JPWO2020213184A1 - 攪拌機 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、広く知られた攪拌機、乳化、分散機の一種としてビーズミルやホモジナイザーが知られている。
高圧ホモジナイザーでは、機械の安定稼働の問題や大きな必要動力の問題等が解決されていない。
また、回転式ホモジナイザーは、従来プレミキサーとして用いられていたが、ナノ分散やナノ乳化を行うには、さらにナノ化の仕上げのために仕上げ機を必要とする。
これに対して、特許文献1乃至4の攪拌機を本発明者は提案した。この攪拌機は、複数の羽根を備えたローターと、ローターの周囲に敷設されると共に複数のスリットを有するスクリーンとを備えるものである。ローターとスクリーンとは、相対的に回転することによって、スリットを含むスクリーンの内壁と羽根との間の微小な間隙において被処理流動体のせん断が行われると共に、スリットを通じて断続ジェット流としてスクリーンの内側から外側に被処理流動体が吐出されるものである。
本発明の発明者は、特許文献1〜3に示された装置によって、被処理流動体の微細化を促進し、より微細の分散や乳化を実現することを試みたところ、まず、スリットを含むスクリーンの内壁と羽根との間の微小な間隙において被処理流動体のせん断が行われる点からすると、せん断の効率化を図るためには、単位時間当たりのせん断回数を増やすことが有効であると考えられるため、単位時間当たりのせん断回数を増やす視点から検討を行った。
音速は、常温の空気中では約340m/sec、水中では約1500m/secであるが、キャビテーションにより気泡が混入した場合、水中の音速は著しく低下する。気泡を含む、ボイド率0.2の水の音速は30m/sec以下となり、ボイド率0.4の水の音速は約20m/secになる。特許文献1乃至3において、スクリーンを通過する断続ジェット流の速度は上記の気泡を含む水中の音速に近いと考えられ、音速を超えると衝撃波が発生し機械の損傷が起こる。その為、キャビテーションによる気泡の発生を出来るだけ抑制して衝撃波の問題も解決しなくてはならない。
また、このせん断が効率的になされる結果、ナノ分散やナノ乳化等の極めて微細な分散や乳化を実現することができる攪拌機の提供を目的とする。
(1)前記手前側の流入側端面の、前記狭隘部の周方向の中央を通る半径に対する角度
(2)前記奥側の流出側端面の、前記狭隘部の周方向の中央を通る半径に対する角度
(3)前記奥側の流入側端面の、前記狭隘部の周方向の中央を通る半径に対する角度
(4)前記手前側の流出側端面の、前記狭隘部の周方向の中央を通る半径に対する角度
また、本発明は、複数の前記スリットには、前記流入側領域と前記流出側領域との間に中間領域を備え、前記中間領域は、前記複数の羽根の回転方向に間隔を隔てて配置された手前側の中間端面と奥側の中間端面とによって規定され、前記手前側の中間端面と前記奥側の中間端面とは半径方向に幅を有するものとして実施することができる。
本発明において、「周方向の幅」とは周方向の直線距離をいう。例えば、流入開口の周方向の幅(Si)とは、手前側の流入側端面とスリット部材の内壁面との交点と奥側の流入側端面とスリット部材の内壁面との交点とを結んだ直線距離を言い、流出開口の周方向の幅(So)とは、手前側の流出側端面とスリット部材の外壁面との交点と奥側の流出側端面とスリット部材の外壁面との交点とを結んだ直線距離を言う。
スクリーンに設けられたスリットの断面形状を本発明で提案するものとすることにより、断続ジェット流の形成時に圧力損失が旧来型より減少しその分断続ジェット流の速度が増し、かつスリットを通じてスクリーンの外側から内側へ吸い込まれる被処理流動体の吸込速度も、吸い込まれる際の圧力損失も低減する結果、早くなり、プラスマイナスでより正逆の流れ(吐出と吸込)の相対的な速度差を上げる事が可能となる。
ノズル形状即ちスクリーンに設けられたスリットの断面形状はジェット流形成に大きな影響を及ぼす。
