明 細 書 マクロライド系化合物、 これを用いた抗真菌薬、 マクロライド系化合物を産生す る Sorangiura属細菌およびこれを用いたマクロライド系化合物の製造方法 技術分野
本発明は、 新規マクロライド系化合物 (YA 2— Mおよび YA 2— M類縁体) 、 当該化合物またはその塩を有効成分とする抗真菌薬、 新規マクロライド系化合物 を産生する Sorangium属細菌、 および、 これを用いたマクロライド系ィ匕合物の製 造方法に関する。 背景技術
従来より、 カンジダ属、 ァスペルギルス属、 トリコフィートン属等の真菌類を 病原体とする真菌症に対して、 様々な抗真菌薬が用いられている。 このような抗 真菌薬としては、 現在アンホテリシン、 ミコナゾール、 グリセオフルビン等が知 られている。
しかしこれら従来の抗真菌薬は抗真菌活性は有するものの、 動物細胞等の真核 細胞一般に対する細胞毒性が強い。 従って、 使用に際して十分な量を投与するこ とが出来ず、 必ずしも十分な治療効果を上げることが出来なレ、といった問題があ つた。 このため強力な抗真菌活性を有するとともに、 他の動物細胞等に対する細 胞毒性の低レ、抗真菌薬が要望されていた。
また、 これらの抗真菌薬は、 抗真菌効果を示す真菌類の種類が少なく、 例えば、 フィトフィトーラ ·力プシシ等に有効な抗真菌活性を示す薬剤は少ない。 しかし、 農薬の分野において、 真菌症は経済的にも重要な病害であり、 卵菌類フィトフィ トーラ等によるジャガイモ疫病等に対して有効な予防薬が求められている。 また、 従来の多くの薬剤に対して、 耐†生菌が出現し、 従来の薬剤が無効になることが頻 発しており、 常に新しい薬剤が求められている。
従って、 本発明は、 多種の真菌類に対して抗真菌活性を有し、 動物 ·植物細胞 :対する細胞毒性が低く、 しかも、 工業的大量生産の容易な新規抗生物質および :れを有効成分とする抗真菌薬を提供することを目的としている。 発明の開示
本発明者は上記目的を達成するため、 鋭意研究を続けた結果、 土壌から新たに
Sorangium属に属する細菌を培養し、 この培養物より抽出される新規物質が強い 抗真菌作用を有することを発見し本発明を完成した。
即ち、 本発明は、 以下のとおりである。
( 1 ) 下記の化学構造を有するマク口ライド系化合物。
(D YA2- : R=CH3
(2) YA2-M類縁体: R=H
( 2 ) 上記 (1 ) に記載のマクロライド系化合物またはその塩を有効成分とす
( 3 ) 下記の化学構造を有するマクロライド系化合物を産生する Sorangium属 細菌。
(DYA2-N1 : R=CH3
(2)YA2- M類縁体: R=H (4) 前記 Sorangium属細菌は、 Sorangium cellulosumであることを特徴と する上記 (3) に記載の Sorangium属細菌。
(5) 目 ijfH Sorangium属糸田菌は、 Sorangium cellulosum A J 13585 (F ERM BP— 8039) であることを特徴とする上記 (4) に記載の Sorangi um属細菌。
(6) 上記 (3) 〜 (5) のいずれか一つに記載の Sorangium属細菌を培地中 に培養し、 培地中おょぴ Zまたは細胞中に、 上記 (1) に記載のマクロライド系 化合物を蓄積させることを特徴とするマクロライド系化合物の製造方法。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明のマク口ライド系化合物について、
〔I〕 マクロライド系化合物を産生する Sorangium属細菌
〔II〕 マクロライド系化合物
〔III〕 マクロライド系化合物またはその塩を有効成分とする抗真菌薬
の順に添付の図面を参照して詳細に説明する。
〔I〕 マクロライド系化合物を産生する Sorangium属細菌
本発明のマクロライド系化合物は、 フィトフィトーラ、 アブシジァ、 リゾープ スおよぴァスペルギルスに対して抗菌活性を有する新規抗生物質 (Y A 2— Mお
ょぴ YA2— M類縁体) であり、 下記化学構造を有する (
