明 細 書
Wivrの発現の亢進を検出するこ とによ り慢性関節リ ウマチを 検出する方法 技術分野
本発明は、 関節滑液または末梢血液における W T特に N T 1 0 Bの発現の亢進を逆転写 ( R T ) P C R法などによ り検出す るこ とによる慢性関節リ ウマチ ( R A : rheumatoid arthritis) の検出法に関する。 更に、 F _R Pの発現の抑制を並行的に検出す る こ とを特徴とする前記慢性関節 リ ウマチ ( R A : rheumatoid arthritis) の検出法に関する。 背景技術
R A診断にはァメ リ カ リ ウマチ学会の定めた診断基準が本邦に おいても採用されている。 該診断基準は、 1 ) 1時間以上続く朝の こわばり、 2 ) 3個所以上の関節の腫れ、 3 ) 手の関節の腫れ、 4 ) 対称性の関節の腫れ、 5 ) 手の X線写真の異常、 6 ) 皮下結節、 7 ) 血液検査でリ ウマチ反応が陽性、 である。 この基準のうち 4項目以 上を満たし、 更に 1 ) _ 4 ) に関しては 6週間以上持続することを 必要とする。 この様に、 診断基準は臨床所見に依存し診断時には既 に病態が進行しているため、 治療開始時期が遅れ治療効果が得難く、 患者本人の精神的肉体的経済的負担が大きくなる。
また、 R Aの生化学的検査方法として、 リ ウマ トイ ド因子 ( r h e um a t o i d f a c t o r ) を検出する方法も利用されてい
るけれども、 該検出方法では擬陽性および擬陰性の確立が高く信頼 性に問題があった。
従って、 より早期に R A特異性の高い客観的診断技術を確立する ことが社会的急務である ( http: //www. rheuma- net.or.jp/) 。
一方、 WN Tフ ア ミ リ一はヒ トでは 1 6種類の遺伝子配列が明ら かになつており、 ヒ トゲノム配列解読から更に 3種類が存在すると 考えられる。 WN Γは癌原遺伝子と して発見された遺伝子であ り、 C一 M y cゃサイ ク リ ン D 1 の発現を誘導することで細胞の過剰 な増殖を招く。 近年、 R A関節滑膜において WN Γ 1、 5 A、 1 0 Bの発現が亢進し、 滑膜細胞による炎症性サイ トカイ ン 〔イ ン夕一 ロイキン一 6、 8、 1 5 ( I L - 6 8、 1 5 ) 〕 の産生を促進す ることが報告された ( S e n,M. , L a u t e r b a c h ,K . , Ε l — G a b aw y,H . , F i r e s t e i n,G . S .,C o r r,M. a n d C a r s o n, D, A . E x p r e s s i o n a n d i u n c t i o n o f w i n g l e s s a n d f r i z z l e d h o m o l o g s i n r h e u m a t o i d a r t h r i t i s . P r o c . N a t l . A c a d . S c i . U S A . 9 7 : 2 7 9 1 - 2 7 9 6 , 2 0 0 0.) 。
因みに、 変形性関節症 ( O A) 関節滑膜では WNri、 5 Aおよ び 1 0 Bは発現しない。
また、 W : Γは血管内皮細胞の増殖も促進することが知られてい る (W r i g h t , M . , A i k aw a , M . S z t o, W . a n d P a p k o f f , J . I d e n t i f i c a t i o n o i a WN T— r e s p o n s i v e s i g n a l t r a n s d u c t i o n p a t hw a y i n p r i ma r e n d o t
h e 1 i a 1 c e l l s . B i o c h e m. B i o p h y s . R e s . C o mmu n . 2 6 3 : 384-388, 1999.) 。
更に、 特開平 1 1一 1 1 3 5 8 0公報、 特に第 4欄第 1行〜第 3 行には、 W n t — 1 1活性またはレベルに関連した疾病のための診 断アツセィに関する技術について言及し、 【 0 0 3 3】 〜 【 0 0 3 】 において前記診断ァヅセィについて説明している。
しかしながら、 WN T 特に WN !T l 0 Bの R A特異的発現を検出 して、 R A特異的診断が可能であることを説明する言及もない。 更 に; R A関節滑膜において WN T 1 1の発現を認めることができず、 本発明の R A特異的な診断方法に W N T 1 1検出による診断アツ セィは含まれていない。
本発明の課題は、 関節滑液、 関節組織あるいは末梢血中の!^ ΛΓ Γ の発現の亢進を検出することによ り、 R Aを予防的に早期に発見す る、 R A特異的な診断方法を提供することである。
