明細書
医療用材料及びその製造方法
技術分野
本発明は、 表面潤滑性及び血液適合性を兼備した安全で且つ、 経日安定性に優 れた被覆層を有する医療用材料及びその製造方法に関する。
背景技術
従来より、 医療用具を構成する素材の表面機能を改質 ·改善するために様々な 表面処理法が検討されている。特に、血液と直接に接触させて用いる医療用具は、 血栓の形成による医療用具の性能劣化及び血栓の基材表面からの離脱による重篤 な合併症の発生を極力抑制するために、 基材表面を血液適合性に改良することが 重要な課題となっている。 また、 体外より血管等に直接挿入されるカテーテル、 及びカテーテルを血管内の目的部位にまで到達せしめるための案内具として使用 されるガイ ドワイヤー等の医療用具では、 前記血液適合性に加えて、 操作性の向 上及び血管等の組織損傷の低減という観点から表面潤滑化が必要とされている。 これらの機能を医療用具の基材表面に付与する最も実用的な方法として、 親水 性ポリマーによる表面改質法が種々検討されている。 医療用具表面を親水性ポリ マーで修飾する場合、 安全性及び効果の持続性を考慮すると単なるコーティング よりは前記親水性ポリマーを化学的に基材表面に固定化するのが望ましい。 親水 性ポリマ一の基材表面への固定化法については、 現在までに数多くの検討が為さ れているが、 その中にエポキシ基による表面カツプリング反応を利用する方法が 提案されている。
エポキシ基を介した親水性ポリマーの固定化による医療用具の血液適合性の改 良として、 例えば、 特開平 7—1 8 4 9 8 9号公報には、 (i) 2 —(メタクリロイ ルォキシ)ェチルー 2 ' _ (トリメチルアンモニォ)ェチルホスフエ一ト(以下、 M P Cと略す)とエポキシ基含有単量体の共重合体とを、アミノ基及びカルボキシル基 のうち少なく とも一方の基を 2個以上有する化合物で架橋した高分子材料、 ある いは(ii) M P Cと、 アミノ基含有単量体及びカルボキシル基含有単量体のうち少 なくとも一方の単量体との共重合体を、 エポキシ基を 2個以上有する化合物で架 橋した高分子材料のレ、ずれかを医療材料表面に結合させる方法が記載されている。
特開平 7—1 8 4 9 9 0号公報には、 M P Cと、 エポキシ基含有単量体と、 水酸 基含有単量体、 アミノ基含有単量体、 及びカルボキシ基含有単量体のうち少なく とも 1種類の単量体との共重合体を基材表面に固定化する方法が開示されている。 しかし、 上述のいずれの方法においても、 加熱処理による M P C共重合体の架 橋膜を作製後、 架橋膜中に毒性の高いエポキシ基が残留している可能性が高く、 体内に留置した場合に人体に対して有害な影響を及ぼしかねない。
特表平 7— 5 0 2 0 5 3号公報(WO 9 3 / 0 1 2 2 1 )には、 表面にポリマー を安定に結合させるペンダント基を有する M P Cポリマー、 その製造方法及び同 ポリマ一を基材と結合させることにより表面を生体適合性にする方法が記載され ている。
しかし、 この方法も、 前記ペンダント基がエポキシ基である場合、 安全性の面 で問題がある。 また上記 M P Cポリマーを結合したいずれの材料においても、 表 面潤滑性に関する検討は一切為されておらず、 同機能に関する記述も無い。
一方、 親水性ポリマーによる医療用具の表面潤滑化としては、 例えば、 分子内 に反応性官能基を有する水膨潤性重合体を、 該反応性官能基と反応可能なプロ ト ン供与性基を有する基材表面にコーティングする方法(特開平 6— 2 8 5 1 5 2 号公報)、酸無水物を分子内に有する合成高分子基材からなる医療用具表面に、該 酸無水物と反応しうる官能基を有する水膨潤性重合体を固定化する方法(特開平 7 - 2 0 4 2 6 2号公報)、反応性官能基を分子内に有する親水性高分子と、該反 応性官能基と反応可能な官能基を有する高分子との混合物の不溶化物を医療用具 の基材表面に形成させる方法(特開平 8— 2 4 3 2 7号公報)、 ポリオレフイン又 は変性ポリオレフインからなる医療用具の基材表面に、 該ポリオレフイン又は該 変性ポリオレフインに対して接着性を有する樹脂と反応性官能基を分子内に有す る親水性高分子の不溶化物との混合物を結合する方法、 あるいは基材表面に前記 接着性樹脂を介して前記親水性高分子を結合する方法(特開平 8— 2 4 3 2 8号 公報)、 水溶性又は水膨潤性重合体を医療用具の基材との間の相互貫入網目構造 ( I P N)により固定化する方法(特開平 8— 3 3 7 0 4号公報)、 反応性官能基を 分子内に有する水溶性もしくは水膨潤性高分子の不溶化物と、 抗血栓剤からなる_ ハイ ドロゲルとを医療用具の表面に形成させる方法(特開平 8— 1 9 5 9 9号公
報)、反応性複素環基を有する親水性ポリマーを、予め該反応性複素環基と反応可 能な官能基を導入しておいた医療用具の基材表面に固定化する方法(WO 9 0 / 0 1 3 4 4 )、 ω—カルボキシ(メタ)ァクリ レートとエポキシ基含有ビュルモノマ —とを含む共重合体を、 エポキシ基と反応可能なプロ トン供与性基を有するポリ マ一を塗布した医療用具の基材表面に固定化する方法(特開平 1 0— 2 0 1 8 0 号公報)等が開示されている。
しかし、 これらいずれの方法においても、 潤滑性発現に関与するポリマーがェ ポキシ基を分子内に有する親水性ポリマーである場合、被覆膜が経時的に架橋し、 膜の保水能が低下し、 湿潤時における表面潤滑性が失われる恐れがある。 このよ うな製品性能の経時劣化の問題に加えて、 安全性の面でも問題がある。 更に、 上 記各種の潤滑化表面は、 いずれも血液適合性が不十分である。
発明の開示
本発明の目的は、 湿潤時における永続的な表面潤滑性を発現するのに必要な高 い耐久性と優れた血液適合性とを兼備した、 安全で且つ、 経日安定性に優れた表 面を有する医療用材料及びその製造方法を提供することにある。
本発明によれば、 医療用材料基体の表面の少なくとも一部に、 式(1 )で表され る複素環基を有する高分子物質(Α)を含む被覆材料により被覆層を形成し、 該被 覆層中に残存する前記複素環基を求核性化合物(Ν)により開環させて得た医療用 材料が提供される。
R 1 Η
— C—— C-H -( 1)
V
(式中 Xは、 〇、 Ν Η又は Sを示し、 R 1は、 Η又は C H 3を示す。 )
また本発明によれば、 医療用材料基体の表面の少なく とも一部に、 上記式(1 ) で表される複素環基を有する高分子物質(A)を含む被覆材料により被覆層を形成 し、 該被覆層上に、 前記複素環基と反応可能な反応性官能基を有する親水性共重 合体( B )により構成された被覆膜を設け、 前記被覆層中に残存する前記複素環基 を求核性化合物( N )により開環させて得た医療用材料が提供される。
更に本発明によれば、 医療用材料基体の表面の少なくとも一部に、 上記式(1 ) で表される複素環基を有する高分子物質(A)を含む被覆材料を塗布した後、 加熱 し、 被覆層を形成する工程と、 前記被覆層に、 求核性化合物(N)を含む溶液を接 触させ、 前記被覆層中に残存する前記複素環基を開環させる工程とを含む上記医 療用材料の製造方法が提供される。
更にまた本発明によれば、 医療用材料基体の表面の少なく とも一部に、 上記式 ( 1 )で表される複素環基を有する高分子物質(A)を含む被覆材料を塗布した後、 加熟し、 被覆層を形成する工程と、 前記被覆層上に、 前記複素環基と反応可能な 反応性官能基を有する親水性共重合体(B )の溶液を塗布した後、 加熱し、 前記親 水性共重合体(B )により構成される被覆膜を設ける工程と、 前記被覆層に、 求核 性化合物(N)を含む溶液を接触させ、 前記被覆層中に残存する前記複素環基を開 環させる工程とを含む上記医療用材料の製造方法が提供される。
発明の好ましい実施の態様
本発明の医療用材料は、医療用材料基体の表面の少なくとも一部に、上記式(1 ) で表される複素環基を有する高分子物質(A)を含む被覆材料により被覆層を形成 し、 該被覆層中に残存する前記複素環基を求核性化合物(N)により開環させて得 たもの、若しくは医療用材料基体の表面の少なくとも一部に、上記高分子物質(A) を含む被覆材料により被覆層を形成し、 該被覆層上に、 前記複素環基と反応可能 な反応性官能基を有する親水性共重合体(B )により構成された被覆膜を設け、 前 記被覆層中に残存する前記複素環基を求核性化合物(N)により開環させたもので ある。
前記高分子物質(A)の 1分子中に存在する上記式(1 )で表される複素環基は、 同一又は異なる基であっても良い。 該複素環基としては、 例えば、 エチレンォキ シド基、 プロピレンォキシド基、 エチレンイミン基、 プロピレンイミン基、 ェチ レンスルフィ ド基、 プロピレンスルフィ ド基等が挙げられる。
前記高分子物質(A)は、 上記複素環基を有しておれば特に限定されない。 例え ば、 医療用材料基体の表面に被覆層として形成することで、 抗血栓性や表面潤滑 性等の機能を付与するためには、 親水性又は水膨潤性の物性を示す高分子物質の 使用が望ましい。 前記複素環基を有する親水性高分子物質を製造する方法として
は、例えば、 (A— 1 )親水性高分子物質に前記複素環基有する化合物を反応させ、 複素環基を導入する方法、 ( A— 2 )親水性ラジカル重合性単量体 (al)と複素環基 含有単量体 (a2)とを共重合させる方法等が挙げられる。
前記(A— 1 )の方法に用いる親水性高分子物質は、 天然高分子及び合成高分子 のいずれであっても良い。 天然高分子としては、 例えば、 多糖類、 タンパク質類 等が挙げられる。