発明者は鋭意試行錯誤して実験を繰り返してきたが、スクリーンに設けられたスリットの断面形状を本発明で提案するものとすることにより、被処理流動体の正逆の流れ(吐出と吸込)の相対的な速度差を上げるうえで、実質最も効果が上がった。スクリーンに設けられたスリットの流出開口近傍の領域は遷移領域と言い、スリット中心部にはポテンシャルコアが形成される。ポテンシャルコアは、スリット空間の周方向の幅のうち最も狭い狭隘部の周方向の幅であるスリット空間の周方向の幅(Sm)により実質的に決定されるが、本発明によりそのポテンシャルコアの流れとその周りの流れとの間に速度差が生じ、その速度界面における相対的な速度差を大きくすることによって、遷移領域を含む流出側領域にあっても大きな液−液せん断力を得ることができる。
0.02×D≦v≦0.15×D 式(1)
また、前記せん断が効率的になされる結果、ナノ分散やナノ乳化等の極めて微細な分散や乳化を実現することができる攪拌機を提供することができたものである。
更に、粒子径の分布が狭く、粒子径の揃った粒子を得ることができる攪拌機を提供することができたものである。
まず、図1、図2を参照して、本発明を適用することができる攪拌機の一例の基本的な構造を説明する。
この攪拌機は、乳化、分散或は混合等の処理を予定する被処理流動体内へ配される処理部1と、処理部1内に配置されたローター2とを備えるものである。
また、スクリーン9の内壁面に設けられた複数のスリット18の開口を流入開口33とし、スクリーン9の外壁面に設けられた複数のスリット18の開口を流出開口34とする。
スリット18は、そのリード角を適宜変更して実施することができる。図示したように、回転軸13と直交する平面と、スリット18の伸びる方向とのなすリード角が、90度である上下方向に直線状に伸びるものの他、所定のリード角を備えたスパイラル状のもの等、上下方向に湾曲して伸びるものであってもよい。
また、これらの羽根12は、その先端部21のリード角は適宜変更することができる。例えば、回転軸13と直交する平面と、先端部21の伸びる方向とのなすリード角が、90度である上下方向に直線状に伸びるものの他、所定のリード角を備えたスパイラル状のもの等、上下方向に湾曲して伸びるものであってもよい。
また、攪拌機の他の構造としては、図4及び図5に示すものも採用することができる。
また、図5の例は、攪拌室7を支持管3に対して回動可能とし、攪拌室7の先端に、第2モータ20の回転軸を接続したものであり、スクリーン9を高速回転可能とするものである。このスクリーン9の回転方向は、攪拌室7の内部に配置されたローター2の回転方向とは逆方向に回転させる。これによって、スクリーン9とローター2との相対的回転速度が増加する。
本発明に係る攪拌機については、断続ジェット流により、速度界面で液−液間のせん断力が発生することによって、乳化、分散或は混合の処理が行われる。その際、本発明の実施の形態に係る攪拌機にあっては、例えば、図6、図7(A)−(E)及び図8(A)−(F)に示すローター2とスクリーン9とを用いることができる。ローター2については図6と図7(A)(B)(F)にのみ図示したが、本願の各実施の形態において、ローター2は反時計回りに回転しているものである。
なお、図6−図8は、本発明を適用した実施の形態に係る攪拌機の要部拡大図又は従来例の攪拌機の要部拡大図であるが模式図であり、各部の寸法を正確に示すものではない。
また、図6−図8の各図に記載の中心線は、半径方向を示している。
それぞれのスリット18は、スクリーン9の内壁面に設けられたスリット18の開口を流入開口33とし、スクリーン9の外壁面に設けられたスリット18の開口を流出開口34とするものであるが、流入開口33と流出開口34との間の空間をスリット空間35とし、流入開口33の周方向の幅(Si)及び流出開口34の周方向の幅(So)が、スリット空間35の周方向の幅(Sm)よりも大きくなるように設けられる。ここで、スリット空間35の周方向の幅(Sm)とは、スリット空間35の周方向の幅のうち最も狭い狭隘部の周方向の幅をいう。
