以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用したソフトウェアを導入したタブレット端末の概略構成を示す図である。なお、以下に示す構造は本発明の一例であり、本発明の内容はこれに限定されるものではない。
[1.全体の装置構成について]
本発明を適用したソフトウェアは、汎用の情報処理機器に導入可能であり、組み込まれた情報処理機器に対して本発明の実施するために必要な各情報処理機能を付与する。ごの結果、タブレット端末3において、対象者のバイタル因子情報、病状因子情報、既往歴情報等から構成される『個体因子情報』を入力して、その内容に応じたスコアリングを行い、得られたスコア結果情報から、対象者が特定の病気に罹患しているか否かについて、診断を行うことができる。
なお、情報処理機器とは、CPUなどの演算部と、RAMやROMなどの記憶部と、液晶画面等の表示画面や、キーボード等の入力部、インターネット等との通信を制御する通信部等を備えたものである。例えば、汎用のパーソナルコンピュータやタブレット端末、スマートフォン等である。また、情報処理機器としては、例えば、各種のヘルスケア機器や、病院や施設等に設置された医療システムや介護システムも対象となり、本発明を適用したソフトウェアがこれらに組み込まれて使用されるものでもよい。
本発明を適用したソフトウェアは、アプリケーションソフトウェアとしてタブレット端末3にダウンロードされて組み込まれており、バイタル因子情報をはじめ、個体因子情報のスコアリング機能及びスコア結果情報に対する診断機能を備えたタブレット端末を診断装置1とする。なお、以下では、診断装置1の使用者、即ち、診断の対象となる人物を「対象者」と呼ぶものとする。
図1に示すように、診断装置1(タブレット端末3)は、演算部2を備えている。演算部2は、診断装置1の有する各情報処理機能を実行する処理部である。即ち、本発明を適用したソフトウェアでは、タブレット端末3の演算部2を情報入力手段23、情報記録手段24、基準算出手段5、スコアリング処理手段100、判定処理手段6として機能させる。この各手段の処理機能により、情報の送受信、情報の記録、個体因子情報の内容に基づくスコアリング、スコアリング条件(スコアリング基準情報)の設定、第1スコア値情報における異常の判定、第1スコア値に関する異常の判定基準の設定、第2スコア値の総合点(スコア結果情報)の算出、第2スコア値の総合点から特定の病気に罹患しているか否かの診断、診断条件の設定、診断結果の通知、第1スコア値に関する判定結果の通知、バイタルサインの値における異常の判定、バイタルサインの値に関する異常の判定基準の設定、バイタルサインの値に関する判定結果の通知、表示情報の作成や表示等を行う。なお、タブレット端末3は、インターネットを介して、外部のサーバ、端末等にアクセス可能であり、外部のサーバや端末等との間で情報の送受信を行うことも可能である。情報記録手段24、基準算出手段5、スコアリング処理手段100、それぞれ本願請求項の「情報記録手段」、「基準算出手段」、及び「スコアリング処理手段」の一例である。また、判定処理手段6は、「診断手段」及び「バイタル判定手段」の一例であり、この2つの手段を兼ねている。
タブレット端末3は、情報記録部4と、情報送受信部3cと、入力部3aと、表示部3bを有している。
情報送受信部3cは、演算部2、情報記録部4、入力部3a及び表示部3b等の間での情報の送受信を担う部分である。また。タブレット端末3と、外部端末との間で情報の送受信可能に構成されるものであってもよい。
ここで、以下、本発明を適用したソフトウェアが取り扱う各情報が、必ずしも、タブレット端末3の情報記録部4に記録される必要はない。例えば、タブレット端末3の情報送受信部3cを介して、外部サーバや外部端末に各種情報を送信して記録させ、判定等の際に、外部サーバ等から必要な情報を受信する態様であってもよい。
更に言えば、タブレット端末3に、診断装置1の主要な構成が全てダウンロードされる必要はない。例えば、タブレット端末3では、診断結果の情報やバイタル判定結果の情報等の表示情報の表示のみを行い、各種情報の記録及び判定処理等は外部サーバ等で行う態様であってもよい。
本発明を適用したソフトウェアは、システム上の構成において、複数のバリエーションが存在しうる。以下、幾つかのバリエーションの事例を説明する。
(第1のシステム構成)
図1に示したタブレット端末3の概略構成は、本発明を適用したソフトウェアを端末に導入して、端末単体で、バイタル因子情報等の個体因子情報の入力、記録、第1スコア値、第2スコア値及び第2スコア値の合計点の表示、第1スコア値の判定、第1スコア値の判定結果の表示、スコアリング条件の設定、第1スコア値の判定算出基準の設定、バイタルサインの値の判定、バイタルサインの値の判定結果の表示、バイタルサインの値の判定算出基準の設定、第2スコア値の総合点の算出、第2スコア値の総合点から特定の病気に罹患しているか否かの診断、診断条件の設定が可能となっている。
即ち、装置単体で本発明の機能を実行しうるものである。図1に示す概略構成は、インターネット環境と接続されていない「スタンドアローン形式」の装置における、本発明を適用したソフトウェアの利用を示している。インターネット環境と接続されない情報処理機器、例えば、各種のヘルスケア機器や、病院等の医療システム・介護システムに本発明のソフトウェアを導入して、専用機器として利用することができる。なお、ここではタブレット端末3を情報処理機器の一例として挙げたため、インターネット環境との接続が可能となるが、図1に示す構成であれば、タブレット端末3の内部機能のみで、対象者の診断を行うことができる。
(第2のシステム構成)
図2では、第2のシステム構成として、本発明を適用したソフトウェア1aの機能を外部サーバに持たせた構成も採用しうる。ここでは、ユーザ端末50aや、外部端末50bが、インターネット30aを介して、情報管理サーバ32aにアクセス可能となっている。情報管理サーバ32aは、例えば、クラウド形式で提供される外部サーバであり、情報管理サーバ32a上で本発明を適用したソフトウェア1aの機能が利用しうる。
情報管理サーバ2aは、情報記録部4a、情報送受信部3c、演算部2aを有している。また、演算部2aは、基準算出手段5a、情報記録手段24a、スコアリング処理手段100a、判定処理手段6aを有している。バイタル因子情報等の個体因子情報の入力は、ユーザ端末50aや、外部端末50bを介して行い、各端末から入力された情報が情報管理サーバ32aに送信され、情報管理サーバ32a側で情報の記録、第2スコア値の総合点から特定の病気に罹患しているか否かの診断等がなされる。診断結果や、記録された情報は、ユーザ端末50aや、外部端末50bに送信され、各端末で確認することができる。このように、外部サーバ上にソフトウェア1aの機能を付与するシステム構成も採用しうる。
(第3のシステム構成)
図3では、第3のシステム構成として、本発明を適用したソフトウェア32bの機能以外に、複数のソフトウェア32c、32d等を有するモジュールAを備える管理端末70bの構成を示している。本発明を適用したソフトウェア32bは、これとは異なる各種機能を管理端末70bに実行させる他のソフトウェアと共に、1つのモジュールAを構成している。即ち、予め複数のソフトウェア32c、32d等が導入された管理端末70bのモジュールAに、ソフトウェア32bを組み込んで機能させることが可能である。例えば、電子カルテ等の医療システムの管理端末が備えるモジュールに本発明を適用したソフトウェアを組み込むこともできる。
このような第3のシステム構成では、管理端末70bにバイタル因子情報等の個体因子情報を入力して、第2スコア値の総合点から特定の病気に罹患しているか否かの診断等を行い、結果の情報を管理端末70b上で確認することができる。また、ユーザ端末60aや、外部端末60bと、管理端末70bを接続させて、ユーザ端末60aや、外部端末60bから個体因子情報を入力して管理端末70bに送信し、管理端末70bで第2スコア値の総合点から特定の病気に罹患しているか否かの診断を行い、診断結果の情報をユーザ端末60aや、外部端末60bで受信して確認することもできる。このように、本発明を適用したソフトウェアは、複数のソフトウェアで構成されたモジュールの一部として機能させる構成も採用しうる。
以上のように、本発明を適用したソフトウェア(又は診断装置)のシステム上の構成は複数のバリエーションが存在する。なお、上記では、3つの例を中心に説明したが、本発明を適用したソフトウェア(又は診断装置)の構成はこれに限定されるものではない。例えば、情報記録部をユーザ端末に設けて、基準算出手段、スコアリング処理手段及び判定処理手段は外部サーバに持たせて、必要な機能の所在を端末とサーバに分ける構成であってもよく、種々の構成が採用しうる。
図1に示したタブレット端末3の使用態様を用いて、以下、詳細な構成の説明を続ける。
[2.情報記録部]
図4に示すように、情報記録部4には、各種情報が記録されている。情報記録部4に記録された各種の情報はタブレット端末3が有する入力部3a、情報送受信部3c及び情報入力手段24(図示せず)を介して入力や情報の修正が可能となっている。また、情報記録部4に記録された各種の情報はタブレット端末3が有する表示部3b及び情報送受信部3cを介して、その内容を確認可能となっている。
情報記録部4には、対象者の個人情報7が記録されている(図4参照)。個人情報7には、診断の対象となる人物の名前、性別、年齢、個人識別番号等、個々の対象者を特定可能な情報が含まれている。
この個人情報7は、後述するバイタル因子情報8等のそれぞれの個体から取得、又は、それぞれの個体に関して記録された情報と紐付けられている。すなわち、個体に関する各種情報は、特定の個体の情報として識別可能に構成されている。また、1つの診断装置1において、個人情報7は、複数の対象者の情報を取り扱うことができる。
情報記録部4には、対象者のバイタル因子情報8が記録されている(図4参照)。このバイタル因子情報8は、特定の対象者に対して、各種のバイタル計測器で測定されたバイタルサインの値、及び、対象者を観察して得られた意識レベルの評価結果を含む情報である。また、バイタル因子情報8は、測定日時又は取得日時の情報と共に記録される。
また、バイタル因子情報8に含まれる測定日時又は取得日時とは、対象者がバイタル計測を行った日時や、意識レベルの確認を行った日時であり、例えば、対象者が自身でバイタル計測を行った際に確認又はバイタル因子情報8を入力した時間や、介護者等が対象者を観察した時間又は観察結果を入力した時間を記録する。
また、バイタル因子情報8は、特定の対象者について、判定処理手段6が、入力された個々のバイタルサインの値を異常な値であるか否かを判定する判定対象の情報を含む。また、バイタル因子情報8は、判定処理手段6が診断を行う際に、後述する第2スコア値を算出する元のデータとなる可能性のある情報を含む。
更に、バイタル因子情報8は、特定の対象者について、測定日時又は取得日時の情報と共に記録され、特定の対象者のバイタルサインの値を蓄積する情報を含む。即ち、それぞれの個体について、バイタル判定用数値範囲の算出する元のデータとなる情報を含む。
バイタル因子情報8には、対象者から測定した体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍、呼吸数、脈圧及び酸素飽和度の測定値が含まれている。また、バイタル因子情報8には、対象者から観察した意識レベルの評価結果が含まれている。
また、バイタル因子情報8には、スコアリング基準情報102に基づき、第1スコア値情報103が異常な値であると判定された根拠となった、バイタルサインの値が含まれる。即ち、バイタル因子情報8には、第1スコア値情報103が正常と判定された際のバイタルサインの値だけでなく、第1スコア値情報103が異常と判定された際のバイタルサインの値も含まれている。
また、バイタル因子情報8には、バイタル判定基準情報102aに基づき、バイタルサインの測定値が異常な値であると判定された値が含まれる。即ち、バイタル因子情報8には、バイタルサインの測定値が正常と判定された値だけでなく、バイタルサインの測定値が異常と判定された値も含まれている。
ここで、必ずしも、バイタル因子情報8の種類が体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍、呼吸数、脈圧及び酸素飽和度の測定値と、意識レベルの評価結果に限定される必要はなく、その他のバイタルサインを含み、スコアリングを行って、診断を行う構成であってもよい。例えば、尿量、体重、痛み(痛みの有無や程度)等をバイタル因子情報に含めることができる。但し、判定処理手段6の診断にあたり、陽性的中率、つまり、特定の病気に罹患しているとの判断の的中率を高める観点からは、スコアリングされるパラメータの数が少ない方が好ましい。そのため、本発明におけるバイタル因子情報8の最小の構成要素としては、体温、収縮期血圧、脈拍の測定値と、意識レベルの評価結果が採用されることが好ましい。また、脈圧の測定値を要素として増やしてスコアリングすることで、特定の病気(例えば、肺炎)の重症度評価を行うことが可能となる。
また、必ずしも、バイタル因子情報8に、第1スコア値情報103が異常と判定された際の根拠となったバイタルサインの値と、バイタルサインの測定値が異常と判定された値の両方が含まれる必要はない。この点は、後述するように、少なくとも30個分の測定データのバイタル因子情報として、個体に固有の個体内変動が反映されるものとなっていれば、いずれか一方(第1スコア値情報又はバイタルサインの測定値)で、異常と判断された情報が採用されていれば充分である。但し、両方の異常な値をバイタル因子情報8に含めておくことで、個体内変動の捉え方のバリエーションが増えることとなり、適宜選択できるものとなるため、バイタル因子情報8に、スコア値情報103が異常と判定された際の根拠となったバイタルサインの値と、バイタルサインの測定値が異常と判定された値の両方が含まれることが好ましい。
また、バイタル因子情報8のうち、バイタルサインの値を計測するバイタル測定器は、特に限定されるものではなく、体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍、呼吸数、脈圧及び酸素飽和度が測定可能であれば充分である。例えば、家庭用のバイタル測定器を使用してバイタルが計測されるものでもよい。更に言えば、バイタルサインの値が測定可能であれば、バイタル測定器を使用することは必須ではない。例えば、時計で時間を測定しながら、1分間あたりの脈拍数等を測定して、これをバイタル因子情報として利用することも可能である。但し、各バイタルサインの測定値の個体内変動を正確に捉える観点からは、バイタルサインの値は同一の手法で取得されることが好ましい。日々の測定において、バイタル測定器の種類を頻繁に変更したり、バイタル計測機による測定と、バイタル計測機を用いない測定が混在したりすることで、バイタルサインの測定方法によるバイアスがかかってしまう。そのため、なるべく、同一の手法又は同一のバイタル測定器でバイタルサインの値を測定することが好ましい。
バイタル因子情報8は、幅広くは1秒ごとのバイタル因子情報8を記録可能に構成されている。また、バイタル因子情報8は、例えば、1分ごと、1時間ごと等、異なる時間間隔で記録するように設定することもできる。
