9、 1 1 0の間の空間と溶剤可溶樹脂 板 1 1 1、 1 1 2の間の空間と溶剤可溶樹脂板 1 1 3および支持板 1 1 4の間の空間とにおいて電極部 1 0 aの側面に導電性有機レジス トを介して周期構造体をラテラル成長させる。 電極部 1 0 1 aの側面 に成長させる周期構造体と電極部 1 0 1 aの側面に成長させる周期構 造体とは互いに同一であっても異なってもよい。 次に、 電解槽 5 1か ら電解液 5 4を排出して代わりに所定の溶剤を入れ、 この溶剤により 溶剤可溶樹脂板 1 0 4〜 1 1 3および電極部 1 0 1 a、 1 0 2 aの側 面に塗布した導電性有機レジストを溶解する。 これによつて、 電極部 1 0 1 aの側面にラテラル成長した円板状の各超格子薄片 1 1 5と電 極部 1 0 2 aの側面にラテラル成長した円板状の各超格子薄片 1 1 6 とは沈降していき、 順次交互に積層される。 こう して、 超格子薄片が 交互に積層された積層構造体が形成される。
次に、 この積層構造体を電解槽から取り出し、 第 2 7図 Bの実線の 四角形で示される形に切り出す。 これによつて、 例えば第 2 8図に示 すように、 超格子薄片三次元積層体が得られる。 そして、 この超格子 薄片三次元積層体を用いて第 1の実施形態と同様にして機能素子を製
造する。
上記以外のことは第 1の実施形態と同様であるので、 説明を省略す る。 - この第 4の実施形態によれば、 第 1 の実施形態と同様な利点に加え て、 超格子薄片三次元積層体を用いて機能素子を構成していることに より、 機能性および集積度の大幅な向上を図ることができるという利 点を得ることができる。
次に、 この発明の第 5の実施形態について説明する。
第 2 9図 Aおよび第 2 9図 Bは真空蒸着装置の真空チュンバー 1 1 1の正面図および側面図である。 第 2 9図 Aおよび第 2 9図 Bに示す ように、 この第 5の実施形態においては、 ローラ 1 2 2に、 例えば幅 が狭くて薄い平坦なテープ状の樹脂製ベースフィルム 1 2 3を巻き付 けておき、 この樹脂製べ一スフイルム 1 2 3の一方の面に、 蒸着源 1 2 4から例えば金属を蒸発させて薄く金属膜 (図示せず) を形成した 後、 この金属膜付き樹脂製べ一スフイルム 1 3を巻き取りローラ 1 2 5で卷き取っていく。 符号 1 1 6は樹脂製べ一スフィルム 1 2 3を 両側から保持する支持板を示す。
上述のようにして金属膜付き樹脂製ベースフィルム 1 2 3が巻き取 りローラ 1 2 5で卷き取られることにより、 樹脂製べ一スフィルム 1 2 3 と金属膜とが交互に積層されたスパイラル構造が形成される。 こ のスパイラル構造は第 2 2図に示す同心円構造とほぼ類似のものであ る。 そこで、 このスパイラル構造を元にして第 1の実施形態と同様に して超格子薄膜を得ることが可能である。
この第 5の実施形態によれば、 第 1の実施形態と同様な利点を得る ことができる。
次に、 この発明の第 6の実施形態について説明する。
この第 6の実施形態においては、 第 3 0図 A〜第 3 0図 Eに示す方 法により超格子薄片 7 1、 7 2を作製する。 すなわち、 まず、 第 3 0 図 Aに示すように、 樹脂基板 1' 3 1に、 第 1の実施形態の電析金属膜 6 2と同一のパターン形状を有するナノ構造金型 1 3 2を近づけ、 第 3 0図 Bに示すように、 このナノ構造金型 1 3 2で樹脂基板 1 3 1 を 型押しする。 次に、 第 3 0図 Cに示すように、 ナノ構造金型 1 3 2を 樹脂基板 1 3 1から引き離す。 次に、 第 3 0図 Dに示すように、 例え ば真空蒸着などにより樹脂基板 1 3 1上に金属膜 1 3 3を堆積させて、 ナノ構造金型 1 3 2による型押しで樹脂基板 1 3 1に形成された溝の 内部をこの金属膜 1 3 3により埋め込む。 次に、 第 3 0図 Eに示すよ うに、 樹脂基板 1 3 1 を上下からエッチングすることにより上面の不 要な金属膜 1 3 3を除去するとともに、 裏面に金属膜 1 3 3を露出さ せる。 これによつて、 第 3 0図 Fに示すように、 超格子薄片 7 1、 7 2が作製される。
上記以外のことは、 その性質に反しない限り第 1の実施形態と同様 である。
この第 6の実施形態によっても、 第 1の実施形態と同様な利点を得 ることができる。
以上、 この発明の実施形態について具体的に説明したが、 この発明 は、 上述の実施形態に限定されるものではなく、 この発明の技術的思 想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、 上述の実施形態において挙げた数値、 材料、 形状、 配置な どはあくまでも例に過ぎず、 必要に応じて、 これらと異なる数値、 材 料、 形状、 配置などを用いてもよい。
また、 例えば、 超格子薄片にはさまれる層として、 電子共役有機 分子系材料や生体分子系材料のほかに、 強誘電体材料系や P r C a M
n〇系の巨大磁気抵抗材料を用いてもよい。
また、 同心円構造自体は、 第 1〜第 6の実施形態で述べた方法以外 の方法で形成することもできる。 例えば、 回転軸を回転させながらそ の側面上に交互に異なる物質を真空蒸着により形成したり、 M O C V D法などにより円柱状の基板に交互に異なる物質を成長させたりする ことができる。
また、 同心円構造を形成する物質としては、 上述の第 1〜第 6の実 施形態で用いたものと異なる物質を用いてもよい。 誘電体としては酸 化物などの無機物質のほか、 ポリスチレンやポリカーボネートなどの 有機物質を用いてもよい。
