明細書
H I V- 1のサブタイプ決定法
技術分野
本発明は、 H I V— 1のサブタイプ決定法および H I V- 1のサブ タイプを決定するためのキッ卜に関する。
背景技術
ヒト免疫不全ウィルス (以下、 「H I V」 と記す。) は、 後天性免疫 不全症候群(以下、 「A I D S」 と記す。) の原因ウィルスで、 1型(H
I V— 1 ) と 2型 (H I V— 2) が知られている。 このうち、 症例が 多く、 種々のサブタイプが見つかっているのは、 H I V— 1である。 感染個体内の H I V- 1のサブタイプを決定することは、 ウィルス 学的検査結果 (特に血漿 H I V- 1 RNA濃度や遺伝型による薬剤耐 性) の信頼性や、 感染経路を推測するために重要である。 一般に H I
V- 1のサブタイプ決定はウィルスゲノムの特定領域をシークェンシ ングし、 その結果を系統樹解析することによって判定されているが、 これらの操作は煩雑で費用もかかることが問題となっていた。
従って、 本発明は、 より簡便な H I V— 1のサブタイプ決定法を提 供することを目的とする。
また、 本発明は、 H I V— 1のサブタイプを決定するためのキット を提供することも目的とする.
図面の簡単な説明
図 1は、 H I V— 1の種々のサブタイプの env遺伝子の V3領域の 5'隣接領域 (C2領域) のヌクレオチド配列を示す。 大文字は同じサブ タイプ内でヌクレオチドが完全に共通であることを、 小文字は同じサ ブタイプ内でヌクレオチドが異なる変異体が存在することを示す。 ? は変異が多すぎてコンセンサスのヌクレオチドが決められないことを 示す。 - はサブタイプ Aと同じヌクレオチドを示す。 . は相当する部 位にヌクレオチドが存在しないことを示す。
図 2は、 H I V_ 1の種々のサブタイプの env遺伝子の V3領域の
3'隣接領域 (C3領域) のヌクレオチド配列を示す。 大文字は同じサブ タイプ内でヌクレオチドが完全に共通であることを、 小文字は同じサ ブタイプ内でヌクレオチドが異なる変異体が存在することを示す。 ? は変異が多すぎてコンセンサスのヌクレオチドが決められないことを 示す。 -はサブタイプ Aと同じヌクレオチドを示す。 . は相当する部 位にヌクレオチドが存在しないことを示す。
図 3は、 H I V_ 1のサブタイプを決定するための nested PCR (第 一 P C Rも第二 P C Rもプライマーが異なる) で用いたプライマーの 位置、 組み合わせおよび塩基配列を示す。
図 4は、 ウィルスゲノムのシーケンシングによってサブタイプが決 定されている検体について、 図 3に示したプライマ一を用いた nested PCRによりサブタイプの検出を行った結果を示す。
図 5 : Location of primers in HIV- 1 subtype- speci fic nested PCT. 図 5は、 H I V— 1のサブタイプを決定するための nested PCR (第 一 P C Rのプライマ一は共通で第二の P C Rのプライマーが異なる) で用いたプライマーの位置、 組み合わせおよび塩基配列を示す。 9M はプライマ一 9AEおよび 9B の混合物、 11Mはプライマ一 ULAE、 11LB および 11LCの混合物、 12Mはプライマー 12Aと 12Bの混合物を示す。 図 6 : Subtype-specific PCR of HIV-1 DNA.
図 6は、 図 5に示したプライマーを用いた nested PCRによりサブ夕 ィプの検出を行った結果を示す。
図 7 : Phylogenetic analysis of HIV-1 variants.
図 7は、 シーゲンシングによって得られた、 env遺伝子 V3領域の塩 基配列をもとに H I V-1変異体の系統樹解析を行い、サブタイプを決 定した結果を示す。
図 8: Amino acid sequence in PR of non-subtype B HIV-1 in pat ients receiving HAART.
図 8は、 HAART療法を受けている非サブタイプ B H I V-1感染患者 におけるプロテアーゼ阻害剤耐性に関係するアミノ酸配列を示す。
図 9は、 各種のサブタイプと H I V- 1感染患者の性行動の関係を示 す表である。
図 1 0 : RT-PCR of RNA from PA+ but WB" plasma with universal pr imers
図 1 0は、 粒子吸着法により陽性(PA+)と診断され、 ウエスタンブ ロット法により陰性(WB— )と診断された被験者からの血清検体につい て、 サブタイプに関係なく H I V— 1を増幅できるプライマー対を用 いた RT- PCRを行った結果を示す。 N1 と N2は陰性対照、 P 1と P 2は 陽性対照を示す。
発明の開示
本発明者らは、 各サブタイプに特異的なプライマーを設計し、 これ を用いてサンプル中の核酸の増幅反応を行うことによって、 H I V— 1のサブタイプを迅速に決定することに成功し、 本発明を完成させる に至った。
すなわち、 本発明は、 H I V— 1の env遺伝子のヌクレオチド配列 の一部であって、 5'末端部および 3'末端部のうちの少なくとも片方の ヌクレオチド配列が H I V- 1のサブタイプにより異なる一部を標的 配列として核酸の増幅反応を行い、 核酸の増幅の有無によりサブタイ プの検出を行うことを特徴とする、 H I V— 1のサブタイプを決定す る方法を提供する。標的配列は 100〜2500塩基対の長さであるとよく、 好ましくは 150〜500塩基対の長さである。上記の方法において、標的 配列の 3'末端およびノまたは 5'末端から 1番目〜 3 0番目の塩基ま での配列がサブタイプによって異なるとよい。 例えば、 標的配列の 3' 末端は H I V— 1の env遺伝子の C3領域にあってもよい。 また、標的 配列の 5'末端が H I V— 1の env遺伝子の C2領域にあってもよい。 異なるプライマー対を用いて異なる増幅反応を行って、 異なるサブ夕 ィプを検出することができる。 例えば、 H I V— 1の env遺伝子の C3 領域の一部のサブタイプによって異なるヌクレオチド配列 (ヌクレオ チド配列 1 ) に相補的な配列を含むプライマ一 (プライマー 1 ) と H
I V— 1の env遺伝子の C2領域の一部のヌクレオチド配列(ヌクレオ チド配列 2 ) に相補的な配列を含むプライマー (プライマ一 2 ) とか らなるプライマー対を用いる増幅反応を少なくとも 2回プライマー対 を変えて行い、少なくとも 2つのサブタイプを検出することができる。
また、第一のプライマ一対を用いて、 H I V— 1の env遺伝子のヌ クレオチド配列の一部を標的配列とする第一の増幅反応を行った後、 第二のプライマー対を用いて、 前記標的配列の一部であって、 5'末端 部および 3'末端部のうちの少なくとも片方のヌクレオチド配列がサ ブタイプにより異なる一部を標的配列とする第二の増幅反応を行い、 第二の増幅反応による核酸の増幅の有無によりサブタイプの検出を行 つてもよい。 例えば、 第二のプライマ一対が、 H I V— 1の env遺伝 子の C3領域の一部のサブタイプによって異なるヌクレオチド配列(ヌ クレオチド配列 1 ) に相補的な配列を含むプライマ一(プライマー 1 ) と H I V— 1の env 遺伝子の C2領域の一部のヌクレオチド配列 (ヌ クレオチド配列 2 ) に相補的な配列を含むプライマ一(プライマー 2 ) とからなり、 第一のプライマ一対が、 H I V— 1の env遺伝子のヌク レオチド配列 1の 3'末端の下流の領域の一部のヌクレオチド配列(ヌ クレオチド配列 3 ) に相補的な配列を含むプライマー(プライマー 3 ) と H I V _ 1の env遺伝子のヌクレオチド配列 2の 5 '末端の上流の領 域の一部のヌクレオチド配列 (ヌクレオチド配列 4 ) に相補的な配列 を含むプライマー (プライマ一 4 ) とからなってもよい。
第一のプライマ一対を用いて H I V— 1の env 遺伝子のヌクレオ チド配列の一部を標的配列とする第一の増幅反応を行った後、 第二の プライマー対を用いて前記標的配列の内部のヌクレオチド配列を標的 配列とする第二の増幅反応を行い、 第二の増幅反応による核酸の増幅 の有無によりサブタイプの検出を行う一連の操作を第二のプライマー 対を変えて少なくとも 1回繰り返すことにより、 少なくとも 2つのサ ブタイプの鑑別を行うことができる。 例えば、 (a) 第一のプライマー 対として、 GCAATAGAAAAATTCTCCTC (配列番号 5 ) のヌクレオチド配列
