明細書 血管新生阻害剤 技術分野
本発明は、 ヒト由来結合組織増殖因子 (CTGF) またはその一部に反応性を有す る抗体または該抗体の一部を含んでなり、 血管内皮細胞の増殖もしくは遊走また は血管の新生を抑制または阻害するための医薬組成物、 並びに該血管内皮細胞の 増殖もしくは遊走または血管の新生に起因する疾患症状を抑制または治療するた めの医薬組成物に関する。 背景技術
組織傷害における組織の再生は、 傷害部位に移入したマクロファージ等の貪食 細胞等による不用の組織片ゃ細胞片あるいは細菌等の除去、 血管系の復元、 並び にそれに続く新しい組織との置換を経て行われる。 この組織の再生、 修復の過程 においては、 該再生 ·修復の過程で出現するマクロファージゃ好中球が産生する トランスフォーミング増殖因子/? (Transforming Growth Factor/? (TGF- ? )) 力 s 最初の調節因子として働くことが明らかとなってきている。
TGF- ?の機能は多彩であり、間葉細胞の増殖誘導、血管内皮細胞及び上皮細胞の 増殖抑制だけでなく、結合組織細胞からの細胞外マトリックス (Extracellular M atrix (ECM)) の産生を調節する機能を有することが知られている。
前記 TGF- 5で刺激し増殖誘導が見られる間葉細胞の培養上清においては、血小板 由来増殖因子 (Platelet-derived Growth Factor (PDGF )) や結合組織増殖因子
(Connective Tissue Growth Factor (CTGF ); Hcs24とも呼ぶ) の産生の増加が観 察されることから、 TGF- ^による細胞増殖誘導活性は、 それらの他の制御因子に より間接的に発揮されるものであると考えられている。
CTGFは、分子量約 38kDaを有するシスティン残基に富んだ分泌型糖タンパクであ り、その生合成及び分泌は TGF- ?より誘導されることが明らかにされている。 CTGF は、 TGF- ?による産生誘導を受ける点、 PDGF受容体に結合する点、間葉細胞系の増殖 を誘導する点、線維芽細胞や上皮細胞から産生されるという点等で PDGFと類似の性 質を有するが、アミノ酸配列相同性はほとんど有さない全く異なる分子である (T he Journal of Cell Biology, Vol.114, No.6, p.1287-1294, 1991及び Molecula r Biology of the Cell, Vol.4, p.637-645, 1993)。
また、 最近の研究により、 ヒト及びマウス繊維芽細胞の培養上清中、 並びにブ 夕の子宮由来分泌液中には、 38kDaの CTGFの分解物と考えられる生物学的に活性な 分子量約 10乃至 12kDaの低分子量 CTGFが同定されている (Growth Factors, Vol.1 5, No.3, p.199-213, 1998; J. Biol . Chem. , Vol.272, No.32, p.20275-20282,
1997) o
CTGFの生理学的機能及び疾患との関連性についての詳細は未だ明らかにされて おらず、 CTGFと疾患との関連性については、その関係を明らかにするための次のよ うな基礎的実験についての報告があるのみであり、疾患との関係と直接結びつく C TGFの活性の制御 (例えば、 活性阻害) に係る実験報告は何らなされていない。
( 1 ) 種々ヒト由来乳腺癌細胞でヒト CTGFの mRNAの発現が見られる (Int. J. Bi ochem. Cell. Biol . , Vol.29, No. l , p.153-161, 1997)。
( 2 ) 正常人に比べ進行性動脈硬化症患者の動脈傷害部位では 50乃至 100倍のヒト CTGFの mRNAの発現が観察される (Circulation, Vol.95, No.4, p.831-839, 199 7)。
( 3 ) 硬化性皮膚疾患患者の組織切片においてヒト CTGFの mRNAの発現が確認され る (J. Invest. Dermatol. , Vol .106, No.4, p.729-733, 1996) 。 また TGF- 刺 激を与えた強皮症患者由来線維芽細胞では正常人に比べ CTGFの産生が増進される
(J. Invest. Dermatol . , Vol .105, No.2, p.128-132, 1995)。
( 4 ) 腎上皮細胞の切屑創傷モデル及び高シユウ酸尿症細胞モデルにおいては CT
GFの mRNAの発現が誘導される (J. Cell Physiol . , Vol.165, No.3, p.556-565, 1 995及び Kidney Int. , Vol.48, No.2, p.5001-5009, 1995) 。
また、 CTGFと血管内皮細胞との関係については、 下記の報告がなされている。
( 1 ) ヒト臍帯血管内皮細胞 (HUVEC) からヒト CTGF遺伝子が単離される (J. Ce 11. Biol . , Vol.114, No.6, p.1285-1294, 1991) 。
( 2 ) マウス CTGF (Fispl2) が、 ヒト臍帯血管内皮細胞での DNAの合成を促進し、 またその DNA合成は Fispl2に対する抗血清 (ポリクロ一ナル抗体) により抑制が見 られる (Exp. Cell Res. , Vol .233, p.63-77, 1997) 。
( 3 ) ヒト CTGFをコードする cDNAに対するアンチセンス DNAがゥシの動脈内皮細胞 (Bovine Aorta Endothelial Cell (BAE)) の DM合成、増殖及び遊走を阻害する (歯科基礎医学会誌、第 38巻、増刊、第 463頁、 PD0187、 1996及び第 69回日本生化学会 要旨、 第 683頁、 1P0535, 1996) 。
上述のように、 CTGFと種々疾患との関連性については、患者の組織あるいはモデ ル細胞での CTGFの mRNAの発現状態についての基礎的知見のみでありその詳細につ いては明らかにされていない。また、 CTGFに関連する種々疾患の治療可能性の支持 に直接結び付く、ヒト CTGFに対する抗体によるヒト血管内皮細胞の増殖及び遊走の 抑制、 血管内皮細胞の増殖を伴う血管新生の制御、 並びに種々疾患の治療可能性 についてはこれまで何ら実証されていない。
一方、 血管内皮細胞の増殖や遊走は、 血管の新生の過程における一ステップと しての現象でもある。 血管新生は、 既存の血管から血管内皮細胞が出芽して新し い血管が形成される現象であり、 具体的には、 ( 1 ) タンパク分解酵素による既 存血管の基底膜の融解、 ( 2 ) 基底膜融解部分からの血管内皮細胞の出芽と遊走、
( 3 ) 血管内皮細胞の増殖、 (4 ) 管腔形成、 及び (5 ) 新生血管の成熟といつ た一連の過程を経て達成される。
このような血管新生は、 正常の生理的条件下は勿論、 種々の病理的条件下でも 観察される。 生理的な新生としては、 個体の発生や生殖の過程における胎胚の発
育や成長、 黄体の形成、 受精卵の着床あるいは個体維持のための創傷後の修復過 程で観察される。 また、 病理的なものとしては、 腫瘍の増殖や転移、 糖尿病患者 の眼底に生ずる増殖性糖尿病性網膜症等の眼疾患、 慢性関節リウマチ、 乾癬等の 皮膚疾患、 力ポジ肉腫及び動脈硬化症などにおいて見られる (細胞工学、 第 14卷、 第 4号、 第 426乃至第 431頁、 1995年) 。 発明の開示
このような血管内皮細胞の増殖及び遊走を伴う血管形成性疾患については、 未 だ有効な治療方法がなく、 血管新生を特異的に阻害する物質は全く新しいァプロ ーチによる治療薬になるものとして期待され、 そのような医薬品の開発が強く熱 望されている。
最近同定されたばかりの結合組織増殖因子である CTGF及び CTGFに対する抗体の 血管内皮細胞の増殖及び遊走並びに血管新生に対する作用'効果を明らかにするこ とで、未だ有効な治療方法が見出されていない血管形成性の種々疾患に対する医薬 品を提供することが可能となる。
本発明者らは、ヒト CTGFの血管内皮細胞の増殖及び遊走並びに血管新生に対する 作用を解明するために、ヒト CTGFに反応性を有する抗体の血管内皮細胞に対する作 用に関して鋭意研究した結果、ヒ卜 CTGFに対する抗体が、 血管内皮細胞の増殖及び 遊走を有意に阻害することを見出すことに成功した。
さらには、 鶏胚漿尿膜法 (Chorioal lantoic Membrane Assay (CAM法)) を用い たインオボ (in ovo) 試験において、 CTGFに対する抗体が、 CTGFの添加により誘導 される該鶏卵漿尿膜での血管新生を有意に阻害することを見出し本発明を完成す るに到った。
本発明者らは、ヒト CTGFに対する抗体を用いて血管内皮細胞の増殖及び遊走並び に血管新生を阻害できることを本願において初めて開示するものである。
即ち、本発明は、ヒト由来 CTGFまたはその一部に反応性を有する抗体または該抗体
の一部を含んでなる医薬組成物を提供するものであり、 該医薬組成物は、 血管内 皮細胞の増殖もしくは遊走または血管新生の抑制または阻害、 それらに起因する 種々疾患症状の治療、 並びにそのような疾患の進行に伴い起こる血管内皮細胞の 増殖もしくは遊走または血管新生に起因する種々の病的症状の治療に極めて有用 である。
