JPWO2021039875A5 - - Google Patents

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本発明は、ベリリウム酸化物からベリリウム溶液を製造する製造方法に関する。また、本発明は、ベリリウム、水酸化ベリリウム、及び、酸化ベリリウムの製造方法、並びに、ベリリウム酸化物にも関する。
ベリリウムは、Be-Si-O系の鉱石、及び、Be-Si-Al-O系の鉱石に含まれていることが知られている。Be-Si-O系の鉱石の例としては、ベルトランダイト及びフェナサイトが挙げられ、Be-Si-Al-O系の鉱石の例としては、ベリル及びクリソベリルが挙げられる。以下では、これらのようにベリリウムを含有する鉱石をベリリウム鉱石と呼ぶ。また、ベリリウム鉱石は、ベリリウム酸化物の一例である。
ベリリウム、ベリリウムを含む化合物、及び、ベリリウムを含む合金の何れかを製造する場合、まず、ベリリウム鉱石を溶媒に溶解させることによりベリリウム鉱石からベリリウムを抽出する。しかしながら、ベリリウム鉱石を溶媒に溶解させることは容易ではない。ベリリウム鉱石を溶かしやすい溶媒としては、硫酸などの酸性溶液が知られているが、ベリリウム鉱石は、酸性溶液に対しても溶解しにくい。
そのため、非特許文献1には、ベリリウム鉱石に対して焼結処理又は溶融処理などの前処理を施すことによって、ベリリウム鉱石を溶媒に溶解させることができると記載されている。
"Beryllium"、[online]、Wikipedia、[令和1年6月25日検索]、インターネット〈URL:https://en.wikipedia.org/siki/Beryllium
しかしながら、ベリリウム鉱石を溶媒に溶解させるための前処理には、とても大きなエネルギーを要する。非特許文献1の"Production"の項目によれば、焼結処理を施す場合の温度は、例えば770℃であり、溶融処理を施す場合の温度は、例えば1650℃である。
本発明の一態様に係る発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ベリリウム酸化物を溶解することによりベリリウム溶液を製造する製造方法であって、エネルギー効率が高い新規な製造方法を提供すること。
本発明の一態様に係るベリリウム溶液の製造方法は、ベリリウム酸化物を含む酸性溶液を誘電加熱することによって、ベリリウム溶液を生成する主加熱工程を含む。
本発明の一態様に係るベリリウムの製造方法は、本発明の一態様に係るベリリウム溶液の製造方法に含まれる各工程と、上記ベリリウム溶液を無水化することによってベリリウム塩を生成する無水化工程と、上記ベリリウム塩を溶融塩電解することによってベリリウムを生成する電解工程と、を含んでいる。
本発明の一態様に係る水酸化ベリリウムの製造方法は、本発明の一態様に係るベリリウム溶液の製造方法に含まれる各工程と、上記ベリリウム溶液を塩基で中和することによって水酸化ベリリウムを生成する中和工程と、を含んでいる。
本発明の一態様に係る酸化ベリリウムの製造方法は、本発明の一態様に係るベリリウム溶液の製造方法に含まれる各工程と、上記ベリリウム溶液を加熱することによって酸化ベリリウムを生成する第3の加熱工程と、を含んでいる。
本発明の一態様に係るベリリウム酸化物は、結晶性を有し、且つ、表面に複数の凹部が形成されているベリリウム酸化物であって、上記複数の凹部のうち一部又は全部の凹部は、開口部の形状が結晶の単位格子の形状を反映した形状を有する。
本発明の一態様によれば、ベリリウム酸化物を溶解することによりベリリウム溶液を製造する製造方法であって、エネルギー効率が高い新規な製造方法を提供することができる。
本発明の第1の実施形態に係る塩化ベリリウム溶液の製造方法を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施形態に係るベリリウムの製造方法、水酸化ベリリウムの製造方法、及び酸化ベリリウムの製造方法を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態に係るベリリウム溶液の製造方法に含まれる予備加熱工程及び主加熱工程を実施する加熱装置の概略図である。 本発明の実施例群及び比較例群を含む実験1~6の実験条件をまとめた表である。 本発明の一実施例に含まれる主加熱工程における容器の温度変化を示すグラフである。 本発明の一実施例における予備加熱工程の実施前及び実施後におけるベリルの顕微鏡像である。 図4に示した実験1~6におけるBe、Al、及びSiの溶解量をまとめた表である。 図4に示した実験1~6の実験結果をまとめた表である。 図4に示した実験4のフェナサイト及び実験6のベリルにおいて、主加熱工程を実施した場合の酸性溶液の最高温度とベリリウムの溶解度との相関関係を示すグラフである。 図4に示した実験1~6であって、追加で実験を行った実験1~6における各元素の溶解量をまとめた表である。 図4に示した実験1~6であって、追加で実験を行った実験1~6の実験結果をまとめた表である。
〔第1の実施形態〕
(ベリリウム溶液の製造方法M10)
本発明の第1の実施形態に係るベリリウム溶液の製造方法M10について図1を参照して説明する。図1は、ベリリウム溶液の製造方法M10のフローチャートである。なお、以下においては、ベリリウム溶液の製造方法M10のことを単に製造方法M10とも称する。本実施形態では、ベリリウムの塩酸塩である塩化ベリリウム(BeCl)の水溶液であるBeCl溶液の製造方法について説明する。しかし、製造方法M10を用いて製造するベリリウム溶液は、BeCl溶液に限定されるものではなく、ベリリウムの硫酸塩である硫酸ベリリウム(BeSO)の水溶液であるBeSO溶液であってもよいし、ベリリウムの硝酸塩である硝酸ベリリウム(Be(NO)の水溶液であるBe(NO溶液であってもよいし、ベリリウムのフッ化水素酸塩であるフッ化ベリリウム(BeF)であってもよいし、ベリリウムの臭化水素酸塩である臭化ベリリウム(BeBr)であってもよいし、ベリリウムのヨウ化水素酸塩であるヨウ化ベリリウム(BeI)であってもよい。
図1に示すように、製造方法M10は、粉砕工程S11と、予備加熱工程S12と、主加熱工程S13と、第1の不純物除去工程S14と、第2の不純物除去工程S15と、を含み、ベリリウム溶液を製造するための原料としてベリリウム鉱石を用いる。ベリリウム鉱石は、ベリリウムを含有する鉱石の総称であり、ベリリウム酸化物の一例でもある。ベリリウム鉱石は、結晶性を有する。ベリリウム鉱石は、主に、ベリリウム及びシリコンを含むBe-Si-O系の鉱石と、ベリリウム、シリコン、及びアルミニウムを含むBe-Si-Al-O系の鉱石と、に分類される。Be-Si-O系の鉱石の例としては、ベルトランダイト及びフェナサイトが挙げられ、Be-Si-Al-O系の鉱石の例としては、ベリル及びクリソベリルが挙げられる。本実施形態では、原料の一例としてベリルを用いて製造方法M10について説明する。
粉砕工程S11は、塊であるベリルを粒状になるまで粉砕する工程である。ベリルを粉砕するために用いる技術は、限定されるものではなく、既存の技術から適宜選択することができ、例えば、ハンマーやボールミルなどが挙げられる。また、ベリルを粉砕するために用いる技術として、複数の技術(例えばハンマー及びボールミル)を組み合わせてもよい。この場合、粉砕工程S11の、第1段階としてハンマーを用い、第2段階としてボールミルを用いればよい。
