明 細 書 新規セリンプロテアーゼ 技術分野
本発明は、 新規なセリンプロテアーゼの前駆体または成熟体であるポリべプチド, 該ポリべプチドをコ一ドするポリヌクレオチド、 該ポリヌクレオチドを含有する ベクター、 該ベクターでトランスフエク卜された細胞及び前記プロテアーゼ成熟 体を使用する糖尿病治療に有用な薬物のスクリーニング法に関するものである。 背景技術
これまでに数百種類のプロテアーゼが報告されている。 これらのプロテア ーゼの中には、 単に蛋白やペプチドの消化を行う分子の他に、 ペプチド鎖の 切断を介して蛋白質の成熟や生理活性の発現、 代謝の調節、 情報の発現や伝 達など生命現象に直結した重要な役割に関与している分子が多数あることが 知られている。 そのため、 古くより、 プロテアーゼ阻害剤の医薬品応用が進 められてきた。
I I型膜貫通セリンプロテア一ゼはセリンプロテアーゼのうち、 N末端側に膜 貫通領域、 細胞外の C末端側にプロテアーゼドメインを有する分子種であり(非 特許文献 1参照)、 心房性ナトリゥム利尿因子前駆体 (proANP)から成熟体への変 換を制御するコリン (Gor i n) (非特許文献 2参照) 、 トリプシノーゲンをトリプ シンに変換するェンテロべプチダーゼ (Enteropept i dase) (非特許文献 3参照) など、 重要な生理作用を調節する役割を担う分子が同ファミリ一に分類される。 また、 これらの I I型膜貫通セリンプロテア一ゼの多くは比較的限局した特徴あ る組織分布を示すことが報告されている (非特許文献 1参照) 。
本発明のポリべプチド及ぴポリヌクレオチドと相同性のある配列に関しては 種々の報告がある (特許文献 1—6参照) が、 本発明のポリペプチド及びポリヌ クレオチドと 100<½同一の配列は知られていなかった。 前記報告には本発明のポ リぺプチド及びポリヌクレオチドと相同性のある配列の特定用途、 すなわち糖尿
病治療の記載がない、 あるいは、 実験的裏付けもなく前記相同配列の機能を調整 する物質の用途として多数の疾患の治療が列挙されているのみであり、 本発明の ポリべプチド及ぴポリヌクレオチドの生理機能に関する具体的な情報はなかった。 一方、 脳下垂体は種々のホルモンの生産、 分泌を担う内分泌器官である。 ホル モンは生体のホメォスタシスの維持や機能の発現などを担う分子であり、 ホルモ ンのプロセシング、 分泌や分解、 その発現制御に係わる分子の分解を制御するこ とにより、 標的としたホルモンの作用を修飾することができ、 その結果、 該ホル モンの係わる特定の疾患の治療に繋がることが期待できる。 脳下垂体から分泌さ れるホルモンの中で、 少なくとも成長ホルモン (GH)、 プロラクチン (PRL)、 副腎 皮質刺激ホルモン (AGTH)には、 その血中濃度と糖尿病の発症、 進行度に関連性が あることが示されている (非特許文献 4参照) 。 GHの生理作用としてはインスリ ン様増殖因子( I GF- 1 )を介する成長促進作用と、 そのものによる直接作用とがあ リ、 種々の代謝作用に関与することが知られている。 GH産生はソマトスタチンに より抑制され、 GH自身や I GF- 1によりネガティブフィード くックを受けて抑制さ れる。 また、 GHは血糖値による制御を受けて分泌され糖代謝へ関与するが、 低血 糖では GH分泌は促進され、 高血糖では GH分泌は抑制される。 糖尿病患者において は、 GH過剰分泌をきたしていると考えられる血中 GH濃度の慢性的高値例が多数報 告されている。 一方、 GHの慢性的な過分泌状態にある末端肥大症患者においては 高率で耐糖能低下を合併することが知られておリ、 GH分泌を正常化する治療によ リ耐糖能が改善することから、 GHは糖尿病誘発性に働くホルモンとして位置付け られている。 これらのことから GHの過剰分泌の抑制は糖尿病治療に繋がると考え られる (以上、 GHに関する知見は非特許文献 5参照) 。 上述のように、 GHはその 下垂体からの分泌が IGF-Iにより負に制御されることから、 IGF-Iを臨床応用する 試みがなされている。 しかしながら、 糖尿病治療において一定の治療効果が得ら れているものの、 機能が多岐に渡る IGF - 1を全身投与することに起因する副作用 が報告されている (非特許文献 6参照) 。 したがって、 脳下垂体で産生される成 長ホルモンの調節に関わる新規な創薬標的分子の発見が待望されていた。
ソマトスタチンはそのアナログの試験的投与により糖尿病性網膜症を改善する ことが知られている(非特許文献 7参照)。 また、 網膜におけるソマトスタチンの
免疫組織化学的解析の結果、 ソマトスタチンの免疫陽性細胞は内顆粒細胞層およ び視神経節細胞層で検出されることが報告されている(非特許文献 8参照)。 さら に糖尿病性網膜症を発症した糖尿病患者においては健常者に比べて硝子体液中の ソマトスタチン様物質の免疫反応性が低下することが報告されている(非特許文 献 9参照)。 したがってソマトスタチンの安定化は糖尿病性網膜症を改善するこ とが期待されていた。
(特許文献 1 )
国際公開第 01/55441号パンフレツ卜
(特許文献 2 )
国際公開第 02/00860号パンフレツト
(特許文献 3 )
国際公開第 01/36645号パンフレツト
(特許文献 4)
国際公開第 01/55314号パンフレツト
(特許文献 5)
国際公開第 01/55301号パンフレツト
(特許文献 6)
国際公開第 01/75067号パンフレツト
(非特許文献 1 )
「ザ■ジャーナル 'ォブ 'バイオロジカル.ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)」 、 (米国) 、2001年、第 276卷、 ρ· 857- 860
(非特許文献 2)
「プロシ一ディング■ォブ 'ザ 'ナショナル 'アカデミー■ォブ 'サイエンス■ ォブ■ザ■ュナイテツドスティッ■ォブ■ァメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Amer ica)j (米国)、 2001年、第 97巻、 p.8525-8529
(非特許文献 3)
「バイオケミストリ一(Biochemistry)] (米国)、 1995年、第 34巻、 p.4562-4568 (非特許文献 4)
「日本臨床」 、 55巻■ 1997年増刊号、 p155-163
(非特許文献 5 )
Γ日本臨床」 、 56巻、 1998年増刊号、 p. 97-102
(非特許文献 6 )
「ホルモンと臨床」 、 1998年、第 46卷 第 2号、 p. 73-81
(非特許文献 7 )
「ホルモン アンド メタポリック リサーチ (Hormone and Metabo l i c
Research) J , 2001年、 33巻, p. 295-299
(非特許文献 8 )
「マイクロスコピー リサーチ アンド テクニック (M i croscopy Reseach and Techn i que) J , 2000年、 50卷, p. 103-1 1 1
(非特許文献 9 )
「ダイアベ一ト ケア (D i abetes Care) J , 2002年、 25巻, p. 2282-2286
発明の開示
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、 ヒト及びマウスの新規な I I型膜貫通セ リンプロテアーゼ遺伝子全長配列、 全長 0RFを決定し、 全長遺伝子及び組換え体 蛋白質を取得した。 次いで、 配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 45 番〜第 418番のァミノ酸配列からなるポリペプチド、 配列番号 17で表されるァ ミノ酸配列における第 46番〜第 392番のァミノ酸配列からなるポリべプチドが 前記プロテアーゼの細胞外領域であることを明らかにした。 更に、 配列番号 2で 表されるアミノ酸配列における第 187番〜第 418番のアミノ酸配列からなるポリ ペプチドが十分なプロテアーゼ活性を有することを見出した。 加えて、 活性型酵 素を得る為に前記プロテアーゼの全長領域及び細胞外領域を用いることができる ことを見出した。 また、 前記プロテア一ゼは脳下垂体、 眼を含む領域に限局して 発現することを確認した。 前記プロテア一ゼがソマトスタチン及びプロラクチン 放出べプチドを切断し成長ホルモンを切断しなかったことから、 前記プロテア一
ゼは脳下垂体において糖尿病の増悪に関与することが報告されている成長ホルモ ンの分泌量を増加させることを明らかにした。
これらの結果、 糖尿病治療薬の検索に有用な新規なポリペプチド、 前記ポリべ プチドをコ一ドするポリヌクレオチド、 前記ポリヌクレオチドを含む発現べクタ 一、 前記発現ベクターでトランスフエク卜された細胞、 糖尿病治療薬及び糖尿病 性網膜症治療薬をスクリーニングする方法、 並びに、 糖尿病治療用医薬組成物及 び糖尿病性網膜症治療用医薬組成物の製造方法を提供し、 本発明を完成した。
すなわち本発明は、
(1)下記 (a)又は (b)に記載のポリぺプチド
(a)配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 45番〜第 186番のァミノ酸 配列、 あるいは配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 45番〜第 186番 のアミノ酸配列の 1〜10個のアミノ酸が欠失、 置換、 及び 又は挿入された配列 を含むアミノ酸配列の C末端側に、 配列番号 2で表されるアミノ酸配列における 第 187番〜第 418香のアミノ酸配列が連結されたアミノ酸配列を含み、 かつ、 プ 口テアーゼ活性を示す酵素の前駆体であるポリペプチド、
(b)配列番号 17で表されるアミノ酸配列における第 46番〜第 392番のァミノ 酸配列を含み、 かつプロテアーゼ活性を示す酵素の前駆体であるポリべプチド、 あるいは配列番号 17で表されるアミノ酸配列における第 46番〜第 392香のアミ ノ酸配列において 〜 10個のアミノ酸が欠失、 置換、 及び 又は挿入された配列 を含むアミノ酸配列を含み、 かつプロテアーゼ活性を示す酵素の前駆体であるポ リベプチド、
(2)下記 (a)〜(G)記載のァミノ酸配列を含む(1 )記載のポリぺプチド