を含むプライマー 12A、 ACAGTAGAAAAATTCCCCTC (配列番号 6 ) のヌクレ ォチド配列を含むプライマ一 12B、 CACAGTACAATGCACACATG (配列番号 8 ) の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 を 含 む プ ラ イ マ 一 9AE お よ び CACAGTACAATGTACACATG (配列番号 9 ) のヌクレオチド配列を含むブラ イ マ一 9B の混合物を用 い、 第二のプラ イ マー対と して、 CTCCTGAGGAGTTAGCAAAG (配列番号 2 7 ) のヌクレオチド配列を含むプ ライマ一 1 1 QA1および CTGTTAAATGGCAGTCTAGC (配列番号 2 0 ) のヌク レオチド配列を含むプライマ一 10Uを用いサブタイプ Aの検出を行い、 (b) 第一のプライマ一として、 GCAATAGAAAAATTCTCCTC (配列番 号 5 ) の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 を 含 む プ ラ イ マ 一 12A 、 ACAGTAGAAAAATTCCCCTC (配列番号 6 ) のヌクレオチド配列を含むプラ イマ一 12B、 CACAGTACAATGCACACATG (配列番号 8 ) のヌクレオチド配列 を含むプライマー 9AEおよび CACAGTACAATGTACACATG (配列番号 9 ) の ヌクレオチド配列を含むプライマ一 9Bの混合物を用い、 第二のプライ マー対として、 CACAATTAAAACTGTGCATTAC (配列番号 2 8 ) のヌクレオ チド配列を含むプライマ一 1 1 VBおよび CTGTTAAATGGCAGTCTAGC (配列番 号 2 0 ) のヌクレオチド配列を含むプライマ一 10U を用いてサブタイ プ Bの検出を行い、
(c) 第一のプライマーとして、 GCAATAGAAAAATTCTCCTC (配列番 号 5 ) の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 を 含 む プ ラ イ マ ー 12A 、 ACAGTAGAAAAATTCCCCTC (配列番号 6 ) のヌクレオチド配列を含むブラ イマ一 12B、 CACAGTACAATGCACACATG (配列番号 8 ) のヌクレオチド配列 を含むプライマー 9AEおよび CACAGTACAATGTACACATG (配列番号 9 ) の ヌクレオチド配列を含むプライマー 9Bの混合物を用い、 第二のプライ マ一対として、 TTGTTTTATTAGGGAAGTGTTC (配列番号 2 9 ) のヌクレオ チド配列を含むプライマ一 1 1XCおよび CTGTTAAATGGTAGTCTAGC (配列番 号 2 4 ) のヌクレオチド配列を含むプライマ一10U を用いサブタイプ Cの検出を行い、
(d) 第一のプライマ一として、 GCAATAGAAAAATTCTCCTC (配列番
号 5 ) の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 を 含 む プ ラ イ マ ー 12A 、 ACAGTAGAAAAATTCCCCTC (配列番号 6 ) のヌクレオチド配列を含むプラ イマ一 12B、 CACAGTACAATGCACACATG (配列番号 8 ) のヌクレオチド配列 を含むプライマ一 9AEおよび CACAGTACAATGTACACATG (配列番号 9 ) の ヌクレオチド配列を含むプライマ一 9Bの混合物を用い、第二のプライ マ一対として、 CTCTACAATTAAAATGATGCATTG (配列番号 3 0 ) のヌクレ ォチド配列を含むプライマ一 1 1WEおよび CTGTTAAATGGCAGTCTAGC (配列 番号 2 0 ) のヌクレオチド配列を含むプライマ一 10U を用いてサブ夕 ィプ Cの検出を行うことにより、
サブ夕イブ A、 B、 Cおよび Eの鑑別を行うことができる。
あるいはまた、 第一のプライマ一対を用いて H I V— 1の env遺伝 子のヌクレオチド配列の一部を標的配列とする第一の増幅反応を行つ た後、 第二のプライマ一対を用いて前記標的配列の内部のヌクレオチ ド配列を標的配列とする第二の増幅反応を行い、 第二の増幅反応によ る核酸の増幅の有無によりサブタイプの検出を行う一連の操作を第一 のプライマ一対および第二のプライマー対を変えて少なくとも 1回繰 り返すことにより、 少なくとも 2つのサブタイプの鑑別を行ってもよ レ 。 例えば、 (a) 第一のプライマ一対として、 GCAATAGAAAAATTCTCCTC
(配列番号 5 ) のヌクレオチド配列を含むプライマ一 12A および CACAGTACAATGCACACATG (配列番号 8 ) のヌクレオチド配列を含むプラ イマ一 9AEを用い、第二のプライマ一対として、 CTCCTGAGGGGTTAGCAAAG
(配列番号 1 ) のヌクレオチド配列を含むプライマ一 1 1 QA および AAATGGCAGTCTAGCAGAAG (配列番号 4 ) のヌクレオチド配列を含むプラ イマ一 10を用いてサブタイプ Aの検出を行い、
(b)第一のプライマー対として、 ACAGTAGAAAAATTCCCCTC (配列番号 6 ) の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 を 含 む プ ラ イ マ 一 12B お よ び CACAGTACAATGTACACATG (配列番号 9 ) のヌクレオチド配列を含むプラ イマ一 9Bを用い、 第二のプライマー対として、 CTGTGCATTACAATTTCTGG
(配列番号 2 ) のヌクレオチド配列を含むプライマー 1 1 BB および
AAATGGCAGTCTAGCAGAAG (配列番号 4 ) のヌクレオチド配列を含むプラ イマ一 10を用いてサブタイプ Bの検出を行い、 また、
( c)第一のプライマー対として、 GCAATAGAAAAATTCCCCTC (配列番号 7 ) の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 を 含 む プ ラ イ マ ー 12E お よ び CACAGTACAATGCACACATG (配列番号 8 ) のヌクレオチド配列を含むブラ イマ一 9AEを用い、第二のプライマ一対として、 CTCCTGAGGGTGGTTGAAAG
(配列番号 3 ) のヌクレオチド配列を含むプライマー 1 1 QE および AAATGGCAGTCTAGCAGAAG (配列番号 4 ) のヌクレオチド配列を含むブラ イマ一 10を用いてサブタイプ Eの検出を行うことにより、 サブタイプ A、 Bおよび Eの鑑別を行うことができる。
本発明の方法は、 さらに、 H I V _ 1のゲノムのヌクレオチド配列 の一部であって、 ヌクレオチド配列がすべてのサブタイプの間で高度 に保存されている一部を標的配列とする核酸の増幅反応を行い、 核酸 の増幅の有無により H I V— 1の存在または不存在を確認する工程を 含んでもよい。 H I V— 1の存在または不存在を確認する工程は、 第 一のプライマ一対を用いて、 H I V— 1のゲノムのヌクレオチド配列 の一部であって、 ヌクレオチド配列がすべてのサブタイプの間で高度 に保存されている一部を標的配列とする核酸の増幅反応を行った後、 第二のプライマ一対を用いて、 前記標的配列の内部のヌクレオチド配 列を標的配列とする第二の増幅反応を行い、 核酸の増幅の有無により H I V - 1の存在または不存在を確認することからなるとよい。 ここ で、 第一のプライ マ一と して、 第一のプライ マ一と して、 GCAATAGAAAAATTCTCCTC (配列番号 5 ) のヌクレオチド配列を含むブラ イマ一 12A、 ACAGTAGAAAAATTCCCCTC (配列番号 6 ) のヌクレオチド配列 を含むプライマー 12B、 CACAGTACAATGCACACATG (配列番号 8 ) のヌクレ ォチド配列を含むプライマー 9AEおよび CACAGTACAATGTACACATG (配列 番号 9 ) のヌクレオチド配列を含むプライマー 9Bの混合物を用い、 第 二のプライマ一として、 AATTTCTGGGTCCCCTCCTG (配列番号 1 8 ) のヌ クレオチド配列を含むプライマ一 1 1 LB、 AATTTCTAGATCCCCTCCTG (配列