ベリルをより細かく粉砕することができれば、ベリルの全体積に対する表面積の割合を大きくすることができるので、後述する予備加熱工程S12及び主加熱工程S13において、ベリルに含まれるベリリウムを溶液中に溶解させるために要する時間を短縮することが期待できる。その一方で、ベリルを過度に細かく粉砕しようとした場合、粉砕工程S11に要する時間及びコストが増大する。したがって、粉砕工程S11の実施後に得られるベリルの粒子径は、予備加熱工程S12及び主加熱工程S13に要する時間や、粉砕工程S11に要する時間や、粉砕工程S11に要するコストなどを考慮して決めることが好ましい。
なお、ベリルの粒子径としては、平均径、モード径、及びメジアン径の何れを用いてもよい。ベリルの粒子径分布を測定した場合に、平均径は、得られた粒子径分布の平均値となる粒子径であり、モード径は、粒子径分布の最頻度粒子径であり、メジアン径は、粒子径分布における頻度の累積が50%になる粒子径である。
本実施形態においては、ベリルの平均径が100μmになるように粉砕工程S11を実施する。
(予備加熱工程S12)
予備加熱工程S12は、後述する主加熱工程S13の前に実施する工程であって、ベリルを含む塩基性溶液を誘電加熱する工程である。塩基性溶液としては、特に限定されないが、塩基性の溶質である、水酸化ナトリウム(NaOH)の水溶液又は水酸化カリウム(KOH)の水溶液を採用することができる。本実施形態では、塩基性溶液として、NaOH溶液を用いる。なお、NaOH溶液におけるNaOHの濃度は、適宜調整することができるが、pHが14以上となるように調整されていることが好ましい。
誘電加熱は、所定の周波数を有する電磁波を対象物に印加することによって対象物を加熱する技術の総称であり、印加する電磁波の帯域に応じて、高周波加熱と呼んだり、マイクロ波加熱と呼んだりする。例えば、高周波加熱は、3MHz以上300MHz未満の帯域に含まれる電磁波(いわゆる短波又は超短波)を対象物に印加し、マイクロ波加熱は、300MHz以上30GHz未満の帯域に含まれる電磁波(いわゆるマイクロ波)を対象物に印加する。家庭にも普及している電子レンジは、マイクロ波加熱を実施可能な装置の一例である。
本実施形態では、予備加熱工程S12において、ベリルを含むNaOH溶液に周波数が2.45GHzである電磁波を印加する。なお、ベリルを含むNaOH溶液に電磁波を印加する装置の構成については、図3を参照して後述する。
主加熱工程S13を実施する前に予備加熱工程S12を実施することによって、ベリルの表面に複数の凹部が形成される。これらの複数の凹部のうち一部又は全部の凹部は、開口部の形状が結晶の単位格子の形状を反映した形状を有する。このように、複数の凹部が形成されたベリルの表面は、予備加熱工程S12を実施する前のベリルの表面と比較して、脆弱化する。その結果、予備加熱工程S12を実施した後のベリルは、後述する主加熱工程S13を実施することにより酸性溶液に溶解する。このように、製造方法M10が予備加熱工程S12を含むことにより、主加熱工程S13を単独で実施するだけでは溶解しにくいBe-Si-Al-O系の鉱石(ベリルやクリソベリルなど)を溶解させることができる。したがって、比較的、酸性溶液に溶解しやすいBe-Si-O系の鉱石(ベルトランダイトやフェナサイトなど)のみならず、酸性溶液に溶解しにくいBe-Si-Al-O系の鉱石を出発原料として、塩化ベリリウム溶液を製造することができる。
なお、原料としてベリルのようなBe-Si-Al-O系の鉱石ではなく、ベルトランダイトのようなBe-Si-O系の鉱石を採用する場合、製造方法M10は、予備加熱工程S12を含んでいてもよいし、省略してもよい。
なお、上述したように、予備加熱工程S12を実施されたあとのベリル、及び、予備加熱工程S12を実施されたあとの塩基性溶液であって、ベリリウム酸化物の一例であるベリルと、ベリリウムイオンとを含む塩基性溶液も本発明の範疇に含まれる。この塩基性溶液は、ベリリウム溶液の一例である。
上述したように、開口部の形状が結晶の単位格子の形状を反映した形状を有する凹部が、表面に複数形成されているベリルは、後述する主加熱工程S13により、酸性溶液に溶解する。したがって、予備加熱工程S12を実施されたあとのベリルは、ベリリウム溶液を製造するための原料として好適である。
また、ベリルのようなBe-Si-Al-O系の鉱石は、予備加熱工程S12を実施することなく主加熱工程S13のみを実施した場合、溶解しにくい。しかし、表面に複数の凹部が形成されていることによって、Be-Si-Al-O系の鉱石であっても主加熱工程S13を実施することにより溶解させることができる。
なお、予備加熱工程S12における加熱温度は、適宜設定することができる。ただし、予備加熱工程S12における加熱温度は、ベリルを含む塩基性溶液を収容する容器(例えば、第5の実施形態に記載の容器14)の耐熱温度以下であることが好ましい。例えば、該容器が容器14のようにポリテトラフルオロエチレン製である場合、予備加熱工程S12における加熱温度は、250℃以下であることが好ましい。容器を構成する材料が塩基性溶液に対する耐食性を有し、且つ、耐熱温度が250℃を上回る場合、予備加熱工程S12における加熱温度は、250℃を上回ってもよい。予備加熱工程S12における加熱温度を高められることによって、予備加熱工程S12に要する時間を短縮できる可能性が高い。また、予備加熱工程S12における加熱温度は、180℃以上であることが好ましい。加熱温度が180℃以上である予備加熱工程S12と、後述する主加熱工程S13とを併用することによって、ベリルに含まれる多くのベリリウムを溶液中に溶解させることができる。また、予備加熱工程S12における加熱時間も適宜設定することができるが、例えば、60分以上であることが好ましい。
(主加熱工程S13)
主加熱工程S13は、予備加熱工程S12の後に、ベリルを含む酸性溶液を誘電加熱することによって、ベリリウムが溶解した酸性溶液であるベリリウム溶液を生成する工程である。
酸性溶液としては、特に限定されないが、酸性の溶質である、塩化水素(HCl)、硫酸(HSO)、硝酸(HNO)、フッ化水素(HF)、臭化水素(HBr)、及びヨウ化水素(HI)のうち何れかの水溶液を採用することができる。本実施形態では、酸性溶液として、HCl溶液を用いる。なお、HCl溶液におけるHClの濃度は、適宜調整することができるが、pHが1以下となるように調整されていることが好ましい。
予備加熱工程S12を実施したあとのNaOH溶液に適切な量のHCl溶液を加えることによって、ベリリウムを含む塩基性溶液は、中性を介して、ベリリウムを含む酸性溶液となる。
主加熱工程S13において実施する誘電加熱は、予備加熱工程S12において実施する誘電加熱と同様である。すなわち、本実施形態では、ベリルを含むHCl溶液に周波数が2.45GHzである電磁波を印加する。