また、バイタル因子情報8は、一定間隔ごとの測定ではなく、不規則な時間で測定した測定値を記録する構成も採用しうる。また、この不規則な測定の場合、例えば、1分間に少なくとも30個分のバイタル因子情報8を取得する、30分間に少なくとも30個分のバイタル因子情報8を取得する、1時間に少なくとも30個分のバイタル因子情報8を取得する、数時間に少なくとも30個分のバイタル因子情報8を取得する、1日に少なくとも30個分のバイタル因子情報8を取得する、数日中に少なくとも30個分のバイタル因子情報8を取得する、1週間に少なくとも30個分のバイタル因子情報8を取得する、数週間中に少なくとも30個分のバイタル因子情報8を取得する、1か月中に少なくとも30個分のバイタル因子情報8を取得する等、一定の期間で、少なくとも30個のバイタル因子情報8を記録する構成としてもよい。
更に、バイタル因子情報8は、一定間隔、又は、不規則な間隔に関わらず、蓄積したバイタル因子情報の中から、ランダムに少なくとも30個分のデータを抽出して、「30個分の測定データのバイタル因子情報8」として記録することもできる。
このように、バイタル因子情報8は、時間の長さや測定間隔の規則性の有無に関わらず、少なくとも30個分の測定データを記録可能に構成されている。
また、後述する基準算出手段及びスコアリング処理手段によるスコアリング条件の算出や、このスコアリング条件の算出に利用するバイタル平均値、バイタル標準偏差の算出の処理において利用する一定のデータ数(少なくとも30個分)が記録されていれば、バイタル因子情報の記録回数は限定されるものではない。また、バイタル因子情報8が毎秒、毎分、毎時、毎日等、一定間隔で常に記録される必要はなく、バイタル因子情報8が記録されない時が存在してもよい。ここで、同一個体の個体内変動を適切に捉える観点から、幅広くは1秒ごとのバイタル因子情報を記録する態様がよく、1日に1回〜24回のバイタル因子情報が記録される構成であってもよい。
情報記録部4には、対象者の病状因子情報9が記録されている(図4参照)。この病状因子情報9は、例えば、看護師等が、特定の対象者に対して、自覚症状や他覚症状の有無を聞いたり、観察したりして、該当する症状が有ることが確認された症状の情報である。また、病状因子情報9は、症状の有無を確認した日時の情報と共に記録される。
また、病状因子情報9に含まれる具体的な内容として、例えば、以下の種類が挙げられる。呼吸困難、冷感あり、起坐呼吸、下肢(浮腫)、咳嗽、腹痛(臍周囲)、悪心、入眠障害(寝つきが悪い)、元気がない、胸痛、顔面(浮腫)、心窩部痛、血液(吐血)、倦怠感、右季肋部痛、鼻汁、鼻閉塞感、くしゃみ、咽頭痛、嗄声(声のかすれ)、喘鳴あり、乏尿、無尿、運動麻痺、背中痛、意識障害、チアノーゼ(全身)、動悸、頭痛、チアノーゼ、顔面蒼白、けいれん、顔色不良、血液(喀血・血痰)、腰痛(腰椎)、息切れ、失神有、喀痰、めまい、嘔吐、恥骨上部痛、脱水。なお、ここであげた病状は一例であり、本発明で用いることのできる病状の種類はこれに限定されるものではない。
また、病状因子情報9は、判定処理手段6が診断を行う際に、後述する第2スコア値を算出する元のデータとなる可能性のある情報を含む。
情報記録部4には、対象者の危険因子情報10が記録されている(図4参照)。この危険因子情報10の一例は、特定の対象者から回答を得た内容に基づく、その対象者の現在の病歴、対象者の過去の病歴、対象者における飲酒の有無や、喫煙の有無等の習慣歴(生活歴)、対象者の家族の現在又は過去の病歴である家族歴を含む既往歴情報である。また、病状因子情報9は、回答を得た日付の情報と共に記録される。本実施の形態における個体危険因子情報としては、既往歴情報の他、個体のゲノム解析に基づく、特定の病気に罹患する確率の情報である遺伝子診断結果情報が含まれてもよい。
また、既往歴情報に含まれる具体的な内容として、例えば、本人又は家族の病歴については、以下の種類の情報が挙げられる。高血圧症、糖尿病、高尿酸血症、急性膵炎、気管支喘息、肝内結石症、肺気腫、感染性心内膜炎、不整脈、心臓弁膜症、高血圧性心疾患、虚血性心疾患、肥大型心筋症、特発性拡張型心筋症、動脈硬化症、潰瘍性大腸炎、心筋症、膠原病、慢性肝炎、僧帽弁閉鎖不全症、冠動脈疾患、先天性心ブロック、心筋梗塞、膵のう胞、心不全、心疾患、尿路感染症。なお、ここであげた既往歴情報の病気の種類は一例であり、本発明で用いることのできる既往歴に関する病歴の種類はこれに限定されるものではない。
また、習慣歴(生活歴)の情報について、飲酒に関する情報であれば、例えば、「お酒を毎日飲む」ことにつき、該当するか否かの回答を得るものとなる。さらに、喫煙の有無に関する情報であれば、「喫煙の習慣有り」につき、該当するか否かの回答を得るものとなる。なお、ここであげた既往歴情報の病気の種類は一例である。また、生活歴に関する質問の内容も一例であり、習慣の有り無しが確認できる内容であれば、適宜、質問の内容を変更することもできる。
また、既往歴情報は、判定処理手段6が診断を行う際に、後述する第2スコア値を算出する元のデータとなる可能性のある情報を含む。また、既往歴情報は、後述する母集団情報について、複数の個体に関する情報を、共通する既往歴情報を有する集団で分類する際にも用いられる。
また、情報記録部4には、対象者が、特定の病気に罹患しているとの診断結果が出ていれば、診断の際に取得された対象者のバイタル因子情報8、病状因子情報9及び危険因子情報10と共に、その特定の病気の種類が記録される。なお、ここでいう診断結果は、本発明の診断装置1が出した診断結果と、実際に対象者が、医師の診断を受けた結果の両方が含まれる。
また、対象者につき、特定の病気に罹患しているとの診断結果が記録された場合には、その個体が特定の病気になった回数の情報も記録される。例えば、同じ個体が、肺炎で入院したのが2回目であれば、「肺炎につき2回目である」情報が、対象者に紐付けて記録される。
また、対象者につき、特定の病気に罹患しているとの診断結果が記録された場合には、対象者が、特定の病気になった際に取得されたバイタルの異常や病状の内容について、同一の内容が記録された回数の情報が記録されている。例えば、同じ対象者につき、2回目の心不全に罹患した際に、1回目及び2回目で共に、「冷感」の病状が観察されていれば、「肺炎の際の病状として冷感が2回目である」情報が、対象者に紐付けて記録される。
なお、本実施の形態では、スコアリングを行う個体因子情報として、対象者のバイタル因子情報8、病状因子情報9、既往歴情報を挙げたが、個体因子情報の内容はこれに限定されるものではない。上述したように、個体危険因子情報として、個体のゲノム解析に基づく遺伝子診断結果情報を追加することもできる。
また、個体症状因子情報として、自覚症状・他覚症状を上げたが、それ以外も個体に対する心電図やエコー検査の結果等の情報である生理学検査結果情報、個体に対する血液検査の結果の情報である血液検査結果情報、個体に対する画像診断の結果の情報である画像診断結果情報を含めることができる。
ここでいう、心電図検査、エコー検査、血液検査、画像診断の結果の情報に関しては、既知の検査方法を用いることができる。
例えば、心電図検査は、個体から取得された波形の情報と、「正常」波形とされている波形記録とを比較して、個体の波形から異常の有無を判定する検査である。心電図検査では、一般的に、不整脈、心筋梗塞、狭心発作証、心筋症等の診断が可能である。
また、例えば、エコー検査(超音波検査)は、超音波(4MHz〜15MH)を当て、体内の組織にぶつかってはね返ってきた音(エコー・こだま)を画像にした検査である。個体から取得したエコー画像と、特定の病気を反映した異常な状態のエコー画像とを比較して、個体のエコー画像から異常の有無を判定する検査である。エコー検査では、主に肝臓、腎臓、膵臓、胆嚢、膀胱、前立腺、子宮、腹部大動脈などを検査し、脂肪肝や胆石、腎結石、良性腫瘤や悪性腫瘤(ガン)、動脈瘤など、様々な病気を発見することが可能である。
なお、心電図検査及びエコー検査は、生理学的検査に含まれ、本発明に係る診断装置では、心電図検査及びエコー検査以外にも、脳波・肺機能・神経伝導検査等の、生理学的検査に含まれる、その他の検査を、個体病状因子情報の取得に利用することもできる。
また、例えば、血液検査は、個体から取得した血液について既知の血液検査キットを用いて、血糖値、総コレステロール、総タンパク等、20以上のマーカー項目を数値化することのできる検査である。各マーカーの数値や、組み合わせの結果と、判定基準とを比較して、特定の病気の有無を判定することができる。血液検査では、一般的に、貧血、肝臓の異常、腎臓の異常、高脂血症、糖尿病等の病気の診断が可能である。特に、肺炎等の特定の病気においては、血液検査の各マーカーの検査値に基づき、重症度分類を行うことも可能となる。
また、例えば、画像診断は、超音波検査、レントゲン、CT、MRI、核医学検査等の検査がある。超音波やX線、磁気を使って診断を行うことができる。人間の体の輪切りの画像をつくったり、造影剤の投与前後での変化を調べることで、病気の種類(組織診断)を推察したり、腫瘍の形・位置・広がり・正常組織との関係を調べることが可能である。
一例として、肺炎に関するレントゲンによる画像診断(胸部X線写真)であれば、「画像中の影の有無」や「撮像画像中の影の領域の面積率」等の情報に基づき判定した検査結果を、画像診断の結果情報として採用することができる。
以上のように、スコアリングを行う個体因子情報として、対象者のバイタル因子情報8、自覚症状、他覚症状以外に生理学検査結果情報、画像検査結果情報である症状因子情報9、既往歴以外に個体のゲノム解析に基づく遺伝子診断結果情報を設定危険因子情報10からスコア結果情報を算出することができる。また、これに伴い、基準病気情報11、母集団情報12、スコアリング基準情報102、診断基準情報17についても、生理学検査、血液検査、画像診断の結果の情報、及び、個体のゲノム解析に基づく遺伝子診断結果情報を反映することができる。病気の種類によっては、これらの各種の検査情報を追加的に用いることで、より高精度に診断を行うことが可能となる。
情報記録部4には、基準病気情報11が記録されている(図4参照)。この基準情報11には、診断の対象とする病気の種類の情報、即ち、本発明に係る診断措置1で診断を行うことが可能な具体的な病気の名称の情報が含まれている。また、基準病気情報11には、個別の病気の名称と共に、特定の病気であると判断するための病気因子の情報が記録されている。
この病気因子の情報は、バイタルサインの値又は変化から異常と見られる基準バイタル因子情報と、自覚症状又は他覚症状からなる観察内容の情報である基準病状因子情報と、既往歴の情報である基準既往歴情報から構成されている。
つまり、本発明に係る診断措置1で診断可能な複数の病気の種類ごとに、その病気の特徴的な因子として設定しうるバイタルの異常、病状及び既往歴の情報が記録されている。より詳細には、この基準病気情報11の内容と、後述する複数の個体から取得した母集団情報12の内容から、スコア結果情報や、診断結果の情報を出すための判定基準を設けることができる。
また、基準病気情報11の内容は、初期設定として、既存の病気鑑別用のガイドラインの内容にある病気の因子の情報に基づき、各情報の内容を設定しておくことができる。
また、基準病気情報11の初期設定において、既存のガイドラインの内容をそのまま採用すると、病気の因子の数、例えば、病状の数が多くなるため、必要に応じて、基準病気情報11の各病気の因子(病状及び既往歴)について、病院のカルテにおける出現頻度や、医師の判断を考慮して、ガイドラインの因子の情報から選抜して、各病気の因子を設定しておくことが可能である。
また、診断の対象者となる特定の個体についてのバイタル因子情報等や、母集団情報12に含まれる情報が蓄積することに伴い、基準病気情報11の内容を修正して設定することができる。なお、この基準病気情報11の内容の修正・設定についての詳細は後述する。
また、基準病気情報11に含まれる具体的な病気の種類として、以下の種類が挙げられる。せん妄、イレウス、クローン病、悪性リンパ腫、胃癌、胃憩室症、胃食道逆流症、胃潰瘍、感冒、肝内結石症、急性腎性腎不全、急性大動脈解離、急性虫垂炎、急性膵炎、結腸憩室症、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、三尖弁閉鎖不全症、脂肪肝、上腸間膜動脈症候群、食道癌、心筋症、心室細動、心室頻拍、心不全、心房細動、心房粗動、僧帽弁閉鎖不全症、多発性骨髄腫、大腸癌、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、潰瘍性大腸炎、洞不全症候群、特発性拡張型心筋症、尿路感染症、肺炎、肺膿瘍、肥大型心筋症、房室ブロック、慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患、慢性膵炎、肛門癌、膵癌、胆のう結石症、赤芽球ろう、高血圧性緊急症、脳梗塞、肺結核、心筋梗塞、僧帽弁狭窄症、心房期外収縮、気管支炎、糖尿病、虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性腎不全、前立腺肥大症、帯状疱疹、緑内障、脳卒中、くも膜下出血、高脂血症、慢性腎不全、インフルエンザ、細菌性急性胃腸炎、慢性腎臓病、心臓弁膜症、高血圧症、腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、閉塞性動脈硬化症(ASO)、肝硬変、狭心症。なお、ここであげた基準病気情報11の病気の種類は一例であり、本発明で診断の対象とできる病気の種類は、この内容に限定されるものではない。
情報記録部4には、スコアリング基準情報102が記録されている(図4参照)。このスコアリング基準情報102は、入力される各バイタル因子情報8、病状因子情報9及び危険因子情報10について、スコアリング処理手段100でスコアリングする際の基準となる情報である。
情報記録部4には、スコアリング基準情報102に基づきスコアリングされた結果の数値の情報である第1スコア値情報103、第2スコア値情報104が記録されている。
この第1スコア値情報103とは、入力されるバイタル因子情報8、即ち、対象者の体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍、呼吸数、脈圧及び酸素飽和度の測定値と、対象者から観察した意識レベルの評価結果については、その内容や閾値の設定に応じて、例えば、0点〜3点の範囲でスコア化した数値の情報である。
また、第2スコア値情報104とは、入力されるバイタル因子情報8については、第1スコア値情報103の点数の内容に基づき、スコア化した数値の情報である。例えば、ここでは、入力されるバイタル因子情報8を0点〜3点の範囲でスコア化した第1スコア値情報103について、2点以上を「バイタルサインの異常」と設定しておく。そして、第1スコア値情報103が1点であれば「10ポイント」、2点以上(異常)であれば「20ポイント」の点数がつくものとする。この際の「10ポイント」又は「20ポイント」の点数が、第2スコア値情報104に該当する。
また、第1スコア値情報103とは、入力される病状因子情報9及び危険因子情報10については、例えば、その内容の情報が入力された場合に1点(又は○)、入力されなかった場合に0点(又は×)としてスコア化した数値の情報である。
