WO2004051621A1

WO2004051621A1 - 楽音信号用歪み発生装置

Info

Publication number: WO2004051621A1
Application number: PCT/JP2003/001866
Authority: WO
Inventors: Hiroshi Saitoh
Original assignee: Hiroshi Saitoh
Priority date: 2002-12-04
Filing date: 2003-02-20
Publication date: 2004-06-17
Also published as: AU2003211597A1

Abstract

　エレキギターなどの楽音信号に歪みを付加する装置である。技術的課題は、出力歪み信号における入力楽音信号の強弱ニュアンスの再現性の向上、及び、出力歪み信号における入力楽音信号の音色の再現性の向上、を実現した楽音信号用歪み発生装置を提供することである。従来のクリップ回路で高調波を発生させる方法に代わり、入力楽音信号に対して、増幅された入力楽音信号の振幅の電圧値に対応した電圧増幅率を設定する電圧増幅回路で高調波を発生させる方法により課題を実現する。

Description

明細誊楽音信号用歪み発生装置技術分野

本発明は、楽音信号用歪み発生装置において、出力歪み信号における入力楽音信号の音色の再現性を向上させるための技術、及ぴ、出力歪み信号における入力楽音信号の強弱のニュアンスの再現性を向上させるための技術に関する。背景技術

従来より、エレキギターなどの楽音信号に対し、その楽音信号を増幅後クリップ回路で歪ませ、これにより音楽的な効果や演奏性の向上を与えるための楽音信号用歪み発生装置が知られている。この種の主な装置は、電源電圧でのクリップのようなタリップ電圧が固定されたタリップ回路や、ダイォード、 L E Dのようなクリツプ電圧が低く設定されたクリップ回路を有するものである。

また、従来のクリップ回路に工夫を凝らし、入出力特性に変化を与えて滑らかな波形を発生させたり、タリップ電圧を入力に対応させたりした、特殊動作の楽音信号用歪み発生装置も数多く考案されている。しかし、これらの回路においても、入力楽音信号が元々有していた音色や強弱のェュアンスの再現を出力歪み信号において十分に達成できた回路は存在していない。

楽音信号用歪み発生装置の主要回路であるクリップ回路は、楽音信号波形をクリップし、高調波を付加すると同時に、クリップという動作を通して、原音の再現に必要な様々な要素を減少させている。そのため、クリツプ回路は入力楽音信号の出力歪み信号における再現性を困難にする原因となっていることが多い。そこで、従来の楽音信号用歪み発生装置に備えられている主なクリップ回路に関して、動作上の特徴と原音を再現する上での問題点を挙げていくことにする。

クリップ回路では、一般に入力楽音信号に高い電圧増幅率を与えている。そのため、電源電圧によるクリップ回路のようにタリップ電圧が固定されている場合には、入力楽音信号の振幅の増加に対して、出力歪み信号波形は急激にクリップ電圧まで到達して飽和し、同時に出力歪み信号の有する高調波も急増する。出力歪み信号のレベルと音色は均一化し、演奏がし易くなるという演奏性の向上を達成させる反面、演奏の強弱ニュアンスを再現しにくいという問題が発生する。

また、前記のようなタリップ電圧が固定されているクリップ回路で、入力楽音信号に高い電圧増幅率を与えた場合、出力歪み信号波形は矩形波のような角を有し、その高調波は非常に強く耳障りとなる。この出力歪み信号を楽音用として実用化するためには、強い高調波を減衰させる必要が生じる。電圧増幅率を下げれば高調波は弱まるが、高調波の発生が持続しなかったり、演奏性が悪くなったりし、楽音信号用歪み発生装置としてのメリットが薄れてしまう。そのため、電圧増幅率を維持し、出力歪み信号に高音域を減衰させる音色補正を行って高調波を減衰させる。このとき、出力歪み信号の有する入力楽音信号成分の高音域の周波数成分をも減衰させてしまうため、出力歪み信号の音色を入力楽音信号と異質な音色にしてしまうという問題が発生する。

ダイオードや L E Dを利用した場合のように、クリツプ電圧が低く設定されたクリップ回路では、入力楽音信号を電源電圧に対してかなり低い電圧でクリップさせていることになる。電源電圧まではクリツプ電圧を高く設定できるにもかかわらず、入力楽音信号の振幅をダイオードや L E Dのような低い電圧でクリップさせることは、主に歪み信号波形のクリップの飽和していない部分に存在する周波数成分を必要以上に減少させることになる。つまり、出力歪み信号の有する入力楽音信号の周波数成分を必要以上に減少させることになり、出力歪み信号における入力楽音信号の音色の再現を困難にする原因となる。

