明 細 書 ィ ピダク リ ン及び塩酸ィ ピダク リ ン水和物の製造方法 技術分野
本発明は、 ィ ピダク リ ン ( 9 ーァ ミ ノ 一 2, 3, 5, 6, 7 , 8 —へキサヒ ドロ一 1 H— シク ロペンタ [ b ] キノ リ ン) 及び塩酸ィ ピダク リ ン水和物 ( 9 —ア ミ ノ ー 2, 3, 5, 6, 7 , 8 —へキサ ヒ ドロ一 1 H—シク ロペ ンタ [ b ] キノ リ ン一塩酸塩一水和物) の 製造方法に関する。 背景技術
塩酸イ ビダク リ ン水和物は抹消神経系統における興奮伝達の刺戟 効果がある化合物と して報告されている (例えば特公昭 6 3 — 3 5 6 1 1 号公報参照) 。 また、 学習促進 , 記憶増強効果がある化合物 と しても報告されている (例えば特公平 3 — 5 4 9 2 2号公報参照 塩酸ィ ピダク リ ン水和物の製造方法と しては、 まず 2 —ア ミ ノ ー 1 — シ ク ロペンテ ン一 1 — カルボ二 ト リ ノレ ( 1 一 ア ミ ノ ー 2 — シァ ノ シクロペンテン一 1 ) とシク ロへキサノ ンをポリ リ ン酸と乾燥べ ンゼン中加熱還流を行い、 ィ ピダク リ ン ( 9 —ア ミ ノ ー 2, 3 , 5 , 6 , 7 , 8 —へキサヒ ドロー 1 H— シク ロペンタ [ b ] キノ リ ン ) を得て、 これをエタノール中塩化水素ガスを通じて塩酸イ ビダク リ ン水和物 ( 9 —ア ミ ノ ー 2 , 3 , 5, 6, 7 , 8 —へキサヒ ドロ _ 1 H— シクロペンタ [ b ] キノ リ ンー塩酸塩一水和物) を得る方 法が報告されている (例えば特公昭 6 3 — 3 5 6 1 1 号公報参照) 。 また、 上記反応中、 副生成物と して得られる 5, 5 —ペンタメ チ
レ ン一 7 —ォキソ 一 1, 2, 3, 4, 6, 7 _へキサヒ ドロ シ ク ロ ペンタ [ d ] ピリ ミ ジ ンを トルエン中、 ォキシ塩化リ ンと作用させ ても、 ィ ピダク リ ンが得られることが記載されている (例えば特公 平 3 — 5 4 9 2 2号公報参照) 。
また、 特許第 2 5 1 0 5 8 6号明細書によれば、 2 —ア ミ ノ ー 1 ー シ ク ロペンテ ン一 1 —カルボ二 卜 リ ルとシク ロへキサノ ンとをク ロロホルム等の溶媒中でポ リ リ ン酸ェチルの存在下 2 0〜 1 0 0 °C で反応させる方法が記載されている。
この特許明細書の記載によれば、 ポリ リ ン酸ェチルは、 ジェチル エーテルと五酸化二リ ンをク ロ口ホルム中で反応させることにより 製造されている。
上記特公昭 6 3 — 3 5 6 1 1 号公報ゃ特公平 3 — 5 4 9 2 2号公 報に記載の方法を利用 して塩酸ィ ピダク リ ン水和物を合成するには 、 途中で不純物と して得られる 5, 5 _ペンタメ チレン一 7 —ォキ ソ一 1, 2, 3, 4, 6, 7 —へキサヒ ドロ シク ロペンタ [ d ] ピ リ ミ ジ ンを除去しなければならず、 収率が低下する。 また、 不純物 である 5, 5 —ペンタメ チレン一 7 —ォキソ一 1, 2, 3, 4, 6 , 7 _へキサヒ ドロ シク ロペンタ [ d ] ピリ ミ ジ ンは、 特公平 3 — 5 4 9 2 2 によれば、 ォキシ塩化リ ンと反応させることによって塩 酸イ ビダク リ ン水和物に誘導することは可能であるが、 この様な処 理を行う ことは、 反応工程が増加する等の理由で大量合成には不向 さ し?あ O o