また、 本発明の医薬組成物は、 元来生体自身が産生する抗体を有効成分とする ことから、 化学合成による化合物からなる医薬組成物に比べ生体に対する毒性が 極めて低い。 さらに、 ヒト以外の哺乳動物由来の抗体を有効成分として患者に適 用する場合において懸念される免疫拒絶反応については、 抗体の定常領域を除去 して得られる F(ab' )2若しくは Fab等の抗体の一部、遺伝子組換技術により作製され るキメラ抗体若しくはヒト型抗体、 特に好ましくはヒト抗体産生トランスジェニ ックマウス等を用いて作製されるヒト抗体を有効成分とすることにより該免疫拒 絶反応を容易に低減させることができる。
本発明は、 即ち、 下記のとおりである。
( 1 ) ヒト由来結合組織増殖因子 (CTGF) またはその一部に対して反応性を有 する抗体または該抗体の一部を含んでなり、 血管内皮細胞の増殖もしくは遊走ま たは血管の新生を抑制または阻害するための医薬組成物。
( 2 ) ヒト由来結合組織増殖因子またはその一部に反応性を有する抗体または 該抗体の一部を含んでなり、 血管内皮細胞の増殖もしくは遊走または血管の新生 に起因する疾患症状を抑制または治療するための医薬組成物。
( 3 ) 血管内皮細胞の増殖もしくは遊走または血管の新生が、 糖尿病、 動脈硬 化症、 慢性関節リウマチ、 皮膚疾患、 腫癟の増殖もしくは転移、 緑内障または炎 症における血管内皮細胞の増殖もしくは遊走または血管の新生であることを特徴 とする前記 ( 1 ) 記載の医薬組成物。
( 4 ) 疾患症状が、 糖尿病に伴う眼疾患、 動脈硬化症、 慢性関節リウマチ、 皮 膚疾患、 緑内障または腫瘍の増殖もしくは転移であることを特徴とする前記
( 2 ) 記載の医薬組成物。
(5) 血管内皮細胞が、 末梢リンパ性組織、 中枢リンパ性組織、 脳、 気管、 肺、 肝臓、 心臓、 滕臓、 腸、 腸間膜、 腎臓、 皮膚、 鼻粘膜、 関節、 眼、 類部、 卵巣お よび前立腺からなる群から選ばれる少なくとも 1つの組織の血管内皮細胞である ことを特徴とする前記 ( 1) 乃至 (4) 記載の医薬組成物。
(6) 抗体が、 モノクローナル抗体であることを特徴とする前記 ( 1) 乃至 ( 5 ) 記載の医薬組成物。
(7) 抗体が、 ヒト以外の哺乳動物由来のィムノグロブリンの可変領域とヒト 由来のィムノグロプリンの定常領域とを含む抗体であることを特徴とする前記
( 1 ) 乃至 ( 6 ) 記載の医薬組成物。
(8) 抗体が、 ヒト以外の哺乳動物由来のィムノグロプリンの超可変領域の一 部または全部、 ヒト由来のィムノグロブリンの可変領域の枠組領域、 及びヒト由 来のィムノグロブリンの定常領域とを含む抗体であることを特徴とする前記
( 1 ) 乃至 ( 6 ) 記載の医薬組成物。
(9) 抗体が、 ヒト抗体であることを特徴とする前記 (1) 乃至 (6) 記載の 医薬組成物。
( 10) 抗体の一部が、 F(ab,)2または Fabであることを特徴とする前記 (1) 乃 至 (9) 記載の医薬組成物。
以下、 本発明で用いる語句の意味を明らかにすることにより、 本発明を詳細に 説明する。
本発明でいう 「ヒト由来結合組織増殖因子 (Connective Tissue Growth Facto r (CTGF)) 」 とは、 前述に記載したとおりの既報に報告されるアミノ酸配列、 蛋 白高次構造及び機能を有する分子である (例えば、 The Journal of Cell Biolog y, Vol.114, No.6, p.1287-1294, 1991、 Molecular Biology of the Cell, Vol. 4, p.637-645, 1993、 及び Biochem. Biophys. Res. Comm., Vol.234, p.206-210, 1997など) 。
また、 本発明で言うヒト由来結合組織増殖因子には、 当該文献に記載された分 子量約 38kDaのヒト CTGFはもちろんのこと、 当該分子量約 38kDaの全長ヒト CTGFの 分解物と考えられる分子量約 10乃至 12kDaの低分子量 CTGF蛋白をも包含する ( Gro wth Factors, Vol .15, No.3, p. 199-213, 1998; J. Biol . Chem. , Vol .272, No. 32, p.20275-20282, 1997) 。 この低分子量 CTGFの構造は未だ明らかにされていな いものの、 349アミノ酸からなる全長ヒト CTGFの 246番目のロイシン (Leu246) と 247番目のグルタミン酸 (Glu247) の間で切断されることにより生ずると考えられ る 103個のアミノ酸からなる C末端蛋白 (分子量:約 ll,800Da) 、 あるいは、 同全 長ヒト CTGFの 247番目のグルタミン酸 (Glu247) と 248番目のグルタミン酸 (Glu2 48) との間で切断されることにより生ずると考えられる 102個のアミノ酸からなる C末端蛋白 (分子量:約 ll,671Da) である可能性を有する。
さらに、 本発明でいうヒト CTGFには、 天然型のタンパクまたはその一部のアミ ノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するヒト CTGFも包含する。 ここで 「実質的に同一のアミノ酸配列を有する」 とは、 天然型のヒト CTGF (前記文献に記 載されている)と実質的に同等の生物学的性質を有する限り、該アミノ酸配列中の 複数個のアミノ酸、好ましくは 1乃至 10個のアミノ酸、特に好ましくは 1乃至 5個のァ ミノ酸が置換、欠失及び/または修飾されているアミノ酸配列を有するタンパク、並 びに該ァミノ酸配列に、複数個のアミノ酸、好ましくは 1乃至 10個のアミノ酸、特に 好ましくは 1乃至 5個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列を有するタンパクをも 包含することを意味する。さらに、そのような置換、欠失、修飾及び付加の複数の組 み合わせの場合であってもよい。このように上記天然型のヒト CTGFとアミノ酸配列 の異なるタンパクは、 自然界において生じることもあり、 また人工的に合成する ことも可能であるが、 本発明においては双方が含まれる。
本発明のヒト由来 CTGFは、 遺伝子組換え技術のほか、 化学的合成法、 細胞培養 方法等のような当該技術的分野において知られる公知の方法あるいはその修飾方 法を適宜用いることにより製造することができる。
また、 ヒト由来結合組織増殖因子 (ヒト CTGF) の 「一部」 とは、 前記に定義し たヒト CTGF (分子量約 10乃至 12kDaの低分子量ヒト CTGFを含む) のアミノ酸配列中 の任意の部分配列を含むポリペプチドを意味し、 具体的には、 該本発明のヒト CT GFの全長アミノ酸配列中に含まれる 5乃至 100アミノ酸残基を有する任意のヒト CT GFぺプチドフラグメント、より具体的には 5乃至 50アミノ酸残基を有するヒト CTGF ぺプチドフラグメント、さらに具体的には 5乃至 30ァミノ酸残基を有するヒト CTGF ぺプチドフラグメントが包含される。好ましくは、ヒト CTGFがその受容体との結合 若しくは相互作用する部位 (受容体結合部位など) またはヒト CTGFがその生物学 的機能を発揮するために必要な部位 (活性部位など) を含むヒト CTGFの部分構造 である。
これらのポリペプチド (部分構造、 フラグメント) は、 当該技術的分野におい て知られる公知の方法あるいはその修飾方法に従って、 遺伝子組換え技術または 化学的合成法により製造することもできるし、 また細胞培養方法により単離した ヒト CTGFをタンパク分解酵素等を用いて適切に切断することにより製造すること ができる。
本発明における 「抗体」 とは、 ポリクローナル抗体 (抗血清) あるいはモノク 口一ナル抗体を意味し、 好ましくはモノク口一ナル抗体である。
具体的には、 前述のヒト由来結合組織増殖因子 (CTGF) またはその一部に反応 性を有する抗体である。
本発明の 「抗体」 は、 前記に定義したヒト結合組織増殖因子 (分子量約 10乃至 12kDaの低分子量ヒト CTGFを含む。 また天然体、 組換体、 合成物、 細胞培養上清等 の種類を問わない。 ) 若しくはその一部を抗原 (免疫原) として用い、 マウス、 ラヅト、 ハムス夕一、 モルモットあるいはゥサギ等の哺乳動物に免疫して得られ る天然型抗体、 遺伝子組換技術を用いて製造され得るキメラ抗体及びヒト型抗体 (CDR- grafted抗体) 、 並びにヒト抗体産生トランスジエニック動物等を用いて製 造され得るヒト抗体をも包含する。
またモノクロ一ナル抗体の場合には、 IgG、 IgM、 IgA、 IgDあるいは IgE等のいずれ のアイソタイプを有するモノクロ一ナル抗体をも包含する。好ましくは、 IgGまたは IgMである。
本発明でいうポリクローナル抗体 (抗血清) あるいはモノクローナル抗体は、 既存の一般的な製造方法によって製造することができる。 即ち、 例えば、 抗原を、 必要に応じてフロイントアジュバント (Freuntf s Adjuvant) とともに、 哺乳動物、 好ましくは、 マウス、 ラット、 ハムスター、 モルモット、 ゥサギ、 ネコ、 ィヌ、 ブ夕、 ャギ、 ゥマあるいはゥシ、 より好ましくはマウス、 ラット、 ハムスター、 モルモットまたはゥサギに免疫する。 ポリクロ一ナル抗体は、 該免疫感作動物か ら得た血清から取得することができる。 またモノクローナル抗体は、 該免疫感作 動物から得た抗体産生細胞と自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞 (ミエローマ細 胞) からハイプリ ドーマを調製し、 該ハイプリ ドーマをクローン化し、 哺乳動物 の免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生する クローンを選択することによって製造される。