また、空間であるそれぞれのスリット18には、被処理流動体がスクリーン9の内側からスリット18に流入する流入側領域22と、スリット18から被処理流動体がスクリーン9の外側へ流出する流出側領域23とを少なくとも備え、流入側領域22は、複数の羽根12の回転方向に間隔を隔てて配置された手前側の流入側端面26と奥側の流入側端面30とによって規定され、流出側領域23は、複数の羽根12の回転方向に間隔を隔てて配置された手前側の流出側端面27と奥側の流出側端面31とによって規定される。そして、流入側領域22の内側(径方向内側)の境界が流入開口33であり、流出側領域23の外側(径方向外側)の境界が流出開口34である。
スリット18として、図6、図7(A)−(E)及び図8(A)−(F)に示すものが挙げられる。
また、図7(E)に示すスリット18は、図7(A)に示すスリット18と同様、流入側領域22を規定する、手前側の流入側端面26を複数の羽根12の回転方向の前方へ傾斜させるとともに奥側の流入側端面30を複数の羽根12の回転方向の後方へ傾斜させ、流出側領域23を規定する、手前側の流出側端面27を複数の羽根12の回転方向の後方へ傾斜させるとともに奥側の流出側端面31を複数の羽根12の回転方向の前方へ傾斜させたものであるが、図7(A)に示すスリット18は、流入開口33の周方向の幅(Si)が流出開口34の周方向の幅(So)よりも大きいものであるのに対し、図7(E)に示すスリット18は、流出開口34の周方向の幅(So)が流入開口33の周方向の幅(Si)よりも大きいものである。
例えば、図6、図7(B)−(D)に示すスリット18は、図7(A)に示すスリット18と同様、流入側領域22を規定する、手前側の流入側端面26を複数の羽根12の回転方向の前方へ傾斜させるとともに奥側の流入側端面30を複数の羽根12の回転方向の後方へ傾斜させ、流出側領域23を規定する、手前側の流出側端面27を複数の羽根12の回転方向の後方へ傾斜させるとともに奥側の流出側端面31を複数の羽根12の回転方向の前方へ傾斜させたものについて、流入側領域22と流出側領域23との間に、半径方向に幅を有する手前側の中間端面28と奥側の中間端面32とによって中間領域24を規定したものである。この場合、手前側の流入側端面26と手前側の中間端面28と手前側の流出側端面27とによってスリット18を規定する手前側の面25が構成され、奥側の流入側端面30と奥側の中間端面32と奥側の流出側端面31によってスリット18を規定する奥側の面29が構成される。そして、これらの例では、流入側領域22と中間領域24と流出側領域23とを合わせたものがスリット空間35であり、手前側の中間端面28と奥側の中間端面32は共に複数の羽根12の回転方向の前方又は後方へ傾斜していないことから、中間領域24が狭隘部であり、狭隘部の周方向の幅がスリット空間35の周方向の幅(Sm)となる。手前側の中間端面28と奥側の中間端面32のうちの少なくとも一つを複数の羽根12の回転方向の前方又は後方へ傾斜させてもよい。この場合、流入側領域22と中間領域24との境界と中間領域24と流出側領域23との境界のうち周方向の幅が狭い方が狭隘部であり、狭隘部の周方向の幅がスリット空間35の周方向の幅(Sm)となる。また、手前側の流入側端面26と手前側の中間端面28とで構成されるエッジや手前側の中間端面28と手前側の流出側端面27とで構成されるエッジ、奥側の流入側端面30と奥側の中間端面32とで構成されるエッジ、奥側の中間端面32と奥側の流出側端面31とで構成されるエッジそれぞれに丸みを持たせたR面としてもよい。
また、スリット18は、奥側の流入側端面30を複数の羽根12の回転方向の前方又は後方へ傾斜させず手前側の流入側端面26を複数の羽根12の回転方向の前方へ傾斜させ、手前側の流出側端面27を複数の羽根12の回転方向の前方又は後方へ傾斜させず奥側の流出側端面31を複数の羽根12の回転方向の前方へ傾斜させたものについて、流入側領域22と流出側領域23との間に、半径方向に幅を有する手前側の中間端面28と奥側の中間端面32とによって中間領域24を規定してもよい(図8(E))。この例では、流入側領域22と中間領域24と流出側領域23とを合わせたものがスリット空間35であり、手前側の中間端面28と奥側の中間端面32は共に複数の羽根12の回転方向の前方又は後方へ傾斜していないことから、中間領域24が狭隘部であり、狭隘部の周方向の幅がスリット空間35の周方向の幅(Sm)となる。