次は、これまでに考案された、従来のクリップ回路に工夫を凝らした特殊動作のクリップ回路について説明する。

入力楽音信号の振幅変化にクリップ電圧を対応させる回路は、滑らかな波形の発生について考慮していないものが多く、強い高調波の抑制や強弱ニュアンスの向上に対しては、現状有効であるとは言えない。入出力特性を非線形にして滑らかな歪み波形を発生させる回路は、強い高調波の抑制や強弱ニュアンスの向上に対してある程度有効ではあるが、電圧增幅率が高くなり、タリップの飽和が早くなると、その効果は薄れてしまう。また、従来の回路の多くは、クリップする電圧と周波数成分の量との関連を考慮しておらず、音色を再現する回路としては不十分である。

本発明は、上記のような従来のクリップ回路に見られる問題点に対策を施し、出力歪み信号における入力楽音信号の強弱ニュアンスの再現性の向上、及び、出力歪み信号における入力楽音信号の音色の再現性の向上、を実現した楽音信号用歪み発生装置を提供することを課題とする。発明の開示

本発明では、従来のようなタリップ回路で高調波を発生させる方法に代わり、入力楽音信号に対して、増幅された入力楽音信号の振幅の電圧値に対応した電圧増幅率の設定が可能である電圧増幅回路で高調波を発生させる方法を考案し、従来のクリップ回路に見られた問題を解決することにより、本発明の課題を実現するものとする。

本発明の電圧增幅回路では、増幅された入力楽音信号の振幅変化に対応して電圧増幅率を変化させて非線形な状態を作り高調波を発生させている高い電圧増幅率が必要な場合にも、従来のクリップ回路のように急激に楽音信号の振幅を制限したり、振幅がすぐに飽和するような動作をさせないことが出来るため、入力楽音信号レベルの強弱ニュアンスに対する再現性の高い出力歪み信号を発生させることが可能である。

増幅された入力楽音信号の振幅に対応する電圧増幅率の設定、又は、電圧増幅率の範囲の設定、等を適切に行うことにより、演奏性が高く、又、従来のクリップ回路と比べて、入力楽音信号レベルの強弱ニュアンスに対する再現性の高い出力歪み信号を発生させることが可能となる。

本発明の電圧増幅回路は、増幅された入力楽音信号の振幅に対応して電圧増幅率を変化させ、非線形な状態を作り高調波を発生させているため、従来のクリップ回路のように出力歪み信号に対して角立った波形を付加するような動作を抑制することが可能である。矩形波の様な角立った波形では、強くて耳障りな高調波が発生することが広く知られているが、角立つた波形を付加されていない出力歪み信号波形では、このような強い高調波の発生の抑制が可能である。その結果、強くて耳障りな高調波を減衰させるために必要であった、出力歪み信号に対する高音域の減衰音色補正を軽微にすることができ、これにより、入力楽音信号と出力歪み信号の音色変化が緩和されることになる。

本発明の電圧増幅回路は、増幅された入力楽音信号の振幅に対応して電圧増幅率を変化させ、非線形な状態を作り高調波を発生させている。そのため、従来のクリップ回路のような、楽音信号の振幅電圧を制限して一定の電圧にしてしまうような動作をさせないことが可能であり、周波数成分の欠落をより少なくすることが出来る。つまり、従来のクリップ回路と比ベて、出力楽音信号においてより多くの入力楽音信号の周波数成分の量を確保することが可能となる。

また、増幅された入力楽音信号の振幅に対応して、電圧増幅率の範囲の設定、及び、それぞれの範囲の電圧増幅率の設定をすることで、従来のクリップ回路と同様、入力楽音信号の周波数成分の量と発生する高調波のバランス、いわゆる歪み感を調整することができる。すなわち、適度な歪み感であり、かつ、従来のクリップ回路と比較すると、より多くの入力楽音信号の周波数成分の量を持った出力歪み信号を得ることができ、入力楽音信号と出力歪み信号の音色変化を緩和することが可能となる。

本発明の十分な効果を得るために、本発明の電圧増幅回路の各種設定を行う際には、電源電圧でのクリップにより強い高調波が発生することに配慮する必要がある。電源電圧でのクリップにより高調波が発生する楽音信号の振幅の範囲においては、電圧増幅率を十分低く設定することにより、強い高調波の発生を抑制することが可能である。また、楽音信号の振幅の小さい範囲では、出力歪み信号で必要なサスティンを得るために、十分に高い電圧増幅率を与えること、及び、適切な電圧増幅率の範囲の設定、等に配慮する。