多糖類としては、 例えば、 カルボキシメチルデンプン、 ジアルデヒ ドデンプン、 プルラン、 マンナン、 アミロぺクチン、 アミロース、 デキス トラン、 ヒ ドロキシ ェチルデキス トラン、 レバン、 ィヌリン、 キチン、 キトサン、 キシログルカン、 アルギン酸、 アラビアゴム、 グァ一ガム、 トラガントガム、 ヒアルロン酸、 へパ リン、 メチノレセノレロース、 ェチノレセノレ口一ス、 醉酸セノレロース、 ニ トロセノレ口一 ス、 カルボキシメチノレセルロース、 カルボキシメチルェチノレセルロース、 ヒ ドロ キシェチノレセノレ口一ス、 ヒ ドロキシプ口ピノレセノレロース、 ェチノレヒ ドロキシェチ ルセルロース、 ヒ ドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
タンパク質類としては、 例えば、 にかわ、 ゼラチン、 カゼイン、 コラーゲン等 が挙げられる。
合成高分子としては、 例えば、 ポリビエルアルコール、 ポリアクリル酸ナトリ ゥム、 ポリエチレンオキサイ ド、 ポリアクリルアミ ド、 ポリエチレンィミン、 ポ リスチレンスルホン酸ナトリ ゥム、 メチルビ二ルェ一テル一無水マレイン酸共重 合体、 メチルビニルエーテル—無水マレイン酸共重合体のハーフアルキルエステ ル等が挙げられる。
前記複素環基を有する化合物としては、 式(3 )で示される複素環基を有するァ ルキルハラィ ド等が挙げられる。 ·'·( 3)
式(3 )中、 Xは〇、 Ν Η又は Sを示し、 Υは C l、 B r又は Iを示し、 R 1は H又は C H 3を示す。 nは 1〜2 0の整数である。
(A— 1 )の方法では、 例えば、 親水性高分子物質を溶解若しくは膨潤せしめる
適当な非プロトン性有機媒体中で、 親水性高分子物質と複素環基を有する化合物 とを、 トリェチルァミン、 ピリジン等の塩基性触媒存在下で脱塩酸させる公知の 方法によって、 目的とする複素環基を有する親水性高分子物質 (以下、 HC高分子 という)が得られる。
(A— 1)の方法において、 複素環基を有する化合物の導入量は、 目的とする性 能によって適宜選択されるが、 親水性高分子物質に対して 0. 01〜70質量% が好ましく、 0. 1〜50質量%が特に好ましい。 複素環基を有する化合物の導 入量が 0. 01質量%未満の場合、 医療用材料の基材表面に存在する複素環基と 反応可能な官能基との反応効率及び H C高分子間の架橋反応の効率が低下し、 安 定な被膜の形成が困難になるので好ましくない。 一方、 70質量%を超えると親 水性高分子物質の有する機能が損なわれるため好ましくない。 なお、 本発明の医 療用材料を製造する際には、 HC高分子の使用は、 単独若しくは 2種類以上混合 して用いることができる。
前記(A— 2)の方法に用いる親水性ラジカル重合性単量体(al)としては、 例え ば、 式( 2 )で表される基を有するラジカル重合性単量体が挙げられる。
O R2
— O— P— O— (CH2)m— N+—R3 '··(2)
I に
O— R4
式(2)中、 R2、 R3及び R4は、 同一又は異なる基であって、 H又は炭素数 1 〜4の 1価の炭化水素基を示す。 mは 2〜4の整数である。
式(2)で表される基を有するラジカル重合性単量体(al)としては、 例えば、 2 一(メタ)アタリロイルォキシェチル一 2'— (トリメチルアンモニォ)ェチルホス フエ一ト(MP Cを含む)、 3— (メタ)アタリロイルォキシプロピル _ 2'— (トリ メチルアンモニォ)ェチルホスフエ一ト、 4一(メタ)ァクリ ロイルォキシブチル一 2'— (トリメチルアンモニォ)ェチルホスフエ一ト、 5—(メタ)アタリロイルォキ シペンチル一 2 '—(トリメチルアンモニォ)ェチルホスフエ一ト、 6— (メタ)ァク リロイルォキシへキシノレ一 2'— (トリメチルアンモニォ)ェチルホスフエ一ト、 2 —(メタ)アタ リロイルォキシェチル 2'— (トリェチルアンモニォ)ェチルホス フェート、 2— (メタ)アタリロイルォキシェチル一 2' _ (トリプロピルアンモニ
ォ)ェチルホスフエ一ト、 2— (メタ)ァクリロイルォキシェチル _ 2 '— (トリブチ ルアンモニォ)ェチルホスフエ一ト、 2— (メタ)ァクリロイルォキシプロピル一 2 '—(トリメチルアンモニォ)ェチノレホスフエ一ト、 2—(メタ)アタリロイルォキシ ブチル一2 '—(トリメチルアンモニォ)ェチルホスフエ一ト、 2— (メタ)ァクリロ ィルォキシペンチルー 2 '—(トリメチルアンモニォ)ェチルホスフエ一ト、 2— (メタ)ァクリロイルォキシへキシル一 2 '— (トリメチルアンモニォ)ェチルホス フェート、 2— (メタ)アタリロイルォキシェチルー 3 '— (トリメチルアンモニォ) プロピルホスフエ一ト、 3— (メタ)アタリロイルォキシプロピル一 3 '— (トリメ チルアンモニォ)プロピルホスフエ一ト、 4一(メタ)アタリロイルォキシブチルー 3 '— (トリメチルアンモニォ)プロピルホスフエ一ト、 5— (メタ)ァク リロイルォ キシペンチルー 3 '—(トリメチルアンモニォ)プロピルホスフエ一ト、 6— (メタ) ァクリロイノレォキシへキシノレ一 3 '—(トリメチルアンモニォ)プロピノレホスフエ —ト、 2— (メタ)アタリロイルォキシェチルー 4 '—(トリメチルアンモニォ)ブチ ルホスフエ一ト、 3— (メタ)ァクリロイルォキシプロピル一 4 '一(トリメチルァ ンモニォ)ブチルホスフエ一ト、 4— (メタ)アタリロイルォキシブチル一 4 '—(ト リメチルアンモニォ)ブチルホスフエ一ト、 5— (メタ)ァクリロイルォキシペンチ ルー 4 '一(トリメチルアンモニォ)ブチルホスフエ一ト、 6—(メタ)ァクリ ロイル ォキシへキシル一4 '一(トリメチルアンモニォ)ブチルホスフエ一ト、 2— (ビニ ルォキシ)ェチル一 2 '— (トリメチルアンモニォ)ェチルホスフエ一ト、 2—(ァリ ノレ口キシ)ェチノレ一 2 '— (トリメチルアンモニォ)ェチノレホスフエ一ト、 2— (p— ビニルベンジルォキシ)ェチルー 2 '— (トリメチルアンモニォ)ェチルホスフエ— ト、 2—(P—ビエルべンゾィルォキシ)ェチル一 2 '—(トリメチルアンモニォ)ェ チルホスフエ一ト、 2—(スチリルォキシ)ェチル一 2 ' _ (トリメチルアンモニォ) ェチノレホスフエ一ト、 2— (p—ビュルベンジル)ェチル一 2 '—(トリメチルアンモ ニォ)ェチルホスフエ一ト、 2—(ビエルォキシカルボニル)ェチル一 2 '—(トリメ チルアンモニォ)ェチルホスフエ一ト、 2—(ァリルォキシカルボニル)ェチルー 2 '—(トリメチルアンモニォ)ェチルホスフエ一ト、 2—(アタ リ ロイルアミノ)ェチ ルー 2 ' _ (トリメチルアンモニォ)ェチルホスフエ一ト、 2—(ビエルカルボニル ァミノ)ェチル一 2 '—(トリメチルアンモニォ)ェチルホスフエ一ト、 2— (ァリノレ
ォキシカルボニルアミノ)ェチルー 2,一(トリメチルアンモニォ)ェチルホスフエ ―ト、 2—(ブテロィルォキシ)ェチル一 2 '—(トリメチルアンモニォ)ェチルホス フェート、 2— (クロ トノィルォキシ)ェチル一 2 '—(トリメチルアンモニォ)ェチ ノレホスフエ一ト、ェチノレ一( 2,一 トリメチノレアンモニォェチルホスホリルェチル) フマレ一ト、ブチノレ一( 2,一トリメチノレアンモニォェチルホスホリノレエチル)フマ レート、 ヒ ドロキシェチルー(2 '— トリメチルアンモニォェチルホスホリルェチ ノレ)フマレー ト等が挙げられる。
前記 M P Cは、 式(4 )で表される。
H CH3 O CH3
C=C-C-0-C,H4-O-P-O-(CH2) 2— N+— CH3 -(4)
I II I I
H O O— CH3
親水性ラジカル重合性単量体 (al)としては、 上記式(2 )で表される基を有して いなくても良く、 このようなラジカル重合性単量体(al)としては、 例えば、 2— ヒ ドロキシェチル(メタ)アタリ レー ト、 2—ヒ ドロキシプロピル(メタ)ァクリ レ ―ト等のヒ ドロキシアルキル(メタ)ァクリ レ一ト単量体; ジエチレングリコール モノ(メタ)アタリ レート、 ポリエチレングリコールモノ(メタ)メタクリ レート、 ポリプロピレンダリコールモノ(メタ)メタク リ レート、 メ トキシジエチレンダリ コール(メタ)ァクリ レート、 メ トキシポリエチレングリコール(メタ)ァク リ レ一 ト、 メ トキシポリプロピレングリコール(メタ)ァクリ レ一ト等のポリアルキレン グリコール(メタ)ァクリ レート単量体; フタル酸モノヒ ドロキシェチル(メタ)ァ クリ レート、 へキサヒ ドロフタル酸モノヒ ドロキシェチル(メタ)アタリ レート、 ω—カルボキシ一ポリ力プロラク トン(η = 2〜 5 )モノ(メタ)アタリ レート、(メ タ)ァクリ ロイルォキシェチルサクシネート等の ω—カルボキシ(メタ)ァク リ レ ―ト; Ν—ビュル一 2—ピロリ ドン、 ビニノレピリジン、 (メタ)ァク リルァミ ド、 (メ タ)ァクリル酸、 2—ァクリルアミ ドー 2—メチルプロパンスルホン酸、 ジメチル アミノエチル(メタ)ァクリ レ一ト、 ジェチルアミノエチル(メタ)ァクリ レ一ト、 無水マレイン酸、 グリコ一 2—ヒ ドロキシェチルモノメタクリ レート(G E MA) 等が挙げられる。 これらの単量体は単独又は混合物として使用できる。
(Α— 2 )の方法に用いる複素環基含有単量体(a2)は、 分子内に重合性の二重結
