ムチン含有医薬組成物 技術分野
本発明はムチンまたはその類縁体 (以下、 単にムチン類という。 ) を含有する 医薬組成物に関する。 詳しくは、
明
(1) 下記式で示される化合物 I (以下、 化合物 Iという場合には、 化合物 I、
田
その薬学的に許容される塩、 またはそれらの溶媒和物もしくはそれらの水和物を 含むものとする。 )
(式中、 Xは (R2) (R3) C一 (R C3〜C8シクロアルキル基、 置換基 を有していても良い C6〜C14ァリール基、 置換基を有していても良い複素環残 基、 置換基を有していても良い C6〜C14ァリールォキシ基、 または置換基を有 していても良い C7〜C15ァリールメチル基を表し、 R2および R3はそれぞれ独 立して水素原子もしくは C 〜 C 5アルキル基を表すか、 または R 2および R 3は一 緒になって C2〜C7アルキレン基を表す) 、
または R7— A— (R7は置換基を有していても良い C6〜C14ァリール基、 フル ォレニル基もしくは複素環残基で置換されていてもよい(^〜 ^アルキル基; 置換基を有していても良い C6〜C14ァリール基;置換基を有していても良い複 素環残基を表し、 Aは酸素原子または N_R8 (R8は水素原子または Ci CgT ルキル基を表す) を表し、
Yは酸素原子または硫黄原子を表し、
R 4および R 5はそれぞれ独立して水素原子または C 〜 C 5アルキル基を表し、 R6は水素原子、 水酸基で置換されていてもよい ュ〜。^アルキル基、 水酸基ま
たは C i C sアルコキシ基を表す。 )
の効果、 すなわち抗菌 (静菌、 殺菌および除菌を含む。 以下同じ。 ) 活性、 特 に抗ヘリコパクター · ピロリ活性がムチン類により増強された医薬組成物、
( 2 ) ムチン類により化合物 Iの溶解速度および Zまたは溶解度が高められた医 薬組成物、
( 3 ) ムチン類を化合物 Iの活性増強剤または溶解度促進剤として配合する医薬 組成物、
に関する。 背景技術
化合物 Iは特開平 1 1一 7 1 3 3 6号公報および WO 0 0 / 3 7 4 3 4号公報 に記載の製造方法に準じて得られる化合物であり、 優れた抗菌活性を持つ化合物 である。
ムチン類は、 ゲル形成機能による被覆、 水素イオン浸透遅延作用、 抗ペプシン 作用により、 胃酸やペプシン等の消化液が直接胃腸管の粘膜に触れるのを防ぐ働 きを持つ (堀田恭子、 最新消化性潰瘍要覧、 1 3 8— 1 4 8ページ、 1 9 8 7 年) 。 したがって、 潰瘍発生に悪影響を及ぼす胃酸やペプシン等の消化液の攻撃 から胃 ·十二指腸粘膜壁をまもる効果を持つことから、 消化性潰瘍治療薬として 用いられている。
しかしながら、 ムチンの抗菌活性については明らかでなく、 特に、 抗ヘリコパ クタ一 ·ピロリ活性については一切知られていない。 また、 化合物 Iとムチンを 配合した製剤についても知られていない。
ところで、 ヘリコパクター · ピロリは消化管内に存在する病原性細菌として知 られている (Marshall,BJ、 Microbios Lett , 25, 83-88, 1984) 。 このへリコパ クタ一 ·ピロリは、 近年人の胃粘膜より分離されたグラム陰性の微好気性細菌で あり、 消化管における炎症、 潰瘍の形成および再発、 さらには胃癌との関連が示 唆される報告が数多く発表されている (Molecular Medicine, 31, 1304-1374,
1994 他) 。
これまで化合物 Iの抗へリコパクター ' ピロリ活性について、 本発明者らは 試験管内 (in vitro) における試験では良好な結果を得ている (特開平 1 1一 7 3 3 6号公報および WO 0 0 / 3 7 4 3 4号公報参照) 力 生体内 (in vivo) における試験では in vitro 試験ほどの良好な結果が得られていない。 すなわち、 in vivo試験においては活性が減弱してしまっている。 この理由はいくつか考え られるが、 その一つとして、 化合物 Iは水に対する溶解性があまりょくなく、 水 に対する溶解速度があまり速くないという化合物 I特有の性質によるものである と考えることができる。
