明細書
配糖化酵素遺伝子 SaGT4およびその利用 技術分野
本発明は、 ナス科などの植物から得ることのできる配糖化酵素遺伝子、 及びそ の利用に関する。 背景技術
UDP-グルコース、 TDP-ラムノースなどの活性化された単糖あるいはォリゴ糖を、 特定の化合物に結合する能力を有する酵素は配糖化酵素と呼ばれ、 配糖化反応に おける基質特異性が高いことが知られている (Kapitonov D and Yu RK,
Glycobiology, 9: 961-978 (1999) )。 配糖化反応によって、 化合物の物性は大き く変わるため、 配糖化酵素によつて配糖化された化合物、 あるいは逆に、 配糖化 反応を抑制した化合物は、 医薬、 食品添加物、 工業原料などに利用されている。 ナス科植物の多くは、 医薬品として利用価値の高いステロイドサポニンを含有 しており、 その生合成過程の最終段階である配糖化反応がサポニン生産において 重要であると考えられる。 またサポニンは二次代謝産物として植物の防御機構に 関わっており、 サポニン配糖化の度合いと抵抗性との相関やその制御機構にも興 味が持たれる。 しかし、 この反応を触媒する酵素の遺伝子は未だクローニングさ れておらず、 その機能に関する知見はほとんどない。 発明の開示
植物には配糖化化合物が多く含まれている。 配糖化酵素反応は基質特性が高い ことから、 植物由来の配糖ィヒ酵素を利用した医薬、 食品添加物、 工業原料の生産 のための技術開発が切望されている。 ところが、 このような技術に利用できる既 知の配糖ィヒ酵素遺伝子はその種類が十分ではなく、 新規な配糖化遺伝子をクロー ユングする必要があった。 即ち、 本発明は、 新規な配糖化酵素遺伝子を提供する
ことを解決すべき課題とした。
本発明者らは、 上記課題を解決するために鋭意検討した結果、 ナス科植物から 新規な配糖化酵素をコ一ドする D N Aを単離することに成功し、 本発明を完成す るに至った。
即ち、 本発明によれば、 下記の何れかのアミノ酸配列を有するタンパク質をコ 一ドする遺伝子が提供される。
( 1 )配列表の配列番号 1、 3、 7、 9または 1 1に記載のアミノ酸配列を有し、 配糖化酵素活 1"生を有するァミノ酸配列;
( 2 ) 配列表の配列番号 1、 3、 7、 9または 1 1に記載のアミノ酸配列におい て 1から数個のアミノ酸の欠失、 置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有 し、 配糖化酵素活性を有するアミノ酸配列;又は
( 3 ) 配列表の配列番号 1、 3、 7、 9または 1 1に記載のアミノ酸配列に対し て 7 0 %以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、 配糖化酵素活性を有するァ ミノ酸配列;
好ましくは、本発明の遺伝子は下記の何れかの塩基配列を有する遺伝子である。
( 1 ) 配列表の配列番号 2、 4、 8、 1 0または 1 2に記載の塩基配列を有し、 配糖化酵素をコードする塩基配列;
( 2 ) 配列表の配列番号 2、 4、 8、 1 0または 1 2に記載の塩基配列において
1から数個の塩基の欠失、 置換及び Z又は付加を有する塩基配列を有し、 配糖化 酵素をコードする塩基配列;又は
( 3 ) 配列表の配列番号 2、 4、 8、 1 0または 1 2に記載の塩基配列とストリ ンジ ントな条件下でハイブリダイスする塩基配列を有し、 配糖化酵素をコード する塩基配列;
好ましくは、 本発明の遺伝子は植物に由来する遺伝子であり、 さらに好ましく は、 植物はナス科植物である。
本発明の別の側面によれば、 下記の何れかのァミノ酸配列を有するタンパク質 が提供される。
( 1 )配列表の配列番号 1、 3、 7、 9または 1 1に記載のァミノ酸配列を有し、 配糖化酵素活性を有するアミノ酸配列;
( 2 ) 配列表の配列番号 1、 3、 7、 9または 1 1に記載のアミノ酸配列におい て 1から数個のアミノ酸の欠失、 置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有 し、 配糖化酵素活性を有するアミノ酸配列;又は
( 3 ) 配列表の配列番号 1、 3、 7、 9または 1 1に記載のァミノ酸配列に対し て 7 0 %以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、 配糖化酵素活性を有するァ ミノ酸配列;
本発明のさらに別の側面によれば、 本発明の遺伝子を含む組み換えベクターが 提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、 本発明の遺伝子又は組み換えベクターを有 する形質転換体が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、 本発明の形質転換体を培養し、 培養物から 本発明のタンパク質を採取することを含む、 当該タンパク質の製造方法が提供さ れ 。
本発明のさらに別の側面によれば、 本発明のタンパク質の存在下で糖と基質を 反応させることを含む、 糖を基質に結合させる方法が提供される。 図面の簡単な説明
図 1は、 ゲノムサザン分析の結果を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の実施の形態について詳細に説明する。
( 1 ) 本発明の遺伝子