また、 特許第 2 5 1 0 5 8 6号公報に記載の方法はポリ リ ン酸ェ チルの製造に可燃性の高い危険なジェチルエーテルを用いているた め操作方法が非常に煩雑になる上、 調製に長時間 ( 3 日間) かかる ため工業的な大量合成には適さない。 また、 調製されたポ リ リ ン酸 ェチルは、 高粘性で取扱が不便である上、 経時変化し易い化合物で
あるため、 常に一定品質のものを使用するこ とが極めて困難になる という欠点がある。 また、 反応溶媒と してク ロ口ホルムを用いてい る力く、 工業化において大量のハロメ タ ンの一種であるク ロ口ホルム を用いるこ とは、 作業上はもとより環境面からも問題であり、 好ま しい方法とは言い難い。
更に、 ク ロロホルム中で脱水縮合反応を行った場合反応液中に生 成したイ ビダク リ ンは、 水を加えて塩にして水相に移行せしめた後 、 水相をアルカ リ性にして結晶を析出する方法で分離精製している 。 しかしながら、 ク ロ口ホルムはィ ピダク リ ンの塩がかなりの量溶 存するため、 この方法で収率を上げるためにはク ロロホルム相を複 数回 ( 4 回以上) 洗浄する必要があり、 作業行程が多く なる欠点が ある。
さ らに、 上記 3件の公報によれば、 イ ビダク リ ンを塩酸塩化させ 、 塩酸ィ ピダク リ ン水和物に誘導する際、 溶媒と してエタノ ールを 、 塩酸塩化剤と して塩化水素ガスを用いている。 溶媒と してエタノ ールの様なアルコール系の溶媒を用いた場合、 生成した塩酸ィ ビダ ク リ ン水和物には相当量の残留溶媒が結晶水の代わりに部分的に取 り込まれており、 結晶水の不足した塩酸ィ ピダク リ ン水和物が得ら れる。 この結晶は赤外吸収スぺク トルが標準品の標準スぺク トルチ ヤー 卜と一致せず、 X線構造解析による結晶形の変化等も認められ る (例えば医薬品研究 2 8 , 9 , 6 4 3 - 6 5 7 ( 1 9 9 7 ) 参照 ) などの欠点がある。
また、 塩酸塩化剤と して猛毒で取り扱いの煩雑な塩化水素ガスを 用いることなどから、 決して扱い易いとはいえず、 好ま しい方法と は言い難い。 発明の開示
従って、 本発明の目的は、 上記の如き欠点がな く 、 しかも収率の 良いィ ピダク リ ン又は塩酸ィ ピダク リ ン水和物の製造方法を提供す る こ とにある。
本発明者は、 ィ ピダク リ ン製造方法において収率が良く 、 しかも 危険性が少なく 、 操作方法が容易で環境面からも問題の少ない方法 を見いだすべく 鋭意検討した結果、 五酸化ニリ ンを炭化水素系溶媒 中でリ ン酸 ト リ エチル及びエタノ ールと反応させることにより得ら れるポ リ リ ン酸ェチルを単離するこ となく 、 脱水縮合剤と して用い ればこれらの問題が解決するこ とを見いだし、 更に研究を行う こ と により本発明を完成した。
また、 ィ ピダク リ ンの塩酸塩化工程では、 アセ ト ン溶媒中で濃塩 酸を用いて塩酸塩化すれば赤外吸収スぺク トルゃ X線構造解析によ る結晶形の変化が認められない塩酸ィ ピダク リ ン水和物が得られる こ とを見いだし、 更に研究を行う ことにより本発明を完成した。 本発明に従えば、 炭化水素系溶媒中で五酸化二リ ンをリ ン酸 ト リ アルキル及び水酸基を有する化合物と反応させることにより脱水縮 合剤である部分的に水酸基を有するポ リ リ ン酸エステルを製造し、 次に得られた該ポ リ リ ン酸エステルを単離することなく 、 2 —ア ミ ノ 一 1 — シ ク ロペ ンテ ン一 1 一カルボ二 ト リ ノレと シク ロへキサノ ン との脱水縮合反応に用いる式 ( I ) :
で表されるィ ピダク リ ン ( 9 一ア ミ ノ ー 2, 3, 5, 6, 7, 8 へキサヒ ドロ一 1 H—シク ロペン夕 [ b ] キノ リ ン) の製造方法
