WO1998022156A1 - Oesophage artificiel - Google Patents

Description

人工食道

技術分野 本発明は、 人工食道に関する 明

背景技術

田

食道ガンなどのために食道を切除した後の食道再建のための人工 食道としては、 生体由来材料、 及び高分子材料などからなる人工材 料が使用されているが、 食道欠損部分における食道上皮の再生を促 進して食道を新生させ、 食道再建後には人工材料を残留させない人 ェ食道として、 シリ コーンチューブの外面にコラーゲンの被覆層を 形成した人工食道 （特開平 2 — 1 0 9 5 6 9号） が報告されている。 しかし、 この人工食道におけるコラーゲン被覆層は、 体液との接触 にて膨潤し軟化するので縫合が困難であ り、 術者に高度な技術を要 求するものであった。 高度な技術を有さない術者の縫合では、 縫合 部からの出血や空気もれが生じやすく 、 縦隔食道として適用した場 合には、 あま り良好な予後は得られず、 適用生体を死に至らしめる 場合もある。

発明の開示 そこで、 食道欠損部分における食道上皮の再生を促進して食道を 新生させるというコラーゲン独自の効果を所要時間保持でき、 そし て食道の新生とともに生体によって分解吸収されて異物を生体内に 残存させず、その縫合を行う術者に高度な技術を要求しない物性（強 度） を有し、 縫合部からの出血や空気漏れがなく 、 また食道再建後 に容易にステン トを抜去する ことのできる人工食道の開発が求めら れてきた。

本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、 微細線維化コラーゲン層を有する人工食道が優れた効果を有するこ とを発見し、 本発明を完成させるに到った。

本発明は、 人工食道であってチューブの外面に微細線維化コラ一 ゲン層を有することを特徴とする。 本発明はまた、 該人工食道を製 造する方法であって、 チューブの外面に、 微細線維化コラーゲン層 を形成し ； そして架橋処理に付す工程を含むことを特徴とする。 本発明の人工食道は、 内腔保持用芯材と しての役割を果たす チューブの外側に、 コ ラーゲン分子からなる微細線維が多重に折り 重なった不織布状のコ ラーゲン層を有する人工食道である。 この微 細線維化コ ラーゲン層の厚さは、 好ましく は約 2 〜 1 0 mm、 特に約

5 mmである。 また、 内腔保持用芯材としてのチューブは、 例えば、 医療用シリ コーンシー ト （膜厚 ： 好ましく は約 0 . 5 〜 5 mnu 特に 約 1 〜 2 mm) からなる管を使用する。 本発明の人工食道は、 内腔保 持用芯材であるチューブと共に生体に縫合するため、 用いるチュー ブの内径は、 好ましく は約 1 5 〜 3 0 關、 特に約 2 0 關 であ り 、 場合によって異なる こともできる。 チューブの長さも、 適用する場 合によって異なることができる。 本発明の人工食道は、 それのみで も簡単に縫合することのできる強度を有するが、 更に高い強度を必 要とする場合には、 微細線維化コラーゲン層の少なく とも片面 （外 側） に、 更にコ ラーゲン膜の層を有していてもよい。 このコラ一ゲ ン膜は、 微細線維化コ ラーゲン層とは異なって、 コ ラーゲン分子が モノマ オリ ゴマーの状態で分散しているアモルファス構造のコ ラーゲン膜である。

本発明の人工食道の微細線維化コラーゲン層の原料であるコラ一 ゲンは、 従来から用いられている各種コラーゲン、 好ましく は中性 可溶化コラーゲン、 酸可溶化コラーゲン、 アルカ リ可溶化コラーゲ ン、 又は酵素可溶化コラーゲンである。 これらのうち、 アルカ リ可 溶化コラーゲン及び酵素可溶化コラーゲンは、不溶性コラーゲンを、 それぞれアルカ リ又は酵素 （例えば、 ペプシン、 ト リ プシン、 キモ ト リ プシン、 パパイ ン、 プロナーゼなど） 処理したもので、 これら の処理によ り コラーゲン分子中の抗原性の強いテロペプチ ド部分が 除去されて抗原性が低減されているので、 特に好ましく使用するこ とができる。 これらコ ラーゲンの由来は特に限定されず、 一般にゥ シ、 ブ夕、 ゥサギ、 ヒッジ、 カンガルー、 鳥などの動物の皮膚、 骨、 軟骨、 腱、 臓器などから抽出及び精製することによって得られるコ ラーゲンを用いる ことができる。