なお、 (†、 † ) と ( i、 i ) とを結びつけるに際し、 目的に応じ て、 既に述べた (†、 ふ) の性質を持つものの代わりに ( 、 † ) の 性質を持つもの、 すなわち、 時間的には不連続な投影をされた構造で かつ空間的には等方的な構造を有するものを用いてもよい。
また、 上に述べたトップダウン構造の範疇の 1つである脳由来構造 には有形のものと無形のものとがある。 前者は 3次元的実在を伴つた ハードウェアなど、 物的アーキテクチャ一であり、 後者には知的学問 体系、 データベース、 ソフトウェアなど、 知的アーキテクチャーが含 まれる。 また、 ボトムアップ構造の範疇の 1つである遺伝子由来構造 には単に細胞 ·組織レベルの構造のみならず、 骨格や臓器などの器官 も含まれる。 '
さらに、 ボトムアップとトップダウン'との接続 ·統合は、 狭い意味 のハ一ドウエアのみに適用されるものではなく、 直接結合しようとし ても相容れない 2系統の流れがぶっかる種々の局面に適用することが できる。 一例を挙げると、 両系統の持つ属性を精査し、 各々において ( †、 † ) のものと ( i、 I ) のものという相反する性質の組を同定
-抽出し、 その上で (†、 i ) の性質を持つ中間層 (緩衝材となる方 策) を間にはさむ (さらに必要なら、 この作業を漸化式的にィテレイ ティブ (i terat ive)に繰り返す) ことにより、 巿場形成や消費動向な ど、 ユーザーやマスを形成する消費者などの (ヒエラルキー末端の) 層に内在して下から湧き上がつてくる動きと、 企業運営や行政などの (ヒエラルキートップの) 、 あらかじめ設定された計画に基づいて上 から下ろされてくるルールやブランユングとを整合させる際などにも- ソフ トゥヱァ的な (ビジネスモデルやサービスモデル上の) 仕組みと しても機能させることができる。
また、 ( x 1 , 2 , ■■· , X N ) と N成分系へと拡張することがで き、 X i , X i などの複数成分間で結合することができること、 さら に X i も †、 の 2値のみならず、 多値 (離散的) 変数であってもよ いことは言うまでもない。
以上説明したように、 この発明によれば、 生命体に代表されるボト ムアップ系とシリコン L S Iに代表されるトップダウン系との利点を 最大限活かすことができる高機能の機能素子を実現することができる ( すなわち、 細胞に相当するボトムアツプ系とトップダウン系との間に 随伴神経系に相当する人工情報伝達 ·制御系を設けた高機能の機能素 子を実現することができる。
また、 時間が連続的に投影された構造を用いることで、 究極の分解 能 (原子層オーダの制御) を持った人工神経系相当物を形成すること ができる。 これによつて、 例えば、 表面 '増強効果を担いうるナノ構造 /ゼロ次元構造をバルクサィズに亘つて超並列多重に配列させること も可能になる。
また、 ナノスケールで離散化されたバルクサイズの系を創出し、 例 えばシリコン基板上に形成された L S I システムと、 それと近接して
配された自律分散システムとを結合することにより、 ボトムアップ系 とトツプダウン系とをつなぐプラッ トフォームを実現することができ る。 - また、 ナノスケールで離散化されたバルクサイズ系を創出し、 そこ に現れる局所的かつ個別的にァドレスすることが可能な 2〜 3次元の ナノ構造体を大局的サイズで得ることによって、 微視的世界と巨視的 世界とをつなぐ高機能のブラッ トフオームを実現することができる。 さらに、 現在では形がないが将来現れてくると考えられるほとんどの ナノスケールの並列新機能要素と既存の U L S I システムとをシナジ ュティックに結合し、 シリコンベースの世界と炭素系の有機物の世界 との止揚をとることにより、 飛躍的な機能の増大が可能となる。
また、 この発明によれば、 例えば、 1 0〜 1 6 0 G b i t s / c m : ( 0 . ト l T b / i n c h 2 ) の集積度のフレキシブルな機能素子 を実現することができる。 例えば、 物質表面がそのまま機能素子とな るようなュビキタス情報装置を実現することができる。 この場合、 機 能素子の中核部分はリソグラフィーフリ一で形成することができるの で、 機能素子を安価に製造することができる。 また、 要素の数を Nと すると、 従来は N 2 の位置合わせが必要となるが、 この発明では 4 N の位置合わせで済み、 従来に比べ 1 / Nで位置合わせの困難さが減少 する。 しかも、 記録容量が大きくなるほどこの効果が増大する。
また、 この発明によれば、 微分方程式系に支配される物質系ではな く、 セルラーオートマトンに代表される離散的な、 差分方程式に支配 されるような物質系を提供することができる。 この物質系によれば、 例えば、 注目する性質に関して、 変調された次元、 連結性、 自発的対 称性の破れ、 あるいは自己組織化臨界現象を示すことが可能となる。
ノ口ジ一の発展は際限がないほどと期待されるが、 それを
支える母体の構造は原子間隔というカツ トオフがある以上 (際限なく 小さくなることはないので) その 「収束先」 をあらかじめ (ある精度 を以つて) 見定めておき、 その極限値と既存の U L S I システムとの 結合を、 現時点から正面の目標に据え、 攻略し始めることは、 単に時 代に先行するという観点からのみならず、 今は形なき、 将来のナノテ クノロジ一の成果を先取りする上でも重要である。