先ず、 発生学的に P Nrは様々な臓器に発現し、 胎生期の器官形 態形成に極めて重要な役割を果たしているこ とが報告されている ( Moon, R. A. , Brown, J . D. and Torres, M. WNTs modulate ce 11 fate and behavior during vertebrate development. Trends G enet.13:157-162, 1997.) 。 しかし、 器宫形成完了後において発現 は停止することから、 成体の維持に積極的役割を持たないと考えら れる。 このことと前記 WAT !T発現とを対比して考えると、 発 現は R A関節滑膜異常を招く、 あるいは、 促進する原因である可能 性が考えられる。
そこで、 本発明者は関節破壊をきたす疾患であり関節滑膜の異常 を伴う R Aと異常を伴わない O Aに発現する とその特異的
阻害分子である F Pの発現プロファイルを明らかにした。 その結 果、 WN T 1 0 Bが RA特異的に発現する分子であり、 他の i Nr の発現率は RA、 0 Aともに極めて低いことを確認した。 また、 WN T 1 0 Bは R A関節滑膜組織の滑膜表層細胞と血管内皮細胞 に局在していることも分かった。
逆に は O A特異的に発現し、 特に全ての OA症例で発現し ていた Fi? _P lは W Vr i 0 Bと同様に滑膜表層細胞および血管 内皮細胞に認められた。 従って、 OAにおいては ^尸が発現する ことで wNrを介した関節滑膜の異常を防いでいる可能性が高い。 WNrを標的分子とし、 合成ペプチ ド、 化学合成物質や精製 Fi2 P タンパクを関節腔内あるいは血中に投与することで、 WN Γ生物活 性を阻害するこ とは生体偽害性や副作用の少ない生物学的治療法 として有用である可能性も高い。
RA特異的 WNr、 特に WNr i 0 Bの発現が 4/ 5の症例にお いて確認されたことから、 関節滑液あるいは末梢血中の W V Γ、 特 に WN r i 0 Βの存在を測定するこ とで R A特異的診断法を確立 できることを確認し、 前記本発明の課題を解決することができた。 発明の開示
本発明は、 ( 1 ) 関節滑液、 関節組織または末梢血液における少 な く とも N Γ 1 0 Bの発現の亢進を検出する慢性関節リ ゥマチ を検出する方法である。 好ましくは、 ( 2 ) 少なく とも ]^ JV T 1 0 Bの発現の亢進を R T— P CR法によ り検出する前記 ( 1 ) の慢性 関節リ ウマチを検出する方法であり、
より好ましくは、 ( 3 ) 少なく とも F ? _Pの発現の抑制を並行的に
検出する前記 ( 1 ) または ( 2 ) の慢性関節リウマチを検出する方 法であり、 一層好ましくは、 ( 4 ) 少なく とも F ? P 1の発現の抑 制を並行的に検出する前記 ( 3 ) の慢性関節リウマチを検出する方 法である。
図面の簡単な説明
第 1図は、 R T— P C R法による WN T遺伝子発現の解析を示す。 1 一 5の R A関節滑膜組織の ァ 3、 WN Γ 5 A. WN Γ 1 0 B および WN Γ 1 4発現の解析、 および 6 — 9の 0 A関節滑膜組織の WIV T 3ヽ WN T 5 Aヽ WN Γ 1 0 Bおよび i N Γ 1 4発現の解析 を示す。
第 2図は、 R T— P C R法による F R P遺伝子発現の解析を示 す。 1 一 5の R A関節滑膜組織の Λ Ρ 1、 F R Ρ 1、 F R Ρ 3 F R Ρ 4 , および ^尸 5発現の解析、 および 6 — 9の O A関節 滑膜組織の i? _P l、 F R P 2 , F R P 3ヽ F R P 4 および F R P 5発現の解析を示す。 発明を実施するための最良の形態
本発明をより詳細に説明する。
1、 関節滑膜の異常を伴う: R Aと異常を伴わない O Aに発現する !^ Α Γとその特異的阻害分子である の発現プロファイルの作 製。
( 1 ) 人口関節置換術によ り切除されたヒ ト R Aの 5例の 1 — 5 あるいは 0 Aの 4例の 6 — 9 の関節滑膜組織に発現する全 R N A を Chomczynski and Sacchiの方法に従い採取した。 ゲノム D NAの 混入を防く、ため、 R N a s e— f r e e D N a s e lで
3 7 °C 3 0分間処理を行い、 ゲノム D NAを分解した。
( 2 ) 5〃 全1^ 八をォリゴ(1 ( T ) プライマ一(Gibco BRL, Giathusberg, Germany)および逆転写酵素 (Superscript II,
Gibco BRL) を用いて 1 st strand cDNA (50 μΐ)を合成した。 その 後、 1 μΐの c D Ν Αを錡型として 9 4 °C 5分間加熱後、 表 1に示す 新規塩基配列の R T—: P C Rプライマ一と T a q D NAポリメ ラ —ゼ (Gibco BRL) を用いて P C R反応を行つた。 一検体 5 0 z L にて熱変性を 9 4 °C 3 0秒、 表 1に示すァニ一リ ング温度で 3 0秒. 伸長反応 1分間行い、 これを 1サイ クルとして計 3 0サイ クル繰り 返した。 反応終了後の試料を 2 %ァガロースゲル電気泳動し、 P C R増幅反応の有無を確認した。