合と複素環基を有する単量体であり、 例えば、 グリシジルアタリレート(以下、 G Aと略す)、 グリシジルメタクリレート(以下、 GMAと略す)、 メチルダリシジル メタクリレート、 ァリルグリシジルェ一テル等が挙げられる。 これらの複素環基 含有単量体 2)は、 単独若しくは混合物として用いることができる。
(A— 2 )の方法により得られる共重合体(以下、 H C共重合体と略す)は、 医療 用基体の表面に塗布することにより形成される塗膜の物理的性質を制御するため に、 第 3成分としてラジカル重合可能な他の単量体 (a3)が共重合されていても良 レ、。
他の単量体(a3)としては、 特に限定されないが、 例えば、 (メタ)アクリル酸メ チル、 (メタ)アクリル酸ェチル、 (メタ)アクリル酸プロピル、 (メタ)アクリル酸 プチル、 (メタ)アクリル酸へキシル、 (メタ)アクリル酸ラウリル、 (メタ)アタリ ル酸ステアリル等の(メタ)ァクリル酸エステル単量体;スチレン、 メチルスチレ ン、 置換スチレン等のスチレン系単量体;ェチルビニルエーテル、 N—プロピル ビエルエーテル等のビニルェ一テル単量体;酢酸ビュル等のビニルエステル単量 体;塩化ビニル、 塩化ビニリデン、 エチレン、 プロピレン、 イソブチレン等の不 飽和炭化水素系単量体又は置換不飽和炭化水素系単量体;アタリロニトリル等が 挙げられる。 他の単量体は、 使用に際して単独若しくは混合物として用いること ができる。
H C共重合体中における単量体(al )に基づく組成比は、 特に限定されないが、 H C共重合体全体に対して、 5〜9 9 . 9モル%、 特に 2 0〜9 5モル%が好ま しい。 単量体(al)に基づく組成比が、 5モル%未満の場合、 単量体(al)の性能が H C共重合体に十分に反映されず好ましくない。 一方、 9 9 . 9モル。 /0を超える と、 必然的に H C共重合体中の単量体(a2)に基づく組成比が 0 . 1モル%未満と なり、 後述する問題が生じるため好ましくない。
H C共重合体において、 前記単量体(a2)に基づく組成比は、 特に限定されない が、 H C共重合体全体に対して、 0 . 1〜9 5モル%、 特に 5〜7 0モル%が好 ましい。 単量体(a2)に基づく組成比が 0 . 1モル%未満の場合、 医療用材料の基 材表面への導入効率及び H C共重合体相互間での架橋効率が低下し、 安定な被覆 膜が形成され難いので好ましくない。 一方、 9 5モル%を超えると相対的に H C
共重合体中における単量体(al)に基づく組成比が減少し、 前述した問題が生じる ため好ましくない。
前記他の単量体(a3)に基づく組成比は、 HC共重合体の性能を損なわないため に HC共重合体全体に対して、 70モル%未満が望ましい。
前記 H C共重合体の特性は、 使用する親水性ラジカル重合性単量体 (al)を適宜 選択することにより所望のものとすることができる。 特に側鎖が式(2)で表され る基を有するラジカル重合性単量体、 好ましくは MP Cを構成単位とした H C共 重合体は、 それ自身が優れた血液適合性を有するために該共重合体よりなる被覆 膜を基材表面に形成させることにより、 表面潤滑性と抗血栓性とを同時に満足す る医療用材料が得られる。
HC共重合体は、 例えば、 単量体(a 1)と単量体(a2)と、 必要に応じて他の単 量体 (a3)とを含む単量体組成物を、 重合開始剤の存在下、 系内を窒素、 二酸化炭 素、 ヘリウム等の不活性ガスで置換して、 溶剤中でラジカル重合させることによ り得られる。
重合開始剤としては特に限定されず、 通常のラジカル重合用重合開始剤を用い ることができる。 例えば、 t一ブチルペルォキシビバレート、 t _ブチルペルォ キシネオデカノエ一ト、 t—プチルぺノレオキシ一 2—ェチノレへキナノエ一ト、 t —ブチルペルォキシアセテート、 1 , 1, 3, 3—テ トラメチルブチルペルォキシ一 2—ェチルへキサノエート、 コハク酸ペルォキシド、 過酸化べンゾィル、 3, 5, 5— トリメチルへキサノィルペルォキシド、 ラウロリルペルォキシド等の有機過 酸化物; 2, 2'—ァゾビスィソブチロニトリノレ、 2, 2'—ァゾビス(2—アミジノ プロパン)二塩酸塩、 2, 2'—ァゾビスイソ酪酸ジメチル、 2, 2'—ァゾビス(2, 4一ジメチノレバレロ二口リノレ、 1, 1 'ーァゾビス(シク口へキサン一 1—カノレボニ トリル)、 2, 2 '—ァゾビス( 2—メチル一 N— ( 2—ヒ ドロキシェチル)一プロピ オンアミ ド)等のァゾ化合物;過硫酸力リ ウム、 過硫酸ナトリ ウム、過硫酸アンモ ニゥム等の過硫酸塩;過硫酸塩一亜硫酸水素塩系等が挙げられる。 これら重合開 始剤は、 使用に際して単独若しくは混合物として用いることができる。
前 t己重合開始剤の使用量は、 全単量体 100質量部に対して、 0. 001質量 部〜 10質量部が望ましい。 より好ましくは、 0. 01質量部〜 5質量部である。
HC共重合体を製造する際の溶媒としては、 該共重合体の構成単位となる単量 体を溶解し且つ、 複素環基と反応しない溶媒であれば特に制限はなく、 混合溶媒 でも構わない。
HC共重合体は、 再沈殿、 透析、 限外濾過等の一般的な精製方法により精製す ることができる。
本発明に用いる高分子物質( A)において、 H C共重合体の質量平均分子量は、 5000〜 5000000、 特に、 10000〜 2000000が好ましい。 分 子量が 5000未満の場合、 必然的に 1分子当たりに含まれる複素環基の数が少 なくなり、 その結果、 基材表面への共重合体の導入効率が低下し、 加えて、 共重 合体間の架橋効率も低下して、 それに起因した被膜強度の低下が生じるので好ま しくない。 分子量が 5000000を超えると共重合体よりなる組成物の溶液粘 度が高くなるため取り扱いが困難になると共に基材への塗布の際にコーティング むらを生じやすい。 なお、 本発明に用いる高分子物質(A)としての HC共重合体 の構造は、 ランダム、 ブロック、 グラフトのいずれであっても良い。 また、 高分 子物質(A)において、 HC共重合体は単独で用いても良いし、 2種以上を混合し て用いても良い。
本発明に用いる親水性共重合体(B)は、 高分子物質(A)中の複素環基と反応可 能な官能基を有し、 体液や血液等の水系媒体と接触することにより吸水して潤滑 性を発現する高分子化合物である。
親水性共重合体(B)は、 親水性ラジカル重合性単量体 (bl)と、 複素環基と反応 して該複素環基を開環せしめる官能基を有するラジカル重合性単量体 (b2)を共重 合させる方法等により製造できる。
前記単量体 (bl)としては、 前述の親水性ラジカル重合性単量体(al)又はそれら の混合物等が好ましく挙げられる。
前記単量体(b2)としては、 分子內に水酸基、 カルボキシル基、 アミノ基、 チォ ール基等の複素環基と反応可能な官能基を有するラジカル重合性単量体が挙げら れる。 このような化合物としては、 例えば、 2—ヒ ドロキシェチル(メタ)アタリ レート、 2—ヒ ドロキシプロピル(メタ)アタリ レ一 I 、 ポリエチレングリ コ一ル モノ(メタ)ァクリ レート、 ポリプロピレングリ コールモノ(メタ)アタ リ レート、
グリセロール α—モノ(メタ)ァクリ レート、 ァリルアルコール、 2—ァリルフエ ノ—ノレ、 グリセロール一 a—モノアリルエーテル、 エチレングリ コールモノァリ ルエーテル、 N— (ヒ ドロキシメチル)ァクリルアミ ド等の水酸基含有単量体;(メ タ)アクリル酸、 3—ペンテン酸、 4一ペンテン酸、 3—ァリロキシプロピオン酸、 2—(メタ)ァクリロイルォキシェチルフタル酸等のカルボキシル基含有単量体; ァリルァミン、 ァリルアミン(塩酸塩)、 ァリルゥレア、 1—ァリルー 2—チォゥ レタン、 2—メチルァリルアミン(塩酸塩)、 2 _アミノエチル(メタ)ァクリ レー ト(塩酸塩)、 4—アミノスチレン、 アクリルアミ ド等のアミノ基含有単量体等が 挙げられる。 中でも複素環基との反応性が高く、 入手が容易であるァリルアミン (塩酸塩)の使用が特に好ましい。 これらの単量体は、 使用に際しては単独若しく は混合物として用いることができる。
前記親水性共重合体( B )の製造においては、 前記単量体 (bl)及び (b2)の他に、 必要に応じて上記以外のラジカル重合性単量体 (b3)を共重合させることもできる。 単量体 (b3)としては、 上述のラジカル重合可能な他の単量体(a3)又はそれらの混 合物等が挙げられる。
親水性共重合体(B )中における前記単量体 (bl)に基づく組成比は、 親水性共重 合体(B )に対して、 2 0〜9 9 . 9モル0 /0が好ましく、 5 0〜9 9モル%が特に 好ましい。単量体 (bl)に基づく組成比が 2 0モル%未満では、親水性共重合体(B ) の吸水能が低下し、 湿潤時において目的とする潤滑性が発現されず、 血液適合性 においても十分な効果は期待できない。 また、 9 9 . 9モル%を超えると相対的 に複素環基との結合にかかる単量体 (b2)に基づく組成比が低下し、 後述する問題 が生じるので好ましくない。
親水性共重合体(B )中における前記単量体(b2)に基づく組成比は、 0 . 1〜8 0モル%、 特に 1〜 5 0モル%が好ましい。 単量体(b2)に基づく組成比が 0 . 1 モル%未満では、 高分子物質(A)中の複素環基との反応効率が低下し、 機能発現 に十分な量の親水性共重合体(B )を固定化するのが困難になり、 加えて、 固定化 された親水性共重合体(B )においても、 高分子物質(A)との結合点の数が少ない ために耐久性の点で問題が生じるので好ましくない。 一方、 8 0モル%を越える と前述したように単量体(bl)の特性が親水性共重合体(B )に十分に反映されなく