一般に薬物が腸内または体表面に存在する細菌等に作用する場合、 その薬物は 何らかの溶媒、 通常は水に溶解することにより薬効を発現する。 従って、 水に対 する溶解性が悪かったり、 水に対する薬物の溶解速度が遅い薬物の場合、 その薬 効を十分に発揮できないことがある。 そして、 このような薬物の薬効を十分に発 揮させようとする場合、 その方法の一つとして、 投与量を増やすということが考 えられる。 しかしながら、 薬物の投与量を増やせば増やすほど副作用を発現する 可能性が高くなることは周知の事実であり、 副作用を軽減する事のみに主眼をお けば、 投与量は必要最小限にとどめておくことが好ましい。
なお、 体液や消化液の大部分は水が占めている (血液に占める水の割合は約 8 0 %、 胃液に占める水の割合は約 9 9 % (岩波書店生物学事典第 3版) ) ので、 本明細書中、 水には体液や消化液を含むものとする。 発明の開示
本発明者らは化合物 Iについて、 in vivo においても、 in vitro と同等の薬 効を発現させるベく研究を進めたところ、 ムチン類を用いることが有効であるこ とを知り本発明を完成するに至った。
すなわち、 本発明の課題は化合物 Iおよびムチン類を含有する医薬組成物を提 供することにある。 より詳細には in vivo において化合物 Iの活性をムチン類に
より増強させる医薬組成物、 化合物 Iの水に対する溶解速度および/または溶解 度をムチン類を用いることで改善した医薬組成物、 化合物 Iの活性増強剤また は溶解促進剤としてムチン類を配合する医薬組成物を提供することにある。 ま た本発明においては化合物 Iの水に対する溶解速度または溶解度をムチン類によ り改善する方法も包含している。
本発明の要旨は以下に示す通りである。
1. 下記式で示される化合物 I、 その薬学的に許容される塩、 またはそれらの溶 媒和物もしくはそれらの水和物
(式中、 Xは (R2) (R3) C- (R 3C3〜C8シクロアルキル基、 置換基 を有していても良い C6〜C14ァリール基、 置換基を有していても良い複素環残 基、 置換基を有していても良い C6〜C14ァリールォキシ基、 または置換基を有 していても良い C7〜C15ァリールメチル基を表し、 R2および R 3はそれぞれ独 立して水素原子もしくは C Csアルキル基を表すか、 または R2および R3は一 緒になって C2〜C7アルキレン基を表す) 、
または R7— A— (R 7は置換基を有していても良い Ce Ci 4ァリール基、 フル ォレニル基もしくは複素環残基で置換されていてもよい (^〜 。アルキル基; 置換基を有していても良い C6〜C14ァリール基;置換基を有していても良い複 素環残基を表し、 Aは酸素原子または N— : 8 (R8は水素原子または Ci CsT ルキル基を表す) を表し、
Yは酸素原子または硫黄原子を表し、
R 4および R 5はそれぞれ独立して水素原子または C 〜 C 5アルキル基を表し、 R 6は水素原子、 水酸基で置換されていてもよい Ci Csアルキル基、 水酸基ま · たは Ci Cgアルコキシ基を表す。 )
およびムチンまたはその類縁体を含有する医薬組成物。
2 . ムチンまたはその類縁体が、 糖蛋白質、 硫酸化糖蛋白質、 ムコ多糖、 または これらの一部が遺伝子組換えによる手法、 微生物学的手法、 もしくは化学的手 法により修飾された物質である第 1項記載の医薬組成物。