モノク口一ナル抗体は、 具体的には下記のようにして製造することができる。 即ち、 前述のヒト由来結合組織増殖因子 (天然体、 組換体、 合成物、 細胞培養上 清を含む) 若しくはその一部を免疫原として、 該免疫原を、 必要に応じてフロイ ントアジュバント (Freund' s Adjuvant) とともに、 マウス、 ラット、 ハムスター、 モルモットあるいはゥサギ、 好ましくはマウス、 ラットあるいはハムスター (ヒ ト抗体産生トランスジエニックマウスのような他の動物由来の抗体を産生するよ うに作出されたトランスジエニック動物を含む) の皮下内、 筋肉内、 静脈内、 フ ッドパッド内あるいは腹腔内に 1乃至数回注射するかあるいは移植することにより 免疫感作を施す。通常、初回免疫から約 1乃至 14日毎に 1乃至 4回免疫を行って、最終 免疫より約 1乃至 5日後に免疫感作された哺乳動物から抗体産生細胞が取得される。 免疫を施す回数及び時間的ィンターバルは、 使用する免疫原の性質などにより、 適宜変更することができる。
モノクローナル抗体を分泌するハイプリ ドーマの調製は、 ケ一ラー及びミルシ ユタインらの方法 (ネイチヤー(Nature), 第 256巻、第 495〜第 497頁、 1975年) 及び それに準じる修飾方法に従って行うことができる。 即ち、 前述の如く免疫感作さ れた哺乳動物から取得される脾臓、 リンパ節、 骨髄あるいは扁桃等、 好ましくは 脾臓に含まれる抗体産生細胞と、 好ましくはマウス、 ラット、 モルモット、 ハム スター、 ゥサギまたはヒト等の哺乳動物、 より好ましくはマウス、 ラットまたは ヒト由来の自己抗体産生能のないミエローマ細胞とを細胞融合させることにより 調製される。
細胞融合に用いられるミエローマ細胞としては、 例えばマウス由来ミエローマ P3/X63-AG8.653 (653) 、 P3/NSI/1- Ag4- 1 (NS-1) 、 P3/X63-Ag8.Ul (P3U1) 、 SP 2/0-Agl4 (Sp2/0、Sp2) 、 PAI、 F0あるいは BW5147、 ラット由来ミエ口一マ 210RCY 3-Ag.2.3.、 ヒト由来ミエ口一マ U-266AR1、 GM1500-6TG-A1-2, UC729-6、 CEM- AGR、 D1R11あるいは CEM- T15を使用することができる。
モノクローナル抗体を産生するハイプリ ドーマクローンのスクリーニングは、 ハイプリ ドーマを、 例えばマイクロタイ夕一プレート中で培養し、 増殖の見られ たゥエルの培養上清の、 前述の免疫感作で用いた免疫抗原に対する反応性を、 例 えば RIAや ELISA等の酵素免疫測定法によって測定することにより行なうことがで きる。
ハイプリ ドーマからのモノクローナル抗体の製造は、 ハイプリ ドーマをインビ トロ、 またはマウス、 ラット、 モルモット、 ハムスターまたはゥサギ等、 好まし くはマウスまたはラッ卜、 より好ましくはマウスの腹水中等でのインビボで培養 し、 得られた培養上清、 または哺乳動物の腹水から単離することにより行うこと ができる。
インビトロで培養する場合には、 培養する細胞種の特性、 試験研究の目的及び 培養方法等の種々条件に合わせて、 ハイプリ ドーマを増殖、 維持及び保存させ、 培養上清中にモノクローナル抗体を産生させるために用いられるような既知栄養
培地あるいは既知の基本培地から誘導調製されるあらゆる栄養培地を用いて実施 することが可能である。
基本培地としては、 例えば、 Hajn' F12培地、 MCDB153培地あるいは低カルシウム M EM培地等の低カルシゥム培地及び MCDB 104培地、 MEM培地、 D-MEM培地、 RPMI 1640培地、 ASF104培地あるいは RD培地等の高カルシウム培地等が挙げられ、 該基本培地は、 目的に応じて、 例えば血清、 ホルモン、 サイ トカイン及び/または種々無機ある いは有機物質等を含有することができる。
モノクローナル抗体の単離、 精製は、 上述の培養上清あるいは腹水を、 飽和硫 酸アンモニゥム、 ユーグロブリン沈澱法、 力プロイン酸法、 力プリル酸法、 ィォ ン交換クロマトグラフィー (DEAEまたは DE52等) 、 抗ィムノグロブリンカラムあ るいはプロティン Aカラム等のァフィ二ティカラムクロマトグラフィーに供する こと等により行うことができる。
本発明における 「キメラ抗体」 は、 遺伝子工学的に作製されるモノクローナル 抗体であって、 具体的には、 例えば、 その可変領域がマウスィムノグロブリン由 来の可変領域であり、 かつその定常領域がヒトイムノグロプリン由来の定常領域 であることを特徴とするマウス/ヒトキメラモノクローナル抗体等のキメラモノ クローナル抗体を意味する。
ヒトイムノグロブリン由来の定常領域は、 IgG、 IgM、 IgA、 IgD及び IgE等のアイソ タイプにより各々固有のァミノ酸配列を有するが、本発明における組換キメラモノ クローナル抗体の定常領域はいずれのアイソタイプに属するヒトイムノグログリ ンの定常領域であってもよい。 好ましくは、 ヒト IgGの定常領域である。
本発明におけるキメラモノクローナル抗体は、 例えば以下のようにして製造す ることができる。 しかしながら、 そのような製造方法に限定されるものでないこ とは言うまでもない。
例えば、 マウス/ヒトキメラモノクローナル抗体は、 実験医学 (臨時増刊号) 、 第 1.6卷、第 10号、 1988年及び特公平 3- 73280号公報等を参照しながら作製すること
ができる。 即ち、 マウスモノクローナル抗体を産生するハイプリ ドーマから単離 した該マウスモノクローナル抗体をコードする DNAから取得した活性な 遺伝子 (H鎖可変領域をコードする再配列された VDJ遺伝子) の下流に、 ヒトイムノグロ ムリンをコードする DNAから取得した C«遺伝子 ( H鎖定常領域をコードする C遺伝 子) を、 また該ハイブリ ドーマから単離したマウスモノクローナル抗体をコード する DNAから取得した活性な 遺伝子 (L鎖可変領域をコードする再配列された VJ遺 伝子) の下流にヒトイムノグロムリンをコードする DNAから取得した CL遺伝子 (L鎖 定常領域をコードする C遺伝子) を、 各々発現可能なように配列して 1つ又は別々 の発現べクタ一に挿入し、 該発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、 該形質転換 細胞を培養することにより作製することができる。
具体的には、 まず、 マウスモノクローナル抗体産生ハイプリ ドーマから常法に より DNAを抽出後、該 DNAを適切な制限酵素 (例えば EcoRI、HindI I I等) を用いて消 化し、 電気泳動に付して (例えば 0.7%ァガロースゲル使用) サザンプロット法を 行う。 泳動したゲルを例えばェチジゥムブ口マイ ド等で染色し、 写真撮影後、 マ —カーの位置を付し、 ゲルを 2回水洗し、 0.25M HC1溶液に 15分間浸す。 次いで、 0.4Nの NaOH溶液に 10分間浸し、 その間緩やかに振盪する。 常法により、 フィル夕 一に移し、 4時間後フィル夕一を回収して 2XSSCで 2回洗浄する。 フィル夕一を十分 乾燥した後、 ペイキング (75°C、3時間) を行う。 ペイキング終了後に、 該フィル 夕一を 0.1 x SSC/0.1%SDS溶液に入れ、 65°Cで 30分間処理する。次いで、 3 X SSC/0. 1 % SDS溶液に浸す。 得られたフィルターをプレハイブリダィゼ一シヨン液と共に ビニール袋に入れ、 65°Cで 3〜4時間処理する。
次に、 この中に32 P標識したプローブ DNA及びハイプリダイゼーシヨン液を入れ、 65°Cで 12時間程度反応させる。 ハイブリダィゼ一シヨン終了後、 適切な塩濃度、 反応温度および時間 (例えば、 2 X SSC- 0.1%SDS溶液、 室温、 10分間) のもとで、 フィルターを洗う。 該フィル夕一をビニール袋に入れ、 2 X SSCを少量加え、 密封 し、 オートラジオグラフィーを行う。
上記サザンブロット法により、 マウスモノクローナル抗体の H鎖及び L鎖を各々 コードする再配列された VDJ遺伝子及び VJ遺伝子を同定する。同定した DNA断片を含 む領域をショ糖密度勾配遠心にて分画し、 ファージベクタ一 (例えば、 Charon 4 A、 Charon 28、 人 EMBL3、え EMBL4等) に組み込み、 該ファージベクタ一で大腸菌 (例えば、 LE392、 NM539等)を形質転換し、 ゲノムライブラリ一を作製する。 その ゲノムライブラリ一を適当なプローブ (H鎖 J遺伝子、 L鎖 ( ) J遺伝子等) を用い て、 例えばベントンデイビス法 (サイエンス(Science)、 第 196卷、第 180〜第 182頁、 1977年) に従って、 プラークハイブリダィゼーシヨンを行い、 再配列された VDJ遺 伝子あるいは VJ遺伝子を各々含むポジティブクローンを得る。 得られたクローン の制限酵素地図を作製し、 塩基配列を決定し、 目的とする再配列された V«(VDJ)遺 伝子あるいは V VJ)遺伝子を含む遺伝子が得られていることを確認する。