本発明の効果を得るための最も基本的な電圧増幅回路の構成のひとつに. O Pアンプの帰還ループに非直線素子を入れた電圧増幅回路がある。たとえば、非直線素子として 2本のツエナーダイォードを突き合わせて使用すれば、本発明の楽音信号用歪み発生装置に必要な電圧増幅回路の動作を実現することが可能である。

この回路では、増幅された入力楽音信号の振幅に対応する、電圧増幅率の設定は、異なる範囲ごとに設定することになる。それは、使用するツエナーダイォードのツエナー電圧の種類を選択することで可能である。電圧増幅率の範囲の境界は、ツエナ一ダイォードの特性の関係で多少曖昧になるが、動作上問題は無い。

増幅された入力楽音信号の振幅の電圧値が、ツナー電圧に達するまでは、 O Pアンプの帰還抵抗により電圧増幅率を設定できる。增幅された入力楽音信号の振幅の電圧値がツエナー電圧を超えた範囲の電圧増幅率は、帰還抵抗と並列接続の関係であるッヱナ一ダイオードの内部抵抗と、必要に応じてッヱナ一ダイォードに直列に入れる抵抗器とにより設定可能である。

この回路では楽音信号の振幅が常に電圧増幅率として設定されているため、楽音信号の振幅を制限させない動作が可能である。それは、従来のクリップ回路と比較し、出力歪み信号における入力楽音信号の強弱-ユアンスの再現性の向上、角立った出力歪み信号波形の発生の抑制、及ぴ、出力歪み信号における入力楽音信号の周波数成分.のより十分な量の確保、を実現可能とする。

例えば、ツエナー電圧を超えた範囲の電圧増幅率を 1倍で設定すれば、その範囲の振幅には、入力信号波形と同じ大きさの振幅が出現する。このとき、入力楽音信号レベルの強弱ニュアンスに対して出力歪み信号の振幅を対応させる動作は実現されている。

また、通常のツエナーダイオードを使用すれば、電圧増幅率の境界線上でも、角立った波形は発生しない。出力歪み信号に対する角立った波形の付加を抑制する動作が実現され、高音域を減衰する音色補正を軽減できる。さらには、ツエナー電圧を超えた範囲に電圧増幅率を持っているため、入力楽音信号の周波数成分がその範囲に出現し、従来のクリップ回路と比較し、多量の入力楽音信号の周波数成分を持った出力歪み信号となっている。つまり、出力歪み信号における入力楽音信号の音色の再現性の向上が実現されている。

従来の電源などによるクリップ回路の場合は、本発明の電圧増幅回路でツエナー電圧を超えた範囲の電圧増幅率を 0倍に設定した状態と言え、その範囲に、周波数成分が現れないことを考慮すれば、本発明の有効性は明らかである。

従って、本発明は、楽音信号用歪み発生装置に求められる、楽器本来の音色の再現性、及ぴ、演奏者の細かなニュアンスの再現性を高いレベルで実現可能である。回路パラメーターの設定により、高調波の少ないローゲインサウンドから、多くの高調波を伴うハイゲインサゥンドまで多彩なサゥンド作りが可能である。特に、従来の楽音信号用歪み発生装置では困難であった、楽器本来の音色の高い再現性と、演奏者のニュアンスの高い再現性と、を兼備えたハイゲインサウンドを実現可能である。また、電圧増幅回路に電圧増幅率の低い範囲を持っているため、従来の歪み発生装置に比べ、ハイゲイン時にもノヽゥリングしにくく、フィードパックサウンドのコント口ール性も向上している。

アナログ回路で最も基本的な回路構成とすれば、ローコス卜で本発明の効果を実現できる。また、デジタル回路で構成した場合には、増幅された入力楽音信号の振幅に対応させて電圧増幅率を連続的に可変するなど、ァナログ回路では構成しきれないような、より複雑な設定が可能となる。デジタル回路の機能性と併せて、より高い付加価値の装置となることが期待できる。

本発明の電圧増幅回路は、従来の歪み発生回路と比較して、入力楽音信号の周波数成分を多量に含んでいるので、電圧増幅回路を直列に接続して使用した場合にも音質の劣化が少ない出力歪み信号を得ることが可能である。

本発明の電圧増幅回路は、個々の範囲の電圧増幅率を低めに設定することにより、高調波の発生を極端に抑え、入力楽音信号の振幅に対する圧縮効果を目的とした楽音効果を得た場合にも、有効な手段となる。