(DYA2-M : R=CH3
(2)YA2-M類縁体: R=H 新規抗生物質 Y A 2— Mおよび YA 2一 M類縁体を産生する生産菌としては、 例えば Sorangium属細菌が挙げられる。 本発明においては、 Sorangium cellulos um、 特に A J 13585を好ましく用いることができる。 A J 13585は、 2 001年 5月 17日に FERM P— 18331として独立行政法人産業技術総 合研究所特許生物寄託センター (日本国茨城県つくば巿東 1丁目 1番地 1中央第 6) に寄託され、 2002年 5月 13日に FERM BP— 8039としてブタ ぺスト条約に基づく寄託へと移管されている。 本菌は土壌から分離したものであ り、 子実体を形成する滑走細菌である粘液細菌群に属しており、 セルロース資ィ匕 能を有する。
本菌の分類学的性質について以下に記す。
(形態的特徴)
酵母一寒天培地上で拡散性の薄いフィルム状の淡黄色なレヽし橙色のコロニーを 形成する。 また寒天表面を一部浸食しながら滑走運動により周囲に広がっていく。 栄養細胞は、 グラム陰性のかん菌で長さ 1. 5〜 3. 0 im, 幅は 0. 8〜 1. 2 μ mである。 橙色ないし赤褐色の子実体は多様な形状をとり (50〜500μ m) 、 柄を持たず、 亜球状の直径 10~30 μιηのスポランギオールを多数 (1 0〜50個) 結合した構造を有する。 また、 内部には、 乾燥に対して耐久性のか ん菌状の粘液胞子 (ミクソスポア;直径 0. 5〜 1. 0 μ m) を多数含んでレヽる。
(化学分類学的性質)
キノン糸且成はメナキノン 8である。 また D NAの G C含量は 6 9 . 0 %である。 (生育特性)
本菌はセルロース資ィヒ能を有する。 大腸菌等他の細菌類を分解'捕責する。 ま た硝酸塩資化能を有する。
これらの菌子的 fe貧を Bergey' s Manual of Determinative Bacteriology Nint h Edition, p. 52 (1994) , Williams & Wilkinsと対比して、 Sorangium cellulosura ソランギゥム セルロッサムと同定した。 なお、 Bergey s Manual of Systemati c Bacteriology p2160- 2161 (1989), Williams & Wilkinsでは、 Polyangium cell ulosumポランギゥム セルロッサムと記載されている。 本菌の分類学的性状に ついては上述の文献に詳述されている。
新規抗生物質 Y A 2一 Mおよび YA 2—M類縁体を産生する Sorangium属細菌 は、 一般的な微生物の培養方法を用いて培養することが可能である。
培養に用いられる培地としては、 新規抗生物質 YA 2— Mおよび YA 2— M類 縁体生産菌が利用できる栄養源を含有するものが利用できる。 例えば炭素源およ ぴ窒素源としてカゼイン、 グルテン、 大豆粉、 酵母エキスなどの各種タンパク質 ゃァミノ酸混合物などが適している。 また発酵生産に用いた酵母や細菌の菌体ぁ . るいはセノレロース、 グルコース、 デンプン、 デキストリンなどの糖質類や尿素、 硫酸アンモニゥム、 リン酸アンモニゥムなどの無機窒素源も利用可能である。 ま た培地は必要に応じて、 炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム、 リン酸カリウム、 硫酸マグネシウム等の無機塩を含有することが可能である。 培地の p Hは 5〜 9 で培養することができるが、 特に 6 . 0〜8 . 5で培養することが好ましい。 ま た生産物の収量を上げる目的で培地中に各種の吸着樹脂を添加して培養すること も可能である。
生産菌は 1 0 °C〜 3 8 °Cで培養することができるが、 特に 2 5 °C〜 3 4 °Cで培 養することが最も望ましい。 培養時間は通常 5日〜 3 0日であるが、 培養条件に より適宜変更することが可能である。