また、第2スコア値情報104とは、例えば、入力される病状因子情報9については、第1スコア値情報103として1点の点数がつき、かつ、特定の病気を診断する際に、基準病気情報11の中に、その病気の因子として、入力された病状因子情報9の内容が設定されていた場合に、「20ポイント」の点数がつくものとする。この際の「20ポイント」の点数が、第2スコア値情報104に該当する。
また、第2スコア値情報104とは、例えば、入力される危険因子情報10については、第1スコア値情報103として1点の点数がつき、かつ、特定の病気を診断する際に、基準病気情報11の中に、その病気の因子として、入力された危険因子情報10の内容が設定されていた場合に、対象者のバイタル因子情報8及び病状因子情報9から算出された第2スコア値情報の合計点に対してリスク度(スコア)を上げるものとする。例えば合計点に「1.2」の数値を乗じる(掛ける)。この際の乗じる「1.2」の数値(係数)が、第2スコア値情報104に該当する。
また、情報記録部4には、対象者のバイタル因子情報8、病状因子情報9及び危険因子情報10の第2スコア値情報104に基づきから算出された総合の点数(以下、「総合点」と称する。)が記録される。即ち、この第2スコア値情報104から算出された総合点が、「スコア結果情報」である。そして、この総合点と、基準病気情報11及び母集団情報12の内容から設定した診断基準情報17を比較して、総合点が、特定の病気の診断基準情報の条件を満たしていれば、その病気に罹患している可能性が高いと診断される。
例えば、診断基準情報17は、病気の種類ごとに、所定のポイント数を、「カットオフ値」として設定して、第2スコア値情報104から算出された総合点が、設定したカットオフ値を超えていれば、特定の病気に罹患している(又は、例えば、特異度70%以上の確率で特定の病気に罹患している状態と判断される)との診断結果を出すことができる。
さらに、母集団情報12に含まれるデータ数が増えれば、第2スコア値情報104から算出された総合点の段階に応じて、例えば、総合点が50ポイントであれば、70%の確率で肺炎である、総合点が60ポイントであれば80%の確率で肺炎である、総合点が70ポイントであれば、90%以上の確率で肺炎であるといったように、段階分けして、診断結果を出すことも可能である。また、この際、統計学的に、信頼度95%以上の確率であれば、「特定の病気に罹患している確率が100%である」とみなして、信頼度95%を超える総合点のポイントが算出されれば、「特定の病気である」と診断結果を出す構成を採用することもできる。
ここで、必ずしも、入力されるバイタル因子情報8に対する第1スコア値情報103が、0点〜3点の範囲でスコア化した数値となる必要はない。即ち、入力されるバイタル因子情報8を複数の点数の範囲で区分けして、かつ、バイタルサインの異常と見なす設定が可能であれば、点数の範囲は限定されるものではない。
また、必ずしも、第1スコア値情報103について、2点以上を「バイタルサインの異常」と設定する必要はなく、1点以上、又は、3点で「バイタルサインの異常」とする設定も可能である。
また、必ずしも、入力されるバイタル因子情報8に対する第2スコア値情報104が、第1スコア値情報103が1点であれば「10ポイント」、2点以上(異常)であれば「20ポイント」の点数がつくものと設定する必要はなく、診断の感度及び精度の設定に併せて、「20ポイント」以外の数値に適宜設定することができる。さらに、この第2スコア値情報104のポイントの点数は、後述する「重みづけ」の反映により、その点数が修正されるものとなる。
また、必ずしも、入力される病状因子情報9に対する第2スコア値情報104が、第1スコア値情報103として1点の点数がつき、かつ、特定の病気を診断する際に、基準病気情報11の中に、その病気の因子として、入力された病状因子情報9の内容が設定されていた場合に、「20ポイント」の点数がつくものと設定される必要はない。この際の点数は、診断の感度及び精度の設定に併せて、「20ポイント」以外の数値に適宜設定することができる。
また、必ずしも、入力される病状因子情報9に対する第2スコア値情報104が、第1スコア値情報103として1点の点数がつき、かつ、特定の病気を診断する際に、基準病気情報11の中に、その病気の因子として、入力された危険因子情報10の内容が設定されていた場合に、対象者のバイタル因子情報8及び病状因子情報9から算出された第2スコア値情報の合計点に対して乗じる「1.2」の数値として設定される必要はない。この際の点数は、診断の感度及び精度の設定に併せて、乗じる「1.2」の数値を適宜変更することができる。また、例えば、バイタル因子情報8及び病状因子情報9と同様に、加算するポイントとして設定することも可能である。即ち、総合点を算出するにあたり、危険因子情報10についても、「20ポイント」の点数を設定して、総合点を、バイタル因子情報8、病状因子情報9及び危険因子情報10の各ポイントを足した合計点を、総合点にすることもできる。
情報記録部4には、バイタル判定基準情報102aが記録されている(図4参照)。このバイタル判定基準情報102aは、入力されたバイタルサインの値を判定処理手段6で、その値が異常な値か否かを判定する際の基準となる情報である。
バイタル判定基準情報102aは、タブレット端末3の入力部3a、情報送受信部3c及び演算部2の情報入力手段24を介して情報の追加や修正が可能となっている。
情報記録部4には、判定処理手段6がバイタルサインの値について、異常な値か否かと判定した判定結果の情報であるバイタル判定結果情報12aが記録されている。タブレット端末3の表示部3bを介して、その内容を確認可能となっている。なお、判定処理手段6によるバイタルサインの値が異常な値か否かの判定は、入力されたバイタルサインの値を、バイタル判定基準情報102aに照らして、バイタルが異常であると判定する態様と、入力されたバイタルサインの値から第1スコア値情報103へとスコア化して、2点以上になった場合に、バイタルが異常であると判定する態様の両方が含まれている。
また、情報記録部4では、バイタル因子情報8として、バイタル因子情報の測定及び取得に関して、再度の測定等を行った際のバイタル因子情報及び測定時の日付の情報である再測定バイタル因子情報13が記録可能となっている。再測定バイタル因子情報13とは、例えば、バイタル因子情報について得られたスコア値に関して、判定処理手段6が異常な値と判定した際に、バイタル因子情報の正確性を確認するために行った再度の計測のバイタル因子情報であることができる。
また、各バイタル因子情報をタブレット端末3の表示部3bに表示する際には、再測定をせずに記録された通常のバイタル因子情報と、再測定の対象となったバイタル因子情報と、再測定した後のバイタル因子情報について、3つのパターンのバイタル因子情報を示す文字の色を異ならせて表示可能に構成されている。
ここで、必ずしも、情報記録部4に、バイタル判定結果情報12aが記録可能とされる必要はない。但し、過去のバイタル因子情報8の判定結果を確認可能となり、また、判定精度を高めるための参考情報として利用できる点、医師の診断結果との照合や、医療システムとの連動にも利用しうる情報となる点から、情報記録部4に、バイタル判定結果情報12aが記録可能とされることが好ましい。
また、必ずしも、情報記録部4において、再測定バイタル因子情報13が記録可能とされる必要はない。但し、再測定バイタル因子情報13を用いて、バイタル測定が正確であったか否かを検証可能となる点から、情報記録部4において、再測定バイタル因子情報13が記録可能とされることが好ましい。
情報記録部4には、母集団情報12が記録されている(図4参照)。この母集団情報12は、複数の個体に関するバイタル因子情報等を蓄積するデータ集合体であり、基準病気情報11と合わせて、診断基準情報17を設定するために用いられる情報である。
また、母集団情報12は、その内容に基づき、基準病気情報11の中の、特定の病気ごとに設定された病気因子の情報について、複数の因子の重みづけを行う修正や、特定の病気における病気因子を追加する修正にも用いられる。
母集団情報12には、複数の個体に関するバイタル因子情報、病状情報、既往歴情報が、その取得日時の情報と共に記録されている。
また、母集団情報12には、その個体のバイタル因子情報等が確認された際に、特定の病気に罹患していれば、その病気の種類(診断結果)に紐付けて、バイタル因子情報等が記録されている。即ち、特定の病気の罹患者の情報となる。このバイタル因子情報等は、診断時の日時の情報と共に記録される。なお、ここでの「特定の病気に罹患している」との診断結果は、主に、各病院等の医療機関で個体が医師の診断を受けた結果の情報である。但し、診断結果として、本発明に係る診断装置1による診断の結果を利用する態様も考えられる。
また、母集団情報12には、特定の病気の罹患者の情報について、その個体が特定の病気になった回数の情報が記録されている。例えば、同じ個体が、肺炎で入院したのが2回目であれば、「肺炎につき2回目である」情報が、個体に紐付けて記録される。
また、母集団情報12には、特定の病気の罹患者で、特定の病気になった際に取得されたバイタルの異常や病状の内容について、同一の内容が記録された回数の情報が記録されている。例えば、同じ個体につき、2回目の心不全に罹患した際に、1回目及び2回目で共に、冷感の病状が観察されていれば、「肺炎の際の病状として冷感が2回目である」情報が、個体に紐付けて記録される。
また、母集団情報12には、特定の病気に罹患していない個体についても、そのバイタル因子情報、病状情報、既往歴情報が記録されている。即ち、特定の病気の非罹患者の情報となる。バイタル因子情報等は、各情報の取得日時の情報と共に記録される。
また、母集団情報12には、診断装置1で診断が可能な病気の種類について、それぞれの病気について、罹患者及び非罹患者の情報が記録されている。
この母集団情報12は、診断対象となる病気の診断条件を設定するために必要となる。例えば、肺炎であれば、肺炎と診断された個体について、病院で記録された診断時のバイタル因子情報の異常の情報、観察され、又は、回答を得た病状の情報、回答を得た(又は既に個体につき記録されている)既往歴の情報が、罹患者の個体の情報として含まれる。
また、肺炎に罹患していない個体について取得されたバイタル因子情報の異常の情報、観察され、又は、回答を得た病状の情報、回答を得た(又は既に個体につき記録されている)既往歴の情報が、非罹患者の個体の情報として含まれる。そして、肺炎について、罹患者及び非罹患者の情報は、複数の個体から収集され、肺炎の罹患者群と、非罹患者群の情報として取り扱い可能となっている。
この母集団情報12に含まれるデータの数は、随時、データを追加して、その数を増やすことができる。例えば、病院等の電子カルテシステムと、本発明に係る診断装置1を連動させて、病院での診断の際に取得された情報を、母集団情報12として追加することができる。また、母集団情報12には、診断の対象者から取得したバイタル因子情報8等も、特定の病気の罹患者又は非罹患者の情報として含めることができる。
また、母集団情報12に含まれるデータの数は、診断の精度を高める点から、多ければ多い程好ましい。将来的には、個々の医療機関が有する情報に留まらず、例えば、国内の医療機関から膨大な情報を収集した医療ビッグデータを、本診断装置1で利用する情報に反映できれば、個別の病気の診断の精度が飛躍的に向上させることができる。また診断が可能な病気の種類の範囲も大幅に広げることができる。さらには、診断した病気における重症度の判定も可能となる。また、診断条件における統計学的な感度及び特異度の設定可能な範囲が広がり、最終的な診断において、特定の病気に罹患しているか否かだけでなく、総合点の内容に応じて、その病気に罹患している可能性を段階的に示すことも可能となる。
なお、診断条件に関する「感度」及び「特異度」については後述する。
情報記録部4には、診断基準情報17が記録されている(図4参照)。この診断基準情報17は、スコアリング処理手段100が算出した、対象者におけるバイタル因子情報8等に基づく第2スコア値情報104の総合点(スコア結果情報)について、特定の病気に罹患しているか否かを、判定処理手段6で判断する際の基準となる情報である。診断基準情報17の設定の事例については後述する。
診断基準情報17は、タブレット端末3の入力部3a、情報送受信部3c及び演算部2の情報入力手段24を介して情報の追加や修正が可能となっている。
情報記録部4には、判定処理手段6が、対象者におけるバイタル因子情報8等に基づく第2スコア値情報104の総合点について、判定処理手段6が診断した診断結果情報12bが記録されている。診断結果情報12bは、例えば、「肺炎」等の病名の情報か、「該当なし」等の特定の病気に罹患していない状態を示す情報である。即ち、上述したように、識別可能な特定の個体に対する、診断結果の情報を個体に紐付けて記録することができる。この診断結果情報12bは、タブレット端末3の表示部3bを介して、その内容を確認可能となっている。
また、情報記録部4には、入力されたバイタル因子情報の内容から得られた第1スコア値情報103を判定処理手段6で、その値が異常な値か否かを判定する際の基準となるスコア判定基準情報18が記録されている。
また、スコア判定基準情報18は、タブレット端末3の入力部3a、情報送受信部3c及び演算部2の情報入力手段24を介して情報の追加や修正が可能となっている。
情報記録部4には、判定処理手段6が第1スコア値情報103について、異常な値か否かと判定した判定結果の情報であるスコア判定結果情報12cが記録されている。タブレット端末3の表示部3bを介して、その内容を確認可能となっている。また、スコア判定結果情報12cは、異常又は正常による表示だけでなく、点数に応じた色分けで判定結果を示すことができる。例えば、3点以上は赤色、2点は黄色、1点以下は色なし等、色分けによって、異常か否かを示すことができる。
また、スコア判定結果情報12cは、個々のスコア値情報103に対して判定した結果だけでなく、複数(例えば、全部又は一部)のスコア値情報103を足し合わせた合計点に対して判定した結果であってもよい。この場合、複数のスコア値情報103を足し合わせた合計点に対して、異常又は正常といった判定や、点数に応じた色分けで判定結果を示すことができる。
[3.基準算出手段]
基準算出手段5について説明する。基準算出手段5は、本発明を適用したソフトウェアが演算部2に実行させる機能の1つであり、情報記録部4に記録される(入力される情報)バイタル因子情報8について、第1スコア値情報103を算出するためのスコアリング基準情報102となる数値範囲の算出を行う。また、このスコアリング基準情報102となる数値範囲の算出に利用するバイタル平均値、バイタル標準偏差の算出の処理を行う。診断装置1においては、体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍、呼吸数及び脈圧の測定値について、基準算出手段5によってスコアリング基準情報102となる数値範囲が算出され、これがスコアリングの際の基準となる。