まず、前述したように、断続ジェット流は、羽根の回転によって発生するものであるが、これをより詳しく説明すると、羽根の回転方向の前面側では、被処理流動体の圧力が上昇する。これによって、羽根の前面側に位置するスリットから被処理流動体が断続ジェット流となって吐出される。他方、羽根の回転方向の後面側では、被処理流動体の圧力が低下することにより、後面側に位置するスリットから被処理流動体が吸い込まれる。その結果、スクリーンの外側では、被処理流動体に正逆の流れ(吐出と吸込)が生じ、両流れの界面における相対的な速度差によって、被処理流動体同士に液−液間のせん断力が生じるものである。
故に従来のスリット18の場合は、スクリーン9のスリット18の周方向の幅は極端に小さくできなかった。
まず、流入開口33の周方向の幅(Si)がスリット空間35の周方向の幅(Sm)よりも大きくなるように設けられることによって、ノズル効果によりスリット18を通過する断続ジェット流の流速を加速することができる。また、それぞれのスリット18の流入側領域22を規定する手前側の流入側端面26と奥側の流入側端面30のうち、少なくとも手前側の流入側端面26が複数の羽根12の回転方向の前方へ傾斜していると、手前側の流入側端面26とスクリーン部材19の内壁面とで構成される流入開口33のエッジは鈍角(β)のエッジになり、流入開口33のエッジでの極端な圧力低下が低減され、被処理流動体が有効にジェット流に変換される。また当然ではあるが、流入開口33の周方向の幅(Si)がスリット空間35の周方向の幅(Sm)よりも大きくなるように設けられることによって、被処理流動体の圧力損失が低減され、キャビテーションの発生が抑制され、気泡の発生も抑制される。その結果、従来よりもスリット18を通じてスクリーン9の内側から外側に吐出される断続ジェット流の速度が速くなる。
次に、流出開口34の周方向の幅(So)がスリット空間35の周方向の幅(Sm)よりも大きくなるように設けられることによって、スリット18を通じてスクリーン9の外側から内側へ吸い込まれる被処理流動体の圧力損失が低減される。その結果、従来よりも被処理流動体のスリット18を通じたスクリーン9の外側から内側への吸込速度が速くなる。
このように、従来よりもスリット18を通じてスクリーン9の内側から外側に吐出される断続ジェット流の速度が速くなり、かつ従来よりも被処理流動体のスリット18を通じたスクリーン9の外側から内側への吸込速度が速くなった結果、被処理流動体の正逆の流れ(吐出と吸込)の界面における相対的な速度差が大きくなることから、被処理流動体同士の間に発生するせん断力を大きくすることができたものである。
さらに、複数のスリット18は、流出開口34の周方向の幅(So)及び流入開口33の周方向の幅(Si)がスリット空間35の周方向の幅(Sm)よりも大きくなるように設けられることによって、スリット18の中心部にポテンシャルコア36が形成される。ポテンシャルコア36は、前記スリット空間の周方向の幅のうち最も狭い狭隘部の周方向の幅であるスリット空間35の周方向の幅(Sm)、具体的には中間領域24の周方向の幅により実質的に決定されるものであって、半径方向にあっては略全域にわたって形成されるものであって、特に狭隘部から外側にわたって形成されるものであり、被処理流動体による断続ジェット流の中心をなす。図6にポテンシャルコア36の一例を示す。
狭隘部を通過した断続ジェット流は、狭隘部よりも広い流出側領域23を通過して、スクリーン9の外側へ吐出する。その際、スリット18の流出開口34近傍の領域である遷移領域にあっては、ポテンシャルコア36を形成する断続ジェット流はノズル効果並びにキャビテーションの抑制により加速された流れとなる。他方、ポテンシャルコア36の周りの被処理流動体にあっては、ポテンシャルコア36を形成する断続ジェット流の速度との速度差がより大きくなる。その結果、遷移領域における断続ジェット流のうち、ポテンシャルコア36の流れとその周りの流れとの間に大きな速度差が生じ、遷移領域を含む流出側領域23にあっても速度界面において大きな液−液せん断力を得ることができる。
