明細書 疾患関連遺伝子の用途 技術分野
本発明は、 疾患関連遺伝子の用途に関する。 さらに詳しくは、 神経変性疾患の予 防 ·治療剤および診断薬等;あるいは神経変性疾患関連遺伝子 (対応する D NAを 含む)、 該疾患関連遺伝子産物 (タンパク質、 その部分ペプチドを含む)、 該疾患関 連遺伝子形質転換細胞などを用いて行う薬剤のスクリーニング方法等;に関する。 背景技術
通常、 中枢神経細胞は損傷を受けると再生することはない。しかしながら多くの 末梢の感覚神経は日常的に再生が可能なものが多い。これは感覚器の中に、 分裂、 増殖が可能な未分化な細胞が存在するからである。脳の中の神経組織ではそのよう な細胞は存在しないと長く考えられてきた。しかし、 最近、 成熟個体の脳内でも一 部の場所には、 分裂、 増殖を行う神経幹細胞が存在することがわかり、 これを用い た中枢神経の再生が試みられている。現在主に考えられているのは、 パーキンソン 病を対象とし、 神経幹細胞または分化させた神経細胞を線条体に移植するというも のである。これは臨床での中絶胎児脳の移植実験により移植医療の有効性が示され ていることと、 in vi t roで神経幹細胞がパーキンソン病において変性するドーパミ ン作動性ニューロンに分化しやすいことが示されているからである。しかし、 ド一 パミン作動性ニュ一ロン以外の神経の分離法は確立されたものがないため、 他の神 経変性疾患に対してはほとんど再生治療の試みはされていない。現段階では、 各神 経細胞への分化機構の解明が神経変性疾患における神経細胞の再生を可能にする と考えられる。
アルツハイマー病では、 最も初期に変性が見られるのは中隔野や海馬におけるコ リン作動性ニューロンである。 コリン作動性ニューロンは記憶、 学習といったアル ッハイマー病において障害の見られる行動にかかわっているとされている。 現在の 治療法はァセチルコリンを介した神経伝達経路を増強する対症療法がほとんどで
あり、 再生医療をはじめとする新しい医療法が求められている。しかし、 ドーパミ ン作動性ニューロンと異なりコリン作動性ニューロンは胎児脳や神経幹細胞から の分離方法が確立されておらず、 また、 分化機構もあまりわかっていない。そのた め、 再生医療への応用がおくれている。そこで、 コリン作動性ニューロンの分化機 構が解明できれば、 移植用や内在性の神経幹細胞の分化を促進することでアルッハ イマ一病の再生医療が可能になると考えられる。 発明の開示
本発明は、 未分化な神経細胞をコリン作動性ニューロンへ分化させるという観点 からのァルツハイマー病などの神経変性疾患治療薬開発を念頭に置いており、 その 探索夕一ゲットの発掘を目的として、 神経変性疾患発症時などに未分化な神経細胞 がコリン作動性ニューロンへ分化する時に発現が上昇する遺伝子を同定し、 その遺 伝子産物であるタンパク質の活性を調節する化合物のスクリーニング方法、 該スク リーニング方法で得られる化合物などを提供するものである。
本発明者らは、 上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、 マウス EC (embryonal carc inoma) 細胞である PI 9細胞を用いた神経細胞分化誘導系で発現 上昇が見られる遺伝子を見出し、 この知見に基づいて、 さらに検討を重ねた結果、 本発明を完成するに至った。 即ち、 P19細胞がコリン作動性ニューロンに分化する ときに発現が増加する niRNAをジ一ンチップ解析から見出した。 この mRNAはその塩 基配列から NCBI (ジーンバンク) に登録された既知のマウス遺伝子 (Genbank bc027803) であると判明した。 該 mRNAに対応する cDNAは配列番号: 3で表される 塩基配列を有するが、 当該 mRNAの発現プロファイルを詳細に検討した結果、 この mRNAは、マウス神経幹細胞を用いたコリン作動性ニューロンへの分化誘導系で培養 1 日目から 4日目まで発現が上昇することが明らかとなった。 これらの知見に基づ いて、 さらに検討を重ねた結果、 本発明を完成するに至った。
すなわち、 本発明は、
( 1 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のァミノ 酸配列を含有する夕ンパク質もしくはその部分べプチドまたはその塩(好ましくは 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその塩;配列番
号: 1 6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその塩;配列番号: 1 9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその塩;など) の活性 (好ま しくは、 神経細胞分化活性;さらに好ましくは、 コリン作動性ニューロンへの分化 活性) を調節 (好ましくは促進) する化合物またはその塩を含有してなる神経変性 疾患の予防 ·治療剤 (好ましくは、 神経細胞分化促進剤;さらに好ましくは、 コリ ン作動性ニューロンへの分化促進剤);
( 2 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のァミノ 酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分べプチドまたはその塩(好ましくは 、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその塩;配列番 号: 1 6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその塩;配列番号: 1 9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその塩;など) の遺伝子の発 現を調節 (好ましくは促進) する化合物またはその塩を含有してなる神経変性疾患 の予防 ·治療剤 (好ましくは、 神経細胞分化促進剤;さらに好ましくは、 コリン作 動性ニューロンへの分化促進剤);
( 3 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のァミノ 酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチド (好ましくは、 配列番号: 1 で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;配列番号: 1 6で表されるアミノ酸 配列からなるタンパク質;配列番号: 1 9で表されるアミノ酸配列からなるタンパ ク質;など) をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に 相補的な塩基配列またはその一部分を含有するアンチセンスポリヌクレオチド;
( 4 ) 上記 (3 ) 記載のアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなる医薬;
( 5 ) 神経細胞分化抑制剤 (好ましくは、 コリン作動性ニューロンへの分化抑制剤 ) である上記 (4 ) 記載の医薬;
( 6 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のァミノ 酸配列を含有するタンパク質 (好ましくは、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列 からなるタンパク質;配列番号: 1 6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質 ;配列番号: 1 9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;など) またはその 部分ペプチドまたはその塩に対する抗体;
( 7 ) 上記 (6 ) 記載の抗体を含有してなる医薬';
( 8 ) 神経細胞分化抑制剤 (好ましくは、 コリン作動性ニューロンへの分化抑制剤 ) である上記 (7 ) 記載の医薬;
( 9 ) 上記 (6 ) 記載の抗体を含有してなる診断薬;
( 1 0 ) 神経変性疾患の診断薬である上記 (9 ) 記載の診断薬;
( 1 1 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ ノ酸配列を含有するタンパク質 (好ましくは、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配 列からなるタンパク質;配列番号: 1 6で表されるァミノ酸配列からなるタンパク 質;配列番号: 1 9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;等) 又はその部 分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有してなる神経変性疾患の診断薬; ( 1 2 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ ノ酸配列を含有するタンパク質 (好ましくは、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配 列からなるタンパク質;配列番号: 1 6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク 質;配列番号: 1 9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;など) もしくは その部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする、 該タンパク質もしくは その部分ペプチドまたはその塩の活性を調節 (好ましくは促進) する化合物または その塩のスクリーニング方法;
( 1 3 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ ノ酸配列を含有するタンパク質 (好ましくは、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配 列からなるタンパク質;配列番号: 1 6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク 質;配列番号: 1 9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;など) もしくは その部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする、 該タンパク質もしくは その部分ペプチドまたはその塩の遺伝子の発現を調節する (好ましくは促進) 化合 物またはその塩のスクリーニング方法;
( 1 4 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ ノ酸配列を含有するタンパク質 (好ましくは、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配 列からなるタンパク質;配列番号: 1 6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク 質;配列番号: 1 9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;など) もしくは その部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする、 該タンパク質もしく はその部分ペプチドまたはその塩の活性を調節 (好ましくは促進) する化合物また
はその塩のスクリーニング用キット;
(1 5) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ ノ酸配列を含有するタンパク質 (好ましくは、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配 列からなるタンパク質;配列番号: 16で表されるアミノ酸配列からなるタンパク 質;配列番号: 19で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;など) もしくは その部分べプチドまたはその塩を含有することを特徴とする、 該タンパク質もしく はその部分ペプチドまたはその塩の遺伝子の発現を調節 (好ましくは促進) する化 合物またはその塩のスクリーニング用キット;
(16) 上記 (12) もしくは (13) 記載のスクリーニング方法または上記 (1 4) もしくは (15) 記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる化合物ま たはその塩;
(17) 上記 (16) 記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬;
(18) 神経変性疾患の予防 ·治療剤 (好ましくは神経細胞分化促進剤;更に好ま しくはコリン作動性ニューロンへの分化促進剤) である上記 (17) 記載の医薬; (19) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ ノ酸配列を含有するタンパク質 (好ましくは、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配 列からなるタンパク質;配列番号: 16で表されるアミノ酸配列からなるタンパク 質;配列番号: 19で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;など) またはそ の部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、 該夕ン パク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を調節 (好ましくは促進) す る化合物またはその塩のスクリーニング方法;
(20) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ ノ酸配列を含有するタンパク質 (好ましくは、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配 列からなるタンパク質;配列番号: 16で表されるアミノ酸配列からなるタンパク 質;配列番号: 19で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;など) またはそ の部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、 該夕ン パク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の遺伝子の発現を調節(好ましくは 促進) する化合物またはその塩のスクリーニング方法;
(21) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ
ノ酸配列を含有するタンパク質 (好ましくは、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配 列からなるタンパク質;配列番号: 1 6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク 質;配列番号: 1 9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;など) またはそ の部分べプチドをコードするポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、 該タン パク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を調節 (好ましくは促進) す る化合物またはその塩のスクリーニング用キット ;
( 2 2 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ ノ酸配列を含有するタンパク質 (好ましくは、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配 列からなるタンパク質;配列番号: 1 6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク 質;配列番号: 1 9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;など) またはそ の部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、 該タン パク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の遺伝子の発現を調節(好ましくは 促進) する化合物またはその塩のスクリーニング用キット ;
( 2 3 ) 上記 (1 9 ) もしくは (2 0 ) 記載のスクリーニング方法または上記 (2 1 ) もしくは (2 2 ) 記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる化合物ま たはその塩;
( 2 4 ) 上記 (2 3 ) 記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬;
( 2 5 ) 神経変性疾患の予防 ·治療剤 (好ましくは神経細胞分化促進剤;さらに好 ましくはコリン作動性ニューロンへの分化促進剤)である上記(2 4 )記載の医薬; ( 2 6 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ ノ酸配列を含有するタンパク質 (好ましくは、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配 列からなるタンパク質;配列番号: 1 6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク 質;配列番号: 1 9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;など) またはそ の部分ペプチドまたはその塩の活性を促進することを特徴とする神経変性疾患の 予防 ·治療方法;
( 2 7 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ ノ酸配列を含有するタンパク質 (好ましくは、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配 列からなるタンパク質;配列番号: 1 6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク 質;配列番号: 1 9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;など) またはそ
の部分ペプチドの遺伝子の発現を促進することを特徴とする神経変性疾患の予 防 ·治療方法;
( 2 8 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ ノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を 促進する化合物またはその塩の有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする神 経変性疾患の予防 ·治療方法;
( 2 9 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ ノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分べプチドまたはその塩の遺伝子 の発現を促進する化合物またはその塩の有効量を哺乳動物に投与'することを特徴 とする神経変性疾患の予防 ·治療方法;
( 3 0 ) 神経変性疾患の予防 ·治療剤の製造のための配列番号: 1で表されるアミ ノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もし くはその部分ペプチドまたはその塩の活性を促進する化合物またはその塩の使用;
( 3 1 ) 神経変性疾患の予防 ·治療剤の製造のための配列番号: 1で表されるアミ ノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もし くはその部分ペプチドまたはその塩の遺伝子の発現を促進する化合物またはその 塩の使用;
( 3 2 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ ノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩(好ましく は、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその塩;配列 番号: 1 6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその塩;配列番号: 1 9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質またはその塩;など) を含有して なる神経変性疾患の予防 ·治療剤 (好ましくは、 神経細胞分化促進剤;さらに好ま しくは、 コリン作動性ニューロンへの分化促進剤) ;
( 3 3 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ ノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチド (好ましくは、 配列番号 : 1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;配列番号: 1 6で表されるアミ ノ酸配列からなるタンパク質;配列番号: 1 9で表されるアミノ酸配列からなるタ ンパク質;など) をコードするポリヌクレオチドを含有してなる神経変性疾患の予
防 ·治療剤 (好ましくは、 神経細胞分化促進剤;さらに好ましくは、 コリン作動性 ニューロンへの分化促進剤) ;などに関する。 発明を実施するための最良の形態
本発明で用いられる配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的 に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質 (以下、 本発明のタンパク質または本 発明で用いられるタンパク質と称することもある) は、 ヒトゃ温血動物 (例えば、 モルモット、 ラット、 マウス、 ニヮトリ、 ゥサギ、 ブ夕、 ヒッジ、 ゥシ、 サルなど) の細胞(例えば、肝細胞、脾細胞、 神経細胞、 グリア細胞、塍臓 ;8細胞、 骨髄細胞、 メサンギゥム細胞、 ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、 内皮細胞、 平滑筋細胞、 繊維芽細胞、 繊維細胞、 筋細胞、 脂肪細胞、 免疫細胞 (例、 マクロフ ァ一ジ、 T細胞、 B細胞、 ナチュラルキラー細胞、 肥満細胞、 好中球、 好塩基球、 好酸球、 単球)、 巨核球、 滑膜細胞、 軟骨細胞、 骨細胞、 骨芽細胞、 破骨細胞、 乳 腺細胞、 肝細胞もしくは間質細胞、 またはこれら細胞の前駆細胞、 幹細胞もしくは ガン細胞など) もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、 例えば、 脳、 脳の 各部位(例、 嗅球、 扁桃核、 大脳基底球、 海馬、 視床、 視床下部、 大脳皮質、 延髄、 小脳)、 脊髄、 下垂体、 胃、 塍臓、 腎臓、 肝臓、 生殖腺、 甲状腺、 胆のう、 骨髄、 副腎、 皮膚、 筋肉、 肺、 消化管 (例、 大腸、 小腸)、 血管、 心臓、 胸腺、 脾臓、 顎 下腺、 末梢血、 前立腺、 睾丸、 卵巣、 胎盤、 子宮、 骨、 関節、 骨格筋などに由来す るタンパク質であってもよく、 合成タンパク質であってもよい。
配列番号: 1で表されるァミノ酸配列と実質的に同一のァミノ酸配列としては、 配列番号: 1で表わされるアミノ酸配列と約 50%以上、好ましくは約 60%以上、 さらに好ましくは約 70%以上、 より好ましくは約 80%以上、 特に好ましくは約 90%以上、 最も好ましくは約 95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙 げられる。 ここで言う 「アミノ酸配列の相同性」 は、 例えば、 相同性計算アルゴリ ズム NCB I BLAST (Na t i on a l Ce n t e r f o r B i o t e c hn o l o gy I n f o rma t i on B a s i c L o c a l A 1 i gnmen t S e a r c h T o o 1 ) などを用い、 例えば、 以下の条件 (期 待値 =10 ;ギャップを許す;マトリクス =BL〇SUM62 ;フィルタリング =
O F F ) などにて計算することができる。