が提供される。
本発明に従えば、 また、 ィ ピダク リ ンをアセ ト ン中又はアセ ト ン と少量の水からなる混合溶媒中で濃塩酸を作用させて塩酸塩化を行 う ことによる塩酸ィ ビダク リ ン水和物の製造方法が提供される。 本発明に従えば、 更に、 製造される塩酸ィ ピダク リ ン水和物が残 留溶媒が含まれない標準品の赤外吸収スぺク トル (A型) を示すも のである塩酸イ ビダク リ ン水和物の製造方法が提供される。 図面の簡単な説明
以下図面を参照して本発明を証明する。
図 1 は塩酸ィ ピダク リ ン水和物の A型の赤外吸収スぺク トルを示 す図である。
図 2 は塩酸ィ ピダク リ ン水和物の B型の赤外吸収スぺク トルを示 す図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明を更に詳細に説明する。
本発明で用いるィ ピダク リ ン ( 9 —ァ ミ ノ 一 2, 3 , 5, 6, 7 , 8 _へキサヒ ドロー 1 H —シク ロペンタ [ b ] キノ リ ン) とは、 通常無水物のことを示すが、 本明細書ではィ ピダク リ ン一水和物 ( 理論水和物量) 又は水分量が一水和物以下のものも包含する ものと する。 これは、 ィ ピダク リ ン (無水物一無定型結晶) を空気中で室 温下に放置すると自然に空気中の水分を吸収して、 安定な一水和物 になることによる。 また、 例えばィ ピダク リ ンをメ タノ ール一水混 合溶媒あるいは、 ァセ ト ン一水混合溶媒の様な含水有機溶媒中で再 結晶を行う と、 イ ビダク リ ン一水和物 (針状結晶等) が得られるこ とからも挙げられる。 これらィ ピダク リ ン一水和物あるいは理論水
和物量以下の結晶は、 通常減圧下で加熱乾燥させると容易に結晶水 を失い無水物となる。
本発明で用いられる部分的に水酸基を有するポ リ リ ン酸エステル は、 構造の一部が P— 0 H残基を有する こ とを特徴と している。 五 酸化二リ ンと理論量のリ ン酸 ト リ アルキルとの反応で得られるポ リ リ ン酸エステルは、 構造の中に P— 0 H残基を有さないポリ マーで ある。 しかしながら、 このポリ リ ン酸エステルを縮合剤と して用い ると反応において副生成物の生成や原料の分解等が起こ り、 得られ るィ ピダク リ ンの収率の低下を招く ばかりでなく 、 純度の悪い着色 したィ ピダク リ ンが得られる。
本発明では、 構造の一部に P— O H残基を有するポリ リ ン酸エス テルを用いるため、 上記の様な副生成物の産生や原料の分解等が発 生せず、 高収率で高純度なィ ピダク リ ンが得られる。
本発明で用いられる部分的に水酸基を有するポ リ リ ン酸エステル は、 以下の方法によ って製造することができる。 即ち、 五酸化ニリ ンと反応しない有機溶媒中、 例えば トルエン、 ベンゼン等の炭化水 素系有機溶媒中、 五酸化ニリ ンを懸濁させ、 適当な温度に加熱しな がら リ ン酸 ト リ アルキルを滴下する。 反応は速やかに進行するため 滴下後すぐにあるいはしばら く 時間をかけた後、 水酸基を有する化 合物 (分子内に一 0 H残基を有する化合物) 、 例えばエタノール、 水等を加える。 この反応は通常発熱を伴って進行するため、 必要な ら適当な温度まで冷却する。 この反応も速やかに進行するため滴下 を終えた時点でポリ リ ン酸エステルの調製は完了する。
本発明で用いられる リ ン酸 ト リ アルキルと しては、 リ ン酸 ト リエ チル、 リ ン酸 ト リ メ チル等が挙げられる。 本発明では、 多く の場合 リ ン酸 ト リェチルが使用される。
