JPWO2020257536A5 - - Google Patents
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「レロシクリブ」としても知られ、G1 Therapeutics,Inc.によって開発された化合物IIIは現在、1)EGFR阻害剤オシメルチニブ(タグリッソ(登録商標))と組み合わせてEGFR突然変異非小細胞肺癌を治療するため、および2)フルベストラントと組み合わせてER+、HER2-乳癌を治療するために、一般に、1日1回投与(医療提供者の判断で必要に応じて休薬)などの連続的投与を介する抗悪性腫瘍薬として、多くのヒト臨床試験で検討中である。
加えて、T細胞受容体(TCR)分析は、トリラシクリブが治療中の抗腫瘍T細胞サブセットの増殖に重要な役割を果たし得ることを示す。以下の実施例5にさらに記載されるように、エトポシド、カルボプラチン、およびPD-L1阻害剤(アテゾリズマブ)(E/P/A)を受けている小細胞肺癌患者がトリラシクリブを受けると、E/P/A単独を受けた患者に比べてトリラシクリブ処置後に増殖T細胞クローンの数が有意に多かった(P=0.01、図11)。加えて、トリラシクリブが奏効した患者コホートは、プラセボを受けた患者よりもT細胞クローン増殖が多く(p=0.001)、ならびにトリラシクリブが奏効しなかった患者よりもクローン増殖が多かった(p=0.006)。プラセボとは異なり、トリラシクリブは新たに増殖したクローンの数および割合を有意に増加させ、エトポシド、カルボプラチン、アテゾリズマブ処置レジメンへのトリラシクリブの追加がT細胞媒介性抗腫瘍応答を増強することを示す。これらのデータは、トリラシクリブが免疫介在性応答を誘導することを裏付ける。
重要なこととしては、特定の腫瘍種において全生存期間を延長できることが投与前に予測することができる。例えば、以下の実施例2に記載されるように、TNBCがThorssonらの6クラス免疫シグネチャー分類システム(引用することにより本明細書の一部とされ、以下にさらに述べられるThorsson et el., “The Immune Landscape of Cancer,”(前掲)に定義される)に従ってC2 IFN-γ優位として分類されたトリラシクリブ受容患者において、トリラシクリブを受けなかったC2 IFN-γ優位と分類されたTNBC患者に比べ、全生存期間および無増悪生存期間に統計的に有意な改善が見られた。実施例3に記載されるように、TNBCがAyersらの分類システム(引用することにより本明細書の一部とされ、以下にさらに述べられるAyers et al., “IFN-γ-related mRNA profile predicts clinical response to PD-1 blockade,”(前掲)に定義される)に従って高い「IFN-γシグネチャー」および「拡張された免疫シグネチャー」スコアを有するトリラシクリブを受けた患者では、高い「IFN-γシグネチャー」および「拡張された免疫シグネチャー」スコアを有し、トリラシクリブを受けていないTNBC患者に比べて、全生存期間および無増悪生存期間に同様の統計的に有意な改善が見られた。さらに、実施例4に記載されるように、トリラシクリブを受けているTNBC PD-L1陽性腫瘍を有する患者は、トリラシクリブを受けていないTNBC PD-L1陽性腫瘍を有する患者よりも有意に長い全生存期間を有した。
ICD誘導化学療法薬に応答して、腫瘍細胞は死の前に細胞表面にCRTを発現し、ダメージ関連分子パターン(DAMP)分子、例えば、アポトーシスの際にはATPまたは続発性の壊死の際にはHMGB1を放出する。これらのDAMPは、樹状細胞(DC)の腫瘍床への動員、腫瘍抗原の取り込みおよびプロセシング、ならびにT細胞への最適な抗原提示を刺激する。CD8+T細胞の交差プライミングは、成熟DCおよびγδT細胞によってIL-1βおよびIL-17依存的に誘発される。次に、プライミングされたCTLは直接的な細胞傷害性応答を惹起し、IFN-γ、パーフォリン-1およびグランザイムBの生成を介して残りの腫瘍細胞を死滅させる。
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、化学療法の投与前に対象に2回投与される。例えば、いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、化学療法投与の約18~28時間前に投与され、次いで化学療法薬による処置前約4時間、約2.5時間、約2時間、約1時間、約1/2時間またはそれより短い時間以内にもう1回投与される。特定の実施形態において、選択的CDK4/6阻害剤は、化学療法薬の投与約22~26時間前に投与され、化学療法薬の投与の前約1/2時間以内に再投与される。
腫瘍が免疫組織化学評価によりエストロゲンおよびプロゲステロン受容体陰性(<10%核染色として定義)かつ米国臨床腫瘍学会/米国病理医協会診療ガイドラインに従ってHER2陰性(すなわち、免疫組織化学の局所評価[0または1+]もしくは蛍光in situハイブリダイゼーション[HER2/CEP17比<2・0]によって過剰発現無し、または局所評価によって平均HER2遺伝子コピー数<4シグナル/核)であるという条件で、評価可能な生検確認済みの局所再発性または転移性TNBC(mTNBC)を有する成人患者(≧18歳)が登録に適格であった。TNBCを確認する診断腫瘍組織サンプルが利用可能なことが登録の必須条件であった。ヘモグロビンレベルは、トリラシクリブの初回投与前14日以内は、赤血球(RBC)輸血無く≧9.0g/dL、絶対好中球数(ANC)≧1.5×109/Lおよび血小板総数≧100×109/Lでなければならなかった。患者は、局部再発性TNBCまたはmTNBCに対して過去に2回を超える細胞傷害性化学療法のレジメンを受けていた場合には選択不適格であった。術前補助/術後補助状況で投与された化学療法は、最後の処置と疾患再発の間が12か月未満であれば一系統の療法と見なした。患者は米国東海岸癌臨床試験グループパフォーマンスステータス0または1ならびに血清クレアチニン(≦1.5mg/dLまたはクレアチニンクリアランス≧60mL/分)、総ビリルビン≦1.5×基準値上限(ULN)、およびアスパラギン酸トランスアミナーゼおよびアラニントランスアミナーゼ≦2.5×ULN(または肝臓転移がある場合には≦5×ULN)の臨床検査で判定した場合に十分な腎機能および肝機能を有していなければならなかった。脱毛症を除き、以前の処置からの非血液毒性のグレード≦1への回復を要した。患者は、無作為化前3年以内にTNBC以外の悪性腫瘍、即治療を要する中枢神経系転移/軟髄膜疾患、非管理虚血性心疾患または症候性鬱血性心不全、トリラシクリブの初回投与前6か月以内に脳卒中または脳血管発作の既知の履歴、既知の重症活動性感染、または患者の安全性、コンプライアンス、もしくは追跡調査に影響を及ぼす他のいずれかの非管理重症慢性疾患もしくは精神医学的状態があった場合には選択不適格であった。試験参加前の、以前の放射線療法または細胞傷害性化学療法にはそれぞれ2週間または3週間のウォッシュアウト期間を要した。