また、基準算出手段5は、情報記録部4に記録されるバイタル因子情報(入力されるバイタル因子情報)について、バイタルサインの値について、異常な値か否かを判定するためのバイタル判定基準情報102aとなるバイタル判定用数値範囲の算出や、このバイタル判定基準情報102aとなるバイタル判定用数値範囲の算出に利用するバイタル平均値、バイタル標準偏差の算出の処理を行う。診断装置1においては、体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍、呼吸数及び脈圧の測定値について、基準算出手段5によってバイタル判定基準情報102aとなるバイタル判定用数値範囲が算出され、これがバイタルサインの値について、異常な値か否かを判定する際の基準となる。
演算部2を基準算出手段5として機能させて算出又は記録された各種の情報は、タブレット端末3の入力部3a、情報送受信部3c及び演算部2の情報入力手段24を介して情報の追加や修正が可能となっている。また、演算部2を基準算出手段5として機能させて算出又は記録された各種の情報はタブレット端末3の表示部3bを介して、その内容を確認可能となっている。
図4には本発明を適用したソフトウェアが演算部2に実行させる機能を記載している。演算部2は、基準算出手段5を構成する平均値算出手段14、標準偏差算出手段15、正規分布算出手段16及びスコアリング基準設定手段101、バイタル判定基準設定手段101aとして機能する。
平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15は、情報記録部4に記録された、対象者のバイタル因子情報8及びその再測定バイタル因子情報13に基づき、所定の条件下の記録情報から、同条件下の「バイタル因子情報の平均値」と、同条件下のバイタル因子情報を統計した分布における「バイタル因子情報の標準偏差」を、それぞれ算出する。なお、以下では、特別な算出を行う種類の平均値や標準偏差の名称を指す場合以外には、バイタル因子情報の平均値を「バイタル因子情報平均値」と呼び、また、バイタル因子情報の標準偏差を「バイタル因子情報標準偏差」と呼ぶものとする。なお、所定の条件については後述する。
また、平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15は、情報記録部4に記録されたバイタル因子情報8について、第1スコア値情報103が、スコア判定基準情報18に基づき、第1スコア値情報103が異常な値であると判定された際のバイタルサインの値も含めて、バイタル因子情報平均値及びバイタル因子情報標準偏差の算出を行う。また、平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15は、情報記録部4に記録されたバイタル因子情報8について、入力された判定時点のバイタルサインの値が、バイタル判定基準情報102aに基づき、異常な値であると判定された際のバイタルサインの値も含めて、バイタル因子情報平均値及びバイタル因子情報標準偏差の算出を行う。
このように、正常と判定された根拠となるバイタルサインの値だけでなく、異常と判定された根拠となるバイタルサインの値も含めてバイタル平均値やバイタル標準偏差を算出することで、対象者の個体内変動を反映した平均値や標準偏差にすることができる。また、これらの平均値や標準偏差を用いることで、スコアリング基準情報102や、バイタル判定基準情報102aの設定の際に、対象者の個体内変動を反映した基準を作成することができる。
平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15の算出の際に採用される「所定の条件」は、通常、判定時点を起点に30個分のバイタル因子情報(体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍、呼吸数及び脈圧)を利用する方法が採用されている。この期間のバイタル因子情報とは、判定時点の測定データを含めて過去30個分のバイタル因子情報8及び再測定バイタル因子情報13である。
ここで、過去30個分の設定は、上述したように、幅広くは1秒ごとに測定したバイタル因子情報のデータであり、この他にも、1分ごと、数分ごと、1時間ごと、1日ごと、1か月ごとに測定したバイタル因子情報のデータのように、時間の長さが異なるものが採用しうる。また、バイタル因子情報8は、一点のみのデータではなく、経時的に取得した情報を用いて、30個分のデータを抽出するものとなる。また、不規則に取得されたデータを、過去30個分抽出するようにしてもよい。この際、単純に、取得された順番を遡るように30個分抽出する方法でもよい。また、不規則に取得されたデータに対して、何等かの抽出条件を設定して30個分抽出する方法でもよい。抽出条件は、例えば、所定の1時間の範囲内から30個分抽出するとの条件や、バイタル因子情報同士の取得時間の間隔が、一定の条件を満たす(間隔が最低5分以上ある、又は、間隔が1時間以内である等)条件も考えられる。更に、一定間隔で規則的に測定したバイタル因子情報8に対して、ランダムに、30個分のバイタル因子情報8を選択して抽出する方法であってもよい。過去30個分の抽出条件は、必要に応じて、適宜設定可能である。どのような取り方をしても、少なくとも経時的な30個分のバイタル因子情報8が抽出できれば、個体内変動を反映した正規分布が得られ、スコアリング基準情報102又はバイタル判定基準情報102aに利用することができる。
また、上述したように、バイタル因子情報8として、幅広くは1秒ごとのバイタル因子情報8を記録可能に構成されている。また、バイタル因子情報8は、例えば、1分ごと、1時間ごと等、異なる時間間隔で記録するように設定することもできる。更に、不規則に、1日に複数回測定したバイタル因子情報が記録可能に構成されている。演算部2が平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15として機能して、バイタル平均値及びバイタル標準偏差を算出する際には、適宜、設定した条件で、バイタル平均値及びバイタル標準偏差を算出することができる。例えば、30個分のバイタル因子情報を抽出する条件が設定されていれば、抽出した30個分のバイタル因子情報から、バイタル平均値及びバイタル標準偏差を算出することができる。
また、平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15は、入力された対象者のバイタル因子情報に基づく第1スコア値情報103又はバイタルサインの値の判定時点において、都度、その判定時点より前に記録されたバイタル因子情報8及び再測定バイタル因子情報13を参照して、その判定時点のバイタル因子情報平均値及びバイタル因子情報標準偏差の算出を行う。これにより、判定処理手段6(又はスコア処理手段100)が利用する基準が、判定時点ごとに改められるものとなり、バイタル因子情報に基づくスコア値情報103が異常な値であるか否かの判定、及び、バイタルサインの値が異常な値であるか否かの判定に、対象者のバイタル因子情報の個体内変動を反映しやすいものとなる。
また、バイタル因子情報を利用する個数が30個分以上の数であり、更に多い数、例えば、60個以上や、90個以上等、より多くの数のバイタル因子情報9を利用する構成であってもよい。バイタル因子情報8の数を増やすことで、個体内変動を反映した正規分布の内容の精度を高めることができる。また、個体内変動を捉えるための最低の個数として、30個分以上のデータ数となることが好ましい。
この平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15の算出の際に採用する「所定の条件」として、例えば、「90日間」を採用した場合には、この算出期間は、例えば、図5に示すような時間経過とともに90日間の範囲が1日ずつ移動する設定にすることができる。即ち、ある測定日(判定日)における算出に利用する90日の期間は、その測定日を含めて、測定日の90日前から測定日までの範囲(符号A)で示すものとなる。また、測定日の1日前において算出に利用された「所定の条件」は、測定日の91日前から測定日の1日前の日までの範囲(符号B)で示すものとなる。更に、測定日の2日前において算出に利用された「所定の条件」は、測定日の92日前から測定日の2日前の日までの範囲(符号C)で示すものとなる。このように、「所定の条件」の90日間の範囲は、時間の経過(符号Tの矢印の方向)と共に、1日ずつ移動する設定とすることができる。この点は、異なる時間の長さ(例えば、数分、数時間、1日の中)で、30個分のデータ数として利用する場合にも同様である。
また、平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15の算出の際に採用される「所定の条件」は、判定時点を含めて30個分のバイタル因子情報が利用されるように設定されているが、必ずしも、判定時点が起点となる必要はない。例えば、判定時点を除いて、「判定時点の前のデータ」を起点に30個分のバイタル因子情報が利用される設定も採用しうる。但し、判定時点を含めることで、直近の同一個体の状態を反映可能となり、その個体の個体内変動が捉えやすくなる点から、平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15の算出の際に採用される「所定の条件」は、判定時点を含めて30個分のバイタル因子情報が利用されることが好ましい。
また、平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15の算出の際に採用される「所定の条件」は、必ずしも連続した日付(個数)で計測されたバイタル因子情報である必要はない。例えば、対象者がバイタル測定を行っていない日(タイミング)があり、バイタル因子情報の記録がない日(タイミング)が存在するケースでは、所定の条件の日数(個数)が「合計で30日(30個分)」となるものであってもよい。
例えば、図6の符号A(黒丸の図形)で示すように、毎日継続して、1日に午前と午後の2回バイタル因子情報を記録して、全ての情報を平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15の算出に利用している。
ここで、本発明では、設定した個数分のバイタル因子情報のデータ数が揃うのであれば、必ずしも、毎秒、毎分、毎時、毎日等、連続的に取得されたバイタル因子情報である必要はない。図6の符号B(バツの図形)や、符号C(白抜き三角)で示すバイタル因子情報のように、バイタル因子情報を取得した日(タイミング)が非連続的であり、数日(数回)に1回取得される態様であってもよい。更には、連続的なバイタル因子情報の記録が存在した状態で、設定した条件に基づいて部分的に抽出する態様であってもよい。設定した条件とは、例えば、毎週月曜日のバイタル因子情報のみ抽出する、午前中に取得したバイタル因子情報のみ抽出する、指定した日付のみ抽出するといったような内容である。
正規分布算出手段16は、所定の条件におけるバイタル因子情報の平均値及び標準偏差から正規分布を算出する部分である。対象者の各判定時点における正規分布を算出可能であり、算出した正規分布は、その確立密度関数をグラフ化した正規分布曲線が作成され、この正規分布曲線がタブレット端末3の表示部3bに表示される構成となっている。また、上述したように、所定の条件におけるバイタル因子情報の平均値及び標準偏差は、異常と判定された根拠となるバイタルサインの値も含めて、その値が算出されている。そのため、正規分布算出手段16が算出する正規分布も異常と判定された根拠となるバイタルサインの値を含んで作成されるものとなる。
スコアリング基準設定手段101は、平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15と連動して、各算出部から算出されたバイタル平均値及びバイタル標準偏差に基づき、スコアリング処理手段100がスコアリングに用いるスコアリング基準情報102を作成する。作成されたスコアリング基準情報102は情報記録部4に記録される。
より詳細には、スコアリング基準設定手段101は、平均値算出手段14、標準偏差算出手段15、正規分布算出手段16と連動して、対象者から測定された体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍、呼吸数及び脈圧の測定値に対して、各算出手段から算出されたバイタル平均値及びバイタル標準偏差に基づき、スコアリングに用いるスコアリング基準情報102を作成する。
また、ここでは、上述したように、スコアリング基準情報102の作成において、バイタル因子情報8に、スコア値情報103が異常な値であると判定された際のバイタルサインの値(または入力された判定時点のバイタルサインの値が異常な値であると判定された際のバイタルサインの値)が含まれている。
また、スコアリング基準情報102には、各算出手段の算出結果だけでなく、意識レベルの程度を区別可能な所定の観察状態の内容の情報も含まれている。
また、対象者から取得された意識レベルの評価結果に対しては、意識レベルの程度を区別可能な所定の観察状態の内容を入力しておき、スコアリング基準情報102として設定することができる。設定されたスコアリング基準情報102は情報記録部4に記録される。なお、バイタル平均値、バイタル標準偏差及びスコアリング基準情報102の算出の詳細や、複数の項目から構成されるスコアリング基準情報102の設定については、後述する。
バイタル判定基準設定手段101aは、平均値算出手段14、標準偏差算出手段15と連動して、各算出部から算出されたバイタル平均値、バイタル標準偏差に基づき、判定処理手段6がバイタルサインの値の判定に用いるバイタル判定基準情報102aを作成する。作成されたバイタル判定基準情報102aは情報記録部4に記録される。
より詳細には、バイタル判定基準設定手段101aは、平均値算出手段14、標準偏差算出手段15、正規分布算出手段16と連動して、対象者から測定された体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍、呼吸数及び脈圧の測定値に対して、各算出手段から算出されたバイタル平均値及びバイタル標準偏差に基づき、バイタルサインの値の判定に用いるバイタル判定基準情報102aを作成する。
また、ここでは、上述したように、バイタル判定基準情報102aの作成において、バイタル因子情報8に、入力された判定時点のバイタルサインの値が異常な値であると判定された際のバイタルサインの値(またはスコア値情報103が異常な値であると判定された際のバイタルサインの値)が含まれている。
[4.スコアリング処理手段]
スコアリング処理手段100について説明する。スコアリング処理手段100は、本発明を適用したソフトウェアが演算部2に実行させる機能の1つであり、タブレット端末3の入力部3aを介して入力された判定時点のバイタル因子情報8、病状因子情報9及び危険因子情報10等について、平均値算出手段14、及び標準偏差算出手段15の処理情報や、予め設定した基準を含むスコアリング基準情報102に基づき、バイタル因子情報の内容に応じた第1スコア値情報103、第1スコア値情報103の内容から換算される第2スコア値情報104、及び、第2スコア値情報104に基づき算出される総合点(スコア結果情報)を算出する処理を行う。
スコアリング処理手段100にて算出された第1スコア値情報103及び第2スコア値情報104は、上述したように、情報記録部4に記録される。その際、第1スコア値情報103及び第2スコア値情報104は、個体を識別可能な識別情報や、スコア値の算出基準となった情報に紐付けられて記録される。スコアリング処理手段100は、情報記録部4及び基準算出手段5と連動して、第1スコア値情報103及び第2スコア値情報104を出す構成となっている。