水酸基を有する化合物と しては、 アルコール、 氷、 ポ リ リ ン酸、
ピロ リ ン酸、 リ ン酸等が挙げられ、 好ま し く はアルコールが挙げら れる。 また、 これらは、 単一化合物であっても混合物であってもよ い。
アルコールと しては、 メ タ ノ ール、 エタ ノ ール、 プロパノ ール等 の一価アルコールが好ま しい。 この他に、 エチレングリ コール、 グ リセリ ンの様な多価アルコールも使用することができる。
炭化水素系溶媒と しては、 五酸化二リ ンと反応しない溶媒であれ ばよ く 、 具体的には、 ベンゼン、 トルエン、 キシレン等あるいはそ れらの混合物があげられる力 毒性及びコス 卜の面から トルエンが 好ま しい。
五酸化ニリ ンは、 2 —ァ ミ ノ 一 1 — シク ロペンテン一 1 一 カルボ 二 ト リ ルに対して、 通常、 モル比で 3 〜 1 0等量が用いられるが、 反応収率、 コス 卜の面からモル比で 3 〜 8等量用いるのが好ま しい リ ン酸 ト リ アルキルは、 五酸化二リ ンに対して、 通常、 モル比で 0 . 3〜 1 . 2等量が用いられるが、 反応収率、 操作手順、 コス ト 面からモル比で 0 . 4〜 1 等量用いるのが好ま しい。
水酸基を有する化合物と してアルコールを使用する場合、 アルコ —ルは、 五酸化二リ ンに対して、 通常、 モル比で 0 . 0 5〜 1 等量 、 好ま しく は、 0 . 1 〜 0 . 6等量用いられる。
また、 アルコールの代わりに水、 ポ リ リ ン酸、 ピロ リ ン酸あるい はリ ン酸を使用すること もできるが、 この場合、 生成するポ リ リ ン 酸エステルの P — O H基の数がエタノ ール等のアルコールを用いた 場合と同様になるようにモル数を調整する。 つま り、 水であれば、 アルコールに対して 2分の 1 等量、 リ ン酸であれば 3分の 1 等量が 好ま しい。
五酸化ニリ ンを炭化水素系溶媒中でリ ン酸 ト リ アルキル及びアル
コール (あるいは分子内に一 0 H残基を有する化合物) と反応させ る工程では、 通常 0 °C〜 1 0 0 °C、 好ま し く は 3 0 °C〜 8 0 °Cの範 囲で反応を行う こ とができ、 通常、 6 時間以内で反応は終了する。
2 —ァ ミ ノ 一 1 —シクロペンテン一 1 一カルボ二 ト リノレとシク ロ へキサノ ンの脱水縮合反応工程では、 通常 0 °C〜 1 1 0 °C、 好ま し く は 3 0 °C〜 8 0 °Cの範囲で反応を行う こ とができ、 通常 1 時間か ら 6 時間で反応は終了する。
反応終了後、 生成物を反応液から分離精製するには、 例えば溶媒 抽出、 結晶化、 活性炭処理、 カラムク ロマ トグラフ ィ ー等の方法を 適宜選択し、 場合により組み合わせて用いることにより容易に精製 物を得るこ とができる。
従来、 ポ リ リ ン酸あるいはポリ リ ン酸エステル系の脱水剤を五酸 化二リ ンから調製する際、 水、 アルコール等、 五酸化二リ ンと反応 しゃすい化合物を用いた場合は、 滴下途中でァメ状物質が生成する ため、 攪拌が非常に困難となる欠点を有していた。 一方、 ジェチル エーテル等の五酸化ニリ ンと反応しにく い化合物では、 ァメ状物質 は生成し難いが、 逆に調製時間が非常に長く なる欠点を有していた o
本発明によれば、 ポリ リ ン酸エステルの調製工程において、 五酸 化ニリ ンにリ ン酸 ト リ アルキル及びアルコール (あるいは分子内に