3 . ムチンまたはその類縁体が、 哺乳動物の唾液からの抽出物、 消化管の粘液産 生細胞で合成され分泌される粘液からの抽出物、 またはこれらの一部が遺伝子組 換えによる手法、 微生物学的手法、 もしくは化学的手法により修飾された物質で ある第 1項または第 2項記載の医薬組成物。
4 . ムチンまたはその類縁体が、 ガストリックムチンまたは遺伝子組換えによる 手法、 微生物的手法、 もしくは化学的手法により修飾されたガストリックムチン である第 1項〜第 3項記載の医薬組成物。
5 . 化合物 Iが N— ( 3—メチルカルパモイルフエ二ル) 一 2一ナフチルァセト アミドである第 1項〜第 4項記載の医薬組成物。
6 . 化合物 I、 その薬学的に許容される塩、 またはそれらの溶媒和物もしくはそ れらの水和物の抗菌活性が、 ムチンまたはその類縁体により増強された第 1項記 載の医薬組成物。
7 . 抗菌活性が抗ヘリコパクター · ピロリ活性である第 6項記載の医薬組成物。
8 . 化合物 I、 その薬学的に許容される塩、 またはそれらの溶媒和物もしくはそ れらの水和物の溶解速度およびノまたは溶解度が、 ムチンまだはその類縁体によ り高められた第 1項記載の医薬組成物。
9 . 化合物 その薬学的に許容される塩、 またはそれらの溶媒和物もしくはそ れらの水和物の活性増強剤または溶解促進剤としてムチンまたはその類縁体を配 合する第 1項記載の医薬組成物。
1 0 . ムチンまたはその類縁体が、 糖蛋白質、 硫酸化糖蛋白質、 ムコ多糖、 また はこれらの一部が遺伝子組換えによる手法、 微生物学的手法、 もしくは化学的手 法により修飾された物質である第 6項〜第 9項記載の医薬組成物。
1 1 . ムチンまたはその類縁体が、 哺乳動物の唾液からの抽出物、 消化管の粘液 産生細胞で合成され分泌される粘液からの抽出物、 またはこれらの一部が遺伝子
組換えによる手法、 微生物学的手法、 もしくは化学的手法により修飾された物質 である第 6項〜第 1 0記載の医薬組成物。
1 2 . ムチンまたはその類縁体が、 ガストリックムチンまたは遺伝子組換えに よる手法、 微生物的手法、 もしくは化学的手法により修飾されたガストリックム チンである第 6項〜第 1 1項記載の医薬組成物。
1 3 . 化合物 Iが N— ( 3—メチルカルバモイルフエニル) - 2一ナフチノレアセ トアミ ドである第 6項〜第 1 2項記載の医薬組成物。 図面の簡単な説明
第 1図は実施例 2の各種溶液中の溶質 (薬物) 濃度の経時変化を示した図であ る。 発明を実施するための最良の形態
本発明に用いられる化合物 Iにおいて、 で表わされる C 3〜C 8シクロアル キル基としては、 例えば、 シクロプロピル基、 シクロブチル基、 シクロペンチル 基、 シクロへキシル基、 シクロへプチル基、 又はシクロオタチル基を挙げること ができる。
C 6〜C 1 4ァリール基としては、 単環又は 2〜 3個程度の縮合環を有する芳香 族炭化水素基、 例えば、 フエニル基、 ナフチル基、 又はアントリル基を拳げるこ とができる。
複素環残基としては、 酸素原子、 硫黄原子、 窒素原子から選ばれるヘテロ原子 を 1〜4個有し、 環を構成する総原子数が 5〜1 0の複素環化合物の残基を用い ることができる。 より具体的には、 複素環残基として、 例えば、 フラン環、 ジヒ ドロフラン環、 テトラヒ ドロフラン環、 ピラン環、 ジヒ ドロピラン環、 テトラヒ ドロピラン環、 ベンゾフラン環、 ジヒ ドロべンゾフラン環、 イソべンゾフラン環、 クロメン環、 クロマン環、 イソクロマン環、 チォフェン環、 ベンゾチォフェン環、 ピロール環、 ピロリン環、 ピロリジン環、 ィミダゾール環、 イミダゾリン環、 ィ