(a)配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 1 番〜第 186番のアミノ酸配 列、 あるいは配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 1番〜第 186番のァ ミノ酸配列の 1〜10個のアミノ酸が欠失、 置換、 及び 又は挿入された配列を含 むアミノ酸配列の G末端側に、 配列番号 2 で表されるアミノ酸配列における第 187番〜第 418番のァミノ酸配列が連結されたァミノ酸配列、
(b)配列番号 17 で表されるアミノ酸配列、 あるいは配列番号 17 で表されるアミ ノ酸配列において 1〜10個のアミノ酸が欠失、 置換、 及び Z又は挿入されたアミ
ノ酸配列、
(G)配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 2番〜第 186香のアミノ酸配 列、 あるいは配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 2番〜第 186番のァ ミノ酸配列の 1〜10個のアミノ酸が欠失、 置換、 及びノ又は挿入された配列を含 むアミノ酸配列の G 末端側に、 配列番号 2 で表されるアミノ酸配列における第 187番〜第 418番のァミノ酸配列が連結されたァミノ酸配列、
(3)下記 (a)、 (b)、 (c)、 (d)及び (e) から選択されるポリペプチド
(a)配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 45番〜第 418番のァミノ酸配列 からなるポリペプチド、
(b)配列番号 17で表されるアミノ酸配列における第 46番〜第 392香のアミノ酸 配列からなるポリべプチド、
(c)配列番号 2で表されるァミノ酸配列からなるポリペプチド、
(d)配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 2番〜第 4 香のアミノ酸配 列からなるポリべプチド、
(e)配列番号 17で表されるァミノ酸配列からなるポリべプチド、
(4)下記 (a)、 (b)及び (G) から選択されるポリペプチド
(a)配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 187番〜第 418番のアミノ酸 配列からなるポリべプチド、
(b)配列番号 17で表されるアミノ酸配列における第 161番〜第 392香のアミノ酸 配列からなるポリべプチド、
(c) 配列番号 17で表されるアミノ酸配列における第 161 番〜第 392番のァミノ 酸配列を含み、 かつプロテアーゼ活性を示すポリペプチド、 あるいは配列番号 17 で表されるアミノ酸配列における第 161 番〜第 392香のアミノ酸配列において 1 〜10個のアミノ酸が欠失、 置換、 及び 又は挿入されたアミノ酸配列を含み、 か つプロテアーゼ活性を示すポリべプチド、
(5) (1 ) 乃至 (4) に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(6) (5) に記載のポリヌクレオチドを含む発現べクタ一、
(7) (6) に記載の発現ベクターで形質転換された細胞、
(8) i) (4)に記載のポリべプチド又は配列番号 2で表されるアミノ酸配列における 第 187番〜第 418香のアミノ酸配列を含み、 かつ、 プロテアーゼ活性を示すポリべ プチドと、 i i)前記ポリペプチドにより切断可能な基質と、 i i i)試験化合物とを 接触させる工程、
前記基質の切断を分析する工程、 及び
前記基質を切断する活性を阻害する物質を選択する工程
を含む、 試験化合物が前記ポリべプチドのプロテアーゼ活性を阻害する物質をス クリーニングする方法、
(9) (8)に記載の方法により、 糖尿病治療薬及び 又は糖尿病性網膜症治療薬を スクリーニングする方法、
(10) (8)又は(9)に記載のスクリーニング方法を用いてスクリーニングする工程, 及び
前記スクリーニングにより得られた物質を用いて製剤化する工程
を含むことを特徴とする、 糖尿病治療用医薬組成物及び Z又は糖尿病性網膜症治 療用医薬組成物の製造方法、
に関する。
本発明のポリべプチド及びポリヌクレオチドと相同性のある種々の配列が報告 (W001/5544U W002/00860, W001/36645, W001/55314, W002/6453 (本願優先日 後に公開) ) されているが、 いずれの報告においても本発明のポリペプチド及び ポリヌクレオチドと相同性のある配列が糖尿病に関与するとの記載はない。
W001/55301 には本発明のポリべプチド及びポリヌクレオチドと相同性のある配列 が示され、 該配列の機能を調整する物質の用途として多数の疾患の治療が列挙さ れた中に糖尿病治療が含まれるが、 該配列が糖尿病に関与するとの裏付けの実施 例及び記載はない。 W001/75067には、 本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチ ドのうちプロテアーゼ活性を有する領域 (セリンプロテアーゼ領域) と 100%— 致する配列を含む配列が記載されている。 しかしながら、 これらの配列からなる ポリべプチド及びポリヌクレオチドは現実に取得しておらず、 プロテアーゼ活性 を有することも明らかにされておらず、 特定の用途も記載されていない。
即ち、 脳下垂体及び眼を含む限局した領域に発現し、 ソマトスタチン及びプロ
ラクチン放出べプチドの分解により成長ホルモンを増加させる活性を有するプロ テアーゼである本発明のプロテア一ゼは本発明者らが初めて見出したものである <
発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明で使用される用語につき説明する。
本明細書中で使用される 「前駆体」 は 「酵素前駆体」 を示しており、 これ自体 では不活性型であるが、 活性化 (プロセッシング) を受けて活性型酵素となる蛋 白質を表す。 「成熟体」 は、 活性化を受けて活性型となった酵素である蛋白質を 表す。 「プロテアーゼ活性」 は、 ペプチド結合の加水分解を触媒する活性であり、 活性型酵素 (成熟体) の示す酵素活性を表す。
本発明のポリペプチドには、 成熟体であるポリペプチド (1 ) 〜 (4) と、 前駆 体であるポリペプチド (5) ~ (16) が含まれる。
すなわち、 本発明のポリペプチドには、 成熟体であるポリペプチド
(1)配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 187番〜第 418番のアミノ酸配列 からなるポリペプチド (以下、 「ポリペプチド 187/418」 と称することがあ る) ;
(2)配列番号 17で表されるアミノ酸配列における第 161番〜第 392番のァミノ酸配 列からなるポリペプチド (以下、 「ポリペプチド 161/392」 と称することがあ る) ;
(3)配列番号 17で表されるァミノ酸配列における第 161番〜第 392香のアミノ酸 配列を含み、 かつ、 プロテアーゼ活性を示すポリペプチド、 あるいは配列番号 1 7で表されるアミノ酸配列における第 161番〜第 392番のァミノ酸配列において 1〜10個 (好ましくは 1〜7個、 より好ましくは 〜 5個、 更に好ましくは 1 ~3 個) のアミノ酸が欠失、 置換、 及ぴ 又は挿入されたアミノ酸配列を含み、 かつ プロテアーゼ活性を示すポリべプチド (以下、 「ポリべプチド 161/392の機能的 等価改変体」 と称することがある) ;
(4)配列番号 17で表されるアミノ酸配列における第 161番〜第 392香のアミノ酸配 列との相同性が 90%以上であるアミノ酸配列からなり、 しかも、 プロテアーゼ活
性を示すポリペプチド (以下、 「ポリペプチド 161/392の相同ポリペプチド」 と 称することがある)
が含まれる。
本発明のポリべプチドには、 前駆体であるポリべプチド
(5)配列番号 2で表されるアミノ酸配列からなるポリべプチド;
(6)配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 2番〜第 418番のァミノ酸配列か らなるポリペプチド;
(7)配列番号 17で表されるアミノ酸配列からなるポリべプチド;
(8)配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 45番〜第 418番のァミノ酸配列 からなるポリペプチド (以下、 「ポリペプチド 45/418」 と称することがある) ;
(9)配列番号 17で表されるアミノ酸配列における第 46番〜第 392番のァミノ酸配列 からなるポリペプチド (以下、 「ポリペプチド 46/392」 と称することがある)
(以下、 (5)乃至 (9)をあわせて 「本発明の前駆体」 と称することがある) ;
(10)配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 1番〜第 186番のアミノ酸配 列の 1〜10個のアミノ酸が欠失、 置換、 及び Z又は挿入された配列を含むアミノ 酸配列の G末端側に、 配列番号 1で表されるアミノ酸配列における第 187番〜第 418 香のアミノ酸配列が連結されたアミノ酸配列を含み、 かつ、 プロテアーゼ活 性を示す酵素の前駆体であるポリべプチド;
(11 )配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 2番〜第 186番のァミノ酸配 列の 〜 10個のアミノ酸が欠失、 置換、 及び Z又は挿入された配列を含むアミノ 酸配列の G末端側に、 配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 187番〜第 418香のアミノ酸配列が連結されたアミノ酸配列を含み、 かつ、 プロテアーゼ活 性を示す酵素の前駆体であるポリべプチド;
(12)配列番号 17で表されるアミノ酸配列を含み、 かつプロテア一ゼ活性を示す酵 素の前駆体であるポリべプチド、 あるいは配列番号 Πで表されるアミノ酸配列に おいて 1〜10個 (好ましくは 1〜7個、 より好ましくは 1 ~5個、 更に好ましくは 1〜 3個) のアミノ酸が欠失、 置換、 及び Z又は挿入されたアミノ酸配列を含み、 か つプロテアーゼ活性を示す酵素の前駆体であるポリべプチド;
(13)配列番号 2で表されるァミノ酸配列における第 45番〜第 186番のァミノ酸配列
の 1〜10個のアミノ酸が欠失、 置換、 及ぴ 又は挿入された配列を含むアミノ酸 配列の G末端側に、 配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 187番〜第 418番 のアミノ酸配列が連結されたアミノ酸配列を含み、 かつ、 プロテアーゼ活性を示 す酵素の前駆体であるポリべプチド;