なるので好ましくない。
前記他の単量体 (b3)に基づく組成比は、 親水性共重合体(B)の性能を損なわな いために親水性共重合体(B)の全構造単位に対して 50モル%未満が望ましい。 本発明に用いる親水性共重合体(B)の特性は、 使用する単量体 (bl)を適宜選択 することにより所望のものとすることができる。 特に、 式(2)で表される基を有 するラジカル重合性単量体、 好ましくは MP Cに基づく構成単位を有する親水性 共重合体( B )は、 それ自身が優れた血液適合性を有するために該共重合体よりな る被覆膜を基材表面に形成させることにより、 表面潤滑性と抗血栓性とを同時に 満足する医療用材料を得ることができる。
前記親水性共重合体( B )は、 前述の H C共重合体と同様な方法で製造すること ができ、 その際に使用する溶媒としては、 親水性共重合体(B)の構成単位となる 単量体を溶解せしめる溶剤であれば全て利用可能であり、混合溶媒でも構わない。 親水性共重合体(B)の質量平均分子量は、 5000〜 5000000が好まし く、 10000〜 2000000が特に好ましレ、。分子量が 5000未満の場合、 必然的に 1分子当たりに含まれる複素環基と反応可能な官能基の数が少なくなり、 予め基材表面に固定化しておいた高分子物質(A)への導入効率が低下するので好 ましくない。 また分子量が 5000000を超えると前述したように、 ポリマ一 溶液の取り扱いやコーティングむらの点で問題が生じるため好ましくない。 尚、 親水性共重合体(B)の形態は、 ランダム、 ブロック、 グラフトのいずれであって も良い。 親水性共重合体(B)は単独で用いても良いし、 2種以上を混合して用い ても良い。
本発明に用いる医療用材料基体(以下、 基体(M)と略す)としては、 医療用具に 通常使用されている材料であれば全て利用可能である。 特に、 基体(M)の表面に 複素環基と反応可能なアミノ基、 水酸基、 カルボキシル基等の官能基を有してい るものが望ましい。 複素環基と結合可能な官能基を有していない材料の場合は、 公知の表面改質法により官能基を基体(M)の表面に生成させた後に使用すること が好ましい。
表面改質の方法は、 用いる基体(M)により適宜選択される。 例え 、 コロナ放 電、 グロ一放電等のプラズマ処理法;重クロム酸を含む濃硫酸溶液等で化学処理
する方法 (無極性ポリマーに適用)、 アミ ド結合若しくはウレタン結合を、 酸又は アルカリ溶液で部分的に加水分解する方法(ポリアミ ド、 ポリウレタンに適用)、 官能基を有する化合物を塗布若しくはプレンドする方法等が挙げられる。
上記の理由により、 本発明に使用できる基体 (M)の制限は極めて少なく、 例え ば、 ポリエチレン、 ポリプロピレン、 ポリスチレン、 ポリ塩化ビュル、 ナイロン、 ポリ ウレタン、 ポリウレア、 ポリ (メタ)アクリル酸、 ポリ (メタ)アクリル酸エス テル、 ポリエステル、 ポリアクリロニトリル、 ポリアクリルアミ ド、 ポリ酢酸ビ 二ノレ、 ポリカーボネート、 ポリスノレホン、 ポリ ビ二/レア/レコーノレ、 セノレロース、 セルロースアセテート、 シリコーン樹脂、 ガラス、 セラミックス、 金属、 ステン レス等が挙げられるが、 これらに限定されない。 またこれらの基材は単独で用い てもよいし、 これらを組み合わせて基体(M)として使用しても良い。
次に、 本発明の医療用材料を、 その製造方法を参照して説明する。
本発明の医療用材料は、 前記基体 (M)の表面の少なくとも一部に、 前記高分子 物質(A)、 若しくは前記高分子物質(A)と前記親水性共重合体(B )とを含む被覆 材料により被覆層を形成する。
このような被覆層は、 例えば、 前記被覆材料を、 適当な溶媒に溶解させた溶液 を基体(M)の表面に塗布後、 乾燥させ、 加熱することで基体(M)の表面に被覆層 を結合させることにより形成することができる。
前記溶媒としては、 基本的には、 高分子物質(A)を溶解する溶媒であれば全て 利用可能であり、 混合溶媒でもよい。
被覆材料を溶媒に溶解した際の溶液中における高分子物質(A)の濃度は、 0 . 0 1〜3 0質量%、 特に 0 . 1〜2 0質量%が好ましい。 濃度が 0 . 0 1質量% 未満の場合、 塗布後においても基体(M)の表面に残存する高分子物質(A)の量が 不十分なために目的とする性能の発現が期待できないので好ましくない。 一方、 3 0質量%を越えると溶液粘度が高くなるためコ一ティングの際の作業性が悪く、 また被膜の均一性も得難いため好ましくない。
親水性共重合体(B )を用いる場合の混合溶液の調製方法としては、 予め高分子 物質(A) 親水性共重合体(B )との各々を別々の溶媒に溶解した溶液を調製し ておき、 使用直前に混合する方法等が好ましく挙げられる。 前記溶媒としては、
基本的には、 高分子物質(A)と親水性共重合体(B )の双方が溶解し得る溶媒であ れば全て利用可能であり、 混合溶媒でもよい。
混合前の溶液中における高分子物質(A )又は親水性共重合体( B )の濃度は、 各々 0 . 0 1〜 1 5質量%、 特に 0 . 1〜 1 0質量%の範囲が好ましい。 濃度が 0 . 0 1質量%未満の場合、 高分子物質(A)と親水性共重合体(B )との混合溶液 を塗布しても、 基材表面に存在する各々の量が不十分なために目的とする性能の 発現が期待できないので好ましくない。 濃度が 1 5質量%を超えると混合溶液を 調製した際に溶液粘度が高くなるためコーティングの際の作業性が悪く、 また被 覆膜の均一性も得難いため好ましくない。
高分子物質( A)の溶液と親水性共重合体( B )の溶液との混合比率は、 使用する 溶液の濃度、 各々の分子量、 高分子物質(A)の複素漯基の含有量、 更には親水性 共重合体( B )の複素環基と反応可能な官能基の含有量により適宜選択されるが、 溶液中の高分子物質(A) :溶液中の親水性共重合体(B ) = 1 : 0 . 0 1〜 1 : 1 0
0の範囲が好ましい。
前記被膜材料の溶液を塗布する方法は、 例えば、 デイツビング法、 スプレー法、 ローラ—コーティング法、スピンコーティング法等の公知の方法等が挙げられる。 乾燥は、 溶剤の蒸散を目的として、 通風乾燥、 減圧乾燥等の通常の方法により 行われる。
加熱条件は、 高分子物質(A)中の複素環基が基体 (M)の表面に存在する官能基 と反応して、 該高分子物質(A)が基体(M)の表面に化学的に固定化されると同時 に、 複素環基の開環により生成するプロ トン供与性基も複素環基と反応して、 あ る程度の三次元網目構造体となる条件、 若しくは高分子物質( A)中の複素環基が 基体 (M)表面の官能基と反応して該高分子物質( A)が基体(M)の表面に化学的に 固定化されると同時に、 高分子物質(A)同士の架橋反応、 更には高分子物質(A) と親水性共重合体(B )との架橋反応が促進され、 優れた耐久性を有する被覆層が 構築される条件が好ましい。 加熱温度としては、 室温〜 2 0 0 °Cが好ましく、 処 理時間は 1分間〜 4 8時間が好ましい。
本発明の医療用材料において、 被覆材料による被覆は、 上記方法の他に、 前記 基体(M)の表面の少なくとも一部に、 前記高分子物質(A)を含む被覆材料により
被覆層を形成し、 該被覆層上に前記親水性共重合体( B )により構成された被覆膜 を設ける方法によっても行うことができる。
高分子物質(A)を含む被覆材料による被覆層の形成は上記の方法と同様に行う ことができる。 また、 被覆層上に前記親水性共重合体(B )により構成された被覆 膜を設ける方法も上記被覆層を形成する方法に準じて行うことができる。
このように被覆層上に被覆膜を形成することにより、 基体 (M)の表面に導入さ れた高分子物質(A)中の残存する複素環基と、 親水性共重合体(B )中の反応性官 能基とは架橋反応し、 強固な被覆層が形成される。
前記被覆層の厚さは、その目的等に応じて適宜選択することができる力 通常、 被覆層全体の厚さが、 0 . 0 0 1〜 1 0 0 μ mが好ましい。
本発明の医療用材料は、 前記被覆層の形成後、 該被覆層中に残存する未反応の 複素環基を求核性化合物(N)により開環させることにより得ることができる。 前記求核性化合物(N)としては、 前記複素環基と反応可能な官能基を有してい る化合物であれば、 特に限定されない。 例えば、 水、 酸性又はアルカリ性の水、 ハロゲン化水素、 水酸基含有化合物、 アミノ基含有化合物、 カルボキシル基含有 化合物、 メルカプト基含有化合物、 又はこれらの官能基の異なるものを分子内に 2種類以上有する化合物、 亜硫酸ナトリウム、 亜硫酸水素ナトリウム、 チォ硫酸 ナトリウム等が挙げられる。 これらの化合物は、 使用に際しては単独若しくは混 合物として用いることができる。 より好ましくは、 亜硫酸ナトリウム、 亜硫酸水 素ナトリゥム、 チォ硫酸ナトリゥムが挙げられる。
求核性化合物(N)中のチォ硫酸ナトリウムは、 (i)安価で安全性が高い( L D 5。 (ラット、 静注)〉 2 . 5 g /k g )、 (ii)複素環基に対する反応性が高い、 (iii)チ ォ硫酸ナトリゥムが複素環基に付加することにより生成されるヒ ドロキシスルホ ン酸基は、 生体に対して悪影響を及ぼさない官能基である、 等の点から特に好ま しい。
求核性化合物(N)により、 残存する複素環基を開環させるには、 求核性化合物 (N)を溶媒に溶解した溶液を、 前記被覆層に接触させる方法等により行うことが できる。 該接触は、 溶液中 被覆層を形成した基体(M)を浸漬する方法等が挙げ られる。