上記のコ ラーゲンを材料として、 本発明の人工食道を調製するに は、 人工食道の内腔保持用芯材としてのチューブ、 例えば上記した ような医療用シリ コーンシー トからなるチューブの外面に、 微細線 維化コラーゲン層を形成する。

微細線維化コ ラーゲン層は、 好ましく は以下の方法でチューブの 外面に形成する ことができる。 まず、 上記のような抽出及び精製後 のコラーゲンの約 1 N 塩酸溶液 （約 pH 3 ) (好ましく は約 0 . 5 〜 3重量％、 特に約 1 重量％ ) を調製し、 上記のチューブ （棒状の芯 材、 例えばテフロン製の棒を用いてもよい） をコ ラーゲン塩酸溶液 に浸漬する （該チューブ内腔は、 棒状体を嵌合させるなどして封鎖 しておく） などの方法によって、 チューブの外面に均一な厚さのコ ラーゲン塩酸溶液層を形成する。 コラーゲン塩酸溶液層の厚さは、 好ま しく は約 2 0 〜 1 0 O mm、 特に約 5 0 mm とする。 これを、 好 ましく は約一 1 5 〜 0 °C、 特に約 0 °Cで、 好ましく は約 6 〜 2 4時 間、 特に約 1 2時間凍結する。 凍結する ことによって、 塩酸溶液中 に分散しているコラーゲン分子の間に微細な氷が形成され、 コラ一 ゲン塩酸溶液が層分離を起こし、 コラーゲン分子が再配列すること によって微細線維化する。 次に、 上記の凍結させたコラーゲン塩酸 溶液層を外面に有するシリ コーンチューブを、 真空下、 好ましく は 約一 1 5 〜 0 °C、 特に約 0 °Cで、 好ましく は約 1 2 〜 4 8時間、 特 に約 2 4時間凍結乾燥する。 凍結乾燥することによって、 コラーゲ ン分子間の微細な氷が気化するとともに、コ ラーゲン塩酸溶液層力 コラーゲン分子からなる微細線維が多重に折り重なった不織布状の コラーゲン層となる。 更にこの微細線維化コラーゲン層をその外面 に有するチューブを、 プレス装置を用いて均一に圧縮する。 本発明 の人工食道においては、圧縮後の微細線維化コラーゲン層の厚さは、 好ま しく は約 2 〜 1 0 mm、 特に約 5 mm である。 したがって、 圧縮 前のコラーゲンの層の厚さに対する圧縮後の厚さの比率である圧縮 比は、 好ましく は約 0 . 0 5 〜 0 . 3 、 特に約 0 . 1 である。

次に、 その外面に上記の微細線維化コ ラーゲン層を形成した チューブを、 架橋処理に付す。 架橋処理に付すことによって、 本発 明の人工食道を生体に適用した後も所望の期間残存させるよう に調 節する。 架橋方法と しては、 ァ線、 電子線、 紫外線、 ダルタールァ ルデヒ ド及びエポキシなどを用いた架橋法、 又は熱を用いた熱脱水 架橋法が挙げられるが、 架橋度をコン ト ロールしゃすく 、 架橋剤の 生体への影響が問題とならない熱脱水架橋を行うのが好ましい。 熱 脱水架橋のためには、 上記で得られたコ ラーゲン層を形成した チューブを、 真空下、 好ま し く は約 1 0 5 〜 1 5 0 °C、 特に約 1 2 0 〜 1 5 0 °Cで、好ましく は約 6 〜 2 4時間、特に約 6 〜 1 2時 間加熱する。 約 1 0 5 °C未満では十分な架橋反応が起きない。 一方、 約 1 5 0 °Cを超えるとコラーゲンが変性してしまう。 尚、 チューブ に代えて芯材を用いた場合には、 この架橋後のチューブから該芯材 を取り外し、 該チューブ内腔にシリ コーンチューブを嵌合させれば よい。

本発明の、 チューブの外面に微細線維化コラーゲン層を有する こ とを特徴とする人工食道は、 それのみで簡単に鏠合することのでき る強度を有するが、 更に高い強度を必要とする場合は、 微細線維化 コラーゲン層の少なく とも片面 （外側） に、 上記したようなァモル ファス構造のコ ラーゲン膜を更に形成させてもよい。 その外側にコ ラーゲン膜を形成した、 微細線維化コラーゲン層を有する人工食道 は、 以下の様に作成することができる。

