明 細 書 多機能塩基配列及びそれを含む人工遺伝子 技術分野
本発明は、 塩基配列の読み枠を異にした場合に 2以上の機能を有する 多機能塩基配列や、 該多機能塩基配列が複数の読み枠が出現するように 結合している人工遺伝子や、 該人工遺伝子の翻訳産物である人工タンパ ク質又はその誘導体等に関する。 背景技術
分子進化工学の誕生により、 生命反応の根幹を形成するタンパク質あ るいはそれらをコードする遺伝子 DNAを、 実験室の中で人工的に創り 出すことが行われている。 この技術により、 自然には存在しない新たな 活性を持った酵素 · タンパク質や、 天然のタンパク質とは大きく構造の 異なるタンパク質を産み出すことが可能となり、 医療領域や工学領域へ の様々な応用が期待されている。 分子進化工学では、 タンパク質又はそ れをコ一ドする遺伝子を構成するアミノ酸又はヌクレオチドのブロック 単位のランダムな重合体プールの中から、 目的とする活性を持つ分子を 選び出す操作が行われる。 例えば、 Szostak らのグループは、 1 0 0塩 基の長さをもつランダムな配列をもった DN A集団を DN A合成機で作 製し、 この DNA集団をインビトロで RNAに転写し、 1 013の多様性 をもつ RNA集団を用意し、 この RN A集団の中から特定の色素に特異 的に結合する RN A分子を選択し、 どのような配列構造を有する RN A 分子が与え ら れた機能を満足する か につ いて報告 してい る (Nature, 346:818-822, 1990)。 Szostakらのグループはさらに同様のァ
ブローチで、 リガーゼ活性といったより複雑な活性をもつ R N A分子を 創出することに成功している (Science, 261: 1411-1418, 1993)。
一方、 遺伝子は小さな遺伝子が繰り返し重合して誕生したのではない 力、とレ う仮説が、あり (Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:3391-3395,1983)、 また、 単純な繰り返し構造に富むポリペプチドは安定な二次構造を取り やすいと考えられるので、 大きなタンパク質や遺伝子を対象とする分子 進化工学では、 短い構造単位を繰り返し重合させ巨大分子を合成する技 術が要求されている (Nature, 367:323-324, 1994)。 短い D N A単位の繰 り返し重合体を得る方法として、 ローリング,サークル合成法が報告さ れている (Proc,Natl,Acad.Sci.USA,92:4641-4645, 1995) S、 この方法は リン酸化反応、 連結反応、 重合反応、 二本鎖形成反応などのステップを 何段階も経なければならないため、 反応系が複雑である。
そこで本発明者らは、 効率的かつ単純にマイク口遺伝子の繰り返し重 合体を作製する方法として、 少なくとも一部の配列が互いに相補してい るオリゴヌクレオチド A及びオリゴヌクレオチド Bに、 D N Aポリメラ ーゼを作用させて重合反応を行うことを特徴とするマイク口遺伝子重合 法 (特開平 9 - 3 2 2 7 7 5号公報) を提案している。
また、 絹タンパク質やエラスチン等の天然タンパク質の反復単位に類 似する反復単位を有するアミノ酸ポリマーをコードする D N A (特開平 1 0 - 1 4 5 8 6号公報) や、 繰返しアミノ酸配列を有する人工タンパ ク質をコードする遺伝子カセット(米国特許第 5 0 8 9 4 0 6号明細書) や、 アミノ酸の繰返し配列を有する大ポリベプチド作製用の合成反復 D N A (米国特許第 5 6 4 1 6 4 8号明細書) や、 アミノ酸の繰返し単位 を有するぺプチドをコ一ドする D N A配列 (米国特許第 5 7 7 0 6 9 7 号明細書) や、 アミノ酸の反復配列を含む大ポリペプチド作製用の合成 反復 D N A (米国特許第 5 8 3 0 7 1 3号明細書) が知られている。 ま
た、 6つの読み枠の 1つが αヘリックス構造を形成しやすい D N Α断片 をデザインし、 そこから作成したライブラリーが高頻度に安定なタンパ ク質をコードすることや、 同様に、 6つの読み枠の中の 1つが) 3ストラ ン ド構造を形成しやすい D N A断片をデザイ ンする こ とが報告 (Proc,Natl,Acad.Sci.USA,94:3805-3810,1997) されてレ る。
本発明の課題は、 産業上有用な人工タンパク質を創出する上で必要と される、 塩基配列の読み枠を異にした場合に 2以上の機能を有する多機 能塩基配列や、 該多機能塩基配列が複数の読み枠が出現するように結合 している人工遺伝子や、 かかる人工遺伝子の翻訳産物である人エタンパ ク質又はその誘導体等を提供することにある。 発明の開示
D N Aや R N Aといった核酸、 あるいは短いぺプチドを対象とした、 機能性人工分子の創出は、 ランダムな配列をもった D N A集団 (ライブ ラリー) を出発点として、 その中から目的とする機能をもった分子を選 択してくるという基本戦略が採用されるが、 このシステムをそのまま高 分子のタンパク質の創出に用いると、 ランダムな配列をもつた D N Aに 翻訳停止コドン (T A A、 T A G、 T G A ) が高頻度に生じ、 結果的に は短いぺプチドしか産生しないライブラリ一が得られるにすぎず、 夕ン パク質の創出には実際上使用することができない。 しかし、 前記本発明 者によるマイク口遺伝子重合法 (特開平 9 一 3 2 2 7 7 5号公報) によ ると、 マイクロ遺伝子に乱雑さを加えながらタンデムに重合することに より、 得られた重合体は複数の読み枠のコンビナトリアル (組み合わせ 的) な性質をもち、 非常に大きな多様性を有することになる。 しかも、 このマイクロ遺伝子重合法では、 用いるマイクロ遺伝子が、 予めどの読 み枠にも翻訳停止コドンが出現しないようにデザィンすることが可能で
あり、 前述した、 ランダムな配列をもった D N Aが高頻度にもつ翻訳停 止コドン問題を回避することができることがわかった。
マイクロ遺伝子重合法で作成されたライブラリーの場合、 分子多様性 をもっとはいうものの、 その全体の性質は、 最初に用いるマイクロ遺伝 子の配列に大きく依存することから、 ブロック単位に用いるマイクロ遺 伝子のデザィンの仕方によっては、 作成される人工遺伝子ライブラリー をある方向に特化することが可能となる。 しかし、 例えば、 免疫活性が 十分強いエイズウイルス中和抗原タンパク質、 基本免疫を賦活化する活 性のある人工タンパク質、 単核ファゴサイ トから T N F—ひの放出を誘 導しかっ血中で安定な人工タンパク質、 ヒトの免疫系の監視をすり抜け るような人工タンパク質骨格等の生物機能を有する人工タンパク質を作 製するのに必要なマイクロ遺伝子をデザィンするためには、 高速計算機 やゲノム情報を十分に利用することが必要であることもわかった。
以上の知見に基づいて、 本発明者は、 機能性人工タンパク質を発現す ることができる人工遺伝子をマイクロ遺伝子重合法により創出すること ができないかと考え、 エイズウイルス中和抗原タンパク質を基本生物機 能として有し、 これに加えてひヘリックス構造を形成しやすい性質など 二次構造を形成しやすいという生物機能を有するぺプチドを異なる読み 枠にコードする複数生物機能を有する単一マイクロ遺伝子を計算科学的 手法によりデザインすることを試みた。 なお、 エイズウイルス中和抗原 タンパク質と《ヘリックス形成能力を 2つの生物機能として選んだのは, エイズウイルスのもつ g p 1 2 0タンパク質のループ 3と呼ばれる領域 に対する抗体のいくつかがウィルス中和活性をもつことや、 通常該ル一 プ 3領域が g 1 2 0タンパク質の内部に隠れており該ループ 3に対す る抗体が得にくいことや、 合成したループ 3中和抗原ペプチドでは免疫 原性が弱く抗体が期待したようには得られないことがよく知られており,