番号 2 5 ) のヌ ク レオチ ド配列を含むプライ マ一 11LAE、 AATTTCTAGGTCCCCTCCTG (配列番号 2 6 ) のヌクレオチド配列を含むプ ライマー 11LCおよび CTGTTAAATGGCAGTCTAGC (配列番号 2 0 ) のヌクレ ォチド配列を含むプライマー 10Uの混合物を用いることができる。 また、 本発明は、 H I V— 1の env遺伝子のヌクレオチド配列の一 部であって、 5'末端部および 3'末端部のうちの少なくとも片方のヌク レオチド配列がサブタイプにより異なる一部を標的配列とするプライ マー対を含む、 H I V— 1のサブタイプを決定するためのキットを提 供する。
以下、 本発明の実施態様を詳細に説明する。
H I V - 1感染が疑われている人、 H I V— 1感染が確認されてい る感染者もしくは患者、 または抗 H I V- 1治療を受けている患者な どの被験者から、 血液、 リンパ液、 髄液、 精液、 リンパ節などのサン プルを採取する。採取したサンプルから、 Pharmacia社の Ficoll- Paque 密度勾配遠心を用いて単核球を分離した後か、 あるいは直接 QIAGEN 社の QIAamp Blood Ki tを用いて DNAを抽出する。 あるいは、 血漿から は、 QIAGEN社の QIAamp Viral RNA Kit を用いて RNAを抽出する。 次 いで、 この DNAまたは RNAの濃度を 2 60 nmにおける吸光度から決 定する。
次に、 この核酸を P CR、 好ましくは、 nested PCRにかける。
ここでは、 nested PCRを利用する場合について説明する。 nested PCR とは、 一組のプライマー対 (第一のプライマー対) で増幅される標的 配列の内側に第二のプライマー対を設計し、 一回目の P CRを行った 後、 その反応生成物を希釈して新たな铸型として二回目の P C Rを行 うものである。 一回目の P C Rでは標的配列の他に、 望まれない配列 も増幅されることがある。 しかし、 一回目の P C Rで増幅された望ま れない断片中に第二のプライマー対の各プライマーがァニールする配 列が存在する確率は極めて低い。 従って、 このような 2回の P C Rを 行うことにより、 標的配列だけが選択的に増幅されるのである。
まず、 鑑別すべきサブタイプ (例えば、 サブタイプ A、 サブタイプ B、 サブタイプ E) にそれぞれ特異的なプライマ一対を用いて一回目 の P CR (第一の P CR) を行う。 あるいは、 サブタイプに特異的な プライマー対の代わりに、 どのサブタイプでも増幅することができる 共通なプライマー対を用いてもよい。
サブタイプ特異的なプライマ一対としては、 例えば、 111 ¥— 1の env遺伝子の C2領域の一部のヌクレオチド配列に相補的な配列を含む プライマ一 (プライマ一 4 ') と H I V— 1の env遺伝子の C3領域の 一部のサブタイプによって異なる (すなわち、 サブタイプ特異的であ る) ヌクレオチド配列に相補的な配列を含むプライマー (プライマー 3 ') とからなるプライマ一対を挙げることができる。 H I V— 1の env遺伝子の C2領域は図 1のようにサブタイプによりヌクレオチド配 列が異なるので、 この領域からヌクレオチド配列を選択して、 プライ マ一 4 ' を設計するとよい。 また、 H I V— 1の env遺伝子の C3領域 は図 2のようにサブタイプによる違いがあるので、 この領域からヌク レオチド配列を選択して、 プライマー 3 ' を設計するとよい。 一般に、 プライマーの長さは、 18〜30塩基対であるとよく、好ましくは 20〜25 塩基対である。 具体的には、 以下のプライマー対を用いることができ る。
サブタイプ Aの検出のための第一の P C R用プライマ一対とそのヌ クレオチド配列
• 9AE/12A
プライマ一 9AE: CACAGTACAATGCACACATG (配列番号 8 )
プライマー 12A : GCAATAGAAAAATTCTCCTC (配列番号 5 )
プライマー 9AEは、 HIV- 1(NL4- 3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 6943-6962 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ八、 E、 Fおよび Hに特異的なプライマ一である。
プライマー 12Aは、 HIV- 1 (NL4- 3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7369-7350 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ
プ八、 C、 E、 G、 H、 Iおよび Jに特異的なプライマ一である。 サブタイプ Bの検出のための第一の P C R用プライマ一対とそのヌ クレオチド配列
• 9B/12B
プライマ一 9B: CACAGTACAATGTACACATG (配列番号 9 )
プライマー ΠΒ: ACAGTAGAAAAATTCCCCTC (配列番号 6 )
プライマー 9Bは、 HIV-1 (NL4-3株)の全塩基配列の 5 '末端 (左端) から数えて、 6943- 6962 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ8、 C、 D、 E、 F、 G、 Hおよび Jに特異的なプライマ一である。 プライマー Bは、 HIV-1 (NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7369- 7350 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ8、 D、 E、 Fおよび Iに特異的なプライマ一である。
サブタイプ Eの検出のための第一の P C R用プライマ一対とそのヌ クレオチド配列
• 9AE/12E
プライマー 9AE: CACAGTACAATGCACACATG (配列番号 8 )
プライマ一 12E: GCAATAGAAAAATTCCCCTC (配列番号 7 )
プライマー 12Eは、 HIV- 1 (NL4- 3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 6943- 6962 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Eにのみ特異的なプライマーである。
サブタイプ Cの検出のための第一の P C R用プライマー対とそのヌ クレオチド配列
• 9B/12A
プライマー 9B: CACAGTACAATGTACACATG (配列番号 9 )
プライマー 12A : GCAATAGAAAAATTCTCCTC (配列番号 5 )
サブタイプ Dの検出のための第一の P C R用プライマー対とそのヌ クレオチド配列
• 9B/12B
プライマー 9B: CACAGTACAATGTACACATG (配列番号 9 )
プライマ一 1 2B : ACAGTAGAAAAATTCCCCTC (配列番号 6 ) サブタイプ Fの検出のための第一の P C R用プライマ一対とそのヌ クレオチド配列
• 9B/1 2A
プライマ一 9B: CACAGTACAATGTACACATG (配列番号 9 )
プライマー 1 2A : GCAATAGAAAAATTCTCCTC (配列番号 5 )
サブタイプ Gの検出のための第一の P C R用プライマー対とそのヌ クレオチド配列
• 9B/1 2A
プライマー 9B : CACAGTACAATGTACACATG (配列番号 9 )
プライマー 1 2A: GCAATAGAAAAATTCTCCTC (配列番号 5 )
サブタイプ Hの検出のための第一の P C R用プライマ一対とそのヌ クレオチド配列
• 9B/1 2A
プライマー 9B: CACAGTACAATGTACACATG (配列番号 9 )
プライマー 1 2A: GCAATAGAAAAATTCTCCTC (配列番号 5 )
あるいは、 いくつかのサブタイプについて増幅産物を与えることが できるプライマーの混合物をプライマ一に用いて、 第一の P C Rを行 つてもよい。 この目的のためのプライマ一としては、 プライマー 9AE、 プライマ一 9B、プライマ一 1 2Aおよびプライマ一 1 2Bの混合物を挙げる ことができる。