ミダゾリジン環、 ピラゾーノレ環、 ピラゾリン環、 ピラゾリジン環、 トリアゾール 環、 テトラゾール環、 ピリジン環、 ピリジンォキシド環、 ピぺリジン環、 ビラ ジン環、 ピぺラジン環、 ピリミジン環、 ピリダジン環、 インドリジン環、 ィン ドール環、 インドリン環、 イソインドール環、 イソインドリン環、 ィンダゾール 環、 ベンゾイミダゾール環、 プリン環、 キノリジン環、 キノリン環、 フタラジン 環、 ナフチリジン環、 キノキサリン環、 キナゾリン環、 シンノリン環、 プテリジ ン環、 ォキサゾール環、 ォキサゾリジン環、 イソキサゾ一ノレ環、 イソキサゾリジ ン環、 チアゾール環、 チアジリジン環、 イソチアゾール環、 イソチアゾリジン環、 ジォキサン環、 ジチアン環、 モルホリン環、 又はチオモルホリン環を挙げること ができる。
C 6〜C 1 4ァリールォキシ基としては、 例えば、 フエニルォキシ基、 ナフチル ォキシ基、 又はアントリルォキシ基を挙げることができ、 C 7〜C 1 5ァリールメ チル基としては、 例えば、 ベンジル基、 ナフチルメチル基、 アントリルメチル基 を挙げることができる。
R 2および R 3がそれぞれ独立に表わす C 〜 C 5アルキル基は直鎖又は分枝鎖の いずれでもよく、 例えば、 メチル基、 ェチル基、 プロピル基、 イソプロピル基、 プチル基、 イソブチル基、 ペンチル基、 又はイソペンチル基を挙げることができ る。 R 2および R 3が一緒になつて表わす C 2〜C 7アルキレン基としては、 例えば、 エチレン基、 トリメチレン基、 テトラメチレン基、 ペンタメチレン基、 へキサメ チレン基、 ヘプタメチレン基を挙げることができ、 これらは分枝鎖を有していて もよい。
4ぉょび尺5で表ゎされる〇1〜。5ァルキル基としては、 それぞれ独立に R 2 および R 3について説明したものを用いることができる。
6で表ゎされる〇1〜( 5ァルキル基としては、 R 2および R 3について説明し たものを用いることができ、 このアルキル基は 1個又は 2個以上、 好ましくは 1 個の水酸基で置換されていてもよい。
C C sアルコキシ基としては直鎖又は分枝鎖のいずれでもよく、 例えば、 メ
トキシ基、 エトキシ基、 プロポキシ基、 イソプロポキシ基、 ブトキシ基、 イソブ トシキ基、 tert- ブトキシ基、 ペンチルォキシ基、 イソペンチルォキシ基を拳 げることができる。
R 7で表わされる(^〜 。アルキル基としては、 メチル基、 ェチル基、 プロピ ル基、 イソプロピル基、 ブチル基、 イソプチル基、 ペンチル基、 イソペンチル基、 へキシル基、 イソへキシル基、 ヘプチル基、 ォクチル基、 ノニル基、 デシル基等 が挙げられ、 かかるアルキル基は、 C6〜C14ァリール基、 フルォレニル基また は複素環残基で置換されていてもよい。 アルキル基に置換する C 6〜 C i 4ァリー ル基としては、 について説明した Cs C 4ァリーノレ基が挙げられる。 アルキ ル基に置換する複素環残基としては、 について説明した複素環の残基が挙げら れる。 R7で定義される C6〜C14ァリール基および複素環残基としては、 それぞ れ R!について説明した C 6〜 C i 4ァリール基および複素環残基が挙げられる。 上記のァリール基、 複素環残基、 ァリールォキシ基、 又はァリールメチル基は、 その環上の任意の位置に 1個又は 2個以上の置換基を有していてもよい。 このよ うな置換基としては、 例えば、 フッ素原子、 塩素原子、 臭素原子等のハロゲン原 子; R2および R3について説明した C Cgアルキル基;ベンジル基、 フエニル ェチル基、 ナフチルメチル基等の C7〜C15ァラルキル基; トリフルォロメチル 基; R6について説明した Ci Csアルコキシ基;ベンジルォキシ基、 フエ-ル ェチルォキシ基、 ナフチルメチルォキシ基等のじァ〜。 