配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する タンパク質としては、 例えば、 前記の配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と実質 的に同一のアミノ酸配列を含有し、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列を含有す るタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質 (例えば、 配列番号: 1で 表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;配列番号: 1 6で表されるアミノ酸配 列からなるタンパク質;配列番号: 1 9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク 質;など) などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、 例えば、 未分化な神経細胞 (例えば、 神経幹細胞 など) をコリン作動性ニューロンへ分化させる活性 (以下、 神経細胞分化活性と称 することがある。) などが挙げられる。 実質的に同質とは、 それらの性質が性質的 に (例、 生理学的に、 または薬理学的に) 同質であることを示す。 したがって、 神 経細胞分化活性などが同等 (例、 約 0 . 0 1〜1 0 0倍、 好ましくは約 0 . 1〜1 0倍、 より好ましくは 0 . 5〜2倍) であることが好ましいが、 これらの活性の程 度、 タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
神释細胞分化活性の測定は、 例えばマウス EC (embryonal carc inoma) 細胞であ る P19細胞を用いた神経細胞分化誘導系などで測定することができる。
具体的には、 後述の実施例に記載の方法などに準じて行えばよい。
また、 本発明で用いられるタンパク質としては、 例えば、 (i) 配列番号: 1で表 されるアミノ酸配列中の 1または 2個以上 (例えば 1〜1 0 0個程度、 好ましくは 1〜3 0個程度、 好ましくは 1〜1 0個程度、 さらに好ましくは数 (1〜5 ) 個) のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、 (i i ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列 に 1または 2個以上 (例えば 1〜1 0 0個程度、 好ましくは 1〜3 0個程度、 好ま しくは 1〜1 0個程度、 さらに好ましくは数 (1〜5 ) 個) のアミノ酸が付加した アミノ酸配列、 (i i i)配列番号: 1で表されるアミノ酸配列に 1または 2個以上(例 えば 1〜1 0 0個程度、 好ましくは 1〜3 0個程度、 好ましくは 1〜1 0個程度、 さらに好ましくは数 (1〜5 ) 個) のアミノ酸が揷入されたアミノ酸配列、 (iv) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列中の 1または 2個以上 (例えば 1〜 1 0 0個 程度、 好ましくは 1〜3 0個程度、 好ましくは 1〜1 0個程度、 さらに好ましくは
数(1〜 5 )個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、 または(V) それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテイ ンも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、 欠失または置換されている場合、 その揷入、 欠失または置換の位置としては、 とくに限定されない。
本明細書におけるタンパク質は、 ペプチド標記の慣例に従って左端が N末端 (ァ ミノ末端)、 右端が C末端 (力ルポキシル末端) である。 配列番号: 1、 配列番号: 1 6または配列番号: 1 9で表わされるアミノ酸配列を含有するタンパク質をはじ めとする、 本発明で用いられるタンパク質は、 C末端が力ルポキシル基 (一 C O O H) , カルポキシレート(一 C O O―)、 アミド (― C〇N H 2) またはエステル (一 C O O R) の何れであってもよい。
ここでエステルにおける Rとしては、 例えば、 メチル、 ェチル、 n—プロピル、 イソプロピル、 n一ブチルなどの C i _ 6アルキル基、 例えば、 シクロペンチル、 シ クロへキシルなどの C 3 _ 8シクロアルキル基、 例えば、 フエニル、 —ナフチルな どの C 6— 1 2ァリール基、 例えば、 ベンジル、 フエネチルなどのフエ二ルー C卜 2ァ ルキル基もしくはひ一ナフチルメチルなどの α—ナフチルー C i _ 2アルキル基など の C 7― i 4ァラルキル基、 ビバ口ィルォキシメチル基などが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質が C末端以外に力ルポキシル基 (またはカルポキ シレ一ト) を有している場合、 カルボキシル基がアミド化またはエステル化されて いるものも本発明で用いられるタンパク質に含まれる。 この場合のエステルとして は、 例えば上記した C末端のエステルなどが用いられる。
さらに、 本発明で用いられるタンパク質には、 N末端のアミノ酸残基 (例、 メチ ォニン残基) のァミノ基が保護基 (例えば、 ホルミル基、 ァセチル基などの C^— 6 アルカノィルなどの ァシル基など) で保護されているもの、 生体内で切断さ れて生成する N末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、 分子内のァ ミノ酸の側鎖上の置換基 (例えば一 O H、 ― S H、 アミノ基、 イミダゾ一ル基、 ィ ンドール基、 グァニジノ基等) が適当な保護基 (例えば、 ホルミル基、 ァセチル基 等の アルカノィル基などの C — 6ァシル基等) で保護されているもの、 ある いは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質等も含まれる。
本発明で用いられるタンパク質の具体例としては、 例えば、 配列番号: 1で表さ れるアミノ酸配列を含有するマウス由来のタンパク質;配列番号: 1 6で表される アミノ酸配列を含有するヒト由来のタンパク質;配列番号: 1 9で表されるァミノ 酸配列からなるタンパク質;などがあげられる。
本発明のタンパク質の部分ペプチドとしては、 前記した本発明のタンパク質の部 分ペプチドであって、 好ましくは、 前記した本発明のタンパク質と同様の性質を有 するものであればいずれのものでもよい。
本発明の夕ンパク質が構成するァミノ酸配列のうち少なくとも 2 0個以上、 好ま しくは 5 0個以上、 さらに好ましくは 7 0個以上、 より好ましくは 1 0 0個以上、 最も好ましくは 2 0 0個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが用いられる。 また、 本発明で用いられる部分ペプチドは、 そのアミノ酸配列中の 1または 2個 以上 (好ましくは、 1〜1 0個程度、 さらに好ましくは数 (1〜5 ) 個) のァミノ 酸が欠失し、 または、 そのアミノ酸配列に 1または 2個以上 (好ましくは、 1〜2 0個程度、 より好ましくは 1〜1 0個程度、 さらに好ましくは数 (1〜5 ) 個) の アミノ酸が付加し、 または、 そのアミノ酸配列に 1または 2個以上 (好ましくは、 1〜2 0個程度、 より好ましくは 1〜1 0個程度、 さらに好ましくは数 (1〜5 ) 個) のアミノ酸が挿入され、 または、 そのアミノ酸配列中の 1または 2個以上 (好 ましくは、 1〜1 0個程度、 より好ましくは数個、 さらに好ましくは 1〜5個程度) のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、本発明で用いられる部分ペプチドは C末端がカルボキシル基(_ C O O H)、 カルポキシレ一ト ('_ C O〇_)、 アミド (一 C〇N H 2) またはエステル (一 C O O R) の何れであってもよい。
さらに、 本発明で用いられる部分ペプチドには、 前記した本発明で用いられる夕 ンパク質と同様に、 C末端以外に力ルポキシル基 (またはカルポキシレート) を有 しているもの、 N末端のアミノ酸残基 (例、 メチォニン残基) のァミノ基が保護基 で保護されているもの、 N端側が生体内で切断され生成したグルタミン残基がピロ グルタミン酸化したもの、 分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保 護されているもの、 あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合べプチ ドなども含まれる。
本発明で用いられる部分ペプチドは抗体作成のための抗原としても用いること ができる。
本発明で用いられるタンパク質または部分ペプチドの塩としては、 生理学的に許 容される酸 (例、 無機酸、 有機酸) や塩基 (例、 アルカリ金属塩) などとの塩が用 いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、 例えば、 無機酸 (例えば、 塩酸、 リン酸、 臭化水素 '酸、 硫酸) との塩、 あるいは有 機酸 (例えば、 酢酸、 ギ酸、 プロピオン酸、 フマル酸、 マレイン酸、 コハク酸、 酒 石酸、 クェン酸、 リンゴ酸、 蓚酸、 安息香酸、 メタンスルホン酸、 ベンゼンスルホ ン酸) との塩などが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩は、 前述 したヒトや温血動物の細胞または組織から自体公知のタンパク質の精製方法によ つて製造することもできるし、 タンパク質をコードする D N Aを含有する形質転換 体を培養することによつても製造することができる。 また、 後述のペプチド合成法 に準じて製造することもできる。
ヒ卜ゃ哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、 ヒトゃ哺乳動物の組織また は細胞をホモジナイズした後、 酸などで抽出を行ない、 該抽出液を逆相クロマトグ ラフィ一、 ィォン交換ク口マトグラフィーなどのクロマトグラフィ一を組み合わせ ることにより精製単離することができる。
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩、 またはその アミド体の合成には、 通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。 そ のような樹脂としては、 例えば、 クロロメチル樹脂、 ヒドロキシメチル樹脂、 ベン ズヒドリルァミン樹脂、 アミノメチル樹脂、 4一べンジルォキシベンジルアルコー ル榭脂、 4—メチルベンズヒドリルァミン樹脂、 P AM樹脂、 4—ヒドロキシメチ ルメチルフエニルァセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、 4 _ ( 2 ', 4 ' ージメトキシフエ二ル―ヒドロキシメチル) フエノキシ樹脂、 4一 ( 2 ' , 4 ' ージメトキシフエ二ルー F m o cアミノエチル) フエノキシ樹脂などを挙げること ができる。 このような樹脂を用い、 α—ァミノ基と側鎖官能基を適当に保護したァ ミノ酸を、 目的とするタンパク質の配列通りに、 自体公知の各種縮合方法に従い、 樹脂上で縮合させる。 反応の最後に樹脂からタンパク質または部分ペプチドを切り
出すと同時に各種保護基を除去し、 さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合 形成反応を実施し、 目的のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはそれらのアミド 体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、 タンパク質合成に使用できる各種活性 化試薬を用いることができるが、 特に、 カルポジイミド類がよい。 カルポジイミド 類としては、 D C C、 N, N ' —ジイソプロピルカルポジイミド、 N—ェチル— N ' ― ( 3—ジメチルァミノプロリル) カルポジイミドなどが用いられる。 これらによ る活性化にはラセミ化抑制添加剤 (例えば、 H〇B t , H O O B t ) とともに保護 アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、 対称酸無水物または H O B tエステルあ るいは H O O B tエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後 に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、 タンパク質縮 合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。 例えば、 N, N—ジメチルホルムアミド, N, N—ジメチルァセトアミド, N—メチルピロリド ンなどの酸アミド類、 塩化メチレン, クロ口ホルムなどのハロゲン化炭化水素類、 トリフルォロエタノールなどのアルコール類、 ジメチルスルホキシドなどのスルホ キシド類、 ピリジン, ジォキサン, テトラヒドロフランなどのェ一テル類、 ァセト 二トリル, プロピオ二トリルなどの二トリル類、 酢酸メチル, 酢酸ェチルなどのェ ステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。 反応温度はタンパク質 結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、 通常約— 2 0 °C〜5 0 °Cの範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常 1 . 5〜4倍過剰で用いられる。 ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、 縮合が不十 分な場合には保護基の脱離を行なうことなく縮合反応を繰り返すことにより十分 な縮合を行なうことができる。 反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときに は、 無水酢酸またはァセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をァセチル化す ることによって、 後の反応に影響を与えないようにすることができる。
原料のァミノ基の保護基としては、 例えば、 Z、 B o c、 t—ペンチルォキシカ ルポニル、 イソポルニルォキシカルボニル、 4ーメトキシベンジルォキシカルポ二 ル、 C 1— Z、 B r— Z、ァダマンチルォキシカルポニル、 トリフルォロアセチル、
フタロイル、 ホルミル、 2—ニトロフエニルスルフエ二ル、 ジフエ二ルホスフイノ チオイル、 Fmo cなどが用いられる。
力ルポキシル基は、 例えば、 アルキルエステル化 (例えば、 メチル、 ェチル、 プ 口ピル、プチル、 tーブチル、 シクロペンチル、 シクロへキシル、 シクロへプチル、 シクロォクチル、 2—ァダマンチルなどの直鎖状、 分枝状もしくは環状アルキルェ ステル化)、 ァラルキルエステル化 (例えば、 ベンジルエステル、 4—ニトロベン ジルエステル、 4—メトキシベンジルエステル、 4_クロ口べンジルエステル、 ベ ンズヒドリルエステル化)、 フエナシルエステル化、 ベンジルォキシカルボニルヒ ドラジド化、 t一ブトキシカルポニルヒドラジド化、 トリチルヒドラジド化などに よって保護することができる。
セリンの水酸基は、 例えば、 エステル化またはエーテル化によって保護すること ができる。このエステル化に適する基としては、例えば、ァセチル基などの低級(C ト 6) アルカノィル基、 ベンゾィル基などのァロイル基、 ベンジルォキシカルポ二 ル基、エトキシカルポニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、 エーテル化に適する基としては、 例えば、 ベンジル基、 テトラヒドロビラニル基、 t_ブチル基などである。
チロシンのフエノール性水酸基の保護基としては、 例えば、 B z l、 C 12-B z 1、 2—ニトロベンジル、 B r_Z、 t—ブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、 例えば、 To s、 4ーメトキシ一 2, 3, 6—トリメチルベンゼンスルホニル、 DNP、 ベンジルォキシメチル、 B um、 Bo c、 T r t、 Fm o cなどが用いられる。
原料の力ルポキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、 アジド、 活性エステル 〔アルコール (例えば、 ペン夕クロ口フエノール、 2, 4, 5—トリクロ口フエノール、 2, 4ージニトロフエノール、 シァノメチルアルコー ル、 パラニトロフエノール、 HONB、 N—ヒドロキシスクシミド、 N—ヒドロキ シフ夕ルイミド、 HOB t) とのエステル〕 などが用いられる。 原料のァミノ基の 活性化されたものとしては、 例えば、 対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去 (脱離) 方法としては、 例えば、 Pd—黒あるいは Pd—炭素など の触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、 また、 無水フッ化水素、
ルホン酸、 トリフルォロメ夕ンスルホン酸、 トリフルォロ酢酸あるいはこれらの混 合液などによる酸処理や、 ジイソプロピルェチルァミン、 トリェチルァミン、 ピぺ リジン、 ピぺラジンなどによる塩基処理、 また液体アンモニア中ナトリウムによる 還元なども用いられる。 上記酸処理による脱離反応は、 一般に約一 2 0 〜 4 0 °C の温度で行なわれるが、 酸処理においては、 例えば、 ァニソール、 フエノール、 チ オアニソール、 メタクレゾ一ル、 パラクレゾ一ル、 ジメチルスルフイド、 1 , 4一 ブタンジチオール、 1, 2—エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加 が有効である。 また、 ヒスチジンのイミダゾ一ル保護基として用いられる 2, 4一 ジニトロフエニル基はチオフエノ一ル処理により除去され、 トリブトファンのイン ドール保護基として用いられるホルミル基は上記の 1, 2—ェ夕ンジチォ一ル、 1 , 4一ブタンジチォ一ルなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、 希水酸化ナトリ ゥム溶液、 希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、 およびその保護基 の脱離、 反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜 選択しうる。
タンパク質または部分ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、 例えば、 ま ず、 カルポキシ末端アミノ酸の 0!—力ルポキシル基をアミド化して保護した後、 ァ ミノ基側にペプチド (タンパク質) 鎖を所望の鎖長まで延ばした後、 該ペプチド鎖 の N末端の a—ァミノ基の保護基のみを除いたタンパク質または部分ペプチドと C末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質または部分ペプチド とを製造し、 これらのタンパク質またはペプチドを上記したような混合溶媒中で縮 合させる。 縮合反応の詳細については上記と同様である。 縮合により得られた保護 タンパク質またはペプチドを精製した後、 上記方法によりすベての保護基を除去し、 所望の粗タンパク質またはべプチドを得ることができる。 この粗夕ンパク質または ペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、 主要画分を凍結乾燥することで 所望のタンパク質またはべプチドのアミド体を得ることができる。
タンパク質またはペプチドのエステル体を得るには、 例えば、 カルボキシ末端ァ ミノ酸の a—力ルポキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルと した後、 タンパク質またはペプチドのアミド体と同様にして、 所望のタンパク質ま
たはべプチドのエステル体を得ることができる。
本発明で用いられる部分ペプチドまたはそれらの塩は、 自体公知のペプチドの合 成法に従って、 あるいは本発明で用いられるタンパク質を適当なぺプチダ一ゼで切 断することによって製造することができる。 ペプチドの合成法としては、 例えば、 固相合成法、 液相合成法のいずれによっても良い。 すなわち、 本発明で用いられる 部分ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合さ せ、 生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のぺプチドを 製造することができる。 公知の縮合方法や保護基の脱離としては、 例えば、 以下の
(i) 〜 (V) に記載された方法が挙げられる。
(i) M. Bodanszky および M.A. Ondetti、 ペプチド · シンセシス (Peptide Synthesis; , Interscience Publishers, New York (1966年)
(ii) Schroederおよび Luebke、 ザ ·ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(iii) 泉屋信夫他、 ペプチド合成の基礎と実験、 丸善 (株) (1975年)
(iv)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学 IV、 205、 (1977年)
(V) 矢島治明監修、 続医薬品の開発、 第 14巻、 ペプチド合成、 広川書店 また、 反応後は通常の精製法、 例えば、 溶媒抽出 ·蒸留 ·カラムクロマトグラフ ィ一。液体クロマトグラフィー ·再結晶などを組み合わせて本発明で用いられる部 分べプチドを精製単離することができる。 上記方法で得られる部分べプチドが遊離 体である場合は、 公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換す ることができるし、 逆に塩で得られた場合は、 公知の方法あるいはそれに準じる方 法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、 前述し た本発明で用いられるタンパク質をコードする塩基配列を含有するものであれば いかなるものであってもよい。 好ましくは DNAである。 DNAとしては、 ゲノム DNA、 ゲノム DNAライブラリ一、 前記した細胞 ·組織由来の cDNA、 前記し た細胞'組織由来の c DNAライブラリー、 合成 DN Aのいずれでもよい。
ライブラリーに使用するべクタ一は、 バクテリオファージ、 プラスミド、 コスミ
ド、 ファージミドなどいずれであってもよい。 また、前記した細胞'組織より total RNAまたは mRNA画分を調製したものを用いて直接 Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction (以下、 R T _ P C R法と略称する) によって増幅す ることもできる。
本発明で用いられるタンパク質をコードする DN Aとしては、 例えば配列番号: 2、 配列番号: 18または配列番号: 20で表される塩基配列を含有する DNA、 または配列番号: 2配列番号: 18または配列番号: 20で表される塩基配列と八 イストリンジェントな条件下でハイプリダイズする塩基配列を含有し、 前記した配 列番号: 1、 配列番号: 16または配列番号: 19で表されるアミノ酸配列を含有 するタンパク質と実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードする DNAで あれば何れのものでもよい。
配列番号: 2、 配列番号: 18または配列番号: 20で表される塩基配列とハイ ストリンジェントな条件下でハイブリダィズできる DNAとしては、 例えば、 配列 番号: 2、 配列番号: 18または配列番号: 20で表される塩基配列と約 50 %以 上、 好ましくは約 60%以上、 さらに好ましくは約 70%以上、 より好ましくは約 80%以上、 特に好ましくは約 90%以上、 最も好ましくは約 95%以上の相同性 を有する塩基配列を含有する DNAなどが用いられる。 ここで言う 「塩基配列の相 同性」 は、 例えば、 相同性計算アルゴリズム NCB I BLAST (Na t i on a 1 Cen t e r f o r B i o t e c hn o l o gy I n f o rma t i on B a s i c Lo c a l A l i gnme n t S e a r c h To o 1) などを用い、 例えば、 以下の条件 (期待値 = 10 ;ギャップを許す;フィル夕 リング =ON;マッチスコア = 1 ;ミスマッチスコア =— 3) などにて計算するこ とができる。