キンギンナスビは、 根から 2種類のステロイドサポニンが同定されており、 毛 状根培養および形質転換体の作成が可能である。 本発明者らは、 ステロイ ドサボ ゲニン配糖ィ匕機構を解明する手がかりとして、 キンギンナスビより配糖化酵素遺
伝子の単離を試み、 デジエネレート P C Rおよび R A C E法により、 2種類の候 補遺伝子である SaGT4Aおよび SaGT4Rを取得した。 SaGT4Aのァミノ酸配列と塩基 配列を配列表の配列番号 1及び 2に示し、 SaGT4Rのァミノ酸配列と塩基配列を配 列表の配列番号 3及ぴ 4に示す。
また、 上記のデジエネレート P C Rにより、 ソラナム ·カシアナムからは、 配 列番号 8で示される塩基配列 (Sk#7 - 5) (この塩基配列がコードするァミノ酸配列 を配列番号 7に示す) が取得された。 同様に、 ナスビからは、 配列番号 1 0で示 される塩基配列 (egP#l - 1) (この塩基配列がコードするアミノ酸配列を配列番号 9に示す)、並びに配列番号 1 2で示される塩基配列(egp#l - 4) (この塩基配列が コードするァミノ酸配列を配列番号 1 1に示す)が得られた。上記の SaGT4Aおよ び SaGT4Rを取得した手法と同様の手法により、 これらの遺伝子断片 (Sk#7 - 5、 egp#l- 1、 及ぴ egp#l- 4) を用いて R A C E法を用いることにより、 ソラナム '力 シァナム又はナスビからこれらの遗伝子断片を含む全長の遺伝子 (即ち、 配糖化 酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子)を取得することが可能である。 即ち、 本発明の遺伝子は、 下記の何れかのァミノ酸配列を有するタンパク質を コードする遺伝子である。
( 1 )配列表の配列番号 1、 3、 7、 9または 1 1に記載のァミノ酸配列を有し、 配糖化酵素活性を有するアミノ酸配列;
( 2 ) 配列表の配列番号 1、 3、 7、 9または 1 1に記載のァミノ酸配列におい て 1から数個のアミノ酸の欠失、 置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有 し、 配糖化酵素活性を有するアミノ酸配列;又は
( 3 ) 配列表の配列番号 1、 3、 7、 9または 1 1に記載のァミノ酸配列に対し て 7 0 %以上の相同性を有するァミノ酸配列を有し、 配糖化酵素活性を有する了 ミノ酸配列;
本発明の遺伝子の具体例としては、 下記の何れかの塩基配列を有する遺伝子が 挙げられる。
( 1 ) 配列表の配列番号 2、 4、 8、 1 0または 1 2に記載の塩基配列を有し、
配糖化酵素をコードする塩基配列;
( 2 ) 配列表の配列番号 2、 4、 8、 1 0または 1 2に記載の塩基配列において 1から数個の塩基の欠失、 置換及び Z又は付力 Dを有する塩基配列を有し、 配糖ィ匕 酵素をコードする塩基配列;又は
( 3 ) 配列表の配列番号 2、 4、 8、 1 0または 1 2に記載の塩基配列とストリ ンジェントな条件下でハイブリダイスする塩基配列を有し、 配糖化酵素をコード する塩基配列;
本発明において、 「配糖化酵素」 とは、 UDP-グルコース又は TDP-ラムノースな どの活性化された単糖あるいはオリゴ糖を特定の化合物に結合する能力を有する 酵素である。 また、 「配糖化酵素活性」 とは、上記のような単糖あるいはオリゴ糖 を特定の化合物に結合することができる酵素活性を意味する。
本発明の遺伝子は、例えば、ナス科などの植物、具体的には、キンギンナスビ、 ソラナム ·カシアナム、 ナスビ、 ジャガイモ、 タバコなどから単離できる。
本明細書で言う 「 1から数個のァミノ酸の欠失、 置換及び/又は付加を有する ァミノ酸配列」 における 「1から数個」 の範囲は特には限定されないが、例えば、 1から 2 0個、 好ましくは 1から 1 0個、 より好ましくは 1から 7個、 さらに好 ましくは 1から 5個、 特に好ましくは 1から 3個程度を意味する。
本明細書で言う 「配列表の配列番号 1、 3、 7、 9または 1 1に記載のァミノ 酸配列に対して 7 0 %以上の相同性を有するァミノ酸配列」 における相同性は、 7 0 %以上であれば特に限定されないが、 さらに好ましくは 8 0 %以上、 さらに 好ましくは 8 5 %以上、 さらに好ましくは 9 0 %、 特に好ましくは 9 5 %以上で める。
本明細書で言う 「1から数個の塩基の欠失、 置換及ぴ Z又は付加を有する塩基 配列」 における 「1から数個」 の範囲は特には限定されないが、 例えば、 1から 4 0個、 好ましくは 1から 3 0個、 より好ましくは 1から 2 0個、 より好ましく は 1から 1 0個、 さらに好ましくは 1から 5個、 特に好ましくは 1から 3個程度 を意味する。
上記した 「ストリンジェントな条件下でハイブリダィズする」 とは、 DNAをプ ローブとして使用し、 コロニーハイブリダィゼーシヨン法、 プラークハイブリダ ィゼーション法、 あるいはサザンプロットハイブリダイゼーション法等を用レ、る ことにより得られる DNAの塩基配列を意味し、 例えば、 コロニーあるいはプラ ーク由来の DNA又は該 DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、 0. 7
〜1. 0Mの Na C l存在下、 65。Cでハイブリダィゼーシヨンを行った後、 0.