5ァラルキルォキシ基; メチレンジォキシ基、 エチレンジォキシ基、 プロプレンジォキシ基等の Ci Cg アルキレンジォキシ基;水酸基;ニトロ基;ァセトキシ基、 プロピオニルォキシ 基、 プチリルォキシ基、 パレリルォキシ基等の C2〜C6アルキルカルボ二ルォキ シ基;カルボキシル基;メ トキシカルボ二ル基、 エトキシカルボ二ル基、 プロボ キシカルポニル基、 イソプロポキシカルボニル基、 ブトキシカルボ二ル基、 イソ ブトキシカルボ-/レ基、 tert- ブトキシカルボ-ノレ基、 ペンチノレォキシカルボ二 ル基等の C2~C6アルコキシカルボニル基;ベンジルォキシカルボニル基、 フエ ニルェチルォキシカルポニル基、 ナフチルメチルォキシカルボニル基等の C7〜C
15ァラルキルォキシカルボニル基;ォキソ基;ァセチル基、 プルピオニル基、 プ チリル基、 パレリル基等の C 2〜 C 6アルキルカルボニル基;ァミノ基;メチル アミノ基、 ェチルァミノ基、 プロピルアミノ基、 イソプロピルアミノ基、 プチ ルァミノ基、 イソブチルァミノ基、 tert- ブチルァミノ基、 ペンチルァミノ基、 ィソペンチルァミノ基等の Ci Csモノアルキルアミノ基; ジメチルァミノ基、 ェチルメチルァミノ基、 ジェチルァミノ基、 メチルプロピルアミノ基、 ジイソプ 口ピルアミノ基等の Cz Ci。のジアルキルアミノ基;ァセチルァミノ基、 プロ ピオニルァミノ基、 イソプロピオニルァミノ基、 ブチリルァミノ基、 パレリルァ ミノ基等の C2〜C6アルキルカルボニルァミノ基;メ トキシカルボニルァミノ基、 エトキシカルポニルァミノ基、 プロポキシカルボニルァミノ基、 イソプロポキシ カルボニルァミノ基、 ブトキシカルボニルァミノ基、 イソブトキシカルポニルァ ミノ基、 tert- ブトキシカルボニルァミノ基、 ペンチルォキシカルボニルァミノ 基等の c。 〜c6アルコキシカルボニルァミノ基;ベンジルォキシカルボニルァミ ノ基、 フエニルェチノレオキシカノレボニノレアミノ基、 ナフチルメチルォキシカルボ ニルァミノ基等の c7〜c15ァラルキルォキシカルボ-ルアミノ基;カルパモイ ル基; メチルカルバモイル基、 ェチルカルバモイル基、 プロピル力ルバモイル基、 ブチルカルパモイル基、 tert- プチルカルパモイル基、 ペンチルカルバモイル基 等の C 2〜 C 6アルキルカルパモイル基及び R丄について説明した C 6〜 C丄 4ァリ ール基などを挙げることができる。
本発明に用いられる化合物 Iのうち好ましい化合物としては、 Xが (R2) (R3) C一の場合には、 が置換基を有していてもよい C6〜C14ァリール基、 置換基を有していてもよい複素環残基、 置換基を有していてもよい c6〜c14ァ リールォキシ基または置換基を有していてもよい c7〜c15ァリールメチル基で あり、 R2および R3が水素原子であり ; Xが R7— A—の場合には、 R7が置換基 を有していても良い C6〜C14ァリール基もしくは置換基を有していても良い複 素環残基で置換されていてもよい Ci Ci。アルキル基、 より好ましくは置換基 を有していても良い C 6〜 C ァリール基もしくは置換基を有していても良い複
素環残基で置換されていてもよい C i Csアルキル基であり、 Aが酸素原子また は N— Hであり ; R4および R5が水素原子であり ; R6が d 〜C5 のアルキル 基であり ; Yが酸素原子である化合物を挙げることができる。 さらに好ましい 化合物としては、 Xが (R2) (R3) C—の場合には、 が置換基を有して いてもよい C6〜C14ァリール基、 置換基を有していてもよい複素環残基、 置換 基を有していてもよい Ce Ci 4ァリールォキシ基または置換基を有していても よい C7〜C15ァリールメチル基であり、 R2および R3が水素原子であり ; Xが R7— A—の場合には、 置換基を有していても良い C6〜C14ァリール基もしくは 置換基を有していても良い複素環残基で置換されていてもよいメチル基であり、 Aが酸素原子または N— Hであり ; R4および R5が水素原子であり ; R6がメチ ル基であり、 Yが酸素原子である化合物を挙げることができる。