ハイブリダィゼ一シヨンは、 自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、 例えば 、 モレキュラー 'クロ一ニング (Molecular Cloning) 2nd (J. Saibrook et al. , Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989) に記載の方法などに従って行なうことが できる。 また、 市販のライブラリーを使用する場合、 添付の使用説明書に記載の方 法に従って行なうことができる。 より好ましくは、 ハイストリンジェントな条件に 従って行なうことができる。 ハイストリンジェントな条件とは、 例えば、 ナトリウ
ム濃度が約 19〜 40 mM、 好ましくは約 19〜 20 mMで、 温度が約 50〜 70 、 好ましくは約 60〜65°Cの条件を示す。 特に、 ナトリウム濃度が約 19 mM で温度が約 65°Cの場合が最も好ましい。
より具体的には、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質を コードする DNAとしては、 配列番号: 2で表される塩基配列を含有する DNAな どが用いられる。 また、 配列番号: 16で表されるアミノ酸配列を含有するタンパ ク質をコードする DNAとしては、 配列番号: 18で表される塩基配列を含有する DNAなどが用いられる。 また、 配列番号: 19で表されるアミノ酸配列を含有す るタンパク質をコードする DNAとしては、 配列番号: 20で表される塩基配列を 含有する DN Aなどが用いられる。
本発明で用いられる部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド (例、 DNA) としては、 前述した本発明で用いられる部分ペプチドをコードする塩基配列を含有 するものであればいかなるものであってもよい。 また、 ゲノム DNA、 ゲノム DN Aライブラリ一、 前記した細胞 ·組織由来の cDNA、 前記した細胞 ·組織由来の cDNAライブラリ一、 合成 DNAのいずれでもよい。
本発明で用いられる部分ペプチドをコードする DNAとしては、 例えば、 配列番 号: 2、 配列番号: 18または配列番号: 20で表される塩基配列を含有する DN Aの一部分を有する DNA、 または配列番号: 2配列番号: 18または配列番号: 20で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダィズする 塩基配列を含有し、 本発明のタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質 をコードする DNAの一部分を含有する DNAなどが用いられる。
配列番号: 2、 配列番号: 18または配列番号: 20で表される塩基配列とハイ ブリダィズできる DNAは、 前記と同意義を示す。
ハイプリダイゼーシヨンの方法およびハイストリンジェントな条件は前記と同 様のものが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質、 部分ペプチド (以下、 これらをコードする DN Aのクロ一ニングおよび発現の説明においては、 これらを単に本発明のタンパク質 と略記する場合がある) を完全にコードする DNAのクローニングの手段としては、 本発明のタンパク質をコ一ドする塩基配列の一部分を有する合成 DN Aプライマ
一を用いて P C R法によって増幅するか、 または適当なベクターに組み込んだ D N Aを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコードする DNA断片もしくは 合成 DN Aを用いて標識したものとのハイブリダィゼ一ションによって選別する ことができる。 ハイブリダィゼーシヨンの方法は、 例えば、 モレキュラー 'クロー ニング (Molecular Cloning) 2nd (J. Sambrook et al. , Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989) に記載の方法等に従って行なうことができる。 又、 市販のライブラ リーを使用する場合、 添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
DN Aの塩基配列の変換は、 P CR、公知のキット、例えば、 Mutan™- super Express Km (宝酒造(株))、 MutanTM-K (宝酒造 (株))等を用いて、 ODA-LA PCR法、 Gapped duplex 法、 Kunke 1法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうこと ができる。
クローン化されたタンパク質をコ一ドする DNAは目的によりそのまま、 または 所望により制限酵素で消化したり、 リンカ一を付加したりして使用することができ る。 該 DNAはその 5, 末端側に翻訳開始コドンとしての ATGを有し、 また 3, 末端側には翻訳終止コドンとしての TAA、 TGAまたは TAGを有していてもよ い。 これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、 適当な合成 DNAアダプターを 用いて付加することもできる。
本発明のタンパク質の発現ベクターは、 例えば、 (ィ) 本発明のタンパク質をコ ードする DNAから目的とする DNA断片を切り出し、 (口) 該 DNA断片を適当 な発現べクタ一中のプロモーターの下流に連結することにより製造することがで きる。
ベクタ一としては、大腸菌由来のプラスミド(例、 pBR 322, pBR 325, pUC 1 2, pUC 1 3)、 枯草菌由来のプラスミド (例、 PUB 1 1 0, pTP 5, pC l 94)、 酵母由来プラスミド (例、 p SH1 9, p SH 1 5)、 λファー ジなどのバクテリオファージ、 アデノウイルス、 レトロウイルス, ワクシニアウイ ルス, バキュロウィルスなどの動物ウィルスなどの他、 P A 1 - 1 1、 ρΧΤ 1、 pR c/CMV、 pRc/RSV、 p c DNA I /N e oなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、 遺伝子の発現に用いる宿主に対応し て適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。 例えば、 動物細胞を宿主と
して用いる場合は、 SRaプロモー夕一、 SV40プロモータ一、 LTRプロモ一 夕一、 CMVプロモーター、 HSV-TKプロモータ一などが挙げられる。
これらのうち、 CMV (サイトメガロウィルス) プロモ一夕一、 SR aプロモー 夕一などを用いるのが好ましい。 宿主がェシエリヒア属菌である場合は、 t r pプ ロモ一夕一、 l a cプロモータ一、 r e cAプロモ一タ一、 A PLプロモー夕一、 1 p pプロモータ一、 T 7プロモータ一などが、宿主がバチルス属菌である場合は、 SP01プロモータ一、 SP〇2プロモータ一、 p e n Pプロモー夕一など、 宿主 が酵母である場合は、 PH05プロモータ一、 PGKプロモーター、 GAPプロモ 一夕一、 ADHプロモーターなどが好ましい。 宿主が昆虫細胞である場合は、 ポリ ヘドリンプロモータ一、 P 10プロモ一夕一などが好ましい。
発現ベクターには、 以上の他に、 所望によりェンハンサ一、 スプライシングシグ ナル、 ポリ A付加シグナル、 選択マ一力一、 SV40複製オリジン (以下、 SV4 0 o r iと略称する場合がある) などを含有しているものを用いることができる。 選択マ一力一としては、 例えば、 ジヒドロ葉酸還元酵素 (以下、 dh f rと略称す る場合がある) 遺伝子 〔メソトレキセ一ト (MTX) 耐性〕、 アンピシリン耐性遺 伝子 (以下、 Amp rと略称する場合がある)、 ネオマイシン耐性遺伝子 (以下、 N e orと略称する場合がある、 G41 8耐性) 等が挙げられる。 特に、 dh f r遺 伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いて d h f r遺伝子を選択マ一カーと して使用する場合、 目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。 また、 必要に応じて、 宿主に合ったシグナル配列を、 本発明のタンパク質の N端 末側に付加する。 宿主がェシエリヒア属菌である場合は、 PhoA ·シグナル配列、 OmpA ·シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、 ひ一アミラーゼ · シグナル配列、 サブチリシン ·シグナル配列などが、 宿主が酵母である場合は、 M F ·シグナル配列、 SUC 2 ·シグナル配列など、 宿主が動物細胞である場合に は、 ィンシュリン ·シグナル配列、 —ィンターフェロン ·シグナル配列、 抗体分 子 ·シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明のタンパク質をコードする DN Aを含有する ベクターを用いて、 形質転換体を製造することができる。
宿主としては、 例えば、 ェシエリヒア属菌、 バチルス属菌、 酵母、 昆虫細胞、 昆
虫、 動物細胞などが用いられる。
ェシエリヒア属菌の具体例としては、 例えば、 ェシエリヒア 'コリ (Escherichia coli) K 12 · DH 1 〔プロシ一ジングズ ·ォブ ·ザ ·ナショナル ·アカデミー · ォブ ·サイェンシィズ .ォブ ·ザ .ユーエスェ一 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA), 60巻, 1 60 (1968)〕, J M 103 〔ヌクイレック ·ァシッズ ' リサ一チ (Nucleic Acids Research), 9巻, 309.(1981)〕, J A 22 1 〔ジャーナル ' ォブ 'モレキュラー 'バイオロジー (Journal of Molecular Biology), 120巻, 51 7 (1978)〕, HB 101 〔ジャーナル 'ォブ 'モレキュラー 'バイオロジ 一, 41卷, 459 (1969)〕, C 600 〔ジェネティックス (Genetics), 39 巻, 440 (1954)〕 などが用いられる。
バチルス属菌としては、 例えば、 バチルス 'サブチルス (Bacillus subtilis) M I 1 14 〔ジーン, 24巻, 255 (1983)〕, 207 - 2 1 〔ジャーナル · ォブ 'バイオケミストリ— (Journal of Biochemistry), 95巻, 87 (1984)〕 などが用いられる。
酵母としては、 例えば、 サッカロマイセス セレピシェ (Saccharomyces cerevisiae) AH22, AH22 R", NA87 - 1 1 A, DKD- 5 D, 20 B 一 12、 シゾサッカロマイセス ボンべ (Schizosaccharomyces pombe) NCYC 1 913, NCYC2036、 ピキア パス卜リス (Pichia pastoris) KM 71 などが用いられる。
昆虫細胞としては、 例えば、 ウィルスが Ac NPVの場合は、 夜盗蛾の幼虫由来 株化細胞 (Spodoptera frugiperda cell; S f細胞)、 Trichoplusia niの中腸由来 の MG1細胞、 Trichoplusia niの卵由来の High Five™細胞、 Mamestra brassicae 由来の細胞または Estigmena acrea由来の細胞などが用いられる。 ウィルスが Bm NPVの場合は、 蚕由来株化細胞 (Bombyx mori N細胞; BmN細胞) などが用い られる。 該 S f細胞としては、 例えば、 S f 9細胞 (ATCC CRL1711), S f 2 1細 胞 (以上、 Vaughn, J丄ら、 イン ·ヴイボ (in Vivo) ,13, 213-217, (1977)) など が用いられる。
昆虫としては、 例えば、 カイコの幼虫などが用いられる 〔前田ら、 ネィチヤ一 (Nature), 315巻, 592 (1985)〕。
動物細胞としては、 例えば、 サル細胞 COS— 7, Ve r o, チャイニーズハム スター細胞 CHO (以下、 CHO細胞と略記), dh f r遺伝子欠損チャイニーズ ハムスター細胞 CHO (以下、 CHO (dh f r") 細胞と略記), マウス L細胞, マウス A t T— 20, マウスミエローマ細胞, マウス ATDC 5細胞, ラット GH 3, ヒト FL細胞などが用いられる。 さらに、 ヒト癌細胞由来細胞株 (DLD— 1 細胞、 HCT— 15細胞、 SW - 480細胞、 L o Vo細胞、 HCT— 1 16細胞、 Wi D r細胞、 11丁—29細胞、 LS— 174T細胞、 SNU— C 1細胞、 SNU 一 C4細胞、 SNU— C2A細胞、 CX— 1細胞、 G I - 112細胞、 HL— 6.0 細胞、 Ra j i細胞、 G361細胞、 S 3細胞) なども用いられる。
ェシエリヒア属菌を形質転換するには、 例えば、 プロシ一ジングズ ·ォブ ·ザ · ナショナル ·アカデミー'ォブ ·サイェンジィズ'ォブ ·ザ'ユーエスェ一 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA), 69巻, 21 10 ( 1972 )やジーン (Gene), 17巻, 107 (1 982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、モレキュラー ·アンド 'ジェネラル ' ジエネティックス (Molecular & General Genetics), 168巻, 1 1 1 (197 9 )などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、 例えば、 メソッズ ·イン ·ェンザィモロジ一 (Methods in Enzymology), 194巻, 182— 187 ( 1991 )、 プロシ一ジングズ 'ォ ブ.ザ'ナショナル ·アカデミー ·ォブ 'サイェンシィズ ·ォブ ·ザ ·ュ一エスェ 一 (Proc. Natl. Acad。 Sci. USA), 75巻, 1929 (1978) などに記載の方 法に従つて行なうことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、 例えば、 バイオ/テクノロジー (Bio/Technology), 6, 47 - 55(1988)等に記載の方法に従って行なうことができる。 動物細胞を形質転換するには、 例えば、 細胞工学別冊 8 新細胞工学実験プロト コール. 263— 267 ( 1995) (秀潤社発行)、 ヴイロロジー (Virology), 52巻, 456 (1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
このようにして、 タンパク質をコードする DN Aを含有する発現べクタ一で形質 転換された形質転換体を得ることができる。
宿主がェシエリヒア属菌、 バチルス属菌である形質転換体を培養する際、 培養に
使用される培地としては液体培地が適当であり、 その中には該形質転換体の生育に 必要な炭素源、 窒素源、 無機物その他が含有せしめられる。 炭素源としては、 例え ば、 グルコース、 デキストリン、 可溶性澱粉、 ショ糖など、 窒素源としては、 例え ば、 アンモニゥム塩類、硝酸塩類、 コーンスチープ ·リカ一、ペプトン、 カゼイン、 肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、 例えば、 塩化カルシウム、 リン酸二水素ナトリウム、 塩化マグネシウムなどが挙げ られる。 また、 酵母エキス、 ビタミン類、 生長促進因子などを添加してもよい。 培 地の p Hは約 5〜 8が望ましい。
ェシエリヒア属菌を培養する際の培地としては、 例えば、 グルコース、 カザミノ 酸を含む M9培地 〔ミラ一 (Miller), ジャーナル 'ォブ ·ェクスペリメンッ ·ィ ン ·モレキュラー · ジェ不ティックス (Journal of Experiments in Molecular Genetics), 431— 433, Cold Spring Harbor Laboratory, New York 197 2〕 が好ましい。 ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、 例え ば、 33—インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がェシエリヒア属菌の場合、 培養は通常約 15〜43°Cで約 3〜24時間行 ない、 必要により、 通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、 培養は通常約 30〜40°Cで約 6〜24時間行ない、 必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、 培地としては、 例えば、 バークホー ルダ一 (Burkholder) 最小培地 〔Bostian, K. L. ら、 プロシージングズ ·ォブ · ザ ·ナショナル ·アカデミー.ォブ ·サイェンシィズ.ォブ ·ザ ·ユーエスェ一(proc.
Natl. Acad. Sci. USA), 77巻, 4505 (1980)〕 や 0.5%カザミノ酸を含 有する SD培地 〔Bitter, G. A. ら、 プロシージングズ ·ォブ ·ザ ·ナショナル · アカデミー ·ォブ ·サイェンシィズ ·ォブ ·ザ ·ユーエスェ一 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA), 81巻, 5330 ( 1984 )〕 が挙げられる。 培地の p Hは約 5〜 8 に調整するのが好ましい。 培養は通常約 20で〜 35°Cで約 24〜72時間行ない、 必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、 培地としては、 Grace's Insect Medium (Grace, T.C.C.,ネイチヤー (Nature) , 195, 788 (1962))
に非動化した 10 %ゥシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。 培地 の p Hは約 6. 2〜 6. 4に調整するのが好ましい。 培養は通常約 27 nCで約 3〜 5日間行ない、 必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、 培地としては、 例えば、 約 5〜 20 %の胎児牛血清を含む MEM培地 〔サイエンス (Science), 1 22巻, 50 1 (1952)〕, DMEM培地〔ヴイロロジー(Virology), 8巻, 3 96 (1959)〕, RPM I 1 640培地 〔ジャーナル ·ォブ ·ザ ·ァメリカン ·メディカル ·ァソ シェ一シヨン (The Journal of the American Medical Association) 1 99巻, 51 9 (1967)3, 1 99培地 〔プロシ一ジング ·ォブ ·ザ ·ソサイエティ ·フ ォー ·ザ ·バイオロジカル 'メディスン (Proceeding of the Society for the Biological Medicine), 73巻, 1 ( 1 950 )〕 などが用いられる。 p Hは約 6〜 8であるのが好ましい。 培養は通常約 30°C〜40°Cで約 1 5〜60時間行ない、 必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、 形質転換体の細胞内、 細胞膜または細胞外に本発明のタンパ ク質を生成せしめることができる。
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、 例えば、 下記の方法に より行なうことができる。
本発明のタンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、 培養後、 公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、 これを適当な緩衝液に懸濁し、 超音波、 リ ゾチームおよび Zまたは凍結融解などによつて菌体あるいは細胞を破壊したのち、 遠心分離やろ過によりタンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。 緩 衝液の中に尿素や塩酸グァニジンなどの蛋白質変性剤や、 トリトン X— 1 0 0™ などの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にタンパク質が分泌される場合 には、 培養終了後、 それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、 上 清を集める。
このようにして得られた培養上清、 あるいは抽出液中に含まれるタンパク質の精 製は、 自体公知の分離 '精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。 これら の公知の分離、 精製法としては、 塩析ゃ溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、 透析法、 限外ろ過法、 ゲルろ過法、 および SDS—ポリアクリルアミドゲル電気泳
動法などの主として分子量の差を利用する方法、 イオン交換クロマトグラフィーな どの荷電の差を利用する方法、 ァフィ二ティ一クロマトグラフィーなどの特異的親 和性を利用する方法、 逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用す る方法、 等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。 かくして得られるタンパク質が遊離体で得られた場合には、 自体公知の方法ある いはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、 逆に塩で得られた場合に は自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、 遊離体または他の塩に変換す ることができる。
なお、 組換え体が産生するタンパク質を、 精製前または精製後に適当な蛋白修飾 酵素を作用させることにより、 任意に修飾を加えたり、 ポリペプチドを部分的に除 去することもできる。 蛋白修飾酵素としては、 例えば、 トリプシン、 キモトリプシ ン、 アルギニルェンドぺプチダーゼ、 プロテインキナーゼ、 グリコシダ一ゼなどが 用いられる。
かくして生成する本発明のタンパク質の存在は、 特異抗体を用いたェンザィムィ ムノアツセィゃウエスタンブロッテイングなどにより測定することができる。
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩に対する抗 体は、 本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチド又はその塩を認識し得 る抗体であれば、ポリクロ一ナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。 本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩(以下、 抗体 の説明においては、 これらを単に本発明のタンパク質と略記する場合がある) に対 する抗体は、 本発明のタンパク質を抗原として用い、 自体公知の抗体または抗血清 の製造法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
( a ) モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明のタンパク質は、 温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそ れ自体あるいは担体、 希釈剤とともに投与される。 投与に際して抗体産生能を高め るため、 完全フロイントアジュバントゃ不完全フロイン卜アジュバントを投与して もよい。 投与は通常 2〜 6週毎に 1回ずつ、 計 2〜1 0回程度行われる。 用いられ る温血動物としては、 例えば、 サル、 ゥサギ、 ィヌ、 モルモット、 マウス、 ラット、