誘電加熱を利用してベリリウム酸化物を含む酸性溶液を加熱することにより、従来よりも高いエネルギー効率でベリリウム酸化物を、酸性溶液に溶解させることができる。具体的には、塩化ベリリウム水和物(BeCl・xHO)が溶解した塩酸溶液を得ることができる。したがって、製造方法M10は、エネルギー効率が高い新規な製造方法を提供することができる。
なお、主加熱工程S13における加熱温度は、予備加熱工程S12の加熱温度と同様に、適宜設定することができる。すなわち、ベリルを含む酸性溶液を収容する容器(例えば、第5の実施形態に記載の容器14)がポリテトラフルオロエチレン製である場合、主加熱工程S13における加熱温度は、250℃以下であることが好ましい。また、主加熱工程S13における加熱温度は、180℃以上であることが好ましい。また、加熱工程S13における加熱時間も適宜設定することができるが、例えば、60分以上であることが好ましい。
(第1の不純物除去工程S14)
第1の不純物除去工程S14は、主加熱工程S13の後に実施する工程である。第1の不純物除去工程S14は、第1の元素を吸着する有機化合物を用いて、主加熱工程S13により得られたBeCl溶液から上記第1の元素を除去する工程である。
第1の不純物除去工程S14において除去する第1の元素は、ここで用いる有機化合物によって決まる。第1の不純物除去工程S14において利用可能な有機化合物としては、酸化トリ-n-オクチルホスフィン(TOPO,Tri-n-octylphosphine oxide)、ジ(2エチルヘキシル)リン酸(D2EHPA,Di-(2-ethylhexyl) phosphoric acid)、リン酸トリブチル(TBP,Tri-n-butyl phosphate)、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA,Ethylenediaminetetraacetic acid)が挙げられる。また、第1の不純物除去工程S14において利用可能な有機化合物であって、市販されている有機化合物としては、eichrom technologies社のUTEVA(登録商標)レジンが挙げられる。
TOPOは、Al、Au、Co、Cr、Fe、Hf、Re、Ti、UO 2+、V、Zr、希土類元素、及びアクチノイド元素を吸着することができる。D2EHPAは、Uや、Coや、Niや、Mnなどを吸着することができる。TBPは、Uや、Thなどを吸着することができる。EDTAの類は、Mgや、Caや、Baや、Cuや、Znや、Alや、Mnや、Feなどを吸着することができる。UTEVA(登録商標)レジンは、Uや、Thや、Puや、Amなどを吸着することができる。これらの元素は、第1の元素の例である。
これらの有機化合物は、有機溶媒(例えばケロシンや、シクロヘキサンや、ベンゼンなど)に溶解する。主加熱工程S13を実施した後のHCl溶液に、これらの有機化合物が溶解した溶液を混合し、且つ、撹拌することによって、有機化合物は、第1の元素を吸着する。
第1の不純物除去工程S14において、有機化合物溶液を混合するHCl溶液の液性は、酸性であることが好ましく、pHが2以下であることがより好ましい。この構成によれば、有機化合物がベリリウムを吸着することなく、有機化合物が第1の元素を吸着する効率を高めることができる。なお、HCl溶液の液性を中性に近づければ近づけるほど、有機化合物がベリリウムを吸着する効率が高まり、且つ、第1の元素を吸着する効率が低下する。
本実施形態においては、第1の不純物除去工程S14において用いる有機化合物及び有機溶媒として、TOPO及びケロシンを採用する。ただし、有機化合物及び有機溶媒の各々は、TOPO及びケロシンに限定されるものではなく、上に例示した組み合わせのなかから適宜選択することができる。
主加熱工程S13により得られた、水溶液であるBeCl溶液と、有機溶媒とは、しばらくの間放置しておくことによって2層に分離する。したがって、第1の不純物除去工程S14を実施することにより第1の元素の含有量が抑制されたBeCl溶液と、第1の元素を含有する有機溶媒とは、容易に分離することができる。
第1の不純物除去工程S14を実施することにより、ベリリウム溶液中に含まれる第1の元素の濃度を低下させることができる。その結果として、ベリリウム鉱石を酸性溶液に溶解させることによってベリリウム溶液を製造する場合に、ベリリウム鉱石に上述したようなベリリウム以外の元素である第1の元素が含まれている場合であっても、ベリリウム溶液から、ベリリウム、水酸化ベリリウム、及び酸化ベリリウムの何れかを製造する場合に含まれる第1の元素の濃度を低下させることができる。第1の元素の例としては、ウランやトリウムやプルトニウムやアメリシウムなどが挙げられる。
(第2の不純物除去工程S15)
第2の不純物除去工程S15は、主加熱工程S13の後に実施する工程であって、主加熱工程S13により得られたBeCl溶液の極性を酸性から、中性を介して、塩基性に調整することによって、BeCl溶液から第2の元素を除去する工程を更に含む。なお、本実施形態においては、主加熱工程S13のあとに第1の不純物除去工程S14及び第2の不純物除去工程S15を、この順番で実施するものとして説明しているが、第1の不純物除去工程S14と第2の不純物除去工程S15との順番は、入れ替えることもできる。
本実施形態においては、第2の不純物除去工程S15は、主加熱工程S13を実施した後のベリリウム溶液(ベリリウムを含むHCl溶液)に対して、重曹(NaHCO)を飽和するまで添加する。その結果、該ベリリウム溶液において、中性(pH7)を経た後、ベリリウム以外の元素(例えば、AlやFeなど)が水酸化物(例えば、Al(OH)やFe(OH)など)となって該ベリリウム溶液中に沈殿する。なお、重曹が飽和している状態であっても、Be(OH)は、ベリリウム溶液中に溶解しており、沈殿しない。このように、アルミニウム(Al)及び鉄(Fe)は、第2の元素の例である。
第2の不純物除去工程S15を実施することによりベリリウム溶液中に沈殿したベリリウム以外の元素の水酸化物は、ベリリウム溶液を濾過することにより、容易にベリリウム溶液中から除去することができる。
なお、第2の不純物除去工程S15を実施することによって第2の元素を除去されたベリリウム溶液には、改めてHClを添加することが好ましい。このように、ベリリウム溶液に改めてHClを添加することによって、Be(OH)溶液の極性が、中性を介して、酸性に調整され、溶液中には、純度が高い塩化ベリリウム水和物(BeCl・xHO)が生成される。
このように、第2の不純物除去工程S15を実施することにより、ベリリウム溶液中に含まれる第2の元素の濃度を低下させることができる。その結果として、ベリリウム鉱石を酸性溶液に溶解させることによってベリリウム溶液を製造する場合に、ベリリウム鉱石に上述したようなベリリウム以外の元素である第2の元素が含まれている場合であっても、ベリリウム溶液を用いてベリリウム、水酸化ベリリウム、及び酸化ベリリウムの何れかを製造する場合に含まれる第2の元素の濃度を低下させることができる。
上述したように、製造方法M10において、予備加熱工程S12は、マイクロ波を印加することによってベリリウム酸化物を含む塩基性溶液を誘電加熱し、主加熱工程S13は、マイクロ波を印加することによってベリリウム酸化物を含む上記酸性溶液を誘電加熱することが好ましい。