特に好ましい化合物としては、
N— (3—メチルカルパモイルフエニル) 一 3—クロ口フエニノレアセトアミ ド、 N- (3—メチノレカノレパモイノレフエ二ノレ) 一 4一クロ口フエニノレアセトアミ ド、 N- (3—メチルカルバモイルフエ二ル) 一 3 _ブロモフエニノレアセトアミ ド、 N— (3—メチルカルバモイルフエニル) 一4—ブロモフエニルァセトアミ ド、 N- (3—メチルカルパモイルフエニル) 一 3—メチノレフエニノレアセトアミ ド、 N— (3—メチルカルバモイルフエ二ル) _ 4—メチノレフエニノレアセトアミ ド、 N— (3—メチルカノレパモイノレフエ二ノレ) 一 3—メ トキシフエ二ルァセトアミ ド、 N— (3—メチルカルバモイルフエニル) —4—メ トキシフエ二ルァセトアミ ド、 N— (3—メチルカルパモイルフエニル) -3, 4, 5—トリメ トキシフエ二ル ァセトアミ ド、 , N— (3—メチルカルパモイルフエ二ル) 一 3一ペンジノレオキシフエニノレアセト アミ ド、
N— (3—メチルカルバモイルフエニル) 一 1一ナフチルァセトアミ ド、
N- (3—メチルカルバモイルフエニル) —2—ナフチルァセトアミ ド、
N- (3—メチルカルバモイルフエニル) 一 3—インドリルァセトアミ ド-
1
N— (3ーメチルカルバモイルフエニル) 一 3—べンゾチェニルァセトアミ ド、 N— (3—メチルカルバモイルフエニル) 一 4一べンゾチェニルァセトアミ ド、 N— (3—メチルカルバモイルフエ二ル) -3, 4ーメチレンジォキシフエ二 ルァセトアミ ド、
N— (3—メチルカルバモイルフエニル) - 2—クロ口フエノキシァセトアミ ド N— (3—メチルカルバモイルフエニル) - 2, 3—ジクロロフエノキシァセト アミ ド、
N— ( 3—メチルカルバモイルフエニル) ― 1—ナフチルォキシァセトアミ ド、 N— (3—メチルカルバモイルフエニル) 一 2一ナフチルォキシァセトアミ ド、
N— (3—メチルカルパモイルフエ-ル) 一 3— (2—メ トキシフエニル) プロ ピオンアミ ド、
N, 一メチル一3— (2 _クロ口べンジロキシカルポニノレアミノ) ベンズアミ ド、 N, 一メチル _3_ (4一クロ口べンジロキシカルボ二ノレアミノ) ベンズアミ ド、 N' —メチノレー 3— (2, 3—ジクロ口べンジロキシカノレボニノレアミノ) ベンズ アミ ド、
N' -メチノレ一 3一 (2, 6—ジクロ口べンジロキシカノレボニノレアミノ
) ベンズアミ ド、
N, ーメチル一 3— (2 _ブロモベンジロキシカルポニノレアミノ) ベンズアミ ド、 N, 一メチル一 3— (2—メチノレべンジロキシカルボニルアミノ) ベンズアミ ド、 N, ーメチル一 3— (3—メチノレべンジロキシカルボニルアミノ) ベンズアミ ド、 N, 一メチル一3— (4—メチノレべンジロキシカノレボニノレアミノ) ベンズアミ ド、 N' —メチル一 3— (1一ナフチルメ トキシカルボニルァミノ) ベンズアミ ド、 および
N, 一メチル一 3— (2—ナフチルメ トキシカルボニルァミノ) ベンズアミ ド より好ましくは以下の式
で表される N— (3—メチルカルパモイルフエニル) 一 2—ナフチルァセトアミ ドがより好ましい。
本発明に用いられるムチン類は製剤的に許容される物質であれば特に制限はさ れない。 すなわち、 糖蛋白質、 硫酸ィ匕糖蛋白質またはムコ多糖を主成分とする物 質であれば、 動物もしくは植物から抽出されたものでも、 半合成もしくは全合成 されたものでもいずれでも良い。 また、 その一部が遺伝子組換えによる手法、 微 生物学的手法または化学的手法により修飾されたものであってもよい。