ヒッジ、ャギ、ニヮトリが挙げられるが、マウス及びラットが好ましく用いられる。 モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、 抗原で免疫された温血動物、 例 えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の 2〜5日後に脾臓ま たはリンパ節を採取し、 それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨 髄腫細胞と融合させることにより、 モノクローナル抗体産生ハイプリドーマを調製 することができる。 抗血清中の抗体価の測定は、 例えば、 後記の標識化タンパク質 と抗血清とを反応させたのち、 抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより 行なうことができる。 融合操作は既知の方法、 例えば、 ケーラ一とミルスタインの 方法 〔ネィチヤ一 (Nature)、 256、 495 (1975)] に従い実施することができる。 融 合促進剤としては、 例えば、 ポリエチレングリコール (PEG) やセンダイウィル スなどが挙げられるが、 好ましくは P E Gが用いられる。
骨髄腫細胞としては、 例えば、 NS— 1、 P 3U1、 S P 2/0> AP— 1など の温血動物の骨髄腫細胞が挙げられるが、 P 3U1が好ましく用いられる。 用いら れる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は 1: 1〜20 : 1程度であり、 PEG (好ましくは PEG 1000〜PEG6000) が 10〜8 0 %程度の濃度で添加され、 20〜40°C、 好ましくは 30〜 37 :で 1〜 10分 間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクロ一ナル抗体産生ハイブリド一マのスクリーニングには種々の方法が使 用できるが、 例えば、 タンパク質抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相 (例、 マイクロプレート) にハイブリド一マ培養上清を添加し、 次に放射性物質や 酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体 (細胞融合に用いられる細胞がマウスの 場合、 抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる) またはプロテイン Aを加え、 固 相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、 抗免疫グロブリン抗体またはプ 口ティン Aを吸着させた固相にハイプリドーマ培養上清を添加し、 放射性物質ゃ酵 素などで標識したタンパク質を加え、 固相に結合したモノクローナル抗体を検出す る方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、 自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行な うことができる。 通常 HAT (ヒポキサンチン、 アミノプテリン、 チミジン) を添 加した動物細胞用培地で行なうことができる。 選別および育種用培地としては、 ハ
イブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。 例えば、 1 〜2 0 %、 好ましくは 1 0〜2 0 %の牛胎児血清を含む R P M I 1 6 4 0培地、 1〜1 0 %の牛胎児血清を含む G I T培地 (和光純薬工業 (株)) あるいは八イブ リドーマ培養用無血清培地 (S F M— 1 0 1、 日水製薬 (株)) などを用いること ができる。 培養温度は、 通常 2 0〜4 0 t:、 好ましくは約 3 7 t:である。 培養時間 は、 通常 5日〜 3週間、 好ましくは 1週間〜 2週間である。 培養は、 通常 5 %炭酸 ガス下で行なうことができる。 ハイプリドーマ培養上清の抗体価は、 上記の抗血清 中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
( b ) モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、 自体公知の方法、 例えば、 免疫グロブリンの 分離精製法 〔例、 塩析法、 アルコール沈殿法、 等電点沈殿法、 電気泳動法、 イオン 交換体 (例、 D E A E ) による吸脱着法、 超遠心法、 ゲルろ過法、 抗原結合固相あ るいはプロティン Aあるいはプロテイン Gなどの活性吸着剤により抗体のみを採 取し、 結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕 に従って行なうことができる。 〔ポリク口一ナル抗体の作製〕
本発明のポリクロ一ナル抗体は、 それ自体公知あるいはそれに準じる方法に従つ て製造することができる。 例えば、 免疫抗原 (タンパク質抗原) 自体、 あるいはそ れとキャリア一蛋白質との複合体をつくり、 上記のモノクローナル抗体の製造法と 同様に温血動物に免疫を行ない、 該免疫動物から本発明のタンパク質に対する抗体 含有物を採取して、 抗体の分離精製を行なうことにより製造することができる。 温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリア一蛋白質との複合体 に関し、 キャリア一蛋白質の種類およびキャリア一とハプテンとの混合比は、 キヤ リア一に架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、 どの様な ものをどの様な比率で架橋させてもよいが、 例えば、 ゥシ血清アルブミンやゥシサ イログロブリン、 へモシァニン等を重量比でハプテン 1に対し、 約 0 . 1〜2 0、 好ましくは約 1〜 5の割合で力プルさせる方法が用いられる。
また、 ハプテンとキャリア一の力プリングには、 種々の縮合剤を用いることがで きるが、 ダルタルアルデヒドやカルポジイミド、 マレイミド活性エステル、 チォ一 ル基、 ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、 温血動物に対して、 抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担 体、 希釈剤とともに投与される。 投与に際して抗体産生能を高めるため、 完全フロ ィントアジュバントゃ不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。 投与は、 通常約 2〜 6週毎に 1回ずつ、 計約 3〜 10回程度行なわれる。
ポリクロ一ナル抗体は、 上記の方法で免疫された温血動物の血液、 腹水など、 好 ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、 上記の抗血清中の抗体価の測定と同 様にして測定できる。 ポリクローナル抗体の分離精製は、 上記のモノクロ一ナル抗 体の分離精製と同様の免疫グロプリンの分離精製法に従って行なうことができる。 本発明で用いられるタンパク質または部分べプチドをコードするポリヌクレオ チド (例、 DNA (以下、 アンチセンスポリヌクレオチドの説明においては、 これ らの DN Aを本発明の DN Aと略記する場合がある)) の塩基配列に相補的な、 ま たは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンスポリヌクレ ォチドとしては、 本発明の DNAの塩基配列に相補的な、 または実質的に相補的な 塩基配列またはその一部を有し、 該 DNAの発現を抑制し得る作用を有するもので あれば、 いずれのアンチセンスポリヌクレオチドであってもよいが、 アンチセンス DN Aが好ましい。
本発明の DNAに実質的に相補的な塩基配列とは、 例えば、 本発明の DNAに相 補的な塩基配列 (すなわち、 本発明の DNAの相補鎖) の全塩基配列あるいは部分 塩基配列と約 70%以上、好ましくは約 80%以上、より好ましくは約 90%以上、 最も好ましくは約 95%以上の相同性を有する塩基配列などが挙げられる。 特に、 本発明の DNAの相補鎖の全塩基配列うち、 (ィ) 翻訳阻害を指向したアンチセン スポリヌクレオチドの場合は、 本発明のタンパク質の N末端部位をコードする部分 の塩基配列 (例えば、 開始コドン付近の塩基配列など) の相補鎖と約 70%以上、 好ましくは約 80%以上、 より好ましくは約 90%以上、 最も好ましくは約 95% 以上の相同性を有するアンチセンスポリヌクレオチドが、 (口) RNa s eHによ る R N A分解を指向するァンチセンスポリヌクレオチドの場合は、 イントロンを含 む本発明の DN Aの全塩基配列の相補鎖と約 70%以上、 好ましくは約 80%以上、 より好ましくは約 90%以上、 最も好ましくは約 95%以上の相同性を有するアン
チセンスポリヌクレオチドがそれぞれ好適である。
具体的には、 配列番号: 2、 配列番号: 1 8または配列番号: 2 0で表わされる 塩基配列を含有する D N Aの塩基配列に相補的な、 もしくは実質的に相補的な塩基 配列、 またはその一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチド、 好ましくは例え ば、 配列番号: 2、 配列番号: 1 8または配列番号: 2 0で表わされる塩基配列を 含有する D N Aの塩基配列に相補な塩基配列、 またはその一部分を有するアンチセ ンスポリヌクレオチド (より好ましくは、 配列番号: 2、 配列番号: 1 8または配 列番号: 2 0で表わされる塩基配列を含有する D N Aの塩基配列に相補な塩基配列 の一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチド) などが挙げられる。
アンチセンスポリヌクレオチドは通常、 1 0〜4 0個程度、 好ましくは 1 5〜3 0個程度の塩基から構成される。
ヌクレア一ゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、 アンチセンス D N A を構成する各ヌクレオチドのリン酸残基 (ホスフェート) は、 例えば、 ホスホロチ ォェート、 メチルホスホネート、 ホスホロジチォネートなどの化学修飾リン酸残基 に置換されていてもよい。 また、 各ヌクレオチドの糖(デォキシリポース) は、 2 ' —o—メチル化などの化学修飾糖構造に置換されていてもよいし、 塩基部分 (ピリ ミジン、 プリン) も化学修飾を受けたものであってもよく、 配列番号: 2、 配列番 号: 1 8または配列番号: 2 0で表わされる塩基配列を有する D N Aにハイブリダ ィズするものであればいずれのものでもよい。 これらのアンチセンスポリヌクレオ チドは、 公知の D N A合成装置などを用いて製造することができる。
本発明に従えば、 本発明のタンパク質遺伝子の複製または発現を阻害することの できるアンチセンス ·ポリヌクレオチドを、 クローン化した、 あるいは決定された タンパク質をコードする D N Aの塩基配列情報に基づき設計し、 合成しうる。 かか るポリヌクレオチド (核酸) は、 本発明のタンパク質遺伝子の R N Aとハイブリダ ィズすることができ、 該 R N Aの合成または機能を阻害することができるか、 ある いは本発明のタンパク質関連 R N Aとの相互作用を介して本発明のタンパク質遺 伝子の発現を調節 ·制御することができる。 本発明のタンパク質関連 R N Aの選択 された配列に相補的なポリヌクレオチド、 および本発明のタンパク質関連 R N Aと 特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドは、 生体内および生体
外で本発明のタンパク質遺伝子の発現を調節 ·制御するのに有用であり、 また病気 などの治療または診断に有用である。 用語 「対応する」 とは、 遺伝子を含めたヌク レオチド、 塩基配列または核酸の特定の配列に相同性を有するあるいは相補的であ ることを意味する。 ヌクレオチド、 塩基配列または核酸とペプチド (蛋白質) との 間で 「対応する」 とは、 ヌクレオチド (核酸) の配列またはその相補体から誘導さ れる指令にあるペプチド (蛋白質) のアミノ酸を通常指している。 タンパク質遺伝 子の 5,端ヘアピンループ、 5,端 6—ベ一スペア 'リピート、 5 '端非翻訳領域、 ポリペプチド翻訳開始コドン、 蛋白質コード領域、 O R F翻訳終止コドン、 3 ' 端 非翻訳領域、 3 ' 端パリンドローム領域、 および 3 ' 端ヘアピンル一プは好ましい 対象領域として選択しうるが、 タンパク質遺伝子内の如何なる領域も対象として選 択しうる。
目的核酸と、 対象領域の少なくとも一部に相補的でハイブリダィズすることがで きるポリヌクレオチドとの関係は、 対象物と 「アンチセンス」 であるということが できる。 アンチセンス ·ポリヌクレオチドは、 2—デォキシ— D—リポースを含有 しているポリデォキシリボヌクレオチド、 D—リポースを含有しているポリリボヌ クレオチド、 プリンまたはピリミジン塩基の N—グリコシドであるその他のタイプ のポリヌクレオチド、 あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー (例 えば、 市販の蛋白質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー) または特殊な結合 を含有するその他のポリマー (但し、 該ポリマ一は D NAや R N A中に見出される ような塩基のペアリングゃ塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有 する)などが挙げられる。それらは、 2本鎖 D NA、 1本鎖 D NA、 2本鎖 R N A、 1本鎖 R NA、 さらに D N A: R NAハイブリッドであることができ、 さらに非修 飾ポリヌクレオチド (または非修飾オリゴヌクレオチド)、 さらには公知の修飾の 付加されたもの、 例えば当該分野で知られた標識のあるもの、 キャップの付いたも の、メチル化されたもの、 1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、 分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、 例えば非荷電結合 (例えば、 メチルホスホ ネート、 ホスホトリエステル、 ホスホルアミデート、 力ルバメートなど) を持つも の、 電荷を有する結合または硫黄含有結合 (例えば、 ホスホロチォェ一卜、 ホスホ 口ジチォエートなど) を持つもの、 例えば蛋白質 (ヌクレアーゼ、 ヌクレアーゼ.
インヒビ夕一、 トキシン、 抗体、' シグナルペプチド、 ポリ一 L—リジンなど) や糖 (例えば、 モノサッカライドなど) などの側鎖基を有しているもの、 インタ一カレ ント化合物 (例えば、 ァクリジン、 ソラレンなど) を持つもの、 キレート化合物(例 えば、 金属、 放射活性をもつ金属、 ホウ素、 酸化性の金属など) を含有するもの、 アルキル化剤を含有するもの、 修飾された結合を持つもの (例えば、 αァノマ一型 の核酸など)であってもよい。 ここで「ヌクレオシド」、 「ヌクレオチド」および「核 酸」 とは、 プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、 修飾されたその他 の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。 こうした修飾物は、 メチル化 されたプリンおよびピリミジン、 ァシル化されたプリンおよびピリミジン、 あるい はその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾さ れたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、 例えば、 1個以上の水酸基 がハロゲンとか、 脂肪族基などで置換されていたり、 あるいはエーテル、 ァミンな どの官能基に変換されていてよい。
本発明のアンチセンス ·ポリヌクレオチドは、 R N A、 D NA、 あるいは修飾さ れた核酸 (R NA、 D N A) である。 修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄 誘導体ゃチォホスフエ一ト誘導体、 そしてポリヌクレオシドアミドゃオリゴヌクレ オシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、 それに限定されるものではな レ^ 本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。 すなわ ち、 細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、 アンチセンズ核酸の細 胞透過性をより高める、 目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにす る、 そしてもし毒性があるならァンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。 こうして修飾は当該分野で数多く知られており、 例えば J. Kawakami et al ., Pharm Tech Japan, Vo l . 8, pp. 247, 1992 ; Vo l . 8, pp. 395, 1992 ; S. T. Crooke e t al . ed. , Ant i sense Research and App l i cat i ons, CRC Press, 1993 などに開 示がある。
本発明のアンチセンス核酸は、 変化せしめられたり、 修飾された糖、 塩基、 結合 を含有していて良く、 リボゾーム、 ミクロスフエアのような特殊な形態で供与され たり、 遺伝子治療により適用されたり、 付加された形態で与えられることができう る。 こうして付加形態で用いられるものとしては、 リン酸基骨格の電荷を中和する
ように働くポリリジンのようなポリカチォン体、 細胞膜との相互作用を高めたり、 核酸の取込みを増大せしめるような脂質 (例えば、 ホスホリピド、 コレステロール など) といった疎水性のものが挙げられる。 付加するに好ましい脂質としては、 コ レステロ一ルやその誘導体 (例えば、 コレステリルクロ口ホルメート、 コール酸な ど) が挙げられる。 こうしたものは、 核酸の 3 ' 端あるいは 5 ' 端に付着させるこ とができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。 その他の基としては、 核酸の 3 ' 端あるいは 5 ' 端に特異的に配置されたキャップ 用の基で、 ェキソヌクレアーゼ、 R N a s eなどのヌクレアーゼによる分解を阻止 するためのものが挙げられる。 こうしたキャップ用の基としては、 ポリエチレング リコール、 テトラエチレングリコ一ルなどのグリコールをはじめとした当該分野で 知られた水酸基の保護基が挙げられるが、 それに限定されるものではない。
アンチセンス核酸の阻害活性は、 本発明の形質転換体、 本発明の生体内や生体外 の遺伝子発現系、 あるいは本発明のタンパク質の生体内や生体外の翻訳系を用いて 調べることができる。 該核酸それ自体公知の各種の方法で細胞に適用できる。
以下に、 本発明のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩 (以下、 本発明 のタンパク質と略記する場合がある)、 本発明のタンパク質または部分ペプチドを コードするポリヌクレオチド (例、 D NA (以下、 本発明の D N Aと略記する場合 がある))、 本発明のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩に対する抗体 (以下、 本発明の抗体と略記する場合がある)、 および本発明の D NAのアンチセ ンスポリヌクレオチド (以下、 本発明のアンチセンスポリヌクレオチドと略記する 場合がある) の用途を説明する。
本発明のタンパク質は、 神経組織において発現が多く見られるので、 疾患マ一力 一として利用することが出来る。 すなわち、 神経系疾患における早期診断、 症状の 重症度の判定、 疾患進行の予測のためのマーカーとして有用である。 また、 本発明 のタンパク質は、 神経細胞分化因子 (未分化な神経細胞をコリン作動性ニューロン へ分化させる因子)として機能し、神経組織において発現が多く見られる。よって、 本発明のタンパク質をコ一ドする遺伝子のァンチセンスポリヌクレオチド、 本発明 のタンパク質の活性または発現を阻害する化合物もしくはその塩または本発明の 質に対する抗体を含有する医薬は、 例えば神経細胞分化抑制剤 (例、 神経
芽細胞腫 (neurob l as t oma) の予防 '治療剤など) などとして使用することができ る。 さらに、 本発明のタンパク質をコードする遺伝子、 本発明のタンパク質をコー ドする遺伝子のアンチセンスポリヌクレオチドまたは本発明のタンパク質に対す る抗体 (好ましくは、 本発明のタンパク質をコードする遺伝子、 本発明のタンパク 質に対する抗体) は、 神経系疾患 (例、 アルツハイマー病、 パーキンソン症候群、 脊髄損傷、 てんかん、 精神分裂病、 うつ病など) などの診断薬として使用すること ができる。 好ましくは神経変性疾患 (例、 アルツハイマー病、 パーキンソン症候群 など) の診断薬などである。
( 1 ) 本発明のタンパク質が関与する各種疾病の予防 ·治療剤
本発明のタンパク質は、 神経細胞分化因子 (未分化な神経細胞をコリン作動性二 ュ一ロンへ分化させる因子)として機能し、神経組織において発現が多く見られる。 したがって、 本発明のタンパク質をコードする D NAに異常があったり、 欠損して いる場合あるいは本発明のタンパク質の発現量が減少している場合には、 例えば、 神経系疾患 (例、 アルツハイマー病、 パーキンソン症候群、 脊髄損傷、 てんかん、 精神分裂病、 うつ病など) などが発症する。
したがって、 本発明のタンパク質および本発明の D N Aは、 例えば、 神経系疾患 (例、 アルツハイマー病、パーキンソン症候群、脊髄損傷、てんかん、精神分裂病、 うつ病など) などの予防 ·治療剤などの医薬として使用することができる。 好まし くは神経変性疾患 (例、 アルツハイマー病、 パーキンソン症候群など) の予防 ·治 療剤などである。 さらに、 本発明のタンパク質の活性または発現を促進する化合物 もしくはその塩は、 例えば、 神経系疾患 (例、 アルツハイマー病、 パーキンソン症 候群、 脊髄損傷、 てんかん、 精神分裂病、 うつ病など) などの予防 ·治療剤等の医 薬として使用することができる。好ましくは神経変性疾患の予防 ·治療剤等である。 例えば、 生体内において本発明のタンパク質が減少あるいは欠損しているために、 神経細胞分化調節が十分に、 あるいは正常に発揮されない患者がいる場合に、 (ィ) 本発明の D N Aをその患者に投与し、 生体内で本発明のタンパク質を発現させるこ とによって、 (口) 細胞に本発明の D NAを挿入し、 本発明のタンパク質を発現さ せた後に、 その細胞を患者に移植することによって、 または (ハ) 本発明のタンパ ク質をその患者に投与することなどによって、 その患者における本発明のタンパク
質の役割を十分に、 あるいは正常に発揮させることができる。
本発明の D N Aを上記の予防'治療刳として使用する場合は、 本発明の D N Aを 単独あるいはレトロウイルスベクタ一、 アデノウイルスベクタ一、 アデノウイルス ァソシェ一テツドウィルスベクタ一などの適当なベクタ一に揷入した後、 常套手段 に従って、 ヒトまたはその他の温血動物に投与することができる。 本発明の D N A は、 そのままで、 あるいは摂取促進のための補助剤などの生理学的に認められる担 体とともに製剤化し、 遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによ つて投与できる。
本発明のタンパク質を上記の予防 ·治療剤として使用する場合は、 少なくとも 9 0 %、好ましくは 9 5 %以上、より好ましくは 9 8 %以上、さらに好ましくは 9 9 % 以上に精製されたものを使用するのが好ましい。
本発明のタンパク質は、 例えば、 必要に応じて糖衣を施した錠剤、 カプセル剤、 エリキシル剤、 マイクロカプセル剤などとして経口的に、 あるいは水もしくはそれ 以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、 または懸濁液剤などの注射剤の形で 非経口的に使用できる。 例えば、 本発明のタンパク質等を生理学的に認められる担 体、 香味剤、 賦形剤、 べヒクル、 防腐剤、 安定剤、 結合剤などとともに一般に認め られた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造すること ができる。 これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られ るようにするものである。