求核性化合物(N)を溶解する溶剤としては、 求核性化合物(N)を溶解し、 被覆 層を変性しない溶剤であれば全て使用可能であり、 混合溶媒でも良い。
溶液中における求核性化合物(N)の濃度は、 被膜層中の複素環基を有する高分 子物質(A)の特性及び複素環基の含有量により異なるが、 通常、 0 . 0 1〜3 0 質量%が好ましく、 0 . 1〜2 0質量%がより好ましい。
また、 求核性化合物(N)を溶解した溶液中には、 複素環基の開環反応を促進す るために、 必要に応じて触媒を加えても良い。 触媒としては、 例えば、 トリェチ ルァミンやピリジン等の 3級ァミン化合物が好適に使用される。
前記求核性化合物(N)による複素環基の開環処理条件は、 被覆した高分子物質 (A)の特性や複素環基の含有量、 使用する求核性化合物(N)の種類や濃度、 触媒 の有無等により適宜選択される。 処理温度は 1 0〜1 0 0 °Cが好ましく、 処理時 間は 1分〜 1週間が好ましい。
本発明の医療用材料は、 上記処理後、 使用した溶媒で十分に洗浄した後、 真空 乾燥、 通風乾燥、 加熱乾燥等の通常の方法により溶媒を除去することにより得る ことができる。
本発明の医療用材料は、 市販の医療用具全般に適応されるもので特に限定され ない。 例えば、 血液回路、 血液バッグ、 血液透析膜、 人工血管、 人工臓器、 血管 内留置センサ一、 血液フィルター等の体液や血液と直接接触して使用される医療 用具;留置針、 ガイ ドワイヤー、 カテーテル、 眼内レンズ用のアプリケータ一等 の血液適合性と表面潤滑性との双方の機能が要求される医療用具等に好ましく用 いることができる。
本発明の医療用材料は、 毒性の高い複素環基が残留しておらず、 安全性の点で 優れている。 また、 残存複素環基により生起される高分子物質間の経時的な架橋 等による製品性能の劣化がないため、被覆層の有する機能が永続的に維持される。 更に、 複素環基を有する高分子物質(A)が親水性又は水膨潤性である場合、 基材 表面に化学的に固定化された高分子物質(A)、 又は高分子物質(A)と親水性共重 合体(B )からなる架橋体は、 ハイ ド口ゲル化層を形成するため、 体液や血液等の 水系媒体と接触した時には優れた表面潤滑性を示すと共に、 高い血液適合性も発 現する。 特に、 高分子物質(A)と親水性共重合体(B )との双方を使用して作製し
た被覆層を有する医療用材料は、 高分子物質(A)間のみならず、 前記 2種類の高 分子もお互いに反応して堅固な架橋構造を形成するため、 繰り返し応力を受けて も基材表面からのポリマーの剥離や脱落等が抑制され、 上記性能が永続的に保持 される。
実施例
以下、 合成例、 実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、 本発 明はこれらに限定されるものではない。
例中の各種共重合体に含まれる工ポキシ基含有単量体単位及びァミノ基含有単 量体単位の含有量の測定方法、 分子量測定方法、 ESCAの測定条件、 ATR—
1 Rの測定条件、 潤滑性評価方法及び血液適合性評価方法を以下に示す。
1. エポキシ基含有単量体単位の含有量
フエノールフタレインを含む予め中和した 0. 2 Mチォ硫酸ナトリウム 50体 積%のイソプロパノール水溶液 15 gに、 共重合体の 5質量%溶液 3 gを加え、 スターラ一上で加熱撹拌し、 赤紫色の溶液を得た。 得られた赤紫色の溶液に、 0.
2 N酢酸水溶液を順次加えることにより中和した。次いで、 0.02 N水酸化ナト リゥム水溶液で逆滴定し、 消費した酢酸の量からエポキシ基の含有量を求めた。 この値から、 共重合体中のエポキシ基含量単量体に基づく単位の含有量(モル%) を算出した。
2. アミノ基含量単量体単位の含有量
共重合体の 1質量%溶液 0.5m 1に、 0. 1 5 Mホウ酸ナトリゥム緩衝液 2. 0 m 0.01 M亜硫酸ナトリウム水溶液 0.5m l及び 0 · 1質量%トリニトロ ベンゼンスルホン酸水溶液 0.5m lを順次加え、 37 °Cで 1時間反応させた。得 られた反応液の 420 nmにおける吸光度を紫外可視分光光度計にて測定し、 予 めァリルアミン塩酸塩にて作成しておいた検量線に当てはめてアミノ基の含有量 を求めた。 この値から、 共重合体中のアミノ基含量単量体に基づく単位の含有量 (モル%)を算出した。
3. 分子量測定
合成例 1及び 2における分子量は、次の GPC (ゲルパーミエ一ションクロマト グラフィ一)の条件により測定した。
<G P C分析の条件〉
試料重合体を、 0. 5質量%臭化リチウムを含むクロ口ホルム /メタノール(= 6/4, v/v)混合溶媒に溶解し、 0. 5 %質量の重合体溶液を調製した。
カラム; PLgel 5 ix mM I X E D— C、 2本直列(ポリマ一 .ラボラ トリ一社製)、 溶出溶媒; 0. 5質量0 /0の臭化リチウムを含むクロ口ホルム Zメタノール(=6Z 4、 vZv)混合溶媒、 検出;視差屈折計、 質量平均分子量 (Mw)測定の際の標準 物質 PMMA (ポリマー · ラボラトリ一社製)、 流速; 1. 0m lノ分、 試料溶 液使用量; 2 0 1、 カラム温度; 4 0°C、 東ソ一社製インテグレーター内蔵分 子量計算プログラム(S C— 8 0 2 0用 GP Cプログラム)を用いた。
合成例 7における分子量は次の G P Cの条件により測定した。
ぐ G P C分析の条件 >
試料重合体をリン酸緩衝液( 1 4. 4 mM—N a 2HP〇4、 5. 6 mM-N a
H2 P O4)に溶解し、 0. 5質量%の重合体溶液を調製した。
カラム; G 3 0 0 0 PWXLと G 5 0 0 0 PWXLの 2本直列(東ソ一社製)、溶出溶媒; 前記リン酸緩衝液、 検出;視差屈折計、 質量平均分子量 (Mw)測定の際の標準物 質; ポリエチレンダリコール(ポリマ一 . ラボラトリ—社製)、 流速; o. 5 m l
/分、 試料溶液使用量; 1 0 1、 カラム温度; 4 5°C、 東ソ一社製インテグレ —タ一内蔵分子量計算プログラム(S C— 8 0 2 0用 G P Cプログラム)を用いた。
4. E S CAによる硫黄原子の確認
X線光電子分析装置(E S CA— 3 3 0 0 ((株)島津製作所社製))を用いて、 光 電子の放出角を 9 0° とした測定条件により行った。
5. ATR— I Rによるエポキシ環の確認
フ一リェ変換赤外分光装置(F T/ I R— 7 3 0 0 (日本分光工業 (株)社製) )及 び多重全反射測定装置(AT R— 5 0 0/M (日本分光工業 (株)社製))を用い、 プ リズム(KR S— 5)入射角 4 5° の条件で測定した。
6. 潤滑性評価
ぐ潤滑性の経日安定性評価方法〉 ;
各実施例及び比較例で得られた各種チューブを、 室温、 大気下で 1週間あるい は 1力月間保管した。 前記チューブを両面テープでガラスシャーレの底面に平行
に 2本ずつ固定し、所定量の生理食塩水を加えた後、摩擦感テスタ一(力ト一テツ ク株式会社製、 KES-SE)を用いて摩擦係数 を測定した。 摩擦子としては、 シリコ ンタイプセンサーを用いた。
ぐ潤滑性の持続性評価方法〉
実施例 5— 1〜5— 3、 6— 1〜6— 3、 及び比較例 5〜 7で得られた各種チ ュ一ブ、 比較例 8のガイ ドワイヤー、 更には未処理のナイロンチューブの潤滑性 の持続性を評価するために以下の耐久性試験を行った。
即ち、 シリコン板(直径 2.0 cm、厚さ 0. 5 cm)をァクリル製のパイプ(外径 2. 1 cm, 内径 1. 8 cm, 高さ 3. 5 cm)の底にはめ込み、 0. 55 mmの針で シリ コン板の中心部に孔を開け、 同孔に予め生理食塩水に浸漬して濡らしておい た前記各種チューブ又はガイ ドワイヤーを挿入し、 生理食塩水中に浸漬して 10 0回繰り返し摺動させた。 その後、 上述した方法に従い、 得られた試料とシリコ ンゴムとの摩擦係数 μを測定した。
7. 血液適合性評価
実施例 5— 1〜5— 3、 6— 1〜6— 3及び比較例 5〜 7で得られた各種チュ ーブ、比較例 8のガイドワイヤー、更には未処理のナイロンチューブを約 1. 3 c mの長さに切断し、 両面テープを用いてミクロカバ一ガラス(MATSUNAMI、 1 5m πιφ)に 5本ずつ固定した。 これらを 24孔マイクロプレートの各孔に入れ、 シリ コンゴム製ォーリング(内径 1 2mm、 外径 1 6 mm, 厚さ 2〜 3 mm)で固定し た後、 ハンクス緩衝液 700 1を加えてー晚平衡化させた。 翌日、 ハンクス緩 衝液を除去して、 ゥサギから採取した血小板多血漿(PR P)を 700 1ずつ各 孔に添加し、 室温で 1時間静置した。 その後、 PR Pを取り除き、 ハンクス緩衝 液 lm lで 3回洗浄した。続いて、各孔に 2. 5質量%ダルタルアルデヒ ド水溶液 lm lを加え、 2時間静置して血小板を固定した。 所定時間後、 ダルタルアルデ ヒ ド水溶液を除去し、 蒸留水 lm 1で 3回洗浄した。 得られた試料を凍結乾燥し た後、 金蒸着して走査型電子顕微鏡にてチューブ及びガイ ドワイヤー表面を観察 した。 評価は、 血小板の粘着数により、 ◎;非常に少ない、 〇 ;少ない、 △;多 レ、、 X ;非常に多い、 とした。 - ぐ各種共重合体の合成〉
合成例 1