一方、 キメラ化に用いるヒト C»遺伝子及びヒト 遺伝子を別に単離する。 例えば、 ヒト IgGlとのキメラ抗体を作製する場合には、 CH遺伝子である C 7 L遺伝子と CJ1伝子 である C / 遺伝子を単離する。これらの遺伝子はマウス免疫グロプリン遺伝子とヒ ト免疫グロプリン遺伝子の塩基配列の高い相同性を利用してヒト C7 l遺伝子及びヒ ト C A:遺伝子に相当するマウス C 7 ,遺伝子及びマウス C. 遺伝子をプローブとして用 い、 ヒトゲノムライブラリーから単離することによって得ることができる。
具体的には、 例えば、 クローン Igl46 (プロシ一ディングスナショナルァカデミ —ォブサイエンス(Proc. Natl . Acad. Sci. USA)ヽ 第 75巻、第 4709〜第 4713頁、 19 78年) からの 3kbの Hindi I I-BamHI断片とクローン MEP10 (プロシーデイングスナシ ョナルアカデミーォブサイエンス(Proc. Natl . Acad. Sci . USA)、 第 78卷、第 474 〜第 478頁、 1981年) からの 6.8kbの EcoRI断片をプローブとして用い、ヒトのラムダ Charon 4Aの Hael l l- Alulゲノムライブラリ一 (セル(Cell )、 第 15巻、第 1157〜第 1174頁、 1978年) 中から、 ヒト C A:遺伝子を含み、ェンハンサー領域を保持している DNA断片を単離する。また、ヒト C y ,遺伝子は、例えばヒト胎児肝細胞 DNAを Hindl l lで 切断し、ァガロースゲル電気泳動で分画した後、 5.9kbのバンドをえ 788に挿入し、前
記のプローブを用いて単離する。
このようにして単離されたマウス V»遺伝子とマウス^遺伝子、及びヒト C»遺伝子と ヒト Cut伝子を用いて、プロモー夕一領域及びェンハンサー領域などを考慮しなが らマウス 遺伝子の下流にヒト 遺伝子を、またマウス 遺伝子の下流にヒト Ct遺伝 子を、適切な制限酵素及び DNAリガーゼを用いて、例えば pSV2gptあるいは pSV2neo等 の発現べクタ一に常法に従って組み込む。この際、マウス VH遺伝子/ヒト C»遺伝子とマ ウス VL遺伝子/ヒト 遺伝子のキメラ遺伝子は、一つの発現ベクターに同時に配置さ れてもよいし、 各々別個の発現ベクターに配置することもできる。
このようにして作製したキメラ遺伝子挿入発現べクタ一を、 例えば P3X63 · Ag8 · 653細胞あるいは SP210細胞といった、 自らは抗体を産生していない骨髄腫細胞に プロトプラスト融合法、 DEAE-デキストラン法、 リン酸カルシウム法あるいは電気 穿孔法等により導入する。 形質転換細胞は、 発現ベクターに導入された薬物耐性 遺伝子に対応する薬物含有培地中での培養により選別し、 目的とするキメラモノ クローナル抗体産生細胞を取得する。
このようにして選別された抗体産生細胞の培養上清中から目的のキメラモノク ローナル抗体を取得する。
本発明における 「ヒト型抗体 (CDR- grafted抗体) 」 は、 遺伝子工学的に作製さ れるモノクローナル抗体であって、 具体的には、 例えば、 その超可変領域の相補 性決定領域の一部または全部がマウスモノクローナル抗体に由来する超可変領域 の相補性決定領域であり、 その可変領域の枠組領域がヒトイムノグロブリン由来 の可変領域の枠組領域であり、 かつその定常領域がヒトイムノグロブリン由来の 定常領域であることを特徴とするヒト型モノクローナル抗体を意味する。
ここで、 超可変領域の相補性決定領域とは、 抗体の可変領域中の超可変領域に 存在し、 抗原と相補的に直接結合する部位である 3つの領域 (Complementarity-d etermining residue; CDR1, CDR2, CDR3) を指し、 また可変領域の枠組領域とは、 該 3つ相補性決定領域の前後に介在する比較的保存された 4つの領域 (Framework;
FR1JR2JR3JR4) を指す。
換言すれば、 例えばマウスモノクローナル抗体の超可変領域の相補性決定領域 の一部または全部以外の全ての領域が、 ヒトイムノグロプリンの対応領域と置き 代わったモノクローナル抗体を意味する。
ヒトイムノグロブリン由来の定常領域は、 IgG、 IgM、 IgA、 IgD及び IgE等のアイソ タイプにより各々固有のアミノ酸配列を有するが、 本発明におけるヒト型モノク ローナル抗体の定常領域はいずれのアイソタイプに属するヒトイムノグログリン の定常領域であってもよい。 好ましくは、 ヒト IgGの定常領域である。 また、 ヒト ィムノグロプリン由来の可変領域の枠組領域についても限定されるものではない。 本発明におけるヒト型モノクローナル抗体は、 例えば以下のようにして製造す ることができる。 しかしながら、 そのような製造方法に限定されるものでないこ とは言うまでもない。
例えば、 マウスモノクローナル抗体に由来する組換ヒト型モノクローナル抗体 は、 特表平 4- 506458号公報及び特開昭 62- 296890号公報等を参照して、遺伝子工学 的に作製することができる。 即ち、 マウスモノクローナル抗体を産生するハイブ リ ドーマから、 少なくとも 1つのマウス H鎖 CDR遺伝子と該マウス H鎖 CDR遺伝子に対 応する少なくとも 1つのマウス L鎖 CDR遺伝子を単離し、またヒトイムノグロプリン 遺伝子から前記マウス H鎖 CDRに対応するヒト H鎖 CDR以外の全領域をコードするヒ ト H鎖遺伝子と、前マウス L鎖 CDRに対応するヒト L鎖 CDR以外の全領域をコ一ドする ヒト L鎖遺伝子を単離する。
単離した該マウス H鎖 CDR遺伝子と該ヒト H鎖遺伝子を発現可能なように適当な発 現ベクターに導入し、同様に該マウス L鎖 CDR遺伝子と該ヒト L鎖遺伝子を発現可能 なように適当なもう 1つの発現ベクターに導入する。または、該マウス H鎖 CDR遺伝子 /ヒト H鎖遺伝子とマウス L鎖 CDR遺伝子/ヒト L鎖遺伝子を同一の発現べクタ一に 発現可能なように導入することもできる。 このようにして作製された発現べクタ 一で宿主細胞を形質転換することによりヒト型モノクローナル抗体産生形質転換
細胞を得、 該形質転換細胞を培養することにより培養上清中から目的のヒト型モ ノクローナル抗体を得る。
本発明における 「ヒト抗体」 とは、 ィムノグロブリンを構成する H鎖の可変領域 及び H鎖の定常領域並びに L鎖の可変領域及び L鎖の定常領域を含む全ての領域がヒ トイムノグロプリンをコ一ドする遺伝子に由来するィムノグロプリンである。 ヒト抗体は、 常法に従って、 例えば、 少なくともヒトイムノグロブリン遺伝子 をマウス等のヒト以外の哺乳動物の遺伝子座中に組込むことにより作製されたト ランスジエニック動物を、 抗原で免疫感作することにより、 前述したポリクロー ナル抗体あるいはモノクローナル抗体の作製法と同様にして製造することができ o
例えば、 ヒト抗体を産生するトランスジエニックマウスは、 ネィチャージエネ ティックス(Nature Genetics), 第 15卷、第 146〜第 156頁、 1997年;ネィチャージェ ネテイツクス、 第 7巻、 第 13〜第 21頁、 1994年;特表平 4-504365号公報;国際出願 公開 W094/25585号公報; 日経サイエンス、 6月号、 第 40〜第 50頁、 1995年;ネイチ ヤー (Nature), 第 368卷、第 856〜第 859頁、 1994年;及び特表平 6- 500233号公報に記 載の方法に従って作製することができる。
また、 昨今開発されたトランスジエニックゥシゃトランスジエニックブ夕のミ ルク中からヒト由来タンパクを製造する方法を適用することも可能である (日系 サイエンス、 1997年 4月号、第 78頁乃至 84頁) 。
本発明における 「抗体の一部」 とは、 前述の本発明における抗体、 好ましくは モノクローナル抗体の一部分の領域を意味し、 具体的には F(ab' Fab'、Fab、Fv (variable fragment of antibody) 、 sFv、dsFv bisulphide stabilised Fv; あ るいは dAb (single domain antibody) である (エキスパート ·オピニオン ·オン 'テラピューティック 'パテンッ(Exp. Opin. Ther. Patents ) , 第 6卷,第 5号,第 441〜456頁, 1996年) 。
ここで、 「F(ab,);」 及び 「Fab,」 とは、 ィムノグロブリン (モノクロ一ナル抗
体) を、 蛋白分解酵素であるペプシンあるいはパパイン等で処理することにより 製造され、 ヒンジ領域中の 2本の H鎖間に存在するジスルフィ ド結合の前後で消 化されて生成される抗体フラグメントを意味する。 例えば、 IgGをパパインで処理 すると、 ヒンジ領域中の 2本の H鎖間に存在するジスルフィ ド結合の上流で切断さ れて Vt (L鎖可変領域) と (L鎖定常領域) からなる L鎖、及び V» (H鎖可変領域) と CH 7 l (H鎖定常領域中のァ 1領域) とからなる H鎖フラグメントが C末端領域でジス ルフィ ド結合により結合した相同な 2つの抗体フラグメントを製造することができ る。 これら 2つの相同な抗体フラグメントを各々 Fab'という。また IgGをペプシンで 処理すると、ヒンジ領域中の 2本の H鎖間に存在するジスルフィ ド結合の下流で切断 されて前記 2つの Fab'がヒンジ領域でつながったものよりやや大きい抗体フラグメ ントを製造することができる。この抗体フラグメントを F(ab,)2という。