少なくともいくつかの部分でループ 3ぺプチド配列を有し、 全体が αへ リックス骨格で安定に支えられている免疫原性の強い人工タンパク質を 創出し、 かかる人工タンパク質を免疫源として用いることにより、 中和 抗体の候補となる抗ループ抗体が得られる可能性があるということによ る。
まず、 エイズウイルスの中和抗原として知られているペプチド 「RK S I R I QR GP GRTFVT I GK I j を読み枠の 1つにコードする マイクロ遺伝子をデザインすることとした。 例えば、 最初の R (アルギ ニン) には 「C GT」 「C GC」 「C GAJ 「C GG」 「AGA」 「AGG」 の 6つのコドンが対応するがこの中から特定のコドンを選択し、 次の (リシン) には 「AAA」 「AAG」 の 2つのコドンが対応するがこの中 から特定のコ ドンを選択し、 以下同様にして特定のコドンを順次選択し マイクロ遺伝子をデザィンする場合、 上記中和抗原べプチドを読み枠の 1つにコードする塩基配列は、 コドンの縮重から約 1, 6 5 1億種ある ことになる。 また、 単一マイクロ遺伝子はプラス鎖及びマイナス鎖に各 3種の読み枠をもつことから、 6種の異なるペプチドをコードすること ができることになり、 例えば、 同じ方向の異なる 2つの読み枠では、 上 記中和抗原べプチドとは全く異なる 2つのペプチドがコードされること になる。 そこで、 同じ方向の他の読み枠 2つのいずれかで 「二次構造を 形成しやすい」 という性質を有するペプチドをコードする塩基配列を、 上記約 1, 6 5 1億種の塩基配列の中から計算機により検索することに した。
計算機として S u nの E n t e r p r i s e 2 5 0を用いて実行した ところ、 約 1, 6 5 1億種の塩基配列全てを同時に計算するには無理が あることがわかったので、 上記中和抗原ペプチドの両端を削除した 「 I R I QR GP GRTFVTJ の 1 3個のアミノ酸からなるぺプチドにつ
いて計算することとした。 1つの読み枠でこのべプチドをコードする可 能性のある塩基配列を全て計算機内に書き出したところ、 約 5億種の塩 基配列が作成された。 これら 5億種の塩基配列の、 同じ方向の他の 2つ の読み枠を翻訳し、 終止コドンが現れて翻訳が途中でストップするもの や、 ペプチド配列として重複するものを除いた、 約 1, 5 0 6万種のぺ プチド配列の集団を計算機の中に作成した。 次に、 この約 1, 5 0 6万 種のペプチドの中から 「二次構造を形成しやすい」 という性質をもつぺ プチドを、 二次構造予測プログラムを用いて個別に計算してスコアづけ を行った。 この計算に 1週間以上要したが、 得られた結果をスコアの高 い順にソートしたところ、 第 2読み枠で αヘリックスを非常に形成しや すい塩基配列として、 「ATAC GCATT CAGAGAGG C C C T GGC C GCACTTTTGTTACTJ を選択することができた。 上記計算は、 エイズウイルス中和抗原べプチド 2 0アミノ酸残基の真 ん中部分 1 3アミノ酸残基について実施したので、 未計算の両端部分に ついても同様の計算をおこない、 それらの結果を合わせてマイクロ遺伝 子 「デザイン一 2 5」 を得ることができた。 このマイクロ遺伝子 「デザ イン一 2 5」 は、 その読み枠の 1つに中和抗原配列をコードし、 他の読 み枠 2つに終止コドンをもたず、 さらに、 そのうちの 1つに αヘリック スを形成しやすい性質のぺプチドをコードし、 「エイズウイルス中和抗 原性」 と 「構造形成能力」 といった 2つの生物機能構造が潜源化したマ イク口遺伝子ということができる。 次に、 かかるマイクロ遺伝子 「デザ イン一 2 5」 を、 前記本発明者によるマイクロ遺伝子重合法 (特開平 9 - 3 2 2 7 7 5号公報) を利用して重合し、 「中和抗原配列」 と 「ひヘリ ックスを形成しやすい配列」 とが複雑に組み合わさった種々の人工遺伝 子からなる人工遺伝子ライブラリーを作製した。 これら人工遺伝子ライ ブラリーを用いて種々の人工タンパク質を大腸菌で発現させ、 全体とし
てはひヘリックスの構造に支えられながら、 その中のところどころにェ ィズウィルス中和抗原配列をもつ人工夕ンパク質が得られることを確認 し、 本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、 塩基配列の読み枠を異にした場合、 該塩基配列が 2以上の機能を有することを特徴とする多機能塩基配列(請求項 1 )や、 塩基配列が、 2本鎖の塩基配列であることを特徴とする請求項 1記載の 多機能塩基配列 (請求項 2 ) や、 塩基配列が、 D N Aであることを特徴 とする請求項 1又は 2記載の多機能塩基配列 (請求項 3 ) や、 塩基配列 が、 R N Aであることを特徴とする請求項 1又は 2記載の多機能塩基配 列 (請求項 4 ) や、 塩基配列が、 線状の塩基配列であることを特徴とす る請求項 1〜4のいずれか記載の多機能塩基配列 (請求項 5 ) や、 塩基 配列の読み枠が、 1つずつずれた 3つの読み枠のすべてにストップコド ンが存在しないことを特徴とする請求項 1〜 5のいずれか記載の多機能 塩基配列 (請求項 6 ) や、 塩基配列の 6つの読み枠のすべてにストップ コドンが存在しないことを特徴とする請求項 2〜 6のいずれか記載の多 機能塩基配列 (請求項 7 ) や、 多機能塩基配列を重合したときの連結部 にストップコドンが生起することがないことを特徴とする請求項 6又は 7記載の多機能塩基配列 (請求項 8 ) や、 2以上の機能が、 2以上の生 物機能であることを特徴とする請求項 1〜 8のいずれか記載の多機能塩 基配列 (請求項 9 ) や、 生物機能が、 二次構造を形成しやすい機能、 中 和抗体を誘導する抗原機能、 免疫を賦活化する機能、 細胞増殖を促進又 は抑制する機能、 癌細胞を特異的に認識する機能、 プロテイン · トラン スダクシヨン機能、 細胞死誘導機能、 抗原決定残基呈示機能、 金属結合 機能、 補酵素結合機能、 触媒活性機能、 蛍光発色活性機能、 特定の受容 体に結合してその受容体を活性化する機能、 信号伝達に関わる特定の因 子に結合してその働きをモジュレートする機能、 生体高分子を特異的に
認識する機能、 細胞接着機能、細胞外へタンパク質を局在化させる機能、 特定の細胞内小器官にターゲッ トする機能、細胞膜に埋め込まれる機能、 アミロイド繊維形成機能、 繊維性タンパク質の形成機能、 タンパク質性 ゲル形成機能、 タンパク質性フィルム形成機能、 単分子膜形成機能、 自 己集合機能、 粒子形成機能、 又は、 他のタンパク質の高次構造形成を補 助する機能であることを特徴とする請求項 9記載多機能塩基配列 (請求 項 1 0 ) や、 塩基配列が、 1 5〜 5 0 0の塩基又は塩基対からなること を特徴とする請求項 1〜 1 0のいずれか記載の多機能塩基配列 (請求項 1 1 ) や、 多機能塩基配列を重合するための修飾が施されていることを 特徴とする請求項 1〜 1 1のいずれか記載の多機能塩基配列 (請求項 1 2 ) や、 天然由来の塩基配列が結合されていることを特徴とする請求項 1〜 1 2のいずれか記載の多機能塩基配列 (請求項 1 3 ) に関する。 また本発明は、 所定の機能を有するアミノ酸配列をコードする塩基配 列のすべての組合せの中から、 前記所定の機能を有するアミノ酸配列の 読み枠とは異なる読み枠において、 前記所定の機能と同一又は異なる機 能を有する塩基配列を選択することを特徴とする 2以上の機能を有する 多機能塩基配列の製造方法 (請求項 1 4 ) や、 所定の機能と同一又は異 なる機能を有する塩基配列を、 計算科学的手法により選択することを特 徴とする請求項 1 4記載の 2以上の機能を有する多機能塩基配列の製造 方法 (請求項 1 5 ) や、 計算科学的手法が、 生物機能予測プログラムを 用いたときのスコア一によって評価 ·選択する手法であることを特徴と する請求項 1 5記載の 2以上の機能を有する多機能塩基配列の製造方法 (請求項 1 6 ) や、 塩基配列が、 2本鎖の塩基配列であることを特徴と する請求項 1 4〜 1 6のいずれか記載の 2以上の機能を有する多機能塩 基配列の製造方法 (請求項 1 7 ) や、 塩基配列が、 D N Aであることを 特徴とする請求項 1 4〜 1 7のいずれか記載の 2以上の機能を有する多