マイクロ波を用いた誘電加熱(すなわちマイクロ波誘電加熱)の技術は、いわゆる電子レンジにおいて利用されている技術であり、広く普及している技術である。したがって、製造方法M10は、実施に要するコストを従来の製造方法よりも削減することができる。
上述したように、製造方法M10において、上記ベリリウム溶液は、塩化ベリリウム溶液であることが好ましい。
製造方法M10によれば、水酸化ベリリウムを経ることなく塩化ベリリウム溶液を容易に製造することができる。塩化ベリリウム溶液からは、後述するようにベリリウム、水酸化ベリリウム、及び酸化ベリリウムを容易に製造することができる。したがって、ベリリウム溶液としては、塩化ベリリウム溶液が好適である。
〔第2~第4の実施形態〕
本発明の第2~第4の実施形態の各々に係るベリリウム(Be)の製造方法M20、水酸化ベリリウム(Be(OH))の製造方法M30、及び酸化ベリリウム(BeO)の製造方法M40について、図2の(a)~(c)を参照して説明する。図2の(a)~(c)の各々は、それぞれ、ベリリウムの製造方法M20、水酸化ベリリウムの製造方法M30、及び酸化ベリリウムの製造方法M40の各々の主要部を示すフローチャートである。なお、以下においては、ベリリウムの製造方法M20、水酸化ベリリウムの製造方法M30、及び酸化ベリリウムの製造方法M40の各々のことを、それぞれ、単に製造方法M20、製造方法M30、及び製造方法M40とも称する。
(ベリリウムの製造方法M20)
図2に示すように、製造方法M20は、図1に示した製造方法M10が含む粉砕工程S11と、予備加熱工程S12と、主加熱工程S13と、第1の不純物除去工程S14と、第2の不純物除去工程S15と、無水化工程S21と、電解工程S22と、を含んでいる。以下において、粉砕工程S11、予備加熱工程S12、主加熱工程S13、第1の不純物除去工程S14、及び第2の不純物除去工程S15のことを、単に、各工程S11~S15とも称する。
製造方法M20が含む、製造方法M10の各工程S11~S15は、第1の実施形態において説明する各工程S11~S15と同様である。したがって、ここでは、各工程S11~S15に関する説明を省略する。すなわち、BeClがHCl溶液中に溶解したBeCl溶液が得られているものとして、製造方法M20については、無水化工程S21と、電解工程S22とについてのみ説明する。
無水化工程S21は、製造方法M10の各工程S11~S15により得られたBeCl溶液に含まれているBeCl・xHOを無水化することによって、ベリリウム塩の一例であるBeClを生成する工程である。
無水化工程S21では、塩化ベリリウム水和物に塩化アンモニウムを加え、真空中且つ90℃で、24時間に亘って当該塩化ベリリウム水和物を加熱することにより、含有水分量を限りなく0に近づけることができる。すなわち、塩化ベリリウム水和物を無水化することができる。
塩化アンモニウムは、塩化ベリリウム水和物中の水分と反応し、水酸化アンモニウムと塩酸になる。生成した水酸化アンモニウム及び塩酸は、再度反応して、水を放出しながら塩化アンモニウムに戻る。このような過程で塩化ベリリウム水和物から無水化された塩化ベリリウムを得ることができる。
なお、無水化工程S21における加熱温度は、90℃に限定されるものではなく、80℃以上110℃以下の温度範囲から適宜選択することができる。ただし、加熱温度が高すぎる場合、塩化ベリリウム水和物の無水化が不十分になりやすい。したがって、当該加熱温度は、80℃以上90℃以下であることが好ましく、90℃であることがより好ましい。
なお、無水化工程S21における無水化処理を施す時間は、24時間に限定されるものではなく、適宜定めることができる。
電解工程S22は、無水化工程S21により得られたBeClを溶融塩電解することによって金属のベリリウムを生成する工程である。
以上のように、製造方法M20を実施することにより、ベリリウム鉱石からBeCl溶液を経て金属のベリリウムを製造することができる。換言すれば、製造方法M20を実施することにより、ベリリウム鉱石から水酸化ベリリウムを経ることなくベリリウムを製造することができる。現在、商用化されているベリリウム鉱石からベリリウムを製造する製造方法では、ベリリウム鉱石から一般需要が高い水酸化ベリリウムを製造したうえで、水酸化ベリリウムからベリリウムを製造している。したがって、製造方法M20は、現在、商用化されているベリリウムの製造方法よりも簡易にベリリウムを製造することができる。
(水酸化ベリリウムの製造方法M30)
図2に示すように、製造方法M30は、製造方法M10の各工程S11~S15と、中和工程S31と、を含んでいる。製造方法M20の場合と同様に、ここでは、中和工程S31についてのみ説明する。
中和工程S31は、製造方法M10の各工程S11~S15により得られたBeCl溶液に含まれているBeCl・xHOを、塩基で中和することによってBe(OH)を生成する工程である。
以上のように、製造方法M30を実施することにより、ベリリウム鉱石からBe(OH)を製造することができる。
(酸化ベリリウムの製造方法M40)
図2の示すように、製造方法M40は、製造方法M10の各工程S11~S15と、加熱工程S41と、を含んでいる。製造方法M20の場合と同様に、ここでは、加熱工程S41についてのみ説明する。
加熱工程S41は、製造方法M10の各工程S11~S15により得られたBeCl溶液を加熱することによってBeOを生成する第3の加熱工程と、を含んでいる。この工程により、BeCl溶液に溶解しているBeCl・xHOは、加水分解され、BeOが生成される。
以上のように、製造方法M40を実施することにより、ベリリウム鉱石からBeOを製造することができる。
(小括)
これらの製造方法M20,M30,M40の各々によれば、エネルギー効率が高い新規な製造方法を用いてベリリウム、水酸化ベリリウム、及び酸化ベリリウムの各々を製造することができる。なお、無水化工程S21、電解工程S22、中和工程S31、及び加熱工程S41の各々は、何れも、既存の技術を利用することによって実施することができる。
〔第5の実施形態〕
本発明の第5の実施形態に係る加熱装置10について、図3を参照して説明する。図3は、加熱装置10の概略図である。加熱装置10は、図1に示した製造方法M10が含む予備加熱工程S12及び主加熱工程S13の各々を実施する加熱装置である。
第1の実施形態において説明したとおり、誘導加熱は、印加する電磁波の帯域に応じて高周波加熱又はマイクロ波加熱の何れかに分類される。加熱装置10は、対象物に対して、高周波加熱及びマイクロ波加熱のうちマイクロ波加熱を実施する装置である。
図3に示すように、加熱装置10は、マイクロ波発振部11と、導波管12と、マイクロ波印加部13と、容器14と、回転テーブル15と、スターラ16と、温度計17と、を備えている。また、加熱装置10は、図3に図示していない制御部を更に備えている。
マイクロ波発振部11は、所定の周波数を有する電磁波を発振するように構成されている。所定の周波数は、例えば、マイクロ波の帯域内において適宜選択することができるが、本実施形態では、所定の周波数を2.45GHzとする。2.45GHzという周波数は、家庭用の電子レンジにおいて利用されている電磁波と同じ周波数である。