(14)配列番号 17で表されるアミノ酸配列における第 46番〜第 392番のァミノ酸配 列を含み、 かつ、 プロテアーゼ活性を示す酵素の前駆体であるポリペプチド、 あ るいは配列番号 17で表されるアミノ酸配列における第 46番〜第 392番のァミノ酸 配列において 1〜10個 (好ましくは 1 ~7個、 より好ましくは 1〜5個、 更に好まし くは 1〜3個) のアミノ酸が欠失、 置換、 及び Z又は挿入されたアミノ酸配列を含 み、 かつプロテアーゼ活性を示す酵素の前駆体であるポリペプチド (以下、 (10) 乃至 (14)を 「本発明の前駆体の機能的等価改変体」 と称する) ;
(15)ポリペプチド 187/418を含み、 かつ、
配列番号 2で表されるアミノ酸配列、 配列番号 2で表されるアミノ酸配列における 第 2番〜第 418番のアミノ酸配列からなるポリべプチド、 またはポリべプチド 45/418のァミノ酸配列との相同性が 90%以上であるアミノ酸配列からなり、 しか も、 プロテアーゼ活性を示す酵素の前駆体であるポリペプチド;
及び
(16)配列番号 17で表されるアミノ酸配列又は配列番号 17で表されるァミノ酸配列 における第 46番〜第 392番のァミノ酸配列との相同性が 90%以上であるアミノ酸 配列からなり、 しかも、 プロテアーゼ活性を示す酵素の前駆体であるポリべプチ ド (以下、 (15)乃至(16)を 「本発明の前駆体の相同ポリペプチド j と称する) が含まれる。
「ポリペプチド 187/418の機能的等価改変体」 、 「ポリペプチド 161/392の機能 的等価改変体」 および 「本発明の前駆体の機能的等価改変体」 を総称して 「本発 明の機能的等価改変体」 と称するが、 「本発明の機能的等価改変体」 としては、 各本発明の機能的等価改変体のうち、 脳下垂体を含む限局された組織に発現され るポリぺプチドが好ましい。
「本発明の前駆体の相同ポリペプチド」 及び 「ポリペプチド 161/392の相同ポリ ペプチド」 を、 以下、 「本発明の相同ポリペプチド」 と称する。 「本発明の相同
ポリペプチド」 である限り、 特に限定されるものではないが、 該相同性が、 好ま しくは 95%以上、 更に好ましくは 98%以上であるアミノ酸配列を含むことができ、 また、 各相同ポリペプチドのうち、 脳下垂体を含む限局された組織に発現される ポリべプチドが好ましい。
なお、 本明細書における前記 「相同性」 とは、 BLASTパッケージ [sgi 32bは版, バージョン 2.0.12;National Center for Biotechnology Information (NCBI) cfc l) 入手] の bl2seqプログラム (Tatiana A. Tatusova, Thomas し. Madden, FEMS
Microbiol丄 ett. ,174, 247 - 250, 1999)を用いて得られた値を意味する。 なお、 パ ラメ一ターでは、 ペアワイズァラインメン卜パラメ一ターとして、
「プログラム名」 として 「blastpj を、
「Gap揷入 Cost値 J を rojで、
「Gap伸長 Cost値」 を rojで、
rMatrixj として 「BL0SUM62j を、
それぞれ使用する。 本発明の機能的等価改変体の起源はヒト又はマウスに限定されない。 例えば, 配列番号 2で表されるアミノ酸配列からなるポリべプチド、 配列番号 2で表される ァミノ酸配列における第 2番〜第 418番のァミノ酸配列からなるポリべプチド、 ポ リペプチド 45/418のヒ卜における変異体、 配列番号 17で表されるアミノ酸配列に おける第 161番〜第 392番のアミノ酸配列を含むポリべプチド、 配列番号 17で表さ れるァミノ酸配列からなるポリペプチド、 またはポリぺプチド 46/392のマウスに おける変異体が含まれるだけでなく、 ヒト又はマウス以外の生物 (例えば、 ラッ 卜、 ハムスター、 又はィヌ) 由来の機能的等価改変体が含まれる。 更には、 それ らの天然ポリペプチド (すなわち、 ヒト又はマウス由来の変異体、 あるいはヒド 又はマウス以外の生物由来の機能的等価改変体) 又は配列番号 2で表されるアミ ノ酸配列からなるポリべプチド、 配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 2 番〜第 418番のアミノ酸配列からなるポリペプチド、 ポリペプチド 45/418、 配列 番号 17で表されるアミノ酸配列における第 161番〜第 392香のアミノ酸配列を含む ポリペプチド、 配列番号 17で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、 ある
いはポリべプチド 46/392を元にして遺伝子工学的に人為的に改変したポリべプチ ドなどが含まれる。 なお、 本明細書において 「変異体」 (var i at i on) とは、 同 一種内の同一ポリペプチドにみられる個体差、 あるいは、 数種間の相同ポリぺプ チドにみられる差異を意味する。
以上、 本発明のポリべプチドについて説明したが、 「ポリべプチド 187/418」 「ポリペプチド 161/392」 、 「本発明の前駆体」 、 「本発明の機能的等価改変 体」 、 及び 「本発明の相同ポリペプチド」 を総称して、 以下、 「本発明のポリべ プチド J と称する。 「本発明のポリペプチド」 のうち、 成熟体であるポリべプチ ドを 「本発明のプロテアーゼ」 と総称する。 また、 「本発明のポリペプチド j の うち、 配列番号 2で表されるアミノ酸からなるポリペプチドである蛋白質を Γヒ ト NSP蛋白質」 または Γヒト NSP」 と称する。 配列番号 17で表されるアミノ酸から なるポリペプチドである蛋白質を 「マウス NSP蛋白質」 または 「マウス NSP」 と称 する。
配列番号 2で表されるアミノ酸配列からなるポリべプチドはヒト NSP蛋白質全長 0RFであり、 ポリペプチド 45/418は細胞外領域であり、 いずれも酵素の前駆体に 関するものである。 また、 ポリペプチド 187/418はセリンプロテアーゼ領域であ ると推定される。 配列番号 17で表されるアミノ酸配列からなるポリべプチドはマ ウス NSP蛋白質全長 0RFであり、 ポリペプチド 46/392は細胞外領域であり、 いずれ も酵素の前駆体に関するものである。 また、 ポリペプチド 161/392はセリンプロ テアーゼ領域であると推定される。 後述の実施例に示すように配列番号 2に記載 の酵素前駆体は、 自己触媒的に N末端領域をプロセッシングし、 成熟体 (活性型 酵素) となった結果、 酵素活性が発現することが明らかとなっている。 また同様 に、 細胞外領域 (ポリペプチド 45/418) も活性型酵素を得る為に用いることがで きる。 セリンプロテアーゼ領域と推定されるポリペプチド Ί87/418は、 酵素活性 が観察されたことから、 該領域を有すれば酵素活性を示すことが確認された。 本発明のポリヌクレオチドは、 本発明のポリペプチドをコードする限り、 特に 限定されるものではなく、 例えば、 配列番号 1で表される塩基配列、 配列番号 1で 表される塩基配列における第 4番〜第 1257番の塩基からなる配列、 配列番号 1で表 される塩基配列における第 133番〜第 1257香の塩基からなる配列、 配列表の配列
番号〗で表される塩基配列における第 559番〜第 1257番の塩基からなるポリヌクレ ォチド、 配列番号 16で表される塩基配列、 配列番号 16で表される塩基配列におけ る第 136番〜第 1179香の塩基からなる配列、 あるいは、 配列表の配列番号 16で表 される塩基配列における第 481番〜第 1179香の塩基からなるポリヌクレオチドを 挙げることができる。 配列番号〗で表される塩基配列における第 133番〜第 1257番 の塩基からなる前記ポリヌクレオチドは、 ポリペプチド 45/418を、 配列番号 1で 表される塩基配列における第 559番〜第 1257香の塩基からなる前記ポリヌクレオ チドは、 ポリペプチド Ί 87/418をコードする。 配列番号 1で表される塩基配列に おける第 4番〜第 1257香の塩基からなる前記ポリヌクレオチドは、 配列番号 2で表 されるァミノ酸配列の第 2番〜第 418番からなるポリペプチドをコードする。 配列 番号 1で表される塩基配列からなる前記ポリヌクレオチドは配列番号 2で表される ァミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする。 配列番号 16で表される塩基配 列における第 136番〜第 1 179香の塩基からなる前記ポリヌクレオチドは、 ポリべ プチド 46/392を、 配列番号 1で表される塩基配列における第 481番〜第 1179香の塩 基からなる前記ポリヌクレオチドは、 ポリペプチド Ί 61 /392をコードする。 また. 配列番号 16で表される塩基配列からなる前記ポリヌクレオチドは配列番号 17で表 されるアミノ酸配列からなるポリべプチドをコ一ドする。
本発明のポリヌクレオチドは、 当業者であれば、 配列番号 2で表されるァミノ 酸配列からなるポリペプチド、 ポリペプチド 45/418、 ポリペプチド 187/418、 配 列番号 17で表されるアミノ酸配列からなるポリべプチド、 ポリべプチド 46/392、 またはポリペプチド 161 /392の遺伝子の塩基配列 (例えば、 配列番号 1で表される 塩基配列、 配列番号 1で表される塩基配列における第 133番〜第 1257香の塩基から なる配列、 配列番号 1で表される塩基配列における第 559番〜第 1257香の塩基から なる配列、 配列番号 16で表される塩基配列、配列番号 16で表される塩基配列にお ける第 136番〜第 1 179香の塩基からなる配列または配列番号 1で表される塩基配列 における第 481番〜第 1 Π9番の塩基からなる配列) の情報を基にして、取得するこ とができる。なお、遺伝子組換え技術については、特に断りがない場合、公知の方法 (例えば、 Sambrook, Jら, "Mo l ecu l ar C l on i ng - A Laboratory Manua l " , Co ld Spr i ng Harbor Laboratory, NY, 1989等の遺伝子操作実験マニュアル)に従って実
施することが可能である。