抗腫瘍有効性の最後の評価時に(データカット2020年5月15日)、追跡調査中央値は、群1で8.4か月(IQR3.8~15.6)、群2で14か月(5.5~26.8)、群3で15.3か月(6.7~23.7)であった。奏効に関して評価可能な患者のうち、客観的奏効に達した割合は、群1では29.2%(24名中7名)に対し、群2では50%(30名中15名)、群3では38.7%(31名中12名)(表6)であった。24週間以上の安定を含む臨床利益に達した患者の割合は、群1で38%(24名中9名)、群2では57%(30名中17名)、群3で43%(30名中13名)。無増悪生存期間中央値は、群2で9.4か月(IQR5.3~13.0)、群3で7.3か月(IQR6.2~13.9)、群1で5.7か月(IQR2.2~9.9)であった。群1に対してそれぞれ分析した両群のHRは、群2では0.62(95%CI 0.32~1.20;p=0.21)、群3では0.63(95%CI 0.32~1.22;p=0.18)であった(表3;図3)。両トリラシクリブ群に登録された患者は、群1に登録された患者に比べて全生存期間に有意な改善を示し(群2では中央値未到達[IQR9.4~未到達]およびHR0.31、95%CI 0.15~0.63;p=0.0016;群3では17.8か月[IQR8.8~32.7]およびHR0.40、95%CI 0.22~0.74;p=0.0004]に対し、群1では12.6か月[IQR5.8~17.8])(表5;図2)。併合サブグループ分析の結果は、2019年6月28日のデータカット時に、見られた無増悪生存期間(図4B)および全生存期間に対する利益(図4A)がサブグループ間で一貫していたことを示した。群1と群3間で更新された分析を図4Cおよび図4Dに示す。
ゲムシタビンおよびカルボプラチンへのトリラシクリブの追加は、リンパ球数を保護することも、T細胞活性化を増強することもなかったが、事前に指定された分析において、ゲムシタビンおよびカルボプラチン+トリラシクリブで処置された患者では、群1の患者よりex vivo刺激の後にIFN-γを産生するCD8+T細胞の頻度が高いことが認められた(図5)。
免疫学的沈黙(C5)と分類された患者はいなかった。乳癌に関してThorssonらによって使用されたトレーニングサンプルに、原図に免疫学的沈黙として分類されたものはないので、このことは意外なことではない。さらに、C1およびC2以外のクラスの低い有病率のために、C3と非C3、C4と非C4、およびC6と非C6の検定を除くことになった。
Claims (24)
- 無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する癌療法のための方法において使用するための、以下の構造:
前記方法が、以下の工程:
(i)前記患者の癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に免疫原性細胞死(ICD)誘導化学療法のレジメンを投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記患者の癌が免疫調節に有利であり、かつ前記患者に前記ICD誘導化学療法のレジメンを投与可能であると判定される場合に、
(a)前記患者に有効量の前記CDK4/6阻害剤を投与する工程、
(b)前記患者に有効量の前記ICD誘導化学療法のレジメンを投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記ICD誘導化学療法の投与の前に投与され、
前記患者における前記CDK4/6阻害剤および前記ICD誘導化学療法のレジメンの投与が、CDK4/6阻害剤が投与されないICD誘導化学療法単独の投与を受けた癌を有する患者と比較して、無増悪生存期間または全生存期間の延長をもたらす、前記医薬組成物。 - 前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、癌組織サンプルを図7で特徴付けられる癌組織サンプルと比較することを含んでなる、請求項1に記載の医薬組成物。
- 前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、図6に従って前記癌を評価することを含んでなる、請求項1に記載の医薬組成物。
- 前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、Galonイムノスコアシステムに従う、請求項1に記載の医薬組成物。
- 前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項1に記載の医薬組成物。
- 前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項1に記載の医薬組成物。
- 前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項1に記載の医薬組成物。
- 前記患者が、免疫的にホットな腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
- 前記患者が、免疫抑制性に変化した腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
- 前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌がIFN-γ優位型のクラスの癌であるか否か、高いIFN-γシグネチャーの癌微小環境を有するか否か、または高い拡張された免疫シグネチャー、PD-L1陽性、もしくはそれらの組合せの癌微小環境を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