MP C 37.97 g (90モル0 /0)及び GMA 2.03 g (10モル0 /0)をィソプロ パノール 358 gに溶解し、 窒素ガスにて反応容器内を十分に置換した。 この溶 液に 20質量0 /0 t—ブチルパーォキシピバレートのトルエン溶液 2. 18 g (この 中に含まれる過酸化物のモル数: 2.5mmo 1 )を加え、 60°Cの温浴中に浸漬 して 5時間加熱重合させた。 冷却後、 反応溶液をジェチルェ一テル中に滴下し、 生成した共重合体を濾別後、 真空乾燥した。 得られた共重合体(以下、 (P— 1) と略す)は、ィソプロパノールに溶解して 5質量%溶液とした後、以下の実施例に 記載の共重合体溶液として使用した。 また、 この溶液を用いて、 前記エポキシ基 含有単量体単位の含有量の測定方法に従い、 MP Cと GMAとの組成比(モル%) を決定した。 結果を表 1に示す。 更に、 (P— 1)の分子量は 53000であった。 なお、 表 1中の(al)は、 親水性ラジカル重合性単量体(al)を意味し、 (a2)は、 複素環基を含む単量体 (a2)を意味し、 (bl)は、 親水性ラジカル重合性単量体を意 味し、 (b2)は、 複素環基を開環させる官能基を有するラジカル重合性単量体 (b2) を意味する。
合成例 2
各モノマ一の使用割合を、 MPC 33. 17 g (70モル0 /0)、 GMA6.83 g (30モル%)に代えた以外は、 合成例 1と同様にして共重合体(以下、 (P— 2) と略す)を得た。得られた(P— 2)は、ィソプロパノールに溶解して 5質量%溶液 とした後、 以下の実施例の共重合体溶液として使用した。 また、 この溶液を用い て、 前記エポキシ基含有単量体単位の含有量の測定方法に従い、 MPCと GMA との組成比(モル%)を決定した。 結果を表 1に示す。 更に、 (P— 2)の分子量は 64000であった。
合成例 3
無水マレイン酸(以下、 MAと略す) 34.93 g ( 90モル0 /0)及び G A 5.07 § (10モル%)を、 ジメチルスルホキシド 360 gに溶解し、 窒素ガスにて反応 容器内を十分に置換した。 この溶液に 2, 2'—ァゾビスイソブチロニトリル 0· 20 gを加え、 80°Cの温浴中に浸漬して 18時間加熱重合させた。 冷却後、 合 成例 1の方法に準じて精製した。 得られた共重合体(以下、 (P— 3)と略す)は、
テトラヒ ドロフランに溶解して 5質量%溶液とした後、 以下の実施例の共重合体 溶液として使用した。 また、 この溶液を用いて、 前記エポキシ基含有単量体単位 の含有量の測定方法に従い、 MAと GAとの組成比(モル%)を決定した。 結果を 表 1に示す。
合成例 4
N, N—ジメチルァクリルアミ ド(以下、 DMA Aと略す) 29.45 g (80モ ル%)及び GMA 10.55 g (20モル%)を、 ジメチルスルホキシド 360 gに 溶解し、 窒素ガスにて反応容器内を十分に置換した。 この溶液に 2, 2'—ァゾビ スイソプチロニトリル 0.20 gを加え、 80°Cの温浴中に浸漬して 18時間加熱 重合させた。 冷却後、 合成例 1の方法に準じて精製した。 得られた共重合体(以下、 (P— 4)と略す)は、テトラヒ ドロフランに溶解して 5質量0 /0溶液とした後、以下 の実施例の共重合体溶液として使用した。 また、 この溶液を用いて、 前記ェポキ シ基含有単量体単位の含有量の測定方法に従い、 DMA Aと GMAとの組成比(モ ル%)を決定した。 結果を表 1に示す。
合成例 5
N—ビエル一2—ピロリ ドン(以下、 VPと略す) 31.06 g (80モル0 /0)及び GA8.94 g (20モル0 /0)を、 ジメチルスルホキシド 360 gに溶解し、窒素ガ スにて反応容器内を十分に置換した。 この溶液に 2, 2'—ァゾビスイソプチロニ トリル 0.20 gを加え、 80°Cの温浴中に浸漬して 18時間加熱重合させた。冷 却後、 合成例 1の方法に準じて精製した。 得られた共重合体(以下、 (P— 5)と略 す)は、 ジクロロメタンに溶解して 5質量%溶液とした後、以下の実施例の共重合 体溶液として使用した。 また、 この溶液を用いて、 前記エポキシ基含有単量体単 位の含有量の測定方法に従い、 VPと GAとの組成比(モル。 /0)を決定した。 結果 を表 1に示す。
合成例 6
ω—カルボキシ一ジカプロラク トンモノアタリレート(以下、 ω CDCAと略 す) 35. 78 g (80モル%)及びGMA4.22 g (20モル0 /0)を、メチルェチル ケトン 160 gに溶解し、 窒素ガスにて反応容器内を十分に置換した。 この溶液 に 2, 2'—ァゾビスイソブチロニトリル 0.01 gを加え、 70°Cの温浴中に浸
漬して 10時間加熱重合させた。 得られた共重合体(以下、 (P— 6)と略す)を冷 却後、 メチルェチルケトンで希釈して 5質量。 /0溶液とした後、 以下の実施例の共 重合体溶液として使用した。
合成例 7
MPC50.0 g (l 69.3 mmo 1、 70モル%)及びァリルアミン塩酸塩(以 下、 AAHC 1 と略す) 6. 79 g (72.6 mm o 1、 30モル0 /0)を、蒸留水 37 O gに溶解し、 窒素ガスにて反応容器内を十分に置換した。 この溶液に 2, 2'— ァゾビス(2—アミジノプロパン)二塩酸塩(商品名 : V— 50) 0. 3 1 7 g (l. 1 7 mmo 1)を加え、 60°Cの温浴中に浸漬して 6時間加熱重合させた。冷却後、 得られたポリマ一溶液を透析膜(Spectra/Tor、分画分子量 = 3500)に充填し、 水に対して 1週間透析して精製した後、 凍結乾燥した。 得られた MPC— AAH C 1共重合体(以下、 (P— 7)と略す)の一部は、 蒸留水に溶解して 1質量%溶液 とした。 この溶液を用いて、 前記アミノ基含有単量体単位の含有量の測定方法に 従い、 MPCと AAHC 1 との組成比(モル%)を決定した。 結果を表 1に示す。 更に、 (P— 7)の分子量(Mw)は 730000であった。
合成例 8
MP Cの代わりに DMAAを使用した以外は、 合成例 7と同様に共重合体を得 た。 得られた DMAA— AAHC 1共重合体(以下、 ( P _ 8 )と略す)の一部は、 蒸留水に溶解して 1質量%溶液とした。 この溶液を用いて、 前記アミノ基含有単 量体単位の含有量の測定方法に従い、 DMAAと AAHC 1 との組成比(モル%) を決定した。 結果を表 1に示す。
合成例 9
MP Cの代わりに VPを使用した以外は、 合成例 7と同様に共重合体を得た。 得られた VP— AAHC 1共重合体(以下、 (P— 9)と略す)の一部は、 蒸留水に 溶解して 1質量%溶液とした。 この溶液を用いて、 前記アミノ基含有単量体単位 の含有量の測定方法に従い、 VPと AAHC 1 との組成比(モル%)を決定した。 結果を表 1に示す。
合成例 10
特表平 7— 502053号公報(WO 93/01221 )に記載の方法に準じて、
MP Cと 2—アミノエチルメタクリレート(以下、 A EMAと略す)を溶液重合し、 共重合体を得た。 得られた MP C— A EMA共重合体(以下、 (P— 1 0)と略す) の一部は、 蒸留水に溶解して 1質量%溶液とした。 この溶液を用いて、 前記アミ ノ基含有単量体単位の含有量の測定方法に従い、 MP Cと AEMAとの組成比(モ ル%)を決定した。 結果を表 1に示す。
表 1
al/a2,bl b2はモル比 実施例 1 _ 1〜: 1— 6
基体(M)としてナイ口ン製のチューブ(外径 1 mm、 全長 1 0 c m)を用い、 こ れを 1 0体積%のィソプロパノールを含む 3 N水酸化ナトリゥム溶液に浸漬し、 8 0°Cで 3 0分間アルカリ処理後、 十分に水洗して基材表面にアミノ基及びカル ボキシル基を有するチューブを得た。 同チューブを合成例 1〜6で得られた共重 合体(P_ 1)〜(P— 6)の溶液 5質量%に 1分間浸漬した後に引き上げ、 室温で 2時間乾燥させた。 次いで、 得られたチューブを 9 0°Cで 3〜24時間加熟処理 することにより、 前記共重合体が表面に固定化されたチューブを作製した。 続い て、同チューブを 0. 2 Mチォ硫酸ナトリゥム水溶液に浸漬し、室温で 24時間静 置後、 取り出し、 十分に水洗して残存エポキシ基を開裂させた。 MA— GA共重 合体を固定化したチューブについては、 更に触媒として硫酸を含むエタノールに 浸漬して MAを開環させ、 炭酸水素ナトリ ゥムの生理食塩水溶液を用いてアル力 リ洗浄を行い医療用材料を調製した。
また、 合成例 6で調製した(P— 6)を固定化したチューブについては、 1 0質 量%水酸化ナトリゥム水溶液に室温にて 1分間浸漬して試料とした。 得られた共 重合体固定化ナイ口ンチューブの医療用材料を、 それぞれ実施例 1— 1〜 1一 6
として、 各々の試料を E S C Aにより表面分析したところ、 いずれの試料にもチ ォ硫酸ナトリゥムの硫黄原子に由来するシグナルが観測された。
A T - I Rによる表面分析により、 全ての試料においてエポキシ基に起因す るピークの消失が確認された。 この結果より、 未反応のエポキシ基は、 チォ硫酸 ナトリゥムと反応して完全に開環されていることが明らかになった。
得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の経日安定性評価方法による評価 を行なった。 結果を表 2に示す。
表 2