錠剤、 カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、 例えば、 ゼラチ ン、 コーンスターチ、 トラガント、 アラビアゴムのような結合剤、 結晶性セルロー スのような賦形剤、 コ一ンスターチ、 ゼラチン、 アルギン酸などのような膨化剤、 ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、 ショ糖、 乳糖またはサッカリンのよう な甘味剤、 ペパーミント、 ァカモノ油またはチェリ一のような香味剤などが用いら れる。 調剤単位形態がカプセルである場合には、 前記タイプの材料にさらに油脂の ような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のよ うなべヒクル中の活性物質、 胡麻油、 椰子油などのような天然産出植物油などを溶 解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水性液としては、 例えば、 生理食塩水、 ブドウ糖やその他の補助薬を含
む等張液 (例えば、 D—ソルビトール、 D—マンニトール、 塩化ナトリウムなど) などが挙げられ、 適当な溶解補助剤、 例えば、 アルコール (例えば、 エタノールな ど)、 ポリアルコール (例えば、 プロピレングリコール、 ポリエチレングリコール など)、 非イオン性界面活性剤 (例えば、 ポリソルべ一ト 8 0 TM、 H C〇一 5 0な ど) などと併用してもよい。 油性液としては、 例えば、 ゴマ油、 大豆油などが挙げ られ、 溶解補助剤として安息香酸ベンジル、 ベンジルアルコールなどと併用しても よい。 また、 緩衝剤 (例えば、 リン酸塩緩衝液、 酢酸ナトリウム緩衝液など)、 無 痛化剤 (例えば、 塩化ベンザルコニゥム、 塩酸プロ力インなど)、 安定剤 (例えば、 ヒト血清アルブミン、 ポリエチレングリコールなど)、 保存剤 (例えば、 ベンジル アルコール、 フエノールなど)、 酸化防止剤などと配合してもよい。 調製された注 射液は、 通常、 適当なアンプルに充填される。
本発明の D NAが揷入されたべクタ一も上記と同様に製剤化され、 通常、 非経口 的に使用される。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、温血動物(例 えば、 ヒト、 ラット、 マウス、 モルモット、 ゥサギ、 トリ、 ヒッジ、 ブタ、 ゥシ、 ゥマ、 ネコ、 ィヌ、 サル、 チンパンジーなど) に対して投与することができる。 本発明のタンパク質の投与量は、 対象疾患、 投与対象、 投与ルートなどにより差 異はあるが、 例えば、 アルツハイマー病の治療目的で本発明のタンパク質等を経口 投与する場合、 一般的に成人 (体重 6 0 k gとして) においては、 一日につき該夕 ンパク質を約 0 . 1〜1 0 O m g、 好ましくは約 1 . 0〜5 O m g、 より好ましく は約 1 . 0〜2 0 m g投与する。 非経口的に投与する場合は、 該タンパク質等の 1 回投与量は投与対象、 対象疾患などによっても異なるが、 例えば、 アルツハイマー 病の治療目的で本発明のタンパク質等を注射剤の形で成人 (体重 6 0 k gとして) に投与する場合、 一日につき該タンパク質等を約 0 . 0 1〜3 0 m g程度、 好まし くは約 0 . 1〜2 O m g程度、 より好ましくは約 0 . 1〜1 O m g程度を患部に注 射することにより投与するのが好都合である。 他の動物の場合も、 6 O k g当たり に換算した量を投与することができる。
本発明のタンパク質は未分化な神経幹細胞からコリン作動性ニューロンへの分 化の段階で発現が上昇するので、 コリン作動性ニューロンに関わる疾患マーカーと
して利用することができる。 すなわち、 神経系疾患における早期診断、 症状の重症 度の判定、 疾患進行の予測のためのマ一力一として有用である。 よって、 本発明の タンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチド、 本発明のタンパク質の活性を調節 (促進または阻害、 好ましくは促進) する化合物もしくはその塩、 本発明のタンパ ク質の遺伝子の発現を調節 (促進または阻害、 好ましくは促進) する化合物もしく はその塩または本発明のタンパク質を含有する医薬は、 例えば、 神経系疾患 (例、 アルツハイマー病、 パーキンソン症候群、 脊髄損傷、 てんかん、 精神分裂病、 うつ 病など) などの治療 ·予防剤として使用することができる。 好ましくは神経変性疾 患の予防 ·治療剤などである。
( 2 ) 疾病に対する医薬候補化合物のスクリーニング
本発明のタンパク質は未分化な神経幹細胞からコリン作動性ニューロンへの分 化の段階で発現が上昇するので、 本発明のタンパク質の活性を調節 (促進または阻 害、 好ましくは促進) する化合物もしくはその塩、 本発明のタンパク質の遺伝子の 発現を調節 (促進または阻害、 好ましくは促進) する化合物もしくはその塩は、 例 えば、 神経系疾患 (例、 アルツハイマー病、 パーキンソン症候群、 脊髄損傷、 てん かん、精神分裂病、 うつ病など)などの治療 ·予防剤として使用することができる。 好ましくは神経変性疾患の予防 ·治療剤などである。
したがって、 本発明のタンパク質は、 本発明のタンパク質の活性を調節 (促進ま たは阻害、 好ましくは促進) する化合物もしくはその塩、 本発明のタンパク質の遺 伝子の発現を調節 (促進または阻害、 好ましくは促進) する化合物もしくはその塩 のスクリーニングのための試薬として有用である。
すなわち本発明は、 本発明のタンパク質を用いることを特徴とする本発明のタン パク質の活性 (例えば、 ①コリン作動性ニューロン分化促進活性あるいは②ドーパ ミン作動性ニューロン分化抑制活性などの神経細胞分化)を調節(促進または阻害、 好ましくは促進) する化合物、 あるいは本発明のタンパク質の遺伝子の発現を調節
(促進または阻害、好ましくは促進)する化合物のスクリーニング方法を提供する。 より具体的には、 上記スクリーニング方法においては、 例えば、 (1)試験化合物存 在下と(2)試験化合物非存在下の場合における、 本発明のタンパク質の遺伝子発現 量を測定して、 比較することを特徴とするものである。
更に(3)本発明のタンパク質を産生する能力を有する細胞あるいは本発明のタン パク質をコードする cDNAを導入した細胞を致死的な条件下で培養を行った場合、 具体的には血清除去下あるいは神経細胞に比較的毒性の強いァドリァマイシンな どの抗癌剤を加えて培養した場合と(4)本発明のタンパク質を産生する能力を有す る細胞あるいは本発明のタンパク質をコードする cDNAを導入した細胞と試験化合 物の混合物とを致死的な条件下で培養を行った場合、 具体的には血清除去下あるい は神経細胞に比較的毒性の強いアドリアマイシンなどの抗癌剤を加えて培養した 場合との比較を行うことを特徴とする調節薬のスクリーニング方法を提供する。 上 記スクリーニング方法においては、 例えば、 (1)と(2)の場合における、 神経細胞保 護作用と本発明のタンパク質の遺伝子発現量を測定して、 比較することを特徴とす るものである。
更に遺伝子産物によって発現が制御されると考えうる遺伝子などのプロモータ 一を用いたレポ一タ一 ·ジーン ·アツセィにおいてその活性の調節を特徴とするス クリーニング法を提供する。 より具体的には初代神経細胞あるいは P19細胞株ある いは配列番号: 2、 配列番号: 1 8または配列番号: 2 0で示される遺伝子を導入 した初代神経細胞あるいは P19細胞株を宿主細胞としてレポ一夕一 ·ジーン ·アツ セィを行う。
試験化合物としては、 例えば、 ペプチド、 タンパク質、 生体由来非ペプチド性化 合物 (糖質、 脂質など)、 合成化合物、 微生物培養物、 細胞抽出液、 植物抽出液、 動物組織抽出液などが挙げられ、 これら化合物は新規化合物であってもよいし、 公 知の化合物であってもよい。
上記のスクリーニング方法を実施するには、 本発明のタンパク質を産生する能力 を有する細胞をスクリーニングに適した培地を用いて培養する。 培地は、 本発明の タンパク質の遺伝子発現に影響を与えないものであればいずれでもよい。
本発明のタンパク質を産生する能力を有する細胞としては、 例えば、 前述した本 発明のタンパク質をコードする D N Aを含有するベクターで形質転換された宿主
(形質転換体)が用いられる。宿主としては、例えば、 C O S 7細胞、 C H O細胞、 H E K 2 9 3細胞などの動物細胞が好ましく用いられる。 該スクリーニングには、 例えば、 前述の方法で培養することによって、 本発明のタンパク質を細胞に発現さ
せた形質転換体が好ましく用いられる。 本発明のタンパク質を発現し得る細胞の ΐ -
'口 養方法は、 前記した本発明の形質変換体の培養法と同様である。
試験化合物としては、 例えばペプチド、 タンパク質、 非ペプチド性化合物、 合成 化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などがあげられる。 本発明のタンパク質の活性を促進する活性を有する化合物は、 本発明のタンパク 質の作用を増強するための安全で低毒性な医薬として有用である。
本発明のタンパク質の活性を阻害する活性を有する化合物は、 本発明のタンパク 質の生理活性を抑制するための安全で低毒性な医薬として有用である。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる 化合物またはその塩は、 例えば、 ペプチド、 タンパク質、 非ペプチド性化合物、 合 成化合物、 発酵生産物、 細胞抽出液、 植物抽出液、 動物組織抽出液、 血漿などから 選ばれた化合物である。 該化合物の塩としては、 前記した本発明のペプチドの塩と 同様のものが用いられる。
さらに、 本発明のタンパク質をコードする遺伝子も、 神経組織において発現が多 く見られるので、 本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現を調節 (促進また は阻害、 好ましくは促進) する化合物またはその塩も、 例えば、 神経系疾患 (例、 アルツハイマー病、 パーキンソン症候群、 脊髄損傷、 てんかん、 精神分裂病、 うつ 病など) などの予防 ·治療剤として使用することができる。 好ましくは神経変性疾 患の予防 ·治療剤などである。
したがって、 本発明のポリヌクレオチド (例、 D N A) は、 本発明のタンパク質 をコードする遺伝子の発現を調節 (促進または阻害、 好ましくは促進) する化合物 またはその塩のスクリーニングのための試薬として有用である。
スクリーニング方法としては、 (i i i) 本発明のタンパク質を産生する能力を有す る細胞を培養した場合と、 (iv) 試験化合物の存在下、 本発明で用いられるタンパ ク質を産生する能力を有する細胞を培養した場合との比較を行うことを特徴とす るスクリーニング方法が挙げられる。
上記方法において、 (i i i) と (iv) の場合における、 前記遺伝子の発現量 (具体 的には、 本発明のタンパク質量または前記タンパク質をコードする mR N A量) を 測定して、 比較する。
試験化合物および本発明のタンパク質を産生する能力を有する細胞としては、 上 記と同様のものが挙げられる。
タンパク質量の測定は、 公知の方法、 例えば、 本発明のタンパク質を認識する抗 体を用いて、 細胞抽出液中などに存在する前記タンパク質を、 ウエスタン解析、 E L I S A法などの方法またはそれに準じる方法に従い測定することができる。
本発明の遺伝子発現量は、 自体公知の方法、 例えば、 ノーザンブロッテイングや Reverse transcr ipt i on-polymer as e chain reac t i on (RT-PCR) TaqMan po lymerase chain reac t ion等の方法あるいはそれに準じる方法に従って測定することができる。 例えば、 上記(iv)の場合における遺伝子発現量を、 上記(i i i)の場合に比べて、 約 20%以上、好ましくは 30%以上、 より好ましくは約 50%以上阻害するあるいは増強 する試験化合物を本発明のタンパク質の活性を阻害するあるいは増強する化合物 として選択することができる。
本発明のスクリーニング用キットは、 本発明で用いられるタンパク質もしくは部 分ペプチドまたはその塩、 または本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ぺプ チドを産生する能力を有する細胞を含有するものである。
本発明のスクリ一ニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる 化合物またはその塩は、 上記した試験化合物、 例えば、 ペプチド、 タンパク質、 非 ペプチド性化合物、 合成化合物、 発酵生産物、 細胞抽出液、 植物抽出液、 動物組織 抽出液、 血漿などから選ばれた化合物またはその塩であり、 本発明のタンパク質の 活性 (例、 神経細胞分化活性など) あるいは本発明のタンパク質の遺伝子の発現を 調節 (促進または阻害、 好ましくは促進) する化合物またはその塩である。 該化合 物の塩としては、 前記した本発明のタンパク質の塩と同様のものが用いられる。 本発明のタンパク質の活性を調節 (促進または阻害、 好ましくは促進) する化合 物またはその塩、 および本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現を調節 (促 進または阻害、 好ましくは促進) する化合物またはその塩はそれぞれ、 例えば、 神 経系疾患 (例、 アルツハイマー病、 パーキンソン症候群、 脊髄損傷、 てんかん、 精 神分裂病、. うつ病など) などの予防 ·治療剤として有用である。 好ましくは神経変 性疾患の予防 ·治療剤などである。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる
化合物またはその塩を上述の治療 ·予防剤として使用する場合、 常套手段に従って 製剤化することができる。
例えば、 経口投与のための組成物としては、 固体または液体の剤形、 具体的には 錠剤 (糖衣錠、 フィルムコーティング錠を含む)、 丸剤、 顆粒剤、 散剤、 カプセル 剤 (ソフトカプセル剤を含む)、 シロップ剤、 乳剤、 懸濁剤などがあげられる。 か かる組成物は自体公知の方法によって製造され、 製剤分野において通常用いられる 担体、 希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。 例えば、 錠剤用の担体、 賦形 剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。 非経口投与のための組成物としては、 例えば、 注射剤、 坐剤などが用いられ、 注 射剤は静脈注射剤、 皮下注射剤、 皮内注射剤、 筋肉注射剤、 点滴注射剤、 関節内注 射剤などの剤形を包含する。 かかる注射剤は、 自体公知の方法に従って、 例えば、 上記化合物またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に 溶解、 懸濁または乳化することによって調製する。 注射用の水性液としては、 例え ば、 生理食塩水、 ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、 適当な 溶解補助剤、 例えば、 アルコール (例、 エタノール)、 ポリアルコール (例、 プロ ピレンダリコール、 ポリエチレングリコール)、 非イオン界面活性剤 〔例、 ポリソ ルべ一卜 8 0、 H C〇一 5 0 (polyoxyethyl ene ( 5 0 mol) adduct of hydrogenated cas tor oi l) ) などと併用してもよい。 油性液としては、 例えば、 ゴマ油、 大豆油 などが用いられ、 溶解補助剤として安息香酸ベンジル、 ベンジルアルコールなどを 併用してもよい。 調製された注射液は、 通常、 適当なアンプルに充填される。 直腸 投与に用いられる坐剤は、 上記化合物またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合する ことによって調製される。
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、 活性成分の投与量に適合するような 投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。 かかる投薬単位の剤形としては、 錠剤、 丸剤、 カプセル剤、 注射剤 (アンプル)、 坐剤などが例示され、 それぞれの 投薬単位剤形当たり通常 5〜5 0 0 m g、 とりわけ注射剤では 5〜 1 0 0 m g、 そ の他の剤形では 1 0〜2 5 O m gの上記化合物が含有されていることが好ましい。 なお前記した各組成物は、 上記化合物との配合により好ましくない相互作用を生 じない限り他の活性成分を含有してもよい。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、 例えば、 ヒトまたは温 血動物 (例えば、 マウス、 ラット、 ゥサギ、 ヒッジ、 ブ夕、 ゥシ、 ゥマ、 トリ、 ネ コ、 ィヌ、 サル、 チンパンジーなど) に対して経口的にまたは非経口的に投与する ことができる。
該化合物またはその塩の投与量は、 その作用、 対象疾患、 投与対象、 投与ルート などにより差異はあるが、 例えば、 アルツハイマー病の治療の目的で本発明のタン パク質の活性を調節 (好ましくは促進) する化合物またはその塩を経口投与する場 合、 一般的に成人 (体重 60 kgとして) においては、 一日につき該化合物または その塩を約 0.1〜 100mg、 好ましくは約 1. 0〜50mg、 より好ましくは 約 1. 0〜2 Omg投与する。 非経口的に投与する場合は、 該化合物またはその塩 の 1回投与量は投与対象、 対象疾患などによっても異なるが、 例えば、 ァルツハイ マー病の治療の目的で本発明のタンパク質の活性を調節 (好ましくは促進) する化 合物またはその塩を注射剤の形で通常成人(体重 60 k gとして)に投与する場合、 一日につき該化合物またはその塩を約 0. 01〜30mg程度、 好ましくは約 0. 1〜2 Omg程度、 より好ましくは約 0. 1〜1 Omg程度をアルツハイマー病変 部に注射により投与するのが好都合である。 他の動物の場合も、 体重 6 O kg当た りに換算した量を投与することができる。
(2 a) 本発明のタンパク質、 その部分ペプチドまたはその塩の定量
本発明のタンパク質に対する抗体 (以下、 本発明の抗体と略記する場合がある) は、 本発明のタンパク質を特異的に認識することができるので、 被検液中の本発明 のタンパク質の定量、 特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに使用すること ができる。
すなわち、 本発明は、
( i ) 本発明の抗体と、 被検液および標識化された本発明のタンパク質とを競合的 に反応させ、 該抗体に結合した標識化された本発明のタンパク質の割合を測定する ことを特徴とする被検液中の本発明のタンパク質の定量法、 および
(ii) 被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の別の 抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、 不溶化担体上の標識剤の活性を測 定することを特徴とする被検液中の本発明のタンパク質の定量法を提供する。
上記 (i i) の定量法においては、 一方の抗体が本発明のタンパク質の N端部を認 識する抗体で、 他方の抗体が本発明のタンパク質の C末端部に反応する抗体である ことが望ましい。
また、 本発明のタンパク質に対するモノクローナル抗体 (以下、 本発明のモノク ローナル抗体と称する場合がある) を用いて本発明のタンパク質の定量を行なえる ほか、 組織染色等による検出を行なうこともできる。 これらの目的には、 抗体分子 そのものを用いてもよく、 また、 抗体分子の F ( a b ' ) 2 、 F a b '、 あるいは F a b画分を用いてもよい。
本発明の抗体を用いる本発明のタンパク質の定量法は、 特に制限されるべきもの ではなく、 被測定液中の抗原量 (例えば、 タンパク質量) に対応した抗体、 抗原も しくは抗体—抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、 これを既知 量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、 い ずれの測定法を用いてもよい。 例えば、 ネフロメトリ一、 競合法、 ィムノメトリツ ク法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、 感度、 特異性の点で、 後述する サンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、 例えば放射性同位元素、 酵素、 蛍光物質、 発光物質などが用いられる。 放射性同位元素としては、 例えば、 〔1 2 5 I〕、 〔1 3 1 I〕、 〔3 H〕、 〔1 4 C〕 などが用いられる。 上記酵素としては、 安定 で比活性の大きなものが好ましく、 例えば、 /3—ガラク卜シダーゼ、 β -ダルコシ ダ一ゼ、 アルカリフォスファタ一ゼ、 パ一ォキシダーゼ、 リンゴ酸脱水素酵素など が用いられる。 蛍光物質としては、 例えば、 フルォレスカミン、 フルォレツセンィ ソチオシァネートなどが用いられる。 発光物質としては、 例えば、 ルミノール、 ル ミノール誘導体、 リレシフェリン、 ルシゲニンなどが用いられる。 さらに、 抗体ある いは抗原と標識剤との結合にピオチン一アビジン系を用レ^ることもできる。
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、 物理吸着を用いてもよく、 また通常タン パク質あるいは酵素等を不溶化、 固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法 でもよい。 担体としては、 ァガ口一ス、 デキストラン、 セルロースなどの不溶性多 糖類、 ポリスチレン、 ポリアクリルアミド、 シリコン等の合成樹脂、 あるいはガラ ス等が挙げられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を 反応させ (1次反応)、 さらに標識化した別の本発明のモノクローナル抗体を反応 させ (2次反応) たのち、 不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検 液中の本発明のタンパク質量を定量することができる。 1次反応と 2次反応は逆の 順序に行っても、 また、 同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。 標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。 また、 サンド イッチ法による免疫測定法において、 固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる 抗体は必ずしも 1種類である必要はなく、 測定感度を向上させる等の目的で 2種類 以上の抗体の混合物を用いてもよい。
本発明のサンドイッチ法による本発明のタンパク質の測定法においては、 1次反 応と 2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、 本発明の夕ンパク質の 結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。 すなわち、 1次反応および 2 次反応に用いられる抗体は、 例えば、 2次反応で用いられる抗体が、 本発明のタン パク質の C端部を認識する場合、 1次反応で用いられる抗体は、 好ましくは C端部 以外、 例えば N端部を認識する抗体が用いられる。
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、 例えば、 競 合法、 ィムノメトリック法あるいはネフロメトリ一などに用いることができる。 競合法では、 被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたの ち、 未反応の標識抗原(F) と、 抗体と結合した標識抗原 (B ) とを分離し (B Z F分離)、 B, Fいずれかの標識量を測定し、 被検液中の抗原量を定量する。 本反 応法には、 抗体として可溶性抗体を用い、 B ZF分離をポリエチレングリコール、 前記抗体に対する第 2抗体などを用いる液相法、 および、 第 1抗体として固相化抗 体を用いるか、 あるいは、 第 1抗体は可溶性のものを用い第 2抗体として固相化抗 体を用いる固相化法とが用いられる。