培養により生成される新規抗生物質 Y A 2—Mおよび Y A '2— M類縁体は、 主 として培養物中に蓄積される。 この生産菌の培養液から新規抗生物質 YA 2— M および YA 2—M類縁体を得るためには、 微生物の代謝産物を採集するのに通常 用いられる方法を用いることが可能である。 例えば新規抗生物質 Y A 2—Mおよ ぴ Y A 2— M類縁体と培養物中に含まれる他の物質との溶解度の差を利用する方 法、 イオン結合力の差を利用する方法、 吸着親和力の差を利用する方法、 分子量 の差を利用する方法等を単独であるレヽは適!^且み合わせて、 または反復して使用 することができる。 具体的には、 例えば、 新規抗生物質 Y A 2— Mおよび Y A 2 —M類縁体生産菌の培養物および菌体の抽出液をゲルろ過クロマトグラフィー、 吸着クロマトグラフィー、 逆相クロマトグラフィー等を組み合わせて用いて精製 することにより新規抗生物質 Y A 2— Mおよび Y A 2—M類縁体の活性成分を含 む画分が得られる。 この画分を減圧濃縮して得られる固形物をさらに高速液体ク 口マトグラフィーを用いて展開して精製することにより、 新規抗生物質 YA 2— Mおよび Y A 2一 M類縁体を得ることができる。
〔II〕 マクロライド系化合物
〔11-1〕 YA 2 -M
新規抗生物質 Y A 2— Mは、 以下のような理化学的性質を有する。
a ) 外観:無色、 粉末状。
b ) 溶解性:クロ口ホルム、 メタノール、 アセトン、 酢酸ェチルに可溶。 水に難 溶。
c ) 旋光度: [ひ] D24 - 219° (0. 070g/dl, CHC13)
d ) 赤外線吸収スペク トル (CHC13): 3546, 3030, 2934, 1733, 1715, 1672, 1456, 1375, 1228, 1199, 1129, 1078, 982 cm"1.
e ) ¾ -核磁気共鳴スペク トル (CDC13, 600 MHz): 5. 45 (dd, J = 15. 6, 9. 6 Hz, 1H) , 5. 36 (m, 1H) , 5. 35 (dd, J = 15. 6, 2. 5 Hz, 1H), 4. 70 (d, J = 11. 3 Hz,
1H) , 4. 16 (d, J = 3. 6 Hz, 1H) , 4. 00 (br. s, 1H) , 3. 73 (m, 1H) , 3. 48 (m, 1H ), 3. 47 (s, 3H), 3. 32 (s, 3H) , 2. 98 (dq, J = 7. 6, 7. 6 Hz, 1H) , 2. 66 (dd, J
= 15.6, 3.8 Hz, 1H), 2.44 (dd, J = 15.6, 5.6 Hz, 1H), 2.32 (m, 1H), 2.00 (m, 1H), 1.72 (m, 1H), 1.70(s, 3H), 1.40 (m, 1H), 1.26 (m, 1H), 1.25 (m, 1H), 1.10 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.03 (m, 1H), 1.01 (m, 1H), 0.98 (d, J = 6. 6 Hz, 3H), 0.93 (d, J = 6.8Hz, 3H) , 0.76 (d, J = 7.0 Hz, 3H).
f ) 13C-核磁気共鳴スぺク トル (CDC13, 100 MHz): 213.2 (s), 173.6 (s), 171.3
(s), 135.9 (d), 135.9 (s), 129.2 (d), 122.6 (d), 83.3 (d), 82.5 (d), 80.0
(d), 73.1 (d), 59.5 (q),58.0 (q), 47.4 (d), 47.1 (d), 35.7 (d), 35.3 (t), 34.2 (t), 33,6 (d), 28.8 (t), 21.6 (q), 19.1 (t), 15.3 (q), 15.3 (q),
13.0 (q), 12.8 (q).
g) FAB - MS質量分析、 matrix: (positive, m -二トロ ンシ レア/レコ ル (m-NBA) ): 505 [M +Na]+, 521 [M+K] +.