例えば、 配列番号 1で表される塩基配列、 配列番号 1で表される塩基配列におけ る第 4番〜第 1257香の塩基からなる配列、 配列番号 1で表される塩基配列における 第 133番〜第 1257番の塩基からなる配列、 配列番号 1で表される塩基配列における 第 559番〜第 1257香の塩基からなる配列、 配列番号 16で表される塩基配列、 配列 番号 16で表される塩基配列における第 136番〜第 1 179香の塩基からなる配列また は配列番号 16で表される塩基配列における第 481番〜第 1 179香の塩基からなる配 列の情報を基にして適当なプライマー又はプローブを設計し、 前記プライマー又 はプローブと、 目的とする生物 [例えば、 哺乳動物 (例えば、 ヒト、 マウス、 ラ ッ卜、 ハムスター、 又はィヌ) ] 由来の試料 (例えば、 総 RNA若しくは mRNA画分、 GDNAライブラリー、 又はファージライブラリー) とを用いてポリメラーゼ連鎖反 応 (PGR)法 (Sa i k i, R. ら, SG i ence, 239, 487-491, 1988)又はハイブリダイゼーショ ン法を実施することにより、 ポリヌクレオチドを取得できる。 そのポリヌクレオ チドを適当な発現系 (例えば、 実施例 6に記載の方法) を用いて発現させる、 あ るいは更に精製する (例えば、 実施例 7に記載の方法) ことによリ本発明のポリ ペプチドが得られる。 例えば、 実施例 8に記載の方法により、 該ポリペプチドま たは該ポリペプチドがプロセッシングを受けて生成した成熟体がプロテアーゼ活 性を示すことを確認できる。
また、 前記の遺伝子工学的に人為的に改変したポリペプチドは、 常法、 例えば, 部位特異的突然変異誘発法(sは e-spec i f i c mutagenes i s ; Mark, D. F.ら,
Proc. Natに Acad. Sc i . USA, 81,5662-5666, 1984)により、 ポリヌクレオチドを取得 し、 該ポリヌクレオチドを適当な発現系を用いて発現させ、 発現したポリべプチ ドまたは該ポリべプチドがプロセッシングを受けて生成した成熟体が、 例えば、 実施例 8に記載の方法によリ、 プロテアーゼ活性を示すことを確認することによ リ、 所望のポリペプチドを取得することができる。
また、 本発明の機能的等価改変体には、 配列番号 2で表されるアミノ酸配列か らなるポリべプチド、 配列番号 2で表されるアミノ酸配列の第 2番から第 418番か らなるポリペプチド、 ポリペプチド 45/418、 ポリペプチド 187/418を含むポリべ プチド、 配列番号 17で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、 ポリべプチ
ド 46/392、 またはポリペプチド 161 /392を含むポリペプチド、 例えば、 N末端及び Z又は G末端に、 適当なマーカー配列等を付加したポリペプチド (すなわち、 融 合ポリペプチド) も、 プロテアーゼ活性を示すか、 あるいは、 プロセッシングを 受けた後にプロテアーゼ活性を示す限り含まれる。
前記マーカー配列としては、 ポリペプチドの発現の確認、 細胞内局在の確認、 あるいは、 精製等を容易に行なうための配列を用いることができ、 例えば、 FLAG ェピ! ^一プ、 へキサ一ヒスチジン 'タグ、 へマグルチニン 'タグ、 又は mycェピ トープなどを挙げることができる。
本発明のポリべプチドには、 本発明の前駆体蛋白質をコードするポリヌクレオ チドを適当な発現系を用いて発現させることにより得られる、 活性化に伴う切断 を受けたポリペプチドもプロテア一ゼ活性を示す限り含まれる。 好ましくは、 配 列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 186番目と第 187番目のアミノ酸であ るセリンプロテアーゼの活性化配列の間が切断されて生成したセリンプロテア一 ゼ活性を有する、 N末端が第 187番目のアミノ酸であるポリべプチド又は配列番号 17で表されるアミノ酸配列における第 160番目と第 161番目のアミノ酸であるセリ ンプロテアーゼの活性化配列の間が切断されて生成したセリンプロテア一ゼ活性 を有する、 N末端が第 1 61番目のアミノ酸であるポリペプチド (すなわち、 ポリべ プチド Ί 87/418又はポリべプチド 161 /392であると推定される) である。
本明細書において、 あるポリペプチドが 「プロテアーゼ活性」 を示すか否かは、 特に限定されるものではないが、 蛍光標識された合成ペプチド、 例えば MGA (4 - Methy卜 Goumary卜 7- Am i de)で G末端を標識された合成べプチドを用いて酵素切断 活性を検出することにより確認することができ(Yasuoka, S. ら, Am. J. Resp i r. Ce l l Mo I B i o l . , 16, 300-308, 1997)、 より好ましくは、 実施例 8に記載の方法 により確認することができる。 また、 生理活性物質であるソマトスタチン、 プロ ラクチン放出べプチドを用いて例えば実施例 10に記載の方法によリ酵素切断活性 を検出し確認することができる。 生理活性物質を用いた切断活性の検出が最も好 ましい。
本発明のポリヌクレオチドの製造方法は、 特に限定されるものではないが、 例 えば、 (1 ) PGRを用いた方法、 (2)常法の遺伝子工学的手法 (すなわち、 GDNAライ
ブラリーで形質転換した形質転換株から、 所望の cDNA を含む形質転換株を選択 する方法) を用いる方法、 又は (3)化学合成法などを挙げることができる。 各製 造方法については、 W001 /34785に記載されていると同様に実施できる。 ただし、 上記特許出願明細書における 「本発明の新規蛋白」 を本発明のポリペプチド、 「本発明の遺伝子」 を本発明のポリヌクレオチドと読み替える。
PGR を用いた方法では、 例えば、 前記特許文献の 「発明の実施の形態」 1 ) 蛋 白質遺伝子の製造方法 a)第 1製造法に記載された手順により、 本発明のポリヌク レオチドを製造することができる。 本発明のポリべプチドを産生する能力を有す る細胞あるいは組織、 例えば、 ヒ卜又はマウスの脳下垂体から mRNA を抽出する c 次いで、 この mRNAをランダムプライマーまたはオリゴ dTプライマーの存在下で、 逆転写酵素反応を行い、 第一鎖 GDNA を合成することが出来る。 得られた第一鎖 cDNAを用い、 目的遺伝子の一部の領域をはさんだ 2種類のプライマーを用いてポ リメラーゼ連鎖反応 (PGR) に供し、 本発明のポリヌクレオチドまたはその一部 を得ることができる。 より具体的には、 例えば実施例 3又は 1 1に記載の方法に より本発明のポリヌクレオチドを製造することが出来る。
常法の遺伝子工学的手法を用いる方法では、 例えば、 前記特許文献の 「発明の 実施の形態」 1 ) 蛋白質遺伝子の製造方法 b)第 2製造法に記載された手順により、 本発明のポリヌクレオチドを製造することができる。
化学合成法を用いた方法では、 例えば、 前記特許文献の 「発明の実施の形態」 1 ) 蛋白質遺伝子の製造方法 c)第 3製造法、 d)第 4製造法に記載された方法によ つて、 本発明のポリヌクレオチドを製造することができる。 より具体的には、 化 学合成法によって製造したヌクレオチド断片を結合することによつても製造でき る。 また、 各ポリヌクレオチド (オリゴヌクレオチド) は、 DNA合成機 (例えば, O l i go 1000M DNA Synthes i zer (ベックマン社)、 あるいは、 394 DNA/RNA Synthe s i zer (アプライドバイオシステムズ社)など) を用いて合成することができる。 本発明の発現ベクター、 形質転換細胞、 ポリペプチドの製造方法は、 例えば、 前記特許文献の 「発明の実施の形態 J 2 ) 本発明のベクター、 本発明の宿主細胞, 本発明の組換え蛋白の製造方法に記載された方法により実施できる。 単離された 本発明のポリヌクレオチドを、 適当なベクター DNAに再び組込むことにより、 真
核生物又は原核生物の宿主細胞を形質転換させることができる。 また、 これらの ベクターに適当なプロモーター及び形質発現にかかわる配列を導入することによ リ、 それぞれの宿主細胞においてポリヌクレオチドを発現させることが可能であ る。
本発明の発現ベクターは、 本発明のポリヌクレオチドを含む限り、 特に限定さ れるものではなく、 例えば、 用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現べ クタ一に、 本発明のポリヌクレオチドを揷入することによリ得られる発現べクタ 一を挙げることができる。
また、 本発明の細胞も、 本発明の前記発現ベクターでトランスフエクシヨン され、 本発明のポリヌクレオチドを含む限り、 特に限定されるものではなく、 例 えば、 本発明のポリヌクレオチドが、 宿主細胞の染色体に組み込まれた細胞であ ることもできるし、 あるいは、 本発明によるポリヌクレオチドを含む発現べクタ 一の形で含有する細胞であることもできる。 また、 本発明のポリペプチドを発現 している細胞であることもできるし、 あるいは、 本発明のポリペプチドを発現し ていない細胞であることもできる。 本発明の細胞は、 例えば、 本発明の発現べク ターにより、 所望の宿主細胞をトランスフエクシヨンすることにより得ることが できる。 より具体的には、 例えば、 実施例 3〜6に記載のように本発明のポリヌ クレオチドをほ乳類動物細胞用の発現ベクター PGDNA3. 1またはサイ卜メガロウイ ルスプロモータ一を有する pGEP4 (インビトロジェン社) に組み込むことにより, 所望のポリべプチドの発現ベクターを得ることができ、 該発現ベクターを市販の トランスフエクシヨン試薬 (例えば、 FuGENE™6 Transfect i on Reagent ;ロシュ 社) を用いてヒト胎児腎臓由来 HEK293細胞にェプスタイン 'バーウィルスの
EBNA- 1遺伝子を導入した HEK293- EBNA細胞 (インビ卜ロジ: Eン社) に取り込ませ て本発明の形質転換細胞を製造することができる。
上記で得られる所望の形質転換細胞は、 常法に従い培養することができ、 該培 養により本発明のポリべプチドが生産される。 該培養に用いられる培地としては, 採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択でき、 例えば上記