1〜2 X S S C溶液 (1 X S S C溶液は、 15 OmM塩ィ匕ナトリウム、 15 mM クェン酸ナトリウム) を用い、 65 °C条件下でフィルターを洗浄することにより 同定できる DN A等を挙げることができる。 ハイブリダィゼーシヨンは、 モレキ ユラ一クローユング第 2版等に記載されている方法に準じて行うことができる。 ストリンジェントな条件下でハイブリダィズする DNAとしては、 プローブと して使用する DN Aの塩基配列と一定以上の相同性を有する DN Aが挙げられ、 例えば 70%以上、 好ましくは 80%以上、 より好ましくは 90%以上、 さらに 好ましくは 93 %以上、 特に好ましくは 95 %以上、 最も好ましくは 98 %以上 の相同性を有する DN Aが挙げられる。
本発明の遺伝子の取得方法は特に限定されない。本明細書中の配列表の配列番号 1力 ら 12に記載したァミノ酸配列及ぴ塩基配列の情報に基づいて適当なブロー プゃプライマーを調製し、 それらを用いてナス科などの植物 (より具体的には、 キンギンナスビ、 ソラナム ·カシアナム、 ナスビ、 ジャガイモ、 タバコなど) の c DNAライブラリーをスクリーニングすることにより本発明の遗伝子を単離す ることができる。 c DNAライブラリ一は、 本発明の遺伝子を発現している細胞 から常法により作製することができる。
P C R法により本発明の遺伝子を取得することもできる。 上記した植物由来の 染色体 DNAライブラリー又は cDN Aライブラリーを鏡型として使用し、 配列 番号 2、 4、 6、 8、 10又は 12に記載した塩基配列を増幅できるように設計 した 1対のプライマーを用いて P C Rを行う。 P C Rの反応条件は適宜設定する ことができ、 例えば、 94でで 30秒間 (変性)、 55 で 30秒〜 1分間 (ァニ
一リング)、 7 2 °Cで 2分間 (伸長) からなる反応工程を 1サイクルとして、例え ば 3 0サイクル行った後、 7 2 °Cで 7分間反応させる条件などを挙げることがで きる。 次いで、 増幅された D NA断片を、 大腸菌等の宿主で増幅可能な適切なベ クタ一中にクローニングすることができる。
上記したプローブ又はプライマーの調製、 c D NAライブラリーの構築、 c D NAライブラリーのスクリーニング、 並びに目的遺伝子のクローニングなどの操 作は当業者に既知であり、 例えば、 Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed. , Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY. , 1989 (以 下、 モレキュラークローニング第 2版と略す)、 Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987—1997) (以下、 カレント · プロトコールズ 'イン.モレキュラー .バイオロジーと略す) 等に記載の方法に 準じて行うことができる。
また、 配列表の配列番号 1、 3、 7、 9または 1 1に記載のァミノ酸配列にお いて 1から数個のァミノ酸の欠失、 置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を 有し、 配糖化酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;並びに配列表の 配列番号 2、 4、 8、 1 0または 1 2に記載の塩基配列において 1から数個の塩 基の欠失、 置換及ぴ Z又は付加を有する塩基配列を有し、 配糖化酵素をコードす る塩基配列を有する遺伝子 (以下、 これらの遺伝子を変異遺伝子と称する) につ いては、 配列番号 1〜 1 2に記載のァミノ酸配列おょぴ塩基配列の情報に基づい て、 化学合成、 遗伝子工学的手法又は突然変異誘発などの当業者に既知の任意の 方法で作製することができる。
例えば、 配列表の配列番号 2、 4、 8、 1 0または 1 2に記載の塩基配列を有 する D N Aに対し、 変異原となる薬剤と接触作用させる方法、 紫外線を照射する 方法、 遺伝子工学的手法等を用いて行うことができる。 遺伝子工学的手法の一つ である部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であ ることから有用であり、 モレキュラークローニング第 2版、 カレント 'プロトコ ールズ 'イン 'モレキュラー 'バイオロジー等に記載の方法に準じて行うことが
できる。
( 2 ) 本努明のタンパク質
本発明のタンパク質は、 下記の何れかのアミノ酸配列を有する。
( 1 ) 配列表の配列番号 1、 3、 7、 9または 1 1に記載のァミノ酸配列を有し、 配糖化酵素活性を有するアミノ酸配列;
( 2 ) 配列表の配列番号 1、 3、 7、 9または 1 1に記載のアミノ酸配列におい て 1から数個のァミノ酸の欠失、 置換及び/又は付加を有するァミノ酸配列を有 し、 配糖化酵素活性を有するアミノ酸配列;又は
( 3 ) 配列表の配列番号 1、 3、 7、 9または 1 1に記載のアミノ酸配列に対し て 7 0 %以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、 配糖化酵素活性を有するァ ミノ酸配列;
本発明のタンパク質は配糖化酵素活性を有するタンパク質であり、 このタンパ ク質の存在下で糖と基質を反応させることにより糖を基質に結合させることがで きる 上記方法による糖の基質への結合方法も本発明の範囲内に含まれる。
本発明のタンパク質の取得方法は特に制限されず、 化学合成により合成したタ ンパク質でもよいし、 遺伝子組み換え技術により作製した組み換えタンパク質で あよい。
組み換えタンパク質を作製する場合には、 先ず、 本明細書の上記 (1 ) に記載 した当該タンパク質をコードする遺伝子 (D NA) を取得する。 この D NAを適 当な発現系に導入することにより、本発明のタンパク質を産生することができる。 発現系でのタンパク質の発現については本明細書中後記する。
( 3 ) 本発明の組み換えベクター
本発明の遺伝子は適当なベクター中に挿入して使用することができる。 本発明 で用いるベクターの種類は特に限定されず、 例えば、 自立的に複製するベクター (例えばプラスミド等) でもよいし、 あるいは、 宿主細胞に導入された際に宿主
細胞のゲノムに組み込まれ、 組み込まれた染色体と共に複製されるものであって あよい。