FABMS (negative, m-NBA): 481 [M - H]- .
h) 高分解能 FABMS (positive, Nal+ m - NBA): found ra/z 505.2766 [M+Na] +, ca led for C26H4208Na 505.2777..
i ) TLC (silica gel plate): Rf = 0.43 [CHC13- MeOH (9:1)]
以上のような性質を有する新規抗生物質 YA 2—Mは各種真菌類に対し優れた 抗菌活性を有し、 フィトフイトーラ、 アブシジァ、 リゾーブスおよびァスペルギ ルス等の糸状菌類のいずれに対しても抗菌活性を有する。
〔Π - 1〕 ΥΑ2— Μ類縁体
新規抗生物質 Y A 2— M類縁体は、 以下のような理ィ匕学的性質を有する。 a) 外観:無色、 粉末状
b) 溶解性:クロ口ホルム、 メタノール、 アセトン、 酢酸ェチルに可溶。 水に c) 旋光度: [a]D24 -234 (c 0.05, CHC13)
d) 赤外吸収スペク トル (KBr): 3600-3200 (br), 2964, 2933, 1733, 1717, 1457, 1375, 1197, 1128, 1089, 978 cm"1.
e) ¾ -核磁気共鳴スぺク トル (CDC13, 600 MHz): 5.53 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 5.45 (dd, J = 15.0, 9.8Hz, 1H), 5.39 (d, J = 10.1, 1H), 4.74 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 4.51 (br. s, 1H),4.19 (br. s, 1H), 3.72 (m, 1H), 3.47 (dq, J = 10.1, 6.7 Hz, 1H), 3.31 (s,3H), 2.99 (m, 1H), 2.68 (dd, J = 15.5, 3.7 Hz, 1H), 2.44 (dd, J = 15.5, 5.3Hz, 1H), 2.32 (m, 1H), 2.05 (m, 1H), 1.77 (m, 1H), 1.72 (s, 3H), 1.38 (m,lH), 1.27 (m, 1H), 1.25 (m, 1H), 1.11 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.02 (m, 1H),0.98 (m, 1H), 0.98 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 0.93 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 0.77 (d, J= 6.9 Hz, 3H).
f ) 13C-核磁気共鳴スペク トル (CDC13, 100 MHz): 213.2 (s), 174.6 (s), 172.0 (s), 135.9 (s), 134.6(d), 129.4 (d), 125.3 (d), 83.4 (d), 80.0 (d), 73,6 (d), 73.0 (d), 58.1 (q), 47.5 (d), 47.1 (d), 35.7 (d), 35.4 (t), 34.4 (t), 33.4 (d), 28.4 (t), 21.6 (q), 18.8 (t), 15.4 (q), 15.3 (q), 13.1 (q), 12.9 (q).
g) ESIMS質量分析、 (negative): 467 [M- Η]-·
h) 高分角早能 ESIMS (negative): found m/z 467.2621 [M-H] -, calcd for C25H3908(M-H) 467.2645.
i) TLC (silica gel plate): Rf = 0.32 [CHC13- MeOH (9:1)'], *YA2- M: Rf = 0.43 on the same plate.