上記の方法にて作製した、 その外面に微細線維化コラーゲン層を 形成したチューブ （前記と同様芯材を用いてもよい） の外面に、 上 記と同様に調整した抽出及び精製後のコラーゲンの約 1 N 塩酸溶液 ( pH 約 3 ) (コ ラーゲン濃度は、 好ましく は約 0 . 5 〜 3重量％、 特に約 1 重量％) を用いて、 均一な厚さのコラーゲン塩酸溶液層を 形成し、 乾燥する （このコ ラーゲン溶液層の形成と乾燥操作を複数 回、 好ま し く は 1 0 回程度繰り返す）。 コ ラーゲン塩酸溶液層の厚 さは、 全体と して好ま しく は約 5 〜 2 0 mm、 特に約 5 〜 1 0 mm と する。 最終的に、 コラーゲン分子が分散しているアモルファス構造 のコラーゲン膜の層が該微細線維化コラーゲン層の外側に形成され る。 尚、 先の熱脱水架橋は、 この状態のものに行う。 また、 芯材を 用いた場合には、 前記と同様、 架橋後に該芯材とシリ コーンチュー ブとの交換を行う。 また、 アモルファス構造のコラーゲン膜の層を 該微細線維化コラーゲン層の両側に形成させた人工食道は、 微細線 維化コラーゲン層の形成時に、 シリ コーンチューブに代え、 棒状の 芯棒を用いて微細線維化コラーゲンのみからなるチューブを先ず作 製し、 次いで、 該チューブを、 上記の同じコラーゲン塩酸溶液に浸 漬するなどの方法にて、 微細線維化コラーゲン層の内外面上に、 均 —な厚さのコラーゲン塩酸溶液層を形成し、 乾燥すればよい （上記 と同様、 コ ラーゲン溶液層の形成と乾燥操作は複数回繰り返す）。 この場合も、 形成するコラーゲン塩酸溶液層の厚さは、 外面のみに 形成した場合と同様にする。 また、 熱脱水架橋もこの状態のものに 行う。 最後に、 該芯棒を抜去し、 シリ コーンチューブを両面にァモ ルフ ァ ス構造のコ ラーゲン膜を有する微細線維化コ ラーゲンの チューブの内腔に嵌合する。

上記のよう に、 コラーゲン膜の層を微細線維化コラーゲン層の少 く とも外側に形成する ことによって、 微細線維化コラーゲン層の表 面の不織布状のほつれの状態が、 アモルファス構造のコラーゲン膜 によって被覆されると共に該アモルファス構造のコ ラーゲンの一部 は、 該微細線維化コラーゲン層中に侵入するので、 本発明の人工食 道の物性が更に上昇し、 縫合性及び体内での残存性がよ り改善され る。

尚、 微細線維化コ ラーゲン層及び Z又はアモルフ ァス構造のコ ラ一ゲン膜の層中に b _ F G F (線維芽細胞増殖因子） を微量存在 せしめておく ことが好ましい。 食道新生のスピー ドをはやめること ができると共に、 よ り正常な組織構造を有する食道が再建されるか らである。 尚、 b — F G Fを存在せしめる方法と しては、 例えば b — F G F含有ゼラチンハイ ド口ゲルマイ ク ロスフェアを P B S (リ ン 酸緩衝溶液） に溶解したものを生体への適用の直前又は生体へ縫合 した直後に注射器にて該層中に注入する方法が挙げられる。 発明を実施するための最良の形態