好ましくは、 本発明で用いるベクターは発現ベクターである。 発現ベクターに おいて本発明の遺伝子は、 転写に必要な要素 (例えば、 プロモーター等) が機能 的に連結されている。 プロモータは宿主細胞にぉレ、て転写活性を示す D N A配列 であり、 宿主の種類に応じて適宜選択することができる。
細菌細胞で作動可能なプロモータとしては、 バチルス · ステア口テルモフィル ス · マスレトシエニック * ァミラ一セ逾 1S子 (Bacillus stearothermophilus maltogenic amylase gene)、 / テノレス · リケニホノレミス / ^フ— ^ iais子 (Bacillus licheniformi.s alpha— amylase gene)、 / テ,レス · ,ミロリケファチェ ンス · BANア フ1— 子 (Bacillus amy上 oliquefaciens BAN amylase gene)、 バチルス ·サブチリス ·アルカリプロテア一ゼ遣伝子(Bacillus S ubtilis alkaline protease gene)もしくはバチルス ·プミルス 'キシロシダーゼ遗伝子 (Bacillus pumilus xylosldase gene)のプロモータ、 またはファージ'ラムダの P R若しくは P Lプロモータ、 大腸菌の lac、 trp若しくは tacプロモータなどが 挙げられる。
哺乳動物細胞で作動可能なプロモータの例としては、 S V 4 0プロモータ、 M T - 1 (メタ口チォネイン遗伝子) プロモータ、 またはアデノウィルス 2主後期 プロモータなどがある。 昆虫細胞で作動可能なプロモータの例としては、 ポリへ ドリンプロモータ、 p 1 0プロモータ、 オートグラファ ·力リホル二力 'ポリへ ドロシス塩基性タンパクプロモータ、 バキユウロウィルス即 B寺型初期遺伝子 1プ 口モータ、 またはバキユウロウィルス 3 9 K遅延型初期遺伝子プロモータ等があ る。 酵母宿主細胞で作動可能なプロモータの例としては、 酵母解糖系遺伝子由来 のプロモータ、 アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモータ、 T P I 1プロモ ータ、 AD H2- 4cプロモータなどが挙げられる。 糸状菌細胞で作動可能なプロモ ータの例としては、 AD H 3プロモータまたは t p i Aプロモータなどがある。 また、 本発明の遺伝子は必要に応じて、 適切なターミネータに機能的に結合さ
れてもよい。 本発明の組み換えベクターは更に、 ポリアデュレーシヨンシグナル
(例えば S V 4 0またはアデノウィルス 5 E 1 b領域由来のもの)、 転写ェンハン サ配列 (例えば S V 4 0ェンハンサ) などの要素を有していてもよい。
本発明の組み換えベクターは更に、 該べクターが宿主細胞内で複製することを 可能にする D N A配列を具備してもよく、その一例としては S V 4 0複製起点 (宿 主細胞が哺乳類細胞のとき) が挙げられる。
本発明の組み換えベクターはさらに選択マーカーを含有してもよい。 選択マー カーとしては、 例えば、 ジヒドロ葉酸レダクターゼ (D H F R) またはシゾサッ カロマイセス ·ボンべ T P I遺伝子等のようなその捕体が宿主細胞に欠けている 遺伝子、 または例えばアンピシリン、 カナマイシン、 テトラサイクリン、 クロラ ムフエ二コール、 ネオマイシン若しくはヒグロマイシンのような薬剤耐性遗伝子 を挙げることができる。 本発明の遗伝子、 プロモータ、 および所望によりターミ ネータおよぴ/または分泌シグナル配列をそれぞれ連結し、 これらを適切なべク ターに挿入する方法は当業者に周知である。
( 4 ) 本発明の形質転換体及びそれを用いた組み換えタンパク質の製造
本宪明の遺伝子又は組み換えベクターを適当な宿主に導入することによって形 質転換体を作製することができる。
本発明の遺伝子または組み換えべクターを導入される宿主細胞は、 本発明の遺 伝子を発現できれば任意の細胞でよく、 細菌、 酵母、 真菌おょぴ高等真核細胞等 が挙げられる。
細菌細胞の例としては、 バチルスまたはストレプトマイセス等のグラム陽性菌 又は大腸菌等のグラム陰性菌が挙げられる。 これら細菌の形質転換は、 プロトプ ラスト法、または公知の方法でコンビテント細胞を用いることにより行えばよレ、。 哺乳類細胞の例としては、 H E K 2 9 3細胞、 H e L a細胞、 C O S細胞、 B HK細胞、 C H L細胞または C HO細胞等が挙げられる。 哺乳類細胞を形質転換 し、 該細胞に導入された D N A配列を発現させる方法も公知であり、 例えば、 ェ
レクト口ポーレーシヨン法、 リン酸カルシウム法、 リポフエクシヨン法等を用い ることができる。
酵母細胞の例としては、 サッカロマイセスまたはシゾサッカロマイセスに属す る細胞が挙げられ、 例えば、 サッカロマイセス · セレビシェ(Saccharomyces cerevislae)またはサッカロマイセス ·クルイベリ ( S accharomyces kluyveri)等 が挙げられる。 酵母宿主への組み換えベクターの導入方法としては、 例えば、 ェ レクト口ポレーシヨン法、 スフエロブラスト法、 酢酸リチウム法等を挙げること ができる。
他の真菌細胞の例は、 糸状菌、 例えばァスペルギルス、 ニューロスポラ、 フザ リウム、 またはトリコデルマに属する細胞である。 宿主細胞として糸状菌を用い る場合、 D N A構築物を宿主染色体に組み込んで組換え宿主細胞を得ることによ り形質転換を行うことができる。 D N A構築物の宿主染色体への組み込みは、 公 知の方法に従い、 例えば相同組換えまたは異種組換えにより行うことができる。 昆虫細胞を宿主として用いる場合には、 組換え遺伝子導入ベクターおよぴバキ ュ口ウィルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウィルスを得 た後、 さらに組換えウィルスを昆虫細胞に感染させ、 タンパク質を発現させるこ と T)ゝ 'Cさる (例 7ば、 Bacu丄 ovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual; 及び力レント ♦ プロ トコ一/レズ · イン .モレキュラー .バイオロジー、 Bio/Technology, 6, 4ァ(1988)等に記載)。