この P C R産物の 1/1000〜1 /5量 (例えば、 1ノ 5 0量) を用いて 各サブタイプに特異的なもう一組のプライマ一対を用いて二回目の P C R (第二の P C R ) を行う。 この時、 第一の P C Rで増幅される標的 配列の内側に第二の P C R用のプライマ一対を設計する。 例えば、 第 二の P C R用のサブタイプに特異的なプライマー対を構成する少なく とも一方のプライマーは、 H I V— 1の env遺伝子の C2領域の一部の サブタイプ特異的なヌクレオチド配列に相補的な配列を含むプライマ 一 (プライマー 1 ) を挙げることができる。 H I V— 1の env遺伝子の
C2 領域は図 1のようにサブタイプによりヌクレオチド配列に相違が あるので、 この領域からヌクレオチド配列を選択して、 プライマーを 設計するとよい。 H I V— 1の種々のサブタイプの env 遺伝子の V3 領域の 3'隣接領域 (C3領域) のヌクレオチド配列を図 2に示すが、 サ ブタイプによりヌクレオチド配列に相違があるので適当な配列を選択 して、 プライマーを設計することができる。 サブ夕イブ特異的プライ マーの設計にあたっては、 系統樹解析法を用い、 あるサブタイプのヌ クレオチド配列が他のサブタイプの対応するヌクレオチド配列と最も 遺伝的距離が大きいものを選び出す。 例えば、 もう一方のプライマー としては、 H I V— 1の env遺伝子の C3領域の一部のヌクレオチド配 列に相補的な配列を含むプライマー (プライマー 2 ) を挙げることが できる。 具体的には、 以下のヌクレオチド配列を含むプライマ一対を 用いることができる。
サブタイプ Aの検出のための第二の P C R用プライマー対とそのヌ クレオチド配列
• 10/1 1 QA
プライマー 10: AAATGGCAGTCTAGCAGAAG (配列番号 4 )
プライマ一 1 1 QA : CTCCTGAGGGGTTAGCAAAG (配列番号 1 )
プライマー 10は、 HIV- 1 (NL4- 3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 6997-7016 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ づ B、 Dおよび Eに特異的なプライマ一である。
プライマー 1 1 QAは、 HIV- 1 (NL4- 3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7313-7294 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Aにのみ特異的なプライマ一である。
• 10U/1 1 QA1
プライマ一 10U : CTGTTAAATGGCAGTCTAGC (配列番号 2 0 )
プライマー 1 1 QA1 : CTCCTGAGGAGTTAGCAAAG (配列番号 2 7 )
プライマ一 10Uは、 HIV- 1 (NL4- 3株)の全塩基配列の 5 '末端 (左端) から数えて、 6992-701 1 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ
プ八、 B、 D、 Eおよび Jに特異的なプライマーである。
プライマ一 11QA1は、 HIV- l(NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端(左端) から数えて、 7313-7294 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Aにのみ特異的なプライマーである。
サブタイプ Bの検出のための第二の P C R用プライマー対とそのヌ クレオチド配列
• 10/11BB
プライマー 10: AAATGGCAGTCTAGCAGAAG (配列番号 4)
プライマ一 11BB : CTGTGCATTACAATTTCTGG (配列番号 2 )
プライマー 11BBは、 HIV- 1 (NL4- 3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7338-7319 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Bにのみ特異的なプライマ一である。
• 10U/11VB
プライマ一 10U : CTGTTAAATGGCAGTCTAGC (配列番号 2 0)
プライマ一 11VB: CACAATTAAAACTGTGCATTAC (配列番号 2 8)
プライマ一 11VBは、 HIV- 1 (NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7349-7328 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Bにのみ特異的なプライマ一である。
サブタイプ Eの検出のための第二の P C R用プライマー対とそのヌ クレオチド配列
• 10/11QE
プライマー 10: AAATGGCAGTCTAGCAGAAG (配列番号 4)
プライマ一 11QE: CTCCTGAGGGTGGTTGAAAG (配列番号 3 )
プライマ一 11QEは、 HIV-1 (NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7313-7294 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Eにのみ特異的なプライマーである。
• 10U/11WE
プライマ一 10U : CTGTTAAATGGCAGTCTAGC (配列番号 2 0)
プライマー 11WE: CTCTACAATTAAAATGATGCATTG (配列番号 3 0)
プライマ一 11WEは、 HIV-1 (NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7352- 7339 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Eにのみ特異的なプライマ一である。
サブタイプ Cの検出のための第二の P C R用プライマ一対とそのヌ クレオチド配列
• 10C/11RC
プライマー 10C: AAATGGTAGCCTAGCAGAAG (配列番号 1 0 )
プライマー 11RC: CTCCTGAGGATGGTGCAAATTT (配列番号 1 3)
プライマ一 10Cは、 HIV- NL4- 3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 6997- 7016 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Cおよび Fに特異的なプライマ一である。
プライマ一 11RCは、 HIV-1(NL4- 3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7313-7292 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Cにのみ特異的なプライマーである。 プライマ一 10U : CTGTTAAATGGCAGTCTAGC (配列番号 2 0)
プライマー 11XC: TTGTTTTATTAGGGAAGTGTTC (配列番号 2 9)
プライマー 11XCは、 HIV-1WL4- 3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7289-7268 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Cに特異的なプライマ一である。
サブタイプ Dの検出のための第二の P C R用プライマー対とそのヌ クレオチド配列
• 10/11RD
プライマ一 10: AAATGGCAGTCTAGCAGAAG (配列番号 4)
プライマ一 11RD: CTCCTGAGGATGGTTTAAAAAT (配列番号 1 4)
プライマ一 11RDは、 HIV-1(NL4- 3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7313-7292 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Dにのみ特異的なプライマ一である。