- 前記CDK4/6阻害剤が、前記ICD誘導化学療法の投与前約24時間以内に投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
- 前記CDK4/6阻害剤が、前記ICD誘導化学療法の投与前約4時間以内に投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
- 前記CDK4/6阻害剤が、前記ICD誘導化学療法の投与前約30分以内に投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
- 前記ICD誘導化学療法が、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、オキサリプラチン、メトトレキサート、ミトロキサトロン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ジアジコン、メクロレタミン、マイトマイシンC、フルダラビン、シトシンアラビノシド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
- 前記癌が、トリプルネガティブ乳癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、膀胱癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PBMCL)、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)固形腫瘍、ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)固形腫瘍、胃または胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道扁平上皮癌、子宮頸癌、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、卵巣癌、肛門管癌、大腸癌、および黒色腫からなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
- 前記癌が、トリプルネガティブ乳癌であり、前記ICD誘導化学療法がゲムシタビンおよびカルボプラチンを含んでなる、請求項15に記載の医薬組成物。
- 無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対するトリプルネガティブ乳癌療法のための方法において使用するための、以下の構造:
前記方法が、以下の工程:
(i)前記患者のトリプルネガティブ乳癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かを判定する工程、
(ii)前記患者にゲムシタビンおよびカルボプラチンを含む免疫原性細胞死(ICD)誘導化学療法のレジメンを投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記患者のトリプルネガティブ乳癌が免疫調節に有利であり、かつ前記患者に前記ICD誘導化学療法のレジメンを投与可能であると判定される場合に、
(a)前記患者に有効量の前記CDK4/6阻害剤を投与する工程、
(b)前記患者に有効量のゲムシタビンを投与する工程、および
(c)前記患者に有効量のカルボプラチンを投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、ゲムシタビンおよび/またはカルボプラチンの投与の前に投与され、
前記患者における前記CDK4/6阻害剤および前記ICD誘導化学療法のレジメンの投与が、CDK4/6阻害剤が投与されないICD誘導化学療法単独の投与を受けたトリプルネガティブ乳癌を有する患者と比較して、無増悪生存期間または全生存期間の延長をもたらす、前記医薬組成物。 - 前記トリプルネガティブ乳癌が、PD-L1陽性である、請求項17に記載の医薬組成物。
- 前記CDK4/6阻害剤が、ゲムシタビンおよび/またはカルボプラチンの投与前約24時間以内に投与される、請求項17または18に記載の医薬組成物。
- 前記CDK4/6阻害剤が、ゲムシタビンおよび/またはカルボプラチンの投与前約4時間以内に投与される、請求項17または18に記載の医薬組成物。
- 前記CDK4/6阻害剤が、ゲムシタビンおよび/またはカルボプラチンの投与前約30分以内に投与される、請求項17または18に記載の医薬組成物。
- 無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する癌療法のための方法において使用するための、以下の構造:
前記方法が、以下の工程:
(i)癌が高いIFN-γシグネチャーを有するか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に免疫原性細胞死(ICD)誘導化学療法のレジメンを投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記患者の癌が高いIFN-γシグネチャーを有し、かつ前記患者に前記ICD誘導化学療法のレジメンを投与可能であると判定される場合に、
(a)有効量の前記CDK4/6阻害剤を投与する工程、
(b)有効量の前記ICD誘導化学療法のレジメンを投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記ICD誘導化学療法のレジメンの投与の前に投与され、
前記患者における前記CDK4/6阻害剤および前記ICD誘導化学療法のレジメンの投与が、CDK4/6阻害剤が投与されないICD誘導化学療法単独の投与を受けた癌を有する患者と比較して、無増悪生存期間または全生存期間の延長をもたらす、前記医薬組成物。 - 前記癌が高いIFN-γシグネチャーを有するか否かの判定が、腫瘍微小環境における遺伝子IDO1、CXCL10、CSCL9、HLA-DRA、STAT1、およびIFN-γの発現レベルに基づく、請求項22に記載の医薬組成物。
- 前記癌が高いIFN-γシグネチャーを有するか否かの判定が、高いAyersらのIFN-γシグネチャースコアに基づく、請求項22に記載の医薬組成物。
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