HEK293-EBNA細胞であれば牛胎児血清 (FBS)等の血清成分を添加したダルべッコ修 飾イーグル最小必須培地 (DNIEM)等の培地に G418を加えたものを使用できる。
上記により、 形質転換細胞に生産される本発明のポリペプチドは、 該ポリぺプ チドの物理的性質や生化学的性質等を利用した各種の公知の分離操作法により、 分離'精製することができる。
本発明のポリべプチドは、 マーカー配列とインフレームで融合して発現させる ことにより、 本発明のポリペプチドの発現の確認及び精製等が容易になる。 前記 マーカー配列としては、 例えば、 F L A Gェピトープ、 へキサーヒスチジン 'タ グ、 へマグルチニン .タグ、 又は mycェピ ! ^一プなどを挙げることができる。 ま た、 マーカー配列と本発明のポリペプチドとの間に、 プロテア一ゼ (例えば、 ェ ンテロキナーゼ、 ファクタ一 χ3、 又はトロンビンなど) が認識する特異的なアミ ノ酸配列を挿入することにより、 マーカー配列部分をこれらのプロテアーゼによ リ切断除去することが可能である。 例えば、 ムスカリンアセチルコリン受容体と へキサーヒスチジン■タグとをトロンビン認識配列で連結した報告がある
(Hayash i , M. K.及び Haga, T. , J. B i ochem. , 120, 1232-1238 (1996)。
<本発明のスクリーニング方法 >
本発明のプロテアーゼ又は配列番号 2で表されるアミノ酸配列における第 187番 〜第 418番のアミノ酸配列を含み、 かつ、 プロテア一ゼ活性を示すポリペプチド
(以下、 「本発明のスクリーニングに用いるポリペプチド」 ) を用いて、 本発明 のスクリーニングに用いるポリべプチドのプロテアーゼ活性を阻害する物質をス クリーニングすることができる。 本発明のスクリーニングに用いるポリべプチド としては、 後述の実施例 1及び 13に示すように脳下垂体で発現している蛋白質で あり、 かつ実施例 8に示すようにプロテアーゼ活性を有するものが望ましい。 実 施例 10に示すように本発明のスクリーニングに用いるポリペプチドの 1つである. ポリべプチド 45/418をコードするポリヌクレオチドを発現させることにより得ら れる活性化に伴う切断を受けたポリべプチドはソマトスタチン及びプロラクチン 放出ホルモンを切断することがわかった。 ソマトスタチンは視床下部から分泌さ れ、 脳下垂体からの成長ホルモンの分泌を抑制する制御因子である。 また、 プロ ラクチン放出ホルモンはソマトスタチンの脳下垂体における分泌を促進して成長 ホルモンの血中レベルを下げることが報告されている(l i j ima, N.ら,
Endocr i no l ogy, 142, 3239— 3243, 2001)。 本発明のスクリ一ニングに用いるポリべ プチドがソマトスタチン及びプロラクチン放出べプチドを切断したことから、 本 発明のスクリーニングに用いるポリべプチドを用いてその阻害剤をスクリーニン グすることにより、 内在性のソマトスタチン量を増加させ成長ホルモン等の分泌 抑制を介して糖尿病を改善する物質が得られる。
本発明のスクリ一ニングに用いるポリべプチドとしては、 実施例 8に示すように プロテアーゼ活性を有するものであリ、 後述の実施例 12及び 13に示すように眼で 発現している蛋白質が好ましい。 実施例 10に示すように、 本発明のスクリーニン グに用いるポリべプチドの 1つである、 ポリべプチド 45/418をコードするポリヌ クレオチドを発現させることにより得られる活性化に伴う切断を受けたポリぺプ チドはソマトスタチン及びプロラクチン放出ホルモンを切断することがわかって いる。 ソマトスタチンのアナログは試験的投与により糖尿病性網膜症を改善する ことが知られてしヽる (Dav i s, M. I .ら、 Hormone and Metabo l i c Research, 33, 295-299, 2001 )。 また、 網膜におけるソマトスタチンの免疫組織化学的解析の結 果、 ソマトスタチンの免疫陽性細胞は NSPの免疫陽性細胞が検出された視神経節 細胞層およびその隣接する内顆粒細胞層で検出されることが報告されている
(Johnson, J.ら、 M i croscopy Reseach and Techn i que, 50, 103-1 1 1 , 2000)。 さ らに糖尿病性網膜症を発症した糖尿病患者においては健常者に比べて硝子体液中 のソマトスタチン様物質の免疫反応性が低下することが報告されている(S imo, R. ら、 D i abetes Care, 25, 2282-2286, 2002)。 これらのことから、 本発明のスクリ 一二ングに用いるポリべプチドの阻害剤は NSP陽性細胞の近傍で産生されるソマ トスタチンの分解を抑制し、 内在性のソマトスタチンを安定化することにより、 ソマトスタチンアナログと同様の糖尿病性網膜症治療効果を示すと期待できる。 従って、 本発明のスクリーニングに用いるポリべプチドを用いてその阻害剤をス クリーニングすることにより、 糖尿病性網膜症を改善する物質が得られる。
本発明のスクリーニング法は、 特に限定されるものではないが、 本発明のスク リーニングに用し、るポリべプチドによる蛍光標識された合成べプチド、 例えば MCA (4-Methy l - Goumary卜 7- Am i de)で G末端を標識された合成べプチドの酵素切断 活性を検出することにより確認することができ(Yasuoka, S. ら, Am. J. Resp i r.
Ce l l Mo I B i o l . , 16, 300-308, 1997)、 より好ましくは、 実施例 8に記載の方法 により実施することができる。
たとえば実施例 8及び 9に記載の条件で、 I G50=10 M以下の物質を、 好ましく は I G50=1 M以下の物質を、 更に好ましくは I G50=0. 以下の物質をプロテア ーゼ阻害活性を有する物質として、 選択することができる。 また、 このようにプ 口テア一ゼ阻害活性を有する物質を選択することによって糖尿病治療薬または糖 尿病性網膜症治療薬を得ることができる。
本発明のスクリーニング法で使用する試験化合物としては、 特に限定されるも のではないが、 例えば、 市販の化合物 (ペプチドを含む) 、 ケミカルファイルに 登録されている種々の公知化合物 (ペプチドを含む) 、 コンビナトリアル■ケミ ストリー技術(N. K. Terrett, M. Gardner, D. W. Gordon, R. J. Koby l eck i , J. Stee l e, Tetrahedron, 51, 8135-73 (1995) )によつて得られた化合物群、 微生物の培養上清、 植物や海洋生物由来の天然成分、 動物組織抽出物、 あるいは、 本発明のスクリー ニング法により選択された化合物 (ペプチドを含む) を化学的又は生物学的に修 飾した化合物 (ペプチドを含む) を挙げることができる。
<本発明の糖尿病治療用医薬組成物又は糖尿病性網膜症治療用医薬組成物の製造 方法 >
本発明には、 本発明のスクリーニング方法を用いてスクリーニングする工程、 及び前記スクリーニングにより得られた物質を用いて製剤化する工程を含むこと を特徴とする、 糖尿病治療用医薬組成物又は糖尿病性網膜症治療用医薬組成物の 製造方法が包含される。
本発明のスクリーニング方法により得られる物質を有効成分とする製剤は、 前 記有効成分のタイプに応じて、 それらの製剤化に通常用いられる担体、 賦形剤、 及びノ又はその他の添加剤を用いて調製することができる。
投与としては、 例えば、 錠剤、 丸剤、 カプセル剤、 顆粒剤、 細粒剤、 散剤、 又 は経口用液剤などによる経口投与、 あるいは、 静注、 筋注、 若しくは関節注など の注射剤、 坐剤、 経皮投与剤、 又は経粘膜投与剤などによる非経口投与を挙げる ことができる。 特に胃で消化されるペプチドにあっては、 静注等の非経口投与が
好ましい。
経口投与のための固体組成物においては、 1又はそれ以上の活性物質と、 少な くとも一つの不活性な希釈剤、 例えば、 乳糖、 マンニトール、 ブドウ糖、 微結晶 セルロース、 ヒドロキシプロピルセルロース、 デンプン、 ポリビニルピロリ ドン、 又はメタケイ酸アルミン酸マグネシゥムなどと混合することができる。 前記組成 物は、 常法に従って、 不活性な希釈剤以外の添加剤、 例えば、 滑沢剤、 崩壊剤、 安定化剤、 又は溶解若しくは溶解補助剤などを含有することができる。 錠剤又は 丸剤は、 必要によリ糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質などのフィルムで被覆す ることができる。
経口のための液体組成物は、 例えば、 乳濁剤、 溶液剤、 懸濁剤、 シロップ剤、 又はエリキシル剤を含むことができ、 一般的に用いられる不活性な希釈剤、 例え ば、 精製水又はエタノールを含むことができる。 前記組成物は、 不活性な希釈剤 以外の添加剤、 例えば、 湿潤剤、 懸濁剤、 甘味剤、 芳香剤、 又は防腐剤を含有す ることができる。
非経口のための注射剤としては、 無菌の水性若しくは非水性の溶液剤、 懸濁剤、 又は乳濁剤を含むことができる。 水溶性の溶液剤又は懸濁剤には、 希釈剤として、 例えば、 注射用蒸留水又は生理用食塩水などを含むことができる。 非水溶性の溶 液剤又は懸濁剤の希釈剤としては、 例えば、 プロピレングリコール、 ポリエチレ ングリコール、 植物油 (例えば、 ォリーブ油) 、 アルコール類 (例えば、 ェタノ ール) 、 又はポリソルベート 80等を含むことができる。 前記組成物は、 更に湿潤 剤、 乳化剤、 分散剤、 安定化剤、 溶解若しくは溶解補助剤、 又は防腐剤などを含 むことができる。 前記組成物は、 例えば、 バクテリア保留フィルターを通す濾過, 殺菌剤の配合、 又は照射によって無菌化することができる。 また、 無菌の固体組 成物を製造し、 使用の際に、 無菌水又はその他の無菌用注射用媒体に溶解し、 使 用することもできる。
投与量は、 有効成分、 すなわち本発明のスクリーニング方法により得られる物 質の活性の強さ、 症状、 投与対象の年齢、 又は性別等を考慮して、 適宜決定する ことができる。
例えば、 経口投与の場合、 その投与量は、 通常、 成人 (体重 60kgとして) にお
いて、 1日につき約 0. 1〜100mg、 好ましくは 0. 1〜50mgである。 非経口投与の場 合、 注射剤の形では、 1曰につき 0. 01〜50mg、 好ましくは 0. 01〜10mgである。