導波管12は、金属製の筒状部材であり、一方の端部がマイクロ波発振部11に接続されており、他方の端部がマイクロ波印加部13に接続されている。導波管12は、マイクロ波発振部11が発振した電磁波を一方の端部から他方の端部へ導波し、この電磁波を他方の端部からマイクロ波印加部13の内部空間に放射する。
マイクロ波印加部13は、内部空間が中空な、金属製の箱状部材であり、内部空間に容器14を収容可能なように構成されている。マイクロ波印加部13は、導波管12の他方の端部から照射された電磁波を、容器14及び容器14に収容された加熱の対象物に対して印加する。マイクロ波印加部13は、電磁波を内部空間に閉じ込め、外部に漏らしにくいように構成されている。
容器14は、図3への図示は省略しているものの、本体と蓋とにより構成された容器である。本体は、筒状の側壁と、側壁の一方の端部を封じる底とにより構成されている。容器14は、本体と蓋とを結合させることにより、本体と蓋とにより形成される内部空間を密閉可能なように構成されている。
容器14は、マイクロ波発振部11が発振する電磁波(本実施形態においては2.45GHz)に対して高い透過率を有する材料により構成されていることが好ましい。本実施形態において、容器14は、ポリテトラフルオロエチレンに代表されるフッ素系樹脂により構成されている。
また、容器14は、内部空間の圧力が大気圧よりも高くなった場合であっても耐えられる耐圧性を有することが好ましい。内部空間を密閉可能であり、且つ、所定の圧力に耐えられる耐圧性を有することにより、容器14は、電磁波を印加され、内部空間に収容した加熱の対象物の温度が上昇した場合であっても、対象物を内部空間に留めておくことができる。
回転テーブル15は、マイクロ波印加部13の内部空間の底面に設けられた試料台であり、容器14を上面に載置可能なように構成されている。回転テーブル15は、平面視した場合に円形状であり、その中心軸を回転軸として、所定の速度で回転するように構成されている。この構成によれば、回転テーブル15の上面に載置された容器14が周期的に回転するため、対象物をより均一に加熱することができる。
スターラ16は、マイクロ波印加部13の内部空間の天井面に設けられた金属製の羽状部材であり羽状部材の中心に結合された支持棒により、上記天井面に対して回転自在な状態で固定されている。スターラ16は、支持棒を回転軸として、所定の速度で回転することにより、マイクロ波発振部11が発振した電磁波を反射し、マイクロ波印加部13の内部空間に散乱させる。この構成によれば、スターラ16が電磁波を散乱させるため、対象物をより均一に加熱することができる。
温度計17は、容器14が放射する赤外線を検出することにより容器14の温度を測定する放射温度計である。容器14の温度は、所定の温度緩和時間を経たあとに容器14の内部空間に収容されている対象物の温度と同程度になる。この温度緩和時間は、容器14を構成する材質(本実施形態においてはフッ素系樹脂)及びその厚さ(例えば1mm)に依存する。本実施形態のように、厚さが1mmであるフッ素系樹脂製の容器14の場合、温度緩和時間は、3分程度と予想される。したがって、加熱時間が温度緩和時間と比較して十分に長い場合、及び/又は、容器14の内部空間に収容されている対象物の温度の変化が十分に緩やかな場合には、容器14の内部空間に収容されている対象物の温度と、容器14の温度とは、同じであると見做せる。したがって、このような場合、温度計17は、対象物の温度を測定可能であると見做せる。温度計17は、測定した容器14あるいは対象物の温度を表す温度信号を制御部に出力する。
制御部は、出力が所定の値になるようにマイクロ波発振部11の出力を制御してもよいし、温度計17から受け取った温度信号の温度が予め定められた温度になるように、マイクロ波発振部11の出力を制御してもよい。なお、この予め定められた温度は、時間に対して一定であってもよいし、時間に応じて変化してもよい。本実施形態において、制御部は、出力の値を時間に応じて変化させるようにマイクロ波発振部11の出力を制御する。時間に応じて変化する出力の値の一例としては、30分間かけて0Wから600Wまで変化させ、その後600Wを60分間維持するパターンが挙げられる。
このように構成された加熱装置10を用い、容器14の内部空間に、粉砕工程S11において粉砕されたベリルと塩基性溶液とを収容することによって、予備加熱工程S12を実施することができる。同様に、加熱装置10を用い、容器14の内部空間に、予備加熱工程S12を実施したあとのベリルと酸性溶液とを収容することによって、主加熱工程S13を実施することができる。
〔実験結果〕
図4は、本発明の実施例群及び比較例群を含む実験1~6の実験条件をまとめた表である。図5は、本発明の一実施例に含まれる主加熱工程S13における容器の温度変化を示すグラフである。図6は、本発明の一実施例における予備加熱工程S12の実施前及び実施後におけるベリルの顕微鏡像である。図7は、図4に示した実験1~6におけるBe、Al、及びSiの溶解量をまとめた表である。図8は、図4に示した実験1~6の実験結果をまとめた表である。なお、Be-Si-O系の鉱石の一例であるフェナサイトには、Alは、ほとんど含有されていない。したがって、図7に示したフェナサイトの欄に含まれるAlの溶解量は、フェナサイトに不純物として含まれていたわずかなAlに起因するものと考えられる。
図4に示すように、塩基性溶液を用いてベリリウム鉱石を処理した実験1,2と、酸性溶液を用いてベリリウム鉱石を処理した実験3,4と、塩基性溶液を用いてベリリウム鉱石を処理した後に、酸性溶液を用いてベリリウム鉱石を処理した実験5,6とを実施し、ベリリウム鉱石中に含有されていたベリリウムのイオンがどの程度溶液中に溶解するのかを実験した。言い換えれば、実験2は、図1に示した予備加熱工程S12のみを実施したものであり、実験4は、図1に示した主加熱工程S13のみを実施したものであり、実験6は、図1に示した予備加熱工程S12を実施した後に主加熱工程S13を実施したものである。また、実験1,3,5の各々は、それぞれ、実験2,4,6に対応する実験であり、マイクロ波加熱を行わずに室温(R.T.)において各溶液を放置したものである。図4、図7、及び図8の各々において、マイクロ波加熱を行った実験については、(MW)との添え字を追記し、マイクロ波加熱を行っていない実験については、(R.T.)との添え字を追記した。
実験2,4,6の各々では、加熱装置10の出力の値を、時間に応じて変化させた。具体的には、0Wから600Wまで30分間かけて出力の値を上昇させ、その後、60分間、出力の値を600Wで維持し、その後、出力の値を速やかに0Wに降下させた。
上述したパターンにしたがってマイクロ波発振部11の出力の値を変化させた場合、図5に示すように、容器14の温度は、出力の値が600Wに至った後にも上昇を続け最高到達温度は、およそ220℃であった。この容器14の温度変化は、実験2の予備加熱工程S12、実験4の主加熱工程S13、及び実験6の予備加熱工程S12及び主加熱工程S13について共通する。
実験1,2において、塩基性溶液の溶質としては、NH、NaOH、及びKOHを採用した。実験3,4において、酸性溶液の溶質としては、HCl、HSO、及びHNOを採用した。実験5,6において、塩基性溶液の溶質としては、NaOH及びKOHを採用し、酸性溶液の溶質としては、HCl、HSO、及びHNOを採用した。