サブタイプ Fの検出のための第二の P C R用プライマ一対とそのヌ
クレオチド配列
- 10C/11RF
プライマー 10C: AAATGGTAGCCTAGCAGAAG (配列番号 1 0)
プライマー 11RF: CTCCTGAGGATGAGTTAAATTT (配列番号 1 5)
プライマー 11RFは、 HIV-1 (NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7313-7292 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Fにのみ特異的なプライマーである。
サブタイプ Gの検出のための第二の P C R用プライマ一対とそのヌ クレオチド配列
• 10G/11SG
プライマ一 10G: GAATGGCAGTTTAGCAGAAG (配列番号 1 1 )
プライマー 11SG: TCCTGCAGATGAGTTAAAGG (配列番号 1 6)
プライマー 10Gは、 HIV-1 (NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 6997-7016 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Gにのみ特異的なプライマーである。
プライマー 11SGは、 HIV- 1 (NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7312-7293 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Gにのみ特異的なプライマ一である。
サブタイプ Hの検出のための第二の P C R用プライマー対とそのヌ クレオチド配列
• 10H/11SH
プライマー 10H: GTCAAATGGCAGTTTAGCAG (配列番号 1 2)
プライマ一 11SH: TCCTGAGGATGGTTTAAAGG (配列番号 1 7 )
プライマー 10Hは、 HIV-1 (NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 6994-7013 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Hにのみ特異的なプライマ一である。
プライマ一 11SHは、 HIV- 1 (NL4- 3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7312- 7293 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Hにのみ特異的なプライマーである。
あるいは、 どのサブタイプでも増幅できるようにするために、 いく つかのサブタイプについて増幅産物を与えることができるプライマ一 の混合物を用いて、 第二の P C Rを行ってもよい。 この目的のための プライマ一としては、 以下のプライマ一の混合物を挙げることができ る。
プライマ一 10U: AAATGGCAGTCTAGCAGAAG (配列番号 4)
プライマー 11LB: AATTTCTGGGTCCCCTCCTG (配列番号 1 8)
プライマ一 11LAE: AATTTCTAGATCCCCTCCTG (配列番号 2 5)
プライマ一 11LC: AATTTCTAGGTCCCCTCCTG (配列番号 2 6)
プライマー 11LBは、 HIV- NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端 (左側) から数えて、 7327-7308 番目の配列に相補的であり、 サブタイプ B、
D、 F、 Gおよび Iに特異的なプライマーである。
プライマ一 11LAEは、 HIV-l(NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端(左側) から数えて、 7327-7308 番目の配列に相補的であり、 サブタイプ A、
E、 F、 G、 Iおよび Jに特異的なプライマーである。
プライマー 11LCは、 HIV- NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端 (左側) から数えて、 7327- 7308 番目の配列に相補的であり、 サブタイプ(:、
F、 G、 H、 Iおよび Jに特異的なプライマーである。
その他に、 以下のようなプライマ一を利用することができる。
プライマー 10KC : CTCAACTACTGTTAAATGGTAG (配列番号 2 1 )
プライマー 10KCは、 HIV- 1 (NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 6984-7005 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Cにのみ特異的なプライマーである。
プライマー 10UF: CTGTTAAATGGCAGCCTAGC (配列番号 2 2) プライマー 10UFは、 HIV- l(NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 6992-7011 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ八、 E、 F、 Hおよび Iに特異的なプライマ一である。
プライマー 10UG : CTGTTAAATGGCAGTTTAGC (配列番号 2 3)
プライマー 10UGは、 HIV- 1 (NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端)
から数えて、 6992-7011 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ八、 E、 G、 Iおよび Jに特異的なプライマーである。
プライマ一 10UC: CTGTTAAATGGTAGTCTAGC (配列番号 24)
プライマー 10UCは、 HIV-1 (NL4- 3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 6992-7011 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Cおよび Eに特異的なプライマーである。
プライマ一 11LE: AATTTCTAGATCTCCTCCTG (配列番号 1 9)
プライマ一 11LEは、 HIV- 1 (NL4- 3株)の全塩基配列の 5'末端 (左側) から数えて、 7327- 7308 番目の配列に相補的であり、 サブタイプ E、 F、 G、 Hおよび Jに特異的なプライマーである。
プライマー 11LC: AATTTCTAGGTCCCCTCCTG (配列番号 2 6)
プライマー 11LCは、 HIV-l(NL4-3株)の全塩基配列の 5,末端 (左端) から数えて、 7327-7308 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ〇、 F、 G、 H、 Iおよび Jに特異的なプライマーである。
プライマ一 11TC: TTCTCCTCTACAATTAAAGC (配列番号 3 1 )
プライマー 11TCは、 HIV-1(NL4- 3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7357-7338 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Cにのみ特異的なプライマ一である。
プライマー 11RC1 : TTATTGTTTTATTAGGGAAGTG (配列番号 3 2)
プライマ一 11RC1は、 HIV- 1 (NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端(左端) から数えて、 7292-7271 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Cにのみ特異的なプライマーである。
プライマ一 11SE: TGCATTGTAATTTCTAGATCTC (配列番号 3 3)