ィムノメトリック法では、 被検液中の抗原と固相化钪原とを一定量の標識化抗体 に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、 あるいは、 被検波中の抗原と 過剰量の標識化抗体とを反応させ、 次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固 相に結合させたのち、 固相と液相を分離する。 次に、 いずれかの相の標識量を測定 し被検液中の抗原量を定量する。
また、 ネフロメトリ一では、 ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた 不溶性の沈降物の量を測定する。 被検波中の抗原量が僅かであり、 少量の沈降物し か得られない場合にもレーザ一の散乱を利用するレーザーネフロメトリ一などが 好適に用いられる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、 特別 の条件、 操作等の設定は必要とされない。 それぞれの方法における通常の条件、 操 作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明のタンパク質の測定系を構築す ればよい。 これらの一般的な技術手段の詳細については、 総説、 成書などを参照す ることができる。
例えば、 入江 寛編 「ラジオィムノアツセィ」 (講談社、 昭和 4 9年発行)、 入江 寛編 「続ラジオィムノアツセィ」 (講談社、 昭和 5 4年発行)、 石川栄治ら編 「酵素 免疫測定法」 (医学書院、 昭和 5 3年発行)、 石川栄治ら編 「酵素免疫測定法」 (第 2版) (医学書院、 昭和 5 7年発行)、 石川栄治ら編 「酵素免疫測定法」 (第 3版) ( 医学書院、 昭和 6 2年発行)、 rMethods in ENZYMOLOGYJ Vol . 70 (Immunochemi cal Techniques (Part A) )、 同書 Vol . 73 (Immunochemical Techniques (Par t B))、 同 書 Vo l . 74 (Immunochemical Techniques (Par t C) )、 同書 Vol . 84 (Immunochemical Techniques (Part D: Selected Immunoassays) ) ^ 同書 Vol . 92 (Immunochemical Techniques (Part E : Monoc lonal Ant ibodies and General Immunoassay Methods) )、 同書 Vo l . 121 (Immunochemical Techniques (Par t I: Hybr idoma Technology and Monoc lonal Ant ibodi es) ) (以上、 アカデミックプレス社発行)などを参照すること ができる。
以上のようにして、 本発明の抗体を用いることによって、 本発明のタンパク質を 感度良く定量することができる。
さらには、 本発明の抗体を用いて本発明の夕ンパク質の濃度を定量することによ つて、 本発明のタンパク質の濃度の増加または減少が検出された場合、 例えば神経 系疾患などである、 または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。 また、 本発明の抗体は、 体液や組織などの被検体中に存在する本発明のタンパク 質を検出するために使用することができる。 又、 本発明のタンパク質を精製するた めに使用する抗体カラムの作製、 精製時の各分画中の本発明のタンパク質の検出、
被検細胞内における本発明のタンパク質の挙動の分析などのために使用すること ができる。
( 3 ) 遺伝子診断薬
本発明の DNAは、 例えば、 プローブとして使用することにより、 ヒトまたは温血 動物(例えば、 ラット、 マウス、 モルモット、 ゥサギ、 トリ、 ヒッジ、 ブ夕、 ゥシ、 ゥマ、 ィヌ、 ネコ、 サル、 チンパンジーなど) における本発明のタンパク質または 部分ペプチドをコードする DNAまたは mRNAの異常 (遺伝子異常) を検出すること ができるので、例えば、該 DNAまたは mRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、 該 DNAまたは mRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断薬として有用である。 本発明の DNAを用いる上記遺伝子診断は、 例えば、 自体公知のノーザンハイプリ ダイゼ一シヨンや: PCR-SSCP法 (ゲノミックス (Genomics) ,第 5巻, 874〜879頁、 1989年、 プロシ一ジングズ ·ォブ ·ザ ·ナショナル ·アカデミー ·ォブ ·サイェン シズ ·ォブ ·ユーエスェ一 (Proceedings of the Nat i onal Academy of Sc i ences of the Uni ted S tates of Amer ica) ,第 86巻, 2766〜2770頁、 1989年) などにより実 施することができる。
例えば、 ノーザンハイブリダィゼーションにより発現過多または減少が検出され た場合や PCR- SSCP法により DNAの突然変異が検出された場合は、 例えば、 神経系 疾患などである可能性が高いと診断することができる。
( 4 ) アンチセンスポリヌクレオチドを含有する医薬
本発明の DNAに相補的に結合し、 該 DNAの発現を調節することができるアンチ センスポリヌクレオチドは低毒性であり、 生体内における本発明のタンパク質また は本発明の DNAの機能を調節 (好ましくは抑制) することができるので、 例えば、 神経細胞分化抑制剤 (例、 神経芽細胞腫 (neurobl as toma) の予防 ·治療剤など) として使用することができる。
上記アンチセンスポリヌクレオチドを上記の剤として使用する場合、 自体公知の 方法にしたがつて製剤化し、 投与することができる。
例えば、 該アンチセンスポリヌクレオチドを用いる場合、 該アンチセンスポリヌク レオチドを単独あるいはレトロウイルスベクタ一、 アデノウイルスベクター、 アデ ドウィルスベクタ一などの適当なベクターに挿入した
後、 常套手段にしたがって、 ヒトまたは哺乳動物 (例えば、 ラット、 ゥサギ、 ヒッ ジ、 ブ夕、 ゥシ、 ネコ、 ィヌ、 サルなど) に対して経口的または非経口的に投与す ることができる。 該アンチセンスポリヌクレオチドはそのままで、 あるいは摂取促 進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、 遺伝子銃や ハイド口ゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。 あるいは、 エア ロゾル化して吸入剤として気管内に局所投与することもできる。
さらに、体内動態の改良、半減期の長期化、細胞内取り込み効率の改善を目的に、 前記のアンチセンスポリヌクレオチドを単独またはリポゾ一ムなどの担体ととも に製剤 (注射剤) 化し、 静脈、 皮下、 関節腔内、 アルツハイマー病変部等に投与し てもよい。
さらに、 該アンチセンスポリヌクレオチドは、 組織や細胞における本発明の D N Aの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとし て使用することもできる。
上記アンチセンスポリヌクレオチドと同様に、 本発明のタンパク質をコードする R N Aの一部を含有する二重鎖 R NA、 本発明のタンパク質をコードする R N Aの 一部を含有するリポザィム、 本発明のタンパク質が結合する D N A配列に対するデ コィオリゴヌクレオチドなども、 本発明の遺伝子の発現を抑制することができ、 生 体内における本発明で用いられるタンパク質または本発明で用いられる D N Aの 機能を抑制することができるので、 例えば、 神経細胞分化抑制剤 (例、 神経芽細胞 腫 (neurobl as toma) の予防 ·治療剤など) などとして使用することができる。 二重鎖 R N Aは、 公知の方法 (例、 Nature, 411巻, 494頁, 2001年) に準じて、 本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。
リポザィムは、 公知の方法 (例、 TRENDS in Molecul ar Medic ine, 7巻, 221頁, 2001年) に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造すること ができる。 例えば、 本発明のタンパク質をコードする R N Aの一部に公知のリポザ ィムを連結することによって製造することができる。 本発明のタンパク質をコード する R N Aの一部としては、 公知のリポザィムによって切断され得る本発明の R N A上の切断部位に近接した部分 (R NA断片) が挙げられる。
デコイオリゴヌクレオチドは、 公知の方法 (例、 The Journal of Cl inical
Inves t igat i on, 106巻, 1071頁, 2000年) に準じて、 本発明のタンパク質が結合 する D N Aの配列を基に設計して製造することができる。 具体的には、 該デコイォ リゴヌクレオチドとしては、 本発明のタンパク質が結合する D N Aの配列とハイス トリンジェン卜な条件下でハイブリダィズする塩基配列を有し、 本発明のタンパク 質が結合し得るものであれば何れのものでもよい。 本発明のタンパク質が結合する D NAの配列とハイブリダィズできる塩基配列としては、 例えば、 本発明のタンパ ク質が結合する D N Aの配列と約 7 0 %以上、 好ましくは約 8 0 %以上、 より好ま しくは約 9 0 %以上、 最も好ましくは約 9 5 %以上の相同性を有する塩基配列など が用いられる。
上記の二重鎖 R NA、 リボザィムまたはデコイオリゴヌクレオチドを上記剤とし て使用する場合、 アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、 投与する ことができる。
( 5 ) 本発明の抗体を含有する医薬
本発明のタンパク質の活性を中和する作用を有する本発明の抗体は、 例えば神経 系疾患 (例、 アルツハイマー病、 パーキンソン症候群、 脊髄損傷、 てんかん、 精神 分裂病、 うつ病など) などの予防 ·治療剤などの診断薬として使用することができ る。 また、 神経細胞分化抑制剤 (例、 神経芽細胞腫 (neurobl as toma) の予防 ·治 療剤など) などとして使用してもよい。
本発明の抗体を含有する上記剤は低毒性であり、 そのまま液剤として、 または適 当な剤型の医薬組成物として、 ヒトまたは哺乳動物(例、 ラット、 ゥサギ、 ヒッジ、 ブタ、 ゥシ、 ネコ、 ィヌ、 サルなど) に対して経口的または非経口的 (例、 関節内 投与) に投与することができる。
本発明の抗体は、 それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。 上記投与に用いられる医薬組成物は、 上記抗体またはその塩と薬理学的に許容され 得る担体、 希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。 かかる組成物は、 経口また は非経口投与 (例、 関節内投与) に適する剤形として提供される。 好ましくは吸入 剤として提供される。
なお前記した各組成物は、 上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じ ない限り他の活性成分を含有してもよい。
(6) DNA転移動物
本発明は、 外来性の本発明のタンパク質をコードする DNA (以下、 本発明の外 来性 DN Aと略記する) またはその変異 DN A (本発明の外来性変異 DNAと略記 する場合がある) を有する非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、 本発明は、
(1) 本発明の外来性 DNAまたはその変異 DNAを有する非ヒト哺乳動物、
(2) 非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第 (1)記載の動物、
(3) ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第 (2) 記載の動物、 および
(4) 本発明の外来性 DNAまたはその変異 DNAを含有し、 哺乳動物において発 現しうる組換えベクターを提供するものである。
本発明の外来性 DNAまたはその変異 DNAを有する非ヒト哺乳動物 (以下、 本 発明の DNA転移動物と略記する) は、 未受精卵、 受精卵、 精子およびその始原細 胞を含む胚芽細胞などに対して、 好ましくは、 非ヒト哺乳動物の発生における胚発 生の段階 (さらに好ましくは、 単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に 8細胞 期以前) に、 リン酸カルシウム法、 電気パルス法、 リポフエクシヨン法、 凝集法、 マイクロインジェクション法、 パーティクルガン法、 DE AE—デキストラン法な どにより目的とする DNAを転移することによって作出することができる。 また、 該 DNA転移方法により、 体細胞、 生体の臓器、 組織細胞などに目的とする本発明 の外来性 DN Aを転移し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、 これら細胞を上述の胚芽細胞と自体公知の細胞融合法により融合させることによ り本発明の DN A転移動物を作出することもできる。
非ヒト哺乳動物としては、 例えば、 ゥシ、 ブタ、 ヒッジ、 ャギ、 ゥサギ、 ィヌ、 ネコ、 モルモット、 ハムスター、 マウス、 ラットなどが用いられる。 なかでも、 病 体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、 また、 繁殖が容易なゲッ歯動物、 とりわけマウス (例えば、 純系として、 C57BLZ6 系統, DBA 2系統など、 交雑系として、 BecSFi系統, BDFi系統, B6D 系統, BALBZc系統, I CR系統など) またはラット (例えば、 W i s t a r, SDなど) などが好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えべクタ一における 「哺乳動物」 としては、 上
記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。
本発明の外来性 DNAとは、 非ヒト哺乳動物が本来有している本発明の DNAで はなく、 いったん哺乳動物から単離 ·抽出された本発明の DNAをいう。
本発明の変異 DN Aとしては、 元の本発明の DN Aの塩基配列に変異 (例えば、 突然変異など) が生じたもの、 具体的には、 塩基の付加、 欠損、 他の塩基への置換 などが生じた DNAなどが用いられ、 また、 異常 DNAも含まれる。
該異常 DN Aとしては、 異常な本発明のタンパク質を発現させる DN Aを意味し、 例えば、 正常な本発明のタンパク質の機能を抑制するタンパク質を発現させる DN Aなどが用いられる。
本発明の外来性 DNAは、 対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動 物由来のものであってもよい。 本発明の DN Aを対象動物に転移させるにあたって は、 該 DNAを動物細胞で発現させうるプロモータ一の下流に結合した DNAコン ストラクトとして用いるのが一般に有利である。 例えば、 本発明のヒト DNAを転 移させる場合、これと相同性が高い本発明の DNAを有する各種哺乳動物(例えば、 ゥサギ、 ィヌ、 ネコ、 モルモット、 ハムスター、 ラット、 マウスなど) 由来の DN Aを発現させうる各種プロモータ一の下流に、 本発明のヒト DNAを結合した DN Aコンストラクト (例、 ベクタ一など) を対象哺乳動物の受精卵、 例えば、 マウス 受精卵へマイクロインジェクシヨンすることによって本発明の DNAを高発現す る DN A転移哺乳動物を作出することができる。
本発明のタンパク質の発現べクタ一としては、 大腸菌由来のプラスミド、 枯草菌 由来のプラスミド、 酵母由来のプラスミド、 λファージ等のパクテリオファージ、 モロニ一白血病ウィルス等のレトロウイルス、 ワクシニアウィルスまたはバキュ口 ウィルスなどの動物ウィルス等が用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、 枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミド等が好ましく用いられる。 上記の D Ν Α発現調節を行なうプロモータ一としては、例えば、①ウィルス(例、 シミアンウィルス、 サイトメガロウィルス、 モロニ一白血病ウィルス、 J Cウィル ス、 乳がんウィルス、 ポリオウイルスなど) に由来する DNAのプロモータ一、 ② 各種哺乳動物 (ヒト、 ゥサギ、 ィヌ、 ネコ、 モルモット、 ハムスター、 ラット、 マ ウスなど) 由来のプロモータ一、 例えば、 アルブミン、 インスリン I I、 ゥロブラ
キン I I、 エラス夕ーゼ、 エリスロポエチン、 エンドセリン、 筋クレアチンキナ一 ゼ、 グリア線維性酸性タンパク質、 ダルタチオン S—トランスフェラーゼ、 血小板 由来成長因子 ]3、 ケラチン Kl, Κ 10および Κ 14、 コラーゲン I型および I I 型、 サイクリック AMP依存タンパク質キナーゼ /3 Iサブユニット、 ジストロフィ ン、 酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、 心房ナトリウム利尿性因子、 内皮レ セプ夕一チロシンキナ一ゼ (一般に T i e 2と略される)、 ナトリウムカリウムァ デノシン 3リン酸化酵素(Na, K-ATP a s e)、ニューロフィラメント軽鎖、 メタ口チォネイン Iおよび I I A、 メタ口プロティナーゼ 1組織インヒビ夕一、 M HCクラス I抗原(H— 2 L)、 H— r a s、 レニン、 ド一パミン 3 _水酸化酵素、 甲状腺ペルォキシダ一ゼ (TP〇)、 ペプチド鎖延長因子 1ひ (EF— 1 α)、 βァ クチン、 ひおよび ]3ミオシン重鎖、 ミオシン軽鎖 1および 2、 ミエリン基礎タンパ ク質、 チログロブリン、 Thy— 1、 免疫グロブリン、 H鎖可変部 (VNP)、 血 清アミロイド Pコンポーネント、ミオグロビン、 トロポニン C、平滑筋 αァクチン、 プレプロエンケファリノ、 バソプレシンなどのプロモータ一などが用いられる。 なかでも、 全身で高発現することが可能なサイトメガロウィルスプロモー夕一、 ヒ トペプチド鎖延長因子 1 a (EF- 1 α) のプロモーター、 ヒトおよびニヮトリ ]3 ァクチンプロモーターなどが好適である。
上記べクタ一は、 DNA転移哺乳動物において目的とするメッセンジャー RNA の転写を終結する配列 (一般にターミネータ一と呼ばれる) を有していることが好 ましく、 例えばウィルス由来および各種哺乳動物由来の各 DNAの配列を用いるこ とができ 好ましくはシミアンウィルスの SV40ターミネ一夕一等が用いられる。 その他、 目的とする外来性 DNAをさらに高発現させる目的で各 DNAのスプラ イシングシグナル、 ェンハンサ一領域、 真核 DNAのイントロンの一部などをプロ モーター領域の 5' 上流、 プロモー夕一領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の 3' 下流 に連結することも目的により可能である。
正常な本発明のタンパク質の翻訳領域は、 ヒトまたは各種哺乳動物 (例えば、 ゥ サギ、 ィヌ、 ネコ、 モルモット、 ハムスター、 ラット、 マウスなど) 由来の肝臓、 腎臓、 甲状腺細胞、 線維芽細胞由来 DNAおよび市販の各種ゲノム DNAライブラ リーよりゲノム DNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎臓、甲状腺細胞、
線維芽細胞由来 RN Aより公知の方法により調製された相補 DNAを原料として 取得することが出来る。 また、 外来性の異常 DN Aは、 上記の細胞または組織より 得られた正常なタンパク質の翻訳領域を点突然変異誘発法により変異した翻訳領 域を作製することができる。
該翻訳領域は転移動物において発現しうる DNAコンストラクトとして、 前記の プロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常の D N A工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における本発明の外来性 DN Aの転移は、 対象哺乳動物の胚芽細 胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。 DNA転移後の作出動物の 胚芽細胞において、 本発明の外来性 DNAが存在することは、 作出動物の後代がす ベて、 その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性 DN Aを保持すること を意味する。 本発明の外来性 DN Aを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細 胞および体細胞のすべてに本発明の外来性 DN Aを有する。
本発明の外来性正常 DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、 交配により外来性 D NAを安定に保持することを確認して、 該 DN A保有動物として通常の飼育環境で 継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における本発明の外来性 DN Aの転移は、 対象哺乳動物の胚芽細 胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。 DNA転移後の作出動 物の胚芽細胞において本発明の外来性 DN Aが過剰に存在することは、 作出動物の 子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性 DN Aを過剰に有 することを意味する。 本発明の外来性 DN Aを受け継いだこの種の動物の子孫はそ の胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性 DN Aを過剰に有する。
導入 DN Aを相同染色体の両方に持つホモザィゴート動物を取得し、 この雌雄の 動物を交配することによりすべての子孫が該 D N Aを過剰に有するように繁殖継 代することができる。
本発明の正常 DNAを有する非ヒト哺乳動物は、 本発明の正常 DNAが高発現さ せられており、 内在性の正常 D N Aの機能を促進することにより最終的に本発明の タンパク質の機能亢進症を発症することがあり、 その病態モデル動物として利用す ることができる。 例えば、 本発明の正常 DNA転移動物を用いて、 本発明のタンパ
ク質の機能亢進症や、 本発明のタンパク質が関連する疾患の病態機序の解明および これらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。
一方、 本発明の外来性異常 DNAを有する非ヒト哺乳動物は、 交配により外来性 DNAを安定に保持することを確認して該 D N A保有動物として通常の飼育環境 で継代飼育することが出来る。 さらに、 目的とする外来 DNAを前述のプラスミド に組み込んで原料として用いることができる。 プロモーターとの DN Aコンストラ ク卜は、 通常の DNA工学的手法によって作製することができる。 受精卵細胞段階 における本発明の異常 DN Aの転移は、 対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全 てに存在するように確保される。 DN A転移後の作出動物の胚芽細胞において本発 明の異常 DNAが存在することは、 作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細 胞の全てに本発明の異常 DNAを有することを意味する。 本発明の外来性 DNAを 受け継いだこの種の動物の子孫は、 その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異 常 DNAを有する。 導入 DNAを相同染色体の両方に持つホモザィゴート動物を取 得し、 この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該 DNAを有するよう に繁殖継代することができる。
本発明の異常 DNAを有する非ヒト哺乳動物は、 本発明の異常 DN Aが高発現さ せられており、 内在性の正常 DN Aの機能を阻害することにより最終的に本発明の 夕ンパク質の機能不活性型不応症となることがあり、 その病態モデル動物として利 用することができる。 例えば、 本発明の異常 DNA転移動物を用いて、 本発明の夕 ンパク質の機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検 討を行なうことが可能である。