この被処理流動体の流れの速度を直接測定することは困難であるが、後述の実施例で示すように、本発明の実施に係る攪拌機にあっては、従来の攪拌機に比して、被処理流動体の微粒子化を顕著に促進することができたことが確認された。
スクリーン9は、前述の通り、テーパ形等の径が変化するものとしても、実施することができる。本発明において、内径が変化する場合、特に説明のない限り、最大内径とは、羽根12の先端部21とスリット18とがスリット18の長さ方向において互いに重なり合う同一位置におけるスクリーン9の最大内径(c)を意味する。
スリット18は、ローター2の回転軸の軸方向と平行に伸びるものであってもよく、スパイラル状に伸びるもの等、軸方向に対して角度を有するものであってもよい。何れの場合にあっても、本発明において、特に説明がない限り、スリット18の周方向の幅とは、羽根12の先端部21とスリット18とがスリット18の長さ方向において互いに重なり合う同一位置におけるスクリーン9の周方向(言い換えればローター2の回転軸の軸方向に対して直交する方向)の長さを言う。ローター2の回転軸の軸方向位置にあっては、当該同一位置であればどの位置であってもかまわないが、少なくとも回転軸13の軸方向位置がスクリーン9の最大内径(c)となる位置であることが好ましい。スリット18の周方向の幅の一例としては、流入開口33の周方向の幅(Si)と流出開口34の周方向の幅(So)、スリット空間35の周方向の幅(Sm)とが挙げられる。スリット18の周方向の幅は、断続ジェット流の発生と被処理流動体のスクリーン9の外側から内側へのスリット18を通じた良好な吸込とを条件として適宜変更することができる。
この流入開口33の周方向の幅(Si)は、1.0mm〜8.0mmが好ましく、1.5mm〜6.0mmであることがより好ましい。流入開口33の周方向の幅(Si)が1.0mmより小さいと前述のノズル効果が発揮されず、被処理流動体の圧力損失が大きくなり、断続ジェット流の速度を上げにくい。また、流入開口33の周方向の幅(Si)を8mmより大きくしても、これ以上被処理流動体の圧力損失の効果は上がらない。また、隣り合うスリット18の幅よりスリット18の本数が取れなくなるので、流入開口33の周方向の幅(Si)は8.0mm以下が良い。
また、流出開口34の周方向の幅(So)は、1.0mm〜8.0mmが好ましく、1.5mm〜6.0mmであることがより好ましい。流出開口34の周方向の幅(So)が1.0mmより小さい場合は、吸込抵抗により被処理流動体の圧力損失が大きく吸込速度が期待通り大きくならない。また、吸込速度を大きくする効果を期待するならば、流出開口34の周方向の幅(So)を8.0mmより大きくする意味はなく、スリット18の本数を多くする方が吸込速度を大きくする効果が大きい。
また、スリット空間35の周方向の幅(Sm)は、0.3〜5.0mmが好ましく、0.5mm〜3.0mmであることがより好ましい。ローター2の高速回転によりスリット18を通じてスクリーン9の内側から外側へ吐出される断続ジェット流は、スリット空間35の周方向の幅(Sm)が0.3mmより小さい場合、被処理流動体の圧力損失により断続ジェット流を形成しづらいし、キャビテーションの問題も発生しやすい。スリット空間35の周方向の幅(Sm)が5.0mmより大きな場合は、断続ジェット流の速度が上がらない。
また、スリット18の周方向の幅は、流入開口33から狭隘部に向けて漸次減少し、狭隘部から流出開口34に向けて漸次増加することが好ましい。
例えば、図7(A)−(C)に示すように、流入開口33の周方向の幅(Si)が流出開口34の周方向の幅(So)よりも大きいものであってもよく、図7(E)に示すように、流出開口34の周方向の幅(So)が流入開口33の周方向の幅(Si)よりも大きいものであってもよく、図7(D)に示すように、流入開口33の周方向の幅(Si)と流出開口34の周方向の幅(So)とがほぼ同じであってもよい。断続ジェット流の速度向上などの観点から、流入開口33の周方向の幅(Si)が流出開口34の周方向の幅(So)よりも大きいものであることが好ましい。