また、実験1~6の各々について、原料となるベリリウム鉱石としては、ベリル、クリソベリル、フェナサイト、及びベルトランダイトを採用した。
図6を参照すれば、原料としてベリルを採用し、塩基性溶液の溶質としてNaOHを採用し、酸性溶液の溶質としてHClを採用した実験6において、予備加熱工程S12を実施することにより、ベリルの表面に、予備加熱工程S12の実施前には存在しなかった複数の凹部が形成されていることが分かった。そのうえで、これらの複数の凹部のうち、予備加熱工程S12の実施前から存在していた凹部を除いた凹部は、開口部の形状が結晶の単位格子の形状を反映した形状(長方形状)を有することが分かった。また、ベリルの表面粗さRaは、予備加熱工程S12を実施することにより、0.93μmから21.48μmへ粗くなることが分かった。なお、このベリルは、粒径が7mm程度の塊であり、その表面の一面を研磨したものである。
このように、Be-Si-Al-O系の鉱石の一例であるベリルにおいて、予備加熱工程S12を実施することによって、その表面をエッチング、即ち、表面組織の腐食、溶解、崩落などを生じることができることが分かった。
図7には、実験1~実験6の結果の一部を示した。なお、ICP質量分析計(ICP-MS)を用いて溶液中に溶解しているBe,Al,Siの各元素の量を分析した。また、図7に示した溶解量は、鉱石全体に対する溶解した各元素の量の割合を示すものである。すなわち、鉱石に含まれている、ある元素が完溶した場合、その溶解度は、鉱石におけるその元素の割合と等しくなる。
実験1の結果からは、マイクロ波加熱を実施しない塩基性溶液を用いた処理のみでは、いずれのベリリウム鉱石にあってもベリリウムを十分に溶解させることができないことが分かった。
実験2の結果からは、マイクロ波加熱と、塩基性溶液を用いた処理とを併用した場合、すべてのベリリウム鉱石についてベリリウムが溶解するものの、その溶解は十分ではないことが分かった。
実験3の結果からは、マイクロ波加熱を実施しない酸性溶液を用いた処理のみでは、いずれのベリリウム鉱石にあってもベリリウムを十分に溶解させることができないことが分かった。
実験4の結果からは、マイクロ波加熱と、酸性溶液を用いた処理とを併用した場合(すなわち主加熱工程S13のみを実施した場合)、Alを含有するベリルについては、ベリリウムを十分に溶解させることができなかったものの、Alを含有しないフェナサイトについては、ベリリウムを十分に溶解させることができた。
実験5の結果からは、マイクロ波加熱を実施しない塩基性溶液を用いた処理の後に、マイクロ波加熱を実施しない酸性溶液を用いた処理を施した場合、いずれのベリリウム鉱石にあってもベリリウムを十分に溶解させることができないことが分かった。
実験6の結果からは、マイクロ波加熱と、塩基性溶液を用いた処理とを併用した後に、マイクロ波加熱と、酸性溶液を用いた処理とを併用した場合(すなわち、予備加熱工程S12の後に主加熱工程S13を実施した場合)、Alを含有するベリルについても、ベリリウムを十分に溶解させることができた。
なお、実験6については、Alを含有しないフェナサイトの結果を図7に記入していないが、フェナサイトについてもベリリウムを十分に溶解させることができた。
また、実験6においては、予備加熱工程S12から主加熱工程S13へ遷移する過程において、ベリリウム鉱石を含む溶液の極性を塩基性から酸性へ調整した。そのときに、酸性溶液中にSiを含む化合物を沈殿させることができ、結果として、溶液からのSiの除去を行うことができた。このSiを含む化合物の沈殿は、以下の化学式に示すように、塩基性溶液中に溶解していたNaSiOが、酸性溶液中においてHSiOに変化して析出し、沈殿したものと考えられる。なお、Na2SiO3は、水に可溶性であり、H2SiO3は、酸性の溶液に溶解しない。
予備加熱工程S12:SiO2 +2NaOH→Na2SiO3+H2O
主加熱工程S13:Na2SiO3+2HCl→H2SiO3↓+2NaCl
図8には、実験1~6の結果をまとめた。なお、図8において、バツ、三角、丸、及び二重丸の各々は、それぞれ、ベリリウムが、溶解しなかった、少し溶解した、ほぼ溶解した、完全に溶解した、ことを示している。なお、実験1~6の各々におけるバツ、三角、丸、及び二重丸の判定は、ICP質量分析計による分析結果と、各実験後の溶液の状態を目視にて確認した結果とを総合して行った。
図8を参照すれば、原料がベリル及びクリソベリルである場合、塩基性溶液の溶質としてNaOH又はKOHを採用した予備加熱工程S12の後に、酸性溶液の溶質としてHCl、HSO、及びHNOの何れかを採用した主加熱工程S13を実施することによって、ベリリウムを十分に溶解させることができることが分かった。
また、原料がフェナサイト及びベルトランダイトである場合、塩基性溶液の溶質としてNaOH又はKOHを採用した予備加熱工程S12の後に、酸性溶液の溶質としてHCl、HSO、及びHNOの何れかを採用した主加熱工程S13を実施することによって、ベリリウムを十分に溶解させることができることが分かった。
また、原料がフェナサイト及びベルトランダイトである場合、酸性溶液の溶質としてHCl又はHSOを採用した主加熱工程S13のみを実施することによって、ベリリウムを十分に溶解させることができることが分かった。
図9は、図4に示した実験4のフェナサイト及び実験6のベリルにおいて、主加熱工程S13を実施した場合の酸性溶液の最高温度とベリリウムの溶解度との相関関係を示すグラフである。
図9にプロットした3つのベリルB1~B3及びフェナサイトP1~P3のうち、ベリルB1は、予備加熱工程S12及び主加熱工程S13の両方において、マイクロ波発振部11の出力の値を0Wから300Wまで30分間かけて上昇させ、その後、60分間、出力の値を300Wで維持し、その後、出力の値を速やかに0Wに降下させたものである。フェナサイトP1は、主加熱工程S13において、マイクロ波発振部11の出力の値を0Wから300Wまで30分間かけて上昇させ、その後、60分間、出力の値を300Wで維持し、その後、出力の値を速やかに0Wに降下させたものである。ベリルB2は、予備加熱工程S12及び主加熱工程S13の両方において、マイクロ波発振部11の出力の値を0Wから600Wまで30分間かけて上昇させ、その後、60分間、出力の値を600Wで維持し、その後、出力の値を速やかに0Wに降下させたものである。フェナサイトP2は、主加熱工程S13において、マイクロ波発振部11の出力の値を0Wから600Wまで30分間かけて上昇させ、その後、60分間、出力の値を600Wで維持し、その後、出力の値を速やかに0Wに降下させたものである。ベリルB3は、予備加熱工程S12及び主加熱工程S13を実施せず、室温(R.T.=25℃)において、ベリルを塩基性溶液中に60分間放置したあと、酸性溶液中に60分間放置したものである。フェナサイトP3は、予備加熱工程S12及び主加熱工程S13を実施せず、室温(R.T.=25℃)において、フェナサイトを酸性溶液中に60分間放置したものである。