— 0 H残基を有する化合物) を作用させている。 また、 この工程で 使用する溶媒に炭化水素系溶媒、 特に好ま しい溶媒と して トルエン を用いている。 ポリ リ ン酸エステルの調製に用いる五酸化ニリ ンと リ ン酸 ト リ アルキル及びアルコール (あるいは分子内に一 0 H残基 を有する化合物) の反応は、 発熱反応ではあるが、 穏和な条件で反 応が進行するため、 工業化に適した反応である。 また、 この反応は 、 短時間、 多く の場合 1 時間以内に終了するため、 製造コス トの面
からも有利である。
本発明では、 合成されたポ リ リ ン酸エステルは、 単離することな く そのまま 2 —ア ミ ノ ー 1 —シク ロペンテン一 1 _カルボ二 ト リル と シク ロへキサノ ンの脱水縮合反応に用いられる利点がある。 この ため、 経時変化に伴うポ リ リ ン酸エステルの品質の劣化を避けるこ とができる。 また、 合成されたィ ピダク リ ンは、 水を加えてポリ リ ン酸エステルを分解し、 ィ ピダク リ ンのリ ン酸塩と して水相に移行 せしめたとき、 該塩が トルエン等の炭化水素系溶媒にに殆ど溶けな いため、 生成物の分離精製が容易であるという利点がある。
上記のように水相に移行せしめたイ ビダク リ ンリ ン酸塩に、 水酸 化ナ ト リ ウム水溶液を加え、 析出結晶を濾取することによってイ ビ ダク リ ンを得るこ とができる。 この析出結晶は、 例えば溶媒抽出、 結晶化、 カラムク ロマ トグラフ ィ ー等の方法を適宜選択し、 場合に より組み合わせて用いることにより容易にイ ビダク リ ンの精製物を 得ることができる。 本発明では、 通常はメ タノール一水の混合溶媒 中で再結晶することによって精製されたイ ビダク リ ンを得るこ とが できる。
本発明のィ ピダク リ ンの塩酸塩化工程では、 溶媒と してァセ ト ン 又はァセ ト ンと少量の水からなる混合溶媒中で濃塩酸を作用させ塩 酸塩化すれば赤外吸収スぺク トルゃ X線構造解析による結晶形の変 化が認められない塩酸ィ ピダク リ ン水和物が得られる。 この場合、 完全に無水のィ ピダク リ ンに溶媒と してァセ ト ンのみを用い塩酸塩 化を行った場合においても塩酸中に含まれる水の影響で、 一塩酸塩 一水和物である塩酸ィ ピダク リ ン水和物が得られる。
ァセ ト ンと少量の水からなる混合溶媒中の水の量は、 ァセ ト ンに 対して容積比で、 通常 1 Z 5倍量以下、 好ま しく は 1 Z 1 0倍量以 下である。 混合溶媒中の水の量が多く なると、 塩酸ィ ピダク リ ン水
和物が水に溶けやすい為、 収率の低下を招き好ま しく ない。
塩酸塩を濾過後、 得られた塩酸塩に付着している過剰のァセ ト ン を乾燥させれば、 理論量である一分子の結晶水がついた塩酸ィ ビダ ク リ ン水和物が得られる。 この結晶の赤外吸収スぺク トルは標準ス ぺク トルと一致しており、 X線構造解析による結晶形も標準品と同 一である。
尚、 本発明で得られる塩酸ィ ピダク リ ン水和物には少量 (通常、 3 0 O ppm 以下) のアセ ト ンが残留している場合もある力く、 この場 合は、 結晶を高温 · 高湿下に放置するか、 結晶に少量の水を加えて 混合後乾燥することにより、 容易にアセ ト ンを完全に除去すること ができる。 実施例
以下、 実施例により本発明をさ らに具体的に説明するが、 本発明 の範囲はこれらに限定されるものではない。
実施例 1
9 ーァ ミ ノ 一 2, 3 , 5, 6 , 7 , 8 —へキサ ヒ ドロ 一 1 H— シ 口ペンタ 「 b ] キノ リ ン) の合成