ただし、ポテンシャルコア36の形成の観点から、例えば、図6、図7(B)−(D)に示すように、流入側領域22と流出側領域23との間に中間領域24を備えることが好ましい。中間領域24の半径方向の幅は、スリット18の半径方向の幅の1/3以上であることが、形成されるポテンシャルコア36の安定性の観点から好ましい。また、中間領域24の半径方向の幅は、スリット18の半径方向の幅の2/3以下であることが、流入側領域22と流出側領域23の半径方向の幅を確保する上で好ましい。なお、例えば図7(A)(E)に示すように、流入側領域22と流出側領域23との間に中間領域24を備えなくても、ポテンシャルコア36は形成される。
しかしながら、少なくとも手前側の流出側端面27を複数の羽根12の回転方向の後方へ傾斜させることが好ましい。なぜなら、ローター2が反時計方向に回転している場合、ジェット流は反射を伴い時計方向に傾く傾向にあり、ジェット流の流れに沿うように、手前側の流出側端面27を複数の羽根12の回転方向の後方へ傾斜させることが有利だからである。
ローター2は、前述のとおり、複数枚の羽根12を有する回転体である。
羽根12は、特許文献1−3に示すもの(羽根12の先端部21の回転方向の幅bとスリット18の周方向の幅(Si)が略等しいか、羽根12の先端部21の回転方向の幅bの方が少し大きい程度)を用いてもよいし、特許文献4に示すもの(スリット18の周方向の幅(Si)に対して羽根40の先端部41の回転方向の幅b’が広いもの。)を用いてもよい(図6参照)。ローター2の羽根12の回転方向の幅bが流入開口33の周方向の幅(Si)よりも狭い場合は、断続ジェット流の発生の観点から好ましくない。
0.02×D≦v≦0.15×D 式(1)
Dは、ローター2の最大外径であって、羽根12の先端部21とスリット18とがスリット18の長さ方向において互いに重なり合う同一位置におけるローター2の最大外径である。
スリット18の半径方向の幅(v)が0.02Dより小さい場合は前述のノズル効果を得ることができず、断続ジェット流を形成しづらい。スリット18の半径方向の幅(v)が0.15Dより大きい場合は、被処理流動体の圧力損失が大きくなりすぎるので、断続ジェット流の速度が上がりにくい。また、キャビテーションを極力減らして断続ジェット流の最大限の効果を得るための適正な半径方向の幅(v)の範囲が式(1)に示された範囲である。
本発明を適用できると共に、現在の技術力で量産に適すると考えられるスクリーン9、スリット18、ローター2の数値条件は、下記の通りである。
スクリーン9の最大内径(c):30〜500mm(但し、羽根12の先端部21とスリット18とがスリット18の長さ方向において互いに重なり合う同一位置における最大径)
スクリーン9の回転数:15〜390回/s
スリット18の本数:12〜500本
ローター2の最大外径(D):30〜500mm(但し、羽根12の先端部21とスリット18とがスリット18の長さ方向において互いに重なり合う同一位置における最大径)
ローター2の回転数:15〜390回/s
もちろん、これらの数値条件は一例を示すものであり、例えば、回転制御等の将来における技術進歩に伴い、前記の条件以外の条件を採用することを、本発明は除外するものではない。
また、図7(A)に記載の流出開口34の周方向の幅(So)は1.6mm、流入開口33の周方向の幅(Si)は2.0mm、スリット空間35の周方向の幅(Sm)は0.8mmである。図7(B)に記載の流出開口34の周方向の幅(So)は1.6mm、流入開口33の周方向の幅(Si)は2.0mm、スリット空間35の周方向の幅(Sm)は0.8mmである。図7(F)に記載の流出開口34の周方向の幅(So)、流入開口33の周方向の幅(Si)及びスリット空間35の周方向の幅(Sm)はともに0.8mmである。以下の各表において、実施例又は比較例で用いたスリット18の横断面の形状として、図7(A)に示すものを用いた場合は「A」、図7(B)に示すものを用いた場合は「B」、図7(F)に示すものを用いた場合は「F」と記載した。
また、スクリーン9に設けられたスリット18の本数は24本である。