また、第1スコア値情報103及び第2スコア値情報104は、タブレット端末3の表示部3bを介して、その内容を確認可能となっている。また、第1スコア値情報103及び第2スコア値情報104は、タブレット端末3の表示部3bだけでなく、タブレット端末3の情報送受信部3cを介して外部のサーバや、外部の端末にスコア判定結果情報12cを送信して、これらの画面等でも確認することもできる。
[5.判定処理手段]
判定処理手段6について説明する。判定処理手段6は、本発明を適用したソフトウェアが演算部2に実行させる機能の1つであり、タブレット端末3の入力部3aを介して診断時に入力されたバイタル因子情報8、病状因子情報9及び危険因子情報10に基づいて、スコアリング処理手段100によってスコアリングされた第2スコア値情報104の総合点(スコア結果情報)について、診断基準情報17に照らして、対象者が特定の病気に罹患しているか否かの診断の処理を行う。
また、判定処理手段6は、診断時に入力されたバイタル因子情報8が、スコアリング処理手段100によってスコアリングされた第1スコア値情報103についてスコア判定基準情報18に基づき、第1スコア値情報103が異常な値であるか否かについて判定の処理を行う。また、判定処理手段6は、診断時に入力されたバイタルサインの値についてバイタル判定基準情報102aに基づき、バイタルサインの値が異常な値であるか否かについて判定の処理を行う。
また、判定処理手段6による、対象者のバイタル因子情報8等に基づく診断の処理は、入力されたバイタルサインの値から、バイタル因子情報8の中の少なくとも1つが、バイタル異常の結果(第1スコア値情報103の異常又はバイタルサインの値の異常)を示すこと、又は、対象者から、病状因子情報9として、何等かの病状が入力(記録)されたことが起点となり、診断の処理が開始される。即ち、バイタルの異常又は病状が発生したことを起点に、判定処理手段6による診断の処理が行われる。
ここで、必ずしも、対象者について、バイタルの異常又は病状が発生したことを起点に、判定処理手段6による診断の処理が開始される必要はない。但し、対象者が何等かの病気に罹患している可能性が高い状態で、診断を開始することができるため、バイタルの異常又は病状が発生したことを起点に、判定処理手段6による診断の処理が開始されることが好ましい。
判定処理手段6にて診断・判定された診断結果情報12b、スコア判定結果情報12c及びバイタル判定結果情報12aは、上述したように、情報記録部4に記録される。また、これらの結果情報は、タブレット端末3の表示部3bを介して、その内容を確認可能となっている。また、これらの結果情報は、タブレット端末3の表示部3bだけでなく、タブレット端末3の情報送受信部3cを介して外部のサーバや、外部の端末に情報を送信して、外部の端末の画面等でも確認することもできる。
また、診断結果情報12b、スコア判定結果情報12c及びバイタル判定結果情報12aは、タブレット端末3の表示部3b上への表示を行うだけでなく、その情報が出されたことを通知する通知音やメールメッセージで、対象者に通知する構成とすることもできる。
続いて、本発明を適用したソフトウェアを機能させる際に使用する装置や、入力画面の具体的な内容について説明する。
例えば、図7(a)に示すように、バイタル因子情報8の取得は、ウェアラブル型のバイタル測定器21aや、体温計21b等で行い、これらで計測した測定値を、測定した時間の情報と共に、タブレット端末3の表示部3bに表示された画面を介して入力する。表示部3b上には、タッチパネル形式の入力部3aが表示され、ここにバイタル因子情報を入力する。
また、対象者のバイタル因子情報8のうち、意識レベルの評価結果や、病状因子情報9及び危険因子情報10については、タブレット端末3の表示部3bに表示された画面を介して入力することができる。さらに、意識レベルの評価結果や、病状因子情報9及び危険因子情報10については、予め、入力される種類の情報を記録しておき、対象者や看護師等が、表示部3bに表示された情報の中から、選択しながら入力すること態様とすることもできる。
また、図7(b)では、バイタル因子情報をスマートフォン端末22aや、パーソナルコンピュータ端末22b(以下、「PC端末22bと称する)から、上述の第2のシステム構成で述べた外部サーバである情報管理サーバ32aにアクセスして、スマートフォン端末22aやPC端末22bからバイタル因子情報8等の入力を行うこともできる。各端末から送信されたバイタル因子情報8等に基づき、情報管理サーバ32aで対象者の診断がなされ、その結果の情報が各端末に送信され、各端末の画面で診断結果の情報が表示される態様とすることもできる。
また、タブレット端末3、スマートフォン端末22a及びPC端末22bの入力画面の一例として、図8に示す画面を示す。
図8に示す入力画面では、画面右側に複数のバイタルサインの計測データの入力欄と、対象者が自身で判断した自覚症状の内容、又は、看護師等が対象者を観察して確認される他覚症状の内容を入力する項目が設けられている。即ち、バイタル因子情報8や、病状因子情報9が入力可能な画面になっている。また、図8には示していないが、このような入力画面において、対象者の危険因子情報10を入力することができる。
[6.診断基準情報の設定]
診断基準情報17は、基準病気情報11の各病気の因子の情報と、母集団情報12に記録された罹患者群と非罹患者群の情報に基づき設定することができる。この診断基準情報17は、例えば、病気の種類ごとに、設定する「所定のカットオフ値」が採用される。
この所定のカットオフ値は、母集団情報12のデータから、多数の罹患者群と非罹患者群の情報について、病気の種類ごとに、特定の病気に罹患しているか否かを判定するための基準の数値である。
例えば、本発明に係る診断装置1を用いて、肺炎に関する罹患者群と非罹患者群が混在した250名の対象者につき、バイタル因子情報8等からスコアリングを行い、「所定のカットオフ値」として、20ポイントを設定した結果を表2に示す。
表2に示す結果では、診断基準情報17となる所定のカットオフ値として、20ポイントを設定した場合、250名のそれぞれの第2スコア値情報104の総合点(スコア結果情報)が、20ポイントを超えた場合を、診断装置1による診断結果で「陽性(陽性54名)」と判定し、第2スコア値情報104の総合点が、20ポイント以下であれば、診断装置1による診断結果で「陰性(196名)」と判定している。即ち、表2の検査とは、本発明に係る診断装置1での診断に該当する。
また、表2の「医師の診断」とは、診断装置1に係る診断(検査)とは別に、実際に、対象者250名が、医師の診断(例えば、医師の問診や従前の鑑別診断等に基づく診断)を受けた内容を示す。この医師の診断結果に応じて、「罹患」又は「非罹患」を分けた結果となる。例えば、診断装置1での診断で陽性となった54名のうち、51名が医師の診断で「罹患」と判定されている。
そして、統計学的に、250名の情報について、診断装置1による診断(検査)の「感度」と「特異度」を算出した場合、感度は「74.86%」、特異度は「98.38%」であった。
ここでの「感度」とは、本例で言えば、診断装置1による診断で「肺炎を見逃さない割合」を示す指標である。より詳しくは、診断装置1による診断で陽性と判定され、かつ、医師の診断で罹患と判定された「真陽性」(51名)の数を、「真陽性+偽陰性(診断装置1による診断で陰性と判定され、かつ、医師の診断で罹患と判定された数)」(64名)で割った値である。
また、ここでの「特異度」とは、本例で言えば、診断装置1による診断で「肺炎であることをむやみやたらと疑わないこと」を示す指標であり、診断装置1による診断の正確性を示す指標ともいえる。より詳しくは、診断装置1による診断で陰性と判定され、かつ、医師の診断で非罹患と判定された「真陰性(182名)」の数を、「真陰性+偽陽性(診断装置1による診断で陽性と判定され、かつ、医師の診断で非罹患と判定された数)」(185名)で割った値である。
表2で示す結果につき、250名のそれぞれの第2スコア値情報104の総合点(スコア結果情報)を、10ポイント区切りで分けて、各区分の割合をグラフ化したものを図9(a)に示す。図9(a)のグラフの横軸は、10ポイントごとの各区分であり、縦軸が、全体に占める割合(%)である。また、医師の診断で肺炎に罹患していると判定された対象差のグラフをハッチング有りの「肺炎群のグラフ」とし、医師の診断で肺炎に罹患していない(非罹患)と判定された対象差のグラフを黒塗りの「コントロール群のグラフ」とする。
図9(a)の中の符号Tで示す範囲は、第2スコア値情報104の総合点(スコア結果情報)で、20ポイントを超えた区分の対象者の範囲である。この符号Tで示す範囲の各グラフから、診断基準情報17として、「20ポイント」を設定した診断で、肺炎の罹患者の多くを検査陽性(心不全の可能性あり)とし、かつ非罹患者の大部分を検査陰性(心不全ではない)として、精度高く検知されたことが確認される。
このように「感度」及び「特異度」から、診断装置1の利用者が、任意でカットオフポイントを決めることも出来る。例えば、肺炎を見逃したくない場合は、特異度を下げてでも感度を上げるためにポイントを下げる設定も可能である。また、例えば、「感度」及び「特異度」の両方が70%以上で、かつ、ポイントの合計値が高い結果で、診断結果を決めることもできる。
また、別の例えば、本発明に係る診断装置1を用いて、心不全に関する罹患者群と非罹患者群が混在した194名の対象者につき、バイタル因子情報8等からスコアリングを行い、「所定のカットオフ値」として、20ポイントを設定した結果を表3に示す。
表3に示す結果では、診断基準情報17となる所定のカットオフ値として、20ポイントを設定した場合、194名のそれぞれの第2スコア値情報104の総合点(スコア結果情報)が、20ポイントを超えた場合を、診断装置1による診断結果で「陽性(陽性16名)」と判定し、第2スコア値情報104の総合点が、20ポイント以下であれば、診断装置1による診断結果で「陰性(178名)」と判定している。即ち、表3の検査とは、表2と同様に、本発明に係る診断装置1での診断に該当する。また、表3の「医師の診断」とは、表2と同様に、実際の医師の診断結果である。
そして、統計学的に、194名の情報について、診断装置1による診断(検査)の「感度」と「特異度」を算出した場合、感度は「88,89%」、特異度は「95,68%」であった。
ここでの「感度」は、診断装置1による診断で陽性と判定され、かつ、医師の診断で罹患と判定された「真陽性」(8名)の数を、「真陽性+偽陰性」(9名)で割った値である。
また、ここでの「特異度」とは、診断装置1による診断で陰性と判定され、かつ、医師の診断で非罹患と判定された「真陰性(177名)」の数を、「真陰性+偽陽性」(185名)で割った値である。
表3で示す結果につき、194名のそれぞれの第2スコア値情報104の総合点(スコア結果情報)を、10ポイント区切りで分けて、各区分の割合をグラフ化したものを図9(b)に示す。図9(b)のグラフの横軸は、10ポイントごとの各区分であり、縦軸が、全体に占める割合(%)である。また、医師の診断で心不全に罹患していると判定された対象差のグラフをハッチング有りの「心不全群のグラフ」とし、医師の診断で肺炎に罹患していない(非罹患)と判定された対象差のグラフを黒塗りの「コントロール群のグラフ」とする。
図9(b)の中の符号Tで示す範囲は、第2スコア値情報104の総合点(スコア結果情報)で、20ポイントを超えた区分の対象者の範囲である。この符号Tで示す範囲の各グラフから、診断基準情報17として、「20ポイント」を設定した診断で、心不全の罹患者の多くを検査陽性(心不全の可能性あり)とし、かつ非罹患者の大部分を検査陰性(心不全ではない)として、精度高く検知されたことが確認される。
このように「感度」及び「特異度」から、診断装置1の利用者が、任意でカットオフポイントを決めることも出来る。例えば、心不全を見逃したくない場合は、特異度を下げてでも感度を上げるためにポイントを下げる設定も可能である。また、例えば、「感度」及び「特異度」の両方が70%以上で、かつ、ポイントの合計値が高い結果で、診断結果を決めることもできる。
なお、上述した肺炎及び心不全では、診断基準情報17となる所定のカットオフ値として20ポイントを採用しているが、この数値は、必ずしも、20ポイントに限定されるものではなく、診断装置1による診断での「感度」及び「特異度」を、どの程度に設定するかに応じて、適宜変更することができる。例えば、母集団情報12の情報から、感度及び特異度の両方が80%以上となるように、所定のカットオフ値を設定することも可能である。さらに、母集団情報12に蓄積されるデータ数が増えれば、検査の正確性を示す特異度が95%以上となる所定のカットオフ値を設定して、診断の対象者の第2スコア値情報104の総合点(スコア結果情報)が、所定のカットオフ値を超えれば、統計学の95%信頼区間の考え方に基づき、その特定の病気に罹患している確率が非常に高いとして、合計点の20ポイントではなく、罹患率から「100%(ほぼ100%)」とする診断結果を出すことも可能である。
このように、診断基準情報17は、基準病気情報11の各病気の因子の情報と、母集団情報12に記録された罹患者群と非罹患者群の情報に基づき、診断装置1による診断の検査としての感度または特異度を考慮しながら設定することができる。
続いて、バイタル因子情報8から第1スコア値情報を算出するまでの流れと、バイタルサインの値又は第1スコア値情報からバイタル異常を判定するまでの具体的な判定の方法について説明する。
[7.バイタル平均値等の算出、スコアリング及び異常の判定について]
[7−1.体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍及び脈圧の測定値について]
バイタル平均値及びバイタル標準偏差は情報記録部4に記録されたバイタル因子情報8及び再測定バイタル因子情報13に基づき、演算部2が基準算出手段5の平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15として機能して算出される。また、バイタル平均値及びバイタル標準偏差に基づき、体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍及び脈圧の測定値に対するスコアリング基準情報102及びバイタル判定基準情報102aが設定される。
バイタル平均値、バイタル標準偏差及びこれらに基づくスコアリング基準情報102及びバイタル判定基準情報102aの設定方法として、情報記録部4に記録されたバイタル因子情報8及び再測定バイタル因子情報13をバイタル平均値等の算出に利用する方法が挙げられる。本方法では、バイタル平均値とバイタル因子情報の分布に基づく標準偏差は、平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15において、以下の式(3)及び式(4)を用いて算出される。
μ=(1/N)×ΣSi・・・式(3)
σ=√((1/N)×Σ(Si−μ)2)・・・式(4)