フェナサイトP1及びベリルB1の各々においては、主加熱工程S13を実施している間の最高温度が、それぞれ、180℃及び190℃になった。また、フェナサイトP2及びベリルB2の各々においては、主加熱工程S13を実施している間の最高温度が、何れも250℃になった。なお、ベリルB1及びベリルB2において、予備加熱工程S12の実施している間の最高温度は、図示していないものの、主加熱工程S13を実施している間の最高温度と同程度であった。
図9を参照すれば、ベリルB3及びフェナサイトP3においては、ほとんどのベリル及びフェナサイトが残存しており、ベリル及びフェナサイトに含まれているベリリウムがベリリウムイオンとしてほぼ溶解していないことが分かった。一方、(1)フェナサイトP1においては、60%のベリリウムがベリリウムイオンとして溶解し、(2)ベリルB1においては、50%のベリリウムがベリリウムイオンとして溶解し、(3)フェナサイトP2及びベリルB2においては、ほぼ100%のベリリウムがベリリウムイオンとして溶解したことが分かった。
〔追加実験の結果〕
上述した実験1~6では、鉱石全体に対する溶解した各元素の量の割合を、各元素の溶解量として求め(図7参照)、そのうえで、ICP質量分析計による分析結果と、各実験後の溶液の状態を目視にて確認した結果とを総合して、各元素の溶解している程度をバツ、三角、丸、及び二重丸の何れかと判定した(図8参照)。なお、上述したように、フェナサイトにおけるAlは、不純物由来のものと考えられる。そのため、図10の(a)において、フェナサイトにおけるAlの溶解度は、記載を省略した。
以下に説明する追加実験では、上述した実験1~6を改めて行い、ICP質量分析計を用いてHCl溶液中に溶解している各元素の量を分析したうえで、鉱石に含まれている各元素の量に対する溶解した各元素の量の割合を、溶解度として算出した。すなわち、鉱石に含まれているある元素が完溶した場合、その溶解度は、100%になる。
そのように算出した溶解度を図10の(a)に示す。なお、実験1~6において用いたベリルにおけるBe、Al、及びSiの組成比は、3.1:6.3:20.0であり、フェナサイトにおけるBe及びSiの組成比は、15.2:22.0である(図10の(b)参照)。
そのうえで、(1)溶解度が10%以下である場合に、不溶(すなわちバツ)と判定し、(2)溶解度が10%を上回り50%以下である場合に、少し溶けた(すなわち三角)と判定し、(3)溶解度が50%を上回り100%未満である場合に、ほぼ溶けた(すなわち丸)と判定し、(4)溶解度が100%である場合に、完溶(すなわち二重丸)と判定した。そのようにして得られた判定結果を図11に示す。
追加実験の実験1の結果からは、マイクロ波加熱を実施しない塩基性溶液を用いた処理のみでは、いずれのベリリウム鉱石にあってもベリリウムを溶解させられないことが分かった。
追加実験の実験2の結果からは、マイクロ波加熱と、塩基性溶液を用いた処理とを併用した場合、すべてのベリリウム鉱石についてベリリウムが少し溶解するものの、その溶解は十分ではないことが分かった。
追加実験の実験3の結果からは、マイクロ波加熱を実施しない酸性溶液を用いた処理のみでは、いずれのベリリウム鉱石にあってもベリリウムを溶解させられないか、又は、溶解が十分ではないことが分かった。
追加実験の実験4の結果からは、マイクロ波加熱と、酸性溶液を用いた処理とを併用した場合(すなわち主加熱工程S13のみを実施した場合)、Alを含有するベリルについては、ベリリウムを十分に溶解させることができなかったものの、Alを含有しないフェナサイトについては、ベリリウムを十分に溶解させることができた。
追加実験の実験5の結果からは、マイクロ波加熱を実施しない塩基性溶液を用いた処理の後に、マイクロ波加熱を実施しない酸性溶液を用いた処理を施した場合、いずれのベリリウム鉱石にあってもベリリウムを十分に溶解させることができないことが分かった。
追加実験の実験6の結果からは、マイクロ波加熱と、塩基性溶液を用いた処理とを併用した後に、マイクロ波加熱と、酸性溶液を用いた処理とを併用した場合(すなわち、予備加熱工程S12の後に主加熱工程S13を実施した場合)、Alを含有するベリルについても、ベリリウムを十分に溶解させられることが分かった。
以上のように、追加実験の実験1~6の結果は、(図10及び図11参照)は、実験1~6(図7及び図8参照)の結果と整合したものであった。
〔第1の不純物除去工程に関する実験〕
図1に示した製造方法M10において、主加熱工程S13を実施したあとのHCl溶液のpHを変化させたうえで、第1の不純物除去工程S14を実施した場合について、HCl溶液中に残存するベリリウム及びウランの各濃度を測定した。本実験では、有機化合物として、酸化トリ-n-オクチルホスフィン(TOPO,Tri-n-octylphosphine oxide)を採用し、有機溶媒としてケロシンを採用した。すなわち、TOPOをケロシンに溶解させた。
本実施例では、主加熱工程S13を実施した後にpHを1から7まで変化させた複数のHCl溶液を用意し、各HCl溶液に対してTOPOを溶解させたケロシンを混合及び撹拌し、しばらくの間放置した。その結果、TOPOを溶解させたケロシンを混合されたHCl溶液は、2層に分離した。この溶液を水層と有機層に分液した後、水層のベリリウム及びウランの各濃度を測定した。
主加熱工程S13の実施後におけるpHが7であったHCl溶液においては、不純物除去工程S14を実施した場合に、ウランの有機層への抽出は不十分であり、およそ半分のウランがHCl溶液の水層内に残存した。さらに、このHCl溶液においては、ベリリウムのおよそ8割が有機層へ抽出されてしまった。したがって、主加熱工程S13の実施後におけるpHが7である場合に、不純物除去工程S14を実施することは好ましくないことが分かった。
一方、主加熱工程S13の実施後におけるpHが2以下であったHCl溶液においては、不純物除去工程S14を実施した場合に、ウランが有機層へ完全に抽出され、且つ、ベリリウムが有機層へ抽出されない結果となった。このことから、第1の不純物除去工程S14を実施する場合のHCl溶液(すなわち主加熱工程S13を実施した後のHCl溶液)のpHは、2以下であることが好ましいことが分かった。
〔無水化工程に関する実験〕
図2の(a)に示した製造方法M20のうち無水化工程S21を実施した。本実験では、塩化ベリリウム水和物に塩化アンモニウムを加え、真空中且つ90℃で、24時間に亘って当該塩化ベリリウム水和物を加熱した。その結果、塩化ベリリウムにおける含有水分量を限りなく0に近づけることができる、すなわち、塩化ベリリウム水和物を無水化することができることが分かった。
〔まとめ〕
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るベリリウム溶液の製造方法は、ベリリウム酸化物を含む酸性溶液を誘電加熱することによって、ベリリウム溶液を生成する主加熱工程を含む。
誘電加熱を利用してベリリウム酸化物を含む酸性溶液を加熱することにより、従来よりも高いエネルギー効率でベリリウム酸化物を酸性溶液に溶解させることができる。したがって、本製造方法は、エネルギー効率が高い新規な製造方法を提供することができる。