また、図7(A)(B)(F)に示すように、実施例及び比較例で用いたローター2の羽根12は、その先端部21の回転方向の幅bが、実施例で用いた図7(A)(B)に示すスリット18の流入開口33の周方向の幅(Si)より少し大きいものを用いた。より詳しくは、実施例及び比較例で用いたローター2の羽根12は、その先端部21の回転方向の幅bが2.5mmである。
なお、スリット18の流入開口33の周方向の幅(Si)、スリット18の流出開口34の周方向の幅(So)及びスリット空間35の周方向の幅(Sm)は、羽根12の先端部21とスリット18とがスリット18の長さ方向において互いに重なり合う同一位置におけるそれぞれの周方向(言い換えればローター2の回転軸の軸方向に対して直交する方向)の長さを言う。
実施例における粒度分布測定には、MT−3300(日機装(株)製)を用いた。測定溶媒は、純水、粒子屈折率は1.81、溶媒屈折率は1.33である。また結果には、体積分布の結果を用いた。
なお、ローター2の回転の周速度Vは、羽根12の先端部21とスリット18とがスリット18の長さ方向において互いに重なり合う同一位置におけるローターの最大外径をD(m)、ローターの回転数をN(回/s)としたとき、V=D×π×Nであり、表1〜表8、表11に記載のローター径Dは当該同一位置におけるローター2の最大外径である。
実施例6として、ローター2の羽根枚数を4枚とし、ローター2とスクリーン9との相対的回転数をN=500(回/s)、相対周速度V=55.0m/sとした時の結果を表10に示す。
なお、ローター2のスクリーン9に対する相対的回転の周速度V(m/s)は、前述の同一位置におけるローターの最大外径をD(m)、ローターの回転数をN1、スクリーンの回転数をN2としたときの、ローター及びスクリーンの相対的回転数をN(回/s)としたとき、V=D×π×N(ただし、N=N1+N2)であり、表9〜表10に記載のローター径Dは前述の同一位置における最大外径である。
実施例7として、本発明における第1の実施の形態(図1、図2)に係る撹拌機を用いて、顔料の分散処理を、図9(A)に示す試験装置にて行った。
被処理物の処方は、一次粒子径が10〜35nmの赤色顔料(C.I.PigmentRed254)を5wt%、分散剤として、BYK-2000(ビックケミ―製)を5wt%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の混合溶液(PGMEA/PGME=4/1:体積比)90wt%である。前述のとおり処方された被処理流動体である上記被処理物を予備混合品とし、図9(A)に示す試験装置中のポンプにて外部容器内の予備混合品を本発明における撹拌機を保有した処理容器4に導入して、処理容器4内を液封とし、さらに同ポンプにて処理容器4内に被処理流動体を導入することによって、吐出口より、被処理流動体を吐出させ、処理容器4と外部容器との間を、2300g/minにて循環させながら、本発明における撹拌機のローター2を、333.33(回/s)で回転させることにより被処理流動体をスクリーンから吐出させて分散処理を行った。スクリーンに設けられたスリットの横断面の形状として、図7(B)に示すものを用いた。分散処理の開始から45分後に得られた顔料微粒子の粒度分布測定結果における平均粒子径(D50)及び粒子径の変動係数(C.V.)の値を、表11に示す。
2 ローター
3 支持管
4 収容容器
5 吸入口
6 吸入室
7 攪拌室
9 スクリーン
10 隔壁
11 開口
12 羽根
13 回転軸
14 モータ
15 攪拌翼
18 スリット
19 スクリーン部材
20 第2モータ
21 先端部
22 流入側領域
23 流出側領域
24 中間領域
26 手前側の流入側端面
27 手前側の流出側端面
28 手前側の中間端面
30 奥側の流入側端面
31 奥側の流出側端面
32 奥側の中間端面
33 流入開口
34 流出開口
35 スリット空間
36 ポテンシャルコア
Si 流入開口の周方向の幅
So 流出開口の周方向の幅
Sm スリット空間の周方向の幅
Claims (9)
- 複数の羽根を備えると共に回転するローターと、前記ローターの吐出圧力保持目的での隔壁と、前記ローターの周囲に敷設されたスクリーンと、を同芯で備え、
前記スクリーンは、その周方向に複数のスリットと、隣り合う前記スリット同士の間に位置するスクリーン部材とを備え、