また、 具体的な利用可能性としては、 本発明の異常 DN A高発現動物は、 本発明 のタンパク質の機能不活性型不応症における本発明の異常タンパク質による正常 タンパク質の機能阻害 (dominant negative作用) を解明するモデルとなる。
また、 本発明の外来異常 DNAを転移させた哺乳動物は、 遊離した本発明のタン パク質の減少症状を有することから、 本発明のタンパク質または機能不活性型不応 症に対する予防 ·治療剤、 例えば神経系疾患 (例、 アルツハイマー病、 パーキンソ ン症候群、 脊髄損傷、 てんかん、 精神分裂病、 うつ病など) などの予防 ·治療剤の スクリーニング試験にも利用可能である。 好ましくは神経変性疾患の予防 ·治療剤
のスクリーニング試験である。
又、上記 2種類の本発明の D N A転移動物のその他の利用可能性として、例えば、
①組織培養のための細胞源としての使用、
②本発明の D NA転移動物の組織中の D N Aもしくは R N Aを直接分析するか、 ま たは D N Aにより発現されたペプチド組織を分析することによる、 本発明のタンパ ク質により特異的に発現あるいは活性化するペプチドとの関連性についての解析、
③ D N Aを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、 これらを使用して、 一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、
④上記③記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬剤のスクリ 一二ング、 および
⑤本発明の変異タンパク質を単離精製およびその抗体作製などが考えられる。
さらに、 本発明の D NA転移動物を用いて、 本発明のタンパク質の機能不活性型 不応症などを含む、 本発明の夕ンパク質に関連する疾患の臨床症状を調べることが でき、 また、 本発明のタンパク質に関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細 な病理学的所見が得られ、 新しい治療方法の開発、 さらには、 該疾患による二次的 疾患の研究および治療に貢献することができる。
また、 本発明の D NA転移動物から各臓器を取り出し、 細切後、 トリプシンなど のタンパク質分解酵素により、 遊離した D NA転移細胞の取得、 その培養またはそ の培養細胞の系統化を行なうことが可能である。 さらに、 本発明のタンパク質産生 細胞の特定化、 アポト一シス、 分化あるいは増殖との関連性、 またはそれらにおけ るシグナル伝達機構を調べ、 それらの異常を調べることなどができ、 本発明のタン パク質およびその作用解明のための有効な研究材料となる。
さらに、 本発明の D NA転移動物を用いて、 本発明のタンパク質の機能不活性型 不応症を含む、 本発明のタンパク質に関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、 上述の検査法および定量法などを用いて、 有効で迅速な該疾患治療薬のスクリー二 ング法を提供することが可能となる。 また、 本発明の D N A転移動物または本発明 の外来性 D N A発現ベクターを用いて、 本発明のタンパク質が関連する疾患の D N A治療法を検討、 開発することが可能である。
( 7 ) ノックアウト動物
本発明は、 本発明の DNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発 明の DN A発現不全非ヒ卜哺乳動物を提供する。
すなわち、 本発明は、
( 1 ) 本発明の DNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
(2) 該 DNAがレポーター遺伝子 (例、 大腸菌由来の 3—ガラクトシダーゼ遺伝 子) を導入することにより不活性化された第 (1) 項記載の胚幹細胞、
(3) ネオマイシン耐性である第 (1) 項記載の胚幹細胞、
(4) 非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第 (1) 項記載の胚幹細胞、
(5) ゲッ歯動物がマウスである第 (4) 項記載の胚幹細胞、
(6) 本発明の DNAが不活性化された該 DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
(7) 該 DN Aがレポ一タ一遺伝子 (例、 大腸菌由来の /3—ガラクトシダーゼ遺伝 子) を導入することにより不活性化され、 該レポーター遺伝子が本発明の DNAに 対するプロモーターの制御下で発現しうる第 (6) 項記載の非ヒト哺乳動物、
(8) 非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第 (6) 項記載の非ヒト哺乳動物、 (9) ゲッ歯動物がマウスである第 (8) 項記載の非ヒト哺乳動物、 および
(10) 第 (7) 項記載の動物に、 試験化合物を投与し、 レポーター遺伝子の発現 を検出することを特徴とする本発明の DN Aに対するプロモーター活性を促進ま たは阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明の DNAが不活性化された非ヒ卜哺乳動物胚幹細胞とは、 該非ヒト哺乳動 物が有する本発明の DN Aに人為的に変異を加えることにより、 DN Aの発現能を 抑制するか、 もしくは該 D N Aがコードしている本発明のタンパク質の活性を実質 的に喪失させることにより、 D N Aが実質的に本発明の夕ンパク質の発現能を有さ ない (以下、 本発明のノックアウト DNAと称することがある) 非ヒト哺乳動物の 胚幹細胞 (以下、 ES細胞と略記する) をいう。
非ヒト哺乳動物としては、 前記と同様のものが用いられる。
本発明の DNAに人為的に変異を加える方法としては、 例えば、 遺伝子工学的手 法により該 D N A配列の一部又は全部の削除、 他 D N Aを挿入または置換させるこ とによって行なうことができる。 これらの変異により、 例えば、 コドンの読み取り 枠をずらしたり、 プロモー夕一あるいはェキソンの機能を破壊することにより本発
明のノックアウト DN Aを作製すればよい。
本発明の DNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞 (以下、 本発明の DN A不活性化 E S細胞または本発明のノックアウト E S細胞と略記する) の具体例と しては、 例えば、 目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明の DNAを単離し、 そ のェキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、 ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表と する薬剤耐性遺伝子、 あるいは 1 a c Z (jS—ガラクトシダーゼ遺伝子)、 c a t (クロラムフエニコ一ルァセチルトランスフェラ一ゼ遺伝子) を代表とするレポ一 夕一遺伝子等を挿入することによりェキソンの機能を破壊するか、 あるいはェキソ ン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させる DNA配列 (例えば、 p o l y A付加シグナルなど) を挿入し、 完全なメッセンジャー RNAを合成できなくする ことによって、 結果的に遺伝子を破壊するように構築した DNA配列を有する DN A鎖 (以下、 夕一ゲッティングベクタ一と略記する) を、 例えば相同組換え法によ り該動物の染色体に導入し、 得られた E S細胞について本発明の DNA上あるいは その近傍の DNA配列をプローブとしたサザンハィブリダイゼ一ション解析ある いはターゲッティングベクター上の DN A配列と夕一ゲッティングベクタ一作製 に使用した本発明の DN A以外の近傍領域の DN A配列をプライマーとした P C R法により解析し、 本発明のノックアウト E S細胞を選別することにより得ること ができる。
また、 相同組換え法等により本発明の DN Aを不活化させる元の ES細胞として は、 例えば、 前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、 また公知 Evansと Kaufmaの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、 マウスの ES細胞の 場合、 現在、 一般的には 129系の ES細胞が使用されているが、 免疫学的背景が はっきりしていないので、 これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかな E S細胞を取得するなどの目的で例えば、 C 57 BL/6マウスや C 57 BLZ6の 採卵数の少なさを DBAZ2との交雑により改善した BDF マウス (C 57 BL /6と DBAZ2との F を用いて樹立したものなども良好に用いうる。 BDFi マウスは、 採卵数が多く、 かつ、 卵が丈夫であるという利点に加えて、 C 57BL / 6マウスを背景に持つので、 これを用いて得られた ES細胞は病態モデルマウス を作出したとき、 C 57 BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景
を C 57 BL/ 6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、 ES細胞を樹立する場合、 一般には受精後 3.5日目の胚盤胞を使用する が、 これ以外に 8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく 多数の初期胚を取得することができる。
また、 雌雄いずれの ES細胞を用いてもよいが、 通常雄の ES細胞の方が生殖系 列キメラを作出するのに都合が良い。 また、 煩雑な培養の手間を削減するためにも できるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
ES細胞の雌雄の判定方法としては、 例えば、 PCR法により Y染色体上の性決 定領域の遺伝子を増幅、 検出する方法が、 その 1例としてあげることができる。 こ の方法を使用すれば、 従来、 核型分析をするのに約 106個の細胞数を要していた のに対して、 1コロニー程度の ES細胞数 (約 50個) で済むので、 培養初期にお ける E S細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、 早期 に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
また、 第二次セレクションとしては、 例えば、 G—バンデイング法による染色体 数の確認等により行うことができる。得られる ES細胞の染色体数は正常数の 10 0%が望ましいが、 樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、 ES細胞の遺 伝子をノックアウトした後、 正常細胞 (例えば、 マウスでは染色体数が 2 n = 40 である細胞) に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、 通常その増殖性は大変良いが、 個体発生 できる能力を失いやすいので、 注意深く継代培養することが必要である。 例えば、 S TO繊維芽細胞のような適当なフィ一ダ一細胞上で L I F (1〜 1 0 0 00 U/ml) 存在下に炭酸ガス培養器内 (好ましくは、 5%炭酸ガス、 95%空気または 5%酸素、 5%炭酸ガス、 90%空気)で約 37 で培養するなどの方法で培養し、 継代時には、 例えば、 トリプシン/ EDTA溶液 (通常 0.001〜0.5%トリプ シン Z0.1〜5mM EDTA, 好ましくは約 0.1 %卜リプシン/ ImM EDT A) 処理により単細胞化し、 新たに用意したフィーダ一細胞上に播種する方法など がとられる。 このような継代は、 通常 1〜3日毎に行なうが、 この際に細胞の観察 を行い、 形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが 望まれる。
ES細胞は、 適当な条件により、 高密度に至るまで単層培養するか、 または細胞 集塊を形成するまで浮遊培養することにより、 頭頂筋、 内臓筋、 心筋などの種々の タイプの細胞に分化させることが可能であり 〔M. J. Evans及び M. H. Kaufman, ネ ィチヤ一 (Nature) 第 292巻、 154頁、 1981年; G. R. Martin プロシ一デイング ス ·ォブ ·ナショナル ·アカデミー'ォブ'サイエンス ·ュ一エスエー (Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.) 第 78巻、 7634頁、 1981年; Τ· C. Doetschman ら、 ジャーナ ル ·ォブ ·ェンブリオロジ一 ·アンド 'ェクスペリメンタル ·モルフォロジ一、 第 87巻、 27頁、 1985年〕、 本発明の E S細胞を分化させて得られる本発明の DNA発 現不全細胞は、 インビトロにおける本発明のタンパク質の細胞生物学的検討におい て有用である。
本発明の DNA発現不全非ヒト哺乳動物は、 該動物の mRNA量を公知方法を用 いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、 正常動物と区別すること が可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、 前記と同様のものが用いられる。
本発明の DNA発現不全非ヒト哺乳動物は、 例えば、 前述のようにして作製した 夕一ゲッティングベクタ一をマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、 導入に よりターゲッティングベクタ一の本発明の D N Aが不活性化された D N A配列が 遺伝子相同組換えにより、 マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明 の DNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、 本発明の DNAをノックァ ゥトさせることができる。
本発明の DN Aがノックアウトされた細胞は、 本発明の DN A上またはその近傍 の D N A配列をプローブとしたサザンハイブリダィゼ一ション解析または夕ーゲ ッティングベクタ一上の DNA配列と、 ターゲッティングベクタ一に使用したマウ ス由来の本発明の D N A以外の近傍領域の D N A配列とをプライマーとした P C R法による解析で判定することができる。 非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、 遺伝子相同組換えにより、 本発明の D N Aが不活性化された細胞株をクローニング し、 その細胞を適当な時期、 例えば、 8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に 注入し、 作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。 作 出された動物は正常な本発明の DN A座をもつ細胞と人為的に変異した本発明の
D N A座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。
該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明の D N A座をもつ場合、 このよ うなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、 全ての組織 が人為的に変異を加えた本発明の D N A座をもつ細胞で構成された個体を、 例えば、 コートカラーの判定等により選別することにより得られる。 このようにして得られ た個体は、 通常、 本発明のタンパク質のヘテロ発現不全個体であり、 本発明のタン パク質のへテロ発現不全個体同志を交配し、 それらの産仔から本発明のタンパク質 のホモ発現不全個体を得ることができる。
卵細胞を使用する場合は、 例えば、 卵細胞核内にマイクロインジェクション法で D N A溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入し たトランスジエニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、 これらのトランスジェニ ック非ヒト哺乳動物に比べて、 遺伝子相同組換えにより本発明の D NA座に変異の あるものを選択することにより得られる。
このようにして本発明の D NAがノックアウトされている個体は、 交配により得 られた動物個体も該 D N Aがノックアウトされていることを確認して通常の飼育 環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、 生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。 すなわち、 該 不活化 D N Aの保有する雌雄の動物を交配することにより、 該不活化 D N Aを相同 染色体の両方に持つホモザィゴート動物を取得しうる。 得られたホモザィゴート動 物は、 母親動物に対して、 正常個体 1, ホモザィゴ一ト複数になるような状態で飼 育することにより効率的に得ることができる。 ヘテロザィゴート動物の雌雄を交配 することにより、 該不活化 D N Aを有するホモザィゴートおよびへテロザィゴート 動物を繁殖継代する。
本発明の D NAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、 本発明の D NA発 現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、 非常に有用である。
また、 本発明の D N A発現不全非ヒト哺乳動物は、 本発明のタンパク質により誘 導され得る種々の生物活性を欠失するため、 本発明のタンパク質の生物活性の不活 性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、 これらの疾病の原因究明及び治療 法の検討に有用である。
( 8 a ) 本発明の D N Aの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療 ·予防効果 を有する化合物のスクリーニング方法
本発明の D N A発現不全非ヒ卜哺乳動物は、 本発明の D N Aの欠損や損傷などに 起因する疾病に対して治療 ·予防効果を有する化合物のスクリーニングに用いるこ とができる。
すなわち、 本発明は、 本発明の D N A発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投 与し、 該動物の変化を観察 ·測定することを特徴とする、 本発明の D N Aの欠損や 損傷などに起因する疾病、 例えば神経系疾患などに対して治療 ·予防効果を有する 化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明の D N A発現不全非ヒト哺乳 動物としては、 前記と同様のものがあげられる。
試験化合物としては、 例えば、 ペプチド、 タンパク、 非ペプチド性化合物、 合成 化合物、 発酵生産物、 細胞抽出液、 植物抽出液、 動物組織抽出液、 血漿等があげら れ、 これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。 具体的には、 本発明の D N A発現不全非ヒト哺乳動物を、 試験化合物で処理し、 無処理の対照動物と比較し、 該動物の各器官、 組織、 疾病の症状などの変化を指標 として試験化合物の治療 ·予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、 例えば、 経口投与、 静脈注射な どが用いられ、 試験動物の症状、 試験化合物の性質などにあわせて適宜選択するこ とができる。 また、 試験化合物の投与量は、 投与方法、 試験化合物の性質などにあ わせて適宜選択することができる。
神経系疾患(例、 アルツハイマー病、パーキンソン症候群、脊髄損傷、てんかん、 精神分裂病、 うつ病など) など、 好ましくは神経変性疾患に対して治療 ·予防効果 を有する化合物をスクリーニングする場合、 本発明の D N A発現不全非ヒ卜哺乳動 物に試験化合物を投与し、 試験化合物非投与群と神経系疾患の発症度合いの違いや 神経系疾患の治癒度合いの違いを上記組織で経時的に観察する。
該スクリーニング方法において、 試験動物に試験化合物を投与した場合、 該試験 動物の上記疾患症状が約 1 0 %以上、 好ましくは約 3 0 %以上、 より好ましくは約 5 0 %以上改善した場合、 該試験化合物を上記の疾患に対して治療 ·予防効果を有
する化合物として選択することができる。
該スクリーニング方法を用いて得られる化合物は、 上記した試験化合物から選ば れた化合物であり、 本発明のタンパク質の欠損や損傷などによって引き起こされる 疾患に対して治療 ·予防効果を有するので、 該疾患に対する安全で低毒性な予防 * 治療剤などの医薬として使用することができる。 さらに、 上記スクリーニングで得 られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、 該化合物の 塩としては、 生理学的に許容される酸 (例、 無機酸、 有機酸など) や塩基 (例、 ァ ルカリ金属など) などとの塩が用いられ、 とりわけ生理学的に許容される酸付加塩 が好ましい。 この様な塩としては、 例えば、 無機酸 (例えば、 塩酸、 リン酸、 臭化 水素酸、硫酸など) との塩、 あるいは有機酸(例えば、 酢酸、 ギ酸、 プロピオン酸、 フマル酸、 マレイン酸、 コハク酸、 酒石酸、 クェン酸、 リンゴ酸、蓚酸、 安息香酸、 メタンスルホン酸、 ベンゼンスルホン酸など) との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、 前記し た本発明のタンパク質を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、 安全で低毒性であるので、 例えば、 ヒトまたは 哺乳動物 (例えば、 ラッ卜、 マウス、 モルモット、 ゥサギ、 ヒッジ、 ブタ、 ゥシ、 ゥマ、 ネコ、 ィヌ、 サルなど) に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、 対象疾患、 投与対象、 投与ルートなどにより 差異はあるが、 例えば、 該化合物を経口投与する場合、 一般的に成人 (体重 6 O k gとして) のアルツハイマー病患者においては、 一日につき該化合物を約 0 . 1〜 1 0 O m g、 好ましくは約 1 . 0〜5 O m g、 より好ましくは約 1 . 0〜2 0 m g 投与する。 非経口的に投与する場合は、 該化合物の 1回投与量は投与対象、 対象疾 患などによっても異なるが、 例えば、 該化合物を注射剤の形で通常成人 (体重 6 0 k gとして)のアルツハイマー病患者に投与する場合、一日につき該化合物を約 0 . 0 1〜3 0 m g程度、 好ましくは約 0 . l〜2 0 m g程度、 より好ましくは約 0 . 1〜1 O m g程度を静脈注射により投与するのが好都合である。 他の動物の場合も、 体重 6 0 k g当たりに換算した量を投与することができる。
( 8 b ) 本発明の D N Aに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物
をスクリーニング方法
本発明は、 本発明の DNA発現不全非ヒト哺乳動物に、 試験化合物を投与し、 レ ポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明の DN Aに対するプロ モーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法 を提供する。
上記スクリーニング方法において、 本発明の DNA発現不全非ヒト哺乳動物とし ては、 前記した本発明の DNA発現不全非ヒ卜哺乳動物の中でも、 本発明の DNA がレポ一夕一遺伝子を導入することにより不活性化され、 該レポ一夕一遺伝子が本 発明の DN Aに対するプロモータ一の制御下で発現しうるものが用いられる。 試験化合物としては、 前記と同様のものがあげられる。
レポ一夕一遺伝子としては、 前記と同様のものが用いられ、 )3_ガラクトシダ一 ゼ遺伝子 ( 1 a c Z)、 可溶性アルカリフォスファタ一ゼ遺伝子またはルシフェラ ーゼ遺伝子などが好適である。