五酸化二リ ン ( P 2 0 ) 7 8. 8 g ( 5 5 5 mm o 1 ) を トル ェン 1 0 0 m L中に懸濁させ、 5 5 °Cに昇温させた。 同温度にてリ ン酸 ト リェチル 7 8. 6 m L ( 4 6 2 m m o 1 ) を滴下し、 更にェ タノ ール 8. 0 m L ( 1 3 9 mm o l ) を滴下し 3 0分攪拌した。 この溶液を 2 0 °Cに冷却し、 2 —ア ミ ノ 一 1 — シク ロペンテン一 1 —カルボ二 ト リノレ 1 0. 0 g ( 9 2. 5 mm o l ) とシク ロへキサ ノ ン 1 0. l m L ( 9 7. l mm o l ) を加え、 5 5 °Cにて 3. 5 時間攪拌した。 冷却し、 水 2 0 0 m Lを 4 0 °C以下で滴下し、 5 5 °Cにて 3 0分攪拌した。 水相を分離し、 トルエン相を水 1 0 0 m L
で洗浄し得られた水相を先に分離した水相と合わせた。
この水相を濃ア ンモニア水溶液 4 0 O m L中に滴下し、 ク ロロホ ルム—メ タ ノ ール ( 1 0 : 1 ) 混合溶媒で抽出した。 抽出溶媒を無 水硫酸マグネシウムで乾燥後、 溶媒を減圧留去した。 得られた残渣 をシ リ カゲルク ロマ ト グラ フ ィ ー (シ リ カゲル 3 0 0 g ; ク ロ ロホ ルム : メ タ ノ ール : 濃ア ンモニア水 = 1 0 0 : 9 : 1 ) で精製し、 得られた結晶を 6 0 °Cで減圧乾燥することにより目的化合物を 1 5 . 8 g (収率 9 0. 7 ) 得た。
Ή - NMR ( 4 0 0 MH z , C D C 1 3 ) : δ 1 . 8 0 - 1 . 9 1 ( 4 Η, m) , 2. 1 1 ( 2 H, d d, J = 7. 3, 7. 6 H z ) , 2. 4 0 - 2. 4 6 ( 2 H, m) , 2. 7 0 ( 2 H , t , J = 7. 3 H z ) , 2. 8 0 - 2. 8 6 ( 2 H, m) , 2. 9 2 ( 2 H, t, J = 7. 6 H z ) , 3. 9 1 ( 2 H, b r )
実施例 2
ィ ピダク リ ン _( 9 —ァ _ノ— 2, 3, 5, 6, 7 , 8 —へキサヒ ドロ 一 1 H—シク ロペンタ [ b ] キノ リ ン) の合成
五酸化二 リ ン ( P 2 05 ) 3 9 4 g ( 2 7 7 4 mm o l ) を トル ェン 5 0 O m L中に懸濁させ、 5 5 °Cに昇温させた。 同温度にてリ ン酸 ト リェチル 2 8 3 m L ( 1 6 6 5 mm o 1 ) を滴下し、 更にェ タ ノ ール 7 5 m L ( 1 2 9 5 mm 0 1 ) を滴下し 3 0分攪拌した。 この溶液を 3 0 °Cに冷却し、 2 —ァ ミ ノ ー 1 ー シクロペンテン一 1 —カルボ二 ト リノレ 5 0 g ( 4 6 2 mm 0 1 ) とシク ロへキサノ ン 5 O m L ( 4 8 5 mm o 1 ) を加え、 5 5 °Cにて 3. 5 時間攪拌した 。 加熱を止め、 水 5 0 O m Lを 5 5 °C以下で滴下し、 5 5 °Cにて 3 0分攪拌した。 水相を分離し、 トルェン相を水 2 5 O m Lで洗浄し 得られた水相を先に分離した水相と合わせた。
この水相を 1 8 %水酸化ナ ト リ ゥム水溶液 2 0 0 O m L中に滴下
し、 析出した結晶を濾過し、 良く水洗した。 得られた含水結晶をメ タノ ール 7 5 O m L—水 1 5 0 O m Lの混合溶媒に熱時溶解し、 冷 却するこ とによ って再結晶を行った。 析出結晶を濾取後水洗し、 6 0 °Cで減圧乾燥を行う こ とによ って目的化合物を無水物と して 7 9 g ( 4 2 0 mm 0 1 ) 得た。 収率 9 1 %。