機能塩基配列の製造方法 (請求項 1 8 ) や、 塩基配列が、 R N Aである ことを特徴とする請求項 1 4〜 1 7のいずれか記載の 2以上の機能を有 する多機能塩基配列の製造方法 (請求項 1 9 ) や、 塩基配列が、 線状の 塩基配列であることを特徴とする請求項 1 4〜 1 9のいずれか記載の 2 以上の機能を有する多機能塩基配列の製造方法 (請求項 2 0 ) や、 塩基 配列の読み枠が、 1つずつずれた 3つの読み枠のすべてにストップコド ンが存在しないことを特徴とする請求項 1 4〜2 0のいずれか記載の 2 以上の機能を有する多機能塩基配列の製造方法 (請求項 2 1 ) や、 塩基 配列の 6つの読み枠のすべてにストップコドンが存在しないことことを 特徴とする請求項 1 7〜 2 1のいずれか記載の 2以上の機能を有する多 機能塩基配列の製造方法 (請求項 2 2 ) や、 多機能塩基配列を重合した ときの連結部にストップコドンが生起することがないことを特徴とする 請求項 2 1又は 2 2記載の 2以上の機能を有する多機能塩基配列の製造 方法 (請求項 2 3 ) や、 2以上の機能が、 2以上の生物機能を有するこ とを特徴とする請求項 1 4〜 2 3のいずれか記載の 2以上の機能を有す る多機能塩基配列の製造方法 (請求項 2 4 ) や、 生物機能が、 二次構造 を形成しやすい機能、 中和抗体を誘導する抗原機能、 免疫を賦活化する 機能、 細胞増殖を促進又は抑制する機能、 癌細胞を特異的に認識する機 能、 プロテイン, トランスダクシヨン機能、 細胞死誘導機能、 抗原決定 残基呈示機能、 金属結合機能、 補酵素結合機能、 触媒活性機能、 蛍光発 色活性機能、 特定の受容体に結合してその受容体を活性化する機能、 信 号伝達に関わる特定の因子に結合してその働きをモジユレ一トする機能, 生体高分子を特異的に認識する機能、 細胞接着機能、 細胞外へタンパク 質を局在化させる機能、 特定の細胞内小器官にターゲッ トする機能、 細 胞膜に埋め込まれる機能、 アミロイ ド繊維形成機能、 繊維性タンパク質 の形成機能、 タンパク質性ゲル形成機能、 タンパク質性フィルム形成機
能、 単分子膜形成機能、 自己集合機能、 粒子形成機能、 又は、 他のタン パク質の高次構造形成を補助する機能であることを特徴とする請求項 2 4記載の 2以上の機能を有する多機能塩基配列の製造方法(請求項 2 5 ) や、 塩基配列が、 1 5〜 5 0 0の塩基又は塩基対からなることを特徴と する請求項 1 4〜 2 5のいずれか記載の 2以上の機能を有する多機能塩 基配列の製造方法 (請求項 2 6) や、 さらに多機能塩基配列を重合する ための修飾を施すことを特徴とする請求項 1 4〜 2 6のいずれか記載の 2以上の機能を有する多機能塩基配列の製造方法 (請求項 2 7) や、 さ らに天然由来の塩基配列を結合することを特徴とする請求項 1 4〜 2 7 のいずれか記載の 2以上の機能を有する多機能塩基配列の製造方法 (請 求項 2 8 ) や、 請求項 1 4〜 2 8のいずれか記載の 2以上の機能を有す る多機能塩基配列の製造方法により製造することができる 2以上の機能 を有する多機能塩基配列 (請求項 2 9) に関する。
さらに本発明は、 請求項 1〜 1 3のいずれか記載又は請求項 2 9記載 の多機能塩基配列の 1種又は 2種以上が、 複数の読み枠が出現するよう に結合していることを特徵とする人工遺伝子 (請求項 3 0) や、 3 0〜 1 0 0 0 0 0の塩基又は塩基対からなることを特徴とする請求項 3 0記 載の人工遺伝子 (請求項 3 1 ) や、 請求項 1〜 1 3のいずれか記載又は 請求項 2 9記載の多機能塩基配列の 1種又は 2種以上を、 複数の読み枠 が出現するようにコンビナトリアルに重合することを特徴とする人工遺 伝子の製造方法 (請求項 3 2) や、 2本鎖多機能塩基配列の一端に特定 の DNA配列 「A」、 他端に特定の DNA配列 「B」 を付加し、 DNA配 列 「Aj 及び 「B」 にそれぞれ相補的な配列を少なくとも一部含む DN A配列 「a」 及び 「b」 を調製し、 該 DNA配列 「 a」 と 「b」 とが連 結した一本鎖 DN Aを用いて前記 2本鎖多機能塩基配列のリガーゼ反応 を行うことを特徴とする請求項 3 2記載の人工遺伝子の製造方法 (請求
項 3 3 ) や、 多機能塩基配列の全部又は一部からなり、 少なくとも一部 の配列が互いに相補している 2つの塩基配列にポリメラーゼを作用させ てポリメラ一ゼ連鎖反応を行うことを特徴とする請求項 3 2記載の人工 遺伝子の製造方法 (請求項 3 4 ) や、 請求項 3 0又は 3 1記載の人工遺 伝子が発現ベクターに組み込まれていることを特徴とする人工遺伝子発 現ベクター (請求項 3 5 ) や、 人工遺伝子が、 天然遺伝子と結合された 人工遺伝子であることを特徴とする請求項 3 5記載の人工遺伝子発現べ クタ一 (請求項 3 6 ) や、 請求項 3 5又は 3 6記載の人工遺伝子発現べ クタ一が宿主細胞に導入されていることを特徴とする人工遺伝子発現べ クタ一含有細胞 (請求項 3 7 ) や、 宿主細胞が大腸菌であることを特徴 とする請求項 3 7記載の人工遺伝子発現べクタ一含有細胞(請求項 3 8 ) や、 請求項 3 0又は 3 1記載の人工遺伝子の翻訳産物として得られるこ とを特徴とする人工タンパク質又はその誘導体 (請求項 3 9 ) や、 翻訳 が、 無細胞発現系で行われることを特徴とする請求項 3 9記載の人エタ ンパク質又はその誘導体 (請求項 4 0 ) や、 翻訳が、 細胞発現系で行わ れることを特徴とする請求項 3 9記載の人工タンパク質又はその誘導体 (請求項 4 1 ) や、 細胞が、 請求項 3 7又は 3 8記載の人工遺伝子発現 ベクタ一含有細胞であることを特徴とする請求項 4 1記載の人工タンパ ク質又はその誘導体 (請求項 4 2 ) や、 人工タンパク質の誘導体が、 人 ェ糖タンパク質、 人工ホスホリピッドプロテイン、 人工ポリエチレング リコール修飾タンパク質、 人工ボルフイ リン結合タンパク質又は人エフ ラビン結合タンパク質であることを特徴とする請求項 3 9〜4 2のいず れか記載の人工タンパク質又はその誘導体 (請求項 4 3 ) や、 請求項 3 0又は 3 1記載の人工遺伝子の翻訳産物の中から機能性分子をスクリー ニングすることを特徴とする人エタンパク質又はその誘導体の製造方法 (請求項 4 4 ) や、 請求項 3 9〜4 3のいずれか記載の人工タンパク質