実施例
以下に実施例により本発明を詳述するが, 本発明は該実施例によって限定される ものではない。 なお、 特に断りがない場合は、 遺伝子操作技術に関しては公知の 方法 (Maniatis、 T. et al. (1982) : rMolecular Cloning- A Laboratory Manual J Cold Spring Harbor Laboratory. NY等)に従って実施可能である。 ま た、 市販の試薬ゃキットを用いる場合には市販品の指示書に従って実施可能であ る。
(実施例 1 ) 新規 I I型膜貫通セリンプロテアーゼ遺伝子 NSPの部分配列の取得 配列番号 3 (配列番号 1の 607香から 633香の配列)と配列番号 4 (配列番号 1の 1124番から 1150番の相補配列)のオリゴ DNA を合成し、 クロンテック社のポリ A+ RNA よリス一パースクリプト I I (SUPERSCRIPT First-Strand Synthesis System for RT-PCR) (インビトロジェン社)を用い cDNA に転換することによリ作 製した自家製のヒ卜各組織由来の cDNAパネルを錶型とし、 DNAポリメラーゼ (LA- Taq DNA polymerase;宝酒造社)を用いて、 94°C2 分の後、 98°C10 秒、 60°C30 秒、 72°C1分のサイクルを 36回の PGR反応を行った。 この反応により、 脳下垂体、 子 宮を含む組織に選択的に 544bpの DNA断片が生成した。 この DNA断片の配列を直 接ジデォキシターミネータ一法により ABI3700 DMA シークェンサ一 (アプライド バイオシステムズ社) で解析し、 配列番号 1 の 607香から 1150香の配列を得た
(実施例 2) NSPの全長 0RF配列の決定
クロンテック社のヒト子宮の錶型 GDNA (Marathon- Ready™ GDNA)、 DNAポリメラ ーゼ 0°ダ n^esii "(登録商標) DNA polymerase;宝酒造社)を用いて、 GDNA末端増幅 PGR (Rap id Amplification of cDNA Ends、 RAGE)を繰り返すことにより、 5' 側お よび 3' 側の塩基配列を解読し、 実施例 1で取得した配列の全長のオープンリー
デイングフレーム(open read i ng f rame、0RF)配列を決定した。 この遺伝子を NSP と名付けた。 該遺伝子の全長塩基配列を配列番号 1に、 推定アミノ酸配列を配列 番号 2に示した。 NSPの 0RFは、 配列番号 2で表されるァミノ酸配列における第 1 香から第 418番まで、 あるいは該配列における第 2香から第 418香までの 417ま たは 418アミノ酸からなる新規蛋白質をコードしており、 ホモロジ一検索の結果, そのドメイン構造は N末から、 細胞内ドメイン、 膜貫通ドメイン、 プロ領域、 プ 口テアーゼ活性化配列、 セリンプロテアーゼドメイン、 G末端配列であり、 I I 型膜貫通セリンプロテアーゼフアミリーに属する分子であった。
(実施例 3 ) NSP全長 0RFのクローニングと蛋白質発現プラスミドの構築 配列番号 5 (配列番号 2の 1香から 30香の配列 5' 末端に制限酵素 Xba I認識 配列が付加された配列) と配列番号 6 (配列番号 2の 1225番から 1254番の相補配 列 5' 末端に制限酵素 BamH I認識配列が付加された配列)で示されるオリゴ DNA をプライマーとし、 ヒ卜子宮の錶型 cDNA (Marathon- Ready™ cDNA;クロンテック 社)、 DNAポリメラーゼ ( ¾ (登録商標) DNA po l ymerase ;宝酒造社)を用いて. 9 4 °C 2分の後、 98°C10秒、 65°C30秒、 72°C1分 30秒のサイクルを 40回、続いて 72°C7分の PGR反応を行った。この PGR産物(約 1 . 3Kbp)をフエノ一ルクロロホル ム処理し、 エタノール沈殿処理し、 精製水に溶解した。 この DNAを BamH I、Xba l で切断し、 pCEP4dE2-FLAG (W0 01/34785実施例 3)の Bam 、Xba l部位に挿入して、 全長蛋白質発現プラスミド pGEP - NSP-FLAGを完成した。
(実施例 4 ) NSP細胞外領域蛋白質発現プラスミドの構築
配列番号 2の 45香から 418番にコードされるポリペプチドを N末端に分泌シ グナル配列、 FLAGを付加した蛋白質として発現するためのプラスミドは以下のよ うに構築した。
まず、 配列番号 1の 133番から 1257香の遺伝子を PGRにより取得した。 詳し くは、 配列番号 7 (配列番号 1の 133香から 162香の配列 5' 末端に制限酵素
BamH I認識配列が付加された配列) と配列番号 8 (配列番号 1の 1225番から 1257 香の相補配列 5' 末端に制限酵素 Xho I認識配列が付加された配列)で示されるォ
リゴ DNAプライマ一、 錶型として pGEP - NSP-FLAG、 DNAポリメラーゼ 0°ダ广 (登録商標) DNA po l ymerase ;宝酒造社)を用いて、 94°C2分の後、 98°C10 秒、 65°C30秒、 72°C1分 30秒のサイクルを 25回、 続いて 72°C7分の反応を行った < こうして生成した DNA断片を pZErO-2ベクター(インビトロジエン社)の EGORV部 位にサブクローニングして配列を確認した。 BamH I、Xho l部位で目的の DNA断片を 切り出し、 pcDNA3. 1 -s i gna卜 FLAGベクターの BamH I、Xho l部位に挿入し
pcDNA3. 1 -s i gna I -FLA6-NSP-extr ace 1 1 u I arとした。 なお、 pcDNA3. 1 -s i gna I -FLAG は、 pcDNA3. 1 (+) (インビトロジェン社)の H ί nd 1 1 1、 Xho I部位に WO 01/34785の(実 施例 7-1 )記載の方法に従い、配列番号 10と配列番号 1 1から成る 2重鎖ォリゴ
DNAを挿入したプラスミドである。
(実施例 5 ) NSPのセリンプロテアーゼドメインおよび G末端配列発現プラス ミドの構築
配列番号 2の 187番から 418香にコ一ドされるポリペプチドを N末端に分泌シ グナル配列、 FLAGを付加した蛋白質として発現するためのプラスミドは以下のよ うに構築した。
まず、 配列番号 1の 559香から 1257番の遺伝子を PGRにより取得した。 詳し くは、 配列番号 9 (配列番号 1の 559香から 588香の配列 5' 末端に制限酵素 Bam H I認識配列が付加された配列)と配列番号 8で示されるオリゴ DNAプライマー、 錶型として pGEP - NSP-FLAG、 DNAポリメラーゼ (尸ダ" (登録商標) DMA
po I ymerase;宝酒造社)を用いて、 94°C2分の後、 98°C10秒、 65°C30秒、 72°C1分のサ イクルを 25回、 続いて 72°C7分の反応を行った。 こうして生成した DNA断片を 制限酵素 BamH I および Xho Iで切断した後、 pcDNA3. 1 - s i gna I -FLAGへ、、クタ-の BamH I、 Xho I部位に挿入し PGDNA3. 1 -s i gna l -FLAG-NSP-SerPDとした。
(実施例 6) NSP-FLAG, s i gna I -FLAG-NSP-extr ace I l u l ar、 s i gna卜 FLAG- NSP- SerPDの動物細胞株での発現
実施例 3-5において作製した発現プラスミドをトランスフヱクション試薬
(FuGENE™6 Transfect i on Reagent; ロシュ社)を用いて添付指示書に従い HEK293-
EBNA細胞 (インビトロジ:!:ン社) に導入した。 プラスミド導入後 12-16時間で培 地を無血清に置換した後、 さらに 48 - 60時間培養を継続し、 培養上清を回収した ( 培養上清中に目的蛋白が存在することを末端に付加した FLAGタグに対する抗体
(マウス抗 FLAGモノクローナル抗体 M2;シグマ社) を用いたウェスタンブロッ ティングで確認した。 すなわち、 上記培養上清を SDS/4%〜20% アクリルアミドゲ ル (第一化学薬品社) に電気泳動 (還元条件) 後、 ブロッテイング装置を用いて PVDF膜(ミリポア社)に転写した。 転写後の PVDF膜にブロックエース (大日本製 薬社) を添加してブロッキングした後、 ビォチン化マウス抗 FLAGモノクロ一ナ ル抗体 (M2 ;シグマ社) 、 西洋わさびパーォキシダーゼ標識ストレプトアビジン
(アマシャムフアルマシア社) を順次反応させた。 反応後、 EGLウェスタンプロ ッティング検出システム (アマシャムフアルマシア社) を用いて該蛋白の発現を 確認した。 pGEP-NSP-FLAG を導入した場合、 培養上清に分子量 26. 9±0. 5kDのバ ンドが検出されたが細胞溶解液には予想分子量 47kDの全長タンパク質はほとん ど検出されなかった。 このことから NSP遺伝子産物はセリンプロテアーゼフアミ リーに保存されたプロ領域とセリンプロテアーゼドメインの間にある活性化配列 で切断されて成熟体として培養上清中に分泌されると示唆される。 一方、 pcDNA3. 1 -s i gna I -FLAG-NSP-extr ace 1 1 u I arを導入した場合には、 培養上清中に分 子量 41. 6±0. 6kD、40. 0+0. 5kD、21 . 3土 1 . 0kD、 および 20. 0+1. OkDのバンドが検出さ れた。 また PGDNA3. 1-s i gna l -FLAG-NSP-SerPDを導入した場合では培養上清中に 分子量 27. 9士 0. 5kDのバンドが検出された。 pCEP- NSP-FLAG を導入した場合に比 較して pcDNA3. 1 -s i gna l -FLAG-NSP-SerPDを導入した場合に得られた物質の分子 量がやや大きいのは、 発現させるために s i gna l - FLAG- NSP-SerPDに付加したシグ ナル配列が残っているためと考えられた。
(実施例 7 ) NSP-FLA6, s i gna l -FLAG-NSP-extr ace M u I ar、 s i gna I -FLAG-NSP- SerPDの精製