以上のような性質を有する新規抗生物質 YA 2一 M類縁体は各種真菌類に対し 優れた抗萆活性を有する。
〔III〕 マクロライド系化合物またはその塩を有効成分とする抗真菌薬
上述のとおり、 新規抗生物質 YA2—Mおよび YA2— M類縁体はフィトフィ トーラ、 アブシジァ、 リゾープスおよびァスペルギルス等の糸状菌類のいずれに 対しても抗菌活性を有するため、 真菌症治療薬として有用である。
新規抗生物質 Y A 2一 Mおよび Y A 2—M類縁体は経口、 非経口で投与する事 ができる。 また、 農薬としても使用することができる。 新規抗生物質 YA2—M
おょぴ Y A 2— M類縁体はそれぞれ単独で使用してもよいし、 組み合わせて使用 してもよい。
本発明の化合物 YA 2— Mおよび Zまたは YA 2—M類縁体を医薬品、 例えば、 真菌感染症治療薬用の抗真菌剤として使用するには、 種々の投与形態に合わせて、 本発明の化合物を公知の医薬品担体と組み合わせて製剤化すればよレヽ。 このよう な投与形態とレては、 皮下注射、 静脈内注射、 筋肉内注射、 座薬等による非経口 投与、 あるいは、 錠剤、 カプセル剤、 散剤、 顆粒剤等による経口投与の全身投与 の他、 軟膏剤、 ローション剤、 膣座薬等の局所投与の形態を例示することができ る。 投与量は医薬品の投与方法によるが、 l O O O O M ' k g— d a y―1〜 0 . 0 1 ^u M · k g— 1 · d a y— 1、 望ましくは、 1 0 0 0 μ M · k g— 1 · d a y— 1 〜1 . 0 · k g—1 · d a y— 1である。
本発明の化合物 YA 2— Mおよび Zまたは YA 2一 M類縁体を農薬として使用 する場合は、 以下のとおりである。 本発明の化合物 Y A 2— M、 YA 2— M類縁 体は、 通常、 製剤分野で慣用される補助剤と一緒に使用される。 本発明の化合物 は公知の方法で、 例えば、 乳剤原液、 噴霧可能なペースト、 噴霧または希釈可能 な溶液、 希釈乳剤、 水和剤、 水溶剤、 粉剤、 粒剤、 フロアブノレ剤、 ドライフロア プル剤、 燻煙剤、 燻蒸剤、 ポリマー物質等によるカプセル剤に製剤される。
添加剤および担体としては、 固形剤を目的とする場合には、 大豆粉、 小麦粉等 の植物性粉末、 珪藻土、 燐灰石、 石膏、 タルク、 ベントナイト、 クレイ等の鉱物 性微粉末、 安息香酸ソーダ、 尿素、 芒硝等の有機および無機化合物が使用される。 液体の剤型を目的とする場合には、 植物油、 鉱物油、 ケロシン、 キシレン、 ト ルェンのような芳香族系炭化水素、 ホルムアミド、 ジメチルホルムアミドのよう なァミド類、 ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類、 メチルイソブチル ケトンおょぴアセトンのようなケトン類、 トリクロロエチレン、 水等を溶剤とし て使用する。 これらの製剤において、 均一力つ安定な形態を取るために、 必要な らば界面活性剤を使用することもできる。 このようにして得られた水和剤、 乳剤、 水溶液、 フロアブル剤、 ドライフロアブル剤は水で所定の濃度に希釈して懸濁液
あるいは乳濁液として、 粉剤、 粒剤はそのまま、 土壌または植物に散布する方法 で使用される。
本発明のマクロライド系化合物 YA 2—Mおよび/または Y A 2— M類縁体を 含む農薬中の有効成分含有量および施用量は、 剤型や、 施用の対象となるダニま たは病原菌の種類、 それらの予想される発生時期および期間等の条件に応じて、 広範囲に変えることができる。