又はその誘導体と、 マーカ一タンパク質及び Z又はべプチドタグとを結 合させた融合タンパク質又はその誘導体 (請求項 4 5 ) や、 請求項 3 9 〜4 3のいずれか記載の人工タンパク質又はその誘導体発現能を有する トランスジエニック非ヒト動物 (請求項 4 6 ) や、 請求項 3 9〜 4 3の いずれか記載の人エタンパク質又はその誘導体発現能を有するトランス ジエニック植物 (請求項 4 7 ) や、 請求項 3 9〜 4 3のいずれか記載の 人工タンパク質又はその誘導体を有効成分として含有することを特徴と する各種疾病に対する治療薬 (請求項 4 8 ) や、 請求項 3 9〜4 3のい ずれか記載の人工夕ンパク質又はその誘導体を有効成分として含有する ことを特徴とする各種疾病に対する診断薬 (請求項 4 9 ) や、 請求項 3 9〜 4 3のいずれか記載の人エタンパク質又はその誘導体を有効成分と して含有することを特徴とする人工生体組織 (請求項 5 0 ) や、 請求項 3 9〜 4 3のいずれか記載の人工タンパク質又はその誘導体を有効成分 として含有することを特徴とする人工夕ンパク質性高分子材料 (請求項 5 1 ) に関する。 図面の簡単な説明
第 1図は、 マイクロ遺伝子の自動デザィンの計算作業のフローの一例 を示す図である。
第 2図は、 デザインされた本発明の 2本鎖多機能 D N A配列からなる マイク口遺伝子とそれがコ一ドするアミノ酸配列を示す図である。
第 3図は、デザインされた本発明の人工遺伝子の一例を示す図である。 第 4図は、 デザィンされた本発明の人工タンパク質の一例を示す図で める。
第 5図は、 デザインされた本発明の人工遺伝子由来の人工タンパク質 を発現する大腸菌粗抽出液の S D Sポリアクリルアミ ドゲル電気泳動の
結果を示す図である。
第 6図は、 デザィンされた本発明の人工遺伝子由来の人工夕ンパク質 精製物の S D Sポリアクリルアミ ドゲル電気泳動の結果を示す図である, 発明を実施するための最良の形態
本発明の多機能塩基配列としては、塩基配列の読み枠を異にした場合、 該塩基配列が 2以上の機能を有する塩基配列であれば特に制限されるも のではなく、 塩基配列としては、 1本鎖又は 2本鎖の D N A配列又は R N A配列を具体的に例示することができ、 また、 これらは線状構造ある いは環状構造のどちらでもよいが、 重合方法が確立されている線状構造 のものが好ましい。 また、 本発明の多機能塩基配列としては、 塩基配列 の読み枠が 1つずつずれた 3つの読み枠のすべてにストップコドンが存 在しないことが、 特に 2本鎖からなる塩基配列の場合は塩基配列の 6つ の読み枠のすべてにストップコドンが存在しないことが好ましい。 さら に、 かかる多機能塩基配列を重合したときの連結部 (結合部) にストツ プコドンが生起することがない塩基配列が特に好ましい。
本発明の多機能塩基配列が有する機能は、 その塩基配列の全部又は一 部の翻訳産物が有する機能と、 その全部又は一部の塩基配列自体が有す る機能に大別することができ、 上記翻訳産物が有する機能としては、 ひ ヘリックス形成等の二次構造を形成しやすい機能、 ウィルス等の中和抗 体 を 誘 導 す る 抗原機 能 、 免 疫 賦活 化 す る 機 能 ( Nature Medicine, 3: 1266-1270, 1997) 細胞増殖を促進又は抑制する機能、 癌細 胞を特異的に認識する機能、 プロテイン · トランスダクシヨン機能、 細 胞死誘導機能、 抗原決定残基呈示機能、 金属結合機能、 補酵素結合機能、 触媒活性機能、 蛍光発色活性機能、 特定の受容体に結合してその受容体 を活性化する機能、 信号伝達に関わる特定の因子に結合してその働きを
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モジユレ一トする機能、 タンパク質, D N A , R N A , 糖などの生体高 分子を特異的に認識する機能、 細胞接着機能、 細胞外へタンパク質を局 在化させる機能、 特定の細胞内小器官 (ミ トコンドリア、 葉緑体、 E R など) にターゲッ トする機能、 細胞膜に埋め込まれる機能、 アミロイ ド 繊維形成機能、 繊維性タンパク質の形成機能、 タンパク質性ゲル形成機 能、 タンパク質性フィルム形成機能、 単分子膜形成機能、 自己集合機能、 粒子形成機能、 他のタンパク質の高次構造形成を補助する機能等を具体 的に例示することができる。 なお、 本発明において 「生物機能」 という 用語は、 これら 「塩基配列の全部又は一部の翻訳産物が有する機能」 を 意味する。 また、 上記塩基配列そのものが有する機能としては、 金属結 合機能、 補酵素結合機能、 触媒活性機能、 特定の受容体に結合してその 受容体を活性化する機能、 信号伝達に関わる特定の因子に結合してその 働きをモジュレートする機能、 タンパク質, D N A , R N A , 糖などの 生体高分子を特異的に認識する機能、 R N Aを安定化させる機能、 翻訳 の効率をモジユレ一卜する機能、 特定遺伝子の発現を抑制する機能など を例示することができる。
本発明の 2以上の機能を有する多機能塩基配列の製造方法としては、 所定の機能を有するアミノ酸配列をコ一ドする塩基配列のすべての組合 せの中から、 前記所定の機能を有するアミノ酸配列の読み枠とは異なる 読み枠において、 前記所定の機能と同一又は異なる機能を有する塩基配 列を選択する多機能塩基配列の製造方法であれば特に制限されるもので はないが、 所定の機能としては前記の生物機能が好ましく、 また所定の 機能と異なる生物機能が多様性を与えうる点で好ましい。 上記所定の機 能を有するアミノ酸配列としては、 所定の機能を有するアミノ酸配列で あれば全て包含され、 単一のアミノ酸配列に限定されるものではなく、 例えば所定の機能を有するアミノ酸配列が 3つ存在する場合には、 該 3
つのアミノ酸配列をコードする塩基配列のすべての組合せの中から、 多 機能塩基配列が選択されることになる。 かかる所定の機能を有するアミ ノ酸配列としては、 例えば前記エイズウイルス中和抗原の配列や、 白血 球に対するサイ トカインであるひケモカインがもつ G 1 u - L e u - A r g等のモチーフ構造などの既知の配列の他に、 該既知配列に 1又は 2 以上のアミノ酸が欠失、 置換又は付加され、 かつ該既知配列と同様な機 能を有する配列や、 各生物間でよく保存されている特定の生物機能に関 する共通配列や、 既存のヒトタンパク質に忌避されているアミノ酸配列 からなるヒト免疫系の監視をすり抜ける可能性がある配列など未知の配 列を例示することができる。
本発明の多機能塩基配列の大きさとしては特に制限されるものではな いが、 1 5〜 5 0 0の塩基又は塩基対、 特に 1 5〜 2 0 0の塩基又は塩 基対、 さらに 1 5〜 1 0 0の塩基又は塩基対の大きさの塩基配列が、 D N A合成を安定して行えるという点で好ましい。 また、 本発明の多機能 塩基配列として、 前記マイクロ遺伝子のランダム重合体作成方法 (特開 平 9 一 1 5 4 5 8 5号公報) やマイクロ遺伝子重合法 (特開平 9 一 3 2 2 7 7 5号公報) 等により重合するための修飾が施されている多機能塩 基配列や、 天然由来の塩基配列が結合されている多機能塩基配列を用い ることもできる。
そして、 所定の機能と同一又は異なる生物機能を有する塩基配列は、 コンピュータ一を用いる計算科学的手法により選択することができ、 よ り具体的には、 生物機能予測プログラムを用いたときのスコア一によつ て選択する手法を例示することができる。 上記生物機能予測プログラム としては、 夕ンパク質やべプチドの生物機能とタンパク質やべプチドの —次構造との相関を統計的に処理して作成したプログラムを例示するこ とができ、 例えば、 ペプチドの二次構造形成能力は文献 (S t ruc tur e,