本発明における 「血管内皮細胞の増殖もしくは遊走または血管の新生に起因す る疾患症状」 とは、 生体の恒常的維持のための生理学的に必要な増殖、 遊走また は新生を超えた過剰の増殖、 遊走または新生並びに病理的な増殖、 遊走または新 生を意味し、 具体的には糖尿病性網膜症に代表される糖尿病に伴う眼疾患、 動脈 硬化症や PTCA法による動脈硬化巣の治療後におこる再狭窄、 慢性関節リゥマチ、 乾癬や強皮症などの皮膚疾患、 緑内障等の眼疾患、 腫瘍の増殖もしくは転移、 及 び種々臓器における炎症などに見られる病理的症状である。
本発明における 「腫瘍」 とは、 原発巣から他臓器への転移性であるいずれの腫 瘍 (癌) をも意味する。 これまでのところ、 腫瘍 (癌) は生体のあらゆる部位で 発生すると考えられ、 本発明で言う腫瘍は、 そのような生体のいずれの部位で発 生する腫瘍 (癌) をも包含する。 例えば、 脳内腫瘍、 頸癌、 肺癌、 肝臓癌、 胸部 癌、 滕臓癌、 大腸癌、 胃癌、 子宮癌、 骨癌、 皮膚癌、 卵巣癌あるいは前立腺癌等 をあげることができる。 またヒト免疫不全ウィルス感染患者や成人 T細胞白血病 などの患者において発症の見られる力ポジ肉腫等も包含する。
本発明における 「血管内皮細胞」 としては、 免疫担当リンパ球を作り出し、 あ
るいは貯蔵するリンパ節、 扁桃及び脾臓等の末梢リンパ性組織、 該末梢リンパ性 組織で作り出される免疫担当リンパ球のもととなる前駆細胞を作り出す胸腺等の 中枢リンパ性組織、 さらには脳、 気管、 肺、 肝臓、 心臓、 滕臓、 腸 (小腸、 大 腸) 、 腸間膜、 腎臓、 皮膚、 鼻粘膜、 関節、 眼、 頸部、 卵巣および前立腺等の組 織の内皮細胞を挙げることができる。
本発明における 「医薬組成物」 は、 前述の本発明における抗体あるいは抗体の 一部を有効成分として、 薬学的に許容され得る担体、 即ち、 賦形剤、 希釈剤、 増 量剤、 崩壊剤、 安定剤、 保存剤、 緩衝剤、 乳化剤、 芳香剤、 着色剤、 甘味剤、 粘 稠剤、 矯味剤、 溶解補助剤あるいはその他の添加剤等の一つ以上とともに医薬組 成物とし、 錠剤、 丸剤、 散剤、 顆粒剤、 注射剤、 液剤、 カプセル剤、 トローチ剤、 エリキシル剤、 懸濁剤、 乳剤あるいはシロップ剤等の形態により経口あるいは非 経口的に投与することができる。
とりわけ注射剤の場合には、 例えば生理食塩水、 市販の注射用蒸留水あるいは リン酸緩衝液等の非毒性の薬学的に許容され得る担体中に 0.1 zg抗体/ ml担体〜 1 mg抗体/ ml担体の濃度となるように溶解または懸濁することにより製造することが できる。 このようにして製造された注射剤は、 処置を必要とするヒト患者、 ある いはゥシゃゥマ等の家畜に対し、 1回の投与において lkg体重あたり、l〃g〜100mg の割合で、好ましくは 50〃g〜50mgの割合で、 1日あたり 1回乃至数回投与すること ができる。 投与の形態としては、 静脈内注射、 皮下注射、 皮内注射、 筋肉内注射 あるいは腹腔内注射のような医療上適当な投与形態で行うことできる。 好ましく は静脈内注射である。
本発明における抗体の 「血管内皮細胞の増殖の抑制または阻害」 の効果は、 例 えば、 適切な栄養培地含有培養ディッシュに適切な数の血管内皮細胞を蒔き、 血 管内皮細胞の増殖を誘導する物質で刺激した細胞培養系に対して、 ヒト CTGFに反 応性を有する抗体またはその一部を添加した場合と添加しない場合での培養後の 細胞数を計測することにより試験、 検討することができる。
また、 「血管内皮細胞の遊走の抑制または阻害」 の効果は、 例えば、 ボイデン チャンバ一 (Boyden' s chemotactic chamber) を用いたアツセィ法 (ENCYCLOPED IA OF MEDICAL SCIENCES<医科学大辞典 >、 第 43巻、第 2刷、 1984年、 講談社発行) またはその改変法を用い常法に従って試験、 検討することができる。
本発明の 「血管の新生の抑制または阻害」 の効果は、 例えば、 鶏胚漿尿膜法 (Chorioallantoic Membrane Assay (CAM法)、 現代医療、 第 26巻、第 6号、 第 1849 - 1855頁、 1994) 、 ゥサギ角膜法 (Rabbit Corneal Pocket Model, 現代医療、 第 26巻、第 6号、 第 1849- 1855頁、 1994) 、 ラビットィヤーチャンバ一法 (現代医療、 第 26卷、第 6号、 第 1857- 1861頁、 1994) 、 またはそれらの改変法によるインビボ試 験を用いて試験、 検討することができる。
また、 本発明の医薬組成物の種々疾患症状の治療効果については、 常法に従つ て、 既知のいずれの疾患モデル動物に投与することにより試験、 検討することが できる。
例えば、 腫瘍の増殖及び転移への効果の確認の場合には、 Balb/cマウス等の正 常マウス、ヌードマウスもしくは SCIDマウス等のモデルマウス等の市販のマウスの 例えば尾静脈、 脾臓内、 腎被膜下、 腹腔内あるいは盲腸壁内等に、 癌細胞を移植 することにより作製した癌転移モデルを用いることができる。
即ち、 該モデルマウスに、 癌細胞の移植の前、 移植と同時、 あるいは移植の後 に、 本発明の医薬組成物を投与し、 腫瘍細胞の移植部位以外の他の臓器 (例えば 肺、 肝臓、 皮膚等) への癌細胞の転移の度合を、 該医薬組成物を投与しない対照 (コントロール) マウスと比較することにより癌細胞の転移の抑制または阻害の 効果を確認することができる。 癌細胞の転移の度合の確認は、 癌細胞が転移する と思われる他の臓器の X線写真撮影もしくは肉眼による観察、 あるいは該臓器の重 量測定等により確認することができる。
また、 動脈硬化症及び再狭窄への効果の検討の場合には、 ラット大動脈にバル ーンカテーテルを挿入し PTCAを施し疑似的に作成した再狭窄モデルを使用するこ
とができる。 図面の簡単な説明
図 1は、 組換えヒト CTGFによる血管内皮細胞の増殖誘導活性を示すグラフであ る。縦軸は細胞数を表し、横軸は組換ヒト CTGFの濃度を示す。
図 2は、 抗ヒト CTGF抗体による血管内皮細胞の遊走促進活性、並びに該遊走の抗 ヒト CTGF抗体による阻害効果を示すグラフである。縦軸は細胞数を表し、横軸は組 換ヒト CTGFの濃度を示す。
図 3は、 抗ヒト CTGF抗体及びプレイミューン抗体を用いたアツセィにおける、 血管内皮細胞の遊走の状態を示す図である。 (a ) は、 プレイミューン抗体 ( 10 zg/ml ) を加えた場合の血管内皮細胞の遊走状態を示し、 (b ) は、 抗ヒト CTGF 抗体 (10 i l/ml) を加えた場合の血管内皮細胞の遊走状態を示し、 (c ) は、 プ レイミユーン抗体 (25 /zg/ml) を加えた場合の血管内皮細胞の遊走状態を示し、
( d ) は、 抗ヒト CTGF抗体 (25〃l/ml) を加えた場合の血管内皮細胞の遊走状態 を示す。
図 4は、 抗ヒト CTGF抗体による血管内皮細胞の増殖の阻害効果を示すグラフで ある。 縦軸はトリチウム標識チミジンの細胞への取込み (cpm) を指標とした血管 内皮細胞の増殖のレベルを表し、 横軸は組換ヒト CTGFの濃度を示す。
図 5は、 CTGFを介する血管内皮細胞の細胞接着活性、並びに該細胞接着活性の抗 ヒト CTGF抗体による阻害効果を示すグラフである。 縦軸は、 吸光度を指標として 示されるプレートに接着した細胞数を表す。 横軸は、 試験で用いた試料の種類を 示す。
図 6は、 CTGFを加えない場合及び加えた場合の血管内皮細胞の増殖の程度、並び に該細胞増殖の抗ヒト CTGF抗体による阻害効果を示すグラフである。 縦軸はトリ チウム標識チミジンの細胞への取込み (cpm) を指標とした血管内皮細胞の増殖の レベルを表し、 横軸は試験で用いた試料の種類を示す。
図 7は、 鶏胚漿尿膜アツセィにおいてリン酸緩衝液を加えた場合の血管新生の 状態を示す図である。
図 8は、 鶏胚漿尿膜アツセィにおいて CTGF ( l〃g) を加えた場合の血管新生の 状態を示す図である。
図 9は、 鶏胚漿尿膜アツセィにおいて CTGF (2/ g) を加えた場合の血管新生の 状態を示す図である。
図 1 0は、 鶏胚漿尿膜アツセィにおいて FGF (1 zg) を加えた場合の血管新生の 状態を示す図である。
図 1 1は、 鶏胚漿尿膜アツセィにおいて CTGF ( l /g) により誘導される血管新 生の、 ヒト抗ヒト CTGFモノクローナル抗体 C59による阻害の状態を示す図である。 図 1 2は、 鶏胚漿尿膜ァヅセィにおいて CTGF ( l /g) により誘導される血管新 生の、 ヒト抗ヒト CTGFモノクローナル抗体 B22による阻害の状態を示す図である。 図 1 3は、 鶏胚漿尿膜アツセィにおいて CTGF { \ iig) により誘導される血管新 生の、 対照としてのゥサギ由来プレイミューンポリクロ一ナル抗体による阻害の 状態を示す図である。
図 1 4は、 CTGFの鶏胚漿尿膜上での血管新生の誘導活性、並びに該血管新生誘導 活性の抗 CTGF抗体による阻害効果を示すグラフである。 縦軸は、 スコア化した血 管新生の程度を示し、 横軸は試験に用いた試薬の種類を示す。 発明を実施するための最良の形態