プライマー 11SEは、 HIV-1 (NL4-3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7333-7314 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ プ Eにのみ特異的なプライマ一である。
プライマ一 11BE: TGATGCATTGTAATTTCTAG (配列番号 34)
プライマー 11BEは、 HIV- 1 (NL4- 3株)の全塩基配列の 5'末端 (左端) から数えて、 7338- 7319 番目の配列に相補的な配列であり、 サブタイ
プ Eにのみ特異的なプライマーである。
P C Rの手順および反応条件は、 Bruisten S. et al. , AIDS Res Hum Retroviruses 1993, 9 : 259- 265に従えばよいが、 ホットスター卜法を 行うことが望ましい。 ホットスタート法とは、 P CR反応液がホット プレートに置かれて、 温度が高温 (通常 90°C以上) になって初めて働 き始める P C R法をいう。
ところで、 上記のような方法で H I V- 1のサブタイプ決定を行つ た際に、 どのサブタイプも検出されないことがある。その原因として、 H I V- 1 DNA濃度が検出限界以下であつたか、 あるいはプライ マー結合部分に多数の変異が存在していた可能性が考えられる。
前者の可能性に対しては、 一般に、 H I V— 1は細胞中よりも血漿 中の方が濃度が高いので、 血漿から RNAを抽出し、 逆転写酵素を用 いて c DN Aに変換してから上記の方法を行う。
後者の可能性に対しては、 本法によるサブタイプ判定は保留とし、 H I V- 1の他の遺伝子領域を P C Rで増幅してヌクレオチド配列を 決定し、従来の方法でサブタイプを決定する。 (注:感染の有無は抗体 検査によって行う。 本法は H I V - 1感染を判定するものではない。)
P CRの反応生成物をァガロースゲル電気泳動により分離し、 ェチ ジゥムブロミ ド染色で検出する。 試料 DN A中の H I V— 1のサブ夕 イブに一致したプライマーを用いたときは明瞭なバンドが観測される が、 一致しないときは微かなバンドが観測されるかあるいは全くバン ドが観測されない。これによつて H I V- 1のサブタイプを決定する。 本発明の H I V— 1のサブタイプ決定法は、 さらに、 H I V— 1の ゲノムのヌクレオチド配列の一部であって、 ヌクレオチド配列がすべ てのサブタイプの間で高度に保存されている一部を標的配列とする核 酸の増幅反応を行い、 核酸の増幅の有無により H I V— 1の存在また は不存在を確認する工程を含んでもよい。 H I V— 1の存在または不 存在を確認する工程は、 第一の P C R用のプライマーの混合物 (例え ば、 9 AE/9B/12A/12B) を用いて、 H I V— 1のゲノムのヌクレオチド
配列の一部であって、 ヌクレオチド配列がすべてのサブタイプの間で 高度に保存されている一部を標的配列とする核酸の増幅反応を行った 後、 第二の P C R 用 の プ ラ イ マー の混合物 (例 え ば、 10U/1 1 LB/1 1LAE/1 1LC) を用いて、前記標的配列の内部のヌクレオチド 配列を標的配列とする第二の増幅反応を行い、 核酸の増幅の有無によ り H I V— 1の存在または不存在を確認することからなるとよい。 本発明は、 H I V— 1の env遺伝子のヌクレオチド配列の一部であ つて、 5 '末端部および 3'末端部のうちの少なくとも片方のヌクレオチ ド配列がサブタイプにより異なる一部を標的配列とするプライマー対 を含む、 H I V— 1のサブタイプを決定するためのキッ卜も包含する。 プライマー対としては、 上述したような、 第二の P C R用のプライマ 一対(i nner pr imers) ,あるいは第一の P C R用のプライマ一対(ou t er pr imer s)と第二の P C R用のプライマー対との組み合わせを挙げるこ とができる。 本発明のキットは、 その他にも、 dNTP混合物、 反応用バ ッファー、 D N Aポリメラーゼ、第一の P C R用のサブタイプ共通プ ライマ一対 (例えば、 9B/12B)、 第二の P C R用のサブタイプ共通ブラ イマ一対 (例えば、 10U/1 1VB) などを含むとよい。 また、 プライマ一 と検体 HIV-1 DNAの塩基対の不一致による影響を減じるために、 反応 バッファー中のマグネシウムイオン濃度を通常の 1. 5 mMを 4 mM程度 まで高めることが望ましい。
この診断キットにおいて、 キットを構成する要素は、 各々あるいは 組み合わせてあるいはひとまとめにして、 バイアル、 チューブなどの ような容器に包含されていてもよく、 さらに、 それらの容器はひとま とめにして納めるための区画化された担持手段に納められていてもよ い。
発明を実施するための最良の形態 以下に、 本発明を実施例により具体的に説明するが、 本発明の範囲 はこれらに何ら限定されることはない。
〔実施例 1〕
対象と方法
1 ) サブタイプ決定法の検討のためのサブタイプ別標準検体
env 遺伝子のシ一ゲンシングと系統樹解析により、 サブタイプ Aと 決定された H I V感染者 3名、 サブタイプ Bと決定された H I V感染 者 8名、 およびサブタイプ Eと決定された H I V感染者 3名の血液よ り、 DNAを抽出し、 これを標準検体として用いた。
2) サブタイプを決定した対象
東京都内の病院に通院または入院している 8名の H I V感染者を対 象として H I V— 1のサブタイプを決定した。
3) H I V患者の血液からの DN Aの調製
上記の H I V感染者から、 10 ml の末梢血を採取した。 抗凝固剤と してクェン酸ナ ト リ ウムを用いた。 末梢血から Ficol卜 Paque (Pharmacia 社) 密度勾配遠心によって単核球を分離した後、 QIAa即 Blood Kit (QIAGEN社) を用いて DNAを調製した。 DNAは純水あるいは ImMEDTAを含むバッファーに溶解し、 使用直前まで- 20°Cで保存した。 この DNAの 0.5 gを用いて、 P CRを行った。
4) P C Rによるサブタイプ A、 Bおよび Eの検出
P C Rに使用したプライマーのヌクレオチド配列を図 3に示す。 サブタイプ Aの特異的検出のために、 一回目の P CR用のプライマ 一として、 9AEと 12Aを用い、 二回目の P CR用のプライマ一として、 10と 11QAを用いて、 nested PCRを行った。 サブタイプ Bの特異的検 出のためには、 一回目の P C R用のプライマーとして、 9Bと 12Bを用 レ 、二回目の P C R用のプライマ一として、 10と 11BBを用いて、 nested PCRを行った。 サブタイプ Eの特異的検出のためには、 一回目の P C R用のプライマ一として、 9AE と 12E を用い、 二回目の P CR用のプ ライマーとして、 10と 11 QEを用いて、 nested PCRを行った (図 3)。
P C Rは、 H I V感染者から調製した DNAのうちの 0.5 gを試料 として用い、 100M Lの反応液 (10 mM Tris- HC1 pH 8.3, 50 mM KC1, 4 mM MgCl2, 0.2mM dNTP, 1.0 M のプライマー, 2.5 単位の Taq
o lymerase) で、 9 4 1 5秒、 5 6 °C 3 0秒、 7 2 °C 1分のサイ クルを 30回行った。二回目の P C Rは、一回目の P C Rの反応液 2 n Lを試料として用い、 同じ条件で 25サイクル行った。 ただし、 5 6で 3 0秒の代わりに 60°C 3 0秒とした。
P C R産物 (サブタイプ Aと Eは 317 bp、 サブタイプ Bは 342 bp) の検出は、 2 %ァガロースゲルの電気泳動による分離後、 ェチジゥム プロミド染色を行うことにより行った。
結果
1 ) サブタイプ別標準検体の P C Rによるサブタイプ決定の検討 ウィルスゲノムのシークェンシングによってサブタイプが決定され ている検体については、 以下のような結果となった。 サブタイプ A検 出用プライマーを用いた P C Rではサブタイプ Aの検体のみ陽性で、 サブタイプ Bおよび Eの検体はすべて陰性であった。 また、 サブタイ プ B検出用プライマ一を用いた P C Rではサブタイプ Bの検体のみ陽 性で、 サブタイプ Aおよび Eの検体はすべて陰性であった。 また、 サ ブタイプ E検出用プライマーを用いた P C Rではサブタイプ Eの検体 のみ陽性で、 サブタイプ Aおよび Bの検体はすべて陰性であった (図 4 )。