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WN: Γ 1 0 Bは極めて高率 ( 4 / 5例) に前記 5例の 1 一 5の切 除 R A組織に発現していたが、 前記 0 Aの 4例の 6 — 9では 1 Z 4 例に陽性であった。 他の WN Tに関してはいずれも発現率が低いか 発現していなかつた。 前記 WN Γの R T— P C R法による解析結果 は第 1図に示されている。 2 P 1は前記 0 Aの 4例の全てに発現 し、 j ? P 2 と ? P4は 2 /4例に、 ? P 3 と ^Λ Ρ 5 は 1 / 4例にみられた。 前記 R Αの 5例ではいずれの F P遺伝子ともに 1 / 5例に陽性あるいは発現していなかった。 前記 Λ の R T— P C R法による解析結果は第 2図に示されている。 前記およびの前 記第 1 図および第 2図の R T— P C R法による解析結果、 すなわち 遺伝子増幅のあり ( + )、 なし (一) をまとめたものを表 2に示す。 表中において Ν Dは未検討であることを意味する。
358
9
表 2
RA OA
1 2 3 4 5 6 7 8 9
WNTl - - - - - - ND - -
WNT2 - - - - - - ND - -
WNTZB 一 一 一 一 一 一 ND - - WNT3 一 一 一 一 一 一 一 一 一
WNT4 - - - - - - ND - -
WNT5A 一 — + 一 一 一 一 一 一
WNT5B - - - + - - ND + -
WNT6 一 一 - 一 一 一 ND - -
WNT7A — 一 一 一 一 一 ND - -
WNT8A - - - - - - ND - - NT8B - - - - - - ND - -
WNT10A 一 一 一 一 一 一 ND - -
WNT10B + + + + - - - + -
WNT11 - - - - - - ND + -
WNT14 - - - + - - - + -
FRP1 - - - + - + + + +
FRP2 - - - + - - - + +
FRP3 一 一 一 一 一 一 一 十 一
FRP - - - 十 - - - + +
FRP5 - - - - - - - + - ホルマリ ンあるいはパラホルムアルデヒ ド固定したヒ ト R Aある
いは 0 A関節滑膜組織のパラ フ ィ ン包埋切片を脱パラ フ ィ ン後、 ェ 夕ノール系列で親水処理、 0. 0 1 M (モル) クェン酸ナ ト リウム 緩衝液 ( p H 6. 0 ) 中で電子レンジ加熱処理 ( 5 0 0 W、 4分間 3回) を行った。 次に、 組織切片を正常ャギ血清、 正常ロバ血清、 正常ゥサギ血清あるいは 1 %ゥシ血清アルブミ ンで 3 0分間室温 処理し、 ャギ抗 Wn t 1 O b抗体 (l〃 g/m l, Santa Cruz Biote chnology, Santa Cruz, CA, 米国) 、 ャギ抗 F r p l抗体
/m 1、 Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz , CA, 米国) ある いはゥサギ抗 von Willbrand Factor ( v W F )抗体 ( 2 0 0倍希釈、 D AK 0、 Carpinteria, CA, 米国)と反応した。 その後、 Alexa Fl uor 546抗ゥサギ抗体、 Alexa Fluor 546抗ャギ抗体 (Molecular Pr obes, Eugene, OR, 米国) あるいは F I T C標識抗ャギ抗体 ( Vect or, Burlingame, CA, 米国) と 9 0分間室温でイ ンキュベー ト し、 蛍光顕微鏡を用いて各抗原の組織内局在を同定した。
R A関節滑膜において WN T 1 0 Bは滑膜表層細胞および血管 内皮細胞に局在していた。 0 A関節滑膜においては反応はみられな かった。 逆に F RP 1は 0 Aにおいて滑膜表層細胞と血管内皮細胞 に局在していたが、 : RA組織では陰性であった。
WN T 1 0 Bおよび F R P 1の血管内皮細胞への局在は、 血管内皮 細胞に特異的に反応する抗 vWF抗体との二重染色法で確認され た。
該染色法によ り得られた免疫組織染色写真像から、 R A関節滑膜 における !^ N Γ 1 0 B陽性細胞、 すなわち R A組織の局在発現、 お よび OA関節滑膜における ? 1陽性細胞、 すなわち OA組織の 局在発現を観察することができた。
産業上の利用可能性
本発明によ り、 関節破壊をきたす疾患であ り関節滑膜の異常を伴う
R Aと異常を伴わない O Aに発現する WAT Tとその特異的阻害分 子である F ? _Pの発現プロフ ァイルを明らかさた。 すなわち、 逆転 写 ( R T ) — P C Rプライマーを用いた R T— P C R法、 特に、 N T 1 O Bまたは WNT l O Bおよび の並列的 R T— P C R法による前記遺伝子発現における遺伝子増幅の陰陽により、 疑 似発現などのない早期の R A特異的診断法を確立した。 これによ り、 簡易で確実な R A特異的診断法を確立することができ、 極めて産業 上の利用性の高い技術を提供するものである。