通常本発明のマク口ライド系化合物 YA 2一 Mおよび/又は YA 2—M類縁体 を含む農薬中の Y A 2— Mおよび Z又は YA 2— M類縁体含有量は 0 . 0 1〜 5 0重量0 /0、 好ましくは 0. 1〜1 0重量%である力 場合によっては Y A 2— M および Z又は YA 2— M類縁体のみであっても良レ、。 さらに施用時にこれを水等 で希釈する場合、 例えば殺ダニ剤もしくは殺菌剤として施用する際の濃度は、 0 . 0 0 1〜0 . 5重量%、 好ましくは、 0. 0 1〜0 . 0 5重量%が望ましい。 ま た、 Y A 2—Mおよび/又は Y A 2—M類縁体の施用量は 1回 1 0 aあたり 1 0 〜5 0 0 0 g、 好ましくは 1 0 0〜5 0 0 gである。 しかしながら特別の場合は、 これらの範囲を超えるカ または、 下回ることも可能である。 例えば他の農薬等 と混合して施用し、 共力効果が認められる場合には、 さらに低薬量で使用できる。 また新規抗生物質 YA 2一 Mおよび YA 2— M類縁体は、 必要に応じて塩とし て調製することができる。 塩として用いる場合、 YA 2— Mおよび Z又は YA 2 —M類縁体の溶液を、 水酸化カリウム、 水酸化ナトリウム、 水酸化カルシウム等 の無機塩基、 リジン、 アルギニン等の塩基性アミノ酸、 ァミン等の塩基性物質に て中和し利用することができる。 また未中和の状態で医薬品、 農薬の用途に用い、 水溶液、 乳化物等の製剤化する時、 適宜中和し使用することも可能である。
また薬剤上必要な、 賦形剤、 結合剤、 防腐剤、 緩衝剤、 酸ィヒ防止剤、 香料等を 用いて調製することが可能である。
実施例
以下、 本発明の実施例を説明する力 本発明はもちろんこれらの方法に限定さ れるものではなく、 培養器の種類、 培養条件、 採取、 精製、 試験法等は大幅に変
え得るものであることは言うまでもない。
1. 新規抗生物質 Y A 2— Mおよび Y A 2—M類縁体の製造
下記の組成を有する寒天培地を調製する (加熱蒸気殺菌 120°C、 20分) 。 これに凍結保存から融解した粘液細菌 Sorangium cellulosum ソランギゥム セ ルロッサム (A J 13585 FERM B P— 8039 ) を 2〜 3塊接種し、 30°Cで 14日間培養した。
(シード用酵母—寒天培地の組成)
パン酵母菌体 (湿重量) 5 g
シァノコバラミン 0. 5 m g
寒天 (ディフコ社製) 15 g
塩化カルシウム · 2水塩
(pH7. 2)
次に下記の組成を有する生産培地を調製し、 その 1000mlを 2500ml 容三角フラスコに注入し、 加熱蒸気滅菌 (120° 20分) した。 これに上述 のシ—ド培地上に生育したコロニーから、 30塊接種し、 30°Cで 21日間旋回 培養 (160 r pm) した。
(生産培地組成)
硫酸マグネシウム · 7水塩 1. 5 g
クェン酸鉄 20m g
バクトペプトン 0. 5 g
硝酸カリウム 2 g
燐酸 2カリウム 0. 25 g
L一シスチン 0. 1 g
Lーリンゴ酸力リゥム 1 g
塩化カルシウム · 2水塩 5 g
ダルコ一ス 5 g
セノレロース 5 g
吸着樹脂 SP 207 (三菱化学製) 10 g
蒸留水 1リットル
(pH6. 8〜7. 0)
得られた生産培地の培養液から以下の手順で新規抗生物質 Y A 2— Mおよぴ Y A 2—M類縁体の精製 ·単離を行つた。
Sorangium cellulosum YA2株の培養菌体と樹脂 (13 L broth分) を 300 m
Lのアセトンで抽出し、 濾過した。 300 mLのアセトンで洗浄し、 抽出濾液 とァセトン洗浄液を約 200 m Lの水懸濁液へと濃縮した。 これを酢酸ェチル で抽出 (200 mLX 3) し、 860 m gの酢酸ェチル画分を得た。 これを O DSのオープンカラム (Nacalai Cosmosil 140 C18— OPN 20 g, f29X50讓, 30% aq. MeOH, 80% aq. MeOH, MeOH, Me0H-CHC13) で分離した。 80% aq. MeOHで溶出 した画分 308 mgを、 HPLC (Shiseido CAPCELLPAK CIS UG80, 20 X 250mm, 55% aq. MeCN-0.1% TFA, 7.0 mL/min, UV210 nm) で分離した。