ここでμはバイタル因子情報の平均値、Siは各バイタル因子情報の計測値、Nは全バイタル因子情報のデータ数であり、σは標準偏差である。ΣSiは、全バイタル因子情報の計測値の合計を示す。また、各バイタル因子情報の計測値とは、上述したように、設定した所定の条件で取得したバイタル因子情報の値である。なお、ここでいう全バイタル因子情報の内容は、上述したように、情報記録部4に記録された情報の一部を抽出するものであってよい。また、ここでのバイタル因子情報とは、体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍及び脈圧の測定値である。
ある判定時点において、対象者のバイタル因子情報を判定する際には、判定時点を起点に、情報記録部4に記録された同一の対象者のデータから、上記の式(3)、式(4)を用いて、バイタル平均値μ、バイタル標準偏差σが算出される。即ち、判定時点に測定した判定の対象となるバイタルサインの値を含めて、スコアリング基準情報102及びバイタル判定基準情報102aが算出される。続いて、スコアリング基準設定手段101及びバイタル判定基準設定手段101aが、以下の式(1)又は式(2)で表される値を、スコアリング基準情報102及びバイタル判定基準情報102aとして利用する。
μ−nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
ここでn、mは0より大きい数である。
スコアリング基準情報102では、上記の式(1)及び式(2)で表された値と、所定のスコア値(バイタル因子情報8に関する第1スコア値情報)、即ち、0点〜3点の点数の情報が組み合わされている。この組み合わせは、下記の表4に示す通りである。
なお、表4において、「−3σ」は、式(1)に基づく「μ−3σ」の値であり、「−2σ」は、式(1)に基づく「μ−2σ」の値であり、「+3σ」は、式(2)に基づく「μ+3σ」の値であり、「+2σ」は、式(2)に基づく「μ+2σ」の値を意味している。また、μ及びσは、所定の条件(例えば30個分のバイタル因子情報)で測定された各バイタルサインの測定値から算出される値である。
表4に示すように、体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍及び脈圧の測定値について、その内容に基づいて、0〜3点の各スコア値にスコアリングする際には、上記の式(1)及び式(2)に基づき算出された「μ±2σ及びμ±3σ」の値が利用されている。
より詳細には、入力されたバイタルサインの測定値が、その判定時点において算出されたバイタル平均値及びバイタル標準偏差において、「μ±2σ以内」の範囲に収まる値であれば0点のスコア、「μ−3σ(以上)〜μ−2σ(未満)」の範囲、又は、「μ+2σ(超)〜μ+3σ(以下)」の範囲に収まる値であれば1点のスコア、「μ−3σ(未満)」の範囲、又は、「μ+3σ(超)」の範囲に収まる値であれば2点のスコアとなる。
入力されたバイタルサインの測定値に対するスコアリングは、判定時点において算出されたバイタル平均値、バイタル標準偏差により、判定時点ごとの基準が設定される。また、体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍及び脈圧の測定値は、正規分布に従うバイタルサインであり、上記式(1)又は式(2)の基づき算出されたスコアリング基準情報102は、対象者の個体内変動が反映された基準であり、かつ、その対象者の正規分布に基づき設定された基準となる。そのため、対象者の体調の変動を正確に捉えることが可能な指標となる。
また、判定処理手段6は、第1スコア値情報103について、2点以上が算出された際には「異常」と判定する。即ち、1つずつのバイタルサインの測定値に対して、2点以上の値となる判定がなされた際に、バイタル異常と判定する設定になっている。この内容がスコア判定基準情報18である。
また、判定処理手段6は、バイタルサインの値(それぞれのバイタルサインの測定値)について、「μ±2σ以上」の値となったものを「(バイタルサインの値の)異常」と判定する。
また、各バイタルサインの値から算出された第1スコア値情報103と、この値に対するスコア判定結果情報12c及びバイタル判定結果情報12aは、対象者に紐付けて情報記録部4に記録される。
ここで、上述した式(1)又は式(2)におけるnは0より大きい数であることは述べたが、n及びmとなる数値は、上述した内容のように「2及び3」に限定されるものではなく、適宜、その数値を変更して、スコアリング基準情報102とすることができる。
また、必ずしも、体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍及び脈圧の測定値において、式(1)又は式(2)におけるn及びmとなる数値が同一である必要はない。バイタルサインの種類によって、設定するn及びmとなる数値を異なるものとすることもできる。
また、表4に示すスコアリング基準情報102では、例えば、1点のスコア値情報と、2点のスコア値情報を区別する範囲として、「μ+2σ(超)〜μ+3σ(以下)」と「μ+3σ(超)」の範囲が設定されている。しかし、必ずしも、範囲の設定がこの内容に限定される必要はない。例えば、「μ+2σ(超)〜μ+3σ(以下)」が2点、「μ+3σ(超)」が3点する内容とすることも可能である。また、その他の数値についても同様である。
また、表4に示すスコアリング基準情報102では、第1スコア値情報103は0点から3点の範囲で設定されているが、必ずしもこの範囲に限定される必要はない。例えば、第1スコア値情報を0点、1点、及び2点の範囲でスコアリングする設定に変更することも可能である。更には、3点より大きな数値を採用することも可能である。第1スコア値情報103を変更する場合、これに合わせてスコアリング基準情報102を適宜設定可能であることは言うまでもない。
また、判定処理手段6が第1スコア値情報103について、異常と判定する数値が2点以上に限定されるものではない。例えば、3点以上で異常とする設定が採用されてもよい。また、表4に示すスコアリング基準情報102での点数を区別する閾値は一例に過ぎない。
また、正規分布しないバイタルサインである酸素飽和度、意識レベルについては、鑑別診断に用いるガイドラインの情報や、母集団情報12における特定の病気の罹患者群で出現頻度が高いバイタル異常の内容に基づき、スコアリング基準情報102を設定することができる。
[7−2.呼吸数について]
呼吸数に対するスコアリング基準情報102は、表4に示す内容で設定されている。表4では、平均値±4以内が0点のスコア、平均値−5以下、又は、平均値+5以上が1点のスコアとなるように設定されている。なお、呼吸数も正規分布するバイタルサインの値であるため、上述した体温等のように、平均μ及び標準偏差σを用いて、「μ±●σ」を基準としてスコアリングすることも可能である。
なお、本事例においては、体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍及び脈圧の測定値に対するスコアリングに基づく異常判定による「異常」が、図15(b)に示す「バイタル異常値検知」である。また、呼吸数、酸素飽和度及び意識レベルに対するスコアリングに基づく異常判定による「異常」が、図15(b)に示す「バイタル設定値異常」である。
入力された呼吸数の測定値の情報により、スコアリング処理手段100がスコア値情報103を算出する。また、スコア値情報103に対する判定処理手段6による異常な値か否かの判断は上述したとおりである。
また、対象者の呼吸数の測定値から算出されたスコア値情報103と、この値に対する注意等のスコア判定結果情報12cは、対象者に紐付けて情報記録部4に記録される。
[7−3.酸素飽和度について]
酸素飽和度に対するスコアリング基準情報102は、表4に示す内容で設定されている。表4では、90〜100の範囲が0点のスコア、89以下が1点のスコアとなるように設定されている。なお、必ずしも、酸素飽和度のスコアリングの基準となる範囲が、90〜100の範囲と、89以下に設定される必要はなく、適宜、設定変更することが可能である。
入力された酸素飽和度の測定値の情報により、スコアリング処理手段100がスコア値情報103を算出する。また、スコア値情報103に対する判定処理手段6による異常な値か否かの判断は上述したとおりである。
また、対象者の酸素飽和度の測定値から算出されたスコア値情報103と、この値に対する注意等のスコア判定結果情報12cは、対象者に紐付けて情報記録部4に記録される。
[7−4.意識レベルについて]
対象者に対して、介護者等が意識レベルを確認して、取得された結果について、スコアリング基準情報102として設定された所定の観察情報に当てはめる作業を行う。意識レベルの確認は、既知の意識レベルの評価方法であるAVPU評価を利用しうる。
AVPU評価では、正常(覚醒して見当識あり、A:alert)、異常(言葉により反応するが、見当識なし、V:verbal)、痛みに反応(痛みにのみ反応、P:Pain)、無意識(言葉にも痛みにも反応しない、U:Unresponsive)が所定の観察状態として設定されている。介護者等が対象者を観察して、その意識レベルがAVPU評価のどの項目に該当するかを判断して、その結果を、入力部3a等を介して入力する。
意識レベルに対するスコアリング基準情報102は、表4に示す内容で設定されている。表4では、正常が0点のスコア、異常が1点のスコアとなるように設定されている。介護者等が入力した情報により、スコアリング処理手段100がスコア値情報103を算出する。また、スコア値情報103に対する判定処理手段6による異常な値か否かの判断は上述したとおりである。なお、正常及び異常に加えて、痛みに無反応が2点のスコアや、無意識が3点のスコアとなるような設定をしてもよい。
また、対象者の意識レベルの評価結果から算出されたスコア値情報103と、この値に対する注意等のスコア判定結果情報12cは、対象者に紐付けて情報記録部4に記録される。
ここで、表4に示す対象者の意識レベルの評価結果に対するスコアリング基準情報102の内容はこれに限定されるものではない。AVPU評価以外の意識レベルの評価手法が採用されてもよい。例えば、ジャバン・コーマ・スケールやグラスゴー・コーマ・スケールなどの評価手法を採用してもよい。また、0〜3点の第1スコア値情報103を分ける観察状態は、適宜設定を変更して、スコアリング基準情報102とすることができる。
以上の内容では、対象者のバイタルサインのうち、体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍、呼吸数、脈圧及び酸素飽和度の測定値と、意識レベルの評価結果を用いてスコアリングを行い、算出されたスコア値情報103が異常な値か否かを判定している。ここで、必ずしも、対象者のバイタルサインがこれらの内容に限定される必要はない。例えば、スコアリングを行う対象として、対象者から得られた尿量、体重、痛み(痛みの有無や程度)、その他の病状異常をバイタルサインの情報として採用することも考えられる。
[8.病状因子情報及び危険因子情報のスコアリング]
本発明の診断装置1では、対象者の病状因子情報9が入力されると、入力された病状につき、「病状有り」として、「1点」の第1スコア値情報が付くように、スコアリング基準情報102が設定されている。
また、対象者の危険因子情報10として、例えば、既往歴情報が入力されると、入力された既往歴の内容につき、「既往歴有り」として、「1点」の第1スコア値情報が付くように、スコアリング基準情報102が設定されている。
[9.第2スコア値情報及び総合点の算出方法]
本発明の診断装置1では、対象者のバイタル因子情報8の内容の中に、第1スコア値情報103で「2点」以上が付けられたバイタルサインの種類については、バイタル異常と判断されると共に、第2スコア値情報104として「20ポイント」の点数が付けられる設定となっている。また、第1スコア値情報103で「1点」が付けられたバイタルサインの種類については、第2スコア値情報104として「10ポイント」の点数が付けられる設定となっている。
また、本発明の診断装置1では、対象者の病状因子情報9として、特定の病状が記録され、第1スコア値情報103で「1点」が付けられた病状の種類については、第2スコア値情報104として「20ポイント」の点数が付けられる設定となっている。
より詳しくは、基準病気情報11に含まれる全ての病気の種類につき、スコア結果情報から診断を行うが、特定の病気の因子に含まれる病状に関して、「病状有り」の1点の第1スコア値情報103がつくと、その病気の診断の中で、第2スコア値情報104として「20ポイント」の点数が付けられる。
また、本発明の診断装置1では、対象者の危険因子情報10として、特定の危険因子情報10が記録され、第1スコア値情報で「1点」が付けられた危険因子情報10の種類については、対象者のバイタル因子情報8及び病状因子情報9から算出された第2スコア値情報104の合計点に対して「1.2」の数値を乗じる(掛ける)設定となっている。ここでの「1.2」の数値が、危険因子情報10での第2スコア値情報104となる。
より詳しくは、基準病気因子情報11に含まれる全ての病気の種類につき、スコア結果情報から診断を行うが、特定の病気の因子に含まれる既往歴に関して、「既往歴有り」の1点の第1スコア値情報103がつくと、その病気の診断の中で、第2スコア値情報104として「1.2」の数値がつけられる。
そして、特定の病気を診断するために、バイタル因子情報8について、バイタル異常と判定されて付けられた第2スコア値情報104の点数と、病状因子情報9について、病状有りとして付けられた第2スコア値情報104の点数とを足すものとする。その後、危険因子情報10について、既往歴有りとして第2スコア値情報104の点数が設定されると、バイタル因子情報8及び病状因子情報9に由来する第2スコア値情報104の合計点に、危険因子情報10の第2スコア値情報104である「1.2」を乗じて、算出された点数を、第2スコア値情報104の「総合点」とする。この総合点が、スコア算出結果となる。なお、バイタル因子情報8、病状因子情報9及び危険因子情報10の第2スコア値情報104は、後述する種々の重みづけによって数値が修正され、この結果、第2スコア値情報104の総合点も変わり、より精度の高い診断が可能になっている。
また、診断装置1では、個体因子情報(スコアリング対象因子情報)として、心電図検査結果情報、エコー検査結果情報、血液検査結果情報、画像診断結果情報、又は、遺伝子診断結果情報を採用できる。そして、第2スコア値情報104の総合点を算出する際には、一例として、次のような設定にすることができる(図15参照)。
まず、心電図検査結果情報、エコー検査結果情報、血液検査結果情報、画像診断結果情報は、バイタル因子情報8及び病状因子情報9と同様に、検査結果に応じて、第2スコア値情報104を20ポイントに設定して、総合点の算出の際には、各ポイントを足していく設定とする。また、遺伝子診断結果情報は、危険因子情報10と同様に、バイタル因子情報8等を加算した合計点に「1.2」を乗じる第2スコア値情報104として設定できる。なお、ここで示す設定は一例であり、割り当てるポイント数(加算の20ポイントや乗じる1.2の数値)は、適宜設定変更することができる。また、後述する因子の重みづけにより、設定する数値を修正することができる。
[10.診断基準情報による総合点からの診断]