バキュロウィルスとしては、 例えば、 3 トウガ科昆虫に感染するウィルスであ るァゥトグラファ · 力リフォルニ力 ·ヌクレアー ·ポリへドロシス · ウィルス (Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることかできる。 昆虫細胞としては、 Spodoptera frugiperda の卵巣細胞である S f 9、 S f 2 1 〔パキュロウィルス .エクスプレッション .ベクターズ、 ァ 'ラボラトリー . マニュアル、ダブリュー'ェイチ 'フリ一マン'アンド'力ンパニー(W. H. Freeman and Company)、 ニューヨーク(New York)、 (1992)〕、 Trichoplusia niの卵巣細胞 である H i F i v e (インビトロジェン社製)等を用いることができる。
組換えウィルスを調製するための、 昆虫細胞への組換え遺伝子導入べクタ一と 上記バキュロウィルスの共導入方法としては、 例えば、 リン酸カルシウム法又は リポフエクシヨン法等を挙げることができる。
上記の形質転換体は、 導入された遺伝子の発現を可能にする条件下で適切な栄 養培地中で培養する。 形質転換体の培養物から、 本発明のタンパク質を単離精製 するには、 通常のタンパク質の単離、 精製法を用いればよい。
例えば、 本発明のタンパク質が、 細胞内に溶解状態で発現した場合には、 培養 終了後、 細胞を遠心分離により回収し水系緩衝液に懸濁後、 超音波破砕機等によ り細胞を破砕し、 無細胞抽出液を得る。 該無細胞抽出液を遠心分離することによ り得られた上清から、 通常のタンパク質の単離精製法、 即ち、 溶媒抽出法、 硫安 等による塩析法、 脱塩法、 有機溶媒による沈殿法、 ジェチルアミノエチル (DEAE) セファロース等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィ一法、 S-Sepharose FF (フアルマシア社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグ ラフィ一法、 プチルセファロース、 フエ二ルセファロース等のレジンを用いた疎 水性クロマトグラフィー法、 分子篩を用いたゲルろ過法、 ァフィ二ティークロマ トグラフィ一法、 クロマトフォーカシング法、 等電点電気泳動等の電気泳動法等 の手法を単独あるいは組み合わせて用い、 精製標品を得ることができる。
( 5 ) 糖を基質に結合させる方法
本発明の配糖化酵素活性を有するタンパク質の存在下で糖と基質を反応させる ことによって糖を基質へ結合させる方法も本発明の範囲内に含まれる。 本発明で 用いる基質は限定されるものではないが、ステロイドアルカロイド、ステロイド、 あるいはそれらの誘導体が例示される。ステロイドアルカロイドとして、例えば、 ソラソジン、 トマチジンを、 またステロイドとして、 例えば、 ジォスゲニン、 ヌ ァチゲニン、 チゴゲニンを例示できる。
本発明では、 上記 (4 ) に記載したように培養して得られた形質転換体をその まま、 あるいは洗浄して、 配糖化反応に使用することができる。 ±咅養して得られ
た形質転換体をさらに処理して得られる処理物もまた、 配糖化反応に使用するこ とができる。 ここで言う処理物としては、 (a )形質転換体を当業者に公知の方法 で固定ィ匕したもの、 (b )形質転換体を、例えば、 ガラスビーズなどを使用して機 械的に、 又は酵素的に処理する力、 又は界面活性剤や有機溶剤 (例えば、 トルェ ンなど) などで処理したもの、又はそれらを固定ィ匕したもの、 (c )形質転換体を 破砕して破砕残渣を除去したもの、 又はそれを固定ィ匕したもの、 (d ) 上記 (b ) または (c ) からさらに精製した得られた酵素、 又はそれを固定ィ匕したもの、 な どが挙げられる。
上記の通り本発明では、 酵素を固定化して用いることもできる。 酵素を固定化 する方法は、 特に限定されないが、 例えば、 ダルタルアルデヒド、 ポリアクリル アミ ド、 カラギーナン、 アルギン酸カルシウム、 イオン交換樹脂、 セライトなど を用いて酵素を固定化する方法を使用することができる。 また、 本発明の配糖化 反応は、 膜リアクターを利用して行うこともできる。 膜リアクターを構成するこ とができる膜としては、 限外濾過膜、 疎水性膜、 カチオン膜、 ナノフィルトレー シヨン膜 (J. Ferment. Bioeng. 83, 54 - 58 (1997) ) 等を挙げることができる。 上記したような形質転換体又はその処理物(精製酵素、粗精製酵素などを含む) は、 基質と糖を含む反応液と混合して、 配糖化反応を行う。 本発明の酵素を用い た配糖化反応は、 水、 又は水と有機溶媒との混合液中で行うことができる。 有機 溶媒としては、 メタノール、 エタノール、 ィソプロパノール、 アセトン、 あるい はァセトニトリルなどを挙げることができる。
反応液中における基質と糖の割合は配糖化反応が進行する限り特に限定されな いが、 好ましくは約 1 0 0 : 1〜 1 : 1 0 0であり、 さらに好ましくは約 1 0 : 1〜1 : 1 0である。 反応液の p Hは、 配糖化反応が進行する限り特に限定され ないが、 好ましくは約 3 . 0〜1 1 . 0であり、 さらに好ましくは p H約 6 . 0 〜8 . 0である。 反応温度も配糖化反応が進行する限り特に限定されないが、 通 常は約 4〜7 0 °Cであり、 好ましくは約 1 0〜5 0 °Cである。 また、 基質および
糖は反応開始時に一括して添加することも可能であるが、 反応液中の濃度が高く なりすぎないように連続的もしくは非連続的に添加することもできる。
上記の反応により、 糖が付加された生成物 (例えば、 糖が付加されたステロイ ドアルカロイド、 ステロイド、 あるいはそれらの誘導体など) が得られるが、 得 られた生成物は、 遠心分離、 溶媒抽出、 蒸留、 晶析、 クロマトグラフィーなどを 単独又は適宜組み合わせることによって分離することができる。
以下の実施例により本発明をより詳細に説明するが、 本発明は以下の実施例に 限定されるものではない。 実施例
実施例 1 (ナス科植物からのゲノム DNAの調製および部分 DNAの単離)
キンギンナスビ (Solanumaculeatisimum) 無菌培養苗地上部おょぴソラナム ' カシアナム (Solanum khasianum) 無菌培養苗葉、 ナスビ (Solanum melongena) 野外育成植物葉各 0. lgよりゲノム DNAを抽出した。抽出は NucleonPhytoPure, plant and fungal DNA extraction kit (Amersham Pharmacia Biotech) ¾r用 ヽ、 手順は添付のプロトコールに従った。 各々にっき数 lOOngの DNAが回収され、 その一部を以下の実験に用いた。