前記ローターと前記スクリーンとのうち少なくともローターが回転することによって、被処理流動体が前記スリットを通じて断続ジェット流として前記スクリーンの内側から外側に吐出する攪拌機において、
前記スクリーンは断面円形の筒状をなし、
前記スクリーンの内壁面に設けられた複数の前記スリットの開口を流入開口とし、前記スクリーンの外壁面に設けられた複数の前記スリットの開口を流出開口とし、前記流入開口と前記流出開口との間の空間をスリット空間とし、
前記流出開口の周方向の幅(So)及び前記流入開口の周方向の幅(Si)は、前記スリット空間の周方向の幅(Sm)よりも大きくなるように設けられたことを特徴とする攪拌機。 - 複数の前記スリットには、被処理流動体が前記スクリーンの内側から前記スリットに流入する流入側領域と、前記スリットから被処理流動体が前記スクリーンの外側へ流出する流出側領域とを少なくとも備え、
前記流入側領域は、前記複数の羽根の回転方向に間隔を隔てて配置された手前側の流入側端面と奥側の流入側端面とによって規定され、前記流出側領域は、前記複数の羽根の回転方向に間隔を隔てて配置された手前側の流出側端面と奥側の流出側端面とによって規定され、
前記スリット空間の周方向の幅(Sm)は、前記スリット空間の周方向の幅のうち最も狭い狭隘部の周方向の幅であって、
次の(1)〜(4)のうち少なくとも1つの角度が1〜45度であることを特徴とする請求項1に記載の攪拌機。
(1)前記手前側の流入側端面の、前記狭隘部の周方向の中央を通る半径に対する角度
(2)前記奥側の流出側端面の、前記狭隘部の周方向の中央を通る半径に対する角度
(3)前記奥側の流入側端面の、前記狭隘部の周方向の中央を通る半径に対する角度
(4)前記手前側の流出側端面の、前記狭隘部の周方向の中央を通る半径に対する角度 - 複数の前記スリットには、前記流入側領域と前記流出側領域との間に中間領域を備え、前記中間領域は、前記複数の羽根の回転方向に間隔を隔てて配置された手前側の中間端面と奥側の中間端面とによって規定され、前記手前側の中間端面と前記奥側の中間端面とは半径方向に幅を有するものであることを特徴とする請求項2に記載の攪拌機。
- 前記スリット空間の周方向の幅(Sm)は、前記スリット空間の周方向の幅のうち最も狭い狭隘部の周方向の幅であって、
前記スリットの周方向の幅は、前記流入開口から前記狭隘部に向けて漸次減少し、前記狭隘部から前記流出開口に向けて漸次増加することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の攪拌機。 - 前記流出開口の周方向の幅(So)が1.0mm〜8.0mmであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の攪拌機。
- 前記スクリーンの内部に前記被処理流動体を導入する導入口から、軸方向に遠ざかるに従って、前記羽根及び前記スクリーンの径が小さくなることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の攪拌機。
- 前記複数のスリットは、前記周方向に同一の幅であり、且つ、前記周方向に等間隔に形成されたものであり、
前記スクリーンは回転しないものであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の攪拌機。 - 前記複数のスリットは、前記周方向に同一の幅であり、且つ、前記周方向に等間隔に形成されたものであり、
前記スクリーンは前記ローターと逆方向に回転するものであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の攪拌機。 - 前記ローターの最大外径をDとしたとき、前記スクリーンの複数の前記スリットは、その半径方向の幅(v)が以下の式(1)によって規定されていることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の撹拌機。
0.02×D≦v≦0.15×D 式(1)
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