本発明の第2の態様に係るベリリウム溶液の製造方法は、上記第1の態様において、上記主加熱工程の前に実施する予備加熱工程であって、上記ベリリウム酸化物を含む塩基性溶液を誘電加熱する予備加熱工程を更に含む。
主加熱工程を実施する前に予備加熱工程を実施することによって、主加熱工程を単独で実施するだけでは溶解しにくいベリリウム酸化物を溶解させることができる。したがって、より幅広いベリリウム酸化物を出発原料として、ベリリウム溶液を製造することができる。
本発明の第3の態様に係るベリリウム溶液の製造方法は、上記第1の態様又は上記第2の態様において、上記主加熱工程の後に実施する第1の不純物除去工程であって、第1の元素を吸着する有機化合物を用いて、上記主加熱工程により得られたベリリウム溶液から上記第1の元素を除去する第1の不純物除去工程を更に含む。
第1の不純物除去工程を実施することにより、ベリリウム溶液中に含まれる第1の元素の濃度を低下させることができる。その結果として、ベリリウム溶液を用いてベリリウム、水酸化ベリリウム、及び酸化ベリリウムの何れかを製造する場合に含まれる第1の元素の濃度を低下させることができる。第1の元素の例としては、ウランやトリウムやプルトニウムやアメリシウムなどが挙げられる。
本発明の第4の態様に係るベリリウム溶液の製造方法は、上記第3の態様において、上記第1の不純物除去工程において、上記有機化合物は、有機溶媒中に溶解しており、上記ベリリウム溶液は、酸性である、構成を採用している。
この構成によれば、有機化合物が第1の元素を吸着する効率を高めることができる。
本発明の第5の態様に係るベリリウム溶液の製造方法は、上記第1の態様~上記第4の態様の何れかにおいて、上記主加熱工程の後に実施する第2の不純物除去工程であって、上記主加熱工程により得られたベリリウム溶液の極性を酸性から塩基性に調整することによって、当該ベリリウム溶液から第2の元素を除去する第2の不純物除去工程を更に含む。
第2の不純物除去工程を実施することにより、ベリリウム溶液中に含まれる第2の元素の濃度を低下させることができる。その結果として、ベリリウム溶液を用いてベリリウム、水酸化ベリリウム、及び酸化ベリリウムの何れかを製造する場合に含まれる第2の元素の濃度を低下させることができる。第2の元素の例としては、アルミニウムや鉄などが挙げられる。
本発明の第6の態様に係るベリリウム溶液の製造方法は、上記第1の態様~上記第5の態様の何れかにおいて、上記主加熱工程は、マイクロ波を印加することによって上記ベリリウム酸化物を含む上記酸性溶液を誘電加熱する、ように定められている。
マイクロ波を用いた誘電加熱(すなわちマイクロ波誘電加熱)の技術は、いわゆる電子レンジにおいて利用されている技術であり、広く普及している技術である。したがって、本製造方法は、実施に要するコストを従来の製造方法よりも削減することができる。
本発明の第7の態様に係るベリリウム溶液の製造方法であって、上記第1の態様~上記第6の態様の何れかにおいて、上記ベリリウム溶液は、塩化ベリリウム溶液である。
本製造方法によれば、水酸化ベリリウムを経ることなく塩化ベリリウム溶液を容易に製造することができる。塩化ベリリウム溶液からは、後述するようにベリリウム、水酸化ベリリウム、及び酸化ベリリウムを容易に製造することができる。したがって、ベリリウム溶液としては、塩化ベリリウム溶液が好適である。
本発明の第8の態様に係るベリリウムの製造方法は、上記第1の態様~上記第6の態様の何れかに係るベリリウム溶液の製造方法に含まれる各工程と、上記ベリリウム溶液を無水化することによってベリリウム塩を生成する無水化工程と、上記ベリリウム塩を溶融塩電解することによってベリリウムを生成する電解工程と、を含んでいる。
本発明の第10の態様に係る水酸化ベリリウムの製造方法は、上記第1の態様~上記第6の態様の何れかに係るベリリウム溶液の製造方法に含まれる各工程と、上記ベリリウム溶液を塩基で中和することによって水酸化ベリリウムを生成する中和工程と、を含んでいる。
本発明の第11の態様に係る酸化ベリリウムの製造方法は、上記第1の態様~上記第6の態様の何れかに係るベリリウム溶液の製造方法に含まれる各工程と、上記ベリリウム溶液を加熱することによって酸化ベリリウムを生成する第3の加熱工程と、を含んでいる。
これらの製造方法によれば、エネルギー効率が高い新規な製造方法を用いてベリリウム、水酸化ベリリウム、及び酸化ベリリウムを製造することができる。また、上記第7の態様に係るベリリウムの製造方法は、本発明の一態様に係るベリリウム溶液の製造方法により製造されたベリリウム溶液から、水酸化ベリリウムを経ることなく金属のベリリウムを製造することができる。現在、商用化されているベリリウム鉱石からベリリウムを製造する製造方法では、ベリリウム鉱石から一般需要が高い水酸化ベリリウムを製造したうえで、水酸化ベリリウムからベリリウムを製造している。したがって、上記第7の態様に係るベリリウムの製造方法は、現在、商用化されているベリリウムの製造方法よりも簡易にベリリウムを製造することができる。
本発明の第9の態様に係るベリリウムの製造方法は、上記第8の態様において、上記ベリリウム溶液は、塩化ベリリウム溶液であり、上記無水化工程は、上記塩化ベリリウム溶液に含まれている塩化ベリリウム水和物を、真空中且つ80℃以上110℃以下の温度で加熱する、ように構成されている。
この構成によれば、ベリリウム溶液が塩化ベリリウム溶液である場合に、塩化ベリリウム水和物に対して確実に無水化処理を施すことができる。
本発明の第12の態様に係るベリリウム酸化物は、結晶性を有し、且つ、表面に複数の凹部が形成されているベリリウム酸化物であって、上記複数の凹部のうち一部又は全部の凹部は、開口部の形状が結晶の単位格子の形状を反映した形状を有する。
本ベリリウム酸化物は、開口部の形状が結晶の単位格子の形状を反映した形状を有する凹部が、表面に複数形成されているので、酸性溶液中において誘電加熱されることにより、酸性溶液に容易に溶解する。したがって、本発明の一態様に係るベリリウム酸化物は、ベリリウム溶液を製造するための原料として好適である。
本発明の第13の態様に係るベリリウム酸化物は、上記第12の態様において、ケイ素と、アルミニウムとを更に含んでいる。
ケイ素及びアルミニウムを含むベリリウム酸化物は、酸性溶液中において誘電加熱した場合であっても溶解しにくい。しかし、表面に複数の凹部が形成されていることによって、ケイ素及びアルミニウムを含むベリリウム酸化物を酸性溶液中において誘電加熱することによって容易に溶解させることができる。
なお、上述した第12の態様及び第13の態様に係るベリリウム酸化物と、ベリリウムイオンとを含んでいるベリリウム溶液も本発明の一態様である。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
M10 製造方法(ベリリウム溶液の製造方法、BeCl溶液の製造方法)
S11 粉砕工程
S12 予備加熱工程
S13 主加熱工程
S14,S15 第1,第2の不純物除去工程
M20,M30,M40 ベリリウム、水酸化ベリリウム、及び酸化ベリリウムの製造方法
S21 無水化工程
S22 電解工程
S31 中和工程
S41 加熱工程
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