上述のように HEK293- EBNA細胞にて発現させた蛋白質に FLAGタグが付加されてい ることを利用して、 以下の方法でァフィニィティ精製を行った。 すなわち実施例 6において回収した培養上清をカラムに詰めた FLAG抗体結合レジン (M2-agarose)
(シグマ社) にアプライし、 20 mM Tris-HCI (pH7.4)/150 mM NaGI (以下、 TBSとい う)で洗浄した後、 0.1M Gly-HGI (pH 3.0)で、 溶出、 分画し、 この溶液に直ちに 1M Tris-HCI (pH 8.0)を加えて中和した。 pCEP-NSP-FLAG を導入した場合、 pcDNA3.1 -s i gna I -FLAG-NSP-ext r ace I lularを導入した場合、 pcDNA3.1-signal- FLAG-NSP- SerPDを導入した場合に得られた精製標品をそれぞれ NSP-FLAG、 si gna I -FLAG-NSP-ext r ace I lular. 318^卜卩1_八6-^卩-36 0と称する。 溶出した精 製標品は、 還元条件下、 非還元条件下において電気泳動した後、 実施例 6に示し た FLAG抗体を用いたウェスタンブロッテイングおよび銀染色キッ卜(和光純薬社) によって検出した。 NSP - FLAGには G末端に FLAGタグが付加され、 signa卜 FLAG - NSP-extrace 11 u I arおよび s i gna I - FLAG-NSP - SerPDには N末端に FLAGタグが付加さ れている。 この結果 NSP - FLAGを発現させた場合、還元条件では分子量 26.9+1. OkD のバンドが抗 FLAG抗体および銀染色でともに検出され、 非還元条件下では分子量 26.9±1. OkD付近にスメァなバンドが検出された。 一方、 s i gna卜 FLAG- NSP- extrace I lularを発現させた場合は非還元条件下では分子量 41.6±0.6kD、
40.0±0.5kD、 21.3±1.0kD および 20.0±1. OkDのバンドが抗 FLAG抗体および銀染色 でともに検出され、 還元条件下ではさらに分子量 26.4+0.5kDのバンドが銀染色で 検出されたが、 抗 FLAG抗体では検出されなかった。 また、 signa FLAG-NSP- SerPDを発現させた場合は、 還元条件、 非還元条件いずれの場合でも分子量
27.9±0.5kDのバンドが抗 FLAG抗体および銀染色でともに検出された。 NSP- FLAG、 si gna卜 FLAG- NSP-extrace I lularのバンドパターンが大きく異なるのは、 NSP- FLAGは G末端にタグが付加されているためにプロセッシング後の成熟体が精製さ れているのに対して、 signal-FLAG-NSP-extracel lularは N末端にタグが付加され ているために精製後に自己消化によるプロセッシングが起きているためと考えら れる。 更に、 N末端に FLAGタグを付加した NSP細胞外領域の精製蛋白の抗 FLAG抗体 を用いたウェスタンプロット (還元条件) と還元'非還元条件下での銀染色バタ ーンを比較すると抗 FLAG抗体を用いたウェスタンブロットでは検出されない分子 量 2 .4±0.5kDのハ'、ンドが還元条件下での銀染色では検出されることから、 こ れは FLAGタグがついていない G末端側のセリンプロテアーゼドメインをふくむ ポリペプチドであると考えられる。 一方、 41.6±0.6kDおよび 40.0±0.5kDのバ
ンドは非還元条件と比較して還元条件で減少することから、 還元条件下で分 子量 26.4±0.5kDの部分が解離していると推測される。 これらのことから NSPは 少なくとも 2箇所以上で自己消化により切断されて成熟体になると考えられる。 セリンプロテアーゼが活性化するときに切断されることが知られている活性化部 位 (小出武比古、 医学の歩み、 198,11-16、2001)が^?にも存在する (配列 2で示し た 186番アルキ ンと 187番ィソロイシン) ことからこの間で切断され、 さらにその N 端側で少なくとも 1箇所切断されると考えられる。 また、 既知の I I型セリンブ 口テアーゼ HAT(Yamaoka, K. ら, 丄 Biol. Chem. 273, 11895-11901, 1998), Desd (Lang, J. C. and Schul ler, D. E. , British J. Cancer, 84, 237 - 243, 2001), heps in (Leytus, S. P. ら, Biochemistry, 27, 1067-1074, 1988) とのアミノ酸配列の比較から、 ジスルフィ ド結合を形成すると推定されてい るシスティン残基が NSPでも保存されている (Cys175、 212、 228、 292、
337,353,364,393)ことから約 26kDのセリンプロテア一ゼドメインを含むポリ ぺプチドと N端側のポリべプチドがジスルフィ ド結合を形成していると推測さ れる。 (他のプロテアーゼとの比較から Gys175と 292の間でジスルフィ ド結合 が形成されていると予想される。 )
(実施例 8) 合成ペプチドを用いた酵素活性の検出
MCA (4- Methy卜 Goumary卜 7- Amide)で G末端を標識された合成べプチドを用い て酵素的切断活性を検出する方法は特に断リの無い限リ、 論文報告された方法 (Yasuoka, S. ら, Am. J. Respir. Cell Mo I Biol. , 16, 300-308, 1997)に従つ た。すなわち、 MGAで G末端を標識された合成べプチド (ぺプチド研究所)を基質と して、 96穴プレートに終濃度 となるように TBS中に基質を希釈した。 こ の基質溶液に実施例 7に示した方法で精製した酵素標品を 10-50/ 1 添加し密閉 した後、 37 °Cで 30分 - 2時間インキュベートした。 その後合成ペプチドから酵素 によリ切断されて遊離した AMG (7- 1^ -4^611^卜00 31^ の蛍光を蛍光測定 プレー卜リーダー (Fluostar、SLT社)で励起波長 390 nm、 測定波長 460 nmにて測 定した。 この結果、 組換え体 NSP-FLAG, signal -FLAG-NSP-extrace 11 u I ar、 s i gna卜
FLAG-NSP-SerPDはいずれも合成へ。 1°チト、、 Boc-G I u (OBz I ) - Al a - Arg - MGA、 Boc-G I n - Arg-Arg-MCA, Boc-Phe-Ser-Arg-MCAの切断活性を示した。
(実施例 9) 既知プロテアーゼ阻害剤による酵素活性の阻害
実施例 8で示した酵素活性検出法を用いて、 反応液に既知プロテアーゼ阻害剤 を添加した場合の酵素活性の阻害効果を調べた。 基質として BOG - Glu (OBz I) - Ala - Arg-MGA、酵素標品として実施例 7のように精製した NSP細胞外領域の組換え体を 用い、 各種既知プロテアーゼ阻害剤存在下あるいは非存在下における酵素活性を 比較した。 NSPの酵素活性は終濃度 1 mM yy-tosyl-L-phenylalanyl chloromethyl ketoneで約 40 1 mM pheny I methane su I fony I fluoride (PMSF)で約 15%、 10 JM leupeptinで約 10%阻害された。一方、 NSPの酵素活性は終濃度 0.66TIU (trypsin inhibitor unit) (シグマ社) aprotininでは全く阻害されず既知の卜リブシン様 セリンプロテア一ゼとは阻害剤への感受性が異なっていることから、 配列のみな らず、 この点においても NSP成熟体は新しいセリンプロ亍ァーゼであると考えら れた。
実施例 8、9に記載の方法で NSP成熟体阻害剤のスクリ一二ングが可能であること がわかった。
(実施例 10) NSP成熟体による生理活性物質の切断
NSP成熟体の生理活性べプチド切断活性を以下の方法で検討した。 すなわち、 ォキシトシン、 ソマトスタチン(Somatostatinl - 14)、 -メラニン細胞剌激ホル モン ( or -Melanocyte stimulating hormone) 、 メラニン;疑集ホノレモン (Melanin— concentrat i ng hormone)、 プロラクチン放出べプチド (Pro I act in-rel eas i ng peptide31)、 アドレノコルチコトロピックホルモン、 脳下垂体アデニルシクラ一 ゼ活性化ポリペプチド 38、 インスリン、 インスリン様成長因子-し 黄体形成ホル モン放出ホ レモン(Luteinizing hormone releasing hormone)、 ノ ソプレツシン, ニューロテンシン、 サブスタンス P、 ブラジキニン、 エンケフアリン及び Apeに m
(すべてペプチド研究所) を終濃度 4 - 40 juMとなるようにそれぞれ TBS中に希 釈した。 これらの基質溶液に実施例 7に示した方法で精製した signa卜 FLAG- NSP -
extracel lularの酵素標品または酵素を含まない 9 mM Gly-HGI (pH 3.0)/0.909M Tris-HGI (pH 8.0)溶液を 3 I添加し密閉した後、 37°Cでー晚インキュベートし た。 酵素標品添加または無添加の基質溶液をそれぞれ高速液体クロマトグラフィ — (HPLG) (島津製作所) を用いて解析し比較したところ、 ソマトスタチン、 プロ ラクチン放出べプチド 31の場合のみ NSP成熟体による切断に伴う分離バタ一ン の変化が観察された。 NSP成熟体による切断部位を決定するためにソマトスタチ ンならびにプロラクチン放出べプチド 31の分解産物を HPLGはナノスペース (資 生堂) 、 MSは LGQ (サ一モクエス卜社) 、 カラムはカプセルパック(G18UG120、 1x150國;資生堂)を用いてマス(MS)スぺクトル測定を行い、 検出されたペプチド 断片の MS/MSスぺク トルをマニュアルもしくは Sequestソフト (サ一モクエス卜 社) を用いて解析した。 この結果ソマトスタチンの切断部位は配列番号 12の第 9 番目 Kと第 10番目 Tの間、 すなわち AGGKNFFWK/TFTSGと考えられた。 プロラク チン放出べプチドの切断部位は配列番号 13の第 5番目 Rと第 6番目 Hの間、すな わち SRTHR/HSME I RTPD I NPAWYASRG I RPVGRFと考えられた。また NSP成熟体による成 長ホルモンの切断を検討した。 成長ホルモン (バイオジェネシス社) 、 200ngと 実施例 7に示した方法で精製した signal-FLAG-NSP-extracel lularの酵素標品ま たは酵素を含まない 9 mM Gly-HGI (pH 3.0)/0.909M Tris-HCI (pH 8.0)溶液