Func t i on, and Gene t i c s 27 : 36-46 , 1997) 記載の方法を用いて評価する ことができる。この方法を用いることにより与えられたぺプチド配列の、 各残基位置での予想される αヘリックス、 βストランドの形成可能性が 数値化される (可能性が高いほど大きな値)。与えられたぺプチド配列の 全ての残基の、 αヘリックス、 ]3ストランドの形成可能性値をそれぞれ 合計した値を、 与えられたぺプチド配列のひヘリックスの形成のしゃす さ、 ]3ストランドの形成のしゃすさの値として計算し、 評価に用いるこ とができる。 その他、 機能予測プログラムとして、 例えば 「PROSITE」 (Nucleic Acids Res.,27:215-219,1999)に登録されている既知のモチ一 フとの類似性を検出する場合における 「Motiffindプログラム」 (Protein Sci.,5: 1991-1999, 1996)等のタンパク質ファミリーデ一夕べ一スゃ、天然 夕ンパク質との類似性から機能を予測する場合における類似性検索プロ グラム 「blast」 (J.Mol.Biol., 215:403-410, 1990)や、 信号伝達系のいろい ろなタンパク質因子との類似性を計算する場合における 「SMART」 プ ログラム(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:5857-5864, 1998)や、 細胞外や細 胞内小器官へタンパク質を局在化させる能力を評価する場合における 「PSORT」 プログラム(Biochem. Sci.,24:34-35, 1999) や、 細胞膜に埋め 込まれる能力を評価する場合における 「 SOSUI」 プロ グラム (Bioinformatics, 4:378-379, 1998)¾どを挙げることができる。
また、 種類の異なる 2以上の多機能塩基配列をリガーゼ等を用いて結 合させることにより、 あるいは多機能塩基配列と天然由来の塩基配列と をリガーゼ等を用いて結合させて本発明の多機能塩基配列とすることも できる。 また、 本発明の多機能塩基配列の一部を個別に作製し、 その後 これらをリガーゼ等を用いて結合させることにより本発明の多機能塩基 配列とすることもできる。 そして、 以上の本発明の多機能塩基配列の製 造方法により製造される 2以上の機能を有する多機能塩基配列もまた、
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本発明の多機能塩基配列に含まれる。
本発明の人工遺伝子は、上記の多機能塩基配列の 1種又は 2種以上を、 複数の読み枠が出現するようにコンビナトリアルに重合することにより 製造することができる。 複数の読み枠が出現するようにコンビナトリア ルに重合する方法としては、 前述の本発明者により開発された特開平 9 - 1 5 45 8 5号公報記載の方法、 すなわち 2本鎖多機能塩基配列の両 端に互いに異なる特定の D N A配列を付加し、 この特定の D N A配列に それぞれ相補的な配列を少なくとも一部含む DN A配列を調製し、 該そ れぞれ調製した DN A配列を連結した一本鎖 DN Aを用いて前記多機能 塩基配列のリガーゼ反応を行うことを特徴とする複数のマイクロ遺伝子 を用いるマイク口遺伝子のランダム重合方法や、 特開平 9一 3 2 2 7 7 5号公報記載の方法、 すなわち少なくとも一部の配列が互いに相補して いるオリゴヌクレオチド A及びオリゴヌクレオチド Bに、 D N Aポリメ ラ一ゼを作用させてポリメラ一ゼ連鎖反応を行うことを特徴とする単一 マイク口遺伝子を繰り返し重複するマイクロ遺伝子重合法を具体的に例 示することができる。
本発明の人工遺伝子発現ベクターとしては、 組み込まれた人工遺伝子 を目的細胞等で発現し得る発現ベクターであれば特に制限されるもので はなく、 発現べクタ一としては、 例えば p KC 3 0、 p T r c 9 9 A、 p B l u e s c r i p t IL p S V 2— n e o、 p CAGG S、 p c D L - S R « 2 9 6、 p G— 1、 pA c 3 7 3、 p Q E - 9 p ET— 3 a等の発現ベクターを具体的に挙げることができる。 前記ベクターは 必要に応じて複製起点、 選択マーカー、 プロモーターや、 必要に応じて RN Aスプライス部位、 ポリアデニル化シグナル等が付加されていても よい。 上記複製起点としては、 S V 4 0、 アデノウイルス、 ゥシパピ口 —マウィルス、 C o l E l、 R因子、 F因子、 AR S 1等の由来のもの
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を例示することができ、 プロモ一夕一としては、 レトロウイルス、 ポリ ォ一マウィルス、 アデノウイルス、 S V 4 0等のウィルス由来のプロモ 一夕一や、 染色体由来の E F 1— αプロモーターや、 バクテリオファー ジ λ由来のプロモーターや、 t r p、 1 ρ ρ、 l a c , t a c等のプロ モーターを例示することができる。 また、選択マ一力一遺伝子としては、 本発明の人工遺伝子発現ベクター含有細胞をスクリーニングすることが できるものであればどのようなものでもよく、 例えば、 ネオマイシン耐 性遺伝子、 ピュー口マイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、 ジフテリアトキシン耐性遺伝子、 0 _ g a 1 と n e o Rの融合遺伝子( β _ g e ο)、 カナマイシン耐性遺伝子、 アンピシリン耐性遺伝子、 テトラ サイクリン耐性遺伝子等を具体的に挙げることができる。
また、 上記人工遺伝子として、 生物活性を有するペプチドをコードす る遺伝子や GF Ρ等の標識物質をコードする遺伝子などの天然遺伝子が 適宜位置関係、 例えば上流域、 下流域、 中間域で、 適宜割合で結合され たものを用いることもできる。 この場合の天然遺伝子として、 用いる発 現ベクターに予め組み込まれている天然遺伝子を使用することもできる t 本発明の人工遺伝子発現ベクター含有細胞としては、 上記人工遺伝子 発現べクタ一が導入されている宿主細胞であれば特に制限されるもので はなく、 かかる宿主細胞としては、 動物細胞、 植物細胞、 微生物細胞を 挙げることができる。 上記動物細胞としては、 ドロソフイラ S 2、 スポ ドプテラ S f 9等の昆虫細胞や、 L細胞、 CHO細胞、 CO S細胞、 H e L a細胞、 C 1 2 7細胞、 BAL BZc 3 T 3細胞 (ジヒドロ葉酸レ ダク夕ーゼゃチミジンキナーゼなどを欠損した変異株を含む)、 B HK 2 1細胞、 HEK 2 9 3細胞、 B o w e sメラノーマ細胞等を例示するこ とができ、 植物細胞としては、 シロイヌナズナ、 タバコ、 トウモロコシ、 コムギ、 イネ、 ニンジン、 大豆などから株化した植物細胞等を例示する
ことができる。 また、 微生物細胞としては、 大腸菌、 放線菌、 枯草菌、 ストレプトコッカス、 スタフイロコッカス等の細菌原核細胞や、 酵母、 ァスペルギルス等の真菌細胞を例示することができるが、 材料や知見が 豊富でかつストップコドンの 1つアンバーコドン (T A G ) をセリン、 グルタミ ンあるいはチロシンとして翻訳するサブレッサ一変異 (supD,supE,supF) をもっている大腸菌が好ましい。
また、 かかる人工遺伝子発現ベクターの宿主細胞への導入は、 Davis ら (BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, 1986 ) 及び Sambrook ら (MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989) などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載される方法、 例えば、 リン酸カルシウムトランスフエクシヨン、 D E A E—デキスト ラン媒介トランスフエクシヨン、 トランスべクション(transvection)、 マ イク口インジェクション、 カチオン性脂質媒介トランスフエクシヨン、 エレクトロボレ一シヨン、 形質導入、 スクレープローデイング (scrape loading)^ 弾丸導入(ballistic introduction)、 感染等により行うことがで きる。