さらにいえば、 ムチン類は、 水などの液体により溶解、 懸濁、 膨潤した際、 濃 度に応じてゲル形成を伴ったり伴わなかったり、 粘度が変化したりする性質を持 つが、 本発明においては、 ゲノレ形成の有無や粘度はいずれでもよく、 粘性を持つ ていても持っていなくてもよい。
本発明に用いられるムチン類の好ましい具体例として、 哺乳動物、 より好まし くは食用にされる哺乳動物、 例えばブタ、 ゥシ、 ゥマ、 ゥサギ、 ヒッジ、 ャギ等 の動物の唾液からの抽出物や、 胃 ·腸管などの消化管の粘液産生細胞で合成され、 分泌される粘液からの抽出物、 またはそれらの一部が遺伝子組換えによる手法、 微生物学的手法または化学的手法により修飾されたもの等、 それらを原料とした 修飾体もしくは誘導体が挙げられる。 また、 胃の粘液産生細胞で合成され、 分泌 される粘液からの抽出物は一般にガストリックムチンと呼ばれており、 本発明に 使用するムチン類の中で最も好ましい。
本発明を臨床に応用するに当たり、 薬物の含有量は全製剤重量中 0 . 0 1重 量%から9 9 . 9重量%、 好ましくは 0 . 0 3重量%から 9 5重量%、 より好ま しくは 0 . 1重量%から 9 0重量%、 さらにより好ましくは 1重量%から 9 0重 量%の間で変動されうる。
また、 ムチン類の含有量は全製剤重量中 0 . 1重量%から9 9 . 9重量%、 好
ましくは 1重量%から 9 0重量%、 より好ましくは 1 0重量%から 9 0重量%の 間で変動されうる。 薬物とムチン類は、 例えば顆粒剤、 細粒剤、 散剤、 硬カブ セル剤、 軟カプセル剤、 シロップ剤、 乳剤、 懸濁剤又は液剤等の剤形にして経 口投与する。 経口投与に適した医薬用の有機もしくは無機または固体もしくは液 体の担体または希釈剤を本発明組成物の調製に用いることができる。
固体製剤を製造する際に用いられる賦形剤としては、 例えば乳糖、 蔗糖、 デン プン、 タルク、 セルロース、 デキストリン、 カオリン、 炭酸カルシウム等が用い られる。 乳剤、 シロップ剤、 懸濁剤、 液剤等の液体製剤とする場合には、 一般的 に用いられる不活性な希釈剤、 例えば水または植物油等の他、 補助剤、 例えば湿 潤剤、 懸濁補助剤、 甘味剤、 芳香剤、 着色剤又は保存剤等を使用することも可能 である。 液体製剤にしてゼラチンのような吸収されうる物質のカプセル中に含ま せてもよい。 製剤の調製方法は常法によればよい。
薬物の臨床投与量は、 その薬物の常識的な投与量に依存する。 また、 本発明医 薬組成物は、 一日に 1回または適当な間隔をおいて一日に 2ないし 4回あるいは それ以上に分けて投与してもよいし、 間に 1日以上あけて、 間欠投与してもよい。 以下、 実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、 本発明はこれらの実施 例に限定されるものではない。 また、 以下で用いた N_ ( 3—メチルカルバモイ ルフエニル) 一 2—ナフチルァセトアミ ドは特開平 1 1 - 7 1 3 3 6号の実施例 に記載の方法に準じて製造したものを使用した (実施例 3 1 ) 。
実施例
なお、 以下の実施例においては次に示すような慣用略号を用いることがある。 B A S =N - ( 3—メチルカルパモイルフエニル) 一 2—ナフチノレアセトアミ ド、 GM=ガストリックムチン、
C P =カーボポーノレ
H p =ヘリコパクター · ピロリ
(実施例 1 )
B A Sと GMによる in vivo抗 H p効果