以上の手順により、 YA 2— M類縁体を含む画分 (tR= 14.5-43 min, 61. 7 mg) 、 および、 YA2—Mを含む画分 (tR = 49.7- 53 min, 13. 7 m g) を得た。
YA2— Mを含む画分 (tR = 49.7- 53 min, 13. 7 mg) は、 シリカゲル カラム (Merck silica gel 60 3 g , f9X85 ram, hexane-CHC13- MeOH (10:10:1, 5:5:1), CHC13- MeOH (1:3)) によって精製し、 9. 9 111 §の¥ 2—1^ (おおよ そ hexane- CHC13- MeOH (5: 5:1)で溶出) を無色粉末として得た。
Y A 2— M類縁体を含む画分 (tR = 14.5-43 min, 61. 7 mg) は、 シリ 力ゲルカラム (Merck silica gel 60 12 g, fl6X103應, hexane-CHC13- MeOH (10:10:1, 4:4:1), CHC13 - MeOH (1:1)) によって精製し、 おおよそ hexane - CHC13- MeOH (4:4:1)で溶出した Y A 2一 M類縁体を含む画分 18. 4 m gを、 さらに HPLC (Shiseido CAPCELLPAK C18 UG120, 10X250 mm, 75% aq. MeOH- 0.1% TFA, 2.5 mL/min, UV210nm) で精製し、 4. 5 mgのYA2—M類縁体 (tR = 15.6-17.9 rain, ) を無色粉末として得た。
2. 抗真菌活性試験
新規抗生物質 Y A 2一 Mの抗真菌活性を常法のペーパーディスク法を用いて求 めた。 , 新規抗生物質 Y A 2—Mを少量のメタノ一ルで溶解した後、 検定培地 (グリセ 口ール; 2 %、 ぺプトン (ディフコ社) ; 0 · 5 %、 酵母エキス (ディフコ社) ; 0 . 5 %、 燐酸カリウム; 2 5 mM、 p H = 6 . 5 ) で等倍希釈系列を作製した。 その溶液に表 1記載の各々の被検菌を接種 (約 1 04個胞子/ m L) し、 2 5 °C で 2日間培養して、 生育阻害の認められない最小濃度 (M I C) を求めた。 結果 を表 1に示す。
表 1から明らかなように新規抗生物質 Y A 2— Mは種々の真菌類に対して、 優 れた抗真菌活性を有することがわかった。
以上の説明から明らかなように、 本発明の新規マクロライド系化合物は、 種々 の真菌類に対して、 優れた抗真菌活性を有するため、 抗真菌効果の高い抗真菌剤 を提供することが可能となる。 また本発明は通常の微生物培養法で生産すること ができ、 抽出、 精製にも特別の方法を用いないので工業的な大量生産が可能であ る。 産業上の利用可能性
以上のように、 本発明にかかるマクロライド系化合物は、 多種の真菌類に対し て抗真菌活性を有し、 動物 ·植物細胞に対する細胞毒性が低く、 しかも、 工業的 大量生産が容易であるため、 抗生物質として極めて有用である。
また、 本発明にか'かるマクロライド系化合物を有効成分とする抗真菌薬は、 フ ィトフイトーラ、 アブシジァ、 リゾープスおよびァスペルギルス等の糸状菌類の いずれに対しても抗菌活性を有するため、 真菌症治療薬、 農薬等として有用であ る。
また、 本発明にかかるマクロライド系化合物を産生する Sorangium属細菌は、 マクロライド系化合物 (YA 2— Mおよび Y A 2— M類縁体) を産生するので、 マクロライド系化合物の工業的大量生産に有用である。 また、 本発明にかかるマクロライド系化合物の製造方法は、 マクロライド系化 合物を産生する Sorangium属細菌を利用することによ.り、 新規マク口ライド系化 合物 (YA 2—MぉょぴYA 2—M類縁体) を工業的に大量生産できるので、 新 規抗生物質の製造方法として極めて有用である。