上述した第2スコア値情報104の総合点は、基準病気情報11に記録された複数の病気の種類ごとに、全て、第2スコア値情報の総合点が算出されるものとなっている。診断する病気の種類ごとに、病気の因子の内容も異なるため、第2スコア値情報104の総合点も、病気の種類ごとに異なるものとなる。
そして、判定処理手段6は、各病気につき設定された診断基準情報17(一例として、所定のカットオフ値)と、各病気につき算出された第2スコア値情報104の総合点とを比較して、特定の病気で、診断基準情報17を満たす場合に、対象者がその病気に罹患していると診断する。
なお、判定処理手段6による、診断基準情報17を基準とした判定では、上記表2及び表3の事例で述べたように、所定のカットオフ値を設定した場合、必ずしも、設定した数値を超えて、特定の病気に罹患していると判定する必要はない。例えば、設定した数値以上になる際に、特定の病気に罹患していると判定する構成も採用しうる。
また、母集団情報12に含まれるデータの数が増えることで、より精度の高い診断が可能な、診断基準情報17を設定することができる。例えば、母集団情報12に記録された複数の個体の情報を、既往歴情報が共通する集団で分類して、分類した範囲の情報で、診断基準情報17を設定することが考えられる。このように、既往歴情報で分類することで、特定の病気に対して、同様なバイタル異常や病状が出やすい集団に区分けすることができる。
また、判定処理手段6による診断は、基準病気情報11に記録された全ての病気の種類について行われるため、1つの病気だけでなく、同時に、複数の病気に罹患しているとの診断結果が出される場合もある。さらに、診断対象となる病気の種類の中で、第2スコア値情報の総合点が高い順番で、診断結果を並べて、上位に来た病気の種類を複数表示することもできる。
そして、判定処理手段6が、特定の病気に罹患していると診断した診断結果情報12bは、対象者に紐付けされて記録される。
続いて、各病気の因子について、重みづけをする内容について説明する。
[11.個人で複数回見られる因子の重みづけ]
本発明の診断装置1では、繰り返し見られるバイタル異常又は病状や、繰り返し罹患する病気の回数に応じて、病気の因子の第2スコア値を重みづけして、点数を修正することができる。即ち、同じ個体で観察される回数が2以上になるものについて、その回数に応じて、第2スコア値情報104の数値が大きくなる設定とすることができる。
このような複数回見られる因子の重みづけは、同じ個体が同じ病気に罹患した際に、同様の因子が観察される傾向にある現象に着目して設定した内容である。例えば、ある病気で、繰り返し見られる病状が観察されれば、同じ病気に罹患している可能性があるため、その病状に関する第2スコア値情報104の数値が大きくなるように修正して、診断基準情報17として設定した基準の点数を上回りやすくなるようにする。つまり、重みづけにより、第2スコア値情報104の総合点が大きくなり、特定の病気に罹患していると診断される可能性を高めることができる。
この際の第2スコア値情報104の重みづけは、例えば、バイタル因子情報8又は病状因子情報9の内容の繰り返しであれば、2回目以降の回数に応じて、その第2スコア値情報104に「係数1.1」を乗じる態様が考えられる。同じ病状が観察されたのが2回目であれば、第2スコア値情報104である20ポイントに「1.1」を乗じて、重みづけにより、第2スコア値情報104が「22」ポイントになる。また、同じ病状が観察されたのが3回目であれば、第2スコア値情報104である20ポイントに「1.1」を2回乗じて、重みづけにより、第2スコア値情報104が「24」ポイントになるといった内容である。
また、危険因子情報10に関する第2スコア値情報104の重みづけは、例えば、2回目以降の回数に応じて、その第2スコア値情報104として「係数1.2」を乗じる態様が考えられる。例えば、同じ個体が一度、心不全との診断を受け、既往歴に心不全(1回)が記録されていれば、次回、診断装置1で、心不全の診断を行う際には、バイタル因子情報8及び病状因子情報9の第2スコア値の合計点に、通常の第2スコア値情報104として「1.2」を乗じて、さらに重みづけとして、「係数1.2」を乗じて、第2スコア値情報104の総合点を算出する。この例で、さらに、3回目の心不全の診断であれば、さらに、「係数1.2」を乗じる重みづけがなされるものとなる。
ここで、複数回見られる因子の重みづけに関する「係数(上記の例で言えば1.1又は1.2の数値)」は、適宜設定の変更が可能な変動係数である。例えば、初期設定として、固定の数値を係数として採用してもよい。また、母集団情報12に含まれるデータ数が多ければ、この母集団情報12の情報について、重回帰分析して得られた「影響度(t値)」を、重みづけの係数として採用することもできる。
また、本発明における重みづけの係数として採用する影響度は、重回帰分析して得られた「影響度(t値)」に限定されるものではなく、既知の統計的処理から求められる種々の影響度を採用することができる。
また、同じ対象者について、基準病気情報11の中で、特定の病気の因子として含まれない病状因子情報9又は危険因子情報10が観察されたとしても、ある特定の病気に罹患していると診断された場合には、次回のその病気の診断の際には、その病気の因子の情報をとして追加することができる。
即ち、ガイドライン等の情報に基づき設定された病気の因子だけでなく、その個体で表れた病状等を、特定の病気の因子の情報として設定することができる。この結果、該当する個体についての、基準病気情報11の内容が修正され、2回目以降のその病気の診断の際には、第2スコア値情報104の算出や、診断基準情報17に反映させることができる。この結果、同じ個体での診断の精度を高めることができる。
[12.母集団情報に基づく病気因子の重みづけ]
本発明の診断装置1では、母集団情報12の情報について、対象者と母集団情報12の中の複数の個体との間で、既往歴情報が共通する個体を分類して、分類後の母集団情報12の中で、病気の因子の重みづけをして、対象者の第2スコア値情報104の算出に反映させることができる。
例えば、対象者が危険因子情報10の既往歴情報として「心疾患・心筋症」の過去の病歴を記録していた場合、母集団情報12の複数の個体から、既往歴に「心疾患・心筋症」が記録されている個体の情報を分類する。そして、分類した複数の個体の中で、バイタル因子情報、病状情報及び既往歴情報の各情報の出現頻度に基づき、各因子を重みづけする。
複数の個体で、例えば、病状の中で「下肢(浮腫)」の出現頻度が多ければ、この係数を大きくし、「胸痛」の出現頻度が少なければ、この係数を小さくするように設定する。そして、対象者の診断の際に観察された病状に、設定した係数を乗じることで、重みづけをすることができる。
このような母集団情報12の中で、特定の条件(上記の例では既往歴の種類)で個体の情報を分類して、分類後の個体の因子を重みづけする方法は、同じ既往歴を有する個体が、何等かの病気に罹患した際に、同様の因子が観察される傾向にある現象に着目して設定した内容である。このような他の個体で観察される病状の出現頻度を利用した重みづけにより、診断の精度を高めることができる。
この際の各因子の重みづけに関する係数は、出現頻度の割合で設定することが可能である。また、母集団情報12に含まれるデータ数が多ければ、この母集団情報12の情報について、重回帰分析して得られた「影響度(t値)」を、重みづけの係数として採用することもできる。
また、本発明における重みづけの係数として採用する影響度は、重回帰分析して得られた「影響度(t値)」に限定されるものではなく、既知の統計的処理から求められる種々の影響度を採用することができる。
[13.母集団情報に基づく複数回の重みづけ]
本発明の診断装置1では、母集団情報12の情報について、複数の個体において、繰り返し同じ病気になった回数と、その病気の際に生じる症状の出現頻度によって、診断の対象者の診断における個体の因子に重みづけをすることができる。
例えば、母集団情報12の中で、2回心不全に罹患した罹患者群で、1回目の心不全の際に、症状で浮腫があったグループの人数から、2回目に浮腫が出た人数と、2回目に浮腫が出なかった人数を出すことで、2回目の心不全の際に「浮腫」の症状を繰り返す頻度が確認できる。その頻度が高いほど、心不全で一度浮腫の症状が出た人は、次の心不全の際にも、浮腫の症状が出る可能性が高いとみなすことができ、例えば、所定の出現頻度を満たせば、診断対象の因子で、浮腫が出た際の第2スコア値情報に、係数、例えば初期設定で1.2倍を乗じて重みを付けていたものを、「浮腫」の出現率の確率に基づいた係数を設定し、重みづけをすることができる。なお、乗じる係数は、適宜設定変更することができる。
以上のように、本発明の診断装置1では、第2スコア値情報104の算出にあたり、各種の重みづけを行い、点数の修正を行うことで診断の精度を高めることができる。そして、重みづけによる精度の向上は、対象者の情報や、母集団情報12の情報の量を蓄積していくことで、飛躍的に高めていくことが可能である。
続いて、本発明を適用したソフトウェアにおける情報処理の一連の流れの一例について、図11を用いて説明する。
まず、初めに、対象者のバイタルサインの値のうち、体温・血圧・脈拍・酸素飽和度・呼吸数が各測定器、もしくは観察により測定され、その値が入力される。(S1)。また、対象者の意識レベルが観察され、観察結果が入力される(S1)。また、各測定日時として、入力時間が自動入力される。
入力されたバイタル因子情報は、対象者のバイタル因子情報として、情報記録部4(DB)に記録される(S2)。
情報記録部4に記録された判定の対象となるバイタル因子情報を含めて、演算部2が基準算出手段5として機能してスコアリング基準情報102の算出(及びバイタル判定基準情報102aの算出)を行う(S3)。なお、必ずしも、判定の対象となるバイタル因子情報を含めてスコアリング基準情報102が算出される必要はなく、判定の対象となるバイタル因子情報を除いて、スコアリング基準情報102が算出される構成であってもよい。
ここでは、分布が正規分布する体温・血圧・脈拍・脈圧・呼吸数のバイタル平均値と、バイタル標準偏差が算出され、これらの値を元に、設定した条件でのスコアリング基準情報(所定の数値範囲等)(及び所定のバイタル判定用数値範囲)が作成される(S4)。また、正規分布しない酸素飽和度、意識レベルは、設定した基準がスコアリング基準情報となる(表4参照)。ここで、体温、拡張期血圧、収縮期血圧、脈拍、脈圧及び呼吸数に関する基準は、都度、スコアリングの度(及びバイタルサインの値の判定の度)に算出されるものとなる。
また、入力された判定の対象のバイタル因子情報について、スコアリング基準情報102に基づき、スコアリング処理手段100により、第1スコア値情報103がバイタル因子情報ごとに算出される(S4)。
第1スコア値情報103が算出されると、判定処理手段6が、スコア判定基準情報18に基づき、スコア値情報が異常な値であるか否かを判定する(S5)。
判定処理手段6が、スコア値情報が異常な値であると判定した場合、端末画面に、バイタルサインの再測定を促すメッセージが表示される(S5’)。
対象者がバイタルサインの再測定と、バイタル因子情報の入力を行い、スコアリング処理手段100により、第1スコア値情報103が算出され、判定処理手段6が、スコア判定基準情報18に基づき、スコア値情報が異常な値であるか否かを判定する(S5’’)。
なお、必ずしも、1回目のバイタル情報の入力後に、スコア値情報が異常な値であると判定された際に、再測定を促す構成とする必要はない。但し、これにより、測定ミス等によるバイタル異常の誤検知を減らして、精度を高めることが可能となる。
再度入力された判定の対象のバイタル因子情報について、スコア判定基準情報18に基づき、第1スコア値情報103が、判定の結果「異常値」と判定されたもの(例えば、第1スコア値情報103が2点以上となる)に起因して、次の診断の開始、既往歴情報の入力・確認の作業に進む(S6)。
一方、入力された判定の対象のバイタル因子情報(1回目の情報及び再測定の2回目の情報)について、スコア判定基準情報18に基づき、第1スコア値情報103が、判定の結果「異常でない」と判定された場合(例えば、第1スコア値情報103が1点以下となる)、スコア判定結果情報12cが情報記録部4(DB)に記録される(S7)。なお、図11には示さないが、バイタル因子情報につき、その第1スコア値情報103が「異常」と判定された結果についても、スコア判定結果情報12cが情報記録部4(DB)に記録される。
また、上記では、バイタル因子情報の「異常」の判定による診断装置1の診断の開始を説明したが、本発明に係る診断装置1は、対象者から観察された自覚症状又は他覚症状である何らかの「病状」が入力された場合(S8)、この場合にも、次の診断の開始、既往歴情報の入力・確認の作業に進む(S6)。
即ち、診断装置1では、対象者のバイタル因子情報の異常か、何かの病状の入力を起点として、診断の処理が開始される構成となっている。
診断が開始された場合、対象者に関して、その際に、新たに既往歴情報を入力することができる。また、既に、情報記録部4に、対象者の既往歴情報が記録されていた場合、これを参照して、次のスコアリングが行われるものとなる。
続いて、診断の対象者につき、バイタル因子情報、症状情報、既往歴情報が入力又は確認されると、それらの情報につき、スコアリング基準情報102を基準として、第1スコア値情報103の算出が行われる。また、第1スコア値情報103のスコア(例えば、0〜3点)に基づき、第2スコア値情報104が算出され、バイタル因子情報及び病状情報の第2スコア値情報104の合計点に対して、既往歴情報の第2スコア値情報104を乗じて、第2スコア値情報104の総合点を算出する(S9)。
なお、ここでは加点項目として、バイタル因子情報、症状情報のポイントを挙げ、係数項目(課点項目の合計点に乗じる数)として、既往歴などの危険因子を取り上げて説明するが、上述したように、加点項目として、血液検査の結果(例えば心不全でNT−proBNP≧400pg/mLまたはBNP≧100pg/mL)や画像検査の結果(例えば肺炎で白く影が映る)、生理学検査の結果(例えば心不全で心電図エコーでの異常)を加えることもできる。また係数項目として、個体のゲノム解析に基づく遺伝子診断結果情報を加えうることもできる。このように、バイタル因子情報、病状情報又は既往歴以外の情報を利用して、スコア結果情報を算出することもできる。
そして、次のステップでは、基準病気情報11に含まれる全ての病気の種類に関して、診断基準情報17(例えば、所定のカットオフ値)と、対象者の各病気を確認するためのスコア結果情報とを比較して、特定の病気に罹患しているかを診断する(S10)。
より詳細には、同じ対象者から得られたバイタル因子情報等について、各病気の因子ごとに第2スコア値情報104の総合点を算出して、各病気で設定された所定のカットオフ値との比較を行う。
そして、各病気の診断を行い、所定のカットオフ値を超えた病気について、「特定(その)病気に罹患している」との判定結果を出す(S11)。
また、高齢者が肺炎時に合併症として心不全を併発しているケースが多いように、対象者のバイタル因子情報等の内容によっては、複数の病気の種類において、所定のカットオフ値を超える場合もある。そのような場合には、複数の病気について「特定(その)病気に罹患している」との判定結果を出すものとなる。また、例えば、スコア結果情報の内容によって、ポイントの高い順番、又は、罹患している可能性が高い順番で、複数の病気を並べて表示する構成も採用しうる。