Hp (ATCC43504) 感染スナネズミ (MGS/Sea) を用いた。 感染方法は、 平山ら の方法にしたがった (Ulcer Research. 25, 37-43, 1998) 。 感染 1週間後から、 薬剤を白糖ベースの飼料に混合し、 1週間スナネズミに与えた。 群分けは以下 のとおりである。 ① B ASを飼料中に 0. 3%および 3%の濃度で添加した群 (表 1の a、 b) 、 ② B ASを飼料中に 0. 3および 3%、 かつ、 C Pを 3 %添カロ した群 (表 1の c) 、 ③ B ASを飼料中に 0. 03〜3%、 かつ、 GMを 6%添 加した群 (表 2) 。 1週間の薬剤投与終了後、 3日間休薬した後、 胃を摘出し、 胃破碎物を Hp選択培地に接種し、 微好気下に 3〜5日間培養し、 生菌数を測定 した。 結果を表 1および表 2に示した。
BASの抗菌活性は、 食餌に何も混ぜない場合と食餌に C Pを混ぜた場合を比 較してもその活性 (除菌率) に大差はない (表 1) 。 しかしながら食餌に GMを 混ぜた場合には活性が強いことがわかった (表 2) 。 CPは粘性があり製剤的に 粘膜付着性を有する持続性基剤として用いられているものであることから、 食餌 に GMを混ぜた場合に認められた B ASの抗菌 (抗へリコパクター ' ピロリ) 活 性の増強は、 単に GMの粘性や粘膜付着性あるいは持続性の向上に依存するもの ではないと言える。 '
(表 1)
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除菌率欄は除菌成功数/全例数。
菌数欄は除菌不成功個体の胃のグラムあたりの菌数の平均値
( CFU= colony forming unit)。
a) 白糖に BASを混入して摂餌投与。 2)および 3)群はそれぞれ 0.3%および 3%の BASを含有
b) 白糖に BASを混入して摂餌投与。 2)および 3)群はそれぞれ 0.3%および 3%の BASを含有
c) 3%CP+白糖に BASを混入して摂餌投与。 2)および 3)群はそれぞれ 0.3%およ ぴ 3%の BASを含有
(表 2)
厶あたりの菌数の平均値(CFU=colony forming unit)。
• 6%GM添加白糖に BASを混入して摂餌投与。 2)、 3)、 4)、 5)および 6)群は.
それぞれ 0.03%, 0.1%, 0.3%, 1%および 3%の BASを含有。
(実施例 2)
B A Sと GMによる溶解速度 Z溶解度改善効果
B ASの粉末のみ、 BAS+GM混合顆粒 (BAS 3%、 GM 6%含有する白 糖を担体とした顆粒) およびカルボキシメチルセルロースナトリウム (以下、 C MC— Naという。 ) 懸濁液 (初期から飽和状態) を、 約1. 2の液 (塩ィ匕
ナトリウム 2 gおよび塩酸 7 m 1を水に加えて溶かし 1 0 0 0 m lに調製したも の) に加えたときの溶液中の溶質 (薬物) 濃度の経時的な変化を測定し、 結果 を図 1に示した。
B A Sのみでは初期の溶質 (薬物) 濃度が極端に低く、 2 4時間経過しても飽 和濃度に到達しなかった。 これに対し、 GM混合顆粒では速やかに溶解し、 3 0 分以内に CMC _N a懸濁液と同等の濃度に到達し、 以降は飽和濃度を上まわる 推移を示した。 この事実から、 GMは難水溶性の B A Sの溶解速度を高めること および Zまたは溶解度を高めることが明らかとなった。 産業上の利用可能性
本発明医薬組成物は、 胃腸管内において化合物 Iのもつ抗菌活性、 例えば抗へ リコパクター · ピロリ活性を増強させている。 また同時に、 化合物 Iの溶解速度 および Zまたは溶解度を高めている。 この結果、 本発明医薬組成物を用いれば、 化合物 Iの薬効が増強され、 胃液中の化合物 I濃度が速やかに高くなると推察さ れるので、 投与量の軽減が期待され、 化合物 Iの薬効を速やかに発現させること が可能で、 化合物 Iの副作用軽減にも有用であると考えられる。 なお、 本出願は日本国特許出願番号:特願 2 0 0 1— 1 6 7 1 4 9号に基づく 優先権を主張して出願されたものである。