以下に、 本発明の態様を実施例によりさらに具体的に説明するが、 本発明は、 以下に記載される態様に限定されるものではないことは言うまでもない。
[実施例 1 ] ヒト CTGFに対するゥサギ抗体の調製
ヒト CTGFの第 242乃至第 252番目のアミノ酸配列 (Cys-Glu- Ala-Asp-Leu- Glu-Gl u-Asn-Ile-Lys) にあたるペプチドをペプチドシンセサイザー (Applied Biosyst ems製) を用いて常法に従って合成した。 免疫感作抗原としては、 該ペプチドをフ
口インド完全アジュバント (Freuind' s complete adjuvant) とともにェマルジョ ン化したものを用いた。 該ペプチド (0.32mg/kg) を、 二ュジ一ランドホワイ トウ サギ (NZW、 Simunek, Inc.製) の皮下に 1日目 (0.8mg) 、 14日目 (0.8mg) 、 35日 目 (0.8mg) 及び 49曰目 (0.8mg) という間隔及び量で投与した。 該ペプチドを用 いて、 適宜、 血清中の抗体価を測定した。 次いで、 常法により血清を取得し、 該 ベプチドをカツプリングさせたァガロースを用いたァフイエティークロマトグラ フィ一により該血清から、 ヒト CTGFに対するポリクロ一ナル抗体 (IgG) を精製し た。 ヒト CTGFに対する反応性を、 ELISA (Enzyme- linked immunosorbent assay) 及 びウエスタンプロヅティングにより確認した。
[実施例 2 ] 組換ヒト CTGFの調製
ヒト CTGFをコードする cDNAを PCR法を用いて常法により調製した。 具体的には、 ヒト軟骨腫細胞株 HCS2/8から調製した cDNAを銪型とし、ヒト CTGFの cDNA (The Jou rnal of Cell Biology, Vol . 114, No.6, p. 1287-1294, 1991) を基に設計したプ ライマ一を用いて合成した。 得られた翻訳領域を含むヒト CTGFの cDNAをプラスミ ド pcDNA3. 1 (- ) ( Invitrogen製) に挿入し発現ベクターを作成し、 エレクトロボレ —シヨンにより、 該ベクターでヒト腎臓由来線維芽細胞株 293-T (ATCC CRL1573) を形質転換した。 形質転換細胞を、 無血清培地 ASF104 (味の素製) 中で 3日間培養 し、ヒト CTGFを一過性に発現させた。 ヒト CTGFの発現を、 ウエスタンブロッテイン グにより確認した。
細胞培養上清を回収し、 へパリンカラムクロマトグラフィーに供し、 0.3Mの Na C1/PBSで洗浄した後、 0. 5Mの NaCl/PBSで溶出し、 粗精製ヒト CTGF画分を得た。 該 精製物を、 硫化アンモニゥム沈澱法に供した後、 ゲル濾過クロマトグラフィーに よりヒト CTGFを含む画分を集め精製組換ヒト CTGFを得た。
[実施例 2— 2 ] ヒト上皮様細胞株 HeLaでの組換えヒト CTGF安定発現 実施例 2と同様の方法により、 ヒト CTGFをコードする cDNAを PCR法を用いて常法 により調製した。 得られた翻訳領域を含むヒ ト CTGFの cDNAをプラスミ ド pcDNA3. 1
(-) ( Invitrogen社製) に挿入し発現べクタ一を作成し、 エレクトロボレ一シヨン により、 該ベクターでヒト上皮様細胞株 HeLa (ATCC CCL-2) を形質転換した。 形 質転換細胞を、 Geneticin (0.8mg/ml; GIBCO- BRL社製) 及び 10%ゥシ胎児血清 (f etal calf serum) を含有する RPMI1640培地中で約 2週間培養することにより、 G eneticin耐性形質転換細胞クローンを選別した。 選別された形質転換細胞を、 無 血清培地 ASF104 (味の素社製) 中で培養し、 組換ヒト CTGFを安定に発現させた。 ヒト CTGFの発現を、 実施例 1で調製したポリクローナル抗体を用いたウエスタンブ ロッテイングにより確認した。
細胞培養上清を回収し、 硫化アンモニゥム沈澱法に供した後、 へパリンカラム クロマトグラフィーに供し、 0.3Mの NaCl/PBSで洗浄した後、 0.5Mの NaCl/PBSで溶 出し、 部分精製ヒト CTGF画分を得た。
[実施例 3 ] CTGFの血管内皮細胞の増殖促進作用の検討
CTGFが血管内皮細胞の増殖を誘導、 促進するか否かを検討するため下記のような 試験を行った。
ゥシ大動脈血管内皮細胞 (Bovine Aorta Endothelial Cell (BAE細胞)、 3 x 10 4個/シャーレ) を、 10%ゥシ血清含有 DMEM培地に蒔き一晩培養した。 培地を 0.5% ゥシ血清含有 DMEM培地と交換した後、 該培養系に前述のようにして調製した組換 ヒト CTGFを、 各々 1、10、30及び 50ng/mlの濃度で添加し 2日間培養した。 次いで、 培 地を 0.5%ゥシ血清含有 DMEM培地と交換した後、組換 CTGFを各々 1、 10、 30及び 50ng/ mlの濃度で添加しさらに 2日間した。 培養後、 セルソー夕一を用いて細胞数を計測 した。 結果を図 1に示す。
この試験から、 血管内皮細胞の増殖が CTGFの濃度依存的に誘導され、 CTGFが血管 内皮細胞の増殖を誘導、促進する作用を有していることが明らかとなった。
[実施例 4 ] CTGFの血管内皮細胞の遊走促進作用並びに抗 CTGF抗体による血管 内皮細胞の遊走の阻害効果の検討 (その 1 )
CTGFが血管内皮細胞の遊走を誘導、促進する作用を有するか否か、並びに該作用
が CTGFに対する抗体により阻害されるか否かを検討するため、 下記のような試験 を行った。
本試験は、 ケモタキセル (CHEMOTAXICELL、 ポアサイズ: 8〃m、 クラボウ製) を 用いたボイデンチヤンバー法 (Boyden' s chemotactic chamber; ENCYCLOPEDIA 0 F MEDICAL SCIENCES<医科学大辞典 >、 第 43巻、第 2刷、 1984年、 講談社発行) の 変法により行った。 なお、 ボイデンチヤンバー法は、 微小孔 (ポア) を有するフ ィルターを介した二層のゥエルからなるボイデンチヤンバーを用いて細胞の遊走 能の観察を可能にする汎用法である。
ケモタキセルの上段ゥエルには、 0.2mg/mlのゥシ血清アルブミン (BSA) を含む 無血清の DMEM培地に懸濁させた BAE細胞 (6 x l(T個) を加えた。 下段ゥエルには、 前記のように調製した組換ヒト CTGF (各々 1、10、30及び 50ng/ml濃度) とともに前 述のようにして調製した抗ヒト CTGFポリクロ一ナル抗体 (IgG、25〃g/ml) または いずれの抗原での免疫も施していない二ュジ一ランドホワイ トゥサギ (NZW、Simu nek, Ιικ: .製) の血清から単離したプレイミューン (pre-i匪 une) ポリクロ一ナル 抗体 (IgG、25 /g/ml) のいずれかの抗体を加えた。 4時間の培養後、 フィルタ一を メタノールで固定し、 常法に従ってギムザ染色 (Giemsa Stain) を行った。 フィ ルターの微小孔を通過し、 下面に遊走した細胞をセルソ一夕一を用いて計数した。 結果を図 2に示す。
組換 CTGFとともにゥサギプレイミュ-ン抗体を加えた培養系では、加えた CTGFの 濃度に依存した血管内皮細胞の遊走が観察された。一方、組換え CTGFとともに抗ヒ ト CTGF抗体を加えた培養系では、いずれの CTGF濃度においても、 血管内皮細胞の遊 走が完全に阻害された。
[実施例 5 ] CTGFの血管内皮細胞の遊走促進作用並びに抗 CTGF抗体による血管 内皮細胞の遊走の阻害効果の検討 (その 2 )
BAE細胞 (5 x 10'個/シャーレ(3. 5cm) ) を、 10%ゥシ血清含有 DMEM培地に蒔き 3日 間培養した。 培地を 0. 5 %ゥシ血清含有 DMEM培地と交換した後、 コンフルェントな
状態になるまでさらに培養した。 セルスクレイパ一 (Cel l Scraper) を用いて、 シャーレの半面の細胞モノレイヤ一を接き取り除去した。 シャーレをリン酸緩衝 液 (PBS) で 2回洗浄し、 10%ゥシ血清含有 DMEM培地を添加するとともに、前述のよ うにして調製した抗ヒト CTGF抗体を、 各々 10または 25 g/mlの濃度でシャーレに 添加し、 12時間培養した。培養後、培地を除き、 30分間静置して風乾した。中性緩衝ホ ルマリン (1.5ml/シャーレ) を加え、 細胞を固定した (4。 (:、 15分) 。 蒸留水で 4回また PBSで 3回洗浄した後、 セルスクレイパーで細胞を剥がした半面への細胞の 遊走の状態を顕微鏡下で観察した。
なお、 対照として、 いずれの抗原での免疫も施していない二ュジ一ランドホヮ ィ トゥサギ (NZW、 Simunek, Inc .製) の血清から単離したプレイミューン (pre- immune) ポリクローナル抗体 (IgG、各々 10または 25 zg/ml) を用いて同様にして アツセィした。
結果を図 3 ( a ) 乃至図 3 ( d ) に示す。
ゥサギプレイミューン抗体を加えた培養系に比べ、 抗ヒト CTGF抗体を加えた培 養系では、 血管内皮細胞の遊走が顕著に阻害された。