実施例

ブタ皮膚由来の酵素可溶化コラーゲンを約 1重量％含む 1 N 塩酸 溶液に、 長さ約 9 c m、 直径約 2 2 mm のテフロ ン棒を浸漬し、 引き 上げる こ とによって、 テフロン棒の表面に厚さ約 5 0 mm のコ ラ一 ゲン塩酸溶液を形成し、 これを約 0 °Cで約 1 2時間凍結した。 これ を真空下、 約 0 °Cで約 2 4時間凍結乾燥して、 コ ラーゲン塩酸溶液 層を微細線維化コラーゲン層とした。 表面に微細線維化コラーゲン 層が形成されたテフロン棒を圧縮器によって、 微細線維化コラーゲ ン層の厚さが約 5 mm となるまで微細線維化コ ラーゲン層を圧縮し た。 次に、 圧縮した微細線維化コラーゲン層をその表面に有するテ フ ロ ン棒を再び先のコ ラーゲン塩酸溶液に浸 して、 微細線維化コ ラ一ゲン層の外面上にコラーゲン塩酸溶液層を形成させ、 次いで風 乾した。このコ ラーゲン塩酸溶液への浸漬と風乾を 1 0 回繰り返し、 微細線維化コ ラーゲン層の外面上に厚さ 0 . 5 mm のアモルフ ァス 構造のコ ラーゲン膜の層を形成した。 この両コ ラーゲン層をその外 面に有するテフロン棒を、 更に真空下、 1 0 5 °Cで 1 2時間加熱し、 該コラーゲン層に熱脱水架橋処理を行った。 そして、 テフロン棒を 取り外し、 両コラーゲン層からなるチューブの内腔に、 長さ約 9 cm、 内径約 2 0 mm , 厚さが約 1 mmのシリ コーンチューブを嵌合せしめ、 本発明の人工食道を得た。

ビーグル犬の胸部食道 5 c m を本発明の人工食道で置換した。

尚、 本発明の人工食道を適用する直前に、 b — F G F l O O z g を含有するゼラチンハイ ド ロゲルマイ ク ロス フェア 2 8 0 mg を 1 m l の P B S に溶解したものをコラーゲン層に注入した。

術後 1 ヶ月後に該置換部を観察した結果、 該置換部には正常な食 道組織が再建されている ことが確認された。

従来の人工食道では、 その再建に 2 〜 3 ヶ月 を要し、 しかも置換 手術における縫合操作の巧拙により、 再建前に適用生体を死に至ら しめることがあったことに較べ、 本発明のそれは格段に優れている ことが確認された。

本発明の人工食道は、 従来の人工食道に比べて、 優れた物性、 特 に優れた縫合性を有するため、 従来の人工食道のよう に、 縫合する 術者に高度な技術を要求することがなく 、 そのため、 術者の縫合技 術の巧拙に起因する鏠合箇所からの空気もれや出血は殆ど見られな い。 また、 コラーゲン層は、 生体に適用後、 すぐには溶解せず、 所 望の期間その形状を保持しながら、 食道組織の再生と上皮化を促進 し、 これに応じて、 生体の細胞がコラーゲンからなる層内に侵入し、 コラーゲンからなる層を足がかり として増殖し、 食道を再生して、 徐々 に分解、 吸収されるコラーゲンからなる層と入れ替わる。 そし て最終的には、 生体に適用された人工食道は消失して、 食道が完全 に再生する （正常な組織構造を有する食道が再建される） ので食道 の再建後、 内腔保持用芯材としての役割を終えたチューブは容易に 除去することができる。 産業上の利用可能性

本発明の人工食道は、 食道欠損部分における食道上皮の再生を促 進して食道を新生させるという コラーゲン独自の効果を所定の期間 保持し、 食道の新生とともに生体によって分解吸収されるため異物 を生体内に残存させず、それのみで縫合に耐える強度を有するので、 術者の縫合技術の巧拙に起因する縫合部からの出血や空気漏れがな く 、また食道再建後に容易にステン トを抜去することのできるため、 好適に使用する ことができる。

Claims

請 求 の 範 囲

1 . チューブの外面に微細線維化コラーゲン層を有する ことを特徴 とする人工食道。

2 . 微細線維化コラーゲン層が、 その片面又は両面に、 更にァモル ファス構造のコラーゲン膜の層を有する請求の範囲第 1 項記載の人 ェ食道。

3 - 微細線維化コラーゲン層が、 成長因子と しての b— F G Fを保 持し得る層と しても機能するものである請求の範囲第 1 項又は第 2項に記載の人工食道。

4 . 請求の範囲第 1 項記載の人工食道を製造する方法であって、 チューブの外面に、 微細線維化コラーゲン層を形成し ； そして架橋 処理に付す工程を含む方法。

5 . 微細線維化コラーゲン層が、 コラーゲン溶液の層を凍結し ； 凍 結乾燥し ； そして圧縮する こ とによって形成される請求の範囲第 4項記載の方法。

6 . 架橋処理が、 熱脱水架橋処理である請求の範囲第 4項記載の方 法。