本発明の人工タンパク質又はその誘導体としては、 上記人工遺伝子の 翻訳産物として得られるタンパク質やその誘導体であれば特に制限され るものではなく、 かかる人工遺伝子の翻訳は、 無細胞発現系あるいは細 胞発現系で行うことができる。 上記無細胞発現系としては、 大腸菌 S 3 0抽出液を用いる無細胞夕ンパク質合成系、 コムギ胚芽無細胞夕ンパク 質合成系等を例示することができ、 また細胞発現系としては前記人工遺 伝子発現べクタ一含有細胞を培養することにより実施することができる t また、 上記人工タンパク質の誘導体としては、 糖タンパク質、 ホスホリ ピッ ドプロテイン、 ポリエチレングリコール修飾タンパク質、 ポルフィ
リン結合夕ンパク質、 フラビン結合夕ンパク質などを挙げることができ る。
本発明の融合タンパク質又はその誘導体としては、 人工夕ンパク質又 はその誘導体とマ一力一タンパク質及び Z又はべプチドタグとが結合し ているものであればどのようなものでもよく、 マーカ一タンパク質とし ては、 従来知られているマーカータンパク質であれば特に制限されるも のではなく、 例えば、 アルカリフォスファターゼ、 抗体の F c領域、 H R P、 G F Pなどを具体的に挙げることができ、 またペプチドタグとし ては、 M y cタグ、 H i sタグ、 F L A Gタグ、 G S Tタグなどの従来 知られているペプチドタグを具体的に例示することができる。 かかる融 合タンパク質又はその誘導体は、 常法により作製することができ、 N i 一 N T Aと H i sタグの親和性を利用した人工タンパク質等の精製や、 人工夕ンパク質の検出や、 人エタンパク質等に対するリガンドの定量、 人工タンパク質に関わる疾患の診断用マ一カーなどとして、 また当該分 野の研究用試薬としても有用である。 さらに、 上記人工遺伝子、 人工夕 ンパク質をコードする D N A、 人工タンパク質、 人工タンパク質とマ一 力一タンパク質及び Z又はべプチドタグとを結合させた融合夕ンパク質. 人工遺伝子発現ベクター、 人工遺伝子発現ベクター含有細胞等は、 各種 疾患に対する治療薬に有用である。
本発明のトランスジエニック非ヒト動物としては、 人工タンパク質又 はその誘導体発現能を有する非ヒト動物であれば特に制限されるもので はなく、 また、 本発明のトランスジエニック植物としては、 人工タンパ ク質又はその誘導体発現能を有する植物であれば特に制限されるもので はない。 そして、 本発明における非ヒト動物としては、 マウス、 ラッ ト 等の齧歯目動物などの非ヒト動物を具体的に挙げることができ、 また、 本発明のトランスジエニック植物としては、 イネ、 小麦、 トウモロコシ、
大豆、 タバコ、 ニンジン等の農作物などの植物を具体的に挙げることが できるが、 これらに限定されるものではない。
以下、 人工夕ンパク質又はその誘導体をコ一ドする遺伝子が染色体上 で発現する非ヒト動物の作製方法を、 人工夕ンパク質又はその誘導体の トランスジエニックマウスを例にとって説明する。 例えば、 人工タンパ ク質又はその誘導体のトランスジエニックマウスは、 人工タンパク質又 はその誘導体をコードする D N Aにチキン jS —ァクチン、 マウスニュ一 口フィラメント、 S V 4 0等のプロモータ一、 及びラビット ] 3—グロビ ン、 S V 4 0等のポリ A又はイントロンを融合させて導入遺伝子を構築 し、該導入遺伝子をマウス受精卵の前核にマイクロインジェクションし、 得られた卵細胞を培養した後、 仮親のマウスの輸卵管に移植し、 その後 被移植動物を飼育し、 産まれた仔マウスから前記 D N Aを有する仔マウ スを選択することによりかかるトランスジエニックマウスを創製するこ とができる。 また、 D N Aを有する仔マウスの選択は、 マウスの尻尾等 より粗 D N Aを抽出し、 導入した人工タンパク質又はその誘導体をコ一 ドする D N Aをプローブとするドッ トハイプリダイゼ一ション法や、 特 異的プライマ一を用いた P C R法等により行うことができる。 また、 メ ンデルの法則に従い出生してくるホモ接合体非ヒト動物には、 人工タン パク質又はその誘導体発現型とその同腹の野生型とが含まれ、 これらホ モ接合体非ヒト動物における発現型とその同腹の野生型を同時に用いる ことによって、 各種診断等を個体レベルで正確な比較実験をすることが できる。
次に、 上記人工夕ンパク質又はその誘導体のトランスジエニック植物 の作製方法について説明する。 例えば、 本発明の人工遺伝子がインテグ レイ トされた植物体発現ベクターを、 シロイヌナズナ、 タバコ、 トウモ 口コシ、 小麦、 イネ、 ニンジン、 大豆などから樹立した植物株化細胞に
導入し、この遺伝子導入された細胞株を植物体へ再生させることにより、 トランスジエニック植物を得ることができる。 トランスジエニック植物 の形態としては、植物体の他、プロトプラスト、カルス、植物体の部分(リ ーフディスク、 ヒポコチル等)を挙げることができる。 また、 宿主植物細 胞へのべクタ一の導入法としては、 ァグロパクテリゥム法が好適である がその他にも、 例えば、 ポリエチレングリコール法、 エレクト口ポレー シヨン法、 パーティクルガン法などを用いることができる (モデル植物 の実験プロトコール、 秀潤社 ( 1996) )。 また、 本発明のトランスジェニ ック植物の種子、 塊根、 切穂、 メリクローン等を用いると、 目的とする 植物体を量産することが可能となる。
以下、 トランスジエニックイネ植物を例に挙げてより具体的に説明す る。 完熟種子からカルス誘導を行い、 これに人工タンパク質又はその誘 導体の c D N Aを導入したァグロパクテリゥムを感染させる。 これら力 ルスとァグロパクテリゥムとを共培養した後、選抜培地に移し培養する。 約 3週間後カルスを再分化培地に移し、 再分化するまで培養する。 4、 5 日馴化させた後ポッ.トに移すことで形質転換体を再生させることがで きる (モデル植物の実験プロトコール、 秀潤社 ( 1996) )。 その他、 ニン ジン、 タバコ等の再生の方法としては、 それぞれ加藤、 庄野博士等の方 法 (植物組織培養の技術 朝倉書店 ( 1983) ) を具体的に挙げることがで きる。 また、 人工タンパク質又はその誘導体をコードする D N Aが導入 されたトランスジエニック植物の選択は、 かかる植物体内から粗 D N A を抽出し、 ノーザンプロッ ト法により、 あるいは、 導入した人工タンパ ク質又はその誘導体をコードする D N Aをプローブとするドッ トハイブ リダイゼ一ション法や、 特異的プライマ一を用いた P C R法等により行 うことができる。
前記人エタンパク質又はその誘導体を有効成分として含有させること
により、 各種疾病に対する治療薬や診断薬とすることができる。 人工夕 ンパク質又はその誘導体は、 細胞中や細胞膜に存在する形態でも使用す ることができ、 例えば、 細胞膜を得る方法としては、 F. P i e t r i -Rouxe l (Eur . J . B i ochem., 247 : 1 174-1 179, 1997)らの方法などを用いることがで きる。 また、 人工タンパク質又はその誘導体を細胞培養物から回収し精 製するには、 硫酸アンモニゥムまたはエタノール沈殿、 酸抽出、 ァニォ ンまたはカチオン交換クロマ卜グラフィー、 ホスホセルロースクロマト グラフィ一、 疎水性相互作用クロマトグラフィー、 ァフィ二ティーク口 マトグラフィ一、 ハイ ド口キシァパタイ トクロマトグラフィーおよぴレ クチンクロマトグラフィーを含めた公知の方法、 好ましくは、 高速液体 クロマトグラフィーが用いられる。 特に、 ァフイエティ一クロマトダラ フィ一に用いるカラムとしては、 例えば、 人工タンパク質に対するリガ ンドを結合させたカラムや、 後述するように本発明の人工タンパク質に 通常のぺプチドタグを付加した場合は、 このべプチドタグに親和性のあ る物質を結合したカラムを用いることにより、 人工タンパク質を得るこ とができる。