また、もし、診断基準情報17と、スコア結果情報を比較して、どの病気でも、所定のカットオフ値を超えていなければ、「非罹患」の判定結果を出す(S12)。
そして、「特定の病気に罹患」と判定された場合、その病気の判定結果と共に、入力されたバイタル因子情報、病状情報及び既往歴情報が情報記録部4に記録される(S13)。また、特定の病気との診断結果が複数回記録されている場合には、その回数の情報も記録される。さらに、特定の病気におけるバイタルの異常や病状が複数回記録されている場合には、その回数の情報も記録される。
なお、情報記録部4は、異常な判定との判定結果となったバイタルサインの値を、バイタル因子情報8に含まれるように記録する。これにより、バイタル因子情報8には、スコア値情報が正常な値と判定されたバイタル因子情報と、スコア値情報が異常な値と判定されたバイタル因子情報の両方が蓄積されていく。即ち、上述したスコア値情報についての異常の有無だけでなく、バイタルサインの値の異常の有無についてのデータを蓄積することもできる。これが少なくとも30個分集まることで、やはり、個体に固有の個体内変動が反映され、正規分布を作成して、対象の個体におけるバイタルサインの異常な値を捉えることが可能になる。
また、本発明では、各病気の診断を行い、所定のカットオフ値を超えた病気について、「特定(その)病気に罹患している」との判定結果を出した後、病気因子の見落とし項目を表示する機能も有している(S14)。この見落とし項目とは、バイタルの異常や病状から、罹患の可能性のある病気を特定した場合、その特定の病気の因子の情報の中で、入力や記録が確認されなかった種類の因子の情報をピックアップして表示する項目である。
この見落とし項目を表示して、因子の入力を促すことで、診断の対象者や看護師、医師等が、見落とし項目に挙がっている因子の内容につき、再度、確認を促す情報として利用できる。
見落とし項目の因子を確認、入力後、上述した診断のステップ(S10)と同様に、基準病気情報11に含まれる全ての病気の種類に関して、診断基準情報17と、対象者のスコア結果情報とを比較して、再度、特定の病気に罹患しているかを診断する(S15)。
そして、各病気の診断を行い、所定のカットオフ値を超えた病気について、「特定(その)病気に罹患している」との判定結果を出す(S16)。
また、もし、診断基準情報17と、スコア結果情報を比較して、どの病気でも、所定のカットオフ値を超えていなければ、「非罹患」の判定結果を出す(S17)。
そして、上述した1回目の診断と同様に、「特定の病気に罹患」と判定された場合、その病気の判定結果と共に、入力されたバイタル因子情報、病状情報及び既往歴情報が情報記録部4に記録される(S13)。また、特定の病気との診断結果が複数回記録されている場合には、その回数の情報も記録される。さらに、特定の病気におけるバイタルの異常や病状が複数回記録されている場合には、その回数の情報も記録される。
このように、見落とし項目に挙がっている因子の内容につき、再度、確認と入力を行い、診断を行うことで、より精度高く、特定の病気に罹患しているとの診断を行うことが可能となる。
また、判定処理部6による診断の結果の情報の表示の一例として、図12〜図14を示す。図12には、診断装置1の診断にて肺炎と診断された対象者の結果を表示している。図13及び図14には、診断装置1の診断にてうっ血性心不全と診断された対象者の結果を表示している。
図12〜図14に見られるように、結果の情報として、病気の名称、スコア結果情報であるポイントの数値、発生回数、バイタル値、症状、危険因子(関連する既往歴情報)、病気の内容に関する辞書情報、症状の表れ方の特徴に関する情報等が掲載されている。
また、結果の表示情報として、「見落とし確認項目」の欄が設けられている。この見落とし確認項目とは、バイタルの異常や病状から、罹患の可能性のある病気を特定した場合、その特定の病気の因子の情報の中で、入力や記録が確認されなかった種類の因子の情報をピックアップして表示する項目欄である。即ち、この見落とし確認項目に挙がっている因子の内容につき、再度、確認を促す情報として利用できる。該当する因子の症状等が入力されることで、より精度高く、特定の病気に罹患しているとの診断を行うことが可能となる。
この見落とし項目が新たに選択されると、再度スコアリングの計算をやり直し、新たな診断結果を表示する。このようにして医療従事者の見落としを防止する機能である。なおこの機能の重要性は、次の点にある。通常、看護師は、対象者の異常を発見し、その状態を医師に知らせるのが役割であり、鑑別診断は医師の仕事となっているため、発病が確認された場合、看護師は、全ての症状等をチェックしない場合が多い。しかし、医師が鑑別診断するためには、発病の発見だけではなく、多くの因子情報(症状)があるほど、診断の精度が上がる。そこで、見落とし項目が新たに選択されると、因子の見落としを抑制し、入力を促すことができる。
また、本発明に係る診断装置1による診断の概要を示すイメージ図を図15に示す。図15に示すように、診断装置1では、例えば、対象者が病院に訪れた際に、診療情報として、バイタル因子情報に基づく異常、病状、危険リスク(既往歴または遺伝子診断結果)を入力する。そして、これらの情報に加え、生理学検査(例えば、心電図検査、エコー検査)、レントゲン・CTのAI診断等の画像診断に基づく検査の情報を因子として入力する。
そして、従前の鑑別診断の情報による特定の病気の因子や、対象者の情報、母集団情報から修正した特定の病気の因子を元に、対象者に関するバイタル異常や病状等の因子をスコアリングして、スコア結果情報から、対象者(患者Xさん)が、「80%の確率でA疾患の可能性があり」と診断することができる。なお、ここでは、80%の確率でA疾患の可能性との結果にしているが、対象者のバイタル因子情報、病状情報や、母集団情報の情報が蓄積していくことで、「(ほぼ100%)A疾患である」との判定結果を出すことも可能である。
次に、ある対象者Xさんが、心不全に複数回、罹患する事例を基に、診断装置1によるスコア結果情報のポイントの出し方の一例につき、図16〜図19を用いて説明を行う。
まず、介護施設等の入居者Xさんが、症状として、「下肢(浮腫)」を訴えた場合、対象者個人の観察内容として情報が記録される(図16参照)。そして、心不全の因子として、症状の中に「浮腫」が記録されているため、心不全の診断の際の症状に該当するものとして、1回目の心不全の診断の際には、第2スコア値情報として「20ポイント」が算出される。この際、この20ポイントをスコア結果情報として、診断装置1が診断を行うことができるが、本事例では、繰り返しの病気と症状へのスコアリングの例を示すため、以下では、スコア結果情報を中心に説明する。
そして、入居者Xさんが、病院を受診して、医師に「心不全」と診断された場合、個人の情報として、「心不全(1回目)」の診察結果と、入院情報が記録される(図17参照)。そして、Xさんが病院から退院した場合、退院情報を入力して記録する。
その後、Xさんが、新たに、症状として、「下肢(浮腫)」を訴えた場合、対象者個人の観察内容として情報が記録される(図18参照)。また、Xさんについては、既往歴情報として「心不全」が記録されている。また、1回目の心不全の際の症状である「下肢(浮腫)」も記録されている。
この結果、2回目の「下肢(浮腫)」の症状を訴えた際の、心不全の診断を行う時の、スコア結果情報の算出では、訴えた症状の「下肢(浮腫)」の「20ポイント」に、2回目の「下肢(浮腫)」の症状を記録したことで、過去症状に関して「1.1」の係数が乗じられる(複数回の重みづけによる係数)。さらに、既往歴に心不全を記録したことで、過去既往歴に関して「1.2」の第2スコア値情報が、さらに乗じられる。その結果、2回目の心不全の診断の際には、「下肢(浮腫)」の症状を訴えた場合でも、第2スコア値情報として「26.4ポイント(20×1.1×1.2)」が算出される。
そして、入居者Xさんが、病院を受診して、医師に「心不全」と診断された場合、個人の情報として、「心不全(2回目)」の診察結果と、入院情報が記録される(図17と同様)。そして、Xさんが病院から退院した場合、退院情報を入力して記録する。
その後、Xさんが、新たに、バイタル因子情報として、拡張期血圧(血圧(下))及び脈拍数の測定値につき、バイタル異常の判定がなされ、症状として、「下肢(浮腫)」を訴えた場合、対象者個人の観察内容として情報が記録される(図19参照)。また、Xさんについては、既往歴情報として「心不全(1回目及び2回目)」が記録されている。また、1回目及び2回目の心不全の際の症状である「下肢(浮腫)」も記録されている。
この結果、拡張期血圧(血圧(下))及び脈拍数のバイタル異常が観察され、3回目の「下肢(浮腫)」の症状を訴えた際の、心不全の診断を行う時の、スコア結果情報の算出では、拡張期血圧のバイタル異常の「20ポイント」、脈拍数のバイタル異常の「20ポイント」、及び、訴えた症状の「下肢(浮腫)」の「20ポイント」に、3回目の「下肢(浮腫)」の症状を記録したことで、過去症状に関して「1.1」の係数が乗じられる(複数回の重みづけによる係数)。そして、バイタル異常と症状の第2スコア値情報の合計点「62ポイント」が算出される。そして、この62ポイントについて、既往歴に心不全を2回記録したことで、過去既往歴に関して「1.2(1回目)」の第2スコア値情報と、「1.2(2回目)」の第2スコア値情報とが、さらに乗じられる。その結果、3回目の心不全の診断の際には、第2スコア値情報として「89.28ポイント(62×1.2×1.2)」が算出される。
このように、同じ対象者が、同じ病気を繰り返すことで、病状や既往歴による重みづけがなされ、1回目や2回目よりも、スコア結果情報として、高いポイントが算出されやすくなる。この結果、3回目の診断の際には、1回目や2回目よりも診断装置1による診断で、より精度高く、心不全の診断結果を出すことが可能となる。なお、重みづけに対する係数は、症状を繰り返すことに無限に増えていくわけではなく、上限値を設定(例えば1.2倍→1.55倍まで)することもある。
[14.表示情報の作成]
本発明を適用した診断装置1では、対象者のバイタル因子情報について、その内容を正規分布曲線として表示することが可能である。また、対象者のバイタル因子情報を熱型表として表示することも可能である。
また、図20には、病院等に設置した端末で利用する電子カルテにおいて、その電子カルテの表示情報の1つである熱型表の中に、バイタル因子情報の内容に基づくスコア値情報の値を示した画像を示している。例えば、複数のバイタル因子情報のスコア値を合計して、その日ごとのスコア値の合計値を表示するような態様が考えられる。この場合、入院患者の情報が記録された電子カルテの情報と併せて、スコアリングの結果に基づく情報を、対象者のリスク評価に利用することができる。
更に、図21には、本発明のソフトウェアの機能を有するアプリケーションソフトウェアをスマートフォン端末等で利用する際に、その画面上にバイタル因子情報の内容に基づくスコア値情報の値を示した画像を示している。例えば、スマートフォン端末の使用者個人のバイタル因子情報の記録(体温)と、そのスコア値情報の値を示す態様がある。この場合、スマートフォンでの健康管理や、在宅医療での健康状態の評価に、スコアリングの結果に基づく情報を活用することができる。
[15.正規分布の有無による測定精度の判定及び異常な値の判定]
本発明を適用した診断装置1では、測定したバイタル因子情報が正規分布に当て嵌まっているかを確認する手法として、Q−Qプロットが利用できる。例えば、横軸にバイタル標準偏差の値を、縦軸に標準偏差の累積確率に対応する標準正規分布のパーセント点の値をとり、対象者のバイタル標準偏差をプロットする。各プロットが直線上に位置していれば、取得したバイタル因子情報が正規分布していることが視覚的に確認可能となる。
本発明に係る診断装置1では、対象者から取得したバイタル因子情報8、病状因子情報9及び危険因子情報10からスコアリングを行い、スコア算出結果に対して診断処理を行うことで、対象者が、特定の病気に診断しているか否かを診断することができる。
また、本発明に係る診断装置1では、従来の医師の診断の基本となる自覚症状の情報だけでなく、バイタル因子情報8、他覚症状に関する病状因子情報9、及び危険因子情報10を含めて診断を行うものである。そのため、自覚症状に乏しい高齢者を対象としても、精度の高い診断を提供することができる。
また、本発明に係る診断装置1では、対象者となる個体の情報や、母集団情報12の情報の量を蓄積していくことで、病気の因子の重みづけや、重みづけの修正が可能となる。この結果、従来のガイドライン等の決め打ちされた内容ではなく、データの蓄積から設定される病気の因子や、因子の影響を考慮して、診断の精度を向上させることができる。
さらに、本発明に係る診断装置1では、バイタル因子情報8におけるスコアリングや異常の判定に、対象者の個体内変動を反映させている。そのため、個体ごとのバイタルサインの変化を適切に捉えながら、バイタル因子情報8を診断に活用できるものとなっている。
以上のように、本発明のソフトウェアは、病気の鑑別診断に用いる因子に、個人の特性(バイタル・症状・既往歴等)を因子として、バイタルには閾値を設定し、その他は異常の有り無しで、各項目をスコアリングすることで、特定の病気に罹患するリスクを出し、病気に罹患した状態を早期に発見可能であると共に、対象者や他者のデータを蓄積することで、診断に用いる因子に重みをつけて、精度の高いテーラーメイド診断を支援可能なものとなっている。
また、本発明の診断装置は、病気の鑑別診断に用いる因子に、個人の特性(バイタル・症状・既往歴等)を因子として、バイタルには閾値を設定し、その他は異常の有り無しで、各項目をスコアリングすることで、特定の病気に罹患するリスクを出し、病気に罹患した状態を早期に発見可能であると共に、対象者や他者のデータを蓄積することで、診断に用いる因子に重みをつけて、精度の高いテーラーメイド診断を支援可能なものとなっている。
本発明はソフトウェアに関する。詳しくは、病気の鑑別診断に用いる因子に、個人の特性(バイタル・症状・既往歴等)を因子として、スコアリングすることで、特定の病気に罹患するリスクを出し、病気に罹患した状態を早期に発見可能であると共に、対象者や他者のデータを蓄積することで、診断に用いる因子に重みをつけて、精度の高いテーラーメイド診断を支援可能なソフトウェアに係るものである。
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、病気の鑑別診断に用いる因子に、個人の特性(バイタル・症状・既往歴等)を因子としてバイタルには閾値を設定し、その他は異常の有り無しで、各項目をスコアリングすることで、特定の病気に罹患するリスクを出し、病気に罹患した状態を早期に発見可能であると共に、対象者や他者のデータを蓄積することで、診断に用いる因子に重みをつけて、精度の高いテーラーメイド診断を支援可能なソフトウェアを提供することを目的とする。
本発明に係るソフトウェアは、病気の鑑別診断に用いる因子に、個人の特性(バイタル・症状・既往歴等)を因子として、バイタルには閾値を設定し、その他は異常の有り無しで、各項目をスコアリングすることで、特定の病気に罹患するリスクを出し、病気に罹患した状態を早期に発見可能であると共に、対象者や他者のデータを蓄積することで、診断に用いる。