本発明の DN Aをレポ一夕一遺伝子で置換された本発明の DN A発現不全非ヒ ト哺乳動物では、 レポ一夕一遺伝子が本発明の DNAに対するプロモーターの支配 下に存在するので、 レポ一夕一遺伝子がコ一ドする物質の発現をトレースすること により、 プロモーターの活性を検出することができる。
例えば、 本発明のタンパク質をコードする DN A領域の一部を大腸菌由来の) 3— ガラクトシダ一ゼ遺伝子 ( 1 a c Z) で置換している場合、 本来、 本発明のタンパ ク質の発現する組織で、 本発明のタンパク質の代わりに ;8—ガラクトシダ一ゼが発 現する。 従って、 例えば、 5—ブロモー 4—クロロー 3—インドリル一 )3—ガラク トピラノシド (Χ—g a l) のような jS—ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用 いて染色することにより、 簡便に本発明のタンパク質の動物生体内における発現状 態を観察することができる。 具体的には、 本発明のタンパク質欠損マウスまたはそ の組織切片をダルタルアルデヒドなどで固定し、 リン酸緩衝生理食塩液 (PBS) で洗浄後、 X— g a 1を含む染色液で、 室温または 37 付近で、 約 30分ないし 1時間反応させた後、 組織標本を ImM EDTA/PB S溶液で洗浄することに よって、 /3 _ガラクトシダーゼ反応を停止させ、 呈色を観察すればよい。 また、 常 法に従い、 1 a c Zをコードする mRNAを検出してもよい。
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、 上記した試験 化合物から選ばれた化合物であり、 本発明の D N Aに対するプロモーター活性を促 進または阻害する化合物である。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、 該化合物の 塩としては、 生理学的に許容される酸 (例、 無機酸など) や塩基 (例、 アルカリ金 属など) などとの塩が用いられ、 とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好まし い。 この様な塩としては、 例えば、 無機酸 (例えば、 塩酸、 リン酸、 臭化水素酸、 硫酸など) との塩、 あるいは有機酸 (例えば、 酢酸、 ギ酸、 プロピオン酸、 フマル 酸、 マレイン酸、 コハク酸、 酒石酸、 クェン酸、 リンゴ酸、 蓚酸、 安息香酸、 メタ ンスルホン酸、 ベンゼンスルホン酸など) との塩などが用いられる。
本発明の D NAに対するプロモータ一活性を促進または阻害(好ましくは、促進) する化合物またはその塩は、本発明の夕ンパク質の発現の調節(好ましくは、促進)、 該タンパク質の機能を調節 (好ましくは、 促進) することができるので、 神経系疾 患 (例、 アルツハイマー病、 パーキンソン症候群、 脊髄損傷、 てんかん、 精神分裂 病、 うつ病など) などの予防 ·治療剤、 好ましくは神経変性疾患の予防 ·治療剤と して有用である。
さらに、 上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用 いることができる。 '
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、 前記し た本発明のタンパク質またはその塩を含有する医薬と同様にして製造することが できる。
このようにして得られる製剤は、 安全で低毒性であるので、 例えば、 ヒトまたは 哺乳動物 (例えば、 ラット、 マウス、 モルモット、 ゥサギ、 ヒッジ、 ブタ、 ゥシ、 ゥマ、 ネコ、 ィヌ、 サルなど) に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、 対象疾患、 投与対象、 投与ルートなどにより 差異はあるが、 例えば、 本発明の D N Aに対するプロモータ一活性を促進する化合 物を経口投与する場合、 一般的に成人 (体重 6 0 k gとして) のアルツハイマー病 患者においては、 一日につき該化合物を約 0 . 1〜1 0 0 m g、 好ましくは約 1 . 0〜5 0 m g、 より好ましくは約 1 . 0〜2 0 m g投与する。 非経口的に投与する
場合は、 該化合物の 1回投与量は投与対象、 対象疾患などによっても異なるが、 例 えば、 本発明の DN Aに対するプロモーター活性を促進する化合物を注射剤の形で 通常成人 (体重 60 kgとして) のアルツハイマー病患者に投与する場合、 一日に つき該化合物を約 0. 01〜3 Omg程度、 好ましくは約 0. 1〜2 Omg程度、 より好ましくは約 0. 1〜1 Omg程度を静脈注射により投与するのが好都合であ る。他の動物の場合も、体重 60 k g当たりに換算した量を投与することができる。 このように、 本発明の DNA発現不全非ヒト哺乳動物は、 本発明の DNAに対す るプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリ一ニン グする上で極めて有用であり、 本発明の DNA発現不全に起因する各種疾患の原因 究明または予防 ·治療剤の開発に大きく貢献することができる。
また、 本発明のタンパク質のプロモーター領域を含有する DNAを使って、 その 下流に種々のタンパクをコードする遺伝子を連結し、 これを動物の卵細胞に注入し ていわゆるトランスジヱニック動物 (遺伝子移入動物) を作成すれば、 特異的にそ のタンパク質を合成させ、 その生体での作用を検討することも可能となる。 さらに 上記プロモーター部分に適当なレポ一夕一遺伝子を結合させ、 これが発現するよう な細胞株を樹立すれば、 本発明のタンパク質そのものの体内での産生能力を特異的 に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
本明細書において、 塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、 I UPAC— I UB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野に おける慣用略号に基づくものであり、 その例を下記する。 またアミノ酸に関し光学 異性体があり得る場合は、 特に明示しなければ L体を示すものとする。
DNA デォキシリポ核酸
c DNA 相補的デォキシリポ核酸
A アデニン
T チミン
G グァニン
C
RNA リポ核酸
mRNA ーリポ核酸
d ATP デォキシアデノシン三リン酸
dTTP デォキシチミジン三リン酸
dGTP デォキシグアノシン三リン酸
d CTP デォキシシチジン三リン酸
ATP アデノシン三リン酸
EDTA エチレンジァミン四酢酸
SD S ドデシル硫酸ナトリウム
G 1 y グリシン
A 1 a ァラニン
V a 1 バリン
L e u
I 1 e
S e r セリン
Th r スレオニン
Cy s
Me t メチォニン
G 1 u グルタミン酸
As p ァスパラギン酸
し y s リジン
A r g アルギニン
H i s ヒスチジン
P h e フエ二ルァラニン
Ty r チロシン
T r p トリブトファン
P r o プロリン
A s n
G 1 n グルタミン
p G 1 u ピログルタミン酸
S e c (selenocysteine)
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する,
Me メチル基
E t ェチル基
B u ブチル基
P h フエニル基
TC -4 (R) 一力ルポキサミド基
T o s p—トルエンスルフォニル
CHO ホルミル
B z 1
Cl2-Bzl : 2, 6ージクロ口べンジル
Bom :ベンジルォキシメチル
Z :ベンジルォキシカルポニル
C 1 - Z : 2—クロ口べンジルォキシカルポニル
B r -Z : 2—ブロモベンジルォキシカルポニル
Bo c : t—ブトキシカルボニル
DNP :ジニトロフエニル
T r t : トリチル
Bum : t一ブトキシメチル
Fmo c : N— 9一フルォレニルメトキシカルポニル
HOB t : 1ーヒドロキシベンズトリアゾール
HOOB t : 3, 4—ジヒドロー 3—ヒドロキシ一 4ーォキソ一
1, 2, 3一べンゾトリアジン
HONB :卜ヒドロキシ 5 -ノルポルネン -2, 3-ジカルポキシイミド 本願明細書の配列表の配列番号は、 以下の配列を示す。
〔配列番号: 1〕 '
配列番号: 2で示されるタンパク質コ一ド領域 (Open Reading Frame) の塩基配列 から推定されるアミノ酸配列を示す。
〔配列番号: 2〕
配列番号: 3で示されるマウス由来の c DNAの配列におけるタンパク質コ一ド領 域 (Open Reading Frame) の塩基配列 (配列番号: 3で示される配列中の 448番目 から 2013番目に相当する塩基配列) を示す。
〔配列番号: 3〕
実施例 3で得られたマウス由来の c DNAの配列を示す。
〔配列番号: 4〕
実施例 2で用いられた ChATプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号: 5〕
実施例 2で用いられた ChATプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号: 6〕
実施例 2で用いられた Wnt-1プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号: 7〕
実施例 Ϊで用いられた Wnt-1プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号: 8〕
実施例 2で用いられた Mash-1プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号: 9〕
実施例 2で用いられた Mash- 1プライマーの塩基配列を示す。 '
〔配列番号: 10〕
実施例 2で用いられた ChATプローブの塩基配列を示す。
〔配列番号: 1 1〕
実施例 2で用いられた Wnt- 1プローブの塩基配列を示す。
〔配列番号: 1 2〕
実施例 2で用いられた Mash- 1プローブの塩基配列を示す。
〔配列番号: 1 3〕
実施例 4で用いられた配列番号 3から作製したプライマーの塩基配列を示す。 〔配列番号: 14〕
実施例 4で用いられた配列番号 3から作製したプライマーの塩基配列を示す。 〔配列番号: 1 5〕
実施例 4で用いられた配列番号 3から作製したプローブの塩基配列を示す。
〔配列番号: 16〕
配列番号: 1 8で示されるタンパク質コード領域 (Open Reading Frame) の塩基 配列から推定されるァミノ酸配列を示す。
〔配列番号: 17〕
実施例 3で示されるヒト由来の c DN Aの配列を示す。
〔配列番号: 18〕
配列番号: 17で示されるヒト由来の c DN Aの配列におけるタンパク質コード領 域 (Open Reading Frame) の塩基配列 (配列番号: 17で示される配列中の 720番 目から 2285番目に相当する塩基配列) を示す。
〔配列番号: 19〕
配列番号: 2 1で示されるタンパク質コード領域 (Open Reading Frame) の塩基配 列から推定されるアミノ酸配列を示す。
〔配列番号: 20〕
配列番号: 2 1で示されるラット由来の cDNAの配列におけるタンパク質コード 領域 (Open Reading Frame) の塩基配列 (配列番号: 21で示される配列中の末尾 の終止コドンを欠失したものに相当する。) を示す。
〔配列番号: 21〕
実施例 3で得られたラット由来の c DN Aの配列を示す。
〔配列番号: 22〕
実施例 6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号: 23〕
実施例 6で用いられたプライマ一の塩基配列を示す。
〔配列番号: 24〕
実施例 6で得られたマウス由来の c DNAの配列 (配列番号: 2と同一の 0RFを含 む) を示す。 以下において、 実施例により本発明をより具体的にするが、 この発明はこれらに 限定されるものではない。
実施例
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、 本発明はそれに限定さ れるものではない。 なお、 大腸菌を用いての遺伝子操作法は、 モリキユラ一クロ一 ニング (molecular cloning, 2nd, J. Sambrook et al. , Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989年)に記載されている方法に従った。 実施例 1
P19細胞のコリン作動性ニューロンへの培養方法
AT CCから購入した、 P 19細胞を lxlO5細胞/ m 1の細胞密度で 4日間 0.5 Mのレチノイン酸処置下で浮遊培養 (BBRC, 284, 1098-1103 (2001)) することに より、 コリン作動性ニューロンへ分化させた。 コリン作動性ニューロンへの分化の 確認は抗コリンァセチルトランスフェラーゼ (C h AT) 抗体 (Chemicon international, Inc.; AB144P) を用いた免疫染色法にて行った。 細胞を 4%パラホ ルムアルデヒドにて固定し、 ブロッキング緩衝液 (PBS (-) (Roche; 1-666-789), 5% BSA (Sigma; A- 7030), 0.1% Triton X- 100 (ICN Biomedicals Inc.; 807423)) に て室温、 1 時間ブロッキングを行った。 その後 1 次抗体として抗 ChAT抗体 (Chemicon international, Inc.; AB144P) を 4°C、 72時間作用させ、 さらに 2 次抗体 Alexa Fluor 488 (Molecular Probe; A- 11055) を室温、 1 時間反応させ、 蛍光顕微鏡にて鏡検した。その結果、分化誘導 9日目の P 19細胞は約 80%がコリ ン作動性ニューロンに分化していることが分かった。 ' 実施例 2
ジーンチップ解析のためのサンプル調整
実施例 1で示された P 19細胞を用いたコリン作動性ニューロンへの分化誘導系 でコリン作動性ニューロンへの再生に関連した遺伝子を探索する目的でジーンチ ップ解析を行い候補遺伝子を選択した。 ジーンチップ解析を行う培養日数を決定す るためにコリン作動性ニューロンのマーカーである C h A Tの遺伝子発現及び神 経細胞の分化段階で発現することが知られている Wni - 1、 Mash-1の発現について調 ベた。 方法は P 19細胞から抽出した RN A由来の c DN Aを材料に ABI Prism 7900 Sequence Detection System (Applied Biosystems社) を用いて、 TaqmanPC
R反応を行った。 該反応における反応液の組成は上記 cDNA を铸型として使用し、 配列番号: 4 と配列番号: 5 (ChAT)、 配列番号: 6 と配列番号: 7(Wnt- 1)、 配列番 号: 8と配列番号: 9(Mash- 1)のプライマーを各 0. 4 ^M (最終濃度)、 配列番号: 10 (ChAT) 配列番号: 11 (Wnt- 1)、 配列番号: 12 (Mash- 1) のプローブを各 0. 2 M (最終濃度)、 2XTaqmanPCR Master Mix 1 Ομ, 1を加え、 20^1の液量とした。 P C R反応は、 5 0°C ' 2分 · 9 5 °C ' 1 0分の後、 9 5 °C · 1 5秒、 6 0 °C · 1 分、 のサイクルを 40回繰り返して行った。 算出されたコピ一数は内部コント口一 ルとしてそれぞれのァミノ酸配列を含有するタンパク質遺伝子のコピー数と同様 に算出したグリセ口一ル 3リン酸脱水酵素のコピー数で補正した。 Wnt- 1、 Mash-1 の発現解析の結果から、 P 1 9細胞を用いた神経細胞への分化誘導系では分化誘導 3日目から 5 日目にかけて神経前駆細胞から神経細胞へ分化していることが考えら れた。 また、 ChATの発現は分化誘導 6日目から認められた。 このことから、 ジ —ンチップ解析は培養 0、 3、 5、 6、 8日目の P 1 9細胞由来の RNAに対して行う ことに決定した。 それぞれの培養日数の時点で P 1 9細胞から RNAを抽出した。 実施例 3
ジーンチップ解析
実施例 2にて調製した RN Aに対してジーンチップ解析を行った。 方法は Af fymetrix GeneChip Expression analysis manualに従レ 、 各培養曰力、ら調整した RNAから c RNAを合成し、 MG— U 74 A V 2チヅプの A, B及び Cチップに ついてハイブリダィゼ一シヨンを行い、 その後、 洗浄と染色を繰り返して行った。 デ一夕の解析にはソフトとしてジ一ンスプリングを用い、 各遺伝子のシグナルをノ 一マライズしサンプル間の発現の比較を行った。実施例 2で示した 2遺伝子 Wnt-1、 Mash-1 の発現を調べたところ、 TaQman PCR と同様の発現パターンを示した。 候補 遺伝子絞り込みの方法としてコントロール、 分化誘導 3日目より分化誘導 5日目で 3倍以上発現が上昇している遺伝子で、 かつ分化誘導 5 日目以降に発現が低下して いない遺伝子を抽出した。その結果見いだされた 1個の既知遺伝子、すなわち、 af fy ID 162609_atで表される ESTの塩基配列 (Genbank AW120659) を基に公のデ一夕べ ースである Genbankデータベースを用いて Blast検索を行ったところ、 本遺伝子断 片は配列番号: 3 (Genbank bc027803) で示されるマウス遺伝子であること (その
ORF (Open Reading Frame) は配列番号: 2で示される塩基配列であること) が 判明した。 さらに、 当該マウス遺伝子 (bc027803) を GSN(GSP)で Blast検索した結 果、 該マウス遺伝子 (bc027803) のヒトカウンタ一パートは、 配列番号: 1 7
(W02002- 00690に記載の遺伝子) であること (その ORF (Open Reading Frame) は配列番号: 18で示される塩基配列であること) が判明した。 配列番号: 2およ び配列番号: 1 8でそれぞれ示されるタンパク質コード領域 (Open Reading Frame) の塩基配列から推定されるアミノ酸配列、すなわち、配列番号: 1および配列番号: 16で示されるアミノ酸配列は、 90%の相同性を有する。 また、 該マウス遺伝子
(bc027803) のラットカウンタ一パートは、 配列番号: 2 1 (Genbank XM_232080) であること (その ORF (Open Reading Frame) は配列番号: 20で示される塩基 配列であること;その OR Fから推定されるアミノ酸配列は配列番号: 1 9で示さ れるアミノ酸配列であること) が判明した。
実施例 4
正常マウスにおける配列番号: 3で示される遺伝子の組織分布の解析
正常マウスにおける組織分布を調べるため、 mouse MTC panel I (クロンテ ック社製) の cDNAを铸型とし、 配列番号: 1 3、 配列番号: 14のプライマーお よび配列番号: 1 5のプローブを用いて実施例 2の方法で PCRを行った。その結果、 配列番号: 3で示される遺伝子は脳で非常に高い発現が認められた。
実施例 5
マウス神経幹細胞分化誘導系における配列番号: 3で示される遺伝子の発現解析 マウス神経幹細胞からコリン作動性ニューロンへの分化誘導系における発現に ついて調べた。 神経幹細胞は TP14- 15の Balb/cマウスの胎仔を用い、 neurosphere 法 (Exp Neurol, 1997 Apr; 144(2): 350-60) により調製した。 分化誘導は神経幹 細胞を ECLコ一ト (UPSTATE biotechnology; 08-110) 上で 100ng/ml NGF (Genzyme techne; 2256) を含む培地 (DMEM (Gibco; 11995-065), N2 supplement (Gibco; 17502-048) ) で培養 (条件 37°C、 5% C02 incubator内) し、 分化誘導 0日から 1 日にかけて 5 g/ml AraC (cytosine-B-D-arabinofuranoside; Sigma; C1768) 処置 することにより行った。 コリン作動性神経への分化確認のため、 分化誘導を行った 神経幹細胞から調製した cDNAを铸型に、 配列番号: 6、 配列番号: 7のプライ
マーと配列番号: 1 0のプローブを用いて実施例 2の方法で P CRを行ったところ、 ChATの発現上昇を確認した。 配列番号: 1 3、 配列番号: 14のプライマーお よび配列番号: 1 5のプロ一ブを用いて上記と同様の方法で PCRを行った。 その結 果、 配列番号: 3で示される遺伝子は分化誘導を行った神経幹細胞において発現上 昇が認められた。
実施例 6
配列番号: 2で示される遺伝子のクロ一ニング
マウス脳由来の Marathon- Ready cDNA (Clontech社) を铸型とし、 配列番号: 2 2および配列番号: 23のプライマ一を用いて PC R反応を行った。 該反応におけ る反応液の組成は上記 cDNAを铸型として使用し、配列番号: 22および配列番号: 23のプライマ一を各 0.4 M (最終濃度)、 dNTP(TAKARA)を 0.2 mM、 10X Pfu DNA polymerase react ion buffer (stratagene 600250) 2 1、 Pf uTurbo DNA polymerase (stratagene600250) 2.5 U を加え、 20 1 の液量とした。 PCR反応は、 95°C · 2 分の後、 95 · 30秒、 58°C * 30秒、 72 : · 2分のサイクルを 30回繰り返し、 最後 に 72°C · 10 分の伸長反応を行った。 pcDNA3.1/V5- HisTOPO TA expression kit (Invitrogen社 K4800- 01) の処方に従いプラスミドベクタ一 pcDNA3.1/V5- HisTOPO ベクター(Invitrogen社 K4800-01)へクローニングした。これを大腸菌(Escherichia coli) TOP10F' (Invitrogen社 K4800-01) に導入し、 c DNAを持つクローン をアンピシリンを含む LB寒天培地中で選択した。 個々のクローンの配列を解析し た結果、 配列番号: 2と同一の 0RFを含む配列番号: 24の c D N A配列を得た。 実施例 7
マウス神経幹細胞における配列番号: 2で示される遺伝子の機能解析
配列番号: 2で示される遺伝子の機能を調べるため、 マウス神経幹細胞に配列番 号: 24で示される遺伝子の導入を行い、 コリン神経細胞マ一力一である Ch'AT の 発現について調べた。 遺伝子導入はプロトコールに従いレトロウイルス (clontech 社 PT3132- 1) を用いて行った。 ウィルスベクターには pLNCX2 ベクタ一(clontech 社 6102-1)を用いた。 実施例 5に示した方法により調製したマウス神経幹細胞をポ リ Dリジンコート (べクトンデッキソン社) 上で 20ng/ml FGF (Genzyme techne; 2234E) を含む培地 (DMEM (Gibco; 11995-065), N2 supplement (Gibco; 17502-048) )
で 24時間培養後 (条件 37 、 5 % C02 incubator内)、 1 X 108 c fu/mlウィルス及び 8 /ml po lybrene (Al dr i ch 287828- 55- 4)を含む培地に置換した。 24時間後に培地 を換えさらに 3日間培養した後、 RNAを調製した。それをもとに作製した cDNAを铸 型とし配列番号: 4、 配列番号: 5のプライマ一及び配列番号: 1 0のプローブを 用いて実施例 2の方法で PCRを行った。 その結果配列番号: 2で示される遺伝子の 導入により ChATの発現はコントロールと比較し、 1 . 9倍増加した。 このことから、 配列番号: 2で示される遺伝子はマウス神経幹細胞においてコリン神経分化を促進 していることが示唆された。 産業上の利用可能性
本発明で用いられるタンパク質は、 神経系疾患の診断マーカ一であり、 したがつ て、 該タンパク質の活性や遺伝子発現を促進する化合物またはその塩は、 例えば神 経系疾患 (例、 アルツハイマー病、 パーキンソン症候群、 脊髄損傷、 てんかん、 精 神分裂病、 うつ病など) などの予防'治療剤として使用することができる。 また、 本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、 本発明で用いられる夕ンパ ク質の発現を促進することができ、 例えば、 神経系疾患 (例、 アルツハイマー病、 パーキンソン症候群、脊髄損傷、 てんかん、精神分裂病、 うつ病など)などの予防 · 治療剤として使用することができる。 従って、 本遺伝子の発現や遺伝子産物の機能 を調節する薬剤を適切に用いることによって神経変性疾患の新たな治療法が開拓 できると考えられる。