ゲノム DNA数 ngをテンプレートとし、 反応液 20μ1中(プライマー各 1μ1, 0.2mM dNTP, TaKaRa ExTaq 0.5 units および添付バッファー)にてサイクルパラ メーター [最初に 94°C (3分)、次いで 94°C (30秒) /55°C ( 1分) /72°C ( 1分) を 30サイクル、最後に 72°C (2分) ]で増幅反応を行った。使用したプライマー GT5 (配列番号 13) は 100 μ M, GT8 (配列番号 14) 〖ま 50 ^ Μに調製した。 以下、 PCRは全て同様の酵素量、 dNTP濃度、 バッファー組成で行った。 各プ ライマー濃度は特記のない限り、 終濃度 0.5 /M とした。
プライマー GT5/GT8によりキンギンナスビからは約 750bp、 ソラナム ·カシア ナムからは約 750bp 、 ナスビからは約 600 bp,および 800bpの DNA断片が増幅 された。
実施例 2 (部分配列の決定)
P C Rにより増幅された D N A断片を 1%ァガロースゲル電気泳動により分離 し、 QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN) を用い抽出した。 抽出した断片を T0P0 TA Cloning キット(Invitrogen)を用いベクター pCRII - T0P0にサブクローニ ングし、 D N A配列を決定した。
その結果、 キンギンナスビからは、 配列番号 6で示される塩基配列(Sa#4 - 5)、 ソラナム ·カシアナムからは、 配列番号 8で示される塩基配列(Sk#7 - 5)、 ナスビ からは、 配列番号 1 0および 1 2で示される塩基配列 (それぞれ、 egp#l - 1, egp#l-4) が得られた。 実施例 3 (キンギンナスビのゲノムサザン解析)
セチルトリメチルアンモニゥムブロマイド法により、 キンギンナスビ無菌培養 苗葉 0. 5 g より約 1 mgのゲノム D N Aを得た。このうち 10 g を制限酵素 BaraHI, EcoRI, Hindlll, Xbal (TaKaRa) で各々切断後 (BamHI, Xbal 10 units, EcoRI, Hindlll 5 units, 37° C 16時間)、 1%ァガロースゲル電気泳動で分離した。 ゲ ルから D N Aをナイ口ン膜(Gene Screen Plus, NEN life science)へ 10 xSSC (1. 5M NaCl, 0. 15Mクェン酸ナトリウム)中でのキヤビラリ一法により 、 室温 16時間で 転写した。 転写後の膜を風乾後 80° Cにて 2時間べ一キングし、 ハイブリダィゼ ーシヨンに用いた。
ハイブリダィゼーシヨン用のプローブ D N Aは、ベクタ一 pCRI I-T0P0にサブク ローニングしたゲノム部分配列 D N Aをテンプレートとして P C R (サイクルパ ラメーター [96°C (20秒)、 次いで、 96°C (20秒) / 55°C (30秒) /72°C (1分 30秒) を 30サイクル] ) により調製した。 プライマーとして、 Sa#4 - 5検出用プロ 一ブには GT22 (配列番号 1 5 ) および GT23 (配列番号 1 6 ) を用いた。
プローブの標識は BcaBEST Labeling Kit (TaKaRa) を用いて行った。 ハイプリ ダイゼーシヨン 'バッファー(5 X SSPE pH7. 4, 5 Xデンハルト溶液, 0. 5 % SDS,
10%硫酸デキストラン, 0. lmg/ml 変性サケ精巣 D N A) 中 65°C, 18時間でハイ ブリダイズし、洗浄パッファ一でナイ口ン膜を洗浄後 (2 X SSC, 0. 1%SDS 65°C, 30分、 1 X SSC, 0. 1%SDS 65°C, 30分)、 オートラジオグラフィ一にかけた。 そ の結果、部分配列 Sa#4- 5に相当な遺伝子はキンギンナスビゲノム中に複数コピー 存在することが示された (図 1 )。 実施例 4 (キンギンナスビ由来の遺伝子の 3, -RACE)
キンギンナスビ無菌培養苗 (1 /2 MS液体培地、 振盪培養) 地上部あるいは地 下部約 50mgより RNeasy Plant Mini Kit (QIAGEN)を用い、 トータル R NAを抽 出した。そのうち 2. 5 gを最初の相補鎖の合成に用いた。合成反応は SUPERSCRIPT II RNaseH" Reverse Transcriptase (GIBCO BRL) により、 添付のプロトコールの 反応液組成に従い 20 μ ΐ中、 42°C50分で行った。アダプター配列を含むオリゴ(dT) プライマー 3R1 (配列番号 1 7 )は終濃度 0. 5 μ Μとなるよう加えた。反応終了後、 反応混合液を RNaseH (TaKaRa)で処理し (2 units, 37°C20分)、 このうち 1 μ 1 をテンプレートとして次の PCRに用いた。 アダプタープライマー 3R2と遺伝子特 異的プライマー GT28 (配列番号 1 9 )による増幅反応を行い(96°C2分、次いで 94°C (20秒) /55°C (30秒) /72°C (1分 30秒)、 20 μ 1、 30サイクル)、 この反応混 合液 0. 01 相当をテンプレートとして、 3R2 (配列番号 1 8 ) と遺伝子特異的プ ライマー GT29 (配列番号 2 0 )による nested PCRを同様の条件で行った。 nested PCRにより増幅された 3' 領: ¾の D NA断片を 1. 2%ァガロースゲル電気泳動によ り分離し、抽出した断片をベクター pCRII-TOPOにサブクローニングし、 ポリ A領 域を含む 2種の約 600 bpの異なる D N A配列を得た。 実施例 5 (キンギンナスビ由来の遺伝子の 5' -RACE)
キンギンナスビ無菌培養苗 (1 / 2 MS液体培地、 振盪培養) 地上部あるいは地 下部より実施例 4の方法と同様にトータル R NAを抽出、そのうち 1. 5 μ §を 5' RACE System, version 2. 0 (Invitrogen) キットにより 5, 領域の D N A配列を
増幅した。最初の相補鎖の合成には遺伝子特異的アンチセンスプライマー GT32 (配 列番号 2 1 ) を用いた。 3, 末端へのアンカー配列 dCポリマー付加反応後、キッ ト添付の MPと遺伝子特異的プライマー GT34 (配列番号 2 2 ) により P C Rを行 レ、、 さらにこの反応混合液をテンプレートとして、キット添付の AUAPと遺伝子特 異的プライマー GT35 (配列番号 2 3 ) により nested P C Rを行い、 増幅した D NAの塩基配列を決定した。その結果、地上部、地下部より開始コドンを含む各々 約 450 bp, 400bpの異なる D N A配列を得た。 実施例 6 (キンギンナスビ由来全長 cDNAの単離)