実施例 3
塩酸ィ ピダク リ ン水和物 ( 9 —ァ ミ ノ 一 2, 3 , 5 , 6, 7, 8 —へキサヒ ドロ一 1 H—シク ロペン夕 [ b ] キノ リ ー塩酸^ _一水 和物) の合成
ィ ピダク リ ン ( 9 —ァ ミ ノ 一 2, 3, 5 , 6, 7, 8 —へキサヒ ドロ一 1 H— シク ロペンタ [ b ] キノ リ ン) 4 0 g ( 1 2 mm o 1 ) をアセ ト ン 7 2 O m Lと水 4 O m Lの混合溶媒に加熱溶解させ 、 濃塩酸 1 9 m L ( 2 1 2 mm o l ) を 1 0分かけて滴下した。 さ らに 3 0分加熱還流を行った後、 室温にて一晩放置した。 析出結曰B を濾過し、 アセ ト ンで洗净後空気中に放置し付着アセ ト ンを蒸発さ せ目的化合物を 4 9 g ( 2 0 2 mm 0 1 ) 得た。 収率 9 5 %。 融点 2 7 4 °C (分解) 。
実施例 4
ィ ピダク リ ン、 ァセ ト ン及び水の量以外は、 実施例 2 とほぼ同様 の条件で塩酸ィ ビダク リ ン水和物を製造した。 得られた塩酸ィ ピダ ク リ ン水和物の収率、 水分量及び赤外吸収スぺク トルを表 I に示す
表 I ィ ピダク リ ン ァセ 卜 ン 水 収率 水分量 I R
( g ) ( m L ) ( m L ) ( % ) ( % )
1 0 2 0 0 0 9 8 7 . 4 0 A型
1 0 1 4 0 1 0 8 9 7 . 4 0 A型
2 0 0 3 0 0 0 2 0 0 9 5 7 . 4 5 A型
1 0 1 8 0 1 0 9 2 A型
2 0 0 3 6 0 0 2 0 0 9 5 7 . 5 1 A型
6 0 0 8 5 0 0 6 0 0 9 4 7 . 3 5 A型
3 0 0 4 1 0 0 3 0 0 9 5 7 . 3 3 A型
(注) 水分量の一については未測定を示す。
I Rスぺク トルの A型は標準品の赤外吸収スぺク トルと一致して いることを示す。
参考例 1
塩酸ィ ピダク リ ンの部分水和物を 2 —プロパノ ールから再結晶し 、 溶媒を留去した後、 6 0 °Cで減圧にて 3 日間乾燥して再結晶品を 得た (水分量 : 3 . 0 1 % ) 。 ついで、 この再結晶品 1 5 gを加湿 条件下 ( 4 0 °C、 7 5 % ) で 2 日間放置することにより塩酸ィ ピダ ク リ ン水和物を得た。
この化合物の赤外吸収スぺク トルは、 標準品の赤外吸収スぺク ト ルと一致せず、 残留溶媒のある B型の赤外吸収スぺク トルを示した
産業上の利用可能性
本発明は、 五酸化ニリ ンを炭化水素系溶媒、 好ま しく は トルエン 中でリ ン酸 ト リアルキル及びアルコール等の水酸基を有する化合物
と反応することにより得られるポ リ リ ン酸エステルを単離すること なく そのまま、 イ ビダク リ ンの合成用の縮合剤と して使用すること ができ、 縮合反応によりィ ピダク リ ンを極めて高収率で得ることが できる。 このため、 本発明は、 予め調製されたポ リ リ ン酸エステル を使用する場合に比べて、 収率の向上はもとより、 危険性、 作業性 及び環境面からも極めて好ま しい方法である。
また、 ィ ピダク リ ンは、 アセ ト ン中又はアセ ト ンと少量の水から なる混合溶媒中で濃塩酸を作用させ塩酸塩化を行う ことにより容易 に塩酸ィ ピダク リ ン水和物にすることができ、 しかも、 この結晶は 残留溶媒の含まれない標準品の赤外吸収スぺク トル (A型) を示す ものであるため、 そのまま医薬品原料と して使用できる利点がある