0 . 2 Μチォ硫酸ナトリゥム水溶液によるエポキシ基の開環処理を行わなかつ た以外は、 実施例 1— 1〜 1一 6に記載の方法に準じて、 合成例:!〜 6で得られ た各種共重合体を固定化したチューブを作製した。 得られた共重合体固定化ナイ 口ンチューブをそれぞれ比較例 1— 1〜 1一 6として、 各々の試料を A T R— I Rにより表面分析したところ、 いずれの試料にもエポキシ基に由来するピークが 観測された。
得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の経日安定性評価方法による評価 を行なった。 結果を表 3に示す。
表 3
ポリウレタン製のチューブ(外径 1 mm、 全長 1 0 c m)をポリィソシァネ一ト
(日本ポリゥレタン工業製、 商品名 : コロネート L)の 5質量0 /0テトラヒ ドロフラ ン溶液に 1分間浸漬した後に引き上げ、 5 0 °Cで 2時間乾燥させた。 次いで、 得 られたチューブを 1 0質量%水酸化ナトリゥム水溶液に浸漬し、 室温で 3 0分間 静置することにより、 イソシァネートの加水分解を行い、 基材表面にアミノ基を 生成させた。 同チューブに合成例 1〜6で得られた各種共重合体を、 実施例 1— 1〜 1一 6に記載の方法に準じて固定化した。 得られた共重合体固定化ポリウレ タンチューブの医療用材料をそれぞれ実施例 2— 1〜 2— 6として、 各々の試料 を E S C Aにより表面分析したところ、 いずれの試料にもチォ硫酸ナトリゥムの 硫黄原子に由来するシグナルが観測された。 また A T R _ I Rによる表面分析に より、 全ての試料においてエポキシ基に起因するピークの消失が確認された。 こ の結果より、 未反応のエポキシ基は、 チォ硫酸ナトリウムと反応して完全に開環 されていることが明らかになった。
得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の経日安定性評価方法による評価 を行なった。 結果を表 4に示す。
表 4
0 . 2 Mチォ硫酸ナトリゥム水溶液によるエポキシ基の開環処理を行わなかつ た以外は、 実施例 2 _ 1〜2— 6に記載の方法に準じて、 合成例 1〜6で得られ た各種共重合体を固定化したチューブを作製した。 得られた共重合体固定化ポリ ウレタンチューブをそれぞれ比較例 2— 1〜 2— 6として、 各々の試料を A T R ― I Rにより表面分析したところ、 いずれの試料にもエポキシ基に由来するピー クが観測された。
得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の経日安定性評価方法による評価 を行なった。 結果を表 5に示す。
表 5
基体(M)としてポリ塩化ビニル製のチューブ(外径 1 mm、 全長 1 0 c m)を用 いた以外は、 実施例 2— 1〜2— 6に記載の方法に準じて、 合成例 1〜6で得ら れた各種共重合体を固定化したチューブを作製した。 得られた共重合体固定化ポ リ塩化ビニルチューブの医療用材料をそれぞれ実施例 3— 1〜 3— 6として、 各々の試料を E S C Aにより表面分析したところ、 いずれの試料にもチォ硫酸ナ トリゥムの硫黄原子に由来するシグナルが観測された。 また A T R— I Rによる 表面分析により、 全ての試料においてエポキシ基に起因するピークの消失が確認 された。 この結果より、 未反応のエポキシ基は、 チォ硫酸ナトリウムと反応して 完全に開環されていることが明らかになった。
得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の経日安定性評価方法による評価 を行なった。 結果を表 6に示す。
表 6
0 . 2 Mチォ硫酸ナトリゥム水溶液によるエポキシ基の開環処理を行わなかつ た以外は、 実施例 3— 1〜 3— 6に記載の方法に準じて、 合成例 1〜6で得られ た各種共重合体を固定化したチューブを作製した。 得られた共重合体固定化ポリ 塩化ビニルチューブをそれぞれ比較例 3— 1〜3— 6として、 各々の試料を A T R— I Rにより表面分析したところ、 いずれの試料にもエポキシ基に由来するピ
ークが観測された。
得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の経日安定性評価方法による評価 を行なった。 結果を表 7に示す。
表 7
低密度ポリエチレン製のチューブ(外径 lmm、 全長 10 cm)を空気中でコロ ナ処理(照射エネルギー: lj/cm2)して基体の表面にカルボキシル基を生成さ せた。 同チューブに合成例 1〜 6で得られた各種共重合体を実施例 1一 1〜 1— 6の方法に準じて固定化した(但し、 共重合体溶液には、触媒として 0. 1質量% となるようにトリエチルァミンを添加した)。得られた共重合体固定化ポリエチレ ンチューブの医療用材料をそれぞれ実施例 4一 :!〜 4— 6として、 各々の試料を E S CAにより表面分析したところ、 いずれの試料にもチォ硫酸ナトリゥムの硫 黄原子に由来するシグナルが観測された。 また ATR— I Rによる表面分析によ り、 全ての試料においてエポキシ基に起因するピークの消失が確認された。 この 結果より、 未反応のエポキシ基は、 チォ硫酸ナトリウムと反応して完全に開環さ れていることが明らかになった。
得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の経日安定性評価方法による評価 を行なった。 結果を表 8に示す。
表 8
比 — 1〜 4 _ 6
0.2 Mチォ硫酸ナトリゥム水溶液によるエポキシ基の開環処理を行わなかつ た以外は、 実施例 4一 1〜4— 6の方法に準じて、 合成例 1〜6で得られた各種 共重合体を固定化したチューブを作製した。 得られた共重合体固定化ポリエチレ ンチューブをそれぞれ比較例 4— 1〜4— 6として、 各々の試料を AT R— I R により表面分析したところ、 いずれの試料にもエポキシ基に由来するピークが観 測された。
得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の経日安定性評価方法による評価 を行なった。 結果を表 9に示す。
表 9
実施例 1— 1〜 1 _ 6の方法に準じてアル力リ処理したナイ口ン製のチューブ (外径 lmm、 全長 10 cm)を、 合成例 2で調製した( P— 2 )の 5質量。 /。イソプ ロバノール溶液に 1分間浸漬した後に引き上げ、 室温で 2時間乾燥させた。 次い で、得られたチューブを 90°Cで 3〜24時間加熱処理することにより、前記(P _ 2)が固定化されたチューブを作製した。続いて、該チューブを合成例 7で合成 した( P— 7 )の 2質量%ェタノ一ル溶液に 1分間浸漬した後に引き上げ、 室温で 2時間乾燥させ、 更に 90°Cで 3〜 24時間加熱処理した。 得られた(P— 2)と (P— 7)の双方が固定化されたチューブを 0. 2 Mチォ硫酸ナトリゥム水溶液に 浸漬し、 室温で 24時間静置後、 取り出し、 十分に水洗して残存エポキシ基を開 環させた。 以上の操作により基材表面に形成された架橋固定化膜を MP C— AA HC 1 /MP C-GMA- S 03Naと示す。
作製した MPC— AAHC 1 /MP C-GMA- S 03Na 固定化ナイロンチ ュ一ブを E S C Aにより表面分析したところ、 チォ硫酸ナトリゥムの硫黄原子に 由来するシグナルが観測された。 また ATR— I Rによる表面分析により、 ェポ
キシ基に起因するピークの消失が確認された。 この結果より、 未反応のエポキシ 基は、 チォ硫酸ナトリゥムと反応して完全に開環されていることが明らかになつ た。
得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の経日安定性評価方法、 潤滑性の 持続性評価方法及び血液適合性評価に従って、 各評価を行なった。 結果を表 1 0 に示す。
実施例 5— 2
( P— 7 )の 2質量%エタノ一ル溶液を、 合成例 8で調製した( P _ 8 )の 2質 量%テトラヒ ドロフラン溶液に代えた以外は、 実施例 5 — 1に記載の方法に準じ て、 DMAA— AAH C 1 /M P C— GMA— S◦ 3 Na固定化ナイロンチューブ を作製した。 該チューブを E S C Aにより表面分析したところ、 チォ硫酸ナトリ ゥムの硫黄原子に由来するシグナルが観測された。 また A T R _ I Rによる表面 分析により、 エポキシ基に起因するピークの消失が確認された。 この結果から、 未反応のエポキシ基は、 チォ硫酸ナトリゥムと反応して完全に開環されているこ とが明らかになった。
得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の経日安定性評価方法、 潤滑性の 持続性評価方法及び血液適合性評価に従って、 各評価を行なった。 結果を表 1 0 に示す。
実施例 5— 3
( P— 7 )の 2質量%エタノール溶液を、 合成例 9で調製した(P— 9 )の 2質 量%ジクロロメタン溶液に代えた以外は、 実施例 5— 1の方法に準じて、 V P— AAH C 1 /M P C - GMA - S〇3 Na固定化ナイ口ンチューブを作製した。該 チューブを E S C Aにより表面分析したところ、 チォ硫酸ナトリゥムの硫黄原子 に由来するシグナルが観測された。 A T R— I Rによる表面分析により、 ェポキ シ基に起因するピークの消失が確認された。 この結果より、 未反応のエポキシ基 は、チォ硫酸ナトリゥムと反応して完全に開環されていることが明らかになった。 得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の経日安定性評価方法、 潤滑性の 持続性評価方法及び血液適合性評価に従って、 各評価を行なった。 結果を表 1 0 に示す。