実施例 4およぴ実施例 5による R A C E法により非翻訳領域を含む 2種のキン ギンナスビ cDNA全長配列を同定した。得られた塩基配列を、配列番号 2 (SaGT4A) および配列番号 4 (SaGT4R)に示す。 SaGT4Aは 1 6 7 3塩基対で、 4 9 1アミノ酸 をコードしていた。 一方 SaGT - 4Rは 1 6 1 3塩基対で、 4 2 7ァミノ酸をコード していた。 SaGT4A、 SaGT4Rのいずれもが、植物二次代謝産物の生産に関わる配糖 化酵素においてアミノ酸同一性 8 0 %以上のコンセンサス配列 (THCG丽 S) と完全 に一致する配列を有していた。 SaGT - 4Aと SaGT4Rのァミノ酸同一性は約 8 9 %で あった。 また SaGT4Aの全ァミノ酸配列をもとに TBLASTN
(http: // ww. ncbi. nlm. nih. gov/blast) によるホモロジ一サーチを行った結果、 ジャガイモ由来の配糖化酵素 (GenBankァクセッション番号 STU82367) との相同 性が最も高く、 アミノ酸同一性は約 6 3 %であった。 実施例 7 (R T - P C R法による遺伝子発現解析)
R T- P C R法により、 キンギンナスビ由来の 2つの遗伝子 SaGT4A、 SaGT4Rの 発現解析を行った。
無菌培養キンギンナスビ各器官より前述の方法で抽出したトータル匪2. 5 § を用いて SUPERSCRIPT II RNaseH" Reverse Transcriptase (GIBCO BRL) により 逆転写反応を行った。 反応条件は添付のプロトコールに従った。 反応終了後、 反
応混合液を RNaseH (TaKaRa)で処理し (2 units, 37°C20分)、 このうち 0. 5 μ 1 相当をテンプレートとして次の PCRに用いた。
増幅反応はサイクルパラメーター [96°C2分、 %°C (20秒) Z55°C (30秒) / 72°C (1分 30秒), 30サイクル]で行った。 PCR混合液 20 /z 1のうち 8 μ 1 を 1· 5% ァガロースゲル電気泳動によつて分離し、 PCR産物を検出した。
植物体の傷処理は、地上部については葉脈に垂直にハサミで切り込みを入れ、 1 / 2 MS固体培地培養と同じ条件下 (26°C) に置き、 経時的に処理葉またはその上 位葉を回収した。 地下部については 1 / 2 MS液体培地静置苗より切り取った根の 表面に力ミソリで傷をつけ、 水で湿らせたキムワイプの上に並べシャーレ中に静 置し(26°C)、 経時的に回収した。
キンギンナスビ遺伝子の器官局在は、 SaGT4Aは植物体全体で発現していたのに 対し、 SaGT4Rは根特異的に発現していた。
傷処理に対し SaGT4Aは葉でも根でも発現が迅速に抑制された。この抑制は一過 的なもので、 傷処理後 6時間後には遺伝子の発現は元のレベルにまで回復した。 また地上部において、 傷処理を与えた葉の上位の葉でも同様の応答がみられたこ と力 ら、全身応答性であることが示された。 SaGT4Rの根における発現レベルは傷 処理により変動したが、 SaGT4Aとは異なる応答を示し、葉での発現誘導はみられ なかった。 実施例 8 (大腸菌によるタンパク質生産)
GST融合型タンパク質として大腸菌で SaGT4A, SaGT4Rの遗伝子産物を生産させ るために、 発現用ベクターを構築した。 各遺伝子の翻訳領域を P C Rにより調製 し、 ベクター pGEX 5X-1 (Amersham Pharmacia Biotech) のクローンニングサイト に揷入した。 P C Rのテンプレートとして、 無菌液体培養苗地上部おょぴ地下部 から逆転写反応で合成した cDNA を用いた。 プライマーにはベクター構築に必要 な制限酵素サイトを導入したものもある。 プライマーの配列を配列番号 1 5、 1 6および 2 4から 2 7に示す。
SaGT4Aについては、 上記 cDNAを鎵型として、 配列番号 2 4および配列番号 2 5のプライマーを用いて、 実施例 7記載の方法により P C R反応を行い、 SaGT4A の翻訳領域を含む DNAを増幅した。 増幅した翻訳領域を含む DNAをベクター pCRII- T0P0にサブクローユングし、 塩基配列を確認後、 BamHI, Sail で切り出し た約 1. 5 kbの断片を pGEX- 5X- 1の BamHI, Sailサイ トに挿入し、 グルタチオン- S -トランスフェラーゼとの融合タンパク発現ベクターとした。 一方、 SaGT4Rに ついては、まず、上記 cDNAを鎵型として、配列番号 2 6および配列番号 1 6のプ ライマーを用いて、実施例 7記載の方法により P C R反応を行い、 SaGT4Rの翻訳 領域の N末領域を含む DNAを増幅し、ベクタ一 pCRI I- T0P0にサブクローニングし、 塩基配列を確認後、 BamHI, EcoRV で切り出した約 350 b の断片を pBluescript SK (Stratagene) の BamHI, EcoRV サイトに挿入した。 このプラスミ ドを p4R5BEと する。続いて、上記 cDNAを錄型として、配列番号 1 5および配列番号 2 7のブラ イマ一を用いて、実施例 7記載の方法により P C R反応を行い、 SaGT4Rの翻訳領 域の C末領域を含む DNAを増幅し、 ベクター pCRI I-TOPOにサブクローニングし、 塩基配列を確認後、 EcoRV, Sai l で切り出した約 1 kbの断片を、プラスミ ド p4R5BE の EcoRV, Sail サイトに挿入することにより、 SaGT4Rの翻訳領域全体を有するプ ラスミ ドを構築した。このプラスミド匪より BamHI, Sail で切り出した約 1. 3 kb の断片を PGEX-5X-1の BamHI, Sailサイトに揷入し、 グルタチオン- S -トランス フェラーゼとの融合タンパク発現ベクターとした。