以下、 実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、 本発明はこ れら実施例に限定されるものではない。 実施例 1
H I Vウィルスの一群の亜種がもつ g p 1 2 0タンパク質の部分配列 である、 配列番号 1に示されるアミノ酸配列からなるぺプチドをコード する塩基配列を読み枠の 1つとし、 かつ同方向の他の読み枠 2つのうち の少なくとも 1つの読み枠で 2次構造を形成しやすいアミノ酸配列から なるペプチドをコ一ドすることができるマイク口遺伝子をデザィンする ために、 図 1に示すフローチヤ一トにしたがってマイクロ遺伝子を構築
した。 計算機の処理能力を考慮して、 配列番号 1に示される 2 0ァミノ 酸残基を、 互いに一部重複する部分配列である 3つのアミノ酸配列、 す なわち配列番号 2、 配列番号 3、 配列番号 4にそれぞれ示される 3つの アミノ酸配列からなるぺプチドに分割し、 それぞれについて計算を実行 した。
配列番号 3に示されるアミノ酸配列からなるぺプチドをコードする塩 基配列の場合、 まず読み枠の 1つに配列番号 3に示されるアミノ酸配列 からなるペプチドをコードすることのできる全ての塩基配列 (塩基長は 1 3 X 3 = 3 9 ) である約 5億種の塩基配列を計算機内に作成し、 この 配列集団の中から、 同方向の他の 2つの読み枠に終止コ ドンをもたない 約 1 , 1 3 5万種の塩基配列を計算機内で選び出した。 次に、 これら選 び出された塩基配列の読み枠 1 と同方向の他の 2つの読み枠のコードす る全てのアミノ酸配列約 2, 2 7 0万種を計算機内に作成し、 このアミ ノ酸配列からなるペプチド集団の中から同じアミノ酸配列をもった重複 配列を除き、 それぞれ異なる配列をもつペプチド集団約 1 , 5 0 6万種 を選び出した。 このそれぞれのペプチド集団に対して、 その Q!ヘリック ス、 あるいは、 i3シートの二次構造形成能力を前記の二次構造予測プロ グラムを用いたスコア一によつて評価し、 二次構造形成能力が高いと予 想されるペプチドの中から、 配列番号 5に示されるアミノ酸配列からな るペプチドを選定した。 このペプチドは、 配列番号 6に示される塩基配 列の第 2読み枠にコ一ドされるアミノ酸配列であり、 αヘリックス構造 を形成しやすい配列と予想された。
配列番号 2に示されるアミノ酸配列からなるぺプチドをコードする塩 基配列についても、 上記同様の計算を実行し、 第 1読み枠で、 配列番号 2に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを、 第 2読み枠で aへリツ クスを形成する可能性が高いペプチドをコードし、 かつ、 そのペプチド
の 4番目から 6番目のアミノ酸配列が、 上記配列番号 5に示されるアミ ノ酸配列の 1番目から 3番目のアミノ酸配列に一致する、 配列番号 7に 示されるアミノ酸配列からなるペプチドを選び出した。このペプチドは、 配列番号 8に示される塩基配列の第 2読み枠にコ一ドされるアミノ酸配 列である。
配列番号 4についても上記同様の計算を実行し、 第 1読み枠で、 配列 番号 4に示されるアミノ酸配列からなるぺプチドを、 第 2読み枠でひ へ リックスを形成する可能性が高いペプチドをコードし、 かつ、 そのぺプ チドの 1番目から 3番目のアミノ酸配列が、 配列番号 5の 1 1番目から 1 3番目のアミノ酸配列に一致する、 配列番号 9に示されるアミノ酸配 列からなるペプチドを選び出した。 このペプチドは、 配列番号 1 0に示 される塩基配列の第 2読み枠にコ一ドされるアミノ酸配列である。
上記の操作で得られた配列番号 6、 配列番号 8、 配列番号 1 0にそれ ぞれ示される塩基配列を、 重複を考慮しながら連結し、 配列番号 1 1に 示される塩基配列を有するマイクロ遺伝子 「デザイン一 2 5」 を得た。 このデザインされたマイクロ遺伝子は、 図 2に示すように、 第 1読み枠 で H I Vウィルスの一群の亜種がもつ g p 1 2 0タンパク質の部分配列 をコードし、 第 2読み枠で、 ヘリックス構造を形成しやすいペプチド の配列をコードする。 なお、 マイクロ遺伝子デザイン— 2 5の場合、 マ イク口遺伝子のマイナス鎖 (配列番号 1 1に示される塩基配列に対して 相補的な配列) に関しては、 終止コドンの出現の回避などの制限を加え ていない
上記のデザィンされたマイク口遺伝子 「デザィンー 2 5」 を出発材料 とし、 前記特開平 9 - 3 2 2 7 7 5号公報記載の高分子マイクロ遺伝子 重合体の作成方法の技術を用いて、 マイクロ遺伝子重合体ライブラリー を作製した。 なお、 重合の基礎となるオリゴヌクレオチド Aとして、 配
列番号 1 2に示される塩基配列からなる KY— 1 1 9 7を、 オリゴヌク レオチド Βとして、 配列番号 1 3に示される塩基配列からなる ΚΥ— 1 1 9 8をそれぞれ合成して用いた。 これら 3 4ヌクレオチドからなるォ リゴヌクレオチド Αの 3 ' 側 1 0残基と、 3 6ヌクレオチドからなるォ リゴヌクレオチド Bの 3 ' 側 1 0残基とが、 ともに 3 ' 端を除いて互い に相補的な配列として構成されている。
上記オリゴヌクレオチド Aとオリゴヌクレオチド Bとを用いた重合反 応の条件は、 5 0 Lの反応容量では以下の通りである。
K Y - 1 1 9 7 2 0 p m o 1
K Y- 1 1 9 8 2 0 p m o 1
K C 1 1 0 mM
(NH4) 2 S 04 1 0 mM
T r i s -HC l (p H 8 8 ) 1 0 mM
M g S 04 2 mM
T r i t o n X - 1 0 0 0. %
2. 5 mM d N T P 7 II L
上記反応液を 94°Cで 1 0分間処理した後、 DN Aポリメラーゼ (二 ユーイングランドバイオラブス社製 「V e n t R」) を 5. 2ュニッ ト加 えた。
重合反応は、 パーキン · エルマ一社の 24 0 0ジーンアンプ P C Rシ ステムを用いて行った。 反応条件は、 94°Cで 1 0秒間熱変性させ、 6 6°Cで 6 0秒間ァ二一リングと伸張反応を行うというサイクルで 5 5サ ィクル繰り返し、 最後の伸張反応を 6 6°Cで 7分間行った。 重合反応産 物として得られた本発明の人工遺伝子をプラスミ ドベクタ一 p T Z 1 9 R (Protein Eng. , 1:67-74, 1986)にクローニングし、 その挿入 D Ν Α断片 の塩基配列をシ一クェンサ一 (パーキン ·エルマ一社) を用いて決定し
た。 クローニングされた DN A断片のうちのいくつかを図 3に示す。 図 3に示される P TH 1 2 7の挿入塩基配列を配列番号 1 4に、 p TH 1 4 5の挿入塩基配列を配列番号 1 5に、 p TH 1 7 1の挿入塩基配列を 配列番号 1 6に、 p TH 1 7 6の揷入塩基配列を配列番号 1 7にそれぞ れ示す。