実施例 6— 1
合成例 2で調製した(P— 2)の 5質量%ィソプロパノ一ル溶液と、 合成例 7で 調製した(P— 7)の 2質量%エタノール溶液とを、 質量比で 1 : 1の割合で混合 した。 得られた混合ポリマ一溶液に、 実施例 1— 1〜 1— 6の方法に準じてアル カリ処理したナイロン製のチューブ(外径 lmm、 全長 10 cm)を 1分間浸漬し た後に引き上げ、 室温で 2時間乾燥させた。 次いで、 得られたチューブを 90°C で 3〜24時間加熟処理した。 得られた(P— 2)と(P— 7)の双方が固定化され たチューブを、 0.2 Mチォ硫酸ナトリゥム水溶液に浸漬し、室温で 24時間静置 後、 取り出し、 十分に水洗して残存エポキシ基を開裂させた。 以上の操作により 基材表面に形成された架橋固定化膜を MP C— AAHC 1 +MP C-GMA- S O3Naと示す。
作製した MP C— AAHC 1 +MP C-GMA- S O3Na 固定化ナイ口ンチ ュ一ブを E S C Aにより表面分析したところ、 チォ硫酸ナトリゥムの硫黄原子に 由来するシグナルが観測された。 また ATR— I Rによる表面分析により、 ェポ キシ基に起因するピークの消失が確認された。 この結果から、 未反応のエポキシ 基は、 チォ硫酸ナトリゥムと反応して完全に開環されていることが明らかになつ た。
得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の経日安定性評価方法、 潤滑性の 持続性評価方法及び血液適合性評価に従って、 各評価を行なった。 結果を表 10 に示す。
実施例 6— 2
(P— 7)の 2質量%エタノール溶液を、 合成例 8で調製した(P— 8)の 2質 量%テトラヒ ドロフラン溶液に代えた以外は、 実施例 6— 1の方法に準じて、 D MAA-AAHC 1 +MP C _ GMA_ S O 3 Na 固定化ナイ口ンチューブを作 製した。 該チューブを E S C Aにより表面分析したところ、 チォ硫酸ナトリウム の硫黄原子に由来するシグナルが観測された。 ATR— I Rによる表面分析によ り、 エポキシ基に起因するピークの消失が確認された。 この結果から、 未反応の エポキシ基は、 チォ硫酸ナトリゥムと反応して完全に開環されていること-が明ら かになつた。
得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の経日安定性評価方法、 潤滑性の 持続性評価方法及び血液適合性評価に従って、 各評価を行なった。 結果を表 10 に示す。
実施例 6— 3
(P— 7)の 2質量%エタノール溶液を、 合成例 9で調製した(P— 9)の 2質 量%ジクロロメタン溶液に代えた以外は、 実施例 6— 1の方法に準じて、 VP— AAHC 1 +MP C-GMA- S O3Na固定化ナイ口ンチューブを作製した。該 チューブを E S CAにより表面分析したところ、 チォ硫酸ナトリゥムの硫黄原子 'に由来するシグナルが観測された。 ATR— I Rによる表面分析により、 ェポキ シ基に起因するピークの消失が確認された。 この結果から、 未反応のエポキシ基 は、チォ硫酸ナトリゥムと反応して完全に開環されていることが明らかになった。 得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の経日安定性評価方法、 潤滑性の 持続性評価方法及び血液適合性評価に従って、 各評価を行なった。 結果を表 10 に示す。
比較例 5
実施例 1一 1〜 1— 6の方法に準じてアル力リ処理したナイ口ン製のチュ一ブ (外径 lmm、 全長 10 cm)を、 合成例 7で調製した( P— 7 )の 2質量%ェタノ —ル溶液に 1分間浸漬した後に引き上げ、 室温で 2時間乾燥させた。 次いで、 得 られたチューブを 90°じで3〜24時間加熱処理することにより、 前記共重合体 がコーティングされたナイ口ンチューブを作製した。
得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の持続性評価方法及び血液適合性 評価に従って、 各評価を行なった。 結果を表 10に示す。
比較例 6
ポリウレタン製のチューブ(外径 lmm、 全長 10 c m)をポリイソシァネート (日本ポリウレタン工業製、商品名:コロネ一ト L)の 5質量0 /0テトラヒ ドロフラ ン溶液に 1分間浸漬した後に引き上げ、 50°Cで 2時間乾燥させた。 次いで、 得 られたチューブをポリビエルピロリ ドンの 4質量0 /。クロ口ホルム溶液に 1分間浸 漬した後に引き上げ、 室温で 2時間乾燥させた。 続いて、 80°Cで 5時間加熱処 理することにより、 ポリビュルピロリ ドンを結合したポリウレタンチューブを作
製した。
得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の持続性評価方法及び血液適合性 評価に従って、 各評価を行なった。 結果を表 10に示す。
比較例 7
アクリル酸をグラフト重合したポリイミ ドチューブに、 縮合剤として 1ーェチ ル一 3—(3—ジメチルァミノプロピル)カルボジイミ ドを用いて、 合成例 10で 調製した(P— 10)を反応させ、特表平 7— 502053号公報(W〇93/01 221)記載の MPC— AEMA共重合体が固定化されたポリイミ ドチューブを 作製した。
得られた医療用材料について、 上述の潤滑性の持続性評価方法及び血液適合性 評価に従って、 各評価を行なった。 結果を表 10に示す。
比較例 8
ニッケル一チタン合金の芯線をポリウレタンで被覆し、 更にその上に無水マレ イン酸系高分子物質を被覆した構造の親水性ガイ ドワイヤ一(外径 0.89mm, テルモ社製)を準備した。
上記ガイ ドワイヤーについて、 上述の潤滑性の持続性評価方法及び血液適合性 評価に従って、 各評価を行なった。 結果を表 10に示す。
表 10 実 施 例 _ 比 較 例
5- 1 5-2 5-3 6- 1 6-2 5 6 7 8 未処理ナ
ィロン 摩擦係数 μ
作製直後 0. 02 0, 03 0. 04 0. 02 0. 03 0. 03
1週間後 0. 02 0. 03 0. 04 0. 02 0. 03 0. 03 CO
1ヶ月後 0. 02 0. 03 0. 04 0. 02 0. 03 0. 03
摩擦係数 μ
耐久性試験前 0. 02 0. 03 0. 04 0. 02 0. 03 0. 03 0. 02 0, 04 0. 03 0. 02 0. 49 耐久性試験後 0. 02 0. 03 0. 04 0. 02 0. 03 0. 03 0. 47 0. 45 0. 40 0. 03 0. 50 血小板粘着数
耐久性試験前 ◎ 〇or© Oor© ◎ Oor® Oor© ◎ 〇 ◎ Δ X 耐久性試験後 ◎ Oor® Oor® ◎ Oor® Oor® X Xor厶 ΧΟΓΔ Δ X ω
表 2、 4、 6、 8、 及び 10の結果より、 チォ硫酸ナトリウムによる残存ェポ キシ基の開環処理を行った本発明の共重合体固定化チューブは、 いずれも摩擦係 数 μの経時変化は認められず、 優れた経日安定性を示した。 一方、 チォ硫酸ナト リゥムによる残存エポキシ基の開環処理を行わなかった比較例 1 _ 1〜 1— 6、 比較例 2— 1〜 2— 6、 比較例 3— 1〜 3— 6、 比較例 4— 1〜 4一 6で得られ た各種チューブは、 経時的に摩擦係数 が増大し、 初期の潤滑性が失われたこと がわかる。
また、 表 10の結果より本実施例のチューブは、 いずれも良好な表面潤滑性を 発現し、 その性能は耐久性試験後においても維持されていた。 中でも実施例 5— 1で得られた MP C— AAHC 1 /MP C-GMA- S O3Na 固定化ナイ口ン チューブ及び実施例 6-1の MP C— A AHC 1 +MP C— GMA— S 03Na固 定化ナイロンチューブは、 特に潤滑性が良好であった。 一方、 比較例 5〜 7で調 製したナイロンチューブ及び比較例 8のガイ ドワイヤーの場合、 耐久性試験前で はいずれも摩擦抵抗値が小さかったのに対し、 耐久性試験後では摩擦抵抗値が増 大した。
以上のことから、 本発明の医療用材料は、 表面潤滑性及びその持続性共に非常 に良好であることが明らかになった。
更に、 本実施例の各種チューブは、 いずれも未処理の試料と比較して血小板の 粘着数が少なく、 その傾向は耐久性試験後においても維持されていた。 中でも実 施例 5— 1で得られた MP C— AAHC 1 ZMP C— GMA— S〇3Na 固定化 ナイロンチューブ及び実施例 6— 1の MPC— AAHC 1 +MPC— GMA— S O Na固定化ナイ口ンチューブには血小板の付着が全く認められず、特に血液適 合性が良好であった。 一方、 比較例 5〜 7のチューブの場合、 耐久性試験前では 殆ど血小板の付着が観察されなかったのに対し、 耐久性試験後では多数の血小板 の粘着が認められるようになった。 また、 比較例 8のガイ ドワイヤ一では、 未処 理の試料よりは少ないものの耐久性試験前でも血小板の粘着が認められ、 粘着し た血小板は活性化により変形して偽足を伸ばしていた。
以上のことから、 本発明の医療用材料は、 優れた血液適合性を有し、 その機能 は耐久性試験後においても安定に保持されていることがわかった。