[実施例 6 ] 抗 CTGF抗体による血管内皮細胞の増殖の阻害効果の検討 実施例 3で確認された CTGFの血管内皮細胞の増殖促進作用が、抗 CTGF抗体により 阻害されるか否かを検討するため下記のような試験を行った。 本試験における細 胞の増殖の有無の確認は、 常法に従って放射性標識チミジン取込み法を用いて行 つた。
BAE細胞 (2x l(V個/ゥヱル) を、 10%ゥシ胎児血清を含有する DMEM培養液を加え た 96穴マイクロタイ夕一プレートに蒔き、 24時間培養した。次いで、培養液を、 0.5 %ゥシ胎児血清含有 DMEM培養液で交換し、さらに 24時間培養した。 培養後、 培養液 を、 精製組換 CTGF (0、1、10、30または501^/1111 ) を含み、 かつ前述の抗 CTGF抗体
(50〃g/ml ) または前述のプレイミューン抗体 (50Α^/ΠΙ1) を各々含む 0.5%ゥシ 胎児血清含有 DMEM培養液で交換し、 18時間培養した。なお、対照として、精製組換 C
TGF (0、 1、 10、 30または 50ng/mlのみを含む 0.5%ゥシ胎児血清含有 DMEM培養液で交 換することにより同様に培養した。 次いで、 トリチウム標識チミジン ([3H]Thym idine、 最終濃度: 10〃Ci/ml) を加えさらに 4時間培養した後、 トリチウム標識チ ミジンの細胞への取込みをシンチレ一シヨンカウン夕一を用いて測定した。 結果 を図 4に示す。
抗 CTGF抗体を加えていない培養系に比べ、 抗 CTGF抗体を加えた培養系では、最終 培養において加えたいずれの組換 CTGFの濃度 ( 1、 10、 30または 50ng/nilにおいても、 血管内皮細胞の増殖の有意な阻害効果が確認された。 本試験から、 CTGFに対する 抗体が、 血管内皮細胞の増殖を阻害することが明らかとなった。
[実施例 7 ] ヒト CTGFに対するヒトモノクローナル抗体の調製
< 7 - 1 > ハイプリ ドーマの調製
本実施例におけるモノクローナル抗体の作製は、 実験医学 (別冊) 細胞工学ハ ンドブック (黒木登志夫ら編集、 羊土社発行、 第 66〜第 74頁、 1992年) 及び単クロ ーン抗体実験操作入門 (安東民衛ら著作、 講談社発行、 1991年) 等に記載される ような一般的方法に従って調製した。
免疫原としてのヒト CTGFは、 前記実施例で調製した組換えヒト CTGFを用いた。 被免疫動物としては、 既報に記載のヒト抗体産生トランスジヱニックマウスを 用いた (Nature Genetics, Vol .7, p. 13-21 , 1994 ; Nature Genetics, Vol .15, p.146-156, 1997;特表平 4-504365号公報;特表平 7-509137号公報; 日経サイェン ス、 6月号、第 40〜第 50頁、 1995年等) 。
また、 細胞培養操作は、 マルチウェルマイク口プレートを用いて行った。
該ヒト抗体産生トランスジエニックマウスの各々に、 実施例 2または実施例 2- 2 で調製した部分精製組換ヒト CTGF ( l〃g /匹) を、 完全フロインドアジュバント
(Complete Freund' s Adjuvant) とともにフ ヅ ドパヅド内注射することにより初 回 (0日) 免疫した。 初回免疫から 1週間毎に同組換えヒト CTGFをフッドパッド内 注射により 4回以上追加免疫し、 さらに以下に述べるリンパ節細胞の取得の前々日
にも同様にして最終免疫した。
各々の動物から採取したリンパ節細胞とマウスミエローマ P3/X63-AG8.653 (AT CC No.: CRL 1580) とを 5 : 1で混合し、 融合剤としてポリエチレングリコール 400 0またはポリエチレングリコール 1500 (GIBC0社製) を用いて細胞融合させること によりハイプリ ドーマを作製した。
ハイプリ ドーマの選択は、 10%のゥシ胎児血清 (Fetal Calf Serum, FCS) とァ ミノプテリンを含有する HAT含有 ASF104培地 (味の素 (製) ) 中で培養することに より行った。
各々のハイプリ ドーマクローンの培養上清の、 免疫原として用いた組換えヒト CTGFに対する反応性を、 後述する ELISAにより測定することにより、 各々 A4、 All、 A15、 A29、 B13、 B22、 B29、 B35、 C2、 C26、 C59及び C114と命名したヒトモノクロ —ナル抗体産生ハイプリ ドーマ (ヒト抗ヒト CTGFモノクローナル抗体産生ハイブ リ ドーマ) を得た。
< 7 - 2 > ハイプリ ドーマの ELISAによるスクリーニング
前記く 7— 1 >で行った EL I SAは、 下記のとおりである。
前記実施例で調製した組換えヒト CTGF (0.2 g/ゥエル) を、 ELISA用 96穴マイ クロプレート (コ一二ング (Corning) 社製) の各ゥエルに加え、 室温で 2時間ィ ンキュペートし、組換えヒト CTGFをマイクロプレートに吸着させた。 次いで、 上清 を捨て、 各ゥエルに、 ブロッキング試薬 (200〃1、3%BSA含有リン酸緩衝液) を加 え室温で 2時間ィンキュベートし、 CTGFが結合していない部位をプロックした。 各 ゥエルを、 0.1%の Tween20を含有するリン酸緩衝液 200〃1で 3回洗浄した。このよう にして、各ゥエルを組換えヒト CTGFでコ一ティングしたマイクロプレートを作製し た。
各ゥエルに、 各々のハイプリ ドーマの培養上清 (100〃1) を加え、 40分間反応 させた後、 各ゥエルを、 0.1 の Tween20を含有するリン酸緩衝液 200 / 1で 3回洗浄 した。
次いで、 ビォチンで標識したャギ抗ヒトイムノグロブリン抗体 (50〃1、 ァメリ カンコーレックス社製) を加え、 室温下で 1時間インキュベートした。
マイクロプレートを、 0. 1%Tween20を含有するリン酸緩衝液で洗浄後、 ゥシ血清 アルブミン (BSA、 lmg/ml) を含有する 0.5Mの NaClと 20mMの HEPESからなる溶液 (pH7. 0) で 1000倍に希釈したストレプトアビジン- ガラクトシダ一ゼ (Strep toavidin- ? -galactosidase, 50〃1、 Gibco BRL社製) ) を各ゥ ルに加え、 室温 下で 30分間ィンキュベートした。
次いで、 マイクロプレートを、 0. 1¾Tween20を含有するリン酸緩衝液で洗浄後、 lmg/mlの BSAを含有する lOOmMの NaCl、lmMの MgCl2及び 10mMのリン酸緩衝液からなる 溶液 (PH7.0) で希釈した 1 %の 4-メチル -ゥンベリフェリル-/? -D-ガラクトシド (4-Methyl-umbelliferyl- /5 -D-galactoside 50 U シグマ ( Sigma) 社製) を 各ゥエルに加え、 室温下で 10分間インキュベートした。各ゥエルに、 1Mの Na2C0; ( 1 00 1) を加え、 反応を止めた。 波長 460nm (励起: 355nm) での蛍光強度をフルォ ロスキャン I Iマイクロプレートフルォロメ一夕一 (Fluoroscan I I microplate f luorometer、 フロー研究所 (F low Laboratories Inc . ) (製) ) で測定した。 < 7 - 3 > ヒトモノクローナル抗体の大量調製
ICRヌードマウス (雌、 7〜8週齢、 チャールズリバ一社製) に、 前記の各々のハ イブリ ドーマクローン (各々 10s— 10'個 /0. 5ml/マウス) を、 腹腔内注射した。 10〜 20日後、 マウスを麻酔下で開腹し、 常法により採取した腹水から各々のモノクロ ーナル抗体を大量に調製した。
< 7 - 4 > ヒトモノクローナル抗体の精製
前記 < 7— 3〉で取得した各々のモノクローナル抗体腹水を遠心して得た遠心 上清を、 0.06Mの酢酸緩衝液 (pH4. 0) で 3倍に希釈し、 1Nの塩酸を加え pHを 4.8に調 整した。 次いで、 力プリル酸 (Capryl ic ac id, 和光純薬工業製) を、 腹水 lmlに 対して 0.033mlになるように室温下で撹拌しながら少しずつ加え、 撹拌しながら 3 0分間反応させた。 次いで、 遠心分離 (10,000rpm、 20分間) し、 抗体以外の蛋白
を沈殿させた。 遠心上清を回収し、 フィル夕一 (ミリポア社製) で濾過し、 白沈 を除いた。 得られた濾液を、 リン酸緩衝液で透析 (2時間) した。
透析後、 硫酸アンモニゥム (26.2g/100ml) を撹拌しながら少しずつ加え、 撹拌 しながら 4°Cで 120分間反応させた。 次いで、 遠心分離 (10, 000rpm、 20分間) して、 沈殿物を回収した。 回収した沈殿物に、 リン酸緩衝液を加え、 リン酸緩衝液で透 析 (4° (、 24時間) し、 各々の精製モノクローナル抗体を得た。
< 7 - 5 > アイソタイプの決定
ヒトモノクローナル抗体アイソタイプ決定用キット (アメリカン 'コ一レック ス社製) を用い、 該キッ トに添付の実験操作プロトコ一ルに従って操作を行い、 前述のヒト抗体産生トランスジエニックマウス由来のヒト抗ヒト CTGFモノクロ一 ナル抗体 (A4、 All, A15、 A29、 B13、 B22、 B29、 B35、 C2、 C26、 C59及び C114) の 各々のアイソタイプを決定した。 いずれも IgG2/ であることが確認された。
[実施例 8 ] CTGFを介する血管内皮細胞の細胞接着に対する抗ヒト CTGFモノク ローナル抗体の効果