2 ) P C Rによる H I V感染者のサブタイプ決定
東京都内の病院に通院または入院している 8名の H I V感染者につ いて H I V - 1のサブタイプを決定した結果を表 1に示す。
表 1 . サブ夕ィプ未知の 8検体に対するサブ夕ィプ決定法の結果
PPPPPPP P
症2222221 1例 サブタイプ A用 サブタイプ B用 サブ夕イブ E用
43520 891 プライマー対 ブライマー対 プライマー対
t t
+
+
+は H I V— 1特異的 D NAバンドが検出されたことを示し、 一は検出 されなかったことを示す。 症例 2 2の? 9は、 予想より短いバンドが検出 されたことを示す。
この結果から、 症例 P18、 P19、 P20、 P24、 P25はサブタイプ Bに感 染し、症例 P21 と Π3はサブタイプ Εに感染していると診断される。 症例 Ρ22では、 サブタイプ Β用のプライマ一対を用いたときのみ DN Αバンドが検出されたが、 その長さが予想よりも短かったので判定保 留とした。 以上の診断結果が正しいことを確認するために、 増幅され た DN Aをシ一ゲンシングし、 系統樹解析を行ったが、 その結果は表 1の結果と一致していた。 判定保留の症例 ΡΠはサブタイプ Bであつ た。
1 ) と 2) の結果を合わせると、 本法は 2 2症例中 2 1症例のサブ タイプを正しく診断できた。 残りの 1症例は判定保留であった。 すな わち、本法は簡便で正確なサブタイプ決定法であることが実証された。 本発明の方法によれば、 1検体あたり約 2, 000円程度の費用で、 H I V— 1のサブタイプを決定することができる。 また、 サブタイプ決 定に必要な時間は、 8検体を一度に极うとして、 DNA分離に 2時間、 P CRに 6時間、 電気泳動に 1時間程度である。
〔実施例 2〕
対象と方法
1 ) サブタイプ決定法の検定のためのサブタイプ別標準検体
実施例 2で対象とした、 サブタイプ Aの H I V - 1の感染者 3名、 サブタイプ Bの H I V— 1の感染者 3名、 およびサブタイプ Eの H I V- 1の感染者 3名に、 env遺伝子のシ一ケンシングと系統樹解析に よりサブタイプ Cと決定された H I V- 1の感染者 2名を加えた合計 1 1名の血液より DNAを抽出し、 これを標準検体として用いた。
2) サブタイプを決定した対象
東京都内の病院に通院または入院している 3 2名の H I V感染者を 対象として H I V- 1のサブタイプを決定した。
3) H I V患者の血液からの DN Aの調製
上記の H I V感染者から、 1 0m lの末梢血を採取した。 抗凝固剤 としてクェン酸ナトリ ウムを用いた。 末梢血から FicoU- Paque
(Pharmaci 社) 密度勾配遠心によって単核球を分離した後、 QIAamp Blood Kit (QIAGE 社) を用いて D N Aを調製した。 DNAは純水あ るいは 1 mMEDTAを含むバッファーに溶解し、 使用直前まで - で保 存した。 この D N Aの 0.5 gを用いて、 P CRを行った。
4) P C Rによるサブタイプ A, B, Cおよび Eの検出
P C Rに使用したプライマーのヌクレオチド配列を図 5に示す。 一回目の P C R用のプライマーとして、 9AE、 9B、 12Aおよび 12Bの 混合物を用いた。 二回目の P C R用のプライマ一として、 サブタイプ Aの特異的検出のためには 10Uと 11QA1 を用い、 サブタイプ Bの特異 的検出のためには 10Uと 11VBを用い、サブタイプ Cの特異的検出のた めには 10Uと 11XCを用い、 サブタイプ Eの特異的検出のためには 10U と 11WEを用いて nested PCRを行った。 サブタイプに関係なく H I V -1 の DN Aを増幅するためには、 10U、 11LB、 11LAEおよび 11LCの混 合物を用いて nested PCRを行った (図 5)。
P C Rは、 H I V感染者から調製した DNAのうちの 0.5/z gを試 料として用い、 100 Lの反応液 (10 mM Tris- HC1 pH 8.3, 50 mM KC1, 4 mM MgCl2, 0.2mM dNTP, 1.0 u M プライマ一, 2.5 単位の Taq polymerase) で、 94°C15秒、 56°C30秒、 72°C 1分のサイクルを 30回 行った。 二回目の P C Rは、 一回目の P C Rの反応液 2 L を試料と して用い、 同じ条件で 25サイクル行った。 ただし、 56°C30秒の代わ りに 60°C30秒とした。
P C R産物 (サブタイプ Aは 322 bp、 サブタイプ Bは 358 bp、 サブ タイプ Cは 298 bp、 サブタイプ Eは 361 bp) の検出は、 ^ァガロース ゲルの電気泳動による分離後、 ェチジゥムブロミド染色を行うことに より行った。
結果
1 ) サブタイプ別標準検体の P C Rによるサブタイプの検討
ウィルスゲノムのシーゲンシングによってサブタイプが決定されて いる検体については、 以下のような結果となった。 サブタイプ A検出
用のプライマーを用いた P C Rではサブタイプ Aの検体のみ陽性で、 サブタイプ B、 Cおよび Eの検体はすべて陰性であった。 また、 サブ タイプ B検出用のプライマ一を用いた P C Rではサブタイプ Bの検体 のみ陽性で、サブタイプ A、 Cおよび Eの検体はすべて陰性であった。 また、 サブタイプ C検出用のプライマーを用いた P C Rではサブタイ プ Cの検体のみ陽性で、 サブタイプ A、 Bおよび Eの検体はすべて陰 性であった。 また、 サブタイプ E検出用のプライマーを用いた P C R ではサブタイプ Eの検体のみ陽性で、 サブタイプ A、 Bおよび Cの検 体はすべて陰性であった (図 6 )。 また、 サブタイプに関係なく H I V - 1の D N Aを増幅するためのプライマーを用いた P C Rではすベて の検体が陽性であった (図 6 )。
2 ) P C Rによる H I V感染者のサブタイプ決定。
東京都内の病院に通院または入院している 3 2名の H I V感染者を 対象として H I V - 1のサブタイプを決定した。 内訳は、 1 1例のサ ブタイプ別標準検体を合わせると、 サブタイプ Aが 3例、 サブタイプ Bが 3 0例、 サブタイプ Cが 2例、 サブタイプ Eが 8例であった。 以上の診断結果が正しいことを確認するために、 P C Rによってサ ブタイプが決定された H I V感染者合計 4 3名のうちの 2 1名につい て、 増幅された D N Aをシーケンシングし、 系統樹解析を行った結果 を図 7に示す。 その結果、 これらの H I V— 1について、 P C Rによ つて決定されたサブタイプと系統樹分析によって決定されたサブタイ プは完全に一致していた。
実施例 2が実施例 1と方法において大きく異なる点は、 一回目の P C Rではプライマーを共通にし、 二回目の P C Rでサブタイプ特異的 プライマ一を用いたことである。 その結果、 P C Rの反応数を 8分の 5に軽減することができた。 実施例 1では判定保留例が 1例あったこ とを考え合わせると、 実施例 2の方法によって、 診断がより正確にな るとともに、 一層簡便なものにすることができた。
3 ) 遺伝型による薬剤耐性検査に与えるサブタイプの影響
遺伝型による薬剤耐性検査はサブタイプ Bのデータをもとに行われ ている。 サブタイプ B以外の H I V— 1の薬剤耐性をサブタイプ Bの データで判定できるかどうかを調べるために、 サブタイプ B以外の H I V— 1に感染し、 H A A R T療法を受けている 4名の感染者につい て、 H A A R T療法開始前後における H I V - 1のプロテア一ゼのァ ミノ酸配列を決定した。 図 8にはプロテアーゼ阻害剤に対する耐性と 関係があるアミノ酸のみを示す。 サブタイプ Eに感染した症例 C 3の 場合、 H A A R T療法開始後、 アミノ酸番号 1 0が L (ロイシン) か ら F (フエ二ルァラニン) に、 またアミノ酸番号 2 0が K (リシン) が T (スレオニン) に変異している。 これらはサブタイプ Bにおいて 薬剤耐性を示すアミノ酸変異として認められている。 しかし、 4名の 患者すべてで、 アミノ酸番号 3 6が H A A R T療法開始前から I (ィ ソロイシン) となっている。 サブタイプ Bのデ一夕では、 アミノ酸番 号 3 6が Iの H I V— 1は薬剤耐性であると判定される。 しかし、 H I V - 1が薬剤投与前から薬剤耐性を獲得していたとは考えにくい。 したがって、 この変異はサブタイプ B以外の H I V— 1では薬剤耐性 とは関係ないと考えた方が自然である。 この結果から、 遺伝型によつ て薬剤耐性を正しく判定するためには、 サブタイプを事前に診断する ことが重要であると考えられる。