このようにして得られたベクタープラスミ ドで大腸菌 DH5 a株を形質転換した。 形質転換大腸菌を LB培地 (アンピシリン 50 μ Μ) で、 600 nmにおける培養液の吸 光度が 0. 6から 0. 8になるまで 37°Cで振盪培養し、ィソプロピルチオ - ]3 -ガラク トシド (終濃度 0. 1 πιΜ) を加えてタンパク質生産を誘導し、 18°Cで 18時間振盪 培養を続けた。 集菌後の菌体を培養液の 1 I 25量のバッファー (20 mM トリス pH 8, 0. 1M NaCl, 1 mM EDTA, 0. 1% NP- 40, 1 mM DTT, 0. 5 raM Pefabloc, 2 μ g/ml leupeptin, 0. 7 μ g/ml pepstatin)に懸濁し、超音波破枠装置 (BRANSON S0NIFIER) でトータル 3分間超音波処理後、 8000 X g, 4°Cで 20分間遠心し、 上清を回収し
た。 融合タンパク質の精製は Glutathion Sepharose 4B (Pharmacia Biotech) を 用い、 添付のプロトコールに従い行った。 バッファ一は菌体を懸濁した際と同じ 組成のものを用いた。溶出は 20 mM還元型グルタチオン, 0.1Mトリス pH8, 0.12M NaCl, 0.1% P-40, 1 mM DTT, 0.5 mM Pefabloc, 2 μ g/ml leupeptin, 0.7 μ g/ml pepstatinで行った。 溶出液を 10%SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離 解析したところ、 目的タンパク質の回収量は、 大腸菌培養液 50 mlあたり約数 10 μ§であると見積もられた。 実施例 9 (大腸菌で発現させた SaGT4Aタンパク質によるステロイドアルカロイド の配糖化) - 実施例 8により大腸菌で発現させ精製した SaGT4Aタンパク質 l〜5 zgを一回 の反応に用いて、 各種ステロイドアルカロイドに対するグルコース付加活性を調 ベた。 タンパク質溶液 20 μ 1、 UDPグルコース (シグマ) 15/ig、 各種ステロイド アルカロイ ド (市販のものはすべてシグマ) 10μ§を 5raM MgCl2存在下、 0.1Mト リス (pH8) 反応液 250 1中 30°Cで 3時間反応させた。 95°C、 5分間の熱処理後、 5M相当の NaClを加え、 ブタノール 250 1による抽出を 3度繰り返し、有機溶媒 層を凍結乾燥した。 乾燥試料をメタノールあるいはエタノール 15/ュ 1に溶解し、 そのうち 5μ 1を薄層クロマトグラフィ一で分析した。
クロマトグラフィーは、 5cm X 5cm RP- 18 F254sプレート (メルク社)、 展開溶 媒テトラヒドロフラン: メタノール: アンモニア (1.5 : 1 : 1) を用い、 ァニス 溶液 (パラ ·ァニスアルデヒ ド 2.5ml、 酢酸 lml、 硫酸 3.5ml、 エタノーノレ 104 ml) により基質おょぴそれらの配糖化体を検出した。 その結果、 ソラソジンおよ ぴトマチジンを基質とした時に、 配糖化活性が認められた。 ソラソジン配糖化産 物の R f値は 0.57、 トマチジン配糖化産物の Rf値は 0.53であった。 また、 UDP ガラタストースを糖供与体としてこれらの基質に対して反応させたが、 配糖体は 検出されなかった。
実施例 1 0 (大腸菌で発現させた SaGT4Aタンパク質によるステロイドの配糖化) 実施例 8により大腸菌で発現させ精製した SaGT4Aタンパク質 1〜5 μ §を一回 の反応に用いて、 各種ステロイ ドに対するグルコース付加活性を調べた。 タンパ ク質溶液 20 μ 1、 UDPグルコース (シグマ) 15 μ §、 各種ステロイド (市販のもの はすべてシグマ) 10 μ gを 5mM MgCl2存在下、 0· 1Mトリス(pH8) 反応液 250 μ 1中 30°Cで 3時間反応させた。 95°C、 5分間の熱処理後、 5M相当の NaClを加え、 ブ タノール 250 μ 1による抽出を 3度繰り返し、有機溶媒層を凍結乾燥した。乾燥試 料をメタノールあるいはエタノール 15 μ 1に溶解し、そのうち 5 μ 1を薄層クロマ トグラフィ一で分析した。
クロマトグラフィーは、 6 cm X 5 cm Silica Gel 60 F254 プレ一ト (メルク社) を用い、 展開溶媒にはクロ口ホルム:メタノール (1 7 : 3 ) を使用し、 ァニス 溶液 (パラ ·ァニスアルデヒ ド 2. 5 ml、 酢酸 l ml、 硫酸 3. 5 ml、 エタノール 104 ml) により基質およびそれらの配糖化体を検出した。 その結果、 ジォスゲニン、 ヌァチゲニン、 チゴゲェンを基質とした時に、 配糖化活性が認められた。 ジォス ゲニン配糖化産物の R f値は 0. 42、 ヌァチゲニン配糖化産物の Rf値は 0. 36、 チ ゴゲニン配糖化産物の Rf値は 0. 43であった。 また、 UDPガラクストースを糖供 与体としてこれらの基質に対して反応させたが、 配糖体は検出されなかった。 実施例 1 1 (大腸菌で発現させた SaGT4Aタンパク質の酵素活性測定)
実施例 8により大腸菌で発現させ精製した SaGT4Aタンパク質、 UDP -グルコース を用いて、 各種ステロイドおよぴステロイドアルカロイドに対する比活性を調べ た。 すなわち、 大腸菌で発現させ精製した 1 ~ 1. 5 μ gの SaGT4Aタンパク質、 500 μ gの UDP-グルコース、 50raMトリス(pH8)、 2. 5mM硫酸マグネシウム、 50mM塩化 カリウム、 1. 6mMホスホェノールピルビン酸、 0. 12raM NADH (還元型ニコチンアミ ドアデニンジヌクレオチド)、 0. 6unitピルビン酸キナーゼ、 0. 8unit乳酸デヒ ド ロゲナーゼ、 10 μ gの各種ステロイドおよびステロイドアルカロイドを 50mMトリ ス (pH8) 反応液 250 μ ΐとなるように混合し、 30°Cで 1時間反応後、 80°Cで 2分
間の熱処理により反応を停止し、 その後、 氷上に保存した。 反応液の 340nmにお ける吸光度を測定し、 吸光度の減少量から、 各種ステロイ ドおよびステロイ ドァ ルカロイドに対する比活性を求めた。 その結果、 SaGT4Aタンパク質 lmg当たりの 比活性は、 ジォスゲニンが 3. 5 mmol/min、 ヌァチゲニンが 1. 6匪 ol/min、 チゴゲ ニンが 0. 3 mmol/min、 トマチジンが 3. 4 mmol/min、 ソラソジンが 3. 3 匪 ol/min、 ソラニジンが 0. 4 mmol/minとなつた。 産業上の利用可能性
本発明により新規な配糖化酵素遺伝子が提供される。 本発明の配糖化酵素を利 用して配糖化酵素反応を行うことにより、 医薬、 食品添加物又は工業原料などの 新規な製造方法を提供することが可能になる。