最近の研究により CTGFが細胞接着に関与することが明らかになつている (Exp. Cell . Res. , Vol.233, p.63-77, 1997) 。 そこで、 前記種々のヒ卜抗ヒト CTGFモ ノクローナル抗体の、 CTGFを介する血管内皮細胞の細胞接着に対する阻害効果を 下記のようにして試験した。
96穴マイクロタイ夕一プレートの各ゥエルに、 0.1%BSA及び前記実施例で調製 した組換えヒト CTGF ( 1乃至 20 zg/ml) を含むリン酸緩衝液を加え、 4°Cでー晚ィ ンキュベ一トし、 組換えヒト CTGFをマイクロプレートに吸着させた。 次いで、 上 清を捨て、 各ゥヱルに、 ブロッキング試薬 (6%BSA含有リン酸緩衝液) を加え、 4°Cで 2時間ィンキュベ一トし、 CTGFが結合していない部位をプロックした。各ゥェ ルを、リン酸緩衝液で 3回洗浄した。
20 g/mlの濃度の組換えヒト CTGFをコーティングした各ゥエルに、 前記で調製 した各々のヒト抗ヒト CTGFモノクローナル抗体 (10〃g/ml) を加えた。 室温で 15
分間反応させた後、 各ゥエルに、 BAE細胞 (3 x l(T個/ well。 血清を含有しない DM EM培地中) を蒔いた。 37°Cで 1時間培養した後、 各ゥヱルに血清を含まない DMEM培 地を加え、 マイクロプレートの全ゥヱルをシールし、 プレートを上下反転させ、 さらに 15分間静置した。 シールを取り除き、 プレートに接着しなかった細胞を除 去した。 次いで、 各ゥエルに 0.5%MTTを加え、 37°Cで 4時間培養した。 培養後、 各 ゥエルを、 塩酸 (34 z l) を含有するイソプロパノール (9.966ml) で希釈した後、 BAE細胞のプレートへの接着の程度を吸光度 (波長: 570讓) を測定することによ り解析した。 細胞内に取り込まれた MTT (黄色) は、 、 ミ トコンドリア内で MTTホ ルマザン (MTT formazan) に変換されることにより青色を発色するようになる。 なお、 対照試験として、 いずれの抗体も加えない場合の細胞接着の程度、 並び にヒト抗ヒト CTGFモノクローナル抗体の代わりにヒト CTGFに反応性を有しないヒ ト由来 IgG抗体 (10 g/ml) を用いた場合の細胞接着の程度についても前記と同様 にして行った。 結果を図 5に示す。
本試験の結果、 CTGFを介する血管内皮細胞の細胞接着は、添加した CTGFの濃度に 依存して増大することが明らかとなった。また、この血管内皮細胞の細胞接着が、ヒ ト CTGFに対する抗体により有意に阻害されることが明らかとなった。
[実施例 9 ] CTGFによる血管内皮細胞の増殖の誘導、並びに該細胞増殖に対する 抗 CTGFモノクローナル抗体の効果
96穴マイクロプレートを用いて、 BAE細胞 (1 X 10Vゥエル) を、 10%ゥシ胎児血 清 (FCS) 含有 DMEM培地中で 3日間培養した。 培地を、 0.5%ゥシ胎児血清を含有す る DMEM培地に交換し、 さらに 24時間培養した。
次いで、 各ゥエルに組換えヒト CTGF (30ng/ml ) 並びに前記で調製した各ヒト抗 ヒト CTGFモノクローナル抗体 (10〃g/ml、 0.5%FCS含有 MEM培地中) を添加して 18時間培養した後、 [ 3H] -Thymidine ( l/ Ci/ml) を含有する 0.5%FBS含有 DMEM培地 を添加してさらに 4時間培養した。
細胞を回収 (ハ一ベスト) して、 細胞内に取り込まれた [ 3H]- Thymidineの量を
液体シンチレ一シヨンカウン夕一 (ベックマン社製) にて測定した。 なお、 対照として、 いずれの抗体も添加せず CTGF (30ng/ml ) のみを加えて同様 にして培養した場合、 並びにヒト抗ヒト CTGFモノクローナル抗体の代わりにヒト CTGFに反応性を有しないヒト由来 IgG対照抗体 (10〃g/ml) を用いて同様にして培 養した場合についても同様にして試験した。
さらに、 本試験では、 BAE細胞自身がオートクラインに CTGFを産生すると考えら れることから、 CTGF、抗 CTGF抗体及び該対照 IgG抗体のいずれをも添加しない場合、 CTGFを加えずに抗 CTGF抗体のみを加えた場合、並びに CTGFを加えずに対照 IgG抗体 のみを加えた場合の細胞増殖についても前記と同様にして試験した。
結果を図 6に示す。 この結果血管内皮細胞自身がオートクラインに産生する CT GFにより増殖し、この増殖は、外から CTGFを加えることによりさらに増大されるこ とが分かった。さらに、血管内皮細胞によりオートクラインに産生される CTGF、及び 外から加えた CTGFにより誘導される血管内皮細胞の細胞増殖のいずれもが、 CTGFに 対するモノクローナル抗体で有意に抑制されることが明らかとなった。
[実施例 1 0 ] CTGFによるインオボ (in ovo) での血管新生の誘導、 並びに該 血管新生に対する抗 CTGF抗体の効果
CTGFが、インビボにおいて、血管新生を誘導する活性を有するか否か、並びに該血 管新生の誘導に対する抗 CTGF抗体の効果を、 既報の鶏胚漿尿膜法 (Chorioallant oic Membrane Assay(CAM法)) を用いたインオボ (in ovo) 試験により試験した。 本 CAMアツセィは、 既報に記載の方法に準じて下記のようにして行った (Cancer Research, Vol .50, p.4131-4138, 1990 ; Anticancer Research, Vol . 10, p.311- 316, 1990 ; Biochem. Biophys . Res. Co匪 n., Vol . 171 , No.3, p. 1264-1271 , 1 990) o
下記のいずれかの試料を、 リン酸緩衝液 (20/z l) に溶解し、 殺菌した Whatman GF/Bガラス繊維フィルターディスク (直径: 6腿、 Reeve- Angel製) に加えた。 各 試料は、 前記実施例で調製したものを用いた。 また、 本試験では、 対照としてゥ
シ由来の繊維芽細胞増殖因子 (bovine fibroblast growth factor; bFGF) を用い たが、 FGFは繊維芽細胞の増殖を誘導する因子として知られている。
( 1 ) ヒト組換え CTGF (0.5、 1または 2〃g) のみ。
( 2) ヒト組換え CTGF (lug) 及び各ヒト抗ヒト CTGFモノクローナル抗体 (20 jug) の組み合わせ。
(3) ヒト組換え CTGF ( g) 及びゥサギ抗ヒト CTGFポリクロ一ナル抗体 (20 0 zg) の組み合わせ。
(4) ヒト組換え CTGF (lj g) 、 及びいずれの抗原での免疫も施していない二 ュジ一ランドホワイ トゥサギ (NZW、 Simunek, Inc.製) の血清から単離したプレ イミュ―ン (pre-immune) ポリクロ一ナル抗体 (20または 200>wg) 。
( 5) ゥシ組換え FGF (1または 2 /g) のみ。
( 6) ゥシ組換え FGF (1 g) 及びゥサギ抗ヒト CTGFポリクロ一ナル抗体 (200 JLLg) の組み合わせ。
(7) ゥシ組換え FGF (lug) 及び前記プレイミューンポリクロ一ナル抗体 (2 00 /g) の組み合わせ。
次いで該ディスクを、 卵殻に作った窓穴から、 ニヮトリ胚 (10日齢) の鶏胚漿 尿膜上に静置した。 対照には、 同量のリン酸緩衝液を同フィル夕一ディスクに加 えたものを用いた。 38°Cで 5日間インキュベーションした後、 各々の鶏卵に 10%ホ ルマリンを含むリン酸緩衝液を注射し、 マウス胚を致死させた。 次いで、 鶏胚漿 尿膜を切り出し、 10%ホルマリン含有リン酸緩衝液で固定化し、 血管新生の状況 をメディカルニヅコ一ルレンズにて拡大し写真撮影することにより解析した。 試 験は、 各試料につき、 各々 2乃至 7回行った。
撮影像を図 7乃至図 13に示した。また、顕微鏡下で観察される血管新生の程度を下 記のような基準に従ってスコア化し、複数回の試験の平均値を算出した。結果を図 14に示す。
(スコア)
ディスクに向かう血管新生が認められない 0点
ディスクに向かう血管新生が認められないとは言えない 0.5点
ディスクに向かう血管新生が弱いながら認められる 1点
ディスクに向かう血管新生が有意に認められる 2点
ディスクに向かう血管新生が強く認められる 3点
本試験の結果、 CTGFの濃度に依存して血管新生が誘導されること、並びにこの C
TGF依存的な血管新生は、 CTGFに対する抗体で有意に阻害されることが明らかとな つた。 産業上の利用の可能性
本願発明により初めて提供されるヒト由来 CTGFまたはその一部に反応性を有す る抗体または抗体の一部を含んでなる医薬組成物は、 血管内皮細胞の増殖もしく は遊走または血管新生の抑制または阻害、 それらに起因する種々疾患症状の治療、 並びにそのような疾患の進行に伴い起こる血管内皮細胞の増殖もしくは遊走また は血管新生に起因する種々の病的症状の治療に極めて有用である。
具体的には、 本願発明の医薬組成物は、 糖尿病性網膜症に代表される糖尿病に 伴う眼疾患、 動脈硬化症や PTCA法による動脈硬化巣の治療後におこる再狭窄、 慢 性関節リウマチ、 乾癬や強皮症などの皮膚疾患、 緑内障等の眼疾患、 腫瘍の増殖 もしくは転移、 及び種々臓器における炎症などに見られる病理的症状を治療を可 能とするものである。