5 i I を混合し密閉した後、 37°Cでー晚インキュベートした。 この反応液を用いて, ドデシル硫酸ナトリウム一ポリアクリルァミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE)を実施し た後、 PVDF膜に転写し、 実施例 6と同様の方法でウェスタンプロットを行い、 バ ンドパターンを解析した。 1次抗体として抗成長ホルモンモノクローナル抗体
(ネオマーカーズ社) を、 2次抗体としてパーォキシダーゼ標識ロバ抗マウス
IgGポリクローナル抗体 (アマシャム社) を用いて検出した。 この結果、 NSP成 熟体によって成長ホルモンは切断されなかった。
ソマトスタチンは視床下部から分泌され、 脳下垂体からの成長ホルモンの分泌 を抑制する制御因子である。 また、 プロラクチン放出ホルモンはソマトスタチン の脳下垂体における分泌を促進して成長ホルモンの血中レベルを下げることが報 告されている(I ijima, ら, Endocr i no logy, 142, 3239— 3243, 2001)。 NSPがソマ トスタチン及びプロラクチン放出べプチドを切断し、 成長ホルモンを切断しなか
つたことから NSP成熟体は脳下垂体において成長ホルモンの分泌量を増加させる 方向に作用すると考えられる。 すなわち、 NSP成熟体を用いてその阻害剤をスク リーニングすることにより、 内在性のソマトスタチン量を増加させ成長ホルモン 等の分泌抑制を介して糖尿病を改善する物質が得られると考えられた。
(実施例 11 ) マウス NSPの全長 0RF配列の決定
配列番号 14 と配列番号 15で示したプライマーを作製し、 胎齢 17 曰目のマウ ス胚の cDNA (Marathon-Ready™ cDNA;クロンテック社) を錶型として DNAポリメラ ーゼ 0° ί (登録商標) DNA polymerase;宝酒造社)を用いて、 94°C5 分の後、 98°C10秒、 65°C20秒、 72°C2分のサイクルを 40回、 続いて 72°C7分の PGR反応を 行った。この PGR産物 (約 1. 2Kbp)をァガロースゲル電気泳動後、 DNAゲル抽出キ ッ卜(QIAqu ick Ge l Extraction Kit、キアゲン社) を用いて精製し、 精製水に溶 解した。 この DNA を EcoRV で切断した pZErO - 2 ベクター (インビトロジェン 社) に挿入した。 得られたクローンの塩基配列はジデォキシターミネータ一法に より ABI3700 DNA Sequencer (アプライドバイオシステムズ社) を用いて解析し た。 明らかになった配列を配列番号 16に示した。 同配列は 1179塩基の 0RF (配列 番号 16)を持っている。 0RFから予測されるアミノ酸配列 (392 アミノ酸) を配列 番号 17に示した。
得られたマウス NSPとヒト NSPとの相同性は塩基配列で比較して 79. 7%, アミ ノ酸配列で比較して 69. 7%であった。 ヒ卜 NSPのセリンプロテアーゼドメィン
(配列番号 1の 559番から 1257番にコ一ドされ、配列番号 2の 187香から 418番 で示されるアミノ酸配列からなるドメイン) とマウス NSPのセリンプロテアーゼ ドメイン (配列番号 16の 481番から 1179香にコードされ、配列番号 17の 161番 から 392香で示されるアミノ酸配列からなるドメイン) における相同性は塩基配 列で比較して 84%、 アミノ酸配列で比較して 76. 8%であった。 マウス NSPはヒ 卜 NSPと高い相同性を示したことから、 マウス NSPはヒト NSPと同等の機能を持 つ蛋白質であることが推察される。
(実施例 12) 眼におけるヒ卜及びマウス NSPの発現
眼におけるヒト NSPの検出はヒト網膜由来 cDNA (バイオチェイン社) を錶型とし て実施例 1と同様の PCR法で行い、 544bpの DNA断片の生成を確認した。 マウス NSPの検出はセリンプロテアーゼドメインをコードする領域内に配列番号 18と 19で示したプライマーを作製しマウス眼由来 cDNA (クロンテック社) を錶型と し DNAポリメラーゼを含有する蛍光試薬(SYBR (登録商標) Green PCR Master M i x, アプライドバイオシステムズ社) を用いて、 95°C10分の後、 94°C15秒、 59°C1分の サイクルを 45回の PGR反応および経時的な増幅産物の検出を AB I PR I S 7700 (ァ プライドバイオシステムズ社) を用いて行った。 この増幅産物 (配列番号 12の 762 - 833番) をァガロースゲル電気泳動後ゲル抽出により精製し、 増幅された 72bpの塩基配列を解読することによリマウス NSPが特異的に増幅されていること を確認した。
NSP成熟体は生理活性べプチドであるソマトスタチンを切断する活性を有する ことを実施例 10において見出した。 ソマトスタチンアナログは糖尿病性網膜症 を改善することが知られてし λる (Dav i s, M. I .ら、 Hormone and Metabo l i c
Research, 33, 295-299, 2001)。これらの知見より、 NSP成熟体のプロテアーゼ活 性を測定する方法 (実施例 8) は糖尿病性網膜症治療薬をスクリーニングする方 法として利用でき、 NSP成熟体を阻害する物質は内因性ソマトスタチン量を増加 させ糖尿病性網膜症に効果を示すと考えられる。
(実施例" I 3 ) 脳下垂体、 眼における NSPの免疫組織化学的検出
抗 NSP抗体の作製および精製は、 抗ペプチド抗体作製法 (竹繙ら編、 分子生物 学研究のためのタンパク実験法、 バイオマニュアルシリーズ 7、 実験医学別冊、 羊土社、 77 - 86、1994) に従い、 以下のように行った。 抗原ペプチドとして配列番 号 20で示されるペプチド (配列番号 2の 238番目から 252番目のァミノ酸配列 で示される NSPの部分ペプチドにシスティン残基を付加したペプチド) を合成し, ゥシサイクログロブリンをキャリア蛋白質として結合させ、 油性アジュバントを 混合してェマルジョンを作製し、 ゥサギの皮内または皮下に 2-3週間おきに 8回 にわたつて接種することにより NSP蛋白質に対する抗血清を作製した。 抗原ぺプ チドを結合したァフィ二ティカラムを用いてこの抗血清を精製し、 抗 NSPポリク
ローナル特異抗体を得た。 この精製抗体を用いて以下に示す NSPの免疫組織化学 的検出を行った。
マウスを頸椎脱臼後 4%パラホルムアルデヒドで還流固定した後、 脳下垂体およ び眼を摘出した。 湿組織をアルコール系列に順次浸漬することにより脱水し、 透 徹、 パラフィン包埋後、 薄切組織切片を作製した。 この切片に抗 NSP抗体または 正常ゥサギ抗体を一次抗体として反応させ免疫組織染色キット (ベクター社) を 用いて内在性 NSPの免疫陽性細胞を特異的に検出した。 この結果、 脳下垂体にお いて NSP免疫陽性細胞は中間部 (中葉) に検出され、 前葉においても弱く検出さ れた。 眼において NSP免疫陽性細胞は主に網膜の視神経節細胞層で検出され、 視 神経節細胞が染色されていると考えられる。 一方、 正常ゥサギ抗体を一次抗体と した場合いずれの組織切片においてもバックグラウンドの染色はほとんど検出さ れなかった。 さらにヒ卜脳下垂体および眼における NSPの検出を上記と同様の方 法で行った。 この結果、 ヒト脳下垂体において NSP免疫陽性細胞は中間部および 前葉に強く検出された。 ヒト眼においては網膜に NSP免疫陽性細胞が存在し視神 経節細胞層などに高発現していることが確認された。 また糖尿病罹患者由来の脳 下垂体、 眼の組織切片においても正常組織と同様の部位に NSP免疫陽性細胞の存 在が検出された。 これらの結果より NSPはヒ卜、 マウスいずれにおいても脳下垂 体前葉および中間部、 眼の網膜に高度に局在するセリンプロテアーゼであると言 える。
ところで、 NSPの基質の一つであるソマトスタチンのアナログは試験的投与に より糖尿病性網膜症を改善することが知られている(Dav i s, Μ· I .ら、 Hormone and Metabo l i c Research, 33, 295-299, 2001)。 網膜におけるソマトスタチンの免疫 組織化学的解析の結果、 ソマトスタチンの免疫陽性細胞は NSPの免疫陽性細胞が 検出された視神経節細胞層およびその隣接する内顆粒細胞層で検出されることが 幸艮告されてしゝる (Johnson, J. ζ> χ i croscopy Reseach and Techn i que, 50, 103— 1 1 1 , 2000)。 さらに糖尿病性網膜症を発症した糖尿病患者においては健常者に比 ベて硝子体液中のソマトスタチン様物質の免疫反応性が低下することが報告され ている(S i mo, R, ら、 D i abetes Care, 25, 2282-2286, 2002)。 すなわち、 NSP阻 害剤には実施例 10で示した糖尿病治療効果に加え、 NSP陽性細胞の近傍で産生さ
れるソマトスタチンの分解を抑制し、 内在性のソマ卜スタチンを安定化すること により、 ソマトスタチンアナログと同様の糖尿病性網膜症治療効果を期待できる ,
産業上の利用可能性
本発明のポリぺプチドは脳下垂体、 眼を含む組織に局所的に発現するプロテア ーゼまたはその前駆体である。 本発明の前駆体は本発明のプロテア一ゼを得るた めに有用である。 本発明のプロテア一ゼはソマトスタチン切断活性を有すること から、 本発明のポリペプチド、 ポリヌクレオチド、 発現ベクター、 及び細胞は、 糖尿病治療薬のスクリーニング及び/又は糖尿病性網膜症治療薬のスクリーニン グに有用である。 配列表フリーテキス卜
以下の配列表の数字見出し < 2 2 3 >には、 「A r t i f i c i a l S e q u e n c e」 の説明を記載する。具体的には、 配列表の配列番号 5〜1 1の配列 で表される各塩基配列は、 人工的に合成したプライマー配列である。 配列番号 2 0は人工的に合成した抗原用のぺプチドである。 以上、 本発明を特定の態様に沿って説明したが、 当業者に自明の変形や改良は 本発明の範囲に含まれる。