上記マイク口遺伝子重合体である人工遺伝子を大腸菌内で発現させる ために、 プラスミ ドベクター p T Z 1 9 Rにクロ一ニングした 24種の 挿入 DNA断片を切りだし、 方向、 読み枠などを考慮しながら、 方向、 読み枠を選んで発現させることができる発現プラスミ ドベクタ一シリー ズ p KS 6 0 0〜p KS 6 0 5のいずれか 1つに再クローニングした。 この 6種の発現プラスミ ドベクター p KS 6 0 0〜p K S 6 0 5は、 キ ァゲン社から発売されている読み枠を 1つずつずらした発現ベクターシ リ一ズである P QE— 9、 p QE_ 1 0、 p QE— 1 1のクローニング サイ トを改変したもので、 プラス鎖とマイナス鎖のそれぞれ 3読み枠、 合計 6種の読み枠のいずれかにより翻訳産物を大腸菌の中で大量発現さ せることができるように作製したものである。 この人工遺伝子が挿入さ れた発現プラスミ ドベクタ一 p TH l 7 7〜p TH 2 0 0が導入された 大腸菌を、発現誘導剤である I P TG存在条件下で培養することにより、 配列番号 1に示されるアミノ酸配列の全部、 あるいは一部をもつ人エタ ンパク質が得られた。翻訳産物のぺプチド配列のいくつかを図 4に示す。 図 4から、 マイクロ遺伝子 「デザイン— 2 5」 のもつ複数の読み枠の 翻訳産物が複雑に入り交じった種々の人工タンパク質が得られることが わかる。 図 4に示される前記 P TH 1 2 7に揷入された人工遺伝子を P KS 6 0 1に再クローニングして得られた p TH 1 7 7から産生される タンパク質のアミノ酸配列を配列番号 1 8に示す。 また、 前記 p TH l 4 5に揷入された人工遺伝子を! K S 6 0 1に再クローニングして得ら
れた p TH l 8 1から産生されるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号 1 9に、 p TH 1 7 1に揷入された人工遺伝子を p K S 6 0 1に再ク口 一二ングして得られた p TH 1 84から産生されるタンパク質のアミノ 酸配列を配列番号 2 0に、 p TH 1 7 6に挿入された人工遺伝子を p K S 6 0 1に再クローニングして得られた p TH 1 8 5から産生される夕 ンパク質のアミノ酸配列を配列番号 2 1にそれぞれ示す。
前記 24種の人工遺伝子が挿入された発現ベクター p TH 1 7 7〜p TH 2 0 0を大腸菌 X L 1 B 1 u e株内に導入し、 I P T Gで誘導後、 1 5 - 2 5 %グラジュェントゲルを用いた S D Sポリアクリルアミ ド電 気泳動法により、 その細胞抽出液を解析した。 結果を図 5に示す。 図 5 中の分子量マーカ一は、 大きいものより 9 7 , 4 0 0、 6 6, 2 6 7、 42, 40 0、 3 0 , 0 0 0、 2 0, 1 0 0、 1 4, 4 0 0であり、 人 ェ遺伝子の翻訳産物である人工タンパク質は 「秦」 印で示されている。 また、 発現べクタ一 p K S 6 0 0〜 p K S 6 0 5は、 N末端にポリヒス チジン残基を付加するタイプの発現べクタ一であり、 このポリヒスチジ ン領域に親和性をもつ樹脂を利用することにより精製が可能である。 図 5で観察された人エタンパク質のうち p TH l 8 4と p TH l 8 5をク 口ンテック社の TAL ON樹脂を用い精製した結果を図 6に示す。 実施例 2
H I Vの tat と呼ばれる遺伝子産物は、 細胞に接触させると細胞内部 に導入されるという プロテイ ン · ト ランスダクシヨ ン (protein transduction) 活性を有しており、 現在ではその N末端の配列がプロテ イン · トランスダクシヨン活性に関わり、 このアミノ酸配列を種々の夕 ンパク質の N末端に融合させて、 当該タンパク質を細胞内へ導入させる ことが報告されている (Science, 285:1569 - 1572, 1999)。 そこで、 配列番
号 2 2で示される上記 N末端のアミノ酸配列を出発情報として、 図 1の フローに従い、 マイクロ遺伝子を実施例 1と同様にデザインした。 この 配列番号 2 3で示される塩基配列を有するマイクロ遺伝子は、 第 2読み 枠がプロテイン · トランスダクション活性を有する配列番号 2 2で示さ れるアミノ酸配列を、 第 1読み枠が αヘリックス構造を形成しやすい配 列番号 2 4で示されるアミノ酸配列をそれぞれコ一ドしている。
他方、 アポトーシス信号伝達系のいくつかのタンパク質がもつモチ一 フとして知られている 「Β Η 3」 モチーフをもつ Noxaタンパク質を、 ァ デノウィルスべクタ一などで人為的に細胞に導入すると細胞死が誘導さ れることが知られている (Sc i ence, 288 : 1053-1058, 2000)。 この Noxaタ ンパク質は 1 0 0アミノ酸残基からなり、 上記 「B H 3」 モチーフ以外 の領域の種間での保存性は低く、 全体がひヘリックスに富むタンパク質 であることから、 アポトーシス信号伝達系に作用し、 細胞死誘導活性を 有するアミノ酸配列として上記 「B H 3」 モチーフを用いた。 配列番号 2 5で示されるアミノ酸配列からなる 「B H 3」 モチーフを出発情報と して、 図 1のフローに従い、 マイクロ遺伝子を実施例 1と同様にデザィ ンした。 この配列番号 2 6で示される塩基配列を有するマイクロ遺伝子 は、 第 1読み枠が細胞死誘導活性を有すると考えられる配列番号 2 5で 示されるアミノ酸配列を、 第 3読み枠がひヘリックス構造を形成しやす い配列番号 2 7で示されるアミノ酸配列をそれぞれコードしている。 次に、 前記配列番号 2 3で示される塩基配列を有するマイクロ遺伝子 と、 上記配列番号 2 6で示される塩基配列を有するマイクロ遺伝子を結 合させ、 配列番号 2 8で示される塩基配列を有するマイクロ遺伝子 「デ ザイン— 2 6」 をデザィンした。 マイク口遺伝子 「デザィン— 2 6」 の 第 1読み枠 (配列番号 2 9 ) は、 αヘリックス構造を形成しやすいアミ ノ酸配列と 「Β Η 3」 モチーフが融合しており、 上記 Noxaタンパク質と
類似の活性を有する可能性が大きい。 また、 第 2読み枠 (配列番号 3 0 ) にはプロテイン · トランスダクション活性を有するアミノ酸配列が含ま れており、 第 3読み枠 (配列番号 3 1 ) にはひヘリックス構造を形成し やすいアミノ酸配列が含まれている。 実施例 3
プロテイン · トランスダクション活性と細胞死誘導活性を異なる読み 枠に有するマイクロ遺伝子 「デザイン一 2 7」 を、 実施例 2と同様に構 築した。 この配列番号 3 2で示される塩基配列を有するマイクロ遺伝子 「デザイン— 2 7」 の第 1読み枠 (配列番号 3 3 ) は、 ひヘリックス構 造を形成しやすいアミノ酸配列と 「B H 3」 モチーフが融合しており、 上記 Noxa夕ンパク質と類似の活性を有する可能性が大きい。 また、第 3 読み枠 (配列番号 3 4 ) は、 プロテイン · トランスダクシヨン活性を有 するアミノ酸配列とひヘリックス構造を形成しやすいアミノ酸配列が融 合した配列から構成されている。 産業上の利用可能性
本発明の、 塩基配列の読み枠を異にした場合に 2以上の機能を有する 多機能塩基配列ゃ該多機能塩基配列が複数の読み枠が出現するように結 合している人工遺伝子を用いると、 自然には存在しない産業上有用な人 ェタンパク質を探し出す (創り出す) ことができる。 また、 本発明は、 夕ンパク質性の刺激応答ゲルや自己集合能力のあるナノスケールのタン パク質構造体の作製等材料工学の分野や、 接着夕ンパク質のモチーフな どを埋め込んで、 細胞増殖の土台となるような人工マトリックスタンパ ク質の創出等再生医学の分野で応用することができる。