ツエナー電圧を超えた範囲の電圧増幅率を外部より調整する機能は、周波数成分の量と高調波の量のバランスを周波数成分の量を可変することにより調整するという今までにない楽音効果を提供する。従来の効果である電圧増幅率を変化させる効果と組み合わせれば、より多彩な音作りが可能となる図面の簡単な説明

第 1図は、請求の範囲第 5項記載の電圧増幅回路の実施例を有する楽音信号用歪み発生装置の概略構成図である。

第 2図は、請求の範囲第 5項記載の電圧増幅回路の実施例の概略回路図である。発明を実施するための最良の形態

本発明をより詳細に説述するため、添付の図面に従ってこれを説明する。第 1図は、請求の範囲第 5項記載の電圧増幅回路の実施例を有する楽音信号用歪み発生装置の概略構成図である。本発明に必要な動作を実現する最も基本的な回路構成のひとつとなっており、 2つの異なる電圧増幅率、 2つの境界電圧値、及び、 3つの振幅に対応した電圧増幅率の範囲（ブラス側又はマイナス側に限って言えば 2つの範囲）を持っている。

入力楽音信号 1 0は、請求の範囲第 5項記載の電圧増幅回路の実施例である電圧増幅回路 2 0 (以下、電圧増幅回路 2 0 と呼ぶ）に入力される。ツエナー電圧を超えない範囲の電圧増幅率は、電圧増幅回路 2 0の抵抗器 2 5、 2 6、及び、可変抵抗器 2 7で設定された電圧増幅率となる。可変抵抗器 2 7は、装置外部から電圧増幅率を調整するためのものである。

増幅された入力楽音信号 1 0の電圧増幅率の境界の電圧値をツユナーダィオード 2 2、 2 3のッヱナ一電圧で設定する。増幅された入力楽音信号 1 0の振幅の電圧がツエナー電圧を越えたときの電圧増幅率をツエナーダィォード 2 2、 2 3の内部抵抗、抵抗器 2 4、 2 5、 2 6、及び、可変抵抗器 2 7で設定する。各設定は、音色、歪み感ゃ演奏のュュアンス等を確認しながら行う。この際、 O Pアンプ 2 1の電源電圧により波形をクリツプさせて強い高調波を発生させると本発明の効果が十分に得られない場合もある。また、ツエナー電圧を超えた範囲で十分な電圧増幅率が得られる場合は、抵抗器 2 4を省略することも可能である。

電圧増幅回路 2 0の出力歪み信号は、音色補正回路 3 0 と音量調節回路 4 0で装置外部からの調節を経て、第 1図の楽音信号用歪み発生装置の出力歪み信号として出力される。本発明の電圧増幅回路は強い高調波の発生が抑制されているため、音色補正回路 3 0の高音域の補正は、従来のような減衰主体の回路とする必要性を強いられることがなく、より多彩な音色補正を行うことが可能である。

第 2図の電圧増幅回路 5 0は、第 1図の電圧増幅回路 2 0に、可変抵抗器 5 1を追加した構成の、請求の範囲第 5項記載の電圧増幅回路の実施例である。可変抵抗器 5 1 を変化させると、ツエナー電圧を超えた範囲の電圧増幅率を調整することができる。この調整により、発生する高調波と周波数成分のバランスを調整することが可能である。

Claims

求の

入力楽音信号に対して、増幅された入力楽音信号の振幅の電圧値に対応した電圧増幅率の設定が可能である手段を備えた電圧増幅回路を有青

することを特徴とする楽音信号用歪み発生装置。請求の範囲第 1項記載の電圧増幅回路は、増幅された入力楽音信号の振幅がある電圧値を境として、その電圧値を超えた範囲と超えない範囲において入力楽音信号に対して異なる電圧増幅率を設定すること、及び、その電圧増幅率が変化する電圧値を設定すること、が可能である手段を備えた電圧増幅回路である、請求の範囲第 1項記載の楽音信号用歪み発生装置。請求の範囲第 2項記載の電圧増幅回路は、増幅された入力楽音信号の振幅の絶対値がより大きくなるに従い、各範囲の入力楽音信号に対する電圧増幅率を、より低い電圧増幅率として設定している電圧増幅回路である、請求の範囲第 2項記載の楽音信号用歪み発生装置。請求の範囲第 3項記載の電圧増幅回路は O Pアンプの帰還ループに非直線素子を入れたことを特徴とする電圧増幅回路である、請求の範囲第 3項記載の楽音信号用歪み発生装置。請求の範囲第 4項記載の非直線素子はツエナーダイオードである、請求の範囲第 4項記載の楽音信号用歪み発生装置。