4 ) サブタイプと性行動の関係
面接によって性的嗜好が推定できた H I V感染者 2 2名について、 サブタイプと性的行動との関係を図 9にまとめた。 He t erosexual とは 異性愛者、 M S Mとは男性同性愛者のことである。 異性愛者ではサブ タイプ Bと Eが同数であるのに対して、 男性同性愛者ではサブタイプ Bが圧倒的に多い。 これは、 東南アジア由来の H I Vが異性愛者の中 に浸透しているが、 男性同性愛者の中にはあまり浸透していないこと を示唆していると考えられる。
〔実施例 3〕
対象と方法
1 ) ウェスタンプロット法陰性、 PA法陽性の血清検体
東京都内の病院における血液検査で、 ウエスタンブロット法では H
1 V— 1陰性であつたが、 P A法では H I V- 1陽性であった 1 5件 の血清検体を対象とした。
2 ) 血漿からの RNAからの DNAの調製
上記の血清検体 200 Lから RNAeasy Kit (QIAGEN社) を用いて RNAを調製した。 RNAは純水に溶解し、使用直前まで- 20°Cで保存 した。
3) P C Rによる H I V— 1の検出
血清 2 0 L分に相当する RNAを試料とし、プライマー 12Aと 12B の混合物を用い、 2 0 Lの反応液 (10mMTris-HCl H 8.3, 50 mM KC1, 2.5 mM MgCl2, 1 mM dNTP, 5 iMプライマー, 100単位の逆転写酵素) で、 42°C30分反応させ c DNAを合成した。 この c DNAを試料とし、 サブタイプに関係なく H I V— 1の DN Aを増幅できる nested PCR を行った。 一回目の P C R用のプライマ一として、 9AE、 9B、 12Aおよ び 12Bの混合物を用いた。二回目の P C R用のプライマーとして、 10U、 11LB、 11LAEおよび 11LCの混合物を用いた。
一回目の P C Rは、 100 /x Lの反応液 (10 mM Tris- HCし H8.3, 50 mM KC1, 4 mM MgCl2, 0.2mM dNTP, 1.0 xM プライマー, 2.5 単位の Taq polymerase) で、 94°C15 秒、 56°C30 秒、 72°C 1分のサイクルを 30回行った。 二回目の P C Rは、 一回目の P C Rの反応液 2 Lを試 料として用い、 同じ条件で 25サイクル行った。 ただし、 56°C30秒の 代わりに 60°C30秒とした。
P C R産物 (サブタイプ Aは 322 bp、 サブタイプ Bは 358 bp、 サブ タイプ Cは 298 bp、 サブタイプ Eは 361 bp) の検出は、 ^ァガロース ゲルの電気泳動による分離後、 ェチジゥムブロミド染色を行うことに より行った。
結果
ウェスタンブロット法では H I V- 1陰性であるが、 P A法では H
I V - 1陽性であった 1 5件の血清検体いずれからも P C Rによって H I V - 1が検出されなかった(図 1 0 )。今回用いた P C Rはすべて のサブタイプの H I V— 1が検出できるように設計されたもので、 少 なくとも、 サブタイプ A、 B、 Cおよび Eの H I V— 1は検出できる ことが実証されている (図 6 )。 したがって、 今回検査した血清検体の ウエスタンブロット法と P A法の結果が一致しなかったのは、 サブ夕 イブの問題ではなく、 P A法による擬陽性の結果である可能性が高い と考えられる。
このように、 サブタイプに関係なく H I V— 1が検出できる P C R は、 H I V _ 1感染の確定診断として有効であると考えられる。 本発明により、 H I V - 1のサブタイプを決定する簡便な方法が提 供された。
また、 H I V— 1のサブタイプを決定するのに有効な手段も提供さ れた。
配列番号 1は、 プライマー 1 1 QAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号 2は、 プライマー 1 1 BBのヌクレオチド配列を示す。
配列番号 3は、 プライマー 1 1 QEのヌクレオチド配列を示す。
配列番号 4は、 プライマー 10のヌクレオチド配列を示す。
配列番号 5は、 プライマー 12Aのヌクレオチド配列を示す。
配列番号 6は、 プライマー 12Bのヌクレオチド配列を示す。
配列番号 7は、 プライマ一 12Eのヌクレオチド配列を示す。
配列番号 8は、 プライマー 9AEのヌクレオチド配列を示す。
配列番号 9は、 プライマ一 9Bのヌクレオチド配列を示す。
配列番号 1 0は、 プライマ一 10Cのヌクレオチド配列を示す。
配列番号 1 1は、 プライマ一 10Gのヌクレオチド配列を示す。
配列番号 1 2は、 プライマ一 10Hのヌクレオチド配列を示す。
配列番号 1 3は、 プライマー 1 1RCのヌクレオチド配列を示す。
配列番号 1 4は、 プライマー 1 1 RDのヌクレオチド配列を示す。
配列番号 1 5は、 プライマー 1 1 RFのヌクレオチド配列を示す。
配列番号 1 6は、 プライマー 11SGのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 1 7は、 プライマ一 11SHのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 1 8は、 プライマー 11LBのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 1 9は、 プライマ一 11LEのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 2 0は、 プライマー 10Uのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 2 1は、 プライマ一 10KCのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 2 2は、 プライマ一 10UFのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 2 3は、 プライマ一 10UGのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 2 4は、 プライマ一 10UCのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 2 5は、 プライマ一 11LAEのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 2 6は、 プライマ一 11LCのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 2 7は、 プライマ一 11QA1 のヌクレオチド配列を示す。 配列番号 2 8は、 プライマ一 11VBのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 2 9は、 プライマ一 11XCのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 3 0は、 プライマ一 11WEのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 3 1は、 プライマー 11TCのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 3 2は、 プライマ一 11RC1のヌクレオチド配列を示す。 配列番号 3 3は、 プライマ一 11SEのヌクレオチド配列を示す。 配列番号 3 4は、 プライマ一